安楽死-嘱託殺人-1



2020.7.25-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/medical/20200725-OYT1T50190/
「安楽死要件の議論の対象にもならない」医療関係者批判…ALS嘱託殺人

  難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者に頼まれ、薬物を投与して殺害したとして医師2人が京都府警に逮捕された事件で、2人が投与したのは海外の自殺ほう助団体で使われる睡眠薬だったことが捜査関係者への取材でわかった。
  薬物投与などで患者の死期を早める「安楽死」(積極的安楽死)は、国内では基本的に認められていない。東海大医学部付属病院で起きた事件の横浜地裁判決(1995年)で、例外的に認められる4要件が示されたが、今回の事件については、医療関係者らから「議論の対象にもならない」と批判的な声が上がっている。
  4要件は、〈1〉耐えがたい肉体的苦痛〈2〉死期が迫っている〈3〉肉体的苦痛を除去する他の方法がない〈4〉患者の明らかな意思表示――。京都府警は、女性の死期が迫っていなかったことや2人が主治医ではなかったことなどを挙げ、「安楽死とは考えていない」としている。
  神戸市で終末期の緩和ケアに携わる内科医の新城拓也さん(49)は「医師2人は主治医ではなく、女性との間に通常の医者と患者が築く関係があったと思えない。診察をしたかどうかも疑問で、死期が迫っていたと判断できる状況ではなかっただろう」と指摘。「患者本人が死を望んだということを盾に『誰もやらないから自分たちがやる』との考えから、正しい行為をしたと思い込んでいるのではないか」と首をかしげた。
  前田正一・慶応大教授(医療倫理)も「国内で安楽死が事実上認められていないのは、医療に関わる者にとっては常識。仮に患者側が望んでいたとしても、死期が迫っていないのに、死に至る薬を投与したのは、要件からも完全に逸脱しており、医師として非難に値する行為だ」と批判した。


2020.7.24-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/4166bfa1ae8b4e8f738e72dde3c28279c2d3428d
嘱託殺人 犯行時間15分足らず 逮捕の医師2人 初対面で女性に薬物投与

  ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の女性から依頼を受け、薬物を投与して女性を殺害したとして医師2人が京都府警に逮捕された事件で、2人が犯行当日、女性宅に滞在していたのは10~15分程度のきわめて短時間だったことが24日、捜査関係者への取材で分かった。2人が女性と直接顔を合わせたのはこの日が初めてだった。府警は、2人が他人からは把握されないSNSのダイレクトメッセージ(DM)などで女性と連絡を取り合い、周到に準備して犯行に臨んだ疑いがあるとみて調べている
   嘱託殺人容疑で逮捕されたのは仙台市泉区の呼吸器内科医、大久保愉一(よしかず)(42)と東京都港区の泌尿器科医、山本直樹(43)の2容疑者。共謀し、ALSで寝たきり状態となっていた京都市中京区の無職、林優里さん=当時(51)=に頼まれ、昨年11月30日、林さん宅で、致死量の薬物を投与し、殺害したとされる。府警は24日、2人を京都地検に送検した。
   捜査関係者によると、2人は犯行当日、京都市内で合流。同日午後5時半ごろに林さんの知人を装って自宅を訪問した。林さんに投薬し、家を出たが、滞在時間は10~15分ほどだった。2人はその日のうちに京都を離れたが、同じ新幹線に乗りながら別々の座席に座ったという。
   捜査関係者によると、大久保容疑者と林さんは一昨年末ごろからツイッターでやり取りを始めていたが、対面して意思疎通をはかるなどの行為は事件当日まで一度も行われなかったとみられる。また、犯行の詳細に関わることはDMやメールを使っていた可能性があり、府警が捜査を進めている。
   事件直前には女性から山本容疑者の口座に約130万円の振り込みがあり、報酬とみられている。


2020.7.24-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200724/k10012530861000.html
ALS患者 嘱託殺人事件 1年ほど前からSNSでやり取りか

