レールガン(防衛)-1
2022.01.11-JB Press-https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68370
レールガンに「オワコン」の声、それでも開発する真の狙いとは?(実用性が疑問視される防衛省の運用構想)
(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)
(1)
防衛省がレールガン開発を本格化させます。2022年度より2026年まで研究試作を実施し、並行した試験を2028年まで続けて確認するとのことです。
新年早々にこの件を報じた新聞報道があり、夢の超兵器だと評価する者がいれば無駄遣いだと叩く者もいるなど賛否両論の議論が沸き起こりました。
このレールガン開発の主目的が極超音速ミサイル対処であることに加え、直後に北朝鮮が極超音速ミサイルの可能性がある物体を発射したことから、改めて注目が集まっています。
将来性のある技術なので、研究を行うこと自体には賛成です。しかし、対空兵器、特に対空砲に携わってきた筆者としては、計画されている開発がうまくいったとしても実用性の高い兵器となるのかについては疑問も抱いています。
以下では、
過剰な期待を寄せられているように見えるレールガン開発について、その本当の威力と効果、実用化の可能性などについて考えてみたいと思います。
(2)
レールガンは何がすごいのか?
レールガンは、電磁気力によって物体を加速させて打ち出すガンシステムです。「リニアモーターのような」と表現する報道もあります。入力が電力によって行われ、物体に高速を与えるという点は同じですが、構造は異なります。
装薬を必要とせず、砲弾さえ装填すればよいため、砲弾の管理や装填が容易という利点もありますが、従来の砲と比べて最大の利点とされる点は、砲弾の射出速度を速くできることです。これにより、射程を伸ばすことができます。
戦艦大和の主砲は、砲口初速780m/秒で発射し、砲弾の最大高度は、現代の旅客機が飛ぶ1万2000メートルほどにもなり、射程は42kmでした。現代の各種砲システムでは、初速はもっと速くなり1000m/秒を超えるものも少なくありません。ただし特殊な砲弾を使用しても射程は100kmを多少超える程度です。
これに対し、米海軍が開発しているレールガンでは、砲口初速2500m/秒を目指しており、砲弾の最大高度は完全に宇宙となる高度150km、射程は370kmに達することを目標としています。
防衛省が実施する研究では実用に近いものを試作するようで、砲口初速は、米軍よりも遅い2000m/秒を超えることを目標としています。防衛省が今までに行った研究ではさらに高速を実現できていますし、米海軍では2500m/秒を目標に開発が行われれていることを考えれば、数値としては現実的なものでしょう。
なぜレールガンの開発を行うのか?
さて、
ではこの砲口初速2000m/秒を超えるレールガンは、他の砲と比べて本当にすごいのでしょうか?
(3)
実用されている砲の中で、最も砲口初速が早いのは戦車の主砲です。弾種にもよりますが、速いものでは1800m/秒にも達します。これは、装薬の爆発力によって砲弾を打ち出す砲の理論限界に近い数値です。
単純に砲口初速だけで見れば、防衛省のレールガンは戦車砲を10%ほど強化したものと言えます。また、新聞報道を見たらしい元自衛官参議院議員の佐藤正久氏は、「レールガンとは違いますが、なぜか、思い出しました」としながら、カリブの島国で見た、実験用の砲について、写真付きでツイートしていました。
「HARP」(High Altitude Research Project)と呼ばれるこの砲は、特殊な構造の砲で、通常の砲弾が実現できる理論限界を大きく超える高速の砲弾を撃ち出すことができるものでした。米海軍が開発しているレールガンにも相当する砲口初速を1960年代に実現していました。
