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2020.12.30-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/a22bd1a787e7eb3f095daffa664b4799ab5d4957
米国務長官、中国の市民記者の有罪判決を「強く非難」

  【ワシントン=黒瀬悦成】ポンペオ米国務長官は29日、新型コロナウイルスが流行していた中国湖北省武漢市の実情をインターネットを通じて伝えた市民ジャーナリストで元弁護士の張展氏が、28日に公共秩序騒乱罪で懲役4年の実刑判決を受けたことに関し、「中国政府によるいかさまの起訴と判決を強く非難する」との声明を発表した。
   ポンペオ氏はまた、張氏の無条件かつ即時の釈放を要求した。
   ポンペオ氏は「ウソをつくことは権威主義体制の特性だ。中国共産党は武漢市での新型コロナの発生当初から関連の情報を制限および操作し、真実を伝える者たちを容赦なく沈黙させてきた」と指摘し、「米国は中国の市民らが自由かつ平和的に発言する権利を支持し続ける」と強調した。


2020.11.14-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/201114/wor2011140014-n1.html
中国は「自由で開かれたインド太平洋」阻止に躍起

  【北京=三塚聖平】中国は今回の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議を「対中包囲網」の構築に歯止めをかける場と位置付けているようだ。中国は、日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」をアジア版の北大西洋条約機構(NATO)だと反発。米国が大統領選後の混乱もありアジア戦略が固まらない状況を横目に、ASEAN各国の切り崩しを進める構えだ。
  「結束と協力を強化して知恵と力を結集すれば、感染症の影響を克服して地域の平和と安定を守ることができる」。14日に開いた日中韓3カ国とASEANの首脳会議で、中国の李克強首相はASEANとの関係強化の姿勢を前面に打ち出した。12日の中国とASEANの首脳会議では、新型コロナウイルスの流行を受けた公衆衛生面での協力の深化や、地域経済の回復促進などを提案している。
  中国としては、日米豪印がFOIPの下で連携を強める中、ASEAN各国をつなぎ留めることが喫緊の課題となっている。中国の王毅国務委員兼外相は10月中旬、FOIPについて「インド太平洋版の新たなNATOの構築を企てるものだ」と露骨に牽制した。
  ASEAN加盟国にはカンボジアなど親中姿勢を鮮明にする国もあり、南シナ海への海洋進出を強める中国に対して反対姿勢で足並みをそろえることは難しい。中国はこうした隙をつき、ASEAN諸国がFOIPに同調して対中包囲網に加担する事態を避けたい考えだ。王氏は、FOIPは「ASEANを中心とした地域協力の枠組みと衝突し、東アジアの平和と発展の将来を損なう」とも述べ、ASEAN側に同調しないよう呼びかけている。
  中国は、新型コロナへの対応をASEAN各国との関係強化のテコに用いている。コロナ禍で世界の貿易量が減少する中、中国とASEANとの貿易総額は1~10月に前年同期比5・1%増と拡大。タイやミャンマーなどに新型コロナワクチンの優先提供を申し出るなど「ワクチン外交」も展開し、中国への支持の取り付けを図っている。


2020.11.7-iza イザ(産経新聞)-https://www.iza.ne.jp/kiji/column/news/201107/clm20110705000001-n1.html
【主張】内モンゴル自治区 中国の人権弾圧に監視を

  中国共産党政権が内モンゴル自治区で、少数民族モンゴル族の子供に対し標準中国語(漢語)の教育を強化している。
  チベット族やウイグル族に続く強引な同化政策の一環であり、香港などに対する人権弾圧とも共通する。日本を含む国際社会は団結して中国の人権問題を徹底監視し、改善を迫るべきだ。
  内モンゴル自治区では9月の新学期から国語の授業で、漢語を使った全国統一の教科書を使うようになった。来年は道徳、再来年は歴史の教材についても同様に切り替える。モンゴル族の子供から、民族色を失わせる戦術だ
  中国の習近平国家主席は9月、新疆ウイグル自治区に関する座談会に出席し、教育によって国家観、歴史観、宗教観を導き、「心の奥底に中華民族の共同体意識を植え付ける」と述べた。
  これは同化政策の強化宣言であり、少数民族に対する国際社会の人権侵害批判に対する露骨な開き直りだったチベットやウイグルでは同化政策に難色を示すと要注意人物となり、職業訓練センターと呼称する強制収容所に送られているとされる。モンゴル族もまた、その対象となる
  中国に約600万人いるモンゴル族が使うモンゴル語は、内モンゴル自治区と国境を接する隣国モンゴルの人々とほぼ同じだ

  同化政策にはモンゴルでも反発が広がり、エルベグドルジ前大統領は、中国の政策を「文化的ジェノサイド(民族大量虐殺)だ」と非難した。これに中国の王毅国務委員兼外相はモンゴル側に「内政干渉をするな」と反発した
  仏西部にあるナント歴史博物館では、モンゴルの英雄チンギスハンに関する来春の展示会が見送られた。産経新聞の取材に同館は「中国政府が7月ごろ、突然介入してきて、チンギスハンを展示から消すよう要求した」と理由を明かした。言語ばかりか、歴史まで抹消しようとする姿勢は常軌を逸したものだ。
  人権の擁護は普遍的な国際社会の価値観である。「内政干渉」とする中国側の反論は、何ら意味をなさない。米国の大統領選は混迷を深めているが、誰がその座に就こうが人権への監視を緩めてはならない。日本も同様である。中国に人権問題などの改善がみられない限り、習主席の国賓来日を白紙撤回すべきである。


2020.11.03-日本経済新聞-https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65792910T01C20A1MM8000/
中国GDP、2035年に倍増 長期目標で成長率は示さず

  【北京=多部田俊輔、川手伊織】中国共産党は3日、2021~25年の第14次5カ年計画などの草案を公表した。習近平(シー・ジンピン)国家主席は「35年までに国内総生産(GDP)と1人当たりの収入を2倍にすることは完全に可能だ」との見通しを示した。米国との対立が長引くとにらみ、ハイテク技術などの内製化を急ぐ。

  新たな5カ年計画と35年までの長期目標の草案は、10月29日に閉幕した第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)で採択した。国営新華社を通じて公表した。新華社は、習氏自身による計画の解説も配信した。
  習氏は35年までの見通しとあわせて、今後5年間について「高収入国家の基準に達することは可能だ」と指摘した。ただ草案は「定性的な表現を主とする」とし、具体的な経済成長率の目標には触れなかった。16~20年の現行計画の草案をまとめた15年11月には「年平均6.5%以上が必要だ」と言及していた。
  具体的な数値目標への言及を見送ったのは、新型コロナウイルスのまん延や世界経済の低迷など不確定要素が多いためだ。習氏は21年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)に示す大綱に数値目標を盛り込む考えを示した。
  15年間でGDPを倍増させるには、年平均4.7%の成長が必要になる。米議会予算局(CBO)の予測では、30年の米GDPは31兆ドル。為替レートが一定と仮定すれば、30年の中国GDPは米国の8割弱に達する。30年代半ばの米中逆転も視野に入る。

  米中対立の常態化を想定し、次期5カ年計画ではハイテク覇権の争いに向けた産業政策を盛り込んだ。半導体や人工知能(AI)を戦略的な重点科学分野に位置づけ、外国からの制裁に影響されない独自のサプライチェーン(供給網)の構築を打ち出した。
  トランプ米政権が次々と打ち出した中国企業に対する制裁措置への対応策が目標の主眼となった。新しいキーワードは「自主可控(中国が独自にコントロールできる)」だ。中国政府幹部は「米国から制裁を受けても影響がないという意味だ」と指摘する。

  「国家経済の安全の確保」を打ち出した。産業競争力を調査・評価し、産業システムに対する攻撃への対抗力を増強する。技術革新の力を高め、サプライチェーンの中核技術を強化して、調達の多元化も図るとしている。
  これまでは米国など海外で学んだ優秀な人材を迎えることで国内産業の育成を図ってきた。対立激化で米国などでの研究が難しくなることをにらみ、科学技術でも「自立」や「自強(自ら強くする)」を強調した。これまで不十分だった基礎研究も税優遇などで力を入れる。
  「科学技術強国」をつくるための行動綱要を制定し、戦略的に人材や産業の育成を行う。具体的には半導体、AI、航空宇宙などを戦略的な国家重大科学技術プロジェクトに位置づけることも盛り込んだ。
  新興産業の育成ではIT(情報技術)、バイオテクノロジー、新エネルギー、新素材、電気自動車(EV)などの新エネルギー車、航空宇宙などを具体的に挙げ、インターネット、ビッグデータ、AIと各産業との深い融合を進める方針を打ち出した。
  このほか、次期計画は香港を巡り「法に基づいた統治を堅持する」としたうえで「外部勢力の干渉を断固として防ぐ」と強調した。


2020.10.29-Yahoo!Japanニュース(KYODO)-https://news.yahoo.co.jp/articles/35ed93da568422643ef5a9929e0cfdae3e779e2c
中国、内需拡大戦略に転換を確認 5中総会閉幕、習氏長期支配へ

  【北京共同】中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第5回総会(5中総会)が29日、閉幕した。2021~25年の中期経済目標「第14次5カ年計画」と35年までの長期目標の基本方針を採択。内需拡大を基本としつつ世界経済とも連携する「双循環」戦略を推進し、輸出頼みの経済からの転換を確認した。習近平党総書記(国家主席)の後継含みの人事は公表されず、22年の第20回党大会を控え、習氏による長期支配の流れが強まった。
   新型コロナウイルス感染症や米国との対立で中国を取り巻く環境が厳しさを増す中、巨大人口を背景にした内需主導の経済重視を鮮明にした。


2020.10.27-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/dd7598708e9035922a0396d2a570bdc1e058375b
中朝国境の新大橋、北の接続道路ほぼ完成…貿易再開、コロナ沈静化待つ

  中国東北部の遼寧省丹東と北朝鮮を結ぶ「新鴨緑江(おうりょくこう)大橋」の開通に向け、遅れていた北朝鮮側の取り付け道路の工事が進み、完成が近づいている。新型コロナウイルス問題で北朝鮮が対中国境を閉じ、中朝の貿易は大きく落ち込んだ。だがコロナ後の貿易拡大をにらみ、中朝は新たな物流インフラの整備を急ぎ始めたようだ。(丹東 西見由章)
   ■本体は2014年に完成も…
   中朝国境に架かる新鴨緑江大橋は、老朽化した「中朝友誼(ゆうぎ)橋」に代わるインフラとして2014年秋に本体が完成した。その後、北朝鮮側で滞っていた道路工事が昨年、ようやく始まった。中国側が資金を支援したもようで、国連安全保障理事会の対北制裁決議に抵触する可能性もある。
   昨年12月に盛り土の造成が終わっていた北朝鮮側の取り付け道路は、今月下旬の目視によると、舗装とガードレール状の柵がほぼ完成。
  道路と鴨緑江の支流が接近する地点は工事用フェンスで覆われているが、新しい大型施設が確認できた。岸壁建設工事が行われている様子もうかがえる。これらは通関施設の可能性がある。

   ■平壌以外に防疫システムなく
   ただ、北朝鮮が新型コロナへの警戒態勢を解くには時間がかかりそうだ。丹東の貿易関係者は「年内の物流再開はないだろう。北朝鮮は平壌以外、防疫システムができておらず、コロナが拡散したら終わりだとの危機感が強い」と話す。
   北朝鮮の金正恩キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は今月5日、人民を総動員して経済再建にあたる「80日戦闘」の展開を決定した。北京の北朝鮮筋は「80日戦闘はコロナ対策の徹底のほか、経済の自力更生を図る意図もある。期間中、中国との往来再開はない」と指摘している。
   北朝鮮は新型コロナ発生後、中国からのツアー受け入れを停止している。中国側が運営する鴨緑江の遊覧船も、北朝鮮は川の中央線より近づかないよう要請するなど、いまも神経をとがらせている。
   遊覧船に乗って北朝鮮側を望んだが、全身を白い防護服で包んだ人物や、頭部までカーキ色の服で覆った警備要員などのほかに、人影は見当たらなかった。


2020.10.18-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/201018/wor2010180013-n1.html
中国、個人情報保護法制定へ 対米念頭に対抗措置も定める

  【北京=三塚聖平】中国が、インターネット上の個人情報の取り扱いを厳格化する「個人情報保護法」の制定へ作業を積極化させている。個人情報の無断・違法取得を防ぐだけでなく、海外への移転に関する規制を強化するのが狙いだ。個人情報保護に関して中国に不当な措置を講じる国や地域に対抗措置を取るとも規定しており、ユーザー情報の流出リスクを盾に中国企業排除を進める米国を念頭に置いているとみられる
  全国人民代表大会(全人代)の常務委員会が17日まで開いた会議で、個人情報保護法の草案の初審議が行われた。全人代常務委では法案について通常3回の審議を経て成立させている。
  中国メディアによると、草案では個人情報の取り扱いについて十分な告知を前提として個人の承諾を得る必要があると定めた。収集した個人情報を海外に移転する場合は、国の関連部門の審査を求める。違反すれば最高で5千万元(約8億円)、もしくは前年の売上高の5%の罰金を科す重い処分になるという。
  世界的にネットやデータが国家の競争力や安全保障を左右するようになる中で、中国は急ピッチで関連する法制度の整備を進めている。企業が収集したデータを国内で保存することを義務づけた「サイバーセキュリティー法(インターネット安全法)」を17年に施行。個人情報保護法に加えて、データ管理を厳格化する「データセキュリティー法」の制定に向けた作業も進めている。


2020.10.16-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/201016/wor2010160027-n1.html
習氏が唱える「双循環」戦略の狙い 米とのデカップリングに備え

  【北京=三塚聖平】中国の習近平国家主席が「双循環」という用語を多用している。中国経済の新たな発展モデルだといい、検討中の2021~25年の中期経済目標「第14次5カ年計画」に組み込まれる見通しだ。米国との対立が深刻化して米中経済のデカップリング(切り離し)も現実味を帯びる中、内需シフトを進めて中長期的に中国経済の自立を進める戦略とみられている。
   「国内の大循環を主体とし、国内と国際の双循環が互いに促進し合う新たな発展の枠組みを形成している」。14日に開かれた深川に経済特区成立40年の記念式典で行った演説で、習氏はこう強調してみせた。
   習氏は、今年5月から双循環という言葉を使うようになり、政府・経済関係者も言及することが増えている。中国共産党が今月26日から29日に開く重要会議「第19期中央委員会第5回総会(5中総会)」で第14次5カ年計画について討議するが、双循環が柱の一つになるとみられている。
   詳細な定義がないため国内外でさまざまな見方が出ているが、習氏が「国内の大循環を主体」とわざわざ付け加えていることから、内需重視の政策だと受け止められている。内需とともに、国内のサプライチェーン(供給網)や、産業技術も強化するものとみられる。香港経済日報(電子版)は「中国経済を内部循環中心へと方向転換することは、国際情勢の突発的な変化に対する重大な戦略転換だ」と分析する。
   新型コロナウイルスの流行を機に、トランプ米政権は中国の初動対応などを批判。対立はハイテク分野にも飛び火し、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)など中国企業の排除が進められている米国は、欧州など各国にも中国製品排除を促すなど「中国包囲網」の形成を進める。


2020.10.13-ZaqZaq by 夕刊フジ(産経新聞)-https://www.zakzak.co.jp/soc/news/201013/for2010130006-n1.html
中国「台湾スパイ数百件摘発」 香港デモ参加者が公開懺悔も 
(1)
  【北京=西見由章】中国の官製メディアは12日までに、国家安全当局が「台湾のスパイ」による数百件の事件を集中的に摘発したと伝えた。香港の反政府デモを支援したとされる台湾人被告が“懺悔(ざんげ)”する映像も放映した。「一つの中国」原則を認めない台湾の蔡英文政権への圧力を強め、香港民主派との連携を牽制(けんせい)する狙いがありそうだ。
  中国国営中央テレビ(CCTV)などによると、台湾人ビジネスマンの李孟居氏は昨年8月、香港に隣接する広東省深川の競技場で、人民武装警察部隊(武警)が訓練している様子を違法に撮影したとして国家安全危害容疑で拘束された。動画16本と写真48枚を撮影し、自らが所属する台湾独立派団体に送信したという。
  李氏は撮影直前に台湾から香港にわたり、逃亡犯条例改正案の撤回を政府に求める抗議デモに参加。「台湾人と香港人はともにある。香港頑張れ!」と書かれたチラシをデモ隊に配り、記念撮影するなどしていた。
(2)
  未決囚用の服を着た李氏は番組で「過去に多くの過ちを犯し、申し訳ない。祖国を傷つけてしまった」と謝罪。続いて登場した国家安全当局の幹部は「台湾独立勢力が言う民主と自由は嘘であり、香港を混乱させて独立をたくらんでいるのが真実だ」と決めつけた。
  中国当局が、逮捕した民主活動家らをテレビの番組上で公開謝罪させ、中国側の主張を口写しで言わせるのは常套手段だ。また李氏が撮影した武警の訓練は、香港のデモ隊に対する中国当局の威嚇という側面が強く、当時は国内外のメディアが動画も含めて報道しており、「国家秘密を国外勢力に提供した」とする中国側の主張には無理がある。
  台湾で対中国政策を主管する大陸委員会は11日、李氏をめぐる中国側の報道について「悪意ある政治宣伝で、無実の台湾人をスパイ行為の罪に陥れるものだ」と非難する声明を出した。
  中国メディアは2018年にも100件余りを摘発したとする台湾人スパイの摘発キャンペーンを報じたが、今回も含めて実態は不明だ。
(産経新聞)


2020.9.23-Yahoo!Japanニュース(TBS NEWS)-https://news.yahoo.co.jp/articles/08d89c298d01e79fea6befb4ee0b6ce81cd10b20
中国 習氏批判の実業家、懲役18年の判決

  中国の習近平国家主席を批判するなど「もの言う実業家」として知られる任志強氏について、北京の裁判所は横領や収賄などの罪で懲役18年の実刑判決を言い渡しました。
  裁判所は大手不動産会社の元トップ、任志強氏が2003年からの14年間で国有企業からおよそ5000万元を横領し125万元以上の賄賂を受け取ったなどの罪で、懲役18年と罰金420万元(約6500万円)の実刑判決を言い渡しました。裁判所によると任氏は「罪を認め、控訴しない」としています。
  任氏は「もの言う企業家」として知られ、言論統制や新型コロナウイルス対策をめぐって習主席の批判などを行っていました。(23日00:14)


2020.9.21-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/8e3a9d6ca8df5a82b4565f23efb05181c27c47c9
中国共産党序列4位の汪洋氏「台湾独立は袋小路」

