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核の先制不使用に関する議論の経緯と課題
日本の防衛問題-1      自衛隊や自衛の措置-JFBA  中国の南シナ海進出と国際社会の対応



2022.12.27-佐賀新聞(KYODO)-https://www.saga-s.co.jp/articles/-/968269
特定秘密漏えい あまりにも、お粗末だ
(共同通信・堤秀司)

  海上自衛隊の男性1等海佐が国の安全保障に重大な影響を及ぼす「特定秘密」を外部に漏えいしたとして、防衛省は1佐らの処分を発表した。1佐は懲戒免職。また指揮監督義務違反があったとし、当時の海自トップだった前海上幕僚長を懲戒処分の戒告相当、漏えい相手で自衛艦隊司令官を務めた元海将を減給相当とする判断を示した。

  自衛隊の捜査機関である警務隊は特定秘密保護法違反容疑で1佐を書類送検した。特定秘密の漏えい摘発は初めて保護法は2014年12月施行で、防衛や外交、スパイ防止、テロ防止の4分野を対象に、特に秘匿しておく必要のある情報を特定秘密に指定している。漏えいの罰則は最高で懲役10年となっている。
  1佐は別の隊員の仲介で、かつて上司だった元海将に頼まれ、安保情勢を説明。その中に特定秘密が含まれていたとされる。情報が外国に持ち出された形跡は確認されていないというが、日本を巡る安保環境が厳しさを増し、政府が防衛力の抜本強化に動く中、秘密保全という組織運営の根幹が揺らぐ事態になった。

  あまりにも、お粗末と言うほかない。今回のように上司・部下、あるいは先輩・後輩の関係を利用した働きかけなどで、防衛省・自衛隊からの情報漏えいは何度となく繰り返されてきた。国の安全を託すに足る組織かどうかが問われていることを肝に銘じるべきだ。
  内閣官房がまとめた資料では、特定秘密は今年6月末現在、各省庁で計693件が指定されている。防衛省は392件と、その半数以上を占め、電波や画像の情報、自衛隊の部隊運用の計画などが対象となっている。
  今回、漏えいされた特定秘密の内容は具体的に分からないが、日本周辺の情勢に関し防衛省などが収集した情報で、自衛隊の運用や訓練の情報なども含まれていたとされる。1佐は当時、部隊運用のための情報収集に当たる「情報業務群」司令。元海将の部下だったことから「強い畏怖の念」があったとしている。
  自衛隊による情報管理の甘さはたびたび問題になってきた。07年には、海自3佐がイージス艦の防空システムを扱う幹部向けの教育用資料を持ち出して別の3佐に送り、秘匿度の高い「特別防衛秘密」を漏えいしたとして、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反の疑いで逮捕された。
  外部への流出は確認されなかったものの、米国が開発したイージスシステムに関わる事件だったため、日米安保体制への悪影響も懸念された。
  15年にも、陸上自衛隊の元陸将がかつて部下だった現役の陸将に依頼して、自衛隊の教本を入手。在日ロシア大使館で勤務していた情報機関員に渡した事件が起きた。
  自衛隊幹部は退官後に防衛関連産業に天下りすることが多いが、経験を生かし、メディアに安保政策を解説することもある。自衛隊にとっては日々の活動に国民の理解を得る助けになるが、現役とOBとの間で共有できる情報の線引きをきちんとする必要があろう。
  情報管理の徹底が求められている。ただし、特定秘密はそもそも定義があいまいで、政府によって指定が恣意(しい)的になされたり、秘密の範囲が無制限に広がったりして、国民の「知る権利」の侵害につながりかねないという批判が根強くあることを忘れてはならない。
(共同通信・堤秀司)


2022.12.17-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221217-WQSBX4S5UFKBZPT5A337XNDEDQ/
〈独自〉日米作戦計画見直しへ 反撃能力保有踏まえ検討

  日米両政府が有事の際の連携手順を定める日米共同対処計画を改定する方向で検討に入ったことが17日、分かった。政府が16日に閣議決定した「安保3文書」で、敵の領域内の軍事目標を攻撃する「反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を盛り込んだことを受け、日米間の調整が必要と判断した。複数の政府関係者が明らかにした。

  共同対処計画は、自衛隊と米軍の基本的な役割分担を定める「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」を踏まえて策定されている。内容は非公表で、南西諸島有事や朝鮮半島有事などを想定し、軍事作戦を行う際の戦闘や後方支援などに関する連携の手順を盛り込む。反撃能力に限定した新たな計画を作成するのではなく、全体の共同対処計画の中で反撃能力を位置づける。
  共同対処計画の改定が必要と判断したのは、反撃能力の運用が日米共同作戦を前提としているからだ。標的の探知・追尾、攻撃効果の判定などは自衛隊単独では難しく、偵察衛星や無人機などを運用する米軍の協力が不可欠となる。
  日米双方が打撃力を行使する際、友軍の誤爆や攻撃目標の重複を回避するため日米間の連携がより重要となる。自衛隊と米軍が活動する空海域の調整も課題だ。米側からは北大西洋条約機構(NATO)や米韓同盟と同様に、連合司令部の創設や指揮統制システムの統合を求める声もある。
  だが、常設の連合司令部を設置すれば、日本側が武力行使の条件となる「存立危機事態」などを認定していない段階で米軍の攻撃と一体化する恐れもある。平時の「他国の武力行使との一体化」は現行憲法解釈では認められておらず3文書では同盟調整メカニズム(ACM)を強化する方針を盛り込んだ。
  こうした方針は、日米両政府が来年1月に開催する方向で調整している外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で確認する見通し。政府内にはガイドライン見直しを求める声もあるが、「基本的な日米の役割分担は変わらない」として否定的な意見もある。


2022.12.16-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221216-A4OY5LX5TNIU7ITTVGHPWFBYY4/
安保3文書を閣議決定 反撃能力保有明記、防衛費約43兆円

  政府は16日、国家安全保障戦略など新たな「安保3文書」を閣議決定した。敵ミサイル拠点などへの打撃力を持つことで攻撃を躊躇させる反撃能力敵基地攻撃能力)」の保有を明記。複数の長射程ミサイルを令和8年度から順次配備する。来年度から5年間の防衛力整備経費を約43兆円と定め、インフラ整備など防衛力を補完する予算を含め、9年度に対国内総生産(GDP)比2%に達することを目指すとした。軍備増強を進める中国の動向を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と記した。

  文書は、日本が「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している」との認識を示した上で、中国や北朝鮮を念頭に「力による一方的な現状変更の圧力が高まっている」と指摘。反撃能力保有をはじめとする防衛力強化の重要性を訴え、一連の施策が「安全保障政策を実践面から大きく転換する」と強調した。約43兆円の防衛費は、平成30年に閣議決定した5年計画の約1・6倍に当たる。
  防衛力強化にあたっては「相手の能力と戦い方に着目した防衛力」を目指すと説明。宇宙・サイバー・電磁波などの新たな領域と陸海空を有機的に融合する「多次元統合防衛力」を構築する方針を維持し、さらに強化するとした。今後5年は現有装備の稼働率向上などに集中し、10年後までに「より早期かつ遠方で侵攻を阻止・排除」できる防衛力を目指す
  一方で専守防衛を堅持する姿勢は明示した。「必要最小限度の実力行使」などの武力行使の3要件を満たした場合に限って反撃能力を行使できると規定した。
  サイバー戦やハイブリッド戦への対応の必要性にも言及し、サイバー攻撃を未然に防ぐ能動的サイバー防御」を導入する方針を盛り込んだ。宇宙領域に関しては航空自衛隊に専門部隊を設け、空自の名称を「航空宇宙自衛隊」に変更する。防衛装備品の輸出拡大を図るため、輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針見直しを検討することも記した。


2022.12.10-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221210-LKGHQNGBVRJUBOHB7NHTICKDUI/
<独自>反撃能力で「極超音速弾部隊」新設へ 安保3文書

  政府が月内に閣議決定する「安保3文書」で掲げる反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有に向け、変則軌道で迎撃が難しい極超音速誘導弾や能力向上型の高速滑空弾を運用する部隊として、陸上自衛隊に「長射程誘導弾部隊」を2個態勢で新設する方向で検討に入ったことが10日、分かった。来年度以降5年間の「防衛力整備計画」に盛り込む。

  極超音速誘導弾は、マッハ5(音速の5倍)以上で飛翔することにより高いエネルギーが生まれるマッハ1程度の巡航ミサイルでは敵国の滑走路を長期間、使用不可能にしたり、地下施設に損害を与えたりすることは難しいが極超音速誘導弾であれば、より高い破壊効果が期待できる。
  政府は防衛力整備計画の経費約43兆円のうち、長射程ミサイルの能力構築に約5兆円を振り向ける。このうち、極超音速誘導弾の開発に約2000億円を投資し、量産に向けて約4000億円を盛り込む。高速滑空弾能力向上型の開発には約3000億円、量産に約1000億円を確保する。部隊を新設したうえで、約10年後までに、これらのミサイルを運用する能力の獲得を目指す。
  より早期の配備を見込む巡航ミサイルに関しては、射程を約1000キロに延伸する12式地対艦誘導弾能力向上型の地上発射型に約7000億円艦艇発射型に約2000億円、航空機発射型に900億円を割く。米国の「トマホーク」を念頭に外国製ミサイルも導入する
  また、攻撃する標的を見つけ出す戦術無人機や目標観測弾の整備も目指す。多数の小型衛星を運用する情報収集コンステレーション」には約3000億円を計上。コンステレーションで得られた画像情報、無人機による情報収集・分析機能や指揮統制機能を強化する。長射程ミサイルを保管するために必要な火薬庫の整備には約2000億円を盛り込む考えだ。


2022.12.09-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221209/k10013917981000.html
【詳しく】次期戦闘機 日本・イギリス・イタリア 共同開発へ

  航空自衛隊の次期戦闘機について、日本、イギリス、イタリアの3か国は共通の機体を共同で開発すると発表しました。防衛省は2035年ごろまでに配備を始めたいとしています。
  防衛省は、航空自衛隊のF2戦闘機が2035年ごろから順次、退役することから、後継の次期戦闘機を開発するため、イギリス、イタリアと協力に向けた協議を続けてきました。

  その結果、日本、イギリス、イタリアは9日午後、共同首脳声明を発表し、次期戦闘機について3か国で共通の機体を共同で開発することを明らかにしました。
  防衛省は共同開発によって3か国の技術を結集できるとともに、費用を分担することで開発コストを抑えられるとしています。
  機体の共同開発には日本の三菱重工業やイギリスのBAEシステムズ、イタリアのレオナルド社などが参加する見通しで、エンジンも日本のIHIなどが参加して共通のものを開発する計画です。防衛省は2035年ごろまでに配備を始めたいとしています。
  また将来的に次期戦闘機の部品を第三国に供与できるよう防衛装備移転三原則」の運用指針を見直す方向で検討を進めています。
共同開発のメリットは
  防衛省は今回、次期戦闘機を共同開発とした理由について、コストを分散できるほか、ステルス性能など各国の技術を反映させることなどによって、すぐれた戦闘機をより安く、より効率的に作れることなどをあげています。
  また、機体を購入した場合は、開発国との関係や技術的な制約などから、日本が独自に機体の改修を行うのは難しいとしている一方、共同開発した場合は安全保障環境の変化に応じて能力の向上が柔軟に図れるとしています。
浜田防衛相「技術結集し優れた戦闘機を」
  浜田防衛大臣は閣議のあとの記者会見で「今後、3か国の技術を結集した優れた戦闘機を共同開発していく。この協力がわが国の経済全般の革新を促すとともにインド太平洋地域とヨーロッパ地域の平和と安定の礎となることを期待している」と述べました。
  また、将来的な第三国への完成品の輸出について「イギリスが輸出を重視していることを踏まえ検討していきたい。また日本から第三国への直接輸出を含め、防衛装備移転の推進のあり方は、新たな国家安全保障戦略などの策定に向けた議論の中で検討していく」と述べました。
海外への移転は
  「防衛装備移転三原則の運用指針では、日本との間で安全保障面での協力関係がある国に対して「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」に関する装備品については、厳格な審査のもと輸出を認めるとしています。
  一方、戦闘機については、製造元や共同開発した国以外の第三国への輸出はできません。

  防衛省幹部の1人は、次期戦闘機の第三国への供与によって製造に参加する企業にとっては受注が増えることでコストの削減が見込め、防衛産業の強化にもつながるとしています。
  一方で、安全保障の専門家の中には、攻撃に使われる可能性がある戦闘機を第三国に輸出することはこれまでの防衛政策を大きく変えるもので、憲法の平和主義の精神に反するおそれがあると指摘する人もいます。
航空自衛隊 元空将「画期的な取り組み」
  航空自衛隊でF15戦闘機のパイロットを務めた元空将の荒木淳一さんは「イギリスもイタリアも、技術はアメリカに匹敵するものではないものの、日本に比べるとはるかに高い技術と経験を持っている。初めてアメリカ以外と組んで本格的な共同開発を行い、それぞれの国が運用していくことは画期的な取り組みだ」と話しています。
  今後の課題については「初めての相手と初めてのことをやるので、当然リスクはある。製造のシェアをどう分担するかなど、国益がかかる交渉は非常に政治的で厳しい部分はあるし、導入後も日本はアメリカの機体が多いので整備基盤が異なるなど、ある意味DNAが違うものを一緒に持つことになる。整備基盤が異なることで余分な費用もかかるなど、いろいろと課題が出てくると思うが、努力して克服していかないといけない」と話していました。
日本企業も開発に意欲
  次期戦闘機の共同開発に参画する日本企業も開発に意欲を示しています。
  三菱重工業は「日本、イギリス、イタリアの各国政府および企業と緊密に連携しながら、次期戦闘機の開発に鋭意取り組み、日本の安全保障に貢献していく」としています。
  また、エンジンを担当するIHIは「戦闘機用エンジンは、性能などを左右する最重要要素の1つであり、これをつくることができる生産・技術基盤は、国の安全保障上の重要なツールになり得る。他産業への大きな波及効果も期待できる」としています。

