中東の問題-1


2023.12.22-産経新聞(KYOTO)-https://www.sankei.com/article/20231222-6URXZYF3GFM4HOR6BLNSNWCT2Q/
サウジ記者、カショギ氏の妻が米国に亡命 中東戻れば危険と訴え

  米紙ワシントン・ポスト電子版は21日、トルコで2018年に殺害されたサウジアラビア人記者カショギ氏の妻ハナンさん(53)による米国への亡命申請が今月認められたと報じた。母国エジプトや長年暮らしたアラブ首長国連邦(UAE)に戻れば身に危険が及ぶと訴えていた。

  サウジ政府に批判的だったカショギ氏は18年10月、トルコ・イスタンブールのサウジ総領事館でサウジ当局者らに殺害された。サウジは当初、事件への関与を否定したが、その後、間接的に計画性を認めた。
  ハナンさんはサウジと関係が近いエジプト政府が、エジプトにいる家族を拘束したと指摘。UAE政府も自身を拘束して取り調べたと主張していた。(共同)


2023.12.04-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20231204-OFIUPUNEKFKS3CQWDXR7VXDFCI/
紅海で米軍艦や商業船攻撃 中東の緊張高まる

  米国防総省は3日、紅海で米海軍の駆逐艦カーニーと複数の商業船が攻撃されたと明らかにした。AP通信が報じた。

  相手には言及していない。カーニーは11月29日にイエメンの親イラン武装組織フーシ派の支配地域から飛来したイラン製無人機を撃墜。フーシ派は同19日にイスラエルに関係する貨物船を乗っ取るなどして緊張が高まっている。 フーシ派は3日、警告に従わなかったため、イスラエルの船舶2隻を攻撃したと発表。「1隻目をミサイルで、2隻目を無人機でそれぞれ標的にした」としているが、カーニーへの攻撃の言及はなかった。一方、ロイター通信によると、イスラエル軍の報道官は「2隻はイスラエルと関係ない」と述べた。(共同)


2022.09.14-Yahoo!Japanニュース(COURRIER)-https://news.yahoo.co.jp/articles/7d5abe450042c3ea774c7f94dc4098c30f0f66cc
【解説】なぜアルメニアとアゼルバイジャンの戦闘が再び勃発しているのか?-Oliver Holmes
(1)
  コーカサス地方のアルメニアとアゼルバイジャンのあいだで戦闘が勃発している。両共和国はナゴルノ・カラバフ地域をめぐって2度戦争している。

何が起こっているのか?
  戦闘が急速に激化し、アルメニアは、アゼルバイジャンとの国境沿いで起こった軍事衝突で兵士が50人近く死亡したと発表した。 2020年の戦争以来で最も死者の多い紛争だが、両陣営とも相手を非難している。諸大国は停戦を呼びかけている。
紛争の背景に何があるのか?
  ナゴルノ・カラバフは、アゼルバイジャン国境内にある内陸の山岳地帯で、1世紀以上も紛争の火種となっている。この地帯は国際的にはアゼルバイジャンの領土と認められているが、住んでいるのはアゼルバイジャンの支配に抵抗してきたアルメニア系が主だ
  1991年、人口約15万を擁するこの地域が独立を宣言し、以来、アルメニアから支援を受け、未承認国家のアルツァフ共和国として自治している。
  近年は和平に向けて前進している兆しがあったが、「凍っていた紛争」が2020年、ふたたび勃発アゼルバイジャンが6週間におよぶ戦争でナゴルノ・カラバフの広範囲を奪還し、6000人以上が死亡、ロシアが仲裁した和平協定をもって停戦となった。ロシア政府はこの地域に2000人の部隊を配備し、平和維持に当たらせていた。 アゼルバイジャンではイスラム教徒が多数派であり、アルメニアではキリスト教とが多数派だ。両陣営ともにこの紛争を宗教的な観点から表現しようとする要素があるが、この見方は誇張されているとアナリストたちは言う。
なぜいま戦っているのか?
  アルメニアで2018年にあった革命で、リーダーシップが世代交代し、ナゴルノ・カラバフ紛争が解決に向けて動くかもしれないという期待が高まった。 だがその後、そうした望みは薄れていってしまう。アルメニアのニコル・パシニャン首相が、この問題について強硬な路線を取っているからだ。アゼルバイジャンのリーダーたちの目には、挑発的と見える路線だ。
  1993年以来、ある一家が政権を掌握しているアゼルバイジャンの言い分は、法的に自国の領土でありながら敵の部隊や分離派に何十年も占拠されている地帯でのアルメニア側からの攻撃に応戦しているというものだ。
(2)
なぜこの紛争が問題なのか?
  両陣営とも市民が死亡するなど人道的な問題があるが、この紛争が国際的な懸念を呼び起こしている理由がほかにいくつかある南コーカサス一帯は、天然ガスと原油をアゼルバイジャンからトルコ、そしてヨーロッパ、さらには他の国際市場へと運ぶ重要な幹線だロシア、トルコ、イランなどの地域大国が多かれ少なかれ、南コーカサスの動向を気にしている。 トルコはすでにチュルク諸語圏のアゼルバイジャンを断固として支持すると表明している。ロシアはアルメニアと安全保障同盟を結んでいるが、両国に武器を売っているロシア政府とトルコ政府は、シリアやリビアなど世界各地で影響力を得ようとしのぎを削ってきた。 さらに、ウクライナでも戦争中のロシア政府がナゴルノ・カラバフ紛争にも関与するとなれば、この危機に新たな不確定要素が加わることになる。
Oliver Holmes



2021.11.03-NEWSPHERE-https://newsphere.jp/topics/lithuania-quit-171_20210604-2/
リトアニアが中国との「17+1」離脱 ほかの中東欧諸国にも呼びかけ

