香港の問題-2019年のニュース


2019.12.26-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191226/wor1912260006-n1.html
香港、抗議活動で教員ら80人拘束

【香港=藤本欣也】香港政府はこのほど、反政府デモが本格化した6月から11月末までの間に、幼稚園、小・中・高校、大学の教員・補助教員合わせて約80人を抗議活動に関連して拘束したと発表した。
 また香港紙によると、同時期に、武器の所持や不適切な教材の使用などで、2人が辞職し、2人が停職処分を受けたという。
 政府は今月20日、小・中・高校の校長らに文書を出し、放火や暴行、危険物の所持などで訴追された教員らには、停職などの厳しい処分を科すよう求めた。
 このほか、教員らのヘイトスピーチ(憎悪表現)や挑発的な言動、不適切な教材使用などに対し、120件以上の苦情が教育当局に寄せられているという。調査が進行中で、すでに13件については教員らがけん責処分などを受けたという。
 教育界選出の立法会(議会)議員の葉建源氏は「政府は挑発的言動などに関する明確なガイドラインを示すべきだ。教員らがSNSを通じて発したプライベートなコメントまで問題視されている」と話している。
 一連の抗議活動では6月以降、6千人以上が拘束されているが、このうち約4割を学生が占めている。


2019.12.23-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191223/wor1912230012-n1.html
香港警察、デモ隊摘発を加速 半自動小銃押収、寄付金凍結…市民ら反発

【香港=藤本欣也】半年以上にわたり反政府デモが続く香港で、警察当局によるデモ隊の摘発が加速している。殺傷能力の高い半自動小銃のAR15が押収されたほか、抗議活動を支援する寄付金9億円相当が凍結され、デモを支持する市民らが反発している。
 香港警察の発表によると、新界地区で20日、警官に向けて短銃を発砲した男(18)を逮捕。近くの住居を捜索したところ、1丁のAR15と銃弾約200発を発見、押収した。警官にけがはなかった。
 男は、抗議活動の前線で警官隊としばしば衝突する勇武(武闘)派と呼ばれる一派のメンバーとされる。2017年に米ラスベガスで58人が死亡した銃乱射事件の際、使用されたのがAR15だった。香港では12月に入り、手製爆弾なども警察に押収されている。
 香港メディアによると、警察当局はAR15について、爆弾同様、警官を標的に使用するのが目的だったとの見方を強めている。台湾から持ち込まれた可能性があるという。
 また、警察は19日、抗議活動を支援する非営利組織「星火同盟」のメンバー4人をマネーロンダリング(資金洗浄)に関与した疑いで逮捕、寄付金として集められた7千万香港ドル(約9億8000万円)を凍結したと発表した。星火同盟はネットのクラウドファンディングで資金を調達していたが、警察は、4人がその資金を流用し保険商品などに投資していたとしている。
 星火同盟は「警察のでっち上げだ」と反発。市民らによる警察への抗議活動が続いている。


2019.12.22-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191222/wor1912220009-n1.html
香港の「新疆化」拒否 ウイグル支援集会

【香港=藤本欣也】中国共産党などへの抗議活動が続く香港で22日、新疆ウイグル自治区のウイグル族住民らが中国当局に人権を著しく侵害されているとして、ウイグル族への連帯と支援を呼び掛ける集会が行われた。集まった数千人の参加者らは「香港でも自由が侵されている」と中国を糾弾、「“香港の新疆化”を許してはならない」などと訴えた。
 同自治区では「テロ対策」と称して、多数のウイグル族らイスラム系住民が監視下に置かれ、再教育施設に収容されている。中国への抵抗運動を続ける香港でも、同様のことが起きかねないとの懸念が強い。
 この日の集会では「今日の新疆は明日の香港だ!」などのプラカードが掲げられ、ウイグル族への連帯を表明するとともに、人権や自由を侵害する中国当局を非難する声が相次いだ。ウイグル独立派が主張する「東トルキスタン」の旗を振る参加者も多かった。
 集会に参加した50代の女性は「香港には集会の自由があるはずなのにデモをすると逮捕されてしまう。新疆の問題は香港が今、直面していることだ」と指摘。事務職員の男性(23)も「中国への抵抗運動が私たちの敗北に終われば、中国による香港人の再教育が始まるかもしれない」と危機感を募らせていた。
 集会では、一部の参加者が中国の国旗をポールから引きずりおろして警官隊と衝突。警官が群衆に銃を向けるなど一時緊張した。
 香港民主派の重鎮、李柱銘・元民主党主席は香港紙への寄稿で、共産党は香港の若者を収容所に押し込み、「香港社会の核心的な価値を徹底的に洗い流して、(香港で一般に使われている)広東語や繁体字の使用を禁じ、愛国・愛党思想をたたき込もうというのか」と警鐘を鳴らしている。


2019.12.15-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191215/wor1912150014-n2.html
香港で相次ぐ爆弾事件 「IRAを手本に」報道も
(1)
香港メディアによると、6日と13日にも大学構内などで、爆弾に使用可能な危険物質が押収された。
 香港英字紙、サウスチャイナ・モーニング・ポストは「香港の治安は今、1997年の中国返還後、最も警戒を要する危険な状況だ」と注意喚起する警察関係者のコメントを伝えた。
 また星島日報によると、デモ参加者の中で勇武(武闘)派と呼ばれるグループ内に、「数十人の極端な暴力分子から成る『V小隊』があり、警察を襲撃するため、IRAのやり方を手本にしている」という。IRAは北アイルランドの英国からの分離を求め、1990年代まで爆弾テロなどの反英武装闘争を展開した。
 一方、ネット上では「爆弾摘発は当局の自作自演だ」などと警察を批判する書き込みも少なくない。
(2)
香港メディアによると、6日と13日にも大学構内などで、爆弾に使用可能な危険物質が押収された。 香港英字紙、サウスチャイナ・モーニング・ポストは「香港の治安は今、1997年の中国返還後、最も警戒を要する危険な状況だ」と注意喚起する警察関係者のコメントを伝えた。 また星島日報によると、デモ参加者の中で勇武(武闘)派と呼ばれるグループ内に、「数十人の極端な暴力分子から成る『V小隊』があり、警察を襲撃するため、IRAのやり方を手本にしている」という。IRAは北アイルランドの英国からの分離を求め、1990年代まで爆弾テロなどの反英武装闘争を展開した。 一方、ネット上では「爆弾摘発は当局の自作自演だ」などと警察を批判する書き込みも少なくない。


2019.12.5-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191202/wor1912020016-n2.html
【緯度経度】香港デモに仕組まれた罠 藤本欣也
(1)
なぜ、立てこもってしまったのだろう? ずっと疑問だった。 11月16日以降、若者らが占拠を続け、29日に開放された香港理工大のことだ。
 12日に警官隊と激しく衝突した後、構内に立てこもろうとはせず、16日未明までに撤収してしまった香港中文大とは対照的だった。
 6月に本格化した一連の抗議活動の合言葉は「BE WATER」(水になれ!)のはずである。1カ所にとどまらず、縦横無尽に、変幻自在に抗議活動を続けるという戦略だった。
 2014年の民主化運動「雨傘運動」では、79日間にわたり政府本部周辺の幹線道路を占拠し、市民の支持を失って失敗していた。
 中文大の場合、警察の突入が近いとの情報が流れた15日に、若者らが対応を協議している。香港紙、蘋果日報によると、「中文大は重要拠点だ」と“籠城”を唱える若者たちがいる一方、「雨傘運動の過ちを繰り返してはならない」「BE WATERであるべきだ」と主張する若者らがいた。3時間の協議を経て撤収が決まったという。
 「そうではない」と話す若者もいる。デモ参加者は「和理非(平和、理性、非暴力)派」と「勇武(武闘)派」に大別されるが、中文大の攻防戦に参加していたのは勇武派の若者たちだ。その1人は「仲間割れがひどかったんだ」と明かす。中文大の学生と、外部から来た若者との対立だ。
 「なぜ、大学構内のガラスを壊して回ったのか」「よそ者は俺たちの指示に従え」と迫る中文大の学生らに、外部の若者たちは「自分の大学なのだから、もっと前線で戦え」「なぜ、あれもするな、これもするなと注意するのか」と不満をぶつけた。結局、外部組に中文大で戦う意思がなくなったのだという。
(2)
理工大の構内にいた若者も証言する。「警官隊と激しい衝突があった17日夜以降、警察に完全に封鎖され、気付いたら外に出られなくなっていた」「立てこもったのではなく、脱出できなかったんだ。まんまと警察の罠(わな)にはめられた…」
 警察側が、理工大に集結した勇武派の若者らを一網打尽にしようとしたのは間違いなさそうだ。結局、理工大とその周辺で1377人を拘束している。
 今後、抗議活動は失速していくのだろうか。 24日の区議会選は民主派が圧勝したが、政府はその後、いかなる譲歩も拒否した。だが、譲歩すべきときだった。これまでそのタイミングを間違え、デモを激化させてきた経緯がある。 そして今月1日、勇武派の代わりに和理非派が主導して、大規模デモが起きた。民意を無視された市民の怒りが根底にあった。
 反政府デモは、民主派の区議会選圧勝だけでなく、政府の判断ミスによっても息を吹き返したのである。(編集局副編集長)

2019.12.5-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191202/wor1912020016-n2.html
【緯度経度】香港デモに仕組まれた罠 藤本欣也
(1)
なぜ、立てこもってしまったのだろう? ずっと疑問だった。 11月16日以降、若者らが占拠を続け、29日に開放された香港理工大のことだ。
 12日に警官隊と激しく衝突した後、構内に立てこもろうとはせず、16日未明までに撤収してしまった香港中文大とは対照的だった。
 6月に本格化した一連の抗議活動の合言葉は「BE WATER」(水になれ!)のはずである。1カ所にとどまらず、縦横無尽に、変幻自在に抗議活動を続けるという戦略だった。
 2014年の民主化運動「雨傘運動」では、79日間にわたり政府本部周辺の幹線道路を占拠し、市民の支持だ。
 「なぜ、大学構内のガラスを壊して回ったのか」「よそ者は俺たちの指示に従え」と迫る中文大の学生らに、外部の若者たちは「自分の大学なのだから、もっと前線で戦え」「なぜ、あれもするな、これもするなと注意するのか」と不満をぶつけた。結局、外部組に中文大で戦う意思がなくなったのだという。
(2)
理工大の構内にいた若者も証言する。「警官隊と激しい衝突があった17日夜以降、警察に完全に封鎖され、気付いたら外に出られなくなっていた」「立てこもったのではなく、脱出できなかったんだ。まんまと警察の罠(わな)にはめられた…」
 警察側が、理工大に集結した勇武派の若者らを一網打尽にしようとしたのは間違いなさそうだ。結局、理工大とその周辺で1377人を拘束している。
 今後、抗議活動は失速していくのだろうか。 24日の区議会選は民主派が圧勝したが、政府はその後、いかなる譲歩も拒否した。だが、譲歩すべきときだった。これまでそのタイミングを間違え、デモを激化させてきた経緯がある。 そして今月1日、勇武派の代わりに和理非派が主導して、大規模デモが起きた。民意を無視された市民の怒りが根底にあった。
 反政府デモは、民主派の区議会選圧勝だけでなく、政府の判断ミスによっても息を吹き返したのである。(編集局副編集長)


2019.12.2-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191202/k10012199231000.html
香港 15年ぶり財政赤字へ 長引く抗議活動に小売 観光など打撃

香港政府は、半年近く続く抗議活動で小売業や観光業が打撃を受けて税収が落ち込んだなどとして、今年度は15年ぶりに財政赤字になるという見通しを示しました。
  香港政府は2日、来年3月まで1年間の財政状況を発表し、当初は168億香港ドル、日本円で2000億円余りの黒字になる予定でしたが、最終的には財政赤字になるという見通しを示しました。財政赤字になれば香港で新型肺炎「SARS」が流行し、観光客が激減した影響が出た2004年度以来、15年ぶりです。
  これは米中貿易摩擦の影響で、輸出が落ち込むなど経済成長が減速したことに加え、ことし6月から続く抗議活動の影響で中国大陸などの旅行客が減少し、小売業や飲食業、観光業などが打撃を受けて法人税などの税収が落ち込んだことが主な要因です。また、影響を受けた業界に補助金を出すなど、緊急の経済支援策を行い、支出がかさんだことも影響したとしています。
  こうした中、香港島中心部の公園では2日も政府に経済的な圧力をかけようと、ストライキを呼びかける集会が開かれ、集まった人たちが政府に対し、行政長官の直接選挙の導入などを求めていました。20代の男性は「ストライキは香港政府に経済的な圧力をかけるには有効な手段だ。その原因を作ったのはわれわれではなく政府だ」と話していました。
  香港では抗議活動が半年近く続く中、経済的な影響が広がっていて、収束するめどは立っていません。


2019.11.26-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191126/k10012191081000.html
香港 区議選で圧勝の民主派 政府への圧力強める

香港で24日に投票が行われた区議会議員選挙で圧勝した民主派のメンバーらは、一連の抗議活動に強硬な姿勢で臨んできた香港政府に対する抗議の意志が裏付けられたとして政府への圧力を強めていて、政府側がこうした動きにどのように対応するのか注目されます。
  24日に投票が行われた香港の区議会議員選挙は、18の区議会の合わせて452の議席をめぐって争われ、複数の香港メディアによりますと、政府に批判的な立場の民主派がすべての議席の80%を超えて圧勝しました。
  選挙結果を受けて、区議会で最大勢力に躍進した民主派の政党「民主党」のトップは25日、記者会見し、「一連の抗議活動以来の香港市民の民意の表れだ」と述べ、政府に対し警察の対応を検証する「独立調査委員会の設置」など5つの要求の実現を求めました。
  こうした中、当選したばかりの民主派のメンバーら50人余りが25日、現在も数十人の若者らが立てこもっているとみられる香港理工大学の近くで集会を開き、政府に対し民意を尊重して校内にとどまっている若者らを即座に解放するよう訴えました。
  民主派としては、一連の抗議活動に強硬な姿勢で臨んできた香港政府に対する抗議の意志が今回の選挙で裏付けられたとして政府への圧力を強めた形です。
  香港政府が、こうした動きに歩み寄りを見せるのかどうかは不透明ですが、今後の対応しだいでは市民の反発がさらに強まり、混乱が深まる可能性もあるだけに難しい対応が迫られています。
市民求める民主的な選挙とは
抗議活動では「民主的な選挙の実現」が市民の要求の1つとなってきました。
  その背景には、ほとんどの議席が市民による直接選挙で選ばれる区議会選挙とは異なり、議会にあたる立法会の議員選挙や政府トップの行政長官の選挙が完全な形の直接選挙ではないことがあります。このうち、行政長官選挙は一般の市民には選挙権がなく、業界団体などから選ばれた「選挙委員」1200人が選ぶ仕組みです。
  選挙委員は主に政府寄りの業界団体から選ばれ、現在は7割を占める900人近くが親中派で構成されていますが、全体のおよそ1割にあたる117人は区議会議員から選ばれることになっています。この117人はこれまですべて親中派が占めていましたが、今回の選挙結果を受けて、すべて民主派が占める可能性が高くなっています。
  このため、1200人のうち300人余りの民主派の選挙委員にこの117人が加わると合わせて400人を超えて全体の4割近くまで上積みされることになり、行政長官を選ぶ選挙にも一定の影響力を持つことになります。さらに、来年秋に行われる立法会の議員選挙でも民主派が躍進すれば、立法会議員として任命される70人の選挙委員のうち民主派がさらに上積みされる可能性もあります。それでも、民主派が選挙委員の過半数を確保するのは難しく、市民が不満を募らせ「民主的な選挙の実現」を求める要因となっています。


2019.11.25-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191125/wor1911250025-n1.html
【香港区議会選】周庭氏、笑顔なき決意「一票一票は市民が流した血」

  香港の民主派勢力は25日、区議会選の大勝を受けて声明を発表、香港政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官に対し、行政長官選での真の普通選挙導入など「5大要求」の受け入れを迫った。支持基盤だった親中派勢力の惨敗で林鄭氏の一層の求心力低下は避けられず、苦しい政権運営が続く。
 「これは決して終わりではない。これからも警察による暴力の問題を解決し、民主主義を実現するために戦わなければならない」
 香港の民主活動家、周庭(アグネス・チョウ)氏(22)は25日、産経新聞などの取材に対し、抗議活動継続への決意を表明した。区議会選での民主派圧勝にも笑顔はなかった。
 デモが本格化して5カ月以上が経過し香港社会の“傷”は深まっている。そんな中で投じられた一票の重さについてこう表現した。
 「民主派がもらった一票一票はすべて市民が流した血だ。たくさんの人が負傷し、暴行され、実弾に撃たれ、亡くなった人もいる。仲間たちのことを忘れずデモに参加していきたい」
 親中派惨敗の象徴となったのは、九竜半島側の選挙区から出馬した現職、何君堯(か・くんぎょう)氏(57)の落選だった。何氏は7月21日、暴力団構成員とみられる集団がデモ参加者を襲撃した事件の黒幕として、民主派などから目の敵にされていた。
 「異常な選挙だった!」。何氏はSNSで敗北を認め、こう振り返った。勝利した民主派政党、民主党の盧俊宇(ろ・しゅんう)氏(37)は「市民たちは香港人の最も大切な価値を守ってくれた」と述べ、多くの親中派を議会から追い出した有権者に謝意を表した。
 一方、香港島の富裕層が住む選挙区で民主派陣営から立候補した日本人の賣間(うるま)国信さん(46)は、親中派の現職に敗れた。
 「地元の住民から『立候補してくれてありがとう』と声を掛けられた。これからは別の形で香港に貢献していきたい」
 民主派や親中派に属さない独立系候補も苦戦した。香港島東部の選挙区から出馬した陳溢謙(ちん・いつけん)氏(35)は“民主派ブーム”に飲み込まれて落選した。(香港 藤本欣也、三塚聖平)


2019.11.25-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191125/k10012189921000.html
香港区議選 民主派が8割超え圧勝 香港メディア

香港で、24日投票が行われた区議会議員選挙について、香港メディアは、政府に批判的な立場の民主派が、すべての議席の80%を超す380議席以上に達し、圧勝したと伝えました。親中派は惨敗し、一連の抗議活動で市民の要求を拒み続けてきた香港政府に対する不信感が明確に示された形です。
  24日投票が行われた香港の区議会議員選挙は、18の区議会の合わせて452の議席をめぐって争われ、投票率は、過去最高の71.2%に達しました。
  これまでに、ほとんどの選挙区で開票が終わり、香港メディアによりますと、日本時間の午前11時半現在、政府に批判的な立場の民主派が、すべての議席の80%を超す380議席以上に達し、圧勝しました。
  一方で、親中派は、全議席の10%余りにあたるおよそ60議席にとどまり、惨敗しました。
  選挙前の議席は、親中派がおよそ7割に対し、民主派がおよそ3割を占めていましたが、今回の選挙で、勢力が完全に逆転することになり、一連の抗議活動で市民の要求を拒み続けてきた香港政府に対する不信感が明確に示された形です。
  選挙を受けて民主派は、抗議活動を支持する民意が示されたとして、今後、民主的な選挙の実現や、警察による取締りの対応などを検証する「独立調査委員会」の設置などの要求を強めるものとみられ、香港政府の対応が注目されます。
当選した民主派団体代表「香港人の勝利」
  ことし6月以降、100万人以上が参加したとされる大規模な抗議活動を主催してきた民主派団体の代表も初当選を果たしました。
  民主派団体の代表、岑子杰さんは一連の抗議活動の最初に行われた、ことし6月9日以降、合法的で平和的なデモ行進にこだわり、何度も先頭に立ってきました。先月、立候補を届け出た際には支援者を前に、「選挙という名前の戦争が始まっただけで、抗議の運動は終わらない」と話していました。
  選挙活動中には暴漢たちに襲われる被害も受けました。選挙運動が本格化した先月中旬、岑さんは繁華街でマスクをした4、5人の男たちにナイフとハンマーで襲われて頭や顔などに大けがをして入院する事態になりました。その後、回復しましたが、投票日の24日はつえを突いて投票所に姿を見せ、支持者らから激励を受ける場面もありました。そして、当選が決まると、支持者から花束を受け取って笑顔を見せていました。
  岑さんは「一連の抗議活動が、今回の選挙を香港市民による住民投票に変えたのであり、今回の選挙結果は香港人の勝利だ。これまで強硬な姿勢を貫いてきた林鄭月娥行政長官は民意を受け止め、市民が掲げてきた5つの要求を確実に実行すべきだ」と述べました。
当選した民主派新人「今回の選挙は政府に対する住民投票」
今回の選挙では、抗議活動をきっかけに政治の道を志した若者たちが数多く立候補し、当選を果たしました。
  その1人、馮家龍さん(25)はこの夏、大学を卒業したばかりで、香港の民主主義を守りたいという思いから抗議活動に参加してきました。しかし、どんなに多くの市民が抗議活動に集まっても、その声を聞こうとしない政府を変えたいと立候補を決意しました。
  馮さんは、同じように抗議活動に参加してきた若者たちとともに戸別訪問を繰り返すなどして選挙運動を繰り広げ、投票日の24日は投票が締め切られる直前まで支持を訴えました。馮さんの選挙区の開票所には、真夜中にもかかわらず100人以上の支持者が集まったほか、会場の外にも人があふれかえり、結果の発表を待ちました。そして、25日未明、400票差で、現職の親中派候補を破り、当選が決まると、集まった人たちからは大きな歓声があがりました。
  馮さんは「6月から今まで政府は私たちの声を聞いてくれず、警察の暴力などの問題を無視してきた。市民はこんな政府を信用できないと思っており、今回の選挙は、政府に対する住民投票だと思っている。大多数の市民が求めているのは『5大要求』だということをわかってもらいたい」と話していました。
落選の親中派ベテラン「地域での取り組み足りず」
  落選した親中派のベテランで、3期目を目指していた張国鈞さんは「投票率が歴史的に高く、自分の得票も伸ばしたものの、相手には勝てなかった。今後は地域での取り組みが足りなかったのではないか検討していきたい」と話していました。
菅官房長官「自由で開かれた香港の繁栄が重要」
菅官房長官は、午前の記者会見で、「選挙の結果について、政府としてコメントするのは控えるが、香港はわが国にとって緊密な経済関係や人的交流がある極めて重要なパートナーであり、引き続き一国二制度のもとに、自由で開かれた香港が繁栄していくことが重要だ。高い関心を持って情勢を注視していきたい」と述べました。また、菅官房長官は、25日午前、中国の王毅外相と会談した際にも、香港情勢をめぐって意見を交わしたことを明らかにしました。
中国 王毅外相「最終的な結果まだ出ていない」
日本を訪れている中国の王毅外相は、24日投票が行われた香港の区議会議員選挙で、政府に批判的な立場の民主派が圧勝したことについて、「最終的な結果はまだ出ていない。最終的な結果を待とうではないか」と述べるにとどめました。
  一方で、「一つ、はっきりしていることは、香港でいかなることが起きようとも、香港は中国の領土の一部であり、特別行政区だ。香港を混乱させたり安定や繁栄を損なわせたりするいかなる企ても実現することはない」と述べ、今回の選挙結果をきっかけに、国際社会で香港の若者たちの活動を支持する動きが広がることをけん制しました。
海外メディア「抗議活動への支持が示された」
香港の区議会議員選挙で、政府に批判的な立場の民主派が圧勝したことについて、海外メディアは、「政府への抗議活動に対する支持が示された」などと大きく伝え、香港政府への批判がさらに高まるという見方を示しています。
  このうちロイター通信は、「政治的な危機の中、香港の民主派が地滑り的な勝利」という見出しで、選挙結果や内容を詳しく伝えるとともに、「過去数十年間の最悪の政治的な危機の中で、林鄭月娥行政長官への批判がさらに強まる可能性がある」として、香港政府への批判がさらに高まるという見方を示しました。
  また、アメリカのブルームバーグは、香港政府への抗議活動で警察との衝突が激しくなっている状況を踏まえ、「権力を乱用する警察への独立した調査を求める抗議活動の目標への支持が示された」として、選挙によって抗議活動に対する市民の支持の広まりが示されたと伝えました。
  このほか、イギリスの公共放送BBCは、今回の選挙について「追い詰められた林鄭月娥行政長官への支持を試すものだ」としたうえで、「区議会は、バスやゴミ処理の問題など地方の課題に対応するものだが、行政長官の選択にも影響を与えられる」として、今回の選挙が今後の香港政府のかじ取りにも影響を与えると指摘しました。


2919.11.23-Yahoo!!Japanニュース(テレNEWS24)-https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20191123-00000105-nnn-int
香港裁判所「覆面禁止法は29日まで有効」

香港では、デモの際に顔を隠すことを禁じる「覆面禁止法」について、裁判所が22日、香港政府の求めに応じて「今月29日まで法律は有効」との判断を示した。
  香港の裁判所は今月18日、「覆面禁止法は憲法に相当する香港基本法に違反している」と判断していた。これに対し、香港政府は取り締まりを続けられるよう求めていて、裁判所は22日、「今月29日まで暫定的に法律は有効」との判断を示した。取り締まりが再開することになり、デモ隊側の反発が予想される。
  一方、香港では24日、区議会議員選挙が予定されている。デモ隊の主張に理解を示す民主派と、政府に近い親中派の対立構図となっていて、現在は議席の7割程度を占める親中派に対して、民主派がどれほど議席を伸ばすかが焦点となる。


2019.11.20-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191120/wor1911200002-n1.html
【主張】香港の衝突激化 誰が一国二制度壊すのか

香港で催涙弾と火炎瓶の応酬が激化している。中国への主権返還後、最大規模の衝突だ。まずは流血の回避を含む事態の沈静化が急務である。
 香港のトップである林鄭月娥行政長官は大学構内の学生に「投降」を呼びかけたが、それよりも鎮圧を強硬に急ぐ香港警察の過剰な実力行使を戒め、抑制した対応を命じることが先であろう。
 香港の弾圧に牙をむく中国の姿勢は、一段と露骨になっている。習近平国家主席は、ブラジルでの国際会議で、香港での抗議を「暴力犯罪行為」と切り捨てた。市民の反発は「一国二制度への重大な挑戦」であるとも述べた。
 発言は誤りである。国際公約であった一国二制度を骨抜きにし、香港に強権支配を押しつけているのは中国政府ではないか。
 香港を強権が覆い尽くす中で、香港高等法院(高裁)は、デモ参加者の覆面を禁じた「覆面禁止法」は憲法にあたる香港基本法に違反すると判断した。
 香港の司法が、独立した立場で良識を示したものである。
 だが、この判断に対して全国人民代表大会(全人代)の当局者は真っ向から否定する談話を発表した。基本法の解釈権は、最終的に北京の全人代常務委員会が握る。「法治」に名を借りた露骨な介入は、まさに一国二制度の空文化を示すものだ。

 香港の民意が直接反映される区議会議員選挙は、24日に迫っている。香港当局者は抗議活動による混乱を口実に選挙の延期も示唆する。絶対に許してはならない。
 中国政府は、この局面の最中に香港警察のトップを事実上更迭し、強硬派で知られる幹部を後任に充てた。中国主導の弾圧がさらに強まることは疑いない。
 不当な抑圧に口実を与えないため、抗議を続ける学生らにも賢明な対応が求められる。公共交通の妨害などは控え、選挙を通じて民主派候補を後押しすべきだ。火炎瓶の炎で一般市民の支持を広く得ることはできない。
 なによりも、自由と民主を掲げた香港の戦いを見殺しにしないためには国際社会の強い監視の目が必要だ。中国共産党の機関紙「人民日報」は、香港問題への「外部勢力の干渉」に激しく反発している。これこそが、国際社会の対中批判が有効であることの証左ではないか。


2019.11.20-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191120/k10012183651000.html
香港で逮捕された日本人学生 釈放される

  抗議活動が続く香港で警察に逮捕された日本人の男子大学生について、現地の総領事館は、現地時間の19日夜遅く釈放されたことを明らかにしました。
香港の日本総領事館によりますと、抗議活動が続く香港では、今月17日、日本人の21歳の男子大学生が学生と警察との間で激しい衝突が続いていた香港理工大学の周辺で警察に逮捕されましたが、現地時間の19日夜遅く、釈放されたということです。
  男子大学生にけがはなく、健康状態にも問題はないということです。
  香港では抗議活動が一部で過激化し、警察が取締りを強化していて、これまでにこの男子大学生を含む合わせて2人の日本人が抗議活動に関連し逮捕されています。
  日本の外務省は、香港に滞在する日本人に対し、「レベル1」の危険情報を出して抗議活動が行われている現場には近づかないなど、十分注意するよう呼びかけています。


2019.11.19-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191119/wor1911190007-n1.html
香港デモ、観光の東京農大生逮捕 衝突の理工大周辺

