アフガニスタン問題-1(タリバン)


2023.11.04-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20231104-C4WKYE6P2BOJJMOPJRPEYMENWA/
抑圧が少女の夢と命奪う 遺族「希望かなう社会を」 アフガン女性自殺

  アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権による抑圧原因で女性18人が自殺した「娘は医師になる夢を失い命を絶った」次女ニルファさん(18)を亡くした父モハマドジャワド・フサイニさん(50)が重い口を開いた。やり切れない表情で「女性が夢や希望をかなえられる社会に戻ってほしい」と訴えた。

  日本の高校3年に当たる学年だったニルファさんは7月下旬、家族で訪れた中部バーミヤン郊外の地元のモスク(イスラム教礼拝所)を1人で抜け出し、自宅トイレで首つり自殺した。フサイニさんは「もの静かだが、向上心の強い子だった」と振り返る。
  タリバンは2021年8月の政権掌握以来、女子の中等教育(日本の中学・高校に相当)を停止。22年12月には大学教育も停止した。(共同)


2023.10.15-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/qa/2022/08/15/24509.html
タリバンってそもそも何? 専門家に聞く
(国際部記者 北井元気)

  イスラム主義勢力タリバンが権力を掌握し、1年がたったアフガニスタンそもそもタリバンはどんな組織?どのようないきさつで結成され、何を目指しているのでしょうか?
  東京外国語大学の講師で、アフガニスタンやパキスタンの歴史や政治にくわしい登利谷正人さんに聞きました。(国際部記者 北井元気)

そもそも「タリバン」とはどういう意味ですか?
  タリバンは、イスラム教の神学校「マドラサ」で学んでいた学生が中心となって結成された組織です。マドラサで学ぶ学生はアラビア語で「タリブ」と呼ばれ、現地のパシュトゥー語の複数形が「タリバン」。みずから名乗ったのではなく、勢力を拡大していくうちにメディアなどを通じて「タリバン」という呼び方が定着していきました。
タリバンが結成されたいきさつは?
  タリバンが結成されたのは1994年ですが、その背景を理解するためには歴史は冷戦までさかのぼります。
  1978年にクーデターで成立した共産政権内部の路線対立により、アフガニスタンが勢力圏から離れることを恐れた旧ソビエトがアフガニスタンに軍事介入し、みずからが後ろ盾となる政権を設立しました。
  社会の急速な共産主義化が進められたため、「ムジャヒディン」と呼ばれるイスラム勢力が抵抗を始めます。旧ソビエトと対立していたアメリカなどの西側諸国、さらに隣国パキスタンの支援も受けて、旧ソビエト軍は10年後の1989年に撤退に追い込まれました。
  しかし、アフガニスタンはその後も内戦状態に突入。市街戦が繰り広げられ、略奪や女性に対する暴行が横行し、治安は乱れに乱れてしまいました。一方で、欧米諸国は、旧ソビエトがいなくなったあとは関心を失い、アフガニスタンはいわば国際社会に見捨てられた状況となりました。
  そうした状況のなかで、タリバンが結成されたのです。
なぜタリバンが勢力を拡大したのですか?
  タリバンは、長く続いた混乱を収めるという目標を掲げ、それを多くの人が支持した上、隣国パキスタンからの軍事的な支援も決め手となりました。
  パキスタンは、アフガニスタンの混乱が深まれば、多くの難民が自国に押し寄せる懸念があったことや、インドとの対立のなかで、アフガニスタンを安定させ、自国の影響力を及ぼしたいという思惑もありました。
  このため、パキスタンの軍の情報機関が中心となって資金や武器を供与し、タリバンは結成から2年後の1996年にカブールを制圧し、国土の大半を支配下におさめました。
タリバンは当時何を目指していたのですか?
  タリバンの結成当時の最大の目的は、内戦で混乱した国内の秩序や治安を回復し、安心して暮らせる社会をつくることでした。さらに、外国の勢力を排除することも大きな目標です。
  それは、旧ソビエトの軍事介入で国が疲弊したという歴史、さらに、タリバン内部にも多いパシュトゥン人の間で、伝統的に「独立」といった価値観が尊ばれていることも影響しています。 タリバンは、イスラム教を軸とした「アフガニスタン・イスラム首長国」の建国を掲げています。
なぜタリバンはビンラディン容疑者とつながったのですか?
  国際的な孤立が原因です。旧タリバン政権は女性に「ブルカ」の着用を強制したり、教育や就労を禁止しました。また前政権の幹部の公開処刑など、極端な行動に出て、国際社会からの支援が得られなくなりました
  そこに、アフリカのスーダンにいたとされるアルカイダのビンラディン容疑者がアフガニスタンに拠点を移しました。代わりにタリバンは、裕福で資金的に余裕があったビンラディン容疑者側からの資金的な支援を得たとされています。タリバンとアルカイダの幹部や戦闘員どうしの家族間での婚姻も行われていたとも指摘されています。
  また、タリバンのメンバーは結成以前、共産主義政権と戦っていた際には、アルカイダのメンバーでもあるアラブ系の義勇兵とともに戦っていたため、以前からの戦友のような感覚もあったのではないでしょうか。
旧タリバン政権が崩壊しても、組織は壊滅しなかったのですか?
  タリバンはアフガニスタンの地方出身の人が集まった組織です。2001年のアメリカ軍などによる軍事作戦で政権は崩壊しましたが、タリバンの戦闘員は地盤となっている南部など地元に戻りました。さらに、パキスタンの国境地帯に潜伏したタリバンの幹部をパキスタンの情報機関などがかばっていたと言われています。
  パキスタンの情報機関の中にもパシュトゥン人が一定数いることや、過去の支援から、タリバンの幹部たちとパキスタンの情報機関はいわば「顔見知り」となっていて、パキスタンが陰でこうした幹部の生活を支えていたようです。その後、アフガニスタンでは、新たな国づくりが始まりましたが、次第に汚職が広がるなどしてうまくいかないことが明らかになり、人心も離れていったため、タリバンの勢力は回復していきました。
タリバンの強さはどこにあるのでしょうか?
  タリバンが地方で支持を広げていることが大きいと言えます。アフガニスタンの大部分を占める地方部では“女性が傷つけられては家の名誉に関わる”という考え方が残っていて、そうした考え方は女性の就労や教育を禁止してきたタリバンの考え方に近いという実態があります。
  また、これまでのアフガニスタン政府では汚職がはびこり、地方では何かあっても行政機関が十分に機能せず、地域の有力者に相談することで解決することも多いのですが、こうした有力者がタリバンを受け入れたり、タリバン自身が物事の解決や、仲裁に乗り出すこともあるようです。 また、学校は教員が足りずに機能しないことも多く、教育をマドラサやモスクが担い、こうしたところの有力者もタリバンと通じていることもあるそうです。
再び権力を掌握したタリバンは当初何を目指していたのでしょうか?
  タリバンが目指していたのは、アメリカなどによる「外国支配」からアフガニスタンを解放し、現地のイスラムの考え方に基づく統治を行うことでした。これは、2001年以降のアメリカを中心とした欧米などによる「外国支配」からの脱却ということも意味しますが、それだけではありません。
  アフガニスタンはソ連の影響下にあった1978年に成立した共産主義政権と、翌年のソ連軍の軍事侵攻による事実上のソ連統治、90年代に周辺各国の思惑に翻弄される形で突入した内戦など、数十年間にわたって「外国支配」が長く続いてきたとタリバンは考えています。
  また、長期にわたる「外国支配」でアフガニスタン社会全体に外国の思想・影響が蔓延しているともみなしてきました。そのため、タリバンはアフガニスタン国民自身による統治を回復し、国内の政治・社会体制を、タリバン自身が考えるところのアフガニスタンの現地の規範や慣習に適合させる形で「純化」しようと考えていると思います。その際に、現地の規範や慣習の基盤となる考え方の1つがタリバンが解釈するイスラム思想です。
1年がたって、タリバンの方針に変化は見られますか?
  基本的な統治方針は変わっていないと思います。アフガニスタンの自立化と統治の正統性を確保するためには、国民からの継続的な支持が必要となります。そのため、タリバンは国民生活の向上、具体的には社会経済的側面からの生活環境の改善に最も力を傾注しているようです。
  実際、周辺国や関係各国からの支援、特に経済的支援を全方位的に受け入れようとする姿勢も見られ、正式な国家承認をしている国が存在しないにもかかわらず、様々な国や国際機関との外交を展開しています。 一方で、タリバン自身が「外国支配」からの脱却と内政と社会制度の「現地化」を統治の軸としていることから、国内政治に関連する事項については、簡単に妥協することはないと思います。
  例えば、国際的に非常に関心の高い女性の教育や地位をめぐる問題については、タリバン内部でも、国際承認や支援との関連から様々な意見があると思います。ただ、全体としては、国際的に「普遍的」と考えられている事柄でも、彼らにとって受け入れ難い内容と判断されれば、これは「外国からの介入」と捉えて頑強に抵抗すると思います。
  他の事項も含めて、アフガニスタン内政の変化を促すためには、国際的な懸念事項をタリバン自身が考える現地の「普遍性」というものに適合させていく必要があります。そのためには、彼ら自身の「普遍性」を是認せずとも、その構造を理解しつつ、粘り強い対話が必要になると思います。
日本はアフガニスタンにどう関わっていけばいいと思いますか?
  アフガニスタンは遠いようですが、日本にとって身近な存在です。日本はアフガニスタンのインフラや農業の支援に長く関わり、2002年などには東京でアフガニスタン復興会議を開いて、国づくりに協力することを約束しました
  さらに、干ばつで苦しむアフガニスタンの人たちを助けようと、用水路の整備など農地の再生に長年取り組んだ中村哲さんをはじめ、NGOなど民間支援も長い歴史を持っています。これからアフガニスタンは再び内戦になるかもしれませんし、経済の先行きもわからない状況ですが、常に困っているのは普通に暮らしている人たちです。一般の人々の生活をどう安定させるのか、何が必要なのか、日本から考えていくことは非常に大事です
  大国はこれまで、さまざまな思惑でアフガニスタンに近づいたり、離れたりしてきましたが、中村哲さんがアフガニスタンにあれだけ受け入れられたのは、かつてのムジャヒディンの時代や旧タリバン政権、その後のアフガニスタン政府のときにも、どの政権かにかかわらず、ずっと農村を支援していたからです。また、国際社会が関与して安定した社会にしていかないと、アルカイダのときのようにテロの温床となってしまうことも懸念されます。
  そのためにも人々の生活の安定が不可欠で、これまでの日本の経験をもとに支援することで、ひいては日本の安全にも寄与するし、日本という国のプレゼンスを高めることにもつながるのではないでしょうか

東京外国語大学 講師 登利谷正人さん
  専門はアフガニスタンやパキスタンの地域研究。パキスタンのペシャワール大学で学んだのち、日本学術振興会特別研究員などを務める。東京外国語大学ではアフガニスタンとパキスタンの近現代史や、パキスタンのウルドゥー語、両国で用いられるパシュトゥー語を教えている。


2023.09.18-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20230918-AU4POESKJROM7B2UQTAHEM6GXA/
タリバン、米国人拘束か キリスト教系NGO職員

  アフガニスタンで活動するキリスト教系の非政府組織(NGO)「国際支援ミッション(IAM)」は18日までに、職員18人が同国のイスラム主義組織タリバン暫定政権の治安部隊に拘束されたと明らかにした。アフガンメディアは、うち1人が米国人で、キリスト教を布教していた疑いがあると伝えた。

  IAMによると、今月3日に中西部ゴール州の事務所に勤務する3人が、13日には同事務所から15人が拘束された。米国人以外は現地職員で、いずれも首都カブールに身柄を移送された。IAMは拘束理由は不明としている。
  AMは1966年からアフガンで、医療や教育分野での支援活動を行っている。2010年には北東部バダフシャン州で、医師や看護師らIAMの関係者10人が殺害され、タリバンが「布教活動をしていた」として犯行を認めた。犠牲者には米国、英国、ドイツ人計8人が含まれていた(共同)


2023.09.01-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20230901-HBMD2P47JRMR5PCNKIHHQMOR2M/
米国外からアフガンの対テロ作戦継続 撤収2年で米軍

  米国防総省のライダー報道官は8月31日の記者会見で、米軍がアフガニスタン国内での対テロ作戦に関与し続ける方針を強調した。無人機で過激派を監視する「オーバー・ザ・ホライズン(地平線の向こうから)」と呼ばれる作戦を「継続する」と述べた。

  2001年9月の米中枢同時テロをきっかけに駐留を始めた米軍は21年8月30日に撤収を完了した。オースティン国防長官は声明で「アフガンでわれわれと共に戦い、現在はアフガン国外で生活する人々への支援を続ける」と表明。撤収後、11万5000人以上のアフガン人を米国に受け入れてきたと説明した。
  オースティン氏は、撤収完了直前に過激派の自爆テロで犠牲になった米兵13人にも言及し「米史上最長の戦争」で失われた米兵や同盟国兵士を悼んだ。(共同)


2023.08.22-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230822-NTTZVVX27RODFOQBJJAYKAU6JE/
主張-タリバン復権2年 恐怖政治は未来を閉ざす

  アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンが、首都カブールを制圧し、権力を掌握してから2年が経過した。この間タリバンは、女性の教育や就労を大幅に制限したり、公開処刑を復活させたりするなど、国民への抑圧を強めた
  タリバンを正当な政権として承認した国はなく、歳入の多くを占めていた国際社会からの援助が滞ったことで、貧困は急速に進んだ。国連は食糧不足なども含め「世界最悪の人道危機の一つ」と指摘する。
  タリバンは恐怖政治が国の未来を閉ざしている現実を直視すべきだ。国際社会に制裁解除を求めているが、抑圧的な政策を改めるのが先である

