日本の防衛問題-1
2025.07.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250702-DVRHFK35AROHNOQZFPIC363A4U/
米、日本に「防衛力強化の重要性」を提起 関税協議後押しで一致 外相会談
【ワシントン=坂本一之】日米両外相は1日、米ワシントンで会談し、日米同盟の抑止力、対処力の強化を図っていくことで一致した。
ルビオ国務長官が「防衛力強化の重要性」を提起し、岩屋毅外相は「日本自身の判断として防衛力の抜本的強化を進めていく」との考えを伝えた。トランプ米政権の関税引き上げ政策についても議論し、担当閣僚の関税協議を後押しすることを確認した。
ルビオ氏は、トランプ政権が米国の同盟国に防衛費増額を要求していることを巡り、日本にも防衛力強化の必要性を訴えて防衛関連支出の拡充を求めた格好だ。
岩屋氏は会談後、記者団に対し「防衛費の具体的金額などについてのやり取りはなかった」と説明した。第1次トランプ政権で日本に増額を求めた在日米軍駐留経費に関しても「特段のやり取りはなかった」と述べた。
両外相は会談で、地域情勢として軍事的覇権の拡大を図る中国を巡る課題について意見を交わし、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を確認した。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に関しては「北朝鮮の完全な非核化に向けての確固たるコミットメント」を確認。岩屋氏が日本人拉致問題の即時解決への協力を求め、ルビオ氏が応じた。
また、
日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)の開催を調整し、日米豪印や日米韓、日米比といった多国間枠組みの連携を進めていくことで一致した。
2025.06.12-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250612-D5FNMZAJCZIBTIKT7C22WLCJUQ/
空母2隻同時展開「中国の空と言わんばかり」 中国軍複数機付きまといで自衛隊員
(市岡豊大)
「40分、80分という時間を追従し、それも2日連続で起きた。そういう行動を故意に取っていると受け止めている」。
自衛隊制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長は12日の記者会見で、中国軍機の行動について、こう分析した。
「冷や汗かく距離」
海上自衛隊のP3C哨戒機に2日連続で異常接近した中国軍のJ15戦闘機は、いずれも大陸から1500キロ以上離れた沖ノ鳥島付近へ進出した海軍空母「山東」から発艦した。
防衛省によると、最初の異常接近は7日。山東を発艦したJ15が1機で約40分間かけて複数回、左右に接近したり離れたりしながら後を追いかけ、機体の左側約45メートルの距離まで近づいた。8日は1機が約80分間かけて追従し、右側約45メートルまで接近。離れる際に前方約900メートルの場所を同じ高さで左から右へ横切った。この日は、別の戦闘機も追従に加わったという。
距離45メートルについて空自パイロットは「見知らぬ人が横に肩を並べて歩いてきたような冷や汗をかく距離感」と表現。当時、中国軍は空母2隻を初めて西太平洋へ同時展開しており、空自関係者は「ここは中国の空だと言わんばかりだ」と嘆息する。前方を横切る行為は乱気流によってエンジン異常を起こす危険もある。
P3Cは山東など計5隻に対する警戒監視中だった。海自機からは無線で「公海上の適正な任務飛行である」といった趣旨の交信を試みたとみられる。防衛省は交信内容を明かしていないが、山東とは安全距離を保っていたと説明している。
挑発繰り返す
中国軍機は近年、米軍機や同盟国軍機への挑発行為を繰り返している。今年2月には南シナ海上空でオーストラリア空軍のP8A哨戒機に対し、中国空軍のJ16戦闘機が約30メートルの距離に近づき、ミサイル回避用の火炎弾「フレア」を発射した。
