COP25-COP26-COP27の問題-1(グリーントランスフォーメーション(GX))
2023.11.14-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20231114/k00/00m/030/218000c
日本のGX政策は「1.5度目標に不整合」 英シンクタンクが発表
【岡田英】
脱炭素社会実現に向けた
日本の「グリーントランスフォーメーション(GX)」政策について、
「大部分が世界の気温上昇抑制目標に整合していない」とする評価結果を英シンクタンク「インフルエンスマップ」が14日発表した。
地球温暖化による被害を抑えるため、国際社会は産業革命前からの世界の平均気温の上昇を1・5度に抑える目標を掲げている。インフルエンスマップは、気候変動やエネルギーに関する分析結果を投資家などに提供する非営利組織で、今回は
日本のGX政策が1・5度目標実現の経路に合致しているかという観点で評価した。
2月に閣議決定したGX基本方針に盛り込まれた政策のうち、二酸化炭素(CO2)排出量に応じて負担を求める制度「カーボンプライシング」については、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示した目標実現の経路との「乖離(かいり)が大きい」とした。化石燃料の輸入企業から徴収する賦課金は2028年度から、電力会社にCO2の排出枠を買い取らせる排出量取引は33年度からで「導入時期が遅い」と指摘。炭素価格も低価格から徐々に引き上げるため、IPCCの想定水準を下回る可能性が高く、「世界の排出削減目標の達成を危険にさらす」と指摘した。
また、石炭火力発電の廃止期限を定めず、アンモニアを混ぜて燃やすこと(混焼)で排出量を減らしながら使い続ける方針についても「不整合」とした。GX基本方針では混焼の比率を段階的に上げて50年までに100%の専焼を実用化する計画で、30年にかけて石炭火力発電を急速に減らすことを想定するIPCCの前提からかけ離れていると評価した。
伊藤信太郎環境相は14日の閣議後記者会見で「GX政策は今後10年で150兆円を超える官民投資や成長志向型カーボンプライシングを通じて(50年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする)我が国の目標達成の蓋然(がいぜん)性を高めると認識している」と述べた。
【岡田英】
2022.11.21-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/cf3dc1d9ef5a3356d4e3686782bbeabdd63182ab
OP27閉幕 1・5度目標達成できないとどうなるのか
昨年の
国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で採択された成果文書には、世界の気温上昇を産業革命前から「
1・5度に抑えるための努力を追求する」ことが明記された。
2015年の気候変動対策の国際枠組み「
パリ協定」では「
気温上昇を2度未満、できれば1・5度未満に抑える」と幅があった。
しかし昨年8月に公表された国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書で、このまま温室効果ガスの排出が進めば、
今後20年以内に1・5度を超える可能性があると指摘されたこともあり、COP26では、地球温暖化を抑えるための「
1・5度目標」が世界目標に格上げされた形だ。
では、
目標が達成できないと何が起こるのか。 IPCCの報告書によると、
10年に1度の高温が起こる頻度は、1・5度上昇で4・1倍、2度上昇で5・6倍、4度上昇で9・4倍にそれぞれ増加。50年に1度の高温は1・5度上昇で8・6倍、2度上昇で13・9倍、4度上昇で39・2倍にそれぞれ増える。
同様に、豪雨や干魃(かんばつ)、海面上昇も深刻になると予測しており、例えば、豪雨は4度上昇で雨量は約30%増加し、海面は4度上がれば63~101センチ上昇する。
ただ、報告書では、
中長期的な政策次第で、実際の値は変わると示唆している。「
大事なのは一時的に1・5度を超えることに騒ぐのではなく、最終的に1・5度近辺で落ち着くことができるかどうかだ」。そう指摘する専門家もいる。
2022.11.20-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221120-GX2PVV7LTFP6PLUPPIBSAK7GI4/
COP27新議長案、被害基金を新設 欧米歩み寄りか
【シャルムエルシェイク=佐藤貴生】
エジプト東部シャルムエルシェイクで開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は19日、
会期を延長して大詰めの協議が行われた。議長は同日、新たな成果文書案を提示。
先進国と途上国が対立している地球温暖化被害への資金支援を巡り、基金新設を前提に来年、協議することが盛り込まれた。この案を軸に土壇場の調整が続いたもようだ。
アフリカ開催の今回会議で途上国は、温暖化による「損失と被害」に特化した新基金の創設を強く主張した。議長案は基金創設を決定した上で、新たに設ける「移行委員会」が詳細を検討・勧告し、来年の
COP28で協議するとしている。
損失と被害に対する資金支援の問題で先進国は、支出が膨大になりかねないとして慎重姿勢を示していたが、欧米がここにきて途上国に歩み寄りを見せた。
議長案は基金を巡り「資金源の拡大」にも言及。世界最大の温室効果ガス排出国である中国などに出資を求める狙いとみられる。中国は基金創設を支持する一方、出資は拒んできた。
議長案では、
