2021.01.22-日本経済新聞-https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN220QM0S1A120C2000000
核兵器禁止条約が発効 米国や日本は不参加
【ニューヨーク=白岩ひおな】
核兵器の開発、保有、使用を全面禁止する初の国際法規である核兵器禁止条約の発効が22日、南太平洋のサモアから始まった。
2020年10月までに批准した50カ国・地域で現地時間22日午前0時に順次、効力が発生する。米国、英国、フランス、中国、ロシアの核保有五大国のほか、米国の「核の傘」の下にある日本や韓国は参加していない。
これまでに批准したのは51カ国・地域。サモアではかつて、米仏などの核実験が繰り返された。国連本部のあるニューヨークの米東部時間22日午前0時(日本時間同日午後2時)には大半の締約国で発効する。条約はオーストリアやメキシコなどが議論を主導し、17年7月に国連で122カ国・地域の賛成で採択された。20年10月には批准国・地域が発効に必要な50に達し、90日後の発効が決まっていた。
条約は
核兵器を「
使用するという威嚇」
まで法的に禁じる。核兵器の実験や移転、配備の許可も禁止事項に含む。核実験や核兵器の使用で被害を受けた人への支援、影響を受けた環境の修復に向けて必要な措置を取るよう求めている。
核不拡散や核軍縮の交渉義務、原子力の平和利用を求める核拡散防止条約(NPT)よりも踏み込んだ内容だが、これまでに批准した国・地域はいずれも非核保有国で、実効性には課題がある。唯一の戦争被爆国である日本も、北朝鮮や中国など東アジア地域の厳しい安全保障環境から条約の署名・批准には慎重だ。
米国では20日、核軍縮に前向きなバイデン大統領が就任した。8月には核保有国を含むNPTの再検討会議が予定されている。
2020.8.13-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200813/k10012565131000.html
核のごみ 寿都町 文献調査応募検討 北海道 処分場に慎重な考え
原子力発電所から出るいわゆる「核のごみ」の最終処分場の選定を巡って、北海道の寿都町は選定の第一段階となる「文献調査」への応募を検討していることを明らかにしました。応募した場合、国が調査対象になりうる地域を示した地図を公表して以降、初めての自治体になります。一方、
北海道は条例で、高レベル放射性廃棄物は「受け入れがたい」などとしていて、町の考えを確認するとしています。
原発の使用済み核燃料から出る
「高レベル放射性廃棄物」いわゆる「核のごみ」は、
極めて強い放射線を出すため、国は、地下深くに埋めて処分する方針です。
この最終処分場の選定を巡っては、国が3年前に調査対象になりうる地域を示した地図を公表し、各地で説明会を開くなどして自治体へ理解を求めてきました。
この選定について、
北海道の寿都町は地図上で町内の大半の区域が処分場の候補地として「好ましい」地域とされているうえ、調査を行った場合、国からの交付金が見込めるとして、片岡春雄町長が、第一段階となる「文献調査」への応募を検討していることを明らかにしました。
今後、応募を行い調査が決まった場合は、およそ2年間の文献調査が行われその後、自治体や住民などの理解が得られれば、現地でのボーリングによる掘削など選定に向けた詳しい調査分析が進められることになります。
町は、今月26日に町議会議員や漁協などの団体の代表との意見交換会を開いたうえで、来月中旬にも応募するか決めることにしています。
応募した場合、国が調査対象になりうる地域を示した地図を公表して以降、初めての自治体になります。
片岡町長は、「地域経済も厳しい状況にあるなか、調査の交付金を町づくりに生かすことを真剣に議論してもよいのではないかと考えた。また核のごみの処分に顔を背けることなく、住民の意見を聞きながら最終的には判断したい」と話しています。
自治体が調査を受け入れると、最初の
文献調査で最大20億円が交付金として支払われることになっています。
一方、北海道は高レベル放射性廃棄物の研究施設の立地は認めているものの、2000年につくった条例で「高レベル放射性廃棄物は道内に受け入れがたい」などとして、最終処分場には慎重な考えを示しており、道では町の考えを確認するとしています。
片岡町長「交付金を町づくりに生かすことを議論」
