社会の問題-2023年09月~2023年12月


2023.12.17-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/national/20231211-OYT1T50335/
屋外サウナに規制、知事「長野から率先して改革を」…「山梨や北海道に負けているのは悔しくてしょうがない」

  近年ブームとなっているサウナで地域の活性化につなげようと、阿部・長野県知事とサウナ愛好者らでつくる「信州サウナ同盟」のメンバーとの懇談会が11日、県庁で開かれた。屋外で楽しむアウトドアサウナのイベントが規制されることに話題が及ぶと、阿部知事は「特に観光関連はいわれなき規制が多い。長野から率先して規制改革を検討したい」と述べた。

  懇談会は、知事と課題を気軽に語り合う「県政ティーミーティング」として開かれた。サウナ同盟のメンバー8人が参加し、今年6月にプールを水風呂にしたアウトドアサウナのイベントを開催したことを紹介した。テントサウナを持ち込み、水着を着て楽しむものだったが、屋内のサウナと同じく公衆浴場に該当し、条例で外から見えない措置を講じるよう指導を受けたとして、「アウトドアサウナを公衆浴場と解釈しないことはできないか」と訴えた。
  これに対し、阿部知事は「昔はアウトドアサウナという概念がなかった。新しく(ガイドラインを)作ったらいい」と語った。また、アウトドアサウナが盛んな山梨県や北海道が引き合いに出されると、知事が「山梨や北海道に負けているのは悔しくてしょうがない」と吐露する一幕もあった。
  懇談会後、サウナ同盟の勝又健彦さんは「長野がより多くの人が訪れるアウトドア先進県になればいい」と話していた。


2023.12.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231215-M47T4Q5QDVMEJLVJQNHDUIAR4E/
稼ぎ「虚偽」苦しむホスト 売掛金を肩代わり、業界は膨張 歌舞伎町の深層
(外崎 晃彦)

  ガツッ-。閉店後の静まり返ったホストクラブのホールに、革靴でテーブルを蹴り上げる鈍い音が響いた。11月下旬、元ホストの佐藤大輔さん(23)=仮名=は、東京・歌舞伎町のホストクラブで3人の上司に囲まれ、詰問を受けた。
  「それって爆弾でしょ」「来てくれなくなったらどう責任とんの」 次々と浴びせられる言葉が、佐藤さんの耳に威圧的に響く。「爆弾」とは、業界では禁忌とされている客を不快にさせる言動やほかのホストの客を奪うなど、店に損害を与える行為を指す。

「月20万払います」すぐ合意書に
  数時間前、担当ホストに代わって佐藤さんが常連客に応対したときのこと。佐藤さんは、風俗で働く女性から性的サービスを受けることに抵抗があるという話をした。ホストクラブの客は性風俗で働く女性が多いことから、この発言が「爆弾」としてやり玉に挙がった。
  囲まれてテーブルを蹴られ、「怖くて頭が真っ白になった」。口をついて出たのは「損害賠償として月20万円を半年払います」という言葉。すかさず印刷された合意書が差し出された。「ホストからの搾取も常態化しているのか」。サインをして解放されたが、それから店には近づいていない。
  専門学校を出て保育士などとして働いた佐藤さん。歌舞伎町で大金を稼ぐホストを紹介する動画を見て、「たくさん稼いで、車も買って、女の子にももてる」ときらびやかな世界にあこがれた。
  しかし飛び込んだ世界は、「思ったものと違っていた」。ヘアメーク代、衣装代、寮の費用…。次々と引かれていき、新人ホストの手取りは10万円にも満たない。最も嫌だったのは、蔓延(まんえん)する罰金制度だ。「もう戻るつもりは全くない」と吐き捨てた。
「1億円プレーヤー」の実態
  ホストクラブは女性客に売掛金(つけ払い)を背負わせて売り上げを伸ばす。一方で、女性客が支払えなくなればホスト自身に残りの売掛金を肩代わりさせる慣習がある。そのせいで、女性客から脅迫じみた取り立てをしたり、女性を風俗店で働かせたりする悪質な手法が後を絶たない。
  しかしこの売掛金制度こそが、虚飾に満ちた業界を膨張させ続けた原動力だったともいえる。 ホストは20~30年前、年間数千万円の売り上げでトップになれたとされるが、街にあふれる看板には売り上げ1億円を超えると称するホストが何人も掲示されている。「かつては店とホストは売り上げを半々で分けていた。今は人気のあるホストの場合、ホストが9割、店が1割ということもある」。こう解説するのは、あるホストクラブ関係者だ。
  「店は原価と利益を計算して売り上げの1割をホストから受け取ればいい。あとはホストが自分で回収して稼ぎにする、というシステムができ上がってしまった」と説明。だからこそ、「1億円プレーヤー」と呼ばれても、店に1千万円を収める以外は、回収できるかも分からない売掛金でかさ増しした数字が実績として公表されている。
  業界では、売り上げランキングがホスト個人の収入増や名声につながるため最重要視されている。店舗が急増し、過当競争となった結果が、安易な高額売掛金につながっているというわけだ。
  この関係者は言う。「売掛金はランキングを上げたいホストの願望につけこむ運営側が作り出した悪習。ホストもランキングも全部、虚像なんだよ」
(外崎晃彦)

売掛金「売上高の6割占める」
  ホストクラブの売掛金問題をめぐっては、ホストクラブ側が来年4月までに売掛金による支払いを廃止する方針を示している。歌舞伎町の19グループ約300店舗を代表して新宿区との協議に当たった歌舞伎町最大のホストクラブ「グループダンディ」の最高執行責任者(COO)の巻田隆之氏は透明性を高め、信頼回復を図りたいとする。
  巻田氏によると、歌舞伎町のホストクラブ全体の売上高に占める売掛金の割合は約6割に上るという。これまでも高額な売掛金について問題視する経営者やホストはいたものの、「目先の収益が重視されてきた」とし、改革が進まなかったと明かした。
  巻田氏は、これまで売掛金に頼ってきた分、全体の売上高は3割程度落ち込むと見るが、「現場に合わない法律を作られる方が、業界がつぶれてしまう」とし、「企業努力によってカバーできる範囲だ」と話した。
  今後は女性に風俗店の仕事を紹介する違法スカウトなど反社会的な勢力とは距離を置くとし「健全な運営で安心して利用してもらえる環境づくりを進めたい」と話した。


2023.12.04-朝日新聞-https://www.asahi.com/articles/DA3S15808219.html?iref=comtop_Opinion_04
(社説)被害者の声 更生につなげる実践を

  犯罪の被害に遭った人は、どのような影響を受け、加害者に何を望んでいるか。その声を、刑務所などの職員の橋渡しで受刑者らに届ける制度が今月、始まった。更生や再犯防止に生かされ、定着してほしい

  この制度は、懲役刑・禁錮刑を拘禁刑に一本化し、受刑中の教育をより重んじる法改正と合わせて導入された。 被害者・遺族の申し出があると、加害者を収容する施設の職員が会って話を聞き、その内容を本人に伝える。希望する被害者には、加害者側の反応を伝える
  制度のねらいは、事件を直視し、反省や悔悟の気持ちをもたせることだ。それが、二度と同様の犯罪をしないことにもつながる。 刑務所や少年院では、「被害者の視点を取り入れた教育」をプログラム化している。ただ、被害者の講演などを聴くことはあっても、自らが被害に遭わせた人との接点はこれまでなかった
  被害者の中には、事件で環境が一変し、つらい生活が続いている人も少なくない。加害者に立ち直ってほしいと願う人もいる。そんな現状や気持ちを知ることは、被害者に謝罪や被害弁済をしていない加害者が罪と向き合う大きなきっかけになりうる
  矯正施設の職員が被害者とかかわる機会も従来はなかった。必要な処遇を考える助けになるのではないか。 当初は、犯罪の種類などで対象を絞ることも検討されたが、見送られた。あらゆる事件について、被害からの年月を問わず、職員が話を聞き取ることには、相当の専門性が求められる。既に研修を重ねてきたというが、今後は実践による知見を重ね、共有していくべきだ
  社会内で立ち直りをめざす保護観察の対象者に、被害者が保護観察所を通じて心情を伝える制度は既にあり、年間百数十人が利用している。被害者団体からは「加害者から満足できる反応がない」「被害者のための制度にはなっていない」との指摘もある。
  新制度では、被害者の厳しい感情を受刑者らが受け止めきれない状況に陥ることも想定される。自らの内面を見つめる、他者への共感をもてるといった土台があってこその制度といえ、矯正教育の底上げが不可欠だ。とくに少年の加害者に対しては、本人の発達に合った伝え方を、慎重に検討すべきだろう。
  加害者が矯正施設にいる事件は、発生が制度開始前でも対象になる。利用できる人に広く伝わるよう、周知に努めてほしい。


2023.12.01-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/world/20231201-OYT1T50187/
[深層NEWS]ロシアの情報工作、「ウクライナ人の分断を狙っている」…政権求心力の変化に注目

  防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事と慶応大の廣瀬陽子教授、キーウ在住ジャーナリストの古川英治氏が1日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、ウクライナ情勢を巡り議論した。

  ウクライナに対するロシアの情報工作について、廣瀬氏「反欧米的な意識を植え付けることでウクライナ人の分断を狙っている」と解説した。古川氏「ウクライナ国民が一番恐れているのは、軍と政権の対立が決定的になることだ」と分析した。兵頭氏「ゼレンスキー政権の求心力がどう変化するかが、戦争の行方に影響を及ぼす可能性が出てきた」との見解を示した。


2023.11,21-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231121-5BIY5F7YGBHQ5JYF4KSX6F3QA4/
立民・塩村文夏氏、悪質ホストは裏組織が「売春させるビジネス」被害防止法案を準備㊦
塩村文夏参院議員

  立憲民主党の塩村文夏参院議員は産経新聞の取材に、悪質ホストクラブの問題を巡って「被害者女性が選択の自由が与えられない状況に落とし込まれている」と述べ、与野党が一致して根絶する必要性を指摘する。

  《立民は17日、政府に対し、全国のホストクラブを対象に風営法の順守状況の確認、明細書や請求書の発行の徹底、女性客に多額の飲食代金を支払わせるため売春行為をさせたり風俗店で働かせたりすることへの取り締まりの強化を求めた》
─政治はどう対応すべきか
  「悪質ホストクラブは証拠を残さない無法地帯となっている。青伝票(未収金の覚書)には明細が書かれていない。店名すら記入していないケースもある。この問題は警察庁や消費者庁など関係省庁もまたがっているので『ワンストップ支援センター』の設置などを盛り込んだ被害防止のための法案を提出を考えている。来週には提出できるのではないか」
─売掛金制度を見直すべきではないか
  「ただ売り掛けを禁止するには相当な議論が必要となる。まずは現行法を厳重に適用すべきだ。与野党が一致しやすい内容にしたい」

  《塩村氏は9日の参院内閣委員会で松村祥史国家公安委員長に政府の対応をただし、松村氏も「各種対策が強力に推進するよう警察を指導したい」と応じた。悪質ホスト問題が国会で取り上げられるのは初めてという》
─悪質ホストに切り込もうと考えたきっかけは
  「梅毒の感染者拡大、シングルマザーの売春問題などに取り組み、売春で検挙された女性の4割がホストにはまっていることが明らかになった。衝撃だ。今月5日に歌舞伎町で、20代の女がホストをカッターナイフで刺す事件も起きた。国会で悪質ホスト問題が取り上げられることはなく、国としてのスタンスを確認したかった」

  《警視庁は今月3日、歌舞伎町・大久保公園周辺で売春の客待ちをする「立ちんぼ」の取り締まり状況を公表。今年1~9月までに売春防止法違反容疑で20~46歳の女80人を摘発し、売春の動機は4割がホストクラブの支払い目的だった》

  「健全な店は優良店として認めればいい。悪質ホストがターゲットにする家庭はシングルマザーが多い。組織立って行われ、シングルマザーの若い女の子をターゲットに最終的に風俗で働かせ、売春させるビジネスモデルだ。現行法では対応しにくい考え抜かれた犯罪スキームだ。政治権力が商売に介入するのは極力避けるべきと考えているが、悪質ホストの問題は看過できるレベルを超えている。自己責任問題でもない」
─ソープランドの存在が問題視される
  「職業選択の自由も確保すべきだろう。ただ選択の自由がないような所に落とし込んでいく道を作っていく大人たちが悪い日本の女性を売春エージェントが海外に送っている実態も明らかになっている。さすがに見逃すことはできない。日本として恥ずかしい話だ」


2023.11.21-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231121-2SXLNCKOAFCU5NFR7775GNO46M/
立民・塩村文夏氏、悪質ホスト「どう考えてもだます方が悪い」法整備の必要性に言及㊤
塩村文夏参院議員

  東京・歌舞伎町のホストクラブで若い女性客が支払い能力を超えた高額な料金を請求され、売春などを強要されるトラブルが相次いでいる。被害女性の支援体制を巡る国会議論に口火を切った立憲民主党の塩村文夏参院議員が産経新聞の取材に応じた。塩村氏は「若い女性がはまりやすい犯罪スキームが作られている。悪質さは政治が看過できるレベルを超えている」と強調し、与野党で対応する必要性に言及する。