昨年のCOP26と同様に、パリ協定が定める世界の気温上昇の抑制目標のうち、産業革命以降の上昇幅を「1・5度」とする、より厳しい目標を目指す決意が盛り込まれ、その
実現のために対策を加速させる必要性を確認している。ただ、欧州からは削減努力が不十分だとして不満の声が出ており、温室効果ガスの排出削減を加速させる作業計画を巡る交渉も続いているとみられる。
議長案には、COP26を踏襲して石炭火力発電の「段階的削減」を目指す方針も盛り込まれた。
2022.11.10-東京新聞-https://www.tokyo-np.co.jp/article/213153#:~:text=
「化石賞」日本また受賞 化石燃料への公的拠出「世界最大」理由 COP27で環境団体が改善促す
【シャルムエルシェイク=蜘手美鶴】
エジプト東部シャルムエルシェイクで開かれている国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で、世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク」(CAN)は9日、
地球温暖化対策に消極的な国に贈る「化石賞」に日本を選んだ。
化石燃料への公的資金の拠出額が世界最大であることが主な理由という。 CANには約130カ国から1800団体が参加し、COP期間中はほぼ毎日、テーマを変えながら各国に「本日の化石賞」を贈っている。温暖化対策に消極的な国に改善を促すのが狙いで、日本は毎回のように何らかの理由で「受賞」している。
環境団体の調べでは、日本は2019〜21年、年平均で106億ドル(約1兆5000億円)の公的資金を石油や天然ガスなどの化石燃料に拠出したという。カナダ(85億ドル)、韓国(73億ドル)、中国(67億ドル)も多額の公的資金を投入したが、CANは「日本が断トツ」とした。
9日の授賞式では、CANジャパンの代表者に恐竜の頭骨をモチーフにしたトロフィーが授与された。CANの化石賞担当ムハメド・サイディハン氏は「日本は化石燃料から再生可能エネルギーに資金の拠出先を変えてほしい」と語った。
2022.11.09-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221109-HDWJVB4JAJOLVDGD27EAYOVG5I/
「中国も補償を」 COP27、島嶼国が主張 途上国の代弁にのぞく限界
【シャルムエルシェイク=佐藤貴生】
エジプト東部シャルムエルシェイクで開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で8日、
中国の解振華・気候変動担当特使が先進国に、温室効果ガス削減などの温暖化対策を強化するよう求めた。
中国は世界最大の温室効果ガス排出国で、一部の国から立ち位置への批判も出ている。
中国の習近平国家主席は会議に出席しておらず、特使は公式な首脳級会合が終了した後に「メッセージ」という形で発言した。
解特使は温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「
カーボンニュートラル」に「固い決意」で臨んでいると強調した。その上で、
先進国に対し温室効果ガスの排出削減目標の引き上げを要請。先進国が約束しながら実現していない年間1千億ドル(約14兆5000億円)の途上国支援の早期実行も求めた。
一方、ロイター通信は8日、カリブ海の島国アンティグア・バーブーダのブラウン首相が交渉グループ「小島嶼(とうしょ)国連合」(AOSIS)の立場を代表する形で、「
中国とインドが主要な(環境)汚染国であることはみな知っている。汚染国は補償すべきだ」と述べたと伝えた。AOSISには温暖化による海面上昇を懸念する島嶼国も加わっている。
ロイターによると
中国は以前、温暖化の影響を受けた途上国の「損失と被害」を補償する基金の設立は支持したが、自らが支払うべき立場にあるとは述べていない。
中国はこれまで途上国の立場を代弁するかのような態度をとってきたが、その主張には無理があるとの認識が広がっている。
2021.11.14-REUTERS-https://jp.reuters.com/article/climate-un-idJPL4N2S502H
COP26閉幕、気温上昇1.5度の望み維持 石炭火力は段階的削減
[グラスゴー 13日 ロイター] -
国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は13日、合意文書を採択し、閉幕した。
地球の気温上昇を1.5度に抑える望みを維持し、壊滅的な気候変動を回避することを目指す。
今回の会議は
COPとして初めて、人為的な地球温暖化の主要因となっている化石燃料の削減を求めた。12日までの開催予定だったが、
会期を1日延長して議論を継続していた。
石炭に依存する途上国や中国の支持を受けたインドが、化石燃料の削減を巡る文言に反発し、表現の修正を求めた。
これを受け、
石炭火力の「段階的廃止(phase out)」ではなく、「段階的削減(phase down)」に向けた努力の加速を各国に要請するという表現に修正された。
インドのヤダフ環境相は「新興国の事情」を反映するため修正が必要だったと指摘。COP26では石油や天然ガスの段階的廃止を求める同様の声はなかったのに対し、石炭だけが標的になったとの見方を示した。
その上で「
途上国にとって妥当で、温暖化対策の公平性からも妥当な合意を形成する努力をした」と述べ、
歴史的に見て先進国の排出の割合が大きいことに暗に触れた。
欧州連合(EU)やスイスなどの富裕国に加え、海面上昇のリスクに直面する島しょ国は表現の修正に失望を示したが、採択には反対しなかった。