  タリバンはカブール制圧直後、「イスラム法の範囲内で女性の人権を尊重する」とアピールしたが、言葉だけに終わった。日本の中学・高校に当たる中等学校や大学への女子生徒の登校を禁止し、国連と非政府組織(NGO)で女性の出勤停止を通告した。
  国連のグローバル教育担当特使を務めるブラウン元英首相は今月、女性への抑圧は「人道に対する罪として訴追すべきだ」と国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官に捜査を求める書簡を送付した。
  人口の半数を占める女性から教育や就労の機会を奪うことは深刻な人権侵害であり、自国の発展の可能性を閉ざすも同然の愚策である。ともに社会を支える存在として、女性を学校や職場に復帰させるべきだ。
  国際的に孤立するタリバンに接近しているのが中国だ。中国はタリバンの政権を承認していないものの、アフガンの安定化に関与する姿勢を示している。中国は、タリバンの人権侵害をほとんど問題視せずに経済協力を進めようとしており、懸念する声があがっている。
  国連安全保障理事会は4月、アフガンでの女性に対する抑圧的な政策の即時撤回を求める決議案を中国も含む全会一致で採択した。決議案は日本が中心となり90カ国が共同提案した。
  中国がアフガンへの関与を強めるのであれば、まずはこの決議の重さをタリバン側に説くべきではないか。同時に日本も国連などと協力し、アフガン国民に直接届く支援が実現するよう力を尽くしてほしい


2023.08.16-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20230816-AEHA4VCY2BMWDF22FT7HHKF47Q/
ICCにタリバン捜査要請 国連教育特使の元英首相

  国連のグローバル教育担当特使を務めるブラウン元英首相は15日、オンライン記者会見し、アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバン暫定政権が女性を抑圧しているとして、国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官に人道に対する罪で捜査を求める書簡を送ったと明らかにした。

  タリバンは2年前に復権して以降、女性に対して日本の中学・高校に当たる中等教育や大学教育を停止。国連と非政府組織(NGO)で女性の出勤を禁じ、全国の美容院の閉鎖も命じた。
  ブラウン氏は「少女の教育と女性の雇用を否定することはジェンダー差別で、ICCは人道に対する罪として訴追すべきだ」との見解をカーン氏に伝えたという。
  ICCが3月にウクライナからの子どもの連れ去りに関与した疑いでロシアのプーチン大統領らに逮捕状を出したことに触れて「子どものために介入した前例がある」として、タリバンの女性抑圧を同様に問題視するよう求めた。(共同)


2023.08.15-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/b10d4b17a6683044080dae6cbba1a7873fdab0e7
アフガン貧困深刻化、中国が浸透図る タリバン首都制圧2年

  【シンガポール=森浩】アフガニスタンでイスラム原理主義勢力タリバンが首都カブールを制圧し、15日で2年を迎えた復権したタリバンは独自のイスラム法解釈に基づき、公開処刑を復活させ、音楽や女性の教育を禁止するが、国内の経済悪化には打つ手がない状況だ。米軍撤収で生まれた力の空白を好機として、中国が影響力拡大を本格化させている。

■「女性図書館」閉鎖
  「アフガン音楽の伝統は終わりだ」。産経新聞の電話取材に地元音楽家のミルワズさんはこう話した。1年前に記者が取材に訪れた際、ミルワズさんはタリバンが音楽を「イスラム的ではない」と敵視する中で、ひそかに伝統の打楽器「タブラ」の練習をしていた。
  「今は監視が厳しく、練習は無理。密告する住民もおり、仲間で集まることもできない」と話す。
  タリバンはカブール制圧直後は穏健路線をアピールしたが、昨年12月に公開処刑を復活させ、旧政権期(1996~2001年)さながらの苛烈な統治を取りつつある。女性への抑圧も強め、中等学校(日本の中学、高校に相当)への女子生徒の登校を禁止
  昨年8月に活動家が開いた女性のための図書館は今年3月に閉鎖に追い込まれた。 国内では貧困が急速に進む。タリバン暫定政権を承認した国はなく、最大時に国の歳入の8割を占めた国際援助は打ち切られた。国連によると、人口の3分の2に上る約2920万人が支援を必要とし、約270万人が特に深刻な食料不足に直面。国連は「世界最悪の人道危機の一つ」とする。
■天然資源狙う 中国はそうしたアフガンに触手を伸ばす
  タリバン暫定政権を承認していないが、アフガンを安定させ、国内へのイスラム過激派の流入を防ぐ思惑がある。アフガンに埋蔵されている金や銅、バッテリーの生産に欠かせないリチウムなどの天然資源にも注目している。
  中国は4月、ロシア、イラン、伝統的にタリバンに近いパキスタンとともにアフガン問題を協議する外相会合を開催。7月には中国北西部甘粛省から鉄道などでアフガンに物資を運ぶ輸送ルートの運用を開始し、同国への浸透を図る。
  タリバン側は中国を国土再建の「歓迎すべき友人」と呼んでいる。 カブール陥落後の21年8月30日に駐留軍を撤収させた米国は、7月下旬にタリバン代表とカタールで会談し、他のテログループのアフガン内での活動について確認した。
  「アフガンをテロの温床としない」というタリバンとの和平合意の履行に神経をとがらせるが、関与は限定的だ。 米側は女子の中等教育禁止なども撤回を要求。タリバンは米国が凍結したアフガン政府資産の解除を求めるが、独自のイスラム法解釈を崩す考えはなく、米国の要求に耳を貸さなかったようだ。
  タリバン支配が固定化しつつある中、カブールに住む男性(50)は「次にアフガンに来る大国(中国)が何を考えているかは知らない。ただ、どの国でもいい。解決してほしいのはこの貧困だ」と話した。


2023.01.06-KYODO-https://nordot.app/984087416594153472
中国、アフガンで油田開発 タリバン政権と契約締結へ

  【ニューデリー共同】アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権中国企業と油田開発契約を結ぶ方針だとロイター通信などが6日までに報じた。

  2021年の政権奪取後初となる海外企業との大規模資源開発契約という。 中国は公式にはタリバン政権を認めていないが、巨大経済圏構想「一帯一路」を進める上でアフガンを重要視米軍撤退後のアフガンで影響力を高める狙いがありそうだ。 
  契約はアフガン北部アムダリヤ盆地の油田開発に関するもの。25年間の契約期間で当初の投資額は年1億5千万ドル(約200億円)に上り、その後増額する見通し。
一般社団法人共同通信社



2022.12.03-Yahoo!Japanニュース(KYODO)-https://news.yahoo.co.jp/articles/618f2d4c4333d43d8c14b28bbb2db6ef12b578b7
アフガン人同行者が計画を漏えい 中村さん殺害事件、襲撃犯に

  【カブール共同】2019年12月4日、福岡市の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表だった中村哲医師=当時(73)=がアフガニスタンで殺害された事件で、中村さんに同行していたアフガン人(死亡)が報酬目当てで中村さんの行動計画を漏らしていたと、襲撃犯グループに近い関係者が供述したことが3日分かった。捜査当局者が明らかにした。

  捜査当局者は、襲撃犯が中村さんの車を先回りして待ち伏せした犯行状況から内部情報を基に襲撃方法を決めたとみられる」と指摘、組織的で計画的な事件と強調した。  ペシャワール会は中村さんの遺志を継ぎ、事業を続ける」とだけコメント。


2022.09.01-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20220901-MRK4DFK4SBML7F6C66UVTCISX4/
アフガンに「女性図書館」 タリバン標的の可能性も「学び続けられる場所を」

  イスラム原理主義勢力タリバンが実権を握ったアフガニスタンの首都カブールで、このほど「女性図書館」がオープンした。女性活動家らが設置したもので、タリバンが女性の教育を制限する中、教育の助けにしたい考えがある。タリバンの標的となる可能性もあるが、設立者はそれでも教育の火を消してはならない」と話している。

  図書館は8月24日にオープンし、小説や学術書など約千冊を所蔵する。本のほとんどは寄贈されたものだ。海外からの寄付で運営するという。共同設立者の1人である女性活動家、ライラ・バシムさんは、設立の目的について「女性が学び続けられる場所を作りたかった。教育を受ける機会を少しでも確保することが大切だ」と話す。
  タリバンは昨年8月の実権掌握以降、女性の教育や就労を制限。中等学校(日本の中学、高校に相当)に在籍する女子生徒は登校を禁じられ、バシムさん自身も経済省で勤務していたが職を失った。
  現在のところ、図書館をめぐってタリバン側から警告や嫌がらせはない。「ただ、将来的にタリバンがどう出てくるかは分からない。国際的にこの図書館の知名度が高まれば妨害しづらくなるだろう」とバシムさんは話した。(カブール 森浩)


2022.08.31-NEWS WEEK JAPAN-https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/08/post-99509.php
除け者国家同士、タリバンとロシアが石油で手を組む-

<アフガニスタンの政権を奪取して約1年、国際的な経済制裁に苦しんできたタリバンは、ロシアから石油と食料を買うことにした>

  アフガニスタンのタリバン政権とロシア政府が、貿易協定をまとめようとしている国際的に孤立したタリバンが、喉から手が出るほど欲しいエネルギーを購入できるようにすると共に、厳しい制裁を受けているロシアの経済を下支えする取引だ。

  ロイターによれば、タリバンの代表団は8月29日にモスクワを訪問し、小麦、ガス、石油の輸入を確保するためロシアと交渉した。2021年に武力で政権に返り咲いたタリバンは、国際的な制裁と孤立から踏み出そうとしている。ウクライナへの武力侵攻で西側の制裁に苦しむロシアも同様だ。
  アフガニスタン商工省の匿名の幹部はロイターに対し、間もなく契約がまとまる見込みだと語った。
  2021年に米国がアフガニスタンから撤退し、強硬なイスラム主義組織であるタリバンが実権を握って以来、世界のどの政府もタリバン政権を正式に承認していない。経済の大部分を依存していた海外援助が止まり、アフガニスタンの人々はさらに貧しくなり、食べる物にも困る有り様だ。だが、ロシアや中国など米国と敵対する国々は、アフガニスタンの首都カブールに大使館を置いたままにしている。2月のウクライナ侵攻以降、厳しい経済制裁を受けているロシアは、タリバンとの貿易交渉も続けてきた。
送金には第三者の助けが必要
  カブールに本拠を置く民間テレビ局TOLOニュースによれば、アフガニスタンはすでに食料と石油の大部分をロシアから調達しており、両国の貿易額は年間2億ドルに達している。TOLOニュースは、アフガニスタン商業投資会議所の情報として、ロシアはすでに、他国より安い小麦や石油をアフガニスタンに提供していると伝えている。
  ロシアにとって石油の輸出は、経済の命綱だ。フィンランドのエネルギー・クリーンエアー研究センターの報告書によれば、ロシアはウクライナ侵攻後の100日間に、化石燃料の輸出で約930億ドルの収入を得た。主として中国とインド向けのものだという。ドイツ、イタリア、オランダ、フランス、ポーランドなどがなおロシアにエネルギーを依存していることも貢献したという。
  「それでも、多くの国や企業がロシアからの輸入を回避したため、5月の輸入量は侵攻前と比べて15%ほど減少した」と、報告書は述べている。
  タリバン政権のアフガニスタン商工省代理公使を務めるヌールディン・アジジはTOLOニュースに対し、ほとんどのアフガニスタンとロシアの銀行は制裁下にあり、金銭のやり取りについては第三国が手助けを借りることになると話した。
  「技術チームの一部はまだロシアに滞在しており、どのような送金方法があるかなど、詳細を詰めようとしている」
(翻訳:ガリレオ)


2022.08.15-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/qa/2022/08/15/24522.html
タリバン復権1年 女性の教育は?人権は?アフガニスタンの今-(国際部・北井元気)

  アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが再び権力を握ってから1年がたちました。
  女性の教育を受ける権利など人権は守られているの?・・・市民の生活はどう変わった?
くわしく解説します。(国際部・北井元気)