  《悪質ホストが社会問題化している。「頂き女子りりちゃん」を名乗る女が男性の恋愛感情を利用して計2億円を詐取し、歌舞伎町のホストに貢ぐ衝撃事件が発生した。今月5日には歌舞伎町でホストとみられる男性が利用客とされる女にカッターナイフで刺され、ネット上に事件前後の動画が多数投稿された》
─立民が悪質ホスト対策に取り組んでいる
  「悪質ホストは学生に被害が広がるなど、身近な問題になりつつある。18、19歳がホストクラブに誘い込まれる手口が一般化している。被害女性の多くがソープランドで働くことを強要されていた。メンタルがボロボロになり、自殺を図った女性も少なくない」
  「ある20歳の被害女性は売掛金がかさみ、担当ホストの紹介を受けたスカウトから『海外の売春に行ってきな』といわれたという。パスポートを持たなかったために免れたが、結果として日本の風俗店で働いた。この2年間で1000万円をホストクラブに支払ったという」

  《飲食代を店が肩代わりして後払いさせる売掛金制度の在り方が所持金も貯金もない若い女性がホストクラブにはまる背景に指摘される。ホストで実業家のROLANDさんは自身が運営するホストクラブで売り掛けでの支払いを禁止した》
─歌舞伎町の売掛金制度の特徴とは
  「銀座の会員制クラブにも売り掛け制度はあるが、あくまでも店と客の関係で成り立っている。歌舞伎町の場合はホストと女性客の関係になる。消費者契約法に基づいて売り掛けを取り消そうとしても、店が介在していないため、認められないケースがある。ホストは女性に色恋営業を駆使する。恋人同士の金銭問題とみなされ、警察から相手にされない場合もある。法律が適用されない所を抑えた犯罪スキームになっている」

  《悪質ホストの『スキーム』の背景に、警察庁の露木康浩長官は「匿名・流動型犯罪グループ」(旧準暴力団)の存在を示唆している》
─被害女性にもホストの術中にはまった責任があるといった指摘がある
  「ホストに陥らない利用客もいるので、そうした考え方もあるだろう。ただ、悪質ホストに一度関わってしまえば、抜け出すのは容易ではない。利用客の同情心や愛情をくすぐる色恋営業をかけられ、親が保護しても、連れ戻して売掛金回収のため、風俗店などで働かせる。ホストにはまらせるマニュアルの存在も指摘されている。どう考えてもだます方が悪い」
─キャバクラも男性客がはまりやすい
  「キャバクラ代が支払えなくなっても、家族の所まで『お父さんのキャバクラ代を支払え』とか、『家を用意したから家族を捨てて一緒に暮らそう』などとは言わない。悪質ホストにはそれがある」・・・「友人の誘いにのって、ホストクラブに行ってしまい、10人くらいのホストに囲まれ、『誰が好み?』みたいな話をされ、関心を引く。その後、偶然を装って好みのホストが利用客と街で会い、『運命だね』みたいな甘い言葉をささやく。友人とホストクラブが連携している。店に2、3回通えば恋愛感情に陥ってしまい、その後は『誕生日だから』『頂上決戦だから』などと言われ、シャンパンタワーを注文させられ、戸惑ったまま、売掛金を重ねていく」


2023.11.18-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/national/20231117-OYT1T50221/
SNSで女子中学生に「何もしないから家に来てもいいよ」、誘拐の疑いで48歳会社員逮捕

  千葉県警柏署は16日、東京都江東区、会社員の男(48)を未成年者誘拐の疑いで現行犯逮捕した。「未成年だとは知らなかった」と容疑を一部否認しているという。

  発表によると、男は15日、SNS「何もしないから家に来てもいいよ」とメッセージを送り、県内に住む女子中学生を誘い出し、16日まで自宅に滞在させるなどして誘拐した疑い。中学生にけがはなかった
  中学生が通う学校から「娘さんが学校に来ていない」という報告を受けた母親が15日、同署に行方不明届を出していた。


2023.11.13-産経新聞-https://kifunavi.jp/charity-lp/kp/survey/kp-01-15/?
「海外でも日本でも、暴力や虐待に苦しむ子どもをなくしたい」・・・日本のNGOの取り組みとは?

  「勉強をしてみたかったな」-まさ春宿られ-20 歳で亡くなた少
  東南アジアの農村で暮らすミーチャ12歳。母親は病気で亡くなりました。父親は病気で働くことができず、働き手は長女のミーチャだけです。
  ミーチャは家族のために12歳で農村を出ました。出稼ぎに行った先はなんと売春宿でした。子守の仕事だと聞いていたのに、だまされて売春宿に売られてまったのです。客を1日何人も取らされ、毎日泣きながら暮らしました。
  そして、エイズを発症し、20歳の若さで亡くなりました。 「私には本当は夢があって、学校へ行って、勉強というものをしてみたかったな…」亡くなる前に彼女が漏らした言葉です。勉強をしてみたかったな」

-日本の大学生が始めた活動
自分のワンピースと同じ1万円で売られる少女…
  村田さんは大学2年生の時に授業でミーチャのことを知りました。この問題を知るまでは、親に学費を払ってもらって大学に通い、趣味のファッションを楽しみながらサークル活動に参加する普通の大学生でした。
  ミーチャがだまされて売られた金額は1万円。その時村田さんが着ていたワンピースと同じ値段でした。
  「望んでも1回も学校に行けなかった女の子。親に学費を払ってもらい、大学に通う私。生まれた環境が違うだけで、・・・どうして与えられた運命がこんなにも違ってしまうのだろう?」村田さんは、この時に受けた衝撃は忘れることができなかったそうです。
カンボジアで知った悲惨な現実
  村田さんはいてもたってもいられず、大学の夏休みに、カンボジアの児童買春の被害者を保護している施設を訪問し、そこで6歳と12歳のこどもに出会いました。
  二人は抵抗できないように…電気ショックを与えられながら売春させられていたのだそうです。保護された時、彼女たちの腕には電気ショックによる火傷の跡が無数にありました。また、夜が来ると泣き叫び、熟睡できません。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状に悩まされていました。
  村田さんが「彼女たちの親は、子どもが売られていく先が売春宿だと知っていたのですか?」と質問すると、施設の所長は「知っていたけれども借金を背負っていたために、彼女たちを売るしかなかったのだ」とつぶやきました。

たとえ大きな国際会議でも提案するだけではない
  「とにかくどうにかしたい」 そう考えた村田さんは、本や資料で勉強したり、関連するセミナーに参加することから始めました。セミナーに参加するうちに、2001年に横浜でさまざまな国の外務大臣が出席する国際会議が開催されること、そして日本の若者が参加できることを知りました。
  「大きな国際会議でこの問題を解決するための提案をしたい」と考えた村田さんは、出席者に立候補し、見事にスピーカーに選ばれました。
  できる限りのことを準備した甲斐もあり、最終的には国連の文書となるほどの評価を受けました。
  ただ、提案しただけでは世の中は全く変わりませんでした。村田さんはこの時、実際に予算の配分が変わったり、法律が改正されたりするところまで政府にお願いし続けないと、世の中は結局変わらないということ、そのためには大変な時間がかかることを痛感しました。
  会議後には、いろいろな団体を訪れ、売られる子どもの問題をなくすための提案をして回りましたが、提案はなかなか通りませんでした。
「これほど提案しても既存の団体ではできないということであれば、自分がやるしかない」
  あきらめず会う人会う人に想いを伝えていたところ、一人ふたりと共感してくれる仲間が増えていきました。当時大学生だった共同創業者の青木さんとと本木さんと2001年に出会い、2002年に「かものはしプロジェクト」を立ち上げました
  大学卒業時に、村田さんは父親に卒業後はカンボジアに行って本格的な活動を始めることを伝えました。しかし、「もしやるなら家を出て行きなさい」と猛反対されてしまいました。自分を心配して反対している父親の気持ちを理解し、一度は諦めそうになったそうです。
「私は本当にこれがやりたいのか」・「本当に人生を掛けてやる意義があるのか」
  村田さんは自分の意志を確かめるためにカンボジアに渡航しました。そこで5歳の被害者に会い、「やっぱり5歳の子が売られているのはおかしい。私が絶対にこの問題を解決する」 と心に決めました。最後は、家族全員を説得し、カンボジアでゼロから活動をスタートさせました。

子どもを「買わせない」「売らせない」。「かものはしプロジェクト」の取り組み。
  一人ひとりの女の子を助け出すだけでは、この問題を解決することはできません。「かものはしプロジェクト」は、「子どもが売られない」仕組みを作ることが必要と考えました。
  最初に活動したカンボジアでは「買う側」「売る側」両方に働きかけ始めました。売春宿や子どもを買う人を摘発するための警察支援や、子どもを売らなくてすむようになるために貧困家庭の女性を雇用する工房の経営に尽力しました。その結果、カンボジアでは性犯罪の加害者の逮捕件数は2001年からの9年間で大幅に増え、子どもを置く売春宿はほとんどなくなり「人身売買の問題がほぼ解決した」と言えるまでになりました。

を、 
  しかし、まだ年間100万人もの子どもたちが、世界中のどこかで性的搾取を目的とした人身売買の被害にあっています。
  「かものはしプロジェクト」は、今、世界最大の人身売買規模と言われているインドでの活動に注力しています。
  2025年までにインドで子どもが売られる問題を解決することが目標です。

「かものはしプロジェクト」は、「子どもが暴力や虐待で苦しまない社会をつくる」ために活動を続けています。今なら、アンケートに答えるだけで「かものはしプロジェクト」に10円を寄付することができます。費用は寄付ナビが負担するため、あなたには一切費用はかかりません参加するためのご登録も不要です。所要時間は30秒程度です。
  *「子どもが暴力や虐待で苦しまない社会をつくりたい」と思っていただけたなら、無料支援に参加してみませんか?
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2023.11.11-読売新聞(New門)-https://www.yomiuri.co.jp/national/20231110-OYT1T50207/
「年賀状は出しません」世代を超え企業にも、年始あいさつの伝統はSNSなどで続く

  [New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「年始あいさつ」。

  年賀はがきの発行枚数が年々、減少している。「年賀状じまい」が世代を超えて広がり、取引先への送付を廃止する企業も目立つ。一方、SNSで年賀のあいさつをする人も多く、長年の文化は形を変えつつある。
  広がる「年賀状じまい」発行3割年の正月から年賀状を出さないつもりだ。「準備が大変。LINEなら簡単に送れて、すぐに返信がくる。日頃の感謝を伝えるツールとして優れている」と話す。
  年賀状の習慣は平安時代に遡るとされ、明治時代に郵便制度が始まると庶民にも定着した。1949年にお年玉くじ付き年賀はがきが登場。2003年度(04年用)の発行枚数は44億5936万枚と過去最高を記録した。その後は減少に転じ、今年度は当初発行ベースで14億4000万枚とピーク時の32%に落ち込んだ。日本郵便の光山実郵便・物流事業企画部担当部長は「年賀はがきに親しんできた世代の人口が減っているほか、『年賀状じまい』の広がりも大きい」と話す。
  高齢者の「終活」が注目され始めたのは2010年頃その一環として年賀状じまいにも関心が集まり、現役世代にも広まっていった。パイロットコーポレーション(東京)が、22年11~12月に20~60代のビジネスパーソン405人にアンケートしたところ、49%が「年賀状を出さない」と回答。理由(複数回答)は「LINE等メッセージアプリで代用」が69%と最多、「準備が面倒」が52%で続いた。
  ネットで年賀状印刷を受注しているアーツ(大阪)は昨年から、「年賀状じまい」用の文面を用意した。「将来的に受注を減らす可能性があるが、時代の流れは止められない」という。
家族写真撮れず
   印刷会社に長年勤務している年賀状研究家の高尾均さんによると、コロナ禍を境にして、写真を配した年賀状の落ち込みが特に激しいという。「旅行など家族イベントの写真が撮れなかったため、自然消滅的に年賀状をやめてしまったケースもある」と話す。最近は、「幸せそうな家族写真=自慢」とする「年賀状マウント」が話題になり、出すかどうかで気疲れする人もいるようだ。
  年賀状をやめる企業も増えている。ソフトバンクグループ(東京)や富士通(同)は昨年、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から、年賀状を含む紙のあいさつ状を廃止した。
  第一生命経済研究所(同)の宮木由貴子主席研究員によると、欧米でもクリスマスカードなどの郵便取り扱いが落ち込んでいるという。「手間とコストをかけ、昔からの慣習を続けるのか問われている」と指摘する。


2023.11.05-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231105-UK4ZKKJUDVGQVEHIBIU5PRCVIQ/?outputType=theme_weekly-fuji
ノーベル平和賞も受賞したEUが発足30年 問われるウクライナへの対応
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