国連のグテレス事務総長は「採択された文書は妥協(の結果)だ。現在の世界の利害や状況、矛盾、政治的意思の状態を反映している」とし、「
重要なステップを踏んだが、深い矛盾を克服するに十分な共同の政治的意思は見られなかった」と述べた。
合意文書は、これまでに各国が表明した温暖化ガス削減目標では不十分であることを実質的に認め、より踏み込んだ目標を2022年に設定するよう各国に求めた。これまでは5年ごとに目標を示す必要があった。
科学者らによると、世界の気温上昇が1.5度を超えれば、極めて大幅な海面上昇や、現在よりはるかに深刻な干ばつや豪雨、山火事といった自然災害につながることになる。
しかし、各国がこれまでに表明した削減目標では、世界の平均気温の上昇を2.4度にしか抑えられない。
環境保護団体グリーンピースのジェニファー・モーガン事務局長は合意文書について「文言は変更されたが、
石炭の時代が終わりつつあるという、COP26から発せられたシグナルは変えられない」と述べた。
合意文書では、低所得国の気候対策への資金支援について、2025年までに19年比で倍増させるよう富裕国に促した。
また、富裕国が20年までに年間1000億ドルの資金支援を実現するとしていたにもかかわらず未達となっている約束について、国連の委員会が来年、進展状況を報告する。各国政府は22、24、26年に気候ファイナンスに関する会合を開く。
2021.11.05-東京新聞-https://www.tokyo-np.co.jp/article/141074
46カ国・地域が「脱石炭」で合意 日米中は不参加 COP26
【グラスゴー=藤沢有哉】
英北部グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、
議長国・英国は4日、46カ国・地域が石炭火力発電を巡り、先進国などは2030年代、世界全体では40年代の段階的廃止を目指すことで合意したと発表した。既に「
脱石炭」を宣言していた国々に韓国やポーランドなどが新たに加わった形だが、
日本は参加していない。
46カ国・地域は「
世界全体の石炭からクリーンパワーへの移行」と題した声明に賛同した。声明には、
石炭火力発電の段階的廃止や石炭火力発電所を新規に建設しないことなどを明記した。対象は「(温室効果ガスの)排出削減対策が取られていない」石炭火力発電に限っている。
英政府によると、全体の半分の23カ国は新たに「
脱石炭」を表明。石炭消費量が多い上位20カ国のうち5カ国が含まれている。
COP26では、ジョンソン英首相が先進国は30年まで、途上国は40年までに石炭火力発電を廃止するよう要求。声明はやや遅れる内容だが、
石炭火力の活用を主張する日本への圧力が強まる可能性がある。
中国や米国も同様に参加していない。
一方、
英米など25の国・機関は22年末までに、火力発電など国外の化石燃料事業への公的融資を停止すると発表した。対象は排出削減対策が取られていない事業だが、天然ガスなども含めた化石燃料事業全体への公的融資停止の合意は初めてという。
相次ぐ「
脱石炭」の動きに、COP26のシャルマ議長は「
石炭を過去のものにしなければならないのは明らか。石炭火力の終焉が見えつつある」と述べた。
2021.11.04-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/991d1a108a19c58bcb2d086b2dd5b48205a71e93
中国、温暖化対策強化に踏み込まず 米中関係にも影響か
【北京=三塚聖平】
中国の習近平政権は、2日に閉幕した
国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)首脳級会合で、温室効果ガスの削減目標の前倒しに踏み込まず、温室効果が高いメタンの排出を減らす枠組みにも加わらなかった。
電力不足が各地で深刻化しているといった国内事情も響いたもようだ。
中国には温暖化対策に関する協力を対米関係改善につなげたい思惑がある。
今後、米側から求められる対策強化にどう応じるかが米中関係の先行きにも影響を与えそうだ。
米国など100以上の国・地域は2日、メタンの排出量を2030年までに20年比で3割削減することで合意した。
メタンは二酸化炭素(CO2)より温室効果が高いため実効性が期待されるが、
主要なメタン排出国の中国は参加を見送った。
中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は3日の記者会見で、合意への不参加について「
発展途上国」という立場を強調し、「基礎的なデータが確かでないことや、観測技術と有効な対策が乏しいといった問題を考慮する必要がある」と釈明した。
習国家主席は昨年9月、30年までに温室効果ガスの排出量を減少に転じさせ、60年までに実質ゼロを実現するとの目標を表明した。
中国の気候変動問題担当特使である解振華(かい・しんか)氏は、30年までの目標の対象にはメタンなどCO2以外の温室効果ガスは含まれないことを示唆している。
メタンの排出削減に関する国際合意に加わらなかったことは、既に表明した目標や対策を強化することはないとの姿勢を示した形だ。
中国は現在、温暖化対策を短期的に後退させている。電力不足による停電や供給制限が各地で起きており、経済・社会への影響回避へCO2排出量が多い石炭火力発電をフル稼働せざるを得ない。急激な温暖化対策が中国のエネルギー供給に混乱を招いているとも指摘されている。
注視されるのは米国の出方だ。米中両国は年内にバイデン米大統領と習氏がオンライン形式で会談することで合意しており、実現すれば中国の温暖化対策強化が焦点になるとみられる。
中国外務省の汪氏は3日、温室効果ガスを累積で最も排出している国は米国だとして「自身の歴史的責任を正視すべきだ」と牽制(けんせい)。