  【北京=西見由章】中国共産党序列4位の汪洋・人民政治協商会議(政協)主席は20日、福建省アモイで開かれた「海峡フォーラム」の開幕式にビデオメッセージを送り、「台湾独立は袋小路だ。外国と結託して自らの存在感を高めても、耐え難いリスクを台湾にもたらすだけだ」と述べ、トランプ米政権に接近している台湾の蔡英文政権を牽制(けんせい)した。
  同フォーラムは2009年から毎年、中国が主催している中台交流イベント。今年は台湾最大野党で親中派の国民党が不参加を決め、汪氏も「他の公務」を理由に開幕式を欠席した。政協主席や国民党側の代表が欠席するのはいずれも初めてで、中台関係の全面的な冷え込みを象徴する事態といえそうだ。
  汪氏はメッセージで「(台湾)島内には大陸経済、文化との『切り離し』を画策する者がいるが、これは台湾に百害あって一利なしだ」と語った。
  ただ台湾の“中国離れ”は、中国側が強圧的な言動によって自ら招いている側面も大きい。中国国営中央テレビは10日、インターネット上の番組で、国民党側のフォーラム参加について「和議を求めに来る」と報道。台湾世論の強い反発を受けて国民党がフォーラム不参加を決めていた。


2020.9.9-日本経済新聞-https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63631830Z00C20A9FF8000/
ディズニー映画「ムーラン」に批判 ウイグル当局協力

  ディズニーの新作映画「ムーラン」をめぐり、中国の新疆ウイグル自治区の政府機関が協力していたことがわかった。欧米メディアが8日までに報じた。新疆では中国政府によるウイグル人の迫害が問題視される。SNS(交流サイト)では映画を見ないよう呼びかける声が広がっている。

  米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、映画のエンドロールで「深い感謝」を表明した協力機関の一覧に、新疆ウイグル自治区の8つの政府機関が含まれていた。米トランプ政権が昨年10月、深刻な人権侵害に加わったとして米企業との取引を禁じた同区トルファン市の公安当局や、中国共産党の宣伝機関も名を連ねている。
  英BBC(電子版)によれば、新疆では過去数年間で100万人超のウイグル族と他の少数民族が収容施設に入れられた強制労働や不妊手術の強要などの人権侵害が報告されている。中国政府は同施設について「テロ防止のための職業訓練センター」と説明する。
  米共和党のマイク・ギャラハー下院議員は8日「新疆で人道的な罪を犯しているのに、世界にうそをつく共産党の宣伝機関や残虐行為を担う公安当局に謝意を示した」とツイッターで批判した。
  2億ドル(約210億円)をかけ製作された大作のムーランをめぐっては主演女優のリウ・イーフェイさんが昨年、香港警察による民主派デモの取り締まりを擁護する発言をしたことで、香港や台湾でボイコットを呼びかける声が上がっていた。
  香港の民主活動家、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏は7日、自身のツイッターで「ムーランを見ることで、あなたは警察の暴力と人種的不正義に目をつむるだけでなく、ウイグル人の集団監禁に共謀する可能性も出てきた」と投稿した。
  ムーランはディズニーが会員向けの公式動画配信サービス「ディズニープラス」で先行配信を始めたばかり。ディズニーは撮影地や協賛をめぐる議論についてコメントしていない。


2020.9.4-Yahoo!Japanニュース(朝テレNEWS)-https://news.yahoo.co.jp/articles/37069a99f1a514b79c233a565338ffb097e9e4b7
標準語は中国語?“モンゴル語規制”に生徒ら猛抗議

  中国の内モンゴル自治区でモンゴル語の授業が規制されることへの抗議活動が拡大しています。反発の声は政府系機関にも広がっています。  中国北部の内モンゴル自治区の学校に詰め掛けて抗議しているのは、モンゴル族の生徒の保護者らです。9月の新学年からモンゴル語での授業を減らし、中国語での授業を増やす方針が政府から示されました。それに対する抗議活動です。少数民族の漢族への同化政策を進めている習近平政権。新疆ウイグル自治区やチベット自治区で行ってきた「中国標準語教育の強化」を内モンゴル自治区でも始めようとしています。子どもたちも一緒になって抗議しています。これに対して中国政府は…。
   中国外務省報道局長:「標準語は国家主権のシンボルであり、自国の標準語を勉強したり、使用したりすることはすべての国民の権利と義務だ」
   さらに抗議活動は学校だけではありません。政府系テレビ局の「内モンゴルテレビ」の会議室には反対する職員らが集まり、300人以上が署名しました。抗議活動が政府系機関にまで拡大。異例の事態にネット上では。
   中国のSNS:「共産党のメディアが革命を起こしている」  しかし、署名をよく見てみると、名前はモンゴル語で記されています。人口約2600万人の内モンゴル自治区では約400万人がモンゴル族です政府系の放送局に勤務する立場ではあるものの民族のアイデンティティーを守るためにモンゴル族の職員らが立ち上がったというのが実状です。


2020.09.01-朝日新聞(DIGITAL)-https://www.asahi.com/articles/ASN913GY3N91UHBI004.html
中国当局、国営チャンネルの豪州人キャスターを拘束

  オーストラリア政府は8月31日夜、中国出身の豪州人のジャーナリスト、チェン・レイ氏が中国国内で拘束されたと発表した。チェン氏は中国国営のニュースチャンネル、中国国際テレビ(CGTN)のキャスターを務めていた。拘束の理由は明らかになっていない。
  ペイン豪外相の声明によると、豪政府は8月14日、中国当局からチェン氏を拘束したと連絡を受けた。CGTNのウェブサイトからは、同氏のプロフィルが削除されている。
   豪メディアによると、チェン氏は中国からの移民。豪州国籍を取得後、中国に戻り、最近では、CGTNのビジネスニュース番組のキャスターを務めていた。
   豪州と中国の関係は近年、豪政府による5G事業への華為技術(ファーウェイ)の参入禁止などを受けて悪化している。中国出身の豪州人を巡っては、中国当局は昨年1月、作家のヤン・ヘンジュン氏を拘束し、今年3月にスパイ罪で起訴した。豪政府は「政治的な理由で拘束された」としてヤン氏の釈放を求めている。(シドニー=小暮哲夫)


2020.9.1-東京新聞 TOKYO WEB-https://www.tokyo-np.co.jp/article/52569?rct=world
訪台のチェコ議長演説に猛反発 中国外務省「強く非難」

  【北京共同】中国外務省の華春瑩報道局長は1日の記者会見で、台湾を訪問中の東欧チェコのビストルチル上院議長が立法院(国会)で演説したことに猛反発した。「公然と台湾の独立、分裂勢力を支持し、中国の主権をひどく侵犯した。内政干渉で、強く非難する」と訴えた。
  華氏は、「一つの中国」原則はチェコが国家として認めており「両国関係の政治的な基礎だ」と主張。ビストルチル氏の訪台に対して必要な対応を取り、正当な利益を守ると述べ、対抗措置をほのめかした。
  「主権と安全を守る14億の中国人民の確固とした意思をくれぐれも見くびるな」ともけん制した。


2020.8.20-dmenuニュース-http://topics.smt.docomo.ne.jp/article/jbpress/world/jbpress-61782?fm=latestnews
飲食業界は騒然、中国「食べ残し禁止令」の不気味
福島 香織:ジャーナリスト
(1)
  中国の習近平国家主席が8月11日、食べ残しなど飲食の浪費行為を徹底的に制止し、節約習慣を教育する重要指示を行った。この指示が、かなり異常で過剰な地方政府や業界の反応を引き起こしている。習近平の“倹約令”は今に始まった話ではないが、なぜ今さら「食べ残し禁止」の重要指示なのか。
  国営通信社の新華社によれば、中国共産党中央総書記であり国家主席であり中央軍事委主席である習近平の指示は、次のようなものだった。
 まず習近平は「飲食の浪費現象は目に余る驚きであり、心が痛む。皿の中の食事にどれだけの人々の苦労が詰まっていることか。我が国の食糧生産は豊作年が続くが、食糧安全に対しては終始危機意識が必要だ。今年は新型コロナ肺炎のパンデミックの影響があり、さらに我々は警鐘を鳴らさねばならない」と強調した。
  そして、立法を強化し、監督管理を強化し、効果的な措置をとるための長期的に有効なメカニズムを打ち立て、飲食浪費行為を断固制止せよ、と指示を出した。このために宣伝教育を強化し、切実に節約習慣を教育し、社会全体で浪費を恥とし節約を栄誉とするムードを作るように求めた。
  習近平はこれまでも食糧安全と節約励行・浪費反対を提唱する社会のムードを重視し、何度となく飲食浪費行為の制止を強調してきた。2013年1月に倹約を求める重要指示を出して以来、何度も同様の指示を出し、厳格な制度の執行、効果的な監督検査、厳粛な懲戒メカニズムなどを求め、公金消費における各種の違法行為や規律違反を抑制してきた。
  第18回党大会以来、各地域の各部門は、習近平の重要指示の精神を徹底して実施し、「光盤行動」(皿を空にする行動)などのキャンペーンを展開して浪費ムードをけん制し、“舌の上の浪費”現象を改善させてきた。これにより、特に大衆からの反発が強かった公金による飲食浪費行動を抑制することができた。だが、一部地方では飲食浪費が依然存在しているので、関連部門は習近平の重要指示精神を徹底的に実施し、さらに効果的な措置を制定し、社会全体で飲食浪費抑制を推進しているところである──。以上が新華社が伝える今回の指示の概要だ。
(2)
飲食業協会やレストランの過剰な対応
  この“重要指示”が出ると、全国各地の政府や関連業界は急遽対応に着手した。しかし、地方紙や地方テレビで報じられた例をみると、それらの対応は奇妙なほど過剰で、滑稽ですらある。
  たとえば、武漢の飲食業協会では先日「N−1」注文モデルの導入を提案した。「N人のテーブルで注文する料理の数は、人数分よりマイナス1であるべき」という意味だ。つまり、4人で食事にいったとき注文料理数は3品まで、5人で食事に行けば注文する料理は4品まで、ということになる。
  遼寧省の飲食料理産業協会、遼寧省レストラン飲食協会はさらにさらに厳しく「N−2」注文モデルを提案。食事をする人数より2皿少なく注文する、という意味である。だがN−2モデルだと、2人以下で食事に行くと一品も注文できないことになるではないか。
  北京市の飲食協会は「食糧節約」の看板を掲げるよう加盟店に要求し、小皿料理など少量の食事を適切な価格でサービスするよう指導した。北京料理人協会はテイクアウトメニューにも節約精神を導入するよう指示している。顧客の側も食事方法の改善が求められる。北京市が6月1日から実施している「北京市文明行為促進条例」では、レストランで適量を注文し、残さずに食べることが食糧節約に有効である、と規定している。
  広東省珠海市では、すでに2013年から飲食浪費処罰暫定弁法規定を発布しており、顧客に多すぎる料理を注文させたレストランに対して地元政府が警告を行い、もし経営者が改善を拒否したり指定期間内に改善できなかった場合は、2000元以上1万元以下の罰金を科すことになっているという。
  また湖南省長沙のあるレストランは8月14日から“体重計注文”を導入。レストラン内に電子体重計を置き、まず顧客に体重を計ってもらい、その体重に見合ったカロリー計算表をもとにした理想のメニューを提示する、という。この方法だと、体重40キロの女性客は、牛肉の煮込みの小皿と魚の頭の山椒焼きの2品しか注文できない。体重80キロの男性だと、紅焼肉なども加えて3品まで注目できるそうである。顧客に適切なカロリーの料理を提供すると同時に、食べ残しも防げる、というアイデアらしい。
  しかし、レストランに食事に行って体重を計らなければならないことへの抵抗感は大きい。「こちらが金を払って食べるのに、なぜ体重やカロリーのことを店からごちゃごちゃ言われなければならないのか」といった不満の声も上がっている。
(3)
 さらにひどいのが、陝西省西安市のとあるレストラン。客が食べ残したら、そのテーブルを担当した服務員(ウエイトレス、ウエイター)が罰を受ける、という制度を導入した。
  陝西テレビの報道によれば、西安真愛年華中国餐館というレストランは、服務員が適切な料理の注文を取ったかどうかを月給に反映させるシステムを導入。客人が食事を終えたときに、食べ残しが発生していたら、その食べ残し量に応じて、勤務評価にマイナス点をつけるという。そのマイナス点に応じて、ウエイトレス、ウエイターの給料が変わるというわけだ。
  しかし、客が料理を残すのはウエイターやウエイトレスの責任なのか。料理がまずいから残されたとすれば、料理人の問題ではないか。立場の弱い者に責任を押し付けている、という批判が出ている。
  また、「淘宝喫貨」と呼ばれるネット上の食レポ動画には、貴州省貴陽市のあるシシカバブ屋の浪費抑制策が紹介されていた。それは、客が食べ切れなかったシシカバブを回収して、もう一度焼き直して“高温殺菌”して、別の客に出すというやり方だ。しかし、さすがにそれは「受け入れられない」「不衛生」とネットユーザーの間で炎上し、投稿された動画は間もなく削除された。貴州省市場管理監督管理局はネットメディア澎湃新聞の取材に答え、すでにその店は指導を受けて、食べ残し肉の再利用はおこなっていない、としている。
  また、ネット上の動画サイトは、習近平の重要指示後、一斉に「大胃王動画」(大食い動画)を削除し始めた。CCTVが8月11日に、大食い動画の問題点を「深刻な浪費」として批判的に報じたことで、「大胃王」という言葉そのものが、政府に目をつけられる要注意のワードになりつつある。
背景にある食糧危機の恐れ
  習近平の倹約令(八項目規定)は2013年に打ち出されて以降、何度も繰り返し指示が出されてきた。だが、今回の重要指示は、ちょっとレベルが違う印象だ。これまでの倹約令では、ターゲットは公務員であり、公務員が公金を使って高級レストランで食べ切れないようなフカヒレ、アワビ、北京ダックを皿に並べ、飲み切れないほどの茅台酒の栓を何本もあけるような贅沢な宴会を禁止するのが目的だった。だが、今回は明らかに庶民の食生活を念頭に置いている。
  この背景には食糧危機の問題がある、と多くの人たちが感じている。中国当局としては繰り返し、ここ数年連続で中国は豊作である、ということを強調しているが、その公式アナウンスを信じられない気持ちが、「食べ残し禁止令」に対するいびつな反応に現れているのではないだろうか。
  今年(2020年)5月ごろから、中国では食品価格の高騰が目立ち、食糧の買いだめ行為がニュースになっていた。7月に習近平が、中国の穀倉地帯でもある吉林省の松遼平原を訪れ、食糧安全に重要な関心を示したことも、今年の中国は食糧供給に不安があるのではないか、というシグナルになっていた。
(4)
  中国国家糧食物資備蓄局が8月12日に発表した8月5日までの小麦累計購入総数は4285万トンで、前年同期比938万トン減。つまり備蓄用穀物購入が2割減少した。一方、2020年7月の関税当局のデータによれば、今年上半期の小麦輸入量は335万トンで前年と比較すると倍に増えている。同局は今年6月の共産党中央理論誌「求是」上に掲載された原稿の中で、新型コロナウイルス感染症が中国の食糧加工、物流、配送などに影響を与えていることを認め、同時に一部の国が食糧輸出制限措置をとったことで、中国国内に食糧安全に対する関心と懸念が高まっていると指摘。中国の食糧安全はここ数年なかったほどの圧力と試練がもたらされている、としている。
  新型コロナの影響だけではない。80年ぶりと言われる豪雨洪水災害の爪痕も大きい。
  8月13日に中国国家洪水旱魃予防総指揮部の発表したところによれば、今年の洪水被害で600万ヘクタールの農地が被害を受け、うち114.4万ヘクタールの収穫がゼロだという。これがどのくらいの規模かというと、中国全土の今年の早稲の植え付け面積が475.1万ヘクタールとされている。
  同総指揮部の周学文秘書長は会見で「今年の洪水災害が中国の糧食安全に影響を与えることはない」と語っているが、説得力に欠ける。現に7月の食品インフレ率は前年同期比13.2%、うち豚肉価格は前年同期比86%となっている。
  さらに言えば、蝗害(こうがい:バッタなどの大量発生による災害)がすでに中国国内で始まっている。雲南省、湖南省、吉林省、黒竜江省で被害が広がっており、しかも、東北地域や湖南省のイナゴは、中国が当初警戒していたアフリカ、中央アジアからのサバクトビバッタとは違う、中国国内で発生した種類だと言われている。この被害を食い止められるのかどうか。
  とどめを刺すのが米中関係の先鋭化だ。米国産大豆や小麦を輸入できないだけでなく、もしも南シナ海や台湾海峡で米中間の軍事的衝突が起きかねないほどの緊迫した状況になると、「戦時食糧備蓄」の観点から民間の食糧安全はさらに厳しい局面を迎えかねない。
  中国は今でこそ飽食の時代を謳歌し、2013年から2015年までの間、都市部の食物廃棄量は毎年1700万〜1800万トンにのぼっていた。これは3000万〜5000万人の1年間の食事量に匹敵する。だが、ほんの60年前、中国人は数千万人の餓死者を出す激しい飢饉を経験している。飢餓の恐ろしさは日本人よりも骨身にしみているのだ。だからこそ、この重要指示はとても不気味なのである。
  飢えの時代は動乱の時代の始まりだそうなれば日本にも影響は及ぶ。中国で起きている、奇妙なレストランの注文制限などを笑っている場合ではないかもしれないのだ。
 (福島 香織


2020.8.19-JIJI.COM-https://www.jiji.com/jc/v4?id=20200802com0001
怖いのは習政権の暴走、「香港」の次は「台湾」か【コメントライナー】
時事総合研究所客員研究員・信太 謙三

香港の次は台湾か―
  中国で採択された「香港国家安全維持法(国安法)」が7月1日に施行され、銅鑼湾地区のホテルに「国家安全維持公署」が開設された。
  同署は、実質的な中国治安機関の出先で、北京から派遣された公安省や国家安全省のスタッフが、香港市民の民主化運動や反政府活動などを取り締まり、拘束者を本土に連行して、裁くこともできるといわれている。
高圧的な「戦狼外交」
  だが、これは中国が1997年の香港返還に際して約束した「一国二制度」を踏みにじるもので、同法によって、「独立」の旗を振っただけで逮捕される者も出てきており、市民は弾圧を恐れて、なかなか声を上げることができない。
  こうした中国の手荒な手法に対する国際社会の批判は強い。が、中華民族の偉大なる復興」をスローガンとして掲げる習近平政権は、それを無視し、強大な軍事力を背景に、高圧的な「戦狼外交」を展開している。
  台湾では、中国が一気に「武力統一」に出てくるのではないか、と警戒感が高まっている
侵入を繰り返す
  台湾周辺では、中国軍の航空機や艦艇の動きが、急激に活発化している。
  台湾国防部が6月21日に明らかにしたところによると、同月初旬と中旬だけで、台湾の防空識別圏(ADIZ)侵入が7回もあったという。
  また、中国初の空母「遼寧」と護衛艦5隻が4月半ば、沖縄本島と宮古島の間の海域を通過して太平洋に入り、台湾東岸沖を南下。
  台湾とフィリピンの間にあるバシー海峡を抜けて、南シナ海に向かい、その後、再び同海峡を通過して戻っていった
という。
  青島を母港とする「遼寧」が「(1回の航海で)バシー海峡をわざわざ往復するというのは、これまでなかった」といわれ、中国が台湾への軍事進攻に際して想定しているとされる台湾南部からの上陸作戦を視野に入れた行動だった可能性も否定できない。
  これに対し、米軍はイージスシステムを搭載したミサイル駆逐艦を台湾海峡に投入したり、偵察機をバシー海峡経由で、中国本土近くまで繰り返し飛ばしたりして、中国側をけん制している。
  現時点では、米軍が力で中国軍を上回るだけに、中国としても、そう簡単に台湾進攻に踏み切れない
「武力統一」という選択肢
  中国と台湾の話し合いによる「平和統一」は遠のくばかり。台湾の人たちが、香港の状況を見て、中国に失望してしまったからだ。
  1月の総統選では、独立志向の強い民進党の蔡英文女史が大勝し再選された。蔡女史はこの直後、英国メディアとのインタビューの中で「われわれは既に独立国家であり、独立宣言などする必要はない」と強調。
  「開戦の危機を排除できないが、われわれは自衛能力を強化し続けてきており、台湾を侵略すれば、中国は非常に大きな代償を払うことになる」と言い放った。
  香港の「一国二制度」の破綻で、それを前提とする中台の「平和統一」も、完全に吹き飛んだということだ。 中国には今や「武力統一」という選択肢しかない。怖いのは習政権の暴走だ。 (時事通信社「コメントライナー」2020年7月22日号より)
【筆者紹介】
   信太 謙三(しだ・けんぞう) 中国問題に詳しいジャーナリスト。1973年時事通信社に入社。香港特派員、北京特派員、北京支局長、上海支局長として中国に通算15年滞在。96年、優れた報道に贈られるボーン・上田国際記者賞を受賞。2004年から10年間、東洋大学教授。著書に「巨竜のかたち」「中国ビジネス 光と闇」「中国人とつきあう方法」など。


