ウイグル問題-1
2024.01.16-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20240116-7TFHKXF4KFOJFNSJYBX7KON4KE/
ウイグル族学者の解放要求 米政府、拘束から10年
米国務省は15日、
中国のウイグル族学者イリハム・トフティ氏=国家分裂罪で服役中=の拘束から同日で10年となるのを受けて声明を発表した。
中国政府による新疆ウイグル自治区での「残虐行為」を非難し、無条件での即時解放を要求した。
トフティ氏は、2014年に無期懲役が確定した。声明は「ウイグル族ら少数民族の権利を擁護しただけで、拘束されたままだ」と指摘。
「ジェノサイド(民族大量虐殺)などを含む人権侵害に対して声を上げる人々を黙らせようとする中国政府の取り組みを示すものだ」と批判した。
(共同)
2023.09.22-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20230922-DJULJ4ZHBZNXVFOC6Z6TW5V4MI/
ウイグル族学者に無期懲役 中国、国家安全で判決
米政府系メディアのボイス・オブ・アメリカ(VOA)は22日までに、
中国の裁判所がウイグル族学者ラヒラ・ダウトさんに国家安全を脅かした罪で無期懲役の判決を言い渡したと報じた。
米国の人権団体によると、
ダウトさんは中国新疆ウイグル自治区の大学で教授としてウイグル族の民間伝承などを研究していた。
中国外務省の毛寧副報道局長は22日の記者会見で「中国は法治国家で、法律に基づいて事件は処理される」と述べた。
(共同)
2023.09.11-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230911-2JDOUK5NRZIPDHXZKZXDRL7YEE/
<独自>ウイグル弾圧対応協議 10月に日本で国際会議
中国政府による新疆ウイグル自治区の人権侵害を巡り、
海外から約30人の国会議員を招き日本の国会議員らと対応策を話し合う「国際ウイグルフォーラム」が10月30、31両日に国会内で開かれることが11日、分かった。ウイグルの人権状況の改善に向けた法整備に取り組む各国の政治家の連携を強化する考えだ。
超党派の「中国による人権侵害を究明し行動する議員連盟」や、亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」(本部・ドイツ)などが主催する。
欧米や中東、東南アジアなどの閣僚級も含めた国会議員の参加を予定している。日本からは自民党や日本維新の会、国民民主党、衆院会派「有志の会」の所属議員も出席する。
同フォーラムは昨年11月にもベルギーで市民活動家らが参加して開かれたが、政治家の出席がメインになるのは今回が初めて。
超党派議連会長の古屋圭司元国家公安委員長(自民)は産経新聞の取材に「中国の常軌を逸した人権侵害に手をこまねいているわけにはいかない。世界が連携し、中国を牽制(けんせい)することに意義がある」と述べた。事務局長の三ツ林裕巳衆院議員も
「人権侵害を許さない日本の姿勢を示す」と強調する
2023.05.16-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230516-AMXMRPCW5ZMUVPITXVAJ7WBGVY/
中国「ジェノサイド継続」と非難 米報告書 旧統一教会も言及
【ワシントン=大内清】
米国務省は15日、「信教の自由」に関する国・地域別の2022年版報告書を発表した。
中国政府による新疆ウイグル自治区のイスラム教徒少数民族ウイグル族らに対する「ジェノサイド(集団殺害)や人道に対する罪」が継続していると強く批判。日本については、22年7月に起きた安倍晋三元首相の暗殺を機に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への注目が高まっていることなどに言及した。
報告書は、
中国ではウイグル族のほかにもキリスト教徒やチベット仏教徒、非合法の気功団体「法輪功」などが政府の弾圧を受けているとし、
不当な拘束や拷問、思想改造、宗教儀式の妨害などが行われているとの報告を列挙。弾圧対象の宗教を信仰する人々に対する法執行機関の対応が「透明性に欠いている」などと非難した。
また、22年中に行われた法改正により、宗教団体の収入や運営に関する中国共産党の監視が強まったことなどが明記された。
一方、報告書は、安倍氏の暗殺犯が、同氏と旧統一教会との関係性を動機として挙げていることや、宗教法人法に基づく「質問権」を巡る経緯などを記載。信者が多くの嫌がらせや脅迫を受けているとする教団側の主張も併記した。
2023.02.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230215-CYPANI4VPJKMNIGGJT3FM5DKRQ/
中国のウイグル政府トップ、EU訪問中止 抗議拡大受け
【パリ=三井美奈】
欧州連合(EU)報道官は14日、
中国の新疆ウイグル自治区政府のトップによるブリュッセル訪問計画が中止になったと明らかにした。
ブリュッセル訪問を予定していたのは、自治区のエルキン・トゥニヤズ人民政府主席。今月、欧州を歴訪し、ブリュッセルでEU高官が面会する予定だった。EU報道官は、「
中国側から訪問延期の連絡を受けた」としている。
トゥニヤズ主席は、米国から人権侵害で制裁を課せられている。EUは自治区の人権侵害で対中制裁を発動したが、同主席は対象としていなかった。
同主席のEU訪問計画が明らかになると抗議運動が広がり、人権団体や欧州議会から「欧州入りしたら当局が『人道に対する罪』容疑で取り調べるべきだ」との声が出ていた。
欧州メディアによると、
同主席はブリュッセルのほか英国、フランスも訪問予定だったが、いずれも中止になったという。
2023.01.16-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20230116-2TLQ7B4HFVOGHOCNE3ZJSAIPTE/
中国の宗教弾圧に危機感 米ユダヤ系団体の副所長
米ユダヤ系団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(本部ロサンゼルス)のエーブラハム・クーパー副所長が16日、東京都内で記者会見を開き、
中国国内の人権状況について「政権に宗教の自由が押しつぶされるなど、個人の自由が奪われている」と危機感を示した。
クーパー氏は新疆ウイグル自治区で、信仰されるイスラム教の教えなどが弾圧されていることを問題視。「歴史を見ると、国民の全てを支配しようとする政権は己より崇高な宗教を脅威と見なす」と述べた。
中国の交流サイト(SNS)では政府に都合の悪い書き込みが削除されている一方、安倍晋三元首相の銃撃事件を喜ぶ書き込みが残っていたと指摘した。
中国の「ゼロコロナ」政策を巡る抗議活動が米国内であった際、
若者がフェースマスクで顔を隠していたとし、中国の外でさえ政府の目を恐れていたと振り返った。
(共同)
2023.01.04-Yahoo.!Japanニュース(AERA.dot.)-https://news.yahoo.co.jp/articles/1dd0a89f809ced37cb6befabca77637fd197d064
中国がウィグルを弾圧したくなる理由とは? チベット人権問題の見通しも暗いまま〈dot.〉
中国内陸部に位置する
新疆ウイグル自治区は、中国国内にある五つの自治区の一つ。カザフスタンなどと国境を接し、イスラム教徒のトルコ系住民であるウイグル族が多く暮らす。
近年、中国が設置したウイグル族の「再教育」のための収容所の存在が報道され、深刻な人権抑圧が国際的に注目されている。
中国はなぜ、彼らを弾圧するのか。『ざっくりわかる 8コマ地政学』から、マンガを交えて解説したい。
「新疆」は
「新しい土地」の意味。新疆ウイグル自治区の総面積は約166万平方キロメートルで、五つある自治区の中で最大だ。人口は約2500万人(2017年)で、そのうち
ウイグル族が約45%、漢民族が約40%を占めているとされる。
清朝の時代に征服されたが、清末から中華民国期にかけては中国での混乱が続いた。ウイグル族の民族意識も強まり、1933年と1944年には独立国家を建設したが、短期間で瓦解。1949年に成立した中華人民共和国に吸収された。その後の民族主義運動も、ことごとく力で抑え込まれた。
新疆は石油やレアメタルなどの鉱産資源が豊富なうえ、中国にとってはロシア(ソ連)や中央アジアとのバッファゾーンという意味合いもある。
中央アジアを経てヨーロッパに至る経済圏をつくる「一帯一路」の一環としても、開発に重点を置いている。
こうした地理的な事情から、中国はウイグル族の独立を認めることができないのだ。
さらに中国は、チベット自治区における人権問題も抱えている。チベットの生んだ独自の仏教であるチベット仏教は、かつて東アジアで広い信仰を集めた。
チベットは清朝の支配下にあったが、清の皇帝はチベット仏教を尊重し、指導者のダライ・ラマを保護する立場だった。
1912年に清が滅亡すると、チベットは独立を宣言。当時、インドを支配していたイギリスは、チベットをバッファゾーンにできると考え、その独立を承認した。しかし、
第二次世界大戦後の1947年にインドは独立。イギリスは南アジアから手を引いた。
結果、チベット独立の後ろ盾は失われ、50年に中国人民解放軍の侵攻が始まった。ユーラシアの内陸に位置する新疆やチベットは、他の有力国が影響を及ぼすことも困難。中国の少数民族問題の見通しは暗いままだ。
(構成 文筆家 三城俊一/生活・文化編集部) ■弾圧や同化でなく「融和」です
2022.12.24-Yahoo!Japanニュース(47 NEWS)-https://news.yahoo.co.jp/articles/8428518e15fa75873a85c60207a324380dedb250
ウイグルの絶望、海外に避難しても…「中国からの要請だ」逃げ込んだ国まで連れ戻しに協力
(共同通信=上松亮介)
(1)
中国の新疆ウイグル自治区では、イスラム教徒に対する深刻な人権弾圧が指摘されている。当局による
迫害を恐れ、国外に避難したウイグル出身者も多い。
プログラマーのイドリス・ハサンさん(34)もその一人。民族的、宗教的に近く「安住の地」として知られるトルコに家族で移住していた。
しかし近年、トルコ政府の態度がおかしい。思い切って欧州への亡命を試みたが、経由地の北アフリカ・モロッコで拘束された。中国への送還が実行されたら「殺されるかもしれない」とおびえる日が続く。
難民条約は各国政府に対し、迫害の恐れがある国への送還を禁じている。それなのに、なぜこんなことが起きるのか。
(共同通信=上松亮介)
▽「中国側に要請された」
イドリスさんは、2012年に新疆ウイグル自治区からトルコに移住した。妻のブザイヌル・ウブリさん(28)によると、ウイグル自治区では当時から、イスラム教徒の女性としてスカーフをかぶったり、モスクで礼拝を行ったりするだけで、警察官が自宅を訪れた。「まるで犯罪者扱いです。そんな場所でどう暮らしていけと言うのでしょうか」
イドリスさんはトルコでプログラマーとして働き、妻と3人の子どもを養った。コンピューターの知識を生かしたポスター製作などを通じ、在トルコのウイグル団体の人権活動にも協力。しかし、中国政府から
「新疆の独立勢力と関わりがある」という疑いをかけられ、
国際刑事警察機構(ICPO)を通じた国際手配を受けた。
ブザイヌルさんによると、
イドリスさんはトルコの治安当局からも過去に4回拘束された。犯罪に関わったわけでもないのに、拘束期間は1年や半年に及び、4回目の2018年11月には、深夜、子どもと寝ているところを連行された。
ブザイヌルさんは夫の拘束理由について、トルコ当局の担当者からこんな説明を受けたという。
「中国側から要請があったから」
イドリスさんは4回目の解放後、欧州への亡命を決意した。「拘束中は収入も途絶え、生活が苦しくなる。絶対にまた捕まるに違いない。子どものためにも、こんな生活は続けていられない」
(2)
