社会問題-1(皆さんで考えてね)
2025.03.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250304-555P4RVUCRIPJAXSAFKIY2EEIU/
マンション修繕で談合繰り返したか 公取委、長谷工リフォームなど約20社に立ち入り検査
関東地域のマンションの大規模修繕工事で談合を繰り返したとして、
公正取引委員会は4日、独禁法違反(不当な取引制限)の疑いで、修繕工事会社約20社に立ち入り検査した。関係者への取材で分かった。
談合は数十年にわたり続けられていた可能性があり、公取委が詳しく調べる。
立ち入りを受けたのは、長谷工リフォーム(東京)、YKK APラクシー(千葉県松戸市)、シンヨー(川崎市)などの本社や営業所。
工事の発注は、マンションの住民らでつくる管理組合が設計監理会社などを通じ、複数の修繕工事会社を対象に見積もり合わせや入札を行うのが主な方式となっている。
関係者によると、
立ち入りを受けた各社は高い価格を提示するなどし、受注予定の社が選定されるよう調整していた疑いがある。
1件当たりの工事金額は数千万円規模とされ、各社が利益を受けられるようにする目的があったとみられる。
2025.03.01-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250301-CJ6X6KCEFNPLNFYPYCRJX3JOVA/
大阪・八尾のコンクリ遺体、明るみに出なかった少女の失踪 「消えた子供」は全国で74人
大阪府八尾市の集合住宅の一室からコンクリート詰めにされた遺体が見つかり、大阪府警が死体遺棄容疑で逮捕した無職、A容疑者(41)は
「十数年前に預かっていた姉の子で、7歳くらいの女児」と説明した。遺体の身長は1メートルほどだったが、7歳女児の平均身長は1メートル20センチほどで、かなり小さかったことになる。自治体などは行方知れずになった子供の所在確認を続けているが、事件に巻き込まれたり虐待を受けたりしていたケースは後を絶たない。誰も女児がいなくなったことに気がつかなかったのか。
令和6年度の学校基本調査によると、義務教育年齢の日本国籍を有する児童生徒のうち、教育委員会が1年以上所在を確認できない「居所不明児童・生徒」は全国で74人。事件や虐待の可能性が指摘される例もあり、文部科学省は全国の教委に対し、「居所不明」とされた後も自治体や児童相談所と連携し、子供の所在確認を進めることを求めている。
こども家庭庁も児童虐待防止対策として、乳幼児健診未受診者や未就園児、不就学児などの状況確認を各自治体へ要請。令和5年度の調査では2万5745人が確認対象となり、このうち3人は状況確認ができなかった。
子供が行方知れずとなり、事件に巻き込まれていたケースは少なくない。平成25年には大阪府富田林市で住民登録上では10歳になる男児が行方不明となっていることが判明。親族らが生後間もなく遺体を河川敷に埋めたと説明したが、遺体は見つからなかった。親族らは不起訴処分となったが、居所不明の子供の問題が改めて浮き彫りとなった。
2025.02.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250219-TFPDA63IWJMPBLR6MOGN2BRYXQ/
「選択的夫婦別姓は強制的親子別姓」池谷准教授 日本会議懇談会に自民、維新から75人
超党派の保守系議員でつくる「日本会議国会議員懇談会」(会長・古屋圭司元拉致問題担当相)は19日、
国会内で家族制度を考える勉強会を開催した。
自民党と日本維新の会から代理出席を含め計75人が出席し、選択的夫婦別姓制度を導入することによる子供への影響などについて意見を交わした。
会合では、
家族法に詳しい長崎大の池谷和子准教授が「選択的『夫婦別姓』は強制的『親子別姓』です-親子別姓は何をもたらすか」と題して講演した。出席者によると、池谷氏は別姓制度導入によって夫婦別姓が親子別姓、兄弟別姓になっていくことは、子供の発達に悪影響が出る可能性があることを指摘したという。
講演後には質疑応答が行われ、出席者からは「個人が先立ち過ぎてしまうと家族の一体感や、社会の安定性が損なわれることになるのではないか」との意見が出た。別の出席者は「従来の戸籍制度は非常に優れた制度だ。しっかりと残していくことを考えるべきだ」と主張した。
同懇談会では、一昨年に家族プロジェクトチーム(PT)を立ち上げ、家族制度に関する議論を重ねてきた。
山谷えり子・家族PT座長(自民)は会合後に記者団に対し、別姓制度に関して「家族や社会のあり方に大きく影響する問題だ。選択的だからといって、その人だけの問題ではないという視点で進めることが大事だ」と述べた。
2025.02.17-産経新聞--https://www.sankei.com/article/20250217-6NV7BGPKLVN2JM3EKBMBECY7E4/
戸籍国籍欄「台湾」可能に これまでは国名原則で「中国」記載、法務省が5月に省令改正へ
法務省は17日、
日本人が外国人と結婚した場合の戸籍上の表記に関し、
5月から国籍欄に地域名を記載できるよう省令改正すると明らかにした。
これまで国名が原則で、台湾出身者も「中国」との記載だった。地域名の表記を認める住民票や在留カードとの統一を図るとともに、アイデンティティーに配慮した形だ。
法務省によると、
現行の戸籍では外国人と婚姻した場合、配偶者の氏名などとともに「国籍」の記載欄を設けている。帰化した際も帰化前の国籍を記す。
改正省令ではこれを
「国籍・地域」に変更し、台湾との表記を可能とする。
施行前に結婚や帰化した台湾出身者も、申し出があれば変更を認める方針。
婚姻や離婚時には日本の法律だけでなく、相手の国・地域の法規定も考慮される
ケースもあるため、表記の明確化で混乱を防ぐ狙いもある。これまで
「パレスチナ」との表記を特例で認めてきたが、台湾は対象になっておらず、見直しを求める声が上がっていた。
2025.02.17-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250217-D7AYVEPQWJKWNLAY6WPSVJ7CLA/
選択的夫婦別姓めぐる朝日、共同の二択質問 「前提がおかしい」自民党内に不信募る
(大島悠亮)
選択的夫婦別姓制度を巡る報道各社の世論調査で、
