社会問題-wiki・社説・時事公論・主張・etc-2


2024.03.24-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240324-2PWOH4565RKCVKFLAV2GC5BQKQ/
社説 <主張>教科書にLGBT 男女否定の授業にするな

  文部科学省の検定に合格し、令和7年度から使われる中学校の教科書で、LGBTなど性的少数者についての記述が増加することになった。
  保健体育では、性的少数者に関連し「性自認」「性的指向」など学習指導要領の範囲外の内容が「発展的内容」として全ての教科書に掲載される。英語や社会科地理などの教科書にも関連した内容が入る
  性的少数者への差別をなくす教育は必要としても、男女の性差を否定するような行き過ぎた指導で、思春期の子供たちを混乱させてはならない
  検定結果によると、保健体育では「人間の性は単純に『男性』と『女性』に分けられるものではありません」などの説明とともに、合格した全3点の教科書が「性の多様性」について踏み込んだ内容を記述した。

  性教育とは関係の薄い地理でも「性的少数者に配慮した社会へ」として、同性婚を法制化したニュージーランドなどの事例を好意的に紹介するコラムを掲載した教科書がある。社会科公民では性別に関係なく使える「だれでもトイレ」を写真付きで取り上げる例もあった。
  昨年6月に成立した性的少数者に対する理解増進法が教科書にも影響した格好だが、同法には反対意見も多く、性は自分で決められるといった「性自認」の概念は大人にも分かりにくい。教師は指導できるのか
  中学生は生殖機能が発達する思春期で、異性への関心が高まる時期だ。男女の身体的な特徴などを理解させることが重要であり、その前に「性の多様性」などと教えても生徒は戸惑う。男女の性差など違いを知り、互いに認め合う教育が必要だ。
  教師用の学習指導要領解説には、性に関する指導は「発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮することが大切である」と明記されている。この原則を守るべきだ。生徒に行き過ぎた指導を押し付けてはならない
  教科書は流行を追うものではない。伝統的家族の役割、日本の国柄などについてもしっかり教えてもらいたい
  例年検定結果が注目される社会科では日本の領土に関する記述が一層充実した。教師自身が歴史経緯などを深く理解しているか、指導力が問われる


2023.11.13-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231113-HO43CRGWQ5LH3K6QG3XHVDYYJU/
<独自>制服「着替え時間」で待遇格差 都営地下鉄委託先団体 労基署が是正指導

  都営地下鉄の駅員が制服に着替える労働時間を巡り、都から駅業務を受託する一般財団法人「東京都営交通協力会」正社員と契約社員の間で待遇格差があったことが13日、関係者への取材で分かった。池袋労働基準監督署は「契約社員の着替え時間が不十分」として協力会を是正指導。今月中に着替え時間の実態調査をするよう求めた。

  都営地下鉄の委託業務を巡っては、契約内容が労働者派遣法に抵触する恐れがあるなどとして、都や協力会が今年1月以降、厚生労働省東京労働局などから計8回の立ち入り検査を受け、10の法令違反を指摘される異例の事態となっている。
  都交通局は、都営地下鉄4路線全106駅のうち、59駅の窓口対応やホーム監視などの業務を協力会に委託。役員には都職員OBや出向者もおり、協力会によると、都営地下鉄の駅員として働く約700人の従業員のうち、約300人が契約社員という。
  駅員は鉄道営業法で勤務中の制服着用が義務付けられ、出退勤時の着替えは労働時間として算定される。関係者によると、協力会が受託した全駅で、契約社員の着替え時間を出勤時10分、退勤時10分に設定。これに対し正社員は出勤時10分、退勤時40分で、主任クラスの場合、退勤時は50分だった。都の委託が始まった平成15年以降、常態化しているという。
  協力会の担当者は「正社員は退勤時にその日の売上を計算する業務が残っており、その分の時間が加味されている」と説明。「今後、労基署から改善を求められれば、割増賃金を支払う用意はある」と話した。
  一方、産経新聞の取材に応じた協力会の契約社員は「退勤前に売上を計算するのはリーダーと呼ばれる正社員と決まっており、それ以外は他の正社員と契約社員が同じ勤務ダイヤに入ることもある」と証言。「ほぼ同じ仕事内容なのに、待遇に差があるのは不合理だ」と打ち明けた。
  池袋労基署は今年9月に協力会を立ち入り検査し、是正指導を実施。東京労働局は正規、非正規の着替え時間の差が労働者派遣法に基づく「同一労働同一賃金」のルールに抵触する可能性があるとみて調べている。


2023.11.01-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/world/20231101-OYT1T50305/
[深層NEWS]中国でスパイ容疑取り調べ「質問は一切だめ、精神的におかしくなる」…鈴木英司氏

  日中青年交流協会の元理事長の鈴木英司氏と神田外語大の興梠一郎教授が1日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、2014年に施行された中国の「反スパイ法」について議論した。

  中国でスパイ活動をしたとして16年に拘束された鈴木氏は懲役6年の実刑判決を受け、昨年10月に帰国した。鈴木氏は当時の取り調べを「質問は一切だめで、自分から話すこともだめ。精神的におかしくなる」と振り返った。アステラス製薬社員が正式に逮捕されたことについては、「逮捕されればすぐ起訴になる」との見方を示した。


2023.10.22-朝日新聞-https://www.asahi.com/articles/DA3S15773144.html?iref=comtop_Opinion_03
(社説)NTT法見直し 防衛財源論と切り離せ

  NTT法見直しの議論が、自民党と政府、それぞれで進んでいるきっかけは防衛費の大幅増額に伴う財源問題だ。政府によるNTTへの規制や株式保有のあり方を点検することは大事だが、NTT株を売って財源に充てることばかりが先に立てば議論がゆがみかねない。通信インフラの将来像を見据えた検討が求められる。

  NTT法は、1985年に旧日本電信電話公社の民営化で発足したNTTの姿を定める公共的な役割を課しつつ肥大化を防ぎ、通信市場での競争を促すことを狙った。分割・再編などに伴い改正されてきたが、固定電話を全国あまねく提供し、研究開発の成果を独占せずに開示するという義務は維持されてきた
  株式に関しては政府に3分の1以上の保有を義務づけている。政府の持ち株比率は、80年代後半からの累次の売却を経て3分の1近くまで下がっており、さらなる売却は法律の改正が前提になる

  見直し論議を主導するのは自民党だ。防衛費増額の財源探しの中で、政府に残るNTT株を全て売れば5兆円規模になることに着目。防衛財源についての6月の提言で「完全民営化の選択肢も含め、速やかに検討すべきだ」とした。こうした自民党の動きを受けて、総務省の審議会でも検討が始まった。
  約40年前にできたNTT法に時代遅れの部分があるのは確かだ。通信の主役は携帯や高速データ通信に移っている。固定電話を対象としてきた提供義務のあり方は、国民のニーズや技術革新を踏まえて見直していくべきだろう
  旧電電公社の技術力を引き継いだNTTに研究成果の開示を求める規定も、他社との共同研究の妨げになっているとの指摘がある。総務省の審議会は、「原則開示」の運用を改める方向で一致した。
  NTTは、NTT法について「役割はおおむね完遂した」とし、廃止を主張している。一方、KDDIなど競合各社は、NTTが旧電電公社から全国の設備を引き継いだ経緯や、携帯通信事業でNTTの光ファイバー網を借りている現状から、廃止に反対している
  政府の株式売却には、外資などによる買収を懸念しての慎重論もある。見直しに当たっては、公正な競争を妨げず、利用者に不利益が生じないよう、細心な検討が必要だ。
  通信インフラの発展のためにNTTへの政府の関与はどうあるべきか、長期的な観点から議論を尽くすことこそが重要である。防衛財源の帳尻合わせに終わらせてはならない。


2023.10.22-朝日新聞-https://www.asahi.com/articles/DA3S15773145.html?iref=comtop_Opinion_04
(社説)中国の邦人逮捕 交流はばむ「反スパイ」

   中国に出かけても大丈夫だろうか。日本の企業関係者が抱える不安である経済関係が密接な隣国に足を踏み入れるのに、わが身の安全を心配しなければいけない。異常な事態というほかない。

  主な原因が、アステラス製薬中国法人の日本人社員が3月、反スパイ法違反などの容疑で拘束された事件だ。軟禁状態で半年以上、取り調べなどを受け、最近、正式に逮捕された。今後も起訴を判断する手続きがあり、早期釈放は望みがなくなった
  何がスパイ行為とみなされたのか。容疑の詳細は明らかにされていない。ことの性質上、高い透明性は期待できないにせよ、中国がスパイ活動を取り締まる手法にはあまりにも問題が多い。
  法律が定めるスパイ行為の範囲があいまいだとの指摘が、現地で活動する外国企業からかねて出ていた。今年7月の改正法施行で、範囲はさらに拡大。「国家秘密」だけでなく「国家の安全や利益に関わる文書、データ」なども対象とされた。しかし、何が「国家の安全や利益」に当たるのかがはっきりしない。
  中国では最近、年齢層別失業率や、消費、投資にかかわる統計などが相次いで非公開となった。経済不振で当局が過敏になっているとみられる。こんな状況で経済の実情を調べればいっそうスパイとみなされやすくなる。米国の信用調査会社やコンサルティング会社の従業員が取り調べを受けた事例もある。
  2015年以降にスパイ行為の疑いで拘束された日本人は17人。中国政府は日本の公安調査庁をスパイ組織と見なし、同庁と何らかの関係を持った人を監視対象としているとも指摘される。
  スパイ罪とされ服役した元日中青年交流協会理事長の鈴木英司さんは、同庁の知人と中国情勢について意見交換する程度だったと著書に記している。中国の対応には行き過ぎた面があるのではないか。
  過剰なスパイ対策が経済関係を損なう懸念は中国政府内にもあるようだ。王文濤商務相は「日本企業が非常に大きな不安を感じていることは理解している」と言い、外国企業向けの説明会を開いた。
  だが、スパイの摘発に当たる国家安全省に懸念は共有されていない。それどころか同省は国民にスパイ行為の「密告」を奨励している。これでは中国人と外国人が接触しにくくなるのが当然だ。
  事態の打開には習近平(シーチンピン)政権の上層部に働きかけるほかない。日本政府には、中国首脳と会う機会を早急に設け、強く主張するよう求めたい