「安住の地」であるはずのトルコは近年、経済関係を背景に中国との関係を深めており、ウイグルの人々の間では懸念が高まっていた。「トルコでは安心して生活できるはずだ。そう信じて来たのに…」とブザイヌルさんは嘆いた。
▽「ジェノサイドです」
イドリスさんは昨年7月、単身でトルコから欧州に向かう経由地としてモロッコのカサブランカ空港に到着したところ、地元当局に拘束された。 アメリカ政府系のラジオ自由アジア(RFA)などによると、モロッコの裁判所は昨年12月、
イドリスさんを中国に送還すると決定。しかし、各国の人権状況を調査する国連の特別報告者はモロッコ政府に対し「
送還されれば、深刻な人権侵害を受ける恐れがある」として手続き停止を求めた。
人権団体などの批判もあり、既にICPOの国際手配は解かれているが、収監は続いている。今夏に電話で接触すると、早口でこうまくし立てた。
「中国に戻れば、収容施設で殺されるかもしれない。あなたも弾圧状況を知っているでしょう?新疆で起きているのはジェノサイド(民族大量虐殺)です」
▽子どもや留学生も拘束
国外へ避難したウイグルの人々を中国へ送還する動きは、世界各地で起きている。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)などによると、
2015年、タイで保護を求めていた子どもを含む220人が拘束、100人近くが送還された。
17年にはエジプトで留学生ら62人が拘束され、うち少なくとも
12人が送還された。
合計で200人以上が拘束されていたとの情報もある。HRWは「中国側の要請を受けて行われたものだ」として非難声明を出している。
一方で、中国側への配慮と国内世論との狭間で対応に苦慮している国もある。インドネシア政府は2020年9月、国内のイスラム過激派に協力したとしてテロ容疑で有罪判決を受けた4人を中国に送還した。ただ、イスラム教徒が人口の9割以上を占めるこの国では、2019年末、ウイグル収容施設の存在が国際的に注目を浴びた際に抗議デモが起きた。
インドネシア政府は4人の送還について公表を控えていたが、報道で明らかになるとたちまち批判の声が上がった。
米国の調査機関「オクサス・ソサエティ」などが、関係者の証言や報道を基に作成したまとめによると、
1997年から2022年1月の間に、400人以上のウイグル人が中国国外で拘束され、本国に送還されている。
オクサス・ソサエティのブラッドリー・ジャーディン研究主任は「
人権より対中関係を優先させる各国の思惑が背景にある」と話す。
中国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」の存在を挙げた上で「経済を重視し、人権を軽視する中国と考え方が一致する国が協力している」と指摘した。
2022.10.01-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/3c1d7de72ee254d4609303b7d6076bc134955e8c
加速する中国の「同化政策」 ウイグル人女性が実態を告白
(村上栄一)
中国の新疆ウイグル自治区でウイグル人に対する人権侵害が行われているとして、
日本在住のムカイダイスさんが愛媛県西条市で講演し、
植民地となった国に訪れる悲惨な実情を具体例を挙げて述べ、「民主主義の日本がアジアを守る力を持ってほしい」と訴えた。
深刻な人権侵害
この問題では、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が今年8月、「深刻な人権侵害が行われている」とする報告書を発表。報告書は、差別的で恣意的な身柄拘束は人道に対する罪に相当する可能性がある
▽職業訓練施設は自由に退所できず、収容は自由の剝奪-とし、中国に対し、恣意的な拘束を受けているすべての人の解放を勧告し、ウイグル族らに対する差別的な政策、法律の撤廃を要求する内容となっている。
講演会は「美しいふるさと西条実行委員会」の主催で、新型コロナウイルス対策として参加数を制限して9月11日に開かれた。
ムカイダイスさんは「
ウイグル人女性が語る『祖国』への想い」のテーマで壇上に立ち、「私のふるさとで何があったのかを話したい」と語りかけた。
■冬季五輪外交ボイコット ジェノサイド(集団殺害)をめぐっては、1948年に国連総会でジェノサイド条約が採択され、51年に発効した。
集団の構成員を殺す
▽重大な肉体的、精神的危害を加える-など5項目の定義があり、いずれかに該当するとジェノサイドとされる。
ムカイダイスさんは「
ウイグルは定義に全部あてはまる」と指摘し、
中国の人権問題が国際社会に認知された背景に、中国国外の亡命ウイグル人らの活動があったと説明した。
米国は昨年、
ジェノサイド及び人権に対する罪を認定。批判の声の盛り上がり、各国の2月の北京冬季五輪の外交ボイコットにもつながった。
中国は人権侵害を全面的に否定しているが、日本でも今年2月1日、衆院で「
新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議」がなされた。「不十分な内容だった」との指摘もあったが、ムカイダイスさんは「民主主義の力が発揮された。対中非難決議はアジアでは日本が初めて。私は日本に感謝したい」と評価した。
■誰が助けてくれるのか ムカイダイスさんは、講演でふるさとについて紹介。
東トルキスタンはトルコの東という意味で、日本では西域、シルクロードの国として知られる。
広さは日本の約4・6倍で、中国の約5分の1を占め、美しい自然と豊かな文化を持つ、と語った。 「
植民地となって以降、トルコ民族のウイグル人は出ていけと言われた。
今は
中国の植民地で、
中国共産党によりさまざまな人権侵害に苦しめられている。支配者は魂が怖い、文化が怖いのです。言語を失わせ、思想を改造しようとする。私たちを中華民族にしようとしている」と人権侵害が続く実情を、
強制される不妊手術、漢民族の男性兵士との結婚など事例を示しながら説明した。
「私たちは国を守れなかった。
世界がジェノサイドを認定しても、誰が誰を助けてくれるのか。自分の国を渡したら悲惨なことになる。
ホームステイといって漢民族が一緒に住みます。『親せき』となって家に入ってくるわけです。娘を持つ親は抵抗することはできない。これは合法化されたレイプ政策です。
収容所では女性は髪を切られ、中国製のかつら、つけまつげとして日本でも売られています」 ときおり、涙ぐみ、言葉に詰まりながらもムカイダイスさんは語り続けた。
■日本はアジアを救う力を 「
収容所は人間の尊厳を踏みにじる。だめです。犯罪です」とムカイダイスさんは強調する。「
でも、そこで殴られた人は知っていても、証拠を示すのは難しい。助けてくれたのは、心ある漢民族の方々でした。
14億人の漢民族の中に心ある人はたくさんいる。そのような人々は、真の意味で日本と仲良くなりたいと思っています。それを日本の皆さんも知るべきです」と述べた。
ムカイダイスさんは
東京の多磨霊園にウイグル人の墓があることも紹介し、「
大事にしてくれた日本に感謝しています」と話した。そして「
日本はだめなものはだめと言える民主国家。アジアを救う力を持つことが必要です。中国の暴挙から守ってほしい。日本は世界の平和をリードする国となってほしい」と訴えた。
(村上栄一)
2022.09.01-BBC NEWS JAPAN-https://www.bbc.com/japanese/62747614
中国がウイグル族に「人道に対する罪」の可能性=国連報告書
国連は8月31日、
中国・新疆地区で「深刻な人権侵害」が見られるとして、
中国を非難する報告書を公表した。
中国はこの報告書を、西側勢力によって仕組まれた「茶番」だとし、国連に公表しないよう求めていた。
報告書は、
イスラム教徒のウイグル族や、その他の少数民族に対する虐待の訴えについて調べたもの。中国は、報告書の内容を否定している。
調査担当者らは、「
人道に対する罪」
に相当しうる拷問が行われたことを示す「
信ぴょう性の高い証拠」を発見したと主張。
中国について、不明確な国家安全保障法を使い、少数民族の権利を締め付け、「恣意(しい)的な拘束制度」を確立していると非難している。
「人道に対する罪の可能性」
国連人権高等弁務官事務所が出したこの報告書は、刑務所に拘束された人たちが「
性暴力やジェンダーに基づく暴力」などの「
不当な処遇パターン」を受けてきたとした。また、
強制的な医療行為や「差別的な家族計画や出産制限」の対象にされた人もいたとした。
国連は中国に対し、「
恣意的に自由を奪われたすべての個人」を直ちに解放するよう勧告。中国による行為の一部は「
人道に対する罪を含む、国際犯罪の遂行」に当たる可能性があると示唆した。
国連は、中国政府に拘束されている人数は不明だとした。ただ人権団体は、中国北東部・新疆地区の収容所には、100万人以上が拘束されていると推定している。約60のウイグル族団体を統括している
世界ウイグル会議は、この報告書を歓迎。迅速に国際的な措置を講じてほしいと訴えた。
ウイグル人権プロジェクトのオメル・カナト事務局長は、「これはウイグル危機への国際的な反応において、転換点だ」、「
中国政府の頑強な否定にも関わらず、国連は正式に、ひどい犯罪が行われていると認めた」と話した。
新疆には、イスラム教徒が大部分を占めるウイグル族が約1200万人いる。国連は報告書で、イスラム教徒以外のウイグル族も影響を受けている可能性があるとした。いくつかの国はこれまで、新疆における
中国の行為をジェノサイド(集団虐殺)と表現している。
一方、
今回の報告書を事前に読んだ中国は、虐待の疑惑を否定。収容所を、テロと戦うための手段だと主張した。
今回の報告書は、ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官の4年間の任期の最終日に発表された。
バチェレ氏は任期中、ウイグル族に対する虐待の告発が仕事の大半を占めた。同氏の事務所は、新疆でのジェノサイド疑惑の調査が1年以上前に行われていたと明らかにした。
報告書の公表は、これまで何回か延期されてきた。西側の人権団体の一部は、
自国にとって不利な発見を削除するよう、中国がバチェレ氏に強く求めていると非難していた。
中国は、報告書が公表される直前まで、バチェレ氏に公表をやめるよう圧力をかけていた。バチェレ氏は8月25日の記者会見で、報告書を「
公表するかしないかをめぐって、とてつもない圧力」
を受けていると認めていた。
しかし、報告書に関して中国との対話に努めることは、報告書の内容に「
目をつぶる」こととは別だとし、公表の延期は正しい判断だったとした。
2022.06.27-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20220627-XI4ANXQKN5JF7EATBKKKOEKFCI/
ウイグル弾圧「制度化進む」 資料分析の研究員、指導部関与「決定的」
(ワシントン 大内清)
中国新疆ウイグル自治区での弾圧をめぐり、大量流出した地元公安当局の内部資料を分析した
米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団」(VOC)のアドリアン・ゼンツ上級研究員が27日までに産経新聞のインタビューに応じた。ゼンツ氏は、
中国の習近平体制が「
少数民族ウイグル族を集中収容して強制労働へ大量動員する段階から、これを長期的かつ持続可能なものに常態化させる段階に移行しようとしている」と警鐘を鳴らした。
ゼンツ氏は、
中国政府が現在、大量の住民を強制的に収容所に送ったことで自治区の経済活動が低調になった影響を緩和するため、ウイグル政策を「より利益の出るものに転換させようとしている」とし、その一環として「洗脳された一部の人々を(当局の)監視の下で自宅に戻すこともしている」と指摘。ただし、
こうした施策で弾圧が弱まったわけではなく、むしろ「
弾圧の制度化」
が進んで人権侵害行為が一層、巧妙化していると非難した。
ゼンツ氏はまた、多くの内部文書や写真を含む今回の流出資料によって、
中国政府による大規模な弾圧がより明確になっただけではなく、習国家主席を含む指導部が直接的に関与していることが「決定的に証明された」と意義を強調した。中国共産党内では、上層部の方針に従って弾圧政策を遂行することが「出世や経済的な利益につながっていることは明らか」だとし、「党内で(弾圧に)抵抗するような動きはみられない」と述べた。