制度導入の賛否の二択で質問した場合と、旧姓の通称使用拡大を含めた複数の選択肢を提示した場合では回答結果が大きく異なった。自民党では旧姓の通称使用拡大の議論が進む。
党内の一部には、この選択肢を排除し、二択で質問し続ける報道機関への不信感が募っている。
16、17両日に公表された共同通信や毎日、朝日、読売の世論調査では、
今国会の焦点となっている選択的夫婦別姓制度に関する質問がいずれも盛り込まれていた。ただ、質問の選択肢の内容は各社で分かれた。
選択的夫婦別姓制度導入について
「賛成」か
「反対」の
二択で回答を求めたのは朝日と共同だ。
朝日は同制度に関し「法律を改正して、夫婦が同じ名字でも、別々の名字でも自由に選べるようにすることに賛成ですか」と質問。賛成が63%、反対が29%だった。旧姓の通称使用拡大についての質問はなかった。
共同は同制度導入の賛否を尋ねた上で、旧姓の通称使用拡大について「名字変更で生じるさまざまな問題や不便が解決すると思いますか」と質問し、
「解決しない」が58・1%に上った。
一方、毎日は同制度の導入や旧姓の通称使用拡大、両方を進める、両方を進めないとの選択肢を用意。いずれの回答も16~24%に分散した。読売は3つの選択肢を示し、「夫婦は同じ名字とする今の制度を維持しつつ、通称として結婚前の名字を使える機会を拡大する」との回答が46%で最も多かった。
選択的夫婦別姓制度を巡っては、自民党内ではかねてから
「二択では、国民の声を正確に受け止められない」(党若手)との意見が根強くある。自民党関係者は
「一部報道機関は質問の前提がおかしいのではないか」と不満を口にした。
(大島悠亮)
2025.02.05-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250205-X7VZQJIHWBN4DBYOLEHPKC6FC4/
奈良のポイ捨て、シカの死活問題 死んだ9体の胃からプラごみ…ごみ箱設置で状況変わるか
観光客らのごみのポイ捨てを防ごうと奈良県は、
奈良公園(奈良市)にごみ箱を設置して効果を検証する実験を実施している。同公園では国天然記念物「奈良のシカ」があふれたごみをあさらないよう、
昭和60年代にすべてのごみ箱を撤去。ただ、
近年はポイ捨てされたごみをシカが食べることが問題化しており、
ごみ箱設置で状況が改善できるか確認する。
奈良公園では現在、県やボランティアらが清掃しているが、訪日外国人客(インバウンド)を含む観光客の増加に伴い、ごみは増える傾向にあるという。一方で、シカの保護活動を行う一般財団法人「奈良の鹿愛護会」が6年前に原因不明で死んだシカ14体を調べたところ、9体の胃からプラスチックのごみを確認した。
こうした事態を受け、県は1月中旬から、奈良公園バスターミナルの屋内外2カ所にごみ箱を試験的に設置している。ごみ箱は2種類あり、ごみがたまるとあふれないよう自動的に圧縮できるものもある。
2月中旬ごろまで、ごみの量や種類、捨てられた時間帯などを詳しく調べ、奈良公園でのポイ捨ての実態を把握する。県奈良公園室によると、これまで捨てられたごみはペットボトルや紙コップなどが目立つという。
県観光局の竹田博康局長は「新型コロナウイルス禍後、観光客が増加してごみも増えている。実験でどういうごみが捨てられているかを見たい」とし、結果を踏まえてごみ箱を設置するかどうかを考えるという。
また、シカとの共生を目指すボランティア団体「鹿サポーターズクラブ」事務局の高見直子さんは
「シカが落ちているごみを食べてしまうことを人が意識するきっかけになってほしい」と話している。
奈良のシカ
春日大社の神が白いシカに乗ってやって来たという伝説から古来、「神鹿」としてあつく保護されてきた。昭和32年には国の天然記念物に指定。奈良公園の象徴的存在となっており、現在は約1300頭がシバや木の実などを食べて生息している。
2025.02.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250204-JGUUGXL3JBMAZH76FIDOBQBTZY/
結婚後の通称、旧姓「使用しようと思わない」55・2% 女性は59・2% 内閣府調査
内閣府が4日に発表した「男女共同参画社会に関する世論調査」(令和6年9月)で、
結婚して戸籍上の名字・姓が変わった場合、働く際に旧姓を通称として使用したいと思うかを尋ねた質問で「使用したいと思わない」との回答が55・2%に上り、過半数を占めた。前回調査(4年11月)より3・5ポイント減った。
「旧姓を使用したいと思う」は前回比4・2ポイント増の43・3%だった
男女別の回答は、女性の59・2%が「使用したいと思わない」と回答。「使用したい」の39・6%を大きく上回った。男性は「使用したいと思わない」が50・6%、「使用したい」は47・7%だった。
年齢別では、30~39歳の世代のみが、「使用したい」(57・8%)が「使用したいと思わない」(41・8%)を上回った。だが、それ以外の全ての世代は「使用したいと思わない」が過半数を占める結果となった。
また、
夫婦の名字・姓に関する制度の在り方について身近な問題として考えたことがあるか聞いたところ、「ない」との回答が53・2%(前回比0・9ポイント減)で、「ある」は44・0%(同2・7ポイント増)だった。
2025.02.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250203-6LKCNS4R7ZI5HJQW43PXGEMGLU/
野田聖子氏、選択的夫婦別姓に前向き「党議拘束あっても心の問題」「産経調査は誘導的」
(聞き手 永原慎吾)
自民党の野田聖子元こども政策担当相が産経新聞の単独インタビューに応じ、今国会の焦点となる
選択的夫婦別姓の導入について「やるふりばかりで約30年も放置されてきた。有権者をだます行為だ」と述べ、早期に結論を出すべきだとの考えを示した。
「自民は生まれ変わらなければならない」とも訴えた。
立憲民主党は選択的夫婦別姓の導入に向け、関連法案の今国会提出を検討している。野田氏は「政府原案を出すべきだ」と主張した。
法案採決の際の党議拘束の必要性に関しては
「党議拘束をかけるような話ではない。内心の問題だ」と強調した。その上で
「私は党議拘束がかかったとしても自民のためではなく、国民のために行動をする」と述べ、
党議拘束に縛られない投票行動を示唆した。
野田氏のインタビューの主なやりとりは次の通り。
-選択的夫婦別姓制度の導入を長年にわたって訴え続けてきた。導入の意義とは何か
