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露-ロシュア問題-2021年8月~2022年2月



2022.02.28-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20220228-J4EGWIFZKRJZXMGRPOQ5AOVF7E/
露の核威嚇、米「エスカレートの危険」と非難

  【ワシントン=渡辺浩生】ウクライナへ軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領が「核抑止力部隊」に厳戒態勢へ移行するよう命じたことについて、米国防総省高官は27日、「不必要な措置であるだけではなく、エスカレートする可能性があるものだと批判した米国や同盟諸国の介入を「核の脅し」で拒否する狙いとみられる。バイデン政権はロシアの核態勢の変化に警戒を強める考えだ。

  高官は記者団に対して、プーチン氏の命令について「判断ミスが起きれば、事態を一段と危険にしかねない」と強い懸念を示し、同時に「米国が自らと同盟国とパートナーを守る能力」は、核拡大抑止力も含めて自信があると強調した。

  ホワイトハウスのサキ報道官も米ABCテレビに対して「存在しない脅威を作り出してさらなる侵略を正当化するプーチン氏のパターンだ」と非難した。
  一方、同高官はロシア軍の動きについて、ウクライナ国境沿いやベラルーシに展開した戦闘部隊のうち3分の2がウクライナ国内に侵入し、過去24時間で投入兵力を増強させたことを明らかにした。

  ウクライナ側の強固な抵抗によって、ロシア軍の侵攻のペースは遅くなっており、主要都市の制圧には至っていない。一部の部隊に燃料不足兵士の士気低下がみられるという。
  そうした中、核担当部隊への厳戒命令は、侵攻が予想以上に難航する一方、米国の同盟諸国がウクライナへの軍事支援や対露経済制裁を拡大する中、「核の脅し」を使って西側の介入を阻止したいプーチン氏の思惑があるとみられる。
  プーチン氏は24日の軍事作戦を表明した演説で「ロシアは最も強力な核兵器保有国のひとつだ」と誇示し欧米諸国を牽制(けんせい)していた。


2022.02.25-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20220225-L74SPJD4YNOITBO73G5QJ3UNHY/
国境目指す市民たち「独裁者の暴挙 歯止めない」 ウクライナ西部ルポ

  ロシアのウクライナ侵攻を受け、同国西部の古都リビウは様相を一変させた国境を越えて隣国ポーランドへ脱出しようとする人々が各地から殺到。市内のガソリンスタンドでは給油を待つ長い車列ができ、スーパーでは男女たちが食料を買い求めた。平和な暮らしを奪われ、恐怖と不安におののく人々の姿があった。

  ロシアの侵攻に備え、徹夜で仕事をしていた24日午前5時(日本時間同日正午)ごろ、突然、米CNNが「ウクライナ各地への攻撃が始まった」と報じ、記者(佐藤)はホテルを飛び出した。
  首都キエフから約500キロ離れたリビウ市街に変わりはなかったが、しばらくすると、約150キロ離れた北東の町ルツクが砲撃されたとの情報が入る。午前8時前には、教会や石畳の美しい古都に警報のサイレンが響きわたった。避難のためスーツケースを引いて街中を慌てて移動する人の姿も見られた。
  その後、ロシアによるウクライナ各地への空爆の状況が伝わり始めると、街はあわただしさを増した。
  スーパーには客が押し寄せ、大量の品で膨らんだ買い物袋を抱えた男女が出てくる。ガソリンスタンドやATM(現金自動預払機)の前にも人々が長い列を作った。
  正午ごろ、約70キロ離れたポーランド国境のシェヒニ検問所に着くと、すでに2~300人が越境を待っていた。ロシアとの国境に近いウクライナ北東部スムイから来た無職、アレクさん(55)は「ポーランドの娘の所に行く。スムイの友人からは『銃撃戦が始まった』と聞いた。いつ家に帰れるか分からないが、命より大切なものはない」と話した。
  同様にポーランドに越境した弁護士の女性(22)は「国を捨てて逃げるのは2度目。どんな国も政府も信じない」という。

  ルカシェンコ大統領の独裁が続くベラルーシの首都ミンスク出身。両親が民主化活動を行ったとして治安当局の尋問を受けたため、昨年暮れに監視を逃れて単独で出国。世界遺産としても知られる古都リビウに居を構えたばかりだった

  「ルカシェンコの下で国民は精神的に参っている。彼やプーチン(露大統領)の暴挙には歯止めがない。命を守るために安全な場所に行くしかない」と話した。(ウクライナ西部リビウ 佐藤貴生)


2022.02.25-東京新聞-https://www.tokyo-np.co.jp/article/162144
なぜプーチン氏は破滅的な決断を下したのか ウクライナ侵攻の背景にある「帝国」の歴史観

  ロシアのプーチン政権がウクライナ侵攻に踏み切った欧米や日本のロシア専門家や外交関係者の間では全面的な軍事侵攻には否定的見方が有力だった。公然たる侵略国となり国際的信用は失墜、巨大な制裁を招くことで疲弊している経済に大打撃となるからだ。合理的な判断を超えて破滅的ともみえる決断を下したプーチン大統領は、「帝国復活」の執念にとらわれているようだ。(元モスクワ支局長 常盤伸)

  「ウクライナは真の国家として安定した伝統がない」。プーチン氏は22日に行った演説の半分以上を割き、ロシア革命から現在に至るウクライナの歩みを延々と批判、国家の正統性そのものに疑問を呈した。

  7月に発表した論文では「ウクライナとロシアは一つの民族」との持論を展開。「ウクライナの真の主権はロシアとのパートナーシップによってのみ可能だ」と結論づけ、ウクライナの主権を事実上否定した。
  こうした妄想というべき考えの根底にあるのは、ロシアは欧米とは異なる文明を有する偉大な「帝国」であるべきだとするプーチン氏の偏った歴史観と信念だ
  ロシアが欧州からアジアにまたがる真の「帝国」となったのは、18世紀後半にエカテリーナ女帝がウクライナを併合して以降とされる。ウクライナに執着するプーチン氏の念頭には、このウクライナ国家を消滅させて「小ロシア」として組み込み、同化させた歴史があるとみられる
  こうした考えが台頭する背景にはプーチン体制の権力構造の変化も影響している。政権内では2012年の民主化運動の大弾圧以降、対欧米協調を志向するやや穏健な勢力が影響力を失い、プーチン氏の盟友のパトルシェフ安全保障会議書記ら、旧KGB(ソ連国家保安委員会)出身の「チェキスト」と総称される強硬派が完全に主導権を握った。

  チェキストの思考の根底にあるのは、現在の国際秩序の基本となっている欧米を中心とするリベラルな価値観こそが、ロシアの精神的な基盤を破壊するという危機感で、その裏返しとしての攻撃性だ。欧米のリベラルな民主主義に対して「ロシアの伝統的、精神的価値観」の優位性をことあるごとに主張するイデオロギーは、昨年全面改訂されたロシアで最も重要な戦略文書「安全保障戦略」にも明記された。
  「帝国復活」の願望を具体的に支えるのが強大な軍事力だ。プーチン氏は、ソ連崩壊で疲弊したロシア軍の改革と近代化に取り組み、国力では遠く及ばないが、米国に次ぐ世界有数の軍事大国の地位を回復した。核戦力の強化に努め、極超音速ミサイルなど最新兵器では米国を凌駕する


  米国が国内の分断などで指導力が低下した今こそ武力で国際秩序を変更する好機到来とプーチン氏はみなしたのだろう。しかし「自国民保護」や、捏造された情報を口実に他国を侵略する行動様式は、ナチス・ドイツのヒトラーに酷似する。軍事的冒険主義が行き着く先は破滅だと歴史が証明している。


2022.02.25-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20220225-B6NTX4FRMJJHVNLDCLZYIKAMRU/
露国営テレビ「政治喧伝」一色に 1週間で激変

  【モスクワ=小野田雄一】ロシアのプーチン政権の統制下にあり、多くの国民が主要情報源とする国営テレビは、ウクライナ侵攻の1週間前から、ウクライナの「罪」を強調するプロパガンダ(政治宣伝)を大々的に放送した軍事介入の正当性を国民に植え付けようとしたのは明白だ

  米欧は昨年11月以降、ロシアによるウクライナ侵攻を警告してきたが、国営テレビの報道内容にそれ以前と比べ特段の変化はみられなかった。北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大をめぐるロシアと米欧との交渉も、一般ニュースの一つとして扱われ、新型コロナウイルスなどの話題が多くを占めた。
  今年2月4日に北京冬季五輪が開幕すると、ウクライナ関連ニュースの扱いはさらに縮小。ロシアが表明したウクライナ国境付近からの「軍備撤収」の様子を伝える程度にとどまった。
  しかし17日、ウクライナ東部を実効支配する親露派武装勢力が「ウクライナからの攻撃の激化」を発表する状況は一変親露派地域で起きたとする爆発、壊れた住居や地面に落下した不発弾などの映像を繰り返し放映したほか、ロシアに避難した住民のインタビューも繰り返し流した

  ウクライナは攻撃を一貫して否定。露メディアの一部も攻撃を否定する現地住民の話を伝えたが、国営テレビはそうした情報があることを伝えなかった。
  国営テレビは21日、「独立」承認を求める親露派指導者のビデオ声明を放送。独立承認を協議した政府会議の様子を開始から終了まで放映する異例の対応を取った。その後、プーチン大統領の演説と独立承認手続きの様子を放送。合間にウクライナを非難するニュースが絶え間なく流された。

  ウクライナに侵攻した24日以降は、「特別軍事作戦」開始を表明したプーチン氏の緊急演説や、前進するロシア戦車などの映像を繰り返し放送した。一方、国内各地で反戦デモが起きたことは伝えていない。

  24日には露当局が「政府発表以外は報道するな」とする通達を報道各社に出すなど、今後、情報統制がさらに進むのは確実だ


2022.02.22-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/article/20220222-KWR7A56ZVVMGVJHVFEFO2GUIUQ/
プーチン氏「被害者」演出 親露派国家承認を正当化

  【モスクワ=小野田雄一】ロシアのプーチン大統領は21日のテレビ演説で、米欧とウクライナがロシアを追い込んだ-と強調。ロシアは〝被害者〟だとし、ウクライナ東部の一部を実効支配する親露派武装勢力の国家承認を正当化した。

  プーチン氏は「ロシアは旧ソ連崩壊後もウクライナに貿易などで多大な支援を与えてきた」と主張。しかしウクライナは恩を忘れ、親露派政権を2014年の「クーデター」で崩壊させたとした。米国がクーデターを支援したとも述べた。
  プーチン氏は、南部クリミア半島(ロシアが同年に併合)や東部の親露派支配地域の武力奪還をウクライナは目指していると主張。北大西洋条約機構(NATO)は同国を支援し、ロシアを戦争に引き込もうとしているとの認識も示した。
  「これは初めて話すが、00年に訪露したクリントン米大統領にロシアのNATO加盟の可能性について尋ねた」と明かした一方、NATOはその後も反露姿勢を強めた-とし、加盟を否定されたことを示唆した。
  プーチン氏はまた、NATOは東西ドイツ統合時に表明した「東方不拡大」の約束を破った-と改めて主張。ウクライナのNATO加盟は「時間の問題」で、脅威だと述べた米欧はNATO不拡大などロシアの要求を「無視した」とも非難し、ロシアの安全が保証されない現状では「ロシアは対抗措置を取る完全な権利を持つ」とも主張した。

  プーチン氏は、ウクライナ東部ではウクライナや同国を支援する米欧側により約400万人の住民の「ジェノサイド」(集団虐殺)が進んできたと主張。「ロシアはウクライナ領土の統一性を維持するためにあらゆることをしてきたが、無駄だった」とし、「延期してきた決定を下す」とし、国家承認を表明した。


2022.02.22-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20220222-X2IXP7AAZVJPJJF3Y3YP7AGTD4/
露の侵略構図が鮮明に 親露派独立承認
(前モスクワ支局長 遠藤良介)

  国際社会が懸念してきたロシアのウクライナ侵攻は、プーチン露政権による親露派地域の独立承認と派兵という形で現実のものとなるプーチン政権は2014年以降、ウクライナ東部紛争で親露派武装勢力を軍事支援してきたが、今後は露正規軍が直接介入するロシアがウクライナを侵略し、武力で欧州の国境線を変更する構図が鮮明になった

  東部紛争の端緒は14年2月、親露派のヤヌコビッチ政権が大規模デモを受けて崩壊したことだ。プーチン政権は憤激し、ロシア系住民が6割超を占めるウクライナ南部クリミア半島を併合した。さらに情報・特務機関を駆使して東部の各地で攪乱(かくらん)工作を行った