2023.07.15-高知新聞-https://www.kochinews.co.jp/article/detail/665903
【クラスター弾】非人道性の激化懸念する-高知のニュース 社説

   米国が、殺傷能力の高いクラスター(集束)弾をウクライナに供与した。しかし、強力な武器が次々と投入されることで、民間人の犠牲やインフラの被害が拡大することは必至だろう。戦争の長期化に伴い、非人道性のエスカレートが懸念される状況だけに、和平を探る取り組みの重要性が増している。ロシア軍の早期撤退へ国際社会で圧力を強めたい。

  クラスター弾は1発の親爆弾の中に、数個から数百個の子爆弾が詰められた兵器。空中で子爆弾をまき散らし、広範囲を無差別に攻撃する。第2次大戦やベトナム戦争、イラク戦争などで使われた。戦後、不発弾で子どもが遊んでいて爆発したケースもある。直接の威力もさることながら、長期にわたって危険性が残る特徴に非人道性が指摘される。
  2010年に発効したオスロ条約ではその使用や開発、輸出入を全面的に禁止。日本を含め、110を超える国々が加盟する。ただ、ロシアやウクライナ、米国は条約に加盟していない。国際人権団体によると、ロシアがウクライナを侵攻した昨年2月以降、双方ともにクラスター弾を使用しているという。
  米国は従来、非人道的な兵器の供与に慎重で、ロシア軍のクラスター弾使用を強く非難してきた。その姿勢を転じた背景には、ウクライナによる反転攻勢の行き詰まりがあるとみられる。
  戦況はすでに「弾薬が戦争の鍵を握る」と言われるほどの消耗戦に陥り、ウクライナ軍は弾薬が枯渇。ロシア軍の強固な防御を崩せず、苦戦しているという。米国もこれまでの支援で通常弾薬の在庫が不足しており、クラスター弾の供与でその穴埋めを図る狙いのようだ。
  米国は供与への批判に対して、ロシアの不発率が30~40%に上るのに対し、供与するクラスター弾は2・5%以下だと強調。ウクライナ政府が民間人被害のリスクを最小化すると米国に文書で確約したと国際社会に理解を求めた。
  だが、混乱した戦場で「限定」した使用などは極めて困難だ。クラスター弾投入で戦争の非人道性が一段高まったことに変わりはない。次第に凄惨(せいさん)さを増すのは戦争の本質と言っていい。ロシア軍は戦術核の使用をちらつかせ、占領するザポロジエ原発でテロを準備しているとの情報もある。これ以上の激化を避ける必要がある。
  米国のクラスター弾供与には、ウクライナ支援で一致する北大西洋条約機構(NATO)の一部加盟国も反対を表明していた。オスロ条約の加盟国だ。非加盟国に対しても不使用を働きかける条約の規定を踏まえた対応だったに違いない。
  一方、日本政府は米ウクライナの「2国間のやりとり」(松野博一官房長官)として、供与を追認した。「われ関せず」で加盟国の責務を果たしているといえるのか。非人道性の高まりを食い止め、和平につなげる行動を求める
高知のニュース 社説


2023.07.03-NHK NEWS WEB(国際ニュース ナビ)-https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2023/07/03/32625.html
「死ぬかもしれない。だけど行く」命かけた密航の末に
(イスラマバード支局長 松尾恵輔 / ヨーロッパ総局記者 田村銀河)

  「今夜、ついに船に乗るよ」そう話していた青年は、ことし2月、真っ青な海と白い砂浜が美しいイタリア・クトロの海岸で、遺体となって発見されました。
  24歳のアフガニスタン人。パスポートも持っていませんでした。周囲からは幼い子どもなど、94人の遺体が見つかりました。なぜ、故郷から約5000キロ離れた地中海で命を落としたのか。

  取材を進めると、アフガニスタンからヨーロッパへと続く、密航ルートの実態が見えてきました。(イスラマバード支局長 松尾恵輔 / ヨーロッパ総局記者 田村銀河)
「果物売りの青年」はなぜ、イタリアに?・・・「海に落ちて、どれだけ叫んだか。助かりたかったか。悲しくて、毎日彼を夢に見ます」
  アフガニスタンの首都カブールに住む男性は、重苦しい表情でつぶやきました。「彼」とはイタリアの海岸で遺体で見つかった、いとこのハミドさん(24)です。2年前まで、一緒に暮らしていました。
  ハミドさんは、地元の学校を卒業してから、カブールの市場で果物を売ったり、荷物を運ぶ仕事をしたりして生計を立ててきました。優しくて笑顔にあふれ、多くの友人に囲まれていました。
  すべてが変わったのが2021年8月。イスラム主義勢力タリバンが権力を掌握しました。もともと不安定だったアフガニスタンの経済は、国家予算の半分以上を占めていた国外からの援助が滞って、さらに悪化。仕事を失う人が相次ぎました。ハミドさんも収入を失い、他の仕事を探しましたが、見つかりませんでした。年老いた母親の生活費が手に入らない。状況が良くなる見通しもない。「ここにいても経済は最悪で、仕事もない。国外に働きに行くんだ」・・・数か月がたったある日、ハミドさんはそう言って、ひそかに隣のイランへ出国。さらに、トルコに向かったといいます。
5000キロの密航の果てに・・・しかし、たどりついたトルコでの生活は決して楽ではありませんでした。路上で生活し、ゴミの中から食べ物を探したり、友人らと5~6人でアパートの一室に住んで工場で働いたりしていたといいます。
  1年以上がたったとき、ハミドさんは思い詰めた様子でいとこの男性に電話してきました。・・・亡くなったハミドさん・・・「もっと先に進まなければいけない。生活は厳しくて、家賃さえ払えない。このままだとトルコでは生きていけない」家族は家に戻ってくるように説得しましたが、ハミドさんは「カブールには絶対に戻れない」と話し、ヨーロッパに向かう密航船に乗りこみました。・・・亡くなったハミドさん・・・「今夜、ついに、船に乗るよ。今から携帯電話を業者に預けるね」・・・いとこの男性・・・「安全にたどり着けるように、神様に祈っているよ」・・・そのやりとりの数日後、イタリアの沖で1隻の密航船が転覆したというニュースが流れました。いとこの男性は、すぐに、ハミドさんが乗っていた船だと感じました。船に乗っていたとみられる200人の多くがアフガニスタン人で、幼い子どもを含む94人が命を落としました。ハミドさんの母親は、亡くなってから数か月たっても、息子の死を受け入れることが出来ていません。
・・・いとこの男性・・・「彼は国外に行けばたくさんの希望があり、いい生活が出来ると夢見ていました。こんな悲劇は、もう他の誰にも起きて欲しくありません」
「海で溺れた方がまし」密出国の希望者は10倍に!?
  ハミドさんのようにアフガニスタンからひそかに抜け出して、ヨーロッパに渡ろうとする人たち。その実態を探るため、密航希望者が集まるアフガニスタン西部ニムルーズ州で撮影された映像を入手しました。映像には、イランとの国境沿いの干上がった川のほとりに、イラン側の様子をうかがう複数の男性が映っていました。

  夜など警備が手薄になった隙を狙って、イランに渡ろうというのです。・・・男性・・・「ここから先は危険で、死ぬかもしれないことは、分かっている。でもここにいたら、仕事もなく、貧しくて死んでしまうかも知れない。行くしか他に選択肢はないんだ」近くの橋の上では、イランへ密入国したあと拘束されるなどした40人ほどが、アフガニスタン側に送り返されていました。人々をイラン側に送り出す手引きをしている専門の業者に、匿名を条件にカブールで話を聞くことが出来ました。
  タリバン復権以降この仕事を始め、イラン側に送り出した人の数はこれまでに3000人。この1年半で、客の数は10倍に増えていると言います。タリバンの抑圧を恐れる人のほか、仕事が見つからず、パスポートやビザを入手するにも費用や時間がかかるため、正規の手続きを経ずに国を出る人が相次いでいるといいます。
  イランへの密入国費用は1万6000アフガニ、日本円で2万5000円ほど。失敗する可能性も高く、無事に出国できたときに支払うことになっています。
  イラン、トルコと移動して、働きながら費用を貯めて、最後にヨーロッパを目指す人もいます。しかし、舗装された道路がない場所では、何日も歩かなければならず、業者はその道中の過酷さをこう表現しました。
イランへの密入国を手引きする業者・・・「10人連れて行くと、そのうち1人亡くなることもあるし、天候が悪いとその数はもっと増える。警備隊に撃たれる人もいる。トルコに行っても厳しい取り締まりにあうし、寒さで命を奪われる人も、イタリアを目指して地中海で溺れる人もいる。それでも、ここにいるより、海で溺れた方がずっとましなんだよ」
  アフガニスタンでは、長引く干ばつなどで食料不足が深刻となり、人道支援を必要としている人は国民の3分の2にのぼるとも見られています(国連推計)。
  タリバンは、ひそかに出国する人たちへの取り締まりを強めていますが、食べるものも希望も失った人たちは、死のリスクがあっても国を逃れようと国境に向かい続けています。
ハミドさんの事故の波紋・・・一方、密航船が漂着したイタリア。
  沖合で起きたハミドさんたちの死は、イタリアの人たちに「クトロの悲劇」として、大きな衝撃を与えています。船が沈没し、漂着したクトロの海岸には、事故から2か月がたっても、船の一部が残され、地元の人によって花やろうそくが手向けられていました。
  海岸には手作りの十字架も置かれ、花と一緒に地元の高校生が書いた手紙も添えてありました。・・・手向けられていたイタリア語のメッセージ・・・「あなたは平和に子供を育てたいという希望を抱いて旅立ちましたが、運命は残酷なものです。私たちの海があなたがたを迎え入れなかったことをお許しください。悲しみが私たちの心に残っています」
  町の人に話を聞くと、船が沈没した翌朝には海岸に多くの遺体が流れ着き、地元の人たちも生存者の救助や、遺体の回収を手伝ったそうです。遺体で見つかった94人のうち、26人が女性、34人が子供だったということです。
地元の30代の女性・・・「自分も母親として、子どもたちの未来のために国から逃れた母親のことを考えると胸が痛む。このようなことは二度と起きてほしくない」
  犠牲者の遺体の多くは遺族のもとに返されたということですが、ハミドさんら一部の犠牲者は、地域の墓地に埋葬され、取材中も地元の人が花を手向けていました。