また、米国防総省は2023年、中国軍機の異常接近が過去2年で180件以上あったと公表。搭乗員の顔が分かるほどの接近や米軍機前方を横切るなどの例があった。
当時、
別の中国海軍空母「遼寧」が対米防衛目標ライン「第2列島線」を初めて越え、西太平洋で空母2隻が同時展開していた。明海大の小谷哲男教授(安全保障論)は
「新たな海域に進出した中国軍による『正当な訓練を妨害するな』という牽制だと推測される。
空母打撃群の運用態勢を整え、自信を付けつつあることの表れではないか」と話した。
(市岡豊大)
2025.06.12-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250612-BJDD4K7YXFJPFHRHFWX2YLAMNY/
「日本の接近偵察が根本原因」 中国外務省、海自哨戒機への異常接近で責任転嫁
【北京=三塚聖平】中国外務省の林剣報道官は
12日の記者会見で、中国軍の戦闘機が太平洋上で海上自衛隊の哨戒機に異常接近していたことに関し、「日本の艦艇や軍用機が、中国の正常な軍事活動に対して接近して偵察していることが
海空の安全に関するリスクを引き起こしている根本原因だ」と述べて反論した。
日本側に「危険行為」をやめるよう求めると主張した。
林氏は、中国軍戦闘機の活動に関して「関係する海空域で活動を行うことは国際法と国際慣例に完全に合致している」という従来の主張を繰り返した。同時に、今回の異常接近に関して「両国の国防部門が既存のルートを通じて意思疎通を保っている」とも表明した。
日本の防衛省は11日、中国海軍の空母「山東」の艦載機が太平洋上で7、8日に警戒監視を行っていた海上自衛隊の哨戒機P3Cに異常接近していたと発表した。
日本政府は中国側に深刻な懸念を表明し、再発防止を申し入れた。中国軍機の異常接近は平成26年以来だった。
2025.06.12-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250612-M4LPPQNKLZPP3DFMVETCEUTKFM/
中国戦闘機の海自機接近で外務事務次官が駐日中国大使に「深刻な懸念」表明、再発防止要求
林芳正官房長官は12日の記者会見で、
中国戦闘機による海上自衛隊哨戒機への接近を巡り、偶発的な衝突を引き起こす可能性があるとして外務省の船越健裕事務次官が中国の呉江浩駐日大使に「深刻な懸念」を表明、再発防止を厳重に申し入れたと明らかにした。
「中国側とさまざまなレベルで意思疎通を行っていく」とも語った。
2025.05.22-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250522-U77ZZDZOZNG4TLXELJEOSMCIR4/
「極超音速」で弾丸発射 電磁砲「レールガン」の模型、試射映像も 防衛装備庁が見本市で
千葉市で開催されている防衛装備や兵器の見本市「DSEI Japan」で、
防衛装備庁は電磁砲「レールガン」の模型や試射に関する映像を出展している。
開発中のレールガンは、電気エネルギーで弾丸を発射する最新兵器。
従来の火砲を大きく上回る弾丸の速度や射程距離を実現できる可能性があり、他国による極超音速兵器の迎撃にも有効だと期待されている。
レールガンは、砲身内のレールに電流を流し、発生した電磁力で弾丸を加速させる。防衛装備庁の担当者によると、戦車の主砲による弾丸の初速が秒速1000メートル程度のところ、同庁によるレールガンの試射では、秒速2000メートルを記録した。秒速1700メートルが「マッハ5」に相当し、これ以上が「極超音速」とされる。弾丸が速ければ威力も大きく、貫通力に優れる兵器と言える。
射程距離は従来火砲の2~3倍という。
防衛装備庁のブースに展示されている模型は艦載を想定した形状。
艦載の対空レールガンが実現すれば、極超音速誘導弾への対処を含む多層的な防空が期待できるという。レールガンは米国や中国、ドイツなどでも研究開発が行われ、各国が配備に向けて競争している。
DSEI Japanは23日まで、千葉市美浜区の幕張メッセで開催される。