さらにレーダーなどを担当する三菱電機は「当社が培った革新的な技術を駆使し、我が国の安全保障や防衛産業基盤の強化に貢献していく」とコメントしています。
英スナク首相「防衛技術発展の先頭に」
  イギリスのスナク首相は9日、イギリス中部の空軍基地を視察するとともに声明を発表しました。
  このなかで「わが国の安全保障は現在、そして将来にわたって最も重要な課題であり続ける。そのために、われわれは危害を加えようとする相手を上回る速さと巧みさで防衛技術の発展の先頭に立ち続けなければならない。日本とイタリアとの国際連携は、まさにそれを目指していて、ヨーロッパ大西洋地域とインド太平洋地域の安全保障が不可分であることをはっきり示すものだ」と強調しました。
英ロングボトム駐日大使「脅威に共に立ち向かう」
  イギリスのロングボトム駐日大使は9日、都内にある大使館でNHKのインタビューに応じ、「いかなる脅威からも先んじて守ることができる能力を発展させ、信頼できる抑止力を持つことで平和と安全を維持する力をつけることができる」と述べ、意義を強調しました。
  その上で「真のパートナーシップとして戦闘機を共同開発することで、この技術を発展させ、強みを共有し、世界で直面する脅威に対して共に立ち向かうことができる」と述べ、期待感を示しました。
イギリスの専門家 「パートナーは自然」
  RUSI=イギリス王立防衛安全保障研究所のジョナサン・エヤル副所長は「当初は軍事技術を輸出できないという日本側の制約のために、イギリスの軍事企業にとっては日本と協力するのが非常に難しい状況だったが、その多くが解消された」と述べ、日本政府が「防衛装備移転三原則の運用指針の見直し案を示すなど、防衛装備品の輸出をさらに進めようとしていることが今回の合意を可能にしたという見方を示しました。
  その上で「日本もイギリスもアメリカの緊密な同盟国で、アメリカから購入するほうが簡単で早いが、兵器を自前で開発することを重視し、技術的優位性を維持したいと考えている。領空に侵入しようとする航空機やドローンを迎撃する能力を重視している点も共通していて市場規模の面からもパートナーとなるのは自然だ」と述べました。
  その一方で「戦闘機はあらゆる兵器の中で開発に最も時間と費用がかかり、困難なものとなるだろう」と課題も指摘しました。
次期戦闘機は8機種目
  次期戦闘機をめぐり取得に向けた具体的な方針が明らかになったのは、F35の導入が決まった2011年以来、11年ぶりで、航空自衛隊に配備される戦闘機としては8機種目となります。
  先月末の時点で配備されているのは3機種の合わせて324機で、内訳はF15が200機、F2が91機、F35が33機です。
  防衛省は次期戦闘機の調達数については、F2の機数が検討対象になるとしながらも、量産段階で決めるとしています。
次期戦闘機の性能は
  次期戦闘機は相手の航空機に対応する防空の任務に加え、艦艇や地上への攻撃など幅広い任務を実施できる「マルチロール機」として開発され、防衛省は最新のF35やヨーロッパ各国で導入されている「ユーロファイター」などを超える性能を持たせたいとしています。
  具体的には、レーダーに捕捉されにくい高いステルス性能高出力のレーダーなどのほか、ネットワークで接続された戦闘機どうしが連携して、相手の戦闘機の把握や攻撃を行う「クラウド・シューティング」と呼ばれる機能などが備えられる見込みがあるとしています。
  防衛省が9日に公表した次期戦闘機のイメージ図でも、レーダーの反射面積を減らしてステルス性能を高められるよう、翼や胴体、エンジンの吸気口などはおうとつが少ない形状となっています。
  また、機体を配備したあとも能力の向上が図れるよう、エンジン制御などのソフトフェアを構成する「ソースコード」については、3か国が共同で開発するということです。
開発のスケジュールは
  今後のスケジュールは、来年に初期的な設計を進め、再来年をめどに基本設計に移り、開発にあたっての3か国の分担や、拠点の場所などについて固めたいとしています。
  その後、試験機による試験などを実施して2030年前後に製造を開始し、F2の退役が始まる見込みの2035年までに配備を開始したいとしています。
  開発にあたっては日本は三菱重工業とIHI、三菱電機イギリスはBAEシステムズとロールス・ロイス社など、イタリアはレオナルド社とアビオエアロ社などの企業が参加するということです。
イギリスの次期戦闘機「テンペスト」
  イギリス政府は空軍の主力戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」に代わる次期戦闘機として、英語で「嵐」を意味する「テンペスト」の開発を2018年から始めています。
  日本の次期戦闘機と同じ2035年ごろまでの運用開始を目指し、2025年までの開発予算として20億ポンド、日本円で3300億円余りを計上するとしています。
  開発はイギリスの航空・防衛大手の「BAEシステムズ」が中心となり、イタリアの企業のほか、日本からはIHIがエンジン、三菱電機がレーダーの開発に加わっています。
次期戦闘機をめぐる費用は
  航空自衛隊の戦闘機をめぐっては巨額の予算が動くことから、新たな機種の導入が検討されるたびに、ビジネスの面からも大きな注目を集めてきました。
  例えばF35では、すでに配備が始まっているF35Aと短い滑走で飛行し垂直に着陸できるF35Bの合わせて147機が調達される計画です。
  機体の価格は為替レートなどによって変動しますが、F35Aの場合、昨年度の1機あたりの契約額は97億円となっていて、仮にこの価格で147機を調達した場合、機体の購入費用だけでも1兆4000億円ほどかかる計算になります。
  また、戦闘機は運用を開始した後も、整備や部品の交換などが必要になることから、開発や納入に関わる企業は、耐用年数を迎えるまでの間、さらに巨額の受注を見込めます。
  例えばF35は、愛知県にある三菱重工業の工場で航空自衛隊向けの機体の最終的な組み立てが行われているほか、機体の整備拠点としても、運用されています。
  防衛省によりますと、次期戦闘機をめぐる開発や研究の費用は今年度予算までで2012億円となっているほか、来年度予算案の概算要求でも1432億円が盛り込まれています。
  防衛省は次期戦闘機の開発や調達、整備も含めた一連の経費の総額について、現時点で言えるものはないとしています。
過去には日本単独の開発も
  航空自衛隊にこれまでに配備された戦闘機の中には、日本が独自に開発した機体もあります。F1戦闘機で、三菱重工業が開発していたT2練習機をベースに試作や実証試験を行ったあと、1977年から配備が開始されました。
  部品などのサプライチェーンが国内で整っていたことなどから、整備がしやすかったのが特徴で2006年に退役するまで29年にわたって運用されました。
アメリカが関わらないのは異例
  日本がこれまで導入してきた7種類の戦闘機は、国産のF1をのぞいてはいずれもアメリカが開発に関わっていて、アメリカが開発に関わらない形で戦闘機を導入するのは異例です。
  防衛省は、次期戦闘機をアメリカ以外の国と共同開発する理由について、アメリカには日本と同じ時期に戦闘機を共同開発する計画がなかったためなどとしています。一方で、次期戦闘機について、アメリカと共同で作戦を行うための「相互運用能力」は確保するとしています。また、防衛省とアメリカ国防総省は今回、次期戦闘機にかかわる協力に関する共同発表を行いました。
  この中で「アメリカは日米両国にとって緊密なパートナー国であるイギリスおよびイタリアと日本の次期戦闘機の開発に関する協力を含め、同盟国やパートナー国との間の安全保障・防衛協力を支持する」としています。
  その上で次期戦闘機などの装備を補完するため、無人機などの自律型システムに関する具体的な協力を来年中に始めることで一致したとしています。
アメリカとは次期戦闘機を支援する無人機開発へ
  次期戦闘機の開発をめぐって防衛省は当初、アメリカ企業との協力を模索し、おととし、ロッキード・マーチン社を技術的な支援を受ける候補企業に選定していました。
  しかし今回、イギリスやイタリアと共同開発することになったことから、ロッキード・マーチン社とは契約を結ばないことを明らかにしました。
  一方、次期戦闘機に関する3か国の共同首脳声明にあわせて防衛省とアメリカ国防総省は共同発表を行い、アメリカは「日本が志を同じくする同盟国やパートナー国と協力することを支持する」としています。
  そして次期戦闘機を支援する無人機の開発に向けて、日米両国で来年から共同研究を念頭に具体的な協力を始めることで一致したことを明らかにしています。
  そのうえで「こうした取り組みは日米同盟を大いに強化し、パートナー国との協力を拡大し、ひいてはインド太平洋と世界における将来の脅威への共同対処を可能とする」としています。
航空自衛隊 元空将「“時代が変わった”と感じる」
  航空自衛隊でF15戦闘機のパイロットを務めた元空将の荒木淳一さんは「当初、日本はアメリカとの共同開発を視野に入れていたが、アメリカが技術開示をしないことなどから、同じ時期に開発を目指すイギリスなどと組んだのだと思う。アメリカは航空機産業が基幹産業で、日本に相当強い働きかけをする国だが、そのアメリカが日本の取り組みを支持する声明を出したのは『時代が変わった』と感じる。本来であれば、日米同盟に影響が出てもおかしくないくらいの大きな案件なので、その中で理解を示したのは、日米同盟にひびが入らず、つけいる隙がないことを示すメッセージにもなっている」と指摘しています。


2022.12.05-東洋経済-https://toyokeizai.net/articles/-/636901
日本の防衛「中国の2つのジレンマ」に有効な戦略
-(小木洋人:アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)/
地経学研究所 主任研究員)


(1)
【特集・新国家安全保障戦略のリアル(第2回)】
  中国、北朝鮮、ロシアに囲まれ、厳しい安全保障環境に直面する中、政府は、反撃能力を含む防衛力の抜本的強化に向けた検討を進めており、本年末までに国家安全保障戦略(安保戦略)、防衛計画の大綱(大綱)、中期防衛力整備計画(中期防)という戦略3文書を見直す予定だ。
  長射程ミサイルを含め、新たな装備品導入に関する報道が日々報じられる一方、科学技術予算など防衛省以外の予算も合算した「総合防衛費」を創設する方針が防衛費水増しの懸念を呼ぶなど、防衛費をめぐる政府内のつばぜり合いも活発化している。
  しかし、12月中に「戦略」3文書が見直されるにもかかわらず、増額する防衛費や導入する新たな装備品を使って、日本がどのような戦い方を目指すのか、その戦略に関する議論がまったく行われていない。防衛費増額を優先するか、財政制約を優先するかという二項対立に議論が終始すると、行き着く先は玉虫色の政治的な落とし所になる。
  外交上の考慮や国の安全に関わるとして戦略を公の場で議論せず、暗黙知としたつもりでも、それが言語化していなければ、立場ごとに解釈の幅を生み、本音の戦略がぼやけてしまう。防衛戦略の目指す方向性が定まってこそ、防衛力の具体的な強化につながる。
  本稿は、かかる暗黙知が生む陥穽を避けるため、日本が目指すべき防衛戦略を議論したい。