文献調査を検討する理由について、寿都町の片岡春雄町長は「町の財政を考えると、5年や10年の範囲では、なんとかもつが、そのあとは、必ず資金が底をつくという危機感がある。新型コロナウイルスの影響で地域経済も厳しい状況にあるなか、
調査の交付金を町づくりに生かすことを真剣に議論してもよいのではないかと考えた」と説明しました。
そのうえで「
日本で原発を動かす以上、核のごみは、国内のどこかで処分する必要がある。寿都町が調査に応募した場合、他にも手を挙げる自治体が出てくるのではないか。そのなかで、最もふさわしい場所が選ばれるのが望ましいと思う」と述べました。
また、今後の対応について「まずは、町内の代表者と意見交換をしたうえで、一般の住民に説明する機会も設けたい。住民の理解が得られないまま、調査に応募することはない」と述べ、判断にあたっては、町民の意思を尊重する考えを示しました。
町民からはさまざまな声
寿都町が「核のごみ」の最終処分場の選定で、文献調査への応募を検討していることについて、町民からは慎重な対応を求める声があった一方、「嫌とばかりは言えない」という意見も出ていました。
30代の女性は「子どもがいるので、何かあったときのことを考えると、処分場ができるのは嫌です。町には、お金よりも子どもたちの安全を大事にしてほしい」と町に慎重な対応を求めました。
また、80代の女性も「
交付金は魅力的ですが、処分場ができた場合、将来的に悪影響がないのか不安があります。町は、特に若い世代の意見を聞きながら検討を進めてほしい」と話していました。
一方、30代の男性は「子どもたちのことを考えると、不安がないわけではないが、原発を動かす以上、核のごみは、どこかが引き受けなければならない。今後のことを考えたら、嫌だとばかりも言えないのではないか」と話していました。
北海道 鈴木知事「速やかに考えを確認していく」
北海道は2000年、道北の幌延町に高レベル放射性廃棄物の処分技術を研究する施設を受け入れるにあたり、研究は認めるものの、条例で「高レベル放射性廃棄物は道内に受け入れがたい」などとして、最終処分場には慎重な考えを示しています。
寿都町が文献調査への応募を検討していることについて、鈴木知事は「条例は道議会での議論を踏まえ、将来とも道内に処分場を受け入れる意思がないという考えに立つもので、私としては条例を順守しなければならないと考える。道としては寿都町に対し、速やかに考えを確認していく」というコメントを出しました。
「核のごみ」とは
全国各地の原子力発電所では、運転をすると使用済みの核燃料が発生します。日本ではこの使用済み核燃料を化学的に処理する「再処理」を行って、再び燃料として使うためのプルトニウムなどを取り出す計画です。
ただ、この際、再利用できない高濃度に汚染された廃液や燃料の部材が残り、いわゆる「核のごみ」と呼ばれています。
極めて強い放射線を出し続けることから、国は数万年にわたって人が生活する環境から隔離する必要があるとして、地下300メートルより深くに埋める「地層処分」を行う方針です。
しかし、どこに処分場を作るのか決まらない状況が続いています。
選定の流れ
高レベル放射性廃棄物の地下処分を実施する国の認可法人
NUMO=原子力発電環境整備機構によりますと、
処分場を選ぶまでに3段階に分けて調査を行うとしていて、「文献調査」はその最初の段階です。
文献調査では地下に埋めて処分するのに適切な候補地を探るため、研究論文や地質のデータなどから地層の状況を把握することを目的にしています。
具体的には、該当する地域で火山や活断層がどう分布しているかや、経済的に価値がある鉱物資源がないかなどといったことを2年程度かけて調べるとしています。
仮に、文献調査の評価がまとまり、自治体などの理解を得ることができれば、「概要調査」と呼ばれる第2段階に進みます。この調査では4年程度かけて、地層を掘り出すボーリングを実施するなどして直接、地質や地下水などの状況を調べることになります。
続いて自治体などの理解が得られれば、第3段階の「精密調査」に入ります。この調査は14年程度かけることが想定され掘削した地層を精密に分析し、過去の火山や地震の活動を踏まえ、将来の地層の安定性や今後、掘削の対象となるかもしれない鉱物資源の有無などについて最終的な結果をまとめることになります。
この調査の最終結果を踏まえて、実際に処分場をつくるかどうかは住民の意見や自治体の考えなどを聞いたうえで、決定されることになります。
一方、自治体が調査を受け入れると、