  中国は、中東欧16ヶ国にギリシャを加えた中国中東欧首脳会議(17+1)を主導している。中東欧諸国との協力や投資を踏み切り板として、EUへの影響力を高めるのが狙いだといわれている一方参加国は、2012年発足当時の世界的な金融危機とユーロ圏の危機を受けて、中国からの投資が殺到することを期待した。しかし発足から9年を経て一部の参加国からメリットが疑問視され始め、離脱する国も出ている
◆輸出期待外れだった、リトアニア大使告白
  「17+1」を脱退したのはリトアニアだ。ガブリエリュス・ランズベルギス外相は、同国の離脱により「17+1」はもはや存在しないとし、ほかのEU諸国にも脱退を呼び掛けている。同氏は、EU27ヶ国は結束して、分裂している「16+1」から「27+1」の枠組みに移行するべきという考えだ。(政治誌ポリティコ

  リトアニアの駐中国大使、Diana Mickeviciene氏は、脱退は「純粋な計算」によるものだとする。「17+1」に参加したのは、中国市場へのアクセスを改善するためだったが、残念ながらそうはならなかった。リトアニアの中国への輸出はわずかに伸びてはいるものの、中国からの輸入がはるかに速く伸びており、貿易収支はマイナスのままだとしている。(サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙、SCMP)
  同氏は、中国との貿易において、リトアニアはより努力する必要があるが、同時に開放性、透明性も必要だと指摘。この状況は、EU貿易圏を通じて交渉を行うことで改善が期待できるという考えを示した。また、「17+1」では、EU加盟国と非EU加盟国との差異が利害の不一致を作り出しており、リトアニアにとっては対応が難しすぎると説明している。
◆距離を取る参加国 中国は引き留めに必死
   中国の中東欧における大戦略に関心が薄れている兆候は、今年2月の「17+1」のオンライン首脳会議にも現れた。リトアニアをはじめ、エストニア、ラトビア、ブルガリア、ルーマニア、スロベニアが、首脳ではなく下位レベルの当局者を出席させていた。
   中国とEUの関係も微妙だ。新疆ウイグル問題に対するEUの対中制裁に不満を持つ中国が、EU議員に報復制裁を科したことで、EUは中国との投資協定の承認手続きを凍結する決議を採択した。
  中国は関係悪化の責任はEUにあるとしているが危機感を感じているようだ。ポリティコによれば、「17+1」のEU非加盟国であるアルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア、モンテネグロ、セルビアに新型コロナワクチンやマスクの無償提供を行い、熱心に取り込みを行っているという。

  東欧や中央アジアなどのニュースを伝えるbne IntelliNewsによれば、習近平主席は中国への融資返済で行き詰まっているモンテネグロに、返済の猶予期間延長に関する交渉の用意があると伝えた
   モンテネグロは「一帯一路」構想のもと、中国から融資を受けて高速道路を建設。しかし1キロ当たりの建設費が欧州で最も高いと推定される身の丈に合わないプロジェクトとなり、コロナ禍の影響も受けて7月に予定されている返済ができないといわれている
◆路線変更か? 習主席に焦り
   EUとの関係がこじれるなか、中国の王毅外相はセルビアとポーランドの外相との会談後、「中国は中東欧諸国との協力を通じて、『勢力圏』を確立することを目的としているわけではない」と述べた。関係は経済と貿易にフォーカスした現実的なものだと説明したという。(SCMP

  欧州だけでなく、中国は現在、ウイグル、香港での人権問題や、新型コロナウイルスの起源をめぐる疑惑などで世界的に評判を落としている。これを懸念したのか、習近平主席が共産党幹部に対し、「信頼できる、愛すべき、尊敬できる中国」というイメージを示すことが大切だと語ったと新華社が報じた(BBC)。中国の孤立を認める珍しい発言だったということで、さすがの習氏も軌道修正の必要性を認識し始めたようだ。

  中国の李克強首相は12日、クロアチア・ドブロブニクで開催の第8回中国・中東欧諸国首脳会議「16+1」に出席し、今後さらに中東欧諸国との間でインフラ整備や貿易を拡大していく方針を表明した。今回の会議には中国の影響力が顕著に見えるギリシャも参加し、来年は「17+1」として中国で開催されることも明らかとなった。
◆中国・中東欧諸国首脳会議とは?
  日本国内ではあまり知られていないが、中国・中東欧諸国首脳会議とは、一帯一路構想が発表された翌年の2012年から毎年開催され、中国と中東欧諸国16ヶ国(チェコ、スロバキア、ハンガリー、ブルガリア、北マケドニア、アルバニア、セルビア、モンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、リトアニア、ラトビア、エストニアなど)が参加する。簡単に言うと、経済的には豊かとは言えない中東欧の国々が、中国からの経済支援をテコにインフラ整備などを進め、中国からするとそれによって域内での影響力を高めようとするものだ。
  すでにさまざまな経済プロジェクトが進行中で、セルビアではハンガリー・ブタペストまで通じる鉄道の近代化事業が進められ、モンテネグロではアドリア海のバル港からモンテネグロ・セルビア国境に続く高速道路の建設が急ピッチで進められている。また、昨年には、中国の国営銀行がブルガリアの地方自治体や企業を支援するため、ブルガリア開発銀行に5年間で15億ユーロを融資することを決定している。
◆中国の政治的意図は?
  では、その政治的意図はどこにあるのか。中国は中東欧への接近について、「決してEU加盟国の分断を狙っておらず、西欧に比べると経済力の弱い中東欧諸国を支援するため」と説明しているが、イタリアの一帯一路参加の際に、“中国によるG7切り崩し”という議論が浮上したように、EU内からも内部対立や分断などを懸念する声が聞こえる。

