アフガニスタンの問題-1
2021.07.15-産経新聞-https://news.yahoo.co.jp/articles/6ad58ac0f7385e20253587b778420153e64fbdff
米政権、アフガン人通訳を国外退避へ ブッシュ元大統領は米軍撤収を批判
【ワシントン=黒瀬悦成】
バイデン米政権高官は14日、
アフガニスタンの駐留米軍や米政府機関で通訳や翻訳係などとして協力したアフガン人とその家族らを7月最終週から空路で国外に退避させると明らかにした。
アフガン政府軍と対立するイスラム原理主義勢力タリバンが全土で攻勢を強め、パキスタンやタジキスタンなど隣国との国境検問所を制圧する中、タリバンに危害を加えられる恐れが極めて強い米軍協力者の処遇が注目されていた。
政権高官によると退避は「
同胞の保護」作戦と名付けられ、
国務省と国防総省、国土安全保障省が連携して実施。アフガン人通訳らのうち、特別移民ビザ(査証)の発給手続きが進んでいる者から退避させる。具体的な退避の日付は安全上の問題から公表できないとしている。
サキ大統領報道官は13日の記者会見で、作戦について「(通訳らが)勇気ある人々であるからこそ、こうした措置をとる。彼らが過去数年間に果たしてきた役割を正当に評価し尊重していく」と説明した。 米メディアによると、初期段階の退避者は約2500人で、米政府がチャーターした民間機で移送される。特別ビザが発給されるまでは、米国内の米軍施設に収容される見通し。
-方、2001年の米中枢同時テロを受けて米軍によるアフガン進攻を決断した
ブッシュ元大統領(子)は14日、ドイツ公共放送ドイチェ・ウェレのインタビューで、
バイデン政権によるアフガン駐留米軍の撤収について「
信じ難いほど悪く悲惨な結果をもたらすだろう」と述べ、政権の対応を批判した。
ブッシュ氏は、米軍がアフガンに進攻して当時のタリバン政権を打倒したことで、アフガンの女性や子供の地位向上で「大きな前進を果たした」と指摘した上で、タリバンが再び実権を掌握すれば「女性や子供は悲惨な境遇に陥る。深く懸念している」と訴えた。
米政策研究機関「民主主義防衛財団」の調査では13日現在、タリバンはアフガンの全407地区のうち約55%にあたる223地区を制圧し、引き続き攻勢をかけている。アフガン政府が管理下に置く地区は73にまで減少している。
2021.07.15-WSJ(THE WALL STREET JOURNAL)-https://jp.wsj.com/articles/u-s-exit-from-afghanistan-seems-illogical-why-its-happening-anyway-11625534665
米軍アフガン撤退、不合理でも進める理由
人道面・戦略面のリスクは大きいが、米国内の政治的ムードが撤退を求めている
アフガニスタン駐留米軍では、2020年2月以降――つまり16カ月間――死者は出ていない。従って、新常態となった縮小規模で駐留を継続していれば、目に見えるコストは比較的小さかっただろう。
一方、
撤退に伴う人道面および戦略面の目に見えないリスクは、比較的大きい。では、撤退を余儀なくさせている米国内の現在のムードはどうだろうか。
撤退の動きが既に始まっているため、今こうした問い掛けをするのは多分に言葉の遊びのようなものだ。
米国防総省は先週、8月末までに撤退が完了するとの見通しを示した。ジョー・バイデン米大統領は以前、2001年9月11日の同時多発テロからちょうど20年となる日までに撤退が完了すると述べていたが、数週間早まることになる。
米軍のアフガン侵攻はもともと同時多発テロがきっかけだった。
撤退を求める動きは党派を超えたものだ。
ドナルド・トランプ前大統領は在任中、すべての米軍が2021年中にアフガンから撤退すると発表した。バイデン氏はそれを実行している。
アフガン駐留米軍が数千人規模に縮小され、主に非戦闘活動に従事してきたにもかかわらず、撤退が進行している。米軍は反政府過激派組織タリバンとの戦いに「勝利しつつある」わけではなかったが、うわべの安定を生み出し、タリバン式の反欧米イスラム主義の権力掌握を妨げてきた。
それと対比できるのは、
アフガンからの撤退に伴う極めて明確なリスクだ。まず、
親米政府とアフガン軍がいずれ崩壊し、タリバンが政権を奪還する可能性が極めて高い。これにより
アフガンは、米国に危害を加えようとするアルカイダやイスラム国(IS)などのイスラム過激派にとって、安全地帯および活動拠点としての役割を再び果たすことになるかもしれない。
タリバン政権の復活はまた、
人道的な災難を引き起こす公算が大きい。
米国を支援していたアフガン人や過激なイスラム支配に反対する人々への報復が予想されるほか、大きく向上したアフガン女性の地位が後退する可能性がある。
ロバート・ゲーツ元国防長官は、
「米国が自由と民主主義の擁護者であり続ける限り、タリバンによる政権奪還は(他の分野と同様に)とりわけ女性と少女たちにとって大きな後退を意味する」と述べた。
戦略的なコストもある。
大規模なバグラム空軍基地を含むアフガンでの米軍の駐留は、西のイラン、東の中国をけん制してきた。この戦略的な地域における
米軍の大きな存在は、イランによる武力攻撃や中国の拡大主義を、少なくとも幾分抑制する機能を果たしていた。
タリバンが今後、野心を拡大しつつある中国政府の取引相手になるリスクは、多少なりともある(ただし、
中国が自国のイスラム教徒に敵意を示しているため、そのリスクは低減されるかもしれない)。
また
アフガンの米軍基地は、イランの活動監視を強化するための基盤を情報機関に提供していた。その基盤は姿を消しつつある。
アフガンからの撤退は、同国の安定を維持する上で米国が同盟国から得ていた支援の大半に終止符を打つものでもある。米国が現地で起きている出来事に目を光らせ、
増大する過激派の脅威をつぶす能力を維持できるとしても、それは遠く離れた基地や船舶から行わなくてはならなくなる。
米国にはその能力があるが、同盟国にはない。このため、脅威を抑えることは今まで以上に米国のみの課題となる。
米国は欧州・日本・韓国で過去数十年にわたり安定維持のため相当な規模の軍を駐留させてきたにもかかわらず、なぜアフガンで同じことをしようと思わないのだろうか。それに対する答えは、米国人の国民性と、この時代の国民のムードをよく物語っている。
まず
金銭面では、アフガン駐留に伴う財政上のコストは依然として大きく、連邦財政赤字は拡大し続けている。人的コストについては、
駐留米軍の死者数が現在ほど低水準に維持される保証はない。
米国の撤退の前触れとなった昨年の米・タリバン和平合意は不安定なものだが、
タリバンによる米兵への攻撃を減らす材料となっている。
撤退がなければ、米軍への攻撃は再び増加し始めるだろう。また欧州・日本・韓国と異なり、アフガン社会のかなりの部分は米軍の駐留を望んでいない。
