イスラエルとパレスチナ問題-1


2023.10.30-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231030-HMURZNBJI5KZ5N5TIUCCXLGOMI/
イスラエル首相に強い反感、攻撃と交渉で割れる世論
(テルアビブ 佐藤貴生)

  イスラム原理主義組織ハマスとの戦争が「第2段階」に入ったと宣言したイスラエルのネタニヤフ首相の手腕に、国民の注目が集まっている。ネタニヤフ氏は治安維持に定評があっただけに、ハマスの越境攻撃を許したことへの反感は極めて強い地上作戦の成否はネタニヤフ氏の政治生命をも左右しそうだ

  米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、ネタニヤフ氏は28日夜、ハマスの攻撃以来、初めて記者団の質問に応じた。大きな被害が出たことの責任について問われ、「私の今の最重要任務は国を守り、兵士を完全な勝利へと導くことだ」と明言を避けた。
  ネタニヤフ氏は28日夜、「ハマスの戦闘の意思に関する警告は全くなかった」とX(旧ツイッター)に投稿し、責任は軍や治安機関シンベトにあると示唆。しかし、戦時内閣の身内からも反発が出て、コメントの削除と謝罪に追い込まれた
  治安当局はハマスによる攻撃の時期を察知できなかったが、ネタニヤフ氏は警告を受けていたとの観測はある。英BBC放送(電子版)によると、ハマスが攻撃を始める3日前、エジプトから越境テロの計画があるとの情報が寄せられたが、ネタニヤフ氏は「完全な噓だ」と一蹴したという。
  ネタニヤフ政権は今年、国会に対する最高裁の監視権限の縮小を進め、これに対する抗議として一部の予備役が服務を拒否した。ハマスの後ろ盾とされるイランなどがこの状況を「歴史的な好機」とみているとして、軍の情報当局がネタニヤフ氏に警告していたとも報じられた。
  22日付の有力紙ハーレツは「彼は恐ろしい失敗の主犯であるのみならず、イスラエルにとって実在する脅威だ」とこき下ろす論評を掲載した。
  ネタニヤフ氏は28日、ハマスの人質になった人々の家族と面会し、「全員の解放に向けてできることは全てやる」と約束した。家族の間ではガザの地上作戦を回避し、ハマスが人質解放の条件とするパレスチナ人服役囚の釈放に応じるべきだとの意見も多い
  その半面、街中ではハマス壊滅に向けて徹底的に攻撃すべきだとの意見も多く聞かれ、ネタニヤフ氏は困難な戦闘指揮を迫られている。(テルアビブ 佐藤貴生)


2023.10.30-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231030-GMNV4ZODTBICVFFCDKBBCHXMIU/
米、イスラエルに民間人保護の必要性を伝達 自衛権を改めて支持

  【ワシントン=坂本一之、テルアビブ=佐藤貴生】バイデン米大統領は29日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し、同国が地上作戦を継続するパレスチナ自治区ガザの情勢に関して協議した。ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスから市民を守る自衛権を支持するとともに、「民間人の保護を優先する国際人道法に合致」する対応の必要性を伝えた。

  両氏は、ハマスに連れ去られた人々の拘束場所の特定や解放に向けた取り組みについて協議。バイデン氏は、ガザで必要な人道支援の物資供給を迅速かつ大幅に増やす必要性も指摘した。イスラエルの軍事作戦の影響で民間人被害が広がらないよう連携を求めた。また、首脳間を含め両政府で定期的に協議を継続することを確認した。
  バイデン氏は同日、ガザと接するエジプトのシーシー大統領とも電話会談し、ガザ市民への支援を強化していくことで一致。バイデン氏は、人質解放やイスラエルとハマスの戦闘が広域紛争に拡大することを阻止する米側の取り組みを説明した。
  サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はCNNテレビの番組で、ガザでの戦闘に関し「ハマスが市民を『人間の盾』にしている」と非難した上で、イスラエルは「合法的な軍事目標のテロリストと民間人を区別するようあらゆる手段を尽くすべきだ」と強調した。
  ガザではイスラエル軍の包囲と攻撃の激化で食料や水、燃料や医薬品の不足が深刻化している。パレスチナ赤新月社は29日、ガザに支援物資を積んだトラック10台がエジプトから入ったと述べた。人道危機回避のための物資搬入は21日に始まり、これまでに94台が物資を運んだが、戦闘前は1日に500台が入っていたとされる。
  イスラエル中部には29日、多数のロケット弾が発射された。ハマスはガザ北東部でイスラエル軍と衝突し戦車2台に火を放ったとした。パレスチナ赤新月社は、イスラエル軍がガザ北部にあるアルクッズ病院周辺に空爆を続けたと発表した。イスラエルは赤新月社に病院から退避するよう要求している。


2023.10.28-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/world/20231028-OYT1T50064/
イスラエル軍「ガザで地上作戦を拡大する」、3夜連続で戦車展開…双方の死者8700人超に

  【エルサレム=西田道成】イスラエル軍報道官は27日、イスラム主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザに対し「地上作戦を拡大する」と表明した。イスラエル軍は同日夜、3夜連続で戦車などをガザ領内に入れる地上作戦を展開し、空爆も強化している。ハマスの壊滅を目的とする本格的な地上侵攻に向け、作戦を強化した可能性がある。

  米メディアなどによると、イスラエル軍の戦車や地上部隊が27日夜、ガザ領内に入った。ハマスはこの作戦によって、ガザ北部でイスラエル軍と戦闘になっていると明かした。
  イスラエル軍はこれまでも地上侵攻の準備や人質の居場所についての情報収集を目的として、限定的な地上作戦を実施してきた。イスラエル軍報道官は米ABCニュースに対し、「地上での最適な作戦条件を整えるため、掃討作戦を行っている」と述べた。
  ガザでは空爆も激化している。イスラエル軍報道官は27日夜、ハマスの地下施設やインフラへの空爆を「この数時間で強化した」と明らかにした。英BBCの27日夜のガザの中継映像では、 閃光 とともに大きな爆発が起こり、建物が黒煙を上げる様子が映し出された。パレスチナの通信会社は27日、空爆の激化で、ガザ内の電話やインターネット通信が「完全に途絶えた」と発表した。
  ガザ保健当局によると、7日以降のガザの死者は7326人に達した。イスラエル側は1400人超で、双方の死者は8700人を超えた
  約140万人が避難民となっているガザでは27日、支援物資を積んだトラック10台と医療チームが、エジプトとの境界の「ラファ検問所」から領内に入った。21日に同検問所が開通して以降、ガザに入ったトラックは計84台となった。イスラエルは、ハマスが利用する可能性があるとして燃料の搬入は認めておらず、運ばれる物資は水や食料、医薬品に限られている。
  一方、米紙ワシントン・ポストは27日、バイデン米政権がイスラエルに対し、ガザでの大規模な地上侵攻の作戦計画を見直し、ハマスの軍事インフラなど重要拠点に標的を絞るよう求めていると報じた。
  米側は多数の民間人被害が出ることを懸念し、特殊作戦部隊も動員して狙い撃ちするよう助言したという。


2023.10.26-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231026-YTF7BNWY4VPA5PTLVTIHNB2MBY/
イスラエル地上部隊がガザに進軍 「次の段階の準備」 戦車が砲撃

  【テルアビブ=佐藤貴生】イスラエル軍は26日、イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ北部に地上部隊が進軍し、ハマスの軍事拠点を破壊したと発表した。軍によると戦闘が始まった7日以降で最大規模。「次の戦闘段階への準備」とした。本格的な地上作戦が念頭にあるとみられる。

  攻撃は夜間に行われ、軍は戦車などが砲撃する様子を映した動画を公開した。ネタニヤフ首相は25日、具体的な日時には言及せず「地上作戦に向けた準備を進めている」と述べていた。
  米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は25日、米国がイスラエルに地上作戦の開始を遅らせるよう求め、同意を得たと報じた。中東地域に駐留する米軍を守るため、防空システムを配備するためだという。防空システムは今週中にも配備される見通しだ。


2023.10.25-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231025-UYVJDFDPDZMXLJELVYP6P3OZTM/
ガザ地上作戦「先送り」報道も 人質交渉を優先

  【テルアビブ=佐藤貴生】パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスは23日、ガザに連行したイスラエル人女性2人を解放したと明らかにした。健康上の理由としている。20日の米国人母娘2人と合わせ、解放された人質は計4人となった。ハマスはさらなる人質の解放を示唆し、イスラエル軍がガザへの地上作戦の準備を進める中で駆け引きが活発化している。

  米ニュースサイト、アクシオスは24日、人質解放交渉を進めるために、イスラエルが地上作戦の開始を数日間遅らせる意向だと報じた。
  フランスのマクロン大統領は24日、イスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相と会談した。その後、記者団に対し、テロとの戦いに「容赦はいらないがルールは必要だ」と述べた。23日に解放されたのは民間人の85歳と79歳の女性。ハマスによると、エジプトとカタールが仲介した。イスラエル軍は今回の解放に先立ち、人質は222人としていた。
  米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、50人の人質解放に向けて交渉が行われたが、ハマスが要求したガザへの燃料搬入をイスラエル側が拒否したために協議は難航しているという。
  イスラエル軍は24日、ハマス戦闘員が使う地下トンネルなどガザの400カ所以上を爆撃したと表明。ガザ保健当局によると23日夜、北部のアルシャティ難民キャンプが空爆され女性や子供など多数が死傷したもよう。
  ガザでは23日、エジプトから支援物資を積んだトラック20台が入り3日連続で搬入を行った。イスラエルでは1400人以上、ガザでは2360人の子供を含む5791人が死亡し、死者数は計7100人超となった。


2023.10.24-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231024-NVYEKT5ETRJUJCI72OJA5OEYZE/
活発化する親イラン勢力「抵抗の枢軸」 戦局左右する不安定要素
(テルアビブ 佐藤貴生)

  イスラム原理主義組織ハマスとイスラエル軍の大規模戦闘に伴いイランと連携する各地の民兵組織が「抵抗の枢軸」と称して連携を誇示し、イスラエルや駐留米軍基地への攻撃を活発化している。イスラエル軍がガザでの地上作戦に着手すれば複数の前線で戦いが激化するだけでなく、中東各地に戦闘が拡大する恐れも強まってきた

ベイルートで謀議
  「枢軸」形成の主役は、イラン革命防衛隊で対外軍事・諜報部門を担う精鋭「コッズ部隊」のガアニ司令官とみられる。20日付英紙テレグラフ(電子版)はイスラエルの特務機関モサドの元高官の話として、ガアニ氏はレバノンの首都ベイルートに設置した「作戦室」で、民兵組織と協議を重ねてきたと伝えた。
  参加したのはハマスのほか、ガザを拠点としハマスと共闘する過激組織「イスラム聖戦」、それにレバノンの民兵組織「ヒズボラ」。シリアに軍事拠点を築くイラン革命防衛隊も加わった形跡がある。元高官は「調和を図るようなものではなく、より公式で戦略的」な連携を協議したとみている。
3正面で対処
  ヒズボラは7日の戦闘開始以来、イスラエル・レバノン国境でイスラエル軍と交戦を続け、ロイター通信は23日までにヒズボラ戦闘員27人、イスラエル軍兵士7人が死亡したと伝えた。双方が軍事衝突した2006年以来最大規模のレベルだ。イランが年間数億ドルを投じて支援してきたとされるヒズボラは、ハマスを上回る戦闘能力があるといわれる。
  一方、イラン革命防衛隊が活動するシリアからは10日以降、イスラエルに砲撃が行われ、イスラエル軍が首都ダマスカスや北部アレッポにミサイルを発射して応戦しているもようだ。
  イスラエル軍は22日には、ヨルダン川西岸にあるモスク(イスラム教礼拝所)階下がハマスなどの戦闘員の拠点になっているとして空爆した。西岸の空爆は06年以来ともいわれる。
  戦線はイスラエルからみて西のガザから北のレバノン・シリア、東の西岸へと拡大し、イスラエルはすでに3正面に対処している。
イランも掌握せず
  今後の戦闘のカギを握るのがイランだ。アブドラヒアン外相は15日、イスラエル軍のガザ攻撃が続くようなら「傍観者でいられなくなる」と参戦を示唆。一方でロイター通信は22日、ヒズボラなどの対イスラエル攻撃は限定的なもので、事態の悪化を避ける戦略だというイラン治安当局高官の話を伝えた。
  異なるメッセージを発して米国やイスラエルを揺さぶる狙いもうかがえる。ただ、イランが「枢軸」を構成する民兵組織の動向を詳細に把握しているかは不透明だ。イランがハマスを支援してきたとの見方は根強いが、ハマスが7日に対イスラエル攻撃を始めた際、イラン指導部が「驚いた」との情報を米政府が得ていたとの報道もある。
  19日には米海軍のミサイル駆逐艦がイエメンの親イラン民兵組織「フーシ派」が発射したミサイルや無人機を紅海上で撃墜した。米軍などが駐留するイラクの軍事基地にも、親イラン民兵組織によるとみられる無人機攻撃が相次いでいる。各地に軍事攻撃が飛び火するなかでイスラエルがガザへの地上作戦を実行すれば、「枢軸」の民兵組織がイランにとっても想定外の動きに出る可能性は否定できないようにみえる。今後の戦局の不安定材料となりそうだ。
(テルアビブ 佐藤貴生)