  欧州連合(EU)の発足から30年となった。当初の理想は実現できたのか。今後の展望はあるのだろうか。EUは、欧州27カ国が加盟する国家連合である。人口は約4・5億人だ。1993年のマーストリヒト条約の発効によって確立された。
  起源は51年のパリ条約と57年のローマ条約によって設立された欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)と欧州経済共同体(EEC)で、フランス、西ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの6カ国が当初メンバーだった。EUは、域内の市場における人、物、サービスおよび資本の自由な移動を確保し、貿易などの共通政策をを目的としている。加盟国同士の経済的結び付きは非常に強い。2012年にEUはノーベル平和賞を受賞したが、その理由は「欧州連合およびその前身の諸機構が、60年以上にわたって欧州において平和、和解、民主主義、人権の向上に貢献してきた」というものだった。もっとも、EUが実際に平和だったのは、北大西洋条約機構(NATO)が裏にあったからだ。NATOは1949年設立で、現在31カ国が加盟する。米国、カナダの北米国と欧州諸国の間で結ばれている軍事同盟だが、欧州のNATO加盟国は、EU加盟国とほぼ合致していることが見て取れるだろう。

  これまでの経緯を見ると、現在、EUとNATOの両方に加盟している国は22カ国あるが、直近のフィンランドを除く21カ国が、まずNATOに加盟し、追ってEUにも加盟している。つまり安全保障的結び付きを強めたうえに、政治・経済的な結び付きを築いているということだ。
  第二次世界大戦後にNATOがEUより先にできたという歴史的事実はあるが、まずは安全保障ということで、EUへの加盟が結果として後になった。
  ただし、2023年4月、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、EU加盟国のフィンランドは従来の中立政策も放棄しNATOに加盟した。スウェーデンも同様の道をたどるとみられる。いずれにしても、EUとNATOは政治・経済と安全保障で車の両輪のように欧州を統合していくだろう。
  ウクライナは、1991年12月の旧ソ連崩壊後、旧ソ連体制から脱却するためにNATOとEUへの加盟を目指したが、ともに高いハードルがあり頓挫してきた。2019年2月、ウクライナ議会は憲法を改正し、EUとNATOへの加盟を目標として明記した。
  今回のロシアによる侵攻を受け、ウクライナは22年9月30日、正式にNATOへの加盟申請を行った。他方、EU加盟については、22年6月23日、EUはウクライナを加盟候補国とすることを決定した。こちらの方がNATO加盟より進んでいるものの、ウクライナはEUとも正式な加盟交渉中である。
  EUはたしかにこれまで欧州の平和に貢献しノーベル平和賞を受賞したが、これからもそれに値する行動ができるのだろうか(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)


2023.11.05-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231105-37QIIQMGNRM33F4IWYMDO56NEQ/
「原子力は悪」の単純報道に思う 経済ジャーナリスト・石井孝明

  エネルギー・原子力報道では一部メディアに「型」がある。「原子力は悪」「国と電力会社の施設押し付けに住民が立ち上がる」といったイメージ先行の報道がそれだ。複雑な現実を、この型に押し込んでしまう。平成23年の東京電力福島第1原発事故の後で、その傾向が強まる。山口県上関(かみのせき)町で、中国電力と関西電力が使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設調査の計画を提案し、同町が今年8月に受け入れた。すると新聞にこの型の記事が並んだ。「上関に原発施設 核燃事業の破綻直視を」(朝日新聞8月4日の社説)、「原発を積極活用したい政府」(東京新聞、同19日)など、記事の題名だけで中身が分かってしまう。朝日社説は「岸田政権やそれに従う電力会社は、無責任さを自覚すべきだ」と、建設調査を批判した。

  中間貯蔵施設とは、使用済み核燃料を再処理施設に搬入するまで一時的に、安全な状態で保管する場所だ。青森県六ケ所村で建設中の再処理施設は令和6年度の竣工(しゅんこう)を目指しており、まだ「破綻」(朝日)ではない。原発を稼働させれば、使用済み核燃料は当然できる。それを原子炉から離し保管することは安全性を高める。それなのに反対をするのは不思議だ。
  上関町議会は8月18日に調査の受け入れを決めた。朝日は特集コーナー「時時刻刻」で「急ぐ町、16日で決定」(同19日)を掲載するなど、前後の数日間に反対派寄りの記事を紙面とウェブで掲載し続けた。この記事は「10人の町議中7人」が賛成し、高齢化で人口がこのままだと「2045年には1000人を切ってしまう」など、町の状況を正確に伝える。しかし反対派の「不信」「異様」という意見が記事の多くを占め、全体を読む印象は、いつもの型にはまった記事になる。
  上関町では1980年代から原発計画があったが、福島の事故以来止まった。一部の全国紙と地元紙は、同町では原発誘致の賛成派が多数なのに「分断」と「対立」と報道し続けた。13年前に現地で取材したことがある。町外の政党関係者、反対団体メンバー、東京の一部メディアが町を闊歩(かっぽ)し、反対派の意見を伝える新聞記事のコピーがばらまかれ、ある町民は「静かに話し合える状況ではない」と嘆いていた。その状況を再び作ろうとしているのか。
  エネルギー・原子力報道が型にとらわれ、現実から遊離していないだろうか。事実を伝え、地元の人を中心にした関係者が静かに合意をまとめる環境づくりを、報道は手伝うべきであると思う。

【プロフィル】石井孝明(いしい・たかあき)
  昭和46年、東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒、時事通信記者などを経てフリーに。経済・環境情報サイト「with ENERGY」を主宰。著書に『京都議定書は実現できるのか』など。


2023.11.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231104-UBBAG4Y3JJOLPC4BW3NIZIWK5U/
恐怖拡散の系譜⑤ライブ配信で「犯罪共有」 ネットが教化する過激思想
大内清、板東和正、大渡美咲、矢田幸己、桑村大、宝田良平

  互いに意思を通じてする共犯関係とは異なる。ただ見てほしい-。男は自らのテロ行為をネットを通じてライブ配信した。意図したのは「犯罪の共有」だ。

  2022年5月14日、米ニューヨーク(NY)州バファロー。買い物客でにぎわう休日のスーパーが惨劇の舞台となった。車から降りた軍服姿の男が突如として銃を乱射。店内に侵入した後も発砲を続け、撃たれた13人のうち黒人10人が死亡した。拘束されたのは当時18歳のA。白人至上主義に傾倒し、黒人利用客が多いスーパーを標的にした。Aは憎悪犯罪(ヘイトクライム)によるテロや殺人などの罪に問われ、今年2月に仮釈放のない終身刑を言い渡された。
  事件の関連で、世論の厳しい非難が向けられたのが英語圏の匿名掲示板「4chan」をはじめとするウェブサイトや通信アプリだった。Aは事件直前、ネット上に180ページに及ぶ犯行声明を投稿。その中で動機につながる人種間の「真実」を4chanで学んだと明かした。アプリ上の日記にも「黒人が知的、感情的に劣っているという事実」を、4chanで与えられたと書いた。
  アプリで行った犯行当時のライブ配信は、開始から2分以内で強制停止されたものの、生中継で20人程度が視聴。無数のコピーがネット上に拡散された。
テロリストを育てる苗床
  NY州司法当局が22年10月に公表したA事件に関する報告書は、複数のサイトを名指ししながら、特に4chanが「人種差別的なヘイトスピーチと過激化の温床となっている」と批判した。ライブ配信については「他者がリアルタイムで視聴する」という状況に、犯人自身が奮い立たされていたと指摘した。つまりオーディエンスの存在が凶行を幇助(ほうじょ)したともいえる。
  19年にニュージーランド南部クライストチャーチのモスクで起きた銃乱射事件で、51人を殺害した白人至上主義者、Bもまた襲撃時の様子をライブ配信した。このときの動画の切り抜きを4chanで見た無数の人間の一人に、ジェンドロンその人もいた。
  コンテンツ適正化の取り組みが不十分なこうしたサイトが陰謀論を広め、感化された一部の人間がテロに走る。そこに残虐な映像がアップされ、恐怖を拡散するとともに、新たなテロリストを育てるための苗床にもなるのだ。
  銃乱射事件は文字通り米国の日常となった。非営利団体「ガン・バイオレンス・アーカイブ」によると、4人以上が死傷する銃乱射事件は今年に入ってすでに580件以上発生。1日1件をゆうに超える。犯行に至る動機や目的はさまざまだが、社会からの隔絶という共通項も指摘される。
  米バージニア・コモンウェルス大が過去に銃乱射事件を起こした177人について調べた研究によると、攻撃につながるとされる最も重要な指標が「社会的孤立」だった。研究を主導したバージニア州立大のサミュエル・ウェストは「社会的孤立は防御因子としての他者の視点を欠落させ、より有害な思想や行動に傾倒しやすくなる」と分析している。
  孤独であるがゆえに、仮想空間での支えや共感を欲するのは、単独のテロ犯「ローンオフェンダー」に特徴的な傾向といえる。Aもした犯行声明のようにネットや交流サイト(SNS)に、事件前に犯意を「漏洩(ろうえい)」する行為はローンオフェンダーの6割に及ぶとの事例研究もある。昨年7月、元首相の安倍晋三を銃撃したC(43)も、事件の動機とされる旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への恨みをSNSに何度も書き込んだ
  36人が犠牲になった令和元年の京都アニメーション放火殺人事件で、公判中のD(45)は匿名掲示板「2ちゃんねる」のヘビーユーザーだった。家族との関係を絶ち、孤独だったDは、調べものをするとき、何かの行動を起こすとき、2ちゃんねるに匿名で書き込んでは、反応を見ていたという。公判では、掲示板で京アニの女性監督とやり取りをしているという妄想を抱いたことが、事件に大きく影響したことが明らかになった。
  匿名掲示板ではなりすましが横行する。「女性監督もなりすましでは?」と被告人質問で問われたDは、自身もなりすましを「やっていた」と述べた上で女性監督については「(本人で)間違いない」と断言した。
  虚実どころか、虚に虚が積み重ねられるネットの闇。36人の命が無残に奪われたという事実だけが、厳然とそこにある。(呼称・敬称略)=「恐怖拡散の系譜」おわり
大内清、板東和正、大渡美咲、矢田幸己、桑村大、宝田良平が担当しました。


2023.10.23-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231026-ITLSPL62YNMJTGXOCMINZBR66A/
深刻化する渋谷路上飲み ハロウィン厳戒態勢 区長「渋谷に来ないで」
(大渡美咲)

  週末から本格化するハロウィン期間を前に、毎年多くの仮装者などが集まる東京・渋谷の緊張感が高まっている今年は新型コロナウイルス感染症による水際対策の終了で訪日客が増え、すでに週末深夜の渋谷では「路上飲み」が横行し、ゴミの散乱や騒音などの迷惑行為が深刻化している。27日からは路上飲酒が禁止されるものの、ルールを守らない人も多く、渋谷区や警視庁は警戒を強めている。

  「渋谷はハロウィンイベントの会場ではありません」「ハロウィン目的でハロウィン期間に渋谷駅周辺に来ないでほしい」。月5日、日本外国特派員協会(東京都千代田区)で会見した渋谷区の長谷部健区長は強い口調で呼びかけた。
  渋谷区内ではコロナ禍の落ち着きとともにセンター街やスクランブル交差点周辺で、路上飲みをする若者や外国人が増えた。ゴミの散乱や騒音、路地に座り込んで交通の妨げになるなど、迷惑行為が横行している
  渋谷区は「迷惑路上飲酒ゼロ宣言」と銘打ち、9月1日から渋谷駅周辺で巡回を開始。区によると、路上飲酒の注意件数(9~10月16日)は2418人。うち外国人は1412人に上る
  公共の場での飲酒を禁じている国も多い中、日本で路上飲みをする様子は、交流サイト(SNS)や動画で拡散。「日本の文化」と誤って認識され、路上飲みのために渋谷に集まる外国人もいるという。
  ハロウィン期間中は迷惑行為がさらに悪化する恐れがある。渋谷区によると、令和元年のハロウィンの夜は、約4万人が路上に集まった。コロナ禍で一時、人出は減少したが、今年は同じ規模かそれ以上の6万人が集まる可能性があるという。
  区はハロウィンで飲酒によるトラブルが相次いだことを受け、元年にハロウィン前後の期間に飲酒を禁止する条例を制定したが、罰則はなく、違反行為の中止を求める「指導」にとどまる。そのため、過去のハロウィンではルールを守らず路上で飲酒する人の姿が多くみられた。
  今年は27~31日の午後6時から翌午前5時まで、対象エリアでの路上飲酒を禁止し、付近の38店舗に酒類販売の自粛を依頼。警備員を当初の200人から300人に増強を検討しているほか、区職員約150人も巡回する。区は、外国人に対し「路上飲酒が条例違反であることをしっかり伝えていく」とする。
  警視庁も警備に当たる。平成30年には、ハロウィン前の週末に渋谷区のセンター街で一部の若者らが〝暴徒化〟し、軽トラックが群衆に横倒しにされ、損壊させられる被害が発生した。昨年は韓国・ソウルの繁華街で約160人が圧死する雑踏事故が発生。渋谷でも過去に大勢の人が集まり、将棋倒しとなる危険性もあったことから、人が一カ所に集まらないよう交通整理も実施する。(大渡美咲)


2023.10.16-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20231015-OYT1T50253/
イスラエル ガザに人道危機引き起こすな