さらに、砲の構造だけではなく、装薬を液体化した砲も研究されています。装薬が爆発し、砲弾が砲口側に移動して圧が低下するに従い、さらに液体装薬を注入、爆発させるなどして、高い砲口初速を実現するというものです。自動車やバイクのエンジンで実用化されているフューエルインジェクションのような技術だと考えてもらえばよいでしょう。実用化には難点もありますが、砲口初速を3000m/秒に到達させられる可能性もあります。
砲口初速が最大の利点となるレールガンですが、砲口初速が2000m/秒だけなら、他にも実現する手段はありますし、多少速度が落ちるとはいえ戦車砲並みの砲を複数使用することで、高発射速度を実現することは現時点での技術でも可能です。
では、なぜレールガンの開発を行うのかというと、レールガンの理論限界はまだまだ上であるという点に尽きるでしょう。
(4)
HARPは、砲口初速2500m/秒の米海軍のレールガン程度でしたし、液体装薬での限界も3000m/秒ほどです。現時点の技術では、レールガンの砲口初速は2000m/秒程度に留まらざるを得ませんが、将来は3000m/秒を大きく超える可能性があるためレールガンの開発を行うのです。
防衛省が想定する2つの用途
防衛省は、運用構想として2つの用途を挙げています。「極超音速ミサイル迎撃」と「対艦・対地攻撃」です。
詳しい説明は省略しますが、高速で接近するミサイルを迎撃する際、砲弾を命中させるためには、砲弾の速度が重要となります。
海自が採用する「CIWS」(Close In Weapon System)など、現用のミサイル迎撃用砲システムでは、砲口初速が1000m/秒を少々超える程度です。通常の亜音速や超音速ではあるものの、音速を大きく超えない対艦ミサイルには対処可能です。それでも、1発あたりの命中率は低いため、連射速度を上げたり、目標の至近距離で砲弾を炸裂させる知能化弾を使用し、迎撃確率を上げています。CIWSは連射速度を追求したシステムです。
少々乱暴な説明になりますが、ミサイルの3倍から2倍程度の弾速があれば、命中弾を得ることは可能です。防衛省の試作は砲口初速2000m/秒以上ということなので、現用の対艦ミサイルに対しては、高い命中率を得ることのできるミサイル迎撃用砲システムとなるでしょう。研究の予定には入っていませんが、知能化弾を使用することは容易なので、そうした方向での実用化の際にはそうした付加的手段も用いて迎撃確率を高めることになると思われます。
しかしながら、極超音速ミサイルは、目標に命中する直前、ターミナル段階の最後期は空気抵抗で減速するとはいえ、その名の通り音速を大きく超える速度で飛んでいます。明確な定義はありませんが、通常マッハ5を超える速度とされています。マッハ5は秒速に直せば1700m/秒です。レールガンの弾速と大差ありません。
砲口初速2000m/秒で命中させることは、知能化弾を用いてもかなり困難だろうと思われます。誘導砲弾を利用すれば、可能性が出てくると思いますが、極超音速ミサイル並の速度で飛翔する誘導砲弾を作ることになるため、その開発にも膨大な労力を必要とするでしょう。
対艦・対地は、もっと単純に実用性に疑問符がつきます。
(5)
対地に関しては、射程がたとえ200kmに及んだとしても、そもそも防衛省が開発する40mm口径程度の砲弾では威力が低すぎ、コストが合いません。
対艦に関しては、防衛省の資料では迎撃困難であることをメリットとしています。確かに砲弾が小さく高速であるため迎撃はほぼ不可能でしょう。しかし、弾速が2000m/秒ほどあっても、目標に到達するまでに1分30秒程度の時間を必要とします。第二次大戦時の砲戦でも、戦闘時は回避機動をとっていました。同様に、目標艦艇が回避機動を行えば、狙いが正確であればあるほど、必ず外れます。回避機動を取る敵艦に命中させるためには誘導砲弾が必要となりますが、ミサイルと比べ、破壊力が小さいため結局はコストパフォーマンスが問題となります。
米海軍のレールガンは、基本的に対地用途を想定していますが、既に“オワコン”と判断されているという情報もあります。開発を続けて十分な性能が出たとしても、コストパフォーマンスが悪いと判断されているようです。中国の艦艇では、既に搭載済との情報もありますが、詳細は不明です。
実用性はないのか?