  「キエフではファシストが政権に就いた。ロシア系住民には身の危険が迫っている」という壮大なプロパガンダ(政治宣伝)に基づく工作だった。
  多くの地域でそれは失敗したが、ドネツク、ルガンスク両州では親露派が行政庁舎などの中枢施設を占拠し、政府軍との大規模戦闘となった。親露派は当初、小銃などの軽火器しか持っていなかったが、装備や兵器は短期間に変貌した

  14年7月には紛争地域上空でマレーシア機が撃墜され、乗客乗員298人が死亡。オランダを中心とする国際合同捜査チームはロシア軍の地対空ミサイル「ブク」が使われたと特定し、19年6月にロシア人ら4人を殺人罪で起訴している
  大規模戦闘は15年2月の和平合意(ミンスク合意)で収まったが、その後も衝突は続き、1万4千人以上が犠牲になった。ロシア兵の死傷者も明るみに出てきたが、ロシアは彼らを「除隊者」「休暇中の兵士」などと糊塗(こと)した。

  ミンスク合意は、親露派支配地域に広範な自治権を与えるウクライナによる東部国境の管理を回復する-を2本柱とした。しかし、ロシアが前者を、ウクライナが後者を優先する立場をとり、履行は行き詰まった。ロシアには、ウクライナを「連邦国家」に改変し、東部を足がかりにしてウクライナが欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に接近するのを阻止する思惑があった。
  ミンスク合意の履行が袋小路に陥ったのを受けて19年4月、プーチン政権は親露派地域の住民に簡素な手続きで国籍を付与し始めた。これまでに70万人以上が露国籍を取得し、ロシアが今回の独立承認で「自国民保護」を口実とする下地がつくられた

  ロシアが独立を承認した2地域の国境線がどう規定されるのかは判然としないロシア軍が今後、境界を画定させるといった名目で親露派支配地域の外への侵攻を想定している可能性もある(前モスクワ支局長 遠藤良介)


2022.02.22-REUTERS-https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-donbass-recognition-idJPKBN2KR041
情報BOX:深まるウクライナ危機、親ロ派地域 独立承認の意味と影響
(1)
  [21日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親ロシア派2地域の独立を承認するとテレビ演説で表明した。緊迫するウクライナ危機において今回の決定がどういう意味を持つのか、西側諸国の対応とともにポイントを整理した。

◎親ロシア派の分離独立地域とは
  ウクライナ東部にあるドンバス地域と呼ばれるドネツクとルガンスクでは、2014年にロシアが支援する分離独立派が「人民共和国」として独立を宣言したが、承認されていなかった。ウクライナ政府によると、宣言後に約1万5000人が戦闘で死亡。ロシアは紛争当事者であることを否定しているが、軍事・財政支援、新型コロナウイルスワクチンの提供、少なくとも80万人の住民に対するロシア旅券(パスポート)発行など、独立派を支援している。
◎ロシアの独立承認は何を意味するのか
  ロシアはドンバス地域をウクライナの一部とは見なさないと初めて表明。これは分離独立地域に公然と軍隊を派遣し、ウクライナから独立派を保護するために同盟国として介入するという主張に道を開く可能性がある。
◎ミンスク合意はどうなるのか
  ウクライナ東部の停戦と和平への道筋を示した「ミンスク合意」(14─15年)は、ロシアが親ロ地域の独立を承認したことで事実上消滅する。この和平合意はまだ履行されていないものの、これまでロシアを含む全ての当事者が紛争解決に向けた最善の機会と見なしていた。合意は親ロ2地域に対する大規模な自治を要求している。
◎西側はどう対応するのか
  米欧など西側各国は数カ月にわたり、ロシアがウクライナ国境を越えて軍隊を展開すれば、厳しい金融制裁を含む強力な対応を取ると警告してきた。ブリンケン米国務長官は16日、ロシアが親ロ2地域の独立を承認すれば、「米国は同盟国、およびパートナー国と完全に協調して迅速に、かつ強硬に対応する」と表明。独立が承認されれば「ウクライナの主権と領土保全が一段と阻害され著しい国際法違反となる」と述べた。
◎ロシアは過去にも分離地域を国家承認したことがあるのか
  08年にジョージアと短期間の交戦を行った後、アブハジアと南オセチアの独立を承認した。大規模な財政支援、住民のロシア国籍取得を行ったほか、数千人の部隊を駐留させている。
◎独立承認によるロシアの利点と欠点は
  ジョージアの場合、ロシアは分離地域を承認することで旧ソ連周辺国への軍事駐留を正当化し、自国領土を完全に支配できないようにすることでジョージアの北大西洋条約機構(NATO)加盟構想に歯止めをかけようとした。ウクライナにも同じことが当てはまる。
  一方、ロシアはミンスク合意にコミットしていると長く主張してきたにもかかわらず、それを放棄したことによる制裁と国際的非難に直面する。また、8年間にわたる戦闘で荒廃し、大規模な経済支援を必要とする2地域の責任を負うことになる。



2022.02.21-Yahoo!Japanニュース(KYODO)-https://news.yahoo.co.jp/articles/e6ee3e14306c26ab5b5bdd2d38e8dd5c3275934c
ウクライナ「瀬戸際」 侵攻阻止へ外交大詰め

  ワシントン、モスクワ共同】バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領は20日、緊迫するウクライナ情勢を巡り、近く会談することで基本合意した。ブリンケン米国務長官は20日、ロシアによるウクライナ侵攻が「瀬戸際にある」と危機感を表明。24日には日米欧による先進7カ国(G7)首脳テレビ会議や米ロ外相会談を開催予定で、米欧は侵攻阻止に向けて大詰めの外交に入った。

  ロシアは合同演習でベラルーシに派遣していた部隊の展開継続を決定した。サキ米大統領報道官は20日、ロシア軍がウクライナへの全面攻撃を準備していると批判した。


2022.02.15-日本経済新聞-https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR14BCB0U2A210C2000000/
独ロ首脳、協議継続で一致 軍一部撤収「良い兆候」-NATOは懐疑的

  【モスクワ=石川陽平、ベルリン=石川潤】緊迫するウクライナ情勢を巡り、ドイツのショルツ首相が15日、モスクワでロシアのプーチン大統領と会談した。首脳会談を前に、ロシア国防省は同日、ウクライナ国境近くから演習を終えて撤収を始めたとする軍部隊の映像を公開した。

  会談後に両首脳は共同で記者会見した。ショルツ氏はロシア軍の一部撤退について「(緊張緩和に向けた)良い兆候だ」と評価した。「すべての欧州諸国にとって持続的な安全保障はロシアと協力しなければ達成できない」とも語った。
  独仏ロとウクライナによる4カ国協議の枠組みについて「紛争解決に重要だという認識で一致した」と表明し、「外交による解決の可能性は尽きていない」として今後も外交努力を続ける方針を示した。
  プーチン氏は戦争を望んでいるか問われ「望んでいないと強調し、「まさにそのためにすべての国に平等な安全を保証する合意がもたらされる交渉プロセスを提案した」と語った。
  米国と北大西洋条約機構(NATO)から1月下旬に受け取った欧州安保に関する書面回答については、不満を示しつつも「いくつかの(評価できる)考え方があった」として協議を続ける姿勢をみせた。
  ショルツ氏の訪ロは2021年12月の首相就任以来初めて。14日のウクライナのゼレンスキー大統領との会談に続くもので、ウクライナ情勢を打開するため外交努力を続ける考えだ。
  一方、ロシア国防省は各地で実施していた軍事演習に関し、演習を終えた部隊から順に「きょう駐屯地への進軍が始まる」と発表した。撤収するのは南部や西部の軍管区部隊としている。各国の駐在武官にベラルーシとの合同演習に参加していた部隊撤収の監視を認めるとも述べた。

  欧州はロシアとの経済的なつながりが深く、軍事侵攻の場合はロシアが天然ガス輸出を止める懸念もある。主要国が緊張緩和への外交を活発にしており、7日にはフランスのマクロン大統領がプーチン氏と会談した。イタリアのディマイオ外相も近くロシアを訪れる。
  ロシアも欧州とのこれ以上の関係悪化や制裁強化は避けたいのが本音だ。ロシアの税関統計によると、21年の貿易総額に占めるドイツの割合は7%で国別では中国の18%に次ぐ。欧州連合(EU)諸国との貿易額は36%を占める。
  独ロ首脳会談を前にプーチン氏は14日、米国やNATOと欧州安全保障に関する協議を続ける方針を示した。ロシアは軍部隊の集結や軍事演習で米欧に軍事圧力をかけ、NATO東方拡大停止などを強硬に要求してきた。
  欧州安保やウクライナ情勢を巡る米欧とロシアの溝は深い。ショルツ氏は14日、キエフでウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、同国東部でつづく親ロシア派武装勢力との紛争解決も探った。会談後、外交努力を強める考えを示しながらも「これは難しい問題だ」と語った。
  北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は15日の記者会見で、ロシア国防省がウクライナ周辺で演習するロシア軍の一部が撤収したと発表したことについて「現時点でウクライナ国境でのロシアの軍事的プレゼンス低下は見られない」と述べ、懐疑的な見方を示した。

  米国のジュリアン・スミスNATO大使は15日、記者団にロシア軍の一部撤収について「精査して検証する必要がある」と語った。「過去には緊張緩和だと主張しながら実態を伴わないことがあった」と指摘した。


2022.02.08-河北新報 OnlineNews-https://kahoku.news/articles/knp2022020801000263.html
ウクライナ加盟なら戦争も ロ大統領、核兵器使用も示唆

  【モスクワ、パリ共同】ロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領が7日、緊張が続くウクライナ情勢を巡り、モスクワで会談した。会談後の共同記者会見でプーチン氏は、北大西洋条約機構(NATO)がロシアを「敵国」と位置付けていると指摘。ウクライナがNATOに加盟してクリミアの武力奪回を図れば、NATO加盟の欧州諸国は「自動的にロシアとの軍事紛争に巻き込まれる」と警告した。

   「ロシアは核保有国だ。その戦争に勝者はいない」と述べ、核兵器使用の可能性を示唆。NATOが防衛的組織だとの欧米側主張には根拠がないとし、不拡大の確約を要求するロシア提案を正当化した。


2022.1.31-Yahoo1Japanニュース(六辻彰二国際政治学者
なぜウクライナで欧米とロシアが対立? 経緯や今後は…知っておきたい基礎知識5選

  ウクライナをめぐる欧米とロシアの対立はエスカレートする一方で、収束の見込みは立ってない。なぜウクライナが発火点になるのか。以下ではいまさら聞けないウクライナ情勢の基礎知識を5点に絞ってまとめる。
(1)ウクライナはいつからロシアのナワバリか?
  今でこそ欧米とロシアのナワバリ争いの場になっているウクライナだが、18世紀にロシア帝国が編入して以来、基本的にロシアのナワバリだった。

  ロシア帝国は17世紀以来、いわゆる不凍港を求めて南下したが、そのなかで手に入れたウクライナには死活的な重要性があった。クリミア半島の港湾都市セバストポリが黒海から地中海に抜ける拠点になったからだ
  セバストポリは19世紀半ば、やはり黒海周辺への進出を目指していた英仏とロシア帝国の間で戦われたクリミア戦争(1853-56)で主戦場になるなど、大国間の争点にもなった。
  ロシアでは1917年、ロシア革命で世界初の共産主義国家ソビエト連邦が誕生したが、その後もクリミア半島の重要性は変わらなかった。
  セバストポリをはじめウクライナ東部にはソ連時代、数多くのロシア人が移住し、1954年にはクリミア半島が「友好の証」としてウクライナに移譲されたが、ロシアとウクライナがともにソ連の一部であった間、これは大きな火種にもならなかった。

   しかし、この移譲とロシア人移住が、21世紀に大きな問題として浮上することになる。
(2)なぜロシアはウクライナにこだわるか?
   ウクライナで欧米との綱引きが本格化した大きな転機は、東西冷戦の終結(1989)とソ連崩壊(1991)だった。「鉄のカーテン」が取り払われたことをきっかけに、ロシアのナワバリだった東欧や旧ソ連圏に欧米企業が大挙して進出したのだ。

  それにともない、東欧や旧ソ連圏の国からは西側の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)への加盟申請が相次ぐことになった。
  もっとも、欧米は当初、東欧や旧ソ連圏を陣営に組み込むことに消極的だった。その大きな理由は、NATOやEUの「東方拡大」がロシアを刺激するからだった。