  民間人への攻撃や、住民を水も食料もない状況に追い込むような作戦は国際法に反している。イスラエルは、自衛の措置が過剰にならないよう、慎重に対処すべきだ。

  イスラエルが、パレスチナのイスラム主義組織ハマスへの攻撃を激化させている。ハマスが7日にイスラエル南部を奇襲攻撃し、民間人を殺害したり、人質にとったりしたことへの対抗措置だ。市民を狙ったハマスの攻撃や、人質を盾に使おうとする戦術が非難されるべきなのは言うまでもないイスラエルの反撃は正当な権利であり、ハマスの軍事的な無力化を目指すのは理解できる。
  問題は、ハマスが実効支配しているパレスチナ自治区ガザには約220万人が住んでおり、戦闘員と住民の区別がつきにくいことだ。イスラエルは、ガザ北部の住民約110万人に対し、南部に退避するよう通告した。
  イスラエル軍はガザで大規模な地上作戦を行う構えを見せている。退避通告後もガザに残っている人をハマスの戦闘員とみなし、一斉に攻撃するつもりなのか。そもそも、移住先のあてもない100万人を超える人々を短期間で避難させるというのは、無理がある南部に逃れた後、野宿する人が続出し、退避の途中で空爆を受ける例も報じられている。
  国連のグテレス事務総長が、住民の移動について「非常に危険だ。場合によっては不可能だ」と懸念を示したのは当然だガザではすでに、電気や水、燃料の供給が断たれ、入院患者や高齢者、乳幼児らを中心に、多くの人が命の危険にさらされている。このままでは、深刻な人道危機に陥りかねない。
  イスラエルの過剰な報復攻撃やガザでの民間人被害の拡大によって、ハマスに向けられるべき非難の矛先が変わり、国際社会全体で反イスラエルの世論が高まっていく可能性がある。そうした事態は、ハマスの思うつぼであり、イスラエルにとっても得策でないはずだ。欧米諸国は、イスラエルが国際人道法を守るように求める必要がある。
  イスラエルとパレスチナの紛争には長く複雑な歴史があり、一朝一夕には解決できないが、文民の保護という普遍的な規範では歩み寄る余地があるだろう。
  最優先すべきは、ガザへの人道支援だ。国連を中心に、エジプトなどの関係国が協力し、物資の搬入が早期に再開されるよう、外交努力を強めねばならない。


2023.10.14-NHK NEWS WEB -https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231014/k10014221721000.html
「見た目問題」知っていますか?

  まっすぐにこちらを見つめるのは「見た目問題」の当事者の1人です。病気による脱毛や生まれた時からのあざなど、見た目に症状がある人たちをモデルにした写真展が、東京都内で開かれています。

  東京・世田谷区で開かれている写真展は、外見的な症状がある人たちが直面する差別や偏見を「見た目問題」と名づけ、解決に取り組むNPO法人が、化粧品メーカーとともに開いたものです。
  写真のモデルになったのは、生まれた時からほおに「単純性血管腫」という赤いあざがある人のほか、肌や髪の毛など、体の色素が薄い「アルビノ」や、全身の体毛が抜ける「汎発性脱毛症」などの症状がある、いずれも「見た目問題」の当事者5人です。
「見た目問題」とは
  こうした、見た目に症状がある人たちは、海外のデータなどから推計し全国に100万人いるとも言われています。問題の解決に向けた取り組みを行うNPO法人は、就職などで差別を受けたり、好奇の視線を向けられたりするなど、当事者が直面する困難を「見た目問題」と名付け、15年以上にわたって啓発活動や当事者の交流を支援してきました。
  NPOでは、周囲が症状について知らなかったり、考える機会がなかったりするために誤った対応をしてしまうとして、理解を深めるための講演活動などに取り組んでいます。「見た目に問題がある」のではなく「見た目を理由とする差別や偏見などによって生じる問題」があることを伝え続けています。
自分らしい姿 表現する当事者たち
  会場に展示された5人の写真は、色とりどりの衣装を笑顔で身にまとったり、思い思いの表情でポーズをとったりするなど、それぞれが作品の中で自分らしい姿を表現しています。

石山直幸さん
  生まれたときから「単純性血管腫」という境界がはっきりしている赤いあざがあります。治療法にはレーザー治療や皮膚移植がありますが、レーザーでは皮膚の奥の届かない部分は消すことができません。-「写真を撮られること自体が初めてだったのですが、おもしろかったです。克服すると楽しくなるから、苦手なことをやるのが好きなんです。写真を撮られるのは嫌いだけど、やってみようと思って参加しました」
Marikoさん
  全身の体毛が抜け落ちていく「汎発性脱毛症」という自己免疫疾患。-「“髪がない”っていうと笑いの方向にもっていかれたり、バカにされたりすることのほうが多くて、生きづらい面もあります。髪がないことのイメージを変えてもらえたらと思って参加しました」
Masakiさん
  顔のほほ骨やあご骨がうまく形成されない「トリーチャー・コリンズ症候群」で、聴覚障害や呼吸障害などを併発する場合もあります。-「なかなかできない経験で、楽しかったです。最初は緊張感こそあれど、皆さん優しかったので撮影は緊張せずにできました」
神原由佳さん
  生まれたときから、肌や髪の毛など体の色素が薄い「アルビノ」。視覚に障害がある人が多い。-「メイクや衣装選びが楽しくて、気分が上がりました。写真が世に出てどういうリアクションが得られるかわからないなと思いつつも、わからないからこそチャレンジしたいと思いました。まだまだ日本の化粧品の広告はきれいな人や、スタイルがいい人が主だけど、外見に疾患があったり、モデルではない普通の人だったりが、出るのがいいなと思いました」。
粕谷幸司さん
  『アルビノ・エンターテイナー』として活動。-「『こんなに苦しくても強く生きている人がいる』って方向性ではなく、『人と違う見た目の人たちでも自分らしさをとらえて、それぞれがそれぞれなりに生きていくんだよ』っていう、前向きかつ優しいメッセージになると思います。見た人が思う存分、心の底から、きれい、かっこいい、と思ってもらえるといいなと思います」

会場には、大勢の人たちが訪れ、1枚1枚の写真をじっくりと見つめていました。-30代男性(「『見た目問題』を知って考えるきっかけになりましたし、単純に、おしゃれなモデルさんだなという印象を持ちました」-20代女性(「写真がすごくきれいだなと思って、会場に入りました。皆さん笑顔で、輝いていると感じました」)

“見た人が自由に感じてほしい”
  主催したNPO法人「マイフェイス・マイスタイル」代表の外川浩子さんは、顔にやけどのあとがある人との交際がきっかけで、NPOを発足させました。
  今回の写真展の開催にあたり、1番伝えたいことは何かを聞きました。
「マイフェイス・マイスタイル」代表 外川浩子さん-「“こういうことを伝えたい”というのはあまりなくて、見た人が自由に感じてほしいなと思っています。当事者の人たちは、もちろん大変なことを経験してきている方もいますが、この写真を見ると『しんどいことだってあるけど、大丈夫だよ』って伝わるかなと。『見た目問題』を知らなかった方が、写真を見て『すてきですね』と言ってくれることも、とてもうれしいです。難しい問題は抜きにして、すてきな写真を見て“楽しんでほしい”という気持ちの方が強いです」

写真展は今月15日まで、東京・世田谷区の「reload」で開かれています。


2023.10.13-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231013-PPDM24JP7JPZDCE3KEQ37JQ2PQ/
徹底解剖・日本最大級の迷宮「梅田ダンジョン」 地下街と駅前ビルが絡み合う複雑怪奇
(北村博子)

  ショッピングやグルメゾーンの機能を打ち出した本格的地下街が日本に誕生したのは大阪が最初という。現在梅田には3つの地下街があるほか、地下街ではないが、巨大な飲み屋街を地下に持つ大阪駅前ビルも存在感を放つ。立命館大文学部の加藤政洋教授(歴史地理学)や学生らとダンジョンへ。エリアごとに変化する地下街の顔を見た。

多様な表情
  高層ビル群「ダイヤモンド地区」の地下に広がる平成7年開業の「ディアモール大阪」。洋服店や雑貨店約85店が入る。イタリアの街並みをイメージし、モザイクアートが点在する「大人の女性が集う街」だ。
  ここはダンジョンのなかでも難所のひとつ。円形広場から4方向に放射状に通路が伸び、筋を間違えるとスタート地点に戻るしかない。わかりにくさを視覚で体験した。西梅田方面にある「ドーチカ」は南北に走る幹線道路「四つ橋筋」の地下にあり、昭和41年に開業。「通りに大企業があって会社員がよく利用するので親和性の高い店が多いのが特徴。土日は人通りも少ない」と加藤さん。まさに「サラリーマンの街」だ。チケットショップや紳士服店、居酒屋など約55店。「和菓子店なんかもきっと、仕事の手土産用だよね」と推測する。
  一方、梅田の地下街で一番の老舗の「ホワイティうめだ」(同38年開業)は、アパレルやグルメを扱う店を中心に約180店。地下鉄や私鉄の駅、百貨店にも近く、梅田でもっともにぎわう地下街だ。1日約40万人が利用するというデータもあり、年齢、性別、職業、国籍、実にさまざまな人が行きかう。
  東の端は待ち合わせ場所で知られる「泉の広場」。令和元年に〝泉(噴水)〟は撤去され、北側に17店からなるグルメ街「NOMOKA」が新設された。
  以前はもっと大人な雰囲気で、この上にある風俗街やラブホテルの妖しい雰囲気が空気のように流れ込んでくるような場所だった。すっかり浄化されちゃったな」。加藤さんは感性の人だ。
環境を改善
  地下街の成り立ちについてまとめた加藤さんの著書「大阪-都市の記憶を掘り起こす」によると、戦前にはすでに、JR大阪駅中央口から地下鉄などをつなぐ連絡道が完成していた。しかし、終戦後に闇市も見られるなど風紀面で市民から苦情があり、対策が取られるようになった。
  無秩序な店舗の乱立を避けようと、出店には大阪市が地下道の占用許可を出し、昭和20年代に新聞スタンドや老舗串カツ店「松葉」などが開業。同市から占用許可を得た同市民共済会が飲食店業者に「また貸し」する形で、28年に飲み屋街の「ぶらり横丁」が開業したという。
  その頃から都市部では交通量が急増。歩行者の安全と経済の両面を見込んだ地下街事業が本格的に検討され、32年、大阪・難波に試験的に手がけられた「ナンバ地下センター」(現NAMBAなんなん)が人気となる。成功を受けて梅田にも「ウメダ地下センター」(現ホワイティうめだ)が誕生。梅田地下街は生まれるべくして生まれた。

  「地下街」の定義は、公共道路の下にある通路や店舗のこと。ビルの地下フロアは含まないが、大阪駅前第1~4ビルは地下でつながっており、数えてみると4つのビルの地下1、2階の店舗数は計約600店にのぼる。
  居酒屋が多くを占め、左党にとっては天国のような場所。活気があり地元だけでなく府外からもここを目指してやって来る。地下街探索ルートから外すわけにはいかない。ちょうどお昼時。加藤さんは「なんかもう…匂ってきていいやろ。心落ち着くやろ。わかる?」と大阪弁口調で学生らに問いかけた。
  ビルの番号は建てられた順番で昭和45~56年に完成。年季の入ったビル内は細かく区分され、通路に看板がはみ出している。飲食店のほかはマッサージや生花、薬、パチンコ店など。
  加藤さんは「地下2階の方が路地性が高くて狭さがにぎわいを演出している。地下1階は道幅が広くて逆に雰囲気が出ないんだよなあ」と言って笑った。
  加藤さんとともに半日かけて歩いた立命館大の学生に感想を聞いた。横浜市出身の宮原佑成さん(20)は「大阪の地下空間の複雑さは知っていたが、大阪の歴史との密接な結びつきや都市の機能的な部分を担っていることが享受できたのはすごく良かった。飲み屋街の雑多な感じ、商業でにぎわう感じが大阪らしい」
  長野県出身の小松弥生さん(18)は「まずは人と店の多さに驚いた。一つの街だけど変貌がいろいろあって混ざり合っていて面白かった」。小松さんと同郷の加藤さんは「これは日本全国どこにでもある空間ではないことを大阪のみなさんは知らず知らず使ってるっちゅーのはありますね。当たり前すぎてね」。

  梅田の地下が、大阪の「迷所」かつ「名所」であることを再認識した。(北村博子)


2023.09.22-NHK NEWS WEB(NHK 政治マガジン)-https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/102345.html
「ライドシェア」って?なぜ浮上?
(立石顕 山田康博 大江麻衣子 河原昂平 田口めぐみ 竹村雅志)(文中一部敬称略)

  「ライドシェア」という言葉をご存じだろうか?いまこの解禁を求める声が急浮上している。自家用車を使って有料で人を運ぶ「ライドシェア」。一方、タクシー業界などは、安全性などの観点から解禁に反対している。何が起きているのか?(立石顕 山田康博 大江麻衣子 河原昂平 田口めぐみ 竹村雅志)

