電子戦とサイバー電磁波戦争-1



2021.8.28-産経新聞--https://www.sankei.com/article/20210928-J7SGOTJK5FJKXDKR56SEK2GIQI/
中・露・北「サイバー脅威」名指し 政府新戦略

  政府は28日の閣議で、サイバー分野の安全確保に関する今後3年間の目標や対処方針を示した「サイバーセキュリティ戦略」を決定した。サイバー攻撃の脅威として中国、ロシア、北朝鮮を初めて明記。「全ての有効な手段と能力を活用し、断固たる対応をとる」と強調した。

  新戦略は、サイバー空間について「地政学的緊張を反映し国家間の競争の場となっている」と指摘。「国家の関与が疑われるサイバー活動」として中国、ロシア、北朝鮮を名指しした。
  脅威に対しては、米国やオーストラリア、インドなどと連携し「非難等の外交的手段や刑事訴追等の手段も含め、しかるべく対応する」とした。サイバー攻撃が米国の防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象になると言及した。
  9月のデジタル庁発足を踏まえ「デジタル改革と一体となったサイバーセキュリティの確保」も掲げた。


2020.5.18-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200518/k10012434901000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_054
自衛隊で初「宇宙作戦隊」発足 不審な人工衛星など監視へ

  自衛隊で初めての宇宙領域の専門部隊となる航空自衛隊の「宇宙作戦隊」が18日に発足し、防衛省は日本の人工衛星を守るため、不審な人工衛星や宇宙ごみを監視する体制の整備を本格化させることにしています。
  「宇宙作戦隊」は、東京の航空自衛隊府中基地におよそ20人の隊員で新設され、18日午後、東京 市ヶ谷の防衛省で、河野防衛大臣から阿式俊英隊長に隊旗が授与されました。
  宇宙作戦隊の主な任務は、日本の人工衛星を他国からの攻撃や妨害、それに宇宙ごみから守るための「宇宙状況監視」で、不審な人工衛星の動きや宇宙ごみの軌道の監視に当たります。
  具体的には今後、宇宙監視用のレーダーを山口県内に設置するほか、JAXA=宇宙航空研究開発機構やアメリカ軍とも連携して「宇宙状況監視システム」を整備し、令和5年度から運用を始める計画です。
  防衛省は、人工衛星は情報収集や通信、それに正確な位置情報の把握など、部隊の指揮に欠かせないとしていて、宇宙の監視体制の整備を本格化させることにしています。
  宇宙作戦隊の阿式隊長は「まずは人材育成が重要だと考えているので、シミュレーターなどを使った訓練を進めていく予定だ。宇宙状況監視を行ううえで、グローバルな宇宙監視ネットワークを運用するアメリカとの連携は不可欠だと考えているので、今後、情報共有などの在り方について検討を進めたい」と話していました。
防衛相「宇宙の領域でも優位性確保を」
  隊旗の授与式で、河野防衛大臣は「宇宙の領域でもわが国の優位性の確保が重要だ。システムの整備や育成をはじめ、本格的な運用に向けて課題は数多くあるが、新たな安全保障環境に一刻も早く適応するため、体制を構築しなければならない」と述べ、任務にまい進するよう指示しました。
  このあと河野大臣は、記者団に「『宇宙作戦隊』は、初めての宇宙領域を専門とする部隊で、国民の期待も非常に高いと思う。人材育成も進めなければならず各国との協力態勢を築きたい」と述べました。


2020.5.11-Sankei Biz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200511/mca2005111203014-n1.htm
露軍の電子・サイバー戦「新たな領域」 無線遮断し偽メールで誘導
(1)
  宇宙・サイバー・電磁波という防衛上の「新たな領域」をめぐる最先端の軍事的脅威が10日、明らかになった。2014年から続くウクライナへのロシアの軍事介入で、ロシア軍は「電子戦」「サイバー戦」を一体化させた世界初の作戦を展開ウクライナ軍の無線通信を電子戦による電波妨害で遮断し、サイバー戦により携帯電話網を通じ虚偽指令をウクライナ軍兵士にメールで送信して誘導した上で、火砲などの攻撃を連動させていることが鮮明になった。
  中国がロシアと同様の作戦を行う能力を備えることにも防衛省・自衛隊は警戒を強めている対処力を強化するため、陸上自衛隊は新型電子戦装備の運用に向けて始動した。