2023.10.24-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20231024/k00/00m/030/008000c
ハマスが新たに人質解放と発表 イスラエル人女性2人か
【カイロ金子淳】

  イスラエルと戦闘を続けるパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスは23日、新たに人質2人を解放したと明らかにした。「人道的理由」だと説明している。
  ハマスの声明などによると、解放したとされるのは、イスラエル人女性2人とみられる。交渉はエジプトとカタールが仲介したという。

  この2人の解放を巡っては、ハマスが21日に「イスラエルが拒否した」と主張。これに対しイスラエルは「ハマスのプロパガンダだ」と否定していた。
   ハマスは20日にも米国籍の人質2人を解放している。【カイロ金子淳】


2023.10.23-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231023-VNP4TPKLNBDPVOHZKGF6QSDOKQ/
ガザ地区の人口過密は世界有数、東京や大阪の都市部に匹敵 3D地図で見る人口分布
(データアナリスト 西山諒)

  イスラエル軍とイスラム原理主義組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区のガザ地区は、東京や大阪の都市部に匹敵する世界有数の人口過密地域だ。現在、多くの住民が狭い地区内に閉じ込められる形で人道危機に直面している。パレスチナ自治区(ガザ地区とヨルダン川西岸地区)の人口分布を動く3D地図で可視化すると、ガザ北部の住民が南部へ避難することの困難さが浮き彫りになった。またガザの人口密度や年齢構成を、日本や国内の都市と比較し、人道危機の背景を探った。

日本一の豊島区より過密な地域も
  ガザ地区は地中海沿岸に細長く横たわり、長さ約40キロ、幅6~12キロ、面積365平方キロのエリアに約220万人が暮らしている。外務省のパレスチナ自治区の基礎データでは、ガザ地区の面積は福岡市よりやや小さいと表現されている。細長い外形は日本の種子島(444平方キロ)に似ているとも言われるが、面積はガザの方が小さい。
  ガザ地区の人口密度は1平方キロあたり6018人で、東京都全体の6425人に迫る。なかでも北部の中心都市、ガザ市の人口密度は1万人を超え、日本の自治体では川崎市や大阪府吹田市といった大都市の衛星都市と同規模だ。
  またWorldpopのデータによると、ガザ地区の中には人口密度が1平方キロあたり3万人を超える場所も多数ある。人口密度が日本一高い自治体の東京都豊島区(2万3479人)と比べても、局所的とはいえガザ地区の過密ぶりがよく分かる
  記事の冒頭に掲載した3D地図「ガザ地区と東京都の人口密度の比較」を見ると、ガザでは北部を中心に、東京23区内よりも山が高く赤色が濃い部分が多数みられる。こうした超過密地域の住民が一斉に避難することは、移動手段と受け入れ先確保の両面で困難と言わざるをえない。

  イスラエル軍は今月13日までに、ガザ北部の全住民約110万人に避難するよう通告を出し、同軍の報道官によると約70万人が南部へ移動した。70万人は、日本では県庁所在地の岡山市や静岡市の人口に近い。また国連は、ガザ地区全体で約140万人が自宅を追われたと推計している。その規模は、ガザ地区と面積が近い福岡市の全市民160万人に匹敵する。
子供が圧倒的に多い人口構成
  ガザ地区での被害や人道危機は、人口の多さや人口密度の高さに加えて、年齢構成も事態を深刻化させる要因になっている。
  パレスチナ自治区は子供や若者の比率が高く、住民の半数近くが20歳未満だ。人口ピラミッドは、1950年頃の日本と同様に、年齢が低いほど人口が多い「富士山型」になっている。このためイスラエル軍の攻撃では子供が被害を受けやすい状況にある。ガザの保健当局は22日、死者4651人のうち4割にあたる1873人が子供だったと発表した。日本の現在の人口構成は約半数が50歳以上で、人口ピラミッドは「つぼ型」になっており、パレスチナ自治区とは大きく異なる
  イスラエル軍は戦車など軍用車両によるガザ包囲を強めており、地上作戦が現実味を帯びている。10月7日に始まった大規模戦闘での死者は、双方合わせて6000人を超え、緊張緩和の兆しはない。国際社会は「人道回廊」の設置を目指し、21~22日にはガザ地区への物資搬入が行われたが、隣国エジプトはガザ住民の避難受け入れを拒否しており、厳しい人道危機が続いている(データアナリスト 西山諒)


2023.10.22-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20231022-75JBRMH77BMLBPERF2ZFIY6MSI/
イスラエル軍「攻撃強化」 ハマス、人質解放準備主張

  自治区ガザ北部のイスラム組織ハマス拠点への攻撃を強化すると発表した。「戦争の次の段階に備えるためだ」とした。イスラエルメディアによると、軍の航空機はガザ北部の住民に避難を求めるビラをまき、避難しない場合はテロ組織の仲間だとみなす可能性があると警告した。

  ハマスは21日、拘束する人質のうち、女性2人を人道上の理由で解放すると仲介役のカタールに伝えたが、イスラエル政府が受け入れを拒否したと通信アプリで発表した。20日に米国人2人を解放したのと同じ手順で22日に解放する準備ができていると主張した。イスラエル首相府は「虚偽のプロパガンダだ」とし、関与しないと反発した。
  イスラエルの政府や軍の高官からはガザへの地上侵攻を見据えた発言が連日、相次いでいる。ハレビ参謀総長も21日、軍幹部らに「われわれはガザに入る。ガザは複雑で人口密集地だ。敵は準備しているが、われわれも備えている」と語った。(共同)


2023.10.20-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231020-25NLRNZROBOGDJDKHDSO26BWSU/
米駆逐艦、紅海でミサイル撃墜 イエメンから発射、イスラエル標的か

  【ワシントン=大内清】米国防総省のライダー報道官は19日、紅海北部で米海軍のミサイル駆逐艦が同日、イランの支援を受けるイエメンのイスラム教シーア派系民兵組織フーシ派が発射した巡航ミサイル3発とドローン数機を撃墜したと明らかにした。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスと交戦するイスラエルに向けて発射された可能性があるとしている。

  またライダー氏は、17日から18日にかけ、スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討のため米軍などの有志連合が駐留するシリア国内の拠点やイラク西部の空軍基地にドローンによる攻撃があり、有志連合部隊に軽傷者が出たとも述べた。現時点でハマスとイスラエルの大規模戦闘との「直接的なつながりを示す情報はない」としつつも、「脅威に対しては必要なあらゆる措置をとる」と語った。
  イエメンやイラク、シリアは、イスラエルと敵対する地域大国イランが強い影響力を持つ。ハマスを後押しするイランのアブドラヒアン外相は最近、イスラエルによるガザ攻撃が継続されれば「イランは傍観者ではいられなくなる」と介入の可能性を警告していた。
  イランは、反米・反イスラエルを掲げる各地の武装勢力などからなる「抵抗の枢軸」の盟主も自任する。これに対しバイデン政権は、ガザ周辺で続くハマスとイスラエルの大規模戦闘にイランやその代理勢力が参戦し、紛争が広域化する事態を懸念。空母2隻の東地中海への配備を決めるなど域内での抑止力強化を進めている


2023.10.20-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20231020-25NLRNZROBOGDJDKHDSO26BWSU/
米駆逐艦がミサイル迎撃 中東展開中、ドローンも

  米国防総省のライダー報道官は19日の記者会見で、中東に展開中の米海軍のミサイル駆逐艦カーニーが、紅海北方で、巡航ミサイル3発と複数の無人機(ドローン)を迎撃したと明らかにした。イエメンの親イラン武装組織フーシ派から発射され、北に向かっていたという

  ライダー氏は「攻撃目標は不明だが、イスラエルへの攻撃だった可能性がある」と話した。攻撃によるけが人は確認されていない。
  バイデン政権はイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が地域紛争に拡大しないよう東地中海に空母を展開している。イランやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラといったイスラエルの敵対勢力への抑止力を高めている
  ライダー氏はシリアでも現地時間の18日に米軍に対しドローンによる攻撃があったとした。一方、これらのミサイルやドローンによる攻撃と、イスラエルとハマスの戦闘との関連について「現時点では直接の結びつきを示すものはない」と述べた。(共同)


2023.10.19-
ガザの病院爆発、多くの民間人はなぜ犠牲に…真偽不明のまま国際的な人道非難強まる

  【エルサレム=笹子美奈子】イスラム主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザのアル・アハリ病院で17日に起きた爆発ハマス側とイスラエル軍双方が関与を否定した。多くの民間人はなぜ犠牲となったのか。真偽不明のまま、拡大する住民被害にイスラエル非難が過熱している。

  イスラエル軍は、ハマスと連携して戦闘に加わるガザの武装組織イスラム聖戦のロケット弾発射失敗が爆発原因と主張した。記者会見では、無人機で収集した画像やハマスの交信記録とされる音声などを根拠に、「イスラエルによる空爆」とするハマスなどの訴えに反論した。
  爆発があった時間帯には、イスラム聖戦がロケット弾10発を発射したと指摘した。7日の戦闘開始以降、武装勢力による450発のロケット弾がガザ域内に着弾しており、今回もその一つだと主張した。着弾痕の形状から、爆発は空爆ではなく、地対空砲によると分析し、着弾場所は駐車場などだったとも指摘した。爆発の時間帯に「(空爆などを含む)作戦」を実施していたことは認めた。
  ロイター通信によるとイスラム聖戦は、爆発があった時間帯にガザ市内でどんな作戦にも従事しておらず、「爆弾の侵入角度と規模から、イスラエル軍のこれまでの空爆と酷似する」と訴えて、イスラエル軍の主張を否定した。
  英BBCは、爆発時にイスラエル軍の戦闘機2機を目撃したという住民の証言を伝えた。ハマスは、病院の地下などに潜伏しているとされ、イスラエル軍は、これまでの空爆で病院付近も標的にしてきた。BBCによると、アル・アハリ病院も14日に空爆があった。
  住民被害が広がる中、イスラエルに対する国際的な非難は強まっている。
  イスラエル軍が戦闘開始以降、空爆を続ける一方、ガザへの水や電力、食料の供給を停止し、人道支援を妨げているためだ。シャルル・ミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)は17日、「電気や食料、燃料を完全遮断する行為は国際人道法に従ったものでない」と述べ、イスラエルを支持してきたEU首脳として初めて批判した。
  世界保健機関(WHO)は17日、ガザの保健施設に115回の攻撃があり、そのほとんどが機能停止に陥ったと発表した。
  国連人口基金(UNFPA)はガザに約5万人の妊婦がおり、約5000人が出産間近だとして、出産危機に直面していると訴えている。

 イスラム聖戦 =イスラエルの打倒とパレスチナでのイスラム国家の樹立を目指してガザで1979年に設立された。80年代以降、イスラエルへの攻撃を仕掛けている。米中央情報局(CIA)によると、戦闘員は1000人程度で、ハマスと共闘する


2023.10.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231019-VB2WNV5ULJLFDK75H4ZWUERK6I/
イスラエルから邦人退避の自衛隊機で韓国人も輸送へ 政府調整、搭乗者に費用は求めず

  政府は、自衛隊機によるイスラエルからの邦人退避を巡り現地の韓国人も輸送対象とする方向で調整を始めた自衛隊機は既に隣国ヨルダンなどに到着、輸送実施に向け出国希望調査を進めている。韓国政府が自国民を輸送機で退避させる際に日本人とその家族計51人も搭乗させた対応を踏まえた。政府関係者が18日、明らかにした。

  関係者によると、邦人への調査の結果、輸送人数に余裕が出れば、韓国側に搭乗希望の有無を問い合わせる韓国人以外の外国人も対象とする可能性もある。邦人も含めて費用負担は求めない。
  防衛省は退避活動に備えるため、航空自衛隊機3機を派遣。2機はヨルダン、1機は自衛隊の拠点があるアフリカ東部ジブチで待機している。