最初の文献調査で最大20億円、第2段階の概要調査で最大70億円が交付金として支払われることになっていますが、国はいずれの段階の調査も自治体の意見を十分に尊重し、反対する場合は次の調査に進むことはないとしています。
NUMO「関心持ってもらえるのはありがたい」
処分を実施する国の認可法人、
NUMO=原子力発電環境整備機構によりますと、北海道寿都町が文献調査に応募した場合、2017年に調査対象になる可能性がある地域を示した全国地図「科学的特性マップ」を国が公表して以降、初めてとなるということです。
NUMOによりますと、自治体からの文献の調査の応募は、最終処分場の選定の方法が今の方式に変わる2014年の前に、高知県東洋町が2007年に応募した例がありますが、この時は住民の反対などで町がすぐに応募を撤回しました。
NUMOは「今のところ寿都町が文献調査への応募を検討しているとの情報は入っていない。最終処分場について、地域に関心を持ってもらえることはありがたく、今後も全国各地で理解活動を進めていきたい」とコメントしています。
寿都町の大部分はマップ上“濃い緑色”
処分を実施する国の認可法人、
NUMO=原子力発電環境整備機構によりますと、北海道寿都町の大部分は「科学的特性マップ」では“濃い緑色”で示されているということです。
この濃い緑は、「科学的に好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高く、廃棄物の輸送面でも好ましい」とされるエリアです。
難航する最終処分場の選定
原子力発電所を運転することで発生する高レベルの放射性廃棄物を最終的にどう処分するかは原子力事業の最大の課題とされています。
日本では、2000年に最終処分に関する法律が施行され、処分場の選定作業が本格的に始まりました。
NUMO=原子力発電環境整備機構という処分を実施する国の認可法人が設立され、全国の市町村から候補地を募集し、国も、応募した自治体に最初の2年間だけでも最大20億円の交付金を支払う仕組みを設けました。
しかし、応募は、2007年に高知県の東洋町が唯一行っただけで、その応募は住民の反対などで撤回されました。
また、2006年には、滋賀県余呉町の町長が処分場の誘致を前提に調査に応募する方針を明らかにしましたが、「理解を示す住民の声は小さい」として、応募を断念しています。このほか、秋田県上小阿仁村や長崎県対馬市などでも処分場を誘致する動きがありましたが、いずれも住民の反対で応募するまでには至りませんでした。
候補地選びが難航する中、国の原子力委員会は2012年、国民の合意を得るための努力が不十分だとしたうえで、国が前面に出て候補地選びを行うべきだとする見解をまとめました。
これを受けて国は2014年、自治体の応募を待つ従来の方式に加えて、科学的に有望な地域を示したうえで複数の自治体に処分場の選定に向けた調査を申し入れる方式を取り入れることにしました。
その第一歩として2017年7月に公表されたのが、「科学的特性マップ」と呼ばれるものでした。「科学的特性マップ」は、処分場の選定に向けて将来、調査対象になる可能性がある地域を示した全国地図です。
マップは、処分場としての適性が地域ごとに色分けされていて、このうち、近くに火山や活断層がないなどの科学的な基準から処分場として「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」は薄い緑色と濃い緑色で示されています。
この緑色の地域は面積にして国土のおよそ3分の2にのぼっています。中でも、海岸から20キロ以内を目安とした地域は、廃棄物の海上輸送に好ましいとして濃い緑で示され、一部でも含まれる市区町村はおよそ900に上ります。
国や
NUMOは、自治体に調査の受け入れの判断を迫るものではないとしたうえで、マップを公表してから全国各地で市民向けの説明会を開き、核のごみの処分に対する理解を深めようとしてきました。
ただ、説明会を開始してすぐの2017年10月には、
NUMOから委託を受けた会社が大学生に謝礼などを約束して動員したことや、
NUMO職員が電力会社の社員に参加を呼びかける不適切なメールを送っていたことが明らかになり、公平性に大きな疑念が生じる事態になりました。
これを受けて説明会は一時、中断され、
NUMOは、運営を原則、直接行うなどやり方を見直しました。その後説明会は再開され、3年間で171回実施されてきました。
高レベル放射性廃棄物はすでに発生していて、
NUMOによりますと、