ウクライナへのロシアの軍事介入についてはこれまで、電子戦によりウクライナ軍の無線通信や衛星利用測位システム(GPS)の利用を妨害しているとの指摘があったが、電子戦とサイバー戦の一体化に関する総合的な分析はなかった。
   ロシア軍はウクライナ軍の無線通信の利用を電子戦で妨げた上で、司令部などとの連絡に携帯電話を使わざるを得なくなったウクライナ軍兵士の携帯にメールなどで展開拠点を変更させる虚偽指令を送信。虚偽指令を信じ、ある地点に誘導された兵士を待ち伏せするように火砲などで集中的に攻撃を加えていた。
   ロシアのウクライナへの軍事介入は日本政府が一昨年に「防衛計画の大綱」を改定する要因になり、中国軍も実戦的な能力を向上させている。両軍の電子戦を任務とする航空機は日本周辺で電波情報の収集も行っている。
   こうした脅威を受け、陸自は今年度末から運用を始める新型電子戦装備「ネットワーク電子戦システム」の導入に着手した。運用する隊員の教育も7月から始める。

  車載式のネットワーク電子戦システムは指揮統制や電波の収集・妨害を担う5種類の装備がある。既存のシステムに比べ対応できる電波の周波数の範囲が広がったのが特徴で、各国が軍事用に利用する周波数を網羅する。
露軍の電子線「電子・サイバー戦が一体化」 廣惠(ひろえ)次郎陸将補に聞く
   宇宙・サイバー・電磁波という「新たな領域」の防衛に詳しい陸上幕僚監部指揮通信システム・情報部長の廣惠次郎陸将補が産経新聞のインタビューに応じた。廣惠氏は2月、ロシアの軍事介入を受けているウクライナを視察している。
-ウクライナ軍事介入の作戦上の特徴は
  「ロシア軍(露軍)は電子戦装備の電波妨害でウクライナ軍(ウ軍)の無線通信を使えないようにし、連絡を取り合うためウ軍兵士が私物の携帯電話を使わざるを得ない状況に追い込んだ。その上で携帯に露軍の作戦を有利にするメッセージをメールなどで電子戦装備から送っている」
(2)
 「民間インフラである携帯電話網に入り込むのは電波による電子戦で、それにより携帯網をオンライン状態のようにしてメッセージを送りつけたりデータを改竄(かいざん)したりするサイバー戦の要素も一体化させた。世界で初めての非常に高度な作戦だ。民間インフラが利用され、一般国民の携帯も巻き込まれる恐れがある」
-メッセージにはウ軍兵士に展開拠点を変更させる偽の指令や、「攻撃されるから逃げろ」などと兵士の士気を低下させることを狙ったものもあった
  「ウ軍兵士が偽の指令通りに誘導されれば火力攻撃を集中させ、兵士の携帯電話の電波発信源も割り出し、目標にして正確な火力攻撃につなげる。士気を低下させるメッセージは露軍の情報部隊が作成しているとみられ、実際に火力攻撃を受けているウ軍兵士はメッセージを信じやすく、心理戦も組み合わせている」
-電子戦とサイバー戦に心理戦も融合させた三位一体の作戦だと
  「加えて火力戦闘部隊も結びついている。ウクライナでの作戦はハイブリッド戦と指摘され、新たな領域の作戦だけが注目されがちだが、従来の火力攻撃などを有効にする戦い方がハイブリッド戦で、ウクライナでの作戦は典型だ。こうした戦い方に備えなければならない」
  「電磁波を使う電子戦は昔からあるが、今は部隊と装備が情報通信ネットワークでつながり、ネットワークを切れば相手は部隊と装備を動かすことができず、すべてを攻撃したのと同じ効果をもたらす。ネットワークの切断合戦の時代に入り、電磁波の戦いも新たな領域に位置付けられた」
-中国軍も「網電一体戦」として電子戦、サイバー戦、心理戦を一体的に展開する戦いを重視している
  「露軍がウクライナで実践したことと考え方は同じだ。露軍は欧州側で行ったことは極東側でも適用し、それを中国軍が模倣する可能性がある。中国軍が今後何をしようとしているか予測するためにもウクライナでの戦い方を精緻に分析することが欠かせない」(聞き手 半沢尚久)
電子戦
  電波などの電磁波を利用した戦い。(1)相手の通信機器やレーダーに強い電波などを当てて機能を妨げる電子攻撃(2)電波の周波数変更や出力増加で相手の電子攻撃を無効化する電子防護(3)攻撃と防護のため相手の使用電波を把握する電子戦支援-がある。
  ウクライナへの軍事介入 2014年にロシアがウクライナ南部のクリミア半島を併合し、東部で親露派武装勢力を支援する形で軍事介入した。民兵勢力らに続いて正規軍を投入したとされ、1万人以上の死者を出し、今も終結していない。