一方でゼンツ氏は、国連のバチェレ人権高等弁務官が5月、独立した検証作業や被害者との面談などが不可能な状況で自治区を視察訪問したことは「大きな誤りだった」とも強調した。
バチェレ氏が中国訪問中に行った記者会見での説明は「
完全に中国側の説明に沿ったもの」だったと失望感を表明。バチェレ氏が中国当局に、自治区で行方不明になっている人々に関する情報を家族に提供するよう要請などしたことは、「
犯罪者に自身の犯罪を調べさせるようなものだ」と痛烈に批判した。
(ワシントン 大内清)
ウイグル弾圧の内部資料大量流出
中国新疆ウイグル自治区のカシュガル地区とイリ・カザフ自治州の公安サーバーから、ハッキングによって内部資料が大量に流出し、米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団」などが5月下旬、「
新疆公安ファイル」として資料の分析結果を公表した。資料は中国が
「職業技能教育訓練センター」と呼ぶ収容所などの実態を示す写真や2万3000人超の収容者名簿、約2900人分の顔写真、共産党幹部の発言記録など2017~18年頃の数万点。
2022.06.27-iza(産経新聞)-https://www.iza.ne.jp/article/20220627-WKK4JUBPM5ORRJAOVS4L65LSIA/
ウイグル弾圧 指示の幹部〝閑職〟に 強権政策は緩めず-
(北京 三塚聖平)
中国新疆ウイグル自治区の公安当局から大量流出した内部資料でウイグル族弾圧を指示していたとされる自治区の前トップは最近、
〝閑職〟に追いやられたことが表面化した。
弾圧が国際的な問題に発展した責任をとらされたとの見方もあるが、明確な理由は不明。ただ、
中国当局が強権的な少数民族政策の手綱を緩めることはないとみられる。
中国共産党は昨年12月、陳全国・自治区党委員会書記の交代を発表した。陳氏の異動先は明らかにされていなかったが、中国メディアは今月中旬、ようやく新たな肩書を「党中央農村工作指導グループ副グループ長」と伝えた。同グループのトップは
陳氏と同じ政治局員の胡春華(こ・しゅんか)副首相。
陳氏は2016年に自治区トップに就任し、ウイグル族への「再教育」など同化政策を推進。20年には米政府の制裁対象になった。
陳氏は党・政府の要職に起用されるとの見方もあったが、香港紙の明報は陳氏について「テロは抑圧したが、国際的な論議も引き起こした」と指摘。「政界から徐々に消える」ことになるとの見解を伝えた。
このほか、陳氏の人事をめぐり、自治区での統治手法がとがめられたとの見方の一方、習近平国家主席と距離がある李克強首相に近いとされる事情や健康問題などを指摘する声もある。
ただ、全国人民代表大会常務委員会は24日、
少数民族政策を担う国家民族事務委員会の主任(閣僚級)に潘岳(はん・がく)氏を起用する人事を決めた。66年ぶりに漢族の就任となった前任者に続き、2代連続で漢族がトップになったことで、事実上の同化を進める少数民族政策の継続が明確になったと受け止められている。
一方、中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は5月24日の記者会見で、流出資料で改めて焦点が当たった少数民族への弾圧について「
噓やデマをまき散らしても世間を欺くことはできず、新疆の社会安定や経済繁栄、人民が安穏に暮らしている事実を覆い隠すことはできない」と主張した。
(北京 三塚聖平)
ウイグル弾圧の内部資料大量流出
中国新疆ウイグル自治区のカシュガル地区とイリ・カザフ自治州の公安サーバーから、ハッキングによって内部資料が大量に流出し、米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団」などが5月下旬、「新疆公安ファイル」として資料の分析結果を公表した。資料は中国が「職業技能教育訓練センター」と呼ぶ収容所などの実態を示す写真や2万3000人超の収容者名簿、約2900人分の顔写真、共産党幹部の発言記録など、2017~18年を中心とした数万点。
2022.05.31-朝日新聞-https://www.asahi.com/articles/DA3S15310311.html
(社説)ウイグル弾圧 真の調査で実態解明を
民族や宗教など、どんな理由であれ弾圧は許されない。
人権侵害が指摘されている以上、独立した透明性のある調査が徹底実施されなくてはならない。
中国西部の新疆ウイグル自治区は、
歴史的にイスラム教徒が多く、かねて中国共産党との摩擦が絶えなかった地域である。この地を、国連人権高等弁務官のバチェレ氏が訪れた。
国連の人権部門トップが中国国内に入ったのは17年ぶり。国連は、ウイグル族などへの迫害が伝えられる新疆訪問を数年前から求めていたが、中国が受け入れを拒んでいた。
訪中が実現したことに一定の意義はある。新疆の問題に改めて内外の関心を高める効果もあった。しかし、
肝心の実態解明につながらなかったのは極めて残念である。
非難されるべきは中国指導部だ。バチェレ氏に対し「調査」を認めず、事実上の行動制限をいくつも設けたとみられる。6日間の訪中日程のうち自治区滞在はわずか2日間。現地の人々との接触もコロナ対策を理由に制限され、自由な面会はできなかったという。
バチェレ氏は、中国が教育施設だったと主張する場所や刑務所などを訪ねたというが、全体の状況を把握できるような「十分なアクセスは出来なかった」と視察後に語った。
国際人権団体などから失望の声が出るのは無理もない。中国側が人権侵害を否定するならば、現地での聞き取り調査を受け入れ、実態を広く明らかにするのが筋である。隠そうとしたり、ましてや今回の訪問を政治的な宣伝に利用しようとしたりするのは言語道断だ。
バチェレ氏が習近平(シーチンピン)国家主席とオンライン協議をした際、「
中国の人権保護の成果に敬服する」と語ったと、中国外務省は発表した。だが、国連によると、
こうした発言は実際にはなかったようだ。
習氏は「人権問題に完璧な『理想郷』は存在せず、偉そうな『教師面』は不要だ」と反発する。だが、
求められているのは国際規範に基づく人権の保障である。他国を責める前に自ら説明責任を果たすべきだ。
新疆での弾圧をめぐっては最近、中国の内部資料が流出し、自治区トップが「(拘束者が)数歩でも逃げれば射殺せよ」といった非道な指示をしていたと報じられている。
さっそくドイツ外相は中国に事実関係の調査を求めた。日本を含む国際社会は、連携を強めて中国への圧力をさらに強めなければならない。
国連は今回を手始めに粘り強く訪問調査を実現させ
、実態解明に歩を進めるべきだ。
(連載社説)
2022.02.14-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/9a90b0183dd58015a18ae4f3d0da8722ac01eb3c
アラブ諸国でウイグル人拘束 中国に送還、秘密収容所も存在か
【ロンドン=板東和正】
中国新疆ウイグル自治区からアラブ諸国に移住したウイグル人が現地で拘束されたり、中国に強制送還されたりする事案が欧米メディアで相次いで報じられている。
中国が経済的につながりの深いアラブ諸国に拘束や送還を要請しているもようだ。欧米メディアや亡命ウイグル人の組織「世界ウイグル会議」の幹部は、アラブ首長国連邦(UAE)に「ブラックサイト」と呼ばれる中国の秘密収容所がある可能性も指摘している。
英スカイニューズ・テレビは9日、中国の要請によりアラブ諸国で拘束されたり、中国に強制送還されたりしたウイグル人は2001年以降で290人以上にのぼるとの推計を報じた。
UAEのほか、エジプト、モロッコ、カタール、サウジアラビア、シリアが中国のウイグル人弾圧に加担していると分析した。
スカイニューズや米CNNテレビによると、UAEに住むウイグル人男性、アーマドさんは2018年2月、ドバイ警察から急な出頭要請を受け、拘束された。アーマドさんは中国に送還される直前、妻に「
中国の脅威がUAEの家族にまで及んでいると確信した」と話していたという。
ドバイに存在するとされる「
ブラックサイト」の目撃情報も報じられている。スカイニューズやAP通信によると、漢民族の女性、ウー・ファンさん=当時(26)=は昨年5月、婚約者が香港の民主化デモを支持していたためにドバイ警察に拘束され、3階建ての邸宅に連行された。 この邸宅では金属製の扉がある独房のような小さな部屋に押し込まれ、警備員に中国語で「絶対に出られない」と脅された。
邸宅に数日間閉じ込められている間、ウイグル人とみられる女性が「中国に帰りたくない、トルコに帰りたい」などと叫んでいるのを聞いたという。 英国の人権専門家によれば、この邸宅は、中国が海外でウイグル人を拘束し、尋問するための秘密収容所である可能性がある。
英メディアによると、中国はUAEに6千社以上の企業を進出させるなど経済的なつながりが深い。世界ウイグル会議の英国所長、ラヒマ・マフムト氏は産経新聞に「
中国政府の意向をくむ一部の国が人命よりも経済的利益を優先し、ウイグル人を拘束している」と指摘。
ドバイ以外にも「
ブラックサイト」が存在する可能性があるとし、「
中国による国境を越えた抑圧と支配のシステムが浸透している」と危機感を示した。
スカイニューズはUAEなどにコメントを求めたが9日時点で返答を得られなかった。新疆ウイグル自治区の広報担当者はスカイニューズに「中国が海外に
ブラックサイトを設置するのは不可能だ」と否定した。
2022.01.05-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20220105-ITU3QF4EMVMKNMEMT6SGSTY5QI/
テスラ、新疆ウイグル自治区に販売店 米議員ら批判
米電気自動車(EV)大手テスラが、
中国新疆ウイグル自治区に販売店を開設したことが4日までに明らかになり、波紋が広がっている。
米政府が中国当局による少数民族ウイグル族への弾圧を非難する中、同自治区に出店するのは「弾圧の隠蔽に加担」していると米議員らから批判を浴びている。
米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、テスラは昨年12月31日、中国の交流サイト(SNS)、微博(ウェイボー)の公式アカウントで、同自治区のウルムチにショールームを設け、営業を始めたと中国語で投稿していた。投稿には「新疆をEVの旅に乗り出させよう」と書き添えられ、開業時の写真も掲載されていた。
新疆ウイグル自治区をめぐっては、
米政府が、中国当局によるウイグル族弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定。イスラム教徒が多いウイグル族への強制労働も問題視し、中国の関係企業への輸出禁止を発動していた。
そのため、ルビオ上院議員は今月3日、「中国共産党が自治区でのジェノサイドと奴隷労働を隠蔽(いんぺい)するのを、(テスラが)手助けしている」とツイッターに投稿し、矛先を向けた。
ロイター通信によると、米国最大のイスラム教徒擁護団体も、テスラの同自治区への販売店出店が「ジェノサイドを支える」ものだと指摘し、厳しい姿勢を示している。(ラスベガス 塩原永久)
2021.12.1-BBC News Japan-https://www.bbc.com/japanese/59486198
ウイグル弾圧、習主席らの関与示す「新疆文書」が流出
習近平国家主席をはじめとする中国の指導者たちが、
同国の少数民族ウイグル族の弾圧に関与していることを示す文書の写しが、このほど新たに公表された。この文書は、ウイグル族に対する人権侵害を調べているイギリスの独立民衆法廷「ウイグル法廷」に9月に提出されたもの。これまで一部が明らかになっていたが、今回のリークで今まで確認されていなかった情報が表面化した。
複数のアナリストは、この文書の中に
中国政府高官がウイグル族の大量収容や強制労働につながる措置を求めたことを証明する発言記録が含まれていると指摘する。中国はウイグル族に対する
ジェノサイド(集団虐殺)を一貫して否定している。