2023.10.18-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231018-6FWIEBH4X5OTDHQ3AKYID773RU/
ガザ病院爆発、死亡は471人と保健当局 バイデン氏はイスラエル首相と会談、連帯強調

  【テルアビブ=佐藤貴生、ワシントン=大内清】バイデン米大統領は18日、イスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相と会談した。バイデン氏は「イスラエルが自衛のために必要なものは全て提供する」と述べ、パレスチナ自治区ガザ周辺でイスラム原理主義組織ハマスと交戦するイスラエルとの連帯を強調した。

  一方、ガザ地区北部の病院で17日夜に爆発があり、現地の保健当局によると471人が死亡した。ガザを実効支配するハマス側はイスラエル軍による空爆だと主張。イスラエル軍は関与を否定し、ハマスと共闘する親イラン民兵組織が爆発を引き起こしたと主張するなど情報が錯綜(さくそう)している。
  ネタニヤフ氏は会談で、米国の「明確な支援」に謝意を示した。イスラエルがガザでの地上作戦の準備を進める中、双方は民間人の犠牲を抑える方策についても協議。ネタニヤフ氏は市民保護に努める姿勢を示しつつ「ハマスの戦術により困難になっている」と釈明した。バイデン氏はガザの病院爆発について、イスラエル以外の勢力によるものとの見方を示し、関与を否定するイスラエルに同調した
  一方、アラブ諸国などでは病院爆発を受けてイスラエルへの反発が広がり、米政権は一層厳しい対応を迫られている。
  米ホワイトハウスは、バイデン氏が18日にヨルダンの首都アンマンで予定していたアブドラ国王やエジプトのシーシー大統領、パレスチナ自治政府のアッバス議長との会談を延期したと発表。アッバス氏がガザの病院爆発を受けてバイデン氏との会談を拒否したことから、アンマンへの訪問自体をキャンセルした。
  爆発が起きたのは、ガザ市のアルアハリ・アラブ病院。当時、院内には患者の他に数千人の住民が避難していたという。パレスチナの当局はイスラエル軍による「大虐殺」と非難した。イスラエル軍は、ガザの民兵組織「イスラム聖戦」がロケット弾の発射に失敗して爆発を引き起こしたと主張している。
  イスラエル軍は17日、ハマス軍事部門のアイマン・ノファル最高司令官を爆殺したと主張する映像を公開した。
  ガザの保健当局によると、今月7日以降のガザの死者は3478人。イスラエルでは1400人以上が死亡し、死者数は計4800人を超えた。


2023.10.17-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231017-5WHA73CZXNOUNMIS7HVU6XD4AQ/
ガザ封鎖続く 国連「水供給、住民の14%しか…」

  【テルアビブ=佐藤貴生】イスラエル軍とイスラム原理主義組織ハマスの大規模戦闘で、パレスチナ自治区ガザでは17日、避難民に支援物資を搬入できない状態が続いた。ガザ南部からエジプトに通じるラファ検問所の開門をめぐり、交渉が不調に終わったため。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は「ガザ住民の14%しか水配給を受けられずにいる」警鐘を鳴らした

  UNRWAは、避難民が集まるガザ南部への空爆をイスラエル軍が続けていると指摘した。16日夜~17日朝、南部ハンユニスやラファでは空爆で少なくとも49人が死亡したという報道もある。
  ガザに人道物資を搬入する「人道回廊」の開設について、エジプトのシュクリ外相は16日、イスラエルとの交渉が不調に終わったと述べた。ブリンケン米国務長官は近く回廊ができるとの見通しを述べていた。
  一方、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは16日、イスラエル北部の5カ所を標的に攻撃した。北部での衝突が相次いでおり、イスラエル軍は17日、レバノンからイスラエルに侵入しようとした4人を殺害したと発表した。ロイター通信によると、ヒズボラに影響力を持つイランの最高指導者ハメネイ師は17日、「ガザで起きていることに反応しなければならない」と述べ、対イスラエル攻撃をあおった。
  17日までに大規模戦闘による死者はイスラエルで1400人、ガザで2800人を超え、双方で計4200人以上になった。


2023.10.17-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20231017-QOB6N3HCRRKBBCIOAVWOOYJYYE/
ガザ支援物資搬入できず イスラエル軍、南部を空爆

  イスラエル軍とイスラム組織ハマスの大規模戦闘を巡り、人道危機が深まるパレスチナ自治区ガザ南部のエジプト境界にあるラファ検問所は17日午前も再開せず、支援物資を搬入できない状態が続いた軍はガザ北部の住民に南部へ避難するよう通告しているが、中東メディアによると、16日夜~17日未明にラファなど南部に軍の空爆があり、女性や子どもを含む70人以上が死亡した。

  ロイター通信によると、ラファ検問所のエジプト側ではガザへの支援物資を積んだトラック約160台が待機。支援物資は計数百トンとみられる。
  イスラエルのネタニヤフ首相は16日の国会演説でハマス掃討への決意を示す一方「勝利には時間がかかり困難な瞬間もあるだろう」と述べ、長期化の可能性を示唆。同国メディアによると、国内治安機関シャバクのバー長官は16日、ハマスの奇襲攻撃を防ぐような警告を発せなかったことは「私の責任」と認めた。(共同)


2023.10.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231015-A27RFXZX3ZOTZA4EYKSRSPMZYU/
イスラエル首相「次の段階は近い」 地上侵攻の観測

  【テルアビブ=佐藤貴生】パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスと大規模戦闘中イスラエル軍は14日、兵力を全土に展開「地上侵攻を含む次の段階への準備を強化している」との声明を出した。地上侵攻が近いとの観測が増え、緊張の度が高まっている

  ネタニヤフ首相は14日、ガザの近くに配置された歩兵部隊を訪問し、「次の段階が近づいている」と兵士を激励した。パレスチナ側によると、ガザでは15日早朝までの24時間に300人が死亡、800人が負傷し、イスラエル軍の激しい空爆が続いている。
  ロイター通信によるとイスラエル高官は15日、イランが友好国シリア経由で、イスラエル攻撃の「第2戦線」を開こうとしていると非難した。ハマスの指導者ハニヤ氏は14日、カタールでイランのアブドラヒアン外相と会談し、相互協力の継続で合意した。
  イスラエル軍は国連を通じ、ガザ北部の住民に南部に移動するよう通告した。ハマスは危険だとして住民に移動しないよう要求。ハニヤ氏は「私たちの土地にとどまる」と述べて抗戦する意思を示した。
  ロイターによると、イスラエルではこれまで約1300人、ガザでは2329人以上が死亡し、死者数は計3600人超に達した。
  イスラエル軍は14日、ハマスにイスラエルで拘束され、ガザに連行された人質は126人だと確認した。イスラエル国内では人質救出を最優先すべきだという市民の声も出ている。


2023.10.14-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231014-TCMHNHJSIZPRDJFGD2W23345YU/
「テロリストが来た」「助けて」…ハマスの人質、被害者家族が語る襲撃の瞬間 携帯メッセージで明らかに
(テルアビブ 佐藤貴生)

  パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの戦闘員はイスラエルに侵入して約150人をガザに連行した。イスラエル西部テルアビブで13日、被害者家族の会が開かれ、参加者が肉親に何が起きたかを産経新聞に語った。ハマスが襲撃を周到に計画していた実態が浮き彫りになった。

軍服も調達か
  ハマスがロケット弾の大量発射を開始したのは7日午前6時半。テルアビブ近郊に住む女性ボランティアのイエラ・ダビッドさん(18)は空襲警報が鳴ったのを聞き、即座に食堂経営の兄エビアタルさん(22)の携帯電話に消息確認のメッセージを送った。
  兄はガザ近くで開かれた野外コンサートを訪れていた。返信が来たのは午前7時45分ごろ。「ミサイルや爆弾が撃ち込まれた。イスラエル軍の軍服を着た連中が来て、逃げ惑う人々にその場で立ち止まれと命じた」とあり、戦闘員が変装していたことをうかがわせた。
  その後は連絡が途絶えたため、イエラさんは兄の写真を交流サイト(SNS)に公表して情報を求めた。間もなく後ろ手に手錠をかけられ、戦闘員に連行される兄の動画が投稿されたことが判明した。
消息の情報なく
  ハマス戦闘員が襲ったイスラエル南部のナハルオズ・キブツ(集団農場)の惨状も、複数の人が証言した。
  「隠れたよ。怖い」。テルアビブ近郊の女性デザイナー、ドリート・レビさん(51)が同キブツで暮らす母シフラさん(70)から携帯電話でメッセージを受け取ったのは午前8時26分。ドリートさんは9時16分に「大丈夫なの?」と返信したが、返事はなかった。その後の消息は確認できない。
  母親の姿をあしらったTシャツを着て会場を訪れたドリートさんは、「政府からの情報提供は皆無」と話した。同キブツで暮らす父は殺害されたと知人から聞いた。
動画に姉が
  「テロリストが部屋に来た。警察を呼んで。助けて」。テルアビブ近郊のケレンさん(47)の携帯電話に姉(53)からメッセージが入ったのは9時20分ごろだった。姉は同キブツにいる知人を訪ねて襲撃に遭った。ハマスが公表した動画に、ひざまずき、戦闘員に許しを乞う姉の顔が映っていた。
  元警察幹部のダニー・エルガルトさん(63)は午前11時過ぎ、同キブツに住む兄イツハクさん(69)から電話連絡を受けた。「腕を負傷した。血が止まらない。私はもう終わりだ」 数時間後、キブツの住人が兄の部屋を訪れたら血まみれだった。軍は兄の携帯電話の位置情報から、ガザに連行された可能性があるとダニーさんに連絡してきた。
政府批判も
  被害者の家族らは外国人記者である筆者を見つけると、進んで取材に応じた。ハマスの行為を世界に知らせてほしいという強い意志が感じられた。家族らは、「地上侵攻するか否かに関わらず、イスラエル軍は人質の人命を尊重するだろう」「ハマスは今後の交渉のためにも、人質の人命を重視するはずだ」と期待を寄せた。
  一方で動揺を隠しきれない人もいた。兄の妻と子供4人を連れ去られたという男性(43)は会場で、「イスラエルは人質解放に向け、ハマスの要求に応じて可能な限り多数のパレスチナ人を獄中から釈放すべきだ」と、大声で叫んだ。男性はその後、産経新聞の取材に応じ、「政治家は(ハマスを)完全に壊滅できない戦争を、どう見せるかに執着している。人質を見捨てることは許されない」と訴えた。(テルアビブ 佐藤貴生)


2023.10.13-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/05380d1266e1c3d547b638a6eaa369cffe8c5280
イスラエル、北部でヒズボラとも散発的に衝突…戦闘本格化すれば「際限のない紛争になりかねない」
【カイロ=田尾茂樹、エルサレム=福島利之】【カイロ=西田道成】

(1)
  【カイロ=田尾茂樹、エルサレム=福島利之】イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスと戦闘を続ける中、隣国レバノン南部を拠点とするヒズボラとの衝突も国境地帯で散発しているヒズボラが本格参戦すれば、イスラエルは南北二正面の戦いを強いられ、周辺国を巻き込んだ紛争に発展する恐れがある。