2020.8.8-産経新聞 SANKEI NEWS WEB-https://www.sankei.com/world/news/200808/wor2008080004-n1.html
中国、2日連続でカナダ人に死刑判決 ファーウェイ問題で揺さぶりの見方も

  【北京=三塚聖平】中国広東省の仏山市中級人民法院(地裁)は7日、麻薬製造・運搬の罪に問われたカナダ人被告に死刑判決を言い渡した。中国メディアによると、6日にも同省の広州市中級人民法院が麻薬製造罪で別のカナダ人被告に死刑判決を下した。
   中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)副会長の孟晩舟(もう・ばんしゅう)被告=保釈中=を拘束したカナダに対し、中国政府は「米国の共犯者」と猛反発。中国側は孟被告の早期帰国を求めており、連日の死刑判決はカナダ側への揺さぶりだという見方も出ている
   そうした懸念に対し、中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は7日の記者会見で「中国は法治国家であり、司法機関は厳格に法律に従って独立して事件を処理している」と述べた。汪氏は6日の会見では、死刑判決でカナダとの関係に「影響が出るとは思えない」としていた。


2020.8.5-Yahoo!!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/a8235eadfecf41c3ec757ea7e2c1980b4a1defc5
中国、コロナでも北戴河会議を決行 長老不満も習主席、権力基盤に自信 

  中国共産党の指導部や長老らが中国河北省の避暑地に集まり、重要事項を協議する非公式会議北戴河会議」が5日までに始まったもようだ。米国との対立激化や新型コロナウイルスによる経済的打撃といった内憂外患への対応を協議する見通し。習近平国家主席は新型コロナの影響を名目に会議を中止し、習氏に不満を持つ長老らから政権運営への批判を受けるのを回避することもできた。あえて開催に踏み切ったのは、党をまとめる自らの権力基盤は揺るがないとの自信の表れといえそうだ。
  北戴河の高速道路出口では3日、自動小銃を持った武装警察隊員らが厳戒。身分証を調べ、外国人記者とわかるとパトカーで公安分局(警察署)に連行し、3時間にわたって拘束した。
  「今は適切な時期ではない。言わなくてもわかるだろう」。警察側は記者に北京へ戻るよう要求。交渉の結果、党幹部らが滞在するエリアから離れた海岸や鉄道駅を訪れることだけ警察官の同行を条件に認めた。
  今年は新型コロナの感染防止などを理由に会議を開かないとの観測も出ていたが、こうした厳戒態勢は開催を裏付けるものだ。  ただ街の様子は以前と様変わりしていた。記者が前回訪れた2018年と異なり、今年は党中央への「団結」や「奮闘」を求める政治スローガン自体も激減。簡素化された背景には、新型コロナの経済的影響が深刻で、中南部では洪水被害も広がる中、多数の党幹部らがリゾート地に滞在している現状を国民に知らせたくないとの思惑もにじむ。   北戴河会議は毛沢東時代に始まり、重要政策について党内のコンセンサスを醸成する機会。日程や参加者は公表されず、引退した長老たちは現指導部に意見も表明する。
  ただ消息筋によると、習氏自身は昨年と一昨年は出席しなかった。18年には、習氏による権力集中と個人崇拝的な政治路線に対し、江沢民元国家主席ら長老たちから修正を求める声が上がったとの情報もあるが、習指導部の路線が大きく転換した形跡はない。習氏を現実に引きずりおろす力がある政治勢力は存在せず、習氏は会議を長老らの“ガス抜き”の場として利用しているともいえる。
  今年の北戴河では、10月に開く党の重要会議「第19期中央委員会第5回総会(5中総会)」で議論する21年以降の「第14次5カ年計画」原案などが長老たちに示される見通しだ。5中総会は11月の米大統領選の結果をみて開かれるとの予測もあったが「選挙後も米国の対中政策は大きく変化しないとみて最悪の事態に備えた長期方針を策定する」(北京の政治研究者)もようだ。
  5中総会の10月開催を決定した党中央政治局会議は先月末、「多くの問題は中長期的だ」として「持久戦」を強調した。習氏の党総書記としての2期目任期は残り約2年だが、5中総会では35年までの長期目標も打ち出す予定で、習氏は3期目続投への布石を着々と打っている。(北戴河 西見由章)


2020.7.27-IZA(ZAQZAQ)-https://www.iza.ne.jp/kiji/world/news/200727/wor20072720000008-n1.html
中国「三峡ダム」続く決壊懸念…当局が大量放流なら甚大被害 識者「数万人単位で死者が出ても…」

  中国・長江流域で6月から続く記録的豪雨により、決壊が懸念されている世界最大級の水力発電ダム「三峡ダム」。中国メディアは増水の峠を越したと報じるが、中国では8月にかけて洪水期を迎えるだけに予断を許さない当局が今後もダムの放流を行えば、流域の住民や都市に甚大な被害が出る恐れもある。
  国営通信、新華社によると、22日までに湖北、江西、安徽省など長江流域を中心に27省・自治区・直轄市で延べ約4552万人が被災し、142人が死亡・行方不明となった。家屋3万5000戸が倒壊し、経済損失額は約1161億元(約1兆8000億円)に上った
  80年ぶりともいわれる大洪水によって“爆弾”を抱えているのは、393億立方メートルの貯水量を誇る三峡ダムだ警戒水位(145メートル)を上回る状況が続いており、下流に位置する湖北省武漢にも影響が出ている。
  新華社によると、17日午前にダムに流れ込む水量が毎秒5万立方メートルまで増加し、「長江2020年第2号洪水」が観測された。18日朝には毎秒6万1000立方メートルのピーク値に達し18時間もこの値が続いたが、翌日には水量が減少し、増水の峠を越したと報じている。

  中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」には、被害の大きい湖北省恩施市の様子が画像や動画でいくつも投稿されている。大規模な地滑りが発生し、家屋や田畑が流れている画像や市街地に濁水が流れ込み、自動車がほとんど浸かっている動画、濁流が襲う中、縄のようなものにつかまり救出される動画などが確認できる。
  中国事情に詳しい評論家の石平氏は「大規模な洪水にも関わらず、当局が被害状況を発表するのが早すぎるため信じることは難しい」と語る。実際の被害はもっと大きい恐れがあるというのだ。
  石平氏は、「中国共産党は武漢や南京などの大都市を守るためにダムを放流させる方針で、小さな都市や人の命など何も考えていない。中国の洪水期は7月下旬から8月上旬なので、たいへんなのはこれからだ。数万人単位で死者が出ても闇に葬られる可能性もある」との見方を示した。


2020.7.27-産経新聞 THE SANKEI WEB-https://www.sankei.com/politics/news/200727/plt2007270003-n1.html
芥川賞作家の楊氏インタビュー 新型コロナ拡大の原因は「中国共産党」

  中国共産党の独裁体制を批判する『わが敵「習近平」』を出版した中国出身の芥川賞作家、楊逸(ヤン・イー)氏が27日までに産経新聞の取材に応じ、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の原因は、中国共産党政権の対応と隠蔽体質にあると告発した。楊氏は、香港への統制を強める香港国家安全維持法(国安法)の施行など、中国の香港政策は公権力による迫害」だと断じ、習近平国家主席の国賓来日については「断固反対。国賓の資格があるのか」と語った。
  楊氏は、習体制の中国について中産階級が一定数を超えると政治的に変化すると期待していたが、向かっている方向は逆。どんどん締め付けと独裁色が強くなっている」と指摘した。新型コロナの蔓延(まんえん)は中国共産党の失政による「人災」だと訴える新著を出版した理由については、「何も言わないのは、中国共産党の『共犯者』のようだ。いつか『言っちゃだめ』と脅迫されるかもしれないが、その前に言った方がいいと思った」と説明した。
  楊氏は、国安法を通じた中国当局による香港への直接介入にも強い懸念を示した上で、同法が外国人も対象としていることを指摘し、「貿易問題で米国が中国に制裁したら、中国は報復として香港にいる米国人をいくらでもつかまえることができる。これほど怖いことはない」と語った。
  習氏の国賓来日をめぐっては「まず中国に新型コロナについて説明し、謝罪してもらわないといけない。たとえ国賓として迎えられても一般の日本人には歓迎されない」と述べた。

  楊逸(ヤン・イー)氏 1964年、中国黒竜江省ハルビン市生まれ。87年に来日。お茶の水女子大教育学部卒。2008年、『時が滲む朝』(文芸春秋)で、日本語を母国語としない作家として初めて芥川賞を受賞。11年、日本に帰化。日本大学芸術学部教授。


2020.6.26-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200626/mcb2006262039022-n1.htm
中国当局が言論統制強化 「極左」ユーザーも封殺に加担

  【北京=西見由章】中国当局が言論統制を再び強化している。新型コロナウイルスの感染爆発が起きた1月から3月初旬頃にかけては、当局側の混乱もありインターネット上で政府批判の声が表面化したが、現在は検閲でほぼ封殺。こうした「上からの統制」だけでなく、愛国愛党教育を受けた若いネットユーザーが当局への批判者を集中攻撃する「下から」の言論弾圧も深刻化している。
  「極左集団とネット上のゴロツキたちが湖北省当局を動かした。極左がはびこるなら中国に未来はない
  湖北省武漢の女性作家、方方氏は今月、湖北大が文学部の女性教授、梁(りょう)艶(えん)萍(へい)氏に党籍剥脱と授業禁止の処分を下したことにSNS上で、こう憤った。「極左」とは国内の全体主義的な愛国主義者らを指す。
  事の発端は、方方氏が封鎖下の日々をつづった「日記」をネット上に公開していたことだ。地方当局に批判的な内容で、米国やドイツでの書籍化が決まると「裏切り者」とネットユーザーから中傷を受けるようになった
  梁教授は方方氏を支持。ネットユーザーらは梁教授への攻撃も始め、過去にSNSで、香港デモに参加して転落死した学生を追悼したり、南京事件の中国側発表の死者数を疑問視したりしたことを調べ上げて非難した。糾弾に後押しされた大学当局は「日本や香港に関して誤った言論があった」と梁教授の処分に踏み切った。
  北京の改革派政治学者は、外務省報道官が好戦的な表現を多用している現状に触れ「外務省は国内向けの宣伝機関になってしまった。仮想敵をつくれば国内の問題から目をそらすことができる」と指摘する。
  中国のメディア関係者も「国営中央テレビの司会者は動画サイトを使い、文革期のような激しい言葉で反米機運をあおり立てている」と懸念を示す。
  当局自身も言論の引き締めを図る。今年2月に習近平国家主席の退任を求める公開書簡を発表し、直後に広東省で拘束された法学者の許志永氏は6月20日までに正式に逮捕された。許氏とともに昨年12月、福建省で開かれた人権活動家らの集会に参加し、直後に拘束された弁護士の丁家喜氏も今月19日、国家政権転覆扇動の容疑で正式逮捕されている。


2020.6.9-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/world/20200609-OYT1T50076/
中国、海南島を自由貿易港化へ…香港の役割と重複

  【北京=小川直樹】中国政府は8日、記者会見を開き、南部・海南島で進める自由貿易港」について、2035年までに2段階で整備を進める計画を説明した。改革・開放政策を一段と加速する姿勢を示すことで投資を呼び込み、保護主義や米中経済のデカップリング(切り離し)の動きに対抗する狙いがある。

  第1段階は25年までで、貿易と投資の自由化を基本的に確立する。まず輸入品にかかる関税をゼロにするリストを作成し、許認可を含めた非関税障壁の解消も目指す。第2段階では査証(ビザ)免除の適用拡大や資金、データの安全な移動などに取り組み、国際的に強い影響力を持つ自由貿易港を完成させるという。
  計画は現在、香港が果たしている役割と重複するが、国家発展改革委員会幹部は、香港の代替との見方を否定した。


2020.6.6-産経新聞 THE SANKEI WEB-https://www.sankei.com/world/news/200606/wor2006060031-n1.html
中国企業「香港回帰」で上場続々 米規制回避も…「安全法」の懸念

  【北京=三塚聖平】米国で上場する中国企業による、香港証券取引所への重複上場の動きが相次いでいる。今月には大手2社が上場予定で、インターネット検索大手の百度(バイドゥ)も検討している。新型コロナウイルス流行後に米中対立が先鋭化し、米国で中国企業への風当たりが強まる中で「香港回帰」が注目されているが、香港市場自体の先行きにも国家安全法導入で暗雲が漂う。
アリババが重複上場に先鞭
  6月中の上場予定が伝えられるのは、ネットサービス大手の網易(ネットイース)と、ネット通販大手の京東集団(JDドット・コム)だ。両社とも米ナスダック上場企業で、中国企業の「回帰が加速している」と中国メディアは報じる。先鞭(せんべん)をつけたのは、ネット通販大手のアリババ集団。ニューヨーク証券取引所上場の同社は昨年11月、香港に重複上場を果たした。
  背景には米中対立の資本市場への波及がある。5月20日、米議会上院が、米国で上場する外国企業に米規制当局の監査への協力を義務付ける法案を可決。中国企業への規制強化を狙い、従わなければ上場廃止になるという厳しい内容だ。ハイテク株中心のナスダックも5月に外国企業の新規上場基準の厳格化に動いており、中国企業を念頭に置いた締め付けが米国で強まっている。
  香港ネットメディア「香港01」は、米上場の中国企業について中米対立が日増しに激化するにつれ、米国の政府・資本市場による二重の重圧に直面している」と指摘する。
「熱気冷ますリスクに注意必要」
  国営新華社通信によると、ナスダックに上場する百度の李彦宏会長は、米国で進む中国企業への規制強化について言及した上で、「香港での上場も含めて内部で検討している」と5月下旬に表明。ネット通販大手の●多多(ピンドゥオドゥオ)なども香港重複上場の観測が報じられている。
  香港取引所は昨年の新規株式公開の資金調達額が世界首位で、中国企業を引き付けているとみられる。だが、香港への国家安全法導入で「国際金融センター」の位置付けが揺らぐ恐れも指摘される。香港経済日報(電子版)は「市場の熱気を冷ますリスクに注意が必要だ」と警戒を促す。


2020.6.6-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/business/news/200606/bsd2006061906003-n1.htm
中国富裕層が狙う日本旅館 コロナ禍で割安…オンライン視察

  中国の富裕層が、日本の観光地にある旅館を買収しようとする動きを活発化させている。新型コロナウイルスの感染拡大で客足が途絶えた旅館を割安な価格で手に入れる狙いだ。渡航制限で訪日できないため、日本の代理人を通じた“オンライン視察”で物件の確認に余念がない。香港への国家安全法導入など、習近平政権の強硬姿勢を背景に、資産を保全したい考えも背景にあるとみられる。

  今月2日、神奈川県箱根町から中国本土にいる資産家に物件の情報を送るオンライン視察に同行取材した。日本人の代理人はスマートフォンを手に、中国人の資産家とテレビ電話をつないだ。資産家が流暢な日本語で「今は営業しているの」と尋ねると、代理人は「休館中です」などと説明。スマホのカメラで旅館周辺に広がる緑豊かな景色や客室、大浴場、調理場などを順に動画で撮影し、質問に答えながら様子を伝えた。価格は3億8千万円ほどだという。

  旅館の運営会社によると、新型コロナの蔓延(まんえん)で客室稼働率は昨年の同時期より9割低下した。また昨秋の台風19号による土砂災害で客足が遠のき、採算が合わず売却先を探し始めたという。売却が決まれば資金繰りは一息つけるが、同社の担当者は、「売却で保有旅館の規模は縮小する。手放しでは喜べない」と複雑な表情を浮かべた。
富士山周辺人気…資産、日本に逃避?
  世界で最初に新型コロナの感染が拡大し、経済活動の再開も早かった中国の資産家は、価格が低下している日本や欧米の資産に目をつけている。ホテルや旅館の売買仲介事業などを行うホテル旅館経営研究所によると、特に箱根や伊豆、熱海、富士山周辺に立地する和風旅館が人気だという。旅館を営業する許認可や、企業の代表者が取得できるビザ(査証)の獲得にもつながるのも買収のメリットだ。
  混乱が続く香港情勢を受け、人民元や香港ドル建て資産の急落を危惧し、こうした資産を日本に逃避させる動機もあるようだ。同研究所によると、中国の富裕層による日本の旅館買収の動きが活発化したのは香港の抗議デモが深刻化していた昨年夏頃から。今年5月に香港への国家安全法導入が決まると、代理人による現地視察の要請が相次いだという。

  資産家らは日本入国の制限緩和を見据え、訪日予定を組んで、旅館買収の決済に向けた段取りを進めている。同研究所の辻右資所長は「日本では政府に資産が没収される不安もなく、資金の逃避先として好まれている」と指摘する。
  中国など外国資本による日本の土地買収をめぐってはこれまで安全保障面での懸念が指摘されてきた。しかし、安保やインテリジェンス、近現代史を専門とする評論家、江崎道朗氏は「安保上の投資に関する規制が仮にできたとしても、対象は自衛隊や米軍の基地周辺や水源地に限られるだろう。一般旅館の売買を規制するのは難しい」との見解を示した。(岡田美月)


2020.6.1-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20200601/k00/00m/030/217000c
「断固とした反撃に遭う」 中国、トランプ氏の香港優遇見直しを批判 自制も呼びかけ