2025.05.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250503-BTGAHMR74FOB3OOGZHFMZO47O4/
中国海警、尖閣諸島周辺でのヘリ離陸認める 「領空に入った日本の民間機に警告」と主張
【北京=三塚聖平】中国海警局(海警)は
3日、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で同日、海警船が巡行中に日本の民間機が中国の領空に入ったことを発見し、艦載ヘリコプターを離陸させて「警告、駆逐」したと主張する
報道官談話を発表した。
談話は、海警船が定期巡行していたところ、日本の民間機が「中国側の釣魚島(尖閣諸島の中国側名称)の領空に不法に入った」ことを確認したと主張した。これを受けて海警船が「直ちに法律に基づく必要な管理、コントロール措置を講じた」としている。「日本の民間機」の詳細については明らかにしていない。
海警の報道官談話は
「釣魚島とその付属島嶼は中国固有の領土だ」という従来の主張を繰り返した上で、日本側に「一切の違法な活動を直ちにやめる」ことを求めた。
同時に「海警は釣魚島の領海、領空で権益を守る法執行活動を引き続き行い、国家の領土主権と海洋権益を守る」とも強調した。
2025.05.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250503-I7RTYR7MBROTHHX6M46RZQMJFY/
空自戦闘機がスクランブル 尖閣周辺で中国海警局船からヘリが発艦 政府は厳重抗議
防衛省は
3日、沖縄県・尖閣諸島周辺で同日午後、領海に入った中国海警局の船からヘリコプター1機が飛び立ち、領空侵犯したと発表した。
航空自衛隊のF15戦闘機2機が緊急発進(スクランブル)して対応した。
中国による領空侵犯は4回目。政府は外交ルートで中国側に厳重に抗議し、再発防止を求めた。
防衛省や第11管区海上保安本部(那覇)によると、船は4隻で、3日午後0時20分ごろから相次いで領海に侵入。ヘリはうち1隻から発艦し、約15分間飛行した。同時刻ごろに日本の民間小型機が周辺を飛んでおり、防衛省は関連を調べる。
11管によると、4隻は午後1時ごろまでに領海外側にある接続水域に出たことを海上保安庁の巡視船が確認した。中国当局の船が尖閣周辺で領海侵入したのは4月7日以来で、今年11日目。
4隻はいずれも機関砲を搭載。領海から出るよう巡視船が要求した。
接続水域を含め、尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは166日連続。
2025.04.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250415-PF3QIVAYUZEAJKACTHCHT273FA/
「唯一の空白県」奈良に陸自駐屯地を 参院委で地元議員要望 中谷防衛相「今後とも検討」
47都道府県で唯一、陸上自衛隊の駐屯地がない奈良県選出の堀井巌参院議員(自民)が15日の参院外交防衛委員会で、奈良への駐屯地配置を要望した。
中谷元・防衛相は検討すると述べるにとどめた。
奈良県には航空自衛隊幹部候補生学校がある奈良基地が存在するが、陸自駐屯地はない。県内の災害派遣は京都府宇治市の大久保駐屯地が担当している。
県は荒井正吾知事時代の平成19年から、五條市を誘致先として国への要望を行ってきたが実現しなかった。荒井氏は30年、誘致候補地に2千メートル級の滑走路を持つ大規模広域防災拠点を整備する計画を発表するも、令和2年以降は要望を中断。山下真知事が昨年6月、4年ぶりに防衛省に要望書を提出していた。
中谷氏は「奈良県が整備を計画している防災拠点の利活用をしっかり検討したい」とした上で、
駐屯地について「(陸自の)人員などが限られている中で、直ちに応えることは困難だが、地元の要望もあり、今後とも検討したい」と述べた。
2025.04.06-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250406-5B3NBIGUVVPQJLFB6WV7YUWOZU/
<独自>台湾有事を想定、空自戦闘機が中国艦を攻撃 日米共同演習の概要判明