そもそも1年前に何が起きたの?
  それまで治安を担ってきたアメリカ軍などが撤退を進める中、去年8月15日にイスラム主義勢力タリバンが首都カブールに進攻。当時のガニ大統領は国外に脱出して政権が崩壊し、20年ぶりにタリバンが政権を握りました
  タリバンは旧政権時代、イスラム教を極端に解釈し、女性に「ブルカ」と呼ばれる全身を隠すベールの着用を求め、女性の就労や教育を禁止するなどして国際的な批判を浴びました。再び政権についたタリバンは記者会見を開き、女性の就労や教育などの権利を守ると明言していました。
  かつての姿勢がどう変わるのか、国際社会が注視していました。
女性の権利は守られているの?
  守られているとはいえず、むしろかつてのように人権を制限する動きもみられます。
  ことし5月、イスラム教徒の女性が人前で髪を隠すのに用いるスカーフ「ヒジャブ」の着用に関する指針を発表し、家族以外の男性の前では目だけを出し、顔を覆うことを義務づけました。さらに特段の理由がない限り女性は家にいたほうがよいとする方針を打ち出しました。
  一方、20年前はすべての女性に対して禁止していた教育をめぐっては、国際社会が批判を強める中、タリバン暫定政権は、大学にかぎり、校舎で学ぶ時間帯を男性と女性とで分けるなどして授業を再開させています。
  しかし、日本の中学校と高校にあたる中等教育の学校では、女子生徒が自宅待機を命じられ、登校ができなくなりました。男女別学などタリバンの解釈によるイスラムの教えに沿った環境が整っていないというのが、その理由です。
  ことし3月には暫定政権の教育省は授業を再開する見通しを示しましたが、当日になって急きょ延期しました。
  タリバンは延期の理由について手続き上の問題と説明していますが、暫定政権発足から1年がたっても再開の見通しはたっておらず、国連機関や各国からの批判が強まっています。
なぜ、変わらないの?
  専門家の中には「変えようにも変えられない状況」だと指摘する声があります。いま、政策を大きく変えた場合、イスラムの教えに厳格な保守強硬派からの支持を失いかねないからです。そもそもタリバンはイスラムの教えを極端に厳しく解釈した政策をとってきました。
  前回タリバン政権が樹立した1990年代は旧ソビエト軍の撤退後の内戦が長引く時期でしたし、今回もアメリカ軍の撤退直後で国内が混乱した時期でした。タリバンはこうした混乱の中で外国勢力ではなく、アフガニスタン国民自身の手で国を安定させていく姿勢が支持を集め、政権の座についてきました。
  だからこそ、自らの原理原則を曲げたとみられることに慎重にならざるを得ない状況になっているのです。
  一方、旧政権時代は恐怖政治などとの批判を受け、国際社会だけでなく国民からも支持を失い、結局政権を維持できませんでした。
  こうした経験から今回政権を握った当初は「20年前と今の我々は違う」と強調し、女性の就労や教育については「イスラムの教えの範囲内」で認めるとしていました。
  こうしたことからタリバン内部やアフガニスタン社会での妥協が成立すれば、長期的には女性の権利について改善も期待できるという見方もありましたが、国内の経済状況の悪化なども重なって、今変えることはより難しくなってきているといえます。
今後、改善する見通しはあるの?
  現時点では難しいといえます。それを印象づけたのが、暫定政権が2022年6月30日から7月2日まで首都カブールで開催した国の重要事項を話し合った会議です。
  イスラム教の指導者や部族長ら3000人あまりが集まり11の決議を採択しましたが、女性の権利については「イスラム法の範囲内で特に留意するよう求める」とするにとどまっています。
  国連や欧米などが繰り返し求める女性の人権の尊重についてタリバンが歩み寄る姿勢はありません。
市民の暮らしはどう?
  過去に例がないほど厳しい状況となっています。タリバンが復権したあと統治への懸念などから欧米各国が相次いで支援を停止し、保有していた海外資産も凍結されました。このため経済状況が極端に悪化しました。
  WFP=世界食糧計画は、アフガニスタンの国民のおよそ半数にあたる1890万人が、深刻な食料不足だと分析しています。
  さらに去年、過去30年で最悪とも言われる干ばつに見舞われたほか、ことし6月には、東部のホスト州を震源とするマグニチュード5.9の地震が発生。WHO=世界保健機関によりますと、8月7日の時点で1036人が死亡、2989人がけがをしました。
  タリバンの暫定政権を承認していない日本や欧米各国は、国際機関を通じた間接的な支援を行うにとどまっています。
治安はどうなっているの?
  これまで政府と反政府武装勢力が繰り広げてきたような戦闘は大幅に減っています。ただタリバンと対立する過激派組織IS=イスラミックステートによる散発的な攻撃が増加しています。
  去年10月には、北部クンドゥズと南部カンダハルにあるイスラム教シーア派のモスクを狙った自爆攻撃があり、少なくともあわせて120人が死亡しました。
  国連によりますと、タリバンが復権してからことし6月15日までの10か月の間に、ISによる攻撃で、市民700人が死亡、1400人以上がけがをしたということです。死亡した人のうち、159人は子どもでした。
  さらに経済の混乱から市民の間での一般的な犯罪も増えているということです。
「アルカイダ」との関係を絶つという合意は守られているの?
  アメリカは依然として関係が続いているとみています。
  そもそもタリバンとアメリカは2020年にアメリカ軍の完全撤退を含む和平合意、いわゆるドーハ合意に署名しました。このなかで、タリバンは、国際テロ組織アルカイダなどアメリカの安全を脅かすすべてのグループとの関係を断ち、アフガニスタンを再びテロの温床にしないことを約束していました。
  しかしその後もアルカイダと合同で軍事訓練を行うなど密接な関係が指摘されていました。
  アメリカ政府は8月1日、アルカイダの現在の指導者アイマン・ザワヒリ容疑者を、首都カブールの潜伏先の住宅で殺害したと発表しました。2001年の同時多発テロ事件に深く関わったとされる人物です。
  ホワイトハウスの高官によりますと、タリバンはザワヒリ容疑者とその家族をかくまっていた上、潜伏していた証拠を隠そうとしていたということです。
  アメリカ側の発表によれば、タリバンは合意に反してアルカイダ幹部との関係を続けていたことになります。
国際社会は今後どう向き合えばいいの?
  難しい判断を迫られています。多くの人々が危機的状況にある一方、タリバンの暫定政権を認めることはできないからです。
  女性の人権や教育問題などを理由に、暫定政権を承認した国はまだ1つもありません。

  
OCHA=国連人道問題調整事務所UNHCR=国連難民高等弁務官事務所は、ことし1月、食料支援や保健分野といった人道支援に、ことし1年間で総額50億ドル、日本円にして5770億円あまりが必要になるとして、各国に拠出を求めています。1か国に対する支援額としては過去最大です。
  グランディ難民高等弁務官は「時間は限られている。もしアフガニスタンが崩壊すれば、周辺国や、さらにその先に、多くの人々が流出する」と危機感を示しています。政権承認とは切り離した形で、各国から人道支援を促進する動きも出ています。
  暫定政権から人権問題などで譲歩を引き出す戦略と同時に、命の危機にさらされるアフガニスタンの人たちを守る国際社会全体の支援が必要です。


2022.08.15-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/1166878bb273f050db49e2a6dcce560ab0fbbab1
監視、臓器売買…「暗い時代に戻った」 アフガン首都陥落1年 タリバン統治、深まる困窮

  【シンガポール=森浩】アフガニスタンでイスラム原理主義勢力タリバンが首都カブールを制圧し、15日で1年が経過した。タリバンは人権抑圧を強め、国際社会の支援が停止したことで経済苦が深刻の度を増している。

  「人道危機と経済崩壊」が同時に押し寄せる中、7月にはカブールに国際テロ組織アルカーイダ最高指導者が潜伏していたことが判明。国際社会の承認は遠くなり、国内の貧困はさらに拡大しそうだ。
   「アフガンは監視と報復が当たり前の暗い時代に戻った」。
  カブールに住むファハミさん(30)は顔を曇らせた。ファハミさんは今年3月、突然自宅を訪れたタリバン構成員に拉致され、1週間監禁されて暴行を受けた。傷は重く、約2カ月間起き上がれなくなるほどだったという。
  きっかけはフェイスブック(FB)への投稿だ。タリバン構成員が自身の花嫁を軍用ヘリで移動させたという投稿に対してファハミさんは憤りを覚え、「個人の利益のために国の資産を使うべきではない」とコメントした。
  そのことがタリバンの怒りに触れた。「私は当たり前のことを言っただけだ。それも許されない世界となった」と話す。
  タリバンは実権掌握後、「包摂的政府」の樹立を宣言し、旧ガニ政権関係者の恩赦や、イスラム法(シャリーア)の範囲内での女性の権利保障を表明した。当初からその約束には疑念が呈されていたが、ファハミさんの例のような強権支配を展開している。
  国連の7月の報告によると、首都陥落から今年6月に掛けてタリバンが旧政権関係者ら160人を「超法規的に処刑」したという。 女性の権利についても、タリバンは首都制圧後、旧タリバン政権期(1996~2001年)に宗教警察として機能した「勧善懲悪省」を再設置した。
  同省は現在、女性が外出時にベールなどで顔を覆うことの徹底や、中等教育からの排除を進めている。 「暗闇に落ちた気分だ」。カブールに5人の子供と住む女性、シャキラさんはガニ前政権で財務省に勤務していたが解雇された。夫は10年に自爆テロに巻き込まれて死亡。「生活は日に日に悪くなり、貯金を全て使い果たした。女性の権利侵害に加え、経済的困窮が深刻だ。このままでは物乞いを始めなければならないだろう」と話した。
  シャキラさんの言葉通り、タリバン復権後、国内経済は極端に停滞し、食糧難につながっている。最大時に国家予算の8割を占めた海外援助停止や、米国による国外保有資産の凍結、ここ数年継続する日照りが背景にある。
  世界食糧計画は11月にかけて人口の約半数に当たる1890万人が「深刻な食料危機」に陥ると予測した。
  西部バドギス州のアジジさん(46)は「貧困によって臓器売買はかつてより当たり前となった」と打ち明けた。腎臓1つの値段は約1000ドル(約13万円)程度だという。タリバン支配以降、困窮が拡大したことで、その〝価格〟は下落傾向にある。複数メディアは住民が子供を人身売買業者らに売って生活費を得る様子も報じた。
   国連のまとめによると、国内では治安状況には一定の改善がみられるが、統治者となったタリバンがテロ攻撃を停止したことが主な理由だ。7月末にはカブールにアルカーイダ最高指導者のザワヒリ容疑者が潜伏していたことが判明し、米軍の無人機攻撃で殺害されたアフガン国土を「国際テロ組織に利用させない」というタリバンの約束に疑問符が付き、アフガンが再度〝テロの温床〟となる可能性はぬぐえない
  テロ組織との関係は欧米諸国だけでなく中国も懸念を抱き、1年がたっても暫定政権を正式な政府として承認した国はない。首都制圧後、国外に逃れた女性キャスター、ベヘシュタ・アルガンドさんは「タリバンはジャーナリストに圧力をかけ、女子の就学や就労を許さない。国際社会は到底容認せず、政権承認は遠いだろう」と指摘。国内の困窮は続くとの見方を示した。


2022.08.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20220815-OIK56LDO6RMHPPP75TX4DHGYSU/
当面続く国民の困窮 中東調査会・青木健太研究員 アフガン首都陥落1年
(聞き手 桑村朋)

  アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンが首都カブールを制圧し、約20年ぶりに政権を掌握してから15日で1年となった。中東調査会の青木健太研究員(現代アフガニスタン政治)にアフガンの現状や課題について聞いた。


  昨年8月のカブール陥落直後、「タリバンは国際社会に融和的になる」「旧政権に権力を分与する」との楽観的見方もあったが、1年が経過した今、内政、経済、人権などで厳しい状況が続いており、今後の見通しは非常に暗い。
  女性の中等教育の再開も指導部により撤回され、女性のへジャブ着用義務化や少数民族弾圧、旧政権関係者の排除など、人権問題やタリバンによる権力独占は深刻だ。ガニ政権時代は海外資金が流入し仕事も多かったが、タリバン政権下で経済は下降の一途だ。カブールの友人は「1年間、職が見つからない」と話していた。中産階級の失業は深刻で、生活苦から国外に出たい人も多い。
  タリバンは治安改善や汚職撲滅で成果を挙げてはいるが、明確な経済政策が出せていない。国際社会も課題を多く抱える政権を承認できず、国連・NGOを通じた「対症療法」しか行えない。心が痛むが、国民の困窮は当面続くだろう。
  国際テロ組織との関係断絶もできていない。アルカーイダ最高指導者のザワヒリ容疑者が殺害されたのはカブール中心部。強硬な治安対策の中、居所を知らないはずがない。他にもタリバン庇護(ひご)下で潜伏するテロ組織は複数あるようだ。
  アフガンは多民族国家で部族社会だ。多様性を重視する「包摂的政府」の実現が不可欠だが、反タリバン勢力との政治的和解の見通しは悲観的だ。諸外国は対話と関与を続け、タリバンに強い影響力を持つパキスタン軍への接触も含め、有効な働きかけを行わなければならない。
(聞き手 桑村朋)


2022.08.02-産経新聞-
アフガン、なお「テロの温床」 ザワヒリ容疑者 政府機関近くに潜伏

  【シンガポール=森浩】アフガニスタンの首都カブール国際テロ組織アルカーイダの最高指導者、ザワヒリ容疑者が殺害されたことは、米軍撤収後のアフガンがいまだにテロの温床である実態を浮き彫りとした。イスラム原理主義勢力タリバンが米国と合意した「国際テロ組織との関係遮断」を履行していない疑いは強い。カブール陥落1年を15日に控え、タリバン統治への不信感が高まる結果となった

  ザワヒリ容疑者が潜伏していた住宅はカブール中心部の高級住宅街シェルプール地区にあり、政府機関やタリバン幹部の自宅からもほど近い。タリバンはザワヒリ容疑者の居場所を把握していたとみられ、ロイター通信はタリバン関係者の話として、タリバンがザワヒリ容疑者に「最高レベルの警備」を与えていたと報じた。
  タリバンと米国は2020年2月、カタールの首都ドーハで和平合意に署名した。合意では米軍がアフガンから撤収する一方、タリバンはアルカーイダなど国際テロ組織と関係を断ち、国土を活動拠点として利用させないことが盛り込まれた。
  ただ、21年8月に米軍撤収は完了したものの、タリバンはアルカーイダとの関係を維持しているとの見方は根強かった。タリバンは1990年代、アルカーイダ指導者のウサマ・ビンラーディン容疑者を「賓客」として迎え入れて、原理主義化が進んだ経緯があり、両組織の縁は深い。
  タリバン暫定政権のザビフラ・ムジャヒド報道官は2日、ツイッターでザワヒリ容疑者の死亡は触れず、米軍のドローン攻撃について「米軍の攻撃は国際的な原則に対する明らかな違反行為だ。米国、アフガン、地域の利益に反する」と反発した。


2022.08.02-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220802/k10013747181000.html
“アルカイダ指導者 ザワヒリ容疑者殺害” 米メディア伝える

  アメリカの複数のメディアは1日、国際テロ組織アルカイダの現在の指導者、アイマン・ザワヒリ容疑者がアフガニスタンで無人機による攻撃で殺害されたと伝えました。

  ホワイトハウスはバイデン大統領が日本時間の午前8時半から対テロ作戦の成功について演説するとしていて、この場で大統領自身が発表するものとみられます。
  ザワヒリ容疑者は、2001年にアメリカ同時多発テロ事件の首謀者のオサマ・ビンラディン容疑者が殺害されたあとに指導者となり、アフガニスタンとパキスタンの国境地帯に潜伏しているとみられていました。
  ザワヒリ容疑者はことし5月にもアメリカを非難する内容の動画を公開し、アメリカ政府は拘束に直接つながる情報の提供者に最大で2500万ドルの懸賞金をかけていました
(※このニュースを掲載した際、2011年のアメリカ同時多発テロ事件とお伝えしましたが、正しくは2001年でした。失礼しました。)