  【香港=藤本欣也】反政府デモが続く香港では18日から19日未明にかけて、若者らが立てこもる香港理工大の周辺で警官隊とデモ隊が衝突を繰り返した。
 香港メディアによると、警察当局が18歳未満の中高校生を拘束しないことを約束したことを受け、19日朝までに、中高校生ら約200人を含む300人以上が大学を出た。理工大に立てこもっているのは数十人とみられている。
 香港政府によると、理工大に立てこもっていた若者らのうち、19日までに計約600人が大学を出て、約400人が拘束された。
 また、反政府デモに関連して、東京農大の20代の男子学生が香港警察に逮捕されていたことが19日、分かった。在香港日本総領事館の関係者によると、この学生は観光目的で香港入りし17日、抗議デモの様子を見るため理工大周辺に行って逮捕されたという。
 香港ではこれまでに、8月31日のデモに関連して日本人男性1人が逮捕され、保釈されている。
 一方、香港政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官は19日の記者会見で、24日の区議会(地方議会)選を予定通り実施するかについては明言を避けた。
 香港では、理工大とその周辺で警官隊と若者らが激しく衝突するなど混乱が拡大。当局が投票の安全問題を理由に、区議会選を中止・延期する可能性が取り沙汰されている。区議会選をめぐっては、反政府デモの影響を受けて民主派勢力の躍進が予想されている。


2019.11.18-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191118/wor1911180012-n1.html
香港高裁、「覆面禁止法」違憲判決 理工大では激しく衝突

【香港=藤本欣也】香港高裁は18日、デモ参加者に覆面の着用を禁じた「覆面禁止法」について、「合理的な必要性を超えて基本的な権利を制限している」として、香港の憲法に当たる香港基本法に違反するとの判断を下した。これを受け香港警察は同日、「覆面禁止法」の執行を一時的に停止した。ただ、基本法の最終解釈権をもつ中国当局が反発するのは必至だ。

 反政府活動が続く香港では17日から18日にかけて、九竜地区にある香港理工大とその周辺でデモ隊と警官隊が激しく衝突。警察は18日、同大を包囲して催涙弾を撃ち、出てきた学生らを拘束した。400人以上が構内にとどまっているとみられ、多数の負傷者もいるもようだ。警察当局は18日の記者会見で、学生らに直ちに投降するよう求めた。
 香港では、香港中文大に立てこもっていた若者らが16日未明までに同大を撤収した後、香港理工大が抗議活動の主戦場となっていた。
 理工大で17日から本格化した攻防戦では、催涙弾を撃ち込む警官隊に対し若者らは火炎瓶を投げたり、弓で矢を放ったりして抵抗。ふくらはぎに矢が刺さった警官が病院に収容された。
 17日夜には警察車両が火炎瓶を受けて炎上、陸橋も炎に包まれるなど大学周辺は騒然とした。警察は「火炎瓶など全ての攻撃をやめなければ実弾の発砲も辞さない」と若者らに異例の“最後通告”を行った。だが、若者らは放水車などに火炎瓶を投げ続けた。
 若者らは、理工大付近にある九竜半島と香港島を結ぶ海底トンネルの出入り口を封鎖、車両が通行できない状態が続いている。
 香港の全ての幼稚園や小中高校は18、19両日も休校措置が取られた。


2019.11.18-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191118/k10012181211000.html
抗議活動続く香港 立てこもる若者排除へ警察が大学に突入

抗議活動が続く香港で若者たちが大学に立てこもり、警察との衝突が続いていましたが地元メディアは18日朝、警察が大学に突入したと伝えました。これに対して若者たちは火を放つなどして抵抗し、17日夜から18日朝にかけて断続的に衝突が続いています。
  香港の九龍半島と香港島を結ぶ海底トンネルに近い香港理工大学では、17日、一部の若者たちが周辺の道路でレンガなどの障害物を置いてふさいだほか、大学内に立てこもりました。
  大学内には一時、1000人近い若者たちがいたと見られ、警察官に向けて火炎びんを投げたり、弓矢を放ったりして過激な行為が続きました。
  これに対し、警察は大学を取り囲み、放水車や催涙弾を使って排除にのりだしたほか、17日夜遅く、「危険な攻撃をやめなければ実弾の使用も含む武力を使う」として大学内から出てくるよう警告し、カトリックの神父や議会にあたる立法会の議員らが警察に強硬手段に出ないよう呼びかけました。
  そして、地元メディアによりますと日本時間の午前6時半すぎ、警察が大学に突入したと伝えました。これに対して若者たちは火を放つなどして抵抗し、警察はいったんキャンパスの外に後退したということで、17日夜から18日朝にかけて断続的に衝突が続いています。
  映像からは一時、敷地内から火の手があがっているのが確認できましたが、けが人がいるかどうかなど詳しい状況はわかっていません。
香港では先週、複数の大学で若者たちが周辺の道路をふさいで警察との衝突が相次いだほか、理工大学では、立てこもりが続き緊張が高まっていました。


2019.11.16-THE SANKEI NEWS-https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191116-00000560-san-cn
香港中文大から学生ら撤収 解放軍、道路清掃に出動
  【香港=藤本欣也】香港の警官隊とデモ隊が12日に激しく衝突した後、学生らが立てこもっていた香港中文大では16日までに、学生らが撤収した。
   同大では15日、警察の再突入が近いとの情報も流れる中、若者らが対応を協議。香港紙、蘋果日報によると、「中文大は重要な戦略拠点だ」として“籠城”を主張する若者らがいる一方、2014年の「雨傘運動」で道路を占拠し続けて失敗した「戦略的な過ちを繰り返すべきではない」と主張する若者らもいたという。結局、3時間の協議をへて撤収が決まった。
   15日深夜、大学構内では、デモ隊によって製造された多数の火炎瓶を構外へ搬出する若者たちがいた。食堂には大量の弁当や、まだ温かい野菜料理などが放置され、撤収決定が突然だったことを物語っていた。
   一方、香港に駐留する中国人民解放軍は16日、九竜地区で道路の清掃活動を行った。解放軍が駐屯地の外で活動するのは、台風で倒れた樹木を撤去した昨年10月以来2回目。軍人ら約百人がTシャツ姿で、デモによりレンガが散乱した道路を清掃した。軍人はメディアに「自発的行為だ」と話したが、民主派は「これから自発的出動が増えるのでは」と警戒を強めている。


2019.11.13-THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191114/wor1911140017-n1.html
香港の反政府デモ、平日に拡大 拘束者4000人超

【香港=藤本欣也】香港メディアは14日、政府トップの林鄭月娥(りんていげつが)行政長官が13日夜、公邸に政府高官を集めて緊急会議を行い、激化する抗議活動への対応策を協議したと報じた。夜間外出禁止令や、24日の区議会(地方議会)選の中止・延期の可否について協議したとの見方が広がっている。
 香港では14日も政府への抗議活動が行われ、ビジネス街の中環(セントラル)や、多数の邦人も居住する太古などでデモ隊が道路を一時封鎖した。
 6月9日の大規模デモ発生から6カ月目に入った抗議活動は変容しつつある。これまで市民が多数参加するデモは週末に行われることが多かった。最近は平日でも会社員ら数多くの市民が参加するようになった。
 無防備な学生に実弾を発砲するなど「警察の暴力が一層激しくなった」とする反発が広がっていることが背景にある。デモ隊と警官隊の衝突も政府庁舎周辺や繁華街だけでなく、最近はビジネス街や大学構内で頻発するようになっている。
 香港メディアによると、13日には、警官隊の催涙弾を頭に受けた少年(15)と、デモ隊に抗議している最中に頭を負傷した男性(70)が重体に陥った。6月以降の拘束者は4千人を超え、その40%近くが学生という。


2019.11.13-THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191113/wor1911130032-n1.html
香港中文大ルポ「まるで戦場」
(1)
【香港=藤本欣也】反政府デモが続く香港で今、デモ隊と警官隊の主戦場となっているのが大学だ。1千発の催涙弾と200本の火炎瓶が前日に飛び交ったと報じられた香港中文大には13日、「戦場のようだった」と振り返る救急隊員や「警察の暴力はエスカレートするばかりだ」と憤る若者たちの姿があった。(香港 藤本欣也、写真も)
 九竜地区の北部にある香港中文大は香港大と並ぶ香港屈指の名門校だ。
 12日は午後3時ごろから約10時間にわたり、校内に突入した警官隊と学生らデモ隊の間で激しい攻防戦が繰り広げられた。香港メディアは約60人が負傷したと伝えている。
 13日、山の斜面に建てられた香港中文大の構内に入ると、焦げたにおいが漂い、催涙ガスがまだ残っているのか目が少しひりひりした。がれきやガラスの破片が道路に散乱している。
 建物の壁には、香港政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官や中国共産党、習近平中国国家主席を非難する「殺人政権」「天滅中共」「ゴキブリ近平」などの言葉が殴り書きされていた。「死なばもろとも」を意味する言葉も記されていた。
(2)
焼け焦げた車両やタイヤ、廃材、傘などで作られたバリケードの手前に、12日の激戦地、陸橋「二号橋」があった。 橋をはさんで、警官隊とデモ隊が対峙(たいじ)。警官隊が放つ催涙弾で一帯は白煙に包まれたという。デモ隊側は火炎瓶で応戦した。
 「まるで戦場のようだった。次から次へとけが人が出た。頭に3発のゴム弾を浴びた若者もいた」。昨夜から学生らの救援で働きづめというボランティア男性(22)は話す。「余りの非情さに、泣き出したくなるほどだった」という。
 橋の攻防戦に参加し、ほとんど眠っていないという飲食店従業員の男性(22)は「警察の暴力はエスカレートするばかりだ。催涙弾やゴム弾などを撃ち続けていた。信じられない」と怒りをぶちまけた。
 昨夜、仕事が終わってから駆けつけたという会社員の男性(27)は「市民をこれほど苦しい目にあわせる林鄭は史上最悪の行政長官として歴史に刻まれるだろう」と憤った。
 構内には親子連れの姿も。12歳の息子と7歳の娘を連れて歩いていた父親のアンドリューさん(50)は「今の政府がどれだけひどいことをしているかを子供たちに見せようと思ったんだ」と話していた。


2019.11.13-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191113/k10012175511000.html
香港 1日で催涙弾1500発以上 取締り強化の背景に中国が?

香港では13日も各地で政府や警察に反発する市民が道路に障害物を置くなどして交通網を妨害したため、商店の営業や学校の授業に影響が出たほか、中心部の金融街では今も道路の通行ができないなど混乱が続いています。

このうち国際的な金融センターでもある中心部のオフィス街では11日から3日連続で大勢の若者や市民が集まり、「自由のために闘う」などと叫んでいました。
 一部の若者らは周辺の歩道を砕いて道路上にばらまき、交通をまひさせ、現在も通行ができない状態が続いています。
 このほか地下鉄やバスなども多くの路線で運行が取りやめになり、商店が営業中止になったり、学校の授業が休講になったりするなど、影響が広がっています。
 一方で、12日の夜、一部の大学で校内にこもった学生らと警察が対じし、一時、警察が大学の敷地内に入って学生数人を逮捕したことを受けて、若者の間では批判の声も広がっています。
 警察は物を投げたり放火したりするなどの危険な行為が相次いでいると非難したうえで、12日の一日で1500発以上の催涙弾を使い142人を逮捕したと発表し、今後も取締りを強化する姿勢を示しています。
 しかし、今後の対応次第ではさらに市民が反発して対立が一層深まる可能性もあり、混乱が収まる見通しは立っていません。
抗議活動に一部で反発の声も
香港各地で交通網を妨害する活動が続いていますが、通勤や通学で公共交通機関を利用する市民の足にも影響が広がり、一部で反発の声も上がっています。
 このうち地下鉄の駅では抗議活動の参加者が車両の扉が閉まるのを妨害して出発が遅れ、これにいらだつ市民との間で激しい口論となっています。
 香港では市民の多くがデモの要求に応じようとしない政府の対応を批判しているものの、市民生活にまで影響を及ぼす抗議活動の手法には意見が分かれています。

中国出先機関が非難「テロリズムに向かっている」
香港にある中国政府の出先機関は12日、「香港の暴力や破壊活動は法治の最低ラインを何度も破り、テロリズムに向かっている」とする声明を出しました。
 声明では、11日に抗議活動の参加者と口論になった男性が油のようなものをかけられて火をつけられ重体となっていることを取り上げ、「暴徒が破壊活動に反対する市民に火をつけたことは良識ある人たちを憤慨させた。このような殺人的な行為は明らかなテロリズムだ」として、「暴徒」や「テロ」といった表現を使って非難しました。
 そのうえで「香港政府や警察があらゆる必要な手段を取って暴力やテロ行為を食い止め、一刻も早く秩序を回復することを断固として支持する」として、香港政府に対し抗議活動にさらに厳しく対処するよう迫るねらいがあるとみられます。

警察が発砲 圧力強める当局
香港政府は抗議活動への取締りを強化しています。先月1日には、抗議活動に参加していた18歳の高校の男子生徒が警察に拳銃で撃たれて一時、重体になり、今月11日にも、警察官の発砲で21歳の男子学生が一時、重体となりました。今月8日には警察の強制排除の最中に建物から転落した大学生が死亡しています。
  また、香港に出張中の日本人男性がデモに遭遇してけがをし、日本総領事館は、抗議活動の現場に近づかないよう注意を呼びかけています。
  一連の抗議活動のきっかけは、香港政府が、議会にあたる立法会に提出した、容疑者の身柄を中国本土にも引き渡せるようにする条例の改正案でした。
  中国当局が中国に批判的な活動をする人などの引き渡しを求めるおそれがあるとして反発が広がり、ことし6月9日、民主派の団体が呼びかけたデモに主催者の発表で103万人が参加しました。
  その後も抗議活動は続き、一部が過激化する中、香港政府は9月4日、条例の改正案を撤回すると発表し翌月に正式に撤回しました。
  ただ、抗議活動が長期化するにつれて、市民の要求は改正案の撤回だけにとどまらず、警察がデモ隊を取り締まる際の対応が適切かどうかを検証する独立調査委員会の設立や、民主的な選挙制度の実現にまで広がっています。

専門家「取締り強化の背景に中国の存在」
中国政府はこれまで「暴力や違法行為に対しては絶対に手加減してはならない」として、香港政府や警察に対して厳しく取り締まるよう繰り返し求めてきました。
  11月4日には、習近平国家主席が香港の林鄭月娥行政長官と、一連の抗議活動が始まってから初めて会談し、事態の収拾に向けて改めて対策をとるよう求めました。
  香港の政治に詳しい専門家は、抗議活動に対する警察の取締りが強まっている背景に中国政府の存在があると指摘しています。
  「(11日の発砲は)事前の警告もなく近距離から体の中心を狙って発砲していて、デモ隊への対応がこれまで以上にエスカレートしているほか、市民の反発を招きかねない行為を繰り返すようになっている。林鄭長官は中国側から抗議活動をより強硬な方法で早期に鎮圧すべきだという方向性を示されたはずで、取締りの強化に“お墨付き”を得たとみられる」(立教大学 倉田徹教授)
  中国政府は、激しさを増す抗議活動を抑え込めていないことにいらだちや危機感を示していて、香港政府に対して抗議活動に一層厳しい姿勢で対処するよう指示している可能性もあります。

次の焦点は区議会議員選挙
「選挙は平和的手段で政府に抗議するために残された最後の機会」(候補者)今、香港で注目を集めているのは今月24日に予定されている区議会議員選挙です。
  市民の直接投票で決まる、香港で行われる選挙の中では最も民主的な方法で行われ、民意を反映しやすいとされ、多くの市民が今回の選挙を抗議の1つととらえています。
  しかし、民主派と、政府寄りの親中派との間で激しい選挙戦となっていて、民主派の候補や団体のメンバーが何者かに襲撃される事件が相次ぐ一方、親中派の候補者が刃物で刺されたり、選挙事務所が破壊されたりする事件も起きています。
  抗議活動による混乱が続く中、選挙では民主派側が勢力を伸ばすと見られていますが、親中派の陣営からは「暴力が止まらなければ、選挙の延期や取り消しを検討すべきだ」といった声があがっており、市民の間では政府が社会の混乱を理由に選挙を延期したり、取り消したりするのではないかという懸念が広がっています。
  立教大学の倉田徹教授は「親中派からは選挙を延期すべきだという意見も根強いが、法的には14日間しか延期できない。仮に延期した場合でも“人為的な延期”と見なされ、世論の反発は避けられない」と述べ、香港政府は難しい判断を迫られるという見解を示しています。


2019.11.11-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191111/k10012172401000.html
香港 警察がデモ参加者に発砲 21歳男性が重体 各地で混乱

抗議活動が続く香港で11日朝、抗議活動に参加していた若者に警察官が発砲し、男性1人がけがをして病院に搬送され、現在治療が続いていますが重体だということです。香港では11日、交通を妨害して警察や政府に抗議しようという呼びかけが行われていて各地で混乱が続いています。
 香港の警察によりますと、日本時間の11日午前8時半ごろ、香港島東側の住宅地で抗議活動に参加していた若者に警察官が発砲し、男性1人がけがをして病院に搬送されました。
 香港政府によりますと、けがをしたのは21歳の男性で現在治療が続いていますが重体だということです。現場の映像では、警察官が抗議活動に参加していた男性を取り押さえようとした際に、正面から近づいてきた黒い服と黒いマスク姿の若者に1発発砲し、その直後、背後から近づいてきた黒い服と黒いマスク姿の別の若者に2発発砲する様子が確認できます。
 香港メディアによりますと、現場周辺では当時、大勢の若者たちが路上に物を置いて道路を塞ごうとしていて、警察官が取締りにあたっていたということです。
 香港では11日、SNSを通じて、交通を妨害して政府や警察に抗議しようという呼びかけが行われていて、各地で道路を塞ぐ市民とこれを取り締まろうとする警察との間で衝突が起き、九龍半島では大学周辺で警察が催涙弾を使って強制排除に乗り出しました。また、地下鉄でも線路上に物が置かれたため、一部で運行を取りやめています。
 香港では先週、一連の抗議活動が始まって以来、初めての死者が出たあと、警察や政府に対する市民の反発が激しさを増していて、混乱が続いています。
警察官 続けざまに3発発砲
SNSで中継された現地からの映像では、警察官が路上でデモに参加していた人に銃をつきつけて制止しようとしていたところ、もみ合いになり、続けざまに3発発砲する様子が確認できます。
 警察官は、デモに参加していた人ともみ合いになった際に、正面から近づいてきた黒い服を着た人に発砲したあと、背後から近づいてきた別の黒い服を着た人にも2発発砲しました。
 銃声がした直後に、黒い服を着た2人が路上に倒れ込み、2人の警察官によって地面に押さえつけられましたが、このうち1人は逃走を図ろうとして警察官に取り押さえられました。
 周辺では、スマートフォンなどで一部始終を撮影している人の姿も見られました。
香港警察 発砲は指針に基づいたもの
警察官が抗議活動に参加していた若者に発砲したことについて、香港の警察はコメントを発表し、「銃器の使用に関しては厳格な指針があり、すべての警察官はみずからの法の執行と行為に責任を持っている」として、警察官の発砲は指針に基づいたもので問題はないという認識を示しました。
 そのうえで、「市民の安全を脅かす活動や警察の職務の執行を妨げる行為をやめて冷静になるべきだ」として、抗議活動に参加する人たちに自制を呼びかけました。

香港メディアは、警察の白バイが路上で抗議活動をしていた人たちに何度も突っ込む映像を伝えました。映像では、警察官たちが警棒を持ってデモ隊を追いかけていたところ、1台の白バイが現れ、デモ隊の列に何度も突っ込んだあと、走り去っていく様子が確認できます。
 香港メディアは白バイにはねられて2人がけがをしたと伝えています。
 警察は会見で、白バイを運転していた警察官は、デモ隊から襲われていた同僚の警察官たちをデモ隊から引き離そうとして白バイで割って入ったと釈明したうえで、行き過ぎがあったとして白バイを運転していた警察官を停職処分にしたとしています。
 これについて、SNS上では「警察は私たち市民を殺そうとしているのか」と批判の声が相次いでいます。
官房長官「大変憂慮している」
菅官房長官は午後の記者会見で「デモと警察の衝突により、多数の負傷者が出ていることは大変憂慮している。引き続き、自制と平和的な話し合いを通じた解決を関係者に求めていくとともに、事態の早期収拾と香港の安全を強く期待している」と述べました。
 そのうえで、邦人の安全確保について「スポット情報の発出をはじめ、これまで累次にわたって抗議デモの動向について注意喚起を行ってきたところであり、引き続き高い関心を持って情勢を注視していきたい」と述べました。


2019.11.8-THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191108/wor1911080012-n1.html
香港抗議現場付近で学生転落死 若者ら反発強める
(1)
【香港=藤本欣也】香港警察への抗議活動が行われていた新界地区で建物から転落した香港科技大の男子学生(22)が8日、死亡した。反政府デモを続ける若者らは「警察の暴力による死者が初めて確認された」と反発を強めており、抗議活動がさらに激化する可能性がある。
 同日夜には香港各地で学生の追悼会が催された。
 学生は4日未明、新界地区の住宅街にある立体駐車場の3階から2階に転落。頭を強く打ち、8日、搬送先の病院で死亡した。
 学生がどのような状況で転落したかは不明。ただ、警官隊は当時、市民らを排除するため立体駐車場に向けて催涙弾を撃っており、「学生は催涙弾から逃れようとして転落したのでは」との見方が浮上した。
 警察は「催涙弾を撃った場所は現場から120メートル離れている」と釈明したが、警察が救急活動を妨げたとの証言もあり、「学生は警察の暴力によって死亡した」と信じる若者が多い。
(2)
背景には、警察の過剰な制圧行為への反発があるほか、最近、若者たちの不審死が社会問題化している事情がある。
 9月下旬、新界地区の海で水死体で発見された女子専門学校生(15)のケースもその1つ。
 香港メディアによると、女性は全裸だったが、警察当局は「遺体に外傷はなく事件性はない」と判断、自殺と見てすぐに火葬された。しかし友人らは「彼女は泳ぐのが得意だった」として自殺を疑問視した。
 政府寄りのテレビ局を通じて、母親が自殺を認めた映像が流れたが、友人らは「別人だ」と指摘。女子学生は反政府デモに参加していたことから、「警官に暴行されて死亡し、警察はそれを隠蔽している」とみる若者が多く、今でも抗議活動が続いている。
 7日、抗議活動に参加した女性(20)は「全裸で見つかったのに事件性がないとは…。警察は信用できない」と話していた。
 香港のネットメディアによると、デモが本格化した6月以降、入水自殺や飛び降り自殺として処理される若者の遺体が増えているという。真偽は不明だが、それを信じる市民は多い。


2019.11.8-THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191108/wor1911080001-n1.html
【主張】習近平氏と香港 「法治」名目の弾圧許すな

 中国の習近平国家主席が香港特別行政区の林鄭月娥行政長官と会談した。6月に香港で抗議デモが本格化した後、初のトップ会談である。
 習氏は、更迭説も流れた林鄭氏に強い信任を与え、香港での「暴力と動乱の制止と秩序回復」が最重要任務だとした。
 自由と民主を掲げる香港市民の抗議を「暴力と動乱」と切り捨てるとは、あまりにも粗暴な認識である。香港で格段に弾圧が強まることを警戒すべきだ。
 10月末に開かれた中国共産党の中央委員会総会(4中総会)は、国家統治を強力に引き締める方針を決議した。
 香港に関して、決議は国家の安全維持を強調し、「法律制度と執行メカニズム」の整備を打ち出した。法治に名を借りて弾圧を強化する方針の表明といえる。
 中国では法治の上位に共産党の指導がある。法は党が政策を実行するための手続きにすぎない。普遍的な「法の支配」を前提とする民主主義国の価値観とは根本から異なるのである。

 「一国二制度」の下、香港ではかろうじて三権分立が維持されてきた。1997年の主権返還後には、国家分裂活動などを禁じた香港基本法23条に基づく治安法規の制定が議論されてきたが、これも世論の反発で見送られてきた。
それが4中総会の決議を受けて立法化に動くことはないか。中国本土のような、人権を無視した治安法規の制定と執行を香港に持ち込ませてはならない。
 香港の行政長官について、任免制度の「改善」を示唆する発言も中国の法制責任者から出た。
 行政長官は親中派優位の組織による間接選挙で選ばれてきた。中国はこれに飽きたらず、選任制への移行を視野に入れたのではないか。「普通選挙」(直接投票)を求める香港の民意と逆行する発言は、混乱をさらに深めよう。
 林鄭氏は、中国政府で香港問題を主管する韓正副首相とも北京で会談した。相次ぐ高位会談で中国は香港問題の前面に出てきた。国際社会は、中国による介入の阻止に向けて声を高めるべきだ。
 訪中したマクロン仏大統領は習氏との会談で、香港での「段階的な緊張緩和」を繰り返し迫った。安倍晋三首相も中国の李克強首相に香港情勢への「憂慮」を伝えたが、これでは腰が引けている。何を中国に遠慮しているのか。


2019.11.5-THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191105/wor1911050010-n1.html
習主席が香港長官と会談 「秩序回復が最重要任務」と強調

【北京=三塚聖平】中国国営新華社通信によると、習近平国家主席は4日夜、香港政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官と上海で会談した。香港で「逃亡犯条例」改正問題に端を発した混乱が続いていることについて、習氏は「暴力を止め動乱を制し、秩序を回復することが香港の当面の最重要任務だ」と事態の沈静化を求めた。香港で抗議デモが本格化した6月以降、両者による会談が伝えられるのは初めて。
 習氏と林鄭氏は、5日に開幕した「中国国際輸入博覧会」に出席するため上海を訪れていた。習氏は「法に基づいて暴力活動を止め、処罰することは広範な香港市民の幸福を守ることになる」と強調。深刻化する抗議デモに対し、引き続き厳しい姿勢で対処するよう求めた。
 一方、林鄭氏に対しては「中央(政府)はあなたに高い信頼を置いている」との認識を示した。林鄭氏をめぐっては、10月下旬に英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が、林鄭氏の更迭を中国政府が検討していると報道している。
 林鄭氏は香港情勢について習氏に報告した。会談には、中国共産党中央弁公庁の丁薛祥(てい・せつしょう)主任、外交担当トップの楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(よう・けつち)共産党政治局員、王毅国務委員兼外相、趙克志国務委員兼公安相らが同席した。
 林鄭氏は、香港政策を担当する韓正副首相(共産党政治局常務委員)と6日に北京で会談する予定。


2019.10.24-YahooJapanニュース(読売新聞オンライン)-https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191024-00050158-yom-int
「逃亡犯条例」正式に撤回…香港長官の更迭検討報道も

【香港=角谷志保美】香港政府は23日、中国本土などへの犯罪容疑者の引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案を正式に撤回した。香港では6月以降、条例改正案の撤回を求める抗議運動が大規模化し、4か月たった今も混乱が続いている。
 李家超・保安局長が立法会(議会)で、「政府の立場を明確にするため、正式に撤回を宣言する」と述べた。議場では、民主派議員から李氏に対し、改正案が招いた混乱の責任を取って辞任を求める声が上がった。
 改正案は4月に立法会に提出されたが、香港政府トップの林鄭(りんてい)月娥(げつが)行政長官は6月に改正案の審議を停止し、9月4日には撤回する方針を発表していた。しかし、デモ隊側は、改正案の撤回や行政長官選挙の民主化を含む「5大要求」を掲げ、全ての要求の実現が必要だとして警官隊との衝突を激化させており、混乱が収まる兆しは見えない。
 英紙フィナンシャル・タイムズは23日、複数の情報筋の話として、行政長官の任免権を持つ中国政府が、林鄭氏の更迭を検討していると報じた。「暴力に屈した」との印象を避けるために状況が安定するのを待ち、来年3月までに、2022年までの林鄭氏の残りの任期を務める暫定行政長官を就任させたい考えという。
 ただ、中国外務省は23日の定例記者会見で、「政治的なデマだ」と一蹴(いっしゅう)し、「中央政府の林鄭行政長官と香港政府の施政への支持は揺るがない」と強調した。
 一方、条例改正案提出のきっかけとなった台湾での殺人事件の容疑者の男は23日、香港の刑務所で別件での服役を終えて出所した。男は香港住民で、台湾と香港の間には容疑者引き渡し協定がないため、条例が改正されなければ引き渡すことができない。


2019.10.21-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191021/wor1910210009-n1.html
香港「雨傘」元リーダー、黄之鋒氏「日本も香港人権法導入を」 産経インタビュー