重力波 (相対論)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

重力波は、時空重力場)の曲率(ゆがみ)の時間変動が波動として光速で伝播する現象。1916年に、一般相対性理論に基づいてアルベルト・アインシュタインによってその存在が予言された後、約100年に渡り、幾度と無く検出が試みられ、2016年2月に直接検出に成功したことが発表された
 重力により発生する液体表面の流体力学的な重力波とは異なる。

概要
重力波は、巨大質量をもつ天体が光速に近い速度で運動するときに強く発生する。例えば、ブラックホール中性子星白色矮星などのコンパクトで大きな質量を持つ天体が連星系を形成すると、重力波によってエネルギーを放出することで最終的に合体すると考えられている。
  重力波の概念は、アルベルト・アインシュタイン自身が、一般相対性理論を発表した2年後に発表した。重力波の存在は間接的には示されていた(間接的な検出参照)が、直接の検出には100年を要した(直接的な検出参照)。なお、素粒子物理学の標準理論において重力相互作用を伝達する素粒子として重力子(graviton)が想定されているが、これは2016年現在未検出である。
  重力波の検出は、現在の一般相対性理論研究の大きな柱の1つであり、巨大なレーザー干渉計や共振型観測装置が世界の数拠点で稼働あるいは計画中である。また、予想される重力波は非常に弱いため、ノイズに埋もれた観測データから重力波を抽出するために、重力波の波形をあらかじめ理論的に計算して予測する研究も精力的に進められている