  イスラエル北部では11日、軍駐屯地がヒズボラのミサイル攻撃を受け、イスラエル軍が空爆で対抗した。9日には砲撃の応酬などでヒズボラの戦闘員3人、イスラエル兵1人が死亡した。ヒズボラの攻撃は8日から相次ぎ、イスラエル軍は北部の部隊を増強している。
  レバノン南部は、イスラエルと敵対するイランの支援を受け、反イスラエル闘争を展開してきたヒズボラが実効支配する。ヒズボラは、ハマスがイスラエルへの攻撃を始めた7日に出した声明で、攻撃は「イスラエルによる長年の占領への断固たる対応だ」とたたえ、ハマスに連帯する姿勢を強調した。
  イスラエルとヒズボラの衝突は小規模にとどまるが、ヒズボラはハマスを上回る軍事力を持つとされる。ヒズボラは効果的な参戦時期を探っているとも言われる。今後、ガザへのイスラエルの地上侵攻で市民の被害が深刻化し、国際社会で反イスラエル感情が高まれば、本格攻撃を仕掛けるとの見方がある。
  ヒズボラの判断に影響を与えるのは、後ろ盾となっているイランだ。イランは、ハマスの攻撃への関与についても疑惑がくすぶる。ヒズボラはハマス以上にイランとの関係が深く、エジプトのイスラム組織研究者タリク・シャビシ氏は「ヒズボラの判断はイランの決定次第だ。ヒズボラが参戦すれば、中東全域が絡む際限のない紛争になりかねない」と指摘する。
  ヒズボラは2006年のレバノン紛争でイスラエル軍と大規模戦闘を繰り広げた。シリア内戦で政権側につき、実戦経験を積み重ねてさらに強大化したとされる。イスラエルにとっては「イランと並ぶ脅威」(タミール・ハイマン国家安全保障研究所長)となっている。戦線拡大はイランとの緊張を高めることになり、何としても避けたい展開だ。
(2)
  米国も紛争の拡大を懸念し、イスラエル近海に原子力空母「ジェラルド・フォード」を中心とする空母打撃群を派遣した。イランやヒズボラなどをけん制する狙いとみられる。
◆ヒズボラ=1982年のイスラエルのレバノン侵攻に対抗し、イランの支援を受けて誕生したイスラム教シーア派の軍事組織。
  アラビア語で「神の党」を意味する。レバノン国会に議席があり、政界にも大きな影響力を持つ。米国などが「テロ組織」に指定する。
サウジ・イラン 結束強調…電話首脳会談 パレスチナ支持
  【カイロ=西田道成】サウジアラビアの実権を握るムハンマド・ビン・サルマン皇太子とイランのエブラヒム・ライシ大統領は11日、電話会談し、パレスチナ自治区ガザを巡る情勢について協議した。イランとサウジの両国営通信が伝えた。3月に両国が国交正常化で合意して以降、両首脳が電話会談するのは初めて
  イラン国営通信によると、両首脳は「パレスチナに対する戦争犯罪を阻止する必要性」について議論し、イスラム圏の結束を強調した。サウジ国営通信によると、皇太子はパレスチナを支える立場を示し、「情勢緊迫化を止めるため、可能な限りの努力をしている」と述べた。
  サウジは米国の仲介で、イランと敵対するイスラエルとの国交正常化交渉を進めていたイスラエルとイスラム主義組織ハマスの軍事衝突を受け、交渉が難航するとの見方があり、イランには会談を通じてサウジを引き寄せる狙いもありそうだ


2023.10.12-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/3586a03d485fb1938a40c7c9c41854e4cf2ab320
ハマス「黒幕」司令官はイスラエル最重要の標的 奇襲を2年間周到に計画
(アンマン 佐藤貴生)

  パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスのイスラエル奇襲攻撃の「黒幕」として、ハマス軍事部門「カッサム旅団」のムハンマド・デイフ司令官に焦点が当たっている。デイフ氏はイスラエルにとって想定外の作戦を2年前から周到に計画していたもようで、イスラエルは最重要の標的として狙っていた。

■空爆で片足と片腕失う
  「私たちへの犯罪行為や占領をふまえ、すべてを終わらせることを決めた」。7日のハマスによる攻撃開始直後、陰影の中で男が話す動画が公表された。英紙フィナンシャル・タイムズはこれがデイフ氏だと推測する。
  1960年代にガザの難民キャンプで生まれ、ハマスで爆弾製造や地下トンネル網の設計を担ってきた。公に姿をみせることが少なく、その写真の数も限られる謎めいた存在だ。かつての空爆で片足と片腕を失い、車いす生活を送るが、イスラエル側による幾度の暗殺の試みにも生き残った。
  ロイター通信がハマス関係者の話として伝えるところでは、奇襲計画の契機は2021年5月のイスラエル軍との大規模衝突。当時、エルサレム旧市街にあるイスラム教礼拝所「アルアクサ・モスク」でイスラエル当局がイスラム教徒を殴打などする光景に怒りを強めたという
■フェンス突破は400人エリート部隊
  計画段階では建物を使った降下や急襲などの訓練のほか、イスラエル兵の捕獲訓練も行われた。一方で「(ガザは)経済が困窮しているから戦いたくない」との姿勢を偽装。計画はハマス幹部の多くも知らなかった。
  奇襲初日の7日、ハマスは3千発超のロケット弾を発射したが、これは「おとり」だった。攻撃で動揺するイスラエル軍を尻目に、ハマス戦闘員はガザを取り囲むフェンスをショベルカーなどで破壊し、地上ではバイクや車、上空からはパラグライダーでイスラエルに侵入。野外の音楽イベントや南部の小さな集落を襲撃した。
  フェンスの突破を担ったのは400人規模のエリート部隊ハマスは無人機(ドローン)を飛ばす動画も公表し、イスラエルの厳重な包囲の下で多彩な攻撃手段を有していたことが分かる。当時はイスラエルの重要な祭日の最中で、動画ではイスラエル軍兵士の姿はほぼ見えず、警備が手薄だったことがうかがえた。
(アンマン 佐藤貴生)


2023.10.12-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231012-CCEOF2R2RBINPBNJFUMTO25OK4/
ガザ住民、生活一層苦しく 電力停止すれば「病院は集団墓地に化す」
(ニューヨーク 平田雄介)

  イスラエルが封鎖したパレスチナ自治区ガザでは11日までに唯一の発電所の運転が停止し、住民の生活は一段と困難な状況に追い込まれている。
  米紙ニューヨーク・タイムズによると、ガザ最大の病院では電力が遮断された後も、発電機を使って入院患者の生命維持に努めた。だが、燃料はもって4日間。病院の責任者は「電力の供給が完全に止まれば、病院は集団墓地と化すしかない」と同紙に語った。

  地中海東岸に沿った長さ約50キロ、幅5~8キロの細長い地域に暮らす200万人超の住民はすでに16年間、イスラエルの厳しい制限の下で暮らしてきた。今回の完全封鎖前から電気が使えるのは1日に2~3時間だった
  ただ、封鎖によりブルドーザーなど重機だけでなく燃料も不足する中、ロイター通信によると、住民らは素手を使い、イスラエルの空爆で倒壊した建物のがれきに埋もれた死傷者を探し出す作業を強いられている11日の空爆では国際支援団体の医療スタッフ4人が死亡し、同僚の男性は「無差別攻撃だ」と声を上げた。
(ニューヨーク 平田雄介)


2023.10.12-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231012-2ZODAWXOK5NTHLEAPK6AN5JC3Y/
イスラエル首相がテレビ演説「ハマスを粉砕排除する」 ガザへの地上侵攻を準備

  【エルサレム=佐藤貴生】イスラエルのネタニヤフ首相は11日、野党党首のガンツ前国防相と戦時下の挙国一致内閣を樹立することで合意した後にテレビ演説し、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスを「粉砕して排除する」と表明した。ガザへの地上侵攻に向けて準備を進める。

  ネタニヤフ氏は12日、イスラエルを訪問した米国のブリンケン国務長官と会談。ブリンケン氏はバイデン米政権としてイスラエルを支援していく方針を伝達し「平和と正義を望む者はハマスを非難せねばならない」と語った。米国は東地中海に2隻目の空母を近く展開させる。
  イスラエル首相府によると、挙国一致内閣ではネタニヤフ、ガンツの両氏とガラント国防相の3人で構成する「戦争管理内閣」を別に作り、元軍トップら2人がオブザーバーとして加わる。戦争遂行に向けた対応だけに注力する。
  現地からの報道では、イスラエル軍とハマスの戦闘による死者はイスラエル側約1300人、パレスチナ側約1400人に上り、計2700人を超えた。
  イスラエルはガザへの食料、水、燃料提供を遮断し、ガザ唯一の発電所が11日までに停止。停電で水道や下水処理施設などへの影響が懸念されている。米国は同日、ガザ住民を避難させる人道回廊の設置に向け、イスラエルやエジプトと協議していると明らかにした。


2023.10.11-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231011-DEIELJGDXJNSRMMGDBXYKZVQRY/
死者1900人に イスラエル・ハマス大規模戦闘

  【カイロ=佐藤貴生】パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエル軍の大規模戦闘で、ロイター通信は11日未明、イスラエルで死者が1000人を超え、ガザで少なくとも900人に達したと報じた。双方とも戦闘継続の構えを崩さず、長期化の様相を示している
  ガラント国防相はガザとの境界近くで「空からの攻撃に着手した。後で地上からも行う」と述べた。イスラエル軍は多数の兵士や装甲車両でガザを包囲しており、近く地上侵攻を行うとの観測が増えている。

  イスラエル南部ベーリでは新たに100人以上の遺体が収容された。ガザとの境界近くの野外コンサート会場でも約260人の遺体が発見されており、多数がハマス戦闘員の犠牲になったことをうかがわせる。
  パレスチナ側の情報では、イスラエルが占領するヨルダン川西岸では7日の戦闘開始以来、治安部隊との衝突でパレスチナ人21人が死亡、130人が負傷するなど、ハマスに呼応する形で反イスラエル行動が広がっている。
  ハマスはイスラエルで150人近くを拘束、人質としてガザに連行し、イスラエル軍の攻撃を牽制(けんせい)している。人質には外国人も含まれているもよう。
  一方、レバノン南部からイスラエルに向けてロケット弾が一斉発射されたほかシリアからも砲撃があり、イスラエル軍が応戦した。レバノンには連携する民兵組織がおり、シリアにはイラン革命防衛隊のメンバーが浸透しているとされ、今後の不安定要素になりそうだ
  バイデン米大統領は10日、「まさに邪悪な行動だ」とハマスを非難し、イスラエル支援の姿勢を強調した。バイデン氏は11日からブリンケン米国務長官をイスラエルとヨルダンに派遣。イスラエルでは治安強化策などを協議する。


2023.10.11-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231011/k10014221611000.html
イラン “ハマスに技術移転 大規模攻撃は支援の成果” 誇示

  イスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃についてイランの精鋭部隊の関係者はNHKの取材に対し、「技術移転によってミサイルや無人機を自分たちで作れるよう後押ししてきた」と述べ、イランによる支援の成果だと誇示しました。

  イランの精鋭部隊、革命防衛隊で周辺国での作戦に関わってきた元司令官のキャナニモガダム氏は10日、首都テヘランでNHKの取材に応じました。
  革命防衛隊がハマスに対して行ってきた軍事支援については「ガザ地区は完全に閉じられていて、どんな兵器やミサイル、それに、兵士も送れない」としながらも、「サイバー空間などを通じた技術移転や財政支援によって、彼らがミサイルや無人機を自分たちで作れるように後押ししてきた」と説明しました。
  そのうえで、今回のハマスによる大規模攻撃について「これまでと異なり、高性能の無人機や防空システムをくぐり抜けるロケット弾が使われている。われわれの支援が間違いなく戦争の質に影響を与えている」と述べ、イランの支援によりハマスの兵器開発能力が向上した成果だと誇示しました。
  一方で、ハマスの戦闘員たちが動力付きのパラグライダーを使って、ガザ地区を囲む壁を越え、イスラエル側に侵入したとされることなどについては「われわれも驚いている」と述べハマスが独自の戦闘方法を編み出しつつあるという見方を示しました。


2023.10.11-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231011/k10014221341000.html
ハマスが多数のロケット弾を発射 攻撃の応酬が激化

  イスラエル軍が、イスラム組織ハマスが実効支配するガザ地区への空爆を強めているのに対し、ハマス側は10日、イスラエル南部に向けて多数のロケット弾を発射し、攻撃の応酬が激化しています。

  ハマスによる大規模な攻撃の報復として、イスラエル軍は10日も、ハマスが実効支配するガザ地区に激しい空爆を続けています。これに対してハマス側は10日午後、イスラエル南部のアシュケロンや、最大の商業都市テルアビブの住民に対して、大規模な攻撃を行うとの警告を出し、予告通り午後5時から一斉にロケット弾の発射を始めました
  地元のメディアは、アシュケロンで住宅地などにロケット弾が着弾した様子を伝えていて、けが人がいるとの情報も出ています。
  この攻撃についてハマスの軍事部門は声明で、「イスラエルが私たちの市民から住まいを奪い続けるなら、私たちもアシュケロンが住めなくなるまで攻撃し、別の街も同じように攻撃する」と強調しました。
  また、イスラエル軍によりますと、ハマスの攻撃に合わせるかたちで、隣国のレバノンからも15発のロケット弾が発射されたということです。これに対してイスラエル軍もすぐさま反撃に乗り出し、ガザ地区に空爆を加えていて、攻撃の応酬が激化しています。
  ハマスが今月7日に大規模な攻撃を開始して以降、イスラエル側では少なくとも900人、ガザ地区では830人が死亡し、双方での死者はあわせて1700人を超え、情勢は悪化の一途をたどっています。


2023.10.11-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231010-QRJ6CS3FAZOYJMDNS6IO6PFZ7Q/
死者1800人超す イスラエル、ガザ「完全封鎖」

