戦争当事国と仕掛ける国(戦争の悲劇)-1(Sensou-war-1)


2024.04.13-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240413-ZXAK2ZG3SZPKLPCFMQULRLLBOE/
ウクライナ軍事支援、無償供与でなく「ローンなら」とトランプ氏 下院議長と面会

  【ワシントン=大内清】米共和党のトランプ前大統領は12日、同党のジョンソン下院議長と南部フロリダ州の邸宅マールアラーゴで面会し、ウクライナ支援などを巡り共和党の内紛が続く議会情勢を協議した。面会後の記者会見でトランプ氏は、自身の影響下にある同党保守強硬派の反対で審議が滞るウクライナへの軍事支援について、無償供与ではなく「ローン(借款)」であれば認める余地があるとの考えを示した。

  トランプ氏は会見で、「米国は何十億ドルも(ウクライナに)贈ってきた」と、これまでの軍事支援のあり方に不満を示したほか、「欧州は(米国と)同等の金額を出すべきだ」とも語った。
  民主党のバイデン政権は、ウクライナ向けの600億ドル(約9兆2千億円)を含む総額950億ドルの支援法案を承認するよう議会に求めており、上院では超党派の合意により2月に可決された。しかし、共和党が多数派の下院ではトランプ氏に近い保守強硬派が頑強に抵抗一部はジョンソン氏に議長解任動議の発動をちらつかせ、妥協しないよう迫っている
  12日の面会には、こうしたトランプ派の恫喝(どうかつ)に窮したジョンソン氏が自身の立場を守るため、トランプ氏に事態打開を懇願する意味合いがあったとみられる。
  米議会専門紙「ザ・ヒル」によれば、ローンでのウクライナ支援案は以前から共和党の一部で取り沙汰されてきた。だが、ローン規模決定や制度設計のための新たな立法措置や、ウクライナ側との折衝などが必要となることから、共和党内でも「時間がかかりすぎる」(マコネル上院院内総務)との意見が支配的だ
  バイデン政権は、ウクライナへ供与する兵器は米国内で生産されることから、軍事支援が実質的には雇用創出や兵器産業の生産ライン近代化につながる「国内投資」になっていると説明。ウクライナの弾薬不足に対処するため、下院は迅速に支援を承認するべきだと主張している。


2024.03.14-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20240314-YN7WHIJNS5NIFOVZUNXKNKOL54/
ロシア、ウクライナ側の外国人雇い兵6千人殺害と発表 日本人1人も

  ロシア国防省は14日、ウクライナ侵攻を始めた2022年2月以降、ウクライナ側に雇い兵として外国人1万3387人が参加し、うち5962人を殺害したと発表した。日本人1人も殺害したとしている。根拠や詳細は示しておらず、信ぴょう性は不明
  発表によると、国別ではポーランド人が最多で2960人が参加、うち1497人を殺害した。米国人は1113人が参加し、うち491人を殺害、ジョージア(グルジア)人は1042人が参加、561人を殺害した。日本人は15人が参加したとしている。(共同)


2024.02.03-産経新聞(週刊フジ)-https://www.sankei.com/article/20240203-IWRPCJK5BNHY3LA6WZEGRLGFAY/?outputType=theme_weekly-fuji
「ロシア勝利」濃厚か 欧米の力は低下し、世界は新たな多極化時代に突入 矢野義昭

  ウクライナ戦争は、「ロシア勝利」で終結する見通しが強まっているその後の世界秩序は、欧米の力が相対的に低下し、多極化時代になるであろう。

  ウクライナ軍では、70歳の老兵、14歳の少年兵が確認されているほどの兵員不足に陥っている。弾薬・装備も枯渇している。ジョー・バイデン米政権の軍事支援担当者は今月、「米議会が動かなければ、(弾薬が枯渇し)あと数週間でロシア軍が勝利する」と述べている。
  ウクライナの敗北は、ウクライナを支援してきたNATO(北大西洋条約機構)、とりわけバイデン政権の敗北を意味する。
  米国の一極覇権は終わった。米国は900万人とも言われる不法移民の激増に伴う、「社会の分断」と「経済の混乱」「治安悪化」に直面している。同様に「政治的不安定」にさらされている欧州の混乱も進むだろう
  他方で、戦勝国となるロシアは、国力を増大させて国際的な影響力を拡大するであろう。漁夫の利を得た中国や、グローバルサウスの筆頭に立ちロシアと親密な関係にあるインドなどの大陸国の台頭を招くだろう。
  これまで親米的だった中東やアフリカの諸国の間でも、サウジのBRICS加盟にみられるように、欧米離れが進んでいる
  このような世界的な「バランス・オブ・パワーの変化」の背景には、「海洋国優位から大陸国優位へ」という、地政学的要因がある。
  近代西欧文明は新大陸発見以来、他の文明世界を植民地化して覇権を維持してきた。その優位性の源泉は、大砲を搭載した大型艦船に象徴される「渡洋可能な軍事力」にあった。
  西欧列強の覇権国は、スペイン・ポルトガルから、オランダ、英国、米国へと移り変わってきたが、海洋植民地帝国として覇権を維持してきた点では一貫している。
  これら諸国は、まず海外の資源と労働力に富む地域に艦隊を送り込み、軍事的に征服して植民地化し、得た富を艦隊の護衛の下に本国に送り返し、貿易で多額の富を得る。その富を、また海軍力に注ぎ込んで次の植民地開拓に投入するという手法で植民地帝国を築いてきた
  第二次世界大戦以降、世界的覇権国となったのが米国である。米ソ冷戦もソ連崩壊に終わり、1990年代には、世界中が米国型の自由で民主的な市場経済の国になり、新世界秩序ができると一部では予測された。
  しかし、その予測は当たらず、「新たな多極化時代」が到来している。米国は今後内向きになっていくであろう。日本は米国依存から脱却し、自立しなければならない。資源、エネルギー、食糧とも自給率が低く、少子化の進む海洋国家のわが日本が、どう自立し生き残るかがいま問われている。

矢野義昭(やの・よしあき)
  軍事研究家、元陸将補。1950年、大阪府生まれ。72年、京都大学工学部卒、74年、同大文学部卒。同年、陸上自衛隊幹部候補生学校入校。第1師団副師団長兼練馬駐屯地司令、陸自小平学校副校長などを歴任し、2006年に退官(陸将補)。核・ミサイル問題、対テロ、情報戦などを研究。岐阜女子大学特別客員教授。公益財団法人「アパ日本再興財団」が主催する第16回「真の近現代史観」懸賞論文で「最優秀藤誠志賞」を受賞した。著書・翻訳書に『危機対策必携マニュアル』(勉誠出版)、『核抑止の理論と歴史』(同)、『成功していた日本の原爆実験―隠蔽された核開発史―』(同)など多数。


2023.11/28-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20231128-X6YEXKF4KZNWPFDPISZ6W5PLCA/
露軍死傷率、侵攻後最高か 英分析、東部激戦地で犠牲

  英国防省は27日、過去6週間のロシア軍の死傷率が侵攻後、最高を記録している可能性があると分析した。ウクライナ軍の発表によると、今月の露軍の死傷者は1日の平均が931人だった。多くが露側が攻勢をかけるウクライナ東部ドネツク州の激戦地アブデーフカでの犠牲だと指摘した。

  これまで最も死傷者が多かったのはドネツク州バフムトの攻防が激化した3月で、1日の平均死傷者は776人だった。
  ウクライナは27日、全土的に吹雪に見舞われ、ゼレンスキー大統領は通信アプリに各地で停電が発生したと投稿した。非常事態庁によると、特に天候が悪化した南部のミコライウ州やオデッサ州の幹線道路で渋滞が発生した。
  ロシアが2014年に併合したウクライナ南部クリミア半島も暴風が襲い、一部で洪水や停電が発生した。(共同)


2023.11.18-読売新聞-https://www.yomiuri.co.jp/national/20231118-OYT1T50058/
運び込まれた患者は死亡した我が子…ガザの病院の惨状

  がれきの街 病院は停止・・・パレスチナ自治区ガザで医療支援に当たっていた大阪赤十字病院の看護師、川瀬佐知子さん(45)が17日、日本記者クラブで記者会見し、現地の状況について語った。

  川瀬さんは7月、日本赤十字社からガザのアルクッズ病院(210床)に派遣され、看護技術の指導をしていた。同病院は、イスラエルが「ハマスの司令部がある」として重点的に攻撃するシファ病院の近くにある。馬車やヤギが行き交う街は10月7日の戦闘開始で一変した
  いったんガザ地区内のシェルターに避難し、派遣先の病院に向かう準備をした。しかし、周辺の建物は爆撃で倒壊し、破片も散乱している。看護部長から「こんな危険な所には来ないでほしい」と押しとどめられた。運び込まれた患者が、すでに死亡している我が子だと気づいた同僚の医師もいたという。
  ガザ南部ラファに避難した川瀬さんは、負傷した住民らの傷の処置や、パニック発作に陥った女性らの心理的なケアにあたった。
  11月1日に退避のためエジプトに越境する前、同僚から電話でこう言われた。「自分たちがどんな悪いことをしたの? 本当にミゼラブル(惨めで不幸)だ」。返す言葉がなかった。今月12日、燃料不足でアルクッズ病院の機能は停止。14日には重傷患者を含め、南部への退避を余儀なくされた。
  川瀬さんは記者会見の途中、何度も声を詰まらせた。「ガザに戻りたいか」と問われると、「複雑な思い」と声を落とし、「現地の状況を伝えることが、私にできること。今この瞬間も負傷者は増え続けている」と訴えた。


2023.11.11-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20231111-P46CWKWAXVPDDJ6MTPOZFDZW4M/
EU、弾薬100万発困難 供与計画進まず、米報道

  米ブルームバーグ通信は10日、来年3月までにウクライナに弾薬100万発を供与する欧州連合(EU)の計画が進んでおらず、達成は困難だと報じた。EUが加盟国に説明したとしている。弾薬はウクライナで不足が深刻化する一方、ロシアは自国生産を加速し、北朝鮮からも提供を受けている。

  EUは3月、1年以内に100万発の弾薬をウクライナに供与する計画を承認した。ブルームバーグによると30%しか達成できていない。侵攻が長引く中、弾薬不足は対策が急務となっており、EUは近く開く国防相らの会合で話し合う見通し。(共同)


2023.09.18-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230918-REY7HJMFA5MDHCSVHDDEOMAJMQ/
「敗北なら世界大戦」 ゼレンスキー大統領が警告

  ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領17日放送の米CBSテレビのインタビューで、ウクライナが敗北すればロシアはポーランドやバルト3国に迫り、第3次世界大戦に発展しかねないと警告した。「プーチン(ロシア大統領)を食い止めるか、世界大戦を始めるか、全世界が選ばなければならない」と述べた。

  ゼレンスキー氏はこれまでの米国の支援に感謝を表明した。その上で、追加の軍事支援に対する消極的な意見が米国内で広がっているのを念頭に、世界を守るため「最も高い代償を払っているのは実際に戦い、死んでいくウクライナ人だ」と訴えた。インタビューは14日に収録された。
  ゼレンスキー氏はニューヨークを訪れ、19日に国連総会一般討論の演説で各国に対ロシアでの結束を訴える見通し。21日にはワシントンでバイデン米大統領と会談する。米政府は追加の軍事支援を発表する方針。(共同)


2023.08.18-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220418/k10013586731000.html
「絶対に降伏しない」ウクライナ準軍事組織「アゾフ大隊」幹部

  ウクライナ東部のマリウポリなどでロシア軍と戦闘を続けているウクライナの準軍事組織「アゾフ大隊」の幹部がNHKのインタビューに応じ、降伏を迫るロシア側に対し「われわれには最新の武器があり、効果的に戦うことができる。絶対に降伏しない」と述べ、徹底抗戦する構えを強調しました。

  アゾフ大隊」は2014年、ウクライナ東部の親ロシア派の武装勢力と戦うため義勇兵などで結成され、現在はウクライナの準軍事組織の精鋭部隊として、東部の要衝マリウポリなどでロシア軍と激しく戦っています
  この「アゾフ大隊」の司令官で、首都キーウからマリウポリでの戦闘の指揮をとっているというマキシム・ゾリン氏が17日、NHKのオンラインインタビューに応じました。
  ゾリン氏はマリウポリの戦況について「ロシア軍は1万4000人以上の兵士を集結させ、マリウポリの50%以上を支配している。これに対し、ウクライナ側はアゾフ大隊と海兵隊など合わせて1000人程度が製鉄所を拠点に戦い、そのほかにも重要なインフラを守っているロシア軍部隊は30分に1回、攻撃を仕掛け、1時間に1回、空爆を行い、2、3時間に1回、海上の艦艇からミサイルを撃ち込んでくる。こうした状況が1か月以上続いている」と述べ、圧倒的に数的不利な状況での戦いを強いられていると説明しました。
  そして、ロシア側がマリウポリの防衛にあたっている部隊に武装を解除し降伏するよう迫っていることについて「われわれは数の上では劣るが最新の武器があり、効果的に戦うことができる。アゾフ大隊は戦い続け、絶対に降伏しない」と徹底抗戦する構えを強調し、支援のため、キーウ近郊に配置していた部隊をマリウポリに向かわせていることを明らかにしました。
  また、ロシアのプーチン政権が「アゾフ大隊」をネオナチの極右部隊だと主張し、軍事侵攻を正当化する名目としていることについて「ロシアは長年、アゾフ大隊についてうそを広めてきた。今の状況を見ると、『ナチズム』ということばはプーチンに最も当てはまる。私たちはただ、家族や子どもを守りたいだけだ」と反論しました。
  そのうえでゾリン氏は「われわれがウクライナを守れなかったら、この戦争はあした世界のどこで起きてもおかしくない。いま最も必要なのは、各国政府の支援、そして最新の武器だ」と述べ、外交と軍事面でのさらなる支援の必要性を訴えました。


2023.08.12-東京新聞-https://www.tokyo-np.co.jp/article/269621?rct=national
子どもを川に流し、女性は声を上げて泣いた 「死が当たり前」の逃避行 旧満州生まれの橋本珠子さん(83)

<戦後78年 20代記者が受け継ぐ戦争㊦>さいたま支局・飯塚大輝(29)
  雨がしとしとと降る日だった。「おばちゃんについて行きなさい」。母に言われ、隣の家の女性と川に行った。女性は1歳か2歳になる幼い息子を抱いて川に入り、息子を水面に横たえた。その子は必死に手足をばたつかせながら、下流へ流れていった。女性は川から戻ると母に抱きつき、声を上げて泣いた

  旧満州(中国東北部)の満蒙まんもう開拓団で長野県出身者が入植した黒台信濃村に生まれた橋本珠子たまこさん(83)=長野県飯田市=は当時5歳ぐらいだが、脳裏に今も焼きついている。1945年8月の旧ソ連の対日参戦で、近所の40~50人で帰国を目指し広大な地を歩いていた。成人男性はほとんど徴兵され、父親を含め2人のみ。30人は子どもだった。
  男の子をおぶっていた橋本さんの母が足をけがし、「迷惑をかけられない」と女性が思い詰めた末のことだった。女性は3歳か4歳ぐらいの長男を抱えていた。
  「なぜあんな場面を私に見せたの」。橋本さんは終戦後しばらくして母に聞いた。母は「おばさんを一人で行かせたら、川に身を投げてしまうと思った」と明かした。
  わが子を川に流す、わが子にそれを見せる。最悪の決断の連続。「人が死ぬのは、ご飯を食べるより当たり前だった」。ソ連軍の攻撃や現地住民の略奪を避け、ぬかるんだ茂みを進んだ。道中には、殺害された開拓団や親に捨てられた子どもの遺体が転がっていた。
◆やっとの思いで帰国船に乗り…女性が次々と海に身を投げた
  冬は旧奉天=瀋陽しんよう=の収容所で過ごした。夜、鈍い笛の音が鳴る。ソ連兵の侵入を告げる合図だ。ソ連兵は子どもの前でも構わず女性を襲い、銃殺した。 ある朝、3歳下の妹満津子みつこさんが顔の前で人さし指と親指を近づけて「ちょっとでいいから白いご飯ちょうだい」と母にせがんだ。当時の食料は、死体運びなどの対価として得た穀物のソルガム。願いはかなわず、妹は2日後に病気で亡くなった。
  逃避行を始めてから1年。帰国船に乗った。甲板に出られる時間になるたび、誰かが海へ身を投げた。ソ連兵に妊娠させられ、「家に帰れない」と思い詰めた女性らだと後で知った。住んでいた地区の200人中、帰国できたのは61人、子どもは90人のうち9人だった。 「人が死んでも感情が湧かなかった」という橋本さん。それでも、心には深い傷を負っていた。長男を産んだ約1年後、何日か続けて同じ夢を見た。子どもが息子を抱いて連れ去ろうとする。子どもは川に流れていった男の子だ。「自分が大きかったら、抱っこして連れて帰れたのでは」。罪悪感にさいなまれた。
◆「戦争で人は人間性を失う」…その経験を今、伝える
  橋本さんは昨年、長野県阿智村の満蒙開拓平和記念館で語り部を始めた。ずっと依頼を断ってきたが、きっかけはロシアのウクライナ侵攻だった。ウクライナの子どもが戦火を避け、田舎の親族宅へ向かっているというニュースを見た。「あの時の私たちと同じだ」。自然と涙があふれた。 橋本さんたちは一度、帰国を諦めて集団自決を決めていた。直前に通りかかった日本兵に「生き延びて、この惨状を日本に伝えないと駄目だ」と言われ、踏みとどまった。橋本さんは「戦争で人は人間性を失い、自分の損得しか考えなくなると学んだ。その経験を伝えることが使命」
  私の前任地は橋本さんが住む県南部だった。多数の開拓団を送り出した地域で、帰国後の苦労もよく聞いた。橋本さんも学校の弁当が用意できず「満州乞食」と言われたという。多くの帰国者が荒れ地に再入植し、今では果樹園が広がる。
  戦争に人生を翻弄ほんろうされ、平和を願う橋本さんたちの存在を県外でも知ってもらいたいと思い取材した。実は、私の祖父も旧満州生まれ。祖父は当時を語りたがらないが、話を聞かないといけないと思った。「伝える」ためには「聞く」ことだ。戦争経験者に話を聞いてみてほしい。

満蒙開拓団 - 日本国内の農村の困窮や人口増加への対応、国境防衛などの目的で、旧満州国(1932〜45年)に全国から約27万人が送り込まれた。敗戦後は関東軍に置き去りにされ、ソ連軍や現地住民の襲撃、病気や飢え、集団自決などで約8万人が死亡したとされる。多数の中国残留邦人も生んだ。長野県は県南部を中心に全国最多の3万3000人を送り出した。

  ロシアのウクライナ侵攻は1年を超えた。日本でも敵基地攻撃能力の保有や防衛予算の倍増が現実味を帯び、きな臭さが漂う。太平洋戦争終結から78年。戦争の悲惨さを忘れていないか。今年も20代の記者が、過ちを繰り返さないとの思いで戦争体験者を取材した。あの戦争は遠い歴史になり、生の声を聞く機会も減りつつある。その貴重な時間を記録し、次の時代へとつなぐ。


2023.08.11-東京新聞-https://www.tokyo-np.co.jp/article/269450
魚雷発射レバーを手に叫んだ「くたばれ」 14歳で志願した元海軍特別年少兵・鈴木忠典さん(94)

<戦後78年 20代記者が受け継ぐ戦争㊤>デジタル編集部・小寺香菜子(29)
  機関銃の弾が飛び交い耳をかすめた。当たれば致命傷。それでもかまわず「くたばれ」と叫び、魚雷発射のレバーを引いた。 14歳で海軍に志願し、インドネシア中部に送り込まれた鈴木忠典さん(94)=東京都大田区。戦場では敵だけではなく、亡くなった仲間にも思いやりを持てなかった。「それが戦争のむごたらしいところだ。戦争ほど惨めなものはない」
  秋田県横手市出身。6人兄弟の5番目で「特徴も何もない、ぼんくらな子どもだった」という。そんな少年の心に、海軍艦隊が堂々と隊列を組んで進むニュースがまぶしく映った。1943年、14歳のときに海軍特別年少兵に志願。海軍横須賀海兵団に入団し、水雷学校の特別訓練科で魚雷の発射方法などの訓練を受けた。

海軍特別年少兵 1941(昭和16)年、14歳以上16歳未満の少年を採用し、将来の中堅幹部候補として養成するために始まった。戦局の悪化で第一線に投入され、採用された約1万7000人のうち、5000人余りが命を落としたとされる。2005年の映画「男たちの大和/YAMATO」(佐藤純弥監督)の題材にもなった。