さらに、米国は自分たちを占領者と見なしていない。むしろ占領状態を終わらせる解放者と見なしている。従って、地元に少なくとも多少なりとも抵抗がある中での永続的な駐留は、米国流に反する。
米国人を駆り立てるのは、軍事的であろうとなかろうと、あらゆる戦いで
「勝利」することであり、戦い続けることではない。
アフガンでの軍事的勝利は単に達成困難なことが分かっただけではない。大半のアナリストはずっと以前から勝利の可能性さえないとの結論に達していた。アフガンにおける
「勝利」があるとすれば、それは政治的なものであり、軍事的なものではなかった。
いずれにせよ、米国は現在、「米国第一」の雰囲気の中にある。
アフガン派兵にかかったコストについて教訓を得た米国は、これから撤退に伴うコストについて学ぶことになる。そうしたコストは避けられないだろう。
2021.07.10-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20210710-4ESEQJ4JVJIQJMH67IMI45SCDA/
<主張>米軍アフガン撤収 タリバン攻勢に歯止めを
米軍のアフガニスタンからの撤収完了を前に
イスラム原理主義勢力タリバンの政府軍への攻撃が勢いを増しており、大きな不安を禁じ得ない。
米軍は20年にわたり拠点を置き、政府を支え、治安を守ってきた。
撤収はアフガン国内のみならず、中央アジアを含む地域全体、あるいは世界を巻き込んだテロとの戦い全般に影響を及ぼさずにはおかない。
重大な岐路にあると認識すべきだ。
アフガンがかつてのような内戦状況に陥り、「
テロの温床」となる事態は絶対に避けたい。
米国は急ぎ、周辺国の協力を得て
、バグラム空軍基地に代わる出撃拠点の確保など、いざというときの態勢を整えなければならない。日本を含む国際社会は、アフガンへの変わらぬ支援を表明し、関与の継続を明確にすべきだ。
バイデン米大統領は今年4月、
米中枢同時テロから20年の9月11日までに撤収すると表明し、すでに9割以上が作業を終えた。
一方、
タリバンは北部を中心に着実に支配地を拡大させ、劣勢に立たされた政府軍は1000人を超える兵士が国境を越え、タジキスタンに逃げる事態になった。
気がかりなのは、米軍撤収が早めのペースで着々と進められていることだ。内戦や政府崩壊を危惧する声も上がる中、慎重さを欠くのではないか。
タリバンの攻勢に歯止めをかける必要がある。
撤収がトランプ米前政権とタリバンとの合意に沿ったものとはいえ、「人権外交」を掲げるバイデン政権が、住民に厳しい規律を押しつけるタリバンとの合意を進めようとする姿勢に違和感を覚える。
バイデン氏は撤収表明の際、「
中国との競争」に言及し、
撤収で生まれる余力を対中国シフトに振り向ける考えを強調した。
2021.07.09-東京新聞-https://www.tokyo-np.co.jp/amp/article/115478
タリバン攻勢で国境警備崩壊か 米軍撤退前のアフガン 市民2000人以上が避難、中ロが警戒
【モスクワ=小柳悠志、北京=中沢穣】
アフガニスタン情勢を巡り、中国やロシアなどが懸念を強めている。
反政府武装勢力タリバンの攻勢を受けて5日以降、旧ソ連タジキスタンに逃げ込むアフガンの政府軍兵士や市民が急増しており、
北部の国境警備が米軍の完全撤退を前に崩壊している可能性がある。
ロシアメディアによると、
タジク政府は5日、アフガンとの国境1430キロのうち7割が、タリバン支配地域と接するようになったと説明。7日に同政府は、同日までに
タリバンの攻撃を受け、アフガンの政府軍多数と市民2000人以上がタジク領内に逃げ込んだことも明らかにした。
ロシアのプーチン大統領は5日、同盟関係にあるタジクのラフモン大統領と電話協議し、軍事支援の用意があると表明。
タリバン支配地域からイスラム過激派組織がアフガン周辺諸国に流出するのを警戒しているとみられ、アフガンとタジクの国境地帯への派兵も辞さない構えだ。タジクも2万人規模の予備役動員を開始した。
ただロシア側は、アフガン情勢への深入りは避ける方針とみられる。ソ連は1979年にアフガンに侵攻し、10年近い戦闘で多数の犠牲者を出したほか、麻薬流入を招いたためだ。
中央アジアへの影響力を増す中国も、米ソの失敗を教訓に、アフガンに直接介入する可能性は低い。
一方で
中国新疆ウイグル自治区はアフガンと約90キロの国境を接する。アフガンからのイスラム過激派組織の流入や、中国国内の弾圧から逃れたイスラム系少数民族ウイグル族がタリバン支配地域で拠点を築く事態を警戒する。
中国は米軍のアフガン駐留を非難してきたが、米軍の存在が中国国内への過激派拡大を抑えてきた面もある。王毅国務委員兼外相は3日、「米国は責任ある方式で情勢の安定化を図るべきだ」と遠回しに駐留継続を求めた。
中国はタリバンとのパイプを維持し、これまでに数回、北京に招くなどしてきた。王氏は3日、アフガン政府とタリバンの和平協議を後押しする考えを示したが、タリバンは米軍撤退で勢いづき、協議がまとまる見通しは立っていない。
2021.07.07-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210707/mcb2107070557003-n1.htm
米、見えないアフガン撤収後 治安に「重大懸念」
【ワシントン=黒瀬悦成】
バイデン米政権によるアフガニスタン駐留米軍の撤収が完了に近づく中、米軍撤収後のアフガン国内の治安維持に米国がどう関与していくかが重大懸案として浮上してきた。米政権は、
アフガンが再び米本土への攻撃を企てるテロリストの温床と化すのを食い止めることを至上課題に掲げるが、具体的な方策は打ち出されていない状況だ。
アフガン駐留米軍のミラー司令官は4日、米ABCテレビの報道番組に出演し、
アフガン政府と敵対するイスラム原理主義勢力タリバンが米軍撤収に伴い支配地域を急速に拡大しているとして「懸念すべき事態だ」と訴えた。
バイデン大統領は、米軍によるアフガンとイラクでの「テロとの戦い」のきっかけとなった米中枢同時テロから20年となる9月11日までにアフガン駐留米軍の撤収を完了させると表明。しかし、ミラー氏は「私たちは(タリバンが)武力で(アフガン政府を)転覆する素地を作りつつある」と指摘し、アフガンが内戦状態に陥る事態に強い危機感を示した。
バイデン政権の対応をめぐっては、野党の共和党から、「米国最長の戦争」を終わらせるという政治的思惑が優先され、「計画と準備を欠いている」(マッコール下院議員)との批判も強い。
アフガン国内に存在する国際テロ組織アルカーイダやイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)系の武装勢力による対米攻撃の阻止に向け、どのように情報収集や対テロ作戦を実施していくのか、現時点で米政権の方針は定まっていないとされる。