使用済み核燃料を再処理したあとにでる高レベルの廃液をガラスで固めたものが現在、青森県六ヶ所村と茨城県東海村の施設で合わせておよそ2500本一時保管されています。
2020.6.20-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200620/k10012477721000.html
IAEA 査察に全面協力求める決議 イラン強く反発 緊張も
イランが、核物質が保管されている疑いがある施設への査察を拒否している問題をめぐり、
IAEA=国際原子力機関の理事会は、IAEAの査察に全面的に協力するよう求める決議を採択しました。イランは強く反発していて、緊張が高まることが予想されます。
オーストリアの首都ウィーンに本部があるIAEAで開かれていた理事会ではイランが、申告していない核物質が保管されている疑いがある国内2か所の施設に対し、IAEAの査察を拒否している問題が大きな議論となりました。
この中で
イギリス、フランス、ドイツの3か国は、
イランがIAEAの査察に全面的に協力するよう求める決議を提出し、19日、理事会で採決が行われました。
その結果、
ロシアと中国の2か国が反対したものの、賛成多数で可決されました。
アメリカのウォルコット大使は記者会見で、「
これで新たな段階に入った。イランは査察受け入れの義務に従わねばならず、イランの動向を注視していく」と述べました。
これに対し、イランのガリブアバディ大使は「
深く失望している。ヨーロッパの3か国が決議を提出したことは非常に遺憾だ。根拠のない主張で、IAEAに圧力をかけていて、これはアメリカとイスラエルによる罠だ」と強く反発し、対抗措置をとることも示唆しています。
今回の決議の採択で、
イランに査察を求める圧力が強まることになり、今後、イラン情勢の緊張が高まることが予想されます。
英・仏・独の3か国外相が共同声明
イランに対するIAEA=国際原子力機関の決議をめぐり、イギリス、フランス、ドイツの3か国の外相は19日、共同で声明を発表しました。
この中で3か国の外相は、イランが申告していない核物質が保管されている疑いがある国内の施設に対し、IAEAの査察を拒否していることに強い懸念を示しました。
そのうえで、IAEAの理事会が19日、査察に全面的に協力するようイランに求める決議を採択したことについて、「
イランに対しては完全な形でIAEAに協力し、施設への立ち入りを許可するよう求める」としています。
2019.8.16-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20190816-00422528-fnn-int
“北”発射の飛翔体 政府は警戒・監視
北朝鮮が16日朝、3週間余りで6度目となる飛翔体の発射を行ったことを受け、日本政府は、情報収集と警戒・監視を続けている。
北朝鮮の発射を受け、安倍首相は、「わが国の安全保障に影響を与えるようなものではないことは確認されている。国民の安全を守るために万全を期していく」と述べ、引き続き、十分な警戒態勢をとると強調した。
また、岩屋防衛相は、「北朝鮮がミサイル関連技術の高度化を図っているのは、わが国のみならず、地域全体、国際社会にとっての極めて深刻な課題だ」と指摘し、「あらゆる空からの脅威に対応できるミサイル防衛体制を整えたい」と述べた。
政府関係者によると、16日に発射されたのは、北朝鮮が「新兵器」と発表した、8月10日に発射された飛翔体と飛距離や高度などの特徴が似ていて、「速度は速く、高度は低い、弾道ミサイルと巡航ミサイルの特徴をあわせ持つ新型兵器の可能性がある」という。
一方、自民党は緊急の対策会議を開いた。
自民党の二階幹事長は、「発射の状況の分析によれば、北朝鮮は少なくとも、3種類の新たな弾道ミサイル等の開発の実験・検証を進めていると考えられるところだ」と述べたうえで、「政府もアメリカも表面上は静観だが、着々と性能実験を進め完成度を高めている。看過できない」と指摘し、政府に対し、事態の把握と必要な対応を行うよう求めた。
2019.8.16-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/politics/news/190816/plt1908160017-n1.html
北飛翔体、煮え切らない政府に自民から不満
(原川貴郎、石鍋圭)
3週間余りで6回を数えた北朝鮮による飛翔体の発射はミサイル技術の進展に直結し、日本の安全保障上の脅威が増すことを意味する。短距離弾道ミサイルであれば国連安全保障理事会決議違反は明白だが、政府は16日も北朝鮮を非難せず。自民党内では、政府の煮え切らない態度に不満が高まっている。