◆「死ぬことを教える学校だ」
  入校式での校長の言葉をいまだに覚えている。「死ぬことを教える学校だ。君たちは太平洋の防波堤になってもらいたい」日本は劣勢でも、鈴木さんは「よしやるぞという勇気が余計に出てきた。戦死した、手柄を立てたというようなニュースでいっぱいだから。いつの間にかそういう雰囲気の中に入ってしまう」
  末に戦地行きが決まり、3日間の休暇が与えられた。「母親の手を握ってから行きたい」と思ったが、帰るには片道19時間。あきらめた。故郷へ向かう列車が通る上野駅15番線ホームに立ち敬礼した。「戦死するかもしれません。国のために戦死したのを親孝行と思ってください」

  翌44年2月、インドネシア中部セレベス島マナドの海軍基地に配属された。ある日、港から25キロ先に敵の艦隊を発見し、鈴木さんにも攻撃命令が下った。魚雷2本を積んだ小さな魚雷艇に8人が乗り込んで出撃。敵艦まであと3キロの地点で発見され、機関銃で応戦された。
  銃弾の雨の中、「突っ込め」「くたばれ」と叫んで近づいた。指揮官の命令で魚雷を発射し一目散に引き返した。「後ろを見たら、ものすごい火柱が上がって、音がしている。当たった、当たったと仲間の肩をたたきながら喜んで帰った」
◆8隻のうち3隻が帰らず
  しかし、この日攻撃に向かった8隻のうち、3隻は帰ってこなかった。24人ほどが戦死したことになる。それでも「悲しいとは特別思わなかった。いつ自分たちもやられるかわからない。戦争っていうのはそういうものなんだね」。
  その後、魚雷の補給が止まり、鈴木さんは配置換えで、潜水艦に乗り硫黄島や沖縄に武器や食料を輸送する任務を担った。終戦を迎えた時は、訓練科で同期だった300人中、219人が亡くなっていた。
  翌年、実家に戻った。「背中を流してやる」と一緒に風呂に入った母親は、ぼんくら息子の背中にしがみついて泣いた。「くたばれ」と叫んだ話をすると、父親は「くたばれっていうのは、人間の言うことじゃないんだ。そういう心になってしまうのか」と涙をこぼした。「私は運良く帰ってきたからいいけど、何万人も亡くなった。戦争ほど惨めなものはないって、その頃分かったよな」
◆「戦争がぴんと来ないんじゃないかな その方が幸せ」
  今、学校などで体験を話す機会もある。熱心に聞く子もいる一方、あくびや居眠りをしている子もいる。「年齢が違いすぎると、ぴんと来ないんじゃないかな。むしろその方が幸せだよな、戦争を知らないから」
  確かに、戦後生まれの私にも当時の様子を想像するのは難しい。でも話を聞き、できる限り思いをはせ、伝えることはできる。私がこの仕事に就いたのは「地域の人の声を届けたい」からだ。少年の心をも変えてしまった戦争が再び起きないよう、体験者の声を伝える報道を続けたい。
  ロシアのウクライナ侵攻は1年を超えた。日本でも敵基地攻撃能力の保有や防衛予算の倍増が現実味を帯び、きな臭さが漂う。太平洋戦争終結から78年。戦争の悲惨さを忘れていないか。今年も20代の記者が、過ちを繰り返さないとの思いで戦争体験者を取材した。あの戦争は遠い歴史になり、生の声を聞く機会も減りつつある。その貴重な時間を記録し、次の時代へとつなぐ。


2023.08.05-TBS NEWS DIG.-https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/643134?display=1
「ここに永遠にいるかもしれないと思った」ロシアに連れ去られた13歳の少女 施設で受けた“再教育”恐怖の4か月間【戦争と子どもたち】
TBSテレビ「つなぐ、つながるSP 戦争と子どもたち 2023→1945」取材班
(1)
  今も終わりが見えないロシアによるウクライナ侵攻今回の侵攻で最大の戦争犯罪とされているのが子ども連れ去りだ。ロシアが連れ去ったのは、生後4か月の赤ちゃんから17歳まで、その数およそ2万人。TBSテレビの戦後78年特番「つなぐ、つながるSP 戦争と子どもたち 2023→1945」(8月12日(土)午後3時30分放送)では、助け出された子どもの1人に話を聞くことができた。

“軽い気持ち”で参加したキャンプで・・
  7月上旬、ウクライナの首都キーウ。待ち合わせ場所の公園に母親と2人で現れたのは、カテリーナさん、13歳。白いTシャツにモノトーンカラーのバッグを下げ、流行に敏感な中学生という雰囲気だ。
  南部ヘルソンに住むカテリーナさんは、去年10月からおよそ4か月間、ロシアが支配するクリミア半島にある施設に送られたあと、自宅に帰ることができなくなった。きっかけは、学校で誘われたキャンプに参加したことだった。
  カテリーナさん(13)
   「(案内には)クリミアのエウパトリアに行ってリフレッシュできると書いてありました。初めてのキャンプで、リラックスしたいと思っていました」軽い気持ちでクラスメートとキャンプへの参加を決めたという。10月7日の朝にバスで出発し、夜にクリミアに到着。年齢別のグループに分けられたという。
  カテリーナさん(13)
   「宿泊棟に連れて行かれ、10歳から12歳、12歳から13歳のグループで棟ごとに分けられました。男子用と女子用のシャワーとトイレが各階に1つずつありました」
   カテリーナさんのグループは52人で、シャワーやトイレは男女別に1つずつ。施設は想像していたものより簡素だったが、当初、友達と過ごす時間は楽しかったという。
   しかし、予定していた2週間が経つと、キャンプの運営側から突然「期間を延長する」と言われたのだ。
  カテリーナさん(13)
   「私たちは夜に映画を見たり、パフォーマンスを見たりするホールに集められ、家には帰れないと言われました。情勢が不安定なことが理由だと。2週間滞在して、家に帰ると思っていました・・・」・・・家に帰れないと知った時、どう感じましたか?
  カテリーナさん(13)
   「怖かったです。もう二度と家に帰れないかもしれない、私たちはここに永遠にいるかもしれないと思いました。それは恐ろしいことで、言葉になりません…」
   12月、カテリーナさんらはクリミア・エウパトリアの別の地区にある施設に移された。4、5人の相部屋だったが、部屋にシャワーとトイレが付いていて、前の施設より少し環境は良くなった。しかし、そこで待っていたのは、ロシア人になるための“再教育”だったという。
  カテリーナさん(13)
   「朝、目覚めると、まず体操をします。体操の前にロシア国歌が流れるのですが、国歌を聞かされている間、立っていないといけません。立たない場合は、その理由を紙に書いて説明させられていました」
   キャンプのカリキュラムには学校に行く時間も含まれていたが、授業の内容はロシア語とロシア文学、数学、英語で、ウクライナ語の授業はなかったという。
   アメリカの研究機関によると、こうした収容施設は43か所あり、子どもたちを「ロシア化」するため、ウクライナ語を禁じ、ロシア語を話すよう強制される場合もあるそうだ。カテリーナさんとともに収容されていた子どもたちは、みな一様に帰りたがっていたというが、それは簡単なことではなかった。
  カテリーナさん(13)
   「施設の管理者に『いつ帰れるの?』と聞くと、『海を泳いで行ったら家に帰れるよ』って。『冗談はやめて、真剣に答えてくれますか?』と言うと、『君の住む街がロシアの領土になったら家に帰れるよ』と・・・」・・・絶望感のなかで、カテリーナさんにさらに悪いニュースが入った
  カテリーナさん(13)
   「年が明けたら、私たちが孤児院に引き渡される可能性があるという話が出始めました。すぐに(携帯電話で)母に伝えました」・・・カテリーナさんは幸い、母親のヴィクトリアさんと連絡をとることができていた。ヴィクトリアさんは娘を取り戻すために様々な選択肢を試みたというが・・・。
  カテリーナさんの母 ヴィクトリアさん(37)
   「 私は自力でクリミアから彼女を連れて帰ろうとしました。 しかし、クリミアとの境で止められました。私のウクライナのパスポートの問題で、入れないと言われました。毎日涙が出て、寝るときも泣いて、仕事に行くときも泣いていました。 とてもつらかったです」
   その後、ボランティア団体の協力のもと、ヴィクトリアさんは7日間かけてポーランド、ベラルーシを経由してロシアに入国し、クリミアへ渡った。キャンプ出発からおよそ4か月後の今年1月末、カテリーナさんはようやく親元に戻ることができた
(2)
  ロシアは何のために「子どもの連れ去り」を行ったのか。連れ去りについて研究を進める、アメリカの専門家はこう説明する。
イェール大学 サニエル・レイモンド人道研究室長
  「子どもたちの連れ去りには3つの目的があると見ています。1つは再教育です。子どもたちを親ロシア派のカリキュラムに沿ってロシア語で教育し、ロシアが支配しているドンバス地方とクリミアに戻すことを目指しています。2つ目は、ロシア国内向けのPRです。ロシア国民に対し、違法な侵略行為を『人道的な行為』だとすり替えるための広報キャンペーンなのです。そして3つ目は、子どもたちを交渉の駒として使うことです」
ーー子どもたちの連れ去りを指揮している人は誰ですか?
イェール大学 サニエル・レイモンド人道研究室長
  「基本的に、指揮系統の頂点にはプーチン大統領がいます。彼はウクライナの子どもたちを簡単に養子にすることができるよう、ロシアの法律を変えました。また、子どもたちを引き取るロシア国民に、子ども1人当たり月額200ドル以上の手当を与えました
  ロシア側は「両親の許可を得ている」「無理矢理連れてきてはいない」と主張。あくまで保護しただけ、と“連れ去り”を否定している。
イェール大学 サニエル・レイモンド人道研究室室長
  「子どもを持つ人や、大切に思う子どもがいる人はよく考えてほしい。もし彼らが、どこにいるのかわからないとしたら・・・。ある日銃を持った男たちがやってきて、あなたの腕から子どもを奪い取ったら・・・。どう感じるでしょうか」
  ロシアに連れ去られた子どもたちのうち、親元に戻れたのは400人足らず。未だ、1万9000人以上が連れ去られたまま

TBSテレビ「つなぐ、つながるSP 戦争と子どもたち 2023→1945」取材班






2023.05.11-東洋経済-https://toyokeizai.net/articles/-/664791
ウクライナ戦争が今後の国際秩序を規定する
(理由戦争の始まり方、戦い方、終わらせ方が問われる