急浮上 きっかけは“あの人”
 「ライドシェアを含む観光地や地域の交通手段のあり方については、結論を先送りにするべきではない状況になってきている」
  9月7日。前総理大臣の菅義偉は、仙台市で開かれた観光をテーマにした講演会で「ライドシェア」の解禁に踏み込んだ。また、別の日、札幌市での講演会で、元環境大臣の小泉進次郎も、こう訴えた。
 「タクシーが足りなくて困っているのに、タクシー運転手を供給することを阻害する規制が全国の3つの大都市でいまだに存在している。『タクシーかライドシェアか』という二項対立ではなく、選べる社会を作らなければいけない」。
深刻!タクシー不足
  急浮上する「ライドシェア」。背景には、深刻化する“タクシー不足”がある。全国のタクシー会社で働く運転手の数は、ことし3月末の時点で23万人あまり。
  コロナ禍前の4年前からおよそ20%減少している。運転手の高齢化に加えて、新型コロナによる収入の減少などで離職がさらに進んだためとみられている。外国人観光客も戻り、さらなる不足が懸念される中で、解禁を求める声が上がっているというわけだ。
「ライドシェア」とは?
  自家用車を使って一般のドライバーが有料で人を運ぶ「ライドシェア」。日本語で「相乗り」を意味し、アメリカや中国など海外では、さまざまなスタイルで普及が進んでいる。
どんな仕組みなのか?
  例えば、アメリカ大手のシステムはこうだ。車に乗って移動したい人が、スマホのアプリなどを通じ、現在地や行き先を送信。すると、あらかじめ登録している一般の人が自家用車で迎えにきてくれる仕組みだ。
  利用者にとっては、車が捕まえやすく、タクシーよりも割安で利用できるメリットがあるという。また、ドライバーにとっては、自分の車を使って商売ができたり、副業として好きな時間に働ける。
  一方、日本では、ライドシェアは原則認められておらず、過疎地の移動手段確保など「国家戦略特区」として認められた場合などに限って実施が可能だ。
ドライバーは“近所の畳職人”
  「ライドシェア」が行われている数少ない自治体の一つが兵庫県北部の養父市。国家戦略特区の制度を利用し「ライドシェア」を導入している。
  運行は“タクシー空白地帯”となっている山間部のエリアに限定。市街地のタクシー会社などが共同で設立したNPOが運行の管理を行う。ドライバーは特別に許可を得た地元の住民だ。
  現在、登録は11件。利用者と顔なじみのケースもあるという。
  登録している運転手の1人、西垣勲一さん。ふだんは、地元で畳職人として働いている。この日は、なじみの80代の夫婦から配車の予約が入った。出発前、運行の管理者とテレビ電話をつなぎ、チェックを受ける。アルコールチェッカーに息を吹きかけ、呼気にアルコールが含まれていないことを証明するほか、疲れていないかなど体調の確認が必要だ。自家用車で夫婦の自宅に到着し、自宅から車で10分ほどの距離にあるスーパーに送り届けた。
  2人とも、すでに免許を返納している。出かけるときはバスが中心だが、ほぼ1時間から2時間に1本しか運行していない。この日は西垣さんの車で送ってもらい、料金の2500円を払った。利用した 片芝侑弘さん(84)・敦子さん(80)「本当に助かっています。銀行とか役場に行くのも。この年になったらなかなか出る用事はないし、(西垣さんは)ご両親もよく知っていますしね。車内で話しながら出かけるのを楽しんでいます」ドライバーとして登録する 西垣勲一さん「生まれも育ちもここです。小さいころから知っている人を乗せると、まだ『大きくなったな』と言われる感じで。室内で畳の仕事をしているので、携帯で配車の依頼があったら、仕事をいったん中断して迎えに行くのがいつもの動きです。お小遣い稼ぎにはなるかなくらいですが、やりがいはあります」
タクシー業界は解禁に反対
  一部の地域で特例として認められているライドシェア。さらなる解禁をめぐって、タクシー業界は反対の姿勢だ。業界団体の全国ハイヤー・タクシー連合会は、「安全と安心が担保された輸送サービスの提供が地域公共交通としてのタクシーの役割だ。安全・安心に関する問題点が多いライドシェア解禁は、日本における輸送サービスの根幹を揺るがす」としている。
タクシー会社「プロでこそ」
  東京・文京区に本社がある大手タクシー会社では、タクシーの運転手不足を少しでも解消しようと、採用に力を入れている。最近3か月の採用人数は、毎月50人あまり。コロナ禍前の2019年に比べて、2倍以上だ。さらに、プロならではの安全管理に力を入れている。安全に対する意識を徹底するため研修は2か月あまりに及ぶ。「オイルは異常なし!ウォッシャー液は適量!」基本としてたたき込まれるのが、出庫前の点検だ。アルコールの呼気チェックのほか、タイヤの空気圧やオイルの量など20項目あまりを確認し、確認作業には10分ほどかけるという。
  (日の丸交通 富田和孝社長)「ライドシェアについては反対です。私たちの強みは安全性です。しっかりと面接して教育にも2か月くらい時間をかけていますので、そういったことがライドシェアには難しいと私どもは思っています」。
街の人は・・・街で聞いてみると、規制緩和に賛成の声もある一方、安全への不安も根深いことが分かった。(賛成)「タクシーがもう限界。これから海外の人がいっぱい来るわけでしょ。そうすると必要性があると思う。便利にするために解禁していかないと」(反対)「便利かもしれないけど、事故にあったりとかの補償とかそういうところが難しいかなと思う」
議論はどこに向かうのか?
  急浮上する「ライドシェア」。タクシー業界を支援する自民党の議員連盟からは、まずはタクシー運転手の確保に向けて処遇改善に取り組むべきだなどとして慎重な声が出ている。野党内にも賛否両論があり、今後、議論が活発になる見通しだ。松野官房長官は記者会見で、丁寧な議論が必要だという認識を示した。

  「運行管理や車両整備の責任を負う主体を置かないまま、自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態を前提とする、いわゆる『ライドシェア』は、安全の確保や利用者の保護などの観点からさまざまな課題がある」
  インバウンド需要が回復し、さらなるタクシー不足が懸念される中、どう移動手段を確保するのか。一方で、安全性の確保や、タクシー運転手の雇用維持といった課題にどう向き合うのか。議論の行方を追っていきたい。(文中一部敬称略)


2023.09.24-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/national/20230924-OYT1T50086/
キタキツネの目撃、札幌の市街地で相次ぐ…「エキノコックス」症の感染拡大に警戒高まる
(林麟太郎)

  札幌市の市街地で、キタキツネの目撃が相次いでいる市内には身を隠せる大規模公園が点在する上、野ネズミや生活ごみなど餌に困らない環境があるようだ。ただ、キツネはエキノコックス症を媒介する恐れがあり、共存のあり方が課題になっている。(林麟太郎)

過ごしやすい場所
  住宅地に囲まれた札幌市清田区の平岡公園。管理事務所によると、6月頃は、巡回で週1、2回ほど姿を見かけたといい、夏場も公園近くの道路や園内で出没が確認されたという。
  園内の遊具で子どもと遊んでいた同区の製造業男性(30)は、「夏場、住宅街をまるで野良猫のように歩いていた。子どもには近づかないように言っている」と話す。
  キツネは本来、主に里山で生息する。一方、市内には自然豊かな公園など身を隠せる場所が多い上、園内には野ネズミや野鳥などがおり、園外には市民が出す生ごみがある。
  里山のようにワシやフクロウなどの天敵に襲われるリスクも少なく、キツネにとって都市部は過ごしやすい場所ともいえる。唯一の天敵といえるのが車で、市によると、市内でのキツネの交通事故死(ロードキル)は、2005年度は31匹だったが、22年度は過去最多の293匹を記録した。
餌やり後絶たず
  キツネの目撃例が相次ぐようになったのと同じく、市民らによる餌やりも後を絶たない。道内では年に20人ほどのエキノコックス症患者が報告されているが、キツネとの接触機会が増えれば感染のリスクは高まる。各地ではエキノコックスの駆虫薬を使った感染対策が取られている。
  広大なキャンパスを持つ北海道大は、14年から駆虫薬入りの餌をまき、キャンパス内で見つかったキツネのフンにエキノコックスの卵があるかどうかを調べている。散布直前は採取したフンの53・4%から卵が見つかっていたが、散布後の16年以降はほぼゼロに。同様の取り組みは中札内村やニセコ町でも、町村ぐるみで行われている。
駆虫薬 市は否定的
  一方、札幌市は「まずは市民に残飯の管理や手洗いの徹底をしてもらいたい」として駆虫薬対策には否定的だ。平岡公園や月寒公園など一部の公園では駆虫薬を導入しているが、いずれも指定管理者が実施し、行政として取り組んでいるわけではない。市によると、キツネは鳥獣保護法による保護対象動物のため、積極的に駆除することもないという。
  キツネの生態に詳しい北大大学院教育推進機構の池田貴子講師は「市街地から追い出すことは現実的でなく、街にすむキツネをエキノコックス症に感染させないことが重要だ。各団体の管理方針に任せるだけではなく、行政が主体となって管理していく必要があるのではないか」と指摘する。

◆エキノコックス症
   寄生虫のエキノコックスによる感染症で、キツネや犬のフンに含まれる卵を水や食べ物などを通じて摂取することで感染する。エキノコックスは主に肝臓や肺に寄生して肝障害などを引き起こし、患部を切除するしか根本的な治療法はない。感染対策には、外出後の手洗い、山菜や生水の加熱などが挙げられる。


2023.09.19-DIAMOND on line-https://diamond.jp/articles/-/329260
中国「一帯一路」からイタリアが離脱?求心力低下で高まる台湾有事のリスク
(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
(1)
  中国経済が不動産バブルの崩壊やデフレの進行で低迷し、「一帯一路」構想への懸念が高まっている。9月9日、イタリアのメローニ首相は、中国に「一帯一路を離脱する意向を伝えた」と報じられた。今後そうした国は増えるかもしれない。中国政府にとって国際社会における求心力の低下は一大事であり、習近平政権は国民の目を台湾併合へ向ける可能性も懸念される。日米欧は、インド太平洋への艦船派遣などに加え、AI(人工知能)など成長分野で連携を強化すべきだ。経済安全保障に関わるデータが中国に流出しないよう、規制や制裁を強化する動きにも注目したい。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

独、伊が「中国依存度」を弱める動き
 「一帯一路」に慎重になる国が増えている 
  中国経済がかつての勢いを失っていることで、世界の勢力構図に微妙な変化が出始めている。これまで中国依存度の高かったドイツでは、少しずつではあるが中国依存度を弱める動きがみえる。
  また、イタリアのメローニ首相は「“一帯一路”の構想に参画しなくても、中国と良い関係を目指すことは可能」と述べ、一帯一路離脱の可能性を示唆。9月にはタヤーニ外相が一帯一路に対して、「期待した成果をもたらさなかった」と踏み込んだ。 アジア諸国の中にも、中国の南シナ海での拡張主義に対して明確に批判する声が出ている。さらに、対中国政策の修正を検討する新興国も目立つようになった。
  中国は不動産バブルが崩壊し、従来型の経済運営が限界を迎えていることが明らかだ。世界の経済環境の厳しさも増しており、国際社会の中国に対するスタンスは少しずつ変わり始めている。
  今後、一帯一路への参加継続に慎重になる国は増えるかもしれない。中国政府にとって重要な政策である一帯一路の、実効性に疑問符が付くことは、政権の求心力にも負の影響を与える。それを防ぐため、習近平政権は国民の目を台湾併合へ向ける可能性も懸念される。国内世論を味方につけようと、中国が海洋進出などを強化する可能性は排除できない。
(2)
習近平主導でアジアインフラ投資銀行が発足
 一帯一路の参加国は130超えといわれたが…
  習近平国家主席が一帯一路の構想を発表したのは2013年9月のこと。構想の主な目的は、中国から欧州を陸路と海路で結び、沿線国との貿易、投資、人的交流を強化し、中国主導で世界経済の成長性を高めることだった。
  同年10月、APECサミットで習氏は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立も表明。これにより一帯一路の沿線各国のインフラ投資資金を提供する体制を強化した。習氏の狙いは、IMFなど米国の影響力の強い国際金融機関に匹敵する組織を設立することであり、中国が世界経済をけん引する考えをより強く世界に示した。

  このAPECサミットを、当時の米大統領・オバマ氏は欠席した。その分、一帯一路やAIIBを提唱した中国の存在感は高まった。ほぼ同じタイミングで、オバマ政権の対中政策への懸念も高まった。同年6月に、習氏が「協力して新しい世界秩序をつくるべきだ」とオバマ大統領に伝えていたからだ。
  同年11月、国家安全保障を担当したライス大統領補佐官は、「米中は対等であり、政治、経済、安全保障面の台頭を容認する」とも解釈できる講演を行った。米国でさえ中国の勢いを止められず、米中経済の逆転は時間の問題との見方が一段と増えた
  少し進んで15年3月英国はAIIBへの加入を表明した。追いかけるようにドイツ、フランス、イタリアもAIIBに参加した。16年頃まで、中国から一帯一路参加国への融資残高が増加した。19年、イタリアはG7で唯一、一帯一路に参加した。中国主導で進む広大な経済圏の成長を取り込もうとする考えは高まり、参加国は130を超えたといわれた。
  13年当時、米国の経済成長率が2%ほどだったのに対し、中国は8%前後と高かった。人間はこれまでの記憶を頼りに将来の展開を予想するものだ。中国経済の高い成長は続くとの期待が高まり、一帯一路に参加する国が急増したのは自然な流れだったといえる
(3)
中国で不動産バブル崩壊
 一帯一路沿線国に支援は難しい状況に
  ところが、17年頃からAIIBの融資残高は伸び悩んだ。そして20年以降は一帯一路の沿線国で対中債務の焦げつきも発生した。「経済面で中国が支援してくれる」との潜在的な期待はしぼんでいく。
  中国国内は不動産バブルの崩壊によって景気が低迷し、一帯一路の運営に多くの資金などを振り向けることが難しくなっていた。20年8月、共産党政権は「三道紅線」(三つのレッドライン)と呼ばれる融資規制を導入し、不動産市況は急速に冷え込んだ。地方政府の財政は悪化し、景気対策の発動も難しくなった。
  これを受けて、地方融資平台(地方政府傘下にある、資金調達とデベロッパーの機能を兼ね備えた投資会社)をはじめ、そのローンを組み入れた信託商品や理財商品に対するデフォルト懸念は高まっている。雇用環境の悪化に不満を募らせた人民のデモも起きた。こうした状況もあり、習主席は9月のG20サミット出席を見送らざるを得なくなったはずだ

