社会問題-1(皆さんで考えてね)
2024.12.31-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241223-GJ4ZU4GCWNHFNAGBWK6TTQV5VE/
「日本軍は被害女性殺害」韓国教科書の慰安婦記述 金柄憲氏が反論「1人も強制連行ない」
韓国で慰安婦運動の問題点を追及する市民団体「慰安婦法廃止国民行動」の
金柄憲(キム・ビョンホン)代表は韓国の高校で来年度以降使われる歴史教科書での慰安婦についての記述について、「歴史的事実ではない」と問題視する声明を出した。今月11日付。
慰安婦に関して、合法的な性売買業に従事した女性との事実を教育現場で伝えるとともに、現行の「慰安婦」の記述の削除を求めた。
日本統治被虐史観に疑問
金柄憲氏は歴史研究者で、韓国の日本統治被虐史観に疑問を持つ保守グループの1人。日本でもベストセラーになった『反日種族主義』の共著者の李宇衍(イ・ウヨン)氏らと慰安婦像撤去を求めるデモ活動を行っており、2022年6月にはドイツを訪れてベルリン市ミッテ区にある慰安婦像の撤去を訴えた。
金柄憲氏によれば、来年度に使われる韓国史の教科書の展示本は「日帝は侵略戦争を遂行する過程で軍部隊に慰安所を建て、女性を強制的に連れていき、日本軍慰安婦とした」と記され「連れていかれた女性は、あらゆる侮辱と暴力を経験した。日本軍は戦後、人権蹂躙(じゅうりん)の事実を隠蔽(いんぺい)するために被害女性を殺害したりした」などと記述されているという。
金柄憲氏は声明で「全て歴史的事実ではない」と指摘。大半の慰安所は軍部隊の外に設置されていたことを挙げた上で、慰安婦について慰安所を運営する「抱え主」(業者)の募集で契約を結び、合法的な手続きで営業をしていたと説明した。
反論材料は慰安婦証言と判決
具体的に元慰安婦支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連、旧挺対協)」の証言集や慰安婦訴訟の判決文を挙げ、慰安婦を連れて行ったのは旧日本軍ではなく、「抱え主」だったと反論した。「当時、慰安婦は合法的な職業であり、慰安所規定には軍人の階級別遊興時間別料金が決まっていた。軍人は規定に従って花代を支払い、性的欲求を解消した顧客に過ぎない」と解説した。
その上で、慰安婦に対する不当な行為は旧日本軍の軍人も処罰されたといい、「日本軍に殺された慰安婦がいたとしたら誰なのか明らかにせよ」と訴えた。
韓国政府に登録された旧日本軍の「慰安婦」被害者は240人。金柄憲氏は「日本軍によって強制的に連れて行かれた女性は1人もいない。もちろん、日本軍に殺害された慰安婦がないのも当然だ。(韓国の)教育部は子供たちを相手に皆噓をついている」と強調した。
金柄憲氏は11日、韓国ソウルの慰安婦像近くで街頭活動を行い、声明を読み上げた上で、こう訴えた。
「慰安婦は売春婦なのだから、そのようなことを教科書に載せるべきではない。将来売春婦になれと教えるつもりなのか」
(奥原慎平)
2024.12.31-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241231-KJCLVMAO7ZHNBAK5QV3DUCUGYE/
「新聞はどれを読んでも同じ」はウソ、そんなことけっしてない 渡辺恒雄さん(14)
(文化部長 小林静雄)
―日本新聞協会再販対策特別委員長として再販制度維持へ向けて具体的にどう展開していきますか。ほかの業界にも共闘を呼びかけたりは。
渡辺 ええ。それはもう。日本雑誌協会、日本書籍出版協会に呼びかけ、新聞協会と文部省・文化庁を入れた四団体の「活字文化を考える懇談会」というのができておりますから。文部省と文化庁は、非常に強く活字文化を守らなきゃいけない、そのためには新聞、書籍の再販制度を守らなきゃならないという考え方で、大臣から課長に至るまで確固とした信念として持ってくれている。これは大きな力ですね。
そのほか総理大臣以下閣僚から各議員への働きかけ。これは地方紙がその地方の地域の国会議員によく説明して理解を求める必要があると思いますね。
―自民党、さきがけは再販制度維持のようなんですけど、新進党はどうでしょう。再販維持の方針とみていますか。
渡辺 再販制度廃止を打ち出さないと思うな。新進党だって話は分かりますよ。ただ議員によっては、新聞が悪口を書きますからね。
―議員個人の感情問題なのだけれど、困ったことに、それもからんできますよね。
渡辺 新聞にほめられる度合いと、悪口を書かれる度合いによって、国会議員は新聞に対する憎しみを持ったり、愛情を持ったりする。これじゃ、たまらないんだな。新聞のような文化産業に対して。
―政治家と新聞との緊張関係というのが、民主主義の健全な形であるわけですが。
渡辺 そういうことですよ。そこまで分かって「悪口は書かれるが、ジャーナリズムの存在しない国は独裁国家である、あるいは極貧国家である」という認識をちゃんと持ってくれている人はいい。
そういう認識を持たずに、自分個人の恨みつらみだけでやられちゃかなわないんだな。
―マルチメディア時代になって新聞は時代遅れという風潮がありますが、新聞は今後どういう道を歩むべきなんでしょうか。
渡辺 新聞は活字によって自らの主張を出し、その立場に立った評論、解説をし、しかし、事実関係については客観報道に徹するということでやっていきゃいい。
―要するに独自性を持つということ。
渡辺 どの新聞を読んだって同じじゃないかというのは、僕はうそだと思う。そんなことはけっしてありません。
―新聞をよく読んでいない人が、同じだと指摘をする。
渡辺 たとえば、一つの政府声明というものが出たとする。これを別々な文章で書いたらおかしいんで、同じ内容なのは当たり前ですよ。いまラテ欄(ラジオ・テレビ欄)だって、いろいろ工夫しているんだ、お互いにね。
いわんや社説、社論、解説、評論などについては、読売と産経は著しく近いが、朝日と毎日も著しく近い。この両二社間の考え方は、かなり多くの問題で正反対ですよ。正反対のものがどうして同一だというんだ。
(文化部長 小林静雄)
2024.12.31-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241230-UCSJP7S6ZNASNICV4ETJWL2FFM/
NHKの軍艦島映像「ずっと歯ぎしりしていた」 高齢の元島民、訂正と謝罪を求めた4年間
(奥原慎平)
長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)の様子として昭和30年に放送されたNHK番組「緑なき島」を巡り、
高齢となった元島民はこの4年間、抗議文や質問状の送付、面談の申し出などを通じて、NHKに誤りを指摘し謝罪を求め続けた。
問題の坑内とされる映像は1分55秒に過ぎないが、追及姿勢を崩さなかったのは韓国で「軍艦島=地獄島」とおとしめる材料に使われたからだ。元島民は「デマを黙って聞き流すことは、端島の繁栄を築いた先祖を汚すことになる」との思いを抱えてきた。
専門家も「首をひねる」
「みんなずっと歯ぎしりしていた」・・・端島炭坑を運営した三菱石炭鉱業高島鉱業所の田中実夫元副所長(90)は、坑内の映像を「虚偽」と断定し、こう漏らす。
田中氏が働いた端島炭坑は平成27年7月、世界文化遺産に登録された。韓国は「朝鮮人強制連行の現場」として官民を挙げて反対し、虚偽の情報が拡散されていった。・・
番組の映像も、韓国メディアによって強制労働や虐待があった証拠として悪用された。
映像を挿入した公共放送KBSの番組「地獄の地 軍艦島の真実」(31年1月公開)は韓国の高校の教科書(デジタル版)の参考資料にも使われた。
元島民でつくる「真実の歴史を追求する端島島民の会」が、NHKに正式に抗議したのは令和2年11月だ。この前月、都内で坑内の映像を改めて確認して島外映像と結論付け、NHKに対して海外への訂正報道や元島民への謝罪を求めた。しかし、
NHKは「端島における取材に基づき制作放送された」と応じなかった。
NHKは3年12月、放送局のOBや専門家らに調査した結果、
「端島炭坑外との結論には至らない」とする報告書をまとめ、元島民に渡した。ただ、
NHKの調査に応じた専門家の1人は産経新聞の取材に、坑内映像について「首をひねる」と語り、元島民の訴えに同調した。
ありのままの端島を後世
しかし、元島民らは諦めず、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が主宰する「産業労働研究会」で炭鉱の専門家らと映像の検証を繰り返した。
NHK会長には面会を求め、放送倫理・番組向上機構(BPO)に苦情も申し立てたが、いずれも認められなかった。事態打開のために選んだのが、東京簡裁への調停の申し立てだった。
島民の会は、ありのままの端島を後世に伝承するため、平成29年1月に結成された。その後、
会員の高齢化が進み、今年11月18日は会長の加地英夫さんが92歳で亡くなった。
元島民は「残された時間は少ない。いわれなき中傷をはね返す運動をさらに強く展開したい。端島のことは元島民が一番よく知っている」と語る。
(奥原慎平)
2024.12.28-産経新聞(週刊フジ)-https://www.sankei.com/article/20241228-B4TF6B6YNFEVBPMB2ZQF2I5PZA/?outputType=theme_weekly-fuji
「裏金」は決着済み 名付け親の朝日と野党は長引かせて権力闘争に利用 八木秀次
八木秀次(やぎ・ひでつぐ)
24日閉会の臨時国会も「政治とカネ」に終始した。こんなことを1年以上も続けている。
思えば、昨年の12月、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が、
自民党の派閥パーティー収入の一部が所属議員に還流され、政治資金収支報告書に不記載になっていると報じた。・・・このときはまだ「不記載問題」と呼ばれたが、これを後追いし、「裏金問題」と名付けたのが朝日新聞だった。
「裏金」というネーミングは、政治家が何かやましい金をもらっているかのように印象付けた。テレビのワイドショーは
「裏金」のネーミングをなぞって、悪い印象を増幅させた。朝日新聞は一連の「裏金問題」報道でめでたく日本新聞協会賞を受賞した。
臨時国会の最終盤では、衆参両院の政治倫理審査会で通常国会での出席に応じなかった旧安倍派40人、二階派2人の計42人の弁明が行われた。
何も新しい事実は出てこなかったが、いまなお、まるで犯罪者扱いだ。・・だが、この問題はすでに今年1月には決着が付いている。
東京地検特捜部が100人体制で捜査した結果、安倍派、二階派、岸田派の会計責任者が在宅起訴や略式起訴、
不記載額の大きかった国会議員3人と秘書が逮捕や在宅起訴、略式起訴、二階俊博衆院議員(当時)の秘書が略式起訴され、その後、有罪となったが、これで終わった問題であるはずだ。その他の議員は嫌疑なしだった。
しかし、
問題のさばき方を岸田文雄首相(当時)が間違った。
唐突に「派閥の解消」を宣言したり、自ら政倫審に出席したりとマスコミ世論に圧されて場当たり的に対応した。火に油を注ぎ、延焼させた。9月に控える自民党総裁選での再選に利用しようとした節もある。
結局、処理のつたなさも響いて内閣支持率が低迷し、総裁選不出馬となった。後継総裁に選んだ石破茂氏の無能ぶりもあって、10月の衆院選では自公与党は大敗し、連立政権は衆院で過半数を割り込む少数与党に転落した。
野党や左派メディアは、この問題をさらに長引かせたい。
年を越し、来年夏の東京都議選と参院選まで長引かせ、自公を参院でも過半数割れに追い込みたいと考えている。
朝日新聞は今回の政倫審を
「幕引きの儀式ではない」とし、
「証人喚問や参考人招致といった形で、改めて安倍派の幹部らに説明を求め、実態に迫るのが国会の役割だ」(12月19日付社説)と煽っている。
本来はそれほど大きな問題でもないのに、大きく仕立てることで権力闘争に利用されている。石破首相の存在感のなさがそれを増幅している。
八木秀次(やぎ・ひでつぐ)
1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。山本七平賞選考委員など。安倍・菅内閣で首相諮問機関・教育再生実行会議の有識者委員を務めた。法務省・法制審議会民法(相続関係)部会委員、フジテレビジョン番組審議委員も歴任。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)など多数。
2024.12.17-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241217-KHL2QYIXENNNLNQZWO5AKV2TYU/
仮装身分捜査、違法求人削除促進、海外SNSとの連絡強化…政府が闇バイト緊急対策
交流サイト(SNS)を通じて犯罪実行者を募る「闇バイト」による犯罪が多発していることを受け、
政府は17日の犯罪対策閣僚会議で、緊急対策をまとめた。警察官が架空の身分証を使い捜査する「仮装身分捜査」の早期導入や募集者情報のない違法な求人広告の削除促進、海外SNS事業者との連携強化などを盛り込んだ。
闇バイトの募集者らが応募者に免許証画像などの個人情報を要求していることから、
警察庁は警察官が偽の身分証を作成して捜査に当たる仮装身分捜査の導入に踏み切る。来年早期の実施に向け、ガイドラインの作成など詰めの作業を進めている。
また
、職業安定法は求人を出す際、募集者の名称や住所、連絡先、就業場所、賃金などの表示を求めている。こうした
記載がない求人は違法であることを改めて周知し、情報を掲載するプラットフォーム事業者などが削除しやすいようにする。掲載時の審査も厳格化するよう求めるという。
SNSのアカウント開設時の本人確認強化を事業者に依頼するほか、犯罪実行者追跡のための防犯カメラ増設、SNS事業者との連絡強化も盛り込んだ。
SNSは日本法人がある場合は日本法人と、ない場合は本社に連絡を取り、日本法人設置も呼びかける。これまで闇バイトでは、秘匿性の高い「テレグラム」「シグナル」といったアプリが使われる例が報告されているが、両者とも日本法人はないという。
政府の担当者は「闇バイトによる強盗が多発し危機的状況だ。まずは緊急にできるものを中心に取りまとめた」と話している。
2024.12.14-産経新聞(週刊フジ)-https://www.sankei.com/article/20241214-3GLFOU4ZTFEBRHY6QGPH3ATOBU/?outputType=theme_weekly-fuji