-(神保謙/慶應義塾大学総合政策学部教授、国際文化会館常務理事、APIプレジデント)
(1)
【特集・G7サミットでのウクライナ支援(第5回)】
   ロシアのウクライナ侵攻から1年以上が経過したものの、未だに戦争収束の道筋は見えない
  ロシアの近隣諸国に対する武力行使は、近年でもジョージア紛争(2008年)、クリミア半島併合(2014年)、シリア介入(2015年)など枚挙にいとまがない。それでも、主権国家の政権転覆と占領を目的とする侵略行為であること、また国連安全保障理事会の常任理事国の行為であることにおいて、ロシアのウクライナ侵攻は極めて秩序破壊的だった。

  現代の国際安全保障秩序の前提は、国連憲章第2条4項に明記される領土の保全や政治的独立に対し、武力による威嚇や行使を慎むことにある。国際法上の武力行使の例外は、憲章51条における個別的・集団的自衛権の行使と、憲章第7章における集団安全保障に限られる。
  この基本的ルールに背いて他国を公然と侵略する国に対しては、国際社会から厳しいペナルティを課されることで秩序の前提は維持される。しかし公然たる武力行使がむしろ利得を生み出し、ペナルティも生じないとすれば、この秩序の前提は崩壊する。
  ロシアのウクライナ侵攻が国際安全保障秩序にどのような変化をもたらすかは、現在進行している戦争の始まり方、戦い方、終結の仕方に大きく依存する。ウクライナ戦争がなぜ始まったかは、武力侵攻に対する抑止力と抑止失敗の教訓として記憶される。戦争がどのように戦われたかは、現代戦の勝利と敗北、利得と損耗のプロスペクト(見通し)に影響を与える。そして、何より戦争がどのように終結するかは、今後の侵略行為の起こりやすさにかかわってくる。
  換言すれば、ロシアのウクライナ侵攻後に世界の安全保障秩序を軌道回復できるかが、問われているのである。国際社会がロシアの侵略行為を歴史的失敗に追い込むことができるか、それともペナルティなく追認してしまうかによって、安全保障秩序の基盤は大きく変化するからだ。国際社会はまだその最終的な答えに至っていない。

戦争はどのように始まったか:抑止失敗の教訓
  ロシアのウクライナ侵攻はなぜ起こってしまったのか。その原因について、プーチン大統領の偉大なロシア復活への野心(=選択した戦争)と、ロシアの地政学的懸念(=選択せざるを得なかった戦争)の対比に関する論争がある。しかし原因はどうあれ、仮にプーチン大統領が侵略の意思を固めたとしても、なぜロシアの侵略を抑止できなかったのか(抑止の失敗)は、国際安全保障秩序におけるより重要な論点である。
  抑止力が成立するためには、相手が有害な行動をとったとしても利得が得られず、むしろ重大な損害が生じることを損得勘定にかけ、相手の行動を思いとどまらせることが必要となる。相手の侵略行為に対する反撃によって、相手に耐え難い損害を与えることが、懲罰的抑止の基本的考え方である。もう一つの抑止力は、相手が有害な行動をとったとしても、防御能力や強靭性によって作戦目的を達成できないようにし、相手の行動を思いとどまらせることだ。これが拒否的抑止の基本的考え方となる。
  戦争開始前に、ロシアとウクライナの軍事力は明らかにロシア優位だった。ウクライナには、ロシアに耐え難い損害を与え得る反撃能力は存在しなかった。ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟国であれば、集団防衛の原則によって反撃能力を調達することができたであろう。しかし、当時のウクライナの安全保障を支えていた国際協定は、アメリカ、ロシア、イギリスがウクライナに安全の保障を約束した拘束力のない「ブダペスト覚書」(1994年)に過ぎなかった。実際、ロシアのクリミア半島併合、ドンバス軍事介入、ウクライナ侵攻に対して、同覚書は何の役にも立たなかった。
(2)
  しかしNATO加盟国でないウクライナに対しても、アメリカや欧州諸国が任意に軍事介入する可能性を示唆し、ロシアの予見される行為に厳しい制裁を課すことにより、ロシアの行動を抑制する道筋は残されていた。しかし、アメリカ政府は早々にウクライナに地上軍を派遣することを否定し、欧州諸国も軍事介入の意思を示さなかった。プーチン大統領の戦略計算における損失の見通しが低く見積もられたことは、想像に難くない。
  また侵略行為に対する強靭性(防御)に関しても、ロシアがウクライナ軍の抵抗能力、ウクライナ国民の団結、欧州諸国の対ウクライナ支援に関する見通し、ロシアに対する経済制裁を過小評価していたことは明白である。ロシア軍の戦力優位を利用して、迅速かつ効果的にウクライナを制圧できると考えたのであろう。これが明らかな自らへの過信と相手に対する過小評価であったことは、その後の戦争の経緯が証明している。
  戦争の始まり方における教訓は、侵略する意図を持った指導者に侵略のコストを過小評価させたことにある。NATOが軍事介入の可能性を強く示唆し、ウクライナ軍の強靭性や苛烈な経済制裁によってロシアに甚大な損害が及ぶことが事前に示せていれば、この戦争は防げていたかもしれない。
戦争の戦い方:継戦能力の維持と防御優位
  2022年2月の戦争開始から1年間で、ロシア・ウクライナ戦争は4つのフェーズ----初期のロシアの電撃作戦の失敗と北部撤退戦、ロシア軍の東部2州制圧と南部侵攻を経た東南部4州の併合、ウクライナ軍の反攻・反転攻勢(ハルキウ・ヘルソン)とロシア軍の追加動員、戦線の膠着と打開に向けた欧州諸国の支援とウクライナ軍兵装の転換----が展開した。
  この戦争の経過において、もっとも特筆すべきは、ウクライナ軍が組織的抵抗力と継戦能力を維持し、ロシア軍の作戦遂行能力を拒否し続けたことだった。
  ウクライナ軍の抵抗力・継戦能力を支えた決定的要因は、ウクライナ軍の防空能力が維持され、ロシア軍が各フェーズにおいて制空権を獲得できない環境下で、地上戦を継続できたことにある。ウクライナ軍は米軍およびNATO諸国から防空システムの供与や情報支援を受け、ロシア軍の効果的な航空作戦と制空権獲得を困難にした。また、地上では地理的要因を生かした遊撃戦術や携行型の対戦車・対空ミサイルの効果は顕著で、榴弾砲や多連装ロケットによる砲兵火力でもロシア軍に多大な損耗を与えた。
  ロシア軍はウクライナ軍に対して圧倒的な機動部隊(戦車・機械化歩兵)と火力の優位を誇りながらも、ウクライナ軍の抵抗により甚大な損耗を被っている。戦争開始から1年間でロシア軍は全軍が保有する戦車の半数近い1500両以上を喪失し、歩兵戦闘車両の喪失も2000両を超える。ロシア軍が効果的に機甲戦による攻勢作戦を展開できなかったことにより、激戦地においてはしばしば第一次世界大戦を彷彿させる塹壕戦が展開されるようになった。両軍の戦況の膠着は徐々に消耗戦の様相を強めていった。
(3)
  今後の戦況の変化を見通すことは困難であるが、西側諸国によるレオパルト2やM1エイブラムス等の戦車の集中投入によってウクライナ軍の機甲戦を抜本的に立て直し、NATO諸国から提供される戦闘機の投入によって航空戦を優位に展開できれば、ウクライナ軍が東部および南部において戦局を打開し、領土奪還のための攻勢作戦へとフェーズを移す可能性がある。
  しかし、ロシア軍も追加装備の動員や、ミサイル対地攻撃の強化によってウクライナ軍の攻勢を阻止し、さらに追い込まれればワイルドカードとしての戦術核兵器の使用も視野に入れざるを得ない。ロシアが戦争エスカレーションや核兵器の使用を示唆して、NATO諸国の直接的な軍事介入を抑止する構図には変化がない。
  戦争の戦われ方における教訓は、継戦能力の維持と持続性・強靭性を担保することによる防御優位の軍事態勢の重要性である。継戦能力の維持には指導者・軍・国民の士気を前提にして、組織的に軍事作戦を遂行できる能力、中でも武器・弾薬の生産・供給能力を系統的に維持し続ける能力が重要となる。こうした防御優位の軍事態勢によって、作戦遂行を拒否し、軍事侵攻を成功させないことを示したことが、国際安全保障秩序への大きな教訓となる。
戦争の終わらせ方:今後の国際安全保障秩序を規定
  ウクライナ軍とロシア軍の双方が継戦能力を維持する中で、ウクライナ戦争の早期終結の見通しは立たない。しかし、この戦争がどのように終結するかは、今後中長期にわたる国際安全保障秩序に決定的な影響を与えることは確実である。
  ウクライナ戦争の終結には、交渉による両当事者の停戦・和平合意、いずれか一方の軍事的勝利(もしくは優位性を固定化した状態)による終結、消耗と厭戦による戦闘維持能力の喪失による停戦という主たるシナリオがある。千々和泰明氏が「戦争終結の理論」(『国際政治』第195号、2019年3月)で論じたように、「妥協的な和平」と「紛争原因の根本的解決」にはジレンマが生じやすい。
  前者については、早期の妥協的和平は戦争による人的・物的犠牲を抑えるだろうが、その間の優勢勢力側の優位を確定し、将来の危険(当事国のさらなる主権侵害や国際安全保障秩序の劣化)を増すことにつながる。ロシア・ウクライナ双方に早期停戦を促すことは、ロシアが侵略によって獲得・支配した地域の現状を固定化することに結びつく。それは、結果として侵略戦争の利得を是認する態度と切り離すことは困難である。
  しかし後者の紛争原因を根本的に解決すること、すなわちウクライナが侵略された国土を回復(2月24日以前の状況に回帰)することは、ウクライナ軍が攻勢を続けて戦況を打開して東南部地域の実効支配を再獲得するか、ロシア軍の損耗率を高めて組織的な戦闘能力を低下させるか、ロシアに対する経済制裁を強化して国家として戦争を継続する能力を奪うか、いずれかの方法を追求する以外にない。このいずれもが、甚大な人的・物的・経済的な損失を伴うものとなる。
  ロシアに対する経済制裁が十分に効果を上げていないことも、戦争を長期化させる原因となる。ロシア連邦統計局が発表した2022年の国内総生産(GDP)は、前年比-2.1%に過ぎなかった(ウクライナは前年比-30%とみられる)。経済制裁の影響によりロシア国内の個人消費や生産活動は落ち込んだが、輸出の要である原油・天然ガスの価格高騰がGDPの下支えに寄与したとみられている。リーマンショック時には-7.8%(2009年)、新型コロナウイルス感染拡大の影響時に-2.7%(2020年)だったことと比較しても、経済制裁の効果は限定的であることを物語る。
  重要なことは、ロシアのウクライナ侵攻が歴史的に失敗であると位置付け、戦争を可能な限り早期に終結させることである。ウクライナ軍が剥奪された領土を奪還する権利を支持し、その軍事作戦を支援するとともに、ロシアの継戦能力とそれを支える国家的体力を奪うことが、現時点での解である。そのために国際社会が努力すべきことはまだまだ多い。
(神保謙/慶應義塾大学総合政策学部教授、国際文化会館常務理事、APIプレジデント)