  共産党政権はデフレ圧力の高まりなど国内経済の落ち込みの厳しさにようやく気付いたのだろう。不動産業界や地方融資平台の不良債権の処理を大規模に進めるのは容易ではない。景気持ち直しの道のりは険しく、本格的な回復には時間がかかる。中国が一帯一路沿線国に、より手厚い支援を提案することも難しい状況だ。
  実際、融資の遅れなどが響き、インドネシアの高速鉄道建設は当初予定より5年遅れた。中国の支援ありきで進む新興国のインフラ建設は、これまで以上に遅延するケースが増えるだろう。
  工期が長引くことで資金繰りが行き詰まる案件も増えるはずだAIIBをはじめ、一帯一路に参画してきた中国の金融機関が担保を差し押さえ、債権回収を急ぐことも予想される。
(4)
国際社会における中国の求心力が低下
 回避のため中国が拡張主義を強める可能性も
  9月9日、イタリアのメローニ首相は、G20サミットに出席した中国の李強(リー・チャン)首相に「一帯一路を離脱する意向を伝えた」と報じられた。中国の景気低迷が長引くとの懸念がかなり強かったようだ。イタリアは、日米などとの連携を強化する姿勢を明らかにしている。台湾問題やインド太平洋地域の安定は、世界経済に大きく影響する。
  イタリアの国民や企業に関するデータが中国に流れる恐れも高まっている15年、イタリアの大手タイヤメーカーのピレリが、中国の中国化工集団(ケムチャイナ)に買収された。その後、半導体分野での米中対立が先鋭化したこともあり、メローニ政権は自国企業のデータが中国に流出するリスクを抑えるため、ピレリに対する中国企業の影響力を制限した。

  イタリアは、是々非々の姿勢で中国との関係維持を目指しているようだ。自国や同盟国の経済安全保障にかかわる分野では、日米などと連携を強化するそれ以外の民間レベルで協力できる分野では、中国と過度な対立を回避しつつ可能な範囲で貿易や投資を促進する――。このような考えに基づき、経済面で中国を重視した政策を見直す国は増えるだろう。
  中国は一帯一路のビジョンを世界に提示し、中国流の経済運営への賛同を取り付けようとしてきたが、景気低迷や世界経済の変化によって一帯一路構想の魅力はうせた。国際社会における中国の求心力は以前に比べて低下している。
  今後、求心力の低下を回避するため、中国政府が一段の海洋進出を目指す可能性は否定できない。それに対して主要先進国は、中国の拡張主義に対する警戒感を強めているインド太平洋への艦船派遣などに加え、AI(人工知能)など成長分野で日米欧は連携を強化すべきだ経済安全保障に関わるデータが中国に流出しないよう、規制や制裁を強化する動きにも注目したい。中国にとって、国内外で一段と厳しい状況に直面する可能性もありそうだ。


2023.09.17-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230917-TX75KG2CA5NIVFS2XQYMM4Y6QA/
(942) ジャニーズ大炎上、企業の「手の平返し」を突く『新潮』

  今になって掌(てのひら)を返し、競ってジャニーズタレントのCM中止などを打ち出している有名企業に違和感を覚える。サントリーホールディングスの新浪剛史社長など、ジャニーズ事務所の「対応が不十分」「使うことは虐待を認めることになる」とまで。

  じゃあ、サントリーの広告部員たちはこれまでジャニー喜多川氏の性癖について、全く知らなかったのか。そんなハズはあるまい。さすが『週刊新潮』(9月21日号)、そういう世間の気分を実にうまく摑(つか)まえる。
  「『ジャニーズ大炎上』何をいまさら『人権』『正義』の大合唱」「ジャニーズ性加害問題当事者の会」平本淳也代表もこう言う。
  〈「ジャニーズ事務所に所属するタレントたちには何の罪もないのに、手の平返しで彼らの起用を止めることについては、即刻中止して欲しいです。タレントたちの起用を止めたり契約を打ち切るのは、それこそ人権侵害だと思います」〉
  〈「特に日本人は右に倣えで、あそこがやったからうちも、となりがちですが、〝恥ずかしくないのか〟と言いたい。(中略)人権、コンプライアンスなどと言いながら何の関係もないタレントに罪を負わせているだけ」〉まさに正論。企業の社長たちに聞かせたい言葉だ。
  岸田文雄首相が内閣改造を発表したとたん、『週刊文春』(9月21日号)は、「内閣改造〝失敗の核心〟小渕優子がドリル秘書不動産会社に政治資金1200万円を還流させている!」。改造で小渕氏が入閣か党役員との噂は早くから出ていたので、『文春』は狙いすまして取材していたのだろうが、これはやや無理筋。
  「政治資金」というとかならず出てくる上脇博之神戸学院大教授でさえ、〈「政治的・道義的に不適切」〉としか言えないようだ。そういえば『文春』、今週号からモノクログラビアがなくなったのは寂しい。さるカメラマンが嘆いていた。「ネットで使ってくれても1枚3000円。しかも使い放題。商売になりませんよ」


2023.09.17-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230917-5HMA6FTSOZHUTFLGCIH3L7JNDM/?outputType=theme_weekly-fuji
朝日新聞の注目インタビュー「台湾有事は起こらない」との言質掲載 八木秀次
(麗澤大学教授)

  最近、中国の台湾侵攻の可能性に関して、「台湾有事は起こらない」との言論が形成されようとしている。朝日新聞は先週相次いで2人の識者インタビューを掲載した。

一人は元駐中国大使の宮本雄二氏(6日付)。
  宮本氏は、東京電力福島第1原発の処理水問題について、中国は外交カードと考え、放出に反対する国際世論の形成をもくろんで拳を振り上げたが、計算が狂ったと解説する。また、不動産市場冷え込みなどによる経済停滞、8月の洪水への対応などで政府への不満が大きくなっており、処理水問題で批判の矛先を日本に向け、不満の「ガス抜き」とした可能性に言及する。そのうえで、「ただ、対日関係を改善させるという習(近平)政権の基本政策は変わっていない」と強調する。
  宮本氏は8月24日に、岸田文雄首相と首相官邸で面会した。新刊『2035年の中国』(新潮新書)を送ったところ、「会いたい」と言われたとのことだ。その際、今の日本の外交・安全保障政策の基本は維持しつつ、「中国との関係を重視する姿勢も折に触れて示すべきだ」との考えを伝えたという。
  岸田首相は先日の東アジアサミットで、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領有に関係する問題で中国の名指し批判を避け、同時に中国との「建設的かつ安定的な関係」を目指すと説明した。宮本氏の助言が影響を与えたかは不明だ。
  最後に宮本氏は台湾有事について、「そこまで心配する必要はない」とし、理由を述べる。
  「中国は、圧力をかけてくる米国に対抗しなければならないという意識は強い。だが、台湾の大部分の住民は、400~500年前に今の福建省から移り住んだ移民だ。有事となれば、同じ漢民族同士が殺し合うことになる。台湾が独立に動かなければ、習政権が台湾を攻撃する内政上の必要性はない」
  むしろ米国や台湾の自制が必要との考えだ。
もう一人は、拓殖大学海外事情研究所客員教授の武貞秀士氏(7日付)
  いわく、「中国は世界覇権を握ることを最大の目標とする。米国は台湾有事は大いにあり得ると主張するが、中国は世界の覇権を握るためにグランドデザインを描き、様々な布石を打ってきたにもかかわらず、台湾侵攻で国際的に孤立し、その野望がついえてしまうことはまっぴらごめんだと考えている。中国の習近平国家主席はそれをウクライナ戦争を始めたロシアのプーチン大統領から学んでいる」。
  ウクライナ侵攻で局面が変わり、台湾有事の可能性はなくなったというものだ。
  れらの言論は中国への警戒心を解き、日本の防衛力強化や領土保全の意志を弱める効果をもたらす。ここに中国当局の影響力行使はあるのか。
(麗澤大学教授)


2023.09.13-NPO法人国境なき子供たち-https://gooddo.jp/magazine/add/knk
父の暴力から逃げて、僕はストリートチルドレンになった

  「ストリートチルドレン」と聞いて、あなたはどんな子どもたちを想像しますか?海外を旅行した際にストリートチルドレンから物乞いをされたことがある、そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
  世界中には1億人とも、1億5千万人とも存在していると言われています。そんな子どもたちは、生まれながらにストリートチルドレンなのでしょうか。
ストリートチルドレンは、どうやって大人になってどうやって生きていくのでしょうか。ストリートチルドレンとして暮らす子どもたちが「希望を持てる未来」を手に入れるために、日本から、私たちはいったいどのようにしたら良いのでしょうか。

9歳の少年が「父からの暴力」から逃れた先で見た光景とは
  バングラデシュの首都ダッカ。人口は2,100万人以上いる、世界でも有数の大きな都市です。「9歳」と話す少年ショヘル。しかし、ショヘルは自分の本当の誕生日を知りません。彼が住むのはダッカの船着場です。いわゆる「ストリートチルドレン」であるショヘルですが、生まれた時からそうだったのでしょうか?「小さい頃はここからずっと遠くの川のそばで、お父さんとお母さんと兄弟と一緒に暮らしていたよ」・・・そこでの暮らしでは、父親からの暴力が日常的でした。ショヘルが暴力を受けると母親からは「悪い子だから殴られるのよ」と言われていました。・・・ショヘルは「じゃあ、お母さんも悪い子だから殴られているの…?」と思いました。
  ある夜、家から締め出されたショヘルは、泣きながらダッカ行きの船に飛び乗りました。朝になるとダッカの船着場についていました。昨日から何も食べていないショヘルはお腹をすかせていました。すると店で働いていたショヘルと同じ年頃の子がご飯を分けてくれました。よく見るとダッカの船着場にはショヘルのような子どもたちがたくさんいました。それぞれが、様々な仕事をしながら暮らしているようです。ここからショヘルのストリートチルドレンの日々が始まりました。
バングラデシュの貧困格差の問題と子どもたちの現状とは?
  バングラデシュは、世界でも貧しい国のひとつと言われています。日本の国土の4割程度の大きさながら、人口は1億6千万人以上と人口過密の状態です。またバングラデシュ国土の大部分は低地になっており、洪水などの自然災害により常に甚大な被害を受けることが多くなっています。
  近年では、経済成長もあり貧困率は過去と比べると減少傾向にあるものの、都市部と農村部の格差は依然大きいままです。
仕事を求め、都市部へ人口が流れていますが、スラムや不法居住地で生活する貧困層家庭では、子どもたちが家庭を支えるため学業をあきらめ働かざるをえない状況になっています。
  しかも、彼らが就職できるのは日雇いなど給料が低かったり雇用契約がない状態だったりと、劣悪な環境での仕事場がほとんどです。つまり、都市部へ出たところで貧困から抜け出ることは難しく、世代を超えて貧困が繰り返されてしまいます。
  ストリートチルドレンも同様に、必要な教育を受ける機会もなく、薄給で劣悪な環境で働かざるを得ず、将来もその延長線上での生活となることがほとんどです。理由は様々ですがショヘルのようなストリートチルドレンは、首都ダッカに30万人ほどいると言われています。
ショヘルに「一緒においで」と声をかけたのは…?
  ショヘルは船に乗る人の荷物を運んでお金をもらっていました。そのお金でご飯を食べ、夜はそこらへんで眠る…そんな日々を過ごしていました。他の子どもたちと川に入って遊ぶこともありましたが、船に挟まれて亡くなる子も少なくありませんでした。
  泥棒と間違われることも、ボスからは稼ぎが少ないことで叩かれることも、寝ている間にお金をとられることもありました。「でも、僕はさみしくない。誰にも頼らずひとりで生きていくんだ」そう自分に言い聞かせていました。
  そんなある日、お兄さんから「子どもたちがご飯を食べて遊べる場所があるから一緒においで」と声をかけられました。数人の子どもたちと一緒に向かったのは、認定NPO法人国境なき子どもたちが運営する「ほほえみドロップインセンター」というところでした。
  そこには多くの子どもたちや、子どもたちに授業などを行う先生がいました。「どうして人のものを盗んじゃいけないのか」という話を先生がしたり、絵の授業があったり。・・・ショヘルは絵を書くことが好きでした。「お父さんとお母さんの絵を描いたら、上手だねって褒められちゃった」・・・みんなでご飯を食べて、お腹がいっぱいになったらいつの間にか眠っていました。シャワーを浴びたあと、ずっとかゆかった背中に、薬を塗ってもらいました。ショヘルの背中は皮膚病になっていたのです。
  ショヘルは先生にお父さんとお母さんのことを話しました。「ふたりとも僕が悪い子だから、僕のこと好きじゃないんだ」 すると先生は「ショヘルはとっても良い子だよ。先生も友だちもみんな君のことが大好きだよ」と言って、ショヘルをぎゅっと抱きしめました。ショヘルはその夜、家を出てから初めて、朝までぐっすり眠ることができました。
  「ここでは、お兄さんたちはいい仕事に就くために勉強してる。いつか僕もいい仕事をして、お父さんとお母さんの自慢の息子になりたい。みんなでご飯を食べてたくさん笑って、一緒に眠るんだ」
「国境を越えてすべての子どもに教育と友情を」届ける国境なき子どもたちの活動とは?
  ショヘルのようなストリートチルドレンを対象に、食事や日中の睡眠場所の提供、教育クラスの提供などを行うドロップインセンター。運営しているのは、認定NPO法人国境なき子どもたち(KnK)です。
  ダッカでは、2020年は延べ約7,000人以上の子どもたちが「ほほえみドロップインセンター」を利用しています。年齢も様々で6~16歳の子どもたちが、一日40人以上訪れています。2011年に開設された「ほほえみドロップインセンター」は2021年9月で10周年を迎えました。
  センターでは、食事の提供・教育機会の提供・職業訓練(準備中)・寝床の提供などを行っています。