  対中批判を強めるトランプ米大統領が5月29日の記者会見で香港への優遇措置の見直しを表明したことに対し、中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)副報道局長は1日の定例記者会見で「香港は中国の香港』であり、純粋に中国の内政に属する。いかなる国も干渉する権利はない」と反発した。趙氏は「中国側の断固とした反撃に遭うとも述べ、報復を示唆した。トランプ氏の会見に、中国当局が公式に反応するのは初めて
   趙氏は会見で、香港への統制を強める「国家安全法制」の新設を「香港における国家の安全に関する立法の欠陥を補うものだ」と改めて正当化。「米国の横暴な干渉は失敗すると決まっている」と、一歩も引かない姿勢を強調した。
   中国では、全米各地で広がる人種差別への抗議デモと、香港の抗議活動を対比する報道が相次いでおり、趙氏も会見で「米国はなぜ香港の暴力分子を『英雄』と美化し、国内で人種差別に抗議する民衆を『暴徒』とみなすのか。明らかな二重基準だ」と皮肉った。
   トランプ氏が世界保健機関(WHO)との「断絶」を表明したことに、趙氏は「米国の利己的な行為は、感染対策を巡る国際協力を破壊する」と非難。「中国は責任ある大国として役割を果たし続ける」と述べた。
   ただ、趙氏は対米批判を展開しつつ「中米は協力してこそ相互に利があり、戦えばともに傷つくだけだ」とも述べ、米国に自制を呼びかけた。中国経済は新型コロナウイルスの感染拡大で大打撃を受けており、経済立て直しのために米国との決定的な対立は避けたいとの本音が透けた形だ。
【北京・河津啓介


2020.5.30-産経新聞 THE SANKEI WEB-https://www.sankei.com/world/news/200530/wor2005300029-n1.html
中国、米の措置に強気崩さず 「香港の役割低下」高くくる

  【北京=西見由章】トランプ米政権が香港への優遇措置の見直しを打ち出したことについて、中国共産党系の環球時報(電子版)は30日の社説で「(米国の制裁を)どこまででも受けて立つ」と強気の姿勢を示した。中国としては、米中対立の激化に伴う悪影響も許容できる範囲内に収まるとの読みがある。
  中国の習近平指導部は香港を「国内問題とみており、「安定」を重視して国家安全法の導入を断行した。香港の反政府デモで混乱が長引けば、党への弱腰批判につながりかねない。
  米国が一国二制度の香港を内政干渉の拠点として利用し、反政府デモを支援しているとの被害者意識を中国側は持つ。国家安全法の導入には、外国の干渉を許さない強い姿勢を誇示する狙いもある。
  中国指導部にとって、香港の繁栄が絶対に手放せないものではなくなりつつあることも大きい
  1997年の返還時、香港の経済規模は中国の約2割に匹敵したが、近年は2%台で推移。2018年には隣接する広東省深川(しんせん)市に名目GDPで抜かれた。英シンクタンクが19年に発表したグローバル金融センター指数によると香港は3位だが、上海が5位、北京は7位と中国本土の都市も順位を上げている。今後、中国本土で金融開放が進めば香港の地位は相対的に低下していく可能性がある。
  香港には多くの米企業が拠点を置いており、中国には、米国が大胆な制裁措置打ち出せないと高をくくっている節もある。


2020.5.28-Yahoo!!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/fff60ad179c65288f2bbff00992a979bfbefbff1
中国、経済再生へ雇用安定重視

  【北京=三塚聖平】28日に閉幕した全国人民代表大会(全人代)は、新型コロナウイルス感染拡大の直撃を受けて急速に悪化した中国経済の立て直しに重点が置かれた。
  失業率の増大は社会不安を招きかねず、雇用の安定が強調された。積極的な財政出動で景気を下支えする。一方、香港の問題をめぐって米中対立が先鋭化し、1980年代からグローバル化を成長の柱としてきた中国経済に影を落としている。
  中国は内憂外患の事態に陥っている。「もし新型コロナがなければ、経済成長目標は6%前後に決めていただろう」
  習近平国家主席は全人代の分科会、内モンゴル自治区の会議に参加し、今年の国内総生産(GDP)成長率目標の設定を見送ったことに関し、こう漏らした。
  これまでのような経済成長が望めない中で、強調されたのは「安定だ。李克強首相は22日、開幕式の政府活動報告で「雇用優先政策は全面的に強化せねばならない」と述べた。
  中国ではかつて成長率1%で100万人前後の新規雇用が生まれるとの見方があった。単純計算で6%成長なら600万人となる。
  しかし、万一、マイナス成長に陥れば新卒者の多くが職に就けず、失業率そのものも大幅に増える。人民の不満や怒りは政府に向かいやすく、習指導部は雇用問題にピリピリしている。
  新型コロナ前に5%程度だった失業率は2月に6・2%、3月に5・9%、4月に6・0%と公表された。ただ、香港メディアによると4月下旬、中国の証券会社が実際の失業率は20%を超えたとの分析を発表し、直後に撤回する騒ぎが起きた。数字の真偽は不明だが、雇用実態は公表数字より深刻な可能性がある。  国内問題に加え、中国経済を根底から揺さぶりそうなのが米国との対立の行方だ。香港問題をめぐり、トランプ米大統領は中国が香港に国家安全法導入を強行すれば、今週中にも中国に対する制裁措置を発表する考えを示している。
  新型コロナ蔓延で世界経済がマヒしている中で、米国と全面衝突すれば中国からの輸出や、海外から中国への投資に打撃となる。外需の先行きも不透明だ。


2020.5.22-JIJI COM-https://www.jiji.com/jc/article?k=2020052200962&g=int
中国全人代、香港版「国家安全法」成立へ 習政権、デモ抑止へ直接統治

  【香港時事】中国で22日に開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、香港に適用する新たな国家安全法」に関する審議が始まった。国家分裂や政権転覆をたくらむ行為を禁じる内容で、習近平政権は言論やデモの自由などが保障される「一国二制度」の香港に対する直接的な統治をさらに強化し、反政府抗議活動を抑え込む狙いだ。
  香港メディアは、全人代最終日の28日に採決され、8月にも施行される見込みだと報じた。一方、香港民主派からは抵抗継続を求める声とともに一国二制度の完全な終わりだ」と絶望感が漂っている。
  全人代冒頭の政府活動報告で李克強首相は「香港の国家安全を守るための法制度・執行メカニズムを確立し、憲法によって定められた責任を香港政府に履行させなければならない」と強調。香港の憲法に当たる「基本法」の付属文書に組み込む形で導入する。
  国家安全法案は、中央政府直轄の監督機関を香港に設置することや香港政府から中央への定期的な状況報告が柱となっている。香港政府トップの林鄭月娥行政長官は22日夜、記者会見し国家安全法の審議を全力で支持する。香港の一国二制度と司法の独立に影響はない」と強調した。


2020.5.22-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200522/k10012440301000.html
中国全人代開幕 経済成長率の数値目標発表せず コロナ影響

  中国で重要政策を決める全人代=全国人民代表大会が始まり、李克強首相は、新型コロナウイルスの感染拡大で経済に大きな影響が出ていることを受けて、例年打ち出している年間の経済成長率の数値目標を、ことしは発表しないことを明らかにしました。中国政府が全人代で経済成長率の数値目標を示さないのは異例です。
  全人代は、3000人近い代表らが出席して、日本時間の午前10時から北京の人民大会堂で始まり、李克強首相が政府活動報告を行いました。
  この中で李首相は、新型コロナウイルスの感染拡大について「習近平国家主席を核心とする指導部の力強い指導のもと、対策は大きな戦略的成果を収めている」と成果を強調しました。
  その一方で「感染症対策の中で多くのぜい弱な部分が表面化し、国民の一部の意見と提案を重視すべきである」と述べ、政府の対応に不十分な点があったことを認めました。
  また例年、全人代で打ち出している年間の経済成長率の数値目標について「予測困難な影響の要因に直面している。経済成長率については具体的な年間目標を提示しない」と述べました。
  中国政府が、全人代で経済成長率の数値目標を示さないのは異例のことです。
  そのうえで新型コロナウイルス対策を実施するための特別国債を1兆人民元、日本円でおよそ15兆円規模で発行するなど、積極的な財政政策で落ち込んだ景気を下支えしていく方針を打ち出しました。
  一方、李首相は抗議活動が続く香港について「国家の安全を守るための法制度と執行メカニズムを確立しなければならない」と述べ、治安維持のための法整備を急ぐ方針を示しました。
  今回の全人代で法整備の審議を進めるとみられ、香港市民の間では、中国政府が直接法律を制定すれば、一国二制度が形がい化するとして警戒感が強まっています。
中国市場 自動車の販売 回復へ
  新型コロナウイルスの感染拡大で世界最大の自動車市場である中国では販売が一時、大きく落ち込みましたが、経済活動の再開に伴って先月には販売台数が前年を上回り、回復に転じています。
  中国の2月の販売台数は、トヨタ自動車や日産自動車、それにホンダで、去年の同じ月に比べて70%から85%の大幅な減少となりました。
  また生産面でも感染が最も深刻だった武漢にあるホンダの工場は、3月中旬までおよそ1か月半にわたり生産がストップしました。
  その後、経済活動が再開されると、地方政府の販売促進策などもあって先月は新車の販売台数が中国市場全体で前の年よりも4%余り増え、回復に転じました。
  日系メーカーでも日産が前の年を1.1%上回ったほか、マツダも1%、トヨタも0.2%の増加とそれぞれプラスに転じていて、日本や欧米で依然として生産調整が続く中、中国市場は回復基調が鮮明になっています。
  ホンダの倉石誠司副社長は今月12日に開かれたオンラインでの決算会見で「直近では政府の消費刺激策の影響もあり市場は活発化している。
  中国は新型コロナウイルスの感染拡大の第2波、第3波も懸念されるが、お客様にはできるだけ早く車を届けられるように力を尽くしたい」と述べました。
  一方、中国の自動車の業界団体は、海外での感染拡大が今後、中国の景気回復にも影響を与えるおそれがあることから、ことしの年間の販売台数が去年より15%から25%程度減少するという、慎重な見通しを崩していません。
経団連会長「今後の動向を注視」
  中国で重要政策を決める全人代=全国人民代表大会が始まったことに関連して、経団連の中西会長は記者団の取材に対し、今後の中国経済や日中間の貿易の動向を注意深く見ていく必要があると言う認識を示しました。
  この中で、中西会長は「中国は、もともと自国のマーケットが非常に大きいので移動制限などの措置が解除されれば、それなりの経済活動は再開するだろう。現に私の会社、日立製作所の中国での操業も、ほぼ復旧している」と述べました。
  そのうえで「日本との間の物の交流は徐々に戻ってくるのではないかと思うが、これからどういう形で進展していくのか、よくウォッチしなければならない」と述べ、中国経済や日中間の貿易の動向を注意深く見ていく必要があるという認識を示しました。


2020.5.18-Sankei Biz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200517/mcb2005171924011-n1.htm
中国で言論人の拘束相次ぐ 全人代を前に新型コロナで批判、不満を警戒

  【北京=西見由章】中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)が22日に北京で開幕するのを前に、共産党政権に批判的な学者やジャーナリストらの拘束が国内で相次いでいる全人代の開催時期は例年、当局による言論統制が強まるが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政権への不満や批判が党内外で広がり、習近平指導部は神経をとがらせている。感染の第2波への懸念も強く、内外の記者の現場取材を大幅に制限する「封鎖式」会議となりそうだ。
  「武漢の地方政府は長期にわたり感染状況を隠し、情報を発信しようとした市民を厳しく弾圧した
  上海在住の法学者、張雪忠氏は10日、全人代の代表にあてた公開書簡をネット上で発表し、当局の対応を厳しく批判した。張氏は、中国で国民に給付金が支給されないのは「政府幹部が選挙で選ばれておらず、民衆の訴えを無視することがより容易だからだ」と指摘。普通選挙の実施規則の制定を要求したほか、国家指導者の直接公選制などを明記した憲法草案を示した。
  張氏は発表翌日の未明、警察当局に一時拘束された。また中国の人権派弁護士グループによると、湖北省武漢で感染状況を調査していた上海出身のジャーナリスト張展氏が14日に失踪した。警察当局に拘束されたとみられるという。さらに香港メディアなどは、言論の自由を求めていた山東省聊城市の詩人、魯揚氏が国家政権転覆容疑で1日に拘束されたと伝えた。
  中国当局が警戒するのは、いわゆる民主派だけではない。武漢での感染拡大の悲劇を受け、習指導部の支持基盤である保守派や左派の間でも「今回は人災だとの主張や、多様な意見を認めるべきだとの声が広がっている」(北京の中国人ジャーナリスト)という。
  さらに、全人代の開催を機に感染の第2波が拡大すれば、習指導部は大きな批判を受けかねない。当局は通常10日以上の会期を1週間に短縮するほか、例年約3000人が参加していた内外記者の取材機会を大幅に制限し、映像配信などによる取材に切り替える方針だ。


2020.5.13-Sankei Biz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200513/mcb2005131853024-n1.htm
中国、体育授業で医療用マスク着用を禁止へ 突然死相次ぐ

  【北京=三塚聖平】中国教育省は13日までに、感染防御効果が高い医療用マスク「N95」を学校の体育の授業中に着けることを禁止する方針を示した。再開が進む中国各地の学校では新型コロナウイルス対策の徹底が求められているが、生徒がマスクを着用したまま激しい運動を行って突然死するという事故が相次いでいた。
  教育省幹部は12日の記者会見で「N95マスクは通気性が悪いため、事故が起きなくても身体に害を及ぼす」と述べ、運動時の着用には問題があると禁止理由を説明した。
中国メディアによると、4月中に河南省や湖南省などで、体育の授業中にマスクを着けて走った中学生が突然死する事故が相次いで伝えられた。
  詳しい死因などについては明らかになっていないが、一部のケースについてはN95マスクを着用していたと報じられている。医療関係者が「子供がマスクを着けて激しい運動をするのは勧めない」と窒息の危険などを注意していた。
  そうした動きを受け、地方政府の一部は体育の授業中についてはマスクの着用は不要とする通知を出していた。
  中国では新型コロナの感染拡大に歯止めが掛かったと判断して、各地で登校を再開させる動きが積極化している。だが「感染第2波」の懸念が根強いため、再開した学校では校内の消毒や体温測定など厳しい防疫措置の徹底が求められている。


2020.5.1-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200501/k10012413311000.html
中国できょうから5連休 延べ1億人以上が旅行などで移動へ

  新型コロナウイルスの感染拡大の勢いを基本的に抑え込んだとしている中国で、1日からメーデーの5連休が始まります。中国国内では、連休期間中、延べ1億人以上が旅行などで移動するとみられ、中国政府は、観光地に入場制限を設けさせるなど、感染が再び拡大しないよう神経をとがらせています。
  中国では、新型コロナウイルスに感染して死亡した人が、2週間以上にわたって1人も確認されていないとされるなど、国内での感染拡大の勢いは基本的に抑え込んだとしています。
  首都 北京では、30日から警戒レベルが引き下げられ、ほかの地域から北京を訪れる際の隔離措置が緩和されました。
  こうした中、中国では、1日からメーデーの5連休が始まり、去年に比べて大幅に減少するものの、中国政府は連休期間中、延べ1億1700万人が旅行などで交通機関を利用して移動すると予測しています。
  また、中国全土で70%近くの観光地が再開していて、北京にある世界遺産の故宮も1日、およそ3か月ぶりに観光客の受け入れを始めます。ただ、室内の展示スペースは開放しないほか、受け入れる観光客は事前予約制にして1日5000人に制限していて、すでに連休中は予約でいっぱいだということです。
  中国の文化観光省の幹部は、30日の記者会見で、観光地では人数制限を設けるなど人が密集しないようにする対策をとるように強く求めていて、感染が再び拡大しないよう神経をとがらせています。


2020.4.30-産経新聞 THE SANKEI WEB-https://special.sankei.com/a/international/article/20200430/0002.html
中国が脱北者を銃撃、重体に 北朝鮮困窮で越境か 双方が警備強める 

  【北京=西見由章】中国吉林省と北朝鮮の国境地帯で4月20日ごろ、川を渡って脱北しようとした男性が中国の国境警備部隊に銃撃され、重体となったことがわかった。複数の地元関係者が明らかにした。新型コロナウイルスの感染拡大で中朝貿易が大幅に縮小しており、北京の朝鮮半島問題専門家は「北朝鮮の深刻な食糧不足などの窮状が、高いリスクを冒す脱北者を生んでいるようだ」と指摘している。
   関係者によると、脱北者は30代の男性。北朝鮮北東部の咸鏡北道(ハムギョンプクト)から国境の川、図們(ともん)江(北朝鮮名、豆満江=トゥマンガン)を渡り、中国側の隊員に銃で撃たれて負傷した。中国当局が延辺朝鮮族自治州和竜市の病院に収容、治療と監視を続けているという。


2020.4.26-産経新聞 THE SANKEI WEB-https://www.sankei.com/world/news/200426/wor2004260013-n1.html
中国で隔離措置長期化の動き 新型コロナ対策で計35日間の地域も

【北京=三塚聖平】新型コロナウイルスへの対応で停滞した経済活動の再開を進める中国で、感染防止に向けた隔離措置の期間を延ばす動きが出ている。首都・北京では施設での隔離終了後、さらに自宅で待機するよう求める措置を新たに始めた。入国者が隔離を終えた後に発症するといったケースが出ていることへの対応とみられ、計35日間の隔離を求める地域もある。
   国営新華社通信によると、北京市政府は18日の記者会見で、指定施設で14日間の集中隔離を受けた人に対し、同措置を終えた後も引き続き自宅で7日間の隔離を行うよう求めた。同市では市外から戻った人などに2週間の隔離を行ってきたが、これが実質的に延長された形だ。
   北京では今月、米国から帰国した中国人留学生が14日間の集中隔離を終え、居住地に戻った2日後に発熱などの症状が出て、その後に感染が確認されるというケースが報告されている。
   市当局者は「ごく一部の感染者は潜伏期間が長い」などと警戒を示しており、そういった事例が隔離措置の長期化につながったとみられる。
   中国誌「財新」(電子版)によると、中国各地でも隔離期間を延ばす動きが続く。南部の広西チワン族自治区は、帰国者と訪問者に対して施設で14日間、自宅で14日間の計28日間の隔離措置を行うと19日に表明。東北部の黒竜江省では、中露国境に位置する綏芬河(すいふんが)の出入境検査所を経た入国者などに対して計35日間の隔離措置を求めていると報じられた。同地域では、ロシアから帰国した中国人の感染確認が相次いでいる。
   隔離措置は経済活動の本格再開を阻んでいると企業関係者が指摘する。だが、中国政府は、海外からの流入者や無症状感染者などによる「感染第2波」を警戒して対応を強化している。


2020.4.21-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200421/mcb2004210647006-n1.htm
中国が南シナ海に新行政区 「西沙区」「南沙区」…コロナ禍乗じて実効支配強化