  京都市の難病の女性の依頼を受け薬物を投与して殺害したとして医師2人が逮捕された事件で、安楽死を望む女性と医師とのSNSのやり取りが1年ほど前から始まっていたことが捜査関係者への取材で分かりました。詳しいやり取りは、第三者には見られない個別のメッセージで重ねていた疑いがあるということで警察がさらにいきさつを調べる方針です。
  宮城県の大久保愉一容疑者(42)と東京の山本直樹容疑者(43)の医師2人は、去年11月、全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、ALSの患者で京都市の林優里さん(51)の依頼を受け自宅に出向いて薬物を投与し殺害したとして、23日、嘱託殺人の疑いで逮捕されました。
  これまでの調べで、2人はSNSへの安楽死に関する女性の投稿をきっかけに知り合ったとみられていますが、捜査関係者によりますとやり取りは女性が亡くなるおよそ1年前のおととしの年末ごろに始まっていたということです。
  大久保医師との間で交わされたとみられ、安楽死を望むような女性の投稿に対し、「当院にうつりますか?自然な最期まで導きます」などと返信したりしていました。
  このやり取りは女性が亡くなる3週間前の11月9日まで続いていましたが、捜査関係者によりますと、自宅を訪れる日時などくわしいやりとりは、第三者には見られないダイレクトメッセージという個別のメッセージで重ねていた疑いがあるということです
  警察は、押収した資料などをもとに、さらにいきさつを調べる方針です。
ツイッターでのやりとり
  亡くなった女性患者と大久保医師とみられるアカウントとのツイッター上での詳しいやりとりです。
  2人のやりとりが初めて確認できるのは、女性が亡くなるおよそ11か月前のおととし12月28日です。
  女性の「来たるべき死の苦しみの恐怖と日々戦っています」などという投稿に対し、医師が当事者でない外野がかきまわすので、それを封じる手立てが必要です」と返信しています。
  去年1月3日には、安楽死を望む女性の投稿に対し、「作業はシンプルです。訴追されないならお手伝いしたいのですが。」と応えると、女性は「嬉しくて泣けてきました」と返信しています。
  また去年8月25日には、死ぬための方法を考えているという女性の投稿に、医師が「強制的に助けられてしまうという悪条件と理解しています。コナンや金田一どころではない計画が必要」と、人気漫画になぞらえて入念な計画が必要だと伝えています。
  その後も、安楽死に関するやりとりを重ね、女性が亡くなる3か月前の去年8月27日には、医師が「当院にうつりますか?自然な最期まで導きます」と投稿し、女性はありがとうございます。決意したらよろしくお願いします」と返していました。
  最後にやりとりが確認できるのは事件3週間前の去年11月9日で、遺書の作り方について医師がガチでやるなら公証役場です。カネはかかるが来てくれます。代筆だとあとで揉めることも」と投稿しています。

2020.7.24-youtubu-https://www.youtube.com/watch?v=tvpF23vEayg
ALS患者を“嘱託殺人” 逮捕の医師の口座に130万円(20/07/24)
難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者から依頼を受けて殺害したとして医師2人が逮捕された事件で、このうち1人が事件の前、患者から約130万円を受け取っていたことが分かりました。


安楽死
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

  安楽死英語: euthanasia)とは、または動物に苦痛を与えずにに至らせることである。一般的に、終末期患者に対する医療上の処遇を意味して表現される。安楽死に至る方法として、積極的安楽死と、消極的安楽死の2種類がある。
  また、安楽死の別表現として、尊厳死という言葉がある。これは、積極的安楽死消極的安楽死の両方を表現する場合と、安楽死を本人の事前の希望に限定して尊厳死と表現する場合があるが、世界保健機関、世界医師会、国際連合人権理事会、国家の法律、医療行政機関、医師会などの公的な機関による、明確または統一的な定義は確認されていない。