  【カイロ=佐藤貴生】イスラエルのガラント国防相は9日、イスラム原理主義組織ハマスによる攻撃への報復として、パレスチナ自治区ガザの「完全封鎖」を命じ、ガザへの水や電気の供給を遮断すると宣言した。ハマス報道官はイスラエルが警告なしにガザの民間人を攻撃すれば、イスラエルから拉致した人質を処刑すると述べ、軍事圧力への対抗姿勢を示した。

  ハマスとイスラエルによる交戦が10日も続き、本格的な戦闘は4日目に入った。ロイター通信などの報道を基にすると、戦闘に伴う死者が10日までに計1800人を超えたもようだ。イスラエルで少なくとも1000人、ガザで830人が死亡した。
  イスラエル軍は9日、ガザのハマスの拠点など約2500カ所を攻撃。過去最大規模となる予備役30万人を招集した。ネタニヤフ首相は「ハマスへの空爆は始まったばかりだ」と述べた。ハマスが7日、イスラエルのガザ境界近くで野外コンサートの会場を襲撃した際に、約260人が死亡したことが判明した。
 イスラエルのエルダン国連大使は9日、米CNNテレビで、イスラエルから150人近くがガザに拉致されたと明らかにした。米国やフランスなど外国籍の保有者も多数いるとみられている。
  米英、ドイツ、フランス、イタリアの5カ国首脳は9日に電話会談を行った。共同声明でハマスの攻撃を「テロ行為」と非難し、イスラエルの自衛措置を支持した。バイデン米政権は中東安定を図るため、東地中海に原子力空母ジェラルド・フォードの派遣を決めた。


2023.10.10-NHK NEW WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/qa/2023/10/10/35010.html
イスラエルにイスラム組織「ハマス」が大規模攻撃 何が起きた?
(国際部記者 小島明 / エルサレム支局長 田村佑輔)

  今月7日、パレスチナ暫定自治区のガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが突如、イスラエルへの攻撃を開始。イスラエル側も激しい空爆で応酬し、これまでに双方の死者は1600人以上にのぼっています。(10日時点)

  「これはイスラエルにとっての911だ」イスラエル側がアメリカで起きた同時多発テロになぞらえて語った今回の軍事衝突。何が起きているのか?なぜ、ハマスは攻撃に踏み切ったのか?戦線の拡大は?専門家の分析を交えて、最新の情勢を読み解きます。
(国際部記者 小島明 / エルサレム支局長 田村佑輔)

そもそもガザ地区って?-パレスチナは、1948年のイスラエル建国とその後の中東戦争、それに内部の対立を経てヨルダン川西岸地区とガザ地区に分断されています。このうちガザ地区は、地中海に沿った、鹿児島県の種子島ほどの広さの土地に220万人以上が暮らしていて、イスラム組織「ハマス」が実効支配しています。
  このハマスを敵視するイスラエルによる経済封鎖が続いているほか、軍事衝突で多くの民間人が犠牲となってきました。また、ガザ地区の周囲には壁やフェンスが張り巡らされ、移動の自由も制限されていて、「天井のない監獄」とも呼ばれています。
いったい何が起きた?-ハマスによる奇襲攻撃は7日午前6時半ごろ、ガザ地区からの大規模なロケット攻撃で始まりました。発射されたロケット弾の数について、ハマス側は5000発以上、イスラエル側は2200発以上だとしています。
  それと前後するように戦闘員がイスラエル側に侵入。ガザ地区はイスラエルが建設した壁やフェンスに囲まれて封鎖されていますが、イギリスの公共放送BBCは、検問所を含む7か所をハマスの戦闘員が突破したと分析しています。
  ハマスの軍事部門のカッサム旅団はSNSなどで戦闘員がイスラエル側に侵入した様子だとする映像を公開しています。このうち、空から侵入したとする動画では複数の戦闘員が、動力付きのパラグライダーを使ってイスラエルが建設したコンクリートの分離壁を越えていくような様子が映っています。
  また、イスラエルとガザ地区の間の人の行き来を管理するエレズ検問所で撮影されたとされる映像では、分離壁で大きな爆発が起きたあと戦闘員たちが走って行く様子や施設のなかで激しい銃撃戦が起きている様子が記録されています。
  そして、フェンスごと爆破してそこから武装した戦闘員を荷台に乗せた複数の車がイスラエル側に侵入しているような動画もあります。さらに8日に公開された映像では、複数の戦闘員が海とみられる場所でボートに乗って水面を進む様子がとらえられています。
  これに対しイスラエル側は、ネタニヤフ首相「われわれは戦争状態にある」とする声明を出して、報復作戦を開始。ガザ地区にあるハマスの拠点などに対して、連日激しい空爆を行っています。
  一連の軍事衝突で民間人にも被害が出ていて、イスラエル軍などによりますと、これまでにイスラエル側では少なくとも900人が死亡し、およそ2700人以上がけがをしたほか、100人以上がハマスの人質になっているということです。一方、パレスチナの保健当局によりますと、ガザ地区で、これまでに770人が死亡し、およそ4000人がけがをしたとしていて、双方の死者はあわせて1600人以上にのぼっています。
イスラム組織「ハマス」とは?
  正式名称は「イスラム抵抗運動」。ハマスはそのアラビア語の頭文字などをとったもので「情熱」という意味の単語にもなります。
  1987年に発足したハマスは国家としてのイスラエルを一切認めない強硬な立場をとり、武力闘争を掲げて自爆テロなどを行いました。その一方で、市民に対する福祉活動も行い、市民の支持を得ました。そしてパレスチナの穏健派の政治勢力「ファタハ」との武力闘争をへて、2007年からはガザ地区を実効支配しています
  ハマスは、アメリカやEU=ヨーロッパ連合などからテロ組織に指定されていますが、イスラエルによる厳しい経済封鎖にさらされる中でも武器などを調達し、イランからの支援を受けているとも指摘されています。
なぜ、このタイミング?
  まだはっきりしたことはわかっていません。ただ、ハマスによる奇襲攻撃が行われた7日はユダヤ教の重要な祭日の最中で、イスラエルにとっては不意を突かれた形です。さらに前日の6日は、50年前にイスラエルが突如、エジプトとシリアによる攻撃を受けて始まった「第4次中東戦争」の開戦日でした。その日はユダヤ教徒にとって最も重要なしょく罪の日「ヨム・キプール」でもありました。

  ハマスは今回の奇襲攻撃の作戦名を「アルアクサの洪水」としていて、エルサレム旧市街にあるイスラム教の聖地「ハラム・アッシャリフ」にある「アルアクサ・モスク」のことを指しているとみられます。この聖地をめぐっては、同じ場所にかつてユダヤ教の神殿があったとされることから、イスラム教徒とユダヤ教徒の間の火種になってきました。
これまでの衝突と何が違う?
  まず、その戦闘の規模です。イスラエルが受けた攻撃としては50年前の第4次中東戦争以降、最大規模ともされています。これに対して、イスラエル軍は「鉄の剣」と名付けた報復作戦を実施し、ガザ地区のハマスの拠点などへの大規模な空爆を続けています。
  イスラエルのガラント国防相は9日、「ガザ地区を完全に包囲する」としてイスラエルからガザ地区への電力の供給を止めるなどと発表し、ハマスに対する圧力を一段と強める構えです。さらにイスラエル軍は、2014年にガザ地区に大規模な地上部隊を侵攻させたときの5倍近くの30万人の予備役の動員を発表するなどしていて、今後どこまで軍事作戦を拡大させるのかが焦点となっています。
  そして、もう一つが100人以上ともされるイスラエル側の人質です。今回、ハマス側は大規模なロケット弾による攻撃に加えて、戦闘員がイスラエル側に侵入し、多くの兵士や市民を連れ去りました。

  人質の中には外国人も含まれていて、ハマスとしてはイスラエル側の報復作戦をけん制するほか、イスラエル側にとらえられている拘束者との交換などにもつなげるねらいがあるとみられます。
  イスラエルとハマスの間では数年おきに大規模な軍事衝突が起きてきましたが、これだけの規模の人質は前例がありません。
欧米とアラブ諸国の受け止めは?
  今回のハマスによるイスラエルへの攻撃をめぐっては、欧米とアラブ諸国でその受け止めに立場の違いが出ています。 アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアの5か国の首脳は9日に電話会談をして、イスラエルへの支持とテロ行為を非難する共同声明を発表しました。
  一方で、アラブ連盟のアブルゲイト事務局長は訪問先のロシアで「ガザでは、これまでも多くの人々が殺害され、流血の事態が起きてきた。イスラエルはこうした行為を繰り返してきた」と述べ、逆にイスラエル側を批判しました。
  武力攻撃の応酬に歯止めがかからないなか、国連のグテーレス事務総長はイスラエルのネタニヤフ首相やパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長、周辺国の首脳らと相次いで電話会談を行っていますが、現時点では事態が収拾する兆しはまったく立っていません
専門家はどうみる?-突如として始まった今回の大規模な軍事衝突。専門家はどうみているのか。防衛大学校の立山良司名誉教授に、最新の情勢分析とイスラエル側が地上作戦に踏み切るのかなど、今後の見通しについて聞きました。以下、立山名誉教授の話
なぜ、ハマス側は攻撃をしかけた?
  やはり16年間の封鎖があって、ガザ地区の社会・経済はひどい状況です。  そうした中で、封鎖に対するパレスチナ住民の怒りというのはイスラエルに向くのと同時に、ガザを実効支配しているハマスにも向いているわけです。不満がうっせきしている状態で、それがいつハマスに本当に向かってくるかということを恐れて、何かしなければいけないという気持ちがあったと思います。
  もう1つはイスラエルとサウジアラビアの関係正常化という話が進んでいます。パレスチナ自治政府のほうは自治権限を拡大する、ある種の条件闘争で、正常化に対応しようとしています。一方で、ガザの問題は一切、その条件には出てきていません
  つまり、ガザの問題は見捨てられていく可能性がある。見捨てられることの恐怖をハマスは感じていたし、ガザの住民も感じたんだろうと思います。 ここで何か大きな軍事作戦をやれば、そうした流れを食い止める、あるいは少なくとも大きな妨げになるというふうに考えたのだと思います。

アラブ諸国とイスラエルの関係改善の動き
  アラブ諸国は長年、パレスチナの占領を続けるイスラエルと対立してきましたが、2020年、アメリカのトランプ政権(当時)の仲介で、UAEとバーレーンがイスラエルと国交を正常化させました。さらにアラブ諸国の中心的な存在のサウジアラビアも国交正常化の動きが出ていて、9月21日の国連総会で、パレスチナのアッバス議長がパレスチナ問題を置き去りにしないよう訴えていました