戦略ではなく能力を議論する伝統
  日本の防衛が戦略ではなく能力の議論を重視してきたのは、今に始まったことではない。「基盤的防衛力」(51大綱)、「多機能弾力的防衛力」(16大綱)、「動的防衛力」(22大綱)、「統合機動防衛力」(25大綱)、「多次元統合防衛力」(30大綱)。これまでの大綱の中核概念が示唆するのは、大綱は目指すべき「防衛力」の方向性を示すものであり、防衛戦略を明らかにするものとして位置付けられてこなかったという事実だ。
  これは、最初の51大綱が、デタント状況下で防衛力の限界を設定するため策定された経緯にも由来しており、また、米ソ二極対立の下、想定される主戦場が極東ではなく欧州であった冷戦期には、日本が独自の戦略に基づいた防衛力整備を行う余地も少なかった。冷戦後長く続いた脅威認識の低下と不確実性の時代でも、その考え方を大きく変える力が働きにくかった。
(2)
  2013年に策定された安保戦略も、安全保障戦略の方向性の大枠を示したものではあっても、防衛体制に関する記述を大綱と中期防に譲っており、防衛戦略を具体化したものではない。
中国にとっての2つのジレンマ
  中国の軍事膨張と既存の国際秩序への挑戦はこの前提を変えた。アメリカの新たな国家安全保障戦略は、中国を「唯一の競争相手」と呼び、国家防衛戦略は、「最も包括的かつ深刻な課題」と呼んだ。どのような呼び方をするにせよ、アメリカのみならず日本にとっても中国が第一の軍事的挑戦であることに疑いはなく、その中国が台湾に対して激しい言説とともに軍事的圧力をかけることで、台湾有事の懸念を高めている
  中国が台湾の非平和的統一を試みる場合、認知戦による台湾民衆への働きかけから軍事侵攻に至るまで、軍事・非軍事手段を組み合わせて実行する可能性が指摘されており、必ずしも最初から本格侵攻が行われるとは限らない。他方、中国がどこかの段階で台湾侵攻を軍事的に着手し、成功させたいのであれば、本年8月の弾道ミサイル発射で示されたように、台湾海峡側からのみならず、台湾東岸の西太平洋を含め、四方の海空領域から試みるはずだ。
  その場合、アメリカや日本の軍事的介入を招くと、台湾東側からの侵攻に当たって、中国はその後背地からの攻撃に脆弱になる。中国がこの脆弱性を回避するためには、日米を台湾から切り離すか、侵攻当初から日米も含めて西太平洋における局地戦を想定するかの選択を迫られることになる
  軍事的には日米を切り離し台湾のみに対処したほうが容易だが、日米の介入に備えないまま後背地から攻撃されることは、介入に備えて当初から日米を巻き込む場合より大きな軍事コストをもたらす。そのコストを避けるためには、先んじて日米に第一撃を仕掛けるオプションも想定しなければならない。
  この中国にとっての「台湾侵攻における日米巻き込みのジレンマ」の存在は、逆に日本にとっても、南西諸島や尖閣を含む自らの領土を防衛するため、中国が最悪の選択をした場合に備えるべき必要性を示している。
(3)
  さらに、これまで、中国のミサイル戦力等の増強は、A2/AD能力としてアメリカが軍事介入するコストを高めてきた。しかし、中国が台湾侵攻に必要な着上陸能力等を強化するに従い、逆に日米のA2/AD能力に向き合わざるをえなくなる。中国がアメリカの軍事介入を拒否するだけでなく、自らの戦力を投射するとき、新たな脆弱性が生じ、「戦力投射と脆弱性のジレンマ」を生むのである。
日本が目指すべき防衛戦略
  日本が目指すべき防衛戦略は、中国が抱えるこの2つのジレンマに有効に働きかけるものとしなければならない。すなわち、その目標は、中国が台湾有事に日本を巻き込んだ場合の損害が大きいこと、また、日本の能力は先制攻撃によって無力化できないものであることを悟らせ、台湾侵攻や日本への攻撃を躊躇させることだ。
  もちろんこれは防衛力のみで成し遂げられるものではなく、日本を含む国際社会が台湾に対する中国の力による一方的な現状変更を傍観し、ディカップルされないための外交政策や認知戦への対応と組み合わせて取り組む必要がある。しかし同時に、防衛力の裏付けなしに、現在の中国を外交のみによって抑止することもまた不可能だ。
  この目標を達成するため、日本が目指す防衛戦略は、前線に兵力を集中して逐次対抗するのではなく、相手の作戦遂行を縦深的に拒否する、すなわち、より遠方の洋上後続部隊や地上の指揮統制・ISR能力を含め、カギとなる兵力や脆弱性を突く「縦深拒否戦略」であるべきだ。そして、その遂行に当たっては、アメリカとの相互補完を前提とする必要がある。
  30大綱における島嶼防衛への対応は、部隊の事前展開、海上・航空優勢の確保、侵攻部隊の上陸阻止、海上・航空優勢が逆転した状況での脅威圏外からの阻止、島嶼奪回という流れで記述されている。しかし、こうした海上・航空優勢か領土防衛かという二者択一は、中国の圧倒的な軍事力に直面し、かつ、ミサイルや無人機が役割を増す現代戦においては、もはや最適とはいえない構想となった。
  ロシア・ウクライナ戦争は、これを事実として示しており、当初ロシアは圧倒的な航空・ミサイル戦力を持ちながら、ウクライナの防空能力を無効化できず、航空優勢を今に至るまで獲得できていない。この点、その原因について、多数の無人機や短距離地対空ミサイルなどを効果的に活用した「航空拒否(air denial)」により、ウクライナがロシアの航空優勢を妨げていることを指摘する議論がある(ブレマー/グリエコ)。

  この観察が正しければ、今後の戦争は、戦闘機や空母などの大規模戦力により海上・航空優勢を獲得する戦い方から、独立・分散・抗堪化した戦力で相手の作戦遂行を非対称的に妨げる拒否的戦略に重点が移行していく可能性がある。
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  一方、ウクライナとは異なり、日本と中国の間には海がある。地続きのウクライナとロシアが相互に航空優勢を取れなかった結果、泥沼の地上戦で被害が拡大しているが、日本はその地の利を生かし、地上のみならず、海空からも縦深的に相手の能力を拒否すべきだ。
  もちろん、複雑な地形を生かした地上からの戦いとは異なり、透明性が高く平面的な海空領域は、レーダーによる暴露性が高く、非対称戦を戦うのに不利な環境である。しかし、海には海中という暴露防止に適した領域があり、また、空域における暴露性という欠点は、多数の小型無人アセットの運用により補完できる余地がある。陸上からの長射程ミサイルもこうした能力を補完できる。
防衛力強化の優先順位を明確に
  海上・航空優勢の獲得を目指し、それを失ったときには、島嶼を含め、陸上で迎え撃つことを基本としてきた日本の防衛力は、「縦深拒否戦略」をとる場合、大きな変更を迫られる。
  特に、従来型の地上戦を戦うために設計された陸上自衛隊の15の師団・旅団等は、現在の戦略環境では真っ先に戦う部隊ではなく、その多くは最後まで用いられないかもしれない。
  そうだとすると、これら部隊の一部は、「縦深拒否」遂行のため、小型で分散した多数の部隊を擁する「ミサイル旅団」や「無人機旅団」への抜本改編が必要になるだろう。また、海空自衛隊は、有人戦闘機や護衛艦の限界を認識し、海上・海中・空中で活動しうる無人アセットを大幅に増勢するのが望ましい。
  導入が報道されている長射程ミサイル、無人機、ISR能力などは、どれもこうした戦略を実現するため不可欠であり、持つべき能力として異論はない。しかし、「縦深拒否戦略」の観点からは、長射程の地対空ミサイルと攻撃型海中無人艇(UUV)導入に関する議論が見られないことに不安が残る。特に、UUVについては、防衛省の概算要求説明資料でも、いまだ要素技術研究の要求にとどまっているのが懸念だ。
  防衛戦略を明確にすることは、防衛力整備の優先順位をあぶり出してしまう。各自衛隊で組織防衛バイアスが働く誘因は大きいが、防衛力のみならず防衛戦略を明確にすることで、健全な議論が行われることが求められる。そのためには、防衛力整備計画を具体的に記した中期防との区別が曖昧だった従来の大綱に代えて、安保戦略を具現化して目指すべき防衛戦略を示す「国家防衛戦略」文書の策定が期待される。
(小木洋人:アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)/
地経学研究所 主任研究員)



2022.12.03-dmenuニュース(読売新聞)-https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20221203-567-OYT1T50113
陸自に「沖縄防衛集団」創設へ…「師団」と「旅団」の中間の3000人規模

  防衛省は、南西諸島防衛の中核となる新たな部隊として、陸上自衛隊に「沖縄防衛集団」を創設する検討に入った。現在の陸自第15旅団(那覇市)に部隊を追加配備し2027年度までをメドに組織を新編する。

   複数の政府関係者が明らかにした。月内に閣議決定される防衛力整備計画(現・中期防衛力整備計画)に創設方針を盛り込む方向だ。
   第15旅団は2010年に設立され、司令部を置く那覇駐屯地には、歩兵部隊にあたる普通科連隊のほか、防空を担う高射特科連隊、偵察隊など計約2000人の隊員を擁する。これにさらに普通科連隊一つを加え、沖縄防衛集団に格上げする計画だ。新編後の規模は3000人程度を見込んでいる。
   引き続き、那覇駐屯地を拠点とし、新たな用地取得などは行わない見通しだ。
   陸自の作戦部隊は九つの「師団」と、これに準じる六つの「旅団」に大別されるが、新編する「集団」は両者の中間の規模に位置づけられる。覇権主義的な動きを強める中国が台湾の武力統一に踏み切る可能性が指摘される中、台湾に近い南西諸島の防備を固めるため、旅団から集団への格上げが必要と判断した。
   陸自は16年3月に与那国島、19年3月に宮古島にそれぞれ駐屯地を新設し、今年度中には石垣島にも新たな駐屯地が完成する予定だ。国境を守る沿岸監視隊や警備隊などが常駐するが、最も規模の大きい宮古島駐屯地でも隊員は約700人にとどまる。
   沖縄防衛集団が発足すれば、有事の際に沖縄本島から各離島へ部隊を機動的に展開することが可能となる。本土からの応援部隊が到着するまでの間の防衛体制を整え、抑止力の向上につなげる。
   沖縄防衛集団は、有事に住民を避難させる国民保護の強化や、有事に偽情報を拡散し、住民の動揺を狙う「認知戦」への対処も担う見通しだ。国民保護では、地方自治体との連携を緊密にし、役割分担などを明確にする。認知戦に関しては、情報収集・発信体制を整えることを目指す。


2022.12.03-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221203/k10013911571000.html
「反撃能力」保有も “専守防衛の考え方堅持” 理解得られるか

  敵のミサイル発射基地などをたたく反撃能力の保有について、自民・公明両党は実務者協議で合意しました。ただ、反撃の前提となる相手の武力攻撃の着手をどう判断するのか難しいという指摘も出ていて、先制攻撃にあたらず、専守防衛の考え方に変わりがないことに理解を得られるかが課題となります。

  防衛力強化に向けた自民・公明両党の実務者協議は2日、敵のミサイル発射基地などをたたく「反撃能力」の保有について合意し、政府は年末までに改定する国家安全保障戦略など3つの文書に「反撃能力」を盛り込む方針です。
  政府は、行使のタイミングは相手が武力攻撃に着手した時点であり、先制攻撃は行わず、専守防衛を堅持するとしていますが、武力攻撃の着手をどう判断するのか難しいという指摘も出ていて、先制攻撃にあたらず、専守防衛の考え方に変わりがないことに理解を得られるかが課題となります。
  また政府は「反撃能力」を行使する装備として国産の誘導ミサイル「12式地対艦誘導弾」の改良型の開発などを念頭においていますが、配備先となる地域の理解がえられるかどうかも今後の焦点となる見通しです。


2022.11.28-日立総合計画研究所-https://www.hitachi-hri.com/reciprocal/i044.html
第44回 米中パワーバランスの動向と日本
~国際秩序の変化を捉え、日本企業が進むべき道を考える~

  冷戦終結から約30年、米国は自国中心の政策展開により世界への影響力が低下し、中国のプレゼンスが高まっています。世界の覇権・国際秩序を巡り太平洋を挟んで米中が対峙するなか、企業経営の舵取りはますます難しくなっています。今回は東京大学政策ビジョン研究センター長の藤原帰一氏をお迎えし、混迷する世界はどこへ向かうのか、日本企業はどう対処するべきかを伺います。

国際秩序が大きく変化
  白井:日立は戦後の自由主義経済、自由貿易のなかでビジネスを拡大してきました。1978年に鄧小平氏の改革開放政策が始まった後、1981年には日本の製造企業で初めて中国にテレビの生産工場を設立しました。現在、世界第二位の経済大国となった中国と第一位の米国が、世界のGDPの約4割、軍事費の5割弱を占める二大大国(G2)として対峙しています。この状況を歴史的にどのように捉えておられますか。

  藤原:冷戦終結後、米国、欧州、日本は自由主義経済、民主主義の国として結束し市場経済の拡大をリードしてきました。旧ソ連と中国も自由主義経済へ徐々に統合され、主導権は米国、欧州、日本にありました。軍事面では、旧ソ連は米国への対抗政策を転換、中国は鄧小平氏の米国訪問を機に対立は収まり、世界は政治的、経済的に安定していくと思われました。現在は中国が経済的・軍事的に台頭する過程にあり、米国、日本との協力路線から自国に有利な政策を強く打ち出すようになっています。経済での台頭とともに独自の対外政策を追求しており、それは一帯一路構想からもみえてきます。世界のパワーバランスは中国が上昇し、相対的に米国、欧州、日本が下降しました。中国は軍事面でも世界有数の海軍力を持つまでに成長し、黄海から外洋へ出てインド洋、東シナ海、南シナ海、尖閣諸島沖合にも活動領域を広げています。
  中国の躍進とは対照的に、欧米中心の世界は大きく後退しました。先進国はこれまでの新興経済圏の統合による成長を維持することができなくなっています。
  1980年代から1990年代まで雁行型経済発展が続き、日本を先頭にアジア諸国も経済成長していくと思われました。地域的分業で日本がVTRを製造すれば、韓国はカラーテレビ、タイは白黒テレビを生産するというように、技術水準で日本が先頭に立ち、後に続く国を日本企業が支える形です。これに中国も加わると考えられましたが、企業も垂直分業から水平分業へ移行し、結果的に日本が常に先頭をいく状況は揺らいでいます。こうした秩序の変化は先を走っていた側の優位を脅かします。
  短期的に地政学的変化が大きいのは中国以上にロシアです。クリミアを併合し、ウクライナの東部地域を事実上制圧、シリアにも大規模な派兵を行っています。
  冷戦終結から約30年、世界の勢力図は変わり、政治的、経済的、軍事的な不安定要因が高まっています。