「国境なき子どもたち」が目指すのは、子どもたちの自立ではありません。何故なら、すでに子どもたちは自分の力でなんとか生計を立てて、自立しているからです。
家庭の貧困、親または親子間の問題、例えば、親からの虐待、親の再婚、親の死、親とのけんか、親からの仕事の強要がきっかけとなり家を飛び出してきたケース…様々な理由により子どもたちはストリートチルドレンとなっています。
  ストリートチルドレンは、自分たちで仕事をしながら路上で生活をしており、一見問題なく生活できているように見えることもあるかもしれません。しかし、ストリートチルドレンは多くの危険と隣り合わせで生活をしています
  ・寝ている間にお金を盗まれる・警官にぶたれる・人身売買・給料未払いや不当な賃金での労働・交通量の多い路上での労働・・・また、子どもたちの多くは、裸足で生活しているため、足裏の傷が絶えません。擦り傷、切り傷、打撲。また、栄養不足や不衛生な路上での生活が原因による皮膚病などが上げられます。その他、空腹や傷の痛み、孤独などの気持ちから逃れるため、シンナーやドラッグを使用している例が少なくありません。
  「国境なき子どもたち」は、それらの危険から子どもたちを守るため、そして何より子どもたちが「子どもらしく過ごせる場所」を提供しています。嬉しいことがあったとき、悲しいことがあったとき…何もないけどなんとなく甘えたいとき。子どもたちには、そんな時にそばに安心できる大人がいるということは、何よりも大切なのではないでしょうか。ひとりで生きていくのではなく「困ったときは誰かに頼ってもいい」「みんなで支えあって生きていく」ことを子どもたちに伝えているのです。

  日本のように比較的安全で守られた暮らしをしている子どもたちが多くいる一方、ショヘルのように世界にはストリートチルドレンとならざるを得なかったり、人身売買の被害にあってしまったり…様々な困難な状況下にいる子どもたちも大勢います。そして彼らは自分たちの力だけでは、困難な状況から抜け出すことは非常に難しいのです。
  ストリートチルドレンは、場合によっては「怖い」と思われてしまうこともあるかもしれませんが、「今日は何して遊ぼう?」と考えたりする、日本にいる子どもたちと変わりません。
  バングラデシュだけでなく、日本も含む7ヵ国(地域)で子どもたちのために活動する「国境なき子どもたち」。国境を越え、ひとりでも多くの子どもたちに安全で安心のできる居場所や必要な教育、就労環境改善など共に成長していくための活動をしています。
  支援にかかる費用は、サポーター企業であるgooddo()が負担するため、あなたには一切費用はかからず個人情報なども必要ありません!
  
※gooddo株式会社は、株式会社セプテーニ・ホールディングス(東京証券取引所JASDAQ市場上場)のグループ会社


2023.09.09-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230909-TKMS4NIXL5OQFI5TZAUTP4JYFY/
レジオネラ属菌の基準値超え見落とし 宮崎市、宿泊施設の浴場巡り

  宮崎市は9日、市内の宿泊施設からの昨年7月の報告で、浴場で基準値を超えるレジオネラ属菌が検出されていたのを見落とし、1年以上にわたり、必要な指導をしていなかったと発表した。現在のところ健康被害は確認されていないという。

  市保健衛生課などによると、市内の宿泊施設「AOSHIMA SUIKOEN」は、令和4年7月29日に水質検査の結果をFAXで提出。基準値を5~2倍超えていたが、施設の担当者は提出時には気付いていなかったといい、保健所の担当者も見落とした。
  市が今年8月28日に気付き、施設に浴場の使用停止を依頼して立ち入り調査を実施。水質検査の結果、基準値の13~10倍のレジオネラ属菌が検出された。


https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/60/nfm/n_60_2_7_2_2_2.html
外国人犯罪の動向

(1)外国人犯罪と刑事手続・退去強制手続の概要
  外国人による犯罪についての刑事手続は,日本人による犯罪の場合と異なるところはない。しかし,検挙された外国人が入管法上の退去強制事由に該当する場合には,同時に,退去強制手続の対象にもなる。退去強制手続は,刑事手続とは別個の行政手続であり,刑事手続の進捗状況にかかわらず,退去強制令書の発付までは退去強制手続を進行させることもできるが,刑事手続が先行する場合が多い。犯罪を行った外国人が検挙された場合における刑事手続及び退去強制手続の流れ。

退去強制事由に該当する者としては,
  <1> 不法入国者,不法上陸者,不法残留者等,出入国管理秩序に違反する者
  <2> 一定の刑罰法令違反者や売春等の反社会的行為者
  <3> 外国人テロリストや暴力主義的破壊活動者のほか,法務大臣が我が国の利益又は公安を害する行為を行ったと認定する者
  等が入管法で定められている。前記<2>のうち,一定の刑罰法令違反者とは,
  ・ 薬物事犯等により,罰金以上の刑に処せられた者
  ・ 無期懲役又は1年を超える懲役・禁錮の実刑に処せられた者
  ・ 活動資格を有する者で,殺人・傷害等の粗暴犯,窃盗等の財産犯,偽変造に係る犯罪等により,懲役・禁錮の刑に処せられた者
  ・ 中長期在留者で,虚偽届出等の罪により,懲役刑に処せられた者
  等をいい,これらの刑の言渡しが確定すれば,退去強制事由に該当する。
  なお,退去強制事由に該当する場合であっても,法務大臣は,特別に在留を許可すべき事情があると認めるときは,在留特別許可を与えることができ,当該許可を受けた外国人は,引き続き本邦に居住することができる。そのため,不法在留者,薬物事犯で有罪判決を受けた者,1年を超える懲役・禁錮の実刑に処せられた者等でも,在留特別許可により,退去強制されない場合がある。
  以下この項で,各種統計資料に基づき,我が国における外国人犯罪の動向を処遇段階ごとに概観する。それに当たっては,グローバル化に伴い来日した外国人による犯罪の特色や時代の推移による変化を見る必要があることから,主として,特別永住者や永住者等を含まない「来日外国人」に係る統計資料によることとする。ただし,来日外国人に係る統計数値が得られないものや永住者を含む動向を見る必要がある場合には,「外国人」に係る統計によることとする。
(2)補導・検挙
 ア 一般刑法犯
  ア)全体の動向来日外国人による一般刑法犯の検挙件数及び検挙人員の推移(平成元年以降)を見るとともに,一般刑法犯全体の検挙件数(総検挙件数)又は検挙人員(総検挙人員)に占める来日外国人の検挙件数又は検挙人員の各比率(来日外国人比)の推移を見たものである
  一般刑法犯については,近年,総検挙件数及び総検挙人員が減少傾向にある中で,来日外国人の検挙件数は平成17年をピークに減少し続け,検挙人員も16年をピークに減少傾向にある。総検挙件数に占める来日外国人の比率も17年をピークに低下し続けているが,総検挙人員に占める来日外国人の比率は,過去20年間を通じて大きな変動はなく,おおむね2%前後で推移している。
  平成14年及び24年における来日外国人による一般刑法犯検挙件数の罪名別構成比。いずれの年も窃盗が圧倒的に高い比率を占めているが,24年は,14年と比べ,窃盗の比率が13.4pt低下し,傷害・暴行の比率が5.4pt上昇している。
  地域別ではアジアが,国籍等別では中国(台湾及び香港等を除く。)がそれぞれ最も高い割合を占めている点に変わりはないが,24年は,14年と比べ,ベトナム,韓国及びフィリピンの占める割合が上昇している一方で,ブラジルが約2割から1割弱に低下し,14年では2割近くを占めていたトルコが24年には1%にも満たないなど(CD-ROM参照),国籍等によっては変動が認められる。
  来日外国人による一般刑法犯検挙人員の在留資格等別構成比の推移(平成10年以降)は,12年から正規の在留資格を有する者の占める比率が上昇し,20年以降は9割以上が正規滞在者である。また,「日本人の配偶者等」を含む「その他」の正規滞在者の比率が上昇傾向にあることが特徴的である。なお,「日本人の配偶者等」の検挙人員を把握し得る21年以降では,いずれの年も「その他」の正規滞在者のうち約半数が「日本人の配偶者等」の者であった(警察庁刑事局の資料による。)。
  窃盗の総検挙件数が減少し続けている中で,来日外国人による窃盗の検挙件数も,平成17年をピークに一貫して減少している。主な手口別で見ると,空き巣,車上・部品ねらいが減少傾向にあるほか,自動販売機ねらい及びすりが激減し,すりは22年以降50件未満で推移している。自動販売機ねらいは,16年には7,000件台に達し最も多い手口であったが,23年以降は1件もない。他方,自動車盗及び万引きは,おおむね横ばいで推移しており,24年では,万引きが,17年以降最も多かった空き巣を上回り,最も検挙件数の多い手口となっている。万引きが約3割と最も高く,次いで,空き巣,自動車盗,車上ねらいの順であった。
  窃盗について,同年における日本人を含む全体の検挙件数の手口別構成比では,万引きは34.1%と来日外国人と同程度の割合であるものの,空き巣の割合が7.8%,自動車盗の割合が2.6%にとどまっている(警察庁の統計による。)。これらと比べると,来日外国人は空き巣及び自動車盗の割合が顕著に高いのが特徴である。
  また,平成24年における来日外国人による窃盗について,検挙人員一人当たりの検挙件数は2.93件であり,日本人を含む検挙人員全体の場合(1.86件)に比べて多かった(警察庁の統計による。)。

  来日外国人による窃盗の検挙件数の国籍等別構成比を総数と主な手口別に見た。窃盗全体では,中国(台湾及び香港等を除く。以下本項(2)(イ)において同じ。)が約4割を占めて最も高く,次いで,ブラジル,ベトナムの順であった。主な手口ごとに見ると,侵入窃盗では,中国が約7割を占め,窃盗全体における中国の構成比より著しく高い。自動車盗ではブラジル,万引きでは中国とほぼ並んでベトナムがそれぞれ最も高かった。