重力波源の候補
重力波は、物体が加速度運動をすることにより放出される。ただし、完全な球対称な運動(星の崩壊など)や円筒対称な運動(円盤状物体の回転など)からは放出されない。一般相対性理論が日常生活で意識されることがほとんどないように、この理論から予言される重力波の振幅は非常に小さい。人工的に作り出して観測することは不可能であるので、波源は宇宙の天体現象に期待される。想定される起源としては、以下のようなものがある。
2つの天体による準ケプラー運動
太陽を周回運動する惑星のように、連星系の天体からは重力波放出が期待される。特に、連星中性子星あるいは連星ブラックホール(あるいは中性子星とブラックホールの連星系)のスパイラル運動、およびそれらの最終的な合体フェイズで発生する重力波は、地上レーザー干渉計での重力波検出の重要な候補である。連星系が重力波放出により、軌道半径を小さくしてゆく運動をインスパイラル運動という。
中性子星・白色矮星などのようなコンパクトで非常に重い星の非球対称振動
1つの天体からでも重力波放出が期待される。また、ブラックホールが形成されるときは、ブラックホールに物質が吸い込まれる時に、特徴的な減衰振動が期待される。これは、ブラックホール準固有振動(quasi-normal mode)と呼ばれている。いくつもの白色矮星の振動による重力波は、合成されてノイズのように観測されうるだろうことが宇宙空間レーザー干渉計での重力波検出で予想されている。
非球対称な超新星爆発
回転を持つような超新星爆発では、運動の非対称性より重力波放出が期待される。超新星爆発が発生すれば重力波波源として有力だが、発生頻度は連星系の合体などよりは少ないと考えられている。
インフレーション宇宙モデルなどの、初期宇宙の痕跡
モデルによっては、宇宙の相転移で発生する泡状構造の衝突などの現象で重力波が発生する可能性がある。背景重力波として存在することが考えられている。
重力波の検出実験
重力波の検出は困難を極める。重力波を発生させる天体現象の頻度も定かではない。1年で数回程度の重力波を現在のレーザー干渉計装置で観測しようとするならば、重力波の典型的な振幅として、10−21以下の小さな時空の歪みを検出する必要がある。これは地球太陽との距離(天文単位=約1億5000万キロメートル≒1011 mのオーダー)に対し、10−10 m=0.1 nmの変化量に過ぎない。
共振型検出器
1960年代から、共振型観測装置を用いて、パルサーから放出されると考えられる特定の周波数の重力波を検出する努力も続けられてきているが、これまで有意な検出を得ていない。1969年には、メリーランド大学のジョセフ・ウェーバーが、彼が考案した共振型検出器、いわゆるウェーバー・バーにより重力波を検出した、と発表した。しかし、多くのグループの追試にもかかわらず、再度の検出には至っていない。
干渉計型検出器(地上)
現在の検出の主流は、強力なレーザー光によるマイケルソン干渉計を用いるものである。1つの発振装置から出たレーザー光を直交する二方向に分け、一辺が数kmのアームを往復させる。レーザーの反射には、時空の歪みにしたがって振動する鏡を用いることにより、重力波が通過した時の四重極の歪みによる二方向の距離差(理想的には片方は伸び、もう片方は縮む)が干渉縞の変化から検出される、という原理である。自由質量型観測装置とも呼ばれる。
  干渉計型検出器は、装置が大掛かりになるが、検出できる重力波の周波数帯が広い。検出感度は上記の起源の 1-3 に適していると考えられている。検出感度を得るための障害となるのは、レーザー光の量子雑音・鏡の熱振動・機械振動や電気雑音や地面振動などである。これらのノイズを1つ1つ取り除くことにより、現在ではブラックホール連星系の合体ならば地球から数100 メガパーセク程度の距離までの現象を測定できる世界的なネットワークが構築されている。
  干渉計型検出器は、2000年代に世界の数ヶ所で稼働をはじめた。

・アメリカは、LIGO(ライゴ)というプロジェクト名で、一辺が4kmのレーザーマイケルソン干渉計をワシントン州とルイジアナ州に2台稼働させている。2010年まで、実質2年以上の実観測を行った。2015年9月からは、感度を向上させた第2世代の干渉計aLIGO(advanced LIGO)として稼働をはじめた。
・日本は、国立天文台にあるTAMA300で、一辺が300mのマイケルソン干渉計を2000年に稼働させた。これは、世界に先駆けて最初に本格的な観測を開始したものだ。2003年までは、神岡では、TAMAのプロトタイプだった一辺が20mのマイケルソン干渉計を設置し、LISM干渉計として運用実験を行っていた。その後、同じ、神岡内に片腕100mの低温鏡レーザー干渉計重力波アンテナCLIOが、地球物理学研究のための地殻歪計とともに建設された。
・イタリアとフランスは共同で、一辺が3kmのVIRGO干渉計を、ピサ(イタリア)に持つ。
・ドイツとイギリスは共同で、一辺が600mのGEO 600干渉計を、ハノーファー(ドイツ)に持つ。