「導入を望んでいる人がいるからだ。自分が親から与えられた姓を好きで変えるというならばよいが、選択できないというのは法治国家としてどうかと思う。男性は姓が変わることは思い至らないかもしれないが、女性は結婚するときにこのアイデンティティーの問題に直面してきた。日本の政治としてこの問題を解消すべきだ」
やるふりばかりで30年放置
-選択的夫婦別姓は昨秋の自民総裁選でも争点となったが、自民は結論を出すべきか
「やるふりばかりで平成8年の法制審議会(法相の諮問機関)の答申から約30年も放置されてきた。これは賛成の人に対しても反対の人に対しても有権者をだましている行為だと思う。先の衆院選で自民は敗れたが、『政治とカネ』の問題だけではなく、こうした問題でも不誠実だったからだ。自民はこのことを受け止め、生まれ変わらなければならない」
-立民は制度導入を可能にする関連法案を提出する構えだが、政府や自民はどう対応すべきか
「自民は少数といえども与党だ。政府原案を出すべきだ。議員立法というものはエモーショナル(感情的)なものになりがちだが、姓というものの大事さを考えれば、中立的なところで決めたものを国会に提出すべきだ」
-国会で法案を採決する場合は党議拘束を外すべきか
「私は党議拘束がかかったとしても自民のためではなく、国民のために正しい行動をする。ただ、これは党議拘束をかけるような話ではない。内心の問題でもある」
通称使用、国際社会で通用しない
-旧姓の通称使用の拡大などでは解決はできないのか
「通称使用というものは世界に存在しておらず、国際社会では通用しない。実際、経済界から選択的夫婦別姓の導入を求める声があるのも女性が海外で仕事をする機会が増えているのに、通称使用では対応できない問題が頻発しているからだ。インナーサークルのルールではだめだ」
―産経新聞社が小中学生を対象に実施したアンケートでは、子供が父親か母親のどちらかや、きょうだいなど家族で姓が別になることに約50%が「反対」と回答した
「産経新聞のアンケートを読んだが、全体的に子供への質問が誘導的だった。あれは良くない。ただ、アンケートの中で『それぞれ別の名字のままでも結婚できるように法律を変えたほうが良いと思うか』との質問があったが、『変えたほうがよい』(34・9%)と答えた子供が『変えないほうがよい』(30・0%)より多かったことには注目すべきではないか」
-選択的夫婦別姓の導入には反対意見もあるが、その意見はどうくみ取るのか
「反対している人たちは別姓を選択しなければよく、他の人が望んでいることに介入すべきではない。自分たちの家族をよりよいものにしていくべきで、人の家族に決定権を持つ必要はない」
-今後の議論をどう進めていくべきか
「この話はみんながいきり立つようなものではなく、別姓を望む人がいるのならば認めようということだ。未来を託す若い人たちをもっと自由にしてあげたい。もう見て見ぬふりはやめるべきだ」
(聞き手 永原慎吾)
2025.02.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250203-GXM7PLUL2FNRPI5CZET3INSJ3I/
不倫発覚でも夫支える-大阪・岸和田市長の妻が市議初当選-議会9割超は失職「賛成」勢力
不倫関係にあった女性との性的問題を巡り、
大阪府岸和田市の永野耕平市長を不信任とした議会を永野氏が解散したことに伴う市議選(定数24)が2日に投開票された。
当選を決めた24人のうち、9割超の22人が永野氏の市長続投に否定的で、市議会に不信任案が提出されれば、永野氏は失職する公算が大きい。
包囲網が一層狭まる中、永野氏の妻、紗代氏(38)が初当選を決め、永野市政支持の姿勢を改めて示した。
紗代氏は同日夜、市内の選挙事務所で支援者らを前に「現役で子育て中の強みを生かし、子育て中の市民の声を聞き、市政を前に進めたい」と抱負を述べた。
また、次の市議会で不信任案が再び提出された場合の賛否については「昨年12月と同じ内容の不信任案なら反対する」としつつ「違う内容なら、精査してその時考えたい」と含みを持たせた。初めての選挙戦については「(夫に)言葉をかけてもらい、精神的に支えられた」と振り返った。
永野氏は不倫関係にあった女性から性的トラブルで提訴され、昨年11月に500万円の解決金を支払うことで和解していたことが発覚。説明責任を果たすよう求めた市議会側に対し、永野氏は性加害を否定した上で「裁判内容は秘匿とされ話せない」と繰り返した。
市議会側は「市政に混乱を招いた」ことなどを理由に12月20日、永野氏に対する不信任案を賛成20人、反対4人で可決。永野氏は同24日に市議会を解散した。
24日夕に永野氏は会見を開き、その場には紗代さんも同席。・・・
不倫問題が発覚した永野氏のことは「変わらず大事な家族の一員」と述べ、
永野氏の市長続投が妥当との考えを示していた。
産経新聞社など報道6社は選挙戦の直前、候補者29人にアンケートを実施。約9割にあたる26人が、当選後に再び永野氏の不信任案が議会に提出されれば「賛成する」と回答した。投開票の結果、この26人のうち22人が当選。「反対する」と答えた候補者のうち、当選したのは紗代氏を含む2人だけだった。
地方自治法の規定では、新市議誕生後、初めての議会に3分の2以上の市議が出席し、市長の不信任案に過半数が賛成すれば、永野氏は失職する。そうなった場合、永野氏は出直し市長選に出馬する意向をすでに表明している。
2025.02.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250202-W4WOZWIYRVMFFHZMFVOLDTUL54/
「母の命を奪う薬が入っていく」余命2年未満で死を選んだ満利子さん 娘の寄り添う-覚悟安楽死「拡大の国」カナダ」(1)
敬称略(小川恵理子 池田祥子)
「先駆の国」オランダから15年遅れて安楽死を法制化した
カナダ。第2部では、その後急拡大した同国の制度、実情の光と影を見つめる。・・・
「最初は賛成できませんでした。でも、病気で苦しむ人に生き続けることを求めるのはエゴではないかとも悩み、母の思いを優先させようと決めたんです」
風光明媚(めいび)なカナダ西部の港湾都市、バンクーバー。
日系カナダ人、レビーナ・デイビス(43)の母、満利子(まりこ)は2023年3月、74歳で安楽死した。レビーナは、日夜苦しむ母と二人三脚で病と闘ってきた。・・・