2023.02.16-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/4ecc1f9f190a82ca74c36cc727c61523ff4907b4
ロシア、ウクライナの子供連れ去り6千人超 収容施設で「再教育」 米報告書

  【ワシントン=大内清】米エール大の人道問題研究所は15日までに、ウクライナへの侵略を続けるロシアが生後4カ月から17歳までの子供少なくとも6000人を占領地域から連れ去り一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島や露本土にある収容施設で組織的な「再教育」を施している疑いが強いとする調査報告書を発表した。

  戦争犯罪や「人道に対する罪」に当たる可能性が高いと非難している。 報告書は米国務省の委託を受けたもので14日付。露政府の発表や報道内容、交流サイト(SNS)への投稿、衛星写真などを分析し、ロシア側がウクライナ人の子供らを収容している施設が少なくとも43カ所あることを突き止めた。
  それらの多くはクリミアや黒海沿岸地域、モスクワ周辺などに以前からあったサマーキャンプ施設を流用したもので、一部はウクライナから数千キロ離れたシベリアや極東地域でも確認された。
  また報告書は、子供の連れ去りは「露政府の中央によって統制され、あらゆるレベルでの当局の関与」の下で行われていると分析。
  その主要な目的は「ロシア中心の愛国教育や軍事教育」を施すことにあるとした。 ウクライナでは昨年2月のロシアによる全面侵攻以降、東部ドンバス地方(ドネツク、ルガンスク両州)や南部ヘルソン州などの露占領地域から子供が連れ去られるケースが多数報告されており、ウクライナ側は昨年11月までにその数が1万人を超すと発表している。
  今回の報告書は、ロシアの公開情報などから被害者数を少なくとも6000人」としたが、実際はこれよりも「はるかに多いとみられる」と指摘した。
  ロシア側は、昨年9月に一方的に併合した東・南部4州の住民は「ロシア人」だなどと主張し、収容施設は孤児を保護したり医療サービスを提供したりするためのものだと説明。ロシア人の里親との養子縁組なども行っている。 報告書は、子供の連れ去りは紛争地域での文民保護などについて規定した国際人道法に抵触する恐れが強いと主張。子供たちに関する情報開示や親族との再会支援、中立的機関による収容施設への立ち入り、一方的な養子縁組の即時停止などを勧告した。


2023.02.10-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20230210-WR7SLE5KGJKARDDTUCNXXZYXI4/
露ミサイル、ルーマニア領空通過と主張 ウクライナ軍

  ウクライナ各地で10日、ロシア軍によるミサイル攻撃があり、ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、ロシア軍が黒海から発射した巡航ミサイル「カリブル」2発がモルドバルーマニアの領空を通過し、ウクライナ西部上空に入ったと明らかにした。ルーマニアは北大西洋条約機構(NATO)加盟国。ロイター通信によると、ルーマニア国防省は10日、ミサイルはモルドバは通過したが、国境から北東に約35キロ離れた地点を通過したと発表し、領空通過を否定した。

  各地への大規模なミサイル攻撃は1月14日以来。ウクライナの電力会社ウクルエネルゴはミサイルや無人機(ドローン)による攻撃で、東部や西部、南部で複数の電力施設が被害を受け、各地で緊急停電を実施したと発表した。ハルシチェンコ・エネルギー相は南部ザポロジエ、東部ハリコフ、西部フメリニツキー各州で水力発電所などが攻撃を受け、厳しい状況にあると明らかにした。(共同)


2023.02.02-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/qa/2023/02/02/28462.html
賄賂にスマホ検査… ロシア支配地域から逃げた女性の証言
国際部記者松田 伸子-2008年入局 -社会部を経て現在、国際部
(ジェンダー問題、特に性と生殖の問題を取材))

  「ロシア軍に協力して働き始めた人もいます。私はそうしないという決意を持って必死で避難したのです」こう話すのは、ロシア軍が掌握した地域に住んでいた女性です。
  そこから逃げ出すためには、スマートフォンを兵士に検査されたり、警官に賄賂を渡したりしなければならなかったといいます。女性はどうやって逃げ出すことができたのか?話を聞かせてくれました
(国際部記者 松田伸子)
話を聞かせてくれたのは?
  ウクライナ東部ドネツク州のマリウポリという都市で独り暮らしをしていたミレーナさん(41)です。
  マリウポリは東部の要衝で、ウクライナ軍とロシア軍の激しい戦闘が続き、2022年5月にロシア軍が完全に掌握しました。その後、プーチン大統領は9月にマリウポリのあるドネツク州など東部と南部の4つの州の一方的な併合を強行し、支配の既成事実化を進めようとしています。
  ミレーナさんは、マリウポリでIT関連の仕事をしていましたが、5月にポーランドに避難しました。
  ポーランドはウクライナの西側と国境を接しており、通常であれば首都キーウを経由して西に向かうはずですが、わざわざ“敵国”ロシアを通り、バルト三国経由で避難せざるを得なかったということです。その間、常に危険と隣り合わせだったと話してくれました。
(以下、ミレーナさんの話です)
今のマリウポリの状況はわかりますか?
  人づてに聞いたり、現地のニュースやSNSの発信を見たりしていると、町やその周辺には武装した兵士たちがたくさんいる危険な状態で、抵抗などできる状況ではないようです。また、町の中には検問がいくつもあって、車や通行人をチェックしていて、常に身元の確認があるといいます。
  もしも「親ウクライナ」と口を滑らせたら、拷問する場所に連れて行かれてしまうようです。だから、黙っていないといけないのです。一方で、ロシア軍に支配されたことで、ロシア軍に協力して働き始めた人もいるといいます。食べ物を得るため、爆撃されていない農地や家を守るためです。ただ、私は攻撃してきた人のために働くなんて許せません。彼らは、爆弾を落として戦車で走り、銃を突きつけているんです。なんで、そんな人たちに従わなければならないのか?好きなところに住み、好きなことをしていたのに、なぜ彼らのために働かなければならないのか?私は、そうしないという決意を持って必死で避難したのです。
ロシア支配下の生活はどんなものでしたか?
  3月に入って、私たちが住んでいたところに爆撃が迫っていたので、母親の家の地下室に避難しました。電気、インターネット、通信は使えなくなっていました。攻撃される可能性があったので、1週間は地下室から顔を出すことすらできませんでした。その後、水をくみに行く時だけ外に出ました。でも、井戸の近くには地雷が仕掛けられたり、スナイパーが隠れたりしているんです。井戸の近くにはいくつもの遺体がありましたから。ですから、なるべく井戸に行かなくて済むように、雨水や雪解け水をためて布で濾過したあと、沸騰させてから使っていました。
  私たちが住んでいた地域は、ロシア軍に占領され、食べ物などを保管していた倉庫もロシアのものになってしまいました。ロシア兵たちは、もともと私たちのものだった食べ物を市民に配布すると言って、倉庫を開放しました。倉庫に入るためには何時間も長い列に並ばなければならず、1度に10人くらいの女性が一緒に入って、食べ物を袋に入れるのですが、その間、周りには6、7人の兵士がこちらに銃を向けていました。
  その後も、ロシア側が「人道支援」だとする物資が届き始めたと聞いたので、5キロ先の場所まで取りに行ったこともあります。ただ、近くで爆撃が行われている中を行くのはとても怖かったです。それなのに、一日中待ってももらえないこともあるのです。
  一方で、ウクライナ側からの物資は届かず、ロシア軍が途中で止めたり、運んできたものを盗んだりしたと聞きました。物資を運んできたボランティアを殺したという話もありました。
避難する機会はありましたか?
  ラジオを聞いていると、人道回廊と呼ばれる避難ルートが設置されるという知らせがあったので、母と私は集合場所に行って、かなり長い時間待ちました。でも、避難のためのバスは来ませんでした。
  国連や赤十字のバスが90台出るとラジオでは言っていたのですが、実現しなかったのです。結局14台しか出ず、そのうち11台は、マリウポリの人を乗せてドネツク州の親ロシア派が支配する地域に向かい、ウクライナの別の都市に避難できたのは3台で79人だけだったということです。
  「次こそは」と思って、何度も待ちましたが、その後、人道回廊の話はなくなってしまいました。
どうやって避難することができたのですか?
  通信がつながる携帯電話を持っていた人から借りて、友人に電話をしました。彼に、避難できる車を手配してくれないかと頼んだのです。500~600米ドル払えば避難できるとのことでした。親ロシア派の地域内を経由してロシアに入るのです。それ以外にマリウポリから避難する方法がありませんでした。しかも、車の手配を信頼できる人に頼まないと、強盗に遭ったり殺されたりする危険もありました。幸運にも私たちを乗せてくれた人は約束を守ってくれる人で、とても感謝しています。
  最初、車に乗っていたのは母と私の2人だけでしたが、途中から8人乗りの小さなバスに乗り換えてロシアに入りました。一緒に乗っていたのは、全員マリウポリから来た人たちでした。ロシアに入るまでに、何か所も検問を通りました。
検問ではどんな検査を受けるのですか?
  まず、スマートフォンを調べられました。私はデータをすべて消していたのですが、ロシア側の担当者は「なぜ何もないのか」と聞いてきました。私は「新しいスマートフォンだからだ」と答えてその場をしのぎましたが、チェックを受けるたび、とても怖かったです。