トランプ氏の決め手は「会う価値」があるかどうか このまま石破政権が続けば… 長谷川幸洋
(長谷川幸洋)
米誌タイムが12日に発表する毎年恒例の「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」にドナルド・トランプ次期大統領が選ばれるとニュースサイト、ポリティコが報じた。
トランプ氏は来年1月の就任前に、ロシアのウクライナ侵略で続く戦争の終結を目指して各国首脳と会談するなど、外交を本格化させている。一方、
日本の石破茂首相はトランプ氏の早期会談を実現できないままだ。こうしたなか、フジテレビと産経新聞が
11日夜、安倍晋三元首相の昭恵夫人が今週末にも訪米し、トランプ氏と会談する方向で調整していると報じた。石破首相は安倍政権時代、後ろから弾を撃ち続けた人物である。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、石破政権下で高まる「日本の危機」に迫った。
トランプ氏が7日、パリで開かれたノートルダム大聖堂の再建を祝う祝典に参加したのを機に、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した。これで、石破首相はトランプ氏から排除された事実がはっきりした。
最重要な同盟国である米国の大統領に会えないようでは、石破首相が何を語ろうとも、日本の将来は危うい。
石破首相は11月、南米訪問の帰途に米国に立ち寄って、トランプ氏との会談をもくろんでいたが、実現しなかった。その際、首相周辺は
「大統領は就任前に外国首脳とは会わない法律(ローガン法)がある」と説明していた。
ところが、
実は会っていた。今回だけではない。アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領とはフロリダで開かれた祝賀会で顔を合わせ、カナダのジャスティン・トルドー首相や、ハンガリーのオルバン・ビクトル首相とも会談している。
「法律がある」というのは、建前にすぎなかったのだ。・・なぜ、トランプ氏は石破首相と会わなかったのか。・・・理由は明白だ。
会う価値がなかったからだ。
トランプ氏がパリで3者会談に応じたのは、ウクライナ停戦の可能性を探るためだった。ゼレンスキー氏は「生産的な会談だった。公正な平和が必要だ」と語っている。
ゼレンスキー氏はその後、ドイツの野党指導者と開いた会見で、「外交的解決を探る」と語り、NATO(北大西洋条約機構)に加盟するまでの間、停戦を監視する「外国軍の駐留案」まで口にしている。トランプ氏との会談が下敷きになったのは明らかだ。
マクロン氏はウクライナ支援の継続を強く訴えており、停戦を模索するトランプ氏とは距離がある。それでも会談したのは「意味がある相手」だったからだ。ようするに、
トランプ氏にとっては、会う価値がある相手なら会うが、なければ会わない。それだけの話なのである。
石破首相が「アジア版NATO創設」のような、日本が憲法を改正しなければ実現できない政策を掲げているのは、周知の事実だ。トランプ氏は石破首相が自分の盟友だった安倍元首相の「政敵」だったことも承知している。
石破政権は「中国の暴発を誘発する促進剤」
来年3月末に来年度予算案が成立すれば、
「石破おろし」が始まる可能性も高い。そんな石破首相に「会う価値はない」と見たに違いない。石破首相は結局、トランプ氏に会えない状態が続くのではないか。そうなったら、日本にとって一大事だ。
中国は「日米同盟が揺らいでいる」とみて、大攻勢を仕掛けてくる可能性がある。すでに、その兆候はある。
中国は日本人に対する短期ビザの免除再開を決めた。日本を米国から切り離すチャンスとみて、アメをぶら下げたのだ。逆にムチもある。中国は台湾周辺に100隻規模の軍艦などを展開し、軍事演習を開始する構えを見せている。この機に乗じて、日本と米国を牽制(けんせい)する意味もあるだろう。
トランプ氏に見捨てられたも同然の石破政権は「中国の暴発を誘発する促進剤」になっているのだ。
慌てた石破政権は、
安倍元首相の妻、昭恵夫人を米フロリダ州のトランプ氏の別荘に派遣して、トランプ氏と面会する可能性を探っているようだ。
政敵の妻にすがるとは、まさに「なりふり構っていられない」政権の情けなさを示している。
このまま石破政権が続けば、
「台湾危機」という「日本の危機」が訪れるかもしれない。
長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ)
ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。
20240.12.14-産経新聞(週刊正論)-https://www.sankei.com/article/20241214-W7UHONVFTBECFBSQKGFTDMYESI/?outputType=theme_monthly-seiron
「正論」1月号-
「島耕作」は大騒ぎ、警備員死亡は…何かおかしい沖縄反基地運動 産経新聞・大竹直樹
(産経新聞那覇支局長)
「ないちゃー」(本土出身者)が「うちなー」(沖縄)を語るのは難しい。千言万語を費やしたとしても誤解や反発を招く恐れは否定できないからだ。
十月、講談社の漫画誌「モーニング」の二〇二四年四十六号(同月十七日発売)に掲載された
「社外取締役 島耕作」が沖縄の地元二紙の紙面を連日賑わせた。
辺野古移設の抗議活動をしている人が「日当」で雇われているかのような描写があったためだ。
同誌編集部によると、作者の弘兼憲史氏と担当編集者が沖縄へ赴き、「『新基地』建設反対派のアルバイトがある」という話を複数の県民から聞いたが、「当事者からは確認の取れていない伝聞だった」という。
沖縄タイムス(同月二十二日付)によれば、市民約八十人が講談社(東京都文京区)の前に集まり、「デマを撤回しろ」「沖縄の人たちに謝罪して」などと声を上げたという。
弘兼氏は編集部と連名で
「ご心痛を与えた皆さまにおわび申し上げる」と謝罪。これは共同通信と時事通信が全国に配信し、全国紙やテレビ各局も報じた。
この件については、
玉城デニー知事を支持する「オール沖縄会議」の幹部は「労働組合の専従職員が交通費の実費は受け取り、辺野古に応援に行くことはあるだろうが、日当を受けている人はいない。なぜ根も葉もない話が出てきたのか」と疑問視。沖縄平和運動センターの関係者も
「フェイクだ」と憤っていた。
米軍基地に関わる問題で「うちなーんちゅ」(沖縄の人)の反応は、沖縄が歩んできた歴史と密接に関係しており、「ないちゃー」である筆者としては軽々な論評は避けたい。だが、この「日当」に関する一件ではなく、移設工事に関連して発生した交通死亡事故を巡る問題については、「明らかにおかしい」と指摘しなければなるまい。
具体的には
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古移設反対を訴え、抗議活動をしていた女性を制止した男性警備員が、ダンプカーに巻き込まれ死亡した
事故を巡る一連の出来事である。
事故後も抗議活動を続ける「市民団体」(呼称について異論があるのは承知している)の主張や玉城デニー県政の対応、そして革新寄りの論調が目立つ地元メディアの報道姿勢には率直に言って憤りを覚える。
それは恐らく筆者のみではない。
SNSの発達などでこれまでは県外には伝わりづらかったことも全国に広まり、「不都合な真実」も白日の下に晒され、批判を受けやすくなった。
産経新聞は先の事故を巡って、事故直前の防犯カメラ映像を入手し、十月十日に特報した。
報道の反響は大きく、記事を紹介するX(旧ツイッター)のインプレッション(閲覧数)は一千万を優に超え、「辺野古抗議活動制止警備員死亡」というワードがトレンド入りした。
「市民団体」や玉城氏、そしてメディアなどに、さまざまな意見、感想が投稿されている。その多くは否定的なものだ。
この一件は、
退潮傾向の続く「オール沖縄」勢力にとって、歴史的なターニングポイント(転換点)になり、終焉に向かう序章となるのではないか、と思っている。
「報道しない自由」
「報道しない自由」というネットスラングがある。「報道の自由」を掲げるマスコミが、報道内容を恣意的に選別し、国民に知らせないことも自由になってしまうことの危険性を示していると解されている。ネットメディアやユーザーにとっては人口に膾炙している言葉だ。新聞やテレビが「マスゴミ」と揶揄され、批判や嘲笑の対象になるようになった一因には、この「報道しない自由」が存在しているという印象の流通、定着があるだろう。そして、SNS上などでは、この「自由」が、辺野古移設工事を巡るダンプ事故でも〝行使〟されていたと語られている。
改めて経緯を振り返りたい。・・・
事故は六月二十八日、辺野古移設工事に使う土砂を搬出する名護市安和の桟橋前の路上で発生した。辺野古「新基地」反対運動に参加していた七十代の女性が、抗議活動中に警備員とともにダンプカーに巻き込まれ、警備員は死亡、女性も重傷を負った。
事故後、「牛歩戦術」による抗議活動をしてきた市民団体側は、女性は道路に飛び出したわけではないとの姿勢を崩さなかった。「オール沖縄会議」も、
事故原因は防衛省沖縄防衛局が辺野古「新基地」建設工事を急がせるために業者に無理を強いたことにある、と断じた。地元メディアのカメラの前で、伊藤晋哉・沖縄防衛局長に向かって「あなたは沖縄県民を一人殺してしまった責任者だ」となじる幹部までいた。
もちろん、
事故発生の一報は全メディアが報じている。しかし、事故原因を沖縄県警が捜査する中、二報以降の展開は異なる。産経新聞は断続的に「牛歩による〝妨害〟はなぜ取り締まれないのか」「『市民』側の抗議手法に問題はなかったのか」などと報じた。一方で、真逆の立場の報道もある。
例えば地元二紙は、抗議者が出入口の片道で牛歩をしたら、
ダンプカーが一台出入りするという「暗黙のルール」があったが、二台続けての危険な「二台出し」が行われていたと指摘。危険な誘導が頻発し、ダンプカーの運転手からも「いつかは事故が起きる」と懸念の声が上がっているなどと報じた。琉球新報には、重傷を負った女性が「フェニックス(不死鳥)さん」と呼ばれていると紹介した上で、「女性が手術前に残した『骨は折れても心は折れない』の言葉に奮い立った市民が目立つ」との記事も掲載された。
関係者によると、亡くなった警備員には高校生の娘がいたという。記事には警備員を悼む言葉はなく、遺族の気持ちは察するに余りある。実際、警備員の妻は「今まででいちばん憤りを感じる記事だった」とし、「(女性の)妨害行為が問題ないことにされ、家族の死がなかったことのように扱われた」「本当に本当に許せないし、とてもつらい」と心を痛めたとされる。
産経新聞の報道は他のメディアと一線を画するわけだが、あくまで、例えば政府関係者から入手した「映像」をはじめ、ファクトに基づいている。
映像には、別の抗議者に対応していた警備員の後方から足早に近づいてきた女性が、国道に向かって徐行するダンプカーの前に出る様子が映っていた。警備員は女性を制止しようと、ダンプカーと女性の間に割って入る形となり、そのままダンプカーの左前面に衝突した。関係者は「明らかに女性は警備員の制止を無視して飛び出している」と証言した。
産経新聞が報じた内容と同様のものとみられる映像は十月十一日、現場の安全対策を検討している沖縄県議会の土木環境委員会でも視聴された。しかし、十二人の委員のうち玉城知事を支持するオール沖縄勢力の県政与党会派の委員五人は閲覧を拒否して退席した。重傷を負った女性の代理人からあった閲覧中止を求める申し入れについて十分協議しておらず、「委員会で確認する妥当性や人権感覚、倫理観、責任問題にも関わる」というのが主な理由であった。
「事実関係を調査するための映像をなぜ見ないのか」(保守系県議)との声もあったが、
まさか映像という動かぬ証拠に背を向けるとは思わなかった。
事故現場で牛歩による抗議活動をしてきた市民団体のメンバーによると、重傷を負った女性は「あえて飛び出したわけではない」と説明。この
市民団体と連携する「オール沖縄会議」は七月、二人がダンプカーに巻き込まれたのは「車両乗入部」と呼ばれる歩道部分で、「あくまでも歩行者の通行が優先される場所」だったと主張する資料を公表していた。
閲覧を拒否した五人は、委員長への不信任動議まで提出。議会事務局によると、県議会で常任委員長に対する不信任案が提出された記録は過去になく、県政史上でも異例の出来事だった。オール沖縄側の「主張」が揺らぎかねない「不都合な真実」が露見することを恐れているかのようでもある。
「沖縄における報道の潮目を変える記事だ」・・・ある地元メディアの記者からはメールでこんな感想もいただいたが、その後も事故映像の内容を詳しく報じるメディアはない。
「背景まで探る報道姿勢」
産経新聞の報道によって多くの人が目にしたであろう映像を、「私は見ていない」と言ってはばからない人がいる。玉城知事だ。
それだけではない。十月三十一日の定例記者会見では
産経新聞を念頭に「捜査中の証拠になり得るものは、報道を差し控えるべきではないか」と述べたのだ。テレビのニュースなどでよく見かける交通事故のドライブレコーダー映像や、防犯カメラ映像も「捜査中の証拠になり得るもの」なのだが、
玉城氏によれば「報道を差し控えるべき」らしい。
加えて、
「映像が(報道機関に)提供されたことは由々しき問題だ」という看過しがたい発言もあった。
この発言は、映像提供者にとっては「圧力」以外の何ものでもなく、民主主義の根幹を成す「報道の自由」をも侵害しかねない。
ウェブサイト「産経ニュース」で知事の発言を速報したところ、
SNSでは「報道の自由に対する権力側からの圧力」「言論統制」といった反応が相次いだ。だが、玉城知事の「由々しき」発言を報じたメディアは結局、産経以外にはなかった。
一方で、十一月になって強制わいせつ容疑で書類送検された沖縄県南城市の古謝景春市長が記者会見で琉球新報記者の質問に「あの人には答えない」と回答を拒否し、六分で会見を打ち切った際には、沖縄県マスコミ労働組合協議会や新聞労連沖縄地連、民放労連沖縄地連などが連名で市長に抗議文を出している。
もとより、
報道各社のニュースバリュー(報道価値)判断基準はまちまちであると理解しているものの、彼此の対応の差を前に、さすがに「報道しない自由」という言葉が頭をよぎった。とはいえ、必ずしも〝黙殺〟されているわけではない。沖縄タイムスのコラム「記者の眼」(十一月十一日付五面)では産経新聞が報じた映像についての言及があった。