【香港=森浩】2014年に香港で民主化を求めた「雨傘運動」の元リーダー、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(23)が21日までに産経新聞のインタビューに応じた。「逃亡犯条例」改正案を発端とした抗議が長期化する中、諸外国が中国や香港政府に圧力を強めることの重要性を強調。米議会で審議が進む「香港人権・民主主義法案」について「日本でも導入してほしい」と求めた。
 黄氏は今回の抗議活動と雨傘運動の違いについて、「大きく変わったのは中国の体制」とした。「当時、習近平氏は国家主席となってまだ2年。その後、独裁体制が強化され、習氏はいまや皇帝になった。彼の強権的な手法により、香港人への人権侵害もより強まった」と話した。
 今回の抗議活動については「リーダーがおらず、市民が自然と集まり、臨機応変に抗議活動を行っている」と評価。雨傘運動の際は20万人だった参加者が「いまや200万人を超える大きな運動となった」と分析する。一部の抗議者が駅を壊すなど過激な行動を見せていることには、「雨傘運動の際に政府と交渉したが、結局何も変わらなかった。平和的に交渉しても何も変わらないことを政府が教えてくれた」と理解を示した。
黄氏は9月に訪米し、米議会の公聴会で証言。「香港人権法案」の可決を強く促した。「成立すれば、香港の人権侵害をする政治家らに対し、資産凍結などの措置が取れる。(膠着=こうちゃく=する抗議活動の現状を打開するには)国際的な圧力が重要だ。米国だけでなく、日本にも導入を求めたい。導入されたら日本は人権を重視する国という国際的なアピールにもなる」とした。


2019.10.20-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191020/wor1910200014-n1.html
香港で大規模デモ、市民に催涙弾発射
(1)
【香港=森浩】中国本土への容疑者引き渡しを可能とする「逃亡犯条例」改正案を発端とした抗議活動が続く香港で20日、デモ参加者にマスク着用を禁じた「覆面禁止法」などに反対する大規模デモが行われた。集まった市民に警察が催涙弾を発射するなど、混乱はなお、続いている。
 民主派団体「民間人権陣線(民陣)」が計画したデモに、警察当局は許可を与えなかったが、警察署の周辺など複数の地点で多数の市民が抗議活動を行った。
 デモ隊は、九竜半島南部、尖沙咀(チムサーチョイ)周辺から、目抜き通りの彌敦道(ネイザン・ロード)などを行進した。「(普通選挙導入などの)5点の要求はひとつも欠かせない」とシュプレヒコールをあげ、民意を訴えた。
 香港では、16日に民陣の岑子傑(しんしけつ)代表が何者かに襲撃されたほか、19日にもデモ実施に関するビラを配っていた男性が切り付けられ負傷している。デモでは民主派を弾圧する暴力行為に抗議する声も聞かれた。
(2)
香港中文大の調査によると、政府が緊急導入した覆面禁止法について、市民の62%が「逆効果」と回答している。マスク姿でデモに参加した大学生、フィル・イップさん(21)は「警察は私たちを撮影し、個人を特定しようとする。そんな巨大な敵には顔を隠して戦う必要がある。禁止法は香港市民をさらに怒らせた」と話した。
 デモ隊の一部は、警察署の敷地や地下鉄駅に火炎瓶を投げ込み、警察は放水や催涙弾で応じた。


2019.10.19-Yahoo!!Japanニュース-https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191019-00030386-president-pol&p=1
香港デモを嗤う日本人はすぐ中国に泣かされる
(1)
マスク姿の若者たちを次々と捕まえていく異常さ
 若者たちのデモが続く香港で10月4日、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は議会の承認なしに長官の権限で法律を制定できる「緊急状況規則条例(緊急法)」を発動した。緊急法の発動は半世紀ぶりである。
 これに基づき、翌5日に「覆面禁止法」が施行され、デモ参加者がマスクやゴーグル、覆面で顔を覆うことが禁じられた。この結果、8日までに計77人の身柄が拘束された。 香港政府は「デモの若者たちが顔を隠していることが警察の捜査を妨害し、デモ隊の暴力行為をエスカレートさせる」との説明を繰り返し、マスク姿の若者たちや学生を次々と捕まえている。
 これが政府のやることだろうか。異常である。開いた口が塞がらない。
混乱を収拾するには「話し合い」を重ねるしかない
 22年前、1997年8月の香港では、死亡した3歳男児から鳥インフルエンザウイルス(H5N1タイプ)が検出され、人には感染しないと考えられていたこのウイルスが人にも感染することが分かり、世界に衝撃を与えた。その後、香港政府は香港のすべてのニワトリの殺処分を断行し、人への感染を未然に防ぎ、WHO(世界保健機関)など国際社会から大きく評価された。
 この鳥インフルエンザ禍のとき、香港政府高官や政府関係者をはじめ、香港のあるゆる人はマスクを付けていた。もしまた大きな問題になったときはどうするのか。
 そもそも香港の警察がデモ隊に催涙ガスを浴びせかけるからマスクを着用するのだ。マスクを禁止したところで、デモに香港人口の4人に1人に相当する200万人(主催者側発表)もの市民を動員できるエネルギーを押さえ付けることなどもはやできまい。
 中国と香港政府は武力による制圧を国際社会に強く批判されることを懸念し、逮捕者を増やすことでデモを鎮圧しようと覆面禁止法を施行したのだろう。苦肉の策なのだが、中国と香港政府はそこまで行き詰っているのである。
 中国も香港政府も何が重要であるかを理解していない。大切なのは市民との対話だ。混乱を収拾するには、何回も話し合いを重ねるしかない。近道はないのだ。
(2)
中国の市場力に、あのNBAもすぐに白旗をあげた
NBA(米プロバスケットボール協会)のチームのひとつ、ロケッツの幹部が香港デモの若者たちに共鳴してツイートした。香港の若者たちが「自由のために闘おう」と既存メディアやネットを通じて海外にも発信しているからだ。
 ところが、である。中国当局から強い反発を受け、ツイートの削除を余儀なくされた。そのうえNBAは「発言が不適切で深く反省している」との声明まで出した。
 背景にはこんな歪んだ構図がある。いま中国ではNBAのテレビ中継の視聴者が何億人もいる。広告を出すスポンサー企業にとって中国は金のなる大木なのだ。スポンサー企業はそんな中国を大切にする。NBAといえども、スポンサーには勝てない。簡単に言えば、中国の市場力にアメリカのプロスポーツ界が負けたのである。
香港を「対岸の火事」ではなく、「他山の石」にしたい
 自由と民主主義を求める香港。これに共鳴したアメリカのスポーツ界。しかし中国政府が成り上がったその経済力を武器にしてクレームを付ける。
 これと同じ構図が日本国内でいつ起きてもおかしくない。いやもうすでに起きているかもしれない。
 相手は共産党による一党独裁国家である。人口は14億人と世界第1位、経済規模はアメリカに次ぐ第2位だ。NBAがクレームに屈したように、中国が市場力を背景に頻繁に文句をつける事態となれば、日本の社会から自由が失われ、民主主義そのものが成り立たなくなる。沙鴎一歩はこれを強く懸念している。だから香港の問題をたびたび取り上げているのだ。
 香港の民社派市民や学生、若者たちの中国に対抗する活動は「対岸の火事」ではなく、「他山の石」だ。そう捉えることで、日本は中国と真っ当に勝負できる。あのふてぶてしい面構えの習近平国家主席を黙らせることができるのだ。
「自治を崩壊させかねない危うい措置は撤回すべきだ」
 10月5日付の朝日新聞の社説は「混乱を収拾するよりも、逆にこじらせる恐れが強い。香港の自治を自ら崩壊させかねない危うい措置を撤回すべきだ」とストレートに書き出してこう指摘する。
 「これをもとに、マスクなどで顔を覆うことを禁じる『覆面禁止法』が制定された。『暴力行為の抑制』を目的とし、きょうから施行されるという」
「4カ月以上に及ぶ市民デモの本質を、長官はいまだに理解していないのではないか。市民の怒りは、こうした強権による自由の制限に向けられており、反発を増幅する可能性が強い」
 朝日社説の指摘するように、香港市民の怒りが「強権による自由の制限」に向けられているのは間違いない。朝日社説は続ける。
暴力や破壊行為は香港政府や中国の思うつぼ
 「香港で法律をつくるのは立法会の役割だ。その手続きを省略する緊急法の発動は、『公共の安全に危害が及ぶ状態』などに限定されている」
「前回の発動は、英国の統治に市民が反対した1967年の暴動の際だった。当時は爆弾の使用などで51人の死者が出た。今の香港がそこまでの状況であるとは言いがたい」
「緊張を高めているのはむしろ香港政府側の強硬姿勢である」
 朝日社説が書くように、いまの香港の事態が「公共の安全に危害が及ぶ状態」とは言えない。ただここで気を付けなければならないのは、デモが一部で暴徒化し、警察官に暴行したり、空港などを占拠して建造物を破壊したりしている点である。暴力や破壊行為は香港政府や中国の思うつぼだ。香港の民主派が国際社会から批判されることになりかねない。
(3)
たしかに欧米にも「覆面禁止法」は存在するが…
 毎日新聞(10月6日付)の社説も「香港の緊急法発動 反発高める強引な手法だ」との見出しを掲げて香港政府を批判する。
 「香港政府はデモ参加者がゴーグルやマスクで顔を隠していることで違法行為の追及が困難になり、暴力がエスカレートしていると主張する」
「欧米にも覆面を禁止する法律があることは確かだが、議会を通じた立法措置に基づくものだ。『緊急法に基づく措置と比較すべきではない』という民主派の主張には理がある」
 欧米に覆面禁止の法律が存在することは重要な指摘だろう。だが、毎日社説がいうように緊急法で定めるべき法律でない。
 毎日社説は最後にこう主張する。
 「長引く抗議活動は国際金融都市、香港の経済にも深刻な打撃を与えている。民主派も暴力のエスカレートを望んではいまい。ここは林鄭氏が一歩後ろに引くべきだ」
 中国の習政権は「一国二制度」を尊重しているというが、それなら言うまでもないことだろう。香港政府や中国は、政治は国民や市民のためにあるという統治の基本に立ち返るべきだ。強権的な統治を続けても出口はみえない。
「強権に屈しない強い意思の表明であり、支持したい」
 「香港の緊急法 実質的な『戒厳令』布告だ」との見出しを付けた10月7日付の産経新聞の社説(主張)はまずこう訴える。
 「林鄭月娥長官は『一国二制度』の原則を自ら壊しかねない一線を越えてしまった。事態は極めて重大である」
 一国二制度とは、簡単に言えば共産・社会主義を維持しながら資本主義を導入する中国政府が編み出した独自の統治方法で、香港政府に高度な自治も与えている。産経社説は行政長官に大きな権限を集中させる緊急法が、この制度を崩壊させる要因になると指摘しているのだ。さらに産経社説は主張する。
 「最初の緊急立法として、デモ参加者のマスク着用を禁じる『覆面禁止法』が制定された。この法律が施行された5日、数千人もの香港市民がマスク姿で白昼堂々とデモを展開した。マスクをとれば身元が簡単に特定されてしまう。強権に屈しない強い意思の表明であり、支持したい」
 保守色の濃厚な産経社説としては、「強権に屈しない強い意思」を「支持したい」とするのは、興味深い書きぶりである。その姿勢が香港デモ以外の話題でも共通しているかは、しっかり読み比べていく必要がある。
(4)
私たち日本人なら、中国の圧力にどう応じるか
 最後に産経社説は書く。
 「無理を承知で言えば、林鄭氏がなすべきは、今からでも緊急法を撤回し、実質を伴った市民との対話に臨むことだ。それができないなら、せめて混乱の責任を取り辞職を検討すべきだろう」
「自由を求める香港市民の声が、さらなる強権で封じられることを傍観してはならない。国際社会は結束して中国の介入を防ぎ、香港の高度自治を訴えるべきだ」
 「無理を承知で言えば」は余分だが、「緊急法の撤回」や「市民との対話」には沙鴎一歩は大賛成である。私たち日本人は、香港の抗議デモを「他山の石」とする必要がある。中国の圧力にどう応じるか。今後の動きに世界が注目している。
ジャーナリスト 沙鴎 一歩


2019.10.6-SANKEI BIZ-(産経新聞 THE SANKEI NEWS)-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/191006/mcb1910061120005-n1.htm
中国メディアがマスク禁止の緊急法を正当化 政府は「デモは外国勢力関与」と警戒

【北京=三塚聖平】中国共産党機関紙の人民日報など中国各紙は5日、香港でデモ参加者のマスク着用を禁ずる「覆面禁止法」の施行を受け、「多くの国と地域が覆面を禁じる法律を制定している」などと指摘し、同措置は正当なものだと主張した。

人民日報は5日付の1面記事で、「林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官が率いる(香港)特区政府が法治の尊厳を守る能力を必ず持っていると信じている」とし、香港政府に事態収拾を迫った。

同記事は、欧米やカナダに同様の禁止措置があると指摘。広東省党委員会機関紙の南方日報(電子版)も「世界で広く行われている手段だ」と措置の正当性を強調した。
 一方、中国政府は香港の混乱が中国本土に飛び火することを防ぐため、デモに対する批判を強めている。 背景には、米国を念頭に外国勢力が混乱を激化させているという中国政府の警戒感があるとみられる。
 香港政策を担当する香港マカオ事務弁公室の報道官は4日の談話で、香港のデモについて「外部勢力の介入・関与の下で『香港版カラー革命』に変化している」と指摘した。カラー革命は、2000年代に旧ソ連圏で相次いだ大衆行動による政権交代で、ウクライナの「オレンジ革命」(04年)などが挙げられる。
 中国政府は、デモ隊への対応で妥協すれば、事態をエスカレートさせ中国本土への波及につながりかねないとみて強硬姿勢を示しているとみられる。


2019.10.5-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191005/wor1910050021-n1.html
香港、マスク禁止の緊急法、裏目に 抗議激化

【香港=田中靖人】香港政府は5日、「緊急状況規則条例」(緊急法)に基づきデモ隊のマスク着用を禁止する「覆面禁止法」を施行した。だが、同日午後には1千人超のデモ行進が行われ、大部分がマスク着用で参加した。デモ側はマスク禁止の内容と立法手続きの双方に反発、緊張が高まっている。
 林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官は5日、テレビ演説を行い、4日夜の一部デモ隊による放火や破壊活動について「前代未聞だ」と批判。「こうした極端な暴力の状況こそ緊急法で覆面禁止法を制定した理由だ」と法制定を正当化し、「最大の決心で暴力を阻止する」と強硬策に踏み切ることを示唆した。
 4日夜に私服警官の発砲で重傷を負った少年(14)の容体は落ち着き、5日夜に暴動と警察官襲撃の容疑で逮捕手続きが取られた。4日夜の混乱の影響で、5日は地下鉄全線が運休し10カ所以上の大型商業施設が休業するなど市民生活に影響が出た。
 覆面禁止法は合法デモでもマスクを禁じた。警察は違反者の拘束が認められ、1年以下の禁錮刑か2万5千香港ドル(約34万円)以下の罰金が科される。
 香港島中心部で5日午後に行われたデモ行進では、かけ声が従来の「香港人がんばれ」から「香港人は抵抗せよ」に変わった。マスク着用の公務員男性(23)は「不正な法を守る必要はない。マスクは政府への不満の証しだ」と話した。行進の終着地点で、マスク姿の男女2人が警官隊に取り押さえられ、身分証確認後に解放された。5日夜にも数カ所で集会が開かれ、複数人が拘束された。
 一方、ネット上で「香港臨時政府宣言」という文書が4日夜に広まり、一部のデモ現場で読み上げられた。行政長官の失職や立法会(議会)の解散を宣言。具体的な動きはなく空文とみられるが、支持が広がれば、政府側が態度を硬化させる可能性がある。


2019.10.5-東京新聞 TOKYO WEB-https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201910/CK2019100502000296.html
香港、撃たれた14歳重傷 警察「発砲は合法」主張

【香港=浅井正智】香港で四日、抗議活動中の少年(14)が警官の発砲で太ももを撃たれ、重傷を負った問題で、警察当局は五日未明の記者会見で「警官は生命の脅威に直面しており、発砲は合理的かつ合法的だ」と正当化した。少年の容体は安定しているという。香港では一日にも男子高校生(18)が警官に銃撃され大けがを負っており、一連の抗議活動で、警官の発砲による負傷者は二人目となる。
 香港では四日、デモ参加者がマスクで顔を覆うことを禁じる「覆面禁止法」が制定され、同日夜には香港全土の十カ所以上で抗議活動が行われた。
 銃撃があったのは中国本土に近い新界地区・元朗(ユンロン)。香港メディアによると、警官は白いシャツを着た私服警官で、車で現場に乗り付けたところ、多数のデモ隊に囲まれた。車外に出たが袋だたきにあい、拳銃を抜いて実弾を一発発砲、少年の太ももに命中したという。動画には、火炎瓶を投げつけられた警官の体に、瞬間的に火が回り、逃げ惑いながら拳銃を地面に落とす様子も映し出されている。
 民主派は四日、覆面禁止法が、デモや集会の自由を保障した香港基本法に違反するとして、高等法院(高裁)に決定取り消しを申請したが、法院は同日深夜、棄却を決定。覆面禁止法は五日午前零時(日本時間同一時)に発効した。


2019.10.2-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/191001/wor1910010038-n1.html
香港デモ 警官発砲で高校生重体 各地で衝突、66人搬送

【香港=田中靖人】香港で1日、中国建国70年に合わせて各地でデモや集会が開かれた。少なくとも10カ所で警官隊との衝突が起き、一部の市街地は騒乱状態となった。九竜半島・セン湾では警察が実弾を発砲。高校2年の男子生徒が左胸に被弾し、病院に搬送されたが重体となった。一連の抗議活動で警察の実弾によるけが人が出るのは初めて。
 香港大学学生会が撮影した映像によると、デモ隊の男子生徒は棍棒(こんぼう)を所持し、拳銃を抜いた状態の機動隊員数人との乱闘中に至近距離から拳銃で撃たれた。
 この日は「共匪(共産党の蔑称)が中国を侵略した国難から70年を悼む」などと香港市民の反中感情が刺激されたほか、警察の恣意(しい)的な取り締まりに不満を抱くデモ隊側が「決戦日」として各地で過激化し、集団で警察官を襲撃する場面が相次いだ。九竜半島の別の地域では警察車両がデモ隊に襲われ、警察官が拳銃の実弾2発を威嚇発砲した。「1万人規模」(地元紙)で警戒していた警察は鎮圧で催涙弾や暴徒鎮圧弾を多用した。報道によると、一連の衝突で66人が病院に搬送され2人が重体、2人が重傷。多数が拘束された。
 この日は香港島でも数万人の無許可デモ行進が行われた。デモに参加した会社員の女性(39)は「中国共産党が約束した香港の自由は偽物だ。中国建国を祝う必要はない」と話した。
 日本領事館が入る高層ビルを含む30カ所以上の大型商業施設は休業し、地下鉄は50駅以上が閉鎖された。
 同日午前に香港島で行われた建国記念式典で、林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官の代理で演説した張建宗政務官は「過激な抗議者の暴力で社会秩序が破壊され、経済がさらに悪化している」と抗議活動を批判した。


2019.10.1-日本経済新聞-https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50445620R01C19A0000000/?n_cid=SPTMG002
香港デモで警官が実弾発射 2人重体、31人が負傷

【香港=比奈田悠佑】中国建国70年を迎えた1日、香港では政府庁舎周辺など複数の場所で抗議デモが発生し、警官隊と激しく衝突した。参加者は全体で数万人に達したとみられる。警察がデモ隊に実弾を発砲し、けが人が出たもようだ。各地のデモで31人が負傷して病院に運び込まれ、うち2人は重体としている。
  香港警察の発表によると、郊外の新界地区でのデモで警官が実弾を発砲し、18歳の男子高校生が左胸を撃たれて病院に運び込まれた。香港警察はこれまでデモ隊に向けてゴム弾や催涙弾などを発射していたが、実弾で負傷者が出るのは初めて。警察側は「警官は身の危険を感じ、自分や仲間の生命を守るために発砲した」と説明している。
  警察当局は民主派団体が事前申請していたデモ行進を不許可としたほか、主要な地下鉄駅を閉鎖してデモ隊を集合させにくくするなど厳戒態勢を敷いたが、SNS(交流サイト)での呼びかけで同時多発的に起きた抗議デモを防げなかった。一部の過激な若者は石や火炎瓶を投げ、警官隊が催涙弾を発射して応戦するなど混乱が続いた。
  一方、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は1日、北京での建国70年記念式典で「いかなる勢力も偉大な祖国の地位を揺るがすことはできない」と演説、米中対立を念頭に結束を訴えた。
  習氏は香港情勢に関連し「(香港に高度な自治を認める)一国二制度を堅持する」と強調した。式典には香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官や香港警察の幹部も招き、香港の民主派の要求には応じない姿勢をみせた。


2019.9.29-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190929/wor1909290018-n1.html
香港支援、台湾など世界65都市でデモ 香港では多数拘束
【香港=田中靖人】香港で続く抗議活動への支援のため、台湾など世界各地で29日、デモが行われた。香港メディアによると、支援デモは日米欧など24カ国・地域の65都市で行われる。一方、香港でも同日、支援デモに呼応するデモ行進が行われ、警察は強制排除で参加者を多数拘束。10月1日の中国の建国記念日を前に締め付けを強めた。
 香港では、警察が無許可デモの集合場所の繁華街、銅鑼湾で催涙弾を発射して解散を試みたが、多数の市民が再び集まり行進を開始。政府庁舎前で衝突し、警察が強制排除と参加者の大量拘束に乗り出した。
 台北では「1万人以上」(台湾メディア)が参加して行進が行われ、香港のデモ隊が掲げる「5大要求」への支持のほか、中国と台湾の「和平協定」への反対を訴えた。立法院(国会に相当)前で、香港のデモ支持の芸能人、何韻詩(デニス・ホー)さんが親中派にペンキをかけられる騒ぎもあった。


2019.9.28-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/premium/news/190928/prm1909280001-n1.html
【高論卓説】忘れてしまったか 一国二制度の原点 野嶋剛
(1)
  終わりのない香港の抗議行動。6月以来、先週も含めて警察隊とデモ隊の衝突が繰り返される。当初の逃亡犯条例改正への反対運動は、既に香港統治の根幹を成す「一国二制度」のあり方を問い、「高度な自治」を骨抜きにするかに見える中央政府に対する異議申し立てを行う政治運動に変質しており、10月1日の中国建国記念日に向けた動向も注目されている。
 際立つのは「中国社会」と「香港社会」の大きな分断である。日本を含め、世界各地で中国人団体がカウンターデモを仕掛け、路上で香港人グループと口論や衝突が起きている。中国政府は国内ではデモに否定的な情報統制を行っているが、自由な環境にある海外でも中国人は香港問題に冷たい。
 「香港は家が小さく、貧困化しているからデモを行っている」「香港人は中国人を見下している」「背後で米国が支援している」など、思い思いの理由を挙げ、自尊心をかけて香港の運動を否定しているようだ。
 ただ、香港に対し、中国人もかつては暖かい感情を持っていた。最近、日本で上映中の中国映画監督、ジャ・ジャンクー(賈樟柯)の「帰れない二人(原題:江湖女兒)」を見た。掛け値なしの名作だが、劇中を流れる広東語ポップスの女王、サリー・イップの名曲「浅酔一生」が特に印象深かった。

 中国を代表する世界的映画監督である賈氏は、作品で繰り返し「香港」に触れてきた。自らの青春時代を映画のモチーフとする賈監督にとっては「香港」は外せない存在なのである。山西省の田舎育ちの賈氏が香港で暮らした経験はない。何年か前に別の作品のPRで来日した賈氏に私が香港のことを尋ねると、こう語った。
 「中国に香港の流行歌が入ってきた時期、私は大人に成長しました。私の中に根付いた香港文化は根源的な記憶であり、それに対する深い感情は断ち切ることができない。だからいつも映画に出てきてしまうのです」
 日本ではテレサ・テンの歌が中国人の共同記憶であることは有名だが、サリー・イップらの広東語ポップスがそこまで中国で愛されていることは日本ではあまり知られていない。テレサ・テンの流行は1980年代までで、90年代以降の改革開放の本格化後は広東語の歌が中国を席巻した。
(2)
  その共同記憶の持ち主は今の50代ぐらいまでであろう。大国化した中国の下で返還後の香港しか知らない世代は「香港は中国の一部」という建前論に引き寄せられ、経済や文化で改革開放初期を支えた香港への感謝や愛情が乏しい。
 彼らが香港人の「西洋かぶれ」的なイメージを不快に感じる心理は理解できないことはない。だが、香港は中国に返還される前、英国統治下で140年の繁栄を築いた自由港のコスモポリタン都市であり、中国的な愛国主義や国家主義にはどうしてもなじまない体質がある。その点を理解する鄧小平ら前世代の指導者が引退し、香港と中国の一体化に邁進(まいしん)する習近平指導部のスタイルが、香港の人々にこの数年、深いストレスのくぎを打ち込んできた。そこに、中国人と香港人の感情的対立が、火に油を注ぐという格好である。
 中国と香港の分断はこの夏に起きた抗議行動で決定的になった。「中国と香港は違う」という点を認めつつ、共存させることが一国二制度の妙味であったはずだ。違っているから好きになれることもある。中国人が「中国とは異なる香港」への愛惜を持てなければ、中港対立の緩和は進まないだろう。

のじま・つよし ジャーナリスト。大東文化大学特任教授。朝日新聞で中華圏・アジア報道に長年従事し、シンガポール支局長、台北支局長、中文網編集長などを務め、平成28年からフリーに。『ふたつの故宮博物院』『銀輪の巨人 GIANT』『台湾とは何か』『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』など著書多数。


2019.9.28-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190928/wor1909280017-n1.html
香港「雨傘」リーダー周庭氏 「香港守る最後の機会」「失敗の経験に学んだ」
(1)
【香港=田中靖人】2014年の香港の民主化運動「雨傘運動」で、学生団体の幹部だった周庭(アグネス・チョウ)氏(22)は28日までに、産経新聞の取材に対し、当時の運動は「成功しなかった」と振り返る一方、「逃亡犯条例」改正案を契機に続く現在の抗議活動は「雨傘の経験から学んだもの」であり、香港の「一国二制度」を守るための「最後のチャンスだ」と訴えた。
 周氏は、行政長官選と立法会(議会)議員選の普通選挙の実現を目指した雨傘運動が成功しなかった理由について「中国政府(の影響力)が非常に強い香港で、普通選挙を求めることはもともと難しい」としながらも、運動により「政治に無関心だった人たちが関心を持ち始めた」と一定の効果があったと強調した。
 明確な指導者がおらず占拠場所を固定化しない現在の抗議活動は「形や参加人数、(活動期間の)長さが以前と全く異なる社会運動の新しい形」であり、「香港の歴史を変える運動だ」と評価。100日間を超す長期の抗議活動に多くの市民が参加するのは、香港の自由や法治を保証した一国二制度が侵食され、「香港が中国になってしまうという恐怖感からだ」と述べた。
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周氏は林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官が条例改正案の撤回表明後、今月に入り市民との対話を始めたことについては、時機を逸した上、「市民の要望を聞かず誠意が見えない。全く意味がない」と指摘。警察の取り締まりの暴力化がデモ側の「怒り」を招いていることが問題長期化の原因で、10月1日の中国の建国記念日以降も抗議活動は続くとの見通しを示した。
 その上で、11月の区議会議員選で民主派が躍進することは、次期行政長官選にも影響するため「中国政府にとり許せないことだ」と発言。香港政府が「緊急状況規則条例」を発動し、議員選を大幅に延期する可能性があると予測した。
 抗議活動の行方については「デモが続き、北京政府、香港政府からの弾圧も強まる」と見通した上で、「私たちは(一国二制度の保証期限となる)2047年のためだけでなく、明日、来月、来年の香港のために戦っている。多くの人が今回の運動は最後のチャンスだと考えている」と危機感をあらわにした。
 一方、日本政府に対しては「国際社会からの圧力が非常に重要であり、もっと香港の状況に反応を示してほしい」と呼びかけた。


2019.9.21-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190923/wor1909230016-n1.html
香港デモ 習近平政権、長期戦へ方針転換 「期限」の国慶節まで1週間 沈静化できず消耗待つ