米国と中国の動向
  白井:米国ではトランプ政権が「米国ファースト」を掲げ、米中二国間の貿易交渉、北朝鮮の非核化交渉など、オバマ政権の時代に比べ良くもあしくもさまざまな変化が起きています。現在のトランプ現象は今後も続き米国自体が大きく変わるのか、あるいは軌道修正され以前の米国に回帰していくのでしょうか。

  藤原:トランプ氏が大統領に就任してから1年半、国際関係は米国に振り回されています。トランプ氏が大統領に当選しても米国の外交政策は大きく変わらないとみられていました。それはこれまでの貿易秩序、国際秩序が米国に極めて有利であり、制度の見直しは長期的に自分の首を絞めることになるからです。
  米国中心の同盟ネットワークを構成する北大西洋条約機構(NATO)、日米安全保障条約、米韓相互防衛条約などは米国の力の源泉といえます。しかし、トランプ氏の支持者からみるとこれらの制度は見直すべきものでした。彼らは貿易は一部の米国企業を除き、他国が米国経済を食い物にし、同盟は他国の安全のために米軍が使われている、と確信を持っています。彼らの固い支持を得たトランプ大統領は、貿易・同盟体制の見直しに取り組み、最近ではEUに鉄鋼・アルミニウムの追加関税を課すという予想外の動きをみせています。

  ここで問題となる点が二つあります。一つは、予測可能性が大きく下がったことです。政策に選択の幅があっても既得権を脅かす道は選ばないと読めば範囲は狭まります。しかし、排他的な国内世論を基礎に政策を進める大統領の登場により、起こる可能性のある変化の幅、予測範囲は極端に広がりました。
  安全保障においても、例えば北朝鮮対策で歴代の大統領が採択しなかった選択が二つあります。一つは北朝鮮への先制攻撃、もう一つは米朝首脳会談です。
  二つの政策とも米国にとって不利益と考えられ、オバマ政権の8年間はこう着状態が続きましたが、トランプ大統領は後者については実行済み、前者についても実行しかねない状況です。要するに、国際的な制度の安定性が著しく損なわれる可能性がある、ということです。
  国際的な制度とは、国連などの国際機構に限らず、自由貿易の仕組みや通貨体制なども含みます。米国がその枠組み全てを見直す立場を取るだけで世界に大きな影響が及びます。
  二つ目は、米国社会にはトランプ氏を支持する世論(共和党右派)があり、政権を取るだけの力を発揮したことです。トランプ大統領にはロシアゲート疑惑などもあり、政権が長続きするかどうか現時点では分かりません。トランプ支持層は年齢が高く、大多数が白人です。人口構成を見れば次第に白人の比重は下がるため、票に影響を及ぼす強いグループになるとは思いませんが、なくなることはありません。むしろ緩やかに減少すると見込んでいるからこそ声を上げ、強硬な意見を訴えてくるでしょう。

  白井:トランプ政権が自国中心の内向き志向に傾斜するなか、中国は中央アジアのインフラ整備、パリ協定の推進など、少なくとも表向きは自国の役割をきちんと果たす姿勢を世界にみせています。しかし、中国が「一帯一路」を掲げる背景に対外権益を拡大する狙いもみえます。ビジネスの中でも例えば、中国は将来を見込んで電気自動車(EV)に使用されるレアメタルの安定供給を確保し、米国を抜いてEV分野の世界シェアトップに躍り出ました。膨大な人口を抱えた中国が成長を続けるために権益や資源を追求するのは当然といえば当然ですが、しっかりと世界への貢献をアピールしています。
マーシャルプラン以来、米国中心に自由と民主主義のビジョンを共有する国と連携してきた西側と、権威主義的な中国、この二つの異なる価値観が共存しています。一帯一路を様子見していた日本も協力する方向へ動き始めましたが、日本は中国の立ち回りにどう対処すればよいとお考えですか。

  藤原:これまで日本政府の対中政策は「経済的なチャンス」「軍事的な脅威」の二つで揺れてきましたが、今は経済協力を深めながら軍事的脅威を抑制する方向に向かっています。
  中国にはさまざまな側面があるため、三つに大別して考えます。一つ目は、「責任ある大国としての中国」です。かつては自国の主張を通し、意に沿わない場合は協力しないという、ゼロサム的な判断をしていた中国が世界貿易機関(WTO)に加盟し、国際機構を担う活動も始めました。
  現在、国連の平和維持活動は中国の協力なしには成り立ちません。スーダンの内戦を機に大規模な軍事経済協力を展開し、他の国が国連活動に関与しないなかで積極的に関わっています。習近平国家主席の発言を聞くと、自由貿易の担い手は米国から中国に代わった印象さえ受けます。環境分野においても、再生可能エネルギーの開発・拡大は他の国に比べて抜きん出ています。
  問題は「責任ある大国」とは正反対の行動が同時に起こっていることです。
  中国は経済が弱かった過去があり、改革開放政策の時代には米国や欧州のルールを受け入れてきました。将来の発展を見込んで、外資にさまざまな優遇措置を与えては国内に引き寄せてきましたが、今はそのころと同じ優遇措置は期待できません。
  実は、1960年代から1970年代に日本経済が台頭したときも米国への反発は起こりました。鉄鋼貿易を巡り「日本には競争力がある、それなのになぜ米国の言うことを聞く必要があるのか」と日本の強い立場を訴えました。中国にも同様の動きがみられますが、日本と決定的に違う点は「貿易や経済と軍事のリンク」です。
  これが二つ目のポイントです。中国は一帯一路の周辺諸国に投資や援助を申し出る際、途上国が到底返済できない借款を与えています。例えば、スリランカの港の建設に協力し、借款の抵当として港を使う権益を確保しています。
  中国に日本はどう向かい合えば良いのか。まず中国とのビジネスを断つ選択肢はないと考えます。仮にビジネスを断ったとしても軍事的な対立は打開できませんし、中国の代わりになる市場もありません。
  インドの急成長が見込まれますが、インフラ整備が不十分で国内市場も限られています中国経済は世界金融危機以前より成長率は下がりましたが、バブル崩壊のような転落はありません。今でも他の新興経済圏全ての合計を超える規模の成長をしているのです。中国の軍事的脅威は米国以上に警戒しなければいけませんが、今の安倍政権が中国に協力する方向に向いているのは、習近平政権が安定しているからです。
  三つ目のポイントは、「政権が安定し、予測可能性が高い中国」です。胡錦濤政権は経済を中心に、国際貿易体制との関係ではむしろ開放経済を志向していました。胡錦濤氏の政策は中国経済の状況に見合った適切なものであったと私は考えますし、また日本にも有利なものだったと思うのですが、胡錦濤政権自体が政治的に弱く、軍を統制することもできなかった。
  これとは逆に、習近平政権では共産党が軍と政府を統制し、安定しています。人民解放軍が党政治局の判断を仰ぐことなくベトナムの排他的経済水域にプラットフォームをつくりましたが、そのプラットフォームも解体させたのは象徴的な事件でした。党政治局が軍に対する統制を取り戻したわけです。人民解放軍の軍事戦略の基本的な方向性そのものは変わりませんが、新たな勢力圏を確保するより、既に手にした勢力圏を安定的に支配していくことが習近平政権の方向だと思います。
  例えば台湾問題では妥協しないといったように、目標や方向性がはっきりしており、米国よりも予測可能性が高い。他方で、広域に覇権拡大を追求しています。以前、ハワイまでが米国、それより近い方は中国と発言した軍将校がいましたが、今はそうした主張をする幹部は更迭されます。
  こうした流れからも、中国は望ましい相手ではなくとも予測可能であり、日本も協力というより相対的な安定化をめざすスタンスを取っています。
  日中関係より問題なのは米中関係です。米国政府内では、中国の軍事的脅威についての議論が対立を続けています。これはトランプ政権が非常に不安定な体制であることの表れでもあり、例えばポンペオ国務長官の路線が中心となれば、中国を強くけん制すると同時に、安定化を探る伝統的な外交になります。
  中国は軍事的な地域覇権に向かっており、今は牽制を強めるのが望ましい選択です。マティス国防長官、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も同じ側に入ります。6月にシンガポールで開催された第17回アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)の場で、マティス国防長官が中国の軍備拡張に対し極めて厳しい発言をしたのは、米国政府に向けたメッセージでもありました。
  経済活動でも米国にとって中国は不公正な貿易慣行で一番問題のある国です。米国企業が打撃を受けたとしても、貿易関係見直しを優先する立場を取る可能性があります。米国が経済的・軍事的な牽制を強化した場合、当然中国は対抗策を強めます。
  今注目されている鉄鋼・アルミニウム関税はその一例です。貿易摩擦が拡大し、結果的に日本が影響を受ける可能性はあります。日本が中国での経済機会を優先しても、米国の政策によっては土台から壊されてしまいます。いずれにしても習近平政権よりトランプ政権が予測困難という不安要素があります。

  白井:中国は、一帯一路構想において国際協力の新たなフレームワークを提起しました。これに対抗する形で自由主義を共有する日本、米国、オーストラリア、インドが「インド太平洋戦略」を提起しています。一帯一路に対し、伝統的経済連携のインド太平洋戦略はうまく機能していくとお考えですか。

  藤原:これは地域覇権の対抗です。中国が米国に代わる大国をめざしているとは思いません。そもそも中国指導部はそれだけの国力があると考えていないからです。改革開放政策を担ってきた世代がまだ政治権力の中枢におり、彼らは自国の弱さをよく認識しています。
  石油危機のときの日本経済が大きな打撃を受けても非常に早く立ち直ったのは、自国の弱さをリアルに認識して政府が早急に産業政策を打ち出し、企業の投資活動を誘導したからでした。企業もすぐに労働組合の協力を取り付け、解雇しないことを条件に賃金を減額、同時に生産の再構築に取り組みました。
  今の中国指導部には石油危機当時の日本のような「弱さの自覚」があり、それが危機に対応する力の源になっています。もっとも中国はこれから先、一人っ子政策の時代に生まれ「中国が偉い」と考える世代が政治を担う時代が来ます。その時はどうなるか分かりません。
  一帯一路は、欧米に左右されず、友好国と市場を確保する経済圏構想で、目的が限定された固い政策なので、簡単には妥協しないでしょう。大きなターゲットとされるイラン、パキスタンは、もともと中国との関係が深い国です。特にエネルギー供給拠点としてのイランは、欧米の影響が限られます。つまり中国が信頼を得られる国と協力を強める狙いがあります。
  一帯一路を日本にとってのASEAN(東南アジア諸国連合)に例えるとよく分かります。ASEANは巨大市場であり、日本に協力的です。国連で議決する際は、日本と同じ票を投じると期待できます。宮澤元首相の「ASEANは日本の選挙区」という発言を聞いたとき、非常にうまい表現と思いました。
  中国は一帯一路構想で「選挙区」を広げようとしており、それは外への影響力拡大には有効な政策です。インド太平洋戦略で対抗するのは容易ではないでしょう。中国が展開する政府開発援助(ODA)は、各国に膨大な経済的インセンティブを提供しています。
  以前、米国は対テロ戦争の協定の一環としてパキスタンに関与し、財団やNGOなどと関係を深めようとしましたが成果は限られました。何よりもインセンティブが弱かったからです。中国の強みはインセンティブの強さ、つまりお金です。
  軍事的に脅して各国を言いなりにしようとしているわけではありません。巨額の資金を援助し、それが無駄になろうとも権益を追求するスタンスです。その中国に対抗措置を取る国はありません。旧ソ連に属していたアゼルバイジャンは依然としてロシアの影響力が強い国ですが、カザフスタン、モンゴルでは中国が存在感をみせています。繰り返しになりますが中国の影響力拡大を左右する国はイランとパキスタンです。中国が提供するインセンティブに見合ったものを、われわれがどれだけ提供できるかにかかっています。
通商政策の行方
  白井:米国と日本がリードしてきた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は、世界で最も高水準の自由貿易協定(FTA)です。自由貿易の促進が経済発展をもたらす流れは変わらないと思われましたが、米国が離脱したため11カ国(TPP11)でのスタートとなりました。米国の通商政策は多国間協議から二国間協議へシフトしていますが、中長期的にどう変化していくとお考えですか。