ウイグル法廷はウイグル問題が専門の学者3人、エイドリアン・ゼンツ博士、デイヴィッド・トビン博士、ジェイムズ・ルワード博士に対し、文書が本物であるか確認するよう依頼した。
「新疆文書」
このほど内容が明らかになった文書は、多くのウイグル族が暮らす地域(新疆ウイグル自治区)にちなんで「
新疆文書」と呼ばれる。習主席や李克強首相ら中国共産党の指導者たちが、ウイグル族や中国のほかのイスラム教徒に影響を及ぼす政策に直接つながる発言をしていたとしている。
こうした政策には
強制収容や大規模な不妊手術、強制的な中国への同化、「再教育」、拘束したウイグル族を工場で強制労働させることなどが含まれる。
米紙ニューヨークタイムズは2019年に同紙にリークされた同一の文書について報じていたが、当時は全ての内容が公表されていなかった。
ゼンツ博士は今回の文書に関する
報告書の中で、文書を分析したところ、中国政府トップらの発言と、その後にウイグル族に対して行われた政策との間には「これまでの理解をはるかに超える広範で詳細かつ重要な関連性がある」ことが示されたとしている。
2021.08.10-Yahoo!Japanニュース(文春オンライン)-https://news.yahoo.co.jp/articles/3264aaf11a4ce7f78a4444f899921643e06bb1f9
「ウイグル族女性への強制不妊手術」を告発! ドイツ人学者に独占インタビュー
8月10日発売の「
文藝春秋」9月号は、中国政府によるウイグル族弾圧を世界で初めて学術研究として明らかにしたエイドリアン・ゼンツ博士(45)の単独インタビューに、日本メディアとして初めて成功した。
ドイツ出身の文化人類学者であるゼンツ博士は、チベットに関する研究でケンブリッジ大学の博士号を取得。その後、新疆ウイグル自治区の複数の行政府から流出した公文書や亡命者の証言、さらには現地の求人広告などの公開情報を入念に検証。その結果、「
新疆ウイグル自治区内に1300カ所以上もの強制収容所が設置され、100万人以上のウイグル族が“再教育”のために収容されている」(ゼンツ博士)と推計した。
なかでも衝撃的なのは、
中国政府が出産可能年齢のウイグル女性たちに強制的な「不妊手術」をおこない、ウイグル族の人口が急減しているとの指摘である。 「2018年春から、産児制限政策への違反(子どもの産みすぎ)を理由とした、ウイグル族女性の強制収容が急増するようになりました。
ある県の2018年の政府活動報告には、過去2年間で自然人口増加率が83%も低下したという記述すらみられるほどです。あまりに急激な減少なので、理由は産児制限だけではないのではないか。そう考えて調査を進めたところ、少数民族の出産の防止を目的にした、体系的かつ国家的なキャンペーンがあることに気づきました」(ゼンツ博士)
「
2018年には、中国国内でおこなわれたIUD(子宮内避妊具)装着手術の8割が新疆でなされたことがわかっています。不妊手術も大規模に実施されています。なかでも、
私が見つけた最も残酷なデータは、2019年にホータン市において、女性524人にIUDを装着、さらに1万4872人に不妊手術を施すとの方針が記された公文書でした」(同)
「ユニクロ」も無関係ではない
ゼンツ博士の調査レポートは、国際社会にメガトン級の衝撃を与えた。今年1月、アメリカ政府は、中国政府によるウイグル族への人権侵害の状況を「ジェノサイド(民族大虐殺)」であると認定。イギリスやカナダなどもこれに続き、来年2月に開催される北京冬季五輪のボイコットや開催地変更を求める運動にも発展している。
また、「ユニクロ」を展開する日本企業「ファーストリテイリング」が、ウイグルにおける強制労働で産出された綿花を使用しているとの疑いを受け、フランス当局が同社フランス法人への捜査に乗り出すなど、日本企業も無関係ではいられない。
ゼンツ博士の研究によって明らかにされた
ウイグル族人権侵害の恐るべき全貌は
、「文藝春秋」9月号のインタビュー「
ウイグル『
強制不妊手術』
の残虐 」に掲載されている。
2021.07.28-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20210728-JDM6OQ3PHBLBJOG66SMPRCJDEU/
新疆ウイグル自治区に弾道ミサイルの地下格納庫建設か 米紙報道
【ワシントン=黒瀬悦成】米紙ニューヨーク・タイムズは27日、
中国が新疆(しんきょう)ウイグル自治区東部の砂漠地帯に核弾頭搭載の弾道ミサイルの地下格納庫(サイロ)とみられる
110の施設を建設していると報じた。米紙ワシントン・ポストも先月、
北西部甘粛省の砂漠地帯で今回と同様の格納施設119カ所が建設されていると報じており、中国が核戦力増強を加速化させている可能性もある。
商業衛星の画像を分析した全米科学者連盟の核専門家によると、
新疆ウイグル自治区の問題の施設は、少数民族ウイグル族の強制収容施設があるとされるクムルから約100キロの位置にあり、それぞれの施設が約3キロの間隔を開けて建設されていた。建設は3月に始まったとしている。
また、施設の建設が隠蔽されていた様子はなく、発見されることを見越していたとしている。全米科学者連盟の核専門家は、甘粛省の格納庫も含め、一連の施設建設が「
中国の核戦力が過去最大の規模で拡大していることを示すものだ」と指摘した。
ただ、中国がこれらの格納庫にミサイルを実戦配備するかは不明とし、米国の先制核攻撃を引き付けるためのおとりや、将来的に米国と核軍縮交渉に入った場合の取引材料として使う可能性もあるとしている。
2021.07.06-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/amp/210706/mcb2107060600002-a.htm
沈黙のウイグル族 ウルムチ暴動12年、コロナで厳戒
中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区ウルムチで2009年に発生した少数民族ウイグル族の大規模暴動から5日で12年となった。
暴動は当局が「テロ対策」の名目でウイグル族への抑圧を強化した一つの契機。自治区では当局が新型コロナウイルス対策として厳戒態勢を強める状況もうかがえる一方、ウイグル族は沈黙を迫られていた。(新疆ウイグル自治区 三塚聖平)
「新疆は良い所。各民族が幸せに暮らしている」暴動で激しい衝突があったウルムチ中心部の国際大バザール(市場)ではウイグルの軽快な民族音楽が流れていた。歌詞は標準中国語(漢語)だった。 街は地下鉄駅ができるなど観光地として整備が進み、暴動の痕跡を示すものはみられない。ただ、多くの監視カメラが異様な雰囲気を漂わせていた。
自治区では共産党政権下で漢族の大量流入が続いてきた。200人近い死者が出た暴動の背景には、そうした中で強まったウイグル族への差別的な扱いや両民族の経済格差が背景にあったと指摘される。だが、中国政府はウイグル族の抜本的な不満の解消よりも、治安対策を優先させた。
19年の発表によると、14年以降、自治区で1万2995人を「テロリスト」として拘束。「脱過激化」のためとして「職業技能教育訓練センター」にウイグル族らを収容した。国連人種差別撤廃委員会は収容人数を100万人以上と報告。国際社会では「強制収容」との批判が高まっている。
ウルムチ出身という漢族の男性タクシー運転手は「治安は良くなった。ウイグル族に教育を施して働けるようにしているのに、海外(諸国)が大げさに言っている」と批判を一蹴。ウイグル族については「警戒感は残っている。経済的にも漢族より支援を受けている」と語り、両民族の亀裂の深さをうかがわせた。
特に監視態勢が厳しいのは、ウイグル族が人口の約9割を占めるカシュガル。至る所で3人一組の警官が警棒や盾を持ち巡回していた。「カシュガルは好きか?」。ウイグル族のタクシー運転手に質問すると言葉を濁した。運転席と後部座席には防犯カメラが設置されていた。監視や密告を恐れているとみられる。
厳戒態勢はコロナ対策としても強まっている。「住民か、事前に団体旅行の予約がないと町には入れない」。小説「西遊記」の舞台となった火焔山(かえんざん)で有名なトルファンの高速鉄道駅で、防護服姿の女性が冷たく言った。上海から子供を連れて旅行に来た男性は「中国各地でこんな所はない」と憤った。
ウルムチやカシュガルのホテルでは、チェックイン時に館内に設けられたPCR検査場で検査を受けることを求める。コロナ対策が厳しい中国でも他にない態勢で、ワクチンを打っていても例外は許されない。
トルファンで教師をしている漢族男性は「各地では検問所が多く設けられ、以前は対象外だった漢族の車も一律に調べられる」と説明。過去にテロ事件が起きた場所で特に警戒が厳しくなっているとささやいた。
(ウルムチ暴動)
2009年7月5日、新疆ウイグル自治区ウルムチで起きた大規模暴動。
広東省の工場でウイグル族が漢族に襲われて死亡した事件への抗議デモがきっかけとなり、一部が暴徒化し漢族や治安部隊と衝突。当局発表で197人が死亡、1700人以上が負傷した。
2021.06.09-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/business/news/210609/bsm2106091118011-n1.htm
「中国ウイグル自治区で大規模な強制不妊」 米非営利団体が報告書
【ワシントン=黒瀬悦成】
中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区での人権侵害を調査している、米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団」のエイドリアン・ゼンツ上級研究員は8日、
中国政府が自治区のイスラム教徒少数民族に人口抑制を強要しているとし、
向こう20年間以内に自治区で合計約260万~450万人分の強制不妊措置が取られると試算した報告書を発表した。
バイデン米政権を含む主要各国は、
中国政府による自治区でのウイグル族などに対する人権侵害を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と位置付けている。
報告書は、
中国政府による自治区の少数民族の人口削減と「同化」を狙った人口抑制政策の「実態」を指摘するものとして、国際社会の注目を集めるのは確実とみられる。
報告書によると、
中国政府は自治区で「人口最適化」政策と称する強制不妊措置を2017年に導入した。中国政府がこのまま強制不妊を続けた場合、少数民族が集中的に居住する自治区南部の人口は40年までに約860万~1050万人になるとしている。
現在の自治区南部の人口は947万人。一方、強制不妊が導入されなかった場合の40年の人口は、中国の研究者の試算で1314万人が見込まれていた。
中国政府の公式統計でも、自治区での19年の出生率は17年比で48・7%も低下しているという。
また、
中国政府が同国の人口の9割以上を占める漢民族の自治区への入植を奨励し、ウイグル族らを他の地域へ放逐している問題で、ゼンツ氏の試算では自治区南部でのウイグル族の人口比率は現在の約25%から40年には8・4%まで低下すると指摘している。
中国共産党の中央政治局会議は5月31日、1組の夫婦に子供を2人まで認める制限を3人までに緩和する新方針を示した。
ただ、報告書によると、
産児制限をめぐっては他地域であれば違反者は罰金を支払えば済まされるが、自治区の少数民族に対しては違反者に強制収容や強制不妊、結婚しているカップルの離別強要などの厳罰が科せられている。このため新方針が導入された場合、少数民族の締め付け強化の道具として利用される恐れが強いと指摘している。
2021.06.8-Yahoo!Japanニュース(alterna)-https://news.yahoo.co.jp/articles/86498dafffe5c0c1b900888f7a07d48a78cac7b8
「中国当局から在日ウイグル人のスパイ活動を要求された」
2021/06/08 —
中国の新疆ウイグル自治区で生まれ育った日本
ウイグル協会(東京・文京)副会長のレテプ・アフメットさん(43)は、2002年に東大大学院に留学した。その後も日本で就職して日本国籍を取得した。
ウイグルの家.