2022.04.30-朝日新聞-https://www.asahi.com/articles/ASQ4Z0VR5Q4YUHBI047.html
アフガニスタンのモスクでまた爆発、死者10人と発表 50人報道も
(ニューデリー=石原孝)

  イスラム主義勢力タリバンが昨年8月に実権を握ったアフガニスタンの首都カブール西部のモスク(礼拝所)29日、爆発があった。当時は金曜礼拝で混み合っていたといい、タリバン側は10人が死亡、20人が負傷したと説明している。

  一方、ロイター通信はモスクの関係者の話として、少なくとも50人が死亡した恐れがあると報じた。爆発は29日午後に発生し、何者かが爆発物を持ち込んだ可能性があるという。爆発の後にモスクの屋根が崩落したとも報じられている。
  現地はイスラム教のラマダン(断食月)の期間中で、宗教心の高まりなどからイスラム過激派の攻撃やテロが増える傾向がある。国内には過激派組織「イスラム国(IS)」などの武装勢力が拠点を設けており、今月に入って北部を中心にたびたび爆発が起き、死傷者が出ていた
  地元メディアによると、北部マザリシャリフでは21日、イスラム教シーア派のモスクなどを狙った爆発で約30人が死亡しISが犯行声明を出した。北部クンドゥズでも翌日、モスクなどを狙った爆発が起き、学生ら少なくとも33人が死亡した(ニューデリー=石原孝)



2021.12.27-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20211227-VGPEATKE6RKA7CWMCDBPD3NBCE/
女性の遠出、男性同伴条件 タリバンが命令、抑圧懸念

  アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は27日までに、女性の長距離移動には男性の近親者の同伴が必要とする命令を出した。暫定政権は国家承認や人道支援要求のため、女性教育の機会確保などを強調するが、今回の命令は女性抑圧を懸念する欧米諸国の反発を招きそうだ

  命令は、旧タリバン政権で恐怖政治の象徴だった勧善懲悪省が発出した。移動距離が45マイル(約72キロ)以上の場合は同伴が必要と規定運転手は、頭に巻くスカーフ「ヒジャブ」を着用した女性しか車両に乗せてはならないとし、車内で音楽を聴くのも禁じた。
  同省は11月、テレビ局に女性を主人公とするドラマの放送を禁じ、ニュースなどその他の番組でも女性出演者にヒジャブの着用を命じていた
  タリバンは9月、ガニ元政権時の女性問題省の建物に勧善懲悪省を置き、批判を集めている。(共同)


2021.12.26-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/article/20211226-KCPKKE46VJJEBPXYAV4JDZD2HI/
タリバン、選挙委を廃止 排他的統治の懸念強まる

  アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は26日までに、崩壊したガニ元政権下で大統領選などを監督した独立選挙委員会を廃止したと明らかにした。地元メディアが報じた。欧米諸国などが包括的な政権樹立を求める中、排他的統治への懸念が一層強まりそうだ

  暫定政権は国際社会からの国家承認や人道支援を求めており、女性教育の機会確保など人権面で歩み寄る姿勢を示している。しかし選挙委廃止で、タリバンが目指すイスラム法に基づく統治と民主主義のずれの大きさが、改めて示された形だ。

  地元メディアによると、独立選挙委に加え選挙不服申し立て委員会も廃止した。暫定政権のサマンガニ副報道官は「これ以上必要がない。もし必要となれば復活させる」と語ったという。(共同)


2021.12.04-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/42292b8d853bdfd16ccd0603f0c8d03a189c1b5f
タリバン、「女性尊重」を指示 国際社会意識か

  【シンガポール=森浩】アフガニスタンの実権を握ったイスラム原理主義勢力タリバンの最高指導者アクンザダ師は3日、女性の意思に反した結婚を強要しないよう国民に指示する声明を出した

  女性の権利を重視する姿勢を示し、タリバン暫定政権の国際承認につなげたい考えがある。 声明でアクンザダ師は「すべての関係機関に女性の権利のために真剣に行動するように指示する」と発表。
  女性は所有物ではなく自由な人間だ」として、結婚に際しては女性の同意が必要だと強調した。夫が死亡した場合、妻に財産の相続権があることにも触れた。女性の就学や就労についての言及はなかった
  旧タリバン政権(1996~2001年)は女性の権利を大幅に制限した経緯があり、国際社会は9月発足のタリバン暫定政権の統治に懸念を深めている。国内では女性がタリバン戦闘員と強制的に結婚させられた例も既に報告されている。
  アフガンではタリバンの実権掌握後、最大時は国家予算の8割を占めた国際支援が打ち切られ、米国内で保有していた資産も凍結された。暫定政権を正式に承認した国はまだなく、タリバンは今回の声明で旧政権との違いを打ち出し、支持を呼びかけたい考えだ。
  ただ、実際に女性の権利尊重が進むかは不明だ米国のウエスト・アフガン担当特別代表はアクンザダ師の声明を歓迎した上で、「学校や職場などあらゆる面で女性の権利を確保するためのさらなる努力が必要だ」とツイッターに投稿した。


2021.10.16-Yahoo!Japanニュース(JIJI com)-https://news.yahoo.co.jp/articles/3b64ad8cd7d5c4bffffd1857ed40402d68d7bab6
IS、モスク爆発で犯行声明 金曜礼拝狙いテロ相次ぐ アフガン南部

  ロイター通信によると、アフガニスタン南部カンダハルのイスラム教シーア派モスク(礼拝所)を狙った自爆テロとみられる爆発で、過激派組織「イスラム国」(IS)が15日、系列のアマク通信を通じ、犯行を主張する声明を出した。

  イスラム主義組織タリバンがアフガンで権力を掌握した8月中旬以降治安の空白を狙うように、IS系武装勢力が関与したとみられるテロが相次いでいる。  爆発は15日の金曜礼拝中に起き、AFP通信によると、少なくとも41人が死亡した。ISは声明で、戦闘員2人がモスクの門番を銃撃・殺害した上で内部に侵入し、自爆したと主張した。  アフガンでは8日にも、北部クンドゥズのシーア派モスクで金曜礼拝中に自爆テロがあり、少なくとも55人が死亡した。アフガンでシーア派は少数派。金曜礼拝で多数が犠牲となる爆発は2週連続となった。


2021.10.14-NHK NEWS WEB-https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4595/index.html
自衛隊アフガニスタン派遣の“深層”~残された現地協力者はいま

  タリバンによるカブール陥落後、急転直下で実施された自衛隊輸送機のアフガニスタン派遣邦人ひとりが国外に移送された一方で、日本大使館などで働く現地スタッフやその家族など、政府が退避対象とした500人余りのアフガニスタン人はひとりも救い出せずに終わった彼らの多くはいまも国内に残り、迫害の脅威に晒されている。番組では自衛隊派遣の舞台裏を徹底取材し、テロや紛争の脅威が増す中、海外在留邦人や現地協力者の命をどう守るのかを考える。

検証・自衛隊アフガン派遣 "退避作戦"でなにが
  保里:当時、日本政府が退避させられなかった大使館などのアフガニスタン人職員やその家族は500人以上。その後、外交ルートを通じて300人余りが出国し、13日の夜もおよそ50人が成田空港に降り立ちました。しかし、2か月たった今もなお多くの人が取り残され、命の危機にさらされ続けている状況です。
  もともとアメリカは、軍を8月31日までに撤退させることを宣言。この日に向けて各国は退避を進めることになりました。しかし、8月15日、イスラム主義勢力のタリバンによって予想を上回る早さで首都カブールが陥落します。政府が自衛隊機の派遣を決定したのは、その8日後の23日。
  25日にはカブールに到着しましたが、その翌日、空港周辺で大規模なテロが発生。計画は頓挫し、現地での任務を終えることになりました。
  派遣があと1日早ければと、政府関係者も悔やむ結果となった今回の退避計画。私たちが入手した自衛隊派遣を巡る内部資料や証言からは、外務省が描いていた退避のシナリオが次々と崩れていった実態が見えてきました。
崩れたシナリオ
  カブール陥落直前に作成されていた、防衛省の資料です。この時点で、外務省が退避の対象としていたのは在留邦人に加えて、大使館やJICAなどの現役のアフガニスタン人職員とその家族、520人。退避には、民間チャーター機を使うとしていました。
  一方で、外務省が民間チャーター機が手配できなかった場合、自衛隊への依頼を検討する意向だったことが記されています。
  退避は8月18日に完了させ、さらに24日に向けて、大使館の態勢を縮小させる予定だったことが分かりました。
  しかし8月15日、外務省の想定をはるかに上回る早さで首都カブールが陥落。退避に利用する予定だった民間チャーター機は、空港の混乱で使用できず。代わりとなるはずだった自衛隊機の派遣も、状況を見極める必要があるとして検討が中断されました。
  このとき、大使館は切迫した状況に追い込まれていました。治安を維持していたアメリカから、「もはや安全を保証することはできない」と告げられたのです。
  その2日後。大使館の日本人職員は退避を希望する在留邦人がいないことを確認した上で、イギリスの軍用機で全員が国外に退避しました。
  なぜ、現地のアフガニスタン人職員を残していったのか。外務省は取材に対し、こう答えています
<8月31日 ブリーフィングでの外務省説明>
  「当然ながら、法人の退避が最大の目標です。外務大臣まできちんとお諮りをした上で、そういうプライオリティー(優先順位)でいくということでやらせていただきました」
  取り残されたアフガニスタン人の1人が、取材に応じました。
  取り残されたアフガニスタン人 アリさん(仮名)「これ以上ない苦しい日々です。考えてみて下さい。ひとときも安心できない状況なんです」
  日本の大学に留学し、IT技術を学んだアリさん(仮名)。帰国後はその知識を生かして、日本が進めるインフラ整備の事業に協力していました。
アリさん
  「タリバンがカブールを制圧すると、他国は強い意志で退避の支援を始めました。しかし日本は時期を逃しました」
  このころ、アメリカのみならず、イギリスやフランスなど各国が軍用機を使って、アフガニスタン人の協力者などを次々と退避させていました。こうした中、日本政府の姿勢に疑問の声が上がりました。
  8月19日、自民党の外交部会では議員から外務省に対し、「なぜ日本は自衛隊機を派遣しないのか」という質問が集中。
  さらに同じ日、超党派の議員連盟も現地職員を救出するよう政府に要請しました。
要請を提出した 中谷元 元防衛相
  「日本人だけよければいいという発想は、非常に残念で寂しいと思いますね。最初は9.11の同時多発テロ事件から始まって、各国がコアリション(有志連合)でタリバン政権を崩壊させて、本当にたくさんの人が関与して現在の国になっていった。やっぱりそこで働いてきた人たちや、日本と関係があった人たちも、やっぱり助けを求めた場合は助けなければならない」
  その翌日、外務省と防衛省が事務レベルで協議し、派遣の方針を確認。そして3日後の23日、総理大臣の了承など政府内の調整をへて、自衛隊に対し在外邦人等輸送の命令が下りました。
  アメリカ軍の撤退期限は、8日後に迫っていました。
  命令の僅か6時間後に出発した自衛隊機。現場には、スピード派遣のしわ寄せが及んでいたことが今回の取材で見えてきました。輸送機3機が相次いで飛び立ったものの、要員の半分程度しか乗せられませんでした。派遣する部隊の規模が固まらないまま計画が動きだし、機材の量が想定より多くなっていたからです。
急きょ用意されたのが、政府専用機。搭乗できなかった隊員を運ぶため、追加で派遣されました。
  現地では輸送機の故障も相次ぎました。その場では修理できない事態が生じるなど、綱渡りの任務が続けられていたのです。
  今回の任務が、自衛隊にとって極めて異例のものだったことを示す写真があります。盾を傍らに置き、小銃を持って周囲を警戒する隊員。陸上自衛隊の精鋭部隊「中央即応連隊」です。邦人等輸送の任務に、初めて投入されていました。

  テロリストの制圧などの訓練を繰り返している、この部隊。万が一の事態に備えていたのです。
  自衛隊法では、邦人輸送のための海外派遣は輸送を安全に実施できることが条件になっています。今回、現地が安全だと判断した理由として、政府はアメリカ軍が空港や周辺の安全を確保していること。そして、タリバンが輸送を妨害する動きはないことを挙げていました。

