新型コロナウイルス第9波-1
2023.06.30-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230630-RTCMZFX365L4TFLVQQCUAYMTHY/
新型コロナ「第9波」入り口か 沖縄8波超え 夏休みへ警戒
(中村翔樹)
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5月8日に5類に引き下げられて以降、
感染者数が緩やかに増え続けている。専門家は流行「第9波」が始まった可能性を指摘し、特に沖縄では、昨冬の第8波のピークを越える水準となっている。社会活動の活発化や新たな変異型の出現も背景にあるとみられ、夏休みに向けて人流増によるさらなる感染拡大への警戒が強まっている。
8波の入り口と同水準
厚生労働省は30日、全国約5千の定点医療機関から6月19~25日に報告された新型コロナの感染者は計3万255人で、1定点医療機関当たりの平均は6・13人だったと発表。前週比は1・09倍となった。都道府県別では、
新潟県と富山県以外のすべてで上昇した。
5月19日の初回発表(同月8~14日分)は1定点当たり2・63人だったため、1カ月あまりで約2・3倍に達したことになる。
厚労省が参考値として示した昨年冬の第8波の定点把握数では、始期に当たる令和4年10月3~9日分で6・37人だった。今回の公表人数と同水準で、「波」の入り口にさしかかったとの見方が強まっている。
特に感染拡大が顕著なのが沖縄だ。6月19~25日の1医療機関当たりの平均は前週比1・37倍となる39・48人と突出している。第8波の全国のピーク(29・80人)を上回った。
波ごとに拡大も
拡大要因の1つに挙げられるのは、流行株の種類だ。厚労省にコロナ対応を助言する専門家組織によると、第8波で主流だったオミクロン株の「BA・5」から、複数のオミクロン株が組み合わさった「XBB」系統に置き換わっている。これまでのワクチン接種などで得た免疫を逃れる能力が高いとされ、時間経過による減衰時期とも重なった。6月16日の会合では変異株の出現を踏まえ、「夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性がある」との見方が示された。
新型コロナが、再び猛威を振るうのか。専門家組織有志は4月、英国を先行事例として示した。同国ではオミクロン株が広がった昨年1月以降、流行の波ごとに感染規模が縮小し、重症者数や死者数のピークも徐々に低下したという。自然感染による抗体保有率が人口の86%を超えており、これが影響した可能性がある。
日本でも将来的に英国同様、流行規模が縮小していくと予想。一方、国内の抗体保有率が約42%とまだ低く、こうした減衰サイクルに入る時期はまだ先になるとの分析が示された。
ノーガードはNG
染者数という「母数」の増加は、重症者や死者数の増加につながる。過去の感染拡大期を見ると、オミクロン株が主流となった令和3年末から4年春ごろの第6波から感染者数が急増。比例して死者数も増え、この時期だけで1万人を超えた。昨冬の第8波では、第7波の約2倍の2万8千人超が命を落とした。
新型コロナの重症化率や致死率は、季節性インフルエンザと同水準になりつつあるとのデータがあるが、高齢者年代は依然、数倍程度高いと指摘される。
順天堂大大学院の堀賢教授(感染制御科学)は、「5類移行後の開放的な機運に乗って、国民全体がコロナに対し『ノーガード』のような状態になった」と指摘。夏休みの時期に入り人流増が見込まれる中、「ガードを常に高く上げておく必要はないが、コロナが消えたわけでは決してない。この1~2年は状況に応じ、上げたり下げたりするという意識が必要だ」としている。
(中村翔樹)
東京医科大・濱田篤郎特任教授の話
「30日発表の定点当たりの新規感染者数では、沖縄が40人に迫る別格の高水準だった。同じ5類の季節性インフルエンザでは、定点当たりの患者数が1人を超えると「流行入り」、10人超で「注意報」、30人超で「警報」が発令される。
新型コロナウイルスに同様の仕組みはないものの、単純に当てはめれば警報を超える数値で、政府が何らかのシグナルを発してもよいレベルだろう。改めて、仕組みの早期の導入も求めたい。
今後の見通しでは、夏場となり、人流の増加などさらなる拡大につながる要素もあるが、元来、空気が湿潤で飛沫(ひまつ)感染が起きづらく、感染拡大は生じにくい時期でもある。
流行第7波など、夏季に拡大した例はあるが、このときは感染力の強い変異株などが出現したことが大きい。現状、そうした状況は確認されていない。
今回のいわゆる第9波は、それほど高いピークには達しないとみている。とはいえ、梅雨が明け、夏休みが終わる8月中旬ごろまでは増加傾向が続く可能性はある。換気など含め基本的な感染対策を徹底するということに尽きるだろう」
2023.06.26-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230626/k10014109381000.html
新型コロナ「第9波が始まっている可能性」政府分科会 尾身会長
新型コロナ対策にあたる政府分科会の尾身茂会長は、岸田総理大臣と面会したあと
「全国的には感染者数が微増傾向で、第9波が始まっている可能性がある」と述べ、高齢者を中心に6回目のワクチン接種など亡くなる人を減らすための対策を行う必要があると指摘しました。
尾身会長によりますと、26日午前、岸田総理大臣と面会し、新型コロナウイルスの今の感染状況と、中長期的な推移、求められる対策について意見交換を行ったということです。
面会のあと、尾身会長は
「医療機関の定点把握などのデータをみると、地域によって差はあるが全国的には微増傾向にあるのではないか。第9波が始まっている可能性があるが、今後どのように推移するかは今のところわからない。社会を元に戻していく方向に進むなかで、重症化リスクの高い高齢者を守り、亡くなる人を減らすことが重要だ」と述べました。
今後の見通しについて、尾身会長はイギリスでは感染拡大の波を経るごとに徐々に亡くなる人の数が少なくなり、感染が地域の中で一定のレベルに落ち着く「エンデミック」に移行してきている可能性があるとしたうえで「
日本も第9波による死者数が第8波を下回るようであればイギリスから遅れてエンデミックの方向になっていくのではないか。致死率は今のところ大きく変わっていないと思う。新規感染者がどれだけ出るのか注視する必要がある」と指摘しました。
そのうえで「
5類に移行したことで接触の機会が増えており、ある程度の感染者の増加は織り込み済みだったと思う。亡くなる人を減らすよう注意して社会を回すことが大事だ。自治体などが高齢者施設での感染対策をしっかりやっていくほか、免疫は時間の経過とともに下がっていくため、特に
高齢者は個人の判断になるが6回目のワクチン接種を検討してほしいと思う」と述べました。
松野官房長官 “重症化リスク高い方など積極的に接種検討を”
松野官房長官は、午前の記者会見で「
専門家からは、感染者数が増加傾向にあること、死亡者数の推移を注視する必要があるが、死亡率はG7各国に比べ非常に低い水準にあること、定点報告のほか重層的に実態を把握する必要があることなどの指摘があった」と説明しました。
そして「専門家の意見も踏まえ、引き続き感染状況を重層的に把握するとともに、感染拡大が生じても必要な医療が提供されるよう幅広い医療機関で対応する体制への移行を進めていく。また重症化リスクが高い方などに対するワクチン接種を進めており、対象者は積極的に接種を検討してほしい」と述べました。
そのうえで「
今後、夏に向けて一定の感染拡大が生じる可能性がある。各地域の感染動向を見ながら、自治体や医療関係者と連携し、先手先手で必要な対応を行っていく」と述べました。