  こうした検問とは別に、ロシアの治安機関による検問もありました。40分ほどにわたって「特別軍事作戦についてどう思うか?」「ロシアの指導者についてどう思うか?」などについて聞かれました。でも、当然“本音”を言ってはいけないのです。もしそんなことをしたらドネツク州のどこかの地下室にでも入れられることになったでしょう。だから、「中立的なこと」を言わないといけないと思いました。その時点から洗脳が始まっているとも感じました。男の人は、服を脱がされてウクライナへの愛国を示すタトゥーがないかどうかを調べられていました。
検問以外に必要なことはありましたか?
  賄賂が必要でした。警察官らしき人がいろいろ聞いてきて、いちゃもんをつけてくるのです。なので、賄賂を渡すしかないのです。200米ドルを渡したこともありました。ロシアに入るまでに、1500米ドルほどもかかりました。マリウポリから100キロも離れていないロシアに行くだけなのにとても高いですよね。そして、彼らはウクライナの通貨は受け取りません。だから米ドルを持っていたことはとても幸運なことでした。外貨がないと生き残ることができません。外貨がないと、ドネツク州やロシアの収容所に行くほかありません。
ロシアに入ってからどうでしたか?
  検問を通って、ヨーロッパを目指しました。ただ、ロシア国内を移動している時はとても怖かったです。ウクライナのことをよく思っていない人たちの国を通っているわけですから。実は私はモスクワに7年半住んでいたことがあります。その頃は、とてもきれいな街並みが好きでした。でも、今ではモスクワに住んでいたことは私の恥です。住んでいた時から、戦争があるかもしれないと感じていました。ウクライナ人に対する憎悪が醸成されていたんです。
  モスクワを通る時、窓の外を見られませんでした。あんなに好きだったのに。その国の人たちが私たちを爆撃しているのです。
現在はどうしているのですか?
  エストニアの国境で車を降りました。エストニアに入ってからは、ホテルに数日滞在したあと、今の避難先のポーランドに移動しました。大きな寮のような所にいて、ここには200人ほどのウクライナの人たちが避難しています。
  IT関連の仕事はリモートで続けていますが、収入は大きく減ってしまいました。ポーランドで仕事を探すため、ポーランド語を勉強していて、これから試験も受けるんです。今は、英語も勉強しています。でも、ウクライナに戻りたいという気持ちは今も変わりません。ここに避難している人の多くは、長期的な計画を立てられず、とりあえず来年の春までの短期的な計画しか立てられないのです。
  自分の家がないことが一番つらいです。帰りたいですが、マリウポリはロシアとの国境に近いですから。まだまだ戦闘は続くでしょうし、ロシアにはミサイルがまだあると思いますし。
  戦争が長引き、とても疲れています。でも、私のロシアに対する憎しみ、軽蔑は大きくなっています。一方で、マリウポリを愛する気持ちは変わりません。ですので、ほんの少しですが、ウクライナ軍に寄付をしています。
  また、SNSを通じてウクライナ側から見た戦争について発信を続けています。ロシア人が1人でも目にしてくれたら、自分たちがやっていることの愚かさに気付いてくれるかもしれませんから。

国際部記者松田 伸子-2008年入局 -社会部を経て現在、国際部
(ジェンダー問題、特に性と生殖の問題を取材)


2023.01.31-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20230131-OPOMI4VCUFI7BG7YAPAIDG5V2E/
露芸能人に締め付け 侵攻反対、保守派がやり玉

  ウクライナ侵攻を支持せず出国したロシアの芸能人らへの締め付けが強まっている。今月、軍事作戦をちゃかした歌を公開した人気コメディアンを保守系団体が告発ベテランや若手歌手も次々とやり玉に挙げられ、交戦長期化で高まる社会の閉塞(へいそく)感に拍車をかけている。

  告発されたのはテレビのお笑い番組の常連で俳優、脚本家のセミョン・スレパコフさん(43)。自作の「子守歌」をユーチューブで公開した。3人の子供の母が、最年少の子は若すぎて戦場に行けず、2番目のIT技術者は欧州に逃げて「裏切り者になり」、「カフェラテとチーズケーキで国を売ったりはしない」と志願兵になった長男は戦死したと嘆く内容だ。公開後約4日で視聴回数が120万を超え、「天才的」などとコメントが書き込まれた。
  タス通信などによると、プーチン政権与党「統一ロシア」の下院議員が25日、現在イスラエルにいるとされるスレパコフさんの国籍剝奪を主張。保守派でつくる「国民歴史遺産保護基金」は、軍の信用失墜を禁じた刑法に違反するとして連邦捜査委員会に告発した。
  ロシアでは昨年2月の侵攻後、テレビで活躍していた多くの芸能人が出国。有力紙コメルサントによると、政府系「第1チャンネル」でレギュラー番組を持っていた人気司会者イワン・ウルガントさん(44)や、女性歌手モネトチカさん(24)がモスクワなどで今年2月以降に予定していたコンサートは中止になった。2人とも作戦に反対を表明していたという。
  ベテラン歌手
ワレリー・メラッゼさん(57)も1月初旬にドバイのコンサートでウクライナ民族主義者のスローガンを口にしたとして批判を浴び、ロシア国内の公演が相次いで中止に追い込まれている。(共同)


2023.01.17-UKRINFORM-https://www.ukrinform.jp/rubric-society/3653617-ukuraina-guo-minnoyi-shanggaroshiatono-zhan-zhengheno-sheng-liwo-que-xin.html
ウクライナ国民の95%以上がロシアとの戦争への勝利を確信

  最新の世論調査によると、95%以上のウクライナ国民がウクライナがロシアとの戦争に勝利することを確信していることがわかった。

  キーウ国際社会学研究所がウクライナ科学アカデミー社会学研究所の発注を受けて2022年12月19日から25日にかけて実施した世論調査の結果を発表した。
  プレスリリースには、「95%以上が、ロシアとの戦争におけるウクライナの戦争を確信している(編集注:75.3%が「完全に確信している」、20.4%が「どちらかといえば確信している」、1.6%が「どちらかといえば確信していない」、0.9%が「全く確信していない」と回答)。その際、圧倒的多数の回答者(63.2%)が来年(2023年)中に、あるいはもっと早く勝利することを期待していると回答した。26%だけが、戦争は1年以上続くと答えた。つまり、社会には、私たちの勝利という結末を迎える形でのロシアとの軍事衝突の迅速な終結への著しい期待が存在するということだ」と書かれている。
  また、ロシアに対する勝利のためにウクライナに提供されている国際社会の支援について10点から10点までの評価を尋ねたところ、63.8%が高評価(7〜10点)し、32.1%が中評価(4〜6点)を選択したと回答した。
  発表にはまた、調査結果により、ウクライナでは常に社会や政治に関して否定的な評価があったが、全面侵攻開始以降、自国国家の価値認識が大きく変化していると捉えられる回答が出ていると指摘されている。例えば、ウクライナ国家の効率の評価が著しく改善しており、ウクライナの未来に対する期待も大きく改善しているという(76.2%の回答者が国の状況は良くなると回答)。個々の国家に対する姿勢は、2021年時点の調査では、概して否定的な姿勢だったが(55.8%が否定的、6.6%が肯定的)、今回の調査では概ね肯定的的な姿勢に変わっている(46.6%が肯定的、26.1%が否定的)。
  また、科学アカデミー社会学研究所は、これまでも目にしてきた「国民アイデンティティ」の強化の傾向は、戦時中も継続していると指摘している。具体的には、「自らを何よりまず何者とみなすか?」との設問に対して、「ウクライナ国民」との回答が2021年には62.6%だったところ、今回の調査では79.7%となっており、これに対して、その他の「出身地アイデンティティ」は低下しているという(例えば、「居住する村、地区、町の住人」との回答は、2021年は20.8%だったが、2022年は7.9%となっている)。

  発表には、「私たちは、2015年から続いているネイション・国民の『結晶化』の時期は、全面的戦争によって、ネイション・国民『結集』の時期へと変わったと分析している。私たちは、実質的にウクライナでの国民国家の形成プロセスは終結したと考えている。そのため、次の国家規模の重要な課題となる、『完全な欧州統合』の必要性が取り下げられることはないだろう」と書かれている。
  同時に、世論の多くの面で変化が生じているにもかかわらず、人々の倫理・心理的状態を示す調査では、社会における冷笑主義」(一般的倫理規範に対する見下した態度)を受け入れる姿勢には、大きな変化は見られていないと指摘されている。肯定的な変化は見られるものの、同時に大半の回答者(51.6%)が他者をシニカルな態度で見続けているという。他方で、発表には「同時に2つの肯定的な点もある。1つは、大半の回答者が、ウクライナの人々の助け合いを真心によるものだと見ていること。このようなことは以前はなかった。もう1つは、冷笑主義の指数では、ウクライナ社会が同指数を初めて調査した1992年水準に達したこと(同年から同指数は悪化していった)である。この傾向が改善を続けていくのではないかという期待はある」と書かれている。
  また、倫理・心理状態のその他の指数は概して肯定的な数字が出ているという。例えば、1人1人の人生はあらかじめ決められたもの、というような運命論を信じる回答者は2002年には59.3%だったが、2022年には35.1%に減少しているとし、これはウクライナ社会における自主性が向上したものだと指摘されている。また、自分の力へ信頼があると回答した者は、2021年には42%だったが、2022年には56.4%となったという。
  心理的強靭性について、圧倒的多数(69%)の回答者が、戦争に関連する問題を勝利の時まで耐える準備があると回答したことが指摘されている。また、楽観主義を示す設問としては、「来年(2023年)、私たちの生活は大なり小なり改善すると思うか」との設問に、67.9%がそう思うと回答している点が指摘されている(11.8%が改善は一切ないと回答)。なお、2021年11月の同様の設問時は、「改善すると思う」との回答は20.2%、「改善はないと思う」との回答は40.5%だった。
  今回の世論調査は、ウクライナ科学アカデミー社会学研究所の発注で、キーウ国際社会学研究所が実施したもの。調査は、クリミア自治共和国と一時的被占領下ドンバス地方を除く、ウクライナの成人を対象として、調査手法はCATI方式(computer-assisted telephone interviews)で携帯電話番号を用いて行ったもの。調査期間は、2022年12月19日から25日まで。回答者は計2007人で、理論的誤差は最大±2.5%だと説明されている。



2022.12.31-日本経済新聞-https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB3129L0R31C22A2000000/
朝日新聞カメラマンが負傷、キーウで攻撃続く

  ウクライナの首都キーウ(キエフ)で31日に爆発があり、朝日新聞社広報部は日本時間同日夜、映像報道部所属の関田航カメラマンが負傷したと明らかにした。キーウではロシアによるとみられる攻撃が同日も続いた。