「全国紙一紙が十月、事故直前を捉えた防犯カメラ映像をウェブ記事で配信した」とした上で、こう続く。
「(筆者注・産経の)記事が、攻撃や誹謗中傷の材料に使われている」「わずか六秒の映像だけでは、分からない。県民は三十年近く、国の強権にさらされてきた」「権力監視の視点こそ、ジャーナリズムが決して失ってはならないもののはずだ」
ちなみに、記事は産経新聞の紙面にも掲載されているが、それはひとまず置いておこう。このコラムを執筆した記者に言わせれば筆者は「権力監視の視点に欠ける」のかもしれないが、沖縄県政や、その
長である玉城氏という「権力」にも、厳しい視点を持っていると自負している。実際、今回の事故では、明らかな行政の不作為があったと考えざるを得ないし、
筆者はその追及を続けている。
事故現場の国道では以前から牛歩による抗議活動が行われてきた。港湾を利用する事業者側は令和四年十二月以降、県に対して「抗議者が事故に巻き込まれないようガードレールを設置してほしい」と何度も要請。ガードパイプの費用負担まで申し出たが、県はいずれも「歩行者の横断を制限することになる」として認めてこなかった。
ガードレールなりパイプなりが設置されていれば、事故は防げた可能性もある。しかし、現実に二人が死傷する事故が発生してもなお、対策は手つかずだ。一方、事故現場からほど近い本部港塩川地区に設置されていた工事車両の往来を妨害する行為への警告を記した看板は、抗議活動を行う数十人が県庁に押しかけて要請し、設置から約二カ月半で撤去されており、本来優先すべき安全をないがしろにした沖縄県の責任は問われなければなるまい。
先に引いた琉球新報のコラムは「表面だけではなく背景まで探る報道姿勢で、この問題に向き合っていきたい」と結んでいる。
けだしその通りだと思う。地元紙として盤石な態勢を築かれている琉球新報から見れば、那覇支局の所属記者が筆者一人しかいない産経新聞は「表面だけ」の取材に映るかもしれない。しかし、一次情報を発信する報道機関の末席に名を連ねる身として「背景まで探る報道姿勢」は持ち続けていることを、ご理解いただきたいものだ。また、今回の事故に関する取材を重ねる中で、辺野古移設反対を唱える「市民団体」が世論喚起を目的に自己の活動を正当化するあまり沖縄の抱える問題に共感する人の心を離れさせはしないか、という筆者の懸念も共有させていただきたい。実際、「市民団体」の振る舞いには疑問を感じることが多々ある。
どちらが「でっち上げ」?・・・
「産経新聞はでっち上げ!」
七月二十二日、
筆者が事故現場を訪れると、サングラスをした女性が拡声器でこう叫んでいた。何がでっち上げなのかと問うと「産経新聞は『車道に飛び出した市民』(と書いた)。ここが間違い。でたらめ」という。
だが、
この時点で産経新聞は女性が「飛び出した」とは書いていない。この時点でそこまで踏み込めるファクトは持ち合わせていないからだ。過去記事を検索し、検証していただいても構わない。
産経新聞が「抗議者の女性がダンプカーの前に飛び出した可能性が高まった」と報じたのは、カメラ映像の内容が明らかになった十月十日からである。
「産経新聞は『飛び出した』と書いていましたか」と尋ねた筆者に、この女性は「と、思います」と答えた。思わず、「『思う』で、でっち上げといわれたら困ります」と色を作してしまった。
「でっち上げ」と言えば、事故現場では十月二十二日朝、特定の防衛省沖縄防衛局職員のイニシャルと顔写真を載せ「罪をねつ造、でっち上げた防衛局職員」などと批判する横断幕も掲げられていた。この場所では九月二十六日、沖縄防衛局職員が抗議活動中の七十代男性=暴行容疑で現行犯逮捕後、処分保留で釈放=から胸を両手で押され転倒させられる事件が起きていた。顔写真とイニシャルを横断幕で晒された防衛局職員は事件の被害者だった。この職員の顔写真には矢印が付けられ、「この男、行く末が見えている」と批判。「許されない!」といった文言も記載されていた。
県警は横断幕を設置した県内の男性から任意提出を受け、名誉毀損容疑で捜査しているが、この一件も、産経新聞以外はどこも報じていない。たとえ仮に冤罪だとしても、顔写真を載せて批判するのは単なる個人攻撃だろう。
十一月十四日には市民団体「沖縄平和市民連絡会」のメンバーが県庁を訪れ、「特定の事業者・警備員が公道を封鎖し、歩行者の通行を阻止することなど許されるはずはない」として土木建築部長と面談し、事故現場にガードレールや車止めポールを設置しないよう求めた。繰り返し指摘するが、
現場では人命が失われているのだ。こうした「市民団体」は「命どぅ宝(命こそ宝)」をスローガンに活動しているが、空虚に響く。
これを報じた産経ニュース記事を転載したヤフーニュースには約七百七十件のコメントが寄せられた。
「他人の命よりも自分の主張が優先されるのか」「再発防止のための設備の設置を要求するのが『市民団体』のあるべき姿だと思う」といった声だ。
今回の事故に関して言えば、少なくとも、オール沖縄に理解を示す革新寄りの既存メディアの論調と「ネット世論」は乖離がある。ネットユーザーの多くが「市民団体」の主張や左派メディアの報道に否定的といえる。事故映像を見ようとしない玉城知事や県政与党会派議員も含め、その底意は見透かされていると言わざるを得ない。
事故後の一連の出来事が、退潮傾向の続く「オール沖縄」勢力にとって、大きなターニングポイントになると考えるのは、こうした事情からだ。
世間との乖離を自覚せよ
「イデオロギーよりアイデンティティー」をスローガンに辺野古移設を訴え、今に続く「オール沖縄」勢力の土台を築いたのは保守派の重鎮だった
翁長雄志氏だった。
十年前の平成二十六年の県知事選に出馬する際、辺野古問題以外は「腹八分、腹六分」(で折り合う)と提唱し、保革を超えて結集させた。しかし近年は共産主導の革新色が強まっている。
有力メンバーだった保守系議員や財界人が離脱するなど求心力が低下した
オール沖縄勢力は今年六月の県議選で大敗し、県議会過半数を失った。
九月の宜野湾市長選でも、米軍普天間飛行場(同市)の辺野古移設に反対したオール沖縄勢力側の候補が落選した。
昭和四十七年の本土復帰後、沖縄では革新勢力が教育界や言論界で強い影響力を及ぼしてきた。
本土復帰の象徴だった日の丸すら、戦争のエンブレムであるがごとくタブー視され、自衛隊にも「戦場にするな」「軍拡やめろ」との批判が渦巻く。
繰り返すが、沖縄の歴史と結びつくそうした声について、「うちなー」でない筆者は軽々には論評しない。
しかし、
今回の事故に関しては別だ。亡くなった警備員を悼み、死角の多いダンプカーの真ん前を横断する危険な抗議手法は改めるべきだ。
衷心からこう提言したい。世間との乖離を自覚していただきたい、と。さもなくば、オール沖縄勢力は歴史的な役割を終え、
それこそ単なる「選挙互助会」(れいわ新選組、山本太郎代表)に落ちぶれてしまうだろう。
沖縄では「ほどほどに、いい加減に」といった意味で、「大概」と言う。物事を突き詰めて考えない大らかな県民性は「てーげー気質」とも形容されるが、いよいよこのままでは足下から「大概にしろ」との声が上がってこよう。
(産経新聞那覇支局長)
2024.12.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241204-UXIOWI57CFCS3P7IX5LZKILZE4/
近隣住民への迷惑行為で真岡鉄道のイベント中止に 各地で相次ぐ「撮り鉄」が原因か
栃木県と茨城県を結ぶ鉄道を運航する真岡鉄道(栃木県真岡市)が地域住民への迷惑行為があったことを理由にイベント中止を発表し、SNSを中心に波紋を呼んでいる。鉄道ファンから
「続けてほしい」という声が上がる一方、
鉄道写真を撮るため私有地に立ち入るなど一部の「撮り鉄」による迷惑行為が全国で相次いでいることから「中止で当然」「何回繰り返すのか」という声も上がっている。
同社が企画したのは、運行する観光列車「SLもおか」を牽引(けんいん)し、就役20年を迎えたディーゼル機関車「DE101535号」に、かつて上野―盛岡間を走っていた寝台特急「北星(ほくせい)」のヘッドマークを取り付け運行するというイベント。ヘッドマークは先月行われた別イベントの目玉として、同社の若手社員が作成したものだという。
当初、イベントは11月30日~今月22日の週末限定で、下館(茨城県筑西市)―茂木(栃木県茂木町)間の約42キロを1日1往復する予定だった。最初の2日間の運行を終え、同社は3日に中止を発表した。
同社の担当者によると、沿線に住む住民から「見慣れない車が無断で多数駐車されている」などの苦情が寄せられた。関係者によると、写真撮影による交通渋滞が発生し、イベント時間帯には警察のパトカーも巡回したという。同社は公式ホームページで「再発防止策の検討を含め、沿線の安全確保は大変厳しいとの結論に至った」と中止の理由を説明。担当者も「反響も頂いたが、住民の方に多大な迷惑をかけた。
断腸の思いで決断した」とため息を漏らした。「撮り鉄」を巡っては一部の行き過ぎた行動が問題となっている。昨年6月に栃木県内でJR東日本の寝台特急「カシオペア」を撮影するため線路敷地内に立ち入ったとして男性2人が罰金の略式命令を受ける事件が発生。今年11月にはJR横浜駅で撮り鉄がホームの点字ブロック内に入って撮影しようとし、周辺とトラブルになった。
2024.12.01-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241201-36O4RNOHI5K7NLNIAJX2VIFUNM/
野宿者立ち退き、強制執行 大阪・あいりん地区施設
大阪市西成区のあいりん地区にある複合施設「あいりん総合センター」の敷地で生活している野宿者らに対し、
大阪地裁は1日、退去させ荷物などを撤去する強制執行に着手した。
5月に野宿者らに立ち退きを命じる判決が確定していた。大阪府・市は耐震性を理由に建て替えを目指しており、占拠の影響で遅れていた解体工事が進む見通し。
センターは昭和45年に開設。13階建てで職業安定所や市営住宅、病院などがあり、労働者らの生活拠点だった。耐震性に問題があるとして、平成31年4月に閉鎖。建て替えに反対するホームレスの野宿が続いた。
府は令和2年、立ち退きを求めて大阪地裁に提訴。野宿者側は権利の乱用と主張した。3年12月の一審大阪地裁判決は、行政が野宿者の居場所の確保など「一定の配慮をしている」として、権利乱用には当たらないと判断。
4年12月の二審大阪高裁判決も支持。今年5月、最高裁は野宿者側の上告を退けた。
2024.11.25-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241125-LPF4M7GRWJBK3I5QB5BHQDKEJY/
「刑務所で最期…無念だろう」池袋暴走事故のA受刑者死亡 遺族の松永さんコメント
平成31年の東京・池袋の乗用車暴走事故で、禁錮5年の実刑判決を受け、服役中だったA受刑者(93)が
死亡したことが25日、わかった。
事故で妻の松永真菜(まな)さん=当時(31)=と長女、莉子(りこ)ちゃん=同(3)=を失った松永拓也さんは同日、X(旧ツイッター)に長文のコメントを寄せ
「Aさんにとっても、大きな責任を背負いながら刑務所で最期を迎えたことは、とても無念だっただろう」などとつづった。
「天国で一言謝ってほしい」
松永さんは「心よりご冥福をお祈りいたします」としたうえで、「『天国で真菜と莉子に会えたなら、一言謝ってほしい』という想いは正直ある。しかし、それ以上に強い感情は抱いていない。彼が刑務所で最期を迎える結果となってしまったことに胸が痛む思いもある」と心情を吐露した。
交通事故防止に向けた啓発活動に取り組む松永さんは「今回の出来事は、高齢ドライバー問題が社会にとって大きな課題であることを、改めて考えさせられるものだと思う。懸命に生きてきた人々が意図せず他人の命や健康を奪ってしまう。そして刑務所で亡くなる。被害者や遺族も、一生事故の影響を背負う結果になる─。こうした悲劇をどう防いでいくのかを考えていかねばならない」と訴えた。
刑務所で面会「後悔にじませた」
一方、松永さんは、今回の事故を契機に高齢者と若者の対立構造になることを「望んでいない」とも指摘。「免許返納だけではなく、いかにして高齢者の方々が車に頼らずとも、安心して豊かな日々を送れる社会を築くか。それが、私たち全員にとっての課題だ」と指した上で、「逝去を受け、私たち社会がすべきことは、彼を非難し続けることではなく、彼の経験から学び、同じような悲劇を繰り返さないための道を共に考えることだと思う」と書き込んだ。
松永さんは、収監先の刑務所で飯塚受刑者と面会したことを明らかにし、「彼は深い後悔をにじませていた」と振り返った。交通事故防止に向けた啓発活動を続ける松永さんに「言葉を託してくださった」としたうえで、「それを無駄にしないためにも、私はこの出来事を未来の糧にし、安全な社会の実現を目指していきたいと思う」と強調した。
真菜は愛を、莉子は命の尊さを教えてくれた
失った家族との思い出を「娘が生まれた日。小さな手が私の指を握り返してくれた感触。そして、
その手が冷たく固くなってしまった日の感触─。
どちらも生涯忘れない。真菜は愛を、莉子は命の尊さを教えてくれた」ともつづり、「交通事故、社会のみんなの力で無くしていきましょう」と結んだ。
2024.11.20-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241120-UJXIJTKGIZOI3OFZANENLB2MXM/
「育児したいのなら退職すれば」と社長から「パタハラ」 育児で業務制限求めた男性が提訴
育児休業の規則に基づき業務の制限を申し出たところ、
一方的に降格や転籍をさせられたのは不当で「パタニティー(父性)ハラスメント」に当たるとして、
オルゴール販売店に勤める京都市の30代男性が20日、親会社のオルゴール堂ホールディングス(北海道小樽市)を相手取り地位確認と慰謝料の支払いを求めて京都地裁に提訴した。
訴状などによると、男性は平成22年に入社。営業部次長だった令和4年12月、妻の不妊治療と育児のため宿泊を伴う出張業務の制限を申し出た直後、上司から降格を予告された。5年1月、降格処分を受け、子会社転籍が決定。社長からは対面で「育児したいのなら退職すればいい」などと言われるなどし、男性は精神的に不調となり一時休職した。
男性は提訴後、京都市で記者会見し