積極的安楽死
  積極的安楽死とは、致死性の薬物の服用または投与により、死に至らせる行為である。医療上の積極的安楽死の場合は患者本人の自発的意思に基づいて、自ら致死性の薬物を服用して死に至る行為、または、要求に応じて、患者本人の自発的意思(意思表示能力を喪失する以前の自筆署名文書による事前意思表示も含む)に基づいて、他人(一般的に医師)が患者の延命治療を止めることである。
 積極的安楽死の法的扱い
  自分で積極的安楽死を行った(未遂も含む)場合は、自殺なので犯罪にはならない。日本では他人による積極的安楽死は法律で明確に容認されていないので、他人が積極的安楽死を行った(未遂も含む)場合は刑法殺人罪の対象となる。ただし、名古屋安楽死事件や、東海大学病院安楽死事件の判例では、下記の厳格な条件を全て満たす場合には違法性は無いために阻却される(刑事責任の対象にならず有罪にならない)と述べている。
  一般的に他人(一般的には医師)が行う場合は下記の4条件を全て満たす場合に容認される(違法性を阻却され刑事責任の対象にならない)。
・患者本人の明確な意思表示がある(意思表示能力を喪失する以前の自筆署名文書による事前意思表示も含む)。
・死に至る回復不可能な病気・障害の終末期で死が目前に迫っている。
・心身に耐えがたい重大な苦痛がある。
・死を回避する手段も、苦痛を緩和する方法も存在しない。
 名古屋安楽死事件の判例
  1962年(昭和37年)の名古屋高等裁判所の判例では、以下の6つの条件(違法性阻却条件)を満たさない場合は、違法行為となると認定している。
1-回復の見込みがない病気の終末期で死期の直前である。
2-患者の心身に著しい苦痛・耐えがたい苦痛がある。
3-患者の心身の苦痛からの解放が目的である。
4-患者の意識が明瞭・意思表示能力があり、自発的意思で安楽死を要求している。
5-医師が行う。
6-倫理的にも妥当な方法である。
 東海大学病院安楽死事件の判例(「東海大学安楽死事件」も参照)
  1995年(平成7年)の横浜地方裁判所の判例では、下記の4つの条件(違法性阻却条件)を満たさない場合は、違法行為となると認定している。
・患者が耐えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいる。
・患者の病気は回復の見込みがなく、死期の直前である。
・患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために可能なあらゆる方法で取り組み、その他の代替手段がない。
・患者が自発的意思表示により、寿命の短縮、今すぐの死を要求している。
 動物に対する安楽死(動物一般の安楽死については「殺処分」を、競走馬については「予後不良_(競馬)」を参照)
積極的安楽死に関する議論
  日本では、積極的安楽死を法律で容認するかについて議論されているが、法律で明示的に容認はしていない。
  2017年11月29日にオーストラリア南東部のビクトリア州 (オーストラリア)上院で安楽死の合法化法案が可決され、2019年6月から実施される見通しとなり、同月29日にビクトリア州下院は末期患者に対する安楽死を合法化する法案を可決され、ビクトリア州知事の同意を得ることで成立した。2019年6月から余命半年未満と医師に判断された18歳以上の患者が自身に致死量の投薬を求める権利が付与されるという末期患者への安楽死が、ビクトリア州としてオーストラリア連邦政府が1997年に北部準州の「終末期患者の権利法」を無効にした以降で初めて解禁された
  安楽死推進団体に所属し、2018年に104歳で安楽死したオーストラリアの環境学・植物学者デイビット・グッドールは、積極的安楽死を「ふさわしい時に死を選ぶ自由」と定義している。グッドールは重い病を罹患していなかったが、老化で体が不自由になるなど生活の質が低下していたと述べ、スイスバーゼルでの安楽死前日の会見で「スイスの品位ある死を選べる制度」に感謝を示し、「全ての国はスイスに遅れを取っていて、自国のオーストラリアでは老化による生活の質の低下を理由に安楽死を合法化していないのは残念だ」と語った
安楽死と宗教
  積極的安楽死を法的に認めている国はプロテスタントの影響が強い国が多く、同じキリスト教でもカトリック積極的安楽死に強く反対している。
  またイスラームでも同様に積極的安楽死殺人とされており、これはカトリックやイスラームが自殺を固く禁じている教義から導かれる。
  ただしカトリックやイスラームにおいても、死期が迫る患者に対して苦痛を伴う延命治療を中止するという消極的安楽死(尊厳死)には必ずしも反対していない
  安楽死・尊厳死の問題生命倫理死生観と密接に関連するため、その国で伝統的な宗教の影響も大きいのである。