食べることとおしゃべりが大好きな母の暮らしが暗転したたのは、22年3月。大腸がんが見つかり、直腸への転移も判明。告げられた余命は「2年未満」だった。
抗がん剤治療を始めたが、
持病の免疫疾患の影響もあり、深刻な副作用に悩まされた。おなかが緩くなり、排泄(はいせつ)が自分でコントロールできない。そんなとき、自尊心が強い母は決まって自分で掃除したがった。・・・やがて歯磨きや洗顔も一人ではできなくなる。自信や生きる気力をなくし、事あるごとに口に出すようになった。
「安楽死させて…」・・・レビーナにとって、ふさぎこむ母の姿を見るのはつらかったが
、願いを聞き入れることにすぐには納得できなかった。
別れの日は突然
カナダでは16年、「死への医療的援助法(MAiD)」が成立。医療行為の一環という位置づけで、難病などで死期が予見でき、肉体的、精神的に耐え難い苦痛がある患者の安楽死が可能となった。同国では1990年代以降、何度も安楽死を巡る議論が国論を二分してきたが、法制化によって一応の決着を見た。
レビーナは2023年3月、改めて主治医に相談。
本人の意志で中止や実施日の変更も可能だと説明され、母の意志に寄り添う覚悟を決めた。
それでも、別れの日は突然訪れた。
「一日も早く」という母の強い希望を病院側が受け入れ、同月10日に実施することが急遽決まった。
病室を訪ねると
、右腕に点滴の管がつながっている。母の命を奪う薬が入っていくのかと考えると、たまらない気持ちになったが、もはや受け入れるしかなかった。
午後8時ごろ、医師が3本ある致死薬の1本目を注入した。「ママ、愛してる」。声をかけると、母は何か言いたげにじっと自分を見つめた後、静かに目を閉じた。
2本目の注入が始まったとき、母を見送る現実が一気に胸に迫り、涙が止まらなくなった。最後の1本が打たれ、拍動の間隔が徐々に長くなっていく。開始から10分、母は静かに旅立った。
安楽死件数、7年で15倍に
「制度を使うことが正解か不正解かは、苦しんでいる本人にしか分からない」。レビーナは、複雑な思いを抱きながらも、母の面影を追い
「安楽死という選択肢は、患者の救いになり、尊厳を守ることにもつながる」と強く感じている。
ただ、カナダでは今、安楽死制度をめぐって新たな火種もくすぶる。・・・21年3月、「死期が予見できる」という実施要件が撤廃され、余命宣告を受けていない慢性疾患の患者や重度の障害がある人らにも適用の道が開かれた。さらに精神疾患患者への適用も決まり、2度にわたって延長されたものの、27年3月には施行される流れとなっている。
同国で23年、安楽死を選んだのは、全死者数の4・7%にあたる1万5343人。法制化当初の約15倍だ。不治の病で死期が迫った患者が96%を占めたが、そうでない患者も622人いた。
なし崩しのように対象が拡大する動きには、国内外から懸念の声も上がる。・・・昨年11月、英下院で、イングランドとウェールズを対象に、
余命6カ月未満と診断された患者が安楽死を選ぶ権利を認める法案が賛成多数で可決された。
同様の法案は10年前に否決されており、世論の変化を物語る。
下院で今後行われる2回目の採決、さらに上院でも可決されれば、同法は成立する。
2001年、オランダで初めて安楽死が法制化されて以降、欧州や北米、オセアニアなどで追随する動きが目立った。
カナダで安楽死を認める連邦法が成立したのは16年。難病患者らが「自ら死を選ぶ権利」を求めて2度にわたり提訴し、最高裁は15年の判決で訴えを認めていた。
その後、適用者の増加は他国に類を見ないペースだ。法制定後、
全死者数に占める安楽死の割合が3%を超えたのは、カナダでは5年後。ベルギーの21年後をはるかにしのぐ。カナダの23年の比率4・7%は、同年5・4%の先駆オランダに迫る勢いだ。
その推進役となったのが、
15年に43歳で首相となったジャスティン・トルドーだ。ジェンダー平等や移民の受け入れなどを打ち出してきたリベラル派の若き首相は、安楽死に関しても積極派の声に前向きに応えてきた。
化学物質過敏症にも適用
「安楽死を認める法の趣旨は尊重しますが、彼女には不要だった。むしろ不条理な選択肢でしかなかった」
カナダ東部ケベック州で化学物質過敏症(CS)の患者を支援するケベック環境保健協会。会長のロヒニ・ペリスは、22年2月、新型コロナウイルス禍のさなかに51歳で安楽死したソフィアのことが忘れられない。
CSは、家庭用洗剤や芳香剤、たばこなど身近な化学物質に接すると頭痛や吐き気などが生じる原因不明の疾患だ。・コロナ禍は、長年症状に苦しんできたソフィアに追い打ちをかけた。彼女が暮らすオンタリオ州でも断続的にロックダウン(都市封鎖)が行われ、州都トロントの自室すら安息の地ではなくなった。アパートに漂う生活臭やたばこの煙で日々体調が悪化。やがて死を望むようになった。
ペリスがソフィアの決意を知ったのは、
死の1カ月前。カナダでは21年3月の安楽死要件緩和で、具体的に余命を宣告されていなくても、治療不可能な病状で耐え難い肉体的、精神的苦痛があるソフィアのような患者にも門戸が開かれるようになっていた。
ペリスは行政などに安全な住宅の手配を求めたが、成果は得られなかった。
ソフィアの死の直前、ぺリスは電話で別れを惜しみ、ソフィアが亡くなるまで電話はつながったままだった。「彼女の場合、環境さえ改善されれば生きていけたのに」。ペリスのやり切れなさは今も消えない。
「滑り坂」への危惧
23年、カナダで安楽死した約1万5千人のうち、余命を宣告されていなかったのは4%にすぎないが、人数でみると、21年の約3倍に達する。
「倫理的に問題がある事例が相次いでいる」。メモリアル大教授のダリル・プルマン(70)=生命倫理学=は、急拡大に警鐘を鳴らす。
「そもそも『治療不可能な病状』という定義が曖昧だ。結局、患者の要望を受け入れるかどうかは医師に委ねられるし、1人で多くの安楽死を実施する医師もいる」
トルドーは先月6日、支持率低迷などを受けて首相辞任の意向を表明。今秋までに行われる総選挙で、保守派が政権を奪還する可能性もある。
それでもプルマンは
「政権交代しても、一度開いたパンドラの箱はどうなるか」と懐疑的だ。
「カナダはなし崩しの『滑り坂』に陥っている。市民の命を奪う法律であることを国民は認識し、もっと議論が必要だ」=
敬称略(小川恵理子 池田祥子)
2025.01.30-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250130-CAKMCBV4JJMHFCDPTGDGOOEJ2A/