【北京=西見由章】香港で続く反政府デモについて、中国の習近平指導部は香港政府による「逃亡犯条例」改正案の正式撤回を容認することで抗議活動の収束を図ったが、「香港の大乱」(共産党機関紙、人民日報)は解決の兆しがみえない。習指導部は当初、建国70年となる10月1日の国慶節(建国記念日)までに事態を沈静化させ、式典で統治の実績をアピールする意向だったが、“期限”まで1週間を切った。現在は方針を転換し、香港政府に法を駆使した取り締まりを強化させ、デモ隊側の消耗を待つ長期戦の構えだ。
 清華大香港マカオ研究センター主任の王振民教授は20日付の人民日報への寄稿で、香港情勢について「問題解決の鍵は法律にある」と強調し、中国憲法や香港基本法を含む「あらゆる法律的資源」を活用すべきだと訴えた。香港政府が検討している抗議活動の場でマスクなどの着用を禁止する「覆面禁止法」についても18日付の人民日報海外版が「敵の急所を突け」として早急な同法整備を求めた。
 北京の外交筋は「中国当局は当面、香港警察にデモの取り締まりを強化させ、消耗戦をしかけるだろう」と予測する。だが国慶節に香港で大規模デモが行われて混乱すれば「非常に頭の痛い問題になる」(北京の政治研究者)。当面の危機を回避する有効打はない。
 デモ隊側が懸念しているのは、一国二制度が形骸化し、香港の自治と自由を失うことだ。中国当局は「一国二制度や高度な自治を貫徹する」(習近平国家主席)と主張するが、王教授は一国二制度に存在する「問題や不足」について総括し、有効な措置をとるよう提言した。抗議活動の拡大になすすべがない現行の一国二制度に対する問題意識をあらわにした形だ。

中国側が想定する「法律戦」の究極的な手段が、駐留する人民解放軍の出動を可能にする香港基本法14条や、中国本土の法律を施行できる同18条の適用だ。通信や集会の自由などを制限する「緊急状況規則条例」の発動も視野に入れる。
 王教授はデモ隊について「香港を攪(かく)乱し、さらに(中国)全国に拡大させ、中国の発展を阻止する最終目的がある」と指弾し、「最悪に備えた、長期的な準備」を呼びかけた。
 中国メディアなどへの情報統制が奏功し、中国本土に香港の反政府デモが飛び火する兆しは今のところみえず、むしろ香港人を嫌悪する“愛国的”な気分が広がりつつある。ただ今後、反政府的な抗議活動が国内に拡大するなどの事態に至れば、習指導部が武力介入する選択肢は残っている。


2019.9.21-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/life/news/190921/lif1909210041-n1.html
香港デモはSNS情報戦に 真偽不明の拡散で募る不信感
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香港で続く政府への抗議デモは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使った情報戦の様相となっている。政府側が報道機関を装った不正アカウントで世論誘導をしているのではないかという疑いも浮上する一方、反政府側も、力ずくでデモ隊を排除する警察の動画を瞬時に投稿するなどして、政府側の行為を逐一公開。玉石混交の情報が互いの不信感を増幅させている。
 「加油警察!(警察頑張れ)」「光復香港!(香港を取り戻せ)」
 香港メディアなどによると14日、香港・九竜(クーロン)地区の商業施設で、中国国旗を持つ政府支持派と、反政府派による乱闘騒ぎが勃発。SNSで結集を呼びかけた親中派に反政府派も対抗し、衝突した。一国二制度に支えられてきた香港の混迷を示す象徴的場面だった。
 反政府派の抗議デモは、通信アプリ「テレグラム」などSNS経由で始まるのが大半だが、6月に運営会社は、中国から大量のデータを送りつける「DDoS(ディードス)攻撃」が行われたと発表。中国政府側がデモを妨害したとみられるという。
 8月には、SNS大手の米ツイッター社と米フェイスブック社が、中国発の不正アカウントなど約950件が中国政府の情報操作に使われたと発表。若者が議会などを壊す姿を投稿し、「香港はあなたたちのような過激な人々と相いれない」とツイートしていた。
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また、黒いマスクのデモ隊と過激組織「イスラム国」の写真を並べ、「何が違うのか」とし、デモ隊を武装組織のように信じ込ませる手口もあった。
 SNSを悪用し、メンバーの個人情報収集や、デモのイメージを悪くして世論誘導する動きが高まるにつれ、デモ隊の不信感は増すばかり。一方の彼らにとっても、SNSは最重要ツールだ。過去の大規模デモ「雨傘運動」と違い、特定のリーダーがいない今回は不特定多数に発信できるSNSは活動の核といえる。
 九竜地区にある地下鉄太子(プリンス・エドワード)駅で8月に発生した警察によるデモ隊の排除をめぐっては「死者3人を隠している」との真偽不明の情報が拡散。また、デモ隊にふんした警官が若者を拘束した事件後には「警察が紛れ込んでいる」との話も広まった。こうした情報が出るたび、デモ参加者も拡大する傾向にある。中国政府は10月1日の建国70周年を前に事態を収めたい構えだが、出口が見えない状況だ。


2019.9.20-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://special.sankei.com/a/international/article/20190920/0001.html
香港デモ 競馬、花火大会…中止相次ぐ 「国慶節」控え混乱拡大も

【香港=森浩】「逃亡犯条例」改正案を発端とした抗議活動が続く香港で、花火大会や競馬などのイベントが中止になるなど市民生活への影響が広がっている。市民の不満が収まらない中、10月1日には中国の建国70周年を祝う国慶節を迎える。デモの拡大も予想され、混乱に収束の気配はなさそうだ。
 香港政府は18日、国慶節に予定されていた花火大会の中止を発表した。「公衆の安全のため」としている。毎年、国慶節には花火大会が開催されており、中止は大規模民主化デモ「雨傘運動」が起きた2014年以来のことだ。


2019.9.15-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190915/wor1909150015-n1.html
香港で無許可大規模デモ 一部暴徒化で警察が排除

【香港=田中靖人】香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤廃表明後も抗議活動が続く香港で15日、民主派団体「民間人権陣線」が主催する大規模デモが行われた。警察当局はデモを不許可としたが、香港メディアによると市民10万人以上が参加。一部のデモ参加者は、政府本部庁舎に向けて火炎瓶や石を投げるなど暴徒化し、警察は放水車や催涙弾で強制排除した。この過程で、49歳の男性が重傷を負った。
 デモは香港島の幹線道路を行進。警察の暴力行為に関する独立調査委員会など「5大要求」は「一つも欠かせない」などと声を上げた。会社員の男性(32)は「警察は若者だけを選んで拘束する。やり方が暴力団と変わらない」と批判した。14日には抗議活動に反対する市民と支持派の若者の衝突で約25人が負傷し数人が拘束された。
 デモ隊の一部は政府庁舎付近に到着すると、地下鉄の駅を破壊し、庁舎に火炎瓶などを投げ込んだ。警察が強制排除に乗り出すと、路上の障害物や駅に放火するなどして退去した。
 一方、15日には英総領事館前でも1千人超が集まり、中国が香港返還時の「中英共同宣言」に違反していると主張。英国に対応を取るよう訴え、代表者が「英国海外市民(BNO)」の旅券を持つ香港市民に英連邦の永住権を付与するよう求める要望書を職員に手渡した。書店職員の男性(32)は「香港市民は中産階級だ」と一般的な難民とは異なると主張。「英国政府は口先だけでなく行動してほしい」と話した。


2019.9.13-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190913/wor1909130024-n1.html
香港の地下鉄駅に「消えた3人」の祭壇…当局への不信なお
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【香港=田中靖人】香港・九竜地区の地下鉄、太子(プリンス・エドワード)駅構内で8月31日深夜に発生した警察によるデモ隊の排除で、デモ側に死者が出たと信じる人々が駅出入り口に設けられた「祭壇」に連日、「慰霊」に訪れている。「真相究明」を求められた警察・消防は9月11、12両日の記者会見で、死者はいなかったとの調査結果を説明したが、不信は解消されていない。
 問題のきっかけは、消防当局が当日から9月1日未明にかけ、重傷者を含む負傷者の発表数を10人から7人に訂正したことだ。これを受け「3人の死亡を隠蔽した」との説が広まった。11日には消防の通話記録を入手した民主派の立法会(議会)議員が「1時間で3回も負傷者数を変えている」と疑問を呈した。
 地元紙によると、消防当局は12日、警察が駅を封鎖し消防隊員の立ち入りをいったん拒否したため到着が遅れたことなどの過失は認めたが、人数の訂正は現場の混乱や負傷者の移動が原因だと説明。会見は2時間半に及んだ。
 具体的な「死者」の名前や遺族が名乗り出たとの情報はないものの、会見後の12日夜にも駅の祭壇に若者ら約100人が集まり、線香をあげるなどしていた。中には大声で泣く人や隣接する警察署にレーザーポインターを当てて「警察出てこい」と叫ぶ人もいた。
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花を手向けに訪れた教育関係の仕事に就いている王暁瑩(おう・ぎょうえい)さん(34)は「警察はこれまでも虚偽の説明をしてきた。公開された証拠も少なく、死者がいないとは絶対に信じられない」と話した。
 香港では13日夜、計10大学の学生会組織が香港政府に「5大要求」の回答を求めた期限を迎える。同組織は2日から授業ボイコットを呼びかけており、回答がない場合、「さらなる行動を検討する」としている。


2019.9.8-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190908/wor1909080011-n1.html
香港で数万人デモ 「USA」コールも 米議会に「人権法案」可決求める

【香港=西見由章】香港中心部で8日、香港の自治を守る「香港人権・民主主義法案」の可決を米議会に求めるデモ行進が行われ、数万人が参加した。香港政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官が「逃亡犯条例」改正案の正式撤回を表明した4日以降で最大規模のデモとなり、政府への抗議活動は収束する兆しがみえない。
 同法案は香港の自治や自由を損なった当局者らに米国が制裁を科す内容で、米議会で近く審議が始まる可能性がある。デモ参加者らは米国旗を掲げ、「法案通過を」「香港に自由を」などとシュプレヒコールを上げながら在香港米国総領事館まで行進、職員に請願書を手渡した。警察当局はデモ行進を許可した。
 デモ隊の中には、逃亡犯条例改正案を批判したペロシ米下院議長の写真を持った人も。行進では「ペロシ」「USA」コールも起きた。
 デモに参加した男性エンジニアの陳さん(26)は「米議会で法案が成立すれば、少なくとも香港政府と中国政府に圧力をかけることができる」と期待を寄せた。写真家の男性(42)は「トランプ米大統領はあまり香港の人権問題は重視しないかもしれないが、米議会は信じたい」と話し、「デモがあまりに過激化しない限り、抗議活動の勢いは続くだろう」と予測した。
 デモ行進の終了後、現場近くの地下鉄・中環(セントラル)駅ではデモ隊の一部が構内の施設を破壊し、出入り口に放火した。別の駅付近では警官隊がデモ隊に向けて催涙弾を発射するなど、双方の衝突が連日続いている。
 民主派やデモ隊は、逃亡犯条例改正案の撤回だけでなく警察の暴力行為に対する独立調査委員会の設置や普通選挙の実現などの「5大要求」をすべて香港政府が受け入れるまで、抗議活動を継続させる方針を示している。


2019.9.7-産経新聞 THE SANKEI NEWS-
改正案撤回も催涙弾止まず 香港デモ最前線 白煙と炎の「香港版天安門」

香港政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官が「逃亡犯条例」改正案の完全撤回を表明した4日以降も、香港各地では警察の暴力行為に対する独立調査委員会の設置など「5大要求」の実現を求める抗議活動が続いている。6日深夜、デモ隊と警官隊が衝突した現場を取材した。(香港 西見由章)

 午後7時、九竜地区の地下鉄太子駅付近。市民が普段通り夕食を楽しんでいる繁華街から百メートルほど進むと、傘を差した数百人が駅出口付近の道路に座り込み「香港を取り戻せ」と気勢を上げていた。さらに進むと旺角(モンコック)警察署前の大通りをデモ隊が占拠し、さらに騒然とした雰囲気に。周辺一帯の抗議者は少なくとも千人に上る。
 抗議の原因は8月31日に太子駅構内で発生したデモ隊の排除だ。香港メディアによると7人が重軽傷を負ったとされる。デモ隊側は死者が出ていると疑い、構内にある監視カメラの映像公開を求めている。
 シャッターが下りた駅出口付近には「犠牲者」を弔う祭壇が設置され、若者が次々と花を供えた。「香港版の6・4(天安門事件)だ」と書かれたカードも。
 レーザーポインターを顔に照射された警官が、怒鳴りながら銃口をデモ隊に向けた。死者を弔う紙銭を投げつけ、挑発する若者たち。突然、「バン」というスプレー缶が爆発したような発砲音が立て続けに聞こえ、催涙弾の白煙が周辺に飛び散ると、あっという間にデモ隊は後退した。 数百人の機動隊が市街地になだれ込んだ。盾を警棒でたたいて音を立て、威嚇しながら“進軍”していく。周りのデモ隊や市民は口や鼻を押さえ込み、せき込んでいる。記者はガスマスクをしていたが、両腕や首筋がひりひりと痛み出した。
 機動隊の最前線の数百メートル先では、若い男らがごみ箱を道路の真ん中に引っ張り出してガスバーナーで着火、大きな炎が上がった。
 大通りの交差点では数百人のデモ隊と数十人の機動隊が対峙(たいじ)した。「黒社会め」とシュプレヒコールを上げながら押し出していくデモ隊。投げつけられた傘が記者の頭上を飛び越えて警官隊に当たった直後、数発の発砲音が間近で聞こえ、足下の催涙弾が白煙を上げはじめた。振り返るとデモ隊は霧散していた。


2019.9.5-SANKEI COM-https://www.sankei.com/photo/story/news/190905/sty1909050018-n1.html
若者ら闘争継続の構え 香港、対話の道のり長く

香港政府トップの林鄭月娥行政長官は5日の記者会見で、「逃亡犯条例」改正案を巡る混乱収束に向け、市民と対話する姿勢を強調した。だが通信アプリで結びつく若者らのデモ隊にはリーダーが存在しない上、普通選挙の実現など「五大要求」を勝ち取るまで闘い続ける構えで、対話実現への道のりは長い。
   林鄭氏は、改正案の撤回決定は「対話の基礎」を築き、困難を打開するためだと繰り返し強調。「さまざまな階層、政治背景を持つ市民」の意見を直接聴き、政策に反映させたいと訴えた。
 しかし、デモ隊が強く要求する警察の「暴力」を調べる独立調査委員会の設置については、既存の警察監察組織で客観的な調査は可能だと主張し、改めて否定した。
 民主派は「独立調査委を設置して初めて困難解決の機会がある」と主張している。(共同)


2019.9.5-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190905/wor1909050019-n1.html
条例改正案撤回は「香港政府の決定」と行政長官強調 中国は尊重、支持と説明

【香港=西見由章】香港政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官は5日、記者会見し、4日に発表した「逃亡犯条例」改正案の正式撤回について、中国政府の「理解と尊重、支持」があったとした上で、決定は香港政府によるものだとの立場を強調した。同条例案の提案から完全撤回にいたる迷走は、香港への統制強化を図ろうとした習近平指導部の意向が大きく働いたとみられるが、香港政府が混乱の責任をすべて引き受けた形だ。
 記者会見では、中国政府が撤回決定に関与したかについて質問が相次いだ。林鄭氏は撤回の経緯について、過去2週間に「各界の人士」と面会した際、香港政府が市民と対話をするための「基礎」が必要だとの指摘を受け、条例案の撤回を決めたと説明した。
 今回の決定が、通信や集会の自由などを制限する「緊急状況規則条例」の発動など強硬策に向けた布石だとの見方については、そうした「憶測」は不正確だと反論した。
 ただ林鄭氏は8月に開いた香港の実業家グループとの非公式会合で、香港情勢は米国がからむ「安全保障や主権に関わる問題」となり、自身が解決する余地は「非常に限られている」と説明したことが、録音を入手したロイター通信により暴露された。同氏は中国政府と香港市民との板挟みの苦悩を明かしたとされる。
 中国共産党中央政法委員会は4日、香港政府による条例改正案の撤回が香港市民への「最大の誠意」を示すものだと言及する記事を通信アプリに掲載した。


2019.9.4-JIJI COM-https://www.jiji.com/jc/article?k=2019090400767&g=int
逃亡条例改正案、正式撤回=国慶節控えデモ沈静化狙う-香港行政長官

【香港時事】香港政府トップの林鄭月娥行政長官は4日、市民向けのテレビ談話で、中国本土への容疑者の引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案について、正式に撤回すると表明した。
  香港では6月以降、改正案に反対する大規模なデモが頻発し、社会の広い範囲に混乱が拡大した。林鄭長官はこれまでも「改正案は死んだ」と表現し、審議再開の予定はないと表明していたが、公式な撤回は拒否。デモ隊は改正案撤回を含む「五大要求」を掲げ、抗議活動を過激化させてきた。
 林鄭長官には、中国政府が重視する建国70年の節目に当たる10月1日の国慶節の前に、社会の安定を図りたい思惑があるとみられる。9月に入ってから、抗議活動は新学期を迎えた学生の授業ボイコットといった新たな形に発展しており、市民は政府に対し、13日までに五大要求に応じるよう要求。聞き入れられない場合、さらに行動をエスカレートさせると強調していた。


2019.9.4-東亜日報
「香港デモ隊が要求する5項目の2つを受け入れるだけでも市民の8割はデモに参加しないだろう」

「政府に反対する香港市民の考えをよく知り、理解するが、(自分たちに)能力も方法もないと官僚らが打ち明けた」香港
  香港都心で発生したデモ隊と警官の衝突で交通が麻痺した先月31日。香港の有名なジャーナリストで政治評論家の劉鋭紹氏(65)は、東亜(トンア)日報とのインタビューで、「私が接触した香港政府の官僚らは、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が(問題解決に向けて)何もせず、官僚が意見を提示しても効果がないと吐露した」と明らかにした。劉氏は、「政府内で意見の相違があっても、官僚が公開することができない」と話した。
  香港現地のオピニオンリーダーらは、政府擁護から政府批判まで香港の事態に対する見解は様々だが、林鄭氏が示唆した事実上の戒厳令、「緊急法」の発動には否定的な認識を示した。香港政府のシンクタンク「中央政策組」の首席顧問を務めた劉兆佳・香港中文大教授(72)は、「短期間に(緊急法の発動条件である)緊急事態にはならないだろう」と指摘した。また「多くの香港市民が暴力行為に不満を示し懸念している。逮捕も増えている」とし、「中国政府が武力を投入する可能性も非常に低い」と指摘した。立法会(国会)議員の中で最年長者で、野党民主党の創党発起人の塗謹申議員(56)は、「少数の暴力はあるが、緊急法を使わなければならない状況ではない」と強調した。
  塗氏は、「デモ隊の5つの要求のうち『警察の暴力的制圧の責任追及と外部調査の実施』を政府が受け入れれば問題解決の希望が生まれると、野党の民主派だけでなく、親政府の建制派の議員も提起した」と伝えた。デモ隊はこのほかに、△逃亡犯条例改正案の完全撤回、△「暴動」認定の撤回、△デモ参加者の無条件の釈放、△民主的選挙の実現を要求している。塗氏は、「デモ隊も多元化している。5つの要求全ての実現を望んでいるわけではない。逃亡犯条例改正案撤回を含め2つだけ受け入れても、平和集会に参加する市民の8割はデモに参加しないだろう」と述べた。
  そして、「今かなり難しい時ではあるが、香港と中国政府が局面を転換すれば、中国が台湾との統一方式として推進する一国二制度の良い手本になり得る。反対に香港問題をうまく処理できなければ、台湾だけでなく世界が一国二制度を受け入れないだろう」と指摘した。
  劉氏は、「(中国政府樹立70年記念日である)10月1日までの1ヵ月間が香港に重要な時間になるだろう」とし、「中国側から1989年の天安門事件の時の『世界が中国を封じ込めたが突破した』、『中国はいかなる代価も払うことができる』という発言が聞こえている」と懸念を示した。そして、「香港が破壊されれば一国二制度は消え、結果は天安門事件の時より深刻になるだろう」と指摘した。


2019.9.3-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49359930T00C19A9FF2000/
香港長官、中国政府と市民の板挟み 「辞めたい」発言 

【香港=木原雄士、北京=羽田野主】「逃亡犯条例」改正案をめぐる大規模デモが続く香港で、林鄭月娥・行政長官が中国政府と香港市民の板挟みになっている。ロイター通信は3日までに林鄭氏が非公開の会合で「選択肢があるなら、まず辞めて謝罪したい」と発言したと報じた。中国は辞任を認めれば反政府運動が勢いづくと警戒している。
  「最近は外出するのも難しい。ショッピングモールやヘアサロンにも行けない」。ロイターは林鄭氏が経済人との会合で発言した内容を音声データつきで詳細に報じた。林鄭氏は3日、自らの発言と認めたうえで「中央政府に辞任を申し出たことはない」と述べ、行政長官の職にとどまる考えを示した。
  ロイターは先に林鄭氏が中国政府に条例改正の撤回を具申したものの、却下されたとも報じた。中国は過激化するデモを旧ソ連や中東の国々で独裁政権などの崩壊につながった「カラー革命」の兆候と警戒しており、要求を受け入れないようクギを刺した可能性がある。
  鄭氏は7月に「条例案は死んだ」と発言したものの、デモ参加者が求める「完全撤回」という言い回しは拒否した。事態収拾の手段を封じられ「市民と対話する」などと繰り返すのみだ。
  香港の行政長官は業界の代表が親中派の候補から選び、中国政府が任命する仕組み。中国の意に背く判断はできず、常に中国の顔色をうかがう傾向が強くなる。林鄭氏は非公開の会合で「行政長官は中国政府と香港市民という2人の主人に仕えなければならず、政治的な手段は非常に限られている」と漏らした。
中国政府で香港問題を担当する香港マカオ事務弁公室の徐露穎報道官は3日、北京市で記者会見した。香港行政長官に強大な権限を与える「緊急状況規則条例」の必要性を問われ、「中国政府は林鄭月娥行政長官が法に基づいて運用する一切の必要な手段を全力で支持する」と述べた。
  香港に高度な自治を認める「一国二制度」のもと、抗議活動の矢面に行政長官を立たせる構図は変わっていない。
林鄭氏の支持率は歴代最低に落ち込み、問題解決に向けた妙手は見つからない状況だ。非公開の会合では1千~2千人と見積もる暴力を辞さない過激派を逮捕し続けるとの見通しを示したうえで「香港は病気にかかっているかもしれないが、まだ死んでいない」と述べたという。


2019.9.3-TBS NEWS-https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3768271.html
香港 政府トップの苦悩、市民と中国で“板挟み”

香港情勢で3日、注目の動きがありました。一連の混乱をめぐって責任を問う声が高まる、香港政府のトップ、林鄭月娥・行政長官ですが、その林鄭氏のものとされる音声が流出しました。
 記録された音声から見えてきたのは、香港市民と、そして中国政府の間で板挟みになるトップの苦しい立場でした。


デモ側の5大要求
   ・「逃亡犯条例」改正案の完全撤回
   ・デモ「暴動」認定の取り消し
   ・警察の暴力に関する独立調査委員会の設置
   ・デモ参加者の釈放
   ・普通選挙の実現


2019.9.3-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190903/wor1909030006-n1.html
【主張】香港の弾圧激化 国際社会の監視を強めよ

香港での逃亡犯条例改正案をめぐる政府と市民の対立が激化の一途をたどっている。状況の悪化を防ぎ、解決の糸口を探らなくてはならない。
 事態収拾に最大の責任を負うのは、香港特別行政区の林鄭月娥行政長官である。 まず、改正案の即時撤回を言明すべきだ。事態の究明に当たる独立調査委員会の発足も必要だろう。 いずれも林鄭氏の判断で実行できるはずだ。トップがこれほど無策では香港の高度自治は機能不全だと公言しているに等しい。
 他方で林鄭氏は通信や集会の自由を規制できる緊急状況規則条例の発動をちらつかせる。海外でも著名な学生リーダー、黄之鋒、周庭両氏の逮捕にも踏み切った。
 平和的な解決の扉を閉ざし、強硬策に頼るのであれば、市民の不信と怒りは倍加されよう。緊急状況規則条例の発動は避けなくてはならない。 背後にいる中国政府は、隣接する広東省深セン市に武装警察部隊を集結させて越境派遣の構えを取る。香港駐留の中国軍の部隊交代も、わざわざ映像を公開した。
 中国の建国70年を迎える国慶節(10月1日)までに香港情勢の沈静化を狙う構えだろう。だが力の支配では、香港に真の安定は戻らない。中国は1997年の香港返還にあたり、「一国二制度」の維持を国際社会に公約した。逮捕された黄氏も、公約順守について「日本をはじめ国際社会も中国に要求してほしい」と訴えた。 天安門事件の悲劇を香港で繰り返させないため、国際社会は結束して、一国二制度を無視した強硬解決を許さない決意を中国、香港の政府に伝える必要がある。
 さきの先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、香港返還の基本枠を定めた84年の中英共同宣言の再確認と香港での暴力回避を掲げた。中国政府はG7の意思表明に「無責任な口出し」と反発したが、今度は貿易摩擦の相手であるトランプ米大統領が「人道的な方法」を迫った。
 今月開かれる国連総会一般討論は中国に国際社会の監視の目を示す重要な機会となる。日本政府は率先して香港問題の平和解決を訴えてほしい。一方で一部の学生は過激な行動をやめるべきだ。暴力と破壊は弾圧の口実となり、国際社会の支持を失いかねない。


2019.9.3-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190903/wor1909030012-n1.html
香港「雨傘運動」の元指導者らが訪台 支援呼びかける

【台北=田中靖人】2014年の香港民主化運動「雨傘運動」の元指導者、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(22)らが3日、来台し、与党、民主進歩党などの政党幹部と相次いで会談した。黄氏は「逃亡犯条例」をめぐる抗議活動は「9月がカギになる」とし、今月中に台湾で支援のデモを行ってほしいと訴えた。
 訪台には民主派の立法会(議会)議員らも同行。民進党の卓栄泰(たく・えいたい)主席らや台湾の14年の「ヒマワリ学生運動」から派生した政党「時代力量」の立法委員(国会議員に相当)に、香港政府に対し「緊急状況規制条例(緊急法)」を発動しないよう働きかけることを求めた。抗議活動の参加者らが台湾に逃れる際の受け入れ条件の緩和も求めた。
 黄氏は会談後の記者会見で「北京の圧力に直面する香港と台湾は運命共同体だ。『今日の台湾が明日の香港』となることを望む」と述べた。


2019.9.2-朝日新聞デジタル-
新学期迎えた香港、学生が授業ボイコット デモ収束せず

政府への抗議デモが続く香港で2日、新学期を迎えた中高生や大学生らが授業のボイコットを始めた。中高生は毎週月曜日、大学生は今月13日まで授業出席を見合わせることで、政府に対して「逃亡犯条例」改正案の撤回など市民の要求を受け入れるよう迫っている。
 香港では9月が入学シーズンとなる。現地メディアによると、90校以上の中学・高校の生徒グループがボイコットに同調する意欲を見せているという。香港大や香港中文大など10大学の学生団体も授業への出席拒否を呼びかけている。
 2日午前には、複数の中学・高校でボイコットが始まり、教室の外に集まった生徒らが手をつないで、連帯の意思を示した。香港中心部の広場では、ボイコットに参加した中高生や保護者らが集会を開く。
 6月から本格化した抗議デモは夏休みの時期とも重なり、10代や20代の若者らが多く参加してきた。香港政府は新学期の開始と共にデモの勢いが収まることを期待。政府幹部は8月下旬、授業ボイコットについて「学校は政治的主張や要求を表明する場ではなく、更には政治的な戦いの場にするべきではない」との声明を公表した。
 香港では2、3の両日、8月5日以来となるゼネストも呼びかけられており、航空や金融など幅広い業種の従業員が参加する見通し。ゼネストに合わせた地下鉄の運行妨害も2日朝から始まり、地下鉄の運行に遅れが出ている。(香港=西本秀


2019.8.30-ニッポン経済新聞-https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49195230Q9A830C1000000/
ピーチが日韓3路線運休へ 関係悪化で需要減

格安航空会社(LCC)ピーチ・アビエーションが、日韓関係の悪化などに伴う韓国人の訪日旅行需要減を受け、日本と韓国を結ぶ3路線を運休することが30日、分かった。ピーチによると、関係悪化から日本の航空会社が韓国路線の運休に踏み切るのは初めて。
札幌(新千歳)―ソウル(仁川)線を10月28日から、関西―釜山線を来年1月7日からそれぞれ運休する。那覇―ソウル(仁川)線は来年1月28日~2月22日の期間限定で運休する。いずれも現在、運航は1日1往復だ。
また、関西―ソウル(仁川)線は今年11月11日から12月8日まで1日4往復の運航を1日3往復に減らす。
ピーチの広報担当者は「韓国経済の悪化やウォン安などを踏まえて総合的に判断した」と説明した。韓国の航空会社は既に運休や減便を相次いで発表している。〔共同〕