  同会議でEU加盟国は11ヶ国、EU加盟を目指す国は5ヶ国だが、現在28ヶ国のEU内の3分の1以上が参加していることになる。今後、さらに中国の経済的な影響力が高まるのであれば、G7だけでなく、EUが受ける政治的影響もいっそう大きくなることだろう。ましてや、経済的には中小国といえる国々が中国への依存を高めている今日においては、G7より受ける影響は大きいかもしれない。
◆中国が想定する懸念
   しかし、アジアやアフリカから中国への抵抗と反発の声が聞かれるように、一部の国ではそういう流れも見え隠れする。たとえば、チェコの上院議会では3月、北京によるウイグルやチベットへの人権侵害を非難する決議案が採択され、同月に台湾を訪問していたプラハ市長は現地で、国際姉妹都市である北京と締結している協定上にある一つの中国政策の箇所を削除する姿勢を示した。北京としても、アジアやアフリカから聞こえるような反発の声が、中東欧諸国からも大きくなることは避けたいのが本音だろう。
  また、中国による中東欧接近については、そこを旧支配圏としていたロシアがどんな顔色を示すかもポイントだろう。プーチン大統領にとっても、中国は経済的に重要な相手であるが、中央アジアのように、自らの旧支配圏で中国のプレゼンスが高まることは良く思わないだろう。昨年8月には、ウクライナの首都キエフに一帯一路を推進するための貿易促進センターなるものが創設されたということだが、中東欧をめぐる中露関係にも目が離せないところだ。


2021.10.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20211015-B7B3CMBSXBOAFCBNIJANYPV7BU/
逃げ惑う住民、宗派対立の根深さ浮き彫り レバノン銃撃戦

  【カイロ=佐藤貴生】レバノンの首都ベイルートの市街地で14日に起きた大規模な銃撃戦は、内戦終結から30年以上が過ぎても、国内に混在する各宗派の信徒が互いに強い敵対心を抱いていることを示した。事件を受けて報復が起きる可能性もあり、経済低迷で国民の批判を浴びる政府は宗派対立という新たな難題を抱えた。

  ロイター通信などによると、銃撃戦はイスラム教シーア派住民地区とキリスト教住民地区の境界周辺で起きた。路上にいた親イランのシーア派組織ヒズボラの支持者らがキリスト教徒地区にある建物から狙撃されたのを受け、ヒズボラ関係者とみられる者らが応戦。瞬く間に激しい戦闘となった。ヒズボラ支持者らがキリスト教地区に立ち入って挑発したとの見方もある。
  ベイルートでは宗派により居住地区が分かれ、有力な宗派は自前の民兵を持っている。4時間以上に及ぶ戦闘で少なくともシーア派の6人が死亡、30人以上が負傷した。
  ヒズボラの支持者らはこの日、ベイルートの港湾部で昨年8月に約200人が死亡した大規模爆発をめぐり、捜査判事がシーア派政党に所属する元閣僚を取り調べる方針を示したことに反発。司法当局への抗議デモを行うため現場を通っていた。
  銃撃戦を受けて捜査が停滞する懸念が出ており、国連のほか、レバノンの旧宗主国フランスや米国は捜査継続を要求した。
  爆発は港湾部の倉庫に長年放置されていた大量の危険物が原因とみられ、国民の政治不信が噴出。引責辞任したディアブ首相に代わって今年9月、ミカティ首相率いる内閣が発足したばかりだった。

  政治の機能不全で通貨レバノン・ポンドの価値はこの約2年の間に対ドルで90%下落し、停電やガソリン不足が深刻化。国民の半数以上が貧困下での暮らしを強いられている。レバノンでは1975~90年、イスラム教徒とキリスト教徒の対立を背景とする内戦が起きた。


2021.09.14-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20210914-AZTSQWUACJMN3OEOFO7KQKWCRE/
「もの言う調停者」カタール、退避で役割を発揮

  イスラム原理主義勢力タリバンがアフガニスタンで実権を握って以降、中東のカタールがタリバンと西側をつなぐもの言う調停者」の役割を果たしている。イランとの友好関係で一時は同国と敵対する周辺のアラブ諸国から孤立したが、欧米のアフガン在留外国人の退避に協力し、タリバンには人権状況の改善を求めるなど、その独自外交路線をフル活用している。
  タリバンの実権掌握後、アフガンからは計12万人超の在留外国人とアフガン人が退避したが、カタールは半数近い約6万人を受け入れ、第三国に向かうまでの間、彼らの生活を支えたまた、アフガンに技術チームを送り航空便の運航再開も支援し、9日にはカタール航空のチャーター便を派遣し、米欧の市民ら約200人を退避させた
  カタールのムハンマド副首相兼外相は12日にアフガンの首都カブールを訪問し、タリバン暫定政権のアフンド首相代行らと会談。「調停者」の立場を強調する同外相はタリバンに女性の権利保護を求める一方、アフガンを孤立させず、関与を続けることが重要であるとの考えを示した
  ペルシャ湾岸の小国カタール国際社会で存在感を確保するため「調停外交」を推進。イスラム色の濃い統治を掲げ、2013年には国内へのタリバンの事務所開設を認めてアフガン和平交渉の舞台を提供してきた。他方で国内の空軍基地に米軍駐留を受け入れ、米国とも親密な関係にある
  しかし、カタールが、地域を不安定化させるイランとつながりを持っているとしてサウジアラビアやエジプトなどが反発し、17年にカタールと一時断交(今年1月に関係修復)
  カタールを孤立させた「独自外交」を、今は西側が利用する構図だ。ロイター通信によると、13日にはフランスのルドリアン外相がカタールの首都ドーハを訪れ、同国のムハンマド外相と会談。ルドリアン氏は、カタールの協力で、アフガンに残る少数のフランス国民を国外退避させる準備を進めていると述べた。米英独の外相らも次々にカタールを訪問した。
  しかし、人権問題などでタリバンがカタールの主張を受け入れなければ、調停は壁に突き当たる。仏メディアのフランス24は「カタールは今後、調停者という立場を注意深く管理しなくてはならなくなる」との識者の見方を伝えた。(カイロ 佐藤貴生)