「一連のハラスメント行為はとてもつらい経験になってしまった。どう対応していいか分からず苦しんだ」と語った。
オルゴール堂ホールディングスは「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。
2024.11.01-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241101-J5IYKUDYBJPPHIDWHSNKZ7YK5I/
死去の西尾幹二氏、昭和末から移民問題に警鐘鳴らす 「多文化社会、実現したためしない」
1日に89歳で死去した評論家、西尾幹二氏は昭和の終わりから外国人の単純労働者導入に慎重論を唱え、平成元年には著書で「労働鎖国」を訴えていた。テレビの討論番組でも
孤立無援の中で問題提起するなど、いち早く、また一貫して「移民問題」に警鐘を鳴らし続けた。
西尾氏の産経新聞への寄稿によると、
ヨーロッパの事情に精通する西尾氏が外国人単純労働者の導入に慎重論を唱え出したのは昭和62(1987)年。2年後の平成元年には「労働鎖国のすすめ」を出版、版を重ねた。当時出演した「朝まで生テレビ」でも他の出演者らの激しい野次が飛ぶ中、淡々と持論を述べ続けた。
平成初期、「開国派」の有識者は「発展途上国の雇用を助けるのは先進国の責務だ」などと口にしていた。そのとき、ある県庁職員が議会で西尾氏の本を手に、こう訴えたという。
「牛馬ではなく人間を入れるんですよ。入ったが最後、その人の一生の面倒を日本国家がみるんですよ。その対応はみんな自治体に降りかかってくる。私は絶対反対だ」
西尾氏は
《この人の証言は…私の本がそれなりに役割を果たしていたことを物語っていて、私に勇気を与えた。私は発言以来、不当な誹謗や中傷にさらされていたからである》と振り返っている。
しかし、その後も政府は「外国人労働者」に門戸を開き続けた。平成30年には人手不足の業界に「特定技能」という在留資格を新設。昨年からは家族帯同の永住も可能になる在留資格へと拡大された。
西尾氏は特定技能をめぐる法改正について、当時の産経新聞への寄稿で
《人口減少という国民的不安を口実にして、世界各国の移民導入のおぞましい失敗例を見て見ぬふりをし》たと批判し、こう訴えた。
《「多民族共生社会」や「多文化社会」は世界でも実現したためしのない空論で、元からあった各国の民族文化を壊し、新たな階層分化を引き起こす。…彼らが日本文化を拒否していることにはどう手を打ったらよいというのか》
それから6年。「移民」と日本人の問題に警鐘を鳴らし続けた碩学は鬼籍に入った。
2024.10.27-産経新聞(週刊フジ)-https://www.sankei.com/article/20241027-EH7SPCWFUZHYPHXY2FHAVPGHBU/?outputType=theme_weekly-fuji
紅白に戻したい制作局、性加害報道の報道局 旧ジャニ報道でNHK局内温度差くっきり
約1年にわたる起用停止をやめて、旧ジャニーズ事務所のタレントの出演再開を決めたNHK。
そこには紅白歌合戦へのオファーという思惑も透けてみえるが、一方で遺恨を残しかねない報道をするなど、局内の温度差が著しいようだ。
NHKの稲葉延雄会長は16日、旧ジャニーズ事務所(現スマイルアップ)からマネジメントを引き継いだスタートエンターテイメント社の所属タレントを起用再開する方針を発表した。
稲葉会長はこのとき、
「被害者への補償と再発防止の取り組みに加え、経営分離も着実に進んでいることが確認できた」と指摘している。
一方で、20日夜に放送したNHKスペシャル「ジャニー喜多川〝アイドル帝国〟の実像」が、その内容で炎上するという状況になっている。
「いわば性加害報道の決算と、NHK自身の検証という意味合いの強い番組でしたが、後半に流れた初代『ジャニーズ』の中谷良さん(故人)の姉と、スマイル社の補償本部本部長との電話のやりとりが物議を醸したのです」とスポーツ紙記者。
その内容は、中谷さんは生前、いわゆる
暴露本「ジャニーズの逆襲」を出版していたが、電話で応対する本部長は、そうしたことを理由に「本を書かれて(旧ジャニーズ事務所が)痛めつけられたのは間違いない」と、自分たちも被害者と言わんばかりの発言をしているのだ。
さらに
「(加害者も被害者も故人のため)誰が何を謝るんだというのが分からない」といった発言もあったため、スマイル社に対する猛批判がネット上で上がっているのだ。
「番組の最後は、NHKが自省を込めたコメントで締めくくっていますが、これは出演再開を正当化させるための口実のようにも受け取れます。しかし一方で、
スマイル社にとっては再び批判を浴びる内容になっているわけですから、NHKとの間でややこしい遺恨が残ってもおかしくない。紅白出場にこだわる必要はないという声もスタート社側にはあるようですし」と先のスポーツ紙記者は指摘する。
そしてこう続ける。
「NHK内には2つの組織があるようなもので、旧ジャニ勢を紅白に戻したいと考えている制作局と、性加害報道に取り組んできた報道局との間で、かなりの〝温度差〟があるということです。その着地点があの
NHKスペシャルですが、
事態はさらに複雑になったかもしれません」
2024.10.26-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241027-KMTO3NDK3JPADLIROAYMFNRDZY/?outputType=theme_portrait
3首相のクビは取ったけれども…サンプロ現象も手法に限界「批判するだけではダメだな」-話の肖像画 ジャーナリスト・田原総一朗<26>
(聞き手 喜多由浩)
《『朝まで生(なま)テレビ!』(「朝ナマ」)の2年後(平成元年4月)にスタートした日曜朝の情報番組『サンデープロジェクト』(「サンプロ」)。次第に番組の看板となった田原さんのコーナーは、ときに政権を揺るがすまでにも…》
番組に、与野党の政治家を呼んで、僕が疑問に思っている問題を追及する。政治家にしても、〝縛りなし〟で自由に言いたいことが言えるから喜んで出てくれましたねぇ。
そのうちに、各新聞社の政治記者がテレビ局に来て、生放送を〝張る〟ようになった。番組中に(大物)政治家たちが発言したことが、ニュースになるからです。これは見逃すわけにはいかない。それが翌日の朝刊の記事になる。やがて「サンプロ現象」と呼ばれることになったんですよ。
それまで、新聞の、特に政治記者はテレビなんか相手にしていなかった。はっきり言えば「格が下」に見ていたんですな。テレビ局の記者も(新聞に)コンプレックスがあったと思う。その関係が、すっかり変わってしまったわけ。
《田原さんが以前の本欄で語ったように、テレビは出演者の生の声から表情まで映し出す。生放送だから「言質」を取られると、言い訳をすることもできない。こうした手法で「3人の首相」退陣のきっかけをつくった、と田原さんは言う》
最初は、海部(※俊樹氏、首相在任は平成元年8月~3年11月)首相でしたか。竹下派(当時)の力で政権の座についた人で、(「サンプロ」に反主流派だった)〝YKK(山崎拓、小泉純一郎、加藤紘一の各氏)〟が出演して、それ(竹下派支配)を散々批判した(※その後、「海部おろし」という倒閣の動きが激しくなった)。
次は、その後継政権だった宮沢(※喜一氏、同3年11月~5年8月)首相でした。総理へのインタビューを行う番組で、「政治改革」をやるか、否かという僕の質問をめぐって、結局退陣に追い込まれたわけ。
3人目は、橋本(※龍太郎氏、同8年1月~10年7月)首相。「恒久減税をやるか?」と言う僕の質問に橋本さんは「税制改革をやる」と言うばかりで、明確に答えない。さらに僕が「はっきり言え」「ごまかしだ」と厳しく追及したら橋本さんは絶句してしまう。そんな表情までテレビは映し出すからたまらない。恒久減税の問題はその後、迷走し、自民党は参院選に惨敗。橋本内閣は総辞職することになりました。
(政権・与党側からの)圧力ですか? それはありましたよ。自民党が(「サンプロ」には)「党三役(幹事長、総務会長、政調会長)は出さない!」っていう〝お触れ〟を出したりしたこともあったなぁ。
でも、実際にはまったく困らなかった。つまり〝(「サンプロ」に)出たい人〟がいっぱいいたから。締め付けなど、お構いなしですよ。
《ただ、3首相のクビを取ったものの、田原さんはこの手法に限界を感じていた》
僕は「反体制」をずっと自任していたから、政権を批判し、首相のクビを取ることに意味がある、と考えていた。
だけど、首相が代わっても、日本は一向に変わらないし、良くもならない。これは批判するだけではダメだな、対案を出さないといけない、と…。
そこで僕は、テレビで追及するのではなく、サシで直接、首相に会って、言いたいことをストレートにぶつける、というやり方に変えました。
「こういうことをやったらどうか?」「あれはダメですよ」と、具体的に提案することにしたのです。
(聞き手 喜多由浩)
2024.10.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241004-ZS7YSAF7DZM65LMZILSI4ZRNNE/
「大罪人」と威圧した元特捜主任検事を刑事告発 横領事件で無罪の元不動産会社社長
大阪地検特捜部が捜査した業務上横領事件で
無罪が確定した不動産会社プレサンスコーポレーション(大阪市)の山岸忍元社長(61)は4日、
担当検事の違法な取り調べを指示、容認したなどとして当時主任検事だったA神戸地検刑事部長(52)に対する特別公務員暴行陵虐や特別公務員職権乱用の罪などでの告発状を大阪高検に提出したと明らかにした。
山岸氏側は同日、大阪市内で記者会見。
国に7億7千万円の損害賠償を求めている訴訟でも、A氏が故意に冤(えん)罪(ざい)をつくり出し、検察官の職責に反するなどとする追加の準備書面を大阪地裁に提出した。
山岸氏は学校法人の土地の売却資金21億円を横領したとして、2019年に特捜部に逮捕、起訴された。21年の地裁判決は、共謀があったとする元部下らの供述の信用性を否定し、無罪を言い渡して確定。山岸氏は22年に提訴した。
訴状によると、
特捜部の検事らは山岸氏の元部下らに対し、取り調べで「プレサンスの評判をおとしめた大罪人だ」などと威圧。元部下の供述に基づき不当に逮捕、起訴され、取締役の辞任を余儀なくされるなどし、
精神的苦痛や経済的損害を受けたとしている。
2024.10.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241001-AJQMKB7AZJDYNIZPEWQKOPEDGU/
「いわゆる南京事件なかった」 市長の報酬は「800万円で十分」 河村たかし氏言動録
名古屋市の河村たかし市長は1日、27日投開票の衆院選に愛知1区から出馬する意向を明らかにした。記者団に
「総理を狙う男、アゲインという感じだ」と独特の表現で出馬宣言をした河村氏。過去を振り返ると、
金メダルをかじるなど特異なパフォーマンスが目立つ一方、歴史認識では、いわゆる「南京事件」を巡って「30万人の大虐殺」という中国政府の主張に異論を唱え、内外に大きな反響を呼び起こしたこともある。
中国・南京市委幹部に直言
日中戦争時の1937(昭和12)年、旧日本軍による南京占領で起きたとされる「南京事件」を巡り、河村氏は平成24年2月、名古屋市に表敬に訪れた中国共産党の南京市委員会幹部に対し、「一般的な戦闘行為はあったとしても、いわゆる南京事件はなかったのではないか」と話した。中国側は激しく反発したが、河村氏は翌月の名古屋市議会で「30万人に及ぶ市民を大虐殺したという南京事件はなかった」と説明。正しく歴史を認識したいとも訴えていた。
今年6月には、市が条例で定めた「なごや平和の日」の意義を問われ、「祖国のために命を捨てるのは高度な道徳的行為だ」とも発言した。市民団体や自民党市議団などから批判が出たが、河村氏は発言を撤回しなかった。その後の記者会見では「なぜ国のために命を捨てないといけないのかを議論することが必要」などと述べた。
一方、平成21年の名古屋市長選に挑む際は、市長給与を現行の年約2700万円から800万円に引き下げることを公約に掲げた。当選後は、公約通りの給与案を市特別職報酬等審議会を諮問。年収800万円は市の係長級と同等になるが、「800万円で十分に暮らしていけるし、社会保障(の不安)は市民も同じ」と述べ、退職金を全額辞退する方針も掲げた。河村氏は現在4期目となるが、市長給与800万円とする条例は継続して市議会で可決されている。
金メダルガブリで批判も
ただ、河村氏の言動が物議を醸したことも多い。
名古屋城天守の木造復元をテーマにした市民討論会でエレベーターの設置を求めた障害者の男性に「我慢せえ」などの発言があったが、河村氏は討論会後、記者団に
「(その発言は)よう聞こえなかった」と説明。
発言を河村氏が制止できなかったことが問題となり、その後に設立された市の検証委員会は、
河村氏に対し「人権感覚の希薄さが差別事案の背景・遠因にあった」と指摘した。
令和3年8月には、
市役所に表敬訪問に来た東京五輪ソフトボールの後藤希友選手の金メダルを自らの首にかけると、いきなり「ガブリ」とかじり始めた。
後藤選手に「恋愛禁止かね?」「ええ旦那もらって」などと、
セクハラを疑われる発言をし、
市民から批判が殺到。その後に謝罪し、3カ月間の給料計150万円を全額返上する条例案を出したが
否決された。
2024.10.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241002-UZSDGX2IWZFGXM6JFOTIFZEOHU/?outputType=theme_monthly-seiron
自民党総裁選の失敗…なぜ「夫婦別姓」だったのか 阿比留瑠比-正論10月号 「政界なんだかなあ」
(あびる・るい)
今回の自民党総裁選で、一つの争点として再浮上した問題が、選択的夫婦別姓を認めるか否かだった。
私はもともとこうした家族や性のあり方といった心に関する問題に、政治が介入するのは極めて慎重であるべきだと考えるが、次期衆院選が近い現在、わざわざこの問題を持ち出すのは政治的にも下手なやり方だと感じた。
私は本誌の令和五年四月号で、安倍晋三元首相がこの問題と政治家の「大局観」について、次のように話したエピソードを紹介したのでその部分を再掲する。
《建前とはいえ保守政党を名乗る自民党が、時代の流れだからとばかりに安易にリベラル派に同調することは、政治的にも愚策ではないか。安倍氏は嘆いていた。