では、実用性はないのでしょうか? 開発する価値はないのでしょうか? 筆者は、そうは思っていません。
上に書いたとおり、
対空目的での使用において極超音速ミサイルを迎撃するのには、今回目指している弾速2000m/秒では不十分でしょう。
しかし、今後のミサイルが全て極超音速ミサイルになるわけではありません。対艦ミサイルは、今後も海面すれすれを飛ぶミサイルが主流でしょう。そうしたシースキミングミサイルは、今まで亜音速のものが主流でしたが、本邦のASM-3など、極超音速には届かないものの音速を優に超え、マッハ2からマッハ3クラスのものが主流になりつつあります。
こうしたミサイルの迎撃には現用のCIWSは能力不足となりつつあり、もっぱらミサイルが使用される傾向となっています。しかし、砲システムによる迎撃が可能であれば、艦の安全性は大きく高まり、戦闘を有利にできるでしょう。弾速が1000m/秒程度しかない現行CIWSでは迎撃が困難でも、弾速2000m/秒に達するレールガンであれば、迎撃できる可能性は十分にあります。
レールガンの理論自体は非常に古くから存在します。それが、最近になって実用化の話になってきたのは、
大容量キャパシタ(コンデンサ)の発達によるものです。半導体は、政府の失策もあって日本の競争力は低下していますが、この分野では、日本は今でもトップクラスです。アメリカも手を付けていないレールガンによるCIWSを実用化できれば、先行が可能ですし、搭載する大量のキャパシタも日本製のモノを使えるでしょう。自衛隊だけでなく、アメリカを含めた各国に売り込むこともできるかもしれません。産業界を考慮した開発である可能性もあります。
また、今後何らかの技術的ブレイクスルーにより、弾速をさらに高速化することができるかもしれません。そうなれば、極超音速ミサイルの迎撃も可能となるでしょう。
佐藤正久氏も、レールガン開発の報道を受けてHARP砲に触れているように、レールガンには必ずしも賛成してはいないのかもしれません。防衛省が開発の論拠としている極超音速ミサイルに対しては、筆者も強い疑念を持っています。
ですが、
これは主に政治家対策のために耳目を集めるキーワードとして極超音速ミサイルを持ち出しただけではないのか、真の狙いは高速対艦ミサイルや航空基地を狙う高速攻撃ミサイル対処ではないか、と睨んでいます。
レールガン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
レールガン(
英:
railgun)は、物体を電磁気力(
ローレンツ力)により加速して撃ち出す装置である。なお、電磁気力に基づく投射様式全般の呼称として、
電磁投射砲(でんじとうしゃほう)や
EML、
電磁加速砲などがある。原理が単純で古くから知られていることもあり、
ビデオゲームをはじめとする
サイエンス・フィクション作品に幅広く登場しており、それらの作中では兵器として扱われることが多い(
レールガンに関連する作品の一覧)。
なお、レールという言葉が含まれているが、いわゆる鉄道や列車砲とは無関係である。
概要
この装置は並行に置かれた2本のレールとなる電極棒の上に弾体となる金属片を乗せて電流を流し、電磁力により金属片を駆動し射出するというものである。磁場を与えるために磁石やコイルが追加されることがある。入力される電力が増え弾体が高速になるにつれ ・レールとの接触を保つのが難しくなる。 ・
空気抵抗と、
摩擦熱、
ジュール熱といった損失が増大する。
といったデメリットが生じる。なお以下に詳しく述べるが、発射に足る電力(主に
電流の量的な問題)の供給も大きな課題となっており、また大電流によってレールや弾体の一部が
蒸発・
プラズマ化するといった問題が生じる。
既に実用化に向けた取り組みが盛んであるが、概念上のもの、または架空のものと「誤解」して扱われる場面が多い。一例として、
後述するように米軍により2016年に電磁加速砲を洋上実験する計画がある。ほかにも2019年現在、米国、ロシア、中国、トルコ、日本などがレールガンの軍事研究を進めていると発表、また開発中の発射映像を公開している。技術的には米軍が兵器分野でリードしており、陸上と艦船で何度もテストを実施している。また、トルコ軍は多種の兵器応用能力を備える電磁砲を開発し、国際防衛見本市で販売している。