  藤原:世界の貿易秩序は変動が始まったばかりですが、今後、状況はさらに厳しくなります。その根拠を申しあげる前に、貿易自由化は相当進んでいることを認識しておく必要があります。貿易自由化は、TPP協議が始まる前にほぼ達成されています。逆に言うと、残された領域は知的財産権、豚肉、米など実現が難しい政治的な懸案事項ばかりで貿易拡大によるメリットも限られます。例えば、アフリカ諸国の経済政策が西側との協力を深める方向に変わったとしても、ケニア、ナイジェリア、スーダンなどは国内市場が小さいため市場拡大は期待できません。
  貿易自由化に反対するグループは、これまでは基本的に左派の人々でしたが、そこに今変化が生まれています。英国のEU離脱では、保守党の離脱支持者と労働党の左派がともにEUに反対でした。それまで左派のポピュリズムが貿易の自由化にくさびを打つ役割を担っていましたが、現在は左派と右派、両方のポピュリズムが勢いを持っています。ハンガリーとポーランドのように、 EUに加盟したことで明らかに利益を得ている国でも右派のポピュリズムは高まっています。
  米国では、貿易自由化についてバーニー・サンダース氏を支持する若いミレニアム世代の支持はまとまっていませんが、トランプ氏支持者のハードな保守層は懸念を抱いています。
  多くの先進工業国が貿易自由化に反対するグループを抱えているのに対し、それが相対的に少ない国が日本です。日本の反対派は農業関係者が中心のため、TPP協定ではそこまで大きな問題になりませんでした。
  米国のTPP離脱は、自由貿易に反対したのではなく、米国に不利益な貿易に反対したものです。
  そもそも自由貿易はどちらかに有利、不利の問題ではないのですが、TPPの合意事項を大幅に変えなければ米国が戻ることはないでしょう。米国に有利な自由貿易とは、全ての貿易協定の見直しです。これを集団的に行うのは不可能であり、米国用のWTOもあり得ないので二国間協定になるのは必然ですが、この状況は貿易体制を不安定にします。
  甘利明元大臣がTPP推進に尽力されたのも、個別に二国間で合意すること自体が制度の安定性を損なうためです。貿易はどうしても国内の反発があり、総論賛成、各論反対になるからこそWTOが設立されました。二国間協定に頼る動きはトランプ大統領が登場する以前から続いていますが、現在、二国間協定によって貿易体制を骨抜きにすることが起こっています。
  TPP離脱は間違いなく米国の首を絞めます。日本がTPPの日米交渉で、日本側に厳しい内容でも受け入れたのは、TPPの実現が全体として有利になると考えたからです。現在の流れは、集団的に合意した貿易体制が緩やかに後退していく過程とみています。
  さらに問題なのは、短期的にはこれが経済に有利に働く側面があることです。長期的には経済に大きな打撃を与え、政策が後退すると分かっていても、マーケットはネガティブな反応をみせていません。交易条件を自国有利に見直すことができるという期待にポジティブに反応し、米国の株価は高水準を維持しています。短期的に景気を刺激しても、結果的には不利益な悪循環に陥ります。
  かつての日米貿易紛争で注目された通商法301条が再び出てきたのはWTOが発足して以来初めてです。短期的に厳しいのは景気後退が進むEUでしょう。この先、EUを離脱する国が出なくても域内の貿易秩序が揺らいでしまうと、成長が停滞し、経済には大きな打撃となります。

  白井:米国の最大の貿易赤字国は中国ですが、中国の米国向け輸出の6割は米国企業を中心とする多国籍企業によるもので、両国は極めて強い相互依存関係にあります。米国の制裁対象は、鉄鋼など既存の貿易製品から通信・ハイテク製品まで広がり、中国の投資政策や「中国製造2025」などの産業育成策、先進技術移転要求も批判しています。米中の貿易摩擦が日本にも飛び火し、世界経済にショックを与えるリスクもあります。米中間の通商問題は今後どのように推移し、日本への影響をどう考えるべきでしょうか。
  藤原米国と中国の貿易摩擦は、日本も制裁対象に加えられる可能性があり、短期的にみて一番大きな課題です。
  ただ実際には、日本の鉄鋼・アルミニウムの輸出規模はそれほど大きくなく、トランプ政権はこれらが米国市場に及ぼす影響に過剰に反応している節があります。誤った認識に基づいて政策を立案する可能性は否定できません。
  少し視点を変え、トランプ政権の政策立案者は誰なのか考えてみます。トランプ大統領が自らつくるわけはなく、閣僚やそれぞれのプロフェッショナルから提起された政策に対しダメ出しをする、という構図が徐々にはっきりしてきました。
  時には、プロフェッショナルが反対する政策も公表してしまいます。鉄鋼・アルミニウム関税については十分に政策検討されたとは思えず、プロフェッショナルであれば慎重に協議し、公式発動前に相手に譲歩を求めるはずです。実際、水面下の交渉が繰り返されている最中に、大統領がTwitter®で発表して流れを変えてしまうのがトランプ政権の大きな特徴であり、かつてのレーガン政権とは決定的に違う点です。レーガン政権では、実務家が立案した政策に沿って大統領がリーダーシップを取る筋書きでした。
  米国は中国の不公正な貿易慣行に対する規制を強化しており、貿易摩擦は避けられないでしょう。もっとも、米国政府が強い圧力を加えるのは、日本にとっても望ましい中国市場をつくる一助にもなります。米国の政策を利用しながら、中国により公正な貿易慣行の実現を迫る機会でもあります。
  中国側は過大な公共投資について緩やかに見直しているところです。公共投資を拡大したのは世界金融危機の打撃を回避する手段でした。貿易拡大にも協力し、膨大な公共投資を行うイメージからは変化していますが、中国企業の不利益になる合意を受け入れる可能性はむしろかつてなく低くなっています。
  米国が中国に制裁を加えると、中国は国内市場中心の経済運営に向かうことになり、国際貿易量は激減します。米国の対中貿易と中国の対米貿易の依存度を比較すると、依然として中国の対米依存度が高く、米国は圧力を加えれば中国が妥協する、と期待するかもしれません。
  ただ、中国の対米依存度は急速に下がっており、制裁を受け入れる必要はないと判断する可能性もあります。舞台裏の交渉が続くなか、現在のところ中国側は米国が求める条件を受け入れないことを表明しています。日本が制裁のターゲットにされる可能性もありますが、一番の問題は貿易が後退して世界経済に悪影響を及ぼすことです。
デジタル時代のイノベーション
  白井雁行がんこう型経済発展の時代は、先進国が技術革新を生み出してきました。IT時代に入ると「イノベーションの起源は米国」といわれるようになり、シリコンバレーを中心に最先端技術が次々と開発されていました。2012年ごろまでは米国の中国人留学生は帰国するよりシリコンバレーなど米国で起業することの方が成功への道でした。しかし最近は「innovate in the United States、 commercialized in China」という現象が起こっています。
  中国の若者が米国で学んだ後、帰国して深圳などで起業し大成功する事例も増えており、イノベーションの概念が変わりつつあるように感じます。特にデジタル産業は限界コストが下がるため、莫大な投資をしなくてもアイデア一つでビジネスになることもあります。外国企業に先進技術移転を強く求める中国が、これまでと違う形のイノベーションで世界をリードしていくパターンも増えると思います。ボーダレス時代におけるイノベーション、知的財産保護をどう考えるべきでしょうか。
  藤原:AmazonやGoogle®は米国から発信されていますが、近年、中国ではこうしたプラットフォームビジネスで主導権を握ろうとする動きがあります。米国で成功したプラットフォームをコピーし、中国に合わせたものに換えて国内市場のシェアを拡大していく。このパターンは以前から高速鉄道などでも見られました。この電子版と考えれば分かりやすいでしょう。
  しかし、中国はコピービジネスで知的財産権に反する行動をしているだけと捉えるのは間違いです。
  科学技術の発展も著しく、物理学の分野では論文数も米国を凌駕りょうがするまでに至っています。国内の技術力が飛躍的に向上しており、新たなイノベーションを生み出すのもそう遠くないかもしれません。中国発の技術をわれわれが学習する時代が到来する可能性もあります。
  日本は、未来の技術システムで主導権を取るために、米国、中国両国の研究者と共同で技術開発力の強化に取り組んでいくべきです。中国や米国だけにやらせないことが重要です。日本は、高効率、低コスト製造など、産業技術分野では依然として卓越した存在です。その点では、まだ中国が後追いできる状況にありませ んが、相対的に重要性は下がっています。変化のスピードは非常に速く、日本が主導権を握ってプラットフォームビジネスに関わることができない、極めて厳しい現状に危機感を抱いています。
  白井:デジタル化が進むなか、データが価値を生む「データ資本主義」という言葉も出てきました。 デジタルビジネスにおける米中間の競争は激しく、米国は対米外国投資委員会(CFIUS)による規制を強化、中国はインターネット安全法による外資系企業の国内データ持ち出し禁止や先端分野における国内企業優遇政策を進めています。
  また、EUの一般データ保護規則(GDPR)では、EU域外への個人データ持ち出しが禁止される一方で、産業用機械から得たデータはEU各国間で移転可能です。世界がルールを共通化してきた流れのなかで、データに関しては米国、中国、欧州、日本がとる政策はそれぞれ異なるものです。
  これまで異形とされてきた中国型の制度やシステムが、データ資本主義社会に親和性があるように見えます。中国では政府がデータを大胆かつ自由に活用できます。その典型が国内に張り巡らせた監視システムです。全てを映像で撮影し、大勢が集まるなかでも特定人物を見つけだすことができます。西側ではプライバシーの侵害とされることが、中国では治安維持に貢献し、顔認証技術や情報通信技術を応用することでデジタル社会の便益も広げています。データやプライバシー保護に関する政策は、今後のビジネスにどのような影響を与えていくでしょうか。
  藤原:中国のデータ規制や個人情報保護は、欧米や日本と全く異なります。中国がこのままデータの管理統制を続けられるとは思いません。その理由は二つあります。一つは、社会の自由化が急速に進み、情報を完全に規制することが難しくなり、いたちごっこの状態になるという点です。
  もう一つは、金融関係の取り引き情報です。米国は世界中のドル決済情報を掌握しており、マネーロンダリングを摘発して国内法を適用したケースもあります。
  イランに対する経済制裁で大きな影響力を持ったのは、米国の経済制裁というより、イランと取り引きのある外国金融機関に対する規制で、これを「二次制裁」といいます。
  西側が制裁を加えている北朝鮮、イランと中国との取り引きの情報も米国はつかんでいます。日本はプライバシー保護、個人情報流出に対する規制が強く、世界の動きにどう巻き込まれていくのかは不透明です。ただ、イランとの金融取り引きにおける規制では、米中間の問題とは別に日米間でも争点になると思われます。
日本がとるべき道は
  白井:米中両国は日本企業にとって重要な市場であり、事業・生産拠点も多数存在します。米国が中国に対して圧倒的優位だった時代は終わり、表面的には対立しても、裏では戦略的に連携するなど、今後もさまざまな状況が考えられます。巨大市場を持つ米中に日本企業はどう対応すべきとお考えですか。
  藤原:日本は大きな国内市場を持ちますが、経済活動は貿易中心です。貿易立国であることを前提とし、自由貿易制度が重要であるというスタンスを崩してはなりません。日本でも右派・左派のポピュリズムが力を持つ可能性があります。
  米国との関係については、市場開放圧力や、米国の関税引き上げなどの規制にも備えなければならない状況です。
  1960年代、 1970年代の米国は保護貿易に向かう動きを示しながら、市場開放へ圧力をかけてきましたが、ここにきて保護主義的な政策を強めています。米国が国内市場の保護に向かうことは、そもそもWTOの原則に反しますので、日本は単独でなく多国間で対抗すべきです。
  個別交渉では米国から対価を求められ、対抗政策を続けることが難しくなるでしょう。そうなると米国市場へのアクセスを保つには譲歩するしかないという議論が必ず出ますが、譲歩すれば自由貿易体制は一気に弱まってしまいます。原則論からみてもこれは決して譲ってはならない一線です。
  他国とのチームプレーで臨むのは、国際協力が個別国の利益より重要という意味でなく、多国間プレーでなければ対抗できないためです。貿易体制は数で動くため、多数派を手にした方が圧倒的に強くなる、つまり貿易政策の圧力はマーケットで大きなシェアを持つ集団の共同行動が重要なのです。
  また、必要に応じてWTOに提訴することも重要です。現在の状況が続けば、G8の中ではまず欧州が米国に対抗するでしょう。その際、直接対決ではなく、米国の貿易規制に賛成できないという立場を堅持するのではないでしょうか。
  中国の自由貿易を維持する政策は日本にとって歓迎すべきことです。中国との関係においても自由貿易の立場を崩さず、中国がルールから大きく外れる時もチームプレーで打開していくべきです。
  TPPの推進は、中国に対する牽制という側面もあります。もともとTPPには「中国不在の巨大な市場をつくる」「中国が制度を変えるための圧力」という二つの捉え方があり、それぞれの意図は全く異なります。前者の場合は巨大な市場を失う可能性があるため、望ましい戦略的連携になりません。中国はWTO加盟時に法制度を変えており、その流れでいくとTPPに参加することも考えられます。しかし、中国が知的財産権や直接投資などの問題に真剣に取り組まなければ、安定した貿易を期待することはできません。中国との関係において、安倍政権が協力路線に変わりつつあるのは良い判断です。協力するなかで、日本が受け入れられないことは明確に示していく。日本が単独で対抗できる力は限られており、各国との協力は不可欠です。
  TPPをベースに考えると、協力すべき国はオーストラリアとカナダです。オーストラリアは資源輸出で中国への依存度が高く、一方で不公正貿易慣行に対する反発も強い国です。カナダも中国との貿易が拡大する一方で、貿易摩擦を経験しています。
  米国の貿易規制に対抗する際も、EUやオーストラリア、カナダと連携を強め、多数国間で取り組むのが賢明です。可能なら、米国がTPPに復帰したうえで、多国間で中国に対する貿易政策の要求を展開する方向を模索していけるとよいと思います。以前はトランプ政権も共同のスタンスを取り、成果を上げていました。現在の単独制裁から引き戻すことが必要です。
  白井:国際関係の現実を捉えつつ、これまでになく複雑な連立方程式を解きながら進んでいくような世界ですね。
  藤原:そう思います。難しさが表に出た分だけ、取り組みやすくなったとも言えるでしょう。