「LGBT問題や夫婦別姓に関しては、野党側ははなから一枚岩なんだから、自民党がもめている姿をさらしても野党を利するだけではないか。そういう大局を見渡せる政治家が今は少ない」
活動家たちは、自民党議員が自分たちの意見を取り入れたら拍手喝采はするだろうが、決して自民党には投票しない。
「多様性を巡る象徴的なテーマである選択的夫婦別姓を認める決断をすれば自民党は道が開けるのではないか」
小泉進次郎元環境相は神奈川新聞のインタビューでこう述べていたが、これこそ典型的な勘違いだといえる。左にウイングを延ばしてもそこに票田はない。選択的夫婦別姓もまた、別姓を選んだ夫婦と同姓を選んだ夫婦との間で心理的な断絶を生みかねない。
安倍氏は岸田文雄首相について、こう語っていた。・・・「岸田さんはそうリベラルではないんだ。以前、夫婦別姓の議論が高まったときに『(片方の親とは別姓になる)子供の視点が全然ない』と話していた」》・・・それからわずか一年半後、小泉氏は選択的夫婦別姓を主要政策の一つに掲げて総裁選に出馬した。恐れていた通りに事態が進展したのである。リベラル政策を推進する一部自民党議員の頑迷さには、ほとほと手を焼く。
自民党がLGBT法や選択的夫婦別姓問題で立憲民主党など野党と同じか近いスタンスをとるならば、自民党の存在意義自体が問われることになるのが、どうして分からないのか。
基本的な事実誤認
小泉氏は九月六日の出馬表明記者会見で、「多様な人生」「多様な選択肢」を掲げて明言した。
「経済界も早急な対応を求めている。最近の世論調査を見れば、選択制であれば別姓という選択肢を認めてよいのではないかという意見が増えている。一人一人の願いを聞かず議論を続けて三十年。もう議論ではなく決着をつける時ではないだろうか。私が首相になったら選択的夫婦別姓を認める法案を国会に提出し、国民的な議論を進める。(一年以内に)三十年以上議論を続けてきたこの問題に決着をつけ、一人一人の人生の選択肢を広げる。党議拘束をかけずに、この法案の採決に挑む
「旧姓使用で対応可能なのではないかという声は、私も承知している。ただ、多くの金融機関では旧姓で銀行口座やクレジットカードを作ることはできない。そして、不動産登記ができない。契約書のサインも認められない場合がある。研究者については、論文や特許の取得時に戸籍上の氏名を用いる必要があって、旧姓は利用できないということだ」
この小泉氏の言葉に対しては、やはり総裁選に出馬していた高市早苗経済安全保障担当相がこう事実誤認を指摘し、話題となった。
「選択的夫婦別氏制度を実現するという候補予定者に『(旧姓では)不動産登記ができない』と答えた人がいたが、四月から不動産登記は旧姓でできる」
さらに、高市氏の指摘に関して自民の長尾たかし前衆院議員がX(旧ツイッター)で、こんな補足をしていた。
「小泉氏は法改正されていることを知らなかった。因みに銀行口座も金融庁からの通知で順次作れるように移行されているのに作れないと説明していました。間違って作られた経団連の資料をそのまま説明したからです」
そこで、経団連が六月に公表した選択的夫婦別姓の実現を求める提言「選択肢のある社会の実現を目指して」をみると、「ビジネスの現場における通称利用の弊害が生じる場面(例)」として、確かに「口座やクレジットカードの作成時」「不動産登記を行う時」「研究者は、論文や特許取得時に戸籍上の氏名が必須」などと書かれていた。
小泉氏は選択的夫婦別姓の推進理由について「経済界も早急な対応を求めている」と話しており、やはり経団連の提言を見たのであろう。
九月十日に行われた立憲民主党の四人の立候補者と党所属女性議員との討論会でも、四人全員が選択的夫婦別姓に賛意を示したほか、そのうちの一人である野田佳彦元首相がこう述べていた。・・・「経団連も早期実現を主張するようになった。チャンスを逃してはいけない」
さらに、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」(七月十四日号)も一面トップ記事で「経団連本部訪ねて聞いてみた 選択的夫婦別姓」と大きく取り上げている。
間違いを流布した経団連の罪は重く、結果的に小泉氏に恥をかかせたことになる。実際には、高市氏らが指摘したように事実関係は以下の通りである。
一、今年四月から「旧姓併記」での不動産登記が可能。・・・一、令和三年十月から「旧姓併記」での特許申請が可能。・・・一、全国の六割の銀行や信用金庫で旧姓名義の口座開設が可能。・・・一、世界で一千万人が利用するORCID(オーキッド)システムへの登録により、「旧姓」や「別名」でも論文発表が可能。
つまり、経団連や小泉氏がいう旧姓(通称)使用による不便さの多くはすでに解消されているか、徐々に解消へ向かうかしているというわけである。
子供への配慮がない
また、小泉氏は「議論を続けて三十年」になるから決着をつけるというが、三十年も決着がつかなかったのにはそれだけの理由があるからだろう。人の心や家族の問題を、何でも簡単にぶった切ればいいというものではない。
この点について今回の総裁選で注目すべき論点を挙げたのが上川陽子外相だった。上川氏は九月十四日の日本記者クラブ主催の討論会で、選択的夫婦別姓には「個人的には賛成」だとしつつ、次のように慎重論を説いていた。
「社会が分断をしてしまう。深い分断に陥る危険性、リスクについては、しっかりと納得をしていくプロセス、これをさらに深めていく必要があるのではないか。こういった一つの事柄で社会全体が分断をしてしまうような案件を賛成反対、さらには分断をしてしまうのではないかという状態を残したまま、決定してしまうということは、日本の国の力をそぐことにもつながりかねない」
これは冒頭に紹介した安倍氏の言葉にも通じるところがあり、的を射ている。実際、選択的夫婦別姓問題が浮上するたびに自民党は分断を繰り返してきた。それが法案を提出して採決となれば、日本社会全体に対立の構図を新たにつくることになってしまう。
もしこれが成立し、施行されれば夫婦同姓を選ぶか、別姓を選ぶかという対立軸も生まれる。別姓を選んだら民主的・進歩的で、同姓派は守旧派呼ばわりされる場面も出てきそうである。家同士、親族同士の対立も容易に想定できる。
夫婦別姓となれば、必然的に片方の親とは別姓になるほか、制度の組み立て方によっては兄弟で別姓ということもありうるが、それを子供がどう受け止めるという問題も重要である。
また、安倍氏が岸田氏の言葉として紹介した「子供の視点が全然ない」のが、これまでの夫婦別姓論議だったが、今回の総裁選でそこを小林鷹之元経済安保担当相が指摘したのもよかった。九月十五日の討論会ではこう語った。
「令和三年に内閣府がやったアンケートに、調査によってもその同姓を維持すべき方と、同姓を維持しつつ旧姓の通称使用を法制化するという方、これが四割ぐらいいる。そこを合わせると七割いる。そういうまだコンセンサスが形成されてない中で、早急にばんと決断するということは、政治のあり方として適切ではない。重要なのは大人の選択の権利を認めるにしても、生まれてくる子供たちの視点を、私たち政治家は無視してはいけない。家族、兄弟姉妹の中で姓が異なる家庭が出てくる可能性がある以上、そうした子供たちの視点にも立って慎重にコンセンサスを丁寧に粘り強く作っていくのが政治の本質だ」
この当事者である子供の視点に関する議論が、これまで政治家の公の場での議論やマスコミで取り上げられることはほとんどなかった。経団連のような経済合理性だけで割り切れる話ではそもそもないのである。
思考の深さが見える
ちなみに小林氏が挙げた内閣府の調査「家族の法制に関する世論調査」では、選択的夫婦別姓制度導入を求める回答は二八・九%にとどまっている。一方、「夫婦同姓制度を維持した方がよい」(二七・〇%)と「夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」(四二・二%)で、夫婦同姓制度の維持派が七割近くに達する。
夫婦の姓が異なることでの子供への影響に関しては、「好ましくない影響があると思う」が六九・〇%で、「影響はないと思う」は三〇・三%にとどまる。
今回の総裁選に当たり、読売新聞が九月十三日から十五日まで実施した世論調査でも、夫婦の名字に関し同様の傾向が表れている。
それによると、「夫婦は同じ名字とする制度を維持しつつ、通称として結婚前の名字を使える機会を拡大する」(四七%)と「夫婦は同じ名字とする今の制度を維持する」(二〇%)を合計すると六七%で七割近くとなる。
「法律を改正して、選択的夫婦別姓制度を導入する」は二八%と、内閣府の調査と符合する。小泉氏が出馬表明記者会見で述べた「最近の世論調査」とは何を指すのだろうか。
しかも子供に対して直接意見を聴いた世論調査は寡聞にしてほとんど知らないし、見当たらない。このこと自体が、これまでの選択的夫婦別姓論議の根本的な偏りを示しているといえよう。
ただ、NHK放送文化研究所が令和四年に実施した調査(千百八十三人回答)の「中学生・高校生の生活と意識調査」をみると、別姓に関する設問が一問だけあり、こんな問いがあった。
「結婚後、名字をどのようにしたいか」
これに対する回答で一番多かったのは「自分の名字でも、相手の名字でも、どちらでも構わない」で五八・七%に上り、姓へのこだわりの薄さを示している。「自分の名字を、相手の名字に変えたい」という積極的な改姓派も一四・八%いた。
その一方で、夫婦別姓を求める「自分も相手も、名字を変えずにそのままでいたい」はわずか七・〇%にとどまっていたのである。そんな子供らが、果たして「片親別姓」や「兄弟別姓」を望むだろうか。わざわざ日本からファミリーネームを消し去ることに何の意味があるのだろうか。
高市氏はすでに平成十四年と令和二年の二度にわたり、党法務部会に「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」を提出している。これを成立させれば、国、地方公共団体、事業者などに通称使用のための「必要な措置」を講ずる責務があるとの法的根拠が生まれる。
また、総裁選立候補者の加藤勝信元官房長官も産経新聞のインタビューにこう答えている。
「『旧姓続称制度』を提案した。法律に旧姓使用を書き込むことで政府のさまざまな手続きで『旧姓でよい』という形にする。家族制度の基本はしっかり守り、今ある不都合を解消していく」
旗色が悪くなったと感じたのか、小泉氏は九月十五日には産経新聞のインタビューで、高市氏が求める旧姓の通称使用法案も同時に国会で採決する可能性も排除しない考えを示した。このままでは自民党議員、党員の中に少なくない選択的夫婦別姓反対・慎重派の票が逃げるとみたのだろうが場当たり的である。それぞれの候補が、物事をどれくらい考えているかが分かる総裁選でもあった。
あびる・るい
産経新聞政治部編集委員兼論説委員。昭和四十一年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、産経新聞入社。政治部で首相官邸キャップなど歴任。最新著書は『安倍晋三〝最後の肉声〟最側近記者との対話メモ』(産経新聞出版)。
2024.09.29-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240620-QGMK4I7CF5JIJMQSZJ253SEXWY/
岐路に立つ日本「最南端」「最東端」の駅 赤字路線存廃の行方で変わる時刻表の地図
(鮫島敬三)
全国の鉄道で「最北端」「最も高い所」といった「最果て感」をアピールしている駅がある。
そのほとんどが赤字路線にあることから、将来的にはその称号を返上しなければならない可能性が出ている。鉄路を残すか、バス転換を図るかなど、地方鉄道の在り方を模索する動きが、全国各地で相次いでいるからだ。
九州新幹線の終着駅、鹿児島中央(鹿児島市)と、全国有数の遠洋カツオの水揚げ量やかつお節の生産量を誇る枕崎(鹿児島県枕崎市)を結ぶJR九州の指宿枕崎線。全線87・8キロのうち、利用が低迷している指宿(同県指宿市)-枕崎間(42・1キロ)の将来像について、同社と同県、沿線自治体が意見交換を始めている。JR九州は「しこりを残した解決はよくない」と時間をかけて議論していく構えだ。
ただ、もしこの区間が廃止となれば、「JR最南端の駅」の西大山駅(指宿市)、「本土最南端の始発・終着駅」の枕崎駅は消滅するため、最南端の称号は指宿駅が継ぐことになる。
枕崎駅のレトロ調の駅舎は平成25年、市民らの寄付で建てられた。「最北端から南へ伸びる線路はここが終点です」と書かれた看板と車止めが旅情を誘う。駅にほど近い枕崎市観光協会では、最果て駅への到着証明書を発行している。地元の鉄道への思いは強く、「いつまでも残ってほしい」という声も聞かれた。
枕崎から鉄路で3千キロ以上離れている「日本最北端の駅」は稚内(北海道稚内市)。南と北の始発・終着駅が取り持つ縁で両市は24年友好都市となった。その稚内駅がある宗谷線も稚内-名寄(北海道名寄市)について、JR北海道が「単独で維持することが困難」とする8区間のひとつになっている。
JR北海道は「地域と一体になって時間軸を意識しながらコスト削減を進めたい」としており、改善策を令和9年3月までにまとめることになっている。
この赤字8区間には「日本最東端の駅」の東根室駅、「日本最東端の始発・終着駅」の根室駅(いずれも北海道根室市)がある根室線の釧路(北海道釧路市)-根室間も含まれている。
「JR最西端の駅」の佐世保駅(長崎県佐世保市)は安泰の状況だが、今後、九州と北海道の赤字路線がなくなるという事態になれば、日本の駅の「端っこ」や「てっぺん」は変わる。時刻表の索引地図の形も、それに伴って変化する日が来るのだろうか。
「日本最南端」「日本最西端」の駅は沖縄県だ。沖縄都市モノレール、愛称「ゆいレール」にある那覇空港駅が西、赤嶺駅(いずれも那覇市)が南。ゆいレールの昨年度の乗客数は1994万8279人。前年度よりも300万人あまり増えて過去最多と、新型コロナウイルス禍後は好調を維持している。
(鮫島敬三)
2024.09.29-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240929-D7VGB4MMWBNHPHCNLLX3JBAWJU/
日本を貶める人々に一言 青木氏の「劣等民族」発言に物申す-論説委員・川瀬弘至
(かわせ ひろゆき)
筆者の知るかぎり、
世界中の人々の大多数は日本および日本人に好感を持っている。米国の大手旅行誌が昨年秋に発表した
「世界で最も魅力的な国ランキング」でも、日本は堂々の1位だった。
だが困ったことに、