  墓の管理人・・・「このあたりの地域の人もかつて世界に移住して、こうした悲劇を経験しているから、アフガニスタンの人たちへ愛を示しているのです。地元の人が手向けた花でここがいっぱいになりました」
渡れても続く苦難・・・しかし、命がけで海を渡った人たちにとって、いっそう厳しい現実も待っています。多くのアフガニスタン人が目指す国の1つ、イタリア。ここで右派の連立政権を率いるのはメローニ首相。右派政党の党首としてこれまで移民の制限を訴え、去年10月に首相に就任しました。

  就任から2か月後には、NGOによる海上での移民や難民を救助する活動に事実上制限をかけたほか、クトロでの海難事故を受けて3月、町の名前をつけた「クトロ法令」を議会に提出し、成立させました。
  イタリアではこれまで、ボートなどで入国した後、難民認定を受けられなかった場合にも、家族がイタリアにいる場合などには特別に滞在許可が認められ、就労ビザに切り替えることもできました。ただ、クトロ法令ではこの条件を撤廃し、今後は滞在が認めらないことから、強制送還の対象にもなります。
  こうした法律が成立した背景にあるのが、ハミドさんのようにイタリアを目指す移民や難民の急増でした。今年1月から5月中旬までにその数は4万6000人と、去年の同じ時期の4倍近くになっていました。
  難民、移民を受け入れる寛容な政策では、さらに多くの入国者を呼び、イタリアにとっても負担となるとして、規制を強化しているのです。
  メローニ政権は今後、チュニジアなど移民を送り出す国とも協力し、密入国者への取り締まりを強化しようとしています。
メローニ首相
  「クトロのような事故を防ぐための唯一の方法は、不法な出国を止めることだ」 地元からは、政権の対応が厳しすぎるという声も上がっています。
  現地で移民の生活支援を行うNGOの代表、ハムジ・ラビディさんも「クトロ法令」に否定的な1人です。国を逃れて船で渡ってくる人たちは、多くが書類なども持ち合わせず、難民の地位を証明できることも少ないため、「クトロ法令」はむしろ状況を悪化させると考えています。
ラビディさん・・・「こんな法令を作っても移民が消えることはない。クトロ法令によってアフガニスタン、アフリカの国々など、母国に問題がある国から逃れた人もイタリアに滞在できなくなる可能性があり、送還されなくとも、不法滞在のまま路上で過ごすことになるだろう。イタリアの発展にとって彼らは必要なのに」
  国内では抗議のデモもたびたび起きていますが、政権の対応が変わる見込みはありません。
ウクライナ侵攻の陰で
  アフガニスタンからイタリアを目指した人たちの5000キロの道のりをたどって見えてきたのは、国に残っても国を出ても苦しみ、行き場をなくす人々の現実と、難しい対応を迫られる先進国の姿でした。 EU=ヨーロッパ連合に加盟する各国に正規の手続きを踏まずに入国した人の数は、去年33万人に達し、前の年から6割以上増えました。
  2年間で200万人以上が入国した「難民危機」(2015年~2016年)以降では最大となっていて、EUも新たな対応を迫られています。中でも多いとされるのが、アフガニスタンのほか、シリアやチュニジアからの人たちです。
  ロシアによるウクライナの軍事侵攻以降、ウクライナからの避難民には寛容な政策をとる国が多い一方、食料価格の高騰などに苦しみ、密航を試みる人たちは今後もいっそう増えることが予想されます。
  命を犠牲にしてまで豊かな国を目指すアフガニスタンの人々をどうすれば救えるのか。ハミドさんたちの死は問いかけています。


2023.07.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230702-PCXM6HSNN5OOJERSSNMVPQWIAY/
現実とずれる朝日の中東報道 イスラム思想研究者、麗澤大学客員教授・飯山陽

  「中東では米国が存在感を失い、中国が存在感を増している。その証拠に中国は今年3月、米国を排除したかたちで、対立してきたサウジアラビアとイランの関係正常化を仲介した」。これはここ数カ月間、朝日新聞が繰り返し強調してきた「ナラティブ(物語)」である。6月9日の「『米国は中東にとどまる』サウジ訪問の国務長官、中国へ警戒あらわ」というウェブ記事でも、このナラティブは繰り返されている。いわく、「米国は中東で存在感を増す中国を警戒しており、この地域への米国の継続した関与を印象づけるとともに、近年ぎくしゃくするサウジとの関係再建の糸口を探っている」とのこと。

  しかしこのナラティブは現実とは齟齬(そご)がある。今も中東で圧倒的な軍事的存在感を保持しているのは米国であり、サウジを含めた中東諸国の多くが米国に安全保障を依存しているのが現状だ。彼らにとって安全保障は揺るぎなき最優先課題である。
  国務長官のサウジ訪問後、駐米サウジ大使館報道官は、政治、安全保障、軍事、などにおける両国関係はかつてないほど強固だと述べた。朝日のナラティブと中東諸国当事者の認識のずれは顕著だ。
  2022年時点で米中央軍は中東を中心とする21カ国に推定4万から6万人の米軍を配備しており、サウジ、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタールにはそれぞれ一定規模の米軍が駐留。中東諸国は武器輸入の5割以上を米国に依存しており、サウジに至ってはその率は78%に達する。
  6月8日にはサウジ、ヨルダン、イスラエルと「匿名希望」の中東2カ国が、イランを威嚇するための米軍爆撃機の演習に参加した。
  これらの事実は、中東諸国にとって米国との軍事的協力・連携が必要不可欠であるだけでなく、イランが相変わらず脅威であることを端的に示している。サウジとイランが関係正常化したからといって、両国が「仲間」になるわけではない。イランの核開発は地域最大の脅威だという認識にも変わりはない。
  「米国の時代は終わった、これからは中国の時代だ」と大衆に印象付けるには、こうした事実は邪魔である。朝日がこれらを伝えないのは、事実報道より米国の凋落(ちょうらく)と中国の台頭という朝日の「願望」の流布を優先させているからであろう。朝日にとって中東は所詮、利用する対象にすぎないのではないか。朝日の記事をくまなく読んでも中東について理解できないのは、こうしたゆえんだ。

【プロフィル】飯山陽
  いいやま・あかり 昭和51年、東京都生まれ。イスラム思想研究者。上智大文学部卒、東大大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。麗澤大学客員教授。著書に『中東問題再考』など。


2023.06.27-Yahoo!Japanニュース(朝鮮日報)-https://news.yahoo.co.jp/articles/28ff04fe1dfcfbc8b2a331e61f0bed2998171b49
韓国国内の政争は国境線の内側にとどめるべきだ【6月27日付社説】

  チベット亡命政府は韓国野党・共に民主党の都鍾煥(ト・ジョンファン)議員らを批判しているという。都議員らは中国政府の招待を受けチベット自治区を訪問し、現地で中国によるチベットの人権弾圧について「70年前のこと」と発言した。これに対してチベット亡命政府は「中国による宣伝、扇動と抑圧的な統治の正当化に利用されたことは遺憾」「中国はチベット人を120万人以上殺害し、6000カ所以上の寺院を破壊した」などとした上で、共に民主党議員らに「チベット人の苦痛に関心を持ってほしい」と要求した。一連の批判を受け韓国の禅宗系仏教宗団「曹渓宗」も遺憾の意を表明している。

  中国が1950年代に武力で併合したチベットは、新疆ウイグル自治区や香港と共に中国における深刻な人権問題として国際会議などでは常に取り上げられ、中国における人権の尺度とも言われている。最低限の常識や国際的な感覚さえあれば、中国共産党からの招待は当然断るか、その言葉は慎重を期さねばならない。
  ころが韓国の議員団は現地で中国報道官のような言動を示した。共に民主党は今月初めに李在明(イ・ジェミョン)代表が福島汚染水関連の「韓中連帯」のためにケイ海明・駐韓中国大使の公邸を訪問し、その場でケイ大使が内政干渉発言を行い習近平・国家主席にへつらった際にはその立会人となってしまった。
  共に民主党は先日オーストラリア、フィジー、マーシャル諸島など太平洋の18カ国の政府に「福島汚染水放流問題での連帯」を呼びかける書簡を送ったが、これも大きな問題になっている。
  韓国政府が先月、太平洋の島国と行った首脳会議後の共同宣言で、「汚染水は国際法と国際的な基準に合わせて処理しなければならない」との立場をすでに表明したにもかかわらず、共に民主党はこの問題で再びこれらの国々と接触した。これは明らかに無用な行動であり、外交的な常識にも反するものだった。
   共に民主党による一連の動きはどれも内政と関係している。過度な親中姿勢を示すことについては、「米国や日本など自由民主主義陣営との関係強化を目指す尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権との対立軸を設定するため」と多くの識者が指摘する。荒唐無稽なデマに過ぎない福島原発処理水の韓半島流入問題もそうだ。国民の不安を刺激し、来年の総選挙に利用することが目的だ。
   「国内におけるあらゆる政争は国境線の内側にとどめよ」という言葉は「内政は外交に影響を及ぼしてはならない」という金言としても通用している。共に民主党は絶対多数議席を持ち国会を掌握しているが、それでも野党であることに変わりはない。外交は基本的に政府が権限を持ち責任をもって行うものであり、外交に関する限り野党は守るべき一線がある。共に民主党はその一線をあまりにも越えており、国内での政争以外には何も見えていないのだ


