医療-トランスジェンダ問題-1


2024.04.24-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240424-WZKUX7F3QZMWRBD2DOW3VNG2LM/
適合手術なしで男性への性別変更認める、静岡家裁 最高裁の違憲判断後に審判申し立て

  生殖能力をなくす性別適合手術をしないまま戸籍上の性別を女性から男性に変更するよう求めていた静岡市の会社社長、Aさん(54)の家事審判で、静岡家裁は性別変更を認めた。決定は18日付

  Aさんによると、家裁で変更が認められた後、手続きのために訪れた区役所で職員から「おめでとうございます」と声をかけられた。一方で「気持ち悪い」「公共施設を共有するのが怖い」といった内容のメールも多数寄せられたという。
  Aさんは平成13年、性同一性障害と診断され、ホルモン治療を開始。今年2月、性別適合手術をせずに戸籍上の性別変更を求める家事審判を申し立てていた
  性同一性障害特例法には、性別変更の際に生殖能力をなくす手術を事実上求める規定(生殖能力要件)があるが、最高裁は昨年10月に違憲、無効とする決定を出した。


2024.04.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240403-PWMBKRSOP5IGFCG3HUIC26UJLY/
脅迫のトランスジェンダー本「安全確保できぬ」書店で販売自粛広がる アマゾンは総合1位

  3日に発売された翻訳本「トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇」(アビゲイル・シュライアー著)発行元の産経新聞出版や書店に対する脅迫が相次ぎ、安全の確保を理由として複数の書店に販売自粛動きが広がった予定通り店頭に並べた書店では、手に取る客の姿が目立った。

  「お客さまと従業員の生命や身体に危害を加えられるリスクがある」全国展開する書店の担当者は販売見合わせの理由をこう説明した。今後も販売するかどうかは未定で、こうした事態は「知る限りない」と語った。
  一方、販売を開始した関西地区の大型店は「たくさん仕入れたが、すべては店頭に出さず、少しずつ置きます」。中には「本部から自粛の要請があったが、納得がいかない。積極的に売りたい」と話すチェーン店もあった
  一部の書店系通販サイトでも注文できない状態が続いたが、通販大手の「アマゾン」では本の売れ筋ランキングで総合1位となるなど関心の高さがうかがわれた
  東京都内の大型書店では奥まった場所に設けられたノンフィクション売り場に数冊が平積みされ、男性客らが手に取って内容に目を通していた
  同書を巡っては、出版中止を求め放火を予告する脅迫メールが、複数の書店や発行元の産経新聞出版などに送付された。産経新聞出版は威力業務妨害罪で警視庁に被害届を提出している。
  産経新聞出版では「脅迫に応じることは、出版文化と表現の自由を脅かす前例を作ることになり得る」として、予定通り刊行。著者のシュライアーさんはX(旧ツイッター)で「悪質な圧力に屈することなく、書籍は発行する」とした産経新聞出版の姿勢に、「This is the way!(これがその方法だ!)」と書き込んだ。


2024.03.30-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240330-MHOJKNM325BGFBGT4JVPMTOOQI/
「トランスジェンダーになりたい少女たち」 発行元や複数の書店に放火の脅迫、被害届提出

  4月3日に発行予定の翻訳本「トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇」を巡り、同書を扱う書店への放火を予告する脅迫メールが、発行元の産経新聞出版宛てに届けられていることが30日、分かった。複数の書店にも同様のメールが送られており、産経新聞出版は威力業務妨害罪で警視庁に被害届を提出した。