日本に反感を抱き、貶(おとし)めようとする勢力が一定数を占める国が、少なくとも4カ国ある。
このうち3カ国は中国、韓国、北朝鮮だ。これらの国では、国民の不満をそらすために政府が反日感情を煽(あお)ることさえあるから誠に残念である。
ロシア政府もウクライナへの侵略開始後、西側諸国への反発を強めるようになった。ただしそれ以前のロシア国民の対日感情は概して悪くなく、右の3カ国とは並べられない。では、日本を貶めようとする勢力が一定数を占める、もう
1カ国はどこか。・・・日本である。
日本人は「劣等民族」
ジャーナリストの青木理氏が動画サイト「ユーチューブ」の番組で発した〝一言〟が、物議を醸している。青木氏は、ジャーナリストの津田大介氏との対談で
「人々はなぜ自民党に入れ続けるのか?」という問いに、
「一言で終わりそう。劣等民族だから」といい、
2人でハハハと笑い合った。
ひどい言葉だ。だが、中国や韓国のことを悪くいえば「ヘイト」だと騒ぐのに、日本に対してなら許されると考える左翼人士は少なくない。もしも保守派のジャーナリストが他国民を「劣等民族」呼ばわりしたらどうなるか。左翼勢力は、猛バッシングを浴びせたはずだ。
左翼勢力は戦後、日本は戦争加害国であり、日本軍は悪魔の所業を繰り返したとする自虐史観を、国内はもちろん海外にも植え付けてきた。
また、自民が主導する歴代政権の政策、とりわけ安全保障政策を強く批判し、日本は軍国主義に向かっているとさえ喧伝(けんでん)し続けた。
そうした日本発の「反日」が、中国や韓国の世論形成にも強く影響している。朝日新聞などが昭和57年以降に報じた事実無根の慰安婦強制連行説が、その一例だろう。中韓などの反日より、日本自身によるもののほうが、よほど悪質で厄介ともいえるのだ。
左翼勢力が日本を貶めるようなことをしなければ、日中、日韓の国民感情は、今より断然良好だったに違いない。
選択肢がないから
ところで青木氏は知らないかもしれないが、各種データをみれば日本の一般国民は、劣等どころか優等生である。
例えば経済協力開発機構(OECD)が世界24カ国・地域の16~65歳を対象に、実社会で必要な能力を調べた2013年公表の国際成人力調査(PIAAC)で、日本の成人は読解力、数的思考力ともにトップの成績だった。
知識や教養だけでなく、道徳心も高い。それは世界有数といわれる日本の治安の良さにもあらわれている。そんな
日本国民が、「なぜ自民党に入れ続けるのか?」。
筆者も一言で終わらせよう。ほかに選択肢がないからだ。むろん国民も、
「政治とカネ」の問題を繰り返す自民にはきついお灸(きゅう)が必要だと思っている。しかし
自民の1党支配が続いた55年体制時代を含め、野党は政権の揚げ足取りばかりで、現実的な政策を示してこなかった。
55年体制で野党第一党だった社会党は反米、反安保、反自衛隊であり、かりに政権を取っていたら、現在の平和はなかったかもしれない。
ただ一度、平成21年の衆院選で国民は、
自民ではなく民主党に「入れた」。
民主の中核には鳩山由紀夫氏や小沢一郎氏ら自民離党組がおり、政権を担えると思ったからだろう。しかし結果は、
外交にしろ経済にしろ散々だった。
これに懲りた国民は、以後「自民党に入れ続ける」。至極当然である。
左翼勢力に負けるな
さて、
自民の新総裁が決まった。すなわち次期首相である。左翼勢力は罵詈(ばり)雑言を浴びせるだろうが、長期政権を築いた安倍晋三元首相が言い放ったような、「あんな人たちに負けるわけにはいかない」との気概をもって、日本の安全と名誉を守る政策を推進してほしい。
新体制となった立憲民主党にも一言申し上げる。政権批判ばかりでなく、現実的な政策を示してほしいと。
(かわせ ひろゆき)
2024.09.16-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240916-T622YHXUHNPL3OOOH56PLAE2SM/
テレグラム、強権国家では民主化運動の「命綱」 戦場で活用のロシアは仏の捜査介入に圧力
秘匿性が高く、凶悪犯罪の温床になってきたと指摘される通信アプリ「テレグラム」だが、
表現の自由が制限される強権国家では、反政府運動の「命綱」の役割を果たしてきた。
規制強化が過度に進めば民主主義の後退につながる恐れもあり、慎重な議論が求められる。
2019年に香港で続発した反政府デモで、若者らは秘密裏に情報を交換するためテレグラムを使用。目立ったリーダーが不在の中でも最大200万人(主催者発表)が参加する抗議デモなどを実現させた。
ミャンマー、イランなど各地の反体制運動でも活用されてきた。
権力介入の排除にこだわるテレグラムの原点も、反体制運動を巡る苦い経験にある。
ロシア出身の創業者、ドゥーロフ氏は22歳で独自のSNS(交流サイト)を開設。
旧ソ連圏で爆発的な人気を集めたが、野党の活動などに関する情報提供要請に応じなかったことで露当局の圧力を受け、同氏は事実上の亡命を余儀なくされた。
テレグラムは、
通信の自由を守る狙いから開発されたといえる。
一方、
近年は体制側がテレグラムを「逆利用」する事例も確認される。ドゥーロフ氏を「追放」した当のロシアは、その後、
テレグラムのアプリ利用を一転して容認し、多くの政府高官らが情報発信に活用。露軍によるウクライナ侵略を巡り米紙ウォールストリート・ジャーナルは、戦場での交信活動で、露軍兵がテレグラムに依存していると報じた。
ドゥーロフ氏逮捕を受け、
ラブロフ露外相は
「露仏関係は最低水準に落ち込んだ」と
仏側を非難。捜査介入を打ち切るよう圧力を強めている。
2024.09.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240904-EQ4R6KMZ6ROXNNBPM6WTDJXQXM/
政府が75歳以上の医療費3割負担の対象拡大検討 高齢社会大綱案に明記、制度持続狙い
政府の高齢化対策の中長期指針「高齢社会対策大綱」の改定案が4日、判明した。
75歳以上(後期高齢者)の医療費窓口負担が3割となる
人の対象範囲拡大を検討すると明記した。
高齢化に伴って医療費が膨張する中、公的医療保険制度の持続性を高めるのが狙いで、政府内の議論が加速しそうだ。改定は6年ぶり。与党の意見も踏まえ、近く閣議決定する。
75歳以上の医療費で3割負担となる人の対象範囲拡大は、政府が昨年末に決定した社会保障分野の歳出改革工程表にも盛り込まれていた。現在、75歳以上の窓口負担は原則1割で、一定の所得があれば2割、現役並みの所得があれば3割となっている。2028年度までに「現役並み所得」の判断基準を見直すかどうか協議する
2024.09.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240902-K2JSGCWGE5G6RP33CNJVCWOG64/
「レナウン株式会社」は「株式会社レナウン」とは別企業、前株と後株の違いで何が変わるか
経営破綻した衣料会社レナウンから
「ダーバン」「アクアスキュータム」のブランドを引き継いだオッジ・インターナショナル(大阪市)が2日、11月に社名を「レナウン」に変更すると発表した。
変更後の正確な社名は「レナウン株式会社」で、経営破綻した「株式会社レナウン」とは法人格である〝株式会社〟の位置の前後を入れ替えただけだ。
社名の前に株式会社を入れる「前株」と後ろに入れる「後株」ではまったくの別会社となるが、果たして前株と後株の違いで何が変わるのか。
「中株」の会社もある
オッジ・インターナショナルは、レナウンから引き継いだ2ブランドが売り上げの約4割を占める主力事業に成長していることから今回、認知度向上を図る狙いもあり
「レナウン」を冠した社名に変更を決めたという。その際、
社名にあった前株を後株に入れ替えた理由については、「経営破綻したレナウンとまったくの別会社として認知してもらうため、また、その債権者などに混乱を与えないため」(担当者)と説明している。
会社法では、会社名のどこかに株式会社といった法人格を入れることを義務付けているが、その位置については決めていない。一般的な「前株」「後株」に加え、「〇〇株式会社〇〇」のような「中株」も法律上は認められている。過去には「データプロセッシング株式会社ランドスケイプ」といったインパクトのある中株会社の存在が知られていた。
IT系企業は前株多い
ベンチャー企業の設立などを支援する「SOICO」によると、
「一般的に多い会社名は前株で、アルファベットやカタカナの社名は前株の方がしっくりくる場合が多く、IT系の企業なども前株が多い印象」という。主な例では、セブン‐イレブン・ジャパンやサイバーエージェント、リクルートホールディングスが前株となっている。
一方で後株は「戦前から設立されている会社は後株が多く、堅実で伝統的な印象がもたれやすい」と分析する。主な例では、トヨタ自動車や日本航空、富士通のほか、楽天など設立が比較的新しい企業でも後株の社名は散見される。
また、
前株のメリットは、
「株式会社を先につけることで、株式で運営している会社であることをアピールでき、信頼度アップにつながる」と主張する。対して
後株は、
「株式会社よりも先に会社名が来ることで会社名が目立ち、会社をブランドとして売りやすくなる」と強調。また、「五十音順で並べたとき、株式会社から始まる他の多くの会社名に埋もれることがない」メリットがあるという。
所在地違えば同名登記可能
平成29年に東京商工リサーチが公表した調査報告によると、倒産企業の法人格別位置では「前株」が7万1460件で全体の39・7%を占め、最多となった。「後株」の倒産件数である4万1168件(同22・9%)の倍程度で、
今回、後株の社名を採用したオッジ・インターナショナルにとっては縁起がよい社名変更との期待も高まる。
ちなみに、
株式会社の表記順が異なる場合や、
本社所在地が同じでない場合は、
同じ社名であっても登記することが可能だ。東京商工リサーチの調査によると、
令和の5年間に設立された法人約68万社のうち、最も多かった社名は「アシスト」の235社となった。それに次ぐのは「LINK」(231社)だった。
2024.09.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240902-6SVBIGRHIRM27PKICNUKXLL734/
水道水が怖い…人口1万人の町襲う発がん性指摘物質PFAS 最悪レベルで公費血液検査へ
(和田基宏)
岡山県のほぼ中央にある吉備中央町で
昨秋、浄水場の水から発がん性が指摘される物質が検出された。
高濃度の有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」の国内最悪レベルの汚染で、人口約1万人の山あいの小さな町は
衝撃に包まれている。
住民たちの間では健康被害を心配する声が広がるなか、町は希望住民に血液検査を実施することを決めた。
各地の河川や浄水場で高濃度のPFASが検出されるケースが相次いでいるが、公費での血液検査の実施は全国でも初めてだという。
検査は早ければ10月から行われる。
給水人口は町民の約1割
PFASは1万種類以上あるとされる有機フッ素化合物の総称。広く使われてきたのがPFOA(ペルフルオロオクタン酸)とPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)で、政府は水道水の暫定目標値として、この2物質の合計で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)と定めている。
PFOAやPFOSには撥水(はっすい)や撥油の性質があり、泡消火剤や半導体の製造など幅広く利用されていた。だが、発がん性が指摘されたこともあり、世界的に規制が進み、
日本でも法律で製造・使用、輸入、輸出などが段階的に原則禁止になっている。
汚染が明るみになったのは昨年10月、県の保健所から町への連絡がきっかけだ。同町上田西にある円城浄水場で、PFOAとPFOSが暫定目標値の28倍という異常数値が検出された。
給水区域は町内522世帯、約1000人と町民全体の約1割。町は急遽(きゅうきょ)対策本部会議を設置。住民に水道水の使用制限を呼びかけ、給水車などによる配水という措置をとった。
町も異常数値を放置
汚染源は、浄水場の取水源の上流近くで野ざらしで保管されていた使用済み活性炭から流出したのではないか、とみられている。
実は汚染発覚をめぐっては、町も大きなミスをしていた。
浄水場で行った検査で令和2~4年度に汚染を示す異常数値が検出されていたのに、担当者が事態の重大性を認識しておらず、保健所に報告せず、公表もしていなかったのだ。
適切な対応を怠ったとして、町は今年3月、水道課長ら6人を減給処分、正副町長は3カ月分の報酬5割を自主返納。取材に対し山本雅則町長は「町としては今後とも町民に寄り添った対応を行っていこうと思います」とコメントした。
気になるのが健康への影響だ。
町は今年度予算で健康影響調査の関連経費約6100万円を計上。町が主体となって調査を行うことにした。
調査対象は飲用した可能性がある住民や別居の家族、地区内企業の従業員ら、18歳未満も含む約2400人。希望者に行われる血液検査ではPFAS血中濃度などを測定する。分析、評価は岡山大学などが担うという。
「水道水怖い」
問題の浄水場は取水源のダムを変更するなどして数値が改善。現在は飲用可能な状態に回復しているという。ただ、
住民の中には「水道水を飲むのが怖い」という人がいるという。
浄水場の近くには、大きな工場もなく、周辺は自然豊かな場所。その水が汚染されていたという現実に住民たちの驚きも大きかったという。
不安や不信感が広がるなか、住民のうち27人が専門家に依頼して独自に血液検査を実施したところ、全員から米国でのガイドラインを超過するPFAS血中濃度が確認された。
事態の対応にあたるため、住民たちは「円城浄水場PFAS問題有志の会」を結成。代表についた小倉博司さんは
「健康問題については長期間の経過を見る必要がある。被害住民らが健康を取り戻す過程に、町が責任を持ってもらいたい」と語気を強める。
さらに
「活性炭がどこでどのように使われたのか、そのプロセスが解明されなければ問題の本質は明らかにならない」とし、有志の会では関与した企業の特定、責任追及を目指すという。
今後は高濃度のPFASが検出された各地の住民団体と情報共有や意見交換をしていく方針だという。
小倉さんは「誰も責任を取らず、被害住民だけが取り残されるという結末にしてはならない。国や企業に対して責任を問う国民の声を挙げるべきときだ」と話している。