  主な国籍等ごとに平成24年における手口別構成比を見ると,中国では,空き巣,車上ねらい及び万引きがそれぞれ2割前後を占めており,多様な手口にわたっている。ベトナムは約8割が万引き,韓国は約半数が空き巣,ブラジルは約4割が自動車盗,車上ねらい及び部品ねらいの車両関連の窃盗であるなど,国籍等によって特定の手口に偏っている(警察庁刑事局の資料による。)。
 (ウ)窃盗以外の主な一般刑法犯
  来日外国人による窃盗以外の主な一般刑法犯の検挙件数の推移(最近10年間)を見たものである。傷害・暴行及び詐欺がおおむね増加傾向にある一方で,強盗及び文書偽造が減少傾向にある。
 イ 特別法犯 
 ア)来日外国人による特別法犯(交通法令違反(平成15年までは交通関係4法令に限る。)を除く。以下この項において同じ。)の送致件数及び送致人員の推移(平成元年以降)を見るとともに,特別法犯全体の送致件数(総送致件数)又は送致人員(総送致人員)に占める来日外国人の送致件数又は送致人員の各比率(来日外国人比)の推移を見たものである
  来日外国人による特別法犯の送致件数及び送致人員は,いずれも平成16年に過去最多数を記録した後,減少し続けており,総送致件数と総送致人員に対する各来日外国人比はいずれも低下している。
   (イ)主な特別法
     来日外国人による特別法犯の送致件数について,主な罪名・罪種ごとの推移(最近10年間)を見ると,入管法違反の送致件数は,平成17年から減少に転じ,以降,大幅に減少を続けている。これは,例年,入管法違反に占める不法残留の割合が著しく高いところ,16年以降,不法滞在者に対する取締りが強化されるなどして不法残留者自体が大幅に減少したことや入管法65条に基づく身柄引渡しの運用が拡大されたことによるものと考えられる。なお,24年における違反態様別の送致件数は,不法残留が1,156件と最も多く,次いで,旅券不携帯・提示拒否625件,不法在留283件,資格外活動244件の順であった(警察庁刑事局の資料による。)。
     また,入管法違反は,例年,来日外国人による特別法犯送致件数に占める割合が最も高くは,主に入管法違反の送致件数の減少によるものと考えられる。
     薬物関係法令違反の送致件数は,平成16年に大幅に減少した後増減を繰り返したが,20年以降は一貫して減少しており,24年は15年と比べ半減した。なお,罪名別の検挙人員では,麻薬取締法違反と大麻取締法違反が大幅に減少しているが,覚せい剤取締法違反は,16年以降300人台から400人台で推移しており,24年は,328人であった(警察庁刑事局の資料による。)。
(3)検察・裁判
 ア 被疑事件の処理
  来日外国人被疑事件の検察庁終局処理人員の推移(最近20年間)。日本人を含めた全終局処理人員が減少傾向にある中で,来日外国人も平成16年をピークに減少傾向にある。
  来日外国人被疑事件の公判請求率は,低下傾向にあり,平成24年(32.3%)は,15年(65.4%)から33.1pt低下しているが,全終局処理人員の公判請求率(24年は27.7%)と比較すると,なお高い状況にある。平成24年における来日外国人被疑事件の罪名別の検察庁終局処理人員は,窃盗及び入管法違反の占める比率が,それぞれ約2割強と高い。
 イ 外国人少年事件の処理
  検察庁における外国人犯罪少年の家庭裁判所送致人員(一般刑法犯及び道交違反を除く特別法犯に限る。)の推移(最近20年間)を来日外国人犯罪少年とその他の外国人犯罪少年の別に見た。来日外国人犯罪少年もその他の外国人犯罪少年も減少傾向にある。他方,外国人犯罪少年全体に占める来日外国人犯罪少年の比率は,最近20年間は大きく上昇しており,平成20年以降は6割以上で推移している。来日外国人犯罪少年では,13年から20年までブラジルが最も多かったが,21年以降は減少傾向にあり,24年はフィリピンと同程度であった。
 ウ 裁判
  被告人通訳事件の通常第一審における有罪人員及び科刑状況(懲役・禁錮に限る。)の推移(最近10年間)である。有罪人員は,平成16年から減少しており,24年は15年と比較して78.8%減と大幅に減少した。平成24年の執行猶予率は76.8%であり,15年(85.5%)から8.8pt低下している。

(4)矯正施設入所者・保護観察対象者
 ア 刑事施設入所者
  平成24年における外国人の入所受刑者は,1,010人(前年比11.1%減)であった(矯正統計年報による。)。外国人受刑者のうち,日本人と異なる処遇を必要とする者は,刑事施設において,その文化及び生活習慣等に応じた処遇を行っている。
  平成24年末現在,F指標受刑者の収容人員は,2,122人(男子1,910人,女子212人)であり,前年末比で12.6%減少している(矯正統計年報による。)。なお,10年以降,19年を除き,来日外国人の少なくとも約9割がF指標に指定されている。次に,各年のF指標入所受刑者人員,そのうち女子及び犯罪傾向が進んでいる者に指定されるB指標の者が占める割合(女子比及びB指標比)の推移(最近20年間)を見る。
  F指標入所受刑者は,平成10年から急増し,16年に1,690人まで増加した後減少を続け,24年は16年と比べ67.5%減となった。日本人を含む入所受刑者全体も,最近減少を続けているが、これに占めるF指標入所受刑者の割合は,24年は2.2%と,ピーク時の16年(5.3%)から大きく低下しており,受刑者全体の減少を上回る勢いで減少していることを示している。なお,F指標入所受刑者人員は,男女共に減少傾向にあるものの,女子比は,上昇傾向にある上,24年は17.7%と入所受刑者全体における女子比(9.0%)より8.7pt高い。B指標比は,17年から上昇を続けているが,F指標入所受刑者の再入者率(入所受刑者人員に占める再入者の人員の比率)が同年から上昇傾向にあることと関連するものとも考えられる(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。
  平成24年におけるF指標入所受刑者の国籍等を見ると,中国(128人),ベトナム(68人),ブラジル(63人),イラン(36人),韓国・朝鮮とペルー(各27人)の順に多く,地域別ではアジアが約6割を占め,次いで南アメリカ(約2割)となっている。
  国籍等別では,14年も24年も中国が最も多かったが,全体に占める割合は41.0%から23.3%と大幅に低下している。地域別では,アジアが占める比率は19.2pt低下している反面,ヨーロッパが9.5pt,アフリカが4.5pt上昇している。また,順位変動は見られるものの,構成比が高い順から6か国等は変わらない一方,これら6か国等が全体に占める割合は79.1%から63.6%へと約16pt低下している。これらのことから,10年前と比べ,F指標入所受刑者の国籍等の多様化,分散化がうかがえる。
  平成24年におけるF指標入所受刑者の罪名別構成比を14年と比較して見る。
  24年においては,F指標入所受刑者総数が14年の半数以下に落ちた一方,覚せい剤取締法違反については,人員は183人と14年(178人)と同程度であったため,構成比では13.7%から33.3%に大きく上昇し,14年の窃盗と入れ替わって最も高くなっている。窃盗の構成比は14年と24年共に3割強と高い。なお,入管法違反は,14年には窃盗に次いで多かったが,24年は,人員では14年の203人から25人に激減し,構成比では15.6%から4.6%に大きく低下している。
  平成24年のF指標入所受刑者を入所受刑者全体と比べると,F指標入所受刑者の方が,入管法違反の比率が高いのは当然として,覚せい剤取締法違反・麻薬取締法違反の薬物犯の比率も高い。一方で,窃盗及び覚せい剤取締法違反の構成比が高く,両罪で全体の6割前後を占める点は共通である。
 イ 少年院入院者
  外国人少年院入院者の人員の推移(最近10年間)を国籍等の内訳である。外国人少年院入院者は減少を続け,特に平成23年に激減した。ほとんどの年でブラジルが最も多いが,その比率は,18年から24年にかけては5割強から3割と低下傾向にある。また,フィリピンの24年の構成比は,15年から17.9pt上昇している。
  平成24年における外国人少年院入院者の非行名別構成比を見たものである。窃盗,傷害,強盗の順に高く,この3つで全体の8割強を占めている。日本人を含む少年院入院者全体では,これら3つが占める割合は6割強である。
 ウ 保護観察対象者
  平成24年における外国人の保護観察開始人員は,1,299人(前年比89人減)で,その内訳は,保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者を除く。以下この項において同じ。)237人,少年院仮退院者58人,仮釈放者940人,保護観察付執行猶予者64人である。国籍等別では,韓国・朝鮮(383人),中国(307人),ブラジル(160人),フィリピン(96人),イラン(89人)の順に多い。
  来日外国人に限ると,保護観察開始人員は876人で,その内訳は,保護観察処分少年125人,少年院仮退院者43人,仮釈放者690人,保護観察付執行猶予者18人であった(保護統計年報による。)。
  平成24年末現在,外国人(永住者及び特別永住者を除く。)の保護観察対象者の人員は703人(前年末比4人減)で,その内訳は,保護観察処分少年152人,少年院仮退院者41人,仮釈放者462人,保護観察付執行猶予者48人であった。保護観察処分少年のうち2人,少年院仮退院者のうち2人,仮釈放者のうち431人,保護観察付執行猶予者のうち4人の合計439人は退去強制事由に該当し,国外退去済みの者が368人,退去強制手続により収容中の者が65人,仮放免中の者が6人であった(法務省保護局の資料による。)。
  このように,外国人のうち成人の保護観察対象者の大半を占める仮釈放者のほとんどが退去強制事由に該当し,実質的に我が国内での保護観察処遇を受けることなく国外退去となる反面,保護観察処分少年及び少年院仮退院者については,退去強制事由に該当する者はごくわずかであり,基本的に,日本人と同様,我が国で生活しながら保護観察処遇を受ける者といえる。そこで,外国人の保護観察対象者の特色を見るに当たっては,少年に焦点を絞ることとし,非行名,居住状況,経済状況,就労・就学状況及び教育程度を,日本人少年と比較しつつ見ることとする。
  少年の保護観察開始人員の非行名別構成比(平成20年から24年の累計)を,外国人,日本人の別にである。保護観察処分少年においては,外国人,日本人共に,窃盗の構成比が約4割で最も高く,道路交通法違反及び傷害がそれぞれ約15%で続いている。少年院仮退院者においては,外国人,日本人共に窃盗の構成比が4割弱で最も高いが,次いで構成比が高いものは,外国人では強盗,傷害であり,日本人では傷害,道路交通法違反である。

  少年の保護観察開始人員の居住状況別構成比(平成20年から24年の累計)を,外国人,日本人の別に見たものである。いずれの保護観察処分少年,少年院仮退院者共に,「両親と同居」が最も多く,前者では5割弱,後者では4割強を占めるが,外国人の方がその構成比が若干高い。また,親もとを含め親族のもとで居住する者が,いずれも約9割であり,外国人少年についても,日本人と同様,家族や親族との関係の調整が重要であることが分かる。
  少年の保護観察開始人員の経済状況別構成比(平成20年から24年の累計)を,外国人,日本人の別に見たものである。これは,ほとんどの少年が親や親族のもとで居住するため,家庭の経済状況を示すものと言える。いずれの保護観察処分少年,少年院仮退院者共に「普通」が約7~8割と大半を占めるが,外国人は日本人と比べ,保護観察処分少年,少年院仮退院者共に「貧困」の比率が高い。
  少年の保護観察開始人員の就労・就学状況別構成比(平成20年から24年の累計)を,外国人,日本人の別に見たものである。保護観察処分少年,少年院仮退院者共に,外国人は,日本人と比べて無職の比率が高く,有職及び学生・生徒の比率が低い。就学・就労状況別の少年の保護観察状況に見られるとおり,無職であることは再犯リスク要因と認められるところ、外国人少年についても,就労・就学に向けた指導や支援の必要性がうかがえる。
  少年の保護観察開始人員の教育程度別構成比(平成20年から24年の累計)を,外国人,日本人の別に見たものである。不就学,小学校・中学中退等の我が国でいう義務教育レベルの教育を修了していない者(中学在学中である者を除く。)の比率は,外国人の保護観察処分少年で6.6%,少年院仮退院者で10.0%と高い。義務教育レベルの教育を受けていない層については,日本語の読み書きを含め,日常生活を円滑に送り,安定した仕事に就くために必要とされる基礎学力に欠けることが懸念される。
5)外国人の再犯
  外国人入所受刑者について,処分歴別の人員,有前科者率(入所受刑者人員に占める有前科者の比率をいう。なお,有前科者は,懲役・禁錮以上の刑(執行猶予を含む。)に処せられたことがある者に限る。以下この項において同じ。)及び再入者率(入所受刑者人員に占める再入者の人員の比率)の推移(平成8年以降)を見たものである。外国人入所受刑者の人員は,17年をピークに翌年から減少している。有前科者及び再入者の人員も,18年以降減少傾向にあるが,外国人入所受刑者の人員が大きく減少したことに伴い,有前科者率は15年(40.2%)を底に,再入者率は16年(19.3%)を底にいずれも上昇傾向にあり,24年には有前科者率は61.4%,再入者率は36.0%となった。
  入所受刑者のうち有前科者及び有保護処分歴者(保護処分を受けたことがある者)について,来日外国人,日本人の別に,教育程度別構成比を見たものである。来日外国人は,我が国でいう義務教育レベルの教育を了していない者の比率が14.0%(日本人は1.0%)にも上る一方,高校卒業以上の者の比率も45.2%(同28.7%)と高い。
  入所受刑者のうち有前科者及び有保護処分歴者について,来日外国人,日本人の別に,犯行時の就労状況別構成比を見たものである。総数では,来日外国人,日本人共に,有職者率(有職者と無職者の合計に対する有職者の比率をいう。以下この項において同じ。)が30%台であり,来日外国人の方がわずかに高い。また,来日外国人の有職者率は,30歳代以上のいずれの年齢層についても日本人より高いが,29歳以下では日本人より低い。なお,日本人は,年齢層が上がるほど有職者率が低くなるが,来日外国人は,29歳以下の有職者率が30歳代及び40歳代より低い

  そのほか,来日外国人及び日本人の有職者率を入所度数別に見ると,初入者ではほぼ同程度(それぞれ39.3%,37.1%)にあり,いずれも入所度数が上がるにつれて低下するが,入所度数が2度の者も3度以上の者も,来日外国人の方が日本人よりも有職者率が低い(それぞれ,来日外国人28.2%,21.0%,日本人34.2%,24.7%。法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。
  再入者について,来日外国人,日本人の別に,入所度数別の再犯期間別構成比である。なお,来日外国人には,前刑出所後に退去強制されるなどした者と,在留特別許可等により引き続き本邦に居住していた者がいる。







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