取り組み強化や、途上国に対する資金や技術などの支援を行うよう求めた。
2021.11.03-産経新聞-https://news.yahoo.co.jp/articles/9704d4313d3ab116c6ced21d7c1050a34b2746f4
COP26、森林保護やメタン排出削減の枠組みで合意 交渉本格化へ
【グラスゴー(英北部)=板東和正】
国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は2日、首脳級会合を終えた。
会合期間中には、
森林保護に向けた共同宣言のほか、二酸化炭素(CO2)より温室効果が高いメタンの排出を減らす枠組みに多くの参加国が合意した。
3日からは温暖化対策強化に向けた交渉が本格化し、各国の連携が試される。 会合には100以上の国・地域の首脳が参加し、
温暖化対策の強化や途上国への資金支援などを表明した。
議長国、英国のジョンソン首相は2日の記者会見で「進展があったことは間違いない」と2日間の会合を総括した。
会合を欠席した中国の習近平国家主席については「中国が(温暖化対策に)関与していないことを意味するものではない」と擁護する一方、
中国には30年までにCO2排出量を減少に転じさせるとの目標を、25年に前倒しするよう求めていると明らかにした。
COP26では今後、
温室効果ガス削減目標や石炭火力廃止などをめぐる首脳らの議論を受け、各国の実務者や閣僚らが12日の会期末まで、対策の国際的ルール作りなどを協議。成果文書の採択を目指し、対策強化で協調できるかが焦点となる。
ジョンソン氏は「身構えつつも楽観している」と述べ、交渉の行方を見守る考えを示した。 一方、
米国や日本などCOP26に参加した首脳らが2日、2030年までに温室効果ガスの吸収源となる森林の減少を食い止めるとの共同宣言を発表した。参加した100カ国超は世界全体の森林面積の約85%を占め、ジョンソン氏は「画期的だ」と称賛した。
途上国での森林火災対策や荒廃した土地の回復などのため、12カ国が25年までに120億ドル(約1兆4000億円)を提供するとも表明した。 また、米国などの100カ国超は2日、
メタンの排出量を30年までに20年比3割削減することで合意したと発表した。
メタンは温室効果ガスでは二酸化炭素に次ぐ排出量を占め、実現すれば、
0・2度の気温上昇を防げる可能性がある。
2021.11.03-Yahoo!Japanニュース(中央日報)-https://news.yahoo.co.jp/articles/e22deb5b0b744a9b3ce606d8061f8e55b8c44edc
インドは2070年、中露は2060年…炭素ゼロに消極的
主要20カ国(G20)首脳会議が共同宣言文にカーボンニュートラル(炭素中立)の時期を明記できずに閉幕したのに続き、1日(現地時間)、
英国・グラスゴーで開幕した第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)にも暗雲が立ち込めた。COP26には世界196カ国の代表団と各国の首脳が出席した。
炭素排出世界3位であるインドのナレンドラ・モディ首相は1日、炭素純排出量ゼロを達成するカーボンニュートラルのタイムスケジュールを2070年と提示した。これまで「
富裕国家責任論」を主張し、
炭素排出削減に積極的でなかったインドは、COP26開幕前までは計画の設定自体を拒否していたが、
今回2070年を目標年度として示した。
2070年という時期は、
米国・欧州など大多数の国家が約束した2050年はもちろん、中国・ロシア・サウジアラビアが提示した2060年より遅れたスケジュールだ。
韓国は2030年までに炭素排出を40%削減し、2050年を炭素排出ゼロ期限として示し、炭素削減において経済規模が同等の国より富裕国に近い速度を出すという指摘が出そうな状況だ。
BBCは、炭素中立を達成するためのインドの最も現実的なロードマップが、これまで(現実を考慮して)2070年または2080年と予想されてきたとし「
かなり重要な進展」と評価した。
1日、AP通信によると、
クリスティアナ・フィゲレス元国連気候協約事務局長は「
COP26で2015年パリ気候協定のような重大な合意を引き出すことはできないだろう」との見方を示した。
◆水没危機のモルディブ-「
中国・インドが地球を毒殺」
炭素ゼロ非協調を批判
フィゲレス事務局長は「世界の温室効果ガス排出量を半分に減らし、先進国が発展途上国の炭素削減を支援するために年間1000億ドル(約11兆4000億円)を出すという目標に近づくことは容易ではないだろう」としつつも「これに失望してはならず、我々が取り組んでいることの複雑さを真に理解しなければならない」と述べた。
これにより、気候変動の直撃弾を受けている島国は、先進国と開発途上国がお互いを非難したり、称賛しながら炭素中立のタイムスケジュールを遅らせていることについて「欲求不満を感じる」と切迫した心情を吐露した。
ガーディアンによると、モハメド・ナシード元モルディブ大統領は「
過去の欧州人のように、今や中国とインドなどが地球を毒殺することが自分の権利であるように行動している」とし「
これは狂った考え」と不十分な合意に失望を示した。
インド洋の島国のモルディブは平均海抜高度が1メートルに過ぎず、気候変動による海面上昇、大雨、洪水などが一般的だ。
世界気象機関(WMO)の地球気候報告書によると、
モルディブを含む海抜高度の低い島国は2100年には水没する可能性が高い。
国際非営利団体オックスファームは「
G20で見せた優柔不断と分裂が(COP26まで座礁させれば)地球を燃やしかねない」とした。 また、2日の首脳会議で
世界90カ国以上が2030年までメタン(CH4)排出量の30%を削減するために努力すると約束した。