(和田基宏)
2024.08.26-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240826-UAMO5GDM4JISBKHQN3CWAGSUFE/
「警視庁捜査2課のイトウです」 元2課担の本紙記者にかかってきた〝特殊詐欺〟電話
今年8月上旬、知能犯事件を担当する警視庁捜査2課の刑事を名乗る人物から、
記者のスマートフォンに突然電話がかかってきた。
犯罪捜査の過程で記者の銀行口座の存在が浮上したという。当然、身に覚えはなく、不信感を伝えると電話は一方的に切れた。その後、
何も音沙汰もなく、特殊詐欺の電話だった可能性が高い。令和5年に全国で確認された被害総額が450億円以上と、後を絶たない特殊詐欺事件。記者も一瞬、肝を冷やした「だましの口上」とは-。
「銀行口座が事件に」
「警視庁捜査2課のイトウです。大泉さんでしょうか?」 8月上旬の平日午前中。突然、
記者のスマートフォンに着信があった。非通知だったが、取材先からの電話の可能性もあるため応答すると、男の声がこう名乗り、記者の名字も口にした。
一応、
こちらも記者の端くれ。半信半疑ながら特殊詐欺を疑ったが、「警視庁」と名乗られると、やはりドキッとする。以降、内容はより具体的になっていく。
「栃木県警の捜査で、大泉さんの銀行口座が、ある事件で使われていることが分かりました」。
当然だが、何らかの犯罪に加担した記憶はない。その旨を伝えると
「確認したいことがありますので、これから周りに誰もいない場所に移ってください」ときた。
特殊詐欺の記事で見たことがある手口。疑いは確信に変わり、少し、こちらも攻勢に出ることにした。
「ところでイトウさん、私の職業はご存じでしょうか」。記者が話を向けると、
男は少々気色ばんで「そんな簡単に個人情報が分かるわけがないでしょう。捜査は大変なんです」と反論した。
今から10年以上前のことだが、
記者は警視庁捜査2課の担当をしていたことがある。当時の取材を通して、当局の捜査能力の高さは実感している。電話番号や口座を把握している以上、本物の警察であれば、こちらの職業も把握していないわけはない。
「イトウさん、何か怪しい気がします」。こう率直に伝えると、唐突に電話は切れた。
以降、電話はかかってこない。
手口は多様で念入り
記者にこうした電話がかかってきたことは、多くの人々の名前と電話番号が、犯罪グループの間に出回っていることを示唆している。
また、
記者が動揺し、うろたえたそぶりを見せていたなら、過去の特殊詐欺の報道や警察庁のまとめなどから類推するに、
電話口の相手はさまざまな手段を弄して実際の口座番号などのより細かな個人情報を聞き出そうとしただろう。場合によっては「逮捕」をちらつかせ、口座から現金を送金させるなどの要求をしてきた可能性もある。
今回の場合は
「警察官役」の1人と話しただけだが、検察官や弁護士、公務員など複数の登場人物や連絡先を使って内容に現実味を持たせるケースは多い。こうした多様で念入りな手口は
「劇場型」などと呼ばれ、
被害者から正常な判断力を奪う。
警察庁によると、
令和5年の全国の特殊詐欺被害総額は前年比81億8千万円増の452億6千万円。認知件数は同1468件増の1万9038件と、被害は絶えない。
2024.08.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240819-V3ALGC2P5VMF3A5WC37NV2EQSM/
どこまでも追ってくる毒親、どうすれば離れられる 被害の当事者が「絶縁の手引き」上梓
子供を支配し、思いのままにしようとする親がいる。
成人しても続く嫌がらせ、執拗(しつよう)な追跡…。そんな〝毒親〟から、どうすれば離れられるのか。
苦しみ続けた虐待被害の当事者(性別・年齢など非公表)が、毒親と離れる方法を一冊の本にまとめた。自分の人生を守る「マニュアル」ともいえる内容だ。
向けられた狂気
昨秋出版された
「毒親絶縁の手引き」(紅龍堂書店)。
自身の半生を振り返る形で、毒親である父親と離別に至るまでの経緯が詳細につづられている。
始まりは子供の頃、母が病気で亡くなり、父との2人暮らしが始まったことだった。 月数回しか帰宅せず、食事を作ってくれたことは一度もない。体調が悪くても、病院に連れて行ってくれることもなかった。
無断で健康保険証を使ったことを知ると、金がかかると怒り、「早く扶養から抜けろ」と吐き捨てられた。
もらえるわずかなお金をやりくりしながら、日常の全てを自力でこなすしかなかった。
成人して就職を機に一人暮らしを始めると、今度は異常な干渉が始まった。
転職を模索していると、どこでその情報を知ったのか、
「あいつを辞めさせるな」などと、
会社に頻繁に電話をかけてきた。
連絡先を告げずに引っ越すと、住所を突き止められて「勝手に引っ越しやがってこのクソが」などと暴言を浴びせられ、〝報復〟のように大量のゴミを送り付けてきた。引っ越すたびに住所を突き止められ、同じことが繰り返された。
縁を切る方法
「親と縁を切る方法は、日本にはありません」。初めて相談した弁護士からはそう言われたが、
情報収集を続ける中で「DV等支援措置」という制度に行き着いた。
ドメスティックバイオレンス(DV)などの被害者が自治体に申請して認められれば、加害者からの「住民票の写しの交付」や「戸籍の附票の写しの交付」などの請求を制限できる。
配偶者やパートナー間だけでなく、親子間でも対象となる。
だが、
利用には迷いもあった。これまで、自分の家は「どこか変なのかもしれない」と感じてはいたものの、
「ただ特殊なだけだ」と
受け入れ続けてきた。父からひどい言動を受けても「いつかは分かり合える」と、根拠のない期待を持って。
ただ、公的機関に相談し父から受けてきた仕打ちが「虐待」だったと知った。自分の人生を阻害する存在を「切り離そう」と決意した。
■訪れた平穏
毒親と離れる方法を、
誰かが指南してくれるわけではなかった。自ら情報をかき集め、必要な手続きをとらなければならなかった。
DV等支援措置の利用申請以外にも、
住所が知られる恐れのある不動産登記簿の保護申請、新しい健康保険証の作成手続きなど、やらなければいけないことは多岐にわたった。
DV等支援措置の継続は
毎年更新手続きが必要になるが、
自治体によっては更新時期が近づいたことを事前通知してくれない場合もある。
注意しなければいけないことの多さも実感した。
手探りで一つ一つの手続きを進め、ようやく、穏やかな生活を手に入れることができた。
安全を第一に
上梓した書籍には、手続きを進める上での注意点、離れた後に気をつけなければいけない点など、今に至るまでに自身が欲しかった情報を、専門家の助言を踏まえながら丁寧に書き込んだつもりだ。
「分かり合えない家族もいる。父を捨てることは、自分にとって必要な選択だった」。取材に応じてくれた当事者は、
自身と同じく毒親に苦しむ人々について、こう願っているという。・・・「手にとってくれた方が、この本を使ってもいいし、使わなくてもいい。どうかあなたの安全を一番に考えてほしい」
2024.08.19-産経新聞(TVnavi)-https://www.sankei.com/article/20240819-BE7TUON3VFDT3GJGU3ZOZVS7FU/?outputType=theme_tvnavi
明日の「虎に翼」 結婚して名字が変わることに悩む寅子(伊藤沙莉)<8月20日放送>
伊藤沙莉をヒロインに日本初の女性弁護士で、
のちに裁判官になった三淵嘉子さんの人生をもとにした物語を描く朝ドラ「虎に翼」。
8月20日(火)放送回のあらすじを紹介する。※次回は8月20日(火)午前8時15分更新
第102回あらすじ
結婚したらどちらかの名字が必ず変わることに改めて気付いた寅子(ともこ/伊藤沙莉)は、
自分が星姓を名乗るべきか佐田姓を名乗るべきかで悩む。そしてそんな
寅子の様子を娘・優未(毎田暖乃)は心配そうに見つめていた。
寅子は轟(戸塚純貴)の事務所を訪ね、軽はずみな発言をしたことを謝罪する。
その上で名字についての悩みを相談。答えがはっきりとは決まらないまま星家へ向かう。
連続テレビ小説「虎に翼」
NHK総合 (月)~(土)午前8:00~8:15ほか ★土曜日はダイジェストを放送 NHK BS/NHK BSP4K(月)~(金)午前7:30~7:45ほか
第21週「貞女は二夫に見えず?」(8月19~23日)全体あらすじ
航一(岡田将生)からの提案に戸惑う寅子(伊藤沙莉)は自分の気持ちを整理しようと試みる。花江(森田望智)は、寅子の選択に任せるつもりだが、今ひとつ状況が分かっていない寅子の様子に不安を募らせる。再び星家を訪ねた寅子と優未(毎田暖乃)は、朋一(井上祐貴)、のどか(尾碕真花)、百合(余貴美子)と話をする。猪爪家では、直人(青山凌大)が司法試験、直治(今井悠貴)はサックス修業とそれぞれ将来の道を選び始めていた。
(TVnavi)
2024.08.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240815-VSTWEVBTLBPBJEK457UC4LR4W4/
全ての御霊安らかなれ 靖国神社参拝は戦没者との約束だ 論説委員長 榊原智
79回目の終戦の日を迎えた。
日本は、大東亜戦争と呼称した先の大戦で、陸海軍人、民間人合わせて310万人の同胞を喪(うしな)った。
全ての御霊(みたま)安らかなれと心からの祈りを捧(ささ)げたい。
昭和天皇の玉音(ぎょくおん)放送を拝聴し終戦を知った国民は齢(よわい)を重ね、
ごく少数になっている。そうであっても、
日本史上、最大の悲劇だ。あの
戦争を語り継ぎ、鎮魂と平和の祈りを重ねたい。
戦没者(英霊)は日本や故郷、愛する人たちを守ろうと出征した。子を儲(もう)けずに逝った若者も多かった。
頭を垂れた安倍元首相
尊い命を捧げた英霊にとって靖国神社に永く祀(まつ)られることは自明で、いわば日本の国との約束だった。これは極めて大切な話だ。
だからこそ
靖国神社が戦没者追悼の中心であり続けるべきなのである。後世の人間が賢(さか)しらぶって
「新しい国立追悼施設」など造っていいはずもない。
日本の独立を守った120年前の日露戦争など幾多(いくた)の戦いの戦没者も靖国神社に祀られている。
今から11年ほど前の話になる。
平成25年4月、安倍晋三首相(当時)が硫黄島を視察した。
昭和20年3月に2万余の日本軍守備隊が玉砕した激戦地だ。
自衛隊の航空基地などの視察を終え父島へ向かう飛行機に搭乗する際、安倍氏は予想外の行動をとった。滑走路にひざまずき、手を合わせ頭(こうべ)を垂れた。そして滑走路を撫(な)でたのである。その下にも英霊の遺骨が眠っていると知っていたのだろう。
滑走路地区を含め遺骨収集は今も続いている。
記者団は父島へ先乗りしており、報道を意識したパフォーマンスではなかった。当時、
海上幕僚長として案内役を務めていた河野克俊元統合幕僚長は「心底、戦没者に対する哀悼の意が深い方だった」と振り返っている。
政治のリーダーが英霊への感謝の念を持つことは大切だ。ただ、安倍氏でさえ、首相在任中に靖国神社を参拝したのは平成25年12月の一度きりだった。
以来、首相の靖国神社参拝は途絶えている。
勅使参向はあるが、天皇陛下ご親拝(しんぱい)の環境はいつまでたっても整わない。
政治家が、中韓両国の干渉、メディアを含む左派勢力の反発を懸念しているからだろう。
英霊との約束を守らない日本であっていいわけがない。
自民党総裁選不出馬を表明した岸田文雄首相や閣僚、総裁選への立候補を志す政治家らは終戦の日や春季、秋季の例大祭などの機会に参拝してもらいたい。
国会は主権回復後の
昭和28年8月、「戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議」を全会一致で採択した。
政府は関係国政府の同意をとりつけ、死刑を免れたA級を含む全ての「戦犯」の釈放を実現した。
刑死・獄死した受刑者の遺族にも年金を支給した。
その後、連合国によって刑死した人々も靖国神社に合祀(ごうし)されるようになった。
自衛隊は勇戦の顕彰を
「A級戦犯」として
禁錮7年の判決を受けて服役した重光葵(まもる)は東条英機内閣の外相当時、人種平等を掲げた世界初の有色人種諸国のサミット、
大東亜会議を実現した人物だ。
恩赦後に衆院議員に当選し、昭和29年から31年まで鳩山一郎内閣の副総理兼外相だった。
国連総会で日本の加盟受諾を演説し、各国代表から盛大な拍手を浴びている。
このようないきさつを顧みず、刑死した
「A級戦犯」合祀などを理由に靖国神社参拝を難ずる勢力があるのはとても残念だ。
日本は平和を希求する民主主義国だ。
政治家は日本を敵視する国への配慮よりも、英霊や遺族へのおもんぱかりを優先してほしい。
靖国神社を忌避する勢力は自衛隊との切り離しにも拘(こだわ)っている。だが、自衛隊も陸海軍も日本の軍事組織である点は同じだ。
自衛隊と自衛隊員は、英霊が祖国を守ろうと必死に戦った勇戦奮闘の史実を学び、語り継ぎ、顕彰してほしい。それは
自衛隊を一層精強に育て、平和を守る抑止力を高める。
戦後最も厳しい
安全保障環境にある今、台湾有事や朝鮮半島有事が日本有事に容易に転化することは世界の安保関係者の常識となっている
。ロシアのウクライナ侵略や中東情勢、米大統領選の行方も、日本の針路に深く関わる。
首相選びとなる自民党総裁選に名乗りを上げる政治家は英霊への追悼、顕彰の思いを示すとともに具体的な外交安保政策、抑止力向上策を語るべきだ
。いずれも平和を守っていくために大切なことである。
2024.08.08-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240808-DKNHVTFCZVPSDNM4UQL5NUARMQ/
昨年も浸水したエリアに「有料老人ホーム」建設計画 制限する法令なく「ハザードマップの意味がない」と住民懸念
(千田恒弥)
福岡市がハザードマップで「家屋倒壊等氾濫想定区域」に指定する同市南区弥永2丁目地区で
有料老人ホームなどを建設する計画が浮上している。
建設予定地は那珂川沿いにあり、市が最大3~5メートル未満浸水する危険性があると警告するエリア。
だが、行政による開発規制は難しく、住民から「ハザードマップの意味がない」などの声が上がっている。
(千田恒弥)
「昨年7月の大雨の際にも那珂川から越水して建設予定地の田畑に濁流が流れ込んで浸水した。