2021.06.22-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20210622-LDAXGBA5N5ORHJZQQZSEDW2AUQ/?outputType=amp
ロシア アルメニア与党勝利で安堵 南カフカスで影響力固め

  【モスクワ=小野田雄一】南カフカス地方の旧ソ連構成国、アルメニアで20日に行われた議会選で、首相を辞任したパシニャン氏が再任される見通しとなり、同国の後ろ盾のロシアは安堵している。アルメニアでは隣国アゼルバイジャンとの昨年秋の紛争で敗北的な停戦に合意したパシニャン政権を非難する声が強かったが、ロシアとしては今後、停戦合意を維持し、同地方への影響力もさらに固めたい考えとみられる。

  議会選は野党などから停戦合意をめぐり批判にさらされたパシニャン氏が首相を辞任したことを受けて実施された。選挙の結果、パシニャン氏の与党「市民契約党」は過半数の議席確保を確実にした。

  ロシアのペスコフ大統領報道官は21日、「アルメニア国民の選択が、同国を持続的な発展軌道に乗せることを願う」と報道陣にコメント。「選択」には「停戦合意の実現も含まれる」と付け加え、その順守をアルメニア側に求めた。
  パシニャン氏は2018年、欧州との関係強化や民主化などを訴え、親露派政権からの交代を実現し、ロシアはパシニャン氏への警戒感を強めていた。
  しかし、昨年秋の係争地「ナゴルノカラバフ自治州」をめぐるアゼルバイジャンとの紛争でアルメニアは劣勢に立たされ、最終的にロシアの仲介で停戦が成立。アルメニア側は実効支配してきた土地の多くをアゼルバイジャンに返還する条件を迫られたが、完全敗北を免れた
  パシニャン氏は以後、ロシア依存を強めており、議会選の結果を受けた21日には、アルメニアが加盟する露主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構」と経済共同体「ユーラシア経済連合」との関係を深化させる-と表明。「私たちは必ずこの方向に進む」とロシアへの配慮を示した。


2021.01.13-msn ニュース-https://www.msn.com/ja-jp/news/national/
リトアニア「血の日曜日」追悼式典 弾圧経験者「独立は命より重要」

  【モスクワ=小野田雄一】1991年1月の「血の日曜日事件」から30年を迎えたバルト三国・リトアニアの首都ビリニュスで13日、市民らが現場となったテレビ塔周辺や自宅の窓辺にろうそくを灯し、犠牲者を追悼した。当時、現場でソ連軍と対峙(たいじ)し、現在は政府系機関「リトアニアにおけるナチスおよびソビエト占領期の評価のための国際委員会」の事務局長を務めるラチンスカス氏(52)が産経新聞のインタビューに応じ、「死ぬのは怖くなかった。国家の独立は個人の命より重要だったからだ」と振り返った。
  同国のナウセーダ大統領は同日、「ろうそくには二重の意味がある。(独立を勝ち取った)英雄たちだけでなく、勝利のために支払われた犠牲も忘れないということだ」と述べた。
  ソ連圏で80年代後半に高まった民族自決機運の中、ソ連構成国だったリトアニアでも90年、民族派の新政府が発足。他の構成国に先駆けて「独立」を宣言した。ソ連は独立の動きを阻止するため91年1月、ビリニュスに軍を展開した。ラチンスカス氏は振り返る。
  「ソ連は新政府転覆と傀儡(かいらい)政権樹立を試みた。1月7、8日には軍の車両が街を行き来していた。人々は議会庁舎やテレビ塔を守るため『人間の盾』を作った。大学生だった私は1月10日から友人らと議会庁舎の周囲にいた。何かが起きる悪い予感がしていた」
  「13日未明、ソ連軍がテレビ塔で発砲して死傷者が出たとラジオで知った。ランズベルギス最高会議議長(当時)がわれわれの所に来て、犠牲者を増やさないように解散を求めたが、さらに多くの人々が集まってきた。私は『攻撃を受けるだろう。人生最後の日になるかもしれない』と思ったが、死ぬのは怖くなかった。国家の独立は命よりも重要だったからだ。友人もみな同じ気持ちだった」
  結局、ソ連軍は議会庁舎に接近したものの、ここでは攻撃は行わなかった。多数の死傷者が出ることを躊躇(ちゅうちょ)したとみられている。
  「あの13日は決して忘れることはない。十数人の犠牲者や多数の負傷者が出たと知って心が痛んだが、私たちは『独立を守ったんだ』と理解した。あのような実感を得るためにこそ、人生は生きる価値がある」
  リトアニアは20世紀以降だけでもソ連、ナチスドイツ、ソ連の3回にわたる支配を受けた。ラチンスカス氏によると、複雑な歴史の中で各体制への協力者や抵抗者が現れ、各時代の歴史評価は定まっていない。リトアニアには、国民の一部がナチスのホロコースト(ユダヤ人絶滅政策)に協力した苦い記憶もある。
  「同じ過ちを繰り返さないためにも歴史を深く知る必要がある。そのために私たちは働いている」



2020.9.4-Goo!ニュース-https://news.goo.ne.jp/article/afpbb/world/afpbb-3302831.html
がれきの下に生存者の鼓動か、ベイルート大爆発から1か月