特にアフガン国内を拠点に情報収集や無人攻撃機によるテロ組織幹部の殺害作戦を展開してきた中央情報局(CIA)は活動拠点を喪失することになる。
オースティン国防長官は最近、
アフガンと国境を接するウズベキスタンとタジキスタンの外相と相次ぎ会談し、アフガン情勢の安定に向けた協力を要請した。両国は米軍のアフガン進攻に際して基地を提供した経緯があり、
バイデン政権としては両国をアフガンの治安対策の拠点とする構想を描いているもようだ。
また、ロイター通信によると、バイデン政権はタジク、ウズベク、カザフスタンの中央アジア3カ国を米軍に協力したアフガン人通訳の一時受け入れ先にする方向で調整を進めているという。
タリバンが支配地域をさらに拡大させれば、通訳らがタリバンに殺害される恐れは一層強まる。米議会ではバイデン政権に対し、アフガン人通訳とその家族らを対象に特別移民ビザ(SIV)を発給するよう求める声が高まっている。
【モスクワ=小野田雄一】
米軍のアフガニスタン撤収をめぐり、
アフガンと隣接する中央アジアを「裏庭」とみなすロシアは、米国がこの地域に軍事拠点を獲得し、影響力を強めることを警戒している。
米軍の撤収開始を控えた4月下旬、ショイグ露国防相はタジキスタンとウズベキスタンを相次ぎ訪問。5月にはプーチン露大統領がタジクのラフモン大統領と会談した。露メディアは、米軍基地が中央アジアに出現するのを阻止すべく露政権が各国に働きかけているとの見方を示した。
米国が「テロとの戦い」に乗り出した2000年代初頭、ロシアはウズベクやキルギスなどの空軍基地を米軍が使用することを容認した。イスラム過激派がアフガンから中央アジアに流入するのを防ぎたかったことに加え、当時のプーチン露政権が国際協調路線をとっていた事情があった。
その後はしかし
、米露関係が悪化の一途をたどり、ロシアは米国によって「勢力圏」が侵食されることを強く警戒している。プーチン政権は、アフガンの治安悪化に備える名目で中央アジアへの軍事的関与を強める思惑で、タジク駐留ロシア軍を増強することも視野に入れている。
2021.06.16-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20210615-F5WZWHMHPBKVBAJWX7NWARFNQY/
アフガン、外国軍撤収でタリバン攻勢
【シンガポール=森浩】
駐留米軍の撤収が続くアフガニスタンで、
治安状況の悪化が深刻さを増している。
イスラム原理主義勢力タリバンが全土制圧の好機と捉え、政府軍への攻勢を強化したためだ。
14日の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議では首脳間で部隊撤収の方針が改めて確認されたが、治安維持の重しだった外国軍が去る意味は大きい。アフガンが「テロリストの温床」と化す可能性はぬぐえない。
バイデン米政権は米中枢同時テロから20年となる9月11日までのアフガン駐留米軍撤収を表明。4月下旬から駐留部隊約2500人が段階的に帰国を始めており、撤収作業は既に50%以上が完了したという。NATO軍も同時期に撤収を開始している。
タリバンは2月時点で国土の52%を支配下に置いていたが、外国軍撤収を受けて攻勢に出た。アフガン内務省によると、現在、
国内全34州のうち26州で政府軍と交戦状態にあるという。内務省担当者は「
タリバンは特に南部で勢力が強く、
ヘルマンド州では5月だけで900件以上の攻撃を行った」と話している。
2021.05.10-Yahoo!Japanニュース(REUTERS)-https://news.yahoo.co.jp/articles/446e76d76bf6163339484933e4441ff8794ab764
アフガン首都の学校付近で爆発、生徒ら68人死亡
アフガニスタンの首都カブールの学校付近で5月8日、爆弾を乗せた車が爆発し、
女子生徒ら68人が死亡した。 この学校は女子生徒と男子生徒が3交代制で通学しており、爆発が起きたのは女子生徒が下校する時間帯だった。現地のテレビは、血まみれの道路に本や通学かばんが散乱している様子や、慌てて助けを求める住民の姿を報じた。
現場はアフガニスタンでは少数派の
イスラム教シーア派教徒が多く住む地区。ガニ大統領は反政府武装勢力タリバンの犯行と非難しているが、同地区ではこれまでシーア派を敵視するイスラム過激派組織「
イスラム国」による爆発事件が頻発してきた。
現在のところ犯行声明は出ていない。タリバンの広報担当者は関与を否定するとともに、犯行を非難した。
ガニ大統領は「タリバンは暴力行為をエスカレートさせることで、現在の危機を平和的かつ根本的に解決することに消極的なだけでなく、状況を複雑化していることをまた示した」と述べた。
2021.05.02-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/fd80ff0763af906f7ee4edda8376d9c8d690f555
ビンラーディン殺害10年 アフガン再び「テロの温床」の恐れ
【ワシントン=黒瀬悦成】
国際テロ組織アルカーイダの指導者、ウサマ・ビンラーディン容疑者が殺害されてから5月2日で10年を迎えた。バイデン米大統領は、同容疑者が首謀した米中枢同時テロから20年となる9月11日までにアフガニスタンから駐留米軍を完全撤収させると表明したが、
米国内ではアフガンが再びアルカーイダなどによる対米テロの温床になりかねないとの懸念が強い。
2001年の米中枢同時テロを受け、息子ブッシュ大統領(当時)はアフガンに潜伏していたビンラーディン容疑者の掃討と、アルカーイダに活動拠点を提供したイスラム原理主義勢力タリバンの壊滅に向け、アフガン進攻に踏み切った。
続くオバマ大統領(同)は11年、
パキスタン北部に隠れていたビンラーディン容疑者を米海軍特殊部隊の手によって殺害し、同時テロの報復を果たした。 しかし、
アフガンではタリバンが米国を後ろ盾とするアフガン政府を転覆させようとテロや軍事攻撃を執拗(しつよう)に展開。米軍はアフガン政府による治安維持の取り組みを支援するため、同国内に駐留を続けてきた。
バイデン氏は4月28日の施政方針演説で米軍撤収に関し「
米国はビンラーディンを裁きにかけた。アフガンでのアルカーイダの脅威も減衰させた」と述べ、アフガン駐留米軍の任務は果たされたと説明した。
ただ、国防総省の情報機関、国防情報局(DIA)のベリエ長官は29日の上院軍事委員会の公聴会で「
タリバンはアフガン政府に軍事的圧力を加え続ける。停戦や暴力の低減に応じる可能性は低い」と指摘。
米軍撤収後はタリバンが再びアフガンの全土支配を目指して活動を活発化させる公算は非常に大きい。 一方、アルカーイダは最高幹部を米軍によって次々と殺害されるなどして、その勢力は以前に比べ弱体化したものの、
米軍のアフガン撤収を受けて再びタリバンと手を組み、再興を図る動きを強めつつある。
実際、南アジアを拠点とするアルカーイダ構成員はCNNテレビとの単独取材(30日放送)で「