  朝日新聞社の広報部担当者は負傷した経緯やけがの程度などについては「情報収集をしており確認中」としている。キーウのクリチコ市長はSNS(交流サイト)のテレグラムで日本人ジャーナリスト1人が負傷し、病院に搬送されたと明らかにしていた。
  クリチコ氏によると、ロシア軍によるとみられる攻撃で、少なくとも1人が死亡し、20人が負傷した。14人がキーウの医療施設に入院した。ロイター通信によると、空襲警報が発令され、ホテルでも爆発が起きた。
  ロシアはウクライナへの攻撃を強めている。2022年2月に始まったウクライナ侵攻が長期化するなか、大みそかにもキーウを含む全土で攻撃を続けることで同国国民の士気をそぐ狙いがあるとみられる。


2022.12.13-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20221213-3PDT3MJFQRL5NGO73BOKL67REQ/
「プーチン氏は核使わず」 報復懸念とウクライナ

  ウクライナのゼレンスキー大統領は12日までに、ロシアのプーチン大統領が核兵器を使用する可能性について、プーチン氏は自身に対する報復を恐れ核兵器を使わないだろう」との見方を示した。ウクライナの勝利まで、ゼレンスキー氏自身が大統領であり続けるとも述べた。米動画配信大手ネットフリックスの番組での発言をウクライナメディアが伝えた。

  ウクライナでは各地で停電が続いており、シュミハリ首相は11日、国内の全ての火力、水力発電所がロシアの攻撃で損傷したとフェイスブックに投稿。ゼレンスキー氏は12日のビデオ声明で、ロシアが今後大規模なミサイル攻撃を行う準備があり、ウクライナ全土で一斉に停電を起こそうとしていると主張した。
  英国防省は12日の戦況分析で、ロシアが侵攻開始以降に制圧した地域の54%をウクライナが奪還したとの見解を示した。(共同)


2022.12.04-zaqzaq by 夕刊フジ(KYODO)-https://www.zakzak.co.jp/article/20221204-RHJADBQIBZOWTDXYZTS22GHDS4/
中央アフリカで囚人勧誘か ロシア軍、ウクライナ激戦地への戦闘員補充 反乱軍に参加の殺人やレイプ犯が対象 米ニュースサイト報じる

  ロシアの民間軍事会社「ワグネル」が中央アフリカで囚人を戦闘員に勧誘し、ウクライナ東部の激戦地に投入しているとの疑惑が3日までに浮上した。米ニュースサイト「デーリー・ビースト」が複数の中央アフリカ軍関係者の話として報じた。反乱軍に参加して殺人やレイプに関与したとされる囚人が対象としている。

  紛争の続く中央アフリカでは政府がワグネルから強力な軍事支援を受け、制止できない状態という。他国の主権を侵害して兵力増強を図るこの姿勢が事実とすれば、ロシアへの国際社会の非難が一層高まるのは必至だ。
  ある関係者は、10月以降にワグネルの雇い兵が収容施設を訪れ、囚人を解放するようになったと述べた。別の関係者は、ワグネル側が、ウクライナなどでの戦闘員の補充に「緊急を要する」とし、20人超を解放したと明かした。
  ワグネルはプーチン大統領と近い新興財閥の一人、プリゴジン氏が創設。ロシア政府は公式に存在を認めていないが、ウクライナ侵攻後に存在感を増し、プリゴジン氏の発言力も強まっている。
  ウクライナのほか、政情が不安定なアフリカ地域の複数国での展開が指摘され、マリでは軍事政権の対テロ作戦を支援する一方、民間人とイスラム過激派メンバーを無差別に殺害したとの疑いが取り沙汰されている
(共同)


2022.10.15-JIJI COM-https://www.jiji.com/jc/v8?id=20220708mv-neuengamme&dicbo=v2-dae29c73cb5c2a9310c521188d4c044a
ナチスに虐殺された20人の子どもたちを忘れない人々 映画「北のともしび」
(時事通信社 若林哲治)(2022.7.8)

光とバラの収容所跡で出会う魂
  第2次大戦末期、ドイツのユダヤ人強制収容所で20人の子どもたちが、ナチスによって人体実験に使われた末、「絵画のように」壁につるされて殺された戦後30年余りたって史実の端緒が明らかにされ、徐々に進んできた調査は欧州の子どもたちに受け継がれている。7月30日公開のドキュメンタリー映画「北のともしび ノイエンガンメ強制収容所とブレンフーザー・ダムの子どもたち」は、その残虐で悲惨な史実とともに、収容所跡に流れる澄んだ空気を描いた。東志津監督は「死んだ人と生きている人が出会う場所のような雰囲気を映像にしたかった」と話している。

  映画は、柔らかな日が当たる庭でブランコに揺られる子どもたちの笑い声から始まる。続いて屋内の場面。若者たちが順番にマイクの前に立ち、亡くなった子どもの名前と出身国、年齢を1人ずつ読み上げる。敷地内には、バラに囲まれてセピア色の写真と名前が埋め込まれた墓碑が並んでいる。
  舞台は、ドイツ北部の都市ハンブルクの郊外にあるノイエンガンメ強制収容所と、廃墟になっていた小学校ブレンフーザー・ダムの跡に整備された記念館。この収容所は38年に設置され、終戦までにユダヤ人、捕虜ら10万人が収容されたという。
  1944年11月28日、アウシュビッツ強制収容所から20人の子どもたちが移送されてきた。5歳から12歳の男女各10人。さしたる知識も実績もないナチスの医師が、戦争の狂気の中で出世欲に駆られて画策した、結核の人体実験のためだった

  成果が挙がるはずもなく、衰弱した子どもたちは、ドイツの敗色が濃くなった45年4月20日夜、ブレンフーザー・ダムの地下室で、戦争犯罪の証拠隠滅を急ぐナチ親衛隊によって殺害される。
  この史実は、70年代末にドイツ人ジャーナリスト、ギュンター・シュヴァルベルクによって発掘されるまで埋もれていた。報道された子どもたちの写真を見て遺族らが情報を寄せ、名前や出身国、家族関係、アウシュビッツへ送られた経緯なども分かっていく。
絵画のように壁につるされて
  東監督がこの話と出合ったのは2010年、文化庁の新進芸術家海外研修制度でパリに1年近く滞在していた時だった。日本から持参したヴィクトール・E・フランクル「夜と霧」を読んでいて、序章にあった記述に目が止まったという。

  「(殺された時に)子どもが首を縄でつるされて絵画のように壁に掛けられていたという一文があって、目の前にその光景が浮かんで忘れられなくなってしまって」現地を訪れる。1日かけて施設と展示をじっくり見学した。
   結核菌を体内に植え付けられた子どもたちが、経過観察のために脇の下のリンパ節を切除された写真。一人ひとりの家庭環境、家族との楽しそうな写真、親きょうだいの消息などからは短い一生の足跡が垣間見え、「本当にあったことなんだな」と衝撃を受けた。
  現地まで行く衝動に駆られたのは、パリに1年間住んでいたからではないかという。
  「観光で行くには楽しい所だけど、生活者として1年間身を置いてみたら、不平等とか差別とかあらゆることを目撃しました。自分自身も研修でいるだけで身の置き場もなく、パリの中に飛び込みたいけど入り口が見えない中で、ユダヤ教徒の家に生まれただけで命を奪われてしまった子どもたちに、引き付けられるものがあったんですね」
穏やかな雰囲気を映像に
   しかし、ノイエンガンメでは、広大な敷地と手入れの行き届いた庭や建物を流れる空気にも、強く引かれた。
   「起こったことは悲惨だけど、今はとても牧歌的で、職員やボランティアも穏やかで、死んだ人と生きている人が出会う場所のよう。死んだ人たちが、怒りというより穏やかな雰囲気でそこにいるように感じられたので、この雰囲気を映画にしたいなと」
   14、15、19年と撮影に通った。ノイエンガンメ記念館が中心になって、欧州各国の中高校生らが今も20人の親族を尋ねるなどの調査・学習を続けているほか、周辺の学校でも先生たちが自主的にプログラムを組んでいる。亡くなった少年の兄が語る重い言葉に聞き入る場面など、カメラは学び合う子どもたちの姿を追った。

  毎年4月20日に追悼式が、5月6日に収容所解放記念式典が行われ、戦争を知る世代やその子世代なども、穏やかに霊を慰め、学び、考えて帰っていく。
  「アウシュビッツなどは被害者が訴える場所ですが、ドイツ国内の記念館はドイツの人たちがなぜああいうことが起きたのか、自分たちで考えるために整備されていると言った人もいます。今の人たちが過去を忘れないように集まって、死んだ人たちを発見していくことで、自分がいる時代や先のことを考えるきっかけになる」
若い人たちへ、戦争テーマに3作目
  東京都江東区のケーブルテレビで中国残留婦人の番組を制作し、映画にしたいと思って07年に第1作「花の夢 ある中国残留婦人」を発表した。14年には原爆をテーマにした「美しいひと」を完成させ、本作が3本目。

  「中国残留婦人の取材で、30年や40年生まれる時代が違うだけでこんなにも違う運命をたどった人たちがいて、その人たちがまだ目の前にいるのに、みんなが当たり前のように知らずに浮かれて生きている感じは何だろうという、やり切れなさがあって。戦争とそこに生きる人間の心理とか善悪は、自分の中で一番格闘のしがいがあるテーマです」
  「美しいひと」では、被爆者は日本人だけではないとの思いから広島、長崎で被爆した朝鮮半島出身者や欧米の捕虜を訪ね歩いた。原爆もホロコーストも多くの作品が作られ、多くの人たちが見てきたが、「でも本当に知っているのかなと。みんなが描いてきたことを見て知っているつもりになっているだけだと、私自身も思う」。時代や視点の違いによる捉え直しを、若い人たちに見てほしいという。
  「今の若い人たちは、いろんなことで傷ついて希望が持てなくなっていると思うけれども、心の中の大事なものは手放さないでほしいなと。その思いで映画を作りたいと思っているんです」

  「北のともしび」は7月30日から東京・新宿のケイズシネマで。上映会の問い合わせはS.Aプロダクションへ。
 ◆東 志津(あづま・しづ) 東京都出身。大学卒業後、企業のPR映画やテレビ番組の製作などに携わり、2007年に最初の長編ドキュメンタリー映画「花の夢 ある中国残留婦人」を発表。09年、文化庁新進芸術家海外研修制度によりフランス国立フィルムセンター(アーカイブ部門)で1年間研修。14年「美しいひと」を製作。著書に「『中国残留婦人』を知っていますか」(岩波ジュニア新書)。
(時事通信社 若林哲治)(2022.7.8)