2019.8.30-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190830/wor1908300025-n1.html
香港、雨傘運動元指導者ら逮捕直前語る 「制度維持、日本も中国に要求を」
(1)
【香港=藤本欣也】2014年の香港民主化運動「雨傘運動」の元リーダー、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(22)と、学生団体の元幹部、周庭(アグネス・チョウ)氏(22)が30日、香港警察に逮捕された。2人は拘束前の28、29両日、それぞれ産経新聞のインタビューに応じていた。雨傘運動で禁錮2月の判決を受け、6月17日に出所したばかりの黄氏は「香港行政長官に意思決定権はない。中国にこそ問題がある」と主張。雨傘運動の「女神」とも評された周氏は「今、闘わないとだめだ。逮捕を恐れていない」などと答えていた。
黄之鋒氏
【香港=藤本欣也】2014年の香港民主化運動「雨傘運動」の元リーダー、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(22)と、学生団体の元幹部、周庭(アグネス・チョウ)氏(22)が30日、香港警察に逮捕された。2人は拘束前の28、29両日、それぞれ産経新聞のインタビューに応じていた。雨傘運動で禁錮2月の判決を受け、6月17日に出所したばかりの黄氏は「香港行政長官に意思決定権はない。中国にこそ問題がある」と主張。雨傘運動の「女神」とも評された周氏は「今、闘わないとだめだ。逮捕を恐れていない」などと答えていた。
黄之鋒氏
 --5年前の雨傘運動と今回の抗議運動の違いは・・・ 「今回の反送中(香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする『逃亡犯条例』改正案の撤回を求める運動)には、リーダーがいない。リーダーがいると、そのリーダーを捕まえれば運動は終わるが、今回はそうではない」
 「雨傘運動の参加者は20万人規模だったが、今回は200万人規模の市民が参加している。比べものにならない。1950年代生まれから、2000年代生まれまで、実に幅広い階層の人々が団結している」
 --なぜ、これほどの市民が参加するのか・・・ 「香港は現在、高度の自治が失われ、一国二制度ではなく、一・五制度ともいえる状況だからだ。それだけ当局の圧力が強まっている。中国の習近平氏は5年前は国家主席だったが、今や皇帝になってしまった」
 --香港で中国を直接批判する人は少ないが・・・ 「香港政府のトップである行政長官には決定権がない。決定権をもつ人物を相手にしないと意味がないのは明らかだ。この5年間で中国を直接批判する人は増えてきている」
 --5年前の雨傘運動と今回の抗議運動の違いは・・・ 「今回の反送中(香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする『逃亡犯条例』改正案の撤回を求める運動)には、リーダーがいない。リーダーがいると、そのリーダーを捕まえれば運動は終わるが、今回はそうではない」

 「雨傘運動の参加者は20万人規模だったが、今回は200万人規模の市民が参加している。比べものにならない。1950年代生まれから、2000年代生まれまで、実に幅広い階層の人々が団結している」
 --なぜ、これほどの市民が参加するのか・・・ 「香港は現在、高度の自治が失われ、一国二制度ではなく、一・五制度ともいえる状況だからだ。それだけ当局の圧力が強まっている。中国の習近平氏は5年前は国家主席だったが、今や皇帝になってしまった」
 --香港で中国を直接批判する人は少ないが・・・ 「香港政府のトップである行政長官には決定権がない。決定権をもつ人物を相手にしないと意味がないのは明らかだ。この5年間で中国を直接批判する人は増えてきている」
(2)
--中国に求めることは何か・・・ 「香港の一国二制度を守ること。日本をはじめ国際社会も中国に要求してほしい。香港の政治と経済については香港人自らが決めなければならない。一国二制度が終わる2047年以降も、港人治港(香港人が香港を統治する)であるべきだと考えている」
周庭氏
 --今回の抗議運動では平和的なデモがある一方、過激な行動もあるが・・・ 「これまで香港の運動は穏健なものが多かった。確かに穏健な運動は幅広い支持、国際社会の支持を得やすい。でもそれでは政府への圧力が足りない。穏健な方法だけではなく、急進的な方法も必要だと思う」
 --穏健なグループと急進的なグループは連携しているのか・・・ 「連絡を取り合っているわけではない。一体感をもって、相互に尊重し支持している。今回の運動にはリーダーがいない。だから、どうアレンジすれば最大限の効果を生み出せるのか、みんなで考えている」
 --雨傘運動との違いは・・・ 「リーダーがいないことのほかに、同じ場所を占拠し続けないという点が違う。私たちは『BE WATER(水のように)』を合言葉に、ある場所に警官隊が来たら、別の場所に移る-といった感じで柔軟に対応している」
 --香港政府は対話を求めているが・・・ 「林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官は『対話をしよう』と言いながら、警察にデモ隊を激しく攻撃させている。矛盾していて信用できない」
 「香港の自由を制限する動きは年々強まっている。今、闘わないと来年はどうなっているか分からない。雨傘運動のときに怖かったのは逮捕されることだった。今、逮捕されることを恐れてはいない。デモの現場で警官隊の過剰な暴力によって傷つき、殺されることを恐れている」


2019.8.29-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190829/wor1908290021-n1.html
香港で31日に大規模デモ 香港政府「緊急法」発動も

【香港=藤本欣也】逃亡犯条例改正問題をめぐり混乱が続く香港で31日、香港政府と中国政府に対する大規模な抗議デモが行われる予定だ。香港政府が一連の混乱を収拾するため、通信や集会を制限できる「緊急状況規則条例」(緊急法)を発動するとの観測が広がっており、民主派や若者たちは対決色を強めている。31日のデモを機に、香港・中国当局が厳しい対応に乗り出す可能性がある。
 今回は香港島の中心部から、中国政府の香港出先機関、香港連絡弁公室までのデモ行進が予定されている。警察当局は29日、民主派団体が申請したデモ行進を許可しないことを決めたが、民主派などは強行する構えだ。7月21日にはデモ隊が同弁公室の建物を包囲し、中国の国章に黒い液体をかけるなどして中国側が激しく反発した。

 31日のデモは、5年前の2014年8月31日に、中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会が下した決定に対する抗議活動の意味合いもある。
 香港のミニ憲法「香港基本法」の解釈権を有している常務委はこのとき、17年に行われる香港行政長官選について事実上、親中派以外の立候補者を排除し普通選挙を骨抜きにする措置を決定。これに対し、若者たちが「真の普通選挙」の実現を求めて抗議活動を始め、「雨傘運動」(14年9~12月)に発展した。
 緊急法をめぐっては、香港政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官が今月27日の記者会見で、「あらゆる香港の法律を使って混乱を収める責任がある」と発言したことから民主派や若者たちの間で一気に警戒が広がった。

緊急法は英植民地時代の1922年に制定されたもので、行政長官とその諮問機関、行政会議が「緊急事態」と判断した場合、立法会(議会)の審議・決定を経ずに、「公衆の利益にかなう規則」を定めることができるとしている。デモなどの呼び掛けに利用されているインターネットなどの通信や、報道、集会、移動の自由などが幅広く制限できるとされる。
 民主派は「香港の自由を奪うもので戒厳令に等しい」と強く反発しており、31日のデモでも導入阻止を訴える計画だ。緊急法ではなく、集会や外出などを禁止できる「公安条例」を発動するとの観測もある。
 香港紙、明報は緊急法について、中国当局が人民解放軍や武装警察を投入する前の「中間的な方策」との見方を紹介している


2019.8.21-NEWS WEEK-https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/08/post-12818.php
香港デモと中国の対立が台湾に飛び火、三つ巴の緊張関係に

<台湾の蔡英文総統は、香港デモ参加者の亡命を受け入れたい考えだが、中国がそんなことは許さない>
香港でデモが続くなか、台湾政府が香港のデモ参加者に対して政治的な庇護を与える方針を示し、中国の共産党当局が反発している。
6月から始まった香港の抗議デモは、今もほぼ毎週末ごとに街を揺さぶっている。デモのきっかけは、犯罪容疑者となった香港市民の中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯引き渡し条例」改正案。それが通れば、何かの犯罪事実をでっち上げて自分も中国当局に引き渡されかねないと、若者たちが立ち上がった。
<参考記事>中国に特攻できる自爆ドローンなど、加速する台湾の武器開発
7月になると、台湾の蔡英文総統が「香港の友人たち」に、人道的見地から亡命の受け入れを検討すると示唆した。
  台湾の「香港マカオ関係条例」は、「政治的理由により、安全や自由に関して差し迫った脅威にさらされている香港あるいはマカオの住民に対して、必要な支援を提供するものとする」と定めている。中国政府の国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は8月19日、台湾総統によるこの申し出を批判した。
「台湾与党の民主進歩党(DPP)は事実から目を逸らし、正邪を混同することで、香港における少数の暴力的過激派による犯罪行為の隠蔽に手を貸し、香港を混乱に陥れる彼らの行為を助長した。そればかりか、今回は彼らに対する保護を申し出た。このようなことをすれば、台湾は『犯罪者をかくまう隠れ家』と化すだろう」と、馬は主張した。
<参考記事>世界が知る「香港」は終わった
香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによれは、抗議デモが始まって以来、香港から台湾への移住申請は45%増加しているという。香港の住民が台湾を訪問するにはビザが必要だが、ビザを取得すれば最長1カ月の滞在が可能だ。台湾到着後は、この滞在期間を1カ月延長できる。
中国に狙われる香港と台湾
身柄引き渡し条例の改正案は、香港政府によって事実上廃案にされたが、抗議活動は止む気配がない。報道によると、警察が6月以降に身柄を拘束した人物の数は700名に上る。デモ参加者は、香港トップの林鄭月娥行政長官の辞任、逮捕者の釈放に加えて、警察の暴力追及や民主化を要求している。
台湾は、東アジアで特異な位置を占めている。中国を建設した中国共産党に敗れた国民党が建国し、選挙で選ばれた総統が統治し、実質的な自治を確保している。ただし、中国の共産党政権は台湾を中国の一部と考えており、中国ではなく台湾と国交を結んだ国は20カ国に満たない。アメリカ政府や国連も、公には国家として認めていない。
最近の世論調査によると、中国からの独立を望む独立派と、中国と台湾の統合を目指す統一派の意見は割れている。現在の与党である民主進歩党は独立派で、台湾の表現の自由が中国の脅威にさらされていると警告してきた。
香港は、香港特別行政区基本法によって守られており、2047年までは独自の政府を設立する権利が保障されている。しかし、中国政府は既にこの自由を制約し始めている。


2019.8.19-BBC NEWS JAPAN-https://www.bbc.com/japanese/49403340
ツイッターとFB、香港デモ妨害の「中国関連」アカウントを削除

米ツイッターとフェイスブックは19日、香港で続く反政府デモを妨害する目的で情報操作に使用されていた、中国政府とつながりのあるアカウントを削除したとそれぞれ発表した。両社は、中国政府の企てを阻止するための措置だとしている。
ツイッターによると、「香港での政治不和を生む」ために利用されていた936のアカウントを削除したという。これらのアカウントは、中国本土で作成されたもので、「抗議行動の正当性や政治的立場」を弱体化するための組織的な試みの一端だとしている。
さらに、虚偽情報を増大させるために作成された、20万もの別のアカウントについて、「かなり活発」になる前に、「先を見越して」凍結したという。
同社は声明で、「わが社の徹底的な調査に基づき、中国政府が支援する組織的な活動であることを示す、信頼できる証拠がある」としている。
「具体的に言うと、香港での抗議行動に関連したメッセージを拡大させるために組織的に活動する、大規模なアカウントの集合体を突き止めた。こうしたネットワークから学びながら、そして公の会話の場を提供するために、積極的にわが社の方針を強化しながら、わが社は警戒を続けていく」
中国政府とのつながりを確認
一方、フェイスブックは、7つのページ、3つのグループ、5つのアカウントを削除したという。同社サイバーセキュリティー対策部門の責任者ナサニエル・グライシャー氏は、削除したページなどについて、「頻繁に政治ニュースや、香港で続いている抗議行動などの問題について投稿していた」と説明した。
「こうした活動の背後にいる人物は、自分たちの身元を隠そうとしていた。しかしわが社の調査で、中国政府と関わりを持つ複数の個人とのつながりを確認した」

今回のアカウント削除の措置に先立ち、ツイッターは、同社のスポンサー投稿権の購入を、中国国営・新華社通信に認めたことをめぐり、激しい批判にさらされていた。ツイッターは19日、今後はこうした広告は認めないとする声明を発表し、事態の収束を図った。
「今後は、国の統制下にあるニュースメディア組織からの広告は受け付けない」一方で、「独立した公共放送といった、税金で賄われている組織」については、この新方針は適用されないとしている。
抗議の内容
香港では、今年3月に発表された、犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改定案をめぐり、何千もの香港人が抗議を続けている。
「逃亡犯条例」の改定案については、中国政府が香港統治の姿勢を強め、香港の自治性が維持されなくなるのではないかとの懸念や、中国政府を批判した者を標的にするために利用されるといった恐れが指摘されている。
一連の大規模デモを受け、立法会(議会)での審議は中断されたものの、抗議行動は続いている。いまや、民主改革や、デモ中に起きたとされる警察による暴力に関する調査を求める、より大規模な抗議へと変質している。
今月13日のデモ参加者による香港国際空港での座り込みでは、警察との衝突や、数百便の欠航を引き起こした。
主催者側は、18日に行なわれた、最新の大規模集会について、170万人が参加したと発表した。一方で、公式に実施が認められていた抗議行動の参加者のみを数えていた警察側は、主催者発表よりずっと少ない12万8000人だったとしている。
香港国際空港での混乱を受け、中国政府は批判の論調を強めており、座り込みは「テロに近い行為」だと非難している。


2019.8.18-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190818/wor1908180012-n1.html
香港デモ「170万人」参加 当局不許可 道路埋め尽くす

【香港=西見由章】香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正や、市民に対する警察の「暴力」などの問題をめぐり、香港島中心部のビクトリア公園で18日、改正案撤回など政府に5項目の要求を突きつける抗議集会が開かれた。
 警察当局はデモ行進を許可しなかったが、市中心部の幹線道路は広範囲にわたって、この集会から派生した市民らによるデモ隊で埋めつくされた。集会を主催した民主派団体「民間人権陣線」によると、集会とデモを合わせた参加者は計約170万人に達した。
 警察隊は同日夜までにデモ隊を制圧する大きな動きは見せなかったが、集会への参加者は約12万8000人だったと発表した。
 中国側は香港と境界を接する広東省深川に中国の武装警察部隊を集結させて威嚇しているが、香港側に抗議収束の兆しは見えない。
 同日のデモに参加した立法会(議会)の民主党議員、林卓廷氏(42)は中国武警の動きに「香港人への警告で、本当に中国共産党が武力を行使する事態にはならないだろう。香港警察には今の状況に対応する能力がある」と話した。
 同日午後、集会開始を前に主催者側は平和的な行動を呼びかけた。ただ、10万人が収容可能とされる同公園の敷地から市民らの参加者があふれた。参加者らは中心部につながる大通りをシュプレヒコールを上げながら行進。黒い服装の一部のデモ隊はショッピングモールの中にも入り「香港人頑張れ」と気勢を上げた。


2019.8.17-BIGLOBE-読売新聞-https://news.biglobe.ne.jp/international/0817/ym_190817_9939977719.html
香港デモ11週目、勢い衰えず…教師らも行進

【香港=角谷志保美】香港と中国両政府に対する抗議運動が続く香港で17日、午前と午後に2件のデモ行進が行われた。中国本土への犯罪容疑者の引き渡しを可能にする逃亡犯条例の改正問題に端を発した大規模な抗議運動は11週目を迎えても勢いが衰えず、18日には民主派団体が大規模デモを呼びかけている。
 香港島中心部では17日午前、教師らが「未来のために立ち上がった生徒らを守ろう」と、降りしきる雨の中、行政長官公邸まで行進した。現役から退職者まで大勢の中学高校の教師や大学職員らが集まり、参加者は主催者発表で2万2000人に上った。午後には中国本土と陸続きの九竜半島側でも抗議デモが行われた。


2019.8.14-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190816/wor1908160026-n1.html
香港の大行進不許可 18日にデモ計画 中国武警は制圧訓練

【香港=西見由章】香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正問題をめぐり、民主派団体が18日に計画している大規模なデモ行進を警察が許可せず、現地で反発が広がっている。無許可のまま大勢の参加者が行進すれば警察との衝突にもつながりかねず、再び緊張が高まりそうだ。
 香港メディアによると、民主派団体「民間人権陣線」は、18日午後にビクトリア公園からセントラル(中環)までを約30万人が行進する計画を申請。警察は、過去のデモ行進後に一部で衝突が起きたとし、公園での集会のみ許可した。
 主催者側は「公園だけでは10万人しか収容できず逆に危険だ」と反発し、不服を申し立てた。地元関係者は「参加者は100万人を超える可能性もあったが、違法デモの取り締まりを恐れて住民の多くが様子見となっている」と指摘する。
 中国は威嚇を強めている。香港に接する中国・深のスポーツ競技場には中国の武装警察(武警)隊員ら数千人と装甲車など100台以上の車両が集結。ロイター通信によると、香港のデモ隊が身につけているような黒シャツの集団を制圧する訓練が行われた。
 香港政府は15日、中間層の家庭や中小企業などを対象に手当て支給や減税を行う総額191億香港ドル(約2580億円)規模の景気対策を発表した。条例改正案をめぐる反発を和らげたい意図は明らかで「人心は買えない」(民主派議員)などと批判も出た。


2019.8.14-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190814/wor1908140024-n1.html
香港境界に中国部隊集結 裁判所が妨害禁止令、空港再開

【香港=西見由章、ワシントン=黒瀬悦成】香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案をめぐる抗議デモで、香港の裁判所は14日、デモ隊の座り込みが続いた香港国際空港の使用妨害を禁じる臨時命令を出した。中国が香港に隣接する広東省深に武装警察を集結させ、デモ制圧に向けた動きではないかとの懸念も強まるなか、中国官製メディアは米国などがデモの「黒幕」だと非難。香港情勢が米中の新たな火種となりつつある。
 同空港では14日午後までに出発ロビーからデモ隊が閉め出され、空港業務がおおむね再開。当局が許可した到着ロビーの一部で100人前後が座り込みを続けた。香港の大学3年の男子学生(22)は「昨日夜の衝突や裁判所命令を受けて、自分の将来への影響を恐れる人が出てきている」と認める一方、多くの参加者は18日に予定される大規模デモに「力を蓄える」方向に転じたとも指摘した。
 中国の部隊が香港近隣に集結しているとの情報について男子学生は「もし本当に軍が展開したら、別の選択肢も含めて皆と進退をともにする」と語った。
 一方、トランプ米大統領は13日、ツイッターで、「米情報機関によると、中国政府は香港との境界に部隊を移動させている」と述べて中国側の動きを牽制するとともに、全当事者に冷静な行動を要求した。
 またトランプ氏は記者団に「香港は非常に厳しい状況だ」「自由のため、中国を含む全ての関係者にとって事態がうまく決着することを望む」などと語った。
 これに対し中国側は、米国が香港デモを支援していると非難している。官製メディアの中国国際放送局は14日、米国など外部勢力が内政に干渉し、「香港の混乱に力を貸した」と論じた。訪米した中国外交トップの楊潔共産党政治局員は13日、ポンペオ米国務長官と会談。詳細は明らかにされていないが、香港情勢も議題になったとみられる。
 香港では13日夜、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報の男性記者ら2人が空港内でデモ参加者らに取り囲まれ、暴行を受ける事件も発生。駆け付けた警官隊とデモ隊の衝突が起き、逮捕者も出た。中国政府は14日、記者らへの暴行は「ほぼテロに近い行為」だとし、「最も強烈に非難する」との声明を出した。


2019.8.14-朝日新聞 ASAHI DEJITAL-https://www.asahi.com/articles/ASM8F5J3NM8FUHBI02S.html
香港空港、占拠のデモ隊と警官ら衝突 欠航は600便に
(香港=益満雄一郎、西本秀)

「逃亡犯条例」改正問題を機に香港で政府への抗議活動が広がっている問題で、数千人規模のデモ隊が12日に続き13日も香港国際空港に集まり、ロビーなどを占拠した。旅客の搭乗手続きができなくなり、空港当局は夕方以降出発する全便の欠航を決めた。欠航は2日連続で、あわせて約600便の運航が取り消された。深夜には警官隊との衝突も発生。混乱の拡大が香港の都市機能に影響を及ぼすなか、中国政府は本格的な介入の可能性を示唆するなど、牽制(けんせい)を強めている。
 9日に始まった香港国際空港でのデモは12日に拡大。夕方以降に発着する全便が欠航になった。深夜になってデモ隊の多くが撤収したため13日は朝から運航が再開されたが、前日の欠航の影響で機材が間に合わずダイヤは大幅に乱れた。
 13日午後には再びデモ隊が空港に集まり、出発ロビーなどを占拠。手荷物検査場入り口にカートを並べて封鎖したため、当局は夕方以降の搭乗手続きの中止を決定した。欠航は12日が170便以上、13日は400便以上に及んだ。深夜、警官隊が空港に出動し、一部でデモ隊と衝突した。
 11日に市街地で起きたデモ隊と警察の衝突でデモ隊側の女性が負傷。失明する恐れもあるとの報道を機に市民の反発が強まり、「香港の情勢を世界に伝えよう」との呼びかけで、空港でのデモが拡大した。
 同空港はアジア有数のハブ空港で、年間利用客は7千万人を超える。13日に記者会見した香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は「香港にとって空港の重要性は説明するまでもない。暴力は香港を二度と戻れない道に追いやる」と批判した。
 香港の混乱は、観光業を中心に香港経済にも打撃を与えつつある。13日の香港株式市場は全面安の展開となり、今年1月以来、約7カ月ぶりの安値をつけた。 政府とデモ隊の対立が深まるなか、中国政府の香港マカオ事務弁公室の報道官は12日、香港の抗議活動に「テロリズムの兆候も現れ始めた」などと批判。香港と隣接する広東省深セン市で武装警察が集まる様子を国営メディアが伝えるなど中国側は牽制を強めており、緊張が高まっている。(香港=益満雄一郎、西本秀)


2019.8.13-朝日新聞 ASAHI DEJITAL-https://www.asahi.com/articles/ASM8F5J3NM8FUHBI02S.html
香港空港、占拠で欠航500便に 中国は介入姿勢強める
(香港=益満雄一郎、西本秀


2019.8.13-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190813/wor1908130007-n1.html
香港空港が運航再開 デモ影響、13日も200便以上が欠航へ

【北京=西見由章】香港の航空当局は13日、12日午後から停止していた香港国際空港を出発する便の搭乗手続きを再開した。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回を求める大規模デモが同空港で行われた影響で、12日は180便以上が欠航した。同空港は13日も発着便の時間変更を行うとしており、香港メディアによると同日朝の時点で200便以上が欠航予定となっている。
 12日正午以降、香港国際空港には黒っぽい服装のデモ隊が次々と到着。数千人以上が出発・到着ロビーを占拠し、旅客の搭乗手続きなどができなくなった。
 デモ隊は、11日に警官隊が発射した暴徒鎮圧用のビーンバッグ弾によってデモに参加していた女性が右眼球を負傷したと主張。自身に眼帯をつけるなどして当局による「過度の武力の使用」に抗議した。
 デモ隊は12日夕方から「目的を達成した」として撤収を開始したが、13日朝の時点でも少数の参加者が空港内にとどまっている。インターネット上では同日午後も同空港での集会開催が呼びかけられている。
 「逃亡犯条例」改正問題をめぐっては今月5日のゼネストに航空業界の労働者らも参加し、約250便が欠航した。
 一方、中国国務院(政府)香港マカオ事務弁公室は12日に報道官談話を発表し、11日夜に「暴徒」が香港の警察署などに火炎瓶を投げつけて警察官らが負傷したと非難した。談話は香港で続いているデモについて「テロリズムの兆候」が出始めていると主張。香港が「重要なヤマ場」を迎えたとして、「香港住民は立ち上がり、あらゆる暴力分子にノーを突きつけるべきだ」と訴えた。


2019.8.7-BBC ニュース-https://www.bbc.com/japanese/49259964
中国、香港デモ隊に「火遊びするな」 中央政府を過小評価しないよう警告

中国は6日、香港で9週間にわたり続いている、反政府や民主化を求めるデモの参加者に対し、「火遊び」しようとすれば「火によって滅びるだろう」とし、「中央政府の確固たる姿勢を過小評価」しないよう強く警告した。
  国務院香港マカオ事務弁公室(HKMAO)はこの日、2週間で2度目となる記者会見を行なった。HKMAOが香港に関する会見を開くのは異例。
HKMAOの楊光報道官は、「過激なデモ」が、香港を「非常に危険な状況の瀬戸際に」 陥れていると述べ、デモ隊に対し、「自制を弱さだと誤解」しないよう忠告した。
さらに、林鄭氏に辞任を迫ろうとしても「何にもならないだろう」とした上で、一連の抗議行動は香港経済に「深刻な影響」をもたらしたと述べた。
中国政府はこれまで、香港のデモについてたびたびけん制してきたが、今回の発言はその中でも最も厳しい警告の1つとなった。
  楊光報道官は、デモの最前線には「過激で暴力的な」者たちが、デモの中心には、「誤った方向へと導かれ、良くない意図を持った」市民がいたと述べた。
また、舞台裏で香港問題に干渉し、不安を煽ったとして、西側諸国の「反中国勢力」を非難した。
その例として報道官は、香港での抗議行動を「美しい光景」だと発言したアメリカの野党・民主党幹部ナンシー・ペロシ下院議長や、香港警察による武力行使について捜査を呼びかけたイギリスのジェレミー・ハント前外相を挙げた。
一方、民主化を求める林卓廷(ラム・チュクテン)議員は、BBCに対し、抗議行動の背後に「外部からの圧力」はないと述べた。
「これは、国外の政権が企てたものではなく、香港の人々が自発的に行なっている活動だ」
専門家は、抗議行動には先導者がおらず、予測不能なかたちが多く、「フラッシュ・モブ」のような市民的不服従や、ソーシャル・メディア・アプリを介した呼びかけなどが含まれると指摘している。
中国軍の介入は
中国人民解放軍(PLA)が香港に兵士を駐留させている一方で、地域問題に干渉することは想定されていない。法律上、香港政府がPLAに対し、治安維持や災害援助などへの協力を要請することは認められてはいるが。
PLAの介入の可能性について問われた楊光報道官は、中国政府は、香港警察が秩序を回復できると確信していると述べるに留まった。
先週、香港に駐留するPLAは、中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」に、暴動防止訓練を行なう兵士の動画を投稿し、不安を引き起こした。


2019.7.30-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190730/wor1907300034-n1.html
44人を暴動罪で起訴 香港デモ、警察との衝突

香港メディアは30日、「逃亡犯条例」改正案に反対する若者らのデモ隊と警官隊の28日の衝突で、逮捕された49人のうち44人について暴動罪での起訴が決まったと伝えた。市民ら数百人は30日夜、デモ隊の一部が拘束されている警察署前に集まり、釈放を求めた。
 中国政府は29日、香港警察によるデモ隊の強制排除への支持を表明、「暴力犯罪分子」として厳しい処罰を求めたばかり。香港当局は過激なデモに対して刑事責任を徹底追及する姿勢を明確にした形だが、若者らが反発し、さらに先鋭化する可能性がある。
 28日の抗議活動では、一部若者が中国政府の出先機関方面に向かい、警官隊と衝突した。警察は武器を隠し持っていた疑いなどで49人を逮捕していた。
 一連のデモでは6月12日の若者らと警官隊との大規模衝突で、5人が暴動容疑で逮捕された。


2019.7.22-日本経済新聞-https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47633520S9A720C1FF2000/
謎の白シャツ集団、香港デモ参加者を襲撃

【北京=羽田野主、香港=木原雄士】香港の「逃亡犯条例」改正案をめぐる抗議活動で、一部の若者らは21日、中国政府の出先機関に初めて抗議した。習近平(シー・ジンピン)指導部は中国本土への混乱波及を警戒し、取り締まりを強化する方針だ。同日夜にはデモ参加者が素性の分からない白いTシャツを着た集団から暴行を受け、45人が負傷した。
「光復香港、時代革命(香港を取り戻せ、革命の時だ)」。21日夜、香港にある中国政府の出先機関「中央駐香港連絡弁公室」の前に集まった約千人の若者はこう叫びながら建物に卵を投げつけ、中国の国章に黒い液体をかけた。スローガンは中国からの独立を志向する運動家の梁天琦氏が使っていたものだ。同氏は暴動罪で収監中だが、急進的な若者にカリスマ的な人気を持つ。
  「一国二制度の原則の限界ラインに触れるもので絶対に認めない」。中国政府の香港マカオ事務弁公室はただちに談話を出して非難した。中国共産党の機関紙、人民日報も22日付1面で「中央政府への権威への公然とした挑戦だ」と批判した。
  国章を汚すのは最大級の侮辱行為にあたる。中国外務省の耿爽副報道局長は22日の記者会見で「香港政府が必要な措置をとって中央政府の機関の安全を守り、犯罪分子を処罰することを断固支持する」と述べ、香港政府に取り締まり強化を求める考えを示した。
  ただ、習指導部も一段の強硬措置には踏み込みにくいようだ。18日付の香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは中国政府は人民解放軍の投入は検討していないと伝えた。軍を関与させれば、欧米に批判の口実を与えかねないためだ。求心力が低下した林鄭月娥・行政長官の進退をめぐっても、共産党内に「習氏の権威に傷をつける懸念があり、辞めさせられない」との見方がある。
  一方、新界の鉄道駅で白シャツの男たちがこん棒などを持ち、デモ参加者に次々と襲いかかる映像は香港市民に衝撃を与えた。ネット上では地元ギャングや香港の親中派議員の関与を疑う声が出ているが、真相はわかっていない
林鄭氏は22日に記者会見し「暴力はいかなる問題も解決しない」と事態の沈静化に努めた。過激な抗議や暴力の応酬が止まらなければ市民の分断が一段と深まりそうだ。