  メールはドイツのドメインが使われており、産経新聞社のアドレスに送られてきた。「原著の内容はトランスジェンダー当事者に対する差別を扇動する」として、「出版の中止」などを求めた上で、発売した場合には抗議活動として同書を扱った書店に火を放つとしている。
  翻訳本は米ジャーナリスト、アビゲイル・シュライアーさんによるノンフィクション。ブームに煽られ性別変更したが、手術などで回復不可能なダメージを受け後悔する少女らを取材しているすでにアマゾンなどネット書店では予約が始まっている
  同書は2020年に米国で発売されたのに続き、フランス語、ドイツ語、スペイン語など9つの言語に翻訳されて出版され、多くの人に読まれている日本語版については、昨年末に大手出版社のKADOKAWAから発行予定だったが、一部の強い批判や同社本社前での抗議集会の予告などを受けて発行中止となった経緯がある。
  産経新聞出版では「多数の人が集まる書店を脅すなど許されない行為。悪質な圧力に屈することなく、書籍は発行します。被害届を出したほか、書店にも状況を説明していきます」としている。


2024.03.25-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240325-CCBO54JDBRDJTP6QTSNHOMXAZE/
「女性は人数多くてもマイノリティー」武蔵大・千田有紀教授 性自認尊重のトレンドに懸念
(奥原慎平)

  武蔵大の千田有紀教授(家族社会学・ジェンダー論)が国会内で講演し、生物学的な性差から性自認(心の性)を重視する流れが強まっているとして、「性別の基準に性自認の尊重を置けば、『女性に見えないけど、あなたは本当に女性なの』と疑うこと自体、差別とされかねない。女性は数は多くてもマイノリティーだということを分かってほしい」と述べ、警鐘を鳴らした。女性の権利保護を目指す「女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会」が今月18日に開いた集会でも講演した。千田氏の発言要旨は以下の通り。

見られる存在になることに不安
  女性は、心と体が一致しない性同一性障害(GID)の人たちの「体を変えたい」との思いに対し、温かなまなざしを送っていた自由な社会を目指す思いはGIDも女性も同じだ。戸籍上の性別を変更するために男性器を取ってしまうほど女の人になりたいと思っているならば、その人は女性だと思い、共存していた
  《昨年10月、最高裁大法廷は性同一性障害特例法が戸籍上の性別を変更する上で求めていた「生殖腺がないか生殖機能を永続的に欠く状態」(生殖不能要件)の規定を憲法違反と判断した。「変更後の性別の性器に似た外観を備えている」(外観要件)との規定については広島高裁に差し戻し今後、憲法適合性の審理が予定される。双方の要件を合わせて「手術要件」といわれる》
  判決では「女性は男性器を見たくないのだろう」(=異性の性器を見せられる羞恥心)といった指摘があった。そうではない。女性は自分の身体を(元男性に)見られることに対し不安を感じている。ここが理解されていない
  手術要件がなくなれば性別変更する上で司法や医療の関与が薄まる。性同一性障害特例法は自己申告に基づく性別変更を可能とする『ジェンダー・セルフ・ID』の制度に近づくことになる。短時間で性同一性障害の診断を下すべきではない。診断基準を厳しくするのが解決の道だろう。
  海外では性自認を尊重するあまり、女湯や女性トイレでさまざまなトラブルが起きている。
女性スペースの安全は身体で担保
  国連が定義したトランスジェンダーには異性装者やノンバイナリー(男性にも女性にも当てはまらない人)といった属性に加え、女性のアイデンティティーを主張するのに、外見上はひげを生やしたままなど女性にみられる気がない属性もある。その人の性自認を疑えば、「差別」とされる世界が広がりつつある
  性自認を認めるなというのではない。これまで女性スペースの安全性や女性スポーツの公平性は身体によって担保されてきたが、性自認の尊重が過ぎれば社会のシステムが崩れる。例えば、女子トイレは女性が社会参加する上で基本的なインフラだ。女性はトイレでの安全性が担保されないと外に出られない。性自認は自由だが、別に制度的な解決が政治に求められる。
  LGBT活動家の主張には「女子トイレや女湯に入りたいというトランスジェンダー女性はいない」という声に加え、「手術要件が廃止されれば、その時に話し合えばいい」という声もある。「女子トイレを使いたい」と主張するトランスジェンダー女性(生まれつきの性別は男性、性自認は女性)がSNS上で女性に対して暴力的な言葉を使っているケースもある。
  