2022.08.23-Yahoo!Japanニユース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/cdfc4762811c0a6f7f6e599994d2bd7323b2a0ff
ウクライナ侵略半年 双方の軍死者2万数千人超 停戦なお見えず

  ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始し、24日で半年となった。両国が多数の兵員と兵器を投入した戦争は、激しい攻防を経て膠着(こうちゃく)の度合いが強まっている。ウクライナ軍や欧米当局の推計で、両国の軍関係者の死者は少なくとも計2万数千人を超えるとみられるが、譲歩を拒む双方に停戦を探る動きはない。民間人の犠牲者も増え、露軍が占拠したウクライナ南部の原発周辺で交戦に発展。国際社会を巻き込んだ熾烈(しれつ)な戦争は、さらに長期化する懸念が強まっている。

  ウクライナ軍参謀本部の23日の発表では、同国軍は露軍の1900両以上の戦車、230機以上の戦闘機などを撃破。ザルジニー総司令官によると、自軍の戦死者数は約9千人という。
  一方、露国防省は22日、ウクライナ軍の戦車や歩兵戦闘車4300両以上、260機以上の戦闘機を破壊したと主張している。
  ロシア側の発表の根拠は明確ではなく、露軍の死者数について米中央情報局(CIA)のバーンズ長官が7月中旬、「1万5千人近く」との推計を示した。
  欧米当局は、露軍がウクライナ側を上回る死者を出しているとみている。
  ただ、ロシアのプーチン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領とも、歩み寄る意向をみせていない。ゼレンスキー氏は今月18日、「露軍が完全撤退しない限り、停戦交渉には応じない」と表明。
  6日も「戦争は交渉で終わるが、そこに至るまでの道は長く多くの血が流れる」と述べた。 ロシア側も、自国で産出する天然ガスなどの燃料について、欧州向けの供給を絞るなどし、燃料の需要期を迎える冬場に向け欧州を揺さぶる。ウクライナを支援する欧米の結束に、ほころびが生じることを狙い、長期戦を辞さない姿勢だ。


2022.08.16-東洋経済-https://toyokeizai.net/articles/-/612052
ウクライナ戦争は少なくとも新年まで続く公算大-補給線を組織的に狙いロシア軍を消耗させる戦略

  ウクライナ軍はここ数週間、戦略的に重要な地域やヘルソン市を占領するロシア軍の補給線を組織的に狙う戦術をとっている。だからと言って、奪還に向けた大規模な攻勢が近いという意味ではない。

  米国や欧州から新型兵器を供給されてはいても戦力的に劣勢のウクライナ軍は、ドニエプル川に面し戦争初期にロシア軍の手に落ちたヘルソン市への大規模な攻撃を今のところ避けている。代わりに注力しているのが敵を消耗させる作戦で、米国が供給した高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」など長距離兵器でヘルソン市西岸にあるロシア軍の補給に利用される橋などを相次ぎ破壊した。

  ウクライナは南部の反転攻勢を準備している可能性が高いが、前進できる自信があり、ロシア軍の兵站(へいたん)や補給線にさらなる打撃を与えられる場合にのみ実行するだろうと、事情に詳しい西側当局者2人が語った
  前進すれば攻撃を受けやすくなるリスクもあるため、ウクライナ軍は慎重だという。
  戦争開始から6カ月近くが過ぎ、ウクライナ東部ドンバス地方の完全制圧に向けたロシア軍の進軍は遅々としている。一方でヘルソン州ではウクライナ軍の圧力が強まり、ロシアは南部戦線への兵力増強を余儀なくされた。ヘルソン市西岸のロシア軍をおびき出し分断する戦略は、奪還への猛攻撃ではなく、占領軍を消耗させる数週間もしくは数カ月にも及ぶ長期的な戦いの先触れである可能性がある。

  ウクライナがヘルソンを数カ月以内に奪還する「可能性」はあるが、それより早い時期に実現する公算は小さいと、アレストビッチ大統領府長官顧問は10日のインタビューで述べた。ウクライナの領土の「完全な解放」を達成するため、戦争は少なくとも新年まで、恐らく来年夏まで続くかもしれないとの認識も示した。


2022.08.16-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20220816-36OILFAVPJP7RARR55P7UI3EOY/
ザポロジエ原発の安全協議 露国防相と国連総長が電話

  ロシア国防省は15日、ショイグ国防相とグテレス国連事務総長が電話会談し、ウクライナ南部でロシアが占拠する欧州最大のザポロジエ原発の安全について協議したと発表した。ロシアは国際原子力機関(IAEA)による原発立ち入りに協力する意思を示している。

  ザポロジエ原発には今月初めから砲撃などが相次ぎ、ロシアとウクライナは相手による攻撃だと互いを非難。重大事故につながるとの懸念が国際社会で高まっている。
  国連安全保障理事会は11日、同原発への攻撃を巡り公開会合を開催。IAEAのグロッシ事務局長は原子炉1基が緊急停止したと説明した。
  ショイグ氏とグテレス氏は7月にウクライナ東部ドネツク州の親ロ派支配地域にあるウクライナ人捕虜収容施設で捕虜約50人が死亡した爆発に関しても話し合った。(共同



2022.07.22-NHK NEWS WEB(国際ニュースナビ)-https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2022/07/22/23915.html
もうひとつの戦争犯罪? ~破壊されるウクライナの文化財~
(国際部 田村銀河・吉元明訓)

  がれきと化す博物館、燃え上がる修道院。
  ウクライナ国内ではいま、ロシアによる軍事侵攻後次々と歴史的な建造物など文化財が破壊されています。その数は160か所以上にものぼるとされていますが、全容はわかっていません。
  「文化財への攻撃は私たちのアイデンティティーに対する攻撃だ」(ウクライナの文化相)そんな声も高まる中、関係者へのインタビューや、現場の映像・衛星画像の分析から、その被害の実態を探りました。
(国際部 田村銀河・吉元明訓)
次々と破壊される文化財
  ウクライナへの軍事侵攻の開始以降、文化財が破壊されたという報告があとを絶ちません。
  ウクライナのゼレンスキー大統領が6月4日にSNSに投稿した動画には、修道院の聖堂が激しく燃え上がる様子が映し出されていました。
  ウクライナ東部ドネツク州にある「スビャトホルシク大修道院」は16世紀ごろに建設された、ウクライナ国内に3つしかないウクライナ正教会の「大修道院」のひとつです。
  聖堂は、旧ソビエトの支配下で一度破壊されましたが、2000年代に再建された国内最大級の木造の聖堂です。精緻に丸太が積み重ねられた美しい姿は、巡礼者や観光客を魅了していましたが、ロシア軍が東部に攻勢を強める中で砲撃が直撃し、瞬く間に火が燃え広がりました。

  こちらの動画は、ウクライナ東部ハルキウ州にある「ロゾバ市文化会館」の近くにある監視カメラの映像です。5月20日にロシア軍のミサイル攻撃を受けた瞬間を捉えています。施設には、音楽ホールやダンスホール、映画館などが入っていて、街の文化の中心地でしたが、ミサイルが直撃し、黒煙が大きく上がる様子が鮮明に捉えられています。
ユネスコは早い段階から危機感
  世界の文化や歴史的建造物の保護にあたるユネスコ(国連教育科学文化機関)は侵攻開始直後の3月、すでに危機感を表明していました。声明で「私たちは“過去からの証言”としてだけでなく、未来の“平和と結束の懸け橋”としてウクライナの文化遺産を守らなくてはいけない」と呼びかけましたが、その後も文化財への攻撃はいっこうに収まりませんでした。

  ユネスコは文化財の被害の情報収集を続けていて、7月18日時点で計164の文化財が破壊されたと公表しています。ウクライナ当局は文化財への攻撃は400回を超えると発表していて、被害の実態はまだわかっていないのが実情です。
被害の実態を調べると・・・
  被害を受けたのは、どんな場所で、どれほどの損害を受けているのか。その文化財が破壊されたことを地元の人はどう思っているのか。NHKでは、現地の写真や衛星画像を探すとともに、現場近くにいる人たちを探して連絡をとり、被害の実態を調べました。

  *こちらは東部ドネツク州にある「聖ニコラス教会」です。親ロシア派の武装勢力と戦って命を落とした兵士たちをたたえ、慰霊する場として、2018年に建造されたという比較的新しい教会ですが、3月、ロシア軍による空爆で、シンボルだった黄金のドームや木造の壁が破壊されて崩れています。
  人工衛星から撮影した画像です。攻撃前は整然としていた教会の周辺ですが、攻撃後は色が変わっていて、がれきのようなものが散らばっているのが分かります。地元の人たちにふだんから親しまれている文化財も次々と被害に遭っています。
  *こちらはウクライナ北部のチェルニヒウにある若者向けの図書館、「旧タルノブスキー博物館」です。施設を管理する館長によりますと、19世紀の半ばごろに建てられ、その後、19世紀の終わりごろにこの地域では珍しいゴシック様式の建物として再建されたといいます。しかし、3月、攻撃で変わり果てた姿となってしまいました。屋根や窓枠にあった繊細な装飾や草花に覆われた庭園は見る影もなくなってしまいました。
  *人工衛星から撮影された画像では、建物の形状が崩れている様子だけではなく、隣接する広い競技場にも砲弾かミサイルの跡と見られる大きな穴があいていたり、観客席が大きく壊れたりしている様子も確認できます。
  *そして、こちらは中庭を撮影した写真です。大きなクレーターができているのが分かります。この施設を管理するセルギー・ライエブスキー館長によりますと、3月10日から11日かけて、2発の爆弾の爆発で、建物のおよそ7割が破壊されたということです。図書館から200メートルほど離れたところに軍事施設があるとは言え、文化施設が意図的に狙われた可能性もあるとライエブスキー館長は感じています。

ライエブスキー館長
  「この建物は地元の人にとって、重要なシンボルです。ロシアがウクライナの歴史的な文化財を破壊してウクライナの歴史をなくそうとしているように感じていてとても怖いです」狙われた?
  博物館の現場は

  ロシア軍が意図的に攻撃した疑いが強く指摘されている文化財もあります。
  *東部ハルキウ市の近郊にあるスコボロダ文学記念博物館は「ウクライナのソクラテス」とも呼ばれるウクライナの代表的な哲学者で、詩人でもある、フルィホーリィ・スコボロダが晩年を過ごした家です。ことし、ちょうど生誕300年となるスコボロダはウクライナの500フリブニャ紙幣に肖像が使われているほど、ウクライナ国民、誰もが知る存在です。
  18世