ロイター通信などによると、米国と欧州連合(EU)が主導する「国際メタン誓約(Global Methane Pledge)」発足式が開かれた。
バイデン米大統領とウルズラ・フォン・デア・ライエンEU執行委員長が発足式を共同主宰し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領も参加した。米国とEUが9月に共同で推進計画を発表した国際メタン誓約は、2030年までに世界で排出されるメタン量を昨年に比べて少なくとも30%削減するという目標を掲げている。
メタンは京都議定書で定義した6大温室効果ガスの1つだ。
大気中でメタンが占める濃度は二酸化炭素の200分の1水準だが、地球温暖化に与える影響が二酸化炭素の21倍に及ぶ。
EUは国際メタン誓約により、地球全体の温度上昇を0.3度減らすことができると見ている。
2021.11.01-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20211101-NKAAIIDLZZIWXE4H3JUODMLPHA/
米、COP26で途上国支援主導 中国の外堀埋める
【エディンバラ(英北部)=塩原永久】
バイデン米大統領は国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、温室効果ガス削減目標達成への決意を示し、各国の積極的な対策推進を促す構えだ。「
米国で過去最大」(米政権幹部)となる
対策費を投じ、発展途上国への支援も増強。「発展の権利」を主張し、一段と踏み込んだ対策に
消極的な中国の外堀を埋める戦略を描く。
米政府は1日、気候変動対策の国際枠組み「
パリ協定」で掲げた
目標達成のための政策集を発表した。
2050年の脱炭素化を実現する工程表となる「長期戦略」を策定。建物の省エネ化や車両の電動化などを進め、官民一体で目標必達を期す姿勢を示した。
マッカーシー米大統領補佐官(気候変動問題担当)は記者団に、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行で、過去最大級の投資を実施すると説明した。
バイデン氏は、途上国の対策に活用してもらう資金として、24会計年度までに毎年30億ドル(約3400億円)を割り当てるよう議会に求める方針だ。
先進国は途上国への拠出額を20年までに年1千億ドル確保すると約束したが、実現のめどはたっていない。対策に充てる財源が不足する途上国側は、先進国への不満を強めている。
先進国と途上国の対立が繰り返されてきた地球環境問題で、バイデン政権は、途上国による対策強化の機運を高めたい考えだ。
米国の環境技術を移転したり、温暖化に関する科学的知識を提供したりして途上国支援を強化するという。「途上国の声の代弁者」として振る舞う中国への対抗も念頭にあるとみられる。
2021.10.24-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/70e1d816d63d14c067dd536a51a47b5a85aa30a0
米、COP26に閣僚ら十数人派遣へ 中国に対抗し主導権狙う
【ワシントン=塩原永久】
バイデン米大統領は英国での国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に、
十数人もの閣僚や高官を引き連れて参加し、世界の取り組みを主導する姿勢を示す。主要国に対策強化を訴え、途上国支援も打ち出して国際的な機運を高めたい考え。
先端技術や産業競争力を左右する環境対策のルール整備で主導権を握り、中国に先行する狙いもあるとみられる。
米メディアによるとバイデン氏は、
ブリンケン国務長官やイエレン財務長官ら主要閣僚を含む十数人の高官を伴って訪英する。バイデン氏は11月1~2日にCOP26に参加し、演説などの日程をこなす。 米国が大型派遣団を組むのは「
政府一体で気候危機に対処する方針」(米CNNテレビ)を示すためだ。 バイデン政権は環境対策を優先課題に据え、
気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」を脱退したトランプ前政権からの転換をアピール。
米国は温室効果ガス排出量を2030年までに05年比で50~52%減らす削減目標の強化を表明したが、中国を含む主要排出国にも目標引き上げを促す。
バイデン政権は、温暖化による海水面上昇などの打撃を受けている島嶼(とうしょ)国や、財源難の新興国への資金支援を増強する方針だ。途上国地域で開発融資を通じ存在感を高める中国に対抗する。
COP26への派遣団には海外援助機関トップも入る。 米政府は21日、気候変動が国家安全保障に及ぼす影響を分析した報告書を公表した。温暖化による食糧・資源の争奪や、環境エネルギー技術をめぐる競争が激化して、国家間の摩擦要因になる恐れを指摘した。
COP26では企業活動に影響するパリ協定の実施ルールも討議される。米政権として温暖化対策の制度設計を主導し、環境問題をめぐる大国間競争を優位に運ぶ思惑もありそうだ。
2019.1216-NHK NEWS WEB-
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191216/k10012216281000.html
COP25閉幕 「パリ協定」ルールの一部は合意できず
地球温暖化対策の国連の会議、「COP25」はおよそ40時間にわたる延長交渉の末、対策の強化を各国に促すことを盛り込んだ成果文書を採択して閉幕しました。一方で、「パリ協定」のルールの一部については合意できず、課題を抱えたまま「パリ協定」が始まることになります。