2023.04.28-REUTERS-https://jp.reuters.com/article/idJP2023042701001143
車内放置で死亡「重篤と捉えず」
【共同通信】

  神奈川県は27日、児童相談所が関与しながら子どもが命を落とした虐待事件の第三者検証委員会による報告書を公表した。2022年に厚木市で1歳と2歳のきょうだいが車に残され熱中症で死亡したケースでは、母親=保護責任者遺棄致死罪で実刑確定=が事件前にも車内に放置し、児相が認識していたのに「重篤なリスクとして捉えていなかった」と指摘した。

  報告書によると、母親は22年7月8日、商業施設の駐車場で長男を車に放置。県警が14日に児相通告したが、児相は緊急性の高いほかの事案を優先した。母親は29日、長男と長女を再び放置。児相はこの日になって母親に電話したが、母親は出なかった。
【共同通信】


2023.04.10-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230410-M22OMUBRWJKBVAS3X235VOHQJM/
「専守防衛を改めよ」 正論大賞の織田氏が受賞講演

  第38回正論大賞(フジサンケイグループ主催)を受賞した元空将で麗澤大特別教授の織田邦男氏の受賞記念大阪講演会が10日、大阪市北区のリーガロイヤルホテルで開かれた。織田氏は「ウクライナ戦争の教訓と日本の課題」と題して講演し、日本の防衛力強化の必要性を訴えた。

  織田氏は現在の日本の安全保障環境について、中国や北朝鮮、ロシアによる侵略が現実味を帯び、3正面対応を迫られているとして「戦後最大の危機」と形容。さらに日本と、ロシアによる侵略を受けたウクライナには、専守防衛を堅持するなどの共通点があったと指摘し「必要最小限の軍事力しか持たず、くみしやすいと相手に思われれば抑止は効かない」と訴えた。
  その上で昨年12月に閣議決定された国家安全保障戦略など新たな「安保3文書」に言及。「核抑止戦略という一番大切なものに2行しか割かれておらず、『ない』に等しい。画竜点睛(がりょうてんせい)を欠く内容だ」と苦言を呈した。ウクライナでの教訓を踏まえ「専守防衛から戦略守勢へと改め、戦争を起こさせないためにどうすればいいのか国民1人1人が考えていくべきだ」と述べた。


2023.03.23-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230323-IUOOYDGKEJJCFLD7FW4SJ54UM4/
ウイグル問題「日本が発言を」 静岡大・楊海英教授(ようかいえい・ヤン-ハイイン)が仙台「正論」懇話会で講演

  仙台「正論」懇話会の第69回講演会が23日、仙台市青葉区のホテルメトロポリタン仙台で開かれ、静岡大の楊海英教授が「ジェノサイド国家 中国と諸民族-モンゴル・ウイグルの真実」と題して講演した。

  楊教授は先の大戦後、モンゴルは日本的な近代教育で飛躍的に発展を遂げ、ウイグルも西方からの先進的な思想が流入して知識人層を形成したと指摘。「アジア諸国が西洋列強からの独立を目指したのに対し、モンゴルとチベット、ウイグルは中国からの解放を目指した」と述べた。
  一方、中国は殺戮(さつりく)に加え、内モンゴルには母国語の使用を禁止している。ウイグル人にも徹底的な監視や中国人と結婚させる同化などのほか、組織的な性犯罪を行っていると指摘。その上で「日本がリーダーシップを取って発言することが重要だ」と訴えた。


2023.03.04-TBS NEWS DIG.-https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/361485?display=1
“お茶汲み”する職員に1日20万円…五輪費用3.6兆円オーバーの“裏側” 組織委元職員が告白【報道特集】

  巨額の公金が使われた東京オリンピック。会場運営を担った大手広告代理店などが相次いで起訴されました。番組では組織委員会の元職員4人を取材。
  そこで語られた費用が膨張した“からくり”とは。
(1)
東京オリンピック・パラリンピックの運営業務をめぐる談合事件。
 大会組織委員会の元次長や大手広告代理店・電通の幹部らが 次々と逮捕・起訴された。競争入札が行われなかったこともあり費用が膨らみ、公金が組み込まれている大会費用は当初の7340億円から約5倍の3兆6800億円となった。
  報道特集は4人の組織委員会元職員を取材。出身母体は広告代理店、自治体、競技団体など。口々に語られたのは、費用が膨らんだ“からくり”だ。

  組織委元職員 (P-2)氏「素人組織ができることは、もう電通に頼ることしかできない、付け込まれる隙をずっと持っていた」
  電通出身 組織委元職員A-1氏「正直言うと広告業界が麻痺しているのは間違いない。組織委員会側にノウハウが全くない。言いなりにならざるを得ない」
 こうした図式は本大会だけではない。招致の段階から代理店が深く関わっていた。リオデジャネイロオリンピックの閉会式で東京をPRするため、安倍晋三元総理をサプライズ登場させたあのシーン。約8分間のセレモニーにかかった費用は11億2000万円。このうち、8億円は東京都つまり公金から支出された。
 元東京都職員としてオリンピック招致に関わった(G-2)氏は・・・。
(2)
元東京都職員 B-1氏  国士舘大学客員教授
  「経費について『どういうふうにして委託業務を作っていくか』と言ったら(上司から)『ダメダメ、もう電通1本』独占みたいになっている。交渉がほとんどできない状態。競争入札できる状態ではないから(費用が)言い値になってしまう」
 今回事件となった談合では、組織委員会の元次長・(I-1)被告と電通など7社の間で総額437億円の業務を対象に不正な受注調整が行われたとされる。電通で20年以上勤め、組織委員会の職員だった(A-1)氏は、大会をめぐる“いびつな構図”をこう説明する。
  電通出身 組織委元職員(A-1)氏「(組織委の)(I-1氏)次長の下には何名か部長がいますけど、電通から出向している部長が当然いますので、受注者側(電通)が人を送り込んで、発注者側(組織委)として調整している」
  会場運営を受注した電通が発注者側の組織委員会に社員を出向させ、調整を行ったというのだ。関係者への取材では、組織委員会に出向していた電通社員が社内向けに作成した資料には 「電通の利益を最大化するよう、組織委員会に社員を派遣すべき」という内容が記載されていたという。
  電通出身 組織委元職員(A-1)氏電通の利益を最大化にするというのはもちろんあると思うが、特定の会社に会場ごとに委託して本番まで実施させるというスキームを考えたのは(電通社員)だろうし、それを承認したのは(I-1氏)だと思う」
  さらに契約の形態にも偏りがみられたという。談合があったとされる2018年度から2021年度までに組織委員会が結んだ契約のうち、特命随意契約の件数が競争契約の約1.5倍に及んでいた。
  特命随意契約は、1社のみからの見積額を基準に金額を決めるため、相場より高くなる傾向があるという。
 組織委元職員(B-2)氏「一般競争契約が基本で、随契が例外。逆なんですよね。組織委員会の場合は競争契約が例外で、随契が基本というような考え。(組織委の上司は)『我々は公益財団法人で、今回は契約の内容とかを公表する義務がありません』と。これは(当時の五輪担当の丸川)大臣が国会で答弁しています」-当時、丸川大臣はこんな答弁をしていた。
  丸川珠代 五輪担当大臣(当時)「東京都及び組織委員会が出しておられる経費、チェックを入れるわけですけれども、中には守秘義務がかかっていて、私どもも見せていただけない経費があることをご理解いただければと思います」
  組織委元職員(B-2)氏「(組織委の上司は)『また過去の長野(五輪)の事例を見ても、会計検査院による検査等々には該当しないので、絶対に外部からの監査の目が入ることがないので大丈夫です』という回答が常にありました」・・・(B-2)氏が契約形態への疑問を上司にぶつけても、 その手法が変更されることはなかったという。経費がふくらむ“からくり”は、これだけではなかった。
  会場運営費のほとんどを占める「人件費」だ
(3)
  例えば、武蔵野の森総合スポーツプラザで運営にあたるスタッフの人件費は総額で6億2300万円となっている。
  オリンピック会場への派遣スタッフを集めるよう依頼された人材派遣会社がある。
(B-3)さんのところにもこういった話が?
   ファンファーレ・エージェンシー (B-4) 社長「うちの方にも人を出してほしいという話は来ていました」-だが、それは会場運営を請け負った広告代理店ではなく別の会社からの依頼だったという。
(B-3)氏-御社に来るまでにだいたい何社ぐらい入っている?
  ファンファーレ・エージェンシー (B-4) 社長「6社、6番目かそれ以下じゃないか。オリンピックに関してはベースとなる金額がよくわからない。間に何社入っていて、どのくらい抜いているのかというのはあくまでも予測でしかない」
  多くの会場で組織委員会から委託を受けた広告代理店は再委託を繰り返し、必要な数のスタッフを確保することが行われた。関わった会社のすべてが「手数料」を得るため、元の人件費が高額になってしまうというのだ。

電通出身のA-1氏は・・・
  電通出身 組織委元職員A-1氏「結局一番下に払う金額を決めておいて、それにその会社に利益を足した合計になる。結果としては個人がもらえるギャランティーと、設定されているギャランティー(人件費)の間には5倍とか6倍にならざるを得ないという仕組み」