(1)
■レテプ・アフメット日本ウイグル協会副会長インタビュー
中国の新疆ウイグル自治区で生まれ育った日本ウイグル協会(東京・文京)副会長のレテプ・アフメットさん(43)は、2002年に東大大学院に留学した。その後も日本で就職して日本国籍を取得した。ウイグルの家族とは2017年夏以降、連絡が取れていないという。中国当局から「
スパイになれ」と要求があったことも明らかにした。新疆ウイグル問題は、「事実関係がよく分からない」と考える人も多いが、同氏の言葉は「人権の重み」と「真実性」を私たちに突き付ける。(オルタナ副編集長=吉田広子)
人質に取られた家族、4年連絡取れず
――アフメットさんは、留学を機に来日され、日本で暮らしています。2017年ころからウイグルにいるご家族と連絡が取れないそうですね。 2002年に東京大学大学院理学系研究科に入学しました。修士号を取得した後、日本でIT企業に就職しました。
当時は、ウイグルにいる家族と電話をしたり、チャットアプリを使ったり、いつでも連絡が取れる状況でした。 家族と連絡が取れなくなったのは2017年6月ころです。政治的な活動を行うリーダーだけではなく、普通の人まで強制収容所に送られているという話は聞いていたので、とても心配で、電話やアプリで連絡を取ろうとしても何も反応がありません。
2018年2月に一度、警察から電話があり、母と電話することができました。話を聞くと、「父と弟、親類は2017年7月から勉強に行っていて、家にいません」と。中国では「再教育」施設と呼ばれていますが、強制収容所に送られたことを察しました。それが母との最後の会話です。
家族や親類が、収容所を出たのか、まだいるのか。生きているのか、死んでいるのか。一切の確認が取れていない状況です。
――その後、2018年3月、ウイグルの警察から電話が掛かってきたそうですね。 収容所にいる父からのビデオメッセージが送られてきました。イスラム教徒の習わしであるひげをそり、伝統の帽子もかぶっていない、目に力がない、変わり果てた父の姿でした。とてもショックを受けました。
父はこう語りました。「
私は施設で勉強しています。体も健康です。あなたも中国の利益を最優先に考え、協力すれば、私たちも安全に暮らせます」。 父の意見ではなく、言わされているのは分かっていました。
父の映像の後ろには監視カメラが見えました。そして、中国当局からは、日本にいるウイグル人の情報を提供すれば、家族を解放すると。つまり、スパイ活動を命じられたのです。 家族が人質に取られて、スパイ活動を要求される
――。こんな悪夢が自分の身に起こるとは想像しませんでした。 この動画を受け取り、一年間はだれにも打ち明けることができませんでした。毎日、動画を見ては涙があふれてきました。
家族への迫害が心配です。家族を救いたい、でも、人間としての良心がそれを許さない。人間として越えてはいけない一線だと思いました。
これを最後に、ウイグルにいる誰とも連絡を取ることができなくなりました。毎日電話をかけても、電話は鳴りますが、だれも出ません。怖くて出られないのか、手元にないのか分かりません。
2019年7月に、ウイグル旅行に行くという日本人に実家を見てきてほしいと頼みました。それが唯一の手段でした。現地に行ったところ、大都市間は移動できても、私が住む小さな町の入り口では、厳重な検問があり、近付こうとすると警察に尾行され、結局、家の確認はできませんでした。
こうした状況に置かれているのは、私だけではありません。世界中にいます。 現代ではITで世界中つながっているのに、どこかで生きているのか、死んでいるのか分からない。消息が分からないのです。
(2)
強制収容所の実態を知り、実名公表を決意
――現在は、実名で顔も出し、日本での抗議活動を続けています。以前は、匿名だったようですが、なぜ公表するに至ったのでしょうか。 私はある日突然、家族が奪われました。ところが、中国政府は2018年3月当時、施設の存在自体を否定していたのです。
その後、国際社会からの批判が高まると、施設の存在を認め、2019年10月、施設はすべて閉鎖し、「
みんな家に帰って、幸せに暮らしている」と発表しました。「
施設に行く人は自ら進んで入っている、帰りたければいつでも帰れる」とも。 こうした中国のプロパガンダが広がってしまうことを恐れました。
家族と連絡が取れなくなり、1年、2年経っても何も進展しない。徐々に気力もなくなっていく。それでも、黙っていれば、中国政府の思う通りに進んでしまう。
生死にかかわるリスクを伴うが、だれかがやらなければならない。何もできないまま家族を失ってしまうかもしれない。 収容所の実態の証拠をもって、反論することを決め、取材にも実名で応えるようになりました。
――
いつころから監視が強くなったのでしょうか。子どものころはどのように過ごしていたのですか。 私は1977年に新疆ウイグル自治区ケリピン県で生まれました。小さな田舎町で、ウイグル人の学校に通い、放課後は友人と遊ぶような、至って普通の子ども時代を過ごしました。夜外に遊びに出ても、危険なこともありません。 何でもモノがそろっているような経済的な豊かさではなかったのですが、家族同士、人間同士のつながりを感じられる、昔ながらの人間関係があり、平穏な暮らしでした。住んでいるのはウイグル人だけで、いまのように中国人が監視するようなことはありませんでした。
2000年に入ってからでしょうか。徐々に中国人移民が増えてきました。そのころから、ウイグル人の女性が結婚適齢期になると、沿岸部の工場に連れて行かれるようなことが起こり始めました。そして、徐々に、人々が互いに疑い合うような空気になっていきました。
(3)
日本企業の沈黙は、人権侵害への「加担」
――オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は2020年3月に報告書を発表し、日本企業14社(※)を含む82のグローバル企業のサプライチェーン上でウイグル人の強制労働が起こっていることを指摘しました。日本ウイグル協会とヒューマンライツ・ナウは、その報告書をもとに日本企業14社にアンケートを行いました。日本企業の姿勢をどのように評価しますか。
(※日本企業14社(五十音順):京セラ、しまむら、シャープ、ジャパンディスプレイ、ソニーグループ、TDK、東芝、任天堂、パナソニック、日立製作所、ファーストリテイリング(ユニクロ)、三菱電機、ミツミ電機、良品計画(無印良品)
アンケート実施後、京セラとジャパンディスプレイは取引を停止することを表明しました。)
アンケートの対象企業ではないですが、カゴメは新彊産のトマトの輸入を停止し、ミズノも新彊綿の取り扱い停止を発表しました。これらは非常に心強い流れです。
当協会では2回、14社にアンケートを送ったのですが、1回目(2020年4月)はほとんど反応がありませんでした。 結果を公表し、それが報道されるようになると、企業に対し、メディアや消費者からの問い合わせが入るようになり、2回目(2020年12月)からは、パナソニックを除く企業が回答してくれるようになりました。
パナソニックは電話をしても、無反応で、絶望的です。その後、報告書をまとめ、2021年4月に記者会見を開き、発表しました。 ほとんどの対象企業は、強制労働の事実や問題を指摘された中国企業との取引を否定しています。日立製作所、ソニー、TDK、東芝、京セラは、第三者機関による監査を実施するなど、問題意識を持っていることに対しては評価したいと思います。
一方で、中国共産党政府が許す範囲内での調査は、透明性や信憑性に欠けます。本当に自信をもって、「強制労働の事実がない」ことを証明できるのでしょうか。
私たちは取引をすぐに停止してほしいと主張しているわけではありません。
ただ、「強制労働の事実がない、あるいは指摘された中国企業との取引がない」というのであれば、だれがどのような形で調査したのか、監査のプロセスも公表するべきです。
取引先企業、工場に確認したといっても、本当のことを言えるはずがありません。国連など外部から専門家を呼んで、すべてのプロセスがオープンな形で、監査なり調査なりが行われるべきです。
取引を続けたいのであれば、だれがどう見ても問題ないと評価されるようなレベルが求められるでしょう。
――オルタナ編集部でも、企業にアンケート調査を実施しました(6月30日発売のオルタナ65号で公表)。 日本企業がよく認識していないことがあります。 このウイグルの問題は、どこにでもある不祥事やクレームとは訳が違います。何百万人という人が、非人道的な方法で大規模な強制収容所に入れられているのです。
世界的な関心が高まっているいま、これから先、ASPIの報告書よりも詳細な報告書が出てくる可能性は十分にあるでしょう。 いま「問題がない」と答える企業も、将来的に責任を問われるかもしれません。
ファーストリテイリングは、取引がないと否定していますが、当該企業のホームページには、ロゴや企業名がしっかりと掲載されています(2021年3月時点)。
それ以外にも、ASPIも裏を取って報告書を出しているわけですから、何をもって、強制労働の事実がないといっているのか、説明するべきです。 柳井正会長兼社長は「これは人権問題ではなく、政治問題だ」と発言しました。なぜ人権問題ではないと言えるのでしょうか。
私自身を含む、消えた家族の消息を探し求めているウイグル人が日本や世界中に大勢います。私たちの消えた家族が何処かの工場で強制労働させられている可能性もあるわけです。
もしかしたらサプライチェーン上に、強制的に働かされている人がいるかもしれないのです。こうした無責任な言動がなぜ出てくるのでしょうか。さらに同社は、新彊綿を使っていない、とは明確に否定をしていないのです。
企業がビジネスを第一に考えるのは仕方ないことです。 ただ、こうした「知りません」という態度では、どこかの時点で必ず社会的責任が問われることになります。現に米国はユニクロの綿シャツの輸入を差し止めました。
すべての企業にいえることですが、社会的責任を問われる前に、企業自身が積極的に関与し、透明性のある監査・調査をして、本当に大丈夫か、世間が納得する形で説明してほしい。
10年、20年、どれだけかかるか分かりませんが、中国が必死に隠している情報が必ず明らかになるときがくるはずです。 中で起きていることと、対外的に発信している情報は全く違います。ナチスの収容所もそうでした。中の実態は隠されているのです。
中国のプロパガンダと、私たちが実際に味わっている苦痛、いずれ全容が明らかになる時代がくると信じています。 いま企業が、声を上げず、ビジネスを続けたら、将来、「止めるべきだった」と後悔するはずです。非人道的な方法でつくられた製品の社会的責任が問われるはずです。 「ウイグルの話は本当なの?証拠はあるの?」と言う人や企業は少なくありません。
信じられないのであれば、現地に行ってみてください。問題ないことを証明する努力をしたうえで、反論してほしい。 日本企業のいまの姿勢は、対応として非常に不十分です。「取引がない、事実が確認できなかった」と否定する逃げ方は誠実とはいえません。
意図的な関与ではなくても、声を上げない、止めないことは、「加担」とみなされます。