東京大学 : 政策ビジョン研究センター センター長
法学政治学研究科(国際政治) 教授

  東京大学法学部卒業、同大学大学院博士課程単位取得満期退学。フルブライト奨学生としてイェール大学大学院に留学。東京大学社会科学研究所助手を務め、千葉大学法経学部助手、同助教授、東京大学社会科学研究所助教授を経て、1999年から現職。フィリピン大学アジアセンター客員教授、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際研究院客員教授、米国ウッドローウィルソン国際学術センター研究員などを歴任した。
  著書に『戦争を記憶する』(2001)、『デモクラシーの帝国』(2002年)、『国際政治』(2007年)、『戦争の条件』(2013年)がある。


2022.11.25-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/edd1f2e0244fc2aef2654c6a2748b20d1275a36c
中国共産党台湾へ「影響力工作」軍改革で活発化 中国安全保障レポート2023

  防衛省のシンクタンク、防衛研究所は25日、中国の安全保障に関する動向を分析した年次報告書「中国安全保障レポート2023」を公表した。

  報告書は中国が近年、情報活動で自国に有利な状況を作る「影響力工作」を活発化させ、台湾統一に向けた発信を強めている実態を示した。一方、中国と類似した活動を行うロシアがウクライナ侵攻で影響力工作に苦戦し、「中国がどう検討するか注目に値する」とも指摘した。
  報告書によると、中国では2015年から習近平国家主席が主導し、陸海空の指揮権限を地区ごとに付与するなど大規模な人民解放軍の改革を実行。党組織の関与を強め、党の意思を反映させやすい態勢にした。
   改革の中で情報収集、技術偵察、サイバー空間での攻防、心理戦などを担う「戦略支援部隊」を新設。専門部隊や党中央組織などが公式発信でのプロパガンダ(政治的宣伝)やソーシャルメディアでの情報発信などを活発に行い、影響力工作による「認知戦」を展開している。
  特に台湾統一に関する動きは活発で、地方選挙で親中派候補を当選させるなど一定の成果を挙げたとみられる。
  中国やロシアはもともと、影響力工作を活発に行う国として知られる。2014年のクリミア併合でロシアはプロパガンダを徹底し、最終的に住民投票でロシア編入を決定させた。
  だが、今年2月に始まったウクライナ侵攻では、米国が事前に警告を発信し、ロシアの奇襲攻撃の効果を下げたほか、ロシア側の偽情報を即座に否定することで情報戦における主導権を米国が渡さなかった。
  報告書は、ロシアの苦戦は「中国にとってショック」としたうえで「中国の影響力工作はロシアと類似した部分も多く、有効性に疑問が付されることになった」として中国側が何らかの対応を行う可能性を指摘した。


2022.11.21-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221121/k10013898951000.html
弾道ミサイル対応の新型迎撃ミサイル 発射試験に成功 防衛省

  防衛省は、弾道ミサイルに対応するため新たに開発した新型の迎撃ミサイルについて、海上自衛隊のイージス艦から初めて発射試験を行い、迎撃に成功したと発表しました。防衛省は順次、イージス艦への配備を進めていくとしています。

  発射試験に成功したのは、日本とアメリカが共同開発した弾道ミサイル用の新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」です。
  防衛省によりますと、日本時間の今月16日、アメリカ軍の施設から打ち上げた中距離弾道ミサイルを想定した標的に対し、ハワイ沖に展開した海上自衛隊のイージス艦「まや」から発射し、上空100キロ以上の大気圏外で迎撃に成功したということです。
  この迎撃ミサイルは、これまでアメリカ軍のイージス艦などから発射試験が6回行われ、このうち4回迎撃に成功していて、海上自衛隊のイージス艦から発射したのは今回が初めてです。
  共同開発にあたって、防衛省が負担した費用はおよそ1100億円で、従来よりも迎撃が可能な高度や範囲が拡大するため、より高い高度に打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射された弾道ミサイルにも対応できるとしています。
  防衛省によりますと、海上自衛隊が保有するイージス艦8隻のうち4隻がこの迎撃ミサイルを発射できるということで、今年度以降、順次、配備を進めていくとしています。
海自のイージス艦8隻すべてが弾道ミサイル防衛の任務に
  防衛省によりますと、ハワイ沖で行われた試験には、海上自衛隊のイージス艦「はぐろ」も参加し、短距離弾道ミサイルを想定した標的に対し、従来型の迎撃ミサイル「SM3ブロック1B」を発射して、迎撃に成功したということです。
  去年就役した「はぐろ」とおととし就役した「まや」が弾道ミサイル防衛用の迎撃ミサイルを発射したのは今回が初めてで、いずれも迎撃に成功したことで防衛省は必要な機能が確認できたとしています。
  これによって海上自衛隊が保有するイージス艦8隻すべてが、弾道ミサイル防衛の任務に本格的にあたることになります。
  また、今回は、ほかの艦艇などが捕捉した標的の情報を共有することで、自分のレーダーで標的を捕捉していなくても迎撃ミサイルを発射する「エンゲージ・オン・リモート」と呼ばれる機能の試験も初めて行ったということです。
  試験では、「まや」が探知した模擬の弾道ミサイルの情報に基づいて、「はぐろ」が「SM3ブロック2A」を発射するまでの流れを確認し、計算上は迎撃に成功したとしています。


2022.11.10-NIPPON COM(KYODO).-https://www.nippon.com/ja/in-depth/a08502/
台湾有事―直面する危機に日本はどう備えるか

  習近平総書記一人に権力が集中した中国共産党指導部。筆者は、台湾併合は歴史に名を残したい習氏の「夢」で、台湾有事のシナリオは現実化しつつあると分析。侵攻により、日本に及ぶ損害の程度は「日本側の備えによる」として、抜本的な防衛強化の必要性を指摘する。

  第20回中国共産党大会が終わった。習近平主席は思惑通り、個人崇拝排除、集団指導体制確立という鄧小平の遺訓を破り、異例の3期目の続投を決めた。習近平政権の顔触れは、世界を驚かせた。李克強、汪洋、故春華といった共産主義青年団(共青団)の重鎮はことごとく排除された。党大会のひな壇から若い職員に連れ去られる胡錦涛の老いた姿は共青団のたそがれを象徴した。一方で、李強上海共産党委員会書記、蔡奇北京市長などが抜てきされた。国民不在、冥府魔道の権力闘争の結果である。
  第3期政権の顔触れが示唆するのは、習近平への忠誠心だけで登用された、力の政治を信奉し、イデオロギー的傾斜の強い側近で固めたということである。「習近平組」である。
台湾併合は習近平の夢
  習近平は、特殊な指導者である。建国の立役者でありながら失脚した習仲勲を父に持ち、文化大革命の中で家族離散、下放の憂き目に遭い、教育の機会を奪われ、何度もいじめ殺されると怯えた。生き延びるために爪を隠し、牙を隠し、毛沢東を思慕する善良な農民になりきった。父の復権と共に許されて北京に戻った。
  その後、福建省に赴任したが、密輸で腐敗しきった酒池肉林の俗吏とは距離を置いた。賢明にも、収賄はいつか自分の弱点になる、清廉は武器になると思ったのであろう。党総書記に選出されると、習近平は徹底的な腐敗排除を口実にして、政敵を全て排除していった。徹底した力の信奉、自分の仲間しか信頼しない狭隘さ、強いイデオロギー的傾斜は、彼の壮絶な人生を通じて魂に刻み込まれてきたのである。
  戦争など、普通の指導者は考えない。愚かな指導者が「うまくやれば短期間で勝てるんじゃないか」と誤算した時に起きる。2022年2月のプーチン・ロシア大統領によるウクライナ侵攻がよい例である。経済制裁や、ビジネスへの悪影響や、国民生活の窮乏など、とりあえず視界から消える。独裁国家では、長期にわたり政権を維持した指導者に諫言する者が絶えていなくなる。だから間違える。独裁者の怖さは、その優秀さにあるのではない。その平凡さ、愚かさにあるのである。
  台湾併合は習近平の夢である。何度もそれを口にしてきた。教育の機会を奪われ、愛も、神も、自由も、民主主義も、法の支配も理解できない。弱肉強食、適者生存、階級闘争、個人崇拝と共産党独裁。習近平の思い描く世界は19世紀のままである。20世紀を通じて人類社会が到達した自由主義的国際秩序など、共産党独裁を脅かす邪宗に過ぎない。毛沢東のやり残した偉業を達成して歴史に残る。習近平からは、そんな狭い野望しか伝わってこない。
有事なら日本は「前線国家」に
  米国政府からは、習近平の台湾進攻の予定はどんどん早まっているという見解が聞こえてくるようになった。日本はようやく75年の太平の眠りから覚めたばかりである。米国もプーチン大統領のウクライナ戦争にかかりきりで、インド太平洋正面の備えには手が回らない。中国は、少子高齢化、政府の過剰介入により引き起こされた不動産業の不振、ロックダウンによる経済的悪影響、米国によるハイテク製品の対中輸出規制など、先行きは決して明るくない。習近平に残された時間は少ない。あと2期やるとして10年。そうなれば年齢は70歳代後半である。老いが身にしみるころである。「やるなら今だ」と習近平が考えるかもしれない。台湾有事のリアルは、どんどん現実化しつつある。
  中国は、グレーゾーンから仕掛けてくるであろう。サイバー攻撃、海底ケーブル切断によって台湾の電気と通信を遮断する。総統ほかの要人を暗殺し、混乱の中で傀儡(かいらい)政権を打ち立てて、中国の来援を要請させる。内から壊して外からするりと入り込むのは共産革命輸出工作の伝統であろう。その後、本格的な着上陸侵攻が始まる。日本は一気に巻き込まれる。
  現在の中国軍の力では、着上陸させられる兵力はほぼ2万人と言われる。半分は台湾海峡で沈むとすれば、残り1万の兵力が台湾の地を踏む。彼らの補給を絶ち、殲(せん)滅できるかが勝負の分かれ目になる。米国が介入すれば中国は負けるだろうが、それまでに前線国家である日本と台湾がどれほどの損害を被るかが問題である。日本が受ける損害の程度は、日本側の備えによる
「応分の負担」が必要な防衛費
  年末の国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛計画策定に向かって急ピッチで作業が進んでいる防衛費の増額、弾薬の補充など、反撃力の整備、統合司令部設置などが行われると報じられている。論点は多岐にわたるので、ここでは、いくつかの基本的な論点に絞って提言してみたい。

  第一に、防衛費の増額である。安倍晋三元首相は在任時、消費税収を倍増させた。税率を1%上げると、消費次第であるが2兆円ほどの増収になる。安倍政権で税率は5%から8%、さらに10%に上昇した。毎年10兆円ほど歳入が増えることになる。将来の子供たちの肩の上に積み上がる膨大な借金を軽減させようとすれば、消費税増税が王道である。財務省の友人は、安倍氏は財政均衡に気を配った首相だったという。防衛費も、防衛費だけを取り上げるのではなく、他の支出も含めて財政の大きなバランスに配慮しながら、その増額を議論するべきである。防衛費は、第二次安倍政権の8年間で補正予算を入れて約1兆円増額された。
  それでも米国の80兆円、中国の25兆円には遠く及ばない。また、NATOのGDP(国内総生産)2%や、韓国の2.7%にも及ばない。日本としては、日米同盟で中国を抑止できればよく、強大な米軍や中国軍に追い付く必要はない。それでも日本は同盟国として応分の負担を負わねばならない。米国はGDP2%、すなわち10兆円の防衛予算をフェアと考える。