  【北京=西見由章、シンガポール=森浩】中国政府は20日までに、南シナ海の各諸島を管轄する自治体として2012年に一方的に設定した海南省三沙市について、行政区の「西沙区」と「南沙区」を新設すると発表した。中国政府は豊富な地下資源で知られる南シナ海の海底地形など計80カ所の命名も公表。新型コロナウイルスの感染拡大で各諸島の領有権を争う沿岸国や米国が対応に追われているのに乗じ、南シナ海の実効支配を強める姿勢をあらわにしている。
  中国による行政区新設について、パラセル(中国名・西沙)諸島などの領有権を主張するベトナムは19日、外務省報道官の声明で「これらの動きは無効であり、誰も認めないものだ。不当な決定を破棄し、同様の行為を繰り返さないよう求める」と強く反発した。

  中国民政省によると、西沙区はパラセル諸島のほかスカボロー礁とマックレスフィールド堆(中沙諸島)を管轄し、区政府はウッディー(永興=えいこう)島に置く。スプラトリー(南沙)諸島を管轄する南沙区政府の所在地はファイアリークロス(永暑=えいしょ)礁となる。各諸島の関連海域も管轄する。
   習近平指導部は2014年以降、南シナ海で人工島の造成を本格化させ、軍用滑走路の建設やミサイル、レーダーの配備によって軍事拠点化を進めた。中国政府によると三沙市の人口は約1800人。映画館など生活関連施設も建設して実効支配を強めている。行政区の新設により、インフラ整備や軍事拠点化をさらに加速させるとみられる。
   また民政省は19日、南シナ海の55の海底地形や25の島嶼(とうしょ)・暗礁について命名リストを公表した。中国メディアによると、政府は1983年に287の島嶼・暗礁の名称について公表しており、これを補完する狙いがありそうだ。中国外務省の耿爽(こう・そう)報道官は20日、「中国は西沙・南沙諸島の関連海域とその海底に主権と管轄権を持つ」と主張。海底地形の名称公表は「法に基づき海洋管理を強化する正常な措置だ」と強調した。

パラセル諸島付近では2日、中国海警局の船がベトナム漁船に体当たりして沈没させる事故が発生。ベトナムのほか米国も「新型コロナ対策での忙殺に付け込んでいる」(国務省報道官)と中国を批判した。


2020.4.20-Sankei Biz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200420/mcb2004200726006-n1.htm
不法入国者に懸賞金 中国が露国境のコロナ対策強化

【北京=三塚聖平】ロシアと国境を接する中国黒竜江省で、新型コロナウイルスの感染者が急増している。ロシアから帰国した中国人の感染確認が相次いでいるためだ。中露国境の臨時閉鎖や不法入国者の摘発といった水際対策や、医療体制の整備が進められるなど警戒感が強まっている
  「綏芬河(すいふんが)の阻止戦」
  国営新華社通信は、中露国境に位置する黒竜江省の小都市・綏芬河市の感染状況についてこう強調する。
  中国誌「財新」(電子版)によると、同市の出入境検査所を通じて流入した感染者は16日までに累計357人、無症状感染者は41人を確認。中露間の航空便が減ったため、陸路を使いロシアから中国に戻る人が増えたことが影響している。
  感染者急増を受け、在ロシア中国大使館は中露国境の陸路ルートが全て臨時閉鎖されたと8日に発表。黒竜江省政府は14日、不法入国者を捕まえた場合には賞金を出すとの通知を表明した。通報者には3千元(約4万6千円)、自ら捕まえた人には5千元を支払う。
  医療設備が限られた綏芬河では、感染者急増に対応するためオフィスビルを改修した臨時病院を整備。中国各地から医療従事者や物資の支援も進んでいる。
  新型コロナの震源地・湖北省武漢市では、臨時病院が15日に運用を終えるなど沈静化をアピールする場面が目立つ。一方で、各地では海外からの感染者の「逆流」への警戒が強まるなど、事態収束への難しさが指摘されている。


2020.4.18-産経新聞 THE SANKEI WEB-https://www.sankei.com/world/news/200418/wor2004180040-n1.html
中国、香港の民主化運動弾圧を加速 コロナとの戦いの最中に

【香港=藤本欣也】香港当局が18日、民主派の有力者を一斉に逮捕した。3人の民主党元主席を含む、異例の大量検挙となっただけに、中国当局の指示を受けたか、承認を取り付けた上での逮捕とみられている。国際社会が新型コロナウイルスとの戦いに集中する中、中国の習近平指導部は「香港民主化運動の弾圧」(民主派)に乗り出した。
   「私もついに被告人となるが、少しも後悔はしていない。若者たちと一緒に民主主義の道を歩むことができて誇りに思う」
   英領香港時代から民主化運動に携わり、“香港民主主義の父”とも称される李柱銘氏(81)は保釈後、報道陣に述べた。
   香港では新型コロナの感染者数が1千人を超える中で、9月6日に予定される立法会議員選挙を前に、民主派と親中派の対立が激しくなっていた。
   立法会の内務委員会では、民主派議員らの抵抗で昨年10月以降、委員長を選出できない状態が続く。民主派の目的は、中国国歌を侮辱する行為などを禁じる「国歌法」の早期成立を阻止することにある。
   これに対し、中国政府で香港政策を担当する香港マカオ事務弁公室と、中国の香港出先機関である香港連絡弁公室が今週、「議員の職責を果たせ」などと相次いで非難、香港への干渉を強めている矢先だった。
   今月9日には、超法規的措置を可能にする「緊急状況規則条例」を林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官が発動したことについて、合憲とする上訴審判決も下されている。
   2014年の香港民主化運動「雨傘運動」の元リーダー、黄之鋒氏(23)は18日、「全ての国家が新型コロナと戦っている最中に、中国の独裁体制は香港の民主化運動への弾圧を進めている」とコメント、国際社会に注意を促した。


2020.4.16-産経新聞 THE SANKEI WEB-https://special.sankei.com/a/international/article/20200416/0001.html
「倒産ラッシュ」恐れる習政権

今月5日、中国財政科学研究院・財政と国家治理センター副主任で経済学者の陳龍氏は、「新浪財経」で論考を発表した。「中小企業の“倒閉潮”(倒産・閉鎖ラッシュ)防止は最喫緊の任務」というタイトルである。
   論述によると、今の中国では1月からの新型コロナウイルス感染拡大の影響で、中小企業の倒産・閉鎖が相次ぎ、「倒産ラッシュ」が起きているという。特に状況が悪いのは輸出向けとサービス業の中小企業で、よほど政策手段を講じない限り、2つの分野における大量倒産・失業は避けられない、というのである。
   陳氏の指摘は、国内の実情を実に正しくとらえている。まず輸出向けの中小企業に目を向けると、1月下旬からの全国的な交通封鎖・都市部封鎖の中でほとんどの生産メーカーが操業停止に追い込まれ、大きな損失をこうむった。
   3月になって封鎖が解除され、やっとの思いで生産再開に取り掛かろうとした途端、今度は輸出先の欧米諸国が新型コロナの感染蔓延(まんえん)で消費市場が止まったため、海外からの中国企業への発注が取り消されたり、途切れたりして、輸出向けの中小企業は仕事を失い、大変な窮地に立たされた。こうした中で企業の倒産・休業の動きが全国規模で始まったのである。


2020.4.11-SANKEI BIZ-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200411/mcb2004111306001-n1.htm
中国、新型コロナで127カ国に支援外交 狙う「救世主」の座

【北京=西見由章】中国の習近平指導部が、新型コロナウイルスの感染拡大国への支援外交を強化している。最も早く感染拡大のピークを過ぎた優位性と、従来持っていた豊富な生産能力を活用し、医療物資の不足が深刻化する各国の“救世主”として評価を高めたい考えだ。国際的な影響力の拡大に加えて、当局の初動の遅れが世界的な感染拡大を招いたとする国内外の批判をかわす狙いもある。
  中国外務省の趙立堅報道官は10日の記者会見で、中国が医療用マスクや防護服、ウイルスの検査キットなどの物資を援助した国は127カ国に上ると明らかにした。このほか医療専門家チームをイタリアやセルビア、カンボジア、パキスタンなど11カ国に派遣している。
  医療支援の対象は巨大経済圏構想「一帯一路」に積極的な姿勢を示す親中国の国が大半だ。ただ中国政府は今月、感染拡大が深刻化する米ニューヨーク州に人工呼吸器1000台を寄贈するなど、安全保障や人権分野で対立することも多い米欧諸国に積極的な人道支援を行っている。
  中国は医療物資の輸出にも力を入れており、今月4日まで約1カ月間の輸出額は102億元(約1570億円)に上る。また国営新華社通信によると、医薬品の有効成分となる原薬の輸出は今後、一時的な急増期を迎える見通しで、原薬メーカーの業績に好影響を与える見通しだという。医療関連産業の活況が中国経済の再生を後押しすることへの期待もにじむ。
  一方、中国製品の品質と安全性に対する不信感も一部の国で高まっている。フィンランド政府高官は今月、中国から緊急輸入した医療用マスク約200万枚が品質基準を満たしていなかったとして「失望」を表明した。中国の税関当局は10日、輸出する医療物資の品質検査を開始するなど対応に追われている。


2020.3.22-産経新聞 THE SANKEI WEB-https://www.sankei.com/life/news/200322/lif2003220061-n1.html
4万3千人以上を統計に含めず 中国、無症状者除外と報道

北京=西見由章】香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は22日、中国政府の機密データを根拠に、2月末時点で新型コロナウイルス感染者のうち、約3分の1の4万3千人以上が発熱やせきなどが出ない無症状者だったと報じた。検査で陽性となりながら、統計では感染者に含まれていなかった
   中国政府は2月、無症状者は感染者に含めない方針を発表していたが、無症状者の数は非公表だった。統計で2月末の中国本土の感染者は約8万人。これに無症状者を加えると12万人を超えることになる。
   中国や韓国などは、感染者との濃厚接触者について症状の有無に関わらず検査し、無症状の感染者を割り出して隔離している。このため有症者のみを検査対象としている他国に比べ、感染の拡大を抑制できたと同紙は分析している。  



2020.3.11-SANKEI BIZ-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200311/mcb2003110633010-n1.htm
“迷走”する共産党の宣伝工作 習氏を礼賛した本を緊急出版するも販売中止

【北京=西見由章】中国の習近平国家主席が新型コロナウイルスの感染拡大後に初めて湖北省武漢を視察したのは、感染封じ込めに向けた「人民戦争」の勝利が近いことをアピールし、習指導部の求心力を高める狙いがある。ただ生命の安全を脅かされ移動の自由も厳しく制限された武漢市民を中心に、初動が遅れた当局への反発が広がっており、共産党の宣伝工作は迷走している。
  「人民の素晴らしい主席」「総書記、お疲れさまです」。習氏が武漢入りしたニュースに対するネット上のコメントは、判で押したような礼賛しか見当たらず、強力な規制措置をとったことがうかがえる。
  武漢市民の投稿も次々と削除された。習氏が視察した居住区の住民とみられるユーザーは、自宅ベランダに上がりこんで警戒する警察官2人の写真とともに「また住民が叫ばないか監視している」と投稿した。
  「全部嘘だ!」。武漢で感染対策の指揮をとる孫春蘭副首相が居住区を視察した3月5日、外出が禁止されている住民たちが窓から口々に叫ぶ様子を写した動画がネット上に拡散した。視察では居住区の管理者が食料品を各戸に運び、敷地内のごみをきれいに掃除するなど住民へのきめ細かい配慮を強調したが、食料品の高騰などに悩む住民たちが「パフォーマンスだ」と反発したのだ。
  この問題は、官製メディアも「(表面を取り繕う)形式主義だ」と地元当局を批判。9日には民政省幹部が記者会見で「党と政府のイメージを著しく損なった」と指摘した。
  これでメンツを失ったのは、孫副首相を案内した武漢市トップの王忠林・党委書記だ。王氏は2月中旬に更迭された前書記に代わって起用されたばかり。習氏の武漢視察を控えて焦りもあったのか、6日の会議で「市民を教育し、総書記や党の恩に感謝させなければならない」と発言した。これが報道されると「被害が甚大な武漢市民に恩を感じろとは何事だ」との反発が全国的に拡大した。
  宣伝工作の迷走は、これにとどまらない。党中央宣伝部などは2月末、感染対策にあたって習氏の「卓越した指導力」を礼賛した本「大国戦“疫”」を緊急出版したが、まもなく販売中止に追い込まれた。感染が収束しない中での指導部の“自画自賛本”に批判の声が上がったためだ。
  習氏の武漢入りは、早期の正常化を約束して支持を回復する狙いもありそうだ。


2020.3.8-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200307/k10012319421000.html
新型ウイルス隔離施設のホテル倒壊 10人死亡 中国 福建省

中国南部、福建省で7日夜、新型コロナウイルスの対策で隔離された人たちの滞在先のホテルが突然、倒壊して71人が巻き込まれ、10人が死亡しました。救出活動は現在も続いています。
  国営の新華社通信などによりますと、福建省泉州で7日夜、ホテルが突然、倒壊し、滞在していた71人が巻き込まれました。
  71人は新型コロナウイルスの感染が深刻な湖北省から訪れてきた人たちなどで、経過観察で一定期間、隔離するためにホテルに滞在していたということです。
  現地では救出作業が続いていて、これまでに48人が崩れた建物から救出されましたが、このうち10人が死亡したということです。
  現場の映像では7階建ての建物全体が崩れ落ち、がれきのなかで消防隊員が救助活動にあたっている様子が確認できます。
  ホテルは築7年の建物を2年前に改修してオープンし、その際、壁のなかったフロアに壁を作って部屋にしたほか、ことし1月にはスーパーが入っていた1階の改修工事も行われ、その後も工事が続いていたという情報もあります。
  建物が崩れた原因は分かっておらず、警察は65歳の建物のオーナーを拘束して調べています。
  福建省を管轄する広東省広州の日本総領事館によりますと、日本人が巻き込まれたという情報は入っていないということです。


2020.2.25-産経新聞 THE SANKEI WEB-https://www.sankei.com/life/news/200228/lif2002280088-n1.html
中国、日韓入国者の管理を強化 感染拡大「逆流」を阻止

【北京=三塚聖平】中国各地で、日本や韓国からの入国者に対する管理を強化する動きが広がっている。肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日韓からの入国者に2週間の経過観察を求める地域もある。中国当局は「非常時の非常措置」と強調しており、新型ウイルスが国内に「逆流」することを防ぐ狙いとみられる。
   中国メディアによると、山東省威海市は25日、日本と韓国から同市を訪れる全ての人をホテルに14日間隔離する措置を表明した。1部屋に1人ずつ隔離する。
   外国人が多く住む北京市も管理強化策を26日に表明し、日系企業に動揺が広がった。同市は「疾病状況の深刻な地域」からの入国者に14日間の自宅観察を求めた。日本や韓国を名指しはしていないものの、北京市の不動産仲介会社の担当者は「北京市内のマンションでは、日本から戻った住民に2週間の自宅隔離を求めている」と指摘する。
   中国に次いで感染者数が多い韓国のみを対象にした措置もある。中朝国境地帯の吉林省延辺朝鮮族自治州は24日、韓国からの入国者に対して14日間の隔離措置を行うと表明。同自治州には韓国企業も多く、当局が警戒を強めているもようだ。地元の医師は「入国が制限されていない離れた地域に飛行機で入り、そこから車を使って延辺に入ろうとする韓国企業関係者もいる」と指摘する。
   日本や韓国からの入国者に対する管理が厳しくなることで、企業活動に影響が出る恐れがある。一時帰国中の北京の企業に勤務する男性は「14日間の自宅隔離が必要になるということで、どのタイミングで中国に戻るべきか様子見している」と困惑する。中国政府は企業の事業再開を促しているが、駐在員を戻すことを躊躇(ちゅうちょ)する日系企業も出てくるとみられる。
   中国では湖北省以外での新たな感染が減少傾向となるなかで、海外からという新たな感染ルートを抑える考えとみられる。韓国からは感染リスクを恐れて中国人留学生などが一斉に帰国し、航空券が高騰していると伝えられている。
   中国外務省の趙立堅報道官は28日の記者会見で、入国者の管理強化について「関係国の理解と協力を得られると信じている」と述べた。ただ、中国当局はこれまで世界で広がる自国に関する入国制限の動きを牽制(けんせい)していただけに、説得力に欠ける部分もある。


2020.2.28-SankeiBizhttp://www.sankeibiz.jp/macro/news/200228/mcb2002282246032-n1.htm
中国政府が「新型ウイルス検出」非公表を指示 消されたスクープ

  【北京=西見由章】中国メディアは28日までに、湖北省武漢市当局が「原因不明の肺炎」の発生を公表した昨年末より前に、武漢の病院から検体の提供を受けた民間機関が「重症急性呼吸器症候群(SARS)に似た新型コロナウイルス」を検出していたと報じた。中国政府はその後、関係機関に調査結果などを公表しないよう通知を出したという。1月上旬に武漢を訪問した専門家に対し、医療機関などが「院内感染は起きていない」と虚偽の報告をしていたことも判明した。
いずれも発生初期の中国当局による情報隠蔽を裏付けるスクープ記事だが、現在は各メディアのサイトから削除されている。
  中国誌「財新」(電子版)によると、広東省広州の遺伝子研究機関が12月下旬に武漢の患者から採取した検体の遺伝子情報を解析したところ、SARSに似たウイルスを検出。同27日に政府系機関の中国医学科学院にデータを提供した。他の複数の民間・公的機関も1月2日ごろまでに解析を終えたという。
  しかし中国政府は同3日、検体を調査した各機関に対し、すぐに廃棄するか指定機関に送るよう通知。検査結果は「特殊な公共資源」だとして独自公表を禁止した。当局は9日になり「専門家チームが新型コロナウイルスを7日夜までに検出した」と発表した。
  一方、財経(電子版)によると、1月8日から武漢に派遣された専門家チームの一人が「当時、各病院は調査に対して医療従事者の感染者はいないと虚偽報告した」と証言した。このため「人から人」感染の発生を警告することができなかったという。その後、中国政府の専門家グループトップが「人から人」感染を認めたのは1月20日だった。


2020.2.25-産経新聞 THE SANKEI WEB-https://www.sankei.com/world/news/200225/wor2002250024-n1.html
中国、野生動物の食用を全面禁止 全人代常務委、「悪習」を根絶

【北京=三塚聖平】肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大で、中国の全国人民代表大会(全人代=国会)の常務委員会は24日、野生動物を食べる「悪習」の根絶や違法取引の全面禁止を決めた。湖北省武漢市の市場で扱われていた野生動物が、感染源になった可能性が指摘されているためで、取り締まりを行うなど管理を強化する。
   全人代常務委員会の決定により、ウサギやハトといった人工的な繁殖技術が確立された一部を除いて、陸上の野生動物の食用が全面的に禁止された。違反して野生動物の捕獲や取引などを行った場合には厳しく処罰するという。
   国営新華社通信は「公衆衛生上の安全意識を高める上で重要な意義がある」という全人代常務委員会の担当者の発言を伝えた。
   中国では感染拡大を受け、当局が1月26日に野生動物の取引を一時的措置として禁止。中国メディアによると、野生動物保護法の改正にも動いているほか、各地では野生動物の違法取引の取り締まりにも乗り出しており、中国当局の今月11日の発表によると、1月23日以降に全国の公安当局が押収した野生動物は3万8190匹に上った。全人代常務委員会の決定でさらに対応を本格化させる。
   中国では野生動物を食べるのは「野味」と呼ばれ、北京などでは一般的ではないが、主に南部を中心とした食習慣とされる。2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)では、食用として売られていたハクビシンから人に感染したとの説が有力視された。そのため、ハクビシンなどの野生動物の取引が禁止されたが、その後まもなく解禁された経緯がある。
   中国の専門家は今月24日の記者会見で、コウモリが新型コロナウイルスの宿主で、希少動物の「センザンコウ」が中間宿主であるという可能性を指摘している。これまでに、野生動物も売られていた武漢の海鮮市場から感染が広がったとされているが、現時点では感染源についてはっきりとしていない。