  しかし自衛隊の中には、安全が確保されていると言い切れるのか懸念を抱く幹部もいました。
  自衛隊幹部・取材メモ
  「われわれの頭の中にあったカブールのイメージというのは、空港の周囲に無数の市民が集まり、軍用機を取り囲んで走る映像。あのような状況で邦人の輸送となれば、とてもじゃないが、普通の態勢では安全確保なんてできない。だから、任務を安全に行うために、必要な部隊編成を考えなければいけなかった」
  今回派遣された中央即応連隊は、100人余り。部隊全体のおよそ半数を占めました。
  自衛隊幹部・取材メモ
  「現地の情勢が流動的で、安全かどうか明確に判断する術はない。正直、行くか行かないかは腹決めの世界だった」
  アメリカ軍の撤退期限が6日後に迫った、8月25日夜。自衛隊機は、ようやくカブールに到着します。
  そして翌26日。日本政府のインフラ事業に携わり退避を希望していたアリさんの元に、外務省から連絡が入りました。
アリさん
  「26日の朝のことです。『いますぐ準備して街の中心部に移動してください』との指示でした。集合場所が書かれていたので、急いで向かいました。これでようやく命の危機から救われると思いました」。向かったのは、空港から6キロほど離れたホテル。そこには、外務省が手配したバスが15台ほど並んでいたといいます。
  バスに乗る人の名前のリストは、同意の上でタリバン側に渡っていました。アリさんたちにとっては、生死をかけた重い決断でした。しかし、バスが出発した直後のことでした。
アリさん
  「乗客の1人がニュースを見て、空港の近くで爆発があったと話しました。20分ほどたつと、救急車のサイレンが聞こえ始め、自分のバスの隣を走っていくのが見えました。退避する最後のチャンスを逃したのではないかと思いました」
  後にテロと分かる爆発が起きたのは、空港の南側。自衛隊の拠点から、僅か1.5キロの場所でした。その前後でも発砲や爆発が相次ぎ、隊員たちがコンクリート製のごうの中に身を隠す事態になっていました。
  直後に報告を受けた防衛省では、衝撃が走ったといいます。
  防衛省関係者・取材メモ
  「動揺は計り知れなかった。派遣の前提となっていた輸送の安全が揺らぎかねなかった」
  テロの発生でタリバンの統制が強まり、アフガニスタン人の出国が難しくなりました。
  自衛隊は、翌27日に日本人女性1人の輸送をもって、任務を事実上終了。500人以上の現地職員や、その家族は退避させることができませんでした。
  現地に取り残されたアリさん。家族と離れ、迫害の恐怖におびえながら居場所を転々としています。
アリさん
  「自宅にいる妻と娘から、タリバンが私を探しに来たと聞きました。ですから自宅に帰ることは、絶対にできません。これ以上耐えられません」
"失敗"の本質とは
  保里:諸外国はどのように退避に動いたのか。各国、状況が違うため、単純な比較はできませんが、まずデンマークは、去年から退避対象となる現地協力者のリストを作成していました。韓国は、テロが起きる前日に協力者を空港まで移送しました。一方オランダは、およそ1,900人を退避させたものの、一部の協力者が残され、外相が辞任に追い込まれました。
  そして日本は、日本人1人の退避にとどまりましたが、菅前総理は先月の会見で、「今回のオペレーションの最大の目標は邦人を保護することだった。そういう意味ではよかったと思っている」と述べています。
  今夜はアフガニスタンで外交官としても勤務されました、瀬谷ルミ子さんにお越しいただいています。よろしくお願いいたします。
  瀬谷さん、日本は外務省によりますと、8月に入って現地職員の退避計画を策定したということですが、この一連の動きをどう受けとめていますか。
  瀬谷さん:今も残された日本関係者のアフガニスタン人に退避の活動を続けているのは評価できますし、ぜひ続けてほしいと思っています。同時に今回、計画段階でそもそも現地協力者に生じるリスクというものを想定せず、その人たちを退避計画に含めていなかったというところがやはり計画時点で現地の危機管理の見積もりの甘さが出ている部分かと思います。
日本もアフガニスタンでおよそ7,000億円を投じて復興支援をしてきていますが、それには国益が絡む部分もあり、それが現地でどのようなリスクを生じ得るのかということも含めて、現地で退避計画及び、想定したリスクヘッジをするべきところがあったと思っています。
  保里:今後に向けて生かしていかなければいけないところですよね。そして今回の自衛隊の派遣を巡る動きを取材しています、南井記者にも聞きます。南井さんは今回の退避作戦で見えてきた課題というのは何だと考えていますか。

  南井遼太郎記者(社会部):まずは、現地の情勢を正確に分析できていなかったことが挙げられます。カブールが陥落したとき、日本の大使や防衛駐在官はローテーション勤務のため、アフガニスタンにいませんでした。防衛駐在官は防衛省から出向していて、今回のような緊急時には特に現地で各国の軍の関係者などと情報をやり取りすることが求められます。こうしたことからも見立ての不十分さがあったと感じます。
また、自衛隊による在外邦人等輸送の任務は今回が5回目でしたが、過去4回とは危険性の認識が全く違ったと話す防衛省関係者もいます。急転直下の派遣となったことで、輸送の安全の見極めがおろそかになっていなかったかという点も検証すべき課題だと感じます。
  保里:迅速な判断、そして安全の確保。一見すると相反するこの難しい課題を両立しなければいけないということなんですね。
  南井:自衛隊は、海外派遣の要件が他国より厳しく設定されています。早さと安全の両方を満たす必要があるからこそ、より精緻な治安情勢の分析と、それに基づく計画や準備が必要だったはずですが、取材からはそこに課題があったことが浮き彫りになりました。
防衛省、自衛隊は、今回の任務を受けて情報収集能力の強化、そして命令を受けたときにスムーズに部隊を派遣するための準備などについて検討を始めています。どうすれば緊急時に日本人や協力者の命を守ることができるのか、可能なかぎり情報を開示し、開かれた場での検証を求めたいと思います。
  保里:現地に残された500人以上に対しては、徐々に国外への退避が進むなど、外交を通じた支援が続けられている状況ですが、新たな問題も見えてきています。それは今、日本政府の支援の対象となっていない人たちの存在です。
取り残されたアフガニスタン人 立ちはだかる壁
  長年、JICAの職員などとしてアフガニスタンで活動してきた、福岡大学の林裕さんです。
  今、林さんの元には、当時の同僚など過去に日本と関わりがあった人たちから助けを求める連絡が頻繁に寄せられています。
福岡大学 林裕准教授
「大丈夫?」(話)助けを求めるアフガニスタン人
「タリバンは家の前に立っていて、1~2時間過ごして帰っていく」
林裕准教授
「子どもと妻を窓に近づけてはならないよ」
出国を希望する人たちの名前を、独自にまとめた資料です。林さんが調べただけでも、その数は300人に上りました。
外務省に提出し、支援を求めましたが、返ってきたのは「対象にはできない」という回答でした。支援の対象には、線引きがあるというのです。
林裕准教授
「日本は現職か現職じゃないかということで切ってしまったので、本当に1か月違いで今回リストに載らなかった人たちだったり、あるいは20年弱働いてきて、数年前に契約終了、解雇になっている人たち、その人たちがリストから外されている」
  去年まで10年以上にわたってJICAで働いてきた男性は、外務省からは何の連絡もなく、支援の対象外になっているとは思いもよらなかったといいます。
アブドラさん(仮名)
「数年しか働いていない人が退避できて、私が退避できないとは思いませんでした。日本人と共に働いてきた私たちを、忘れないでほしいです」
 日本にいるアフガニスタン人の間でも、日本政府の支援がないことに失望が広がっています。JICAのプロジェクトの一環として日本で学んでいる、アシールさん(仮名)。祖国に残してきた妻を、出国させたいと考えています。
アシールさん(仮名)
「日本に来る時に、妻がお守りとして渡してくれたコーランです。孤独を感じる時や苦しい時、これを読むと心が落ち着きます」

  支援が期待できないため、自力での出国を計画しています。
  アフガニスタンが接する国との国境は、タリバンが権力を掌握後、相次いで封鎖されました。唯一開いているのは、パキスタンとの国境。しかし、安全面が懸念されるというのです。
アシールさん
「どんな状況?」
(話)妻
「問題は山積みよ。国境を超える時、タリバンもパキスタン側も、気分次第で通過を許可する時としない時があるの」
  現在、パキスタンとの国境には、自力での退避を求める人が殺到。ビザなどの書類がそろっていても、通過できる保証はありません。
アシールさん
  「今後アフガニスタンで生きていくのは、極めて困難です。今あるわずかな望みにかけるしかありません」
救いの手を差し伸べるには
  保里:瀬谷さん、今支援の対象に入っていない現地の人たち、どんな状況に追い込まれているのでしょうか。
  瀬谷さん:殺害や投獄、そして強制的な結婚のおそれがあり、命の危険にさらされて、毎日居場所を変えて潜伏生活を送っている人たちがたくさんいます。連日、そういう方からSOSが届きます。それまで当たり前だった音楽ですとか映画関係者、それ以外のジャーナリストなども、今それが自分の命を脅かす原因となっている。
私が今支援をしている20歳のミュージシャンの若者からも14日に連絡が来たのですが、彼はタリバンの処刑リストに名前が載っている。もし退避するチャーター機に乗れないのであれば、姉と母だけでも助けてほしい、自分が死んでも家族を救ってくれという連絡でした。
  そのほかにも幼いころに地雷で両足を失った女性活動家で、そんな中でも身を立てて社会のために尽くしてきた方も、その活動のためにタリバンから追われていまして、つい先日もタリバンが自宅にやってきて暴力を振るわれたと。見せしめに処刑すると言われたと。そこを命からがら逃げた。今では子どもたちが恐怖でこの数日間食事もとれず、夜も眠れない、そんな生活を送っています。
  保里:有志での支援というのも限界に来ていると思うのですが、今、現状必要なのは資金であって、そしてクラウドファンディングも瀬谷さんは行っているとのことですが、どんな思いを込めているのでしょうか。
  瀬谷さん:現地の女性たちや活動家が、危険を承知で自分たちの声を世界に届けてほしいと連日連絡をくれます。彼女たちは女性の権利、命を守るためにデモに参加して、それでも開始直後にタリバンが銃を乱射して命の危険に遭う。そして3名、女性が亡くなった。それでも次の日に自分たちの声、存在を消されないために現地でまた声を上げる。そういう生活を繰り返しています。ですので、私としてはそういう人たちの声をしっかり届ける。日本にいる私たちが何もできない傍観者であるのではなくて、私たちが資金なり、その声を受信するということが現地の人たちの命を今まさに救う。そういう極限の状態にアフガニスタンがあるということを知っていただき、ぜひ行動してもらいたいと思っています。現地でも、その人たちもできればアフガニスタンにいつか戻りたい。なので、アフガニスタンをいつかその人たちが帰れる国にする。そのために今、タリバンが行っている暴力にはきちんと注視しながら現地の声や復興を世界に届ける。その両輪が必要だと思っています。
  保里:ありがとうございました。


2021.10.09-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/d284142c8bfb937495cb84bcbe025c7b88dfd0aa
アフガン北部で爆発、180人以上死傷 自爆テロか

  【シンガポール=森浩】アフガニスタン北部クンドゥズにあるイスラム教シーア派のモスク(礼拝所)で8日、自爆テロとみられる大規模な爆発があった。国営メディアは少なくとも46人が死亡、140人以上が負傷したと伝えた。 武装勢力による犯行声明は確認されていない。8月末の駐留米軍の撤収完了後、テロの犠牲者としては最悪となったもようだ。
  爆発当時、モスクでは金曜礼拝が行われており、300人以上の市民が参加していたという。アフガンでシーア派は少数派で、スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)などの標的となってきた。ISは暫定政権を樹立したイスラム原理主義勢力タリバンに対しても攻撃を繰り返している


2021.10.07-REUTERS-https://www.reuters.com/article/idJP2021100701001333
アフガンで用水路事業を再開

アフガンで用水路事業を再開
  イスラム主義組織タリバンが復権したアフガニスタンで医療・農業支援を続ける福岡市の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」は7日、同会の現地組織「PMS」(平和医療団)が、政変に伴い中断していたかんがい事業を同日再開したと明らかにした。

  PMSは8月21日に東部ナンガルハル州ダラエヌールの診療所を、9月2日には農業支援を再開。同会によると、新たに再開したのは昨年12月に着工したバルカシコート堰の工事。7日は川に敷き詰める石を谷から集める作業を実施した。9月21日には地元のタリバン幹部が現場を視察に訪れていたという。工期は来年9月までの予定。【共同通信


2021.09.29-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20210929-BRW2T22AMJJ3ZNIHSLONTNDSME/
米軍撤収から1カ月 貧困と不安が覆うアフガン

  【シンガポール=森浩】アフガニスタン駐留米軍の撤収が完了し、30日で1カ月となった。「悲願」だった外国軍撤収が実現し、イスラム原理主義勢力タリバンは暫定政権を樹立したが、経済は逼迫(ひっぱく)し、国全体を貧困と不安が覆っている。安定政権を築くという困難な課題にタリバンがどう取り組むか見えてこない中、国内では極端なイスラム法解釈に基づく恐怖政治が広がる兆しがある。

  タリバンは7日に暫定政権閣僚を発表したが、タリバン幹部がポストを独占した。最高指導者のアクンザダ師は旧タリバン政権(1996~2001年)同様、「イスラム法に基づく統治」を打ち出したが、個別の政策はいまだ不明な部分が多い。
  喫緊の課題が、国際支援に依存していたアフガン財政の立て直しだ。タリバンによる8月15日の首都カブール制圧以降、欧米諸国や国際通貨基金(IMF)は支援を停止。米国はアフガン政府が米国内に保有している資産90億ドル(約1兆円)の大半を凍結した
  既に国内では貧困が拡大し、国連の世界食糧計画(WFP)は食料不足などで、1400万人が飢餓の瀬戸際に立たされていると警告した。十分な食料を確保できている家庭は全体の5%にすぎないという。病院の閉鎖も相次ぎ、医療体制も崩壊の危機に直面する。
  タリバンは米国による資産凍結の解除を求めた上で、中国やロシア、パキスタンなどからの援助に期待する姿勢を見せている。ただ、各国ともタリバンが他のテロ組織との関係を遮断するか見極めている最中で政権承認すら及び腰だ。
  政治が停滞する中、指導部の指示か現場司令官や戦闘員の独断かは不明だが、旧タリバン政権同様の恐怖政治が復活しつつある。西部ヘラートでは今月25日、誘拐事件の容疑者とされる4人の遺体が公衆の前でクレーンでつるされた。地元指導者は「犯罪を防ぐための見せしめだ」と説明している。農村部などでは戦闘員がアフガン政府軍兵士や警察官を殺害する例が相次いだ。
  タリバン内部では統治方針をめぐって対立が深刻化しているとの情報が絶えない。一時は穏健派とされるバラダル第1副首相代行が強硬派に殺害されたとの噂も流れた。指導部の足並みがそろわない中、末端の行動を制御できるか不明で、国内の混乱は容易に収束しそうにはない状況だ


2021.09.28-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/2b4d86c6552478293ae8c10bb60fa0e32f2a5d1a
アフガンが国連一般討論演説を見送り ミャンマーも
(ニューヨーク 平田雄介)

  アフガニスタンで崩壊したガニ政権任命したイサクザイ国連大使が27日、国連総会で内外情勢に関する自国の立場を表明する一般討論演説を見送った。
  アフガンを掌握したイスラム原理主義勢力タリバンがシャヒーン報道官を新たに国連大使に指名し、代表権をめぐる新旧勢力の争いが生じる中、国連の不偏性を重視した加盟国が演説を控えるよう求めたとみられる。