原理/構造
単純には、並行に置かれた2本の電極をレールとし、その上に弾体となる金属辺を乗せ、レールのそれぞれを電源の両極につなげば実現する。 ・2本のレールの通電側が銃尾に相当する。 ・銃尾に近いところで、2つの電極両方と触れるように弾体を置く(いわゆる「弾の装填」に相当)ことで電気回路が形成される。 ・電流が流れている間、弾体は、レールの解放端(電流が流れていない側)へ向かう方向に駆動される。
この駆動力は磁場の中に置いた導体に電流を流した時に生じる力、あるいは通電中の導体同士に働く相互作用として
フレミング左手の法則に基づくごくごく一般的なものであり、以下に述べる通り基本原理自体は単純である。
電流によって生じる磁場
レールと弾体によって形成される「コの字」状の回路に通電するとき、電流を取り巻く磁場が考えられる。電流によって生ずる磁場の方向は、「右手の親指を電流の方向に沿わせたときに他の4指が巻く向き」である。「コの字」の収まる面内で弾体の周囲に着目すると、磁場の向きは面に垂直でかつ、「コの字」の内側と外側で逆向きになっている。
さらにいうと「コの字」の角の部分の内側が特に磁場が強く、これが駆動に寄与する。弾体の内部に分布する駆動力は一様ではなく、レール方向に対し減速する方向や横向きに働く部分もあるが、前述の『「コ」の字の角の内側』が支配的であり、弾体を加速させている。
(※高出力を得るためには、レール電流の他に追加の磁場源(磁石や電磁石)を置くほうが容易である。)
電流と磁場と駆動力の関係
一様磁場を仮定した場合、金属片に働く駆動力Fは、磁束密度をB
、 電流強度をI
、 レール間隔をl
とするとき F=lLxB
で与えられる。
これはレールガンに照らし合わせると、電流によって生じる磁場が無視できるほどの強磁場が加えられている場合、「電流の方向」と「磁場の方向」の両者が収まる平面を考えたとき、その平面に対して直交する方向に駆動する。これらは ・「電流の方向」と「磁場の方向」とが互いに90°で直交するときに最大の駆動力が得られる。 ・駆動力は、レール間隔、電流強度、磁束密度それぞれに比例する。ことを意味する。
さらに以下のような条件が加わる。 ・レールと弾体のみで構成する場合の磁場は一様とはほど遠いから、局所ごとに上の式に従うと考えられる。 ・レールと弾体のみで構成する場合は磁場も電流に概ね比例するから、
電流の2乗に比例した駆動力となる。 ・レールと弾体のみの場合、弾体を加速する電磁力は、主に、レールと弾体の接点近傍に集中する。さらに、直線導体のみで強磁性体を介さない機構であるため、コイルや磁石を用いたリニアモータに比べて大電流を必要とする。 ・実際には、回路で生じる磁場とは別に磁束源を足した方が高出力を得やすい。 ・通電し弾体が駆動されているとき、2本のレール棒についても、それぞれ互いに遠ざかる方向に駆動されるため、これに耐えるよう固定する必要がある。 ・弾体はレールと接触している間は駆動し続けるため、原理上はレールが長いほど発射速度を上げられる。
投射される物体は必ずしも電気伝導体である必要はなく、この金属箔を貼り付けた非導電性個体をもちいる様式もある。プラズマなどを駆動媒体とし、非導電性の弾体を飛ばすことも可能。
なお、プラズマを駆動体に用いる場合は、プラズマが弾体を追い越して漏れないよう、一般の火薬ガンやガスガンと同様かそれ以上に気密性に富んだ「砲弾形状に合わせた砲身」が必要となる、ただしレールガンの砲身は電気
絶縁性が要求される。実際に開発・利用されているレールガンでは、プラズマ化に伴う膨張力(→
圧力)や
熱などに耐えられなければならず、またプラズマ化に伴う膨張圧も弾体の加速に利用する場合は、
尾栓に相当する部品を必要とし、これは非伝導体である必要がある。なお、単純にプラズマ膨張圧のみを弾体加速に用いる形式は、
サーマルガンと呼ばれる別形態の装置である。
特性(利点/欠点)
利点-弾丸がミサイルと比較し安価であり、火薬による砲弾の限界を遥かに超える高速度、かつ長射程を得やすい
欠点-接触型ということもあり他の電磁駆動に比べて損失が大きく電源要求が大きい