なぜこれほど大規模な衝突に?
  ガザの場合は、封鎖が行われている16年間に、間欠泉的に軍事攻撃をイスラエル側に行ってきたわけです。それは、何らかの行動を起こさないとガザの問題は国際社会から見放されてしまう、忘れられてしまうという、ハマスの焦りもあると思いますし、それからガザの住民からの突き上げもあると思います。
  ただ、これほど大規模で、ロケットを半日で2000発以上発射するとか、戦闘員を多数イスラエル国内に送り込むということを実行するとは思っていませんでした
  2021年にも、イスラエルとガザの間で軍事衝突があり、国際的にも取り上げられましたが、それほど大きく取り上げられたわけではありません。
  今回はその軍事攻撃の規模が大きく、異例の攻撃だったということで大きく取り上げられています。ガザの問題がこれほど国際的なニュースがなるのは久しぶりで、ガザの問題に国際社会の目を向かせる、さらにはアラブ諸国の目を向かせるという意味では、ハマスにとってはねらいどおりになっていると言えるだろうと思います。
イスラエル側は事前に察知していなかった?
  ハマスはときどきロケットは撃つが、大規模な軍事作戦に出れば、イスラエルも大規模に報復する。その報復を恐れて、それほど大きな作戦は仕掛けてこないであろうという風に見ていた、いわば甘く見ていた、ということも考えられるかもしれません。
  さらにイスラエル国内では、最高裁判所の権限を弱めることなどを可能にするネタニヤフ政権の司法改革をめぐって、抗議活動が広がるなど混乱していました。この動きは予備役の中にも広がり、軍の招集に応じないという動きが出ていました。招集に応じない部隊の中に、情報部門の人も結構いて、情報部門が一定程度、機能不全状態におちいっていたのかもしれないという報道もあります。
  今回の大規模な軍事作戦はハマスが相当な準備をして行ったと思うのですが、その準備の兆候すらイスラエルがつかめなかった。 これはイスラエルの軍事、あるいは情報機関の情報収集能力に何らかの欠陥が生じているのかもしれないということを思わせる状態です。
  イスラエルはガザに対して常時、ドローンを上空に飛ばしたり、通信を傍受したりして、ガザの動きを全部把握していたはずなのに、全く兆候すらつかめなかった。これはイスラエル軍、あるいはイスラエルの情報機関モサドの大失態だと思います。
イスラエル側の受け止めは?
  相当なショックだったと思います。ロケット攻撃だけでなく、ハマスの戦闘員によってガザ周辺の町も攻撃されて、普通の家で、社会生活をしている民間人が多数、戦闘に巻き込まれて死んでしまったということは、かなりショックだと思います。
  ガザの問題というのは、イスラエル政府はもう十数年間、封鎖が始まった前後から、巨大な塀をガザの周りに作って問題を塀の中に押し込めているという状況でした。
  地上からの越境攻撃は、いままではほとんどが塀・フェンスの下にトンネルを掘って侵入するというスタイルで、極めて小規模な人数、しかもトンネルを掘っているのを事前に察知されて作戦を妨害されることが多かったわけです。
  ところが今回は、いままでの報道によれば、検問所やゲートが攻撃されて、守っているイスラエル軍が無力化されてゲートから堂々と入り、イスラエルの中に攻撃したと。しかも一番離れている町はガザから25キロも離れているところまで攻撃をしたということで、これはいままでには全く考えられないことです。
  ハマスの武装勢力は塀の中に閉じ込めているという安心感があったわけですけれども、その安心感が大きく揺らいでしまっていると思います。
イスラエル軍による地上作戦の可能性は?
  可能性は高いと思いますが、人質が何人いるか、どこにいるかということをいつまでにつかめるかが大きな問題だと思います。ただやみくもに入って軍事攻撃を続ければ、人質の命も危ないかもしれない。
  それからもう1つは、2014年の軍事衝突の際にイスラエルは大規模な地上戦をやったわけですが、ガザの中には無数のトンネルが掘られていて、イスラエル軍が入ってもそのトンネルに仕掛けられたわなにはまってしまい、イスラエル側にも相当の犠牲者が出ましたネタニヤフ政権の中の強硬派は「地上戦を大規模にやってハマスをせん滅すべき」と主張しています。一方で、軍や安全保障の専門家は「地上戦に踏み切るのは極めて危険が多いし、いつまでもガザを占領していくわけにはいかず、撤退しなければいけない」という慎重論も多いんです。
  ネタニヤフ政権としてはいまのところ、空爆か、あるいは周辺に戦車を置いて攻撃するというような、少し距離を置いた作戦を続けて、それでハマスに報復をしているということを国内には見せたいのだと思います。
今後の見通しは?
  攻撃の規模は縮小していくと思いますが、停戦が成立するまでには一定程度の期間がかかると思います。これまで、軍事衝突のたびにエジプトやカタールが仲介工作を行ってきましたが、今回、エジプトやカタールを含めるのかどうかまだわかりません。
  双方の条件を出し合って、ということになると思いますが、ガザでもともと人質になっているイスラエル兵の動向、ハマスにすれば、イスラエルの刑務所にいるパレスチナ人の政治犯、囚人の解放を条件として出してくると思います停戦・人質の解放交渉という流れは時間がかかっていくと思います。
国際社会、日本に求められることは?
  2014年の大規模な軍事衝突のときもそうでしたが、一時的に関心が向いても1か月、2か月たつと別の問題に関心がいってしまう。
  今回のハマスによる攻撃は許されるものではありません。それと同時にもう少し長期的な視点でいえば、イスラエル側が行っている占領行為などに対しても、国際法的な問題提起がなされるべきだと思います。そのためには、国際刑事裁判所などがもっと動くべきだと思いますし、国際刑事裁判所の動きを日本も支援、あるいは求めていくことが必要だと思います。
  最大の問題は1967年以来イスラエルの占領がずっと続いていることです。ことしはオスロ合意締結から30年ですが、オスロ合意でパレスチナ問題が解決すると期待されていたにもかかわらず、状況はむしろ悪くなっているわけです。
  占領による非人道的な状況が続いている。このことを自制する、解決していく、そういう努力を国際社会は絶対に進めていかなければいけないのです。


2023.10.10-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231010-H4PVNB6N2NIS3NNYTZNCEF5TV4/
ハマス「包囲網」に焦り イスラエル・サウジ正常化は暗礁

  【カイロ=佐藤貴生】イスラエルがイスラム原理主義組織ハマスへの攻撃を強化する方針を示し、イスラエルが進めるサウジアラビアとの国交正常化協議は暗礁に乗り上げる公算が大きくなった両国が国交を結べば中東地域の勢力図は一変し、イランの孤立が決定的になるとみられていたイランを後ろ盾とするハマスが協議の妨害をもくろんで、大規模な攻撃に着手したとの見方が出ている。

  イスラエルとサウジの正常化協議は米国が仲介し、9月には3カ国の首脳が進展を強調した。早ければ来年前半にも正常化が実現するとの見方もあった
  米、イスラエルにとって、サウジはアラブで最も国交正常化を実現したい国だ。世界屈指の産油国でイスラム教の2大聖地を擁し、世界の信徒に絶大な影響力を持つサウジはまた、パレスチナ問題が解決しない限りイスラエルとは国交を結ばない姿勢をとってきた
  イスラエルとスンニ派大国サウジが国交を結べば、米イスラエル主導の「イラン包囲網」が強化され、シーア派のイランは厳しい立場に立たされることが必至だったサウジは協議の過程でパレスチナ問題で一定の譲歩をするとの報道も出ており、ハマスにとっても看過できない事態だった。
  イランは攻撃の直接的な関与は否定している。しかし、8日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は8月、イランの最高指導者直属の「革命防衛隊」メンバーとハマスなどの幹部が複数回、会合を行ったとして、イランが攻撃計画の策定を支援したと報じた
  また、10日の英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は、ハマスが7日以降の攻撃で3000発以上のロケット弾を発射できる攻撃能力を備えていたことが明らかになったとし、「ハマスとイランの関係がどれほど深化していたかを再検討する必要がある」と論じた。


2023.10.10-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231010-IITELZPQDJNETGJVP6UVAR3E7M/
「イスラエルの9・11」 死者約1600人、空爆2500カ所 周辺国に戦闘飛び火

  【カイロ=佐藤貴生】パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエル軍の大規模戦闘で、ロイター通信は10日未明、双方の死者は計約1600人となったと伝えた。イスラエルはさらにガザへの攻撃を強化する構えで、地上侵攻に踏み切るとの観測もある。ハマスも攻撃継続の姿勢を崩さず、戦火は周辺国にも飛び火した。事態は中東全体を巻き込む危機の様相を呈してきた。

  イスラエルは50年前の第4次中東戦争以来の国家的危機に直面し、欧米メディアは2001年にニューヨークやワシントンを襲った米中枢同時テロになぞらえ「イスラエルの9・11」と評している。
  戦闘開始以降、イスラエルでは900人超、ガザでは687人が死亡した。イスラエルのネタニヤフ首相は9日夜、「ハマスへの空爆は始まったばかりだ」と攻撃強化を明言した。また一時、イラクやシリアで勢力を広げたイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の名を挙げ、「ハマスはISだ」と残忍ぶりを非難した。
  イスラエル軍は9日、ガザのハマスの拠点など2500カ所を攻撃した。軍は先例のない30万人規模の予備役を招集し、ガラント国防相は「ガザを完全包囲する」と述べた。230万人が暮らすガザへの電力のほか、食料や燃料などの供給を遮断する方針だ。
  また、イスラエルのコーヘン外相は9日、ハマスが「百人以上」を拘束して人質に取ったと述べた。ハマス報道官はイスラエルが警告なしに民間人を攻撃すれば、人質を処刑すると述べた。
  ハマスの戦闘員は7日の攻撃開始後、多数がイスラエルに侵入した。ガザとの境界近くで開催された野外音楽コンサートの会場を襲撃し、若者ら260人が死亡したことが判明。イスラエル南部では治安部隊とハマス戦闘員の銃撃戦が続いた。
  また、イスラエル軍は9日、隣国レバノンから武装した者が侵入したため殺害したとし、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラは3人が死亡したとの声明を出した。外国人も犠牲となったほかハマスに連行された可能性があり、被害は国際的に広がりつつある
  エジプトやカタールが双方の停戦や拘束者の身柄解放などの交渉を行っているが、イスラエル高官は進行中の交渉はないと述べた。


2023.10.10-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231010-OP4CN4ZVQJPDJLXZTH2DR56MEE/
国連事務総長、ハマスを断固非難、イスラエル攻撃中止と人質解放を要求

  【ニューヨーク=平田雄介】国連のグテレス事務総長は9日、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスが7日始めたイスラエル攻撃は忌まわしく、断固として非難すると表明した。ハマスに対して攻撃中止と人質解放を求める一方、イスラエルの反撃によりハマスが実効支配するガザ地区で死傷者が出ていることへの深い憂慮を示した。

  グテレス氏は、今回のハマスや過激派「イスラム聖戦」による攻撃を「テロ行為」と断じ、どんな主張を根拠にしていても「テロや民間人の殺傷、拉致は正当化できない」と強調した。イスラエルの反撃について、グテレス氏はイスラエルの「正当な安全保障上の懸念」を認めつつ、軍事作戦は「国際人道法に厳格に従って行われなければならない」注意を喚起した。
  他方、グテレス氏はイスラエルとの二国家共存の展望を明確に描くことのできない「パレスチナの人々の不満」を認めるとし、交渉による解決を図るよう呼びかけた。
  グテレス氏はまた、ガザ地区の避難民を保護する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の学校が攻撃されたとし、人道支援のための国連の立ち入りを認めるよう求めた。


2023.10.09-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20231009-W4O47LT2YRMSRLZW3MGNCSFAWM/
11日にアラブ連盟緊急会合 パレスチナ要請

  アラブ連盟は9日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃を受け、11日に緊急の外相級会合を開くと発表した。パレスチナが会合を要請し、イスラエル軍の攻撃を止めるための政治行動を協議するとした。

  アラブ連盟は21カ国とパレスチナ解放機構(PLO)が加盟。本部はエジプトの首都カイロにある。(共同)


2023.10.09-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231009-T2DF4YV6BJPUHLDKZ62L3YXXGQ/
犠牲者1200人に、人質は130人か イスラエル・ハマス大規模戦闘

  【カイロ=佐藤貴生】パレスチナ自治区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエル軍の大規模戦闘で、双方の死者は約1200人に達した。9日も激しい戦闘が続き、事態は悪化の一途をたどっている。中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、ハマスなどはイスラエル軍将校ら130人を人質にしたと述べた。
  イスラエルでは少なくとも700人が死亡し、ガザでは493人が死亡した。イスラエル軍は9日もガザを空爆し、イスラエル南部では治安部隊とハマス戦闘員らの銃撃戦が続いた。

  ハマスは大規模攻撃を始めた7日朝、戦闘員らがガザを取り囲むフェンスを重機などで破壊し、バイクやトラックのほかパラグライダーなどでイスラエル領に侵入した。また、ガザとの境界付近で開かれていた野外音楽コンサート会場を襲撃、現場周辺では約260人の遺体が発見された。


2023.10.10-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20231010-5XMXYRDR3ZJY5ABJQRPJQLTTUA/
レバノン国境付近攻撃と報道 イスラエル軍、侵入者射殺

  イスラエル軍は9日、隣国レバノン南部からの武装した侵入者を複数人射殺したと明らかにした。レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラは、侵入者はパレスチナ人だとして関与を否定した。イスラエルメディアなどによると、イスラエル軍は国境付近のレバノン側に攻撃した。

  パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエル軍の大規模戦闘が続く中、レバノンへの衝突拡大が懸念されている。
  国境付近からの映像では爆発音が聞かれ、白い煙が上がった。ヒズボラとイスラエル軍の間では8日、応酬があった。(共同)


2023.10.09-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231009/k10014219441000.html
【随時更新】ハマスの攻撃とイスラエルの報復 死者計1100人超

  パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエル側への攻撃とそれに対するイスラエル軍の報復作戦で、これまでに双方の死者は合わせて1100人を超えました。また、ハマスは、100人以上を人質にしていると主張し、イスラエル側の報復作戦をけん制していて、事態のさらなる悪化が懸念されます。