  国連のドゥジャリク事務総長報道官は25日の時点で「イサクザイ氏が演説する予定だ」と説明したが、26日夜に国連ホームページの演説国リストからアフガンの国名が消え、27日の一般討論演説にアフガン代表は登壇しなかった。
  アフガンでは8月、駐留米軍の撤退に伴いガニ政権が崩壊。タリバン暫定政権が今月20日、シャヒーン氏を新大使と指名すると国連に申請した。総会規則に基づき、11月に開催予定の信任状委員会で代表権の行方が審議され、その後の国連総会の承認で決着がつくまではイサクザイ氏が国連大使を務める

   国連での代表権をめぐっては、2月に国軍のクーデターが起きたミャンマーでも、民主派のチョー・モー・トゥン国連大使と、国軍が新たに指名した退役軍人アウン・トゥレイン氏の間に係争がある。27日はチョー・モー・トゥン氏も演説を見送った。民主派の国連大使の地位を当面保全する代わりに演説を控えるよう米中が合意して求め、同氏が受け入れたとされる。
(ニューヨーク 平田雄介)


2021.09.14-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210914/mcb2109140917007-n1.htm
アフガン人道支援11億ドル超に 国連会合

  【ロンドン=板東和正】国連は13日、イスラム原理主義組織タリバンが暫定政権を樹立したアフガニスタンでの人道支援拡充を求める閣僚級会合をスイス・ジュネーブで開催した。グテレス事務総長は会合後の記者会見で、各国が表明したアフガンや周辺国への支援総額は11億ドル(約1200億円)を超えたと明らかにした。
  会合は対面とオンライン方式を併用して実施された。国連は年末までに6億600万ドル相当の緊急支援物資が必要として加盟国に負担を求めており、目標額を大幅に上回った形だ。ロイター通信によると、米国は会合で約6400万ドルの追加の支援を表明した。
  日本は鷲尾英一郎外務副大臣が会合にオンラインで出席。国際機関を通じた食料など6500万ドル規模の新規支援を含め年内に総額2億ドルの支援を行う用意があることを説明した。
  国連によると、タリバンが実権を掌握した8月以前でもアフガン国民の半分近くに相当する約1800万人が人道支援に依拠しており、状況はこの数週間でさらに悪化した。国連世界食糧計画(WFP)は1400万人が飢餓の危機にひんしていると訴えている。
  グテレス氏は会見で、各国から支援が集まったことを受け、「アフガンの人々に効果的な人道支援を提供すべきだという認識が満場一致で支持された」と述べた。一方、現金不足のため銀行が営業を一時停止したことで物価が高騰しているアフガンの状況を踏まえ、「経済の血液は現金だ」と強調。経済の崩壊を避けるため、「現金を利用可能にするための方策を考えなければならない」との見解を示した。


2021.09.13-朝日新聞-https://www.asahi.com/articles/ASP9F5HCGP9FUHBI00H.html
中村哲さんは「特別な存在」 タリバン幹部、事件の再捜査を明かす

  アフガニスタンで暫定政権の樹立を宣言したイスラム主義勢力タリバンのスハイル・シャヒーン報道担当幹部が11日、朝日新聞の電話取材に応じた。同国で2019年に起きたNGO「ペシャワール会」の中村哲医師の殺害事件についてタリバンの関与を否定し、「犯人逮捕に向けて再捜査する」と語った。
     タリバンがガニ政権を崩壊させ、捜査の中断と資料の散逸が懸念されていた。タリバン幹部が捜査方針について語ったのは初めてとみられる。
   シャヒーン幹部は「(中村さんは米軍などの)占領者とは異なる立場で活動し、我々はそれを歓迎してきた」「人々のため、国づくりのために尽くした特別な存在だった」と死を悼んだ。「慈善活動や復興事業を続けられるようNGOと協力し、安全確保に努める」とも話し、「(警察を所管する)内務省などが再捜査する」とした。
   中村さん殺害はガニ大統領が監督する最重要事件に指定され、治安当局が隣国パキスタンの武装勢力メンバーらを容疑者と特定したが、捜査の進展は伏せられてきた。タリバンの関与を疑う見方は少ない。


2021.09.11-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20210911-EQSXHMPI4RNI7INMIEVVX5HV64/
アフガン教育支援20年の女性「見捨てないで」 タリバン復権、支援活動見通し立たず
(前原 彩希)

 米中枢同時テロから20年となる11日、アフガニスタンの教育支援に約20年にわたって取り組んできた奈良女子大国際交流センターの客員センター員、中道貞子(ていこ)さん(74)が「アフガンを見捨てないでほしい」とオンライン講演で訴えた。イスラム原理主義勢力タリバンが実権を掌握後、現地から助けを求めるメッセージが届いた。日本で何ができるのか悩む日々。まずは「伝えよう」と踏み出した。
(前原彩希)
  「この20年間、アフガンの普通の人の暮らしをみてきた。今できることは何かを考えていきたい」約300人が視聴したこの日のオンライン講演会。中道さんはアフガン支援に携わった女性2人とともに参加し、語りかけた。
  テロを受けた米主導の軍事作戦で、教育の制限など女性の人権を抑圧した旧タリバン政権は崩壊した。翌2002(平成14)年、中道さんは奈良女子大など5大学によるアフガンの女性教員を養成するプロジェクトに参加し、これが支援を始めるきっかけとなった。当時、同女子大付属中等教育学校の副校長だった。
  その年の夏、初めて首都カブールを訪問。学校の壁には銃弾の痕が生々しかった。顕微鏡で細胞を観察する理科の模擬授業を行うと、10代の生徒たちは目を輝かせた。「細胞って美しい」。初めて顕微鏡をのぞいだ女子生徒は弾んだ声で話した。学校に通えなかった生徒も多く、教室は学べる喜びであふれていた。その後は個人としても毎年のように現地を訪問、授業指導など支援を続けた。屋外やテントで授業を受ける子供たちのために「学校を建てたい」と思い、05(17)年には、私財約500万円を投じてバーミヤン州に小学校の校舎を建設した。子供たちのうれしそうな顔が忘れられない。
  アフガンを訪ねたのは17(29)年が最後だ。現地の情勢悪化で訪問が難しくなった。今年8月、タリバンがカブールを制圧した。「(タリバンが怖いので)昼は山に隠れ、夜に家へ帰る。ここにいたら殺される
  8月下旬、現地の知人から悲痛なメッセージが届いた。怒りと悲しさで胸がいっぱいになる。「『とにかく生き延びて』としか言えず、何もできない自分が悔しかった」-現地の教育関係者からも「タリバンはお金がないから教員の給料は支払えないと言っている。教員たちの将来に何が起こるのかわからない。国連の支援を求めている」と連絡がきた。

  この20年、少しずつでも暮らし向きや教育の質も向上していると感じていただけに、悔しさが募る。「これまでの歩みが止まってしまうのか」.。無力感にさいなまれるなかで決めたのが、多くの人々に現状を伝える発信だ。
  11日、「宝塚・アフガニスタン友好協会」の西垣敬子さん、「RAWA(アフガニスタン女性革命協会)と連帯する会の桐生佳子事務局長とともにオンライン講演会を開催した。視聴者に向かって中道さんはアフガンに関心を持ち続けてほしいと訴え、こう強調した。
  「それぞれの立場でできることをやるしかない。何もやらなければゼロだが、0・01であっても、それが積み重なれば形になる
支援活動見通し立たず
  アフガニスタンの実権を握ったタリバンは女性の人権尊重や民族融和をうたうが、国際社会は懐疑的だ。暫定政権にも女性は入っていない。アフガン支援に関わってきた日本の民間団体の間にも、圧政や混乱への懸念が広がる。
  「これまでの支援が途絶えてしまうこともあり得る」。約20年前からアフガンで学校建設などの教育支援を行ってきた公益社団法人「シャンティ国際ボランティア会」(東京)の事務局長兼アフガニスタン事務所長の山本英里(えり)さんは危惧する。政権が変わったことでこれまで通りの活動が継続できるかは不透明で、今は情報収集を進めている。
  山本さんは「できる限り支援を継続したいがまだ見通しは立たない。アフガンを孤立させず、国際社会が支援していくことが大切だ」と訴える。「RAWAと連帯する会」の桐生佳子事務局長は「アフガンは近年治安が悪く、現地での活動はなかなか難しい。タリバンの政権運営を見極めないといけないが、とにかく今は危険だ」と指摘。「支援を継続していくため、金銭的援助などに取り組んでいきたい」と話した。


2021.09.11-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/2fd1d5b5e84ea56e24afb5c626a36a47a9e2a63d
タリバン「恩赦」一転、恐怖政治へ

  シンガポール=森浩】アフガニスタンで実権を握ったイスラム原理主義勢力タリバンが崩壊したガニ政権幹部らの報復に乗り出した。幹部親族を殺害しており、タリバンが宣言した「全アフガン人の恩赦」反故(ほご)にされた形だ。

  旧タリバン政権(1996~2001年)崩壊のきっかけとなった米中枢同時テロから11日で20年を迎えたが、タリバンはかつてと同じ恐怖政治を敷こうとしている
   ロイター通信によると、タリバンは11日までにガニ政権のサレー第1副大統領の兄を拘束して、殺害した。サレー氏は暫定大統領を宣言し、北東部パンジシール州でタリバンに抵抗しており、見せしめのために殺害された可能性がある。 タリバンは首都カブール制圧以降、「報復はしないと宣言する一方、農村部などでは戦闘員がアフガン政府軍兵士や警察官を殺害する例が相次いでいる
  また、タリバン暫定政権は国内金融機関に対して、ガニ政権高官の保有する口座を凍結するよう要請した。経済的に締め付ける意向があるもようだ。ガニ政権下で勤務した公務員が保有する口座についてもリスト化して、提出するよう求めたという。 国内で暫定政権に抗議するデモが相次ぐ中、タリバン最強硬派「ハッカニ・ネットワーク」指導者が管轄する内務省はデモを許可制にすると発表した。違反者は「処罰される」と強く警告しており、抵抗を押さえ込むのに躍起だ。


2021.09.09-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20210909/k00/00m/030/024000c
アフガン人道支援で220億円拠出へ 茂木外相「安全確保が不可欠」

  茂木敏充外相は8日夜、オンライン形式で開かれた主要7カ国(G7)などによる外相会合で、イスラム主義組織タリバンが実権を掌握したアフガニスタンやその周辺国に、総額約2億ドル(約220億円)の支援を年内に行う用意があると表明した。タリバンによる迫害を恐れ周辺国などに脱出するアフガン人が続出しており、人道上の支援が必要だと判断した。
  政府は現在、タリバンに対し、自衛隊機に乗り込めずアフガンに残された大使館現地スタッフやその家族ら「五百数十人」(政府関係者)の国外退避を認めるよう働きかけを続けている。巨額支援案は、退避の実現に向けた交渉材料にもなる見通しだ
  2億ドルのうち6500万ドル(約71億円)は国際機関を通じ、難民・避難民らへの水・衛生、食料、保健、農業、教育などの新規支援に充てる。政府は2020年、旧政権時代のアフガンに対して24年まで年1億8000万ドル支援すると表明しており、タリバン政権になった後も支援を継続する意思を表明した形だ
  茂木氏は会合で、関係国と連携しアフガンからの出国希望者の「安全な退避」に尽くすと表明。「人道危機の回避のため国際社会が一致協力することが重要だ」とし、そのためにも「人道支援要員の安全確保が不可欠だ」と訴えた。【宮島寛】


2021.09.09-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210909/mcb2109090935005-n1.htm
米独主導でアフガン22カ国会合 中露は参加せず

  【ベルリン=三井美奈】ブリンケン米国務長官は8日、訪問先のドイツで、マース独外相とともにアフガニスタン情勢をめぐるオンライン閣僚会合を主催した。日本や米欧、中東諸国など22カ国が参加し、テロ対策や人道危機の回避で、連携する方針を確認した。
  会合は、ドイツ西部のラムシュタイン米空軍基地を訪問したブリンケン、マース両氏が共催した。ブリンケン氏は共同記者会見で、イスラム原理主義勢力タリバンが発表した暫定政権には女性や少数派が入っていないと指摘し、「国際社会は、アフガン人には包括的政府がふさわしいという考えを示している」と述べた。マース氏は、アフガンで「国連機関とともに人道支援をする用意がある」と発言し、タリバンとの対話に前向きな姿勢を示した。
  米国務省の発表によると、会合には英独仏やイタリア、カナダ、トルコ、パキスタン、カタール、サウジアラビアなどが参加。アジアからは日本や韓国、インドが加わった。中国やロシアは参加していない
  ラムシュタイン基地は、米軍によるアフガン人協力者の退避活動の拠点となっており、8月半ば以降、約2万人が同基地経由で米国に移送された。


2021.09.06-DIAMOND ON LINE-https://diamond.jp/articles/-/281266
米軍撤退のアフガニスタンが「帝国の墓場」と言われる理由
(国際ジャーナリスト・外交政策センター理事 蟹瀬誠一)
(1)
米軍の撤退完了で-テロ活動が活発化の気配
「アフガニスタン撤退の完了を宣言する!」
   米中央軍のケネス・マッケンジー司令官のその悔しさをにじませた言葉と共に、アメリカの一番長い戦争が8月30日終結した。
   9・11米同時多発テロからまともな戦略もないまま20年間も続いたアメリカの「テロとの戦い」は、掃討を目指したイスラム原理主義組織タリバンが再び復権するという皮肉な結果で幕を閉じたのだ。
   アフガン地上部隊司令官とウイルソン大使を乗せた最後のC-17輸送機がカブール国際空港を離陸した首都カブールでは、タリバン検問所から祝砲が鳴り響き、市内を警備する戦闘員からも歓声が上がったと地元メディアは伝えている。
「我々は戦いに勝った。アメリカは負けたのだ」
  タリバンの指導者のひとりハジ・へクマートは英BBC放送のインタビューでそう語った。
  米軍撤退直前には、アフガンで活動する過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の分派組織ISIS-Kによる自爆テロ攻撃で170人以上が死亡する事件まで起き、13人の米兵が星条旗で覆われたひつぎで無言の帰国となった
(2)
  ISIS-Kはアフガニスタンで最も過激な武装集団と恐れられているイスラム聖戦主義者たちで、「タリバンは穏健すぎる」として対立している勢力だ。8月30日にはカブール国際空港に向けて5発のロケット弾が発射され、ISISが犯行声明を出している。
  その状況を見ていると、米駐留軍というたがが外れた今、タリバンの復権によって他のイスラム過激派組織が刺激され国内外でイスラム組織のテロ活動が活発化しそうな気配だ
多くの帝国が武力制圧に失敗
  「よく聞け。我々は許さないし、忘れることもない。お前たちを必ず見つけだして代償を支払わせてやる」
  自爆テロ事件直後に行った演説で、バイデン米大統領は犯人に向かってそう怒りをあらわにした。その姿はまるで西部劇で復讐を誓うガンマンのようだったが、すでに命運が尽きていた。