自衛隊と米軍が
昨年2月に実施した日米共同指揮所演習「キーン・エッジ」で、
台湾に侵攻する中国軍艦艇に対し、自衛隊機がミサイル攻撃を行う判断が下されたことなど演習の概要が6日、判明した。
日米共同演習で本格的に台湾有事を想定したのは初めて。
演習の結果は有事の際に自衛隊や米軍が行動する際の指針となる作戦計画に反映されているとみられる。
複数の関係者によると、演習は中国が台湾侵攻に着手するシナリオの下で、陸海空自衛隊を一元的に指揮する統合作戦司令官が存在する前提で進められた。今年3月の統合作戦司令部発足に向けた準備という意味合いもあった。
演習では、中国軍が台湾に侵攻するとともに、米軍佐世保基地(長崎県)などを攻撃。日本側は「組織的かつ計画的な武力攻撃とまでは言えない」とし、個別的自衛権を行使する条件となる「武力攻撃事態」の認定は見送った。ただ、
台湾有事は日本の存立を脅かす「存立危機事態」と認定し、集団的自衛権に基づき武力を行使する条件が整った。
これを受けて
米側は台湾海峡を航行する中国軍の強襲艦隊を攻撃するよう要請した。
日本側は要請を受け入れ、航空自衛隊の戦闘機が空対艦ミサイルで中国軍の輸送艦を攻撃した。
自衛隊内部では台湾海峡の中国艦よりも、中国軍空母の攻撃を優先させるべきだという声もあったが、
演習時点で中国軍が運用していた空母は攻撃対象として優先順位が低いと判断した。
演習では、中国軍が与那国島(沖縄県)に上陸するシナリオも組み込まれた。
陸上自衛隊は与那国島を含む南西諸島の防衛を強化するため増援部隊を九州に派遣。部隊を運ぶ陸自輸送機が離着陸することを想定した基地滑走路を空自戦闘機も使ったため、どちらを優先させるか意見が割れる場面もあったという。
キーン・エッジは2年に1回行われる
。昨年2月の演習にはオーストラリア軍も初めて参加し、「過去とは一線を画する、質的に高い演習だった」(吉田圭秀統合幕僚長)。
日米両政府は台湾有事を想定した作戦計画の策定作業を進めており、演習の結果を参考材料の一つとしている。
2025.04.01-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250401-SSDMMNLXNZMRJG2ERWSZACTIXU/
<独自>日英伊共同開発の次期戦闘機にインドも参画意欲 日本は受け入れに慎重
日本、英国、イタリアによる次期戦闘機の共同開発に、
インドが参画の意欲を示していることが1日、分かった。
インドから日本政府に参画の可能性を探る打診があった。ただ、インドは伝統的にロシアとの関係が深く、技術流出の恐れなどがあるとして日本政府は受け入れに慎重な考えだ。
複数の日印外交筋が明らかにした。日英伊は、2022年12月に次期戦闘機の共同開発で合意。開発計画は「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」と呼ばれ、35年までの配備開始を目指している。
次期戦闘機の共同開発・生産には巨額の費用がかかるが、インドが参画すれば市場が広がり、日英伊の負担軽減につながる。ただ、
参画国が増えれば機体配備の遅れや、機密情報の共有に関する懸念が生じる可能性が高まる。
インドとしては次期戦闘機の共同開発に参画することで、最新の軍事技術を習得する狙いもありそうだ。インドは長年ロシア製兵器を多数導入してきたが、近年は自律性を高めるため、兵器の国産化に取り組んでいる。
インドの参画が実現した場合、日印の防衛協力が深まり、共通の脅威となっている中国への抑止力向上につながりうる一面もある。一方、日本政府内では「技術を抜き取られるだけではないか」(防衛省幹部)と警戒する声も根強い。
中谷元・防衛相は今春の大型連休でインドを訪れる方向で調整している。
インド政府高官との会談で次期戦闘機の共同開発も話題に出る可能性がある。
日英伊による次期戦闘機の共同開発を巡っては、サウジアラビアが資金提供し、参画する方向で調整が進んでいる。
ロシアや中国のサイバー攻撃による機密情報漏洩(ろうえい)などが課題で、対策に不安もあるサウジは日英伊と対等な形での参画にはならない見通しだ。