(トランス女性の権利を優先する)LGBT活動家から「女性はマジョリティーだ」といわれている。女性は妊娠する身体を持ち、相対的に脆弱(ぜいじゃく)だ。数が多くても女性はマイノリティーだということを分かってほしい。
(奥原慎平)


2022.08.07-Yahoo!Japanニュース(スポ-ツ報知)-https://news.yahoo.co.jp/articles/18963f0092f5990e31c6fac6bda769b3d38b7fd1
性別適合手術経てプロ復帰目指す元女子世界王者・真道ゴー、6年ぶり観客前で“対戦”「足ガクガクした」
-報知新聞社-

  性別適合手術を経て男子としてプロボクシング復帰を目指す元女子WBC世界フライ級王者・真道ゴーが7日、大阪・枚方市立総合体育館で行われた所属のグリーンツダジムの興行で「ジェンダー規定作成のための事前評価スパーリング」(3分2ラウンド)を実施した。

  女子としてのラストマッチから6年のブランク。ついに真道が有観客のリングで男子プロと拳を交えた。「足がガクガクしました」。もちろん女子選手が胸部を守るチェストガードは装着していない。引き締まったボディーからジャブやストレートを繰り出し、ジムメートの森本元樹と対等に渡り合った。「リングに上がって力みすぎました。練習に励みたいです」と苦笑いを浮かべた。

  真道とジムの本石昌也会長は、この日のプロテスト実施を希望していた。だが日本ボクシングコミッション(JBC)の規定制作が間に合わず、折衝案として「事前評価スパーリング」としてリングに上がることに決定したのは前日の6日。「私の人生は波乱万丈なのでモチベーションが落ちるということはなかったです」と真道。その通り、12年の世界王座奪取、14年の陥落、16年のラストマッチ、そして、17年の性別適合手術、戸籍変更、一般女性との結婚と波乱の人生を過ごしてきた。次なる目標が、男子プロとしての再起だ。

   この日のスパーリングを叩き台にして、JBCがジェンダー規定を制作することになる。JBCの坂本相悟関西事務局長は「映像を理事会などに諮るための材料として(本部に)提出する」と説明。ルール作りの工程表は存在せず、いつ真道が男子選手としてプロテストを受けられるようになるかは不透明だ
   それでも本石会長は「僕は絶対に(プロテスト受検が)できると信じている。チャンスが早く来ようが遅く来ようが僕らはブレないですね」と前を見据えた。真道は先月35歳の誕生日を迎えており、プロテスト受験資格の満34歳を超えている。だが誕生日より前に申請を済ませており「(JBCが)考慮しましょう、と言ってくれた」(本石会長)と年齢に関して障壁はない。
   「私はとにかくレベルアップして、リングでいいパフォーマンスができるよう頑張りたい」と真道。日本プロボクシング史上初となる元女子選手の男子選手としてのデビューへ、大きな一歩を踏み出した。  

◆真道 ゴー(しんどう・ごー)本名・橋本浩(ごう)
  旧名は橋本めぐみ。1987年7月18日、和歌山市生まれ。35歳。小学4年からバスケットボールを始め、和歌山北高で国体出場。天理大中退。ボクシングに転向し、2008年プロデビュー。13年にWBC女子世界フライ級王座を獲得し、2度防衛。17年に引退。通算成績は16勝(11KO)4敗。身長168センチ。右ボクサーファイター。家族は妻と1男2女。  
◆主なトランスジェンダー選手  
  重量挙げ・ローレル・ハバード(ニュージーランド) 43歳の昨夏、東京五輪女子87キロ超級出場。五輪初のトランスジェンダー女性選手として注目されたが、記録なしで敗れた。国際オリンピック委員会がガイドラインを策定した15年以前は、男子選手として競技。  
  競艇・安藤大将 21歳の84年、女子選手・安藤千夏でデビュー。02年、男子選手・安藤大将(ひろまさ)で“再デビュー”。05年、引退。通算成績は出走3546回454勝、優勝1回(うち男子では出走369回28勝、優勝なし)。
報知新聞社