「わが国の安全保障に影響を与えるようなものではないことは確認されている。引き続き十分な警戒態勢の下、米国などとも連携しながら国民の安全を守るため万全を期していく」 安倍晋三首相は16日午前、首相官邸に到着すると北朝鮮の飛翔体発射について記者団にこう述べた。 岩屋毅防衛相は防衛省で記者団に「北朝鮮がミサイル関連技術の高度化を図っているのは、わが国や国際社会にとって極めて深刻な課題だ」と懸念を示した。
しかし、岩屋氏が防衛省に姿を見せたのは飛翔体発射から約2時間半が経過した午前10時半ごろ。首相官邸での台風10号対策の関係閣僚会議に出席した事情もあるが、情報収集や分析を進める防衛省の幹部会議は岩屋氏の登庁まで開かれなかった。首相も午後には静養先の山梨県鳴沢村の別荘に移動した。
一方、自民党は16日午前に党本部で北朝鮮核実験・ミサイル問題対策本部(本部長・二階俊博幹事長)の会合を開いた。二階氏は「政府や米国は表面上は静観の体(てい)だが、(北朝鮮が)着々と(ミサイルの)性能実験を進め、完成度を高めていると判断せざるを得ない。このことは看過できない」と述べ、緊張感のない政府の対応を疑問視した。
政府が北朝鮮批判を抑えているのは、日本人拉致問題の早期解決に向け、首相が金正恩朝鮮労働党委員長との対話を模索していることや、拉致問題解決に全面的な協力姿勢を示すトランプ米大統領が金氏との対話継続を重視していることへの配慮からだ。
ただ、会合では「トランプ氏に気を使う部分もあるかもしれないが、政府として毅然(きぜん)とした態度を取るべきだ」との意見が相次ぎ、「政府が発射を容認していると国民に見られてしまう」との声も出たという。
ある幹部は、「発射されるたびに日本側は会議を開くだけでいいのか、と言ってやる」と政府を突き上げる考えを示した。 対米関係、国連安保理決議、自民党、世論-。政府は、さまざまな要素のはざまで対応に苦慮しているのが実情だ。(原川貴郎、石鍋圭)
2019.8.2-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190802/wor1908020037-n1.html
INF条約が失効 トランプ政権、21世紀型の軍備管理体制確立目指す
(1)
【ワシントン=黒瀬悦成】米国と旧ソ連が東西冷戦下の1987年に締結した中距離核戦力(INF)全廃条約が米東部時間2日午前0時(日本時間2日午後1時)に失効した。2021年に期限を迎える米露の新戦略兵器削減条約(新START)も延長が危ぶまれつつあり、世界は米露だけでなく、中国も巻き込んだ21世紀型の軍備管理の枠組みを模索していくことが確実となった。国連のグテレス事務総長は1日の記者会見で、条約失効に関し「世界は、核戦争に対する計り知れぬほど貴重な歯止めを失う」と述べ、懸念を表明した。
トランプ米政権が条約の破棄に踏み切ったのは、ロシアのプーチン政権が条約違反となる新型の地上発射型巡航ミサイル「9M729」を実戦配備したほか、極超音速弾頭兵器など、条約が禁止する射程500~5500キロの地上配備型ミサイル兵器の開発を積極的に進めているためだ。
加えて、条約に加盟していない中国が、「空母キラー」と呼ばれる対艦弾道ミサイル「DF21D」の開発を進め、米軍基地のあるグアムを射程に収める中距離弾道ミサイル「DF26」を配備済みであることも、米政権の危機感を高めた。
ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は7月30日、ワシントン市内での講演で、「米国を効果的に守るには、(条約で)縛られている両手をほどかなくてはならない。米国の存亡に関わる脅威が存在する以上、妥協は許されない」と強調した。
トランプ政権が次に進めるのは、米国も従来は条約に縛られ保有できなかったミサイル兵器の開発に着手し中露に対抗する一方、米中露による新たな核軍縮交渉入りを目指すことだ。
米CNNテレビは1日、米国防当局者の話として、米軍が移動式車両から発射される通常弾頭搭載の新型巡航ミサイルの発射実験を数週間以内に実施する見通しだと報じた。
(2)
一方、トランプ大統領は同日、ホワイトハウスで記者団に「ロシアは核(軍縮)条約で何らかの取り組みをしたいと考えている。私も同じだ」と述べ、交渉に前向きな姿勢を示した。