  【AFP=時事】8月4日に大爆発が起きたレバノンの首都ベイルートで、港湾地区のがれきの下に生存者の鼓動らしきものが探知され、懸命の捜索活動が行われている。
   ベイルートのマルワン・アブド知事は現地で記者団に対し、2日夜にジュマイゼ地区の完全に倒壊した建物のがれき付近でチリ救助隊の救助犬がにおいに反応し、探知機で調べたところパルス(脈動)を検知したと述べ、「生存者かもしれない」との期待を示した。チリの救助隊、レバノンの民間防衛隊、ベイルートの消防隊が協力して現場で捜索している。
   しかし爆発事故からほぼ1か月が経過しているため、生存者がいる可能性は小さい。
   大爆発ではこれまでに死者191人、負傷者6500人以上が確認され、ベイルートの大部分が破壊された。レバノン軍によると、現在も7人が行方不明になっている。 【翻訳編集】AFPBB News


2020.8.11-BBC NEWS Japan-https://www.bbc.com/japanese/53732134
レバノン内閣総辞職 爆発受け、3日連続で反政府デモ

  レバノンのハサン・ディアブ首相は10日夕、国民向けのテレビ演説で内閣の総辞職を発表した。首都ベイルートの港で4日に発生した大規模爆発をめぐり国民の政府への怒りが膨らむ中、自らの改革が妨害されていたと主張した。
  ミシェル・アウン大統領は、新たな内閣が組まれるまで職務にとどまるよう現閣僚に求めた。
  爆発ではこれまでに死者220人が確認され、さらに110人が行方不明となっている。ベイルートのマルワン・アブド県知事が、アルマルサド・オンラインニュースに語った。
  アブド氏はまた、行方不明者には多数の外国人労働者やトラック運転手が含まれていると、テレビ局アルジャディードに語った。
  爆発の被害は現場から半径数キロの範囲に及んだ。市民20万人以上が住宅を失うか、窓やドアがない家に住むなどしている。
  多くの市民らは、政府の怠慢と腐敗が爆発の原因として、同国指導層を非難。10日まで3日連続でデモが起こり、警官隊との衝突も発生している
  爆発は、ベイルートの港湾地区の倉庫に長年にわたって危険な状況で保管されていた硝酸アンモニウムが直接の原因となった。
首相の演説
  今年1月に首相に就任したディアブ首相は、この日のテレビ演説で自らを改革者として描き、政府は「この国を救うためのロードマップ作成に多大な努力をした」と主張。根強い抵抗で妨害されたと訴えた。
  ディアブ氏は、レバノンにおける腐敗の広がりは「国そのものより大きい」と説明。「非常に分厚く、とげだらけの壁が変革を妨げている。既得権益を守り、改革に抵抗するため、汚い手法を使う連中が、その壁を強化している」と主張した。
  「この連中は私たちが脅威だと承知している。この政府が成功すれば、長年レバノンを窒息させてきた支配層に本当の変化をもたらすと、分かっているのだ」
  「私たちは今日、今回の大惨事を招いた責任者の追及と、真の変革を求める国民の意思に従う」
これからどうなる
  内閣総辞職を受け、国会は新しい首相を決める。ただ、現在の反政府デモの理由にもなっている複雑な派閥政治のため、新首相は簡単には決まらないだろうと、BBCのトム・ベイトマン中東特派員は言う。
  同国では、異なる宗教グループの指導者らが権力を分け合っている。さらに、1975~1990年の内戦の終結後、多数の軍閥が政界に進出。現在も政治、経済、社会の広範囲で影響力をもっている。
  今回のデモ参加者らは、こうした仕組みがレバノンの腐敗の原因だと訴えている。
経済危機がさらに悪化
  レバノン当局は、今回の爆発による損失は30億ドル(約3200億円)以上と推定。同国経済への打撃は約150億ドルになるだろうとしている。
  同国では爆発前から、経済危機による貧困や飢えが問題となっていた。政府への不満も以前から高まっていた。
  昨年後半には、メッセージアプリ・ワッツアップの利用に課税しようとしたことをきっかけに、経済的混乱や腐敗に抗議する大規模なデモが発生。当時の内閣は総辞職した。
  新型コロナウイルスの流行でデモは下火となったが、経済危機は悪化し続けた。
  今回の爆発を受け、すでに何人もの閣僚が辞任を表明している。
  国民の政治不信は根深く、ディアブ政権の退陣で国民の怒りが鎮まるとは限らない。昨年の反政府デモは内閣を総辞職に追い込んだが、その際も今回と同様の腐敗批判が繰り広げられていた。


2020.8.8-NHK NEWS WEB -https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200808/k10012558111000.html
ベイルート爆発 穀物の貯蔵施設に被害 食料供給制限のおそれも

  レバノンの首都、ベイルートで起きた大規模な爆発では、穀物の貯蔵施設など食料の輸入拠点である港が壊滅的な被害を受けたことから、国連WFP=世界食糧計画は、レバノン国内での食料供給が制限されるおそれがあるとして、強い懸念を示しました。
  レバノンの首都ベイルートの港で今月4日に起きた大規模な爆発では、これまでに154人が死亡し、5000人がけがをしたほか、今も各国の救助隊による行方不明者の捜索が続いています。
  今回の爆発では、港にあった小麦などの穀物の貯蔵施設が大きく壊れ、レバノンの経済・貿易相は、残された穀物はあとわずかだと説明し、危機感を表しました。
  これについてWFP=世界食糧計画は7日、「レバノンは食料の85%近くを輸入に頼っている。ベイルート港の深刻な被害でレバノン国内への供給が制限される可能性がある」として食糧危機への懸念を示しました。
  ベイルート在住で、難民などの支援にあたっているNPO「パルシック」の風間満さんによりますと、市内ではパンの購入を2袋までに制限している店もあるということです。
  風間さんはNHKの取材に対し「もともと経済が厳しく、食べ物を買えない人がたくさんいる中で、港が壊れてしまった。まともに食べられずに死んでしまう人も出てくるのではと思う。国際社会からの支援が必要だ」と話していました。
米 トランプ大統領 「緊急物資など積んだ輸送機 向かっている」
  アメリカのトランプ大統領は7日、記者会見で「医薬品や緊急物資を大量に積んだ輸送機が3機、レバノンに向かっている。医療関係者や緊急支援隊も向かっている」と述べました。
  そのうえで、支援を強化するために今月9日にフランスのマクロン大統領やレバノンの指導者らと電話会議を行うことを明らかにしました。