  報道特集が入手した、会場ごとの人件費などが記された組織委員会の内部資料。委託業者の欄には今回、談合に関わったとされる広告代理店などの名前が並ぶ。
  電通出身 組織委元職員A-1氏「中抜きの証拠であることは間違いない。(内部資料の)金額を見ればわかるように」一覧表には、それぞれの役職にかかる人件費の単価が書かれている。例えば「運営統括」の単価は東京スタジアムが日当30万円、国技館が日当18万7000円となっている。
  電通出身 組織委元職員A-1氏「1つの大会にも関わらず、金額がバラバラなんですよね。一番問題なのは多分そこ。組織委員会側にノウハウが全くない。だから結局、委託業者に委託するしかないし、言いなりにならざるを得ない」
  番組が新たに入手した、ある会場の運営費の見積書。この会場を担当していたC-1氏が取材に応じた。
  組織委元職員C-1氏「会場運営をするために業者(広告代理店)からいただいた見積書。あくまで無観客になる前の見積書」
     人件費の日当を示す欄には「チーフディレクター:単価12万円」「リーダー:単価10万円」などと書かれている。だが無観客が決定した後も、この単価が変更されることはなかった。
  組織委元職員C-1氏「単価というものは我々が関知できない部分。当然我々としても業務量が少なくなっているので、単価を減らしていただきたいという思いはありつつも、それが既定路線という形で進んでいた。本当にやるせない思い。上司に相談してさらに上につなげていただいたとしても『金額を精査しましょうか』という回答がなかった。我々現場から声を上げても変わらなかった」
  人件費の問題はその価格だけではない。組織委員会に社員を出向させた広告代理店に、準備の段階から支払われていたことが新たに分かった。
  組織委元職員D-1氏「私がいたところでは、大手広告代理店に業務を委託するという形で、広告代理店から常時、約10名の方が来ていただいて、同じ事務所で仕事をすることになった。単価を聞くと1人20万円で」
  ーー1日?
  組織委元職員D-1氏「1日20万円ですね。それが4年間続いた」-計算すると、1人あたりの人件費は4年間で1億9200万円。10人だとすると19億円以上になる。その業務は、B氏にはこんな風に映っていたという。
  組織委元職員D-1氏「連絡業務という役職がありまして『連絡業務って何?』と聞いたら、『本社(広告代理店)との連絡業務です』と。特に『これ会社に持っていって』と言われた物を持っていくだけ」
  ーーでもそれが常にあるわけじゃないですよね?
    「ないですね。ほとんどみんなのお茶を汲んだりとか、本人は(20万円)もらっていないのですが、その代理店には1日20万円払っていた」
  組織委員会元職員のC-1氏も、広告代理店から出向してきた職員の仕事ぶりに驚いたと話す。
  組織委元職員C-1氏「私が見ている限りでは、委託した(広告代理店の)業務に対する仕事をしていただけ。そもそも組織委員会の職員としての仕事をしているところを目にすらしない。もう疑問だらけでした」


2023.03.04-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20230304/ddm/005/070/121000c
社説-放送法巡る「内部文書」 政治的圧力の経緯検証を

  放送に求められる「政治的公平」の解釈を巡る第2次安倍晋三政権内部のやりとりを記したとされる文書を、立憲民主党の小西洋之参院議員が公表した。放送法4条に定める「政治的に公平であること」について、従来は放送事業者の番組全体を見て判断すると解釈されてきた。

  だが政権は2016年2月、「一つ一つの番組を見て、全体を判断する」との見解を示した。当時の高市早苗総務相は、一つの番組だけで公平性を欠いたと判断する可能性に言及し、放送局の運用停止などをちらつかせて物議を醸した
  文書では14~15年、当時の礒崎陽輔首相補佐官が、問題視する特定の番組名を挙げながら、総務省に解釈の変更を迫る様子が詳述されている。安倍氏が「現在の放送番組にはおかしいものもあり、現状は正すべき」だとの発言をしたという記述もある。
  松本剛明総務相は「解釈を変えたものとは考えていない」と強調する。しかし、文書の内容が事実であるなら、新たな解釈を打ち出すよう首相官邸側が総務省に働きかけていたことになる。
  異論封じの傾向が強かった安倍政権下では、政府・与党が政治的公平」を理由に、報道番組に対したびたび口を出してきた。
  衆院選を控えた14年11月には、安倍氏がTBSの街頭インタビューが偏っていると批判した。その後、自民党は在京6局に「報道の公平中立、公正の確保」を求める「お願い」を送り、番組のテーマやゲスト出演者の選定にまで注文を付けていた。
  今回の文書に記されているやりとりの時期は、それらとほぼ重なっている。
  放送法の目的は、放送の自律を保障することによって、表現の自由を確保することだ。政治圧力によって、放送が萎縮させられるようなことがあってはならない
  きのうの参院予算委で、松本総務相は「総務省の文書であるかは精査中」と述べた。岸田文雄首相も「正確性、正当性が定かではない」との見方を示した。
  国民の「知る権利」に関わる重大な問題である。政府は文書の内容を検証して、その結果を明らかにすべきだ。


産経新聞-https://www.sankei.jp/csr/akemi
明美ちゃん基金

  明美ちゃん基金は、先天性心臓病などに苦しみながら経済的な事情で手術を受けることができない子供たちを救うため、産経新聞社が提唱して設立された基金です。活動資金はすべて読者を中心とする一般の人たちからの寄託金でまかなわれ、50年以上にわたり、200人を超える幼い命を救ってきました。

「貧しいがゆえに死なねばならぬか」
  昭和41(1966)年6月7日。1通の投書がきっかけとなり、サンケイ新聞(現・産経新聞)社会面に闘病生活を送る幼い少女の記事が載りました。
  少女は、鹿児島県に住む伊瀬知(いせち)明美ちゃん(当時5歳)。生まれつき心臓の右心室と左心室の間に穴が開いている心室中隔欠損を患い、「手術をしなければあと2、3年の命」と宣告されました。
  手術費は50万円。現在の約500万円に相当しました。8人家族で農業を営む両親にとって、わずかな田んぼを売り払ってもとうてい手の届かない大金でした。
  「明美ちゃんを救おう」。記事は大きな反響を呼びました。その日のうちから社会部に電話や手紙が殺到し、翌日までに全国から66件、268万円余りの善意が寄せられました。1週間後には420件、425万円余りに達し、手術に必要な額をはるかに上回りました。
  「まだ第2、第3の明美ちゃんがいることと思います。そのような人たちに1日も早く明るい日を与えてください」(4000円を寄せた神奈川県の私立中3年生たち)
  善意を寄せた人の中には、こんな意見も多くありました。産経新聞社は、明美ちゃんの両親や、手術を引き受けた東京女子医大付属心臓血圧研究所の所長、榊原仟教授(故人)らと協議しました。
  41年6月15日、心臓病の子供を救う日本で初めての基金「明美ちゃん基金」が誕生しました。
外国人にも拡大
  明美ちゃんは、ただちに心臓血圧研究所へ入院しました。当時、心臓病の世界的権威といわれた榊原教授の執刀で手術に臨みました。手術は成功し、昭和40年代には明美ちゃんに続き、心臓病に苦しむ「第2、第3の明美ちゃん」たちが適用を受け、元気を取り戻していきました。
  基金の活動をきっかけに、先天性心臓病の子供に対する国の対策も前進しました。厚生省(当時)が42年から育成医療費を増額し、心臓病を支給対象に含めるなど、医療費は健康保険や公的扶助でほぼカバーされるようになりました。
  国内で対策が進むにつれ、基金には、発展途上国の子供たちを救うという新たな使命が加わりました。すでに47年、インドネシアのニューニューちゃん(当時7歳)が外国人の適用第1号として手術を受けていましたが、医療事情の悪いアジアの発展途上国を中心に、子供たちが次々と適用を受けて来日しました。
  これまでにネパール、韓国、カンボジア、マレーシアなどの子供たちが手術を受けました。昭和63年以降の適用者は、すべて外国籍となっています。
広がる「使命」
  昭和59年には、乳幼児に多発する原因不明の難病、川崎病の後遺症による心臓障害にも基金の適用を拡大しました。北海道の望月美奈子さん(当時10歳)が手術を受け元気になりました。
  61年には、移植によってしか延命の方法がない胆道閉鎖症の女児、金城結麻(ゆあさ)ちゃん(当時1歳)が基金の適用で渡米し、ボストン小児病院で肝臓移植手術を受けました。産経新聞も脳死臨調の発足に先立って、移植医療キャンペーン「甦(よみがえ)れ!いのち」を展開しました。
  子供たち1人ひとりの命を救う一方、小児の心臓病をめぐる学術研究にも基金を拠出。また、平成10(1998)年には発展途上国の医療活動にも適用を拡大し、ミャンマー中部で「ミャンマー子ども病院」の建設を支援しました。
  明美ちゃん基金はこれまで50年以上にわたり、“愛といのちのバトンタッチ”という大きな善意の橋渡し役として成長してきました。みなさまの支援により、この灯をいつまでもともし続けたいと願っています。

基金の適用基準
  (1)先天性心臓病や川崎病後遺症、その他の重い心臓疾患に苦しむ子供で、経済的な事情で入院や手術ができないと認められたもの
  (2)医療・衛生基盤が未整備な開発途上国で、心臓病など小児難病に苦しむ子供への医療活動のうち、特に支援の必要性が認められるもの
  (3)心臓病など小児難病の学術研究
  (4)上記の適用対象となる子供は原則16歳以下とする
お問い合わせ先
  ≪東京≫  〒100-8077 東京都千代田区大手町1-7-2  産経新聞厚生文化事業団「明美ちゃん基金」
  ≪大阪≫  〒556-8660 大阪市浪速区湊町2-1-57  産経新聞厚生文化事業団「明美ちゃん基金」  (06)6633-9240(大代表)
寄託金の振り込み先
  【口座名義】 産経新聞厚生文化事業団 明美ちゃん基金
  ≪東京≫  ゆうちょ銀行  振替口座 00960-1-313874  みずほ銀行東京中央支店  普通口座 567941
  ≪大阪≫  ゆうちょ銀行  振替口座 00920-4-333518  三菱UFJ銀行堂島支店  普通口座 4535010  りそな銀行堂島支店  普通口座 6202543