  欧米がロシアを信用しないように、ロシアにも欧米に対する歴史的な不信感がある。だからこそ、冷戦末期にアメリカなどは「冷戦終結後もNATOの東方拡大はない」とソ連を説得した経緯がある
  しかし、やがて1990年代末頃からNATOとEUは、東欧や旧ソ連圏からの加盟申請をなし崩し的に受け入れるようになった。これが欧米に対するロシアの警戒感と反感を高めたことは不思議でないが、とりわけ問題になったのがウクライナのNATO加盟申請だった。
  旧ソ連圏のなかでも経済、人口ともに最大のウクライナはロシアにとって、欧米の「東方拡大」に対するいわば最終防衛ラインだ
  それは欧米も承知している。そのため、NATOのリーダーであるアメリカは、ウクライナ軍との合同軍事演習を1996年から実施しながらも、ウクライナの加盟申請を事実上放置し続けるなど、「味方だが仲間にはしない」グレーな対応に終始したのである。
(3)どのように対立はエスカレートしたか?
  ウクライナをめぐる欧米とロシアの冷たい対立が表面化したのが、2004年の「オレンジ革命」だった。
  ウクライナでは西部に親欧米派が多く、東部に親ロシア派が多い。そのため選挙結果は常に揺れ動き、どちらが勝利してももう一方から強い反発が出やすい。
  2004年大統領選挙の期間中、野党の親欧米派ユシチェンコ候補の顔が種痘だらけになり、「与党陣営による毒攻撃」のウワサが飛び交った。こうしたなか、親ロシア派ヤヌコービチ候補勝利の選挙結果が報じられたことをきっかけに親欧米派市民の抗議デモが拡大し、最終的に選挙結果がひっくり返ってユシチェンコが大統領に就任したのである。
  このオレンジ革命でアメリカの下院議員の一団が現地で抗議デモを支援したことは、結果的にロシアをさらに煽ることになった。その直後、親欧米派の政権が発足したウクライナに、天然ガス供給を停止するなど、ロシアはより強硬な姿勢をみせるようになった。
  この関係が決定的に悪化した転機は、2013年からのEUと旧ソ連圏6カ国との間で持ち上がった「東方パートナーシップ首脳会合」だった。これはEUが旧ソ連圏にまでメンバーを拡大しようとするもので、2010年選挙で改めて大統領に選ばれた親ロシア派ヤヌコービチは、一度は会合出席の方針を示したが、ロシアの強い反発を受けてこれを撤回したのだ。
  これに激怒した親欧米派市民の抗議デモが徐々に拡大し、翌年にかけて各地で政府庁舎が占拠されるといった無政府状態になった。その混乱のなか、2014年3月にロシア軍が「ロシア系人の保護」を名目にクリミア半島に侵攻を開始したのである

  これが第二次世界大戦後のヨーロッパで最も緊張が高まったといわれるクリミア危機の発端だった。ロシア軍が掌握したクリミア半島では住民投票が行われ、その結果に基づいてウクライナからの分離とロシアへの編入が決定された。これは国際法的に違法だが、その後もクリミア半島は事実上ロシアの統治下にある。

  つまり、ロシアはウクライナのなかでも特に重要なクリミア半島を優先的に確保したわけだが、デリケートな状態にあったウクライナに手を伸ばした欧米の無遠慮さと、なりふり構わずナワバリを守ろうとするロシアの拒絶反応が、この危機を呼んだといえる。
(4)今回の危機のきっかけは?
  クリミア危機直後に発足したウクライナの親欧米派政権は、ドイツとフランスの仲介のもと、ロシアとの間で2014年9月、外国軍隊の駐留禁止や緊張緩和などを確認した(ミンスク合意)。しかし、その後もウクライナでは騒乱が絶えなかった。
  特にロシア系人の多い東部ドネツクでは、親ロシア派の過激派と政府軍の衝突が続いた。彼らはクリミア半島のようにウクライナからの分離とロシア編入を求めており、ウクライナ政府はこれを「テロ組織」と呼び、ロシアが支援していると批判してきた。

  その一方で、ウクライナ西部を拠点とする過激な民族主義者は、政府を支持して東部の分離主義者への攻撃をエスカレートさせたが、民間人の無差別殺傷といった戦争犯罪も指摘されてきた。それでも、欧米は東部の分離主義者に対するロシアの支援を批判する一方、西部の民族主義過激派を支援してきた。

  こうした水面下の争いが続く一方、「ウクライナに協力するがNATO加盟は棚上げにする」欧米のグレーな対応は基本的に維持された。ところが、2021 年にアメリカがウクライナ支援に軸足を移したことで、事態は急展開した。
  その一つの象徴は、9月末から10月初旬にかけて行われた、アメリカ軍とウクライナによる合同軍事演習だった。この軍事演習は1996年から行われてきたが、2021年のそれは15カ国から6000人の兵員が参加する、近年にない大規模なものだった。
  さらに10月23日アメリカはウクライナに180基のジャベリンミサイルからなる対戦車ミサイルシステムを配備した

  このミサイル提供は2017年、当時のトランプ政権が打ち出した方針だったが、その後なかなか実現しなかった。ロシアとの融和的な姿勢を国内で批判されたトランプ政権がとりあえず約束したものの、実際にミサイルを提供すればロシアとの緊張を嫌でもエスカレートさせることは目に見えていたからだ。
  ところが、中国だけでなくロシアに対しても対抗姿勢を鮮明にするバイデン政権は、実際にジャベリン(対戦車ミサイル)を提供した。

  対戦車ミサイルであるジャベリンには、ロシア本土を狙うほどの能力はない。しかし、アメリカによる既成事実の積み上げにロシアは敏感に反応し、ジャベリン展開の1週間後の10月末、ウクライナ国境付近に部隊を移動させ始めた。
  プーチンはNATOに「レッドラインを超えるな」と警告し、国境に展開する部隊の規模を年末までに10万人にまで増やしただけでなく、1月中旬には極超音速ミサイル「イスカンデル」をウクライナに向けて配備し、首都キエフまでも射程に収めた。
  こうした過剰ともいえる反応に欧米はロシア批判を強めているが、基本的な構図は2014年のクリミア危機に近いものがある。
(5)今後の焦点は?
  対立の行方は予断を許さない
  プーチンは戦争をするつもりがないと強調する一方、ウクライナ政府が「反ロシア的な過激派に影響されている」とも主張しており、アメリカに対して改めて「ウクライナのNATO加盟を認めないこと」を求めている。

  ロシアと全面衝突してでもウクライナを守るほどの意思や利益がアメリカにあるかは疑問だ。しかし、これまでテコ入れしてきた以上、簡単に見捨てれば他の国からの信用にも関わるし、「ロシアの脅しに簡単に屈した」とみられれば国内外からの支持も失いかねない。

 このデッドロックのなか、バイデンは12月8日のプーチンとの会談で緊張のエスカレートに反対する一方、「ロシア軍が動いてもアメリカの部隊をウクライナには派遣しない」とも述べた。
  しかし、これではウクライナからの反発もあるため、その直後に300人の軍事顧問団を派遣してウクライナ軍の訓練を開始した。これはいわば「お茶を濁した」格好だ。
  その一方で、1月26日にはドイツ、フランスがロシア、ウクライナとの四者会合を再開させた。この会合が今後につながる合意をもたらすことへの期待はアメリカ内にもある。アメリカはロシアとのチキンレースを簡単に降りられないが、これをヨーロッパ勢がどこまでアシストできるかが、対立の行方を大きく左右する焦点になるといえるだろう。


2022.01.20-BBC NEWS Japan-https://www.bbc.com/japanese/60049365
バイデン氏、プーチン氏は「ウクライナ侵攻するだろう」 西側試せば「高い代償」

  アメリカのジョー・バイデン大統領は19日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに「侵攻」するとの見解を示した。ただ、本格的な戦争」は望んでいないと述べた。

  20日で就任1年を迎えるバイデン大統領はこの日、ホワイトハウスで記者会見を開いた。ロシアがウクライナを侵攻する脅威について問われると、「私の推測では、彼(プーチン氏)は(ウクライナに)侵攻するだろう。彼は何かしなければならないはずだ」と答えた。
  一方で、プーチン氏が西側諸国を「試す」行為をすれば、「深刻で高い代償」を払うことになるだろうと警告した。
  ロシア側はウクライナへの攻撃や侵攻は計画していないとしているが、ウクライナ東部の国境付近に推定10万人規模の部隊を集結させている。

  バイデン氏の発言を受けて、一部の記者から、アメリカがロシアによるウクライナへの小規模な侵攻を認めるつもりなのかとの質問が出た。ホワイトハウスはアメリカの立場を明確にするため、同日夜に声明を発表した。
  ホワイトハウスのジェン・サキ大統領報道官は声明の中で、「ロシア軍がウクライナの国境を越えて移動した場合、それは新たな侵攻といえる。そうなればアメリカと同盟国は一致団結し、迅速かつ厳格な対応を取ることになる」と述べた。
  ロシアは西側諸国に多くのことを要求してきた。ウクライナは決して北大西洋条約機構(NATO)に加盟すべきではなく、NATOの軍事活動の範囲はポーランドを含むNATO加盟国内に限定されるべきなどと訴えてきた。

  スイス・ジュネーヴで10日に行われたアメリカとロシアの高官協議では、ロシア側の要求の一部が拒否され、打開策を見出すことはできなかった。
  ロシアは2014年にウクライナで親ロシア政権が崩壊すると、ウクライナ南部クリミア半島を併合した。ロシアはその後も、ウクライナ東部ドンバス地方を占領する親ロシア勢力を支援してきた。
  ウクライナ政府軍と親ロシア勢力による戦闘では、これまでに少なくとも1万3000人の命が失われ、約200万人が住む家を追われた。こうした対立が再燃し、ロシア軍が公然とウクライナへ介入するのではないかとの懸念がもちあがっている。
「西側諸国を試すと思う」
  プーチン氏の意向について見解を求められたバイデン氏は、「彼(プーチン氏)が西側諸国を試すと思うか? アメリカとNATOを可能な限り試すと思うか? その質問への答えはイエスだ。彼はそうすると思うが、深刻で高い代償を払うことになると思う」と述べた。
  そして、「彼が動けば科すと私が約束したような制裁を、彼はまだ目にしたことがない」と述べ、制裁の度合いは侵攻の規模に左右されると付け加えた。
  ウクライナでの紛争が近隣のNATO加盟国を巻き込む可能性をどの程度懸念しているのか問われると、「意図した戦争より深刻なのは、意図しない戦争だ。私は、そうした戦闘が手に負えなくなることを懸念している」とバイデン氏は答えた。
  「私は、ウラジーミル・プーチンが理解していることを望んでいる。本格的な核戦争の場合を除いて、世界を支配できるほど有利な立場にはいないということを。だから彼がそのようなことを考えているとは思わないが、懸念材料ではある」また、ロシアが攻撃を行う可能性があることを念頭に、NATO加盟国が同じ認識を持つことが「非常に重要」だとした。
  アメリカはロシアとの話し合いに前向きで、プーチン氏との首脳会談を行う可能性はまだあると、バイデン氏は述べた。
  アントニー・ブリンケン国務長官は20日にも、ジュネーヴでロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談する予定。
  ウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問中のブリンケン氏は、ロシアが「突然の予告」を出してウクライナを攻撃する可能性があるとし、その場合は厳しい制裁を科すと改めて警告した。



2021.12.26-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/620671086501057c74ef47434a8af4219fc6cb2b
あらゆる手段で対抗と警告 露大統領、NATO拡大に

  【モスクワ=小野田雄一】ロシアが北大西洋条約機構(NATO側に将来的な東方拡大の排除などを要求している問題をめぐり、プーチン露大統領は26日放映の露国営テレビ番組で、ロシアの要求が拒否された場合、「軍事専門家からの提案に基づき、ロシアはさまざまな対応を取る」と述べた。

  タス通信が伝えた。 プーチン氏は軍事力を行使する可能性を排除しないことで、NATO側を牽制(けんせい)、今後の交渉を有利に運ぶ思惑だとみられる。
  同番組でプーチン氏は「われわれが(NATO側に)提案をした目的は、外交対話を通じた結果、すなわち法的な文書に基づく確固たる結果を達成することだ」とも説明した。
  プーチン露政権は今月15日、NATOは現状以上の東方拡大をせず、東欧諸国に展開中の軍備も撤収させる-などとする「条約」の締結をNATO側に要求。17日に内容を公表した。
  ロシアとNATO側との交渉は来年1月にも開始される見通し。 プーチン氏は21日の露国防省幹部との会合でも、「欧米側が攻撃的な姿勢を取り続ければ、ロシアは軍事的手段で対応する」と述べていた。