ウイグルから何らかの原料を調達しているのであれば、極めてリスクが高いのです。綿でいえば、中国産の8割は新彊綿です。
――米政府やEU、英政府などは、ウイグルの問題を「ジェノサイド(大量虐殺、民族浄化)」と認定しました。一方で、企業にとって中国市場を失う不安もあります。 簡単に取引を停止できないことは承知しています。依存度が高ければ高いほど、難しいことです。
中国からの報復を恐れている心情も理解できます。 しかし、正直に答えずに、都合よく回答するのは、ビジネス以前の問題でしょう。 机上のレベルではいけません。実態の調査が必要です。本当に、この大規模な強制収容、ジェノサイドに目を向けているのでしょうか。民族の独自性が消し去られようとしています。
いま真剣に向き合わなければ、企業の名誉が地に落ちてしまう可能性もあるのです。
新疆ウイグル再教育収容所
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
新疆ウイグル再教育収容所は、
中華人民共和国(中国)
新疆ウイグル自治区の
強制収容所であるとされる。2014年の
ウルムチ駅爆発事件以降、「
テロとの人民戦争」(
厳打暴恐活動専項行動)として
ウイグル人ムスリムを
教育するために
習近平総書記の
中国共産党核心体制において設置された。
中国政府は
職業訓練センターと呼んでいる。
2016年8月に新疆ウイグル自治区の
首長にあたる共産党委員会書記に
陳全国が就任してから公共安全危害罪に問われたウイグル人の投獄件数が急増し、2007年に1710人だった逮捕件数は2017年に6万510人となった。多数のウイグル人らが
令状なしで逮捕されていると報告されており、ウイグル人のほか、
カザフ人、
キルギス人、
回族などの中国のイスラム教徒、キリスト教徒なども勾留されているともみられている。
2019年7月には、
オーストラリア、
フランス、
ドイツ、
日本、
イギリスなど22国の
国連大使が中国のウイグル人大量勾留と
人権蹂躙を非難し、収容所の閉鎖を要求したが、一方で
シリア、ロシア、エジプト、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、パキスタン、北朝鮮、ミャンマー、フィリピンなど50ヵ国は、中国のウイグル人テロ対策を承認するとの声明を発表し、中国における人権問題の著しい成果を称賛した。2021年6月の
国連人権理事会で、
オーストラリア、
イギリス、
フランス、
ドイツ、
日本、
アメリカなど40カ国超が、ウイグル人の人権状況について「深刻な懸念を抱いている」との共同声明を発表した
概要
当初中国政府はキャンプの存在を否定していたが、
2017年から
ジャーナリスト、
学者などが
衛星写真、目撃証言をもとに
フェンスと
監視塔に囲まれた秘密施設を指摘し、翌
2018年10月に新疆ウイグル自治区主席の
ショホラト・ザキル(英語版)は「
職業訓練学校」として存在を認め、
1990年代から
2016年まで度々起きてきた
テロ事件の撲滅と根絶に成功したとアピールした。また、施設は、
キューバの
グアンタナモ湾収容キャンプと同様に、
テロとの戦いに必要な措置である、とも主張した。
2019年11月16日、
ニューヨーク・タイムズがXinjiang Papers(新疆文書)として中国政府の内部
リークを報じた。これによれば、キャンプは
2014年の
ウルムチ駅爆発事件後に「対テロ
人民戦争」を掲げた
習近平総書記兼
国家主席が同年5月の新疆工作座談会での秘密演説で「人民民主独裁の武器を躊躇なく行使せよ、情け容赦は無用だ」と指示したことを受けて設置された。特に
2016年に陳全国が新疆ウイグル自治区の党委書記、
朱海侖が党委副書記兼政法委員会書記にそれぞれ就任して翌
2017年2月に
武装警察、
公安部、
民兵を集めた決起大会で朱海侖が「人民民主独裁の強力な拳で、全ての
分離主義者と
テロリストは粉砕する」と演説して以降に大規模な勾留が始まり、「再教育」と称した
洗脳政策が行われているとみられる。
ニューヨーク・タイムズのリーク直後の24日、BBCパノラマや
ガーディアンなど17の報道機関が参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が内部文書を基に収容所の運営や拘束法などを「
チャイナ・ケーブル」として報じた。
チャイナ・ケーブルには2017年に新疆ウイグル自治区の共産党副書記で治安局長の朱海侖が、収容施設責任者らに宛てた9ページの連絡文書も含まれている。中国側は文書は偽物だと反論した。
その連絡文書では収容施設を高度に警備された刑務所として運営するよう指示し、収容者は「思想変革、学習と訓練、規律の遵守」について点数がつけられる。文書に記された命令には以下のようなものがあった。
・「絶対に脱走を許すな」 ・「違反行動には厳しい規律と懲罰で対応せよ」 ・「悔い改めと自白を促せ」 ・「中国標準語への矯正学習を最優先せよ」 ・「生徒には悔い改めと自白を促し、彼らの過去の活動が違法で犯罪的で危険な性質のものであることを深く理解させよ」 ・「浅い理解や悪い態度、反抗心すらうかがえる人には(中略)教育改革を実行し、確実に結果を達成しろ」
世界ウイグル会議顧問でイギリス勅選弁護士のベン・エマーソンはこの政策は「ひとつの民族コミュニティー全体を対象に作られ実行されている、巨大な集団洗脳計画」であり、「新疆ウイグル自治区にいるイスラム教徒のウイグル人を、個別の文化集団として、地球上から消滅させようとしている。
そのために彼らを完全に作り変えることを意図した取り組みだ」と述べる。
劉暁明駐英大使は、収容所は新疆ウイグル自治区の人々を守るためであり、過去3年間テロ攻撃が起きていないと反論した。
中国語名の「再教育营」は
ベトナム共産党政府が行なっていた
再教育キャンプでも使われている。
新疆は中国から
ユーラシア大陸を横断してヨーロッパまでを結ぶ
一帯一路(シルクロード経済ベルト)構想において重要な要衝でもある。
収容人数
ウイグル人ムスリムなど、中国国内外の数百万人の人間が収容されているとされる。
2018年5月、
ランドール・シュライバー米国防次官補は「少なくとも100万人、しかし、おそらくは300万人の市民」が
強制収容所に勾留されていると述べた。
2018年夏、
国際連合人権委員は多数の信頼できる報告書から、100万人のウイグル人市民が収容されていると述べた。
エドリアン・ゼンズの2019年の推定では毎年最大150万が勾留されている。
当局は過激テロリストを
中国化するために数十万人と主張している
自治区当局はすでに収容者は全員「卒業」したと主張しているが、
オーストラリア戦略政策研究所は2020年9月に少なくとも61箇所で新たな収容所建設の徴候があるとする報告書を発表している。
人工知能によるプレディクティブ・ポリシング
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した中国政府の内部文書によれば
監視カメラや
スマートフォンなどから個人情報を収集して
アルゴリズム解析する「一体化統合作戦プラットフォーム」による
AIと
機械学習を利用した
プレディクティブ・ポリシングで選別されたウイグル人が法的手続きを経ずに
予防拘禁されるようになって2017年6月時点で約1万5千人がこのシステムで収容所に投獄されたとされ
[29][53]、
ノッティンガム大学の新疆研究者であるリアン・トゥムは「
コンピュータが人間を
強制収容所に送る例は他にない」と評している。
また、同文書には携帯電話にファイル共有アプリ
Zapya(快牙)を入れていることだけを理由に180万人が要注意人物とされ、そのうち4万557人の調査を命じ、容疑を晴らすことができない者には強制訓練を受けさせると記されていた。
施設
2018年11月と12月に
Bitter Winter誌は、
グルジャ地区にある2か所の強制収容所で撮影されたされる3本の動画を公開した。動画に映る施設は
軍事刑務所のような特徴がみられ、同誌はこの施設を中国政府が主張するような「
学校」「
職業訓練施設」ではなく、「
強制収容所」であると記している。
Business Insiderによると、2本目の「Bitter Winterの動画は、新疆で以前勾留されていた者や目撃者の証言と合致する」という。
各国の反応
2019年7月10日、
国際連合人権理事会で
日本、
イギリス、
フランス、
ドイツ、
オーストリア、
ベルギー、
カナダ、
デンマーク、
エストニア、
フィンランド、
アイスランド、
アイルランド、
ラトヴィア、
リトアニア、
ルクセンブルク、
オランダ、
ニュージーランド、
ノルウェー、
スペイン、
スウェーデン、
スイスの22カ国が共同書簡を公開してこの政策を非難し、12日には
イタリアも批判に加わって23カ国となった。
これに対して14日に中国の新疆政策を支持する共同書簡を
サウジアラビア、
エジプト、
パキスタン、
カタール、
アラブ首長国連邦、
バーレーン、
クウェート、
オマーン、
トルクメニスタン、
南スーダン、
スーダン、
アルジェリア、
ナイジェリア、
アンゴラ、
トーゴ、
ブルキナファソ、
ブルンジ、
コモロ、
コンゴ共和国、
コンゴ民主共和国、
エリトリア、
ガボン、
ラオス、
ソマリア、
カメルーン、
ボリビア、
タジキスタン、
フィリピン、
カンボジア、
ベラルーシ、
ベネズエラ、
ジンバブエ、
ミャンマー、
キューバ、
北朝鮮、
シリア、
ロシアの37カ国は公開し、26日に
イラン、
イラク、
ジブチ、
スリランカ、
パレスチナなどの13カ国も署名に参加して50カ国となった
。
トルコは「100万人を超えるウイグル族が収容所で
拷問や洗脳を受けている」としてキャンプを同年2月の国連人権理事会で批判した唯一の
イスラム教国だったが、
イスラーム諸国が集まる
イスラム協力機構(OIC)は翌3月に
ムスリムに対する中国の措置への「称賛」を決議しており、同年7月に中国を非難した共同書簡に名を連ねず、同時期に訪中したトルコの
レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領も一転して批判しなかった
。しかし、翌8月20日にトルコと親密なカタールは中国を支持する共同書簡への署名を撤回した。
11月24日のICIJによるチャイナ・ケーブル報道について
中華人民共和国外交部報道局の
耿爽は同日、新疆ウイグル自治区の問題は国内問題であると述べ、在英大使はフェイクニュースだと述べた。
ICIJによるチャイナ・ケーブル報道に協力した
南ドイツ新聞によれば、レポートは中国当局に検閲され、ICIJによるの国のインターネット検索のほとんどすべての参照先が消去された。
11月25日、イギリス外務省は「国連による収容所への即時かつ自由なアクセス」を求めた。同日、ドイツ外相はウイグル族の抑留を非難し、収容所へのアクセスを行うために中国政府と交渉すると述べた。
10月8日に米中貿易協議で、アメリカの
マイク・ポンペオ国務長官はウイグル人、カザフ人等への不当勾留や虐待に責任がある、また共謀していると考えられる中国高官や役人にビザ制限をすると表明していたが、チャイナ・ケーブル報道後の11月26日、ポンペオ国務長官は報道された文書によって、中国が新疆で重大な人権侵害を意図的に行っていることが確認できたと述べた。