ただ、ボルトン氏は新STARTについて「戦術核やロシアの新型運搬手段に関する取り決めがない欠陥条約だ」と断じ、「決断は下されていないが、延長はされないだろう」との見通しを明らかにした。
トランプ政権は、米露の冷戦構造を引きずる既存の核軍縮条約を全てご破算にすることで、全ての核兵器と運搬手段を対象とした、野心的な軍備管理体制の確立を図りたい考えだ。
2019.7.16-excite ニュース-https://www.excite.co.jp/news/article/Reuters_newsml_KCN1UA2EJ/
アメリカとロシア 中国含む新たな核削減条約模索
米ロ、中国含む新たな核削減条約模索 17日に会合=米当局者
[ワシントン 15日 ロイター] - 米国とロシアの当局者は最終的には中国も含む新たな核兵器削減条約の実現性を模索するために17日にジュネーブで会合を開くことが、米当局者の話で15日明らかになった。
米国代表団はサリバン国務副長官が率い、国家
安全保障会議(NSC)のティム・モリソン氏のほか、国防総省、統合参謀本部、国家安全保障局(NSA)などの当局者が参加する。ロシア代表団はリャブコフ外務次官が率いる。
トランプ米大統領はあらゆる種類の核兵器を網羅する「次世代」軍縮協定をロシアと中国と締結したい考えを示しており、先月末の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせてロシアのプーチン大統領、および中国の習近平国家主席と個別に会談した際、この件に関して協議している。
米ロは現在、軍縮条約を締結しているが中国は参加しておらず、米当局者は中国がどの程度意欲的かは現時点では分からないとしている。
核戦略
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
核戦略とは核兵器の準備、抑止及び使用を計画するための戦略・軍事戦略である。
概要
核兵器が発明されるとその破壊力をどのように戦略的に活用すればよいのかという
核戦略の議論がされるようになった。
バーナード・ブロディは核兵器は僅かな使用であっても都市圏を破壊する上に有効な対抗策がないため「絶対兵器」であると称して核兵器を独特な
軍事力として位置づけた。アメリカは1950年代に大量報復戦略を打ち出したが、
ベイジル・リデル=ハートはこの核戦略の議論で、核兵器が従来のように実施されてきた戦争の概念を旧式化したと論じた。彼の『抑止か防衛か』では通常軍備の意義を強調しながらも、
戦術核兵器について戦場では威力を発揮するが、戦争そのものの規模が拡大して核戦争になると論じる。リデル・ハートに続いてオズグードの『
制限戦争』、
キッシンジャーの『
核兵器と外交政策』、シェリングの『紛争の戦略』などによる理論的進歩があり、核兵器によっていかに核抑止を成り立たせ、また戦争においては制限戦争に留めるための戦略理論が構築された。
理論核兵器は
核分裂反応または
核融合反応によって得られる
核エネルギーを破壊力に利用した
大量破壊兵器の一種であり、核戦略とは
戦略爆撃機や
弾道ミサイルなどの運搬手段を含めたその核兵器の破壊力を活用するための戦略である。核兵器には超高温の発熱、爆風や衝撃波などの破壊効果、
放射線効果、放射性降下物の散乱、
電磁パルスなどの影響を及ぼす兵器であり、従来の
火砲などの兵器とは異なる性質を持っている。
核戦略はこのような核兵器の特性に立脚しながら国家の
安全保障や国家の目標達成のために決められるものであり、核兵器の開発、核攻撃の目標の選定、発射官制、核攻撃に対する防護や被害管理などの手段を包括している。ただし留意すべき点として核兵器には短期間のうちに社会の機能を停止させるほどの物理的破壊力があり、したがって核攻撃がないとしても核兵器の保有によって相手の軍事行動を強く規定することができる。つまり相手国が攻撃的行動を行えば自国が懲罰的な
報復を行うことを核兵器によって威嚇することで、相手国の攻撃的行動を思いとどまらせること、すなわち
核抑止が可能となるのである。
ただし一般的な抑止の概念を検討すれば、三つの条件が必要であると考えられている。
・相手国に耐え難い損害を与える報復能力
・報復能力を使用する意志
・事態の重大性・緊急性についての相互的認識
以上の三つはまとめて「抑止の三条件」と呼ばれており、核抑止にも適応して考えることができる。ただし抑止の理論的な説明を逸脱するような自暴的な軍事行動を相手国が選択する可能性を否定することはできない。核抑止をより確実に成り立たせるためには核戦力の充実化、政治宣伝または