2019.7.18-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190618/wor1906180028-n1.html
香港長官が謝罪会見 辞任否定 条例改正案「撤回」明言せず

【香港=藤本欣也】中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正問題をめぐり混乱が続く香港で18日、政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官が記者会見を開き、「心から市民に謝罪する」と陳謝した。しかし条例改正案を「撤回する」とは明言せず、自らの辞任についても「市民の信頼を取り戻す」と述べ、続投の意思を表明した。
 立法会(議会)の民主派議員は反発し、デモを継続する方針を表明。ネット上でも「失望した」「会見をした意味がない」など批判の声が広がっており、市民の反発は収まっていない。 主催者発表で100万人以上が参加した9日と16日のデモでは、市民らが条例改正案の撤回や、林鄭氏の辞任を要求していた。
 これに対し、林鄭氏は15日、改正案の立法会審議を無期限に延期すると発表。16日夜には、政府声明を出して、一連の混乱について謝罪した。しかし、声明ではなく会見を開いて頭を下げるべきだという批判の声が一部で上がり、林鄭氏はこの要求には応じた形だ。
 林鄭氏は会見で、市民の理解が得られない限り、「絶対に改正作業は再開しない」と表明したものの、「撤回」という言葉を使うことは最後まで避けた。
 香港では2003年にも、中国当局が成立を求めていた「国家安全条例」案が市民の反対デモで撤回に追い込まれている。このときは当時の董建華行政長官が05年に健康問題を理由に辞任した。事実上の引責辞任とみられている。


2019.7.17-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://special.sankei.com/a/international/article/20190717/0003.html
辞めたくても辞められない香港行政長官

【北京=藤本欣也】中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正への反対デモが続く香港で、辞任圧力にさらされているのが政府トップの林鄭月娥行政長官だ。「中国政府に何度も辞任を申し出たが拒否された」とも報じられている。なぜ、辞めたくても辞められないのか。
香港の行政長官は中国政府の承認がなければ、辞任できない。


2019.7.8-朝日新聞-https://www.asahi.com/articles/ASM770CHLM76UHBI02J.html
香港デモ、中国にアピール 勢い衰えず、組織なく散発化

香港の「逃亡犯条例」改正案をめぐる問題で、中国本土と香港を結ぶ高速鉄道の駅を目指すデモ行進が7日、行われた。主催者発表で23万人超(警察発表は5万6千人)の市民が参加した。これまでは立法会(議会)などが抗議の主な舞台だったが、中国本土の人々に声を届ける狙いでルートを変えた。ただ一方で、デモ終了後に道路を占拠した数百人の若者と警察が衝突し、けが人が出ている模様だ。
 「暴動はない。あるのは暴政だけだ」。小雨も降るなか、香港・九竜半島の繁華街を行進したデモ隊は、これまでのデモでは使わなかった中国語の普通語で訴えた。広東語がわからない中国本土の人々にアピールするためだ。デモのルートは中国人の買い物客が多いことで知られる。
 香港警察は約2千人の警察官を配置し厳戒態勢をしいた。デモ終点の西九竜駅周辺への立ち入りを制限し、中国本土に向かう電車の切符の販売も停止した。一連の抗議活動で中国本土との交通に影響が及ぶのは初めて。
 香港警察が警戒を強めるのは、西九竜駅の中に中国当局が管理する区域があるためだ。香港の領域内に中国の管理区域をつくることは、香港の高度な自治を保障した「一国二制度」違反だとして民主派の猛反発を受けたが、香港政府は押し切って昨年9月に駅を完成させた。デモ隊が駅構内に突入し、中国の警察官と接触する事態にならないよう警備態勢を強化している。


2019.7.4-産経新聞-THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/photos/190704/wor1907040014-p1.html
メイ英首相が中国政府に懸念 香港問題で英中対立
【ロンドン=板東和正】

メイ英首相は3日、英議会の答弁で、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案をめぐり混乱が香港で続く問題について、「懸念」を中国政府に伝えたことを明らかにした。
 メイ氏は答弁で、英国の植民地だった香港の主権を中国に返還することを定めた「中英共同宣言」に触れ、「宣言で示された香港の高度な自治と自由を尊重することは極めて重要だ」と強調した。
 英国は1997年に中国に香港を返還。中英共同宣言では、返還後50年間、2047年までは香港の司法権の独立や表現の自由を含めた社会制度を変えない「一国二制度」が採用され高度な自治が保障された。 今回の香港での混乱をめぐり、英中間の緊張が高まりつつある。 ハント英外相は2日、宣言が順守されなければ「重大な結果を招く」などと指摘し、中国側が反発した。
 また、中国の劉暁明駐英大使が3日、「英国は香港がもはや植民地でないことを忘れたようだ」とした上で、「英国は香港に干渉するべきではない」と発言。ロイター通信によると、英外務省は同日、この発言を容認できないとして劉大使を同省に呼び出し、厳重に抗議した。
 一方、メイ氏の辞任に伴う与党・保守党の党首選の候補者、ジョンソン前外相も3日、ロイター通信のインタビューで「(改正案に対して抗議する)香港の人々を支持する」とし、「一国二制度は現在も機能しており、放棄されるべきではない」と強調した。
 香港の混乱を受け、英国では、中国が市民との対話に臨むべきだとする主張が根強い。英国統治時代の香港最後の総督パッテン氏は6月14日付の英紙ガーディアンへの寄稿で「改正案は世界中の政府、特に英国から反対されなければならない」と指摘していた。


2019.7.2-産経新聞-THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190702/wor1907020005-n1.html
香港デモ緊迫 治安部隊が強制排除開始 若者らの立法会占拠

【香港=藤本欣也】英国から中国へ主権が返還されて22年を迎えた香港で1日、大規模な反政府デモが行われ、若者ら数百人が立法会(議会)に突入し、議場などを占拠した。治安部隊は2日未明、立法会周辺の若者らの強制排除に乗り出した。多数の負傷者が出る可能性があり、緊迫した事態となっている。
 立法会の占拠は、ヘルメットやゴーグル、マスクで顔を覆った一部の過激な若者が扇動した。鉄棒でガラスなどを割って突入したもので、制止しようとした民主派議員ら40人以上が負傷した。香港メディアによると、若者らは議場内の設備や歴代議長の肖像画などを破壊したという。
 中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案をめぐっては、学生らがこれまで平和的なデモを行い、広範な市民の共感を得ていた。今回の暴力行為により、市民の支持が離れる可能性がある。
 この日は返還記念日恒例のデモ行進も行われ、昨年の約5万人(主催者発表)を大幅に上回る約55万人(同)が参加した。参加者は市内の幹線道路を平和的に行進し、条例改正案の完全撤回や、香港政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官の辞任などを要求した。
 1日午前には中心部で返還22年記念式典が開催された。林鄭氏は演説で、条例改正問題をめぐる社会の混乱を念頭に、「教訓をくみ取りながら民意に沿った政治を行っていきたい」などと述べた。
香港若者ら議会を一時占拠 治安部隊が強制排除
【香港=藤本欣也】香港が中国へ返還されて22年を迎えた1日夜、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回などを求める若者ら数百人が立法会(議会)に突入し、議場などを一時占拠、設備などを破壊した。2日未明、香港の治安部隊が若者らを強制排除した。
 逃亡犯条例改正案をめぐっては、学生らがこれまで平和的なデモを行い、広範な市民の共感を得ていた。今回の暴力行為により、市民の支持が離れる可能性がある。「逃亡犯条例」改正案をめぐる香港の混乱は大きな転換点を迎えた。
 香港政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官は同日未明、緊急の記者会見を行い、若者らの破壊活動について「違法な暴力行為だ」と厳しく非難、違法行為を徹底的に追及する方針を示した。
 立法会の占拠は、ヘルメットやゴーグル、マスクで顔を覆った一部の過激な若者が扇動した。鉄棒でガラスなどを割って突入し、制止しようとした民主派議員ら約60人が負傷。若者らは議場内の設備や歴代議長の肖像画などを破壊した。
 一方、1日の返還記念日恒例のデモ行進には、約55万人(主催者発表)が参加した。


2019.7.1-毎日新聞(Yahoo!!Japan ニュース)https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190701-00000017-mai-int
香港で返還記念式典 デモ隊が警官隊と衝突、負傷者も

香港が英国から中国に返還されて22年となる1日朝、記念式典が香港中心部であった。だが、刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」改正案に反対するデモ隊が、式典会場から約1キロ離れた香港政府庁舎そばの幹線道路を一部占拠し、警官隊と衝突。香港メディアによると負傷者も出ており、荒れ模様の返還記念日となった。

 ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などでは式典の妨害も呼び掛けられており、香港政府は警備を強化し、周辺の道路を封鎖。会場周囲に何重にも鉄柵を設けて、大勢の警察官が警戒に当たった。式典には林鄭月娥(りんていげつが)行政長官や中国政府関係者らが出席。林鄭氏は条例改正案を巡る一連の混乱を踏まえ「教訓をくみとり、市民の心にもっと寄り添った施政を進めたい」と述べた。
 1日は祝日で午後には条例改正案の完全撤回と林鄭氏の辞任を求めて大規模デモが予定されている。
 香港では若者らによる激しいデモが断続的に続いており、香港紙によると、6月29日には女子大学生(21)が条例改正案の完全撤回を求める遺書を残して抗議の飛び降り自殺をした。【香港・福岡静哉】


2019.6.17-産経フオト-https://www.sankei.com/photo/story/news/190701/sty1907010024-n1.html
若者ら一部暴徒化 香港返還22年で大規模デモ

香港が英国から中国に返還されて22年を迎えた1日、民主派団体は、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の完全撤回と、香港政府トップの林鄭月娥行政長官の辞任を求める大規模デモを香港中心部で行った。
 一方、立法会(議会)前には1日午後、数千人の若者が集まり、鉄棒でガラスを破壊するなど一部が暴徒化した。午前にも約千人が中国国旗掲揚の式典に合わせて立法会周辺の道路でデモを行い、一部が警官隊と衝突。警官隊は催涙スプレーを使用した。一連の抗議行動で警官13人のほか、若者らを制止しようとした民主派議員らが負傷した。(共同)


2019.6.17-産経新聞-https://www.sankei.com/world/news/190617/wor1906170002-n1.html
香港のデモ、200万人参加 過去最大 高まる行政長官辞任圧力
【香港=藤本欣也】

中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正問題をめぐり混乱が続く香港で16日、香港政府トップの林鄭月娥(りんていげつが)行政長官
     の辞任などを求める大規模デモが行われた。林鄭氏は15日、改正案の立法会(議会)審議を延期すると発表したが、市民の反発は収まらず、
     林鄭氏の辞任を求める声が高まっている。
  この日のデモには主催者発表で約200万人が参加。香港の全人口の4人に1人以上が参加した計算になり、103万人(主催者発表)の9日のデモを
     上回る過去最大になった。
  デモ隊は16日午後、ビクトリア公園を出発、政府本部庁舎のある中心部を目指した。途中の側道からも市民が続々と合流し、あっという間に幹線道路は
     人で埋め尽くされた。 市民らが行進しながら要求していたのはまず、改正案の審議延期ではなく「完全な撤回」だ。
  民主化運動を支援する歌手の何韻詩(デニス・ホー)さん(42)もデモに参加し、「最近の(改正反対)運動の特徴はリーダーがいないこと。
     みんな自発的に行動していて、とても感動している」と語った。
  一連の反対運動では、12日に学生のデモ隊と治安部隊が立法会周辺で衝突し、80人以上が負傷。中国政府と香港政府はデモを「暴動」、
     一部学生を「暴徒」と断定し激しく非難した。
  これに対し、「ヘルメットやゴーグル、マスクしかしていない学生に、催涙弾やゴム弾を撃ったのは治安部隊の方ではないか」(24歳の女性教師)と反発する
     声が広がっている。
  この日のデモで最も大きかったシュプレヒコールは「林鄭下台!」(林鄭氏は辞任せよ!)だった。
  「中国政府のいいなり。傀儡(かいらい)政権だ」(31歳の男性会社員)。「僕たちの主張を全く聞いてくれなかった」(17歳の男子高校生)。
     林鄭氏が今回の改正問題で失った市民の信頼を取り戻すのは容易ではない。
  林鄭氏は16日、デモを受けて「政府の仕事が不十分で香港社会に大きな矛盾と紛争を生み、多くの市民に失望と悲しみを与えた。行政長官としておわびする」
     として、謝罪の談話を発表した。
  ただ、林鄭氏を辞任に追い込んだとしても、現行の選挙制度では親中派の行政長官が選ばれるだけだ。
  これに関しては「市民の声をもっと聞いてくれる(親中派の)人物の方がいい」(62歳の男性)や、「行政長官を普通選挙で選びたい」(17歳の男子高校生)
     など意見が分かれる。ただ、行政長官選の民主化は2014年の「雨傘運動」で失敗しており、ハードルはかなり高い。
  香港メディアによると、中国の当局者が香港に近い深●(=土へんに川)(しんせん)に滞在し、この日のデモを注視している。今のところ、
     「中国当局は林鄭氏の統治能力に失望したとしても支えるほかない」(香港紙)とみられるが、今後の情勢次第で林鄭氏ははしごを外されかねない。
  一方、香港の経済界は、15日の「審議延期」決定に歓迎の意を示している。有力経済団体、香港総商会のハリレラ会長は「香港政府と市民の建設的な
     対話に期待する」とコメントした。 しかし混乱が収束する見通しは立っておらず、林鄭氏は正念場を迎えた形だ。


中国・台湾-2019/6/12 -日本経済新聞-https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46006080S9A610C1EA1000/
香港デモ隊、警官隊と衝突 70人以上が負傷 

【香港=木原雄士】香港で拘束した容疑者を中国本土に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」改正案に反対する香港の市民や学生数万人が12日、
     立法会(議会)の建物を取り囲み、周辺の幹線道路を占拠した。警官隊が催涙弾やゴム弾を発射して強制排除に乗り出し、香港メディアによると
     70人以上の負傷者が出た。立法会は同日予定していた改正案の審議再開を見送ったが、混乱が続く可能性がある。
  デモ隊が早朝から占拠したのは、行政長官選挙の民主化を求めた2014年の「雨傘運動」と同じ道路だ。時間を追うごとに参加者が増え、数万人に達した。
     「(9日の)100万人デモを気にかけずに、まったく聞く耳を持たない行政長官に怒りを覚えた」。抗議に参加した会社員の唐さん(24)はこう話した。
  香港政府ナンバー2の張建宗政務官は衝突に先立って緊急ビデオメッセージを発表し、「早期に解散し、違法な行為に身を投じてはいけない」とデモ隊に
     占拠解除を求めた。午後に入って立法会の敷地内に突入した若者と警察の間で衝突が起き、警察は催涙弾や放水で強制排除を開始。学生らは
     傘を投げつけるなど激しい応酬になった。衝突後も若者らは周辺に残り、警官隊とにらみ合いを続けた。

  香港政府トップの林鄭月娥行政長官は12日夜に声明を発表し、デモ隊の道路占拠や警察への攻撃について「平和的な集会ではなく組織的な暴動である
     ことは明白だ」と強く非難した。「香港全体の利益のために、平和的な方法でいかなる問題も解決できる」とも指摘したが、条例改正手続きを
     予定通り進めるかどうかには言及しなかった。
  経済活動への影響も出始めている。香港株式市場は混乱を嫌気して全面安となり、ハンセン指数は前日比1・73%下げた。香港取引所や不動産会社など
     主力株が軒並み下落した。

■経済界・外資も条例反対
  香港で「逃亡犯条例」改正案への反対が広がったのは、民主派の若者だけでなく、中国政府に近い立場を取ってきた経済界も本音では拒否反応を示している
     ためだ。外資系企業も従業員が中国本土への引き渡し対象になりかねないと警戒を強めており、アジアの金融センターの地位が揺らぎかねない
     との懸念もある。
  在香港米国商工会議所のタラ・ジョセフ総裁は日本経済新聞に「(100万人デモは)条例への懸念がいかに深く、裾野が広いかを示す。改正の撤回や
     延期を求める」とコメントした。
  中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の副会長がカナダの司法当局に逮捕されるなど、米中対立は激しさを増す。中国政府の報復措置で
     香港で従業員が拘束され、中国に引き渡されかねないとの懸念が外国企業には強い。
  香港政府は引き渡しの対象から経済犯罪を除いたが、「共産党の支配下にある中国の公安当局が容疑をでっち上げる恐れがある」との見方は消えない。
     米国務省は「米国市民が中国の予測できない司法制度にさらされる可能性がある」(オルタガス報道官)と警告する。

  香港は2018年の新規株式公開(IPO)調達額で世界1位になるなどアジア有数の金融センターだ。香港政府が条例改正を強行すれば、米投資銀行などが
     アジアの統括拠点の移転を検討し、金融センターが空洞化する恐れがある。
  普段は実利を重視する香港市民にも「司法の独立が失われれば、自らの身に危険が及ぶ」との危機感が募る。12日は地元の銀行や小売店、旅行会社
     などが臨時休業や、従業員に自宅勤務を認める措置を取った。デモへの参加を容認する動きと受け止められている。
  条例改正案を採決する立法会は定数70のうち、親中派が43議席を握る。経済界を支持基盤とする一部の親中派議員は慎重姿勢を示していたが、
     中国政府の香港出先機関は議員を呼び出すなど引き締めを図る。
  米国との貿易戦争が激しくなるなか、香港の民主派の要求に屈する弱腰を見せられないと判断した習近平(シー・ジンピン)指導部が「事態収拾に乗り出した」
     (外交筋)との見方も出ている。

2019.6.15-https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/061500453/
池田 信太朗-日経ビジネス 電子版開発長
9年6月15日
逃亡条例改正「延期」 どうなる香港デモ、3つの疑問

香港政府は現地時間15日15時から会見を開き、大規模な反対デモの原因となっていた「逃亡犯条例」の改正を「期限は定めずに延期する」と発表した。 この第一報を受けて浮かぶであろう3つの疑問について、いま分かっている情報をもとに解説する。

疑問1:審議「延期」ということは「再開」するのか
  「取り下げ(withdraw)」ではなく「延期(postpone)」なので、字義通り解釈すれば再開の可能性はある。ただし、会見で林鄭月娥行政長官(香港の行政トップ)
     は「今回の改正は、市民の理解が得られなかった」と延期の理由を明言しており、単なる時間稼ぎの可能性は低いと思われる。
  また、審議の延期について「先送りのスケジュールは定めない」とも発言した。この言葉で想起するのは、「香港デモは「最後の戦い」、2014年雨傘革命との違い
     でも解説した2003年の「香港基本法23条条例」事件だ。香港基本法23条に基いて、反政府的な言動を禁ずる条例を成立させようと試み、大規模デモ
     でとん挫した際、香港政府が使った言葉も「撤回」ではなく「期限を定めない延期」だった。そしてその後、同条例案が審議入りしたことはない。「延期」
     という言葉で政府の面子を保ちつつ、現時点では事実上の廃案になったということだ。この前例通りになるかは分からないが、ヒントの1つにはなるだろう。
疑問2:今回の判断は中国政府の意向なのか
  林鄭月娥行政長官は今回の決定について「香港政府の判断を、北京政府(中国政府)が尊重してくれた」と発言した。ただしこれを額面通りに受け取る
     向きは少ない。
  今回の決定の前に林鄭月娥行政長官が深センに滞在する共産党幹部・韓正氏と会談したと、複数の現地紙が報じている。会見では「韓正氏と会談したのか」
     という質問に対しては回答しなかったが、否定ではなく回答を拒否したというのは、事実であることを示している可能性が高い。
  そもそも「一国二制度」の根幹に関わる今回の条例改正について、香港政府が中国政府の意向を無視して単独で意思決定できるということはあり得ないと
     考えるべきだろう。
  ではなぜ中国政府は妥協したのか。6月28日から大阪で開催され、習近平国家主席も参加するG20サミットでの各国からの批判を避けるため、
     などの推論は成り立つが、今後の中国政府の動きによって明らかになっていくだろう。
疑問3:反対デモは続くのか
 記者会見をライブ中継したメディアのフェイスブックページには、視聴しているユーザーによる「616見(6月16日に会おう)」などの発言が次々に書き込まれた。
     6月16日に予定されている大規模集会に参加する意思表明だ。
 あくまでも政府の決定は「撤回」ではなく「延期」だったため、デモは継続するだろう。ただし、一定の戦果を挙げたため、規模は縮小していく可能性が高い。
 今回のデモが異例の規模に発展したのは、64集会(天安門事件への反対集会)などと異なり、政治的に強い「反中」意識を持っている人たちだけでなく、
     香港が当たり前に享受してきた安全と自由が脅かされることに危機感を持った市井の人たちも参加したからだ。今後も政府に対して強硬な要求を
     続ける勢力はデモを継続する可能性が高いが、そうでない人たちの参加は減っていくと思われる。

 今後の争点は、デモの主宰者に対する「処分」だ。雨傘革命の首謀者たちは逮捕、起訴され、一部が入獄した。ただし雨傘革命については政府は強硬な
     姿勢を崩さず、デモの要求は退けられた。今回は会見で、行政長官が遺憾の意を表明し、改正案の審議を延期するというアクションを取った。
   政府が誤りを認めたからデモ活動は不問に付すのか、それとも道路占拠や破壊などの不法行為について粛々と処罰するのか。どこまで強面(こわもて)
     の処分を下すかに、中国政府の怒りの強さが表れてくるだろう。


2019.6.13-zaqzaq by 夕刊フジ-
(https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190613/for1906130003-n1.html?utm_source=coins&utm_medium=push&utm_campaign=COINs)
習近平氏“失脚”危機!? 香港流血デモ、負傷者

70人超…中国共産党は“内紛”状態 専門家「G20前にヤマ場」
香港で、学生らと警官隊が激しく衝突した。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回を求め、立法会(議会)を包囲していた
  学生らに対し、警官隊が12日、多数の催涙弾やゴム弾などを撃ち込んだのだ。負傷者は79人に上ったという。30年前の「天安門事件」の悪夢
     は繰り返されるのか。香港は13日朝も緊迫している。「自由」と「法の支配」を守ろうとする学生らの抗議運動に対し、中国共産党幹部が香港入り
     したとの報道もある。米国務省は、学生らの行動に理解を示した。今後の展開次第では、習近平国家主席の政権基盤が揺らぐ可能性もありそうだ。
続きは「中国の問題」へ


2019.6.13-日経-https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/061300443/?P=2
池田 信太朗-日経ビジネス 電子版開発長
香港デモは「最後の戦い」、2014年雨傘革命との違い

 香港の騒乱が続いている。

 1997年の返還以来、香港では何度か大規模なデモが起きている。特に記憶に新しいのは2014年に起きた雨傘革命」と呼ばれる学生蜂起だろう。「またか」と思う向きもあるかもしれない。だが、今回のデモの性質は雨傘革命のそれと大きく異なる。
 雨傘革命は傍観していたが、今回のデモには参加した香港人男性は言う。「初めて政治デモに参加した。これが最後かもしれない」。
夢見て裏切られた雨傘革命
 雨傘革命のデモ隊が求めていたものは「普通選挙の実施」だった。
 返還後、香港政府のトップである香港行政長官は1200人の選挙委員だけが投票権を持つ選挙で選定される仕組みを取っていた。いわゆる「間接選挙」の体だが、選挙委員の選定は恣意的で、いわゆる親中派が8割以上を占める。民意が反映される選挙からは程遠い。
 香港の憲法に当たる香港基本法は、この制度について「必要であれば、2007年以降に」改正できると定めていた。行政長官の任期は5年。つまり、これまでに2回、選挙方法を改める機会があった。

 1度目は2007年。当時の行政長官(董建華氏)の辞任を求めるデモが激化する中で、民主派は普通選挙の実施を求めたが、中国当局は全人代で「2007年以降に変えるというのは、2007年に変えるという意味ではない」とする基本法の解釈を発表して時を稼いだ。
 2度目が2014年、つまり雨傘革命の年だ。「今度こそ」と期待が高まる中、8月に中国政府は新選挙制度を発表した。1人1票の投票権を市民に与える。ただし、政府が認定した「指名委員」の過半の支持を受けた者のみが候補者になれる、というものだった。中国政府の意に沿った候補者以外が立つことはなく、有権者にはほぼ選択権がない。つまり「形式だけの普通選挙」だったのだ。これに怒った学生が立ち上がり、大規模なデモに発展した。

 デモは徐々に力を失い、失敗に終わる(関連記事:不夜城の陥落、力を失いつつある香港デモ)。「形式だけの普通選挙」すら撤回され、1200人の委員による間接選挙が継続されることになった。いまの行政長官である林鄭月娥氏は1200人から選ばれたトップだ。
 香港は、返還時の取り決めによって高度な自治が認められていると言われる。だが、政府の代表が民意によって選ばれたことは英国統治時代から含めて1度もない。「法治主義」や「資本主義」はあっても「民主主義」はなかったのだ。中国の改革派(天安門事件に抗議して基本法完成前に辞任した)がその起草に参加したがゆえに基本法に書き込まれた文字によって「2007年以降、民主主義を手にすることができるかもしれない」という希望が生まれ、それが裏切られた。これが雨傘革命の実像だった。
 つまり「いまないものを求めた」のが雨傘革命だった。これに対して今回のデモは「いまあるものが失われようとしていることを食い止める」という闘争だ
「安全」な場ではなくなる恐れ
 既報の通り、今回のデモ隊の要求は、容疑者の身柄を中国本土などへ移送できるようにする「逃亡犯条例」の改正を食い止めることにある。
 香港人の脳裏をよぎるのは、2015年に発生した書店員失踪事件だろう(関連記事:香港銅鑼湾書店「失踪事件」の暗澹)。中国政府を批判する書籍を多数そろえていた香港の書店の関係者が突然、失踪したという事件だ。失踪者たちはやがて戻ったが、そのうちの1人が中国当局による拘束と捜査だったことを告発して注目を集めた(関連記事:銅鑼湾書店事件、「ノーと言える香港人」の告発)。
 言論の自由が守られている香港であれば、中国政府に対する批判も安全にできる――。「一国二制度」の壁を越えて、法的手続きを経ずに中国当局の力が及び、その「前提」がねじ伏せられたことに衝撃を受けた香港人は多かった。
 「逃亡犯条例」は政治犯を対象としていないと香港政府は言う。だが、上記失踪事件をはじめとする中国当局の強面(こわもて)を知る香港人は額面通りには受け取っていない。デモに参加した男性は「たとえ無罪でも、別件で逮捕され、取り調べのためにと移送されるだけで大きなダメージになる。香港が、それを恐れて口をつぐむような場所になってしまえば、国際都市としての地位は明らかに下がる」と懸念を示す。
 2003年にも、香港は「いまあるものが失われようとしていた」ことがある。香港基本法23条には「香港特別行政区は国家分裂や反逆、国家機密を盗み取るなどの行為を禁じる法律を自ら作る」という一文がある。この条文に基づいた条例を、香港政府は2003年に成立させようとしたのだ。もし成立していれば、中国政府に対する批判が法的に禁じられる事態になっていた。
 今回の「逃亡犯条例」改正案は、この条例に近い効果を、香港社会に実質的に及ぼすものと言っていい。2003年条例は香港市民の猛反発に遭い、撤回を余儀なくされた。だが、2003年当時といまとでは、中国政府の力、香港の国際的な地位ともに大きく異なる。中国政府と、その意向を受けた港政府が今回は強行するという可能性は小さくない。
 「ないもの」に手を伸ばそうとした雨傘革命と、「あるもの」を失うまいとする今回のデモ。後者は、勝っても新たに得るものはなく、負ければ引き返せない一線を越える。前者と比べて多くの世代や企業が声を上げたところに、香港社会の必死さが浮かぶ。


2019.6.10-FNN PRIME-https://www.fnn.jp/posts/00419043CX/201906101839_CX_CX
「103万人」香港で大規模デモ 「逃亡犯条例」で言論の危機