2021.12.26-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20211225-6QESFTL2RFOBJGL2HY3CKS5YHI/
露、ウクライナ周辺から部隊1万人超撤収

  モスクワ=小野田雄一】米国や北大西洋条約機構(NATO)がロシアによるウクライナ侵攻を警戒している問題で、ロシア軍の南部軍管区は25日、ウクライナ国境周辺を含む地域で「訓練」を行っていた部隊1万人以上を撤収させると発表した。インタファクス通信が伝えた。

  プーチン露政権は今月、NATOは現状以上の東方拡大をせず、東欧諸国に展開中の軍備も撤収させる-などとする「条約」の締結をNATO側に提案。NATO側は応じられない内容があるとする一方、交渉には応じる意向を示している。今回の露部隊の撤収はこうした動きと関係している可能性がある。
  発表によると、同軍管区は1カ月にわたり、ロシアが2014年に併合したウクライナ南部クリミア半島やウクライナ国境付近を含む地域で訓練を実施。「訓練は完了した。1万人以上の兵員が本来の配備地点に帰還中だ」とした。
  ロシアは今年秋以降、ウクライナ周辺に9万人規模の兵力を集結させ、NATO側が侵攻を警戒。ロシア側は兵力集結の事実や侵攻の意図を否定する一方、自国内での部隊移動は自由だとも主張してきた。


2021.12.23-産経ニュース-https://article.auone.jp/detail/1/4/8/221_8_r_20211223_1640250075962815
プーチン帝国の虚実~ソ連崩壊30年 ①欧米と決別、中国に傾斜 「属国化」に一抹の不安

  12月上旬、マイナス20度の酷寒にさらされたアムール川(中国名・黒竜江)は凍っていた。ロシア極東アムール州ブラゴベシチェンスク。数百メートル先の対岸には、近代的な高層建築や観覧車が手に取るように見える。中国黒竜江省黒河の市街地だ

  2019年11月、両市を結ぶ「ブラゴベシチェンスク-黒河大橋」(長さ1080メートル)が完成した。中露国境の川にかかる本格的な自動車橋の建設は史上初で、近年著しく進む中露接近の象徴的存在となった。当初は20年中の開通を予定したが、新型コロナウイルスの影響で延期された状態になっている。
  もともと両市では渡し船による国境貿易が盛んで、橋の建設案は20年以上前から存在した。それが長く実現しなかった背景には、中国に対するロシアの伝統的な恐怖心があった。
  橋でつながれば、東北3省で計1億人を超える中国人の極東流入が加速し、人口600万人にすぎない極東がなし崩し的に乗っ取られるのではないか。有事の際の防衛も困難になる-。
  それでも中露は14年、ついに橋の建設に合意し、16年に着工した。露大統領のプーチンは今年11月の経済フォーラムで「中国は友邦であり、その軍事的伸長はロシアの脅威になりえない」と断言した。

  30年前のソ連崩壊で超大国の地位から滑り落ち、大混乱と困窮に見舞われたロシア。00年に就任したプーチンは欧米との協調路線に見切りをつけ、専制主義の「価値観」を共有する中国に傾斜した。世界は今、米国など民主主義陣営と中露が対峙(たいじ)する「新冷戦」の様相を呈する。
  プーチン政権に近く、親中路線を唱道してきた国際関係学者、カラガノフはこう述べてはばからない。「米国は中露を相手に『二正面作戦』を始めた。これは常に敗北の戦術だ。米国と同盟国は負けるだろう

  プーチンは当初から中国一辺倒だったわけでなく、目指していたのは、むしろ欧米との協調によって先進国の仲間入りを果たすことだった。中国については、中ソ対立期のような武力衝突を避けるべく、善隣友好協力条約の締結(01年)や国境線画定(04年)を通じて関係を安定化させることが主眼だった。
  結果的に、プーチンの中では欧米への不満や猜疑心(さいぎしん)ばかりが蓄積された。欧米は人権や民主化の状況をめぐってロシアを批判し、いつまでも「一人前」とみなさない。旧東側陣営だった東欧・バルト諸国にまで北大西洋条約機構(NATO)が広がった。プーチンは、旧ソ連諸国で親欧米政権が誕生するのは欧米の「策略」であるかのように受け止めた。
  14年、ウクライナでの親露派政権崩壊に憤激したプーチンは同国南部クリミア半島の併合を強行し、欧米との対立は決定的となった。ここで、やはり強引な海洋進出などで対米関係を悪化させていた中国と利害が一致した。

  ロシアは、高度経済成長を続ける中国と組むことで欧米の対露経済制裁を和らげられる。中国としても、国連安全保障理事会の常任理事国であり、膨大な地下資源を有するロシアを味方につける意義は大きい。
 両国は陸海空での合同軍事演習を繰り返すなど「準軍事同盟」といわれるほどに関係を深めた。ウクライナと台湾の「2正面」でそれぞれ軍事的威嚇を続けている。
  経済低迷が長期化するロシアとコロナ禍でも成長を維持する中国。国内総生産(GDP)が10倍にも開いた両国の差は、自動車橋の開通を控えるブラゴベシチェンスクでも実感される。
  「1990年代の中国の街並みは木造が多く、みすぼらしかった。時代は変わったものだ」。地元で農業を営むビチヒン(44)はこう語り、アムール川対岸と、ロシア側の老朽化したアパート群を見比べた。
  10年ほど前の同市では、ロシア人が中国から来る労働者を雇うのが一般的だった。今では、進出してきた中国資本にロシア人が雇用されるケースが増えているという。
  このまま中国傾斜を進めれば、ロシアは中国の属国と化すのではないか。露メディアにこんな意見がないわけではないが、プーチン政権にとって中国に代わる存在は見つかっていない。
  もし中国が世界一の超大国となり、ユーラシア大陸の覇者として他国を従属させ始めたら-。前出の親中論者、カラガノフは仮定の前置きをした上で語る。「その場合、ロシアは他の強国とともに対中関係を見直すことになるだろう」
  中国という巨象に寄り添うロシアに、将来の不安がないわけではない。=敬称略
  
(ブラゴベシチェンスク 小野田雄一)
20世紀の世界を米国と二分したソ連の崩壊から25日で30年。プーチン長期政権下のロシアと旧ソ連圏の今を報告する


2021.12.11-ZAQZAQ バイ 夕刊フジ-https://www.zakzak.co.jp/article/20211211-SMZMUYTBM5NO7MENO6777ZGYKA/
ロシア、ウクライナ危機の深層…併合すれば重い年金債務が発生のため、奪取する気のない脅し 面白い中国の反論
(1)
  北大西洋条約機構(NATO)は先月30日から2日間、ラトビアの首都リガで外相理事会を開き、ロシアがウクライナ東部の国境付近やクリミア半島に10万人もの軍部隊を集結させている問題について協議した。
  各国は「ロシアがウクライナを侵略すれば高い代償を払うことになる」という認識で一致。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長(元ノルウェー首相)は、閉幕後の記者会見で「ロシアに経済制裁を科す」と警告した。
  ロシアも米軍がウクライナに面する黒海で活動を活発化させていることにいらだちを強めている。この問題、不幸にしてお互いのコミュニケーションが不足しているのではないか。

  ロシア側にとっては、「このままではウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権はNATOやEUに入ってしまう。旧ソ連邦の、ロシアにとっては脇腹ともいえる地域なのに、冗談ではない」ということなのだろう。
  ただ、ロシア軍がビルドアップ(増強)しているのは脅しと考えた方がいい。軍事行動に出て、ウクライナ東部のルガンスクやドネツクをテイク・オーバー(奪取)することは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にはできないと思う。
  というのも、ロシアが2014年にウクライナ南部のクリミア半島を併合したとき、クリミアの住民たちに支払う年金の負担が莫大であることに気がついたウクライナはその負担から逃れたが、ロシアに支払いの義務が生じた領土を広げるのはいいとしても、そこの住民への年金債務は大きな負担だ
(2)
  もちろん、手遅れであるが、この点でロシアはしくじったと思っているのではないか。そんな状況の中、さらに人口の大きいドネツクなど占拠する地域を増やしたら、もっと大変なことになる。したがって、プーチン氏は本気ではやりたくない。しかし、ウクライナがこのままNATOに入るのも許し難い。ということで、軍を結集させて脅しているわけ。こういう風に読むべきだと思う。
  このことをNATOや米国は分かっていない可能性がある。ウクライナをめぐって、クリミアの二の舞いになると緊張しているが、プーチン氏の財布は空っぽだということがポイントになってくる
  一方、米国政府は12月9日から日本や台湾を含めたおよそ110の国と地域の首脳を招いて、初の「民主主義サミット」をオンライン形式で開いている。ジョー・バイデン大統領が大統領選挙に掲げた公約の1つ。同盟国や友好国との連携を強化することで「専制主義国家」と位置づける中国やロシアなどと対抗する。権威主義からの防衛、腐敗との戦い、人権尊重の推進などがテーマ。

  これに対する中国の反論が面白い。「米国の民主主義と中国の民主主義のどちらがいいか、中国の国民に聞いてみればわかる。30年前の貧困国から抜け出したわれわれの方がハッピーだと思っている人の比率は高い。これがわれわれ中国流の〝民主〟主義だ。アンタらが勝手に民主主義を定義するな」と言っている。
  「中国が独自に質の高い民主主義を実践してきた」と主張する白書も発表している。よく言うよ、と言いたくなるが、米国もあまり胸を張って民主主義のリーダーと言えないところが痛い。ま、手を胸に当てて考えると、どこの国も民主主義の最後は衆愚政治になるというギリシャの教訓にド壺ではまっているのだが…。


2021.11.17-Newsweek-https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/11/post-97486.php
ロシアが国境で部隊増強、ウクライナを攻める準備か
翻訳:ガリレオ
(1)
<いつもの脅しなのか、それともクリミアを奪取したときのように本気で攻めてくるのか、米バイデン政権の民主主義を守る覚悟も問われる>

  最近になってウクライナの東部国境にロシア軍の部隊が集結している件について、アメリカとウクライナの両国は、これがウクライナへの侵攻作戦の準備の可能性があるとして、ヨーロッパの同盟国に対して警告を発した。
  ロシア側がすべては平常通りだと主張し続ける一方で、ウクライナは同盟国に対し、支援と保護を呼びかけている。

  「攻撃的なロシアを抑止するには、ロシア政府に対してウクライナの強さを明確に示すだけでなく、ウクライナには強力な同盟諸国がついていてウクライナと共に立ち向かうことを明確にする必要がある」と、ウクライナのドミトロ・クレバ外相は11月10日、アメリカのアンソニー・ブリンケン国務長官との共同会見で語った。
  人口4400万人で、長年の武力紛争から軍がいまだ再建途上にあるウクライナは、今回のようなやり方で威嚇や脅迫を繰り返すロシアを激しく非難する。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2014年にウクライナのクリミア半島を武力で併合しており、これがウクライナの不安をいっそう煽っている。
  ウクライナ国防省は、「ロシア連邦がこの地域の緊張状態を継続させ、近隣諸国に政治的圧力をかけるために、定期的に軍の部隊を派遣・結集させる手段に訴えてきたことは、指摘されてしかるべきだ」と述べている。
専制主義に対する戦いの最前線
  EU加盟をめざす親欧派ウクライナの主権は、「民主主義と専制主義の戦いのなかでも重要な位置を占める」と考える米政権は、ウクライナの支援の求めに応えようとしている。
  アメリカ国務省は、両国間の戦略的パートナーシップを今後も順守し、適切な機密情報の共有や、軍事技術開発における連携、ウクライナ軍(UNA)への投資などを行う意向だという。
  ブリンケンはウクライナ外相との共同会見で、「ウクライナの独立、主権、領土の保全に対するアメリカの支持は非常に強固なものだ」と発言し、この地域における政治、経済、安全保障面でのウクライナの重要性を強調した。
  ヨーロッパの同盟諸国も、ウクライナの支援に乗り出している。欧州の28カ国(とアメリカおよびカナダ)で構成される軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)は、クリミア半島とウクライナの国境沿いの地域におけるロシアの軍備増強を公に糾弾。
  NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長はロシアに対し、西側諸国の軍事同盟であるNATOはウクライナ支持の立場を堅持していると警告し、ツイッターにこう投稿した。「NATOは、ウクライナの国境付近におけるロシア軍の大規模かつ異常な集結を注視している。我々はロシアに対し、透明性を保ち、状況の深刻化を防ぎ、緊張を緩和するよう要求する」
(2)
  ストルテンベルグは、ロシアの意図を臆測で語ることは避けたいとしながらもこう警告した。「我々は、兵力の異常な集結を目の当たりにしている」「ロシアはこれまでも、ウクライナを攻撃する前にこうして軍事力を積極的に用いてきたことを我々は覚えている」
  ウクライナとの国境に兵力を集結するのは危険だ、とストルテンベルグは指摘。ロシアが「ウクライナに対する軍事攻撃的な行動」に踏み切った場合、地域住民はわずかな警告時間しか得られなくからだ。
  ウクライナの最終的な目標は、ロシアによるあらゆる直接的な攻撃行動を阻止することだ。国際社会の注目や、同盟国の支援を求めることも、この目標を達成するための手段の1つだ。
  こうした非難をロシア政府高官が根拠のないものとして否定し続ける中で、ウクライナ外相のクレバは10日の記者会見で、ウクライナが取れる最善の策は準備態勢を整えることだと述べた。
  「我々は引き続き注意を怠らず、粘り強く取り組む必要があるが、その一方で、できるだけ早急に、我々の防御力における不足領域をすべて埋める必要もある」とクレバは述べた。「それゆえに我々は、(アメリカという)パートナーと、最も差し迫った必要が生じている案件に関して多数の問題を協議した」
翻訳:ガリレオ