  米軍はアフガン東部のナンガルハル州にあるISIS-Kの拠点を無人機で報復爆撃したが、6人の子どもを含む9人の民間人が巻き添えで犠牲となったことが判明し、地元の反米感情を刺激する結果となってしまっている。
  米ブラウン大学のThe Cost of War Project(戦争の代償プロジェクト)の調査によれば、2019年だけでも女性や子どもを含む546人の民間人が、アメリカと連合軍の空爆で殺害されたという。
  そもそもアフガニスタンは自由主義や共産主義などのイデオロギーの御旗を振りかざして武力で押さえ込もうという単純発想で制圧できる国ではない。そのためアフガニスタンは「帝国の墓場」とさえ呼ばれているのだ。
  かつて古代ギリシャ、モンゴル帝国、ムガール帝国、大英帝国、そして屈強なソ連軍がこの地域に侵攻したが野望を果たせず撤退の憂き目に遭ったことからその名がついた。
  世界最強の軍事力を誇るアメリカも、20年の歳月と2500人近くの米兵の命を費やした揚げ句に同じ轍を踏んだことになる。
(3)
アフガニスタンは勇猛な部族の集合体
   しかしなぜ大国がそんな失敗を繰り返すのか。2001年の米同時多発テロ事件発生から間もない頃、パキスタンとアフガニスタン国境近くで筆者が会った故中村哲医師の次の言葉にその答えがあった。
「アフガニスタンには私たちが想像するような国家は存在していません」
  つまり、アフガニスタンは国家というよりは合従連衡を繰り返すしたたかで勇猛な部族の集合体で、中央政府の影響力は極めて弱く治安が常に不安定だということだ。同国で献身的な医療活動に従事していた中村医師も2019年、車で移動中に凶弾に倒れたことはみなさんご存じだろう。

  「山の民の国」という意味の国名を持つアフガニスタンは、中東と中央アジアに挟まれた標高1800メートルの山岳地帯に位置する要衝だ。東と南にパキスタン、西にイラン、北にトルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、北東に中国と国境を接する多民族国家で、現在の人口は約3800万人
  アフガニスタンの歴史は大国の撤退でできた空白を巡る内戦の歴史だ。
  1919年に英保護領から王国として独立し、73年のクーデターで共和国となった。その後はソ連軍の侵攻や米軍率いる有志連合による米同時多発テロ報復攻撃を経て、2002年に初代イスラム共和国大統領ハーミド・カルザイの政権が成立した。しかし、お粗末な統治で汚職がまん延。米軍が撤退した今はイスラム原理主義者組織タリバンが再び全土を制圧している。
  2度目となるタリバン政権では女性の権利や言論の自由などを尊重するかのような発言を幹部がしているが、疑ってかかったほうがいい。
  原理主義者である彼らは早晩1996~2001年に権力を奪ったときのようにシャリーア(イスラム法=神の教え)解釈を厳格に実施して国民に強制するようになるだろう。加えて宗教政権であるため、税金や産業振興、外交など国家統治の実務にまったく適しておらず、新たな混乱に陥る可能性が高い

(4)
タリバンの中心はイスラム神学校の出身者たち
  ただし、日本の報道では、せっかく民主化や自由化が進んでいた国から米軍が撤退したために、タリバンというとんでもない極悪のテロ集団が政権を倒して再び恐怖支配を復活させようとしているという構図でタリバンのことを語られることが多いが、それは必ずしも正確ではない。
  確かにタリバンの残虐行為は国際的に非難されてしかるべきだが、彼らの中心はイスラム教の神学校「マドラサ」で学んだ学生たちである。結成当時は内戦で混乱した社会の秩序や治安を回復することを目標として掲げていた。
  本質はテロリストではなくイスラム原理主義者流のいわば「世直し運動」だったのだ。多くの国民の支持を集め、各地の軍閥や武装組織、宗教指導者などを味方につけていったのである。

  「タリバンとアフガンは一緒なのです。タリバンという考え方を持っている特別な人たちがいるわけではなくて、アフガン人自身がああいうような考え方なのです。女性の権利は認めない。アフガン人とはタリバンそのものなのです。そこをみなさんは大きく誤解しているところがある」
   先日、元駐アフガニスタン特命全権大使だった高橋博史氏がキヤノングローバル戦略研究所の緊急討論会でそんな驚くような指摘をしていた。
   もちろんアフガン人がすべてタリバンに属しているとか共感を覚えているということではなく、底流にイスラムの共通した価値観や考え方があるため、アメリカのように短兵急に同国で民主化や近代化を推し進めるのは極めて難しいという指摘だったと思う。
   さらに、タリバンが結成からわずか2年ほどで国土の大半を支配できた背景には、米CIAや隣国パキスタンの軍情報機関ISIが、政治的思惑からひそかに支援していたことが大きい。とりわけ、大国インドと対立するパキスタンは、アフガニスタンを自国の影響下に置くため、情報機関を使って資金や武器を提供していた。
   一方、アメリカ政府はタリバンが中央アジアの安定勢力になりうると考え、CIAを通じて彼らに大量の武器を供与した。ところがタリバンは過激なイスラム化を進めるだけでなく、国際テロ組織アルカイダの指導者ビンラディンまでをかくまうようになっていった。それが2001年の米同時多発テロにつながっていったのだから、アメリカにとっては悲劇的な大誤算となったわけだ。
(5)
米軍の撤退は賢明な選択
  そう考えると、バイデン大統領の米軍を8月末までにアフガニスタンから撤収させるという決断は賢明な選択だとも考えられる。
  そもそもアフガン戦争は、2001年当時のジョージ・W・ブッシュ大統領が、ろくな計画もないまま、同時多発テロの首謀者ビンラディンとタリバンを打倒するためにアフガニスタンを爆撃したことから始まったものだ。
  当初は怒りに燃えたアメリカ国民の大半がアフガン攻撃を支持したが、ビンラディン殺害に10年もの年月を費やし、巨額の戦費と数多くの米兵の犠牲が伴ったため、戦争の意義が薄れていった。アフガン情勢は泥沼化した。それにも拘わらず今まで撤退できずにいたのである。

  その間にアメリカの国家安全保障戦略は「テロの脅威」から「対中国、ロシア、イラン」や人類を脅かす「気候変動」に明らかにシフトしている。たとえタリバンが権力を奪還しても、地道な外交努力でアメリカの国益は大きく傷つかないだろう。
  「アメリカのアフガニスタンへの関与の新しい章が始まった。それは我々が外交で導くものだ。軍事的な任務は終わり、新たな外交的な任務が始まる
  記者会見でのブリンケン国務長官のこの発言は、バイデン大統領が好戦的な国防総省よりも国務省の外交スタッフを重視していることを雄弁に物語っている。
  バイデン政権の国家安全保障担当大統領補佐官は国務省で経験を積んだジェイク・サリバンだし、CIA長官のビル・バーンズもベテラン外交官で元国務副長官だ。この顔ぶれを見ただけでもその傾向は明らかだろう。
  地政学の重鎮で元米国務長官や大統領補佐官も務めたヘンリー・キッシンジャーは、「為政者は常に現実を直視するリアリストでなければならない」と喝破している。
  アフガン撤退でごうごうたる批判の矢面に立たされたバイデン大統領だが、アメリカの国益を重視した現実的な判断を下したのではないか。アフガニスタンにあるアメリカ大使館の機能は、すでに中東カタールに移されている。
(国際ジャーナリスト・外交政策センター理事 蟹瀬誠一)


2021.09.06-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210906/mcb2109062017012-n1.htm
タリバン「中国の協力重要」 国内平定を主張

  【シンガポール=森浩】アフガニスタンの実権を握ったイスラム原理主義勢力タリバンのムジャヒド報道官は6日の記者会見で、「わが国は戦争の泥沼から完全に抜け出した」と述べ、国内平定を主張した。「アフガニスタンにとって中国の協力は非常に重要だ」とも述べ、準備が進む新政権では中国の協力に期待する考えを示した。
  ムジャヒド氏は全34州のうち唯一支配下に置いていなかった北東部パンジシール州について、「完全に制圧した」と正式に発表した。抵抗勢力は「和平の申し出を断り、戦闘を選んだ」と説明した。
  同州では、ガニ政権のサレー第1副大統領らが反タリバン勢力「国民抵抗戦線」(NRF)を結成し、武装抵抗していた。NRFは同日、「複数の戦略的拠点で抵抗を続けている」と、タリバンの主張を否定する声明を発表した。


2021.09.06-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210906/mcb2109060737004-n1.htm
アフガニスタンで女性が権利訴え抗議デモ タリバン、催涙弾で排除

  【シンガポール=森浩】アフガニスタンでイスラム原理主義勢力タリバンが新政権樹立に向けた準備を進める中、女性たちが教育や就労の権利などを求めて抗議デモを行っている。旧タリバン政権(1996~2001年)は女性の権利を厳しく制限し、圧政復活への警戒感は強いタリバン戦闘員による強制排除で負傷者も出ているが、抗議は広がりを見せている。
  首都カブールでは4日、女性ら数十人が集まり、大統領府に向かって行進した。デモは2日連続。参加した女性は「旧タリバン政権の崩壊後、私は勉強し、より良い未来のために努力した。(就労などの)権利が失われるのは耐えられない」と話した。
  地元メディアによると、タリバン戦闘員は催涙弾を発射して、デモ隊を排除したという。戦闘員に殴られて負傷者も出たもようだ。同様の抗議デモは西部ヘラートでも行われた。
   タリバン幹部は女性の権利について「イスラム法の範囲内で認められる」と融和的な姿勢を示しているが、地方都市では既に女性単独での外出が禁じられたり、戦闘員と強制的に結婚させられたりする例が相次いでいる。新政権でも女性は枢要なポストから排除される見通しだ
  タリバンは新政権樹立に向けて国内の諸勢力と協議を進めているが、新体制発表は当初の予定より遅れている。閣僚の人選をめぐってタリバン内部の穏健派と強硬派の間で対立があるもようだ。


2021.09.04-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/6ca23be9366d9f8dfda5b5455ae1d70a37fca7a0
タリバンが米軍の兵器を大量入手 テロ利用などに警戒の声

  【ワシントン=黒瀬悦成】アフガニスタン駐留米軍の撤収に伴い、米軍が現地に遺棄したりアフガン国軍に供与したりした大量の米国製兵器が、アフガンの実権を掌握したイスラム原理主義勢力タリバンの手に渡っている実態が判明した。
  米議会では、タリバンの戦闘能力が強化される一方、タリバンに近いテロ組織がこれらの兵器を使って米国や同盟諸国に攻撃を仕掛ける恐れが出てきたとして国防総省に対応を求める声が上がるなど、波紋が広がっている。 タリバンは1日、アフガン南部の主要都市カンダハルで対米戦争の「祝勝」パレードを実施。MRAP(耐地雷・伏撃防護車両)やハンビー(高機動多用途装輪車両)など米軍が残した車両にタリバン戦闘員が乗り込み、シンボルの白い旗を振って気勢を上げた。 パレードでは、奪い取った米国製の輸送ヘリUH60「ブラックホーク」の展示飛行も行われた。
   米政府はアフガン国軍に対し、ハンビー約2万2千両、MRAP155両、小型車両約4万2千両に加え、自動小銃約36万丁、重機関銃約6万丁、拳銃約13万丁を供与したとされる。
  このうちどれだけがタリバン側に渡ったかは明確でないが、現地からの映像では米軍またはアフガン軍の戦闘服に身を包んだタリバン戦闘員が米国製のM4小銃や狙撃銃を携行している姿が多数確認されている。
  また、民間の軍事ブログ「オニキス」は、各種の画像や映像を解析した結果、タリバンが稼働状態にある航空機38機とヘリ13機、無人機7機を手に入れたとの分析を明らかにした。
  米軍は、タリバンが航空戦闘能力を確保するのを阻止するため、航空機のエンジンや電子機器を念入りに破壊したとされる。 また、タリバンが飛行可能な航空機を入手したとしても、機体の整備と部品の調達、搭乗員の訓練で行き詰まり、まともに運用できないとの指摘もある。
  一方で、タリバンへの影響力行使を目指す中国やロシアなどが整備や操縦に関しタリバンを支援する可能性があるとの見方も根強い。
  共和党の上院議員25人は2日までに国防総省に書簡を送り、アフガン国軍に昨年供与した兵器の全容や撤収前に破壊した兵器の総数、タリバンに渡った兵器の実態などについて調査し回答するよう求めた。
  米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は1日の記者会見で、タリバンと敵対しているとされるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」系の武装勢力「ホラサン州」(IS-K)の掃討でタリバンと連携する可能性があると指摘しており、タリバンが奪い取った兵器の運用を米軍が支援する事態を想定する声も出始めている。


2021.09.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20210903-NYSL4OWBHJIHJNMFIXIYOSECDA/
タリバン幹部、要職を独占か 女性起用見送りへ