日本では、東京大学の宇宙線研究所重力波推進室が、TAMA300とCLIOをプロトタイプとして、マイケルソン干渉計を構成する鏡とそれを振り子状に懸架するワイヤーを20ケルビン程度に冷却することによって感度を上げる観測装置「大型低温重力波望遠鏡(LCGT, Large Cryogenic Gravitational Telescope)」(愛称:大型低温重力波望遠鏡 KAGRA かぐら)を岐阜県神岡鉱山跡地に建設した。干渉計のアームの長さは3kmである。
干渉計型検出器(宇宙空間)
宇宙空間に衛星を打ち上げてレーザー干渉計を形成し、重力波を検出しようというLISA(Laser Interferometer Space Antenna)計画がNASAESAによって進められている。これは3台の衛星で、一辺が500万kmのレーザー干渉計を形成するもので、ターゲットとする周波数帯は、地上の重力波よりも低い。合体の数年前の連星系からの重力波・白色矮星の振動による背景重力波・初期宇宙起源の重力波を捉えるであろうと期待されている。
  日本でも、LCGTの次の将来計画として、宇宙重力波望遠鏡DECIGO(Deci-hertz Interferometer Gravitational Wave Obserbatory)計画が進められている。この観測装置は一辺が1000kmのレーザー干渉計で、地上レーザー干渉計とLISA計画の中間の周波数帯を主なターゲットとしている。
間接的な検出
1974年、ジョゼフ・テイラーラッセル・ハルスは、連星パルサーPSR B1913+16を発見し、その自転周期とパルスの放射周期を精密に観測することによって、その軌道周期が徐々に短くなっていることを突き止めた。この現象は、重力波によってエネルギーが外に持ち出されたことで起きるとされ、その周期減少率は一般相対論の予言値に誤差の範囲内で一致した。この業績により、2人は「重力研究の新しい可能性を開いた新型連星パルサーの発見」としてノーベル物理学賞を1993年に受賞した。
  2014年3月17日ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究者グループは、南極に設置したBICEP2望遠鏡を用いて宇宙マイクロ波背景放射の偏光を観測し、解析結果から「原始の宇宙を渡ってきた重力波の直接的イメージを初めて得た」と発表したが、この発見の根拠は薄弱であるという有力な説がある[11][12]。2015年1月30日にこの研究者グループは、発表は誤りであったことを明らかにした
直接的な検出(詳細は「観測された重力波の一覧」を参照)
GW150914(詳細は「重力波の初検出」を参照)
理論発表からおよそ100年後の2016年2月11日、米カリフォルニア工科大と米マサチューセッツ工科大などの研究チームが、2015年9月14日に米国にある巨大観測装置LIGOで重力波を検出したと発表した。
  LIGOはワシントン州ハンフォードとルイジアナ州リビングストンに同じ構造の2基のマイケルソン干渉計をもつ。本格的な観測稼働の4日前の2015年9月14日 9:50(UTC)に、2台のLIGO干渉計で6.9ミリ秒の差で重力波と思われるイベントが計測された。35Hzから250Hzまで周波数を上げながら振幅を大きくする波形が0.15秒ほど続き、その後急速に減衰した。ルイジアナ州の方が先に感知したため、南半球側から到来した重力波と考えられている。LIGOは、このとき技術確認稼働の最終段階で、2基とも安定に稼働していた。
  この重力波は、波形から判断してブラックホール連星が合体して1つの大きなブラックホールになる過程であると解析された。ブラックホールの質量は太陽質量の36倍と29倍のもので、合体後には太陽質量の62倍のブラックホールになった。その差の質量(太陽質量の3倍)は重力波としてこの瞬間に放出されたことになる。超新星爆発をはるかにしのぐエネルギーである。この現象は13億光年先から伝わったものである。この重力波イベントは、GW150914と命名された(これらの重力波源に関する数値は10%程度の誤差をもつ)。
  GW150914の観測は、重力波を初めて直接検出したことだけではなく、初めてブラックホール同士の衝突を実証した観測でもある。また、これまで発見されていなかったブラックホール連星が存在したこと、太陽質量の30倍付近および60倍付近の質量をもつブラックホールの存在を示したことも大きな発見である。重力波の発見により、ブラックホールが形成されるほどの「強い」重力場での物理現象がはじめて検証できることにもなった。これまで一般相対性理論は、太陽系などの「弱い」重力場でしか検証されていなかった。GW150914の波形と理論の整合性を検討したLIGOグループは、一般相対性理論の予言と無矛盾である、と結論している。




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