2021.11.16-朝日新聞-https://www.asahi.com/articles/ASPCJ3D3YPCJUHBI00M.html
ロシアが対衛星ミサイルの発射実験 米「危険で無責任」と非難

  米国務省は15日、ロシアが同日に対衛星ミサイルの発射実験を実施したと発表した。実験ではロシアの人工衛星を破壊し、宇宙空間に大量の破片が散乱したという。ブリンケン国務長官は危険で無責任な実験だと非難する声明を発表した。ロシアは実験について発表をしていない。

  米国務省によると、実験により1500以上のスペースデブリと呼ばれる破片が確認され、今後数十万個にのぼる小さな破片が生じる可能性があるという。破片は他の人工衛星や、ISS(国際宇宙ステーション)で働く宇宙飛行士らに危険を及ぼす恐れがある。米国防総省によると、米国側には実験について事前の通告はなかったという。
  ブリンケン氏は「無謀で無責任な行動により、宇宙空間の持続可能性を危険にさらし、すべての国による宇宙空間の調査と利用を危うくしようとしている」とロシアを非難し、各国に対応を呼びかけた。
  また英国防省も同日、ロシアによる実験を宇宙空間の安全を「完全に軽視」するものと非難するウォレス国防相の声明を発表した。声明は「実験から生じた破片は軌道上に残り、何年にもわたって人工衛星や有人宇宙飛行を危険にさらすことになる」と指摘した。(ワシントン=高野遼、ロンドン=金成隆一


2021.11.13-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/378343e38eef85b0fbcbe5f131eece0ba1c704ea
「ガス供給停止」ベラルーシ大統領発言にロシア困惑

  【モスクワ=小野田雄一、ニューヨーク=平田雄介】中東などからの不法移民や難民の扱いで、欧州連合(EU)との対立を深めているベラルーシのルカシェンコ大統領がEUへの天然ガス供給を停止する可能性に言及したことについて、ロシアが対応に苦慮している

  ロシアにとってベラルーシは友好国だが、欧州もガスの主要な輸出相手として重要であるためだ。
  ルカシェンコ氏は11日、EU側が国境封鎖や新たな対ベラルーシ制裁を発動した場合、ロシアの天然ガスをベラルーシ経由で欧州に運ぶパイプラインを停止する可能性に言及。これについて、ロシアのペスコフ大統領報道官は12日、「ロシアとのいかなる合意もなされていない」と述べ、戸惑いをあらわにした。

  ロシアはベラルーシ経由で欧州にガスを輸出し、外貨を得てきたベラルーシが欧州へのガス供給を停止すればロシアの国家財政にも影響が及ぶのは必至だ。 ベラルーシに入国した移民や難民がEU入域を目指してポーランドの国境に押し寄せている問題をめぐっては、ロシアはベラルーシに理解を示しつつも、二国間の問題だとして深入りしない立場を示してきた

  ロシアがベラルーシの移民の政治武器化を支援しているとする欧米側の見方についても、ロシアは無根拠で受け入れられないと反発している
  一方、国連安全保障理事会は11日、この問題を非公開で協議。米国やフランスなど7カ国は協議後の共同声明で「人間を道具として利用している」とベラルーシを非難した。これに対し、ポリャンスキー露国連次席大使は「誰も移民を送り込んでいない。(欧米側の)問題提起は恥だ」とし、ベラルーシを擁護した
  人権問題をめぐる欧米側との関係悪化を背景にベラルーシは今年、EUとの協定に基づき実施してきた不法移民の摘発を取りやめ、国境を事実上解放。昨年の数十倍となる数千人規模の移民がリトアニアやポーランド国境に押し寄せ、一部が不正越境している
  ベラルーシは移民流入による社会の不安定化を危惧するEUに圧力をかけ、発動済みの制裁の解除など譲歩を迫る思惑だとみられている。


2021.11.11-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20211111-EQAZVGY2UVJQRGTJDGOQK34VR4/
ロシア傭兵、アフリカ進出 欧米が懸念強める

  【パリ=三井美奈】政情不安が続くアフリカ諸国に、ロシアの傭兵が進出している。西部マリでは、旧宗主国フランス主導で欧州連合(EU)の支援部隊が展開するが、軍事クーデターで発足した新政権がロシア傭兵への「乗り換え」の動きを見せ、摩擦が高まる戦争犯罪を辞さない傭兵の手法に、米欧は強い懸念を示している。

  ロシア人傭兵は、民間軍事会社「ワグナー」が派遣リビアや中央アフリカで拷問や処刑など人権侵害を繰り返していると、国連報告書で指摘されてきた。ロシア国内では登記がなく、ロシア政府は「無関係」と主張する。
  マリについては9月、政府がワグナーの傭兵1000人を雇うため、契約を結ぶ見込みだと米欧メディアが報じた。これを受け、フランスのパルリ国防相は仏国会で「傭兵との共存など受け入れられない」と述べ、強い懸念を示した
  フランスは2013年、当時のマリ政府の要請を受け、イスラム過激派の掃討作戦を開始。5000人の部隊を派遣してきた。だが、仏軍犠牲者も多く、マクロン仏大統領は今夏、派兵規模を2500~3000人に縮小する計画を発表した。ワグナーは、その空白に入り込もうとしている

  マリでは6月、クーデターで暫定政権が発足。マイガ暫定首相は先月、仏紙ルモンドで「われわれは(フランスに)見捨てられた。別の相手を探すのは当然」と述べ、新たにロシアに頼ることを示唆した。
  米財務省資料によると、ワグナーは、プーチン大統領に近いロシア人実業家、エフゲニー・プリゴジン氏が経営する。マリ以外でもスーダンやリビア、中央アフリカなど、アフリカの資源国で傭兵ビジネスを行ってきた。プリゴジン氏は米国の制裁対象だ。

  EUは13年以降、マリ軍の訓練支援を続けており、20カ国以上が参加してきた。EUが目指す「共通安全保障政策」の試金石だっただけに、ロシアの傭兵に簡単に取って代わられれば大きなつまずきになる
  特にフランスは、旧植民地の仏語圏アフリカ諸国を「庇護(ひご)者」として支え、経済利権も守ってきた歴史がある。1960年に独立したマリは、アフリカ屈指の金鉱山を持ち、最近ではリチウム開発も進む。

  フランス外交は「独裁政権と腐敗を支えてきた」との批判も強く、マクロン氏は、アフリカとの関係刷新を看板にしてきた。マリ作戦の見直しは、その一歩だったが、目算が狂った。アフリカでは中国の経済進出と、ロシアの傭兵ビジネスに挟撃される形となり、EUぐるみで戦略の立て直しが必要になっている。


2021.11.04-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/c524d15c48ba83e02fd831486d12ed47867b40db
ロシア、極超音速ミサイルを来年配備へ プーチン氏が発言

  【モスクワ=小野田雄一】ロシアのプーチン大統領は3日、露国防省が開発中の極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」を来年から海軍に配備すると述べた。軍事関連の会議での発言をタス通信が伝えた。

   音速の数倍以上の速度で飛行し、従来の防空システムでは迎撃が困難とされる極超音速兵器は、ロシアのほか、米国や中国が開発を急いでいる。 プーチン氏はツィルコンについて試験が間もなく完了する」と指摘。来年から海軍への供給が始まり、実戦配備されるとした。
  タス通信によると、ツィルコンの発射試験は2015年に始まった。露国防省は今年7月、水上艦から発射されたツィルコンがマッハ7(音速の7倍)で飛行し、約350キロ離れた地上の標的に命中したと発表したほか、10月には原潜からの海中発射にも成功したと発表していた。


2021.10.14-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20211014-TD46WHVMSNKE5D6NHA5N6ZTQMA/
「中国は台湾に武力行使せず」 プーチン氏が見通し示す

  【モスクワ=小野田雄一】中国と台湾の緊張が高まっている問題で、ロシアのプーチン大統領は13日、中国は台湾統一のために武力を行使することはないとの見通しを示した。中国の海洋進出が各国との摩擦を生んでいる南シナ海問題についても、米国を念頭に「地域外の国家が干渉すべきではない」と指摘した。

  中国が台湾に侵攻するシナリオを米国などが警戒する中、プーチン氏が中国の脅威を否定した形。ロシアの戦略的パートナーとする中国を擁護し、結束をより強める考えとみられる。
  プーチン氏はモスクワで同日開かれた露主催の国際会議「ロシアのエネルギー週間」の全体会合に出席し、司会者との質疑応答で台湾問題に言及した。
  プーチン氏は「私も出席した最近の国際会合で、習氏はいかなる問題解決にも武力は行使しない』と話していた。中国の国家哲学は武力行使と結びついていない」と指摘。「中国は経済大国となり、武力を使わずとも国家目標を達成できる状態だ」とも述べた。

  一方、ノーベル平和賞の受賞が決まった露リベラル紙「ノーバヤ・ガゼータ」のムラトフ編集長を当局の厳しい監視下に置く「外国の代理人」に指定する可能性について問われたプーチン氏は「ノーベル賞を盾に違法行為をしない限り指定されない」とし、指定に含みも持たせた。露国内ではプーチン政権がムラトフ氏への平和賞授与に反発し、言論圧力をさらに強めかねないとの懸念が出ている。


2021.10.10-Yahoo!Japanニュース(新潮社Roresight)-https://news.yahoo.co.jp/articles/9e3e0e29f418687a30e9ff5b18347c656152b91c
ノーベル平和賞受賞、ドミトリー・ムラトフ氏「暗殺国家ロシア」との戦い
(1)
  2021年のノーベル平和賞は「表現の自由」のために戦う二人のジャーナリストに授与された。その一人、ドミトリー・ムラトフ氏は1993年にロシアで「ノーバヤ・ガゼータ」紙を発刊、95年から編集長を務めている。 「ノーバヤ・ガゼータ」は政権のタブーに切り込む独立系新聞として、プーチン大統領と鋭く対立を続けてきた特に第2次チェチェン戦争でのロシア政府軍による人権侵害を伝えた同紙記者、アンナ・ポリトコフスカヤ氏の殺害事件(2006年)が国際社会に大きな波紋を広げ、この事件には黒幕の存在が指摘されつつもいまだに真相が明かされていない。  ジャーナリストの福田ますみ氏は、「ノーバヤ・ガゼータ」紙とドミトリー・ムラトフ氏に密着したルポルタージュ、『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』(新潮文庫)でその闇に迫る。  社会主義政権崩壊後、開かれた国になるはずだったロシアの内部で、何が起きてきたのか。以下、同書より抜粋・再編集してお届けする。