  パレスチナ暫定自治区のガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは、7日にロケット弾の発射やイスラエル側に越境する大規模な攻撃を行ったのに続き、8日もイスラエルへの攻撃を続けているとしています。一方、イスラエル軍も南部の町などでハマスとの戦闘が続いていると明らかにしたほか「ハマスのテロ活動の拠点を攻撃した」としてガザ地区を空爆していて、報復作戦を続けています。
  イスラエル軍によりますと、これまでにイスラエル側で少なくとも700人が死亡し、2000人以上がけがをしたということです。一方、ガザ地区の保健当局は8日、イスラエル軍の攻撃によりこれまでに413人が死亡したとしていて、イスラエルとパレスチナ双方の死者は、合わせて1100人を超えています。
  また、イスラエル側は多くの兵士や市民が連行され、人質になっているとしていて、ハマスは8日の声明で「100人以上のイスラエル人をガザ地区で人質にしている」と主張しました。
  人質の中には外国人も含まれているとされ、ハマスとしてはイスラエル側の報復作戦をけん制し、イスラエル側にとらえられている拘束者との交換などにもつなげるねらいがあるとみられます。
  こうした状況の中、イスラエル軍の地上部隊がガザ地区への侵攻に踏み切るのかが焦点で、事態のさらなる悪化が懸念されます。
米有力紙 “ハマスを支援のイラン革命防衛隊が関与”
  アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃をめぐり、攻撃の計画にイスラエルと敵対し、ハマスを支援してきたイランの革命防衛隊が関与していたと伝えました。
  これはアメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルが8日、ハマスやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの幹部などの話として、伝えたものです。それによりますと、イランの革命防衛隊の幹部がことし8月以降、ハマスやヒズボラなどとレバノンの首都ベイルートで協議を重ね、10月2日の会合で、計画の実行を了承したとしています。
  また、イランのアブドラヒアン外相も少なくとも2回、会合に参加していたとしています。イランが攻撃に関与していた場合、中東地域の緊張がさらに高まるおそれがあります。一方、記事ではアメリカの当局者は「現時点では、この話を裏付ける情報はない」と話しているとしています。
  アメリカのブリンケン国務長官は8日、ABCテレビのインタビューで「今回の攻撃にイランが関与しているという直接的な証拠はまだないが、長年にわたる支援は明らかだ」と指摘しています。
国連安保理 具体的な対応示せず 各国足並みの乱れも
  国連安保理の緊急会合は8日、非公開で行われました。議論の内容は明らかにされていませんが、外交筋によりますと、会合ではほぼすべての国からハマスによる市民への攻撃に非難や懸念が表明され、事態の沈静化を求める意見が相次いだということです。
  ただ、安保理としての具体的な対応についてはまとまらず、今後も必要に応じて協議を行うとしています。会合のあと、UAE=アラブ首長国連邦のヌサイベ 国連大使は記者団に対し「われわれとしては停戦と交渉の再開へ導きたいが、まだそれができるような状況ではない」と述べ、事態打開に向けた議論が進んでいないことを明らかにしました。
  アメリカのウッド 国連次席大使は「いま焦点をあてるべきは、ハマスによる現在進行中の暴力だ」と述べ、アメリカとしてはイスラエルの作戦を支援すると強調しました。一方、中国の張軍 国連大使は会合前に「真に重要なことは状況のさらなる悪化と市民のさらなる死傷者を防ぐことだ」と述べ、イスラエルとハマス双方の戦闘の即時停止が必要だという立場を示していて、各国の足並みの乱れも表面化しています。
ハマス「100人以上のイスラエル人 ガザ地区で人質に」
  イスラム組織ハマスは、8日、声明を発表し「われわれは100人以上のイスラエル人をガザ地区で人質にしている」と主張しました。
“音楽イベント会場で260人の遺体” イスラエル有力メディア
  イスラエルの有力メディア「ハーレツ」は、救助団体の話として、7日に行われた音楽イベントの会場で、260人の遺体が見つかったと伝えています。このイベントはガザ地区との境界に近い場所で開かれていて、イスラム組織ハマスによる攻撃を受けたということです。
  地元メディアなどは、多くの人が逃げ惑う中でハマスに銃撃されたほか、子どもを含め連行された人もいると伝えています。
ハマスに祖母が人質にとられた女性「胸が張り裂けそう」
  イスラム組織ハマスに祖母が人質にとられたというイスラエル人の女性が、オンラインでのメディア各社の取材に応じ、悲痛な思いを語りました。インタビューに応じたのは、祖母の行方がわからなくなっているアドバ・アダルさんです。アダルさんの祖母のヤッファさんは、ガザ地区に近いイスラエル南部に住んでいましたが、7日、人質として、ハマスに連れ去られたということです。アダルさんは「祖母とは7日の午前8時ごろに連絡が途絶え、最後に受け取ったメッセージは『銃声やアラビア語の叫び声が聞こえる』という内容だった」と話し、攻撃が始まってまもなくして祖母とは連絡がとれなくなったとしています。その後、アダルさんは、ガザ地区で撮影されたとされる動画をSNS上で見つけ、その動画ではヤッファさんとみられる女性がカートに乗せられている様子が映っています。アダルさんは「祖母は持病の薬も持っていません。食べ物や水はあるのか、そもそも無事なのかもわからず、胸が張り裂けそうです」と話していました。そのうえで「85歳の祖母は何も悪いことをしていません。イスラエル政府には祖母や人質になった人を取り戻すためにあらゆることをしてほしい」と涙ながらに訴えていました。
国連安保理が緊急会合 会合を前に双方が互いを強く非難
  国連安保理の緊急会合は現地時間の8日午後、日本時間の9日午前4時すぎから非公開でおよそ2時間、行われました。会合に先立ちイスラエルのエルダン国連大使は記者団に対し「戦争犯罪は明確に非難されなければならない。これはイスラエルにとっての911だ」とパレスチナ側を非難し、イスラエルの作戦はテロとの戦いだと正当化しました。
  これに対し、パレスチナのマンスール国連大使は「イスラエルはパレスチナの人たちの生命と権利に対して力を使い続けている」と述べ、イスラエル側を非難しました。
  外交筋によりますと会合では多くの国からハマスによる攻撃を非難する声や事態の沈静化を求める声があがったということです。ただ、具体的な対応についてはまとまらず、今後も協議を続けるとしています。
アメリカ イスラエル軍へ軍事装備品の供与開始
  ホワイトハウスなどの発表によりますと、アメリカのバイデン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は8日、電話で会談しました。この中でバイデン大統領は「テロを正当化するいかなる理由もなく、すべての国がこのような残虐な行為に対し、団結しなければならない」と述べ、イスラエルを支持する立場を改めて強調しました。そのうえで、イスラエル軍に対し、弾薬を含む軍事装備品などの供与を始めたことを伝えるとともに、今後、追加の軍事支援を行う見通しを明らかにしました。
  また、オースティン国防長官は8日の声明で、最新鋭の空母「ジェラルド・フォード」を中心とした空母打撃群を、イスラエルに近い東地中海に移動するよう指示したと明らかにしました。また、中東地域における戦闘機の部隊を増強し、即応態勢を維持しているとしています。
  こうした動きについて、アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは、政府関係者の話として、地域の不安定さにつけ込むイランを抑止するねらいもあると伝えています。
パレスチナ武装組織 “30人以上を人質に”
  ハマスによるイスラエルに対する大規模な攻撃に参加しているパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」は、8日「これまでに30人以上を人質にとっている。イスラエルに捕まっているパレスチナ側のすべての囚人が解放されないかぎり、彼らは解放されないだろう」とする声明を出しました。
  イスラエル軍の報道官は「ガザ地区にはかなりの数のイスラエル人がハマスによって捕らえられている」と述べていますが、連れ去られた人質の正確な数は明らかになっていません。
日本人の被害情報なし 日本大使館
  イスラエルにある日本大使館によりますとこれまでのところ日本人が被害にあったという情報は入っていないということです。大使館ではイスラエル滞在中の日本人に対し、ミサイルの飛来を知らせる警報が出た場合には、シェルターや頑丈な建物に避難し、安全を確保するよう呼びかけています。
“フランス人 1人死亡 数人が行方わからず” 仏外務省
  ハマスによる大規模な攻撃に関連しフランス外務省は8日、フランス人1人の死亡が確認されたほか、数人の行方がわからなくなっていると明らかにしました。
  フランス外務省は8日の声明で「ハマスが男性や女性、それに子どもを人質に取っている事件は、ハマスが持つテロリズムの本質を思い起こさせる。フランスは、人質の即時かつ無条件の解放を求める」とハマスを非難するとともに、人質の解放を訴えています。
“複数のアメリカ人が死亡” ブリンケン国務長官
  アメリカのブリンケン国務長官は8日に放送されたCNNのインタビューで、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによる攻撃で複数のアメリカ人が死亡し、行方が分からなくなっている人もいるという情報があり、確認を進めていることを明らかにしました。
  そして、ブリンケン長官は「バイデン大統領の方針はイスラエルがハマスからの攻撃に対応するために必要なものを提供することだ」と述べ、イスラエルへの軍事支援を近く発表する見通しを示しました。
  また、ブリンケン長官は8日に放送されたABCのインタビューでイランが攻撃に関与しているか問われ「今回の攻撃にイランが関与しているという直接的な証拠はまだないが、長年にわたる支援は明らかだ」と述べました。
“複数のドイツ人 連れ去られた可能性” 独外務省
  ドイツ外務省は、8日、NHKの取材に対しイスラエル側に侵入したイスラム組織ハマスの武装勢力に連れ去られた人たちの中に、複数のドイツ人が含まれている可能性があると明らかにしました。
  これらの人々はドイツとイスラエルの国籍を保有しているとした上で、連れ去られたとみている人数や名前などは、安全上の理由で明らかにしないとしています。また、ドイツの有力誌シュピーゲルやロイター通信は、8日、イスラエルに住んでいるドイツ人の母親が、当時、イベントに参加していた20代の娘と連絡が取れなくなっていると話していると伝えています。
英スナク首相 “必要とするいかなる支援も行う”
  イギリスのスナク首相は8日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談し、イスラエルが必要とするいかなる支援も行うと伝えました。イギリスの首相官邸によりますと、「スナク首相はイスラエルとともにこのようなテロ行為に対し断固として立ち向かうことを再確認した」としています。また、世界が一致してこうした攻撃に反対するよう、イギリスが行っている外交活動を説明したとしています。
  その上で、両首脳は、状況の進展に応じて緊密に連絡を取り合うことで合意したということです。
イラン 攻撃を支持「パレスチナ自衛は正当な権利」
  イスラエルと敵対し、ハマスやヒズボラを軍事的にも支援してきたイランは今回の攻撃を支持する姿勢を鮮明にしています。首都テヘラン中心部の広場では8日までに、今回の攻撃への支持を表す巨大なポスターがビルの外壁にはられました。
  ポスターは、パレスチナ伝統の織物で民族の団結の象徴にもなっている「クーフィーヤ」という布が、イスラエルの国旗にあしらわれている「六ぼう星」を覆い隠していく様子が描かれています。
  イラン外務省のキャンアニ報道官は7日に出した声明で「抑圧されたパレスチナの人々がイスラエルによる日常的な暴力から自衛するのは当然で正当な権利だ」として、今回の攻撃を支持する考えを改めて強調しました。
  また、軍トップのバゲリ参謀総長は8日、地元メディアに寄せたコメントの中で「この作戦はイスラエルの政権崩壊という悪夢を現実的なものに変えた」と称賛しました。そのうえでイスラエルがアラブの盟主とされるサウジアラビアと国交正常化に向けた動きを活発化させていることについて「ばかげたショーのような向こう見ずな努力だ」と切り捨てました。
  イランはことしに入り、7年間にわたって断絶していたサウジアラビアとの外交関係を正常化させる一方、そのサウジアラビアをはじめとしたアラブ諸国が近年、イスラエルと関係改善を進めつつあることに警戒を強め、繰り返しけん制しています。
ハマス武装勢力がタイ人11人連れ去り 母親「なぜ 解放して」
  タイ政府によりますと、イスラエル側に侵入したイスラム組織ハマスの武装勢力が11人のタイ人を実効支配するガザ地区に連れ去ったということです。このうちの1人、ナタポーン・オンケーオさんの(26)母親のトンクーンさんがNHKのインタビューに応じました。
  ポスターは、パレスチナ伝統の織物で民族の団結の象徴にもなっている「クーフィーヤ」という布が、イスラエルの国旗にあしらわれている「六ぼう星」を覆い隠していく様子が描かれています。