消極的安楽死
  消極的安楽死とは、予防・救命・回復・維持のための治療を開始しない、または開始しても後に中止することによって、人や動物を死に至らせる行為である。医療上の消極的安楽死の場合は、病気・障害を予防する方法、発症した病気・障害から救命・回復する方法、生命を維持する方法、心身の機能を維持する方法が確立されていて、その治療をすることが可能であっても、患者本人の明確な意思(意思表示能力を喪失する以前の自筆署名文書による事前意思表示も含む)に基づく要求に応じ、または患者本人が事前意思表示なしに意思表示不可能な場合は、患者の親・子・配偶者などの最も親等が近い家族の明確な意思に基づく要求に応じ、治療をしないか治療開始後に中止することにより、結果として死に至らせることである。
  終末期の患者には延命可能性が全くないか、または余命は長くても月単位なので、世界の諸国では終末期の患者に対する消極的安楽死は広く普及している。治療により回復の可能性がある患者、回復の可能性はなくても死に至るまで長い年月がかかる患者など、終末期ではない患者の場合は、大部分の人は一般的に病気からの回復や生命・健康の維持の欲求を持っているので、消極的安楽死が選択される事例よりも、治療による回復や延命が選択される事例が多数派である。
  韓国では、最高裁判所に相当する大法院の判決で2009年の女性の高齢者の請求により尊厳死が認められた後、2017年に韓国で「延命医療決定法尊厳死法)」の試験事業が施行されて患者の意思によって延命医療を中止することができるようになった。約1か月前にソウル市内のとある総合病院で、消化器系のがんの治療を受けていた50代男性が「延命医療を受けない」という治療計画書に署名していた。男性の医療陣は本人の意思に基づき、臨終が近づいた時に人工呼吸器装着・心肺蘇生・血液透析・抗がん剤投与などを実施しなかったが、男性が延命医療中止を選択していても栄養・水の供給、痛みの緩和、治療は継続した。患者は2017年11月21日の一週間前に安楽死を選択して死去し、韓国で合法的安楽死の事例初となるケースとして確認された。事前医療意向書の実践を推奨する代表は「難しい状況の中、患者の男性は大きな決断を下した。今回の決定は延命医療中止について悩む多くの方々に勇気を与える事例だ」と語った
日本の国内法での扱い
  日本の法律では、患者本人の明確な意思表示に基づく消極的安楽死(=消極的自殺)は、刑法199条の殺人罪、刑法202条の殺人幇助罪・承諾殺人罪にはならず、完全に本人の自由意思で決定・実施できる。ただし、法律により強制隔離と強制治療が義務付けられている感染症は例外である。
  日本の国内法では、一般的に他人(一般的には医師)が行う場合は下記の条件のいずれかを満たす場合に容認される(違法性を阻却され刑事責任の対象にならない)。
  患者本人の明確な意思表示がある(意思表示能力を喪失する以前の自筆署名文書による事前意思表示も含む)。
  患者本人が事前意思表示なしに意思表示不可能な場合は、患者の親・子・配偶者などの最も親等が近い家族(より親等が遠い家族や親戚は親等が近い家族に代わって代理権行使できない)の明確な意思表示がある。
  日本では、患者本人の明確な意思表示に基づかず、患者本人が事前意思表示なしに意思表示不可能な場合は、患者の親・子・配偶者などの最も親等が近い家族の明確な意思表示にも基づかず、他人(一般的には医師)が治療の中止をした場合は、刑法199条の殺人罪が成り立つ。患者本人の明確な意思表示に基づかずに、または、家族の明確な意思表示に基づかずに、治療を開始しなかった場合も、殺人罪または保護責任者遺棄致死罪が成り立つ。


安楽死と自殺幇助の違い

まず、「安楽死」と「自殺幇助」の違いについて明確にしておきます。日本においては、両者とも許容されていないものです。

安楽死】;行為自体として、他人が関与 
   安楽死は、行為の主体として他人が関与し、自分自身ではもはや実行することのできなくなった患者に、身体的侵害によって直接死をもたらすことです。
 ①積極的安楽死;患者の命を終わらせる目的で「何かをすること
 ②消極的安楽死;患者の命を終わらせる目的で「何かをしないこと
 
自殺幇助】;患者本人が関与する
   自殺幇助とは「自殺の意図をもつものに、有形・無形の便宜を提供することによって、その意図を実現させること」です。日本では、倫理的にも法的にも許容されませんが、オランダ米国のオレゴン州などでは合法とされています。
   安楽死が、行為主体として他人が関与するのに対して、自殺幇助は、その時点で意思能力のある患者本人が関与します。患者は、例えば処方された薬物、あるいは毒物、あるいは他の行為によって自分の命を絶ちます。
   自殺幇助において、その意図するところは患者を死にいたらしめることです。もしある患者が自殺に失敗したとしたら、幇助に関わった医師や関係者は、‘本人の意思を貫徹させてあげなければならない’と感じてしまうでしょう。このように自殺幇助は、安楽死に向かっていく可能性があります。








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