白昼堂々の射殺
  「ノーバヤ・ガゼータ」紙の特派記者、エレーナ・ミラシナは言う。 「結局、この国では、軍服を着た人間や権力者はやりたい放題です。何をしても責任を問われない。反対にジャーナリストは、国家からまったく守られていない存在なのです
   実は、「ノーバヤ・ガゼータ」には、ジャーナリスト襲撃事件をとりわけ熱心に報じるある理由があった。この08年までに、同紙のジャーナリスト3名が次々に悲劇的な死を遂げていたからである。  2000年5月、評論員(日本で言えば、論説委員あたりに相当する)のイーゴリ・ドムニコフが、自宅アパートの入り口でハンマーで頭を殴られ、2カ月後に死亡した。03年7月には、副編集長のユーリー・シュチェコチーヒンが、毒物によると思われる奇怪な死を遂げた。  06年10月には、チェチェン戦争の真実を報道することに文字通り命を賭けた、評論員のアンナ・ポリトコフスカヤが白昼、モスクワ中心部の自宅アパートのエレベーターの中で射殺された。この事件は、「ロシアの言論の自由の危機」を象徴するものとして、全世界に衝撃を与えた。 *  10月7日土曜日、この日、アンナ・ポリトコフスカヤの同僚だったゾーヤ・ヨロショクは、「ノーバヤ・ガゼータ」編集部で当直をしていた。  ヨロショクは自分の原稿を書き終えた後、ポリトコフスカヤから送られてくるはずの原稿を待ちわびていた。だが、何度メールチェックしても、原稿は届いていない。ヨロショクは首をひねった。  ポリトコフスカヤはわざわざ、「私の記事のためにページを割いてほしい」と頼んでいた。なにより彼女はとても几帳面な性格で、今まで締め切りに遅れたことは一度もなかった。もし何かあったら、せめてメッセージを送ってくるはずだが……。  
  これ以上待っても連絡がないようなら、こちらから電話をかけてみよう。そう思いながらヨロショクは午後3時頃に編集部を出て、友人と会い、レストランで食事を共にしていた。  4時半頃、携帯電話が鳴った。インタファックス通信の友人の男性からだった。友人は、とりとめもない世間話の後で、突然、こう聞いた。 「アンナは今、どこに住んでいる?」 「ドロゴミーロフスカヤ通りじゃないかしら」 「よかった、それじゃ、彼女じゃないな」 「何のこと?」  今度はヨロショクが尋ねた。 「アンナに似た女性が、リスナーヤ通りのアパートで殺されたらしい」  
  ハンマーで頭を殴られたようなショックが彼女を襲った。あわててポリトコフスカヤの携帯に電話を入れる。何度目かの呼び出し音の後、なにかのノイズが入り、誰かが出るような気配がした。
   だが、電話がつながったと思ったのは気のせいだった。無常な呼び出し音がただ鳴り響くばかりで、彼女のあの声は聞こえない。  彼女はどうしていいかわからず、編集長のドミトリー・ムラトフに電話を入れた。彼は、挨拶抜きでいきなり言った。 「それは事実だ」  ムラトフの重く沈んだ声に、彼女は、頭の中が真っ白になった。
(2)
屈折した憧憬と妬みを抱く同業者
  ポリトコフスカヤの殺害は、チェチェン戦争の記事の関係をおいて他にないと、大方の人々が考えていた。
  10月7日はプーチンの誕生日であった。プーチンにへつらう人間か、ないしはその手下が、プーチンへの最高の誕生日プレゼントとして企てたのではないかという者もいた。
   暗殺者はポリトコフスカヤのアパートの中に潜んでいた。彼女が、自分の部屋のある階で、エレベーターから降りようと一歩を踏み出した刹那、至近距離から狙撃されたのである。撃ちこまれた銃弾は全部で4発で、3発は胸に、1発は頭に命中していた
   銃撃の衝撃で彼女の体は跳ね飛ばされ、エレベーターの壁に打ちつけられた。アパートの住人が発見した時、彼女は、血の海の中、体をくの字に曲げ、エレベーターの壁に背をもたせかけた格好でこと切れていた。
   現場には、小型の自動装填銃マカロフが放置されていた。 「ノーバヤ・ガゼータ」には、事件直後から、おびただしい数の弔電が届き始め、弔問客も引きも切らなかった。
  ヨロショクたちは弔電をポリトコフスカヤの部屋の壁に貼ったが、すぐにスペースが足りなくなり、廊下の壁にまであふれた。まもなく社内の壁という壁は弔電で埋まってしまった。
   他社のジャーナリストも弔問に訪れ、 「彼女の死に方は、ジャーナリストとしてうらやましい」  と漏らした。
   政権による弾圧を恐れて、社内の厳しい自主検閲の枠内でしかものを書けない他のジャーナリストたちにとって、ポリトコフスカヤの、なにものも恐れず、なにものにも捉われない勇敢さと果敢さは、ある種の屈折した憧憬と妬みを買っていたのである。
国民から投げつけられた罵詈雑言
  「言論の自由と引き換えに、仲間の命を差し出すことに、いったい何の価値があるのだろうか」  編集長として、彼女の命を守れなかったことに対する悔恨と慙愧の念がムラトフを苛んでいた。もうこれ以上、なにがあっても仲間を死なせてはならない。
   そもそもポリトコフスカヤがチェチェン報道にのめり込んでいったのは、ムラトフが彼女をチェチェン特派員に指名したことがきっかけだった。99年夏、ちょうど彼女が、「オープシャヤガゼータ(「一般の新聞」の意)」という新聞から「ノーバヤ・ガゼータ」に移籍してまもない頃である。以後彼女は、チェチェンをくまなく歩き回って、戦時下の市民の生の声を伝えていく。
   しかし、ロシア軍の蛮行をこれでもかと暴く彼女の記事は、「ノーバヤ・ガゼータ」の読者だけでなく、人々の間に激しい動揺と拒絶反応を巻き起こした「自分の国の名誉を傷つける売国奴」「汚らわしい嘘八百だ」。そんな罵詈雑言が投げつけられた。
   2000年5月に就任したプーチン大統領は、着々と報道統制を進め、チェチェン侵攻に際しても厳しい取材規制を敷いた。なにより国民が、チェチェンの“テロリスト”を掃討するために侵攻を開始したプーチンの強硬姿勢を支持していた。
   しかし、編集長のムラトフは彼女の記事を全て掲載した。 「『ノーバヤ・ガゼータ』はひとつのチームです。上が命令して、記者たちに記事を書かせるというシステムではない。記者たちは一人一人が独立して、信念を持って仕事をしている編集長といえども、記者たちが書きたいと思うことを止める権利はないし、書きたくないことを無理強いする権利もないのです」
(3)
自分の命を守るためには、書き続けるしかない
  ポリトコフスカヤの一連のチェチェン報道によって、「ノーバヤ・ガゼータ」の発行部数は急落した。
   新聞の財政を健全化することは、もちろん編集長であるムラトフにとっての使命である。しかし、彼にとってもっと大切なことがある。それは、記者一人一人の命を守ることだ。
   彼は最近、最も危険な取材をしている2人の記者にボディーガードをつけた。さらに、内務省宛に、記者の武器携帯を認めるよう求める手紙を送っている。国家がジャーナリズムを守らないなら、ジャーナリスト自らが武装せざるをえない。ムラトフがそこまで考えるほど、ロシアの言論は追い詰められているのだ。
   先にふれた3人の犠牲者に続き、「ノーバヤ・ガゼータ」のオフィスの中に飾られる遺影写真は増える一方だ。
   09年1月、同紙の顧問弁護士で、戦争犯罪や人権蹂躙事件の被害者の弁護を担当していたスタニスラフ・マルケロフと、彼を取材中だった「ノーバヤ・ガゼータ」の契約記者アナスタシア・バブーロバが、白昼のモスクワの路上で射殺された。
   さらに同年7月、同じく契約記者で、人権活動家でもあったナターリア・エステミロワがチェチェン共和国の首都グローズヌイで拉致され、殺害された。  いったい、「ノーバヤ・ガゼータ」の他の記者たちは、同僚のこれだけの悲劇を目の当たりにしてもひるむことはないのだろうか。エレーナ・ミラシナが言う。 「アンナ・ポリトコフスカヤが殺された時は、ものすごく怖ろしかった。彼女の、ジャーナリストの域を超えた人権擁護の活動が危険であることはわかっていましたが、まさか白昼に、それも女性が、モスクワのど真ん中で射殺されるなんて……。
  でも、マルケロフ弁護士が殺された時に感じたのは恐怖よりも怒りです。自分の命を守るためにはむしろ、ジャーナリストとしての仕事を続けなければならない。そう決心したのです」
   ジャーナリストの権利擁護を訴えている「緊急事態ジャーナリズムセンター」のオレグ・パンフィーロフの調査によれば、ロシアでは、ジャーナリストの身辺を脅かす襲撃事件が年間80~90件起こっている。「ノーバヤ・ガゼータ」のジャーナリストたちのように、最悪、殺害されるケースも後を絶たない。
  「グラスノスチ(情報公開)擁護財団」のアレクセイ・シモノフ所長によると、プーチンが大統領に就任した2000年から09年までに、120人のジャーナリストが不慮の死を遂げている。 「このうち約70%、つまり84人が殺害されたとみられるが、自身のジャーナリスト活動が原因で殺されたと推測できるのは、さらにそのうちの48人だ。48人の殺害のほとんどは嘱託殺人と思われるが、首謀者、実行犯ともに逮捕された例は数えるほどしかない」 *******************

   福田ますみ 1956(昭和31)年横浜市生れ。立教大学社会学部卒。専門誌、編集プロダクション勤務を経て、フリーに。犯罪、ロシアなどをテーマに取材、執筆活動を行なっている。『でっちあげ』で第六回新潮ドキュメント賞を受賞。他の著書に『スターリン 家族の肖像』『暗殺国家ロシア』『モンスターマザー』などがある。フォーサイト編集部


2021.09.26-Yahoo!Japanニュース(現代ビジネス)-https://news.yahoo.co.jp/articles/bdb6b1c8ad81863301b89bcf3572cd675dd0528a?page=1
急速にソ連回帰するロシア、河野でも岸田でも北方領土問題は期待薄
(河東 哲夫-外交評論家

(1)
  16日から3日間にわたって行われた――投票所で「密」にならないようとの配慮で3日間――ロシアの議会下院選挙で、予想通りプーチン与党の「統一ロシア」が勝利を収めた。

  同党の選挙前の支持率は30%強に落ちていたので、これまでの「絶対過半数」を維持できるかどうか危ぶまれていたのだが、前回より議席を20程減らしながらも、「絶対過半数」を堂々維持した。絶対過半数とは下院議席の3分の2以上のことで、憲法改正発議に必要なものだ。
開票操作か実力か
  ロシアでの選挙と言うと、皆すぐ眉をこすって、「どうせ当局が結果を操作しているのだろう」と訳知り顔に言う。それはその通り。今回、当局はいつもに輪をかけてなりふり構わず、反政府勢力を選挙から排除した。

   YouTubeなどを使って大統領以下の横領行為」を大々的に指摘、政府に大きな脅威になっていた反政府運動家ナヴァーリヌイは、自ら横領を犯した罪をでっちあげられ、2024年の大統領選挙後まで刑務所暮らし。
   彼の運動を支えてきた財団も当局に弾圧され、幹部は外国に散り散り、地方の支部も軒並み解散に追い込まれた。さらに弱小のミニコミ、ブロガーに至るまで取り締まられて、ロシアの選挙はぺんぺん草も生えていない荒野で行われることになった。
   その結果は、次のとおりになっている。確定結果は24日に発表されることになっている。
   統一ロシア 320議席(全部で450議席中) 共産党 60~65議席  自由民主党 20議席  公正党 20~25議席  「新しい人々」党 12~13議席  残りは群小・無所属 (以上、複数議席を獲得したものは、いずれも御用政党と言っていい)  当局は、投票所職員が1人で数人分の投票をするなど「古典的な」不正手段を今回もとった。その様は、投票所に備え付けの監視カメラで筒抜けとなった。
  中央は、不正が明らかになればその地区の選挙結果を無効にするとしているが、今のところ、全国で6203票が無効とされたのみ。
(2)
子投票分開票でプーチン与党一気に逆転
  また、どうも新手の操作手段ではないかと疑われているのが、今回一部で実験的に導入された「電子投票」。
  ロシアではインターネットを使ってのネット納税が広まっているのだが、これを選挙投票に応用しているのである。今回は、モスクワ等7つの地域で1600万の有権者を対象に電子投票が認められ、モスクワでは200万人程度が実際にこれを利用して投票した、とされている。

  モスクワ市の有権者は700万はいるだろう。投票率が50%強だから、投票した者の半分以上は電子投票だったことになる。これこそ未来の民主主義と思って注目していたのだが、どうも今回の電子投票は利点より問題点を浮き立たせたようだ。