レールガンが打ち出す弾体の速度は、単純化された理論上は電流/磁場強度とレール長に依存する。実際にはレール長が十分であれば電磁力と摩擦等の各種損失がつりあう速度が最大速度となる。損失が無視できる条件下では、加速度は電流と磁場の強度に依存する。次のようなレールガン特有の損失があり、これらは弾速上昇にともない増大する。 ・速度表皮効果(後述)によって投入エネルギーの多くが
ジュール熱として奪われる。 ・温度上昇や、接触不良により不要なプラズマが発生する。
また、大電流の供給、加速距離やレールの
摩擦・
電気抵抗・耐熱限界といった点に物理的・技術的制約がある。
到達速度
1960年代には、
オーストラリア国立大学に所属する
リチャード・マーシャルらのグループが550メガ
ジュールを入力した長さ5メートルのレールガンによって、3グラムの弾丸を5.9
km/s ( = 5,900m/s) での射出に成功した。なお、21世紀初頭には最大速度8km/s程度のものが開発されている。
比較として火薬を使う火器の弾丸の射出速度を記すと、 ・
拳銃 230 - 680m/s ・
ライフル銃 750 - 1,800m/s程度 ・戦車砲 120mm/L52の仏GIAT製滑腔砲に
APFSDSであるOFL120F1タングステン徹甲弾では1,790m/s ・火薬と水素を使った
ライトガスガン 6 - 7km/sである。
火薬を使用する
火器では、燃焼によって生じる熱エネルギーの大半が弾体の駆動に寄与せず、また弾体の速度はガスの膨張速度を超えられない。最新の爆薬を使ってせいぜい2km/s程度である。これらと比べて、現状の実験段階のレールガンでも遥かに大きい発射速度が得られる。
速度表皮効果
導体内の磁場が変化するとき、磁場の変化を妨げる方向に誘導起電力が生じる(レンツ則に関連)。これは電気を流す視点で見ると、自己インダクタンスと呼ばれるある種の抵抗とみなされ、導体の内部の電流路の変化を妨げ、変動する電流を導体の表面へ追いやるように作用する。
レールガンでは弾体の移動に合わせてレール内の電流路が移動する際に自己インダクタンスの影響を受ける。すなわち、レール側では弾体との接触部近傍で表皮に電流が集まり、弾体側ではレールとの接触部近傍において後端側へ電流が集中する。
この作用は交流電流の
表皮効果と同様に、移動が高速になるにつれ顕著となる。条件次第では、弾体の後端やレールの表面が、ジュール熱により溶解し、プラズマ化してしまう。このプラズマが新たな電流路となるとき、電磁力の他に速度表皮効果を受けるため予測しがたい挙動となり、加速に寄与せず散逸する。
レールガンの高性能化は速度表皮効果の対策次第と考えられている。
類似の投射方式
リニアモーター・・・主に、走査される磁場によって導体や磁性体、磁石を加速する装置を指す。レールガンが1巻きコイル1個であるのに対しリニアモーターは多数の
電磁石 を並べて構成される。
コイルガン・・・導体内の磁場が変化するとき、磁場の変化を妨げる方向に誘導起電力が生じる(レンツ則に関連)。これは電気を流す視点で見ると、自己インダクタンスと呼ばれるある種の抵抗とみなされ、導体の内部の電流路の変化を妨げ、変動する電流を導体の表面へ追いやるように作用する。
レールガンでは弾体の移動に合わせてレール内の電流路が移動する際に自己インダクタンスの影響を受ける。すなわち、レール側では弾体との接触部近傍で表皮に電流が集まり、弾体側ではレールとの接触部近傍において後端側へ電流が集中する。この作用は交流電流の
表皮効果と同様に、移動が高速になるにつれ顕著となる。条件次第では、弾体の後端やレールの表面が、ジュール熱により溶解し、プラズマ化してしまう。
このプラズマが新たな電流路となるとき、電磁力の他に速度表皮効果を受けるため予測しがたい挙動となり、加速に寄与せず散逸する。
レールガンの高性能化は速度表皮効果の対策次第と考えられている。
類似の投射方式
リニアモーター・・・主に、走査される磁場によって導体や磁性体、磁石を加速する装置を指す。レールガンが1巻きコイル1個であるのに対しリニアモーターは多数の
電磁石 を並べて構成される。
コイルガン・・・コイル(ソレノイド)内に弾を通過させる方法を利用したもの。構造上の問題からレールガンのような高速を得にくいという欠点と、非接触でロスが小さいという利点がある。
サーマルガン・・・電磁力ではなく電流の
ジュール熱 にて弾体後方の導体を
プラズマ化 させ、その急激な体積増加により駆動するもの。すなわち瞬間的なプラズマ化に伴う
