サウジアラビヤ2030万博-1


2023.12.04-GLOBE(朝日新聞)-https://globe.asahi.com/article/15068889?iref=comtop_Globe_02
2030年万博の誘致失敗の韓国・釜山 垣間見えた政治家たちの旧態依然の「万博頼み」
(牧野愛博)

  博覧会国際事務局(BIE)の総会がパリ近郊で11日28日開かれ、2030年の国際博覧会(万博)の開催地にサウジアラビアの首都リヤドが選ばれた。韓国・釜山は涙をのんだ。尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が自らパリに乗り込むなど、猛烈な誘致活動を展開した韓国だが、世間での盛り上がりはいま一つだった。
  韓国が初めての国際博覧会「大田(テジョン)万博」を開いたのが、ちょうど30年前の1993年。30年の歳月は韓国の姿も韓国人の意識も大きく変えた。「変わらないのが政治家だけ」なのかもしれない。(牧野愛博)

  BIE総会では1回目の投票でリヤドが119票を獲得。29票の釜山、17票のローマに大差をつけて圧勝した。
  韓国の釜山万博誘致にかける熱量は、大阪・関西万博を巡る日本の誘致活動と重なるものがあった。2022年7月、男性7人組人気グループ、BTS(防弾少年団)を釜山万博広報大使に任命。同年10月には、釜山で開かれたBTSの無料コンサートに韓国駐在の外交団が多数招待した。韓悳洙(ハンドクス)首相や朴振(パクチン)外相ら政府高官を次々、パリに派遣して、BIE総会で投票権を持つ国々に働きかけた。尹大統領自身、今月23日にパリに乗り込み、BIEの各国代表らを招いた夕食会を催し、釜山万博誘致を訴えた。
盛り上がらなかった韓国世論
  開催地決定の2日前の11月26日には日中韓外相会談を釜山で開催した。サムスン、現代、LGなど韓国の各財閥はそれぞれ地域を分担して誘致活動に協力。最終盤には各財閥トップが続々パリに入った。
  ところが、知人たちの証言によれば、韓国内で盛り上がりはほとんど見られなかったという。メディアは派手に動く大統領や財閥の姿を追いかけて報道するが、万博そのものに関する話題は大きくない。韓国紙大手・東亜日報は「釜山万博は少子高齢化とグローバル経済秩序の再編で低成長の危機感が強まっている韓国経済の再躍進に役立つ良い機会だ。釜山市中心で推進されていた万博誘致が2018年に国家事業に格上げされた理由だ」と説明。
  釜山市は総入場者予測を3400万人とし、60兆ウォン(約6.8兆円)以上の経済効果があるとしているが、関心は広がらない。ソウル近郊に住む60代の男性は「世間では景気が悪い、家計の負債が増えているという話ばかりだ。万博よりも他に税金を使うべきだろうと思っている人は多い」と話す。
  この男性は「今の韓国は、大田万博を開いた30年前とは違う」とも語る。1993年に韓国で初めて開かれた万博として、来場者は目標の1千万人を超える1400万人を数えた。韓国が市民の海外旅行の全面自由化に踏み切ったのが1989年だった。男性は「まだ国際的な行事が珍しい時代で、政府も各学校に団体見学を勧めるなど力を入れた。市民も、先端技術や世界の物珍しい展示に関心を示し、大田万博は大いに盛り上がった」と話す。
  ところが、今やスマホがあれば、ありとあらゆる情報を手に入れられる時代になった。韓国もサッカーのワールドカップ大会や主要20カ国・地域(G20)首脳会議など、様々な国際イベントを経験してきた。ソウルに住む50代の男性は「スポーツならいざしらず、万博では市民の関心を集められない」と話す。
政財界が誘致に夢中になる理由
  では、なぜ韓国の政財界は誘致に夢中になるのか。韓国に駐在した経験がある日本の元政府関係者は「国際的な支持を集めなければならないという強迫観念が、韓国の人々のDNAにある」と語る。
  韓国は北朝鮮との間で激烈な体制競争を繰り広げてきた。かつては国連加盟を巡り、現在は北朝鮮に対する制裁の是非などを巡り、国際的な支持を広げようと努力している。
  元政府関係者は「日本に負けたくないという意識もある」と語る。「東京五輪ならソウル五輪を」「自衛隊がイージス艦を購入するなら韓国軍も」という気持ちが働く。「2025年に大阪・関西万博なら、2030年に釜山万博を」という発想だ。貿易立国というお国柄も、万博誘致を目指す背景にあるのかもしれない。
  一方、韓国の政界関係者らは一様に「来年春の総選挙対策だ」とも語る。PK(釜山・慶尚南道)は元々、保守の牙城だったが、近年は進歩(革新)勢力の躍進がめざましい。関係者の一人は「釜山万博の誘致に成功すれば、保守の評判が上がる」と語る。ただ、万博への世論の関心が盛り上がらない以上、政治効果にも疑問符がつく。そもそも、釜山万博の誘致を巡っては、釜山を政治基盤とする文在寅(ムンジェイン)前政権も熱心な活動を展開していた。PKでの選挙戦のカギを握るといわれる、20~30代の浮動層は軒並み、万博よりも雇用や社会的公正などの問題に関心が強いとされる。
  結局、釜山万博の誘致を巡る騒動は「国際的な行事を誘致すれば政治的な得点になる」という旧来の発想から抜け出せない政財界が中心になって作り出した騒ぎだったと言える。幸いだったのは、総経費が3000億円以上に達するとされる大阪・関西万博のような巨額の公費支出に対する政府批判が、韓国世論ではまだ出ていなかったことだろう。
  上述の60代男性は「韓国では経費の計算まで、話が具体化していなかったが、誘致に成功していれば当然、日本のような騒ぎが起きただろう」と語る。上述の50代男性も「予算の話を出したら、誘致に水を差す。与党も野党も釜山万博推進の立場だったため、予算の話を持ち出せずにいた」と話す。誘致失敗が良かったのか悪かったのか。韓国の人々は大阪・関西万博を巡る日本の状況を知ったら、どう思うだろうか


2023.11.29-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231129-MBEOXNOEDBIMNJJVRG6VCEBKYI/
2030年万博の開催地はサウジの首都リヤド ロシアは大阪万博不参加表明

  【パリ=板東和正】博覧会国際事務局(BIE、本部パリ)総会は28日、2030年万博開催地をサウジアラビアの首都リヤドに決定した。ロイター通信などが報じた。一方、ロシア代表は28日、総会に出席し、2025年の大阪・関西万博への参加を取りやめる方針を表明した。ロシアによるウクライナ侵略を受けた欧米諸国や日本の対応に反発した可能性がある。

  30年の万博をめぐっては、リヤドのほか、韓国南部の港湾都市、釜山(プサン)、イタリアの古都ローマが候補地にあがっていた。3カ国は投票前、それぞれ候補地を紹介し、最終アピール。加盟国の投票によりリヤドが選出された。
  サウジは途上国支援などを打ち出し、万博の招致に向けた動きを活発化させていた。韓国はK-POPや財閥を巻き込み国を挙げた総力戦を展開し、潤沢な資金力で優位に立つサウジに猛追をかけたが、敗れた。







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