190を超える国と地域が参加してスペインで開かれていた「COP25」は、温室効果ガスの削減目標を引き上げるよう各国に促す記述や、来年から始まる温暖化対策の国際的な枠組み、「パリ協定」の実施に必要なルールの一部をめぐって意見がまとまらず、およそ40時間にわたって会期を延長し、夜も徹して交渉を続けました。
そして、日本時間の15日午後6時ごろ、現地時間の午前10時ごろから全体会合が開かれ、会議の成果となる文書を全会一致で採択しました。
成果文書には「各国の削減目標はそれぞれの国の事情に応じて現在よりも前進させ、可能なかぎり高い野心を示す」ことや、「気候変動の緊急性を踏まえ、来年を一つの機会として温暖化対策を可能なかぎり強化することを促す」ことが盛り込まれています。
「国の事情に応じて」や「可能なかぎり」という表現が使われていて、削減目標を引き上げることを明確にするべきだと主張する国と、国によって事情が異なるためそれぞれの判断に委ねられるべきだとする国と、双方に配慮した形になっています。
一方で、「パリ協定」の実施に必要なルールのうち、他国への技術支援などで削減できた温室効果ガスの排出量を、自国の削減分として計算する際のルールについては合意できず、来年の「COP26」に先送りされることになりました。
これによって「パリ協定」が実施できなくなるわけではありませんが、ルールの一部が決まらない状態で課題を抱えたまま始まることになり、パリ協定の信頼性が損なわれるおそれもあります。
小泉環境相「会場の雰囲気は楽観的」
「パリ協定」の実施に必要なルールの一部が合意に至らなかったことについて、小泉環境大臣は「合意を目指して議長や国連のグテーレス事務総長などキーマンと何度も会談を重ねた。日本がこれだけ交渉の成立に向けて まってからは日本の存在感が高まり、厳しい意見よりも感謝が寄せられた。日本には世界に誇れる取り組みが多くあるので、これからも国内の政策調整を続けるとともに海外への発信をしていきたい。そのスタートになったと思う」と話していました。
ルクセンブルク交渉官「メッセージは示せた」
今回の会議について温室効果ガスの削減目標の引き上げを求めていたルクセンブルクの交渉官は「目標を上げていくという政治的なメッセージは示すことができたがパリ協定のルールについてはゴールに達することができず半分半分といったところだ」と話し、削減目標の引き上げを成果文書に盛り込めた点は温暖化対策の機運向上につながるとして、一定の評価をしていました。
そのうえで、「今後、自国の削減目標を引き上げることで他国の対策をリードしたい」と話していました。
また、サイクロンなどで大きな被害を受けているモザンビークの交渉官は、「温暖化の被害をより受けている国の現状に多くの国が懸念を感じ始めた」と話し、温暖化への危機感が世界的に高まっていることに手応えを感じていました。
グテーレス国連事務総長「結果にがっかり」
OP25の閉会を受けて、国連のグテーレス事務総長はツイッターに「結果にはがっかりした。国際社会は気候の危機に対処するため、地球温暖化の緩和や適応、財政支援の面でさらなる野心を見せる機会を失った」と投稿し、失望感をあらわにしました。
グテーレス事務総長は今回、みずからも2度スペインの会場を訪れ、パリ協定がはじまる来年の2020年に、各国が温室効果ガスの削減目標をさらに引き上げるよう訴えましたが、成果文書では主要排出国や一部の途上国の反対もあり、強い表現では盛り込まれませんでした。
グテーレス事務総長は「すべての国が2050年までに脱炭素化を達成し、気温の上昇を1.5度以下に抑えるため、2020年に私はこれまで以上に働き、すべての国が行動する年になるようにしたい」として、引き続き温暖化対策に積極的に取り組む姿勢を強調しました。
専門家は機運高めることにつながると評価
地球温暖化対策の国際交渉に詳しい東京大学の高村ゆかり教授は、今回の成果文書について、「各国の今の削減目標ではパリ協定の目標の達成には十分ではないことを確認し、今後、新たな目標を提出する際に積み増しを求めるものになっている」と述べ、温暖化対策への機運を世界的に高めることにつながる結果だったと評価しました。
またパリ協定実施のためのルールの一部について、合意が持ち越されたことについては、「時間をかけて交渉したが残念だった」としながらも、今後の合意の具体的な形が見えてきているとし、来年の会議での合意に期待を示していました。
さらに交渉が長引いたことについては、「来年はパリ協定のもとで初めて各国が目標を出し直す年になる。被害の深刻な国が目標引き上げを訴える一方、排出量が多い国は目標を見直す準備がなかった」と述べ、一部の国が温暖化への危機感を強める中、アメリカや中国、インドなど、主要な排出国が削減について具体的な対策を示さなかったため、世界的な目標の引き上げになかなか合意できず、「可能なかぎり」といった文言を盛り込み、引き上げに消極的な国に配慮した形で合意したと分析しました。
そして日本については、ルールの交渉などの場面で各国をリードし評価を高めた一方、国内の石炭火力政策について批判を受けたとしたうえで、「石炭火力への厳しい世界の目があることを踏まえ具体的な政策変更への検討が進むのか、世界が注目している」と話していました。
最後に、COPの会場ではスウェーデンの活動家、グレタ・トゥーンベリさんをはじめ、世界中の若者が会場内で数多くのイベントを行い、対策を訴えたことについて「今回の合意は若者が求める水準には達していなかったといえるが、COP25の重要な動きだった」として、今後、各国が若者の声を聞いて、国内の温暖化対策をさらに強める後押しにしてほしいと話していました。
2019.12.14-AFT BB NEWS-
https://www.afpbb.com/articles/-/3259569
COP25、会期延長 夜通し協議 グレタさん「明日はないものと思って行動を」