2023.01.01-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230101-OBUNZRKGWFK7TDXO6Z6YSSEPMA/
「国民を守る日本」へ進もう 論説委員長・榊原智

  「日本が努力しなかったら、戦後初めて戦争を仕掛けられるかもしれない。戦争したくないから抑止力を高めようとしているんですよ」このように語ると、たいていの人が首肯してくれた。
  昨年は仕事柄、なぜ岸田文雄首相が防衛力の抜本的強化へ動いているのか―と問われる機会がしばしばあった。それへの説明である。
  ロシアがウクライナを侵略し、岸田首相は「東アジアは明日のウクライナかもしれない」と語った。日本の首相が戦争の危機を公然と憂えたのは、少なくともこの数十年間なかったことだ。安全保障環境はそれほど深刻である。
世論は防衛強化を支持
  岸田政権が決めた国家安全保障戦略など安保3文書は、反撃能力の保有や5年間の防衛費総額43兆円などを盛り込んだ。安保政策の大きな転換で岸田首相の業績といえる。
  安倍晋三政権は集団的自衛権の限定行使を容認する安保関連法を制定した。軍拡を進める中国や北朝鮮に比べ防衛力が十分でないという課題が残ったため、岸田政権は防衛体制の質と量を整える実践面の改革に着手した。それは平和を追求する日本外交の発言力も高める。ウクライナ人が祖国を守る姿を見た国民の多数は防衛力強化を支持している。
  もちろん、政策文書だけでは安全は手に入らない。今年は3文書の抑止力強化措置を講じる最初の年だ。令和5年度予算成立なしには防衛費増額も始まらない。関係者の努力や同盟国米国との協力が重要だ。
  台湾への中国軍の侵攻があれば、地理的に極めて近い南西諸島が戦火に見舞われる恐れはある。中国は尖閣諸島(沖縄県石垣市)を台湾の付属島嶼(とうしょ)とみなしている。「台湾統一」が中国の夢なら尖閣も含めようとするだろう。台湾有事と日本有事が否応(いやおう)なく連関する点から目を背けて、備えを怠れば本当に戦争がやってくるかもしれない。抑止力と対処力の向上が急がれるゆえんだ。

  北朝鮮の核・ミサイルも問題だ。ところが、反撃能力保有をめぐり一部野党や多くのメディアは「相手国が発射する前の反撃能力行使は先制攻撃になる恐れ」や「歯止め」を専ら論じている。核ミサイルも抑止しなければならないのに、バカも休み休み言ってもらいたい。
  日本が参考にすべきは同じ民主主義の欧米各国の防衛政策だが、ミサイル対処で日本のような見当違いの議論が横行する国はない。理由なく相手を叩(たた)く先制攻撃が国際法上不可なのは自衛隊も先刻承知だ。反撃能力の円滑な導入を論じてほしい。
  それでも反撃能力の運用は何年も先になる。既存の部隊や装備を十分活用するため弾薬、整備部品の確保を急ぎたい。特に弾薬庫増設は重要で地元自治体は理解すべきだ。
「シェルター」担当相を
  ロシアは国際法を無視してウクライナの民間人・施設をミサイル攻撃している。このような非人道的な戦術を中朝両国が有事に真似(まね)ない保証はない。台湾のように、日本でも地下シェルター整備は急務だが、内閣に整備促進の担当相がいないのは疑問だ。政府はウクライナや台湾、欧米、イスラエルへ調査団を派遣し、国民保護の手立てを学ぶべきだ。
  残された問題はまだある。
  中朝露が核戦力増強に走っているのに、安保3文書に国民を守る核抑止態勢強化の具体策がない。岸田首相には取り組む責務がある。
  何より、北朝鮮に拉致されたり、それに似た状況に置かれた国民を、自衛隊は海外で救出することが許されていない。憲法9条の解釈で海外での武力行使が禁じられているせいだ。現地政府の了解を得た警察権の代行なら余地があるというが、敵対的な国で日本国民が非道な目にあっている場所が分かっても、救出作戦の選択を端(はな)から放棄しているのが戦後日本だ。国民を守らない9条の呪縛である。
  1976年にイスラエル軍は、ウガンダのエンテベ空港で、テロリストがハイジャックした民航機を急襲し、人質だった自国民のほとんどを解放した。このとき、ウガンダ政府は反イスラエルの姿勢だった。
  日本が国民を守れる国になるには乗り越えるべき壁がまだある。


2023.01.01-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230101-ZKPYEBOLZVP3DMBNY4MV6DWRKI/
チャイナ監視台「民進党惨敗と次期台湾総統選」 産経新聞台北支局長 矢板明夫

  去る十一月二十六日に行われた台湾の統一地方選では、二十二ある県・市(うち一市は候補者死亡に伴い選挙延期)の首長選の中で与党・民進党は五人しか当選させられず惨敗しました。
  特に中枢都市・台北市では民進党はエース中のエースで、新型コロナ対策で陣頭指揮をとり二年半にわたり連日、記者会見を開くなど奮闘してきた陳時中・前衛生福利部長(厚生労働相に相当)を擁立しました。台湾では二〇二二年に入り、感染力が強いものの重症化率は低いオミクロン株が広まったのを受けてゼロコロナ政策をやめたのですが、そのために感染者数は急増し現在、一日一万人以上の感染者が出る状況になっています。その中で陳氏は衛生福利部長を辞めて市長選に出たため「職場放棄だ」などという批判にさらされ、結果的に陳氏は野党・国民党の若手で蔣介石元総統のひ孫にあたる蔣万安・元立法委員(国会議員に相当)に十万票以上の大差をつけられて敗れたのです。

  台北市では一九九四年に陳水扁氏(のちに総統)が市長に当選しましたが四年後には落選し、それ以後、民進党の候補は当選したことがありません。台北市は外省人(先の大戦後に大陸から台湾に渡ってきた人たちとその子孫)が多い地域で、国民党の牙城です。九四年の市長選は国民党側が分裂選挙になったため陳水扁氏が当選できましたが、次の選挙では国民党が候補を一本化したため陳氏は再選を果たせませんでした。

  今回、任期満了となる柯文哲市長は八年前の二〇一四年に無所属で初当選しました。このとき、民進党は勝ち目がないとみて候補を取り下げ、柯氏を支援したのです。その柯氏は二期目途中で自身の政党「台湾民衆党」を立ち上げ、野党勢力となりました。今回の台北市長選では柯氏の後継候補と国民党の蔣万安氏が出馬したため、久々の野党分裂選挙となり、そこに民進党はエース・陳時中氏を投入したわけですが、あえなく敗れてしまったのです。
国内政策の失敗と浸透工作
  二〇二〇年一月の台湾総統選では蔡英文氏が史上最多となる八百十七万票を獲得し、民進党の時代が当面続くかと思われていましたが、それから三年もたたずに民進党は惨敗し、蔡氏は党主席を辞任することになりました。
  民進党の敗因はいくつか考えられます。一つには、他国ほど深刻でないとはいえ世界情勢の影響を受けて、やはり台湾の経済状況もよくないということがあります。
  台湾の半導体産業は、いま絶好調です。実は二〇二二年の台湾の一人当たり国内総生産(GDP)は、初めて日本や韓国を抜いて東アジアでトップとなる見通しです。与党・民進党は政権の手柄として大々的にアピールしていますが、一方で若者の失業などは深刻で国民の実感とはかけ離れたところがあり、民進党への逆風となっているのです。


解説2022.03.28-TOKYOU MX-https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202203280650/detail/
次世代エネルギーとして注目の「核融合発電」を専門家が解説

  TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、量子科学技術研究開発機構の栗原研一さんをゲストに迎え、研究開発が進んでいる“核融合発電”について深掘りしました。

◆世界の電気の未来を担う次世代エネルギー「核融合発電」
  現状、日本の発電方法は大きく4つあり、なかでも最も発電量が多いのは「火力」でその割合は76.3%。メリットは安定供給できることですが、温室効果ガスを排出してしまうデメリットがあります。次いで「太陽光」、「水力」と続き、前者は場所を選ばないものの天候に左右され、後者は変換効率が高いものの場所を選ぶという特徴があり、4つ目が「原子力」。これは発電量が多いという強みがある一方で、放射性物質の処理が必要となります。
  どれも一長一短あるなか、注目されているのが次世代エネルギー「核融合発電」。現在、その実現に向けた国際的なプロジェクト「ITER」が進行中で、そこには日本・ヨーロッパ・アメリカ・ロシア・韓国・中国・インドが参画。核融合実験炉「ITER」を共同製作しており、日本では茨城県の那珂研究所でITERより先端的な研究を行う実験装置「JT-60SA」を製作しています。
  核融合の研究は約40年前に世界中で本格化したといいますが、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、40年も研究しているにも関わらず、あまり実用化に至っていないその原因を疑問視。これに栗原さんは「それがまさに核融合発電の難しさ」と回答。