アフガンやパキスタンを拠点とするタリバンとアルカーイダは関係を堅持している」と指摘し、「
あらゆる戦線で米国と戦う」と強調した。
トランプ前政権とタリバンが昨年2月に結んだ和平合意では「
タリバンとアルカーイダとの絶縁」
が米軍撤収の前提条件だった。 単独取材での構成員の発言が事実とすれば、
タリバンはアルカーイダと関係を解消する考えは毛頭なく、当初から米国を欺く意向だったことを意味する。
米政治サイト「アクシオス」によると、ライス、クリントン両元国務長官は29日、下院外交委員会の非公開会合で駐留米軍の完全撤収に「
懸念」を表明。ライス氏は、
アフガンの治安悪化で「将来的に米軍の再投入が必要になるだろう」と予測したという。
2021.05.01-Yahoo!Japanニュース(テレ朝News)-https://news.yahoo.co.jp/articles/2a15297a24206d4725dd93ef95d776bdd77e0652
アフガニスタンで車が爆発 死傷者多数の情報
4月30日の夜、アフガニスタン中部で車が爆発し、
学生を含む民間人ら少なくとも30人が死亡、けが人も多数出ています。
現地メディアによりますと、アフガニスタン東部のロガール州で30日午後7時ごろ、爆弾が積まれた車が爆発しました。
狙われたとみられる宿泊施設には、
大学入試を控えた学生らが滞在していてこの爆発で学生を含む民間人ら少なくとも30人が死亡し、約70人がけがをしました。 テロとみらていれますが、今のところ犯行声明などは確認されていないということです。
アフガニスタンでは、駐留しているアメリカ軍が9月11日までの完全撤収を予定していて、
ホワイトハウスはアメリカ軍の撤収作業が始まったと先月29日に明らかにしたばかりでした。
2021.03.22-CNN-https://www.cnn.co.jp/usa/35168171.html
米国防長官、アフガンを電撃訪問 駐留米軍撤退の見通しは明言せず
(CNN) オースティン米国防長官は21日、アフガニスタンを予告なしに初訪問し、
ガニ大統領らと会談した。会談後の会見で、近く期限を迎える米軍の完全撤退については具体的な見通しを示さなかった。
同行した代表取材の記者によると、
オースティン氏はインドを訪問した後、21日午前に首都カブールに到着した。
記者団への短いコメントで、ガニ氏やウィルソン駐アフガン米大使、アフガン駐留の北大西洋条約機構(NATO)軍と米軍を率いるミラー司令官と「非常に有益な」会談ができたと報告した。
米国のトランプ前政権は昨年、アフガンの反政府勢力タリバーンとの間で、同国に駐留する約2500人の米軍部隊を5月1日までに完全撤退させるとの合意に達していた。バイデン政権はこの期限について、6カ月の延期を検討している。
オースティン氏は20日、インドの首都ニューデリーでの会見で、米軍撤退の判断をめぐってはバイデン氏が綿密に検討を進めていると強調。現時点で駐留期間や部隊の規模についての決断は一切下されていないと述べた。
また
カブールでは、タリバーン側が合意の条件を守っているかとの質問に返答を避ける一方、アフガンで激しい暴力が続いていることは明らかだと指摘。暴力の鎮静化が先決との認識を示した。
2020.11.29-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/201129/wor2011290013-n1.html
アフガンで相次ぎ自爆テロ、計34人死亡
【シンガポール=森浩】
アフガニスタン東部ガズニ州の軍事施設近くで29日、自爆テロが発生し、地元メディアによると、少なくとも兵士31人が死亡、24人が負傷した。南部ザブール州でも自爆テロがあり、少なくとも3人が死亡した。
両事件の犯行声明は確認されていない。ガズニ州の事件では、何者かが運転する車両が施設に突っ込み、爆発したという。同州では過去にイスラム原理主義勢力タリバンによる自爆テロが相次いで発生している。
アフガン和平をめぐり、政府とタリバンは9月から恒久停戦に向けた協議を始めたが、大きな進展はない。一方、
トランプ米政権は今月17日、駐留米軍を現在の約4500人から来年1月15日までに約2500人に削減すると発表。タリバンは治安維持の重しである米軍の撤収方針を勢力拡大の好機ととらえ、各地で攻勢を強めている。
2020.11.18-産経新聞 THE SANKEI NEWS-
アフガン駐留米軍を2500人に削減 イラク・ソマリアも
【ワシントン=平田雄介】
ミラー米国防長官代行は17日の記者会見で、来年1月15日までに
アフガニスタンに駐留する米軍を4500人から2500人に削減すると発表した。「果てしない戦争を終わらせる」というトランプ大統領の政権公約に基づき、イラクやソマリアでも駐留米軍を縮小する方向。先の大統領選で敗北が確実となったトランプ氏は1月20日で任期切れとなるのを前に、駆け込みで公約を果たす構えだ。
ミラー氏は会見で、撤収は「米国民の望みだ」とした上で、「政策や目標の変更を意味しない」と強調した。
イラクの駐留米軍を3千人から2500人に削減することも発表した。
また、オブライエン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は17日、アフガンとイラクの駐留米軍に関し、「トランプ氏は来年5月までに全員が安全かつ完全に帰還するのを望んでいる」と記者団に述べた。
ただ、
アフガンからの駐留米軍撤収については、治安の悪化やアフガン政府とイスラム原理主義勢力タリバンの和平交渉に与える影響が懸念されている。イラクでは17日、バグダッドの米国大使館のある地区にロケット砲4発が着弾し、子供1人が死亡した。イランが支援する民兵組織による攻撃とみられ、情勢が再び不安定化する兆しがある。
米下院軍事委員会の共和党トップ、ソーンベリー議員は17日の声明で、削減は「過ち」と批判。アフガンについて「タリバンは削減を正当化するだけの事を何もしていない」と早急な削減への反対を表明した。
また、ロイター通信は17日、政府関係者の話として、ソマリアの駐留米軍700人についても、トランプ氏がほぼ完全な撤退を検討していると報じた。
大統領選で当選を確実とした民主党のバイデン前副大統領は来年1月20日に就任する予定で、就任初日から在外駐留米軍の減少による現地情勢の影響に気を配ることになる。
上院共和党のマコネル院内総務は17日、現地の状況を踏まえ「今後2、3カ月間、国防や外交政策に大きな変更を加えないことは極めて重要だ」と述べた。
2020.8.24-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/b3c160cc65577323cdbce94a4e2debff8e092915
アフガン、進まぬ国内和平 ガニ政権、捕虜解放に消極的 米大統領選の行方を注視?