メガソーラー設置、奈良県知事が「事実上の断念」 地元の反発強く同意の見通し立たず
奈良県は
30日、山下真知事が表明した防災拠点での大規模太陽光発電所(メガソーラー)の設置を断念した。
有識者でつくる会合で同日、太陽光パネルの規模を大幅に縮小して整備する内容を盛り込んだ基本構想案をまとめた。整備に反対する地元の五條市の同意を得られないと判断した。
当初は計約25万平方メートルの太陽光パネルを整備する想定だったが、基本構想案では、計約2100平方メートル規模に縮小する。太陽光発電は防災拠点の非常用電源として整備するが、県の試算で、規模を縮小しても電力を確保できるとした。
山下知事は会合後、記者団に「これまで計画した大規模な太陽光発電所は地元の同意を得る見通しが立っていない。
事実上の断念だ」と話した。
日本維新の会公認で当選した山下知事は就任後、荒井正吾前知事が打ち出した2千メートル級の滑走路を備えた防災拠点整備計画を撤回。昨年1月、メガソーラー整備を含む新案を表明したが、地元は方針転換に反発していた。
2025.01.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250119-OEUWFXB4P5ELTI32LNHTFUOMDU/
立民・野田氏、子供の姓「家族で決めればいい」 夫婦別姓で各党見解 首相「濃密議論を」
与野党の党首らは19日のNHK番組「日曜討論」で24日召集の通常国会の焦点の一つ、
選択的夫婦別姓について意見を交わした。
石破茂首相(自民党総裁)は
「濃密な議論を早急にやる」と述べ、
党の見解を早期にまとめる必要性を強調した。
日本維新の会の吉村洋文代表は旧姓の通称使用の法制度化を優先すべきとした。立憲民主、国民民主、共産、れいわ新選組、社民の各党は導入に積極姿勢を示し、参政党は反対姿勢を示した。
公明・斎藤氏「社会の根幹に関わる」
首相は「濃密な議論を早急にやって、わが党としては『こうなのだ』を決める。
あまり時間は残っていない」と述べた。公明党と考えをすり合わせる必要性に言及し
、「選択的夫婦別姓を導入する場合、メリットとデメリットを確認したい」と課題を洗い出す考えを示した。
公明の斉藤鉄夫代表は、導入に前向きな姿勢を示し、「きょうだいの姓をどうするのか、戸籍法の大改正を伴うのをどのように進めていくのか、細部を詰めないといけない」と語った。
「社会の根幹にかかわる制度は与党がまず案をまとめ、野党と真摯(しんし)に議論していくのが順番だ」と、与党が議論を主導すべきとの考えを示した。
立民・野田氏「決着をつける」
立民の野田佳彦代表は、法相の諮問機関である法制審議会が平成8年に選択的夫婦別姓制度の導入を答申したことを挙げて、「このテーマは30年越しの課題になっている。決着をつけるために(立民の西村智奈美前代表代行を起用した衆院)法務委員長も確保した」と述べた。
子供の姓の選択に関しては「きょうだいでどうのがあるが、家族で決めればいいことで、政府が決めることではない。そういうことも含めて選択的であるべきだ」と指摘した。
維新の吉村氏は「旧姓を使いたい場合は、それが開かれている社会にすべきだ」と述べ、
「同一戸籍・同一氏の原則を維持し、旧姓に法的拘束力を認めるやり方が現実的だ」と語った。
国民・古川氏「掲げた公約は重い」
国民民主の古川元久代表代行は、昨年10月の衆院選で選択的夫婦別姓の導入を掲げたことを挙げて「公約として重い。公約を掲げたことを党内で確認していきたい」と強調した。
共産の田村智子委員長は選択的夫婦別姓の導入に「もう実現するしかない」と強い意欲を示し、
「ジェンダー平等を進めていく上で不可欠だ。国会の中での議論を求めたい」と語った。
れいわ・舩後氏「自民はもったいぶるな」
れいわの舩後靖彦副代表も「国民世論は賛成多数で、私たちも賛成している。障壁はたったひとつ、自民党が反対していることだ。自民が決めれば3日でできる。もったいぶらずに、さっさとやるよう求めていく」と述べた。
事前収録されたインタビューで、参政党の神谷宗幣代表は選択的夫婦別姓の導入に「反対だ。世界の潮流に合わせて国民に判断してもらう議論をやっていく」と語った。一方、社民党の福島瑞穂党首は「与党が過半数割れしてチャンス。自民党の反対で今までできなかった選択的夫婦別姓を実現する」と強調した。
日本保守党の百田尚樹代表は選択的夫婦別姓については言及しなかった。
2025.01.19-産経新聞(週刊フジ)-https://www.sankei.com/article/20250119-SA2GXPE7HJGHLEY6BZJQXQONM4/?outputType=theme_weekly-fuji
岩盤保守層を蔑ろにする選択的夫婦別姓導入 「仲間と行動」萩生田氏が見せた覚悟 有元隆志
(産経新聞特別記者)
NHKは政治家が他のテレビ局で発言しても民放テレビとしか言及しなかったが、
最近は方針を変えたのか、自民党の萩生田光一元政調会長が10日夜、櫻井よしこ氏が主宰する動画配信サイトの番組「櫻LIVE」に出演したと報じた。・・・
正確には、
「言論テレビ」の番組「櫻LIVE 君の一歩が朝(あした)を変える!」だが、私も一緒に番組に出演して、萩生田氏の「変化」を感じた。
まず、萩生田氏は旧安倍派の会計処理をめぐって「政治不信を招いてしまった」と反省した。そのうえで、昨年10月の衆院選での演説や、その後の衆院政治倫理審査会への出席を通じて説明を果たしてきたとして、
「この問題は去年をもって一区切りにして、今年は乙巳(きのとみ)の年なので脱皮をして、新しいことに挑戦する再生と復活の年にしたい」との抱負を語ったのだった。
萩生田氏は、岩屋毅外相が中国人の観光客向けビザの発給要件などを緩和する方針を示したことについて、「ビザの拡大は大きな問題だ。党の外交部会などにまったくかけず、約束をしてしまったのは問題で、政府のやり方は少し乱暴だ」と批判した。NHKもその部分を中心に報じた。
番組に同席した産経新聞の同僚だった石橋文登・千葉工大特別教授も「自民党支持者を相手に話すことが多いが、外交も内政も全部、安倍(晋三)さんがやっていたことをひっくり返そうとしているとの声が大半です」と述べたように、石破茂政権は自民党を強く支持してきた岩盤保守層の神経を逆なでしている。
石破首相らは「少数与党なので、連立を組む公明党や野党の意見を聞かなければ政権運営ができない」というのかもしれない。だが、肝心の自民党支持層の声を蔑(ないがし)ろにしていいのかということになる。