  そもそも、冷戦中のGDP1%防衛枠が想定していたシナリオは既に時代遅れである。冷戦中は、北海道で陸上自衛隊、航空自衛隊がソ連軍に殲滅される前に、海上自衛隊が米第7艦隊と共に米陸軍・海兵隊を日本に連れ帰るというの戦略であった。あとは米国にお任せという無責任な防衛態勢だった。今日話題となっている台湾有事を想定した場合、日本の被害を最小限にしようと思えば10兆円でも足りない。特に、弾薬の欠乏はひどい状況で、このままでは戦えない。予算を倍増して、兵站(へいたん)面での足腰の弱さを早急に克服する必要がある。
  第二に、反撃力である。日本は長く冷戦が続く中、戦略的な思考能力を失ってきた。専守防衛と言いながら、誰からどうやって自分を守るのかという国民的議論がなかった。気が付けば、中国は日本を壊滅させるだけの核・非核の中距離・短距離ミサイルを装備している。INF条約は破棄され、ロシアも中距離ミサイルを保持し始めている。
  何より、核武装した北朝鮮が日本を射程に収めた中距離弾道ミサイルを保持している。ロシアの技術を導入した不規則軌道ミサイルや、ロフテッド型打ち上げのミサイルは、日本のミサイル防衛では歯が立たない韓国も台湾も、中距離弾道・巡航ミサイルを保持している。日本だけが中距離ミサイルを持たなかった
  安倍政権は射程1000キロの空対地ミサイル(JASSM)の導入に踏み切ったが、政府はいまだに敵領土には撃ち込まないという愚かな立場である。敵から雨あられとミサイルを撃ち込まれ、国民が殺されても、敵が日本領土に上陸するまで一切反撃しないというのがおかしいことは小学生でも分かる。それでは抑止にならない。国民を犠牲にして守る平和主義などありえない。そんな平和主義は真の平和主義ではない。「撃ったら撃ち返すぞ」と言わなければ抑止にならないし、国民を守れない。敵基地に届く反撃力の獲得は急務であり、さらなる中距離ミサイルの導入、具体的にはトマホークの導入、12式ミサイルの延伸などを可及的速やかに進めるべきである
現行の「サイバー法制」は欠陥
  第三に、サイバー防衛能力の向上である。日本は、不正アクセス防止法や不正指令電磁的記録罪を、平時の自衛隊に適用しているので、自衛隊のサイバー部隊が平時に活動できない仕組みになっている。これは戦後最大の日本法制の欠陥と言ってよい。
  サイバー防衛とは積極防衛である。アトリビューション(発信源特定)、ハックバック(逆侵入)による警告が主であり、それは互いの暗号を日々解き合っている軍の仕事である。不正アクセス防止法などを改正して自衛隊に平時から権限を与えることが必要である。また、サイバー防衛は自衛隊のみならず、民間重要インフラ、政府全体を防護対象にせねばならない。日本政府にはその司令塔がない。内閣官房にサイバーセキュリティ局を作り、その下にサイバー情報センターという1万人規模の実働部隊を作り、自衛隊のサイバー部隊を兼務させればよい。日本では、憲法が保障する通信の秘密を侵すという議論が強いが、時代遅れも甚だしい議論である通信の秘密は守られる。サイバー防衛は、サイバー空間における通信の安全と安心を守るいう話である。
  第四に、基地の抗堪化(ハードニング)が焦眉の急である。戦うことを忘れた戦後の75年間、自衛隊は装備の更新にこそ熱心であったが、本当に戦火を交えたらどうなるのかということはあまり考えたことがない。映画『トップガン・マーヴェリック』の一シーンのように、飛行場はミサイルで壊滅させられる。滑走路はまだ修復できるが、青空の下に並んだ高価な戦闘機はことごとく破壊されるであろう。
  太平洋戦争におけるミッドウェー作戦での日本の空母艦載機のように、おびただしい数の戦闘機が舞い上がる前に叩きつぶされる。地上の作戦機を防護する掩体(えんたい)が整備されていないからである。また、指揮通信機能を有する基地は、地下化することが必要である。
  (共同)


2022.11.06-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221106-WRI5DOYKCJMM7FMDMB3LY53IQI/
<独自>長射程ミサイル1500基確保 10年後めど

  相手拠点への打撃力を持つことで日本への攻撃を躊躇(ちゅうちょ)させる「反撃能力」の保有を念頭に、防衛省が導入する長射程ミサイルについて、おおむね10年後までに必要量の1500基規模を確保する方向で検討していることが6日、分かった。複数の政府関係者が明らかにした。当面は米国の巡航ミサイル「トマホーク」を購入、長期的に国産ミサイルの量産態勢を整える方針だ。

  防衛省の計画では、侵攻してくる敵のミサイル射程圏外から攻撃できる長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」について、今後5年間で実践的な運用能力の獲得を目指す。その後、おおむね10年後までに、より先進的な装備をそろえ、必要量である1500基規模を確保する。
 スタンド・オフ・ミサイルの柱となるのは、国産の「12式地対艦誘導弾」。百数十キロ程度の射程を中国大陸まで届く1千キロ以上に延伸した改良型を令和8年度以降に運用開始する。
  12式は基本的に地上発射型だが、戦闘機から発射する空発型、艦艇から発射する艦発型も開発する。12式の量産化まで海外輸入品を活用して穴を埋めるため、政府はトマホークの購入を米国に打診している。
  また、これら長射程ミサイルの潜水艦発射型の保有を検討していることも新たに分かった。トマホークは既に潜水艦発射型があり、12式の派生型開発が可能かどうかを検討する。従来型よりも、長射程ミサイルを搭載できるように大型化した試験艦建造も視野に入れる。
  8年度には島嶼(とうしょ)防衛用として開発中の「高速滑空弾」が配備予定だ。マッハ5(音速の5倍)以上で飛ぶ「極超音速誘導弾」の研究開発も進める。これらについて、12式と同様に射程1千キロ以上に伸ばすことを想定している。


2022.11.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221102-L622TQGG3ZJP5HI6WX2UR4TLP4/
島津、防衛事業撤退を検討 採算課題

  島津製作所が防衛関連事業からの撤退を検討していることが2日、分かった。採算性の改善が課題で、令和2年発表の中期経営計画では防衛分野を含む航空機器事業全体を「再編事業」に位置づけていた。

  島津製は航空機に搭載する部品を手がけており、防衛省にコックピットディスプレーなどを納入する。防衛や民間向けを含む航空機器事業の4年3月期の売上高は前期比21・9%減の223億円で営業利益率は0・5%。ほとんどが防衛向けで「選択と集中を推進する」としていた。
  政府が防衛費増額を掲げる一方、防衛関連事業を手がける国内企業は収益性の向上が課題となっている。足元の原材料高も利益の圧迫に追い打ちをかける。今年2月には油圧機器大手のKYBが防衛装備品の製造、修理を含む航空機器事業からの撤退方針を公表した。


2022.10.28-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221028/k10013872721000.html
「トマホーク」政府が購入を検討 いったいなぜ?

  防衛力の抜本的な強化に向けて、政府がアメリカの巡航ミサイル「トマホーク」を購入できないか検討に入ったことが分かりました。政府はいわゆる「反撃能力」の保有も念頭に、敵の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」として陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾の改良型などを量産したいとしています。

  ただ、このミサイルの運用が始まるのは2026年度以降の見通しとなっていることから、政府は十分に配備されるまでの抑止力や対処手段としてアメリカの巡航ミサイル「トマホーク」を購入できないか検討に入りました。
  「トマホーク」について政府はアメリカ軍が各地の軍事作戦で運用しており高い信頼性があるとしていて、与党やアメリカ政府などと購入に向けて丁寧に調整を進めていく方針です。
  一方、政府はいわゆる「台湾有事」を念頭に人員や物資を大規模に輸送する能力を増強する必要があるとして、自衛隊の輸送能力を補う目的で確保している民間フェリーの体制を現在の2隻から6隻程度に増やすことも検討しています。
「トマホーク」とは
  防衛省などによりますと、「トマホーク」は、アメリカが開発した射程が千数百キロ以上の巡航ミサイルです。アメリカ軍が1991年の湾岸戦争で実戦で初めて使用し、2003年のイラク戦争や4年前のシリアへの軍事攻撃などでも使用しました。
  艦艇や潜水艦のほか、地上からも発射でき、レーダーで探知されないよう低い高度を維持しながら音速に近い速度で飛び、GPSなどの誘導によってピンポイントで目標を攻撃することができるとされています。現在はアメリカ軍とイギリス軍が保有していて、オーストラリアも去年、トマホークを取得してイージス艦に搭載する予定を明らかにしています。
“反撃能力”をめぐる議論
  いわゆる「反撃能力」は「敵基地攻撃能力」とも呼ばれています。政府はこれまで「敵基地攻撃能力」の保有について、ミサイルなどによる攻撃を防ぐのにほかに手段がないと認められる時にかぎり、可能だとする考え方を示してきました。
  法理論上、憲法が認める自衛の範囲に含まれ、専守防衛の考えからは逸脱しないという見解で、昭和31年には、当時の鳩山総理大臣が「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨だとは考えられない」と述べています。
  ただ、日米安全保障体制のもとでは一貫してアメリカが「矛」、日本が「盾」の役割を担い、日本として、相手の基地の攻撃を目的とした装備を持つことは考えていないと繰り返し説明してきました。
  転機となったのがおととしで、迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備断念をきっかけに、抑止力を向上させるためとして、自民党が相手領域内でも弾道ミサイルなどを阻止する能力の保有を含め、早急に検討して結論を出すよう政府に求めました。
  ことし4月には自民党の安全保障調査会が「敵基地攻撃能力」について「反撃能力」に名称を変更したうえで保有し、対象範囲は基地に限定せず、指揮統制機能なども含めることを盛り込んだ政府への提言をまとめました。
  岸田総理大臣は今月24日の衆議院予算委員会で「わが国自身の抑止力や対処力を強化していくことが重要だという認識に立ち、いわゆる『反撃能力』を含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的な検討を加速し、年末までに結論を出したい」と述べています。
元海将「国民に理解を得るような説明が必要」
  政府がアメリカからの購入を検討している巡航ミサイル「トマホーク」について、海上自衛隊で司令官を務めた元海将の香田洋二さんは「現存するこのタイプのミサイルでは一番完成度が高いもので、実戦経験に裏付けられていることは間違いない」と話しています。
  そのうえで、射程を大幅に伸ばした陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾」の改良型の導入が、2026年度以降の見通しとなっていることに触れ「近々の安全保障環境を考えたときに、トマホークを先に導入して、ある意味2段構えで長射程の攻撃能力に空白域を作らないという考えで進めているのではないか」と指摘しています。
  一方、いわゆる「反撃能力」の保有も念頭に、長射程のミサイルを持つことについては「憲法問題も含めて、安全保障・国防というのは国民の意見が集約されている訳ではない。安全保障の問題に理解が深まっていることをよいことに走るのではなく、国民に対してアプローチをして理解を得るような説明が必要だ」と指摘しています


2022.10.16-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221016-T7NJXT62W5N3ZE4AYJ3NNQRPSU/
<特報>空自軍用機で部品「共食い」3400件超 整備費不足深刻

  航空自衛隊が航空機を整備する際に部品の在庫が不足し、整備中などで使用していない他の機体から部品を外して転用するケースが昨年度中に約3400件超あったことが16日、防衛省のまとめで分かった。こうしたケースは「共食い」と呼ばれ、使用可能な装備品の割合(可動率)が低下する原因にもつながる。年末に向け、政府・与党が進める防衛力強化に向けた議論にも影響を及ぼしそうだ。

  空自は戦闘機や輸送機、ヘリコプターなど約400機超の軍用機を保有する。装備の近代化や高度化で調達単価が上昇し、高い高度からレーダーで一定空域の監視を行う早期警戒機は、平成2年度契約の前世代機が約99・4億円に対し、28年度契約の最新型は約259・8億円と約2・6倍に膨らんだ
  このため整備費不足で部品の在庫不足が生じ、「共食い」による部品転用が10年以上前から常態化した。事態を重く見た防衛省が今年4月以降に調査したところ、平成24年度に約2千件だった「共食い」の件数は年々増え、30年度には約5600件に増加した。
  解決には整備費確保が欠かせない。防衛省は来年度予算の概算要求で1兆1288億円を計上したが、額を示さない「事項要求」で積み上げを図る。同省幹部は「共食いは一時しのぎの代替措置で本来あってはならないことだ」と話した。


2022.10.09-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/2c88f049b43533aff5dd73dac80d4dc076b6af4f
北ミサイル激化、防衛強化は新造艦が柱-(市岡豊大)

  北朝鮮が9月下旬から異例のペースで弾道ミサイル発射を繰り返している。政府が年末に向けて進める防衛力強化の議論では、ミサイル防衛(MD)は最重要課題だ。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備断念を受けて新造される「イージス・システム搭載艦」が柱だが、極超音速ミサイルなど現状のMD突破を狙った中国やロシア、北朝鮮の新型兵器への対処が焦点となる。