【シンガポール=森浩】
トランプ米大統領は23日に発表した大統領選の公約でアフガニスタンからの米軍撤収方針を改めて強調したが、アフガン国内では
“米軍撤収後”を見据えた政府とイスラム原理主義勢力タリバンの和平協議が始まらない状況が続いている。協議の前提となる捕虜の解放が難航しているためだ。アフガンのガニ大統領は捕虜解放を渋り続けており、米大統領選の結果を見たい意向があるとも指摘される。
米国とタリバンが2月に結んだ和平合意には、駐留米軍の14カ月以内の完全撤収のほか、政府がタリバン側の捕虜5千人を、タリバンが政府側の捕虜千人を解放し、その後、政府とタリバンが和平協議を開くことが盛り込まれた。
ガニ氏は捕虜4600人の解放は認めつつ、「重大な犯罪に関与した」(アフガン政府)とされる400人については消極的な姿勢を示した。タリバン側は「千人すべて解放した」と発表している。
ガニ政権の姿勢に対し、アフガンで最高の権威をもつ意思決定機関ロヤ・ジルガ(国民大会議)は9日、400人全員の解放を求め、和平協議の開始を促した。それでもガニ氏は追加の解放は80人にとどめた。
ガニ氏は、米国とタリバンとの和平合意について、自身が直接介在できない形で進んだことに不満を抱いているという。また、アフガン政府にとって捕虜の処遇はタリバンとの数少ない交渉カードであることも解放に慎重な理由とされる。
地元政治評論家は、「ガニ氏は、(現在の和平プロセスを強く推進した)米国のトランプ政権が継続するか、見極めようとしている可能性がある」と分析する。ただ、民主党候補のバイデン前副大統領もトランプ政権と同様、駐留米軍の撤収を打ち出している。大統領選の結果によって、駐留米軍撤収や国内勢力同士の和平進展を求める米国の方針にどれほどの影響が出るかは未知数だ。
国内の和平協議が始まらない一方、米国は2月時点で約1万2千人いた駐留米軍の撤収作業に着手しており、既に8600人にまで削減した。トランプ氏は「11月には4千~5千人になる」との見通しを示している。
政府の後ろ盾となっている米軍の撤収が完了すれば、ガニ政権は国内の治安維持に一層不安を抱えることになり、求心力低下は避けられない。捕虜の全面的な解放に踏み切るかガニ氏の判断に注目が集まりそうだ。
2020.6.12-産経新聞 THE SANKEI NEWS WEB-https://www.sankei.com/world/news/200612/wor2006120018-n1.html
米、国際刑事裁に制裁 アフガン戦捜査で大統領令
【ワシントン=住井亨介】
トランプ米大統領は11日、アフガニスタンでの米兵らの戦争犯罪を捜査する国際刑事裁判所(ICC、本部・オランダ・ハーグ)当局者に対し、制裁の発動を可能にする大統領令に署名した。ICCが3月、昨年4月に退けた米兵らの捜査を承認したことへの対抗措置だ。
トランプ氏は大統領令で「
ICCの行動は米国の主権を侵害する恐れがあり、米国と同盟国の安全保障や外交政策を妨害し、脅かす」と強調した。米国はICCに加盟していない。
大統領令によると、米国民の捜査や訴追に関与したICC当局者について、米国内の資産を凍結し、当局者と家族の入国を制限することが可能になる。
ICCは「
法の支配や裁判所の手続きに干渉する試みだ」などと米国の動きを非難する声明を出した。
2002年設立のICCは戦争犯罪やジェノサイド(集団虐殺)、人道に対する犯罪などを扱う。ICCは昨年4月、米兵らの正式捜査を求めた検察官の請求を却下したが、今年3月の上級審が判断を覆した。検察官は、
アフガンでの対テロ戦で米兵らが拷問や強姦(ごうかん)などの戦争犯罪を行った疑いがあるとしている。
アフガンはICCに加盟しているが、戦争犯罪は自国で訴追されるべきだとの立場を示してきた。
バー米司法長官は11日の記者会見で「(ICC検察局の)長期にわたる汚職や不正行為を疑わせるに十分な情報がある」と発言。バー氏はロシアの関与にも言及したが、具体的には明かさなかった。
オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も記者会見で「日本や英国、ドイツから改革を求めたにもかかわらず、ICCは役立たずで無責任だ」と批判した。
2020.5.17-日本経済新聞-https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59220140X10C20A5FF8000/
アフガン、権力分割で合意 アブドラ氏が和平けん引役
【イスラマバード=共同】
アフガニスタンのガニ大統領と、政敵で行政長官だったアブドラ氏は17日、政治権力を分け合う合意文書に署名した。双方の陣営が明らかにした。アブドラ氏が反政府武装勢力タリバンとの和平交渉のけん引役を担い、
両氏が閣僚を半分ずつ任命する内容だ。
アフガンでは昨年9月の大統領選で次点だったアブドラ氏が選挙に不正があったとして、ガニ氏の再選を受け入れないと主張。
今年3月に両氏が、それぞれ大統領に就任したと宣誓し、対立していた。
その後、ポンペオ米国務長官が首都カブールを訪れ、両氏の仲裁を図ったが不調に終わり、アフガンへの支援を削減すると発表し圧力をかけていた。
地元メディアによると、和平プロセスの指導部の役割を果たす「国家和解高等評議会」を新設し、アブドラ氏が議長に就任する。タリバンとの協議に臨む政府交渉団は評議会の方針に基づき、交渉に当たるという。
2月末の米タリバンの和平合意は、アフガン政府側がタリバンの捕虜を最大5千人、タリバンは政府側の捕虜を最大千人、それぞれ解放した後、停戦に向けた協議を開くとしている。しかし、これまで解放された捕虜は少数で、双方の戦闘は増加傾向にあり協議のめどは立っていない。
ガニ、アブドラ両氏は前回2014年の大統領選を巡っても対立。この際はアブドラ氏が首相職に相当する新設の「行政長官」に就き、ガニ氏と「挙国一致政権」を樹立することで決着した。
2020.5.15-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/200515/wor2005150031-n1.html