その象徴が、通常国会の焦点となる
選択的夫婦別姓の導入だ。・・・
萩生田氏は番組で、「旧姓使用の拡大で対応すべきだ」と強調した。
石破政権が野党に同調して、法案を賛成しようとした場合については、「どうやってやるのかをここで言うと、手の内を全部知らしめることになります。ただ、しっかり志を同じくする仲間と行動したいと思います」と述べ、
反対する考えを示した。
石破首相は党総裁になる前は、
選択的夫婦別姓について「導入賛成」の考えを示し、
「夫婦が別姓になると家族が崩壊するとか、よく分からない理屈があるが、やらない理由がよく分からない」と述べていた。
首相になると、10月の衆院本会議での答弁で、「国民各層の意見や国会における議論の動向などを踏まえ、さらなる検討をする必要がある」と述べるなど、
慎重に転じた。
もっとも、立憲民主党の野田佳彦代表は
「自民党の中にも『本当は賛成』という人が結構います。党議拘束を外したら一挙に委員会可決する可能性が出てくるでしょう」(昨年11月の講演)と攻勢をかける構えを示している。
石破首相が立憲民主党や公明党に同調し、可決の方向に自民党の議論を集約しようとしたとき、萩生田氏は阻止に動く。その覚悟を感じた。
(産経新聞特別記者)
2025.01.16-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250116-S3PW4N5LTZMEDK2IVNE4YU5XHE/
「親と姓が違うのは嫌?と聞かれたらいい」 選択的夫婦別姓巡る千葉・熊谷知事と一問一答
千葉県の熊谷俊人知事は16日の記者会見で選択的夫婦別姓制度の導入について見解を述べた。昨年12月12日の会見では
「私は(導入に)賛成側だ」と語っていた。この日の一問一答は以下の通り。
―各種世論調査で選択的夫婦別姓に「賛成」は7割。これは「賛成」「反対」の2択だ。内閣府調査では「現行制度を維持したうえで旧姓の通称使用を法整備したがいい」との選択肢を加えるとその答えが最多で、「別姓導入」は28・9%、「現状維持」は27%と拮抗(きっこう)した。どう思うか
「実態とそんなに変わらない。国民の意見はそれぞれ分かれている。基本的には、だからこその『選択的』だと思う。いずれにしても2割、3割が手続きやアイデンティティー、さまざまな観点で実際に困っている。それをどう社会として受け止めるかだ」
―産経新聞が行ったアンケートでは旧姓呼称を認めない企業はゼロだった。国家資格や免許証などは旧姓使用併記ができ、日常生活の煩わしさは解決されている
「煩わしさで問題がないのなら、男性が(姓を)変えてしかるべきじゃないですか。現実には(結婚で改姓したのは)女性が94・7%。やはり、手続き上の問題やアイデンティティーも含め、さまざまな課題があるからこそ慣習的に、女性が圧倒的にそれに対応せざるをえない。煩わしさがないんだったら、こんな極端な結果に普通はならない」
―小中学生約2千人への産経新聞アンケートでは、同じ家族で名字が別になるのに半数が反対した。子供にどちらの名字をとるか選択権がないなか、家族間で新たな火種になりかねない
「小中学生がどれぐらいその問題の背景を理解し、答えたか分からず、コメントできないが、私からすると、世界のほとんどの国は子供たちの家庭で姓が違うわけで、アンケートを取るのだったら実際に姓が違っている子供たちに
『あなたは親と姓が違うが、嫌ですか』と聞かれたらいい。恐らく、本当の意味での大事な子供たちのデータが取られると思う。ぜひアジアや先進国も含め、
それぞれのパターンで実際に(姓が)変わった後の子供たちのアンケートをお取りになるのが私は一番だと思う」
2025.01.12-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250112-4DCNWCTXU5KBTGK4RNDGPFZ7MQ/
「放送を止めない」 多言語情報発信を続けた被災ラジオ局、「バイリンガル」に込めた思い
(秋山紀浩)
平成7年の阪神大震災で被災した外国人たちに災害情報を届けようと、
発生当日の英語放送をはじめ、多言語で発信した神戸のラジオ局がある。
「困っている外国人も多いはずだ」と
被災を免れた機器を使って放送を継続。当時駆け付けたスタッフの一人は「『意地でも沈黙させるな、放送を止めるな』との思いだった」と振り返った。
《モーニングディライト、本日は予定を変更してお送りしております。6時13分、大阪管区気象台発表の地震情報によりますと…》
7年1月17日午前7時3分30秒。「Kiss-FM」(現Kiss FM KOBE、神戸市中央区)の緊急災害放送は番組ディレクターが読み上げたこの言葉から始まった。同日午前5時46分の地震発生から約1時間15分後だった。
神戸を代表するランドマーク「神戸ポートタワー」(同区)のほど近くに放送局を構えていた同社は、地震発生時には激しい揺れに襲われた。放送中だった録音番組は約30秒間中断したが、自家発電で復旧、引き続き音楽の録音番組が放送された。午前7時から予定されていた生放送はDJが出社できず、ディレクターが原稿を読み上げ、急場をしのいだ。
当時、技術業者として出入りしていた同社技術部の岸本琢磨部長(57)が午前8時すぎに放送局にたどり着いたときは、通路両脇のロッカーが倒れ、磁気テープが山のように転がり、足の踏み場もなかった。
ただ、放送機器は無事で、電気も非常用電源で確保されていた。「これなら放送を維持できるとの手応えがあった」。出勤してきた社員数人とともに、放送体制の立て直しを進めた。
「被災者は災害情報を求めているはず。災害情報を伝えよう」
集まったメンバーたちの思いは同じだったが、同社にはニュースを取材する報道部門がなく、普段は通信社の配信ニュースを読み上げる程度。当時はインターネットも普及しておらず、得られる情報は限られていたが、ファクスから絶え間なく流れる各機関の情報や、許可を得たテレビ局の放送を引用する形で伝えた。受験生の願書受け付け延長や銀行の営業など多岐にわたる内容をリスナーに届けた。
しばらくして英語が堪能な番組DJが到着。放送方針を話し合う中で、日本語だけでなく英語でも放送を行うアイデアが上がった。
幕末に開港した国際港・神戸港を有し、外国人も多く暮らす国際都市・神戸。「日本語が分からず困っている外国人も多いはず」と、アイデアはすぐに採用され、日本語でアナウンスした後、同じ内容を英語で話した。その後、ボランティアの力も借りて中国語や韓国語、ポルトガル語なども随時織り込んでいった。