イラン外務省のキャンアニ報道官は7日に出した声明で「抑圧されたパレスチナの人々がイスラエルによる日常的な暴力から自衛するのは当然で正当な権利だ」として、今回の攻撃を支持する考えを改めて強調しました。

また、軍トップのバゲリ参謀総長は8日、地元メディアに寄せたコメントの中で「この作戦はイスラエルの政権崩壊という悪夢を現実的なものに変えた」と称賛しました。

そのうえでイスラエルがアラブの盟主とされるサウジアラビアと国交正常化に向けた動きを活発化させていることについて「ばかげたショーのような向こう見ずな努力だ」と切り捨てました。

イランはことしに入り、7年間にわたって断絶していたサウジアラビアとの外交関係を正常化させる一方、そのサウジアラビアをはじめとしたアラブ諸国が近年、イスラエルと関係改善を進めつつあることに警戒を強め、繰り返しけん制しています。
ハマス武装勢力がタイ人11人連れ去り 母親「なぜ 解放して」
  タイ政府によりますと、イスラエル側に侵入したイスラム組織ハマスの武装勢力が11人のタイ人を実効支配するガザ地区に連れ去ったということです。このうちの1人、ナタポーン・オンケーオさんの(26)母親のトンクーンさんがNHKのインタビューに応じました。
  タイ東北部出身のナタポーンさんは長男として家族を養うため、およそ2年前からイスラエルの農場で果物などの収穫作業に当たっていたということです。トンクーンさんは、ナタポーンさんがハマスに連れ去られたとする写真をインターネットで見て初めて事態を知ったということです。トンクーンさんは「息子の身の安全を心配している。なぜ、彼が連れ去られたのか。ナタポーンに非はないので解放してほしい。心配で寝ることもできないでいる」とハマスに解放するよう求めました。
エジプトで警察官が発砲 イスラエル人ら3人死亡
  エジプトのメディアは8日、北部の都市アレクサンドリアで、警察官が銃を発砲し、イスラエル人の観光客2人とエジプト人1人が死亡したと伝えました。警察官は無差別に銃を発砲したということで、エジプトの治安当局はこの警察官を拘束し、事件の背景などを調べているということです。これまでのところイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突が関連しているのかどうかは分かっていません。
  一方、エジプトのアメリカ大使館は「事件はガザ地区とイスラエルで続く敵対行為と関連している可能性がある」として、エジプトに滞在するアメリカ国民に対して安全意識を高めるよう求めるメッセージをSNSに投稿しました。


2023.10.08-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231008-IJTWTBXEDRJ3BGHZLEQAC4WRF4/
戦闘の死者900人超に イスラエル「第4次中東戦争」以来50年ぶり大被害

  【カイロ=佐藤貴生】パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエル軍の大規模戦闘で、双方の死者は8日午後に計900人を超えた。イスラエル有力紙ハーレツ(電子版)などが伝えた。双方とも攻撃を続ける構えで、事態の悪化は必至の情勢だ。

  ロイター通信は、イスラエルが受けた攻撃でこれほどの被害が出たのは1973年10月の「第4次中東戦争」以来、50年ぶりだと報じた。緒戦でエジプト、シリア両軍に攻め込まれた戦争として知られ、イスラエル市民は危機の再来に衝撃を受けている。現地メディアでは、ネタニヤフ政権が攻撃への警戒を怠ったとの批判も出ている。
  報道によると、イスラエルでは死者数が600人に達し、2千人以上が負傷。ガザ保健当局は313人が死亡、約2千人が負傷したとしている。
  ネタニヤフ首相は7日、「今日起きたことは過去にない出来事だ」と事態の深刻さを表現し、「ガザの至る所で強力な作戦を行う。住民は今すぐ避難せよ」と報復を明言した。政権は全土に国家非常事態を宣言。数千人規模の予備役を招集する見通しで、ガザへの地上侵攻や占領に踏み切るとの観測も出ている。
  ハマスの指導者イスマイル・ハニヤ氏は7日、「敵の敗北の始まりだ」とし、イスラエルとパレスチナの衝突は占領下のヨルダン川西岸や、イスラム教やユダヤ教の聖地があるエルサレムに飛び火すると述べた。
  ハマスは7日朝から3千発を超えるロケット弾をイスラエルに発射。これに合わせて多数の戦闘員がガザからイスラエル領に侵入し、住民を襲撃して一部を拘束したとみられる。英BBC放送(電子版)は在米イスラエル大使館の情報として、ハマスが拘束したイスラエルの市民や軍人は百人に上ると伝えた。

  ロイターによると、ガザに近いイスラエル南部スデロットの路上では多数の遺体が見つかった。ハマス戦闘員の攻撃や治安部隊との銃撃戦で犠牲になったとみられる。イスラエル軍報道官は8日、ガザ周辺でハマス戦闘員ら400人を殺害し、数十人を捕虜にしたと述べた。周辺では8日も銃撃戦が続いた。
  一方、エジプト北部アレクサンドリアで8日、警官がイスラエル人観光客2人とエジプト人ガイドの計3人に発砲、殺害した。軍事衝突との関連は不明。警官は無差別に発砲したとされる。
  エジプトの外相は7日、サウジアラビアとヨルダンの外相と電話会談して対応を協議した。


2023.10.08-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231008-WAJL3DBCVNMTJAUZZGDFEPZA2A/
死者480人か イスラエル・ハマス武力衝突 さらに激化も

  【カイロ=佐藤貴生】パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが7日、イスラエルに大規模攻撃を行って同国の報復が本格化した武力衝突で、双方の死者は合わせて480人を超えた。イスラエル有力紙ハーレツ(電子版)などが伝えた。イスラエルは予備役を招集する可能性を示しており、衝突はさらに激化する恐れがある。

  イスラエルのネタニヤフ首相は7日、「ハマスは残酷で邪悪な戦争を始めた。私たちはこの戦争に勝つ」とし、「強力な復讐(ふくしゅう)」を行うと述べて軍事作戦を強化する方針を示した。
  一方、ハマスを率いるイスマイル・ハニヤ氏は「敵の敗北の始まりだ」とし、イスラエルとの衝突は占領下のヨルダン川西岸のほか、イスラム教やユダヤ教の聖地があるエルサレムに拡大すると述べた。
  報道によると、7日夜までにイスラエルで250人が死亡し、1000人が負傷。ガザでは230人が死亡して1700人が負傷した。
  ハマスはイスラエルの軍高官や民間人ら多数の身柄を拘束したとし、ガザに連行したとの情報もある。ハマスの幹部はイスラエルの刑務所にいるパレスチナ人と交換する意向を示した
  イスラエル軍の空爆などでガザでは百以上の高層住宅が損傷した。ハマスは7日夜、同国西部の商都テルアビブにロケット弾150発を新たに発射したと述べるなど、報復の応酬となっている。
  ロイター通信によると、ガザに近いイスラエル南部スデロットの路上には、ハマス戦闘員の攻撃や治安部隊との銃撃戦で犠牲になったとみられる多数の遺体が横たわっている。イスラエル南部ではハマス戦闘員が集団農場(キブツ)に籠城したとみられるほか、ガザ周辺の20カ所以上でハマス戦闘員と治安部隊の衝突が続いた。


2023.10.07-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231007/k10014218571000.html
ガザ地区からロケット攻撃 イスラエル報復 首相“戦争状態に”

  中東のイスラエルで7日、パレスチナのガザ地区からロケット弾などによる大規模な攻撃があり、地元メディアはこれまでに少なくとも40人のイスラエル人が死亡し、500人以上がけがをしたと伝えています。イスラエル側もガザ地区への報復作戦を開始していて、事態の激化が懸念されています。

  イスラエルのメディアによりますとパレスチナ暫定自治区のガザ地区から7日、2000発以上のロケット弾が発射され、イスラエル南部などで被害が出ているほか、ガザ地区から侵入した武装勢力とイスラエルの治安部隊との銃撃戦も起きているということです。
  一連の攻撃でこれまでに少なくとも40人のイスラエル人が死亡し、500人以上がけがをしたと伝えています。今回の攻撃について、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは声明で、イスラエルへの攻撃を開始しその後、複数のイスラエル兵を捕虜にしたと主張しています。
イスラエルのネタニヤフ首相「戦争状態にある」
  イスラエルではネタニヤフ首相が「われわれは戦争状態にある」とする声明を出したほか、イスラエル軍も報復作戦を開始しガザ地区にあるハマスの複数の拠点を空爆したとしています。
  中東の衛星テレビ局アルジャジーラなどは、ガザ地区では7日、160人以上が死亡したと伝えています。ガザ地区からのロケット弾による攻撃は、これまでもたびたび行われてきましたが、ガザ地区からイスラエル側に武装勢力が侵入して攻撃を行うのは極めて異例で、事態の激化が懸念されています。
ガザ地区とは
  パレスチナは、1948年のイスラエル建国とその後の中東戦争、それに内部の対立を経て、ヨルダン川西岸地区とガザ地区に分断されています。このうちガザ地区は、地中海に沿った、鹿児島県の種子島ほどの広さの土地に220万人以上が暮らしていて、イスラム組織「ハマス」が実効支配しています。
  このハマスを敵視するイスラエルによる経済封鎖が続いているほか、軍事衝突で多くの民間人が犠牲となってきました。また、ガザ地区の周囲には壁やフェンスが張り巡らされ、移動の自由も制限されていて、「天井のない監獄」とも呼ばれています。
イスラエルとパレスチナ 武力攻撃の応酬
  中東のイスラエルとパレスチナの間では、武力攻撃の応酬が続いてきました。2014年、イスラエル軍が地上部隊を投入してガザ地区に侵攻し、この軍事衝突ではガザ地区で2200人以上、イスラエル側でおよそ70人が死亡しました。また、2021年5月の衝突でガザ地区では256人が死亡しています。
  さらに、ことしに入ってから、双方による暴力の応酬が激化していて、7月にはヨルダン川西岸地区で、イスラエル軍が過去20年間で最大規模とされる軍事作戦を実施し、パレスチナ人13人が死亡したほか、イスラエル側も兵士1人が死亡しました。
  国連の発表によりますと、ことしに入ってから、パレスチナ人は200人以上、イスラエル人はおよそ30人が死亡しているということです。
各国から厳しい非難や双方に自制を求める声
  欧米や中東などの各国からは攻撃に対する厳しい非難や、双方に自制を求める声が出ています。このうちアメリカ、ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議の報道官は声明を出し「ハマスのテロリストたちによるイスラエル市民への攻撃を明確に非難する。いかなるテロも正当化できない」としてハマスを強く非難しました。また、安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官がイスラエル側と電話で協議し、イスラエルと緊密に連絡をとっていくと伝えたとしています。
  イギリスのスナク首相は「ハマスのテロリストによるイスラエル市民への攻撃に衝撃を受けている。イスラエルには自国を防衛する絶対的な権利がある」とSNSに投稿しました。
  フランスのマクロン大統領は、SNSへの投稿で「イスラエルに対するテロ攻撃を強く非難する。犠牲者やその家族らに対し、全面的に連帯を表明する」としています。
  クライナのゼレンスキー大統領はSNSへの投稿で「世界のどこであってもテロはあってはならない。それは1つの国に対してのみならず、人類や世界全体に対する犯罪だからだ。イスラエルの自衛の権利は疑いの余地はない」としてハマス側を強く非難しました。
  また、ロシア外務省のザハロワ報道官はSNSへの投稿で「状況の急激な悪化に最も深刻な懸念を表明する」としたうえで、双方に対し、即時の戦闘停止や暴力の放棄など自制を求めました。そして「現在の状況の激化は、国連や安保理決議が慢性的に無視された結果だ」などとして中東和平に向けた調停の動きを欧米が拒否していると一方的に批判しました。
  トルコのエルドアン大統領は、首都アンカラで開かれた政権与党の大会で「すべての当事者に自制を呼びかけている。緊張を高めてはいけない」と述べ、双方に対し一刻も早く戦闘をやめるよう求めました。
  エジプト外務省は声明で緊張の激化による深刻な危機に警鐘を鳴らすとした上で、市民を危険にさらさないよう自制を求めています。
  サウジアラビア外務省も声明で状況を注視しているとした上で、双方に対し暴力を止めるよう訴えています。
  一方、イスラエルと敵対し、ハマスを軍事的に支援してきたイランでは最高指導者ハメネイ師の顧問が、首都テヘラン市内で演説し「国際機関が沈黙するかげでパレスチナの子どもや若者がイスラエルに殺されてきた。われわれはパレスチナとエルサレムが解放されるまで、パレスチナの戦士たちとともにある」と述べハマスによる攻撃への支持を表明しました。







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