ガニ大統領、タリバン攻撃指示 テロ続発で 和平プロセスに暗雲
【シンガポール=森浩】アフガニスタンの
ガニ大統領は15日までに政府軍に対してイスラム原理主義勢力タリバンへの攻撃を指示した。
新型コロナウイルス禍の中、国内で続発したテロを「
タリバンの犯行」と断じて攻勢を命じた形だが、
タリバンは反発。戦闘が激化する懸念があり、
2月の米国とタリバンの合意に基づく和平プロセスの行方は不透明さを増している。
攻撃指示の契機となったのが、12日に相次いだテロ事件だ。
首都カブールで武装した3人が病院を襲撃し、乳幼児を含む24人が死亡。東部ナンガルハル州でも警察官の葬儀で自爆テロがあり、32人が死亡した。
タリバンは両事件への関与を否定したが、
ガニ氏はタリバンとイスラム教スンニ派過激組織「
イスラム国」(IS)の犯行と断定。政府軍に対して
「積極的な防衛」から「攻撃」に切り替え、タリバンへの攻撃を再開するよう指示した。ガニ氏には一貫してタリバン側への不信感があり、対応を強化する姿勢を見せて政府の存在感を示したい思惑もあるようだ。
ガニ氏の決定に対して、タリバンは報復措置として14日に東部パクティア州で自爆テロを起こし、市民5人を殺害した。
米国は12日の事件はISの犯行との見方を示し、対立の収束を促す。ハリルザド・アフガン和平担当特別代表は
「ISは政府とタリバンの和平に反対している。和平を遅らせるべきではない」とし、双方が協調する必要性を訴えた。
新型コロナをめぐり、アフガンでは約5600人の感染が確認されたが、脆弱(ぜいじゃく)な医療態勢から感染の実態がつかめない状況が続く。ハリルザド氏は「
すべての関係者が新型コロナとの戦いに全力を注ぐべきだ」と主張しているが、国内対立の解消は容易ではない。
2020.3.9-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/200309/wor2003090026-n1.html
アフガン、ガニ大統領が2期目就任 「2つの政権」並立も
【シンガポール=森浩】アフガニスタンの首都カブールで9日、
大統領選(昨年9月投票)で再選されたガニ大統領の就任宣誓式が行われた。第1期ガニ政権でナンバー2の行政長官を務め、
選挙結果に反発するアブドラ氏も独自の宣誓式を実施。2つの政権が並立しかねない事態といえ、政府とイスラム原理主義勢力タリバンの協議にも影響を及ぼしそうだ。
大統領選の結果は2月18日に公表されたが、
次点だったアブドラ氏は「開票に不正があった」と反発。
独自の政権樹立を表明していた。政府内の対立を憂慮した米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表が両者の調整に当たったが、不調に終わったもようだ。
ハリルザド氏や国連アフガン支援団の山本忠通代表らはガニ氏の宣誓式に参加しており、ガニ氏を支持する姿勢を打ち出した。カルザイ前大統領ら一部の政治家はどちらの式典にも参加しなかった。
29日に合意された米国とタリバンの和平では、政府とタリバンの双方が捕虜を解放し、停戦に向けた協議を3月10日に始めることが盛り込まれた。だが、
ガニ氏はタリバン捕虜5千人の解放に消極的で、解放が協議の前提とするタリバンとの間で溝が深まっている。
タリバンとの協議について、政府は代表団の選出に難航しており、実施を危ぶむ声も出ている。ガニ氏は9日の演説で、「10日までに和平の交渉チームを決める」と話し、交渉の進展に意欲を見せた。
2020.3.5-NHK NEWS WEB-
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200305/k10012314261000.html
米軍がタリバンを空爆 和平合意後 初か
アフガニスタンに駐留する
アメリカ軍は、反政府武装勢力タリバンが南部ヘルマンド州で政府の治安部隊に相次いで攻撃をしかけたとして、タリバンに対し空爆を行ったと明らかにしました。空爆はアメリカとタリバンとの和平合意後、初めてとみられ、和平合意への影響が懸念されています。
アフガニスタンに駐留するアメリカ軍の報道官は4日、南部のヘルマンド州でタリバンが政府の治安部隊に相次いで攻撃をしかけたとして、タリバンに対し空爆を行ったとツイッターで明らかにしました。
そのうえで
「空爆はタリバンの攻撃を抑えるための防御的なものだ」と強調した上で、タリバンに対し攻撃の停止とアメリカとの和平合意の維持を求めるとしています。
アメリカとタリバンは、2001年の同時多発テロ事件以降続くアフガニスタンでの軍事作戦をめぐり、先月29日、アメリカ軍の完全撤退を含む初めての和平合意に署名したばかりで、アメリカ軍による空爆は和平合意のあと初めてとみられます。
アメリカとタリバンは事実上の停戦にあたる1週間の「暴力の削減措置」に先月、合意しましたが、その後も南部や北部などでタリバンによる攻撃が散発的に続いていて、アメリカ軍による空爆は和平合意の着実な履行に向けてタリバンをけん制した形です。
タリバンとアフガニスタン政府は今月10日にも直接対話を行う見通しですが、タリバンの反発は避けられず、和平合意への影響が懸念されています。
2020.3.2-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/200302/wor2003020021-n1.html
タリバン構成員解放「密室で決められた」 アフガン大統領、和平合意内容に苦言
【シンガポール=森浩】アフガニスタンのガニ大統領は1日、米国とイスラム原理主義勢力タリバンの和平合意に盛り込まれた政府が拘束しているタリバン構成員5千人の解放について、
「密室で決められたもので、解放の約束はしていない」と述べた。和平合意の陰で埋没している政府の存在感を示すとともに、10日から始まる予定の政府とタリバンの直接対話で主導権を握りたい意図がある。
ガニ氏は首都カブールでの会見で