「もともと多言語が使えるメンバーがいる土壌があったので、非常時でも機能した」と岸本さん。発生から1週間は24時間態勢で、食料配給や給水、炊き出しなど被災者の生活に密着した情報を放送。外国人を含む視聴者から「放送のおかげで東京まで脱出できた」「赤ちゃん用ミルクの情報に助けられた」と感謝の言葉が続々と寄せられたという。
阪神大震災からまもなく30年となり、災害時の多言語の情報発信は重要な課題として、国内各地の自治体や公共交通機関で取り組みが進むようになった。
インバウンド(訪日外国人観光客)の急増により多言語発信の必要性は増している。岸本さんは「多くの人が普段から他の言語に親しみを持てる環境になれば、非常時にも生きるはず。困っている外国人にどう伝えれば効果があるか、考え続けたい」と話した。
(秋山紀浩)
2025.01011-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250111-JMV3J4X3UJF3TIGJLQGO33UCFU/
ごまかしの選択的夫婦別姓議論-「子の名字、もめる原因に」「選択だから、という発想が間違い」 池谷和子・長崎大准教授
選択的夫婦別姓制度をめぐり、産経新聞社が昨年11~12月に、小中学生約2000人を対象に行ったアンケートでは、
家族が別の名字になることに約半数が「反対」と答えた。別姓によって生じる家庭内の不和を心配する声もあり、成人した子供が、親の選んだ姓を変えるかどうか選択を迫られる事態も起こりうる。家族法に詳しい長崎大の池谷和子准教授に、子供を中心とした問題点を尋ねた。
家族はチームとして同じ呼称に
─
アンケートでは、約半数の子供が、家族が別々の名字になることに「反対」だった。
「親子別姓になり、兄弟別姓にもなるかもしれないと考えた子供が反対するのは自然なことだ。姓は単なる個人の呼び名ではなく、共同体としてのチーム名。子供が育つ環境として、家族が『個人の集団』になってはいけない。全員が助け合う一つのチームとして同じ呼称になるべきではないか」
「個人の集団でも問題はないという人がいるが、家族には損得勘定というものがない。個人は損得で物事を判断しがちになる。法的な権利義務においても、力の強い大人が子供を好きなようにできてしまう危険性も考えられる。また、これまで引き継いできた名字のつながりが消えると、世代間にある特有の時間軸も失いかねない。こうしたことを子供は直感的に分かっているのではないか」
家庭内のもめごとは子供に悪影響
─家庭内の不和を招きかねない
「そもそも夫婦別姓にしたい人は自分の名字へのこだわりが強い傾向がある。生まれた子供にどちらの名字をつけるかは、当然もめる原因になる。夫婦間だけでなく、互いの両親も巻き込むだろうし、嫁姑の確執もひどくなる。家庭内のもめごとは子供にとって悪影響だ」
─法律上で懸念されることは
「別姓にしたけれど、やはり一緒の名字にするということも想定しないといけない。子供の姓を変更するときの問題もある。最初はお父さんの名字で生活していても、物心がついてやはりお母さんの方にしたいとなれば、本人と両親の間でもめるかもしれない。成人したら本人の意思で変更できるようにする必要も出てくる。『嫌だったら後で変更しなさい』と子供にすべての責任を負わせるような制度でもよいのだろうか」
子供の気持ち、どうにもならない
─立憲民主党が野党と共同で国会に提出した民法改正案では、子供の姓は出生時に父母の協議で決定するとされている
「話し合って決めるとなればおそらく1人目はどちらかで、2人目はもう片方の名字で、のような決め方しかできないのではないか。そうすると、きょうだい別姓になる。きょうだいは同じ名字でいたいと子供が願っても、その気持ちはどうにもならない」
─子供や家族を巻き込むことになる
「何でもできる限り好きなように自由にするのがいい、あるいは、困っている人がいるのなら、改善したほうがいという考え方はあってもよいが、それだけで済まないケースも世の中にはある。推進派には、「選択だから嫌な人はしなくていい」「他人には迷惑をかけていない」という発想があるのだろうが、そこがそもそも間違えている」
2025.01.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250104-GNUKUJWJCZNKHJTBSELPBB5IWA/
韓国、男性中心の家守る夫婦別姓「女性は同じ家の人間と認められない」 米国も8割が同姓
「嫁を『男の子を産み、農業を支える』存在とみなし、同じ家の人間とは認めない。そんな排他的な印象がある」
韓国・ソウル市内の女性会社員(50)は同国における夫婦別姓制度についてこう語った。いわば夫の一族と結婚相手の女性の間に明確な線を引く意味での「別姓」という印象を抱いている。
韓国は、姓氏制度が広く普及した19世紀末以降、日本統治時代末期の数年を除き現在まで夫婦別姓を維持してきた。
その姓氏制度は、東アジアで最も「男性中心的」とされる家族制度に起因するものといえる。
例えば、韓国では長男優先の相続制度が形を変えつつ2005年まで続いた。一部地域では、法事に直接参加できるのは同じ姓を持つ父親や息子に限り、女性は料理などの準備作業にのみ従事させる慣習が今も残る。
子供の姓については、
「父親の姓と本貫(本籍地)を引き継ぐ」と民法で規定。例えば、
尹錫悦大統領と金建希夫人の間に子供が生まれていれば、自動的に「尹」の名字を引き継ぐ形となる。
例外的に母親の姓に変更するには、子供の出生時ではなく、両親の婚姻届提出の際に手続きを済ませなければならない。
実家を説得する余力
24年5月にソウル市内で結婚式をあげた陳叡貞さん(33)は、手続きをせず、将来生まれるであろう子供の姓は夫のものとなる。だが、半年以上たった現在もなお苦悩している。
陳さんは
「無条件に父親の姓を子供に引き継がせることには違和感があった。夫も同じ考えだった」というが、
「慌ただしい挙式準備の中で、双方の実家を説得する余力がなかった」。
夫婦の姓を巡る規定は世界で千差万別だ。ただ、
日本の「夫婦別姓推進派」は各国の歴史的、文化的な背景には触れないまま、「海外では別姓が主流」「日本は遅れている」との主張も少なくない。
米国では1970年代にすべての州で結婚後の女性が旧姓を維持できるようになった。基本的には婚姻時に①夫の姓を選ぶ②妻の姓を選ぶ③別々の姓を維持する④両者の旧姓をハイフンでつなげ新しい姓を登録する-というパターンがある。