  【シンガポール=森浩】アフガニスタンで実権を握ったイスラム原理主義勢力タリバンが近く新政権を発足させる。最高指導者のアクンザダ師を頂点にタリバン幹部が要職を独占するもようで、国内諸勢力代表らが参加する包括的政府が実現するかは不透明だ。女性の主要ポスト起用も見送られる見通し民主制は否定され、過激なイスラム原理主義に基づく「新タリバン政権」となりそうだ
  タリバンは8月下旬以降、タリバン発祥の地である南部カンダハル州にアクンザダ師ら幹部が集まり、政権作りを協議。その枠組みを大筋で固めた。
  ロイター通信や地元メディアによると、選挙など民主的な制度は採用されず政府の上位機関としてアクンザダ師をトップとする統治評議会」が設置される。主要閣僚には、政治部門トップであるバラダル師、最強硬派ハッカニ・ネットワークを率いるハッカニ師、初代最高指導者オマル師の息子のヤクーブ師-の副指導者3人が起用されるもようだ。
  タリバンは8月15日の首都カブール制圧以降、新政権は国内の各勢力代表が加わる「包括的政府になる」と表明し、アブドラ国家和解高等評議会議長やカルザイ前大統領ら国内有力者と会談を重ねてきた。有力者らは閣僚ではなく、統治評議会の一員としての政権入りが取り沙汰されている。
  焦点となっている女性の登用については、政治部門幹部が英BBC放送のインタビューに「(新政権に女性は)いないかもしれない」と発言。閣僚など主要ポストには起用されない可能性がある。
  新体制が動き始めても、課題は山積する。過去20年間、国家予算の大半は国際支援で賄われていたが、欧米を中心にタリバン新政権の動向を見極めるまで停止する動きが広がる。先進7カ国(G7)などは包括的政府を求めており、新体制の中身によっては支援再開は遠くなりそうだ
  30万人以上からなるアフガン政府軍の再編も見通しが立っていない8月26日にカブールの空港付近で自爆テロを起こしたイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)傘下の「ホラサン州」(IS-K)の押さえ込みも課題だ。また、タリバン内ではバラダル師ら穏健派とハッカニ師ら強硬派の路線対立もある。採用する政策によっては対立が本格化し、政権運営が停滞する可能性もある。


2021.09.01-Yahoo!Japanニュース(NewsWeek)-https://news.yahoo.co.jp/articles/57db189f8bc47dc3b8e6a4c4c67e15487906c94f
アフガニスタンはなぜ混迷を続けるのか、その元凶を探る
新谷恵司(東海大学平和戦略国際研究所客員教授)
(1)
大国の支配と反乱を繰り返した悲劇の国家。その原因は外国の分断統治か、辺境国家の宿命か
  「帝国の墓場」の異名を持つアフガニスタンで、また1 つ「帝国」が敗れた超大国アメリカである
  イスラム主義勢力タリバンの「復活」は何を意味するのか。なぜこの国では混乱が収まらないのか──。その答えは、アフガニスタン人とは何者か、アフガニスタンとはどのような国かを理解せずに(あるいは知りながら)、近代的な領域国家の概念で管理せんとした大国による分断統治にヒントがあるだろう。
  イギリスのノーベル文学賞作家ドリス・レッシングは、著書『アフガニスタンの風』(邦訳・晶文社)の中でソ連の侵攻から7年目の1986年にパキスタンからアフガニスタンに入った時のことを、次のように語っている。
  一団のムジャヒディンがホテルの木陰の芝生にすわっている。総勢九人。......顔立ちがそれぞれまったく違うことに、わたしは改めて感心してしまう。アフガン人が説明しはじめた。「アフガニスタンは起源もまちまちな多種多様の民族が集まった国だ。必ずしも互いに好意をもっているわけではない。......侵略者にたいしては団結して戦っている」(同書96ページ)
  アフガニスタンを構成する最大民族は、約42%を占めるパシュトゥン人だ。次いでタジク人27%、ハザラ人9%(以下、ウズベク人、遊牧民、トルクメン人、バローチ人)、などとなっている。 アフガニスタンとはアフガン人の国(スタン)という意味だが、アフガンとはペルシャ語でパシュトゥンのことである。 つまり、あのあたりにはアフガン人が住んでいるのでアフガニスタンだという、曖昧な線引きで長らく認識されてきた地域だ。それも、アフガン人は全体の4割で、国土に標高7690メートルの最高峰を有するヒンドゥークシュ山脈が横たわっている。人々は渓谷の中で、部族を単位に暮らしを営んできた。 それを「アフガニスタンは多民族国家である」などという、近代的な領域国家の概念でくくろうとするので無理が生じるのだ。 2001年10月から始まった米英両軍と多国籍軍による「不朽の自由作戦」でテロリストを撃破した後は、アフガニスタンに自由で民主的な国民国家を建設する、という目標設定がなされた。
   これがそもそもの間違いであったと、今になって評論家たちが口をそろえている。もちろん、それは01年の時点においても、ほとんど誰もが知っていたことである。「帝国の墓場」という言葉と共に。
<日本も「全てを失う」側に> では、どうすれば良かったのか?筆者は当時、日本政府の復興支援政策の立案実施の中枢にいた友人に話を聞いた。結論としては、日本は欧米、特にアメリカの間違ったアプローチには気が付いていた
(2)
アフガニスタンはなぜ混迷を続けるのか、その元凶を探る
  大国はなぜ歴史に学ばないのか-しかし、では何ができただろうか、と言えばなかなか難しかったようだ。復興は待ったなしのプロセスだったのである。欧米とは共に歩まなければならない──。
  日本は「人間の安全保障」の理念に基づく質の良い支援ができた。ただ、それがどれほど役立ったであろうか。結果としてはアフガニスタンを分断し、対立を解消できないままに駐留し、全てを失う側にいたのである
  レッシングは、ムジャヒディン(聖戦士のこと。聖戦=ジハードを行う戦士)の「顔立ちがまったく違う」と驚いているが、私はこの言葉をアフガニスタンから帰ってきた仲間たちからよく聞いた。特に、ハザラ人には日本人より日本人らしい顔立ちの人がいたのだという
  北からも南からも異民族の侵入があり、交易路でもあったアフガニスタンでは、客人は手厚くもてなし、侵略者に対しては断固として抵抗するという文化が長い年月の中で育まれたのだ。
  『アフガニスタンの風』の同じ見開きページから、もう1カ所、レッシングの記述を引用してみよう
  ひとりのムジャヒッドがいう。「驚くことはないじゃないか。英国は人びとを『文明化』する権利があると主張して、世界の半分を侵略した。われわれをも文明化しようとした。いまや英国はかつての帝国を失ったが、帝国主義までやめたわけじゃない。
  ロシア人は侵略し破壊する際、それを『文明化』であり『近代化』だという。ヨーロッパの帝国主義諸国がやったのとまったく同じだ」(同書97ページ)
<「辺境」の宿命と過激主義>
  アフガニスタンの今を語る上で必ず言及されるのは、「グレート・ゲーム」である。グレート・ゲームとは、19世紀から20世紀にかけての、主にアフガニスタン周辺の支配権をめぐる大英帝国ロシア帝国戦いのことだ。
  戦史をたどると、なぜ大国は歴史に学ばないのか、とあきれてしまう。取っては取られ、傀儡の王、支配者を置いて保護国にしても、結局は敗走する......。 1986年にレッシングの会ったムジャヒッド(ムジャヒディンの単数形)はソ連軍と戦っており、彼がここで言及したイギリスは、その時のイギリスについてであった。
  しかしこの言葉は、「アフガニスタンを民主国家にする」として始まった2001年からのプロセスの到来と結末を、見事に言い当てているではないか。 イギリスとロシアの覇権競争に始まり、それをソ連、アメリカが引き継ぐ形で進行した近代のアフガニスタンをめぐる戦乱は、当初は確かにこの国やその住民に対する「無知」や不見識に始まった。
  しかし、「分かっていても引きずり込まれる」という現象の背景には、歴史的必然のようなものを感じるし、ペルシャ、ロシア、インド・パキスタンといった大国に囲まれた「辺境」が忍ばなければならない宿命なのかもしれない。 ただ、それに加えてソ連の侵攻が起きて以降、タリバンの台頭や、「対テロ戦争」が仕掛けられた2001年以降を語るとき、新たな要素として「イスラム過激主義」が果たしてきた役割を直視しないわけにはいかない。
(3)
アフガニスタンはなぜ混迷を続けるのか、その元凶を探る
ブルカの着用は「ローカル・ルール」
  それは、タリバンが復活した今、ますます主要な役割を演じている。レッシングの会ったムジャヒディンはアフガニスタン人だったが、この頃、アラブ諸国からは多くのアラブ人がソ連との戦いを「聖戦」と見なし、義勇兵として戦いにはせ参じていた。
  彼らもまた、ムジャヒディンと呼ばれる。彼らは米CIAの支援もあり、力を蓄えた。その中には、独自の軍事訓練基地を造るなどして、アルカイダを設立したサウジアラビア出身の富豪、ウサマ・ビンラディンもいた。 アラブ・イスラム世界におけるイスラム過激主義は深刻の度を増す一方であったが、ソ連が撤退するとアフガニスタン帰りのムジャヒディンたちが各国の腐敗した支配体制を狙う危険な存在となった。
  また、アルカイダはアメリカの権益を脅かす大規模テロを起こす存在へと成長していく。この流れの中で、パキスタン軍統合情報局(ISI)の支援により少人数で設立されたのがタリバン(神学生たちの意味)運動である。
  アフガニスタンのイスラム化は非常に早く、預言者ムハンマドの死後ウンマ(イスラム帝国)の拡大に努めた正統カリフ(後継者)時代(632~661年)にその一部、そしてウマイヤ朝時代(661~750年)にはその全土が帝国の版図に収まっていた。 しかし、そこは民族も言語もイスラム教発祥の地アラビア半島とは異なる「辺境」であり、どちらかと言えば世俗的、かつ宗教とは直接関係のない伝統・習俗で暮らしてきた部族社会であった。
  例えば、女性の権利に関するものでいえば、顔と全身を覆う「ブルカ」を着用しなければならないといった教義は、聖典コーランにも預言者の言行録にも求めることのできない、いわば「ローカル・ルール」である。 ましてや、女性の教育や戸外での活動を禁じたり、強制的に結婚させたりするという、タリバンの支配下で予定されているとされる女性に対する虐待行為は、タリバンが実現しようとするところの「イスラム法による統治」では決して許されるものではない。
  しかし、その主張が間違っていようといまいと、イスラムの名において行動すれば圧倒的な動員力が生まれるという現象が、前世紀の後半、とりわけ1980年代以降の中東・イスラム社会を席巻した。
  これに乗じてタリバンは急成長してきたし、アルカイダや過激派組織「イスラム国」(IS)といった巨大なテロ組織が育っていくことになった
<英国型「分断統治」の典型>
  タリバン対国際社会という構図は、西欧社会対イスラム一般、ないしは対イスラム過激主義という深刻な対立の縮図である。 今、世界で起きているイスラムをめぐる問題の帰結、とりわけ欧米におけるイスラム教とイスラム世界への感じ方ないしはビジョンが、タリバンによる事実上のアフガニスタン支配を許すか許さないか、という問題に深く関わってくる。実際、8月26日にはタリバン以上に過激なISが自爆テロ攻撃を起こすという衝撃に世界は見舞われた。
(4)
アフガニスタンはなぜ混迷を続けるのか、その元凶を探る
「イスラム・テロ」にじっとしていられない欧米
   西側世界は、イスラム・テロと聞くと居ても立ってもいられない。移民イスラム教徒との摩擦や、実際に発生するテロ攻撃事件の影響で、多くの欧州諸国では、イスラモフォビア(恐怖症)に基づく合理的とはいえない政策や政治が行われて物議を醸している。
  2015年1月に起きたフランスの風刺週刊紙シャルリ・エブド襲撃事件で見られた対応などがそうだ。 東京オリンピックの閉会式で五輪旗を受け継いだパリの女性市長アンヌ・イダルゴは、アフガニスタンの北東にあるパンジシール渓谷で唯一タリバンに抵抗しているアフマド・マスードを支援せよと訴えた。

  その理由は、「若い女性を強制的に結婚させるなどということは人道的確信を持って拒否する」「テロリストはすぐにもタリバンの下に安全なアジトを見つけるだろう」といったものだった。
  しかし、考えてみてほしい。もし彼女の言うとおりに内戦を支援するなら、アフガニスタンの男女はさらなる苦しみに投げ込まれ、ISなどのテロリストはより活動がしやすくなるだろう。
  また、20年前にブッシュ米政権と共にイギリスを対アフガン戦争へと導いたトニー・ブレア元首相は、「アフガニスタンの人々を見捨ててはならない」と、自身が主宰するシンクタンクのウェブサイトを通じて長文の声明文を発表した。 「(撤退は)包括的な戦略ではなく『政治的』に決められた。(中略)『永遠の戦争を終わらせる』という不器用な政治的スローガンに従ってしまった」と、バイデン政権の身勝手さを厳しく追及する内容だ
  この中でトニー・ブレア元首相は、「西側の政策決定者たちは、『イスラム過激主義』と呼ぶことにさえ合意していないが、もしそれが戦略的な挑戦であると認識できていたなら、アフガニスタンからの撤退という決定は決してしなかっただろう」と、20年前に決断した自身の選択を擁護するだけでなく、新たな介入の是非にまで議論を広げるのであった。
  ブレアはBBCの取材に対して、「アフガン経済規模は2001年当時に比べて3倍になり、今年は女性5万人を含む20万人が大学に通っていた」と「民主社会」の崩壊を悔しがった。だが、彼が助けよとアピールした「アフガニスタン人」とは、どのような人たちのことなのであろうか。 ここに、19世紀から続くイギリスの分断統治の典型を見る。アフガニスタン人とは、タリバンに代表されているパシュトゥン人のことであるということを知れば、タリバンは欧米式の大学教育から少しも利益を得ていない。 ブレアは、このことをどう説明するのであろうか。-新谷恵司(東海大学平和戦略国際研究所客員教授)



(Ⅱ アフガニスタンにおける女性の状況について)-ジェンダー開発機構







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