発信地:マドリード/スペイン [ スペイン イタリア ヨーロッパ ]
【12月14日 AFP】スペインの首都マドリードで開かれている国連(
UN)の気候変動枠組み条約第25回締約国会議(
COP25)は行き詰まり、会期を延長して夜通し続けられた。さらに考えられる最も良い結果が出たとしても、地球温暖化で荒廃する未来を防ぐのに必要とされる内容にはほど遠いものとなる見通しだ。
COP25は12月2日に始まり、13日夕に終わる予定だった。しかしこうした会議にはよくあることだが、14日未明の時点でも議論は続き、共同声明が出るのは数時間後になるとみられている。
COP25内外からの圧力がかかる中、温室効果ガスの削減量と気候問題で混乱する世界での暮らしに必要な巨額の資金をどう賄うのかをめぐる議論で、裕福な環境汚染国と開発途上国の旧来の確執が再燃した。
さらに、気候変動の影響を受けやすい貧しい国々と、温室効果ガスの排出量世界1位の中国と4位のインドのような新興大国の間で新たな対立も生じ、議事の進行の妨げとなった。
スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリ(
Greta Thunberg)さん(16)は13日、伊トリノ(
Turin)で、高校生らのデモに参加。世界の指導者たちを厳しく批判し、「明日はないものと思って」行動するよう求めた。(c)AFP/Marlowe HOOD and Patrick GALEY
2019.12.11-JIJI.COM-https://www.jiji.com/jc/article?k=2019121101217&g=int
温暖化対策「抜け道を協議」 グレタさん、COPを批判
【マドリード時事】スペインの首都マドリードで開催中の国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)に参加しているスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんは11日、関連イベントで約10分間演説し、「COPで各国が(地球温暖化対策の)抜け道を協議している」と批判した。
<環境活動家グレタ・トゥンベリさん>
グレタさんは、各国が「温室効果ガス削減量を二重カウントしたり、海外に(数字を)移転させたりと、ずる賢い方法を見つけている」と指摘。温室ガス排出量削減の公約を掲げている先進国に対しては「航空機や輸出入製品の分を加算しておらず、ミスリーディングだ」と断じた。
グレタさんはまた、「(気候変動問題で)一番危険なのは、政治家や企業トップが実際は何もしていないのに、行動していると見せかけていることだ」と強調。「対策を実行していると素晴らしい言葉で言うだけでは、利益以上に害をもたらす」と非難した。
2019.12.3-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/life/news/191202/lif1912020035-n1.html
COP25開幕 地球温暖化が進めば洪水拡大、サンゴ消失も
国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)が2日、スペイン・マドリードで開幕した。地球温暖化が今後も進行した場合、今世紀末の地球は極端に気温が高い日が増え、中緯度地域の大半と熱帯域で大雨が頻繁に起きるとみられる。一方、中緯度と亜熱帯の乾燥地域では降水量が減少し、干魃が進む。
世界の平均気温が産業革命以前に比べて2度上昇した場合、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は洪水の被害を受ける世界の人口が今世紀初頭の2・7倍に増えると予測。近年の日本のように台風や水害の頻度が増し、被害が大型化するためだ。
北極海では少なくとも10年に1回程度、夏の海氷が解けて消失し、南極やグリーンランドの氷床も減少。水温上昇による海水の膨張もあり、海面水位が数メートル上昇する可能性が指摘され、島嶼(とうしょ)国の一部は存亡の危機にさらされる。
生態系も大きな影響を受ける。多くの生物が気候変動に対応できず、生物多様性が低下。サンゴ礁の99%以上が消失するほか、脊椎動物の8%、植物の16%の生息域が半分以下に減少するとみられている。
また、農作物が育ちにくい地域が拡大し、小麦やコメなど穀物の収穫量が減り品質も低下。漁業も漁場や漁期が変化し、農林水産業全体が打撃を受けそうだ。
2019.12.2-NHK NEWS WEB-
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191202/k10012198391000.html
COP25開幕 温室効果ガス削減へ対策強化の機運高まるか
地球温暖化対策を話し合う国際会議、「COP25」が2日、スペインで開幕します。国連のグテーレス事務総長が記者会見を開き、各国に対し、温室効果ガスの削減目標を引き上げるなど対策の強化を表明するよう求めました。
「COP25」は国連の主導で開かれる地球温暖化対策を話し合う会議で190を超える国と地域が参加して、日本時間の2日夜、スペインのマドリードで開幕します。
開幕を前に、グテーレス事務総長が現地で記者会見を開き、自然災害の頻度が増し、人的、経済的な被害が大きくなっているとして「気候変動は長期的な問題ではない。今まさに私たちは危機に直面している」と指摘しました。
そのうえで「各国の今のままの努力では不十分なのは明らかだ。足りないのは政治的な意思だ。会議では、各国に責任感とリーダーシップを見せてもらいたい。約束を引き上げるような明確な行動を期待している」と述べ、温室効果ガスの削減目標を引き上げるなど具体的な対策の強化を表明するよう求めました。