2020.8.5-NHK NEWS WEB -https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200805/k10012552261000.html
ベイルート爆発 死者100人超 硝酸アンモニウムが大量に保管も

  中東・レバノンの首都ベイルートで4日、大規模な爆発があり、現地のメディアは赤十字社が死者が100人を超えたことを明らかにしたと伝えています。レバノン政府は、爆発があった倉庫には爆薬の原料にもなる硝酸アンモニウムが大量に保管されていたと発表し、原因の究明を進めることにしています。
  レバノンの首都ベイルートにある港で4日、大規模な爆発があり、町の広い範囲で建物や車が壊れるなどの大きな被害が出ました。
  現地のメディアは、けが人の搬送や救助に当たっているレバノンの赤十字社が、死者が100人を超え4000人がけがをしたことを明らかにしたと伝えています。
  現地の日本大使館によりますと、ベイルート在住の日本人1人が割れたガラスで手と足を切り、病院で手当てを受けましたが、けがの程度は軽いということです。
  レバノン政府は、テレビを通じて発表を行い、爆発があった倉庫には、爆薬の原料にもなる硝酸アンモニウムおよそ2750トンが2014年から保管されていたことを明らかにしました。
  ただ、なぜ爆発が起きたのかは分かっておらず、今後、調査委員会を立ち上げて原因や責任の所在を調べたうえで、48時間以内に結果を公表するとしています。
  これに先立ち、ディアブ首相は演説で、国民に対して団結を呼びかけたうえで、友好国などに支援を求めました。
  レバノンは、長引く経済危機で政府の資金繰りが悪化し反政府感情が高まっていて、今回の被害の社会への影響が懸念されます。
硝酸アンモニウム 過去の事件や事故
  中東・レバノンの首都ベイルートで起きた大規模な爆発では、爆薬の原料にもなる硝酸アンモニウムが爆発した可能性が指摘されています。
  硝酸アンモニウムの爆発が原因となった事件や事故は、過去に世界で起きています。
  このうち、2015年には中国・天津の倉庫で硝酸アンモニウムなどが引火して大規模な爆発が起き、合わせて173人の死者・行方不明者が出たほか、周辺にあった300余りのマンションや工場などが被害を受けました。
  この爆発では中国政府の調査チームが報告書をまとめ、保管されていた化学物質の1つが気温の上昇で自然発火し、近くにあった硝酸アンモニウムなどに引火して大爆発が起きたとみられ、危険物の保管方法などの安全管理のずさんさが事故につながったと指摘しています。
 また、1995年にアメリカ南部のオクラホマ州の連邦政府ビルが元軍人によって爆破され、政府職員や保育所にいた子どもなど168人が死亡、500人以上がけがをした事件では硝酸アンモニウムが使われました。
 このほか2013年、南部テキサス州の肥料工場で起きた爆発で14人が死亡し、200人以上がけがをした事故では硝酸アンモニウムの爆発が原因だったと結論づけています。


2020.1.19-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200119/k10012250851000.html
レバノンで反政府デモ激化 60人以上けが

反政府デモが続く中東のレバノンで、18日、デモの参加者と治安部隊が衝突し、60人以上がけがをするなどデモが激しさを増していて、経済的な危機にも拍車がかかり、さらなる混乱が懸念されます。
  レバノンでは、去年10月以降、財政難に苦しむ政府が新たな課税方針を打ち出したのをきっかけに政治の刷新を求める大規模な反政府デモが続いています。
   18日には、首都ベイルートの中心部で、デモの参加者が石を投げて激しい抗議活動を行い、治安部隊が放水したり、催涙弾を使ったりして排除に乗り出しました。
  現地の赤十字によりますと、双方の衝突で少なくとも65人がけがをして病院に運ばれたということで、これまで比較的、秩序が保たれていた市民のデモが激しさを増す事態となっています。
  レバノンでは、一連の抗議活動を受けてハリリ首相が辞任し、去年12月にはディアブ元教育相が新たな首相に指名されましたが、異なる宗教や宗派間の利害の対立を抱える中、新たな政権の発足が遅れています。
  また、デモが長期化していることで、通貨の下落や物価の上昇など経済的な危機にも拍車がかかっていて、さらなる混乱が懸念されます。


リトアニア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


  リトアニア共和国、通称リトアニアリトアニア語: Lietuva)は、ヨーロッパ(欧州)の共和制国家EUNATOOECDの加盟国、通貨はユーロ、人口は約280万人、首都はヴィリニュスである。
概要
  バルト海東岸に南北に並ぶバルト三国の中でもっとも南の国で、西はバルト海に面する。北はラトビア、東はベラルーシ、南はポーランド、南西はロシア飛び地カリーニングラード州国境を接する。面積は、日本の九州本島と四国島に山口県島根県を合わせた面積にほぼ相当する。
  なお、欧州のいずれに分類するかは見解が分かれる。国連では北欧に分類されるが、東欧、もしくは中東欧に分類されることもある。
  第一次世界大戦後の1918年リトアニア共和国としてロシア帝国より独立。1940年ソビエト連邦から、翌1941年ナチス・ドイツからも侵略された。その後、ソ連に再占領されてソ連の構成共和国のひとつとなったが、ソビエト連邦の崩壊に伴い1990年独立を回復した。