2021.07.17-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20211117-PABQXM2Z5BLOHK3BVPICB3IDDM/
トランスジェンダー選手巡りIOCが新指針 10項目の原則提示

  国際オリンピック委員会(IOC)は16日、出生時の性別と自認する性が異なるトランスジェンダーの選手や男性ホルモンのテストステロン値が高い女子選手を巡り、各国際競技連盟(IF)が出場資格の基準を策定する上で参考となる新指針を発表した。無差別、公平性、証拠に基づくアプローチなど10項目の基本原則を考慮するよう求めた。

  テストステロン値が12カ月間、一定以下などの条件でトランス女性の女子競技参加を認めた2015年のガイドラインを改めたもので、「資格基準を満たすために医学的に不必要な手順や治療を受けるよう、IFやスポーツ団体から圧力をかけられてはいけない」とした。250人以上のアスリートや人権、法律、医療の各専門家などと約2年の協議を経てまとめた。

  世界陸連はテストステロン値が高い選手に対し、薬などで基準内に下げなければ一部の女子種目で国際大会に出られないと制限しており、女子800メートルで2連覇していたキャスター・セメンヤ(南アフリカ)は東京五輪に出場できなかった

  東京大会では重量挙げのローレル・ハバード(ニュージーランド)が性別適合手術を受けたトランスジェンダー女性として初めて五輪に出場した。(共同)


トランスジェンダー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


  トランスジェンダー英語: Transgender)とは、出生時に、身体の観察の結果、医師により割り当てられ、出生証明書や出生届に記入された性別、あるいは続柄が、自身の性同一性またはジェンダー表現と異なる人々を示す総称である。性的少数者のひとつとして挙げられる。かつてはトランスジェンダーに含まれていた異性装(男装や女装、クロスドレッサー、トランスヴェスタイト)は、トランスジェンダーとは区別されるようになった。

  性同一性は、性自認、ジェンダー・アイデンティティとも呼ばれ、自身の性(ジェンダー)をどのように認識しているのかを指すもので、自称ではないとされているが、他人の性自認を疑ったり、医師の診断書を求めること、何らかの根拠を求めることは差別とされている。
  トランスジェンダーを「体の性と心の性の不一致」と表現するのは不正確とされ、「元男性」「元女性」といった言い方も不適切である。
  「トランスジェンダー男性(トランス男性)」は、男性の性同一性をもち出生時に医師により女性と割り当てられた人、「トランスジェンダー女性(トランス女性)」は、女性の性同一性をもち出生時に医師により男性と割り当てられた人を指す。
  「FtM」や「MtF」という言葉も使われていることはあるが、「トランスジェンダー男性」や「トランスジェンダー女性」の方がより望ましい表現とされる。ただし、本人が呼ばれたい呼称を使用するのが大前提であるので、本人が「FtM」や「MtF」という呼び名を希望し、「トランス男性」や「トランス女性」と呼ばれることを望まないのであれば、強要すべきではない。