2020.2.24-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200224/k10012299151000.html
中国 全人代 異例の延期が正式決定 感染者7万7000人超

中国では、新型コロナウイルスに感染した人が7万7000人に上り、死亡した人は2500人を超えました。こうした中、来月5日から始まる予定だった中国で最も重要な政治日程の1つ、全人代=全国人民代表大会が延期されることが正式に決まり、感染拡大の防止を優先せざるをえない異例の事態となっています。
  中国の保健当局によりますと、新型コロナウイルスに感染して死亡した人は、湖北省を中心に23日、新たに150人増えて、中国での死者は2592人となりました。新たに感染が確認された人は409人で、中国での感染者は合わせて7万7150人となっています。
  状況が最も深刻な湖北省武漢では先月23日以降、事実上、街が封鎖される措置がとられ、市内から離れることが原則禁止されていましたが、もともと病気を抱えていた人が治療を受けられず、病状が悪化するなどの問題も出ていました。
  このため、武漢の当局は24日、この措置を緩和し、一部の人については市外に出ることを認める通知を出しましたが、わずか3時間余りで撤回されるなど混乱も起きています。
  こうした中、国営の中国中央テレビは、来月5日から始まる予定だった全人代が延期されることが正式に決まったと伝えました。具体的な日程については、全人代の常務委員会が改めて決めるとしています。
  全人代は、全国から3000人近い代表が出席して、向こう1年の基本政策などを決める、中国にとって最も重要な政治日程の1つで、延期されるのは極めて異例です。
  中国では全人代の開催よりも新型コロナウイルスの感染拡大の防止を優先せざるをえない状況となっていて、政治日程にも大きな影響を与えています。
外務幹部 習近平国家主席の訪日は準備粛々
  外務省幹部は、24日夜、NHKの取材に対し、「新型コロナウイルスの感染拡大が終息する見通しが立たない中、中国政府も、しかたのない判断だったのだろう」と述べました。
  そのうえで影響が懸念される、ことし4月に予定されている習近平国家主席の国賓としての日本訪問については、「日本としては、予定どおり行うべく、準備を粛々と進めるしかない。ただ、全人代の日程がいつになるかも含め、今後の中国側の対応を注視していく」と述べました。


2020.2.23-産経新聞 THE SANKEI WEB-https://www.sankei.com/life/news/200223/lif2002230061-n1.html
習近平氏「経済社会への大衝撃は不可避」 感染拡大抑止へ重要講話

【北京=西見由章】中国の習近平国家主席は23日、新型コロナウイルスの感染拡大抑止に向けた会議で重要講話を発表した。「情勢は依然として複雑で緊迫している」とした上で「歯を食いしばって防疫措置を少しも緩めるな」と号令をかけた。また「経済・社会への比較的大きな衝撃は避けられない」と認めつつ、全体的にはコントロール可能だと主張、地域ごとの感染状況に応じて生産再開を進めるよう改めて指示した。
   習氏は「新中国の成立以来、最も伝染速度が速く、感染範囲が広範で、予防制御が難しい公衆衛生上の重大事態だ」と表明。一方で「情勢はよい方向に向かっている」とし、党中央の判断が正確だったことの証だと自賛した。
   一方、湖北省武漢市の病院で新型肺炎の対応にあたり、自らも感染した29歳の女性医師が23日死去した。勤務先の病院が発表した。
   中国国家衛生健康委員会は23日、新型肺炎の感染者が中国本土で累計7万6936人、死者が2442人に上ったと発表した。感染者は前日から648人、死者は97人それぞれ増加した。湖北省を除く地域では1日に増えた感染者数が18人にとどまった。


2020.2.12-東京新聞 TOKYO WEB-https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202002/CK2020021202000112.html
新型肺炎 強まる住民監視 中国政府罰則措置に反発も

【北京=坪井千隼、中沢穣】新型コロナウイルスによる肺炎が広がる中国で、習近平(しゅうきんぺい)政権が住民管理を強めている。発熱などのある人を見つけ、感染拡大のリスクを防ぐためだ。習国家主席は「中国の制度的優位が明らかになった」と共産党による統治の正しさを強調するが、罰則も伴う強硬措置には反発も出ている。
   北京市内の住宅街にある各居住区「社区」の入り口には検問所が設けられ、出入りの際に体温や身分証がチェックされる。十一日に記者が市中心部の居住区に入ろうとすると、「どちらさまですか?」ととがめられた。「封鎖式管理」と呼ばれる監視だ。
   市当局が九日に出した通知によると、住民以外は配達員なども含めて社区の中に入ることはできず、発熱が確認されると当局に報告される。住民でも新型肺炎の発生地から戻った場合は二週間外出が禁止され、健康状態の報告が義務づけられる。特に発生源の武漢市は十日、全世帯を戸別訪問して住民の管理を徹底するとの通知を出した。発熱が確認されると隔離施設に収容されるという。
   共産党機関紙、人民日報(電子版)によると、湖北省滞在歴や健康状態などを隠して感染を広げたなどとして、七日時点で計二十人が公安当局の取り調べを受けた。また、広東省では、感染拡大防止強化の一環として、個人の住宅や車のほか、企業が所有する生活用品などを徴用できる緊急法を制定した。
   こうした厳しい管理に、中国のネット上では「十四日間の自宅待機では仕事に行けず、食べていけない」など不満の書き込みが相次ぐ。当局も行きすぎた管理への批判を意識しており、十一日付の人民日報は「厳格な管理にも人道的配慮が必要だ」との評論記事を載せた。
   新華社によると、習氏は十日、マスク姿で北京市内の病院や市内の街角で行われる監視の現場などを視察。「社区は防疫の最前線だ」と管理の徹底を促し、「疫病に対する人民の総力戦に勝利しよう」とげきを飛ばした。
   新型肺炎に絡み、習氏は最高指導部の会議などで対応を指示してきたが、現地視察は初めてとなる。公の場に姿を見せるのは五日にカンボジアのフン・セン首相と会談して以来。

入国拒否 浙江省も 日本政府検討
 政府は新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、中国浙江省に滞在歴がある外国人の入国を拒否する方向で検討に入った。浙江省でも感染が広がっているとして、既に実施している湖北省からの入国拒否措置の対象を拡大する判断に傾いた。政府関係者が十一日、明らかにした。
  政府は十二日午前、安倍晋三首相と全閣僚が出席する対策本部を官邸で開く。
  中国側の十一日の発表によると、十日までに確認された感染者数は浙江省で千百十七人。日本政府は、感染者数の推移や中国側の対応措置などをみて、浙江省の入国拒否について最終判断する考えだ。
  日本政府は一日以降、入国申請日より前の十四日間に湖北省に滞在歴のある外国人と、湖北省発行の中国旅券を所持する外国人の入国を原則禁止している。浙江省についても入管難民法を根拠に、同様の対応を検討している。邦人は入国拒否の対象とならない。


2020.2.5-産経新聞 THE SANKEI NEWS -https://www.sankei.com/world/news/200205/wor2002050036-n1.html
習近平氏、強権で求心力維持 新型肺炎、幹部ら徹底追及
(1)
【北京=西見由章】肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの中国全土での感染拡大を受け、習近平指導部が強権的な手法を強めている。地方政府が混乱し、当局への批判も広がる中、問題のある幹部らの責任を徹底追及するよう号令をかけた。習指導部の権力基盤がまだ弱かった政権の1期目に、反腐敗闘争で求心力を高めたのと同じ構図だ。
  湖北省党規律検査委員会は4日、同省赤十字社の副会長を免職とするなど3人を処分した。赤十字社が寄付を受けたマスクの種類や病院への配布数の情報公開がいい加減だとして、インターネット上で批判が集まっていた。同省黄岡市では幹部級6人が免職になるなど、公表されているだけで400人以上の地方政府幹部らが処分されている。
  「多数の人が失業に直面している。国が(感染源とされる)野生動物売買をしっかり規制していれば」
  中国のネット上では、当局による削除が追いつかないほど、批判が渦巻く。
  北京の共産党筋は「(感染が発生した湖北省の)武漢では幹部らが責任の押し付け合いに必死だ。全国的に(当局内の)足並みが乱れている」と指摘する。
  習氏は3日の会議で「全国が碁盤の石のように一体とならねばならない」と党中央の統一的な指導を指示したが、トップダウンによる指揮命令系統の乱れも示唆した形だ。さらに「党中央の指示に力を尽くさない者、責任を人になすりつける者」については、本人だけでなく党や政府の幹部も問責する考えを示した。
(2)
国会にあたる全国人民代表大会(全人代)の開幕が1カ月後の3月5日に迫ってきた。米国が拠点の華字サイト「博聞」は「人心鼓舞のため予定通り開催を主張する習派と、延期を訴える李克強首相ら反対派が対立している」と報じた。だが、北京の大学教授は「開催すれば感染拡大の危険があるだけでなく、湖北省や武漢市の代表は出席できないだろう」と指摘した。
  共産党筋は「トップへの信頼度が下がっているのは事実だ」としつつも、「習国家主席の他に重責を担える人物はいない。中枢にいる重鎮も多くが腹心で、大きく権力基盤が揺らぐことはない」と話している。
  一方で、カンボジアのフン・セン首相が5日、北京を訪問した。感染拡大が続く非常事態ながら、この時期にも外交日程をこなせる余裕が習指導部にあると内外に示す思惑が透ける。


2020.1.30-産経新聞 THE SANKEI NEWS -https://www.sankei.com/world/news/200130/wor2001300029-n1.html
休業続く飲食店、春節映画延期…新型肺炎で中国経済大打撃
(1)
【北京=三塚聖平】感染拡大に歯止めがかからない新型コロナウイルスによる肺炎の影響で、中国経済の悪化が懸念されている。中国政府は感染拡大を防ぐため強硬措置を相次ぎ打ち出しており、消費需要が冷え込み、小売りや娯楽、旅行業などが打撃を受けている。今年1~3月期の国内総生産(GDP)成長率の大幅減速は不可避とみられ、米国との貿易戦争の傷がまだ癒えない中国経済の新たなリスクになっている。 
「既に非常事態に入っている」
 香港経済日報(電子版)は、中国経済に関するこのようなエコノミストの見方を伝える。中国政府は、新型肺炎の「震源地」となっている湖北省武漢市での事実上の封鎖措置や、海外旅行を含む全ての団体旅行を一時停止するといった強硬措置を矢継ぎ早に表明し、なりふり構わず感染拡大を防ぐ構えを見せている。
 現在、最も悪影響を受けているのは消費だ。感染拡大を防ぐため不要不急の外出を避けることが推奨されている上、春節(旧正月)の休暇延長措置で多くの小売店や飲食店が休業期間を延長している。春節の消費はその年の消費動向を占う指標とされているが、今年はどこまで落ち込むか見通すことができない。
 映画産業の苦境も深刻で、春節に合わせて公開予定だった7作品の上映が延期された。近年は春節期間に映画館に足を運ぶのが風物詩で、中国証券報(電子版)によると今年の春節期間中の興行収入は70億元(約1100億円)前後が見込まれていた。
(2)
製造業の悪化も予想される。事実上の封鎖措置が続く武漢は自動車産業などの集積地で、事態が長期化すればサプライチェーン(供給網)がダメージを受ける。また、上海市は市内の企業を2月9日まで休業とする措置を発表しており、日本をはじめとする外資系企業の生産拠点も影響を受けるとみられる。
   重症急性呼吸器症候群(SARS)の直撃を受けた2003年4~6月期のGDP成長率は9.1%で、直前の1~3月期(11.1%)から2ポイントも落ち込んだ。今回も同様の景気減速が見込まれる。
   貿易戦争の影響で、19年のGDP成長率は6.1%と29年ぶりの低水準だった。3月の全国人民代表大会(全人代)で公表される20年の成長率目標は「6%前後」との予測もあるが、今回の事態を受けてさらに低くなる可能性もある。


2020.1.16The Liberty Web-https://the-liberty.com/article.php?item_id=16691
プラハと台北の姉妹都市協定に中国反発 プラハ市長「中国は信頼できないパートナー」

中国・上海市政府は14日、チェコの首都プラハ市との友好都市関係を解消し、公的な交流を中断する意向を発表した。この決定は、プラハが13日に台湾の台北市と姉妹都市協定を結んだことへの対抗措置となる。
   上海市政府は声明で「無責任に中国の内政に干渉し、公的に『一つの中国』原則を挑発してきた」「政府と人民は強烈な非難と厳正な抗議を表明する」などと反発した。
   一方のプラハのフジブ市長は、12日付の独週刊紙ウェルト日曜版への寄稿で、中国との関係を断絶する気はないとしつつも、同国を「危険で信頼できないパートナー」と批判。「脅威や脅迫を前にして、自らの価値観や誠実さを放棄しないよう皆に求める」と呼び掛けた。中国への対抗の意思表示のためか、プラハの市庁舎には、チベットの旗が掲げられた。

揺れるチェコ
チェコは、中国の経済圏構想「一帯一路」の覚書に署名し、対中関係を前進させる意思を示してきた。中国とヨーロッパを結ぶ鉄道計画にも参加すると見られている。それだけに、姉妹都市提携についてチェコ外務省は、「プラハが決めたことであり、国の判断ではない」と弁明した。
   その一方で、チェコは2018年に、東ヨーロッパ諸国として初めて、安全保障上の理由により、中国企業ファーウェイとZTEの排除を決めた。ファーウェイは同国で、顧客情報を中国大使館に提供し、事実上のスパイ活動を行っていたことも判明している
   チェコの対中政策は揺れていると言えよう。

 チェコは中国・香港の民主化運動のモデル
だがチェコの過去を振り返ると、共産主義への戦いが歴史に刻まれている。
   東西冷戦中に、旧チェコスロバキアで起きた民主化運動「プラハの春」。民主化の活動家が自由化や西側諸国のシンボルだったジョン・レノンが亡くなったことを悼み、レノンの歌詞を壁に書いた「レノンの壁」。言論の自由や信教の自由などの基本的人権を擁護した文書「77憲章」。
   いずれも、中国や香港の民主活動家に影響を与えている。例えばプラハの春は、78年に起きた民主化運動の「北京の春」に、77憲章は、ノーベル平和賞を受賞した故・劉暁波(りゅう・ぎょうは)の「08憲章」に、それぞれ影響を与えている。
   チェコはそうした反共意識に目覚め、反中国の姿勢を鮮明にすべきだろう。
   台湾の蔡英文総統が総統選に勝利した直後に、自由や民主主義を守る決意を示したプラハの判断を歓迎したい。日本はこの決定を支持し、一帯一路にのみ込まれつつある東ヨーロッパから共産主義を排除する運動を支えたいところだ。
(山本慧)


習近平
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習 近平(しゅう きんぺい、シー・チンピン、簡体字: 习近平拼音: Xí Jìnpíng〈シー・ジンピン〉、1953年6月15日 - )は、中華人民共和国政治家
  第5代中国共産党中央委員会総書記、第6代中国共産党中央軍事委員会主席、第5代中華人民共和国最高指導者2012年11月15日から)、第7代中華人民共和国主席(在任: 2013年3月14日 - )。
  胡錦濤総書記引退後の最高指導者であり、2012年より中国共産党中央委員会総書記、第17期・第18期・第19期中国共産党中央政治局常務委員、第6代党中央軍事委員会主席2013年より国家主席、国家軍事委員会主席を務めており、中央国家安全委員会中央網絡安全和信息化委員会中央軍委連合作戰指揮中心中央全面深化改革委員会中央全面依法治国委員会中央審計委員会中央軍民融合発展委員会の主席と主任を兼務している。中国共産党での序列は第1位
経歴
  1953年陝西省で生まれた。1965年中学校である北京市八一学校に入学したが、1966年文化大革命の発生により、学校が解散された。このことにより習の学校教育が中断された。習は世界最強の囲碁棋士の一人に数えられる聶衛平と北京25中学からの友人で、聶によれば人民解放軍少将の劉衛平との3人で「北京25中学の三平」と呼ばれていたとされる八大元老でもあった父、習仲勲が迫害された文化大革命において反動学生として批判された。紅衛兵によって十数回も批判闘争大会に引き出され、四度も監獄に放り込まれた。
  1969年から7年間、陝西省延安市延川県下放されるなか、1974年中国共産党に入党した。下放された同地で生産大隊の党支部書記を務めている。1975年、時は文化大革命の期間中で、全国普通高等学校招生入学考試が中断しており、中学1年以降に正式な教育を受けていない。しかし、「工農兵学員」という模範的な労働者や農民、兵士(個人の政治身分)の推薦入学制度を経て、国家重点大学清華大学化学工程部に無試験で入学し、有機合成化学を学んだ。
  1979年に同大学を卒業した後、国務院弁公庁および中央軍事委員会弁公庁において、副総理および中央軍事委員会常務委員の耿飈の秘書をかけ持ちで務めた。1985年アメリカ合衆国を視察で訪問して、当時のアイオワ州知事で後に駐中国大使のテリー・ブランスタッドと親交を結んでホームステイをした。1998年から2002年にかけて、清華大学の人文社会科学院大学院課程に在籍し、法学博士学位を得た。
  しかし、海外の複数メディアから、論文の代筆の疑惑が報じられている。廈門副市長、福州市党委員会書記を経て、2000年福建省長となった。2002年11月、張徳江に代わり49歳で浙江省の党委書記に就任し、この時期に浙江省軍区党委員会第一書記、南京軍区国防動員委員会副主任、浙江省国防動員委員会主任を兼任した。2006年上海市で大規模な汚職事件が発覚し、当時の市党委書記の陳良宇が罷免された。翌年の2007年3月24日、書記代理を務めていた韓正(上海市長)に代わって上海市党委書記に就任した。これにより、第17期の党中央政治局入りは確実とみられた。

  同年10月の第17期党中央委員会第1回全体会議(第17期1中全会)において、一気に中央政治局常務委員にまで昇格するという「二階級特進」を果たし、中央書記処常務書記、中央党校校長に任命された。上海市党委書記は兪正声が引き継いだ。中央党校校長時代は「幹部は歴史を学べ。世界四大文明の中で中華文明だけが中断せずに今日まで続いている」と述べた。後年にエジプトイラクインドなどを集めた「世界古代文明フォーラム」の共同設立を唱える習の歴史観や思想戦略が既に形成されていたとされる
  2008年3月15日、第11期全国人民代表大会第1回会議で国家副主席に選出される。2009年12月には国家副主席として日本を訪れ、環境に優れた先進技術施設として安川電機産業用ロボット工場を視察した際に経営陣から伝えられた創業者の安川敬一郎孫文ゆかりの逸話に感銘を受けて「とても感動した、我々はこの日中友好の伝統を受け継いで発揚するべきだ」と発言して中国の公用車である紅旗の組立用につくられたロボットの披露に拍手をおくった。一方で訪日のなかで起きた天皇特例会見の問題は日本で論争を巻き起こした。