お年寄りや体の不自由な人たちの命を預かる施設を建設する場所としては不適切だ。無責任ではないか」
弥永2丁目町内会長の大賀和男さんは昨年7月に浸水した建設予定地を歩きながら、事業者の姿勢に疑問を投げかけた。
伊藤啓司さんも同地区が住宅地として多くの人たちを受け入れてきた経緯に触れながら、「私たちはいじわるをしているわけではない。純粋に入所する方々のことが心配なのだ」と話した。
■建設制限の法令なし
計画が持ち上がったのは
昨年9月ごろ。大賀さんは建設予定地に立つ看板の前で「今回の計画はこれで知った」と事業者への不信感を募らせた。昨年11月には町内会の強い要請で事業者による説明会が開かれ、
有料老人ホーム(定員90人)とホスピス施設(定員34人)の建設計画が示された。住民からは浸水エリアであることなどを理由に反対意見が多数出たという。
住民の指摘はもっともに聞こえるが、ハザードマップに基づいて住宅や民間施設の建設を制限する法令はない。
ハザードマップは住民への啓蒙(けいもう)的な位置づけに過ぎず、浸水想定区域に立地する老人ホームは全国的に少なくない。
厚生労働省と国土交通省が令和2年10月に行った全国の特別養護老人ホームなどの立地条件の実態調査によると、
洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域のいずれかにある施設は全体の約43%を占めた。
福岡市内でも浸水エリアに立地する施設は複数あるようだ。
福岡市での有料老人ホームの設置は届け出制で、同市高齢社会部事業者指導課は「高齢者へのサービス実態があれば、行政が設置を妨げることは法令上できない」という。
立地について市は指導指針の中で「災害に対する安全性を考慮するよう」求めているが、同課は「言い方として『浸水想定区域に建ててはいけない』とは言っていない」と説明した。
さらに有料老人ホームが浸水エリア内に立地していても「不動産取引のように契約前の重要事項説明が法的に義務付けられているわけではない」(同課)。そのため入居希望者や家族がリスクを把握しきれないケースもあるという。
■事業者への指導強化
こうした現状を踏まえ、
福岡市では指導指針を改定し、入居希望者らに施設所在地に関して事前に説明するよう事業者への指導を強化する方針だ。
高島宗一郎市長は5日の記者会見で「安全確保と地域住民の心理的な安心は別であり、事業者には法令順守に加え、住民への丁寧な説明が求められている」と述べた。
洪水災害などに詳しい福岡工業大学の田井明准教授は「ハザードマップに基づいた開発規制は難しいが、
浸水エリアへの福祉施設の建設はできる限り避けるべきだ」とした上で、
「洪水は事前に避難できる災害。行政は事業者が作成する災害関連計画の内容を厳しく指導すべきだ」と指摘した。
弥永2丁目の有料老人ホームの建設計画を進めている事業者に、適地と判断した理由などを尋ねたが、7日までに回答はなかった。
2024.08.05-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240805-BETJLBSXGJPBDMC7CDKLHINW7U/
危険な暑さ、禁じられた遊び 「亜熱帯」を生きる令和の子供 -
息子は4歳 還暦パパの異次元子育て
還暦を迎えたベテラン新聞編集者が遅ればせながらパパになり、
子育てに奮闘中。4歳になったばかりの息子との日々で思うこと、感じたことを綴ります。
朝、家から一歩出たとたん、息子を保育園につれて行く手に汗がじっとりにじんできた。午前8時半、気温はもう34度を超えていた。
「きょうも暑いから、おそとに行けないね」 息子もすっかり心得ている。6月下旬ごろまでは、梅雨の晴れ間をぬって、園庭で水鉄砲遊びに興じていたが、それも叶(かな)わない日が続く。暑さを肌で感じながら、目でも理解している。
「ぜったいおそとであそんじゃだめ」の日
「きょうも
〝あか〟だとおもう」
〝あか〟とは、真っ赤な顔が汗をかくイラスト。保育園では外遊び禁止の日、子供でも分かるように、この絵を貼りだす。その顔の横にはひょろりとした「棒人間」。上に大きな×印が重なり、ひらがなで
「ぜったいおそとであそんじゃだめ」。
保育園のイラストは、気温や湿度などから算出した暑さ指数(WBGT)に沿ったものだ。指数が31以上、参考気温35度以上で「危険」レベルの「赤」となる。熱中症になる危険性が極めて高いため、運動は中止し、涼しい室内で過ごさなくてはいけない。
昭和の頃、夏は外で日焼けするのが元気な子の証しだった。それが今や、
度が過ぎて強い紫外線に令和の異常気象が追い打ちをかけ、外遊びは危険と隣り合わせに。なんともうらめしい。
昭和の子供は光化学スモッグで・・・
思えば、パパが子供の頃、昭和40年代にも運動場で遊ぶことが「中止」になったことがある。
「赤」ではなく、小学校に黄色の旗が立てられていた。光化学スモッグ注意報である。
モータリゼーションの進展でまきちらされた自動車の排ガス、それに工場の煙。これらが含む窒素酸化物などが紫外線を浴び、光化学オキシダントという有害物質に変化した。当時は目や呼吸器をやられるため注意報が出ると、屋外活動の中止が呼びかけられた。
窒素酸化物などを除去する自動車触媒により排ガスはかなり浄化され、
今では光化学スモッグを気にすることも減った。われわれは技術力で「黄色」を克服したわけだが、「赤」の壁は相当、険しそうだ。大げさではなく、息子世代は、亜熱帯の日本で暮らしていく心構えが必要なのかもしれない。
「プール遊び」が安全志向に
こんな日が続くと、週末に、公園で子供を遊ばせることもできなくなる。「このプール、おもしろいね。こんなに埋まっちゃった」
ある日、息子が満面の笑みではしゃいでいたのは、ショッピングモールに併設された室内型遊園施設の「ボールプール」。弾力のある青いボールが敷き詰められた〝海原〟に、子供たちが腰までつかり、思い思いに跳びはねていた。
溺れる心配も、流される心配もない。少しぐらい目を離しても迷子にならないだろう。これはこれで楽しそうだ。だが…と、昭和パパは複雑な心境だ。
息子は、春先から一生懸命、トイレトレーニングに励んできた。「おにいさんみたいに、保育園のプールで遊びたい」という一心からだ。おむつが取れると、家でも保育園でも、トイレのタイミングがつかめずに何度も失敗した。
ぬれたパンツは、そのまま洗濯機に入れられないから、パパとママがまず手洗い。最近はその回数が減っていくことに感動を覚えていた。
「もう、だいじょうぶだよね」・・・誇らしく仁王立ちして、好みのミニカーのパンツを自分ではく4歳の息子が、ひときわ「おにいさん」に見える。あとは8月下旬に解禁となる保育園のプールの日を待つばかり。
〝あか〟の日にならないことを願う。
中本裕己(
なかもと・ひろみ)
昭和38年生まれ。前「夕刊フジ」編集長。現在も編集者として勤務。著書に『56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました』。
感想や質問をお寄せください。(メール)life@sankei.co.jp
2024.08.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240804-GT3WBBRZDBNBTKKA3GW72CDIWU/
花田紀凱の週刊誌ウォッチング(987) トランプ氏を「重罪犯で強姦魔」 ハリス氏の露骨な持ち上げはいけません 花田紀凱
(月刊『Hanada』編集長)
『ニューズウィーク日本版』(8・6)は
先週(7・30)の「トランプ暗殺未遂」に続いて、今週も「トランプVSハリス」の大特集12ページ。 こういうときは国際ニュースにからきし弱い日本の週刊誌より、同誌が読みたくなる。 が、いけません。
あまりにもハリス持ち上げが露骨。
サム・ポトリッキオ氏(米ジョージタウン大教授、同誌コラムニスト)はこう書く。
<6月末の討論会におけるバイデンの失態で稼いだトランプの点数は完全に帳消しになった>
<トランプは今春の時点で、35歳未満の有権者の支持率でバイデンを7ポイントリードしていたが、ハリスは現時点で4ポイントリードしている。
黒人の支持率も、ハリスはバイデンの時より8ポイントほど上がった。実に驚異的な改善であり(以下略)>
「驚異的な数字」と書かず「驚異的な改善」と書くところにポトリッキオ氏の意図が透けて見える。 同じく同誌コラムニスト、グレン・カール氏(元CIA工作員)も。
<第47代アメリカ大統領に選出されるのはハリスか、それとも重罪犯で強姦魔のトランプか> 読む気がうせる。
で、国際ニュースに弱い
『週刊文春』(8月8日号)の「日米7賢人が完全予測 カマラ・ハリスはトランプに勝てるか?」を読んでみると―。
<七賢人たちの間でもハリス三、トランプ三、中立一の大接戦>だそうだ。
同じく『週刊現代』(8/3)は「慧眼の専門家たちと読み解くトランプ再選後の世界と日本」。
こちらはトランプ勝利の前提で大特集。前嶋和弘上智大教授の
「台湾が見捨てられ、日米同盟に亀裂が走る」、小泉悠東京大准教授の「来年中に、ウクライナはロシアに飲み込まれる」など5本のインタビューが並んでいる。
『週刊新潮』が暴いた「赤ベンツ不倫」の広瀬めぐみ参院議員が、今度は秘書給与詐取の疑い。
『週刊新潮』(8月8日号)が大張り切りで「給与詐取」の「証拠音声・LINE」を公開。この人、いったい何のために議員になったのか。
(月刊『Hanada』編集長)
2024.08.01-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240801-27UITGXBBVFC7CVGCQYYASWVX4/
ソウルで〝作られた反日〟に遭遇 韓国記者に尋ねると「事実書けば編集長からOK出ない」-
(国際舞台駆けた外交官 〈おおえ・ひろし〉:大江博氏(8))(聞き手 黒沢潤)
公に目にする記者会見の裏で、
ときに一歩も譲れぬ駆け引きが繰り広げられる外交の世界。
その舞台裏が語られる機会は少ない。ピアニスト、ワイン愛好家として知られ、各国に外交官として赴任した大江博・元駐イタリア大使に異色の外交官人生を振り返ってもらった。
本省から電話、「君はどう思う?」
《1989年から約2年半、在韓日本大使館で勤務した》
ソウルでの勤務は充実していました。欧米など主要国との方針は通常、本省が決め、現地の大使館に意見を求められることはあまりない。しかし韓国の問題では、韓国国内の反応が政策決定に重要な要素となるため、意見を求められることが良くあったのです。
田中均北東アジア課長(後に外務審議官)や、谷野作太郎アジア局長(後に中国大使)から1等書記官の私に「君はどう思う?」と電話が掛かってきた。とてもやりがいを感じました。
韓国の3点セット
《大使館では、韓国語に堪能な専門職の館員が内政を担当し、自身は日韓関係を担当した》
在日韓国人3世の法的地位問題▽広島・長崎で被爆した在日韓国人への対応▽第二次大戦後、サハリンに残され無国籍となった朝鮮人への対応ーが主要課題。3点セットと呼ばれました。盧泰愚(ノ・テウ)大統領はこの3つが解決すれば、日韓の過去の問題は終わり、との立場を取っていました。
当時、元慰安婦問題があったとはいえ、両政府の協議対象にはなっていませんでした。協議対象になると、元慰安婦が自身の身元を多くの人々に知られることになり、嫌ったためです。
私が帰国した後、この問題が両国間の大きな問題になりました。〝トカゲの尻尾切り〟ではありませんが、日本国内では韓国大統領の約束にも関わらず、この問題を扱うと、他の問題が次から次へと出てくると懸念する人もいました。「慰安婦問題は両国の歴史に関する最後の問題になるのでは」というのが私の意見でした。その後の歴史を見ると、そうなりませんでしたが…。
屈折した感情の源
《ソウル赴任中、日本に対する韓国人の意識を垣間見た》
韓国はソウル五輪(88年)を成功させて自信を持ち始め、
冷戦崩壊に伴い、ロシアや東欧諸国との外交関係も広げていきました。
ソウルでは、ソ連の指導者にちなみ「ゴルバチョフ」という名のレストランも登場。
韓国国民の意識は確実に、世界に向いていきました。
それまで
韓国の世界史の教科書には、日本の記述が3分の1から半分ほどもあった。一方、日本の世界史の教科書で扱う韓国の歴史は数%しかない。この不均衡が、日本への屈折した感情の源にあると思いました。
韓国で日本の歌謡曲が表向き禁止対象だったにも関わらず、カラオケ店に行くと、人々が日本の歌ばかり歌うのを見た。若者向けの雑誌の表紙は、日本のどの雑誌をコピーしているか分かるほど瓜二つでした。
私が韓国を去るにあたって私物を業者に売った際、「これは日本製です」と言うと、業者は高い価格で買ってくれた。一方、韓国製だと言うと、安くしか売れなかったのです。日本製品への憧れはとても強かったですね。
韓国世論〝袋叩き〟
《韓国メディアのあり方には驚かされた》
〝反日〟の記事が新聞に掲載されたとき、執筆した記者に会い、正しい事実関係を説明し理解を得るようにしていました。これは世界中、どの大使館でもしていることです。
ところが韓国では、記者に説明すると、「(事実は)分かっている」という。どの記者と接触しても、同じような反応を見せました。
そうした記事を書いた理由を聞くと、
「事実に基づいた記事を書いても、編集長からOKが出ない。編集長がOKしても、記事になった翌日、世論の袋叩きになる」と言うのです。
〝作られた反日〟があることを知りました。
また、高齢の韓国人より、偏った教科書を通じてしか日本を知らない若い人たちの方が、反日意識の強い割合が多いと感じました。
日本旅行で好印象に
いまだに反日を前面に押し出した方が選挙で票を取れる現実があります。ただ、韓国人は自信を持ち始め、日本に旅行に来る人が多くなるにつれ、対日意識も変わってきています。
韓国から旅行で日本に来た人たちはほとんどの場合、対日印象が良くなります。
そういう意味で、
多くの中国人が日本に来ているのは良いことだと思います。ただ、人口が多過ぎ、大半の中国人が日本に来るのは難しいことかもしれませんね。
(聞き手 黒沢潤)
〈おおえ・ひろし〉
1955年、福岡市生まれ。東京大経済学部卒。79年に外務省入省。国連政策課長、条約課長などを経て、2005年、東大教授。11年にパキスタン大使、16年に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)首席交渉官、17年に経済協力開発機構(OECD)代表部大使、19年にイタリア大使。現在は東大客員教授、コンサルティング会社「神原インターナショナル」取締役などを務める。