  「ここ数日でも立て続けに弾道ミサイルを発射しており、挑発を執拗(しつよう)かつ一方的にエスカレートさせている」。
  井野俊郎防衛副大臣は9日未明、異例の午前1時台に弾道ミサイルを発射した北朝鮮を非難した。北朝鮮は9月25日以降、過去にないペースで発射を繰り返し、10月4日には5年ぶりに日本上空を通過するミサイル発射に踏み切った。
  現状、弾道ミサイルの迎撃態勢は2段構えだ。1段目は日本海上のイージス艦から発射する迎撃ミサイルSM3。2段目は落下してくるミサイルを迎え撃つ「地対空誘導弾パトリオット(PAC3)」
  エンジンの推力で低高度を飛ぶ巡航ミサイルには「03式中距離地対空誘導弾改善型(中SAM改)」などで対処する。 防衛省はSM3やPAC3の迎撃範囲を広げた改良型の配備を進める一方、レーダーの高性能化を図る。
  「イージス・アショア」で配備予定だった新型レーダーを搭載する新造艦は基準排水量約2万トン、全長約210メートル、全幅約40メートルで「過去最大級の大きさ」(防衛省幹部)となる。 大きさを生かし、多数の垂直発射装置(VLS)などを備える。
  敵のミサイル圏外からでも攻撃できる長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」を含め、あらゆるミサイルを搭載したMDの基盤として整備する。令和6年度に建造を開始し、9年に1隻目、10年に2隻目を就役させる予定だ。
  だが、北朝鮮などが開発を進める極超音速滑空兵器(HGV)には強化したMDでも対処が難しいマッハ5(音速の5倍)以上で飛ぶHGVはレーダーが探知しにくく、かつ変則軌道を描くため迎撃しづらいからだ。北朝鮮が6日に発射した弾道ミサイル1発の弾種は不明だが、低高度で変則軌道を描いたとみられる。 防衛省は来年度予算の概算要求に「HGV対処の研究」を計上し、金額を示さない事項要求として年末にかけて上積みを図る。敵拠点への攻撃力を持つことで相手に攻撃を躊躇(ちゅうちょ)させる「反撃能力」だけでなく、HGV対処も喫緊の課題だ。(市岡豊大)


2022.10.08-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221008-TJLSYH5R7BPMNGBLN3774TDIRI/
〈独自〉空自機の離着陸料徴収 名古屋空港 県営化後に140億円

  航空自衛隊小牧基地(愛知県小牧市)の輸送機などが滑走路を使う隣接の「県営名古屋空港」で離着陸料を愛知県に徴収されていることが8日、分かった。徴収額は平成17年から昨年度までで約140億円に上る。専用滑走路ではなく民間航空機と滑走路を共同使用する空自基地は、空自によると全国に7カ所あるが、離着陸料を徴収されているのは名古屋空港だけで、軍用機に離着陸料を科すのは「世界でも例がないのでは」と指摘される。

  県名古屋飛行場条例に基づき、空自が昨年度に徴収された離着陸料は8億5千万円。午前7時から午後10時までの空港の運用時間外に離陸すれば時間外離陸料も徴収されている。
  県は「有事」で空自機が離着陸しても「離着陸料を徴収する」とし、「滑走路の修繕費などを捻出するため」と説明する。
  小牧基地には空自の第1輸送航空隊がある。C130輸送機とKC767空中給油・輸送機を運用し、空輸任務の重要拠点だ。中国による南西諸島侵攻や台湾有事では離島の住民や台湾在住の邦人を輸送することや、空中給油を行う任務が想定される。
  名古屋空港は17年の中部国際空港(常滑市)の開港に伴い、設置管理が国から県に移行した。空港を存続させたいという地元の要望からだった。
  県営以前は昭和27年から運輸省(現国土交通省)が管理していた。管理は航空管制や消防機能、滑走路の修繕で、県営になる前は国交省が主に担い、空自から離着陸料を徴収していなかった
  国管理から県営に移行する際の経緯を知る防衛省OBによると、政府は自衛隊に管理を移そうとしたが、自衛隊の権限強化につながると反対の声が地元であがった。それを受け、県が管理する案が浮上した。

  だが、県が管理しても航空管制と消防機能を担う能力がなく、空自に任された。県は滑走路の維持管理を受け持つことになり、それにより離着陸料の徴収を空自に求めてきた。
  衛省・自衛隊は「航空管制も消防機能も空自に任せながら、離着陸料を徴収するのはおかしい」と強く抵抗したが、県に押し切られた。
  政府高官は「国防を担う組織に航空管制などを担わせた上、離着陸料を徴収するというのは世界中で聞いたことがない」と疑問視する。


2022.10.05-サンスポ-https://www.sanspo.com/article/20221005-ZX6QSLBXRNKCFMBUW24SK6VTZI/
Jアラートの改善求める 誤発信で小池都知事

  北朝鮮の弾道ミサイル発射を巡る全国瞬時警報システム(Jアラート)の東京都島しょ部への誤発信を受け、小池百合子都知事は5日、速やかな不具合解消と、自治体への説明などを求める要望書を国に提出した。

  要望書は、誤発信が「的確な避難の妨げになる上、Jアラートへの都民・国民の信用を失わせることとなりかねない」と指摘。不具合の詳細や、システムの改善状況を地方公共団体に説明し、訓練によって実効性を確保することを要請した。
  また適切な避難・警戒のためには、現在の発信情報では不十分だとして、ミサイルの到達予定時刻や通過地点なども迅速に提供するよう求めた。


軍需企業の一覧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


日本の企業(下記が日本においてのこの方面で著名な企業の一例である。)(「日本の軍需産業」も参照)
燃料-太陽石油 昭和シェル石油 コスモ石油 出光興産 キグナス石油 イチネンケミカルズ
繊維・石油化学-帝人 日油 東洋紡 - 防弾チョッキ・被服 東レ - 防弾チョッキ・偽装網 中国化薬 高見製函 - 弾薬箱 横浜ゴム 東洋ゴム工業 旭化成 ユニチカ 大阪染工 - 迷彩服 ブリヂストン 日本グッドイヤー クラレ 島田理化工業 小川テント 帝国繊維 トスコ 重松製作所 興研 藤倉航装 武田薬品工業 制服のフジ - 制服 リーガルコーポレーション - 短靴 アサヒコーポレーション - 短靴 ミドリ安全 - 半長靴 日本官帽制帽 - 制帽 オカモト 住友ベークライト 太陽工業 - 偽装網
電気・精密機器三菱電機 日本電気 富士通 理研計器 東芝 東芝インフラシステムズ - 2017年分社化 ソニー キヤノン セイコーエプソン セイコーインスツル シャープ エレコム エンゲルス 日本HP サンワサプライ バッファロー サン電子 日本通信 インターネットイニシアティブ アイ・オー・データ機器 センチュリー 日立製作所 日立国際電気 住友電気工業 沖電気工業 ニコン - 双眼鏡・狙撃用スコープ・戦車用光学照準装置など 日本アビオニクス 島津製作所 リオン デンヨー アンリツ 日本無線 長野日本無線 ナックイメージテクノロジー ノビテック ケーイーエス 川村精管工業 キーコム 菊水電子工業 極東貿易 アイコム リコーエレメックス アジアグロースキャピタル 森尾電機 イメージワン いすゞ製作所 セイコーホールディングス - 時計 カシオ計算機 - 時計 ケンテックス - 時計 ムラコシ パナソニック 不二越 日本精工 光洋精工(現・ジェイテクト) 村田製作所 小糸製作所 AGC - 旧・旭硝子。2018年7月社名変更。 KYB - 旧・カヤバ工業。2015年社名変更。
艦船・航空機・火器・弾薬豊和工業 日本工機 - 弾丸 ジャムコ 昭和金属工業 - 銃弾 細谷火工 日本化薬 ダイセル 中国化薬 石川製作所 - 機雷 関東航空計器 - 2017年完全子会社化 渡辺鉄工所 - 水上魚雷発射管・擬製魚雷 鷹取製作所 東京計器 東京航空計器 リコーエレメックス - 砲弾・ミサイルなど 旭精機工業 - 弾丸 ダイキン工業 大石電機工業 - 電気機器 三菱重工業 三菱重工マリタイムシステムズ - 旧・三井造船→三井E&S造船。 トーカン 川崎重工業 IHI - 旧・石川島播磨重工業。2007年7月改称。 IHIエアロスペース - ロケット・モーター(元日産自動車の航空宇宙部門) SUBARU - 旧・富士重工業。2017年4月社名変更。 ジャパン マリンユナイテッド ナカシマプロペラ- 潜水艦・艦船推進器など 佐世保重工業 神戸製鋼所 日本製鋼所 ヤマハ発動機 日本飛行機 新明和工業 昭和飛行機工業 住友精密工業 ヤンマー ミネベアミツミ
自動車・建機トヨタ自動車 - 高機動車、1.5t救急車 三菱自動車工業 - 0.5tトラック いすゞ自動車 - 3.5tトラック 三菱ふそうトラック・バス - 7tトラック、特大型運搬車、重レッカ 日産自動車 - 業務車 UDトラックスジャパン - 燃料給油車 カワサキモータース - オートバイ スズキ - 業務車 本田技研工業 - オートバイ 東邦車輛 - 旧・東急車輛製造 - トレーラー アイチコーポレーション - 道路障害作業車(作業部) 小松製作所 - 装甲車、偵察警戒車、指揮通信車、軽装甲機動車、油圧ショベル、ブルドーザー、砲弾 キャタピラージャパン - 油圧ショベル、ブルドーザー、ホイールローダー 日立建機 - 油圧ショベル、対戦車地雷施設装置 KCM コベルコ建機 - 油圧ショベル、トラッククレーン 三井三池製作所 - 坑道掘削装置 タダノ - トラッククレーン 加藤製作所 - トラッククレーン 協和機械製作所 - 残雪除去器材(プラウ付) 大原鉄工所 - 雪上車 ヤナセ 諸岡 - 不整地運搬車 モリタホールディングス ソーシン - 0.25tトレーラ、車両架装 ジーエムいちはら工業 - 救難消防車 小平産業 - 2t弾薬トレーラ、1t水タンクトレーラ 日本トレクス - トレーラ オノデラ製作所 - 残雪除去器材(プラウ付) 長野工業 - 小型ショベル 第一実業 - 破壊機救難消防車 明電舎 - 移動電源車 JALUX - ハイリフトローダー ナルコ岩井 - 架橋
衛生器材白十字 - 救急救護セット等 松吉医科器械 - 野外生命維持セット等 池本理化工業 - 移動式医療システム等 荏原実業 - 野外手術システム等 イワツキ - 治療システム等 小竹医科器械 - 手術機械セット等 川本産業 - 治療セット等 協和医科器械 - 移動式医療システム キャノンマーケティングジャパン - 野外手術システム等 アルフレッサメディカルサービス - 治療セット等 東邦商工 - 野外手術灯等 新成物産 - 個人携行救急品 日本光電工業 - 個人携行救急品等 ノムラ - ガソリンバーナー等 ヘリオサージカル - 医官用医療のう等 山甚物産 - 車載型動力噴霧器 轟産業 - 個人携行救急品 イノメディックス - AED等 オリンパスメディカルサイエンス販売 - 移動式医療システム 日昭産業 - 循環器等検診 アズワン - 循環器等検診 東洋器材科学 - 循環器等検診 テルモ - 循環器等検診 日本ベクトン・ディキンソン - 循環器等検診 常光 (企業) - 循環器等検診 フクダ電子 - 心電図 日本メディカルプロダクツ - 心電図 サクラファインテックジャパン - 肺癌・胃癌検診 マツナミ - 肺癌・胃癌検診 高島商店 - 肺癌・胃癌検診 東海家田科学 - 肺癌・胃癌検診 武藤化学 - 肺癌・胃癌検診 トーヨー医科工業 - 肺癌・胃癌検診 アジア器材 - 肺癌・胃癌検診 カネボウ - 循環器検診(バリウム) カイゲンファーマ - 循環器検診(バリウム) 東罐興業 - 循環器検診(バリウム) サンナップ - 循環器検診(バリウム) 栄研化学 - 循環器検診(バリウム) ニチバン - 共通 オムロン - 共通 チェスト - 共通 はんだや - 共通 ニチエイ - 胃検診2次・予防接種 モリタ製作所 - 胃検診2次・予防接種 竹虎 - 胃検診2次・予防接種 ニプロ - 胃検診2次・予防接種 シントー化学 - 胃検診2次・予防接種 サラヤ - 定期健康診断 トヨダプロダクツ - 定期健康診断
戦闘糧食井口食品工業 - 副食パック エム・シーシー食品 - 副食缶 ハウス食品 - 副食缶、副食パック 群馬県食肉公社 - 副食缶 讃岐缶詰 - 主食缶・副食缶 気仙沼ほてい - 副食缶 九州食糧品工業 - 副食缶 土谷食品 - 副食缶 日東ベスト - 副食缶、副食パック 二幸 - 主食缶・副食缶、主食パック 八戸東洋 - 主食缶・副食缶 東洋水産 - 主食パック フクシマフーズ - 主食缶・副食缶、主食パック・副食パック ホリカフーズ - 副食缶・副食パック シマダヤ - 主食パック クラシエフーズ - 副食パック 菜華 - 副食パック 山崎製パン - クラッカー、乾パン 東邦食品 - 乾パン 三立製菓 - 乾パン 日本ハム - 主食缶・副食缶、副食パック 宝幸 - 副食缶 明星食品 - 主食パック 永岡商事 - 副食パック 丸紅 - 副食パック 国分グループ本社 - 副食パック
コンピューターシステムNTTデータ
その他
総合商社伊藤忠商事 三菱商事 五洋商事 丸紅 山田洋行 日本ミライズ ジュピターコーポレーション
専門商社ーパイロット 住商エアロシステム 銀座銃砲店 - 小火器・弾薬など 伸誠商事 - 野外炊具など 蝶理 - 88式鉄帽・曳航索・係留索など
分類不明SHOEI - 航空機用ヘルメット アライヘルメット エヌ・エス・アール ‐ 専門サービス業 スターライト工業 マッキンリーネクスト - 野外炊具







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