2019年
11月29日に
国際連合総会の第3委員会では、国連人権理事会を脱退していた
アメリカ合衆国を含む日米欧などの23カ国が共同声明でキャンプなど新疆政策の撤回を求めるもこれに対抗してベラルーシとロシアやエジプトなどの54カ国は共同声明で中国の措置を支持した
。
2019年12月3日、ウイグル人をはじめとする中国のイスラム教徒への人権侵害を非難し、党委書記の陳全国への制裁を求めたウイグル人権政策法案が米国下院で407対1の圧倒的賛成多数で可決された。
2019年12月6日、中国の
華春瑩報道官は
グアンタナモ収容所の報告書を引き合いに「人権問題でアメリカは
偽善である」と述べた。なお、
グアンタナモでのウイグル人被収容者の尋問には中国当局が参加していたと
アメリカ合衆国司法省などは報告しており、グアンタナモなどで問題となった
強化尋問技術は朝鮮戦争時代の中国共産党の洗脳技法からつくられたことが
アメリカ合衆国上院軍事委員会で報告されている。
2020年6月17日、
ジョン・ボルトン元
国家安全保障問題担当大統領補佐官が
2019年G20大阪サミットの際にアメリカの
ドナルド・トランプ大統領がキャンプへの理解を求める中国の
習近平国家主席(総書記)に対して「建設を進めるべきで正しい選択だ」と後押ししたと回顧録で暴露したことが報じられた。同時期、トランプ政権は議会を通過した
ウイグル人権法に署名してウイグル族の強制収容などに責任がある中国の当局者に制裁が科すことが政権に義務付けられた。
2021年6月22日に開かれた
国連人権理事会で、
オーストラリア、
イギリス、
フランス、
ドイツ、
日本、
アメリカなど40カ国超が、新疆ウイグル自治区の人権状況について「深刻な懸念を抱いている」との共同声明を発表し、
国連人権高等弁務官の
ミシェル・バチェレの新疆ウイグル自治区訪問と調査を受け入れるよう中国に要求した。声明は「信頼できる報告では、新疆で100万人超が恣意的に拘束され、ウイグル族やその他
少数民族に偏った
監視が広がり、基本的な
自由やウイグル文化への制限を示している」として、
拷問や
強制不妊手術や
性的暴行や子供を親から引き離すなどの報告もあるとし、さらに「
国家安全維持法下での
香港の基本的自由悪化と
チベットでの人権状況を引き続き深く懸念している」とも指摘した。
関連企業
2019年5月時点で少なくとも68のヨーロッパの企業が新疆ウイグル自治区と提携している。その内十数社がドイツ企業で、抑圧に関係しているかどうかに関わらず、公的監視を受けている。
フォルクスワーゲンは2013年から
ウルムチに工場を設置し、650人を雇用しているが、これは利益になっておらず、政治的思惑からのものとみられている。
シーメンスは国営企業中国電子科技集団公司 (CETC)と協力し、ウイグル族の追跡と評価に使用されるAI監視システム「一体化統合作戦プラットフォーム」の開発に携わっている。
化学メーカー
BASFは
コルラ市で2つの生産拠点を
合弁事業を展開しており、少数民族を含む120人が
ブタンジオールと
ポリテトラヒドロフラン生産工場で勤務しているが、監禁事例はない。
Boschは当局に従業員の抑留をしないよう警告し、社内にイスラム教礼拝室を提供すると発表した。
アメリカの
民間軍事会社である
ブラックウォーターUSAの創業者だった
エリック・プリンスが設立した
フロンティア・サービス・グループは新疆ウイグル自治区で対テロ訓練施設の建設などを行ってる
2019年7月10日、
国際連合人権理事会で
日本、
イギリス、
フランス、
ドイツ、
オーストリア、
ベルギー、
カナダ、
デンマーク、
エストニア、
フィンランド、
アイスランド、
アイルランド、
ラトヴィア、
リトアニア、
ルクセンブルク、
オランダ、
ニュージーランド、
ノルウェー、
スペイン、
スウェーデン、
スイスの22カ国が共同書簡を公開してこの政策を非難し、12日には
イタリアも批判に加わって23カ国となった。
これに対して14日に中国の新疆政策を支持する共同書簡を
サウジアラビア、
エジプト、
パキスタン、
カタール、
アラブ首長国連邦、
バーレーン、
クウェート、
オマーン、
トルクメニスタン、
南スーダン、
スーダン、
アルジェリア、
ナイジェリア、
アンゴラ、
トーゴ、
ブルキナファソ、
ブルンジ、
コモロ、
コンゴ共和国、
コンゴ民主共和国、
エリトリア、
ガボン、
ラオス、
ソマリア、
カメルーン、
ボリビア、
タジキスタン、
フィリピン、
カンボジア、
ベラルーシ、
ベネズエラ、
ジンバブエ、
ミャンマー、
キューバ、
北朝鮮、
シリア、
ロシアの37カ国は公開し、26日に
イラン、
イラク、
ジブチ、
スリランカ、
パレスチナなどの13カ国も署名に参加して50カ国となった。
トルコは「100万人を超えるウイグル族が収容所で
拷問や洗脳を受けている」としてキャンプを同年2月の国連人権理事会で批判した唯一の
イスラム教国だったが、
イスラーム諸国が集まる
イスラム協力機構(OIC)は翌3月に
ムスリムに対する中国の措置への「称賛」を決議しており、同年7月に中国を非難した共同書簡に名を連ねず、同時期に訪中したトルコの
レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領も一転して批判しなかった。しかし、翌8月20日にトルコと親密なカタールは中国を支持する共同書簡への署名を撤回した。
11月24日のICIJによるチャイナ・ケーブル報道について
中華人民共和国外交部報道局の
耿爽は同日、新疆ウイグル自治区の問題は国内問題であると述べ、在英大使はフェイクニュースだと述べた
。
ICIJによるチャイナ・ケーブル報道に協力した
南ドイツ新聞によれば、レポートは中国当局に検閲され、ICIJによるの国のインターネット検索のほとんどすべての参照先が消去された。
11月25日、イギリス外務省は「国連による収容所への即時かつ自由なアクセス」を求めた。同日、ドイツ外相はウイグル族の抑留を非難し、収容所へのアクセスを行うために中国政府と交渉すると述べた。
10月8日に米中貿易協議で、アメリカの
マイク・ポンペオ国務長官はウイグル人、カザフ人等への不当勾留や虐待に責任がある、また共謀していると考えられる中国高官や役人にビザ制限をすると表明していたが、チャイナ・ケーブル報道後の11月26日、ポンペオ国務長官は報道された文書によって、中国が新疆で重大な人権侵害を意図的に行っていることが確認できたと述べた。
2019年
11月29日に
国際連合総会の第3委員会では、国連人権理事会を脱退していた
アメリカ合衆国を含む日米欧などの23カ国が共同声明でキャンプなど新疆政策の撤回を求めるもこれに対抗してベラルーシとロシアやエジプトなどの54カ国は共同声明で中国の措置を支持した。
2019年12月3日、ウイグル人をはじめとする中国のイスラム教徒への人権侵害を非難し、党委書記の陳全国への制裁を求めたウイグル人権政策法案が米国下院で407対1の圧倒的賛成多数で可決された。
2019年12月6日、中国の
華春瑩報道官は
グアンタナモ収容所の報告書を引き合いに「人権問題でアメリカは
偽善である」と述べた
[81][82]。なお、
グアンタナモでのウイグル人被収容者の尋問には中国当局が参加していたと
アメリカ合衆国司法省などは報告しており、グアンタナモなどで問題となった
強化尋問技術は朝鮮戦争時代の中国共産党の洗脳技法からつくられたことが
アメリカ合衆国上院軍事委員会で報告されている。
2020年6月17日、
ジョン・ボルトン元
国家安全保障問題担当大統領補佐官が
2019年G20大阪サミットの際にアメリカの
ドナルド・トランプ大統領がキャンプへの理解を求める中国の
習近平国家主席(総書記)に対して「建設を進めるべきで正しい選択だ」と後押ししたと回顧録で暴露したことが報じられた。同時期、トランプ政権は議会を通過した
ウイグル人権法に署名してウイグル族の強制収容などに責任がある中国の当局者に制裁が科すことが政権に義務付けられた。
2021年6月22日に開かれた
国連人権理事会で、
オーストラリア、
イギリス、
フランス、
ドイツ、
日本、
アメリカなど40カ国超が、新疆ウイグル自治区の人権状況について「深刻な懸念を抱いている」との共同声明を発表し、
国連人権高等弁務官の
ミシェル・バチェレの新疆ウイグル自治区訪問と調査を受け入れるよう中国に要求した。声明は「信頼できる報告では、新疆で100万人超が恣意的に拘束され、ウイグル族やその他
少数民族に偏った
監視が広がり、基本的な
自由やウイグル文化への制限を示している」として、
拷問や
強制不妊手術や
性的暴行や子供を親から引き離すなどの報告もあるとし、さらに「
国家安全維持法下での
香港の基本的自由悪化と
チベットでの人権状況を引き続き深く懸念している」とも指摘した。
関連企業
2019年5月時点で少なくとも68のヨーロッパの企業が新疆ウイグル自治区と提携している。その内十数社がドイツ企業で、抑圧に関係しているかどうかに関わらず、公的監視を受けている。
フォルクスワーゲンは2013年から
ウルムチに工場を設置し、650人を雇用しているが、これは利益になっておらず、政治的思惑からのものとみられている。
シーメンスは国営企業中国電子科技集団公司 (CETC)と協力し、ウイグル族の追跡と評価に使用されるAI監視システム「一体化統合作戦プラットフォーム」の開発に携わっている。
化学メーカー
BASFは
コルラ市で2つの生産拠点を
合弁事業を展開しており、少数民族を含む120人が
ブタンジオールと
ポリテトラヒドロフラン生産工場で勤務しているが、監禁事例はない。
Boschは当局に従業員の抑留をしないよう警告し、社内にイスラム教礼拝室を提供すると発表した。
アメリカの
民間軍事会社である
ブラックウォーターUSAの創業者だった
エリック・プリンスが設立した
フロンティア・サービス・グループは新疆ウイグル自治区で対テロ訓練施設の建設などを行ってる
ジャパンナレツジ
新疆ウイグル問題-
[毛里和子]
中国の新疆ウイグル自治区を中心としたウイグル人の独立運動をめぐる問題。
問題の背景
約960万平方キロメートルの巨大な領域をもつ中国の一つの大きな悩みは、主体文化、主体民族とは違う勢力によって国家の統合が脅かされるという「懸念」や「恐れ」である。「大一統」(大きく一つに統(す)べる)を信奉する中央権力にとっての脅威は、チベットと新疆ウイグルである。いずれも独立国をもった歴史があり、固有の文化・宗教でアイデンティティが形成されており、中央――北京(ペキン)からは遠い辺境にある。ほとんど宗教心をもたない漢人と違ってチベットではチベット仏教(2015年時点の職業僧尼は12万人)、新疆ではイスラム教が主体宗教である(2015年時点のムスリム人口は2000万人、新疆のイスラム教にかかわる職につく人員は2万9300人である(国務院新聞弁公室刊『新疆的宗教信仰自由状况』2016年6月))。なお、中国領域に住むウイグル人は約1000万人、うち約980万人が新疆ウイグル自治区に住む(2010年中国人口センサス)。
