巨大IT問題

2019.6.4-産経新聞-https://special.sankei.com/f/economy/article/20190604/0001.html
第5部 銀行が消える(2)「次世代銀行」へ手探り
■ 店舗も行員も減った。ITサービスに活路開く

銀行の姿が大きく変わり始めた。一等地に軒を連ねた店舗は統廃合が続き、共同利用化が進むATM(現金自動預払機)もいまやお荷物扱いだ。金融とITの融合や人工知能(AI)の進展で、銀行の不要論すらささやかれている。
 東京・渋谷。人通りの絶えない繁華街に建つビルの6階でエレベーターを降りると突如、古びた本棚が目の前に現れた。禁酒法下の米国東海岸をイメージした空間で、本棚に模した隠し扉を開くと、外国人や若者らが、あちこちで打ち合わせをするフロアが広がる。
 金融機関の常識にとらわれない新規事業やサービスの創出を目的に、三井住友フィナンシャルグループ(FG)が2年前に開設したイノベーション(技術革新)拠点だ。起業家をはじめ企業、行政、研究機関など、さまざまな人間がここに集まり、新たなビジネスを模索する。
 「銀行に閉じ籠もっていては決して出会えない人や流行のビジネスに触れることができる」。Tシャツ姿で現れた施設の責任者、三井住友FGITイノベーション推進部の古川剛也(ごうや)氏は話す。3月には第1号案件として、AIを使って株式投資情報を個人向けに提案する新サービスを始めた。
                   ◇
 渋谷から目黒へ-。1月下旬、学芸大学駅前(東京都目黒区)に三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)傘下の三菱UFJ銀行の新ブランド店舗がオープンした。次世代型店舗「MUFGネクスト」の第1号店だ。
 店内に入ると、接客カウンターや行員が慌ただしく働くスペースはない。代わりに並ぶのはタブレット端末や高機能ATM。面倒な書類の記入はなくなり、口座の出し入れなどの手続きは画面上でほぼ完結する。住宅ローンや相続などの相談も専用ブースで、テレビ電話を通じてオペレーターと会話しながら手続きができる。 「もうなるべく銀行には行きたくない。行ったとしても待たされたくない」
 三菱UFJFGの三毛兼承(かねつぐ)社長は、最近の消費者の心境をこう代弁する。
 コンビニエンスストアのATMやインターネット取引の普及で、人々は銀行の店舗と疎遠になった。三菱UFJ銀の来店客数は過去10年で4割減り、一方でネット取引の利用者は5年で4割増加した。銀行を取り巻く環境が激変する中で生まれたひとつがMUFGネクストである。
 三菱UFJ銀ではデジタル化によって人件費の徹底した削減を目指しており、このMUFGネクストと資産運用などコンサルティングを扱う富裕層向けの店舗を合わせて令和5(2023)年度末までに数十店まで増やし、現在約500ある店舗を35%削減する。
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長引く金利低下と人口減少で銀行の本業である貸出利益は低下した。支店に大量の行員を置いて預金を集め、住宅ローンなどの利息で稼ぐビジネスモデルは限界で、銀行業界は「破壊と再生」を迫られている。
 もうけが少ない一般利用者の対応は、ネット取引やAIを使ったロボットアドバイザーなど機械が代行。手数料が稼げる重要顧客の資産運用は知識を持つ社員が別途対応する。メガバンク各行にはそんな割り切りが垣間見える。
 かつて花形だった法人営業も世界的なカネ余りの影響で資金需要が低迷。海外展開の後押しやM&A(企業の合併・買収)の情報など、お金以外の付加価値を提供しようと、各行はしのぎを削る。
 一方でITと金融が融合したフィンテックは、帳簿の入力から融資可否の判断まで銀行が抱える「事務の塊」を自動化した。銀行員の仕事はなくなるのでは…。そんな不安は根強い。
 《かつては、銀行と呼ばれていた。》
 三井住友FGは、採用情報サイトでこんな言葉を打ち出している。江戸時代の両替商が銀行に生まれ変わったように、銀行は新たな業態に飛び込んでいけるのか。


2019.6.3-産経新聞-https://special.sankei.com/f/economy/article/20190603/0001.html
第5部 銀行が消える(1)邦銀を揺さぶる「スマホ金融」
(口座持たず決済。IT企業のサービス革命)