  核融合は、装置の規模が小さいとエネルギーが取り出しにくく、大きくなればなるほど取り出しやすい傾向があるため、「小さな規模から徐々にスタートしていたので、なかなか性能が上がってこなかった」と栗原さん。対して大空さんは、これまで国が多くの投資をしてきているものの、欧米に比べれば足りなかった部分があると指摘し、「これは成長戦略・成長産業になると思うので、しっかり投資し、早い段階での実用化を目指してほしい。これは官民で研究していく問題」と期待します。
◆原子力に比べ格段に安全だが…核融合発電の大きな課題
  では「原子力発電」と「核融合発電」の違いは何か。それは原子力発電が“核分裂”を使用し、資源のウランに中性子をぶつけ、分裂するときのエネルギーを使うのに対し、核融合発電は、重水素と三重水素をぶつけて融合するときに出るエネルギーを使います。
  そしてメリットとしては、日本はウランを海外から輸入していますが、核融合発電の資源である重水素と三重水素は海水から抽出可能。また、放射性物質の処理も核分裂で使用すると約10万年かかる一方で、核融合だと約100年で済むといいます。さらに栗原さんは「ポイントは、ウランは主にブレーキを使って制御する“連鎖反応”が中心なのに対し、核融合はアクセルで制御する。制御の仕方に大きな違いがある」と解説します。
  また、「高レベル放射性廃棄物が出てくるウランに対し、核融合の燃料は無害なヘリウムなので、燃料廃棄物的にも無害」、さらには「核融合でも中性子が出てくるが、これが炉壁に当たると“コバルト60”という放射性物質を作り、このコバルト60は半減期が約5年100年ぐらい放置すると約100万分の1に下がるため、多くのものは一般物に戻る」と核融合の安全性を力説
  ここで臨床心理士のみたらし加奈さんからは新たな問題提起が。「核融合が広がった際、那珂研究所以外にどこに施設を作るのか。核融合と名前がつくと、いろいろと憶測を呼び、施設の近隣住民が嫌がるのではないか」と疑問を呈します。
  これに栗原さんは「核融合は非常に安全性が高いことがひとつの特徴」と明言しつつ、それでも「立地の問題は、まさにこれからのテーマ」と返答。「各国でどこに作るかという話が今後スタートしていくと思う。そういう意味では、場所についてもこれからみなさんの意見を伺いながら決めていくことになると思う」と展望を語ります。

  核融合発電の発電量は燃料1グラムで石油8トン分(原発は1.6トン分)。さらに安全性に関しては、核融合は単独反応ということで不測の事態が起きてもスイッチを切ればすぐに停止可能。しかし、デメリットとしては、設備のコストが高額になります

また、「イータージャパン」の公式Twitterで、人工知能(AI)開発のDeepMindが核融合炉の磁気制御に成功し、ほぼ思い通りのプラズマの制御が可能になったと発信しているように、今後はAIとの連携も想定されていますが、そのあたりのリスクはどうなのか。
  栗原さんに聞いてみると、核融合の制御にはさまざまな手段があり、それが複雑に絡むため、AIによって制御方法を最適化することは「将来的にも有望」と見解を示します。
◆核融合発電の今後…2050年には発電できる原型炉を建設予定
  現在、実験炉ITERの建設進捗度は2021年10月末で約75%。2035年にも本格的に運用する予定で、発電ができる原型炉も2050年頃に建設予定。一方、茨城県にあるJT-60SA実験装置は、今年の秋にも本格的に稼働予定だということです。
  ここで大空さんは「もし何か問題があったときに停止できるとはいえ、例えば電磁力やプラズマの熱で炉のなかの壁を壊すなど、それで炉が稼働できなくなるとことはあり得ると思う」と改めて核融合の安全性を危惧
  これに栗原さんは「炉が溶けてしまうという話があったが、炉のなかは1億度のプラズマで、密度は空気の30万分の1よりも小さいので、熱という意味では壁の金属を溶かすようなことは絶対にない」とその安全性を論理的に解説。さらには、「核融合の稼働については、一度確実にできれば止まることはほとんどない」とも。
  最後に、栗原さんは「2050年頃に原型炉という発電装置の運用を目指しているが、そこで社会の中心として活躍されるのがまさにZ世代。その方々にぜひ核融合発電というものがあることを知っていただけたら」と核融合発電時代の鍵となるZ世代に向けて、思いを語りました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag


2016.06.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20160615-ONNNDGREQBMHJLE7LN5NPWKSBU/
明美ちゃん基金設立50年 感謝、胸に刻み続け
(1)
  「明美ちゃん基金」が15日、設立から50年を迎えた。あのとき、重い心臓病に苦しみながらも、貧しいゆえに手術を受けられなかった少女は今、看護師として、かつての自分のように病に苦しむ子供たちを優しく包み込んでいる。読者に支えられながら、50年にわたって紡がれてきた善意の輪。基金と産経新聞は、国内外で心臓病と闘う子供たちを一人でも多く救うため、これからも活動を続けていく。
■原点は松本明美さん 現在は看護師として活躍
   「もう50年なんですね。基金には自分の名前がついていますが、それは私の順番が1番だっただけ。すごいのは、今も善意を寄せてくれる読者の方々です」
   基金の原点でもある松本(旧姓・伊瀬知(いせち))明美さんは現在55歳。病に打ち勝ち、看護師という幼い頃の夢を実現させた後に結婚。2人の子供を育て上げ、今は岡山市にある岡山ろうさい病院の小児科看護師として、忙しい日々を送っている。
   「院内でも多くの同僚は、私が小さいころ心臓病を患い、基金で手術をしていたなんて知らないんです」。昨年、基金のミャンマー医療支援の一環として医師団が渡航したことが院内で話題になったとき、「この明美ちゃんって私のことよ」と告げたら周囲に驚かれた。
(2)
  一方で昨年、何度も心臓の手術をしたという20代の女性が来院してきた際には、その母親から突然、「明美ちゃん基金の明美ちゃんですか」と尋ねられた。「『明美ちゃんもこんな大人になったんですね』と言われ、まだ覚えてくださっている方もいるんだ、と改めて思いました」
  「手術をしなければ、あと2、3年の命」と医師に宣告されたのは5歳の春のこと。それから手術を終え退院するまでの半年間で、人生は大きく変わった。
   もっとも、自分では当時のことはあまり覚えていない。「記憶にあるのは、入院中にできた友達と遊んだことや、手術後、親の名前を呼ぼうと思ったときに声がでなくて泣いたこと、麻酔で使うゴム製マスクのゴムの臭いとか」
   患っていた「心室中隔欠損症」「肺動脈圧亢進症(肺高血圧症)」は、今でこそ根治する病気だが、基金が設立した昭和41年当時は極めて難易度が高い治療が必要とされ、手術室に入った患者みんなが笑顔で戻ることはできない時代だった。
  入院先の東京女子医大付属心臓血圧研究所で手術が行われたのは同年9月21日。執刀は当時の心臓外科の権威、榊原仟(しげる)教授だった。術後は「いい結果のようです」と伝えられたが、実際はしばらく発熱や呼吸困難を繰り返し、厳しい状態が続いた。
(3)
  母の悦子さんは今も「普通に手術をしていたら助からなかったと思う。基金に助けてもらい、みんながお祈りしてくれて、病院の方々が頑張って…。思いを一つにして団結してくれたから助かったのよ」と当時を振り返ることがあるという。
   平成16年に亡くなった父、則雄さんを含め、親子で常に「感謝しなきゃね」「人助けをしなきゃね」と胸に刻み続けてきた50年。今思えば、入院時から憧れ、今では「天職だと思っている」という看護師という仕事に就いたのも、「そうなるべきだと母に諭され、自分でもそう思ってきたからだと思います」。今の姿は、親子の思いが紡いだ結晶でもある。
  自らの名前を冠した基金。今後を問うと、「これからも続いてもらいたい、って言う方がいいですかね」と笑いながら、こう続けた。
  「理想を言えば、心臓病の子供の誰もが安心して医療を受けて救われる、基金がなくても大丈夫な社会になってくれればいいなと思います」
  もっとも、世界の厳しい現実も理解している。「ミャンマーの医療支援の記事などを読むと、現地には昔の自分のような子がたくさんいるんですよね。読者の方々の善意が、これからも心臓病に苦しむ子供に届いてくれることを願っています」
■「明美ちゃん基金」振込先
  「明美ちゃん基金」への振り込みは、みずほ銀行東京中央支店(店番号110)普通口座567941「産経新聞社会部明美ちゃん基金」。郵送の場合は、現金書留で〒100-8077 産経新聞東京本社社会部「明美ちゃん基金」


阿比留瑠比
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  阿比留 瑠比(あびる るい、1966年3月4日 - )は、日本の政治部記者。産経新聞社政治部編集委員。