爆発 を利用する。比較的低入力の割に高い射出速度が得やすいものの、プラズマ膨張速度を超えた速度は得られない。
想定される用途
現在、レールガンは様々な分野での利用を期待されている。比較的知られている分野では以下が挙げられる。
・
マスドライバー (地表から宇宙への輸送装置) ・地球の衛星軌道上に存在するスペースデブリを軌道上から排除 ・高速移動物体の衝突時に発生するエネルギーを研究するための設備 ・
スペースデブリ(宇宙ゴミ)衝突を想定した
宇宙開発における新素材や新構造の研究・開発 ・被破壊実験等の物理学的な実験 ・軍事用途 ・宇宙兵器(
隕石衝突を回避するための防衛技術も想定されている)
この他、入力する電流の量により、発射速度や射出タイミングをコントロールしやすい事から、
レーザー核融合炉の燃料ペレット投入装置としての利用が期待されている。
兵器としての実用化
コイル(ソレノイド)内に弾を通過させる方法を利用したもの。構造上の問題からレールガンのような高速を得にくいという欠点と、非接触でロスが小さいという利点がある。
サーマルガンー電磁力ではなく電流の
ジュール熱 にて弾体後方の導体を
プラズマ化 させ、その急激な体積増加により駆動するもの。すなわち瞬間的なプラズマ化に伴う
爆発 を利用する。比較的低入力の割に高い射出速度が得やすいものの、プラズマ膨張速度を超えた速度は得られない。
想定される用途
現在、レールガンは様々な分野での利用を期待されている。比較的知られている分野では以下が挙げられる。
・
マスドライバー (地表から宇宙への輸送装置) ・地球の衛星軌道上に存在するスペースデブリを軌道上から排除 ・高速移動物体の衝突時に発生するエネルギーを研究するための設備 ・
スペースデブリ(宇宙ゴミ)衝突を想定した
宇宙開発における新素材や新構造の研究・開発 ・被破壊実験等の物理学的な実験 ・軍事用途 ・宇宙兵器(
隕石衝突を回避するための防衛技術も想定されている) この他、入力する電流の量により、発射速度や射出タイミングをコントロールしやすい事から、
レーザー核融合炉の燃料ペレット投入装置としての利用が期待されている。
兵器としての実用化
アメリカ海軍は
ズムウォルト級ミサイル駆逐艦で採用が決定した
AGS 155mm砲と呼ばれる
ロケットアシスト砲の次の段階として、レールガンの技術開発に着手していることが2007年の米ネイビーリーグ(技術展示会)で発表された
[7]。
米国海軍研究局(英語版)(ONR)でもこの事実は確認された。
ズムウォルト級駆逐艦の特色として統合電力システム (IPS) を採用しており、大型
ガスタービンエンジンで
電力を
発電、これを船の電気系統はなおのこと推進器などの
動力として使う計画であるが、これを更に進めてレールガンにもこの電力を供給し発射しようという計画である。同艦では2基のガスタービン発電機により、最大80
メガワットの電力を発生させる。この電力は全速航行時には70MWまでもが推進に使われるが、常時最大船速を出す訳ではないので、速度を落としている際に余る電力が利用されると考えられており、15~30MW程度をレールガン発射に回せれば、毎分6 - 12発の連続射撃が可能だという。
計画では揚陸作戦支援に重量15kgの砲弾を初速2.5km/sで発射、高度152kmまで打ち上げて370km以上先の攻撃目標に終速1.7km/s(マッハ5)で着弾させる、このためには砲口での砲弾
運動エネルギーは64MJ(メガ
ジュール・
入力する電力ではなく、砲弾のもつ運動エネルギーである)を必要としている。
同計画では2020 - 2025年頃を目処に実用機を艦船に搭載することを目標として、BAEシステムズ社とジェネラル・アトミックス社が32MJ砲の試作に入っており、2006年10月の時点で口径90mm・2.4kg砲弾を砲口での砲弾運動エネルギー800キロジュール(0.8MJ・初速830m/s)で発射に成功、2007年1月には3.2kg砲弾で初速2146m/s 砲弾運動エネルギー7.4MJを、2008年1月の試射では3.35kg砲弾で初速2520m/s 砲弾運動エネルギー10.64MJを記録している。2010年12月10日には、約10.4kgの砲弾を音速の約8倍(約2.7km/s)、砲弾の運動エネルギーは約33MJでの発射に成功した。これは、目標である15kgの砲弾の2.5km/sに極めて近づきつつある結果である。