新疆は18世紀中葉に清(しん)朝の版図に入り、1884年に省となった。中華人民共和国は漢人以外の民族的少数者を55の「少数民族」として「民族の区域自治」で統治しており、ウイグル人は新疆ウイグル自治区、チベット人はチベット自治区を中心に集居している。新疆ウイグル問題とは、19世紀のムスリムの蜂起、1930年代、1940年代の東トルキスタン共和国樹立など、短期間とはいえ、何回かの「独立」の経験をもつ中国の「辺境」で、分離独立、高度な自治、あるいは人権を求める暴力事件が多発している状況をさす。とくに1990年代から、市場化と宗教自由化のなかで住民の異議申し立てが広がり、権力側はこれを暴力と厳罰法で押さえ込んでいる。2001年のアメリカ同時多発テロ事件で「イスラム過激主義」がグローバル化し、人材と武器が新疆に流れているとして、「三股(さんこ)勢力(テロリズム、分裂主義、宗教的極端主義)」撲滅のキャンペーンが続き、それに住民が暴力で対抗する「暴力の構造化」、「新疆の中東化」状況がみられる。
[毛里和子]
ウイグル人とは
新疆省が建制された1880年代には現地ムスリムの執拗(しつよう)な反乱は制圧された。チュルク系ムスリムであるウイグル人の祖先はいまのモンゴル国に打ち立てた遊牧国家、ウイグル部に遡(さかのぼ)るという。その後、回鶻(かいこつ)、畏兀児(ウイグル)などとよばれた。彼らは8世紀に諸部族を統一してウイグル国をつくったが、天災その他で崩壊、四散した。その後、西に逃れた集団がいまの新疆地区に移り住み、オアシスに定住。多くがしだいにイスラム教徒となり、纏回(てんかい)、回民、回回などとよばれた。
ウイグルという他称が出てくるのは、1921年、新生ソ連が中央アジアで開いた「東トルキスタン出身者大会」からである。また、中国内でウイグルが他称として固まるのは1935年以後のことで、当地軍閥の盛世才(せいせいさい)(1895―1970)がこの地域の民族的少数者をウイグル(維吾爾)を含めて14民族を認知したことによる。中国共産党がウイグル族とよび始めたのは1930年代末である。
だが、ウイグル人自身は1940年代まで自身をホータン人やカシュガル人など地域名でよび、一つの集団アイデンティティはもっていなかったという。ウイグル意識や呼称が定着するのは、共和国の成立後、少数民族を一つ一つ識別する工作、民族区域自治政策が始まる1950年代もなかば以降のことである。
[毛里和子]
二つの「東トルキスタン共和国」――つかのまの独立時代
北京中央権力が及ばない辺境である新疆では、1930年代~1940年代に独立分離の動きが続いた。1933年11月に新疆西部のカシュガルで「東トルキスタンイスラム共和国」の建国が宣言された。近代的教育を受けたウイグル人のウラマー(イスラム神学者)たちに率いられ、新疆での漢人官僚による民族差別と立ち遅れたウイグル社会への不満で立ち上がったのである。建国綱領に「謹んでコーランを遵守する」、「政府を担当する者は、コーランと現代科学を熟知すべし」と掲げイスラム国家を目ざしたが、ムスリム系軍閥である馬仲英(ばちゅうえい)の攻撃にあい、指導部内の対立などで半年たらずで瓦解(がかい)した。
1942年、軍閥の盛世才が新疆を去り、国民党軍が新疆に入るのと相前後して、東トルキスタン独立運動がふたたび活発化した。1944年8月に新疆北部のイリ地区でウイグル人、カザフ人が蜂起、11月7日にはソ連国境に近いクルジャ(伊寧(いねい))で武装蜂起が発生した。このとき「東トルキスタン共和国」の独立を宣言し、1年余り独立の旗を掲げた(イリ、タルバガタイ、アルタイの三区革命)。当初、新疆での親ソ政権樹立と天然資源をねらうソ連が、反漢・反国民政府の現地ムスリムの武装蜂起を全面的に支援し、武器、将校、顧問などを送った。共和国成立の大会で主席となったイリハン・トレが「アッラーはわれわれの神であり、ムハンマドはわれわれの聖者であり、イスラム教はわれわれの信仰であり、東トルキスタンはわれわれの祖国である」と演説したように、当初はきわめてイスラム色が強かった。だがすぐにソ連の圧力でムスリム系のリーダーたちは指導部から追われた。ソ連は1945年夏から政策を転換、東トルキスタンの独立支持をやめ、国民政府・新疆省政府との仲裁役に転じた。「東トルキスタン共和国」は今回もまた1年半で姿を消した。
[毛里和子]
新疆への植民、進む漢化
中華人民共和国創立のころは新疆はウイグル人の里であった。1949年には新疆地区の人口の4分の3が主要民族たるウイグル人(約330万人)で、漢人はわずか30万人であった。ところが、1955年に新疆ウイグル自治区を設け、1950年代末から石油開発、綿花生産などのために大量の漢人が植民した。植民のピークは1960年代末で、1970年にはウイグル人は自治区人口の半分を切った。2011年時点では新疆全体で漢人が38%、ウイグル人が47%となっている。民族分布に地域的な差が大きいことにも注意が必要である。一般に新疆北部、大都市、カラマイ市などの工業都市では経済パワーに勝る漢人の比率が高い。自治区の首府であるウルムチの場合、ウイグル人31万人に対して漢人が181万人を占める(『新疆統計年鑑2012』)。
「植民」の主体になったのは新疆生産建設兵団である。国防、治安そして開墾と生産など多様な任務を負った武装集団である。1949年解放軍の新疆進攻と同時にイリ、タルバガタイ、アルタイの三区の「民族軍」を中核に兵団が組織され、以後、軍務と開墾に従事している。2013年末における兵団の総人口は270万1400人で、新疆全人口の11.9%を占める(百度百科、新疆生産建設兵団、2016年8月15日閲覧)。そのほとんどが漢人である。
[毛里和子]
新疆での騒乱
1990年代――バレン郷事件、イニン事件
新疆では1980年代末から毎年のように民族・宗教にからむ紛争が起きたが、1990年4月にカシュガル近くのアクト県バレン郷で起こった「反革命暴乱事件」は当局を震撼させた。中心になったのはキルギス人で、「われわれはトルキスタン人だ」として漢人の追放、新疆での核実験反対、産児制限反対、自治の拡大などを求めたといわれる。アムネスティ・インターナショナルの1991年レポートによると、6000人が反革命罪で訴追されたという。
1997年2月5日には新疆北部イリ地区のイニン(クルジャ)で民族間衝突によって多数の死傷者を出した。3月11日の『新疆日報』は、この騒乱を「共産党政権の転覆を目的とした民族分裂主義者の破壊活動」ときめつけ、「生死をかけた激しい階級闘争」を呼びかけ、「少数の分裂主義者と国際組織の浸透」に強い警戒心を示した(張先亮(ちょうせんりょう)「講政治必須旗幟鮮明地反対民族分裂主義」)。事件直後の4月24日にイリ地区などで公開裁判が開かれ、事件の「主犯」ユスプ・トルソンなど3名を死刑、その他27名を7年から無期懲役の刑に処した。
こうした紛争の背景には、グローバルな市場化のもとで、民族語教育などが衰退し、漢人がいっそう有利になっているなかで、ウイグル人のインテリ層は民族的アイデンティティに強い危機感をもっていることがある。トルファン―カシュガル間1446キロメートルの南疆鉄道の開通(1999年)で「ウイグルの里」も市場経済にのみ込まれてしまう。
[毛里和子]
2009年7月ウルムチ騒乱
朱鎔基(しゅようき)首相時代の2001年から西部大開発戦略がスタートした。「西部」とは国土面積で70%、GDP(国内総生産)では18%を占める、新疆、チベット、雲南(うんなん)、青海(せいかい)、寧夏(ねいか)など非漢人が住む広大な、だが貧しい地域である。この大開発戦略で辺境にも資金と人が流れ込んだ。
2009年7月5日ウルムチで、自治区政府発表では、15日までに192人が死亡、1712人が負傷する騒乱が起こった。7日には漢人が報復的な数万人規模の抗議デモを行い、8日、国家主席の胡錦濤(こきんとう)はサミット出席を取りやめて急遽(きゅうきょ)イタリアから帰国した。9月3日には、数万人の漢人がウルムチで報復のデモを敢行、5人死亡、14人が負傷した。
新疆ウイグル自治区当局も中央政府もこの騒乱に「テロリズム、分裂主義、宗教的極端主義の三股勢力」として厳しく対決した。事件後ただちに、「ごくごく少数者の陰謀」、アメリカに亡命している「世界ウイグル会議議長のラビア・カーディルの陰謀」、イスラム原理主義のテロ組織と結びついた「新疆三股勢力の画策」と断じ、容疑者を逮捕、ただちに死刑などに処した。
2009年7月のウルムチ事件で注目すべきなのは、学校にも行かない、職もないウイグル青年が経済格差、就業格差、宗教的差別から起こした暴力事件と、それに報復する漢人の集団暴力行為とがセットになっていることである。こうした危機に対し、当局は「社会治安総合治理条例」の改正など法の強化と責任者の処罰、さらに被害者への弔慰金など「金」での慰撫(いぶ)を図っている。2010年、15年間自治区党書記であった王楽泉(おうらくせん)(1944―
)を解任、後任に湖南(こなん)省党書記の張春賢(ちょうしゅんけん)(1953― )をあてた。だが、暴力の構造化や連鎖する憎悪などを解きほぐすことはきわめてむずかしくなっている。
[毛里和子]
国際化するウイグル問題
1990年代以降の顕著な特徴は、イスラム主義のグローバル化に伴いウイグル問題が国際化したことである。海外ウイグル人のおもな組織として、「国際的テロ組織」と名指しされている「東トルキスタン・イスラム運動」(ETIM)、ウイグル人やイスラムの宣伝組織として比較的穏やかな活動を展開している「世界ウイグル会議」がある。
1992年イスタンブールで東トルキスタン民族会議が開かれ、1996年にはドルクン・エイサDolkun Isaを中心にミュンヘンに世界ウイグル青年会議が設立された。2004年には東トルキスタン民族会議と世界ウイグル青年会議が合流して、「世界ウイグル会議」ができた。初代の議長は、エルキン・アルプテキンErkin
Alptekin(1939― )である。1930~1940年代に新疆省幹部だったエイサ・ユスプ・アルプテキンIsa Yusup Alptekin(1901―1995)の息子である。2006年からはラビア・カーディルが2代目議長を引き継いでいる。
カーディルは新疆で成功した企業家で、新疆の人民政治協商会議のメンバーを務めていたが、民族問題に関する言論により1999年に国家機密漏洩(ろうえい)罪で逮捕、投獄された。2005年にアメリカに亡命してからは、世界ウイグル会議の議長として活動している。
他方、テロ組織とされる東トルキスタン・イスラム運動は1997年にハッサン・マフスームHassan Mahsum(1964―2003)が設立したものだという。2003年から中国政府、アメリカ、国連から「テロリスト集団」に指定されている。中国当局は、2008年7月の昆明(こんめい)のバス爆破事件、2011年7月のカシュガルの連続殺傷事件はこの組織が関与、2013年10月天安門広場での自動車突入事件はその指示があったと発表しているが、根拠は何も示されていない。いずれにせよ、ウイグルを取り巻く状況は大変に厳しい。
[毛里和子]
©Shogakukan Inc.