  性同一性が男女のどちらでもない人はXジェンダーやノンバイナリーといった用語を使う場合もある。「トランスジェンダー」は形容詞であるため、通常は人を形容する言葉として、「トランスジェンダーの人」「トランスジェンダー女性(トランスジェンダー男性)」「トランス女性(トランス男性)」などと、人を指す名詞と併用して使われる。
  トランスジェンダーに性同一性障害の人々も含まれるが、あくまでも「トランスジェンダー = 性同一性障害」ではない。また、自分を性同一性障害者と呼ばれることを嫌ったり、「自分は性同一性障害の立場を取らない」と主張するトランスジェンダーの人もいるので、特に注意が必要である。
概要
  厳密にトランスジェンダーとは、複数の性同一性(ジェンダー・アイデンティティ)の総称で、出生時に割り当てられた性別と対極にある性同一性(トランス女性とトランス男性)の他に、男女(性別二元制)の枠にはまらない性同一性(Xジェンダー、ノンバイナリー、ジェンダークィア、アジェンダーなど)も含む。トランスジェンダーに第三の性(後述)を含む場合もある。日本語では「性別越境者」と呼称されることがある。
  トランスジェンダーに、性嗜好であるオートガイネフィリアは含まれない。また、トランスジェンダーという用語は、クロスドレッサー(異性装もしくは女装)やドラァグクイーンとは異なるものである。
  トランスジェンダーの人の中にはジェンダー・ディスフォリア(性別違和)を感じる人も多く、違和を解消するためにホルモン補充療法や、性別適合手術心理療法などの医学的な措置を用いる場合がある。このような措置を望まない、もしくは必要としない人もいれば、金銭的、医学的、制度的な理由で選択できない場合もある。
  医学的処置のうち、身体的な性別移行(トランジション)を希望した人のなかには、トランスセクシュアルという呼称を希望する人もいるが、近年はトランジションの有無にかかわらずトランスジェンダーという呼称を希望する人が多い。
  一般的に、ジェンダー表現はその人物の性同一性と関係していることも多いが、必ずそうであるわけではない。特定のジェンダーを連想される、もしくは特定の性役割にならった外見、行動や態度は、必ずしもそれと一致した性同一性を持つことを意味するわけではない。
  トランスジェンダーであることは、その人のセクシュアリティ(性的指向)とは独立した概念である。すなわち、異性愛同性愛バイセクシュアルアセクシュアルなどを含む多様なセクシュアリティを持つトランスジェンダーの人がいる。また、性的指向であるLGBに恩恵をもたらす制度は必ずしもトランスジェンダーにとっても恩恵をもたらすとは限らない
  トランスジェンダーに対して、出生時に割り当てられた性別と性同一性が一致している人(トランスジェンダーではない人)のことをシスジェンダーと形容する。
歴史
古代
  現在の「トランスジェンダー」という言葉が意味している「出生時に身体で割り振られた性が自身の性同一性またはジェンダー表現と異なる人々」は新しく現れたものではなく、「トランスジェンダー」という言葉が生まれてもいない頃、太古の人類の歴史から出生時の生物学的性別とは異なる性別で生きてきた人は存在したと推察されており、それを示唆する考古学的証拠は世界各地でいくつも発見されている。
  最も初期のものだと、紀元前5000年 - 3000年頃、シュメール神話の女神イナンナに仕えた司祭であるガラが挙げられる。
  また、世界中の多くの民族の間で、男女二元論に当てはまらないさまざまな性別が存在しており、先住民の中には今もその文化を継承しているものもいる。
  性器や生殖能力に基づいて男性と女性の2つに区分されるという現在に普及している規範的考えは現代的な西洋価値観に基づいて広まったものとされるが、実際は人類は歴史のほとんどでさまざまな文化の中で男性性と女性性の流動的な概念を持って生きてきた。こうした事実の発見が遅れた理由として、考古学者は、性別二元論に適合しない人が大昔にいるという証拠に定期的に出くわしても、「異常」または「曖昧」とみなして認識してこなかったことが指摘されている。
1800年代
  