外交交渉を行う努力を行うことが可能であり、核実験やそれに関連する外交声明によって抑止効果を高めることができる。
核戦略の基本的な考え方については、以下のように分類できる。
核抑止のための核戦略
核兵器を用いて勝利したとしてもその国益は殆ど得られず、かえって被害が拡大するために最終的な勝者が存在しないため、核兵器は核戦争の抑止または核戦争の速やかな終結のためだけに存在するという核戦略。
バーナード・ブロディは1946年の編著『絶対兵器(The Absolute Weapon)』において「今後の軍事機構の主要な目的は、戦争に勝つことではなく、戦争を避けることでなくてはならない」と主張し、戦争抑止のための核戦略構築を提唱した
。
敵国の目的実現拒否のための核戦略
核兵器も政治目標を達成するための兵器であり、通常戦力と同じように敵の核攻撃の被害を最小化し、国民国土を防衛して敵の軍事目標の達成を拒否する核戦略。
限定的・段階的な核攻撃
上記の二者の中間的なものであり、全面核戦争に至らない程度の限定的な地域で、段階的に反応するという核戦略。
柔軟反応戦略
1961年の
柔軟反応戦略 (flexible response strategy)は、
ゲリラ戦から核戦争まであらゆる事態に対して、事態のレベルに応じた軍事力によって抑止する戦略。
アメリカ統合参謀本部議長を務めたマックスウェル・テーラーらが提唱。
ジョン・F・ケネディ政権で採用。
大量報復戦略
大量報復戦略 (massive retaliation strategy)。
1954年のニュールック戦略などを指す。
相互確証破壊(MAD) (詳細は「
相互確証破壊」を参照)
相互確証破壊(Mutual Assured Destruction,MAD、1965年)は最も知られた核抑止理論で、
ロバート・マクナマラによる。元は
確証破壊戦略(Assured Destruction Strategy、1954年)に遡る。
損害限定戦略
1964年には損害限定理論(Damage Limitation)が提唱された。
核先制不使用論
核兵器は破壊力が甚大であるため、先制攻撃が決定的なものとなる。そのため、
先制攻撃を行うのか、いなかという点が、核先制不使用論または核先制使用論として核保有国間で交渉され、思案された
。
en:No first use参照。
戦略防衛構想(SDI)
1983年には
戦略防衛構想(Strategic Defense Initiative, SDI)が提唱された。
核戦略理論の歴史
核兵器は
米国で生まれたため、理論的な先駆者も米国である。ここでは米の核戦略の変遷に照らして、現在に至るまでの核戦略の流れを記述する。
核兵器の登場と「核抑止」という概念の芽生え
核兵器が登場し使用されたのは、
第二次世界大戦の終戦間際である。核兵器はこれまでのいかなる兵器よりも巨大な破壊力を持っており、その破壊力の甚大さは関係者に衝撃を与えた。しかしその一方で、核兵器の登場直後は戦略家たちに理論的な革新は意外なほど見られず、核兵器は単なる「威力の巨大な爆弾」とみなされていた。これについては
・当時はまだ核兵器の信頼性が低いものだった
・運搬手段が
爆撃機しかなく、迎撃される可能性が少なからずあった
などの信頼性の低さが根底にあったとされる。つまり、この時点ではいわゆる核戦略と呼べるものは存在しなかった。
しかし1950年代になると、
ソ連もまた核兵器を保有するようになり、また
弾道ミサイルが開発され、米本土が核の脅威にさらされるに至った。そしてとうとう
核抑止が提唱されるようになった。
核抑止理論の初期段階で中心的な役割を担ったのは、
ランド研究所に所属した
バーナード・ブロディである。彼らはいかに核兵器の使用を防ぐかについて「核兵器をより確実に使用できるようになれば、敵国にとっては核兵器の先制使用によって生ずる利益が小さくなる。よって核兵器は使用されにくくなり、核抑止を実現できる」と考え、理論を構築していった。ブロディらの考えは次第に力を得て、米英にも導入されることとなった。
制限戦争論
これらの理論は依然として荒さが目立ち不完全であり、多くの批判にさらされた。おもな批判者としてはブロディ自身や
キッシンジャーが挙げられる。核兵器の登場は、その威力の大きさから全面戦争を不可能にした。というのは、核兵器を使用する目的とその破壊力があまりにもかけ離れていた。それでは核兵器の時代に通常兵器は不要になるのであろうか? この論争において彼らは、核兵器が存在してもなお
朝鮮戦争や