  と言うのは、野党支持の強いモスクワでは、15の小選挙区のうち12~13地区で野党(主として共産党候補にその他野党支持者の票が流れ込んだもの)候補者が首位を走っていたのが、電子投票の開票が始まるや否や、「統一ロシア」の候補者がぐいぐい追い上げ、しまいには15選挙区すべてで勝利を収めたからだ。
   これは如何にもおかしい。モスクワは中央・州・市・区の公務員が多く、彼らは今回、電子投票をするよう勧められ、しかも統一ロシアに投票するよう圧力を受けていたから、こうなっても不思議はないのだが、ちょっと「やり過ぎ」の感がある。と言うのは、モスクワと並ぶ大都市のサンクト・ペテルブルクでは、小選挙区を野党系候補者が制しているところもあるからだ。ここでは電子投票は行われていない。
   電子投票はブロックチェーン(分散型電子台帳)を用いているので、結果を改竄することはできない。だから信用できることになっているのだが、投票の結果自体は改竄できなくとも、A党候補の票は0.8をかけて数え、B党候補の票は1.2をかけて数えるなどのアルゴリズムが設定されていれば、話は違ってくる。そしてその開票計算のアルゴリズムは当局が管理していて、外部の者は検証できないのだ。
(3)
急速にソビエト化が進むロシア政治
  以上の経緯で多くの候補が落選した共産党は、抗議集会を大衆に呼びかけている。モスクワ市では、「コロナ対策のために」この集会は不許可となった。共産党はその昔、1917年の革命直後には議会を閉鎖する等、力による弾圧を厭わなかったが、今の世ではその共産党がリベラル、「統一ロシア」は共産党首ジュガーノフによれば、「ファシスト」なのだそうだ。
   それでも共産党は今回票を大きく伸ばして、前回の42議席を20議席程度も増やしたのだが、まだまだ力不足。今回は、野党勢力を自分の中に取り込む努力を行って、支持の幅を広げている。
   驚くべきことに、西側ではリベラルに位置づけられている前記ナヴァーリヌイの陣営は、今回選挙に候補者を出すのを禁じられたがために戦術を転換。「各選挙区で最も有望な野党候補に票を集中させ、それによって統一ロシアの候補者を落選させる」挙に出た。共産党はこれを歓迎したし、同党はナヴァーリヌイ以外の元リベラル候補も抱え込んだ。
   今回の電子投票をめぐるいきさつでは、共産党と当局の間で裏取引きが行われて、うやむやのまま一件落着ということになるだろうが、2024年の大統領選挙に向けて、共産党を「体制」の中に取り込む努力が強化されることになるだろう。もともと「統一ロシア」は政府・企業の幹部を網羅する、ソ連共産党そっくりの党になっているのだ。
   ナヴァーリヌイ、共産党のいずれとも袂を分かって「純正野党」の立場を維持したのは、リベラルの「ヤブロコ」党だけだ。この党はもう長年、議席を持ってこなかったが、今回の選挙でやっと1議席を獲得した。
   一方、「ロシアの統一」も自分を磨く努力を払ってきた。まず今回、候補者を大きく入れ替えた。これまでは保守頑迷、小さな利権にしがみついてはいばり散らすタイプの者達が同党議員を務めて、党の評判を下げていたので、候補の資質の向上をはかったのだ。
   それはソ連時代の共産党よろしく、幹部志望の者は特別研修コースや地方の政府・議会での仕事で鍛え、さらに米国にならって総選挙前には議員志望者の間で「プライマリー」まで行ったので、議員候補の資質は上がった。
   そして、近年のロシアでは高年齢層を中心に再保守化の傾向が著しい。レヴァダ社の世論調査によると、スターリンを「偉大な指導者」だったとする者は、今年の5月には56%に達している。これは、2016年の数字の2倍なのである。だから「統一ロシア」は不正手段だけでなく、実力、あるいは世論の変化によっても支えられているのである。
(4)
2024年大統領選挙に向けて
   これで、ロシアの政治は2024年の大統領選挙に向けて流れていくことになる。2024年プーチンはもう71歳になっており、出馬すれば5選目をめざすことになる。  彼は政府役人、軍人、そして何と言っても公安機関が形作っている権力・利権構造の代表人なので、たとえ下りたいと思っても簡単には下してもらえない。プーチン自身も、「俺がいないと……」という自負心があって、中々下りない。  プーチンが代わる場合の後継候補としては、ミシュースチン首相、ショイグ国防相が突出している。ショイグは今回選挙で「統一ロシア」の比例代表候補リストのトップに位置付けられ――当選したが、議席は譲っている――たし、この半年で2回もプーチンと2人でシベリアの森林地帯で休暇を過ごしている。  もっとも彼はプーチンとはわずか2歳しか違わない高齢なので、次期大統領候補としてふさわしいかどうかはわからない。何か当て馬の感がある。
もはや経済は足かせではない
   ロシア政権の最大の課題は、言わずと知れた経済の活性化、そして米国をはじめとする西側との関係改善、それに伴う経済制裁の緩和である。両者は互いに関連している。  ロシア経済は「原油に依存」ということになっているが、昨年OPECに追随して原油減産をはかって以後、サウジなどが増産に転じる中でロシアだけが原油減産が続くという奇妙な状況になっている。  ただこれも、ガスプロム社の天然ガス生産が一時的に減少した中で、ガスに付随して出るコンデンセート――天然ガスの採収にあたり地表において凝縮した液状炭化水素化合物、ロシアは原油としてカウントする――の生産が減少したことによるものかもしれず、確定したものではない。  それにロシアは今や世界一の小麦輸出国で、2019年には250億ドルを得ているし、単層カーボンナノチューブで世界市場を独占、それら先端科学技術製品の輸出で2020年、45億ドルを得るという健闘ぶりも示している。  当局は、これからの世界での原油ジリ貧、水素台頭のトレンドをしっかり把握していて、水素輸出大国になる計画もたてている。だから、ロシアが経済的に尾羽打ち枯らして西側の資金に色目を使うという状況はやってこない。  米国を初めとする西側、特にEUとの関係正常化は進むことだろう。ウクライナ問題は、以前ほど注目されなくなっている。米国も、以前のヒステリックなロシア嫌い、あるいは「民主化」への傾倒は止めて、「用心しながら関係は進める」政策を取るだろう。  もっともこれは、ロシアに取っては痛しかゆし。と言うのは、これまでロシアは「反米」を叫ぶことで国内をまとめてきたし、一部の途上国も引き付けてきたからだ。米国がよその国の「民主化」や安全保障問題に関心がないということになると、ロシアとしては「反米!」を叫んでもただずっこけるだけ。国民の支持を得るにも、途上国を引き付けるにも、ロシア自身が豊かな国にならないともう効かない。  一方米国は、昔のココムに似た、先端技術の厳しい輸出規制を続け、同盟国にもそれに従うことを強制し続けるだろう。これはロシア、中国の経済にボディー・ブローとなる。ロシアがこれからの国力を規定するものとして最重視しつつあるAI、IT、宇宙関係の技術は、日米欧の技術・機器の輸入なしには開発が大きく後れるからだ。
(5)
日ロとも新状況の中での北方領土問題
  この1年、議会選挙一筋で動いてきたロシアの政治だが、2024年3月の大統領選挙まであと2年半。ロシアも、少しは日本との関係に注意を向ける余裕が出てくるかもしれない。一方、日本の方は総理が代わる。11月の総選挙の結果次第では、極端な場合与党も代わる。  こうした中で日ロ関係の先行きは読めないのだが、北方領土問題を含めてそれほど大きな変化は起こらないだろう。「北方領土問題は継続協議。経済関係は軍需関係先端技術を除いて促進。市民間の交流・文化関係も促進」ということになる。  河野太郎氏は以前、「2島返還論」をおおっぴらに唱えていたが、2017年に外相に就任して以来、それは鞘に納めている。それに、もし総理になって、ロシアに2島返還を持ちかけても、プーチンは安倍総理――2島返還論に宗旨替えしていた――に言ったのと同じ、「2島でさえ、日本に引き渡すいわれはない」という立場を繰り返すだけだろう。  岸田氏が総理になれば、彼はこうしたことでは官僚の敷いた路線を安全運転する人だから、大胆な提案はしないだろう。だから、河野、岸田のどちらが総理になっても、上記の「北方領土問題は継続協議」というところで止め、日ロ関係にはあまり時間を割かない、ということになるだろう。  ただ「継続協議」と言っても、おいそれとはいかない。ロシアは「北方領土問題は解決済み。戦後の現実。戦争の成果を覆そうとする国は悪者」というラインを世界世論に刷り込もうとしているからだ。つまり日ロ間では、何かを前向きに進めることが必要なので、それがなければ北方領土問題を話し合える場さえ、生まれないだろう。  それは、今のところ、北方領土における「共同開発」ということになっている。  水産業、鉱業、観光業などを日ロ共同で進める、ただし日本としてはロシアによる実効支配を認めるわけにはいかないので、ロシアの法制下で投資することはできない、特別の法的枠組みを作って共同開発を進めよう、というのが日本の立場。  いやそれはできない、ロシアの法制下で日本が投資してくれるのを待っている、日本が来なくても中国、韓国の企業がやってくる、というのがロシアの立場だ。
(6)
なぜここで投資呼びかけ
  ロシアは9月ウラジオストックでの東方経済フォーラムで、その立場を一歩進め、択捉についても経済特別区を設け、免税等特別の扱いの下で外国からの投資を奨励することを明らかにした。  そしてプーチン大統領もミシュースチン首相も、「日本からの投資」にことさら言及したのである。トルトネフ極東連邦管区大統領全権代表などは、「日本が投資しないなら中国等、他の国に声をかける」と脅しをかけている。  ロシアがこの時点で北方4島への外国からの投資を慫慂してきた背景は明らかではない。もちろん、返さなくてもいいカネが欲しいのだが、日本人や外国人が簡単にこの4島に投資するだろうと本気で思っているのかどうかがわからない。  これら諸島でのプロジェクトは十分の収益性を欠き、日本企業が手掛けるにしても、日本政府からの資金援助が必要だ。中国や韓国の企業が日本への嫌がらせを念頭に投資してくることも考えられるが、これも彼らの政府からの支援がないとやらないだろう。  日本は4島で金を掘るとか銅を掘るとか、微々たる利権のために返還を求めているのではない。それなのにロシアは、「もうかる案件があれば、日本人は必ずやってくる」と思い込んでいる。  この誤解のねじれは解けない。解けないまま、話し合いを続けるしかない。まず、「日本のものでもなく、ロシアのものでもない独自の法的枠組み」で合意するのが第一歩となる。  「そんな姑息な。小さな島など早く諦めてロシアに渡してしまえ」と言う人もいるが、なんで今そんなことをする必要があるのか? その見返りで得られる政治・経済上の利点はほとんどないのだ。
河東 哲夫(外交評論家)


2021.09.20-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/d18de5c4c48754b814afb9010fd7f4fae70230eb
露下院選、プーチン政権与党が勝利確実

  【モスクワ=小野田雄一】ロシアで大統領選に次いで重要とされる5年に1度の下院選(450議席・任期5年)は19日夜(日本時間20日未明)に投票が終わり、開票作業が進められている。プーチン政権の与党「統一ロシア」は第1党の座を維持するのが確実な情勢だ。同党が、憲法改正が可能な3分の2に当たる300議席を確保できるかが焦点となっている。

  露下院選は225議席ずつが割り当てられた小選挙区と比例代表の並立制。同国中央選管によると、開票率30%の時点で、比例代表で統一ロシア(改選前334議席)は約45%の票を獲得。小選挙区でも大半の選挙区で勝利する見通しだ。 共産党(同43議席)が約22%で2位。以下、自由民主党(同40議席)の約8%公正ロシア(同23議席)の約7%2020年に設立された新党「新しい人々」の約6%-と続いた。
   ロシアでは経済低迷や統治の長期化などを背景に、プーチン大統領や統一ロシアの支持率は過去最低水準で推移。一方、昨年の憲法改正でプーチン氏の24年の大統領への出馬が可能となり、再選に道を開くためにも政権側は今回、大勝を演出する必要があった。
  このため、下院選に先立ち政権側は、反体制派指導者のナワリヌイ氏を収監して同氏の支援組織も壊滅させたほか、統制の及びにくい独立系メディアやインターネットへの言論圧力を強化。一方、年金生活者や子育て世帯、軍人・警察官など幅広い国民層を対象に手当ての拡充や一時金を支給するなど、なりふり構わない選挙対策を進めてきた。


2021.09.17-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/adac249056cf80e1e7c4c6b9cb591fec2ba8ac55
露下院選投票始まる 言論弾圧、バラマキ…政権は「大勝」へ躍起

  【モスクワ=小野田雄一】ロシアで大統領選に次いで重要とされる5年に1度の下院選の投票が17日に始まった。19日に開票される。支持率が低下しているプーチン政権は、反体制派への弾圧やメディア統制の強化など「政治浄化」を進めるとともに、広範な国民層にカネをばらまくなど、なりふり構わない選挙対策を実施。与党「統一ロシア」の大勝を確実にしようと躍起になっている。