性同一性と性的指向の現代的な概念はまだ存在しておらず、混在するように扱われた。例えば、性科学の専門家で人権社会運動家でもあるカール・ハインリッヒ・ウルリッヒスは、男性の精神を持っていて性的魅力を女性に感じる女性の身体の人を「Urningin」、女性の精神を持っていて性的魅力を男性に感じる男性の身体の人を「Urning」と呼ぶことを提唱した
  出生時の性別どおりの規範的な振る舞いをしないこと(同性愛や異性装を含む)は「ソドミー」と呼ばれ、1800年代ではアメリカの多くの地域ではソドミーが違法であり、異性装をしたことで逮捕された人々が大勢いた。著名な例として、アーネスト・ボールトンとフレデリック・パークジョゼフ・ロブデルなどが挙げられる。
1900年代
  性同一性と性的指向の現代的な概念が作られて明確に区別されるようになり始め、現在の「トランスジェンダー」という言葉が少しずつ構築されていったのが1900年代である。
  1910年に「Transvestite(トランスヴェスタイト)」という単語が作られ、1949年には「Transsexual(トランスセクシュアル)」という単語が生まれ、1971年に「Transgender(トランスジェンダー)」という単語が出現した
  非西欧社会での非伝統的な性同一性については、第三の性の節を参照のこと。
  医療概念としてのトランスセクシュアル(現在の日本において性転換症と称されるものに相当)の当事者が、自らのジェンダー・アイデンティティ(性同一性)のあり方が精神疾患であるとの差別的ラベリングを忌避するために、1980年代末よりその当事者が自称として用い始めた用語である(アメリカのクロスドレッサーヴァージニア・プリンスによる造語とされることがあるが、それは不正確である。彼女はこの言葉の普及に大きく貢献したが、提唱者ではない)。
トランスヴェスタイトとトランスセクシュアル
  モントリオール宣言以降、欧州連合国際連合人権問題を扱う公文書においては、ホルモン療法や手術療法を要するトランスセクシュアル(性別移行)と、そうした治療を要しない性同一性による恒久的あるいは一時的異性装を総称して「トランスジェンダー」と称している。
  しかしこれらの国際機関は性別適合手術の保険適応の必要性が一連の公文書に記されていることからも、手術療法や法的性別変更を要するトランスセクシュアルと、性同一性に由来する異性装者(トランスヴェスタイトまたはクロスドレッサー)らを「トランスジェンダー」という言葉によって混同していない。
  トランスセクシュアルの問題は単独では当事者の数が極めて少なく(マイノリティの中のマイノリティ)、不当な汚名を着せられ迫害を受けてきたにも拘らず人権問題として公式に取り上げにくかったため、同じような境遇にある異性装者も包括して国際的な公的機関でその人権救済が問題とされる必要性から「トランスジェンダー」という表現が用いられるようになったLGBTという一見同性愛とトランスジェンダーを混同しているような印象を与える表現が公的に用いられるようになったのも同じ理由である
概念の変化
  以前は、以下のように体の性別移行の一過程のみを説明する言葉であった。
   ・性同一性と割当てられた性別の不一致に悩んでいる状態
   ・TV(=トランスヴェスタイト。異性の服装を身につけることによって性別の違和感を緩和している状態)
   ・TG(=トランスジェンダー。性ホルモン剤の投与で体つきを性同一性の性別に近づけ異性装等を行う状態)
   ・TS(トランスセクシュアルホルモン投与による体の変化でも悩みの解決がなされず、外科的手術により性器の外観を性同一性の性器に近づけ性同一性の性別で生活する状態)

  今日では外科手術(=性別適合手術)まで望まない性別移行(性同一性障害)当事者の存在や、日本国の性別移行(性同一性障害)当事者に対する医療のインフラ整備が遅れていること等のため、このプロセス通り進まない人も大勢存在し、割り当てられた性別と異なる性同一性で生活をする場合、この人達全般を指してトランスジェンダーと呼称するに至っている。
  しかしながら北欧諸国においては「トランスジェンダー」という表現は、異性装者を意味する外来語としてトランスセクシュアルを含まず否定的な意味を伴うので、スウェーデンノルウェーにおいては代わりに「トランスペルソン」という表現が用いられる。なおフィンランド語にはトランスセクシュアルと異性装を包括する概念がなくTranssexualismのフィンランド語形である「fi:Transsukupuolisuus」という表現が用いられるので注意が必要である。
ノンバイナリー(Xジェンダー)(詳細は「Xジェンダー」を参照)
  トランスジェンダーの中で、性自認が男女のいずれでもない性となる者を「ノンバイナリーXジェンダー」という。「Xジェンダー」は主に日本で使われる用語で、英語圏における「ノンバイナリー」とほぼ同様の意味である。また、社会における男女二元論的な規範とは異なるかたちで自分を認識したり、表現したりする人の総称として「ジェンダー・ノンコンフォーミング」という言葉もある。