ITと金融が融合した「フィンテック」が劇的な進化を遂げるなか、銀行の存在基盤が揺らいでいる。10年後にも「銀行」というものは存在しているだろう。だが、プレーヤーたちは大きく姿を変えているかもしれない。
 自動運転の地下鉄が大阪湾の人工島「夢洲(ゆめしま)」(大阪市此花区)へと次々に乗り入れてくる。「ようこそ、大阪・関西万博へ」。真新しい駅舎のホームに降りた乗客たちは人波となり、改札へと押し寄せていく。それでも流れが滞ることはない。
 多くの人が改札を素通りしている。認証用カメラが、あらかじめ登録された顔写真から乗客を識別し、通り抜けるだけで運賃が口座から引き落とされる。

大阪メトロはこんな未来予想図を描いている。令和7(2025)年5月の大阪・関西万博までに、全ての駅でこの光景を目にすることになる。次世代の決済シーンでは、現金はもちろん、ICカードやスマートフォンなどの端末すら必要としない。「顔」こそがマネーなのだ。
 指紋、静脈、虹彩(瞳の周りにある円盤状の膜)、そして顔。生体データを使った決済は、ITを駆使して金融サービスに革新を起こす「フィンテック」の成果の一つだ。スマホが普及し、誰もがサイバー空間とつながるようになった。これまでの銀行に代わって、新時代の金融はテクノロジー企業が牽引(けんいん)していく。
 その代表プレーヤーは、ボタンを一押しするだけの「ワンクリック」で流通革命を起こした米インターネット通販大手、アマゾン・コムだ。
 メガバンク出身で戦略コンサルティングも手掛ける立教大ビジネススクールの田中道昭教授が語る。
 「利用者が感じる不便さを、徹底的に取り除こうと考え抜くのがアマゾン流。本当の意味での顧客主義だ」
 不便さとは、大阪メトロにとっては乗客の往来を妨げる「改札」である。アマゾンならば、通販客をうんざりさせてきた煩雑な決済方法だったといえる。
 既にアマゾンは金融に似た機能を備えている。例えば「アマゾンレンディング」である。同社サイトに出店する業者向けの融資サービスで、融資額は最大で5千万円、審査期間は最短3日という速さをうたい、約5年前にスタートした。
 「アマゾンギフト券」は購入額に応じて最大2・5%のポイント還元を受けられる。アマゾンで多くの買い物をする人の中には高利率の「預金」として利用する人もいる。 まるで既存の銀行を挑発するかのようだ。
 田中教授は「決済、融資、預金という主要な金融業務を網羅している」とみており、「アマゾン銀行」の誕生は現実味を帯びていると強調する。
 誰が、いつ、何を買い、何を欲しているのか。緻密に収集された顧客情報は、金融と結びつく。
 昨年3月、多くの金融関係者が米紙ウォールストリート・ジャーナルが伝えるアマゾンの動向に目を見張った。米銀大手JPモルガン・チェースなどと組み、インターネット決済専用の預金口座に似たサービスの検討を始めた。そのターゲットは若い世代だ。これが実現すれば、銀行口座がなくても買い物の決済ができるようになる。
 既存銀行の存在感はますます薄れていく。中堅銀行の幹部は「邦銀は駆逐されてしまうかもな」と漏らした。
 壇上で2人の男性が手を握り合うと一斉にフラッシュがたかれた。一人はデニムにジャケット。一方の男性はスーツ姿。IT企業トップのラフなスタイルは、銀行幹部と並ぶと存在感が際立った。
 無料通信アプリ「LINE(ライン)」の出沢剛(いでざわ・たけし)社長は、みずほフィナンシャルグループと提携し、新銀行「LINE Bank(バンク)」の構想を表明した。昨年11月のことだ。
 「既存の銀行は規制に縛られ、顧客本位のサービスができていない。5年後を見据えた当たり前の金融サービスをつくる」
 店舗を持たず、「融資や預金、振り込みなど、全てをスマホ上で完結させる」という。LINEは「電子メール」から多くの需要を奪った実績がある。その利用者は約8千万人。若者の支持も厚く潜在的な顧客基盤は三菱UFJ銀行の約3600万の預金口座を上回る。
 この20年で異業種からの参入は10社を超え、着実に既存銀行の地盤を侵食しつつある。セブン、ローソン、楽天、ソニー…。
 セブン銀行がコンビニエンスストア店舗を中心に設置したATM(現金自動預払機)の数は約2万5千台。メガバンク3行の合計2万台を圧倒する。一方、メガ側は管理にコストがかかるATMの縮小にかじを切っている。
 既存の銀行は台頭する新興勢力との差別化に苦心しているのが現状だ。もはや、消費者の心をつかみかねているのではないか。 この春、電機メーカーに就職した男性(25)はメガバンクに口座を開設したという。 「給料の振り込みに使うだけ。どこでもいい」
 こんな消極的理由で選んでくれる顧客に頼ってきた時代は終焉(しゅうえん)を迎えそうだ。