香港返還以降、最大規模の抗議デモが行われた。容疑者の中国本土への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案をめぐり、香港で9日、大規模な抗議デモが行われ、主催者側の発表によると、103万人が参加した。
  香港市民は、「中国政府に都合よく利用される」と警戒し、20万人が参加した2014年の大規模デモ「雨傘運動」の主要メンバー・周庭さんも反発した。周さんは、「香港が返還されてから、最も危険な法案だと思います」と話した。周さんは、「改正案が通れば、香港は言論の自由のない危険な場所になる」と訴えている。
  改正案の審議は、香港の議会で12日に行われる予定。


2019.6.10-FNN PRIME-https://www.fnn.jp/posts/00419043CX/201906101839_CX_CX
「103万人」香港で大規模デモ 「逃亡犯条例」で言論の危機

香港返還以降、最大規模の抗議デモが行われた。容疑者の中国本土への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案をめぐり、香港で9日、大規模な抗議デモが行われ、主催者側の発表によると、103万人が参加した。

香港市民は、「中国政府に都合よく利用される」と警戒し、20万人が参加した2014年の大規模デモ「雨傘運動」の主要メンバー・周庭さんも反発した。周さんは、「香港が返還されてから、最も危険な法案だと思います」と話した。周さんは、「改正案が通れば、香港は言論の自由のない危険な場所になる」と訴えている。

改正案の審議は、香港の議会で12日に行われる予定。


2019.6.9-日本経済新聞-(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45881850Z00C19A6000000/)
香港で103万人デモ 本土への容疑者移送案に反発 
中国・台湾

【香港=木原雄士】香港の民主派団体は9日、中国本土に刑事事件の容疑者を引き渡せるようにする「逃亡犯条例」の改正案に反対する大規模なデモを実施した。参加者は主催者発表で103万人(警察発表では24万人)にのぼり、1日のデモとしては1997年の中国への返還以来、最大規模に膨らんだ。改正案について、香港政府は6月中にも立法会(議会)で成立させる方針で、対立が激しくなりそうだ。

参加者は改正案への反対を意味する「反送中」などのプラカードを掲げ、香港島のビクトリア公園から立法会まで行進した。若者の参加も目立った。デモ終了後に一部が暴徒化した。警察官が催涙ガスで鎮圧し、多数を連行した。

改正案は中国当局の求めに応じ、香港で拘束した容疑者を引き渡せるようにする内容だ。台湾で殺人を犯した男が香港に逃げ帰った事件を踏まえ、香港政府は「法律の抜け穴を防ぐ必要がある」と主張する。

だが、中国の司法制度は著しく透明性に欠けるとの批判が強い。人権団体などは政治犯が無実の罪で投獄されていると批判している。香港でも条例改正をきっかけに、中国に批判的な活動家や中国の事業でトラブルに巻き込まれた企業関係者なども移送の対象になりかねないとの見方がある。

香港は高度な自治を認められた一国二制度のもと中国本土と異なる司法制度を維持してきた。司法の独立は欧米企業が香港に拠点を置く理由の一つだ。企業立地などに影響する可能性がある。

香港は高度な自治を認められた一国二制度のもと中国本土と異なる司法制度を維持してきた。司法の独立は欧米企業が香港に拠点を置く理由の一つだ。企業立地などに影響する可能性がある。

デモに参加した投資アナリストの李さん(24)は「条例改正が通れば、香港は中国本土の下に置かれた単なる一都市になってしまう」と危機感をあらわにした。グラフィックデザイナーの王映晴さん(24)は「中国は香港の政策に干渉し自由を奪ってきた。改正案が通れば、国際都市としての香港が終わる」と話した。メディア業界も中国に批判的な報道が難しくなる事態を懸念している。

民主派だけでなく経済界や法曹界、欧米諸国から懸念の声が相次ぎ、香港政府は引き渡しの対象となる犯罪を絞り込んだ。立法会で12日に審議を再開し、6月中にも可決させる方針だ。

デモに参加した投資アナリストの李さん(24)は「条例改正が通れば、香港は中国本土の下に置かれた単なる一都市になってしまう」と危機感をあらわにした。グラフィックデザイナーの王映晴さん(24)は「中国は香港の政策に干渉し自由を奪ってきた。改正案が通れば、国際都市としての香港が終わる」と話した。メディア業界も中国に批判的な報道が難しくなる事態を懸念している。

民主派だけでなく経済界や法曹界、欧米諸国から懸念の声が相次ぎ、香港政府は引き渡しの対象となる犯罪を絞り込んだ。立法会で12日に審議を再開し、6月中にも可決させる方針だ。


香港
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


中華人民共和国香港特別行政区、通称香港は、中華人民共和国の南部にある特別行政区一国二制度)である。同じ特別行政区の澳門は南西に70km離れている東アジア域内から多くの観光客をひきつけ、150年以上の植民地の歴史で世界に知られる。
広大なスカイライン及び深い天然の港湾を抱える自由貿易地域であり、1,104 km2 (426 sq mi)の面積に700万人を超す人口を有する世界有数の人口密集地域である

概要
香港の人口は、93.6%が華人、6.4%はその他の民族である。香港の広東語話者の大多数は主に隣接する広東省が起源であり、1930年代から1960年代に中国での戦争や共産主義体制からイギリス植民地であった香港に逃れて来た人々である。1839年から1842年のアヘン戦争後、香港は大英帝国の植民地として設立された。香港島が最初にイギリスに永久割譲され、1860年に九龍半島割譲、1898年には新界租借された。

太平天国の乱(1851年 - 1864年)、義和団事件 (1900年 - 1901年)、辛亥革命 (1911年-1912年)、日中戦争などが原因で、香港には難民が続々となだれこんだ。植民地人口の約半分が香港島に住み、残りが九龍半島または舟に居住した。島の方は岩肌に水が浸透しないため、設備なしには真水の供給が難しかった。1885年、香港で利用可能な水は1人1日あたり18リットルであった。1918年になると設置できる土地は貯水池とそこまでの水路でほぼ埋まり、島表面積の1/3にもなったが、それでも人口増加による水需要の増加には追いつかなかった。新界も状況は似て、1936年に大規模なジュビリー・ダムを完工したにもかかわらず、1939年の時点で24時間給水は雨季にしかできなくなっていた。このとき香港全体で1人1日あたりの水消費量は75リットルと推定されている。この水不足問題が、後に英国が、租借していた新界及び割譲されていた香港島も含め、現在の香港全領域を返還せざるを得ない状況を作った。

第二次世界大戦 (1941年–1945年) の間、イギリス軍が瞬く間に放逐されて日本に軍事占領され、1945年8月までそれは続いた。この戦前から現在まで、香港は慢性的に水不足である。戦後は中華民国に返還されずにイギリス統治が再開され、1997年まで続いた。一方、植民地時代の積極的不介入方針は現在の香港の文化および教育制度の形成に大きく影響した。なお、香港の教育制度はおおむね英国式であったが、その後2009年に制度改革が実施された。

イギリスは中華民国ではなく中華人民共和国をその返還交渉相手に選び、中華人民共和国間との交渉及び中英共同声明の結果として、香港はイギリスから中華人民共和国に返還され、一国二制度の原理の下、1997年7月1日に最初の特別行政区になった。その影響で、共産主義の一党独裁政府である中華人民共和国の支配を受けることを喜ばない香港住民を不安に陥れ、イギリス連邦内のカナダやオーストラリアへの移民ブームが起こった。1989年に北京で六四天安門事件が発生すると、香港では再び移民ブームが巻き起こった、大部分の香港移民はイギリス連邦の構成国であるカナダのトロントやバンクーバー、シドニーやシンガポールに向かった。1999年12月にポルトガルから移譲されたマカオも特別行政区である。現在も香港は中国大陸とは異なる政治制度を有する。香港の独立した司法機関コモン・ローの枠組みに従って機能する。共同声明において正式に記された条項に基づいた返還以前に、中華人民共和国側により起草された定款である香港特別行政区基本法において香港の政治は行われ、国際関係及び軍事防御以外の全ての事柄において高度な自治権を有することを規定している。なおこの自治権は中国中央指導部の委任・承認に基づき地方を運営する権限であり、完全な自治権、地方分権的なものではないとされる(2014年6月10日中国国務院白書)。

香港は複数政党制であるが、立法会の70議席のうち30議席を少数の有権者が支配し、先進経済諸国の中では政治的権利において最下点欠陥民主主義に分類される

香港は世界都市であり、アルファ +の都市の1つである。ロンドン及びニューヨークシンガポール東京と並び、世界的に重要な国際金融センターに格付けされ、低税率及び自由貿易を特徴とする重要な資本サービス経済を有し、通貨香港ドル世界第8位の取引高を有する[20]

香港は世界有数の一人当たりの所得を有するが、先進経済諸国有数の所得格差もまた存在する。スペースの不足により高密度な建造物の需要が生じ、現代建築及び世界で最も垂直な都市の中心へと都市は開発された。高密度な空間は高度に発達した交通網ももたらし、公共交通機関の利用率は90%を超え、世界第1位である。香港はさまざまな側面、例えば、経済的自由並びに金融及び経済的競争力において多数の高い国際ランキングを有する。人間開発指数は全面的に高く順位付けされ、知能指数は世界で最も高い地域にもなっている。隣接する中国本土からのPM2.5による大気汚染及びスモッグは香港市民の健康面への影響は懸念されるが、香港市民は男女ともに平均寿命で世界一 になるなど非常に長寿である。
人口
2011年の人口調査の結果によると、香港の人口は707万1576人で、前回2006年の調査に比べて0.6%の増加であった。香港は世界で最も人口密度が高い地域の一つであり、1平方キロメートル当たりの人口密度は6540人(2010年)である。2018年には745万5245人となっている。18ののうち最も人口密度が高い観塘区では5万4530人に上る。香港の出生率は1000人あたり12.5人(2010年)で、世界でも低水準にある。
香港島北部の住宅地と九龍半島に人口が集中している。両者を合わせて127.75平方キロメートルと香港全体の面積の12%弱の地域に、香港総人口の約48%に当たる約338万人が居住している。九龍地区の1平方キロメートル当たりの人口密度は4万4917人、同じく香港島北部は1万5726人である(いずれも2010年)。
また、同地域は『海外からの移住者が仕事探しを行なえる環境』として比較的恵まれていることが特徴ともなっており、労働移住者の割合は24%(世界7位)という高めなものとなっている。香港の人口で最も多いのは「華人」と呼ばれる中国系で、全体の93%を占める。華人以外で多いのはメイドなどの出稼ぎ労働者として多くが働いているフィリピン人やインドネシア人で、かつての宗主国のイギリス人が次ぐ。日本人は約1万4000人居住している。
香港返還以降の人口増加の大半は本土からの移民による。香港大学アジア太平洋研究センターの鄭宏泰助理教授は「中国本土からの移民人口を総合すると、2001年時点の香港総人口の約1割に当たる」と指摘する。2015年の調査によると、1997年の香港返還以来、中国本土から香港に移り住んだ人の数が87万9000人に達していることが明らかになった。香港の人口(730万人)の8人に1人が本土出身者という計算になる。
政治
香港の政治の特徴は香港返還(主権移譲)後に施行された一国二制度にある。イギリス時代の行政・官僚主導の政治から、一定の制限の下での民主化および政党政治への移行期に当たり、社会主義国である中華人民共和国の中で2047年まで資本主義システムが継続して採用されることになっている。

1997年に香港は香港特別行政区として改編され特別行政区政府が即日成立した。香港特別行政区は中華人民共和国において直轄市と同等(省級)の地方行政区とされる。しかし中華人民共和国憲法第31条および香港特別行政区基本法に依拠し、返還後50年間は一定の自治権の付与と本土(中国大陸)と異なる行政・法律・経済制度の維持が認められている。そのため、香港は「中国香港」、中華人民共和国とは別枠で経済社会分野における国際組織や会議に参加することができる。(詳細は香港の対外関係を参照のこと。)

しかし、香港は「港人治港」として「高度な自治権」を享受しているが、「完全な自治権」が認められているわけではない。首長である行政長官は職能代表制として職域組織や業界団体の代表による間接制限選挙で選出されることになっており、その任命は中華人民共和国国務院が行う。また、香港の立法機関である立法会の議員(定員70人)は、半数(35人)が直接普通選挙によって選出されるが、残り半数(35人)は各種職能団体を通じた選挙によって選出される。

行政長官と立法会議員全員の直接普通選挙化をどの時期から開始するか、香港返還直後から議論になっている。2007年12月29日全国人民代表大会常務委員会が、行政長官の普通選挙の2017年実施を容認する方針を明らかにしたものの、立法会議員全員の直接選挙については今なお時期について言及していない。
司長や局長(英語ではいずれもSecretary、閣僚に相当する)は行政長官の指名により中華人民共和国政府が任命する。行政長官と司長局長クラスに限っては中国籍の人物でなければ就任できないが、それ以外の高級官僚(部長クラスなど)にはイギリス人イギリス連邦諸国出身者も少なくなく、新規採用も可能である。

香港基本法の改正には全国人民代表大会の批准が必要であり、香港特区内では手続きを完了できない。同法の解釈権も全国人民代表大会常務委員会が有している。香港の司法府である終審法院の裁判権は香港特区内の事案に限定され、香港が独立という選択肢がない従属領域であり、中国当局がそれを防ぐため香港に完全な自治権を与えないとの方針に由来する。

現在、基本法によって香港では集会の自由結社の自由が認められているため、中国本土とは異なり自由な政党結成が可能であり、一定程度の政党政治が実現している。香港の政党は民主派(泛民主派)と親中派(建制派)に大別され、立法会議員全員の普通選挙化について、民主派は2016年からの実施を、親中派は2024年からの実施をそれぞれ主張している。
司法
中華人民共和国本土とは異なり、「香港特別行政区基本法」に基づき、英米法(コモン・ロー)体系が施行されている。基本法の規定により、中華人民共和国本土の法律は「別段の定め」がない限り香港では施行されない。(広深港高速鉄道開業に関しては後述)基本法の解釈問題以外の法体系はイギリス領時代と全く同一である。従って死刑制度も存在しない。

返還によりイギリス領ではなくなったためにロンドンに枢密院を求めることはできなくなった。そのために1997年7月の返還と同時に裁判も原則として、香港特区内で完結する必要性が生じた。そのため、返還後、最高裁判所に相当する終審法院が設置された。この時点で新たに設置の終審法院判事のために5人以上のベテラン裁判官がイギリスから招聘された。返還後の司法体制のために旧宗主国から高官に当たるイギリス人の人材を新たに招くという「珍事」は中華人民共和国が英米法を厳格に適用するための人材について不足していることを率直に認めたことを表しており、意外な「柔軟性」あるいは「現実適応性」を確認する事象であったといえる。

終審法院の下には高等法院(高裁)、区域法院(地裁)、裁判法院(刑事裁判所)などがある。裁判は三審制である。ただし、基本法の「中央に関する規定」および「中央と香港の関係にかかわる規定」につき、条文の解釈が判決に影響を及ぼす場合、終審法院が判決を下す前に全国人民代表大会常務委員会に該当条文の解釈を求めることとされる。

2018年9月23日に香港と中華人民共和国を結ぶ広深港高速鉄道(香港西九龍駅広州南駅)が全線開通したことに伴い、唯一香港内である香港内九龍駅では、出入国管理のため(香港特別行政区と中華人民共和国間を行き来するには出国(現地では出境)し入国(同、入境)する必要がある)構内に引かれている黄色い線より片方は香港内でありながら中華人民共和国の法律が適用され、中華人民共和国の公安(警察)がいる。その先に中華人民共和国の入国審査場と税関がある。香港内で出入国(現地では出入境)手続きを済ます「一地両検」について両国政府は『乗客の利便性を考えた』としている。
対外関係
香港の外交権は中華人民共和国中央政府に帰属するが、基本法の規定により香港特別行政区は経済社会分野の条約の締結、国際会議や国際機構への参加が認められている。外交実務に関しては外交部駐香港特派員公署が管轄している。
経済分野では香港政府による独自の在外駐在機関を設けている。国外の香港経済貿易弁事処は商務及経済発展局が管轄し、中華人民共和国本土にある駐北京弁事処と駐経済貿易弁事処は政制及内地事務局が管轄している。
香港域内でも香港政府に外交権限がないことの不利益が次第に認識されている。駐北京弁事処も以前は政務司長(政務長官)の管轄であったが、2005年の行政長官施政方針において対中央(中華人民共和国本土)政策を政制事務局(後の政制及内地事務局)に集中させる方針が出され現在の形態となった。
中華人民共和国と対立している中華民国の航空機や船舶の香港乗り入れや、同国民の香港への渡航条件は返還前と変わらないが、航空機や船舶に同国の国旗である「青天白日満地紅旗」を塗装・掲揚することは事実上禁止されている。香港返還を控えた1995年に、チャイナエアラインの保有する航空機が塗り替えられ、青天白日満地紅旗に代わり新しいコーポレートシンボルの梅の花が垂直尾翼に描かれるようになった。
  香港人が中国本土へ入境する際には、パスポートや香港身分証の代わりに「港澳居民来往内地通行証(回郷証)」が必要とされる。
   返還以来、中国本土の大幅な経済成長により民間交流は活発化している。例えば中国から香港大学へ入学した中国人が香港の大学に入学しその4割が香港で就職、香港から中国本土の大学に入学し就職する香港人が6割という現象が起きている広東省の曁南大学で学ぶ香港人学生はこれまで80%の卒業生が香港での就職を希望したが、2009年になると50%が本土での就職を希望している。香港男性と大陸女性の婚姻件数は1996年の2215件から2006年の1万8000件となり、香港女性と大陸男性の婚姻件数も1996年の269件から2006年の3400件と大幅に増加している。2006年には香港の婚姻件数5万件のうち4割が香港人と大陸人の婚姻となっている。男女の人口比率は2007年には912:1000であったが、30年後には大陸女性が香港男性と婚姻し定住する案件が増加するため709:1000となる推測も出されている。
購買力が高い香港ではメイドを雇用する家庭が多く、その働き手として15万人のフィリピン人が香港に在住している。しかし1990年代にも香港のコンドミニアムで“フィリピン人メイドと犬の使用禁止”の貼り紙が出され、2009年に香港の著名コラムニストが南シナ海南沙諸島領有権問題に絡んでフィリピンを「召使いの国」と揶揄するなど、香港人の差別意識が問題となっている。
一方大陸から香港への観光客は飛躍的に増加し最大の観光客となっている。特に香港との経済格差が小さい深圳では非戸籍者へのビザ取得規制が大幅に緩和され、リピーターが増加している。
出入国管理は大陸とは別個に実施されており、査証も異なる。ただし、先述の通り経済分野以外の在外駐在機関がないため、申請は各地にある中国大使館が窓口となっている。
軍事
第一及び第二次世界大戦の戦死者を追悼する和平記念碑。石造りで、ロンドンホワイトホール慰霊碑のほぼ原寸大の複製物である (エドウィン・ラッチェンス作、1920年発表)
返還前はイギリス軍が昂船洲(ストーンカッタース)や赤柱(スタンレー)などの基地に正規兵のほかにグルカ兵などの傭兵を含む海軍、陸軍部隊(駐香港イギリス軍)を駐留させていた。同司令官は香港総督の下に位置した。
返還後にはイギリス軍に代わり人民解放軍駐香港部隊が駐留している。人民解放軍駐香港部隊の司令部は、返還まではイギリス軍の司令部が置かれていたセントラルのプリンス・オブ・ウェールズ・ビル(現在は「中国人民解放軍駐香港部隊大廈」)にある。人民解放軍駐香港部隊司令官は、中央軍事委員会および中華人民共和国国防部の下にあり、香港行政長官には部隊への指揮権がない。
基本法の規定により、イギリスやイギリスの同盟国であるオーストラリアアメリカを含む外国艦艇の休暇上陸(レスト&レクリエーション)を含む寄港は返還後も中央政府の同意を経て可能とされている。ただし、中央政府の意向により寄港が許可されないケースもある。
経済
国際通貨基金の統計によると、2015年GDPは3092億米ドルである。2015年の一人当たりのGDPは4万2294米ドルであり、世界的にも上位に位置する。2016年の一人当たり国民総所得(GNI)は4万3240ドルでドイツに次ぐ世界第16位となっている。

アメリカのシンクタンク2017年に発表した総合的な世界都市ランキングにおいて、世界6位の都市と評価された。アジアの都市ではシンガポール東京に次ぐ3位である。また、日本の民間研究所2017年に発表した「世界の都市総合力ランキング」では、世界9位の都市と評価された。世界屈指のビジネス拠点であり、2012年5月、スイスシンクタンクによって、2年連続で「世界で最も競争力の高い国・地域」に選ばれた。

富裕人口も非常に多く、金融資産100万ドル以上を持つ富裕世帯は約21万世帯であり、フランスインドを凌いでいる。およそ11世帯に1世帯が金融資産100万ドル以上を保有しており、世界有数の密度を誇る。個人資産10億ドル以上を保有する大富豪2016年時点で68人であり、ニューヨークに次ぎ、世界で2番目に多い都市である。

25年連続で「世界で最も自由な経済体」に選出されているように、経済形態は規制が少なく低税率な自由経済を特徴とする。食料や日用品などの対外依存度が高い。もともとイギリスの対中国貿易の拠点であったことから中継貿易が発達していた。1949年に中華人民共和国が成立すると、大陸から多くの移民が香港に流入、それを安価な労働力として活用することで労働集約型の繊維産業やプラスチック加工などの製造業が発達した。

1970年代からは、香港政庁が新界における住宅団地開発や交通インフラ整備などに着手(詳細は積極的不介入を参照)、香港経済は急速な発展を遂げる。しかし1970年代後半になると労働コストの上昇や工業用地不足などの問題が顕在化してきた。そして中華人民共和国の改革開放政策により1980年代からは従来の製造業は広東省の深圳市東莞市をはじめとする珠江デルタへと移転、香港は中華人民共和国を後背地とする金融センター・物流基地へ転換した。

1997年の返還後は中国本土への経済的依存は強まり、2003年には中国本土・香港経済連携緊密化取決め (CEPA I) が中国本土と香港の間で調印され、その後も補充協議が実施・締結されている。広東省のイニシアティブによる汎珠江デルタ協力(9+2協力)にも参加している。香港は、世界最大級の都市圏(グレーターベイエリア)を目指す粤港澳大湾区構想の一部でもある

イギリス時代から完備された法体系や税制上の優遇措置、高い教育水準を有し英語が普及していることから、賃貸物件賃料が世界最高水準であるにもかかわらず、アジア市場の本社機能を香港に設置する欧米企業が多く存在する。

香港のGDPの80%をサービス産業が占める。観光産業がGDPの約5%を占めるほか、古くから映画産業が盛んである。香港経済界の代表的人物として長江集団を率いる李嘉誠が挙げられる。地価が高いこともあり、香港はシンガポールと同じく物価高の傾向があり、商品や為替変動によっては東京の消費者物価を上回ることがある。


周 庭
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周 庭英語: Agnes Chow Ting、アグネス・チョウ、1996年12月3日 - )は、香港の政治運動家、香港衆志常務委員、自決派、大学生。香港で「学民の女神」と呼ばれる。
2017年までイギリス国籍を保有した。両親が彼女の幼少期に申請したためであるが、イギリス本土に居住したことはなかった。同年香港特別行政区立法会地方選挙に立候補するため放棄した

  日本語でも SNS 発信をしている。これは小学6年生より日本のポップカルチャーとアニメーションを愛好し、独学した結果である。またクラシック音楽も愛好し、小・中学生期間は吹奏楽部に入部し、フルートを担当した
  2016年にはViuTV制作の娯楽番組「跟住矛盾去旅行」(ライバルと一緒に旅行する)に出演した。建制派議員の何君堯と共に日本へ渡航した 
  周庭は2017年6月及び2019年6月にも来日している。2017年6月15日には日本記者クラブ黄之鋒と共に会見を開いた
  2019年6月10日にも日本記者クラブで単独会見し、6月12日に明治大学で講演した。翌13日には永田町れいわ新選組代表の山本太郎と対談した。
先述の通り日本のポップカルチャーやアニメを愛好し、本人は「オタク」を自認している]。アニメを見て覚えた日本語での会話もこなす他、Twitterにて日本語での情報発信も行っている。特に、一番のお気に入り作品は「Fate/Zero」であり、「THE IDOLM@STER」シリーズでは星井美希推しである事も公言している。
  また日本の芸能人にも関心が高く、アイドルグループ:モーニング娘。の香港公演に行ったことや、タレントの有吉弘行やYoutuberのはじめしゃちょーが好きであることを明らかにしている。その他、小学校時していたことから水泳が得意であり、プロモーションビデオでは競泳水着で華麗に泳ぐ姿が見られる。
同じ香港出身のアグネス・チャンについては「親中派で雨傘運動にも批判的なため好意を抱いていない。英語名が似ていることが嫌なのでなんとかしたい」と発言した
経歴
2008年 - 嘉諾撒聖家学校を卒業
2012年 - 学民思潮のメンバーとして反国民教育運動に参加。
2014年 - 「雨傘運動」に学民思潮のスポークスパーソンとして参加した。同年、嘉諾撒聖家書院を卒業。
2016年 - 羅冠聡黄之鋒と共に、香港衆志(デモシスト)を創設して初代副事務局長となった。
初期の活動と背景
  2010年10月、香港教育局は道徳・国民教育の新たなカリキュラム(「徳育及び国民教育」)を2012年から翌2013年にかけて小中学校に導入する案を発表、そのための政治協議を2011年に行った。これに対し、民主派学生団体の学民思潮(2011年発足)は、同カリキュラムの教材が中国共産党と中国政府のナショナリズムを称賛する一方で、共和主義と民主主義を批判する内容となっており、これを「洗脳」であるとして反対(「国民教育反対運動」)。この運動は香港政府総部の庁舎前に数千人規模の人々を集めることに成功し、2012年9月8日にカリキュラムの導入を却下させた。
  当初中学生だった周庭は、社会全体の機運の高まりと、中学生も含む大規模な学生運動に関心を持ち、学民思潮のスタッフとして参加。運動が終わってから広報担当に就いた。
中環占拠
2014年8月31日、中国全人代常務委員会2017年の行政長官選挙で民主派の立候補を制限する方針を決定した。これに反対する戴耀廷は10月1日を目途に中環を占拠し抗議デモを行うと宣言し、同調した周ら学民思潮は9月1日に、全人代常務委員会副秘書長の李飛が宿泊する湾仔のホテルまでデモ行進した[14]。9月26日、周は周永康ら香港学生連盟と共に香港政府庁舎前で抗議デモを実施し、学生ストライキを起こした。これに対し警官隊が催涙弾を発射するなど衝突が激化したため、戴は計画を前倒しして9月28日に中環占拠デモを実施した
香港衆志
  2016年、周庭は羅冠聡黄之鋒と共に、香港の自決権を掲げる香港衆志(デモシスト)という政党を創設して初代副事務局長を務めた。主席の羅冠聰を擁立して、立法会選挙への立候補を目指した。
中国共産党習近平総書記の香港訪問を控えた2017年6月28日夜、周庭はゴールデン・バウヒニア広場にあるバウヒニア・ブラケアナ像を黒い布で覆うなどの抗議行動「ブラック・バウヒニア」に参加し、公衆妨害罪で逮捕され、警察署に31時間にわたって拘留された。
  2018年1月、立法会議員補欠選挙(参照 zh:2018年3月香港立法會補選#被選舉主任裁定提名無效)で香港島選挙区からの出馬の届け出を行うも、自決権に関する党綱領香港基本法に違反するとの理由で不受理となった
  2019年8月30日、逃亡犯条例改正に反対する抗議活動で、2019年6月にデモ隊が警察本部を包囲したことに関与した疑いで逮捕された


香港特別行政区基本法
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香港特別行政区基本法は、中華人民共和国香港特別行政区の基本法である。香港基本法。以下は「基本法」とも称する。

制定過程
  1982年に改正された中華人民共和国憲法では、将来の香港およびマカオの回収に備えて、特別行政区の設置に関する規定(第31条)を設けた。1984年12月、香港問題に関する中英共同声明の調印がなされた。これらを受けて、1985年4月に第6期全国人民代表大会第3次会議は、香港特別行政区基本法起草委員会の設立を決定した。同6月、第6期全人代常務委員会第11次会議が、香港基本法起草委員会の名簿を発表し、同7月に同委員会が発足した。