  これに当てはまるのは主に「両性」や「無性」や「中性」の性同一性を持つ者である。その様相は多様であり、その中には同一視する性別が変わる者や、心の部分部分で違う性に同一化する者等がいる。個人差はあるが、自分の心が男女どちらか判らず混乱を覚えたり、男女どちらかの性であることを強要される環境に対し、拠り所の無さや違和感や苦痛を覚える。ただし「Xジェンダー」のこの様相は、記憶のあるスイッチング(人格変換)を有する非典型例の解離性同一性障害の症状とも酷似しており、入れ替わる異性の心は乖離した人格であった報告例もあるため、一概に性同一性障害であると思いこむのは早計である
  これらXジェンダー者の場合、(性同一性障害当事者は男性女性のどちらかに同一性を持つと考えられがちで)医療的な性同一性障害の診断基準には適合しないとされることがあるが、実際の診療の場では、DSM5の「性別違和」の診断基準においてオールタナティブな性別のあり方を記載しているため、精神科に行けば中性や無性等もまた精神科疾患の範疇内に入る。
  また、「トランス」という接頭辞が、「世間においての、「男性」「女性」という二元論的性別観を前提に一方の性別から他方の性別への完全な移行」を表すニュアンスをもつことから、例えば「Xジェンダー」のような独自の性別をもつ者や、社会的制度としてのジェンダー自体を否定する者は、ジェンダーベンダーgender bender、性別をねじ曲げる人)、ジェンダーブレンダーgender blender、性別を混合する人)、ジェンダークィアgenderqueer、既存の性別の枠組みにあてはまらない、または流動的な人)と名乗る場合もある。
第三の性
  非西洋文化圏の一部でノンバイナリー(Xジェンダー)に近い人々が伝統的に第三の性として認知されていた。例を挙げると、ナバホ族のナドゥル、南アジアヒジュラードミニカ共和国のゲイヴドーシェあるいはマチィ・エムブラ、ザンビアのクウォル・アトゥムオル、フィリピンセブ州のバヨットあるいはラキン・オン、インドネシアのワリア、タヒチのマフ、フィリピンのバクラやバベイラン、インドネシアのバンシ、タイのカトゥーイあるいはサオプラペーッソン、ミャンマーのアコルト、マレーのアクニュアー、オマーンのハンニース、トルコのコチェック、セネガルのゴールディグーナ、モロッコのハッサスなどがある。
  アルバニアコソボ共和国モンテネグロなどバルカン半島には、女性が長老に宣誓した当日から死ぬまでずっと男性として生活する宣誓処女という、ローマカトリックやイスラム教の団体も受け入れている文化がある。宣誓処女になることを希望した女性は、長老の前で誓いを立て、短髪にして男性服を纏い、煙草を吸いながら身のこなし男性らしく見えるようになるまで練習をする。誓いを立てた後に男性名に改名する者も多く、誓い通り残りの人生を未婚で生きる
旗・シンボル
  LGBTの旗・シンボルとして、虹色の旗が知られるが、トランスジェンダーの旗として、「トランスジェンダー・プライド・フラッグ(Transgender Pride Flag)」が知られている
  トランスジェンダー・プライド・フラッグは、アメリカのトランス女性モニカ・ヘルムズによって1999年に創られ、2000年に米国アリゾナ州フェニックスのプライドパレードで初めて発表された。
  この旗は、トランスジェンダーコミュニティを表し、中央に5つの水平ストライプ(ライトブルー2つ、ピンク2つ、ホワイト1つ)から構成されている。
  ヘルムズはトランスジェンダー・プライド・フラッグの意味を次のように記述している
  「上下の水平ストライプは、男の赤ちゃんの伝統的な色のライトブルーで、その隣のストライプは女の赤ちゃんの伝統的な色のピンク。中間のストライプは白で、間性、移行中、または中立的や未定義の性別を持っていると考えている人のためのものです。あなたがこの旗をどのように掲げても、それは常に正しいものであり、私たちの生活の中で正確さを見出すことを意味しています」
  英国では、ブライトン・アンド・ホヴ評議会が、トランスジェンダー追悼の日にこの旗を掲揚している。ロンドン交通局はまた、2016年トランスジェンダー認知週間に、ロンドン地下鉄ブロードウェイ55番地本部から旗を掲揚した。
  2012年11月19日と20日に初めて、サンフランシスコのカストロ地区の大きな公共旗掲揚台(通常はレインボー・フラッグが掲揚される)から掲げられた。トランスジェンダー追悼の日を記念したもので、旗を掲げる式典は地元のドラァグクイーンLa Monistatによって主宰された。
  2014年8月19日、モニカ・ヘルムズはトランスジェンダー・プライド・フラッグ(現物)をスミソニアン国立アメリカ歴史博物館に寄贈した。
  2016年、サンタクララ郡はトランスジェンダー・プライド・フラッグを掲げる、米国で最初の郡政府になった。