「銀行員やめた」 将来見えない/コンサルに転職

「今の銀行は泥舟ですから。正直、降りられてホッとしてますよ」 富山市内のある中小医薬品製造業の社長(39)は昨年末、地方銀行を退職するとあいさつにきた30代の融資担当者の言葉が心に残っている。
 当初こそ、自身の退職で担当が代わることを申し訳なさそうに話し、頭を下げていた。だが、応接室のソファに座るよう促すと緊張していた表情は緩み、お茶菓子を食べながらの雑談で、つい本音を漏らしたのだという。退職後は、北陸圏内の企業を対象にしたコンサルタント会社に転職することが決まっていた。
 偶然なのか、この担当者を皮切りに、年明けすぐに別の地銀の担当者2人が立て続けに退職のあいさつに訪れた。同様に転職先は決まっており、1人はコンサル会社、もう1人は都内のメーカーで経理として4月から働くことになっていた。「栄転になればよいですけど…」。うち1人は、どこか安心したような表情でつぶやいた。
 昨年、首都圏の外資系コンサル会社に転職した20代の元行員は、「地銀での担当業務は機械的に受付案件を処理するだけ。将来は人工知能(AI)などに取って代わられると考えた」とその理由を明かす。
 とはいえ、銀行員が身につけた数字を読む力や、融資先の経営者ら外部との折衝能力は他業界でも歓迎される。待遇が良いコンサル会社への転職はトレンドとなっており、「特に若手でも大きな案件を担当でき、給料も高い外資系への転職は人気が高い」(転職支援ベンチャーの担当者)という。
 就職すれば「人生安泰」とみられていた銀行員という仕事が変わり始めている。就職情報会社リクルートキャリアの調査では、銀行員の転職は平成21~30年度の10年間で7・14倍に増え、全職種の3・23倍に比べ格段に多い。
 人口減少による貸し出し需要の減退や、超低金利の長期化による利ざやの縮小を背景に、銀行の収益力は悪化した。日本銀行の試算では、国内で営業する地銀の実に約6割が10年後には最終赤字に陥る見込みだ。
 銀行界は激動の新時代に突入した。主役はスマートフォンと通販で蓄積した膨大な顧客情報を持つ異業種だ。預金残高の合計で約427兆円を誇る三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGの3メガバンクは脇役となりつつある。
 ITと金融が結びつくフィンテックを足がかりに、ソフトバンクとヤフーが出資する「ペイペイ」や無料通信アプリLINE(ライン)の「LINEペイ」などスマホを使った決済サービスが林立。異業種に決済や融資といった基幹業務が浸食されている。
 既存銀行は生き残りをかけデジタル化による業務効率化を加速し、今後は店舗の統廃合や3メガで3万人規模のリストラが進む。バブル期に大量採用した50歳前後の行員をグループ会社へ転出させ、新卒採用は3メガの令和2(2020)年度の採用予定者数がピーク時の3分の1まで落ち込むなど、絞り込んでいる。
 銀行員はもはやエリートではない。そんな風向きの変化を、就職活動中の学生は敏感に感じ取っている。
 「メガバンクの総合職は滑り止め。銀行は就活のセーフティーネットです」

 来春卒業する東京都内の国立文系大学の男子学生(24)はこう指摘する。第一志望は機械メーカー。銀行は「将来性が感じられないからなるべく行きたくない」と漏らす。かつて就活で絶大な人気を誇った3メガも、ランキングの上位10社に残るのは今や三菱UFJ銀行だけだ。技術の進化によって幕開けした新時代。これまでのメインプレーヤーが主役の座を明け渡し、業界地図が大きく塗り変わるシナリオも現実味を増している。




2018年12月
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