  下院選は小選挙区と比例代表の並立制で、450議席が争われる。露下院は現在、統一ロシア(改選前334議席)と、政権に迎合的な「体制内野党」と呼ばれる共産党(同43議席)や自由民主党(同40議席)、公正ロシア(同23議席)の4党で占められ、政権の決定を追認するだけの機関と化している。
  ただ、国民の幅広い支持を誇示したい政権にとって統一ロシアの大勝は不可欠だ。プーチン大統領は16日、「ロシアと国民の利益を実現するためには強く権威ある議会が必要だ」と投票を呼び掛けた。
  今回の下院選は当初、統一ロシアの苦戦を予測する見方もあった。2016年の前回選では、国民を熱狂させた14年のウクライナ南部クリミア半島併合の余熱が社会にあり、プーチン氏の支持率も80%を超えていた。しかし近年は経済低迷や強権統治への不満などを背景にプーチン氏の支持率は60%前後で推移。
  前回選時は40%超だった統一ロシアの支持率も30%前後まで下落している。地方の首長選などで与党系候補が敗北する波乱も起きていた。
  こうした状況に危機感を抱いたプーチン政権は統制を強化。政権側の腐敗を告発し有力な非与党系候補に投票を集中させる賢い投票を主導してきた反体制派指導者、ナワリヌイ氏を今年春に投獄。同氏の支援団体も「過激派」に指定し、全活動を禁止して壊滅させた
  さらに、「賢い投票」を呼び掛けるサイトも接続を遮断した。 選挙前には、「賢い投票」への参加を表明するなどした人々の個人情報がインターネットに流出。警察官が個別に自宅を訪問して事情を聴くなど、実質的な投票妨害も行われている。
  政権はまた、政権に批判的な独立系メディアを、スパイと同義で、当局の厳しい監視下に置かれる「外国の代理人」に相次いで指定。不利益を恐れたスポンサー企業が広告を引き揚げ、活動停止に追い込まれるメディアも出ている
  一方で政権は、年金受給者や貧困層などを対象に、手当の拡充や一時金の支給といったバラマキ政策も忘れずに実施。露シンクタンクの事前予測によると、統一ロシアは今回選で議席を減らすものの、約300議席を獲得する見通しとなっている。


2021.09.10-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20210910-ZC4BHRVLFNPIVKVSOEXA4TS3NM/
露とベラルーシが大規模演習開始 結束誇示し欧米牽制

  【モスクワ=小野田雄一】ロシアと隣国ベラルーシは10日、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランドに隣接するベラルーシ西部国境などで大規模な合同軍事演習を開始した。

  9日にはロシアのプーチン大統領と、ベラルーシのルカシェンコ大統領がモスクワで会談強権統治を敷く両政権は結束を確認し、人権侵害問題などで両国に制裁を科す欧米側を牽制(けんせい)する思惑だ

  合同軍事演習「ザーパド(西部)2021」は16日までの予定で両国の演習場で行われ、約20万の将兵や80機以上の航空機、約760の地上兵器が参加。両国は「特定の国を想定しておらず、防衛的性格の演習だ」と説明するが、ルカシェンコ氏「NATOはベラルーシ国境付近で軍備を増強している」と主張しており、欧米側を念頭に置いた演習であるのは明白だ。

  8日にはベラルーシ国防省が、ロシア軍の主力戦闘機「スホイ30SM」がベラルーシ西部の空軍基地に到着したと発表。対空戦術研究センターの合同設立に向けた準備の一環だという。
  一方、9日のプーチン氏とルカシェンコ氏の首脳会談では、両国が将来的な創設で合意している「連合国家」の実現に向け、金融やエネルギー分野で統合を加速させることを確認。2022年末までにロシアはベラルーシに6億ドル(約650億円)超の融資を行う準備があることも発表された。
  ルカシェンコ政権は昨年8月の大統領選をめぐる抗議デモの弾圧や、旅客機を強制着陸させて反体制派記者を拘束した問題、東京五輪での女性選手への強制帰国命令問題などで欧米との関係が極度に悪化し、ロシアに接近。ベラルーシへの影響力を拡大したいロシアも同政権を支援している。


2021.09.07-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20210907-LUBNPGETMNO3VBULWJOTUAGBRU/
露、日本の「戦争犯罪」喧伝 歴史戦で攻勢

  モスクワ=小野田雄一】ロシアのプーチン政権が第二次世界大戦中の日本の「戦争犯罪」を喧伝(けんでん)する動きを強めている。6~7日には極東ハバロフスクで、旧ソ連が抑留中の日本軍人を一方的に訴追した「ハバロフスク裁判」(1949年12月)に関する学術会議を開き、「ソ連は(日本による)細菌戦から世界を救った」などとする認識を示した。日本を「悪者」とする歴史観を広め、日ソ中立条約を破って対日参戦したソ連の行動を正当化する狙いがある。

  ハバロフスク裁判では細菌兵器の研究を行ったとされる「七三一部隊」(関東軍防疫給水部)の関係者ら12人が「戦犯」として強制労働の判決を下された。日本軍人らの長期抑留自体が国際法(ジュネーブ条約)やポツダム宣言に違反するものだった上、取り調べや審理の内実も西側とは大きくかけ離れたものだった。

  同裁判をテーマとした6~7日の学術会議は、露歴史協会や連邦保安局(FSB)、外務省などが共催。プーチン大統領は「第二次大戦に関する歪曲を防ぎ、(大戦の)再発を防ぐ上で歴史を保存することが重要だ」と開会のメッセージを寄せた。ラブロフ外相はビデオ演説で「ロシアは世界的に承認された第二次大戦の結果が修正されるのを阻止する」と述べた。

  露連邦捜査委員会のフョードロフ副長官は会議の中で「日本の研究が米国の生物兵器開発の基礎になった」と主張。副長官は日本による「捕虜殺害事件」を新たに捜査し、犯人を公表する方針も打ち出した。
  FSBは会議に先立つ8月、関東軍将兵の「証言」だとする文書の機密を相次いで解除し、国営通信社が大きく報じた。「日本は38年から対ソ戦を準備していた」「日本はソ連国民に生体実験をした」などとする内容だ。

  ソ連は41年の日ソ中立条約を破って45年8月に対日参戦し、北方領土を不法占拠した。プーチン政権は「ソ連=善」「日本=悪」とする歴史観を定着させ、大戦期のソ連の不法行為をかき消す思惑だ。北方領土が「第二次大戦の結果としてロシア領になった」とするプーチン政権の主張と表裏一体の情報戦といえる。
  ロシアは欧州諸国に対しても歴史をめぐる宣伝に躍起だ。欧州議会が2019年9月、大戦勃発80年にあたってナチス・ドイツとソ連を批判した決議にプーチン氏は猛反発。プーチン氏は「ソ連はナチスから欧州を解放した」などとする反論文を欧米誌に寄稿した。

  露国内でも昨年の憲法改正で「歴史の真実を守る」との条項が設けられた。今年7月には出版物やインターネットへの投稿などを対象に、ナチスとソ連を同列視することを禁じる法律も施行された。


2021.08.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20160819-MZ5AMZ2EW5IUFIMFJMBFCGK65U/
1945年の旧ソ連対日参戦、正当化論調に異議「約束守るべきだった」 アレクセイ・キリチェンコKGB元大佐インタビュー
(1)
  第二次大戦後の北方領土問題や「シベリア抑留」の悲劇を生んだ旧ソ連の対日参戦(1945年8月9日)について、ロシアでは当時の日ソ中立条約(41年締結)の効力を否定して正当化する論調が強まっている。ソ連による抑留問題の実態を暴露したソ連国家保安委員会(KGB)元大佐の歴史家、アレクセイ・キリチェンコ氏(79)は産経新聞のインタビューに応じ、こうした見方が誤っていると論破した。一問一答は次の通り。

-ソ連は45年4月5日、中立条約を延長しない旨を日本に通告した。これをもって、対日参戦に問題はなかったとの主張がある
  「ソ連のモロトフ外相は当時、日本の佐藤尚武大使に条約を延長する意思がないことを表明した。しかし、老練な佐藤大使は、条約が46年4月25日まで有効であることをモロトフに認めさせている。後にスターリン首相がこれを修正して対日参戦したということになるが、外相の約束は破られるべきでなかった」
-ある日本専門家は最近の論文で、41年の日本軍人らの発言や松岡洋右外相の「北進論」を挙げ、日本には中立条約を守る意思がなかったと強調している
  「戦争のことを考えるのが軍人の仕事である。ソ連との戦争に反対する者が陸軍にも海軍にも存在していた。松岡は政府と見解が相いれず、同年7月に更迭されている。誰にどんな『計画』があったとしても、それに意味はない」
(2)
-ソ連の極東戦力が日本の対ソ攻撃を抑止したとも主張されている
  「実際には、日本は41年秋、満州の関東軍からの部隊引き抜きも含め、南方へと兵力を迅速に集中させた。9月にはソ連にも、当時の関東軍の構成では、日本に戦争はできないということが明らかだった。10月末には、スターリンが極東の軍や共産党指導者との少人数の会合を持ち、極東の部隊を西部(対ドイツ戦)に投じることが決まった。日本が攻撃してこないとの確信があったのだ」
  「ほかならぬ極東の部隊が41年11月7日にモスクワの『赤の広場』でのパレードを行い、そこから(西部の)戦闘に向かった。それによってモスクワは攻撃されることを免れたのだ。41年から43年の間に、極東から西部へと完全に訓練・武装された42個師団が振り向けられた」
-満州からソ連への国境侵犯が頻発し、それが日本の「攻撃意図」の表れだともされている
  「日本はノモンハン事件(39年)以降、ソ連国境を破らないようにということを徹底していた。日中戦争があり、ソ連を挑発して『2正面』で戦うことはできなかったためだ。逆に、関東軍がソ連からの脱走兵や送り込まれた諜報員を収容所に入れていた事実があり、越境はソ連からの方が活発だったのではないか」
(3)
-ソ連はどう対日参戦に向かったのか
  「戦争の前半には、中立条約はソ連にとっても日本にとってもきわめて有利なものだったのだと考える。しかし、独ソのスターリングラード攻防戦(42~43年)の後、ソ連は自らの力を認識し、日本との戦争準備を始めた。国防委員会は対日戦に備え、シベリア鉄道の予備支線としてコムソモリスク・ナ・アムーレ-ソビエツカヤ・ガバニ間の鉄道敷設を決め、それは予定された45年8月1日より数日早く完了している」
-原爆投下でなく、ソ連こそが第二次大戦を終結させたのだとして対日参戦を正当化する主張も強い
  「満州の実態を見るならば、当時、片道分の燃料しかない航空機が380しかなく、その多くは8月半ばに日本に戻ってしまった。ソ連側は5000機以上も戦闘態勢にあったが、空中戦はほとんどなかった。満州には戦車もたいへん少なく、この頃には完全に弱体化していたというのが事実だ」
-公式史観と異なる見方を公にする理由は
(4)
  「私は、日本をソ連の敵国の一つとして研究し始めた。だが、日本の現実を深く知るにつけ、ソ連とその後のロシアが少なからぬ過ちを犯し、それが今日に至るまで両国関係に本質的な影響を与えていることを理解した。むろん、日本も天使にはほど遠かった。将来の悲劇と困難を避けることには意味があると考える」(モスクワ 遠藤良介)

ソ連の対日参戦
  ソ連軍は1945年8月9日、当時有効だった日ソ中立条約を破って日本に対する戦闘を開始し、満州(中国東北部)や樺太(サハリン)などに侵攻。日本がポツダム宣言を受諾し、15日に終戦の詔書が発表された後も一方的な侵略を続けた。ソ連軍が日本の北方四島を占拠し終えたのは、日本が降伏文書に調印した9月2日よりも遅い同5日だった。ソ連はまた、武装解除した日本将兵など約60万人を旧ソ連各地に連行して強制労働を課し、6万人以上の死者が出た(「シベリア抑留」)。

アレクセイ・キリチェンコ氏
  ソ連国家保安委員会(KGB)元大佐、ロシア科学アカデミー東洋学研究所上級研究員。1936年、旧ソ連のベラルーシ生まれ。64年にKGB大学を卒業しKGB第2総局で対日防諜を担当。80年代に研究所入りして日本人強制抑留問題に取り組み、日露間での真相解明に向けた原動力となった。著書に「知られざる日露の二百年」(現代思潮新社)がある。







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