誤解・偏見・差別
  トランスジェンダー当事者が現在使用していない名前を本人の同意なく使用することは「デッドネーミング」と呼ばれ、差別にあたるので注意が必要である。
  子どもの年齢で性別移行を始める人もいるが「性別移行したことを後悔している子どもが多い」という主張も一部で広まっている。しかし、イギリスのNHS(国民保健サービス)の報告書によれば、NHSを使って性別移行をした3398人に調査したところ、性別移行を後悔していたのは0.47%との結果がでており、性別移行を後悔している子どもが多いことを裏付けるようなデータはない。

  近年では女性専用空間にトランス女性が立ち入ることについての是非が争点となり、特に一部のフェミニストや宗教団体の間で議論が起き、女性が性犯罪などの危険に晒されると主張している者もいる。
  その議論の中、まるでトランスジェンダーを性犯罪者のように扱う言説がSNSなどで目立ち、事実に基づかない主張で不安を煽り、トランスジェンダー当事者を苦しめている状況がある。

  アメリカでは、トランスジェンダー当事者の人のうち約7割がトイレのアクセスを拒否されたり、トイレで嫌がらせを受けたり、何らかの形の身体的暴行を経験したりしたという調査結果も報告されている。
  カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究によれば、トランスジェンダーの人々に性同一性に合ったトイレなどの公共施設を使用させることで一般の安全上のリスクが高まるという証拠は確認されていない。
  すでに長年にわたって性同一性に基づく差別を禁止してきた地域がいくつもあるが、それらの地域で女性専用空間に侵入する性犯罪者が増加したという報告はなく、Equality Federationのレベッカ・アイザックスは、トランス女性の立ち入りを認めることは危険であると流布する一連の主張は「燻製ニシンの虚偽」であると語っている。
  一部の危険主張派の人々は、男性の性犯罪者が自分はトランスジェンダーであると嘘をついて罪を逃れようとする可能性を心配するが、その人の性同一性がなんであれ、性犯罪行為をした時点で性犯罪者であることには変わりなく、犯罪を誤魔化す有効な手段にはならないとヒューマン・ライツ・キャンペーン は述べている。

  トランスジェンダーのアスリートのスポーツ大会への参加はしばしば論争のまとになってきた。一部の人はトランスジェンダーの参加はスポーツ競技に不公平を招くと懸念の声をあげ、地域によってはトランスジェンダーのアスリートを競技から締め出す動きもある。とくにトランスジェンダーのアスリートがスポーツ大会で好成績をおさめると批判的な注目が高まりやすいが、一方でトランスジェンダーであれシスジェンダーであれスポーツ選手が競技で記録的な実績をだすことは別に珍しいことではなく、トランスジェンダー特有の異常な出来事であることを示すデータはない。
  アメリカ心理学会のような研究者組織やアメリカ自由人権協会のような人権団体も、トランスジェンダーのアスリートが自分の性同一性に合ったチームでプレイすることが、スポーツや競技の公平性に影響を与えるという主張を裏付ける証拠はないとしている国際スポーツ医学連盟はトランスジェンダーの選手の出場を制限することは五輪憲章の原則に反するとしている








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ここは、2021年01月~のニュースです
医療問題-1 医療-トランスジェンダー  性の問題-1へ LGBT(同性婚)の問題-1 トランンスジェンダーの問題-と内容が一致します。そちらも参照願います