  香港基本法起草委員会は中国当局による任命であったが、民主派である司徒華と李柱銘(いずれも後の民主党議員)も含んでいた。むろん、香港側委員には財閥の首領や左派の論客が多く、香港住民の多数意見を代表していたとはいえない。しかし、特定の立場を排除したものではなかった。そのため、基本法の制定においても、香港の民主化をめぐり、保守派と民主派の間で議論が戦わされた。大陸側の委員には香港政策にかかわる官僚や法律学者が多かった。
  また、1985年12月、香港基本法諮詢委員会も設置された。こちらは香港の各界から意見を聴取することが目的であったため、香港側からのみ180人が任命された。さらに、1988年4月と1989年2月に公開諮詢も行われた。
  しかし、1989年の天安門事件後、起草委員会委員のうち、査良鏞と鄺広傑が抗議辞任した。また、同委員を続けながら天安門事件を非難した司徒華と李柱銘も、全人代常務委員会により解任された。残った委員にも天安門事件の動揺があったが、結果的に保守派の委員も(2007年以降の)民主化に同意した。1990年4月に、香港基本法は第7期全人代第三次会議において可決成立した。
香港基本法に対する解釈権とその行使事例
  香港基本法に対する解釈権は、全国人民代表大会常務委員会にある。全人代常務委員会の下には香港基本  法委員会があり、必要に応じてその意見が求められる。香港域内の裁判所は域内の問題について解釈できる。しかし、中央政府との関係にかかわる問題については最終審にいたるまでに、香港終審法院が全人代に解釈を要請しなければならない。ただし、その場合でも香港において過去の出た判決と矛盾することになっても、その過去の判決まで覆されることはない(基本法第158条)。
  ところが、返還後に全人代常務委員会による基本法への解釈を、終審裁判所ではなく、香港政府が2回にわたって要請した。居住権問題をめぐる過去の判決を覆すことが狙いであり、全人代常務委員会も香港政府の望むとおり、解釈において一度出た判決を覆したのである。こうした事例は、香港における法の支配を脅かすものだとの批判がある。
解釈権の行使事例
1999年の香港居住権問題
  基本法第24条第3項は、同第1項および第2項で規定された香港住民が香港域外で儲けた中国国籍の子女を香港住民として規定している。従って文字通り読めば、中国大陸(本土)で生まれた香港人の子女には、香港住民として香港での居住権(永住権)が与えられるはずであった。しかし、中国大陸には主に香港人男性の私生児が少なくない。1999年の香港政府による推計では約167万人いるといわれる(ただし、推計方法が不正確だと批判された)。彼らが香港へ大量に移住するのを防ぐため、中央政府および広東省は彼らに香港移住の許可(「単程通行証」=本土に帰る必要のない片道切符の意)を与えず、香港政府もその永住権を認めなかった。
  こうした中国大陸の香港人「子女」の中には、香港への一時渡航許可(「双程証」=大陸に戻らなければいけない往復切符の意)で香港に来てオーバーステイし、香港の裁判所で永住権の有無を争うケースが多い。1999年に香港の裁判所が、香港人と大陸住民の間に生まれた子女にも香港永住権を認める判決を下した。そのため、大量移住を恐れた香港政府は、全人代に解釈権の行使を要請した。その結果、全人代は当該判決が基本法の解釈に当たるため、香港の裁判所による判決は無効であり、また香港人と大陸住民の間に生まれた子女の香港永住権資格について縮小解釈を行った。
2004年の行政長官および立法会の選出方法の直接選挙化問題
香港の民主派は、2003年7月1日の基本法第23条立法化反対デモにおいて多数の参加者を集め、区議会選挙でも勝利を収めた。その勢いを借りて、不人気な董建華行政長官の退陣と次期行政長官および立法会全議席の直接選挙実施を要求した。これをくじくため、全人代常務委員会は自ら基本法の解釈を行い、基本法付属文書一と同二は、2007年以降に行政長官と立法会の選挙方法を変更できるが、それには所定の手続きが必要であると指摘した。その上で、さらに2007年行政長官選挙と2008年立法会選挙では直接選挙を行わないとの解釈を下した。
ただし、これは法解釈というよりも、全人代常務委員会の意思表示という意味合いが強い。つまり、基本法の改正において、全人代は報告を受けることになっているが、これは事実上の拒否権に相当するからである。基本法が香港域内での立法でない点や、全人代が立法(改正権)と司法(法解釈権)を持つ弊害があらわになった事件であった。(全人代常務委員会による解釈
2005年の任期途中で退任した行政長官の後継者の任期問題
2002年に再選された董建華行政長官は、任期を2年残して2005年3月に辞任した。そのため、後任の行政長官を決める選挙が行われることとなったが、後任の行政長官の任期について、前行政長官の残り任期(2年)なのか、それとも通常の任期である5年なのか、基本法には明確な規定がなかった。そこで香港政府は同年4月6日に全人代常務委員会に解釈を要請し、同27日に後任の行政長官の任期を前任者の残り任期である2年とする解釈が出された。
返還前における事実上の解釈事例
基本法第160条は、原則として返還前に制定された既存の法令を有効なものと認めているが、全人代常務委員会が基本法違反と認定した場合は無効とすることが定められている。返還前の1997年2月、全人代常務委員会は、中国当局の意向に沿わない香港の法令を基本法に抵触すると認定し、無効にすることを決定した。無効となったのは、人権条例や議会(立法会、市政局区域市政局区議会)の選挙に関する法令などである。
既存の法令の無効に伴い、香港立法会による改正や新たな立法が必要となる。ただし、返還前の立法局議員を追放し、保守派や左派による推薦委員会が選出した返還後の立法会を選出していた。そのため、香港での立法作業に滞りが発生しないことを見込んだ上での処置であったと言える。(全人代常務委員会 香港基本法第160条に基づく既存法令の処置に関する決定草案についての説明

政治問題化した香港基本法の規定
基本法23条と国家安全法(zh:香港基本法第二十三條(中国語版Wikipedia)を参照。)
基本法第24条と「來港生仔團」問題
  「來港生仔團」とは、香港に来て子供を生む人たちという意味である。基本法第24条1項は、香港で生まれた中国公民に香港居住権を認めている。そのため、香港で子供を産めば、子供は香港住民の資格を得て親の移住も可能となる。この問題が深刻化した原因は、2001年7月19日の「荘豊源案」判決である。荘豊源とは香港居住権を持たない両親が香港で生んだ男児である。その居住権をめぐり、政府と対立し、訴訟に持ち込んだ。結局、香港終審法院は荘豊源の居住権を認める判決を下し、当時は政府もこれを了承した。
  特に2006年になって、中国からの妊婦がもたらす問題が深刻化し、クローズアップされた。出産費用を浮かすため病院への入院を避け、駅のホームで産気づいてしまう例も多い。また、公立病院に運び込まれても費用が払えず、外出許可で出ると踏み倒して失踪する事例も増えている。そのため、香港の公立病院では回収不能な治療費が急増し、問題化している。中でも広九鉄道沿線の沙田にあるプリンスウェールズ病院が最も深刻だという。また香港に移住すれば、生活保護を得られる。
  この問題は、一般の香港住民にも影響を与えている。一部の大陸の妊婦は多額の費用を払って、私立病院で出産しているが、多くは費用が安い(あるいは費用を踏み倒しやすい)公立病院に来たり、あるいは(入院をためらっている内に産気づいて)搬入されている。そのため、一般の香港住民には、自分たちの出産や医療にもしわ寄せが来ているとの不満や不安がある。
  そのため、香港政府は中央政府と協議し、大陸からの妊婦の香港渡航を制限する方法を模索する方針である。また、民間からは基本法の改正や、費用精算前に出産証明を出さないなどの案も提案されている。ただし、香港政府は基本法改正の提起に消極的である。


2019年香港民主化デモ
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2019年香港民主化デモは、2019年3月から香港で継続して行われているデモ活動2019年逃亡犯条例改正案に反対するデモが発端となり、10月時点では「五大要求」の達成を要求する反政府デモとなっている。最大で約200万人が参加している。デモのスローガン「Be Water(水のようになれ)」から、流水革命夏水革命、もしくは時代革命とも呼ばれる。
背景(詳細は「2019年逃亡犯条例改正案」を参照)
2018年2月17日台湾で発生した潘曉穎殺人事件において、香港警察が逮捕した犯人を、逃亡犯条例を香港と「中華人民共和国のその他の部分」の間の犯罪人引き渡しに適用できなかったことにより、台湾に送還することができなかった。
この事態を受けて香港政府は2019年2月、逃亡犯条例の改正案提出を発表したが、この改正案により香港と中国本土の犯罪人受渡しが可能になり、香港市民が中国当局の取り締まり対象になる可能性が発生し、「一国二制度」が揺らぐのではないかという恐れから、改正案に対する反対運動が勃発した
沿革
2019年3月~5月-2019年3月31日、民間人権陣線が香港で反対デモを実施した。デモ集団はサウソーン・プレイグラウンドから香港政府新庁舎まで移動、主催者発表で12,000人、警察発表で5,200人が参加した。
4月28日、民間人権陣線が再びデモを実施した。デモ集団は銅鑼湾東角道から立法会総合ビルまで移動、主催者発表で13万人、警察発表で22,800人が参加、林鄭月娥の行政長官就任(2017年7月)から2019年4月までの参加人数が最も多いデモとなった。
5月10日の夜、民間人権陣線は立法会総合ビルの外で改正案反対集会を実施、立法会ビルの会議室に留まる民主派議員を応援した。集会には約1,000人が参加した。
5月13日の夜、民間人権陣線のデモ参加者は再び立法会総合ビルの外で集会、市民約30名が応援に駆け付けたが、一時は警備員と言い争いになった
2019年6月~(詳細は「2019年6月9日香港逃亡犯条例改正案反対デモ」、「2019年6月12日香港逃亡犯条例改正案反対デモ」、および「2019年6月16日香港逃亡犯条例改正案反対デモ」を参照)-5月、民間人権陣線は6月9日に3度目のデモを予定していることを発表、立法会議員の毛孟静香港本土所属、民主派の一員)は参加を呼びかけ、30万人以上の参加を目標とした。その後、3度目のデモは6月9日に予定通りに実施され、主催者発表で103万人、警察発表で24万人が参加し[24]、いずれも2003年7月以降では最多となった。6月9日のデモでは午後3時よりヴィクトリアパークから立法会総合ビルまで移動する予定だったが、予想以上の人数により午後2時20分に前倒しで開始、午後10時まで続いた。当日は主催者の呼び掛けで、大勢の参加者が「光明」を象徴する白服を着用していた。なお、103万は香港の人口の1割以上に相当するが、香港政府は同日午後11時に6月12日の第二読会の予定を変更せず、改正案にはいかなる変更も加えないと発表した。
海外でも6月8日にオーストラリアパースでデモが実施され、翌9日に6か国16都市(トロントバンクーバーカルガリーニューヨークロサンゼルスサンフランシスコワシントンD.C.ボストンシカゴシドニーメルボルンブリスベンキャンベラロンドンベルリン東京)でデモが実施された。
  6月12日朝8時頃、添馬公園で集会していた市民が立法会の第二読会を阻止すべく、夏慤道竜和道を占拠しようとし、警察はビーンバッグ弾で鎮圧を試み、20人以上が負傷する結果となり、そのうち多くが頭を撃たれていた。香港電台の運転手1人に催涙弾が命中して頭を負傷、一時は心臓が停止するほどの重傷だったが後に快方に向かった。警察は少なくとも11人を逮捕、さらに警察官を病院に派遣して、治療を受けているデモ参加者を逮捕しようとするに至った。この行動を受け、医界の数組織が合同声明を発し、警察官が医者や看護師を邪魔して治療を遅延させ、医界と患者の間の信用を破壊していると批判した。一連のデモ隊への過剰な実力行使を主導したルパート・ドーバー警視ら警察のイギリス人上級幹部は批判を浴びた。同日の夜、香港のテレビ局無綫電視が林鄭月娥のインタビューを放送、林鄭月娥はインタビューを通じて、「息子がわがままに騒ぎを起こしているのを母が見過ごすことはできない」としてデモを批判した。しかし今度は「香港のお母さんたちによる請願書」が発され、請願書は発表から16時間後には3万人が署名した。14日の夜にもチャーター・ガーデンで「香港媽媽反送中集氣大會」(香港のお母さんによる反送中激励大会)が実施され、主催者発表で6,000人以上が、警察発表で980人が参加した。
  
6月15日夜、デモに参加した男性梁凌杰パシフィックプレイスの屋上から落下し、搬送先の病院で死亡した
6月13日、民間人権陣線は6月16日のデモ実施を発表、主目的を逃亡犯条例改正案の完全撤回と逮捕されたデモ参加者の釈放とした。デモは予定通りに実施され、主催者発表で200万と1人(「1人」は15日に落下死した男性を指す)が、警察発表で33万8千人が参加した。参加者は主催者の呼び掛けで、12日の警察による鎮圧を非難する象徴として、黒服を着用しデモ行進をしていた。以降、黒服がデモ者の特徴となり、それからの集会・デモ・衝突にも黒服を着用している参加者も多数存在している。なお、ブラック・ブロックという戦術を実践する為でもあった。

7月1日、デモ隊が香港立法会を一時占拠し、2日に警官隊が強制排除を行った
7月21日、元朗駅で午後10時半ごろ、白い服に覆面姿の男達(三合会の構成員と見られている)がデモ参加者の特徴である黒い服の人々を襲撃して木の棒で殴りつけるなどして暴行。デモ参加者や巻き込まれた利用客を含めた45人が負傷した。

8月12日から13日にかけては、デモ隊が香港国際空港のロビーを占拠し、発着する全便が欠航となった。これを受けて裁判所はターミナル内へのデモ隊の立ち入りを禁止命令を出したものの、9月1日には再びデモ隊がターミナルの外に集まり、ターミナルに通じる道をバリケード封鎖して交通を妨害。また空港アクセス鉄道の線路上に障害物を投げ入れたり、近隣にある東涌駅にデモ隊が乱入し、駅の設備を破壊するなどで長時間にわたり運転を見合わせるなどの影響が出た。
また、8月31日には太子駅にて特殊戦術小隊の隊員らが地下鉄の車両までデモ参加者を追いかけて催涙スプレーを噴射した上、無抵抗の参加者らを警棒で次々と殴打。「警察は黒社会だ」と叫ぶ人を映した動画がテレビやネットで繰り返し流れた

10月1日の国慶節には、香港全土で抗議活動が行われ、デモ隊のターゲットとなっている政府関連施設、香港MTR、親中派と見なされている商店が多数破壊されたほか、デモ隊に向かって初めて実弾が発射され(それまでにも、警告ための空への発射はあった)、被弾した高校生が重体となった

特徴
デモ参加者は、香港政府香港警察による弾圧に対抗するため、または自身の身を守るために様々な方法を用いている特徴を持つ。例として、スマートフォン位置情報を無効化したり、中国本土からのサイバー攻撃五毛党網軍)による世論操作を受けにくい秘匿性の高い通信手段であるTelegramAirDropBridgefyで連絡や情報の共有、拡散を行い、電車で移動する際にオクトパスカード(日本でのSuicaPASMOに近いICカード)を利用せず、現金で切符を買って移動することで後に利用履歴を追跡されるのを防いだり]監視カメラを「天網であるとして破壊して市販のマスクヘルメットレーザーポインターなどを使うことでAI顔認識システムによる個人特定と警察による催涙ガスゴム弾の攻撃で受ける負傷を防いでいる
また、2014年の雨傘運動に影響を与えた『ウォール街を占拠せよ』などと共通してTwitter等の一般的なSNSもデモ参加者は活用し、他にもポケモンGOの様なゲームアプリ、デートアプリのTinde、暗号化メールサービスのProtonMa、また場合によっては「HKmap.live」の様なサービスをデモ参加者自身が開発する場合もある。
2014年の雨傘運動の失敗から、この運動には明確なリーダーや組織が存在しないことも特徴となっている。リーダーが逮捕されたり、意見対立で内紛が発生し、組織や運動が瓦解することが無いようにするためだと言われている。デモは、平和的な行進を行う多数の「和理非派」と、警察と衝突し破壊行為を行う少数の「勇武派」に分かれているが、思想や手法が異なる相手でも批判せず、互いに干渉しないことが暗黙のルールとなっている。こういったデモ戦術はスペインカタルーニャ独立運動など他の国のデモにも拡散されることとなった


2019年逃亡犯条例改正案
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2019年逃亡犯条例改正案中国語: 2019年逃犯及刑事事宜相互法律協助法例(修訂)條例草案)2019年香港で提出された法案。短縮形で逃犯條例修訂草案、非公式名称は「逃犯條例」(略称)、「送中條例[1]、「引渡條例」などがある。
香港の世論は反対寄りであり、2019年6月9日に行われた3度目の反対デモでは人口の約7分の1にあたる103万人が参加し(主催者発表、警察発表は24万人)2003年の「香港基本法23条国家安全保障条例」案に反対した50万人規模のデモを大きく上回った。政府側は改正案の審議続行を強硬に主張したが、21日夜に「政府は改正作業を完全に停止した。来年7月に廃案になる事実を受け入れる」という声明を発表したが、廃案とは発表しておらず2020年7月までに法改正を再開する可能性がある。
概要
本改正案は容疑者の身柄引き渡し手続きを簡略化し、中国大陸マカオ台湾にも刑事事件の容疑者を引き渡しできるようにするものである。改正案の背景には台湾でおきた潘曉穎殺人事件があり、逃亡犯条例の規定により容疑者を台湾に引き渡すことができなかったが、香港政府は逃亡犯条例の規定で中国大陸やマカオが除外されていることが「抜け穴」であると主張した。改正案が成立した場合、香港行政長官は事例毎に引き渡し要請を受け付けることになる。要請を受け付ける容疑には殺人罪のほかには贈収賄、入出国審査官に対する詐欺など7年以上の懲役刑が科される可能性のある犯罪が30種類以上含まれる。また、中国大陸などから要請を受けて資産凍結差押を行うこともできるようになる、改正案の提出直後より、世論は香港の裁判権の独立性に悪影響を及ぼすと危惧し、香港法廷弁護士協会香港事務弁護士協会キリスト教の教会などが中国大陸への引き渡しを盛り込む改正案への反対を表明した。中学校約350校(香港の中学校の7割にあたる)で教師、学生、卒業生が改正案撤回を求める請願書を提出した。
2019年4月3日、改正案は香港立法会第一読会を通過、4月17日には立法会で法案に関する委員会が設立され1回目の会議が行われた。5月6日、民主派は親政府の建制派陳維安ら立法会の秘書からの妨害を受けるものの、委員会の会議を続行して委員会主席の選挙を行い、民主党涂謹申が主席に、公民党郭榮鏗が副主席に当選した。5月20日、香港政府は立法会に委員会を経由せずに、6月12日に立法会総会での審議(第二読会)を続行するよう要求したが、6月9日に香港のみならず6か国16都市で反対デモが実施され、中でも香港のデモは103万人が参加し(主催者発表)、60軒以上の商店が罷業した。同日夜に香港政府が第二読会の予定日を6月12日のまま変更しないと発表すると、1,000人以上のデモ参加者が立法会の占領を試み、警察によって鎮圧された。
台湾では大陸委員会が殺人事件の露見以来その解決に奔走していると述べ、香港政府に対し司法協力を3度提出したにもかかわらず返事がなかったという。香港政府では保安局の局長李家超が4月に港台経済文化合作協進会台港経済文化合作策進会を通じて交渉を行ったと返答した。大陸委員会は李明哲事件の再来を恐れ、法改正により台湾人が中国大陸に引き渡される可能性が出てくる場合は法改正の理由である潘曉穎殺人事件の容疑者引き渡しを拒否し、危険情報のレベルを上げることも検討すると述べた。アメリカ、イギリス、カナダ政府やアメリカ商工会議所なども憂慮を表明、特に法改正により香港に滞在する自国民が人権問題を抱える中国に引き渡され、人権が侵害される可能性が浮上することを問題とした欧州連合外交申し入れを発して抗議した
一方、中央政府駐香港連絡弁公室国務院香港マカオ事務弁公室は改正案への支持を表明、中でも前者は5月17日に香港特別行政区全国人民代表大会代表全国政治協商会議香港地区委員を呼び出し、改正案を支持する世論を作ることを要求した
逃亡犯条例の制定
本土研究社香港前途研究計画)の研究が引用したイギリス外務・英連邦省のアーカイブによると、イギリス領香港期の1992年に逃亡犯条例が制定されたとき、「司法制度、刑罰の制度、人権が十分守られる政府とのみ犯罪人引渡しのできる関係を結ぶ」と強調しており、香港返還の後でも変わらないとした。条例制定の本来の意図では犯罪人引渡し条約を締結しなかったことを「抜け穴」としておらず、本土研究社はイギリスが中国を信用していない上、引き渡しの悪用を憂いたことをその理由とした。また、中国は1988年7月に犯罪人引渡し関連の法律と制度の整備が不十分であると認め、相互法的援助条約の交渉において刑法関連の案件を棚上げにして、民事訴訟と商業、貿易関連でのみ相互法的援助を行うことを提案した。2000年に中華人民共和国引き渡し法が発効する直前(発効日は2000年12月28日)、香港が中国と犯罪人引渡し条約を交渉していたことについてイギリス外相ロビン・クックが議会に報告書を提出、交渉の結果が香港基本法および香港の裁判手続に適合することを望むとした。イギリス庶民院は外務・英連邦省に対し、香港と中国が締結するいかなる協定でも人権蹂躙を防ぐ条項が盛り込まれるよう促すことを提案した
1997年以降の香港の警察と中国の公安警察は相互に通知した上で国外追放という形で犯罪人引渡しを行っており、2015年までに公安警察は約170人を逮捕して香港の警察に引き渡し、一方で香港の警察も2008年に六四天安門事件の中心人物の1人で米国永住ビザを有する周勇軍深圳に追放したといった例はあるが、公安警察と比べて引渡しの人数は少ない
反対運動
2019年3月31日、民間人権陣線が香港で反対デモを実施した。デモ集団はサウソーン・プレイグラウンドから香港政府新庁舎まで移動、主催者発表で12,000人、警察発表で5,200人が参加した
4月28日、民間人権陣線が再びデモを実施した。デモ集団は銅鑼湾東角道から立法会総合ビルまで移動、主催者発表で13万人、警察発表で22,800人が参加、林鄭月娥の行政長官就任(2017年7月)から2019年4月までの参加人数が最も多いデモとなった
5月10日の夜、民間人権陣線は立法会総合ビルの外で改正案反対集会を実施、立法会ビルの会議室に留まる民主派議員を応援した。集会には約1,000人が参加した。5月13日の夜、民間人権陣線のデモ参加者は再び立法会総合ビルの外で集会、市民約30名が応援に駆け付けたが、一時は警備員と言い争いになった
民間人権陣線は同5月には6月9日に3度目のデモを予定していることを発表、立法会議員の毛孟静香港本土所属、民主派の一員)は参加を呼びかけ、30万人以上の参加を目標とした。その後、3度目のデモは6月9日に予定通りに実施され、主催者発表で103万人、警察発表で24万人が参加し、いずれも2003年7月以降では最多となった。6月9日のデモでは午後3時よりヴィクトリアパークから立法会総合ビルまで移動する予定だったが、予想以上の人数により午後2時20分に前倒しで開始、午後10時まで続いた。103万は香港の人口の1割以上に相当するが、香港政府は同日午後11時に6月12日の第二読会の予定を変更せず、改正案にはいかなる変更も加えないと発表した
海外でも6月8日にオーストラリアパースでデモが実施され、翌9日に6か国16都市(トロントバンクーバーカルガリーニューヨークロサンゼルスサンフランシスコワシントンD.C.ボストンシカゴシドニーメルボルンブリスベンキャンベラロンドンベルリン東京)でデモが実施された
デモ参加者はハイテクを駆使する当局による監視を恐れて位置情報を無効化したスマートフォンで秘匿性の高いSNSTelegram)で連絡し、地下鉄ICカードを使用せず、顔認証システムも避けるためにマスクゴーグルなどを装備した。6月15日夜、デモに参加する男性がパシフィックプレイスビルの屋上から落下し、搬送先の病院で死亡した
中華国民
中華民国立法院は2019年3月に改正案で中華民国への対応のみ追加するよう求める提案を採択した。また、行政院大陸委員会は「台湾が中華人民共和国に帰属する」という前提をもとに容疑者引き渡しを行うことはないと発言した。行政院大陸委員会は5月9日にも改正案により一国二制度と法律制度が損なわれることを憂慮し、李明哲事件(中華民国国民がマカオから中国大陸に引き渡され、訴追された事件)の再来を恐れた。また、改正案により台湾人の安全が脅かされる場合、改正案が成立しても容疑者引き渡しは拒否すると述べた
5月17日、大陸委員会の香港・マカオ事務所所長杜嘉芬は改正案が成立した場合、国民にその危険性を説明するとともに危険情報のレベルを上げることも検討すると述べた
中華人民共和国
中央政府駐香港連絡弁公室国務院香港マカオ事務弁公室は改正案への支持を表明、中でも前者は5月17日に香港特別行政区全国人民代表大会代表全国政治協商会議香港地区委員を呼び出し、改正案を支持する世論を作ることを要求した
中華人民共和国外交部のスポークスマン耿爽は5月8日に香港の事務が「中国の内政」であるとし、米中経済安全保障調査委員会など外国からの報告書は論駁に値しないとした。また、6月10日には逃亡犯条例の改正を引き続き支持すると述べた
欧州連合 2019年5月24日、欧州連合が在香港・マカオ事務所の代表11名を通じて林鄭月娥行政長官に抗議、外交申し入れを発した。外交申し入れが発されるのは珍しいとされるが、林鄭月娥は欧州連合が立場を明らかにしただけで、実質的な問題点を提起しているわけではないと返答した。
アメリカ
アメリカ合衆国国務省は声明を発し、香港の一国二制度がこれ以上侵害され続けた場合、国際事務における独自の地位に悪影響を与えると述べた。国務省が発表した2018年中国人権報告書では中国の司法制度による人権侵害の例が数多く挙げられ、中国における法の支配が後退していることを示したと結論付けた。また、国務省は香港法廷弁護士協会、香港の米国商工会議所(American Chamber of Commerce in Hong Kong)など多くの組織が反対を表明していることと、香港基本法で保障されている言論の自由集会の自由を尊重すべきと述べ、裁判所と裁判官が伝統どおりに独立した公正な判決を下すことを望むと述べた
米中経済安全保障調査委員会は5月7日に研究報告書を発表、逃亡犯条例が改正された場合、北京政府の香港における影響力が増し、港人治港の骨抜き化が加速するとした。また、条例改正によりアメリカは大きなリスクに晒されることになり、米国-香港政策法に違反する可能性が生じるとし、例としてアメリカ海軍の艦船が香港に停泊した場合に船上の軍人が逮捕、引き渡される可能性が挙げられた
5月22日、中国問題に関する連邦議会・行政府委員会の議員8名が連名で林鄭月娥行政長官に公開書簡を発し(書簡の内容は5月24日発表)、逃亡犯条例改正案の撤回を求め、外国人が中国大陸に引き渡される危険に冒されると、アメリカなどの多国籍会社は本社を香港からアジア太平洋諸国に移転する可能性があると述べた
イギリスとカナダ
カナダ・グローバル連携省のスポークスマンであるギヨーム・ベルベ(Guillaume Bérubé)は4月18日にカナダの『グローブ・アンド・メール』紙に対し、「カナダは香港政府に対し逃亡犯条例改正案に関する重大な問題を提起した」と述べ、カナダ国民の安全が最重要事項であると述べた。香港の保安局は改正案がカナダとの犯罪人引渡し条約に影響しないと返答した
5月30日にはイギリス外相ジェレミー・ハントとカナダ外相クリスティア・フリーランドが連名で声明を発し、香港の住民の権利と自由を侵害することと香港在住の自国民への影響を憂慮した
六四天安門事件からちょうど30年にあたる6月4日、人権団体香港ウォッチの創設者の1人で香港返還直前にイギリス外相を務めた(任期:1995年7月 – 1997年5月)マルコム・リフキンドは『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』に論説を寄稿、逃亡犯条例改正案が1984年の中英連合声明に違反すると述べた。また、連合声明の交渉において、中国もイギリスも香港と中国の法律制度を分け隔てており、逃亡犯条例は抜け穴どころか、むしろ防壁であるとした
6月11日、『ガーディアン』紙は社説で逃亡犯条例改正案と香港政府の対応を批判した
ドイツ
ドイツ外務省副大臣ニルス・アンネンは逃亡犯条例の改正がドイツと香港に極めて大きな影響を与え、特に香港における一国二制度への悪影響と、ドイツを含む外国人実業家が香港で事業を行う環境が急激に悪化することを憂慮した。また、逃亡犯条例の改正がドイツ・香港間の犯罪人引渡し条約にも波及し、条約の取り消しすら視野に入るとした。ドイツのシンクタンクであるメルカトル中国研究センターも逃亡犯条例の改正が他国と締結済みの相互法的援助条約に悪影響を与えるだけに終わると述べた
その他
人権擁護団体香港ウォッチは6か国15人の国会議員(アメリカ、イギリス、オーストリア、カナダ、ドイツ、マレーシア)が連名で逃亡犯条例改正案に反対すると発表し、香港政府に改正案の撤回を求めるとともに、法学者と香港立法会議員が提出した代替案を採用することで台湾の殺人事件に対処できると述べた。また、改正前の逃亡犯条例が法の支配を保障するとも述べた






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