政治局常務委員
中国共産党第17期政治局常務委員には胡錦濤直系である中国共産主義青年団(共青団)出身の李克強も習と同じ第5世代の中核として選出され、習と李のいずれかがポスト胡錦濤となると見られたが、習が李よりも党内序列が上であること、また、胡自身も党総書記就任までの2期10年を中央書記処書記として経験を積んだことを考えると、習がポスト胡錦濤に一番近い存在であった。なお、習はかつて中央軍事委員会弁公庁秘書や南京軍区国防動員委員会副主任などを務めており、第17期政治局常務委員で唯一国防文官の経歴を有する人物であった。このことは習と軍部(中国人民解放軍)との結びつきを強める一因ともなった。
  2010年10月18日、習近平は第17期5中全会で党中央軍事委員会副主席に選出された。中国共産党中央軍事委員会は、共産党が国家を領導するという中国の政治構造上、事実上の最高軍事指導機関である。副主席として党中央軍事委員会に入ったことで、習は胡の後継になることが事実上確定した。

  さらに同月28日、全国人民代表大会常務委員会の決定によって国家中央軍事委員会副主席に就任した。しかし、習が党中央軍事委員会副主席の地位を獲得するまでには紆余曲折があった。2009年9月の第17期4中全会で党中央軍事委員会副主席に選出されるという見方があったが、結局選出されなかった。その理由として、背後で胡直系の共青団出身の李克強を推そうとする勢力と、江沢民系の上海閥(上海幇)と呼ばれる勢力との間に生じた権力闘争が原因だとする見方があった。これによると、習は上海閥の流れを汲む人物であり、共青団系の勢力が躍進している現在においては党内基盤が弱くなっているというものだった。
  しかし、江沢民だけでなく、共青団系で最長老の一人である宋平も習の強力な後ろ盾になったとされる。結局、2010年10月の第17期5中全会で習は党中央軍事委員会副主席に選出され、胡の後継者としての地位を確立した。これは各派閥の妥協の結果とされ、特定の派閥というよりは軍部の強い支持を受けてのものとされる。習を支える陝西閥(陝西幇)、陝軍之江新軍などの習近平派は後に台頭することになる。
5代目最高指導者
  2012年11月の中国共産党第十八回全国代表大会を以て胡錦濤・温家宝ら第4世代の指導者は引退し、11月15日に開催された第18期1中全会において習近平は党中央政治局常務委員に再選され、党の最高職である中央委員会総書記と軍の統帥権を握る党中央軍事委員会主席に選出された。習近平の総書記就任には台湾馬英九総統中国国民党主席の名義で異例の祝電を打っている。2013年3月14日、第12期全人代第1回会議において国家主席国家中央軍事委員会主席に選出され、党・国家・軍の三権を正式に掌握した。翌日、李克強を国務院総理首相)に任命し、中国共産党の第5世代である習・李体制を本格的に始動させた

  2014年1月24日に開催された党中央政治局会議において、「中国共産党中央国家安全委員会」の設置と習の同委員会主席就任が決定された。この組織は国家安全に関する党の政策決定と調整を行い、国内治安対策も掌握する。そのため、党中央国家安全委員会は外交・安全保障・警察・情報部門を統合する巨大組織となり、同委員会主席を兼任した習に権力が一層集中することとなる。一方、李克強が主導する国務院の影響力低下の指摘もある。
  2017年10月の中国共産党第十九回全国代表大会と第19期1中全会では、第6世代から政治局常務委員を選ばず、より自らに権力が集中した2期目の習李体制を発足させ、党規約には「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」(習近平思想)を明記させており、個人の名を冠した思想は鄧小平毛沢東以来とされる。習政権では企業に共産党組織を設置する「党建」を推し進めて企業への統制を強めており、2017年時点で党組織は国営企業に9割で民営企業でも5割超に達し、外国企業の7割にも党組織が設立されており、3時間21分に及んだ第19回党大会での演説でも「党政軍民学、東西南北中、党に全てを領導させる」と述べてさらなる統制強化を示唆している。また、この発言の「党領導一切」の他、習が唱えてきた一帯一路中国の夢人類運命共同体四つの全面四つの意識や「強国」「強軍」といったフレーズなども党規約に盛り込まれた。

  2018年3月11日、全人代は、国家主席と国家副主席の任期を2期10年とする制限を撤廃して習近平思想を盛り込む中華人民共和国憲法改正案を賛成2958票・反対2票で成立させた。この改憲案をめぐっては中国国内外で波紋を呼び、中華民国大総統から中華帝国皇帝に即位した「袁世凱」や「洪憲」(袁世凱の定めた元号)「張勲復辟」(張勲廃帝である愛新覚羅溥儀を復位させた事件)「登基」(皇帝即位の意)「倒車」(時代への逆行の意)などといった言葉が中国ではグレート・ファイアウォールで規制された。17日に習近平は国家主席に全会一致で再選され、定年で党政治局常務委員を退いていた盟友の王岐山も反対は1票のみで国家副主席に選ばれ、ともに任期は無制限となった習国家主席と王国家副主席による「習近平核心体制」(習・王終身体制)が事実上確立したとする見方もある
外交・軍事
  2013年3月17日、第12期全人代第1回会議の閉会式において習は国家主席として就任演説を行い、「中華民族は5千年を超える悠久の歴史を持ち、中華文明人類に不滅の貢献をしてきた」「中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現するため引き続き奮闘、努力しなければならない」と述べてナショナリズムを鮮明にし、外交政策においてはヨーロッパまで及ぶ広大なシルクロードを勢力下に置き、鄭和の艦隊がアフリカの角にまで進出したかつての中国の栄光を取り戻すという意を込めて巨大な経済圏構想である「シルクロード経済ベルトと21世紀海洋シルクロード」(一帯一路)を打ち出した
  習は第18期として初の党中央政治局会議を主宰し、胡錦濤前指導部のスローガンであった「『小康社会』(いくらかゆとりのある社会)の建設」を全面的推進を確認して、前指導部の路線継承を示した。同日、中央軍事委員会拡大会議に出席した習は、軍に対し「軍事闘争の準備が最も重要という立場を堅持し、国家主権、安全、発展の利益を断固守らなければならない」と強調した。軍事政策では富国強兵の策として設置した「中央軍民融合発展委員会」の主任に就いて中国の軍需産業を強化してアメリカ合衆国に次ぐ世界2位の規模となり、第一列島線の重視や真珠の首飾り戦略を引き継いで南シナ海での人工島建設など中国の海洋進出を強硬に推し進め、経済的には中国がアメリカを購買力平価で上回る世界最大のGDPとなり富裕層中産階級の数でアメリカを超える一方、アメリカに莫大な対中貿易赤字をもたらし、軍事力と経済力を高める習政権下の中国はアメリカとの貿易摩擦など軍事・経済両面で広範にわたる米中対立を引き起こして米中冷戦米中貿易戦争とも呼ばれることとなった

  習が党中央軍事委員会副主席に就任して以降、中国は北朝鮮の核開発を批判しなくなるなど、中国の外交に明らかな変化が現れたとされる。例えば、胡錦濤政権において国務院総理(首相)を務める温家宝は、様々な外交問題で保守派から「弱腰」と批判されたり、政治改革の断行を訴えたことなどで党内で温は孤立してしまっていると言う。温自身、2010年11月中旬にマカオを訪問した際、任期を半期残した段階で自身の引退について述べており、「権力闘争に敗れ、意気消沈していることの現れである」とする香港紙もある。
  また、習が副主席に就任して以降は、北朝鮮のような独裁国家を擁護したり、豊富な資源を有する発展途上国と「国益」と言う観点から結びつきを強めているとされる。副主席就任後に北朝鮮を初の外遊先に選んで金正日と会談するなど習は当時の北朝鮮の金正日政権とは一定の関係を築いたものの、金正恩体制からは張成沢の粛清と党総書記就任後の習の韓国訪問に始まり、国連の対北経済制裁決議で米中は一致し、訪中した崔竜海の冷遇と対照的な韓国の朴槿恵大統領の厚遇や訪朝した劉雲山の映像削除など中朝関係の冷却化が伝えられた一方で中朝友好協力相互援助条約による軍事同盟や経済的には北朝鮮が貿易の9割超も中国に依存する関係を続け、2018年3月に最高指導者就任後初の外遊で訪中を「当然の崇高な義務」と表明した金正恩と初対面してからは「きみ」()「あなた」()と呼び合い、同年6月に行われた史上初の米朝首脳会談の際は移動用に政府専用機を金正恩に貸し、習の誕生日に中朝の血盟を強調する祝賀をおくった金正恩は翌2019年の自らの誕生日まで4度も訪中し、同年6月に中国の指導者としては14年ぶりに訪朝した習に殆ど同行して習の顔を描いたマスゲームで歓待するなど友好ぶりをアピールした。
  2019年3月、習は2019年最初の外遊先にイタリアを選び、コリエーレ・デラ・セラへの寄稿でローマ帝国とのシルクロードや北京大都)でクビライに謁見したマルコポーロなどを引き合いにイタリアとの歴史的な繋がりを強調し、イタリアは先進7カ国(G7)で初めて習の唱える「一帯一路」に協力する覚書を締結する国となった。
中台首脳会談
  習は、2015年11月7日に台湾中華民国)の馬英九総統と、シンガポールシャングリ・ラ・ホテル・シンガポールで史上初の首脳会談を行い(1945年蒋介石毛沢東重慶会談は中国と台湾が分断される前に行われた)、両首脳は、中国大陸と台湾がともに「中国」に属するという「一つの中国」原則を確認した「92コンセンサス(九二共識)」をもとに、ホットラインの開設など平和的な関係を築く考えで一致した。
  習指導部は、2012年の発足以来、「中華民族の偉大な復興」という壮大な目標を掲げた。その最終目標といえるのが、中台統一である。歴代指導者がこれまで切り開いてきた対話を首脳レベルに引き上げ、次の指導者に引き継がせる意味もある。中国は近年、台湾に経済的恩恵を与えることで台湾をひきつけようとする政策を採ってきた。2014年3月に台北で起きた「ひまわり学生運動」や同年秋の台湾統一地方選挙における与党・国民党の敗北は、中国政府に衝撃を与えたが、習指導部は、「経済」という切り札を握る自信から、「現状維持」を保ちつつ、台湾市民の抵抗が和らぐのをじっくりと待つ構えだった。
  松田康博は、この首脳会談は2016年1月に行われた中華民国総統選挙および第九回中華民国立法委員選挙への中国側による選挙介入であり、台湾の有権者の反発を招くのではないかと述べた。
内政
  2013年には、共産党機関紙の廈門市の記者が、習近平の名前を一文字間違えたという理由で、停職処分を受けている。2014年6月18日には、習近平指導部が「正しく世論を導くシステムを整える」として「記者の資格制度を厳格にする」という方針を発表するなど、メディアへの圧力、言論弾圧を強めている。海外メディアに対する厳しさも強くなっており、NHKによれば、取材の妨害や記者の一時拘束などが非常に増えているという。また、弁護士浦志強ウイグル独立の主張には賛同しない穏健派ウイグル人学者のイリハム・トフティジャーナリスト高瑜など、理性的な方法で社会改革を訴えてきた者たちの逮捕が続出しており、無期懲役などの厳しい判決を受けている。
  2014年10月20日、第18期中央委員会第4回全体会議においては「全面依法治国」として法治主義を掲げて「法治」という言葉を58回も使って中国を人治国家から脱却させることを訴えた。この四中全会では胡錦濤前指導部の掲げた徳治主義的な路線にも配慮して「法による国家統治と徳による国家統治を結合する」と決定した。習近平体制になってから「法治」は政府の様々なキャンペーンでの標語となっている。中国公民の「非文明行為」(規律や社会秩序を無視する行為)に対して胡錦濤体制では電光掲示板などで八栄八恥としてモラルやマナー意識の向上を呼びかけていたが、習近平体制からは街頭ビジョンなどで個人情報晒しまで行うといった法的な責任を負わせるようになった。

  2016年4月28日、全人代は、中国国外とつながるNGOが中国の体制をおびやかすという習指導部の警戒感を強く受け、「海外NGO国内活動管理法」を成立させた。同法は習指導部の下で審議が始められた。「海外NGOの活動に法による保護を与える」とうたう一方、海外NGOが「中国の国家安全や国家利益を損なってはならない」と定めた海外NGOの監督を警察当局に担わせると明記し、NGOへの捜査権限を与え、国家分裂や政権転覆などを企てたと見なせば刑事責任を追及し、中国での活動を二度と認めない。資金の流れや中国人スタッフの管理も厳しくする。海外NGOと交流のある国内NGOにも監視が及ぶため、中国の大半のNGOが影響を受けると日本メディアが報じた。
  2016年11月7日、全人代は、「サイバー主権」と称する国家主権をサイバースペースに確立するとして「インターネット安全法」を成立させた。自ら設立した「中央インターネット安全情報化指導小組」で主任を務める習が管轄している中国サイバースペース管理局による情報統制が正当化される内容から人権団体などから懸念を呼んだ。2014年からは烏鎮ロシアなどの各国首脳やアリババテンセントソフトバンクアマゾンマイクロソフトフェイスブックアップルグーグルといった国内外のIT大手企業の経営者などや「インターネットの父」の一人であるロバート・カーンも集めて中国のネット検閲を正当化する世界インターネット大会を定期開催している。
  2017年4月、習の主導する「千年大計」(1千年にわたる大計画)として河北省雄安新区を設置した。

  2017年6月、全人代は、国内外の個人と組織の監視調査を正当化する「国家情報法」を成立させた。2010年から中国では治安維持費が国防費を上回る規模で投じられており、国家規模では世界に先駆けて治安対策への人工知能(AI)の本格的利用も表明し、AIにネット検閲や刑務所の囚人から横断歩道の歩行者の監視まで行わせ、企業や軍で働く人間の脳波と感情をヘルメットや帽子などのセンサーからAIで監視するシステムを政府は支援し、警察は顔認証を行うAIと連動したサングラススマートグラスロボットで群衆を監視するようになり、国営放送中国中央電視台(CCTV)では習の功績として世界最大の1億台を超えるAI監視カメラで構築された天網が称賛され、社会信用システムと習の思想を学ぶクイズアプリで中国国民をランク付けし、習政権は黒科技と呼ばれるハイテクを駆使して国内のより高度な管理社会監視社会化を推し進めた。海外メディアは「頂層設計」と中国共産党で呼ばれているこの習政権の政策を「デジタル権威主義」「デジタル独裁」「デジタル警察国家」「デジタル全体主義「デジタル・レーニン主義」と評し、その技術を世界各国に輸出して中国のように人権抑圧に利用される可能性も懸念された。
  2019年10月、第19期中央委員会第4回全体会議で「AIやビッグデータなどで国家統治のシステムと能力を現代化する」として監視社会・管理社会化をより推し進めることを決定した。さらにこの四中全会では「一国を優先する一国二制度」「愛国者を主体とする港人治港」も明記された。習政権では粤港澳大湾区(大湾区)構想や広深港高速鉄道港珠澳大橋の建設など中国本土と香港の一体化が強化されており、2019年逃亡犯条例改正案が提出された際は香港で大規模な抗議デモ(2019年-2020年香港民主化デモ)を引き起こした。
汚職対策
  2012年11月15日の第18期1中全会終了後、党総書記として初の記者会見に臨んだ習は就任スピーチで、深刻化している党員の汚職問題に取り組み、社会保障の改善など民生を重する姿勢をアピールした(中共十八大以来的反腐败工作=反腐敗キャンペーン)。しかし、トランスペアレンシー・インターナショナルが2014年12月3日に発表した2014年の腐敗認識指数で、中国は2013年の80位から100位に後退した。トランスペアレンシー・インターナショナルは、腐敗摘発が「政敵の追い落としを目的にしている」と指摘している。
  2013年1月の中国共産党中央規律検査委員会全体会議上、習近平は「大トラもハエも一緒にたたけ」と反腐敗の号令をかけた。党内の腐敗が中国という国を滅ぼすとの強い危機感を訴え、汚職・腐敗の撲滅が共産党政権の安定と継続を保証するとの硬い決意で取り組み始めた2014年3月、かつて軍事委員会副主席などの要職を歴任し、制服組のトップに君臨した徐才厚が摘発され、同年6月党籍剥奪処分を受けた。徐は刑事裁判あるいは軍事裁判にかけられる予定だったが、前制服組が規律違反あるいは汚職の罪で処分を受けるのは前例のないことであった
  そして、「刑は常委に上らず」(「刑不上常委」、礼記の「刑不上大夫」から出た言葉、政治局常務委員経験者は刑罰を受けないという意味)という鄧小平以来の慣例を打ち破り、汚職・腐敗摘発の本命でもあった周永康元政治局常務委員が、2014年10月の政治局会議において、規律違反・機密漏洩などの罪状で立件が決定し、同年12月はじめには、党籍剥奪の処分をうけ、正式に逮捕された。
  さらに2014年12月末、胡錦濤前総書記の側近であった前中共中央弁公庁主任の令計画(全国政治協商会議副主席、党中央統一戦線工作部長、中央委員)が「規律違反容疑」で失脚した。前党総書記の秘書にまで、習近平の「汚職・腐敗摘発」の対象となったわけである。またさらには、これまで「聖域」であった軍にも及ぶ。徐才厚に続き、軍事委員会副主席経験者である郭伯雄も摘発された。その他の摘発された高官として、薄煕来重慶市党委員会書記)、周本順(河北省党委員会書記)、蘇樹林(福建省長)らがいる。規律違反で処分した党幹部は、2013年で約7700人、2014年で約2万3600人、2015年で約3万4000人である。反腐敗を掲げてから3年後の2016年1月ごろには、薄受刑者や周永康受刑者のような政権中枢にいた「大トラ」退治は一段落したという見方が党関係者や外交筋には広がっている
  習近平は2016年の最初の視察先に薄元書記の「独立王国」と呼ばれた重慶を選び、薄元書記が始めた長江の港湾開発プロジェクトを高く評価し、自ら唱える経済圏構想である一帯一路構想に重慶が貢献するように励ますなど、相次いだ大物幹部の粛清によって自らの権力基盤が固まったことからくる余裕をみせた。また、中国科学院と中国共産党中央規律検査委員会は官僚を監視して自動的に腐敗を防止するAIシステムを開発して2012年から7年間にわたって約8721人の汚職官僚を処分した]
  中央規律検査委員会では習の盟友の王岐山に中央での会議の全権があり、王岐山に次ぐ副書記で習の最側近の一人で北京大学に14歳で入学した経歴から政府内で神童の誉れが高い李書磊に汚職撲滅運動を推進させており、海外への逃亡犯を追跡する「国際追逃追臟工作弁公室」のトップに任命している。2014年には海外に亡命した汚職官僚100人の国際手配を行ってその3分の1が引き渡されており、2015年から中央規律検査委員会は中華人民共和国公安部などともに海外に逃亡した汚職容疑者を国際手配などを用いて取り締まる「天網行動」と呼ばれる作戦を行っている。
  2016年には世界各国の警察機関が加盟する国際連合に次ぐ巨大な国際組織である国際刑事警察機構(インターポール、ICPO)が中国公安部の孟宏偉を総裁に選出したことによりICPOが習近平体制の汚職撲滅運動に利用されることが懸念され、米国に事実上亡命した中国人富豪の郭文貴の国際手配の際は中国による政治利用を指摘されている。2017年9月に北京で開催されたICPO総会の開会式で「中国は世界で最も安全な国」と述べて「法治」の重要性を演説した習は発展途上国の2万人の警察官を養成する「国際法執行学院」と100カ国での科学捜査研究所の設立や通信設備の支援などICPOへの中国の影響力拡大を宣言した。2018年にその孟宏偉もICPOの照会を無視して汚職取締の名目で逮捕した際は国際基準よりも国内事情を優先した中国当局の恣意的な法執行が批判された
  また、中央規律検査委員会と並ぶ汚職取締機構として「国家監察委員会」も設置してる
ウイグル統治
  2009年ウイグル騒乱での虐殺行為の責任者であると日本の一部のメディアが指摘しており[190]、この事件では、ウイグル人住民が漢族住民および武装警察と衝突し、中国当局の発表(2009年7月19日現在)では、死者197名、負傷者1,721名に上る犠牲者が出たとしている。一方、亡命ウイグル人組織の世界ウイグル会議の発表(2009年7月10日現在)で、中国当局や漢族の攻撃により殺されたウイグル人は最大3,000人と発表している。しかし、習は当時解放軍の指揮権を有する中央軍事委員会おろか武装警察の指揮権を有する中央政法委員会ともポストを持っておらず、軍事行動の指揮は取れないため、江沢民時代から新疆を統治していた当時の自治区党委員会書記兼新疆生産建設兵団第一政治委員の王楽泉が一般的に責任者とされている。
  2013年4月には、警官とウイグル人住民の衝突が発生し、21人が死亡する事件があった。世界ウイグル会議ラビア・カーディル主席は2013年6月20日、東京で会見を開き、習の最高指導者就任後、「中国政府の民族政策は以前より厳しくなった」と批判した。
  2014年に習が初めて新疆を視察した際はウルムチ駅爆発事件が起き、ニューヨーク・タイムズの報じた政府の内部文書によれば、これを受けて習は新疆工作座談会での秘密演説で一部の強硬派が主張するイスラム教の規制や根絶は否定しつつソ連崩壊アメリカ同時多発テロ事件も挙げて経済発展を優先した胡錦濤前指導部と安全保障より人権を優先した欧米はテロ対策に失敗したとして「人民民主独裁の武器を躊躇なく行使せよ、情け容赦は無用だ」と述べてテクノロジーの活用を指示し、「対テロ人民戦争」「厳打暴恐活動専項行動」を掲げ、同年12月には新疆ウイグル自治区人民政府主席だったヌル・ベクリ国家発展改革委員会副主任兼国家エネルギー局局長に抜擢しており、ウイグル族高官が中央の要職に就くのは異例なためにウイグル重視の姿勢をアピールする習の狙いがあったとされる。