構成員の解放について、「米国ではなく、アフガン政府に権限がある」と強調。解放は前提条件ではなく、タリバンとの対話における「交渉材料」との見方を示した。
また、合意の前提として2月22日から実施された「暴力の削減」措置は「今後も継続される」と話し、恒久的な停戦につながることに期待を示した。
一方、大統領選の結果に反発して独自の政権を作ることを明言しているアブドラ行政長官は、ガニ政権が「和平プロセスを独占している」と批判。ガニ氏が作るタリバンとの交渉チームを認めない可能性があり、内政の混乱が国内での対話の行方に影響を及ぼす可能性もある。
2020.3.1-NHK NEWS WEB-
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200229/k10012308131000.html
米政府とタリバン 米軍完全撤退含む初の和平合意に署名
2001年の同時多発テロ事件以降続くアフガニスタンでの軍事作戦をめぐり、アメリカ政府と反政府武装勢力タリバンは、
アメリカ軍の完全撤退を含む初めての和平合意に署名しました。これを受けて、アフガニスタン政府とタリバンは3月上旬、直接対話を始める見通しですが、
課題は多く、和平の先行きは見通せない状況です。
アメリカのトランプ政権とタリバンは中東のカタールで29日、2001年の同時多発テロ事件を受けたアメリカの軍事作戦開始以降、初めてとなる和平合意に署名しました。合意では、
▽アフガニスタンに駐留する1万2000人から1万3000人のアメリカ軍について、135日以内に8600人まで削減するとともに、
▽今回の発表から14か月以内に残りのアメリカ軍とNATOを中心とする国際部隊も完全撤退させるとしています。
また、
▽タリバンの戦闘員など人質の交換の手続きに直ちに取りかかることや、
▽タリバンに対する制裁の解除も進めるとしています。
ただ、その条件として、タリバンに対し、
国際テロ組織アルカイダなどアメリカの安全を脅かすすべてのグループとの関係を断ち、アフガニスタンを再びテロの温床にしないことなどを求めています。
署名に同席したアメリカのポンペイオ国務長官は、
「タリバンが合意を守るか見極め、その行動に合わせて撤退のペースを決める」と述べ、タリバンに対し、合意を守るようくぎを刺しました。
これに対し、タリバンの代表は
「和平合意を十分に順守する用意ができている」と述べ、合意の履行に前向きな考えを示しました。
今回の合意を受けて、アフガニスタン政府とタリバンは3月10日に直接対話を始めるとしており、アメリカ政府高官は、ノルウェーの首都オスロで行われるという見通しを示しました。
トランプ政権としては、秋の大統領選挙を控え、アフガニスタンからの撤退を成果にしたいねらいがありますが、現地の治安が安定するかどうかや、激しく対立してきたアフガニスタン政府とタリバンが和解できるかなど課題は多く、和平の先行きは見通せない状況です。
和平交渉の経緯
トランプ大統領は就任前から「アフガニスタンでのアメリカ軍の駐留は、金のむだづかいだ」と批判し、アメリカ軍の撤退を重ねて主張してきました。
トランプ大統領は任期中の公約の実現に向けて、タリバンとの交渉にあたるアメリカの特別代表にアフガニスタン出身でガニ大統領とも旧知の仲である元国連大使のハリルザド氏を任命します。
そのハリルザド特別代表が和平合意の実現に向けて打った手が拘束されていたタリバンの有力者の解放でした。
タリバン側の求めに応じてまずパキスタン政府に拘束されていたタリバンのナンバー2のバラダル師の解放を実現させ、その後にバラダル師との間で和平に向けた本格的な交渉を進めたのです。
そして去年9月、アメリカ軍の一部撤退などを盛り込んだ和平合意の草案について、タリバン側と原則合意したと発表しました。
ところが
その直後、タリバンのテロ攻撃でアメリカ兵が死亡したことを受け、原則合意の発表から5日後にトランプ大統領は和平交渉の中止を発表します。
しかし、任期中の公約実現を目指すトランプ大統領は去年11月、感謝祭に合わせて現地に駐留するアメリカ軍の兵士を激励した際に、
タリバンとの和平交渉の再開を明らかにしました。
これを受けてハリルザド特別代表が再びタリバン側と交渉し、2月、7日間の暴力の削減措置で合意するとともに、約束が守られれば29日に和平合意に署名する方針で一致しました。トランプ大統領は2月、記者団に対して「タリバンは何十年も戦い続けている。われわれもアフガニスタンに19年駐留している。タリバンもわれわれも交渉を妥結させたい」と述べ、和平合意に前向きな姿勢を示していました。
外務省「和平に向けた最初の一歩」
署名式に出席した
日本の外務省の高橋克彦中東アフリカ局長は、「タリバンとアメリカの署名式が本当に実現したことをうれしく思う」と述べ、和平合意を高く評価しました。
そのうえで、「署名は、アフガニスタンの包括的かつ持続的な和平に向けた最初の一歩だ。今後、国際社会が力をあわせ、アフガニスタン政府とも協力して、真の和平に向けて努力していくべきだ。日本もしかるべき役割をしっかりと果たしていきたい」と述べ、日本としても引き続きアフガニスタンの和平の実現に貢献していく考えを示しました。
2020.2.22-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/200222/wor2002220021-n1.html
米とタリバン、「暴力の削減」開始 小規模攻撃も発生
【シンガポール=森浩】アフガニスタン和平をめぐり、アフガン国内で22日午前0時(日本時間同4時半)から米軍・政府軍と、
反政府のイスラム原理主義勢力タリバンによる7日間の「暴力の削減」が始まった。暴力削減が確実に履行されれば、29日にタリバンとの和平合意が署名される見通し。タリバン側が全土で確実に削減を実行できるかが最大の焦点となる。
初日となった22日は国内各地で暴力の削減を祝う市民の姿が見られた。暴力削減の詳細は明らかになっていないが、タリバン指導部は既に外国軍の基地や政府軍施設への攻撃を停止する命令を内部に出しているという。