地形
  リトアニア共和国はヨーロッパの北東部に位置するバルト三国の中でもっとも大きな国である。
  西部はバルト海と面しており、砂質の海岸がおよそ99キロ(61.5マイル)広がる。そのうちの38キロ(24マイル)がバルト海の外海に面しているが、これはバルト三国の中でももっとも短い。残りの海岸線はクルシュー砂州により区切られているクルシュー潟に面している。おもな不凍港クライペダ港で、クルシュー潟の狭い入り口に位置している。このクルシュー潟は浅く、南にロシア連邦カリーニングラード州まで続いている。国内最大の河川であるネムナス川(ネマン川)とその支流は、国際運河にもなっている。
  リトアニアの地形は全体的になだらか平坦である。これは最終氷期に形成された氷河がその後に後退した際、標高差のあまりない、細長く伸びる尾根しか残さなかったためである。このため小山や丘陵平原がバルト地方のおもな特色であると言える。国内で標高の高い地域は西部の高台や東部の台地にあるモレーンであるが、それでもリトアニアでもっとも高い地点(アウクシュトヤス、Aukštojas)の標高は292メートル(965フィート)しかない。
  ヴィシュティーティス湖をはじめとする多くの湖や、また湿地帯があるのが特徴的である。また混交湿地林が国土の約33%を覆っている。
  フランスの地理学者による算定によれば、ヨーロッパの地理的中心はリトアニアの首都のヴィリニュスの北、数キロの地点になる。
  植物地理学の観点からすると、リトアニアは中欧の特徴と東欧の特徴を合わせ持つ。また世界自然保護基金(WWF)によれば、リトアニアの領土は中欧混交林地域(PA0412)とサルマタイ混交林地域(PA0436)の2つのエコリージョンに分けられる
政治
  1990年3月11日の独立回復宣言以来、リトアニアは共和制国家として民主主義の伝統を維持してきた。1992年10月25日には独立回復後初めて議会選挙が行われたが、同日行われた国民投票では、投票者の56.75%がリトアニア共和国憲法の制定を支持している。憲法に関しては、とりわけ大統領の権限について激しく議論がなされ、1992年5月23日に行われた大統領制に関する国民投票では有権者の41%が大統領職の復活を支持していた。結果、半大統領制が導入されるに至った。
政治
  1990年3月11日の独立回復宣言以来、リトアニアは共和制国家として民主主義の伝統を維持してきた。1992年10月25日には独立回復後初めて議会選挙が行われたが、同日行われた国民投票では、投票者の56.75%がリトアニア共和国憲法の制定を支持している。憲法に関しては、とりわけ大統領の権限について激しく議論がなされ、1992年5月23日に行われた大統領制に関する国民投票では有権者の41%が大統領職の復活を支持していた。結果、半大統領制が導入されるに至った。
大統領
  大統領はリトアニアの国家元首とされ、5年任期で直接選挙によって選ばれ、最大で2期10年まで務めることができる。大統領選挙で過半数の票を獲得した候補が大統領に就任するが、いずれの候補も過半数の票を獲得しなかった場合は上位2名の候補による決選投票が行われる。
  大統領職は儀礼的なものに過ぎないが、しかし外交防衛方針の策定に加わり、それらを指揮する役割を果たす。大統領は、セイマス(議会)の承認を得て首相を任命し、首相が指名したほかの閣僚も任命する。また、官僚や裁判官についても大統領が任命する。
  2014年に行われた大統領選挙ではダリア・グリバウスカイテが再選を果たし、二期目を2019年7月12日まで務めた。なお、彼女はリトアニア史上初の女性大統領である。
  2019年に行われた大統領選挙では、2019年5月12日、大統領選挙第1回投票では祖国連合が支持する女性候補イングリダ・シモニーテ候補に次いで多い得票で、決選投票に進出。決選投票ではシモニーテ候補を大差で破って当選し、7月12日にギタナス・ナウセダが大統領に就任した。
内閣
  憲法第91条により、内閣は首相および各大臣によって組織される。
  現職は以下の通り(なお、以下の表における役職名は、現職が男性の場合は男性名詞(ministras)、女性の場合は女性名詞(ministrė)を用いている)。
国際関係
  2009年5月4日時点、リトアニアは154か国と外交関係を樹立している。また、6大陸94か国に在外大使館を設置しており、大使館を設置していない2か国に領事館を設置している。
  リトアニアは1991年9月18日以来、国際連合加盟国であり、また国連機関やその他国際機関にも加盟している。また欧州安全保障協力機構(OSCE)や北大西洋条約機構(NATO)、欧州評議会、そして欧州連合(EU)の加盟国でもある。EUの議会組織である欧州議会にはリトアニアから12名の議員が選出され、5年ごとに普通選挙で改選される。2001年5月31日からは世界貿易機関(WTO)にも加盟しており、現在は経済協力開発機構(OECD)などへの加盟を目指している。他方で、旧ソ連の連邦構成共和国でありながらも、独立国家共同体(CIS)には加盟していない。
軍事・安全保障
  リトアニアの軍隊は約1万5,000名の兵士によって結成されており、うち2,400名は非戦闘員である。またその他10万人の志願兵がいる。2008年9月までは徴兵制度がとられていた。2004年以降、リトアニアは北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、ドイツ連邦軍など欧州各国軍が国内に駐留している。また、アフガニスタン国際治安支援部隊への要員派遣も行っている。一度廃止した徴兵制をロシアの脅威を理由に復活した。
  リトアニアの国防制度は、国家安全保障戦略に示されている概念「総合的で絶対的な防衛」に基づいている。リトアニアにおける防衛政策は、リトアニア社会に通常防衛の準備をさせ、リトアニアが西欧の安全保障・防衛機構に統合していくことを目的とする。国防省は戦闘部隊、捜索救難、諜報機関を管轄する。
  5,400人からなる国境警備隊は内務省の管轄下に置かれ、国境の保護、パスポートおよび関税の管理を担当する。また、海軍と共同で密輸麻薬取引などを取り締まる。