インドシナ戦争が発生し、また核兵器の存在がそれに対してなんら抑止効果を持たなかったことに注目した。
核兵器はあまりに威力が大きすぎ、キッシンジャーが指摘するところによると、相手国を全面戦争へと巻き込むという脅し以上に使用できないのである。ここに核兵器によって互いの戦力が制限された戦争、すなわち
制限戦争(
限定戦争とも)の概念が生まれた。また、制限戦争下では通常兵器もまた必要であることが示された。
一連の議論によって、核兵器が登場した時代での「通常兵器」「制限戦争」の位置づけが生まれ、核抑止理論も深まりを見せた。
制限戦争論は、政治的交渉を重視した。
ゲーム理論が取り入れられ、戦争中の2国であっても交渉の余地が存在する(双方にとって共通の利益が存在する)ことが示唆された。例えば核兵器を両国が持っていれば、互いの核兵器使用による甚大な破壊を回避することは両国の共通の利益となる。したがって、戦争が制限されることと交渉によって制限が生じることには妥当性がある。通常兵器と外交的交渉の重要性は見直されることとなったのである。
戦術核の理論
制限戦争論に関する議論はさらに続いた。戦術核をこの理論にどう組み込むのかという問題が生じてきたのである。当時は(現在もであるが)戦略核と戦術核の境界は不確定であった。
戦術核の使用を
ロバート・オスグッドなどは唱えたが、核兵器の戦術的使用は全面核戦争へと発展する可能性があり、戦術核は使用されるべきではないとブロディや
リデル・ハートなどは論じた。
この論争は完全な決着がつかなかったものの、通常戦力を補強する「ゲタ」としての戦術核の導入もまた
NATO諸国で進んだ。通常戦力をそろえるより戦術核は安価であり、またNATO諸国は
ワルシャワ条約機構の巨大な陸軍と対峙していたためである。
核戦略議論の全盛期
ケネディ大統領が在職中であったころ、すなわち1960年代は、核理論がもっとも活発に議論された時期であり、多様な分析がなされ、理論が生まれた。地上に配置された
ICBMの脆弱さが核抑止を不安定なものにしているとの指摘がなされ、先制核攻撃からの生存が期待できる
SLBMが開発された。米政権においては
マクナマラ国防長官が制限戦争理論に基づく軍備の整備を進めた。
また抑止理論の心理学的な考察もなされた。
チャールス・オスグッドなどは、政治的な緊張緩和に軍縮が有効であり、これをきっかけとして互いがさらなる緊張緩和や軍縮に進むことができるとして、
段階的相互緊張緩和策を唱えた。これは国際関係において無視されがちな「善意」や「信頼」といったものを平和へとつなげる理論として評価されている。
停滞
1970年代以後、核理論への関心は急速に薄れていく。およそ核戦略と呼べるものが研究され尽くしてしまったということもあるが、なにより国際関係の決定要因としての軍事力が相対的に弱まったのである。制限戦争論では国際関係の中核が交渉となったが、軍事力はその交渉の圧力となりにくくなってきたのである。軍事力は、かつては
エスカレーション理論のもと、現状より強力な武力を用いると脅しをかけることで他国に圧力をかけることができた。しかし本来であれば、両国は戦争の激化を防ぐことにこそ共通の利益を見いだせたはずである。すなわち、戦争の激化を留めることこそが利益となるのに、エスカレートによる脅しをかけるのは論理的に矛盾していることが明らかになったのである。
ベトナム戦争で実証されたように、米国は北ベトナムよりはるかに巨大な力を持っていたにもかかわらず、北ベトナムを屈服させることはできなかった。米国は結局、エスカレーションできなかったのである。
これ以後は軍事力だけでなく、国家を多面的にとらえた
国際関係論が構築されていくこととなる。
冷戦終結後
冷戦の終結によって、米国は唯一の核超大国となった。その一方で、新たに第三世界への
核拡散や、
テロリストに核兵器がわたる危険性などが生じてきた。テロリストなどに対しては、従来型の抑止形態は意味をなさなくなっている。そのため新たな核管理の方法が模索されている。
ミサイル防衛(MD)
近年では、新たな拒否的抑止の手段として
イージス弾道ミサイル防衛システムや
パトリオットミサイルなどで多重化された
ミサイル防衛(MD)配備されている。MDは従来からあった拒否的抑止理論に一石を投じるものとして注目される。
次世代兵器
政治的リスクが高く削減圧力が強い核兵器に代わり、
極超音速ミサイルや
対艦弾道ミサイルなど
通常弾頭を使用するが高速なためミサイル防衛網でも対処が難しい兵器システムの開発が進んでいる