  2016年に習が陳全国を新疆ウイグル自治区の党委書記、朱海侖を党委副書記兼政法委員会書記にそれぞれ抜擢して翌2017年2月に武装警察公安部民兵を集めた決起大会で朱海侖が「人民民主独裁の強力な拳で、全ての分離主義者とテロリストは粉砕する」と演説して以降、新疆ウイグル自治区では再教育キャンプへの大規模な強制収容洗脳が始まり、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の入手した政府の内部文書によれば監視カメラや携帯電話などから個人情報を収集してアルゴリズム解析する「一体化統合作戦プラットフォーム」(IJOP)のAIと機械学習に基づくプレディクティブ・ポリシングで選別されたウイグル人が2017年6月時点で約1万5千人も予防拘禁され、数十から数百メートルごとに便民警務站(派出所)や武装警察を配置し、ウイグル人住民はQRコードで管理され、自動車の全車両やメッカへのハッジの際には追跡装置が装着され、モスクなどに張り巡らしたAI監視カメラによって人種プロファイリングで識別され、様々なハイテクで顔認証・虹彩指紋DNA声紋歩容解析など一挙手一投足を監視される「世界でも類のない警察国家「完全監視社会」の実験場となったと欧米メディアや人権団体は批判した。この徹底的な社会統制は他の中国の地域でも行われるようになってきている
反貧困
  2015年11月29日付けの中国共産党の機関紙『人民日報』によると、同月27日と28日の両日、習近平総書記は、「脱貧困」に向けた重要会議を開いた[218]。会議で習総書記は「貧困を解消し、庶民の暮らしを守ることは、社会主義の本質的な要求であり、わが党の重要な使命だ」と述べたと演説した。発展が遅れぎみな22の省と市の幹部に「脱貧困に取り組む責任書」に署名をさせた。「責任書」には、脱貧困を最優先の課題とすることや、うわべだけを取り繕って中央の予算支援を無駄にしないことなどを誓わせている
  地方幹部に政策の徹底を書面で署名させるのは異例のことである。外交筋は、「反腐敗」に次ぐ政治的キャンペーンになる」と見る。貧困や格差の解消は大衆の支持を得やすく、党内で異論を差し挟みにくい点で、反腐敗と共通する。反腐敗キャンペーンは、習政権の基盤固めにつながった。「脱貧困」の推進は、鄧小平以来の雄改革開放路線が曲がり角に来ていることをも示している。鄧小平による社会主義の大義に縛られず市場経済を導入するという鄧小平によるこの現実的な考え方は、「まず一部の人々を豊かにさせ、その後豊かになった者がほかの人々を引き上げて共同富裕を目指す」という先富論として知られた
  今回の習総書記による「脱貧困」政策は、一部の人々を豊かにさせるという段階から、次の「共同富裕」の段階に入ったという認識であると考えられる。「共同富裕」を目指すことが、発展優先の現実路線から、社会主義の理念を優先することに傾くことにつながると考えられるからである
個人崇拝
  中国共産党は歴代の最高指導者を「核心」と呼んできたが、胡錦濤前総書記の時代は集団指導体制を唱え、この呼び方をやめており、習指導体制も当初は、これに倣っていた。しかし、2016年1月8日の会議で、習総書記との関係が近いとされる天津市の代理書記である黄興国が「習総書記という核心を守らなければならない」と会議で発言した
  これに続き同月11日から15日にかけて、安徽省湖北省四川省の各省指導者がそれぞれ同様の表現の演説を発表した。さらに同月27日には、習総書記の官房長官役である栗戦書・党中央弁公庁主任が「核心意識を強めるべきだ」との表現で、習総書記への忠誠を訴えた。いずれも習総書記を党の「核心」とすることを強く示唆し、権力集中が進む中、党中央委員会総書記の位置づけに微妙な変化が生じている可能性があると、朝日新聞は報じている
  2016年3月16日に閉幕した同年度の全人代では、習を毛沢東鄧小平らと同じ党中央の「核心」と呼ぶ言い方は現れなかったが、「核心意識」や「看斉意識」(みなが同じ方向を向く意識)という言葉が定着したと、朝日新聞は報じている。また、同年度の全人代において習総書記の目指す国づくりに政府や議会などが忠実に奉仕するという姿勢が目立ったとも報じられた

  待ち受ける諸課題の解決に向け、団結を確認した形だが、習への忠誠を競うような空気を危ぶむ声もある。 ただし、3月24日付けの日本経済新聞による全人代の詳報によると、「核心」および「核心意識」という言葉は最高指導部内でもなお十分な合意を得られていないとも報じられている。すなわち、共産党序列第3位の張徳江は閉幕式の際の口頭による会議総括で、習を念頭に「核心意識」と発言し、鄧小平時代の「核心」の言葉を想起させたが、序列4位で全国政治協商会議主席の兪正声は、政協閉幕式のあいさつで「核心」の言葉に触れなかった。
  「核心」および「核心意識」という言葉に関しては不協和音もあるとも報じられている。しかし指導部内で習総書記のみの力が際立つという現状は、一方で副作用を生んでいる。2016年3月には文化大革命の時代に毛沢東を賛美するために歌われた「東方紅」の歌詞を変え、習総書記をたたえる動画がネットに流出した。最高指導者を偶像化するこうした現象は、中国には久しくなかった現象である
  中国共産党は、毛沢東への熱狂的な追従が文化大革命の悲劇を生んだという反省から、1982年に指導者の個人崇拝を禁じているからである。同じ頃、党最高指導部で重きをなす王岐山率いる党中央規律検査委員会の機関紙が、「千人の追従は、1人の忠告にしかず」とのコラムを掲げ、指導者への異論が封殺される風潮を戒めた。また、「核心」と並んで「最高領袖」「最高統帥」とも官製メディアで頻繁に呼ばれていることは「偉大領袖」「偉大統帥」と呼ばれた毛沢東時代を彷彿させるとする見方もある。また、巨大な陵墓を建て、書籍の発刊や記念切手も発行されるなど父・習仲勲への個人崇拝も強められているとされる。
人物像
派手な振る舞いが一般的に好まれる中国では地味な人柄で高級なホテルやレストランでも粗食をとるほど質素とされ、福建省時代の習を知る台湾人実業家は賄賂を要求しないなど他の中国高官と違う印象を受けたという。1980年に夕食を供にした日本企業幹部は「ひとの話に相づちばかり、自分の考えや意見を言わない。白酒飲んでも乱れない。仲間同士でも気を緩めていない感じ」と回想している、福建省時代の習にインタビューを行った日本経済新聞の記者は「特別に才気を感じさせることはない。切れ者で弁が立つ薄熙来と違う」とし、元中国大使丹羽宇一郎は「父親のために下放の経験があり若い時に苦労している。人間的には弱者の気持ちを理解できる人物。また比較的親日派でフェアな人物」と評しており、同じく元中国大使の宮本雄二も「饒舌でなく人の意見を聞く方。胆力を感じる。江沢民や胡錦濤よりも『中国流の大人(たいじん)』」の印象だったという。1999年から2008年にかけて4度の会見をした前長崎県知事の金子原二郎は「いつ会っても口調が穏やかで物腰も柔らかい、とても温和な方」と述べている
  趣味は囲碁サッカー。習の囲碁・サッカー好きは有名なので外交の場でも活用されることがままあり、「ピンポン外交」に因んでか「囲碁外交」[236]「サッカー外交」とも言われている。サッカー好きは北京八一中学の頃から。プレーヤーとしてである。官職についてからも楽しんでいたが、歳も重ね仕事が忙しくなり、80年代にはプレーをやめたが、今でも観戦するのは大好きである。中国企業による相次いだサッカークラブの買収や中国サッカー・スーパーリーグによる有名選手への爆買いは習の影響も少なくないとされ、習政権で高まった中国サッカー市場の過熱に押されてか国際サッカー連盟(FIFA)はサッカーの中国起源説を公認して物議を醸した。古典を好み、とりわけ愛読しているのは荀子、その弟子の韓非とされる。㞎㞎と呼ばれる米・小麦などを混ぜて発酵させた食品を好んで食べると言う。

  中国共産党関係者の人物評では、習は調整型で「周囲の意見を聞きながら政策を実行するタイプ」であるという。中国国内における習の政治姿勢はリベラルであり、党員、官僚の腐敗に対しては厳しく臨み、政治的にも経済的にも開放的な姿勢をもった指導者として評価されている。現在の中国共産党幹部の演説や文章を、「冗漫、空虚、偽り」で覆われているとし、文章や演説をもっとわかりやすくし、国民に理解できるよう改革する必要性を主張している。「一般大衆は歴史を作る原動力だ。腹を割って話さなければ、大衆は理解できない」と述べ、自身の持つリベラルさの片鱗を見せた
  習をリベラル派とみなす見解があるのに対し、西側諸国に否定的な保守派とする見解もある。中国の人権問題を提起する西側諸国に対し、習は2009年に外遊先のメキシコにて、「腹いっぱいでやることのない欧米人が、中国の欠点をあげつらっている」と述べ、米国による人権問題批判に反論し、物議を醸した。中国国内では、愛国的発言と受け止められたが、国外の海外メディアには批判的に取り上げられた。中国共産党で回覧された9号文件西洋自由民主主義人権市場原理主義的な新自由主義を嫌う習の思想をあらわしているとされる。
  その容姿が似ているとする指摘がネットで相次いだディズニーくまのプーさん(中国語表記「小熊維尼」)やドラえもんジャイアン(中国語表記「胖虎」)が中国のネット検閲により画像削除や検索不可能などになったことがある。2018年にフォーブス世界で最も影響力のある人物の1位に選ばれた
家族
  習近平は駐英大使であった柯華の娘である柯玲玲と結婚したものの、その後恐れから別離し1987年9月に現妻の彭麗媛と再婚した。彭との間の一人娘である習明沢(1992年生浙江大学外国語学院卒業)はアメリカのハーバード大学ケネディスクールの留学生とされ、身元を隠すために偽名を使っているとされる。


一つの中国
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一つの中国繁体字中国語一個中國)とは、中国大陸マカオ香港台湾は不可分の中華民族の統一国家中国」でなければならないとする政策的立場および主張である。
  特に中華人民共和国政府は、これを自国の核心的利益であると主張し、「全中国を代表する唯一の合法的政府である」との意味合いで用いることが多く、諸外国に対してこの考えに同調するように強い圧力をかけている。また国際社会では、中華民国国家承認する国家が少ないため、「一つの中国」は中華民国を国家として承認しないという要求と同義として解釈される傾向が強い。

かつて、国際連合安全保障理事会常任理事国であった中華民国(台湾)は、中華人民共和国と『中国唯一の正統政府である』との立場を互いに崩さなかった。1949年から中華人民共和国側が国際連合総会に「中国代表権問題」を提起し、長きに亘って否決された。しかし、1971年アルバニア決議後に中華民国(台湾)が国際連合脱退、新たに加入し常任理事国となった中華人民共和国が提唱する「一つの中国」の概念が国際社会に宣布された。
  中国大陸に存在する政権(中国)は、世界でただ一つだけあって、台湾は中国の一部分であり、中華人民共和国政府が全中国を代表する唯一の合法的政府である。
  ・中国大陸と台湾島は一つの中国であり、中国の主権と領土の分割は許さない。
  ・現在まだ統一が達成されていないことに、双方は共に努力すべきで、一つの中国の原則の下、対等に協力し、統一を協議する。
  ・一つの国家として主権と領土の分割は認めず、台湾の政治的地位は一つの中国を前提として一国二制度の適用を検討する。
2005年には、台湾の「独立」阻止を念頭に反分裂国家法を制定した。

日本
日中共同声明を踏襲し「中華人民共和国を中国の唯一の合法的政府」と承認 (recognize) し、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」と表明する「中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重する (understand and respect)」 として、現状では中華人民共和国の主張を支持していないが、中華民国の主張も支持しないという立場を日本国政府は取っている。
しかし、現在も民間レベルで親密な関係を保っており、事実上の大使館機能(台北経済文化代表処)も存在するほか、2012年から住民基本台帳における在留カードでは中華民国国籍保有者の国籍・地域欄は「中国」から「台湾」となり、中華人民共和国国籍保有者と明確に区別している。また、2016年現在の首相である安倍晋三は2015年7月29日に行われた参議院の我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において、「台湾は、基本的な価値観を共有する重要なパートナーであり、大切な友人であります」と答弁している
アメリカ合衆国
米中共同コミュニケに基づき「中華人民共和国を中国の唯一の合法的政府」と承認 (recognize) し、「台湾は中国の一部である」と認知する (acknowledge) として、今の所、中華民国の主張を支持しない立場を取っている。しかし、現在も民間レベルで親密な関係を保つほか、中華民国との間に米華相互防衛条約の後継法である「台湾関係法」を結ぶ、双方政府高官の訪問を促進する「台湾旅行法」を成立させるなど緊密な関係にある。
大韓民国
中韓共同声明を踏襲し「中華人民共和国を中国の唯一の合法的政府」と承認 (recognize) し、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」と表明する「中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重する (fully understanding and respect)」 として、現状では中華民国の主張を支持しないという立場を取っている。しかし、現在も民間レベルでの関係を保っている。


一国二制度
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一国二制度は、中華人民共和国の政治制度において、本土領域(中国政府が対香港マカオ関係で自称する際は「内地」)から分離した領域を設置し、主権国家の枠組みの中において一定の自治や国際参加を可能とする構想である。

当初は、中華民国の実効支配下にある旧台湾省・旧福建省中華人民共和国に併合するための構想であった。現在は、かつてイギリス植民地であった香港と、ポルトガル植民地であったマカオにおいて実施されている。
  ここでいう「制度」は本来、経済制度を指している。しかし、マカオは返還前の一二・三事件から事実上本土との一体化が進んでおり、経済的には返還後の急成長の原動力となった中国本土からの観光客に依存している。また、領域内の制度の差異を基準としても、香港とマカオの経済制度が異なるため、中国本土と合わせて3つの制度がある事になる。

一国二制度と台湾
第二次世界大戦後の中華民国では、台湾をどのように日本から接収して管理するか議論が起こり、省組織法に基づく中国大陸の他の省と一線を画し、立法・司法・行政などに亘る独自の権限を有する特別行政地域を設立するよう主張した陳儀の提案を蒋介石は受け入れた。1945年台湾省行政長官公署を設立して陳儀が初代台湾省行政長官に任命された。しかし、警備総司令でもあった陳儀は二二八事件という大きな事件を引き起こし、この特別行政地域は2年に満たない1947年に廃止され、陳儀は国共内戦が起きていた大陸に左遷されたあげく中国共産党と結託したことが露見して粛清された。
  鄧小平による改革開放以前は、中華人民共和国は台湾を武力で「解放」することを目指していた。しかし、1978年11月、鄧小平は、台湾(中華民国)の現状を尊重すると述べ、同12月にはこれが中国共産党の第11期中央委員会第3次全体会議にて文書化された。1979年元旦、全国人民代表大会常務委員会は、「台湾同胞に告げる書(中国語版)[7]を発表し、三通によって平和統一を目指す姿勢を示した。
  特別行政区に初めて言及したのが、1981年葉剣英・全国人民代表大会常務委員会委員長の談話であり、高度な自治権と軍隊の保有を容認し、経済社会制度を変えないと述べた(後に軍隊の保有は認められず、人民解放軍駐香港部隊人民解放軍駐マカオ部隊が駐留することとなった)。1982年には鄧小平が「一国家二制度」という名称を用いたとされる。 中国系アメリカ人の政治学者、楊力宇によると、鄧小平は楊のインタビューに応じた際、一国家二制度(特に台湾との関連において)は連邦制を念頭においていると発言したといわれる(楊力宇「鄧小平対和平統一的最新構想」『七十年代月刊』1983年8月号)。しかし、この発言は公式には否定されている。









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