  福岡県太宰府市出身。県立筑紫丘高校早稲田大学政治経済学部を卒業後、1990年4月産経新聞社に入社。 仙台総局、文化部(生活班)、社会部を経て政治部へ異動。政治部では内閣記者会首相官邸担当、キャップ)、外務省兼遊軍担当を務めたのちに再び首相官邸担当に異動。
主張
  改憲論者であり自衛隊の存在が憲法に明記されるべきであると、更に改憲は安倍晋三政権下でないと不可能であると主張している。ジャーナリストの役割は権力監視ではない、是々非々で行うべきだと主張している。これに対し小林よしのりは「安倍政権だから擁護しているだけ、民進党政権だったら批判だけを行う」と阿比留の姿勢をたしなめている。
慰安婦問題
  日本の慰安婦問題がこじれた原因は強硬な態度をとる韓国への配慮から慰安婦募集における日本軍関与の強制性を認めた政府のその場しのぎで迎合的な対応にあったとして「河野談話」が引き起こしたものと述べている。「河野談話」は韓国における元慰安婦女性16人からの聞き取り調査(内容は非公開)だけ、日本軍・官憲が強制的に女性を集めたことを示す行政文書などの資料は一切ない事から極めて恣意的でいいかげんなものであると述べている。また、河野談話という「根拠」がなければ韓国がここまで高飛車になることはなかったと予測し、政治家歴史家でもその道の専門家でもない為、歴史問題を扱う際にはもっと謙虚・慎重であるべきと主張している。
  2014年8月5日、朝日新聞が慰安婦問題に関する検証記事(16-17面)を掲載し、『「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断』とし、吉田清治に関する記事(少なくとも16本)を取り消した際には、橋下徹に「あの阿比留瑠比さん。もうあの方の力なんでしょうね。まぁ、あれだけしつこくしつこく、事実に基づいて報道してああいう風になれば、朝日新聞も、もう逃げられなくなったんじゃないですか。」と言われた。
沖縄戦における集団自決
  文部科学省が2007年3月、集団自決を強制とする記述について「軍が命令したかどうかは明らかといえない」との検定意見をつけた結果、「日本軍が配った手榴(しゅりゅう)弾で集団自害と殺しあいをさせ」との表記が「日本軍が配った手榴弾で集団自害と殺しあいがおこった」などと修正された(2007年10月4日産経新聞)ことについて、それによって軍の関与削除と他紙が伝える中、軍の関与自体はそのまま残されていると主張しているのは産経新聞一紙のみであり、2007年12月28日の産経抄においても修正された教科書内容を他紙が 「『軍の関与』復活」(朝日新聞)「『日本軍関与』が復活」(毎日新聞)「集団自決『軍の関与』記述」(読売新聞)「『軍の関与』認める」(日本経済新聞)「軍関与の記述復活」(東京新聞)と伝える中でも軍の関与は元々削除されていないと主張している。
  この一連の産経新聞のみの軍の関与報道について、2007年12月27日の自身のブログのコメント欄にて「「集団自決」にかかる主語の「日本軍」が削除されたので、日本軍の関与が無くなった」との指摘に対して「そういう部分もあるでしょうが、日本語では主語が明確でなくても、関与を否定・削除したということにはならないと思います」と反論している。
その他
  ・映画「南京の真実」の取材を行っている。
  ・「特定アジア」の呼称を広める運動を行うとしている。
  ・2006年7月20日に昭和天皇A級戦犯靖国神社へ合祀したことに反対していたとされる元宮内庁長官富田朝彦の日記(富田メモ)を日本経済新聞が掲載した際には、翌21日の産経新聞(東京版)で特集記事を掲載し、天皇の政治利用と首相(当時)の小泉純一郎による終戦の日の参拝に反対する動きを批判している。   ・2008年1月9日、日本文化チャンネル桜の番組「防人の道 今日の自衛隊」にゲスト出演。首相の福田が自衛隊による栄誉礼を拒否したことを批判した。また同年11月および12月にも同番組に出演している。
  ・2011年には、日本文化チャンネル桜の番組で菅直人内閣の危険性を主張し、東日本大震災後の出演では菅内閣が延命工作をしているとして批判した。
  ・選択的夫婦別姓制度導入に反対。
  ・2017年衆議院解散について「野党などは『今回の選挙が大義がない』と主張しているが、的外れ。いちいち大義が必要なのか。難癖だ」と指摘した。例として郵政解散を挙げ、「衆院で通った法案が参院で否決されたから解散というのはめちゃくちゃ」と話した。
  「野党不信任案」の導入を提言。中国、北朝鮮、ベトナムなどと同様のヘゲモニー政党制の導入を主張。
  ・2011年には、菅内閣の危険性を主張し、震災後の出演では菅内閣が延命工作をしているとして批判した。また、講演やブログで菅直人のことを「人もどき」と呼んでいた。
批判・訴訟
  阿比留に対しては、これまでに2件の訴訟で賠償命令が出されている。
辻元清美に対する虚偽情報
  2011年3月16日および同21日付産経新聞朝刊掲載の論評記事の中で、民主党衆議院議員辻元清美が1992年のカンボジア視察で復興活動をしていた自衛官に侮辱的な発言をし、阪神大震災の被災地では反政府ビラをまいたと、一部インターネット掲示板上でのみ流布している虚偽情報をあたかも事実であるかのように書いた。辻元はこれについて事実無根の記事を掲載され、名誉を毀損されたとして産經新聞社と阿比留に対し3300万円の損害賠償を求めて提訴した。 阿比留は産經新聞社と共に、「当時広く知られていた」「本を引用した」「論評記事だから辻元への取材は必要ない」と弁明したが、2013年3月22日に出された東京地裁の判決では、阿比留が書いたような事実が存在するとは認められず、記事の中で引用したと主張する本に阿比留が書いたような記述はない、また辻元らに対する取材もしておらず内容が事実であると信じるに足る理由もなく、政治論評欄の記事だとしても名誉毀損は成立するとして、社と阿比留に80万円の賠償を命じた(原告被告とも控訴せず確定)。
慰安婦問題に関する安倍晋三の発言
  2007年に行われた日米首脳会談において、慰安婦問題についての意見交換が行われ、首相(当時)の安倍が大統領(当時)のブッシュに対し慰安婦に対しての謝罪の意を伝え、それを受けてブッシュが共同記者会見でその謝罪を受け入れる旨を表明した、と各種メディアで報道された件について、自身のブログや署名記事で、独自の取材網から当該発言がブッシュの一方的なものであり、安倍側からはそのような発言はなかったという事実を掴んだとしてその事実関係を否定している。
  しかし、安倍が謝罪したとする発言の事実は後の第2次安倍内閣において、辻元が提出した質問主意書に対し、「元慰安婦の方々に、首相として心から同情し、申し訳ないという気持ちでいっぱいだ」と発言したとの答弁書だった。
Facebookで投稿した記事に関する訴訟
  2015年4月、阿比留がFacebookで、「某氏が官僚時代に1週間無断欠勤し、登庁後もしばらくは重役出勤であった」との内容を投稿した。投稿した記事では実名は書いていなかったが、その人物が民主党小西洋之を示唆しており(決め手はないものの)、小西の名誉を棄損したとして、刑事告訴ならびに民事訴訟を起こした。
  2016年7月26日、東京地方裁判所は、投稿内容から小西であると理解できるなどとし、その上でまた聞きした情報で真実に足りる証拠がないとし、阿比留に対し記事の削除と110万円の支払いを命じた。
  2016年12月5日、東京高等裁判所は、「1審の判断に誤りはない」とし、原告被告双方の控訴を棄却し、一審の判決が維持された。
  2017年4月5日、最高裁判所第3小法廷が4日付で上告を退ける決定。これにより、阿比留の敗訴が確定した。


明美ちゃん基金
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  明美ちゃん基金は、心臓病の子供を救うため設立された日本初の医療基金。経済的な事情で手術を受けられない5歳女児について報じた産経新聞記事が大きな反響を呼び、全国から届いた寄託金で1966年昭和41年)に設立された(: AKEMI CHAN FUND)。国内外の200人を超す幼い命を救っており、先天性心疾患以外の難病手術や国際医療活動にも基金が適用されている。
概要
  「貧しいがゆえに死なねばならぬか」1966年昭和41年)6月7日の産経新聞に掲載された鹿児島県在住の「明美ちゃん」。心室中隔欠損(右心室左心室の間に穴が開いている)という先天性心臓病のため「手術しなければ残り2~3年の命」と宣告されていたが、手術費50万円(現在の価値で約500万円)8人家族の農家にとって、田んぼを売っても払えぬ大金だった。
  一家の苦悩を知った読者から「明美ちゃんを救おう」と次々に善意が産経新聞に寄せられ、翌日までに268万円、1週間後に425万円と、手術費の10倍もの額に達した。
  そこで産経新聞社は、明美ちゃんの両親や、手術を執刀する心臓外科の世界的権威東京女子医科大学教授榊原仟(附属日本心臓血圧研究所所長)らと協議し、6月15日に基金を設立した。明美ちゃんの手術も成功し、その後、同様に心臓病で苦しむ「第2の明美ちゃん」たちも続々と基金の適用を受け、元気を取り戻した
  明美ちゃん基金の活動をきっかけに、先天性心臓病の子供への国の対策も前進。結果、厚生省1967年から育成医療費を増やし、支給対象に心臓病を含めることとなり、医療費は健康保険公的扶助で賄えるようになった。
川崎病の心臓障害、胆道閉鎖症、外国に
  その後、基金は先天性心臓病以外にも適用されるようになり、1984年には難病の川崎病の後遺症による心臓障害に苦しむ10歳女児が手術を受けたり、1986年には胆道閉鎖症で移植しか延命方法のない1歳女児が米国ボストン小児病院で肝臓移植手術を受けたりしている。
  1972年には、インドネシアの7歳男児が外国人として初めて基金を適用され手術を受けており、これを機に、医療事情の悪いアジアの発展途上国を中心に、ネパール韓国カンボジアマレーシアなどの子供たちが手術を受けられるようになっている。
  また、小児の心臓病をめぐる学術研究にも基金を拠出。1998年平成10年)から発展途上国の医療活動にも適用され、ミャンマー中部で「ミャンマー子ども病院」の建設を支援しており、産経新聞社は「“愛といのちのバトンタッチ”という大きな善意の橋渡し役として成長してきました」と伝えている。
  現在、基金は、国立循環器病センター名誉総長の川島康生が運営委員長を務め、公益事業や社会貢献活動を行う社会福祉法人産経新聞厚生文化事業団」により運営されている。
  また、2015年からミャンマーで、子供たちの心臓病の医療支援事業も展開。ミャンマーの小児心臓外科手術を育成するため、国立循環器病研究センター関係者が現地で11例の開心術も行っている。

基金の適用基準
  1 先天性心臓病や川崎病後遺症、その他の重い心臓疾患に苦しむ子供で、経済的な事情で入院や手術ができないと認められたもの
  2 医療・衛生基盤が未整備な開発途上国で、心臓病など小児難病に苦しむ子供への医療活動のうち、特に支援の必要性が認められるもの
  3 心臓病など小児難病の学術研究
  4 上記の適用対象となる子供は原則16歳以下とす







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