2014年4月7日、アメリカ海軍は、2016年会計年度中にレールガンの試作機を最新鋭の高速輸送艦ミリノケットに据え付け、洋上での実証試験に入ると発表した。
日本では、
防衛省の
2015年度
概算要求にて、「艦載電磁加速砲の基礎技術に関する研究」を記載している。
2018年、
中華人民共和国でレールガンと思われる巨大な砲塔を
玉亭型揚陸艦の艦首に搭載した写真が撮影され、
2019年1月5日に国営の
環球時報は
中国中央電視台(CCTV)を引用しながら
中国人民解放軍海軍は艦載レールガンを近く実戦配備すると報じた。また、30日には米
CNBCが米情報機関の関係筋の話として中国でのレールガンの開発は
2011年に初めて確認されており、
2017年末に艦載化に成功し、
2023年までに洋上試験が完了する見通しであると報じた。
2021年、米国メディアの報道によると、米海軍はレールガン・プログラム、及びそれの代替となりうるとされていたHVP(超高速発射体)弾の開発計画、共に資金供給を0に設定した予算案を提出したと報じた。一説では、近年中国などで急速に開発・実戦配備が進む
極超音速兵器と比較して、射程距離や迎撃回避性能共に大きく劣り、例え将来的に開発が完了したとしても今更優位性が殆ど得られないと言われている。
一方、日本では令和4年度防衛予算概算要求にて「対極超音速兵器迎撃」や「迎撃困難な長射程対艦攻撃」として電磁レールガンの開発継続を公表している。
歴史
フランスの発明家 Andre Louis Octave Fauchon-Villepleeによる発案。彼は 1917 年にthe
Société anonyme des accumulateurs Tudor (now Tudor Batteries)の協力の元、実機を作成した。最初に原理的に説明されたのは第二次大戦時下の 1944年、Nazi Germany's Ordnance Office の Joachim Hänsler による。
発射速度は入力された電流に正比例する事は先に述べた通りだが、原理自体は古くから知られており、
1844年にはこれに基づいた兵器利用の実用化構想もあった程で、世界各国の軍部が事ある毎に研究してきた歴史がある。
第一次/
第二次世界大戦当時にも
ドイツや
日本で兵器化への研究が行われていた。しかし弾体が砲身に接触している事から生じる摩擦の問題を解決できなかったり、実際に発射できるだけの電流を生み出す電源が無いといった理由から、当時の技術ではこの問題を解消できずに研究は放棄され、実用化に到らなかった(
高射砲一門だけのために、専用発電所が二つ必要という試算さえあった)。
1960年代に、リチャード・マーシャルらのグループが
単極発電機[22]の発生させる電流を用いて、従来火器よりも遥かに速い速度で弾丸を射出する事に成功、次第にその威力が現実的な物として考えられるようになり、
1980年代には
アメリカ合衆国の
スター・ウォーズ計画(SDI計画)により、多額の研究資金を得て、大きく発展した。特に
宇宙空間では空気抵抗が無いために、高速で運動する物体の破壊力(運動エネルギー)は発射から命中までの間、ほぼ無期限に保存される事、また電源として大気越しではない太陽光が利用できる事から、
レーザーと並んで宇宙兵器の有力候補に挙げられている。だが今日では、SDI計画自体が国際情勢の変化に合わせて計画縮小され、実用性においては実績のある既存の火薬を燃焼させて発射する兵器と比較し、巨大な電源装置を必要とする等の点で問題の多い上に、実績も無いレールガンの宇宙兵器化研究は進んでいない。
その一方で、
1990年代頃から技術開発や研究方面での利用も進み、様々な分野で開発・利用されている。
日本では
宇宙科学研究所で、デブリ衝突などの模擬実験用に研究と同時に実用に供されていた。
なおレールガン開発の歴史は、レールガン本体の改良よりも、むしろ電源開発の歴史と述べた方が適切とされており、SDI計画においても、単極発電機の小型化が最重要課題とされていた。今日各方面で利用されているレールガンにおいては、フライホイールに(運動エネルギーの形で)蓄電された物やコンデンサに蓄電した物が利用されるなどしている。