ただ、調査機関ピュー・リサーチ・センターが2023年9月に発表した報告書によると、米国で異性婚をした女性は79%が相手の姓を名乗っている。
姓を後世に残す動き
中国では中華人民共和国建国翌年の1950年に施行された婚姻法で夫婦別姓が明記された。現在、子供の姓は両親のどちらかの姓を選択するが、韓国同様、一族を重視する価値観から、父親の姓を名乗るケースが多かった。
一人っ子政策が廃止された2016年以降は、兄弟姉妹で父母それぞれの姓を名乗る現象が一部で起きている。両親それぞれの姓を後世に残そうとする動きといえる。ただ、兄弟姉妹で別姓を名乗ることが、学校でからかいの対象になる、といったケースも報告されている。
各国の家族の枠組みについて詳しい立命館大の筒井淳也教授(家族社会学)は
「夫婦の姓に関する制度は国の慣習によって異なる。時代や価値観の変化に合わせて利便性や公平性などの観点から米国やドイツでは夫婦別姓が選択できるようになった」と言及。
一方で、
両国では夫婦同姓を選ぶ人が多数派を占めている現状について、「子供も同じ姓になったほうが親としての証明が容易となるメリットがある」と指摘した。
2025.01.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241103-SWVY65BUBZMHNHPWOQ4FRBSUMU/?outputType=theme_election2024&dicbo=v2-jU7bdXq
櫻井よしこさんが石破茂首相を『新潮』で徹底批判 『毎日』はまだヨイショかい 花田紀凱-花田紀凱の週刊誌ウォッチング(1000)
(月刊『Hanada』編集長)
櫻井よしこさんが『週刊新潮』(11月7日号)の名物コラム「日本ルネッサンス」で石破茂首相を完膚なきまでに批判。・今週の週刊誌では、これ一本読めば十分だ。・まず10月28日、大敗北後の会見。
<石破氏は大敗北のおよそ全ての原因を「政治とカネ」問題に帰した。必要以上に丁寧な言葉遣いで氏は語る。それをよく聞くと、石破氏が本質的に「巧言令色鮮(すくな)し仁」の人だと思えてくる>・・・「国民の皆様方から極めて厳しいご審判をいただいた」「国民の皆様方からご叱責をたまわった」・・・ぼく自身、見ていてテレビのスイッチを切りたくなった。
ある記者が惨敗した石破氏に来年夏の参院選の顔になる資格があるのかと、問うた。
<回答がふるっていた。「真摯に誠実に」「謙虚に誠実に」「国民の皆様方がどのように受け止められているのか」「国民の皆様のお気持ちに沿って」(以下略)>
<石破氏は会見で、賃上げなどこれから実現する政策について延々と語り続けた。続投の意思表示だ。来年の参院選挙も自分の手で行うつもりなのだ。これを厚顔無恥という>・・・で櫻井さんの結論。
<氏のだらしない佇(たたず)まい。総裁選の時はもとより、首相になってからも聞く者をウンザリさせるその時々で変わる発言。批判されるや即反応して世論に従う信念のなさ。こんなことでトランプ、プーチン、習近平各氏らと渡り合えるとは到底、思えない。リーダーが最も忌避しなければならない資質ばかりが目立つのが石破氏だ>
一読、胸のつかえが下りた。・・・これまでさんざん石破氏を持ち上げてきた『サンデー毎日』(11月10・17日号)、この事態をどう扱うのか。
石破氏のヨイショ本を出した倉重篤郎元毎日新聞論説委員長が山崎拓元自民党副総裁にインタビュー。
首相としての必要条件は優れた頭脳、胆力、相手を圧倒するオーラで、<石破氏は少なくとも頭脳と胆力を備え、首相になれば外国首脳を圧倒するオーラが出てくると思った>。・・・まだヨイショかい。
(月刊『Hanada』編集長)
2025.01.01-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250101-QGCTY3PY4JEHLHHXAFDFEVX2LQ/
<独自>選択的夫婦別姓、小中学生の半数が反対、初の2000人調査「自分はしない」6割-ごまかしの選択的夫婦別姓議論
選択的夫婦別姓制度の導入をめぐり、
小中学生のほぼ半数が「家族で名字が変わるのは反対」と考えていることが、産経新聞社の調査でわかった。政府や報道機関などの世論調査は主に成人が対象で、
夫婦別姓の影響を受ける子供たちの考え方が統計的に明らかにされたのは初めて。
将来、自分が結婚した際の別姓も「したくない」との
回答が6割にのぼった。
立憲民主党が夫婦別姓の民法改正案の国会提出に意欲を示しており、石破茂首相も昨年末「議論の頻度を高める」と述べた。
自公与党も前向きな議員が多いことから、次期通常国会での法案成立が現実味を帯びている。
調査は全国の小学4年生以上を対象に実施。協力を得た小中学校に加え、民間の調査会社にも依頼し、中学生約1800人、小学生約150人から回答を得た。
各家庭の事情などデリケートな問題に配慮し、答えたくない場合は答えなくてよいことを徹底した。
年齢層の低い小学生は対象数をしぼった。小中学生ともに学校を通じた場合は、教員が調査の趣旨を説明した上で、立ち会う形式をとった。
その結果、
「選択的夫婦別姓」の意味について
「よく知っていた」「少し知っていた」と、
「まったく知らなかった」「ほとんど知らなかった」はほぼ5割ずつで拮抗。
「法律を変えたほうがよい」「変えないほうがよい」「よくわからない」もほぼ3割ずつに分かれた。
しかし、夫婦別姓で両親やきょうだいと違う名字になることの是非を問うと、「反対」49・4%、「賛成」16・4%、「親が決めたのなら仕方がないので賛成」18・8%、「よくわからない」15・4%で
反対がほぼ半数を占め、積極的な賛成は少なかった。
また、
法律が変わった場合、将来自分が別姓を選択するかについては「家族で同じ名字がよいので別々にはしたくない」がほぼ6割となり、「自分の名字を大切にしたいので別々にしたい」は13・6%だった。
小学生だけにしぼると、
別姓に「反対」は46・2%、自身が「別姓にしない」は55・8%で全体よりやや低かったが、各質問ともに「わからない」を選ぶ傾向が強かった。
男女別で大きな違いはなかったが、
自身が「別姓にしない」は男子(56・7%)より女子(63・4%)のほうが上回った。別姓の是非で「親が決めたのなら仕方がない」と消極的な賛成を選んだ女子(22・6%)も男子(15%)より多かった。
学校や学年別、民間調査会社による調査でも、結果の割合に大きな差はなかった。