会議では、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」が来年から始まるのを前に、実施に必要なルールのうち協議が続いている一部について合意を目指すことになります。
また、開幕に先立ち世界全体の温室効果ガスの排出量は増え続けていることが明らかになったほか、世界第2位の温室効果ガスの排出国、アメリカがパリ協定からの離脱を正式に通告したことによる影響も懸念されていて、温室効果ガスの削減に向けて対策を強化する機運が高まるかが焦点となります。
「COP25」は今月13日まで開かれ、日本からは小泉環境大臣が出席する予定のほかスウェーデンの16歳、グレタ・トゥーンベリさんも参加することになっています。
1.5度への機運は
今回のCOPでは、各国が温室効果ガスの削減目標を引き上げる機運が高まるかが焦点の一つとなります。その際にポイントとなるのが「1.5度」という数字です。去年10月、世界の科学者などでつくる国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」が特別報告書を発表し「世界の平均気温は2017年時点で産業革命前に比べておよそ1度上昇している。今のままでは、早ければ2030年には1.5度上昇し、異常気象がさらに増加する」と予測しました。
それでも「2度上昇した場合と比べれば生態系への影響はかなり低い」としたうえで、各国がいま掲げている目標では、世界の平均気温はおよそ3度上昇してしまうと指摘したのです。
日本を含む世界各地で、洪水や高潮、猛暑など地球温暖化が影響しているとみられる災害が相次ぐなか、この予測は関係者の危機感を強め、温暖化をせめて1.5度に抑えることが、世界的に意識されるようになりました。
国連のグテーレス事務総長は、ことし9月、国連総会に合わせて温暖化対策サミットを開き、これまでの対策を上回る具体策を提示するよう各国に求めました。
国連によると、これまでにフランスやドイツなど70近い国が2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを約束するなど、対策を強化する動きが広がっているということです。
一方で、日本や中国、インドといった主要な排出国は2050年までに排出量を実質ゼロにすることを約束していないなど温度差があるほか、アメリカのパリ協定離脱による影響も懸念されています。
合意済みのルールと残る課題
「パリ協定」を実施するために必要なルールは、多くが去年、ポーランドで開かれたCOP24で採択されました。
途上国を含む、すべての国が温室効果ガス削減の実施状況を詳しく報告し、専門家が2年に1度、検証する方法が決まったほか、5年ごとに国連に提出する削減目標は、削減するガスの種類や具体的な計画に加えて、その国の実情に照らして適正で十分高い目標といえるのか、その根拠なども詳しく示すことになりました。
また、途上国に行う資金支援では、対象となる国や支援の程度、目的などを可能な範囲で国連の事務局に2年に1度、報告することが先進国に義務づけられ、その内容を専門家が検証します。そして、各国が状況を定期的に確認して5年ごとに目標を引き上げ、温暖化対策を段階的に強化する道筋が明確化されました。
一方で、合意に至らなかった点も残されています。他国への技術支援などで削減できた温室効果ガスの排出量を、自国の削減分として計算する仕組みや、その際にダブルカウントを避けるためのルールなどです。
今回のCOP25では、こうした残された項目について合意に至ることができるのかが、もう一つの焦点となります。
パリ協定とは
「パリ協定」は、地球温暖化対策の国際的な枠組みで、来年から本格的に動き出すことになっています。4年前の2015年にフランスのパリで開かれた「COP21」で採択され、翌年11月に発効。およそ180の国と地域が批准しています。
世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満に保つとともに、1.5度に抑える努力をすることや、世界全体の温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質的にゼロにすることを目標に掲げています。
先進国だけに排出削減を義務づけた「京都議定書」とは異なり、発展途上国を含む、すべての国が削減に取り組むことを定めています。来年以降、各国は5年ごとに削減目標を国連に提出し、取り組みの状況を報告することが義務づけられています。
専門家「日本は最大限の努力を示す必要」
「COP25」について地球温暖化対策に詳しい専門家は、日本が会議で役割を果たすには、温室効果ガスの削減に向けて最大限の努力をしていると示すことが必要だと指摘しています。
温暖化対策の国際交渉に詳しい東京大学の高村ゆかり教授は「COP25」の焦点について、世界各地で気候変動が一因と考えられる自然災害が続き危機感が高まるなか、今回の会議が開かれることから「各国の目標の見直しや引き上げに向けて機運を高めること、そのために何らかの合意をすることが期待されている」と話しています。
そして、「日本は長期戦略の中で、今世紀後半のできるだけ早い時期に脱炭素社会の実現を目指すとしている。その目標に向けて“2050年排出ゼロ”に相当する努力をしていると示すことが、世界の期待に応えることになると思う」として、日本が会議で役割を果たすためには、最大限の努力をしていると示すことが必要だと指摘しました。
一方で、石炭火力発電所を利用し続ける日本に対して、国際的な批判が高まっていることについて「脱炭素社会を目指すなかで石炭火力発電所をどうしていくのか、長期的な方針や計画が見えてこない。どう減らしていくのかを国際社会に示す必要がある」と話していました。