  ロシアによるとみられるサイバー攻撃が頻発しており、2016年に「ナショナル・サイバー・セキュリティー・センター」を設立して防衛体制を強化している。
経済
  国連の分類によれば、リトアニアは平均所得の高い国に位置づけられており、鉄道、空港、4車線の高速道路などの近代的なインフラが整備されている。しかし、それでもリトアニアの所得水準は欧州連合(EU)に2004年の拡大前から加盟していた国よりも低く、IMFのデータによれば、リトアニアの1人あたりのGDP(為替ベース)はEU加盟27か国平均の半分ほどの1万5,649ドルにとどまる(2013年)。こうした低所得が要因となり、2004年のEU加盟時には所得の高い国への移住が増加した。
  EU加盟直前の2003年、リトアニアの経済成長率はEU加盟国および加盟候補国の中でもっとも高く、第3四半期には8.8%に達した。その後、2004年にEUに加盟し、2004年には7.4%、2005年7.8%、2006年7.8%、2007年8.9%、2008年第1四半期には7.0%のGDP成長率を記録した。
  公式データによれば、EU加盟は海外からの発注の増加や観光業への後押しといった経済成長をもたらしている。それまでの通貨であるリタス2004年6月28日よりERM IIの対象通貨となっており、1ユーロ=3.45280リタスで固定されていた。2015年1月1日にユーロへ移行した。
  リトアニアの貿易は多くがEU圏内で行われており、2009年は輸出の64.2%、輸入の59.1%が対EU諸国であった。その他の国ではロシアがもっとも高く(輸出13.2%、輸入29.9%)、次いでベラルーシ(輸出4.7%、輸入1.7%)、アメリカ合衆国(輸出2.9%、輸入1.1%)、ウクライナ(輸出3.0%、輸入0.9%)となっている。
  2001年には世界貿易機関(WTO)の一員ともなった。国有企業、特にエネルギー部門におけるそれの大規模な民営化が開始されており、現在も進行中である。
  リトアニアの経済構造は知識集約型経済へと少しずつ着実に移行してきており、とりわけバイオテクノロジーレーザー産業が特に盛んで、バルト三国におけるバイオテクノロジーの製造はリトアニアに集中している。またメカトロニクス(機械電子工学)や情報技術(IT)産業も今後のリトアニア経済が目指す方向として期待されている。
  失業率は近年上昇傾向にあり、2010年第2四半期の失業率は18.3%である。また、1日1ドル(貧困線)以下で暮らしている人の数は国民の2%にも満たない。
  エコノミスト・インテリジェンス・ユニットによるクオリティ・オブ・ライフ・インデックス(生活の質指数)は、バルト三国の中でもっとも高い。2018年7月5日にはOECDに加盟した。
  リトアニアでは累進課税政策よりも一律課税政策が多くとられている。2007年には個人所得税は24%に減税され、さらに2009年1月には21%に減税された。このうち6%は健康保険に当てられている。また法人税は15%で、2010年1月1日からは中小企業向けに5%の法人税が導入されている。政府はハイテク産業や付加価値商品に対する投資への優遇政策を行っている。消費税は21%である。
  リトアニアは鉱物資源にまったく恵まれていない。唯一採掘されているのは原油であるが、2002年時点の採掘量は43万トンにとどまる。近年は天然ガスの採掘も有望視されている。
民族構成
  民族構成を見てみると、人口の83.1%がリトアニア人である。少数派としてポーランド人(6.0%)、ロシア人(4.8 %)、ベラルーシ人(1.1%)、ウクライナ人(0.6%)などがいる。
  在リトアニアのポーランド人に対しては、ポーランド語の教育が行われている。ポーランドにとって、リトアニアは、ポーランド語の教育が学校でなされている唯一の外国である。
  また、中世にヨーロッパ各地からユダヤ人を受け入れたために、リトアニアの都市部にはユダヤ人が多く、その中でも特にヴィリニュスはユダヤ人らから「北のエルサレム」と呼ばれるほど多くのユダヤ人が住んでいた。18世紀末の時点で約25万人のユダヤ人がかつてのリトアニア大公国の土地に住んでいた。しかし、第二次世界大戦中のナチス・ドイツと、その後のソ連支配の時代の弾圧によりユダヤ人人口は大きく減少した。
  ソ連からの独立時に、住民すべてにリトアニア国籍が与えられた。このため、ほかのバルト諸国のラトビアやエストニアのような残留ロシア人の無国籍問題は発生していない。
宗教
  リトアニアの宗教は現在ローマ・カトリックが大勢を占め、ほかの宗教は少数となっている。しかし歴史的には多くの宗教が信奉されてきた。もともと現在のリトアニアにあたる地域はバルト人の土地であり、彼らは独自の多神教信仰を持っていた。しかしその後、キリスト教が徐々にリトアニアに入ってくるようになった。農民層が中心のリトアニア人にカトリックが浸透するのは16世紀ごろと言われている。
  中世のリトアニア大公国は、現在のリトアニアのほかベラルーシウクライナの大半を含む広い領土を支配しており、いわゆる原リトアニア地方を除いた、おもに東スラヴ人の大公国貴族や一般住民が住んでいた広大な東部地域では正教を信じる者が多かった。彼らのうち貴族層は多くが後の時代を通じてポーランド文化を受容(ポーランド化)してカトリックに改宗したが、農民層の多くは正教を信じた。また大公国の公用語リトアニア語でなく、現代のベラルーシ語ウクライナ語の基礎となった教会スラヴ語であり、のちにはポーランド語が公用語となった。また大公国ではそのほかイスラム教ユダヤ教の信仰なども広く認められてきた。
  その後、ロシア帝国支配下ではカトリックの弾圧が行われ、またソ連に支配されると宗教そのものが否定されるに至った。リトアニアが独立を回復してからは信仰が再び認められるようになり、現在ではヨーロッパでも有数のカトリックの国として知られている。







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