ただ、タリバン内部では和平に反対する勢力がいるとされ、指導部の指示が末端まで行き渡るかどうか不透明だ。地元メディアによると、22日には北部バルフ州の地元政府施設などにタリバンが関与したとみられる小規模な攻撃があり、死傷者が出たもようだ。
アフガンのガニ大統領は21日夜、「和平実現のチャンスが訪れた。(政府軍は)非常に慎重に行動する必要があり、防御に徹する」と強調。タリバンに暴力削減の順守を求めた。
アフガニスタン女性の悲劇
(顧問・麗澤大学特別教授 古森義久)
女性の権利はいまや全世界で一致して主張される。
男性との平等が当然視される。そんな潮流のなかで、いま
世界でも最も苦しい思いをしているのはアフガニスタンの女性たちだろう。彼女たちの苦痛の悲鳴がいくつかの経路で外部世界に伝わってくる。各国のフェミニストたちにはぜひとも聞いてほしい悲鳴である。
アメリカの
バイデン政権はアフガニスタン政策に大失敗した。2021年8月、アメリカに支援されてきたアフガニスタン・イスラム共和国の政府は一気に崩壊してしまった。替わって
イスラム原理主義の政治勢力タリバンがまた復活した。
この政治の激変のなかで
最も苦しんだのはアフガニスタンの女性たちだと言えるようだ。20年前にアメリカ支援のアフガン各勢力に撃退されたタリバンがいままたアフガン国民に異様なほど厳格なイスラムの戒律を押しつけ始めた。
その新たな流れのなかで
これまで自由で男女同権を享受してきたアフガニスタンの女性たちがいまや自由を奪われ、苦痛のなかにいる。社会での活動の自由はもちろん教育の権利や単独での外出の権利さえもイスラム原理主義のタリバン政権によって奪われるようになったのだ。
私自身、アフガニスタンの現地でこのタリバンの女性抑圧がどれほど苛酷だったかを当事者たちから散々聞いた。
2002年2月、反タリバン勢力と米軍の連携作戦で首都カブールを追われたタリバン政権崩壊直後の現地での1ヵ月ほどの取材体験だった。
それまで女性の基本的な権利はほぼすべてイスラムの原理主義的な教理の下に奪われていた実態を数えきれない男女から知らされた。男性の同伴があって初めて許される外出でも
女性はブルカと呼ばれる頭から足首までの長いベール衣装の着用を強制されていた。ブルカは文字どおり女性の両目の部分が空いているだけの抑圧そのものの衣装だった。
私は当時、
カブール市中心部で開かれた女性解放を祝う集会をも目撃した。タリバン政権以前には医師、技師、ジャーナリスト、薬剤師、公務員など社会で活動していた職業女性たちの復帰の集まりだった。ブルカではなくカラフルな服装の女性たち200人ほどが集まっていた。それぞれがタリバンによる弾圧の被害を語っていた。
タリバン崩壊後に雑誌の編集長に復活したという女性は「
私は社会で働いていたという理由だけでタリバンにムチ打ちの刑を受け、在宅を強いられた。暗黒の時代が終わったいまはものすごく幸せだ」と熱を込めて語った。
ところがこの女性たちにその暗黒が戻ったのである
アメリカの大手新聞ウォールストリート・ジャーナルが2021年12月31日付でアフガニスタンの現地からの報道記事を載せていた。12月末といえば、タリバンの政権再奪取から4ヵ月ほど後である。
この記事は「
アフガン元女性兵士 『私は怖い』 タリバン政権下で」という見出しだった。その主題はアフガ二スタン北西部の都市へラートに住む28歳の女性がアフガニスタン共和国の国軍に勤務した経験のために、いまやタリバンから命を狙われることになり、恐怖に怯えているという実態だった。
この記事はまずそのヘラートの女性について以下の骨子を報じていた。
・アフガン国軍の士官を10年近く務めたジャミラ(仮名)はいまタリバンによる逮捕や処刑を恐れてヘラート市内を子供2人とともに転々としている。タリバンはかつての敵のアフガン国軍将兵を拘束し、懲罰する方針で、とくに女性の元将兵を憎み、その逮捕に力を注いでいるからだ。
・ジャミラは「
最近は毎日のように女性の元将兵が逮捕されて殺されたとか、そのまま行方不明になったという話しを聞く。私もこのままだと必ず懲罰を受けるだろう。もうこの国には自分の将来はないが、
パキンスタンやイランへの国外逃走も資金がなくて、できそうもない」と語った。
・国外に退避したアフガニスタン共和国政府の女性問題担当副大臣のホスナ・ジャリル氏は、「
タリバンは明らかに敵だったアフガン国軍将兵を長期拘束あるいは処刑にする方針を固めており、
とくに女性の元将兵を標的としている」と述べた。アフガン国軍総数30万ほどのうち女性はわずか約6,300人だったので、その追跡はわりに容易とみられる。だから毎日のように女性元将兵の処刑が伝えられるという。
以上のような状況だからジャミラという女性が恐怖におののくのも当然だと言えよう。
タリバンによるこの種の人権弾圧、とくに女性への弾圧はアメリカ側や国際人権擁護機関の懸念を生んではいるが、実際にできることが少ないようだ。
ウォールストリート・ジャーナルの同記事は以下の要旨をも報じていた。
・
国際人権擁護組織の「
人権ウォッチ」と
国連は2021年11月にタリバンがアフガン共和国軍の元将兵約100人以上を裁判なしに処刑した事実を確認し、抗議した。当時、タリバンは「報復の処刑はしない」と対外的に言明していた。
・
タリバンの2002年の政権崩壊以後、アフガニスタンでは合計350万人の女子が中等以上の教育に戻り、政府機関の職員の30%、国会議員の28%が女性というところまで女性の権利が認められた。だがタリバンはまたこの種の女性の進出を全面的に抑える措置を取り始めた。
・こうした窮状のアフガニスタンの女性に対してアメリカの人道団体や
国際関連機関が救出作戦を立て、とくに切迫した危険に直面するアフガン国軍の元女性将兵の救助も計画はされてはいるが、実効のある救出開始にはなかなか至っていない。
アフガニスタン国内と国外での救出の動きのこうした状況ではアフガン女性たち、とくに国軍に勤務したためにいまやタリバンから優先の標的とされる女性の元将兵たちの運命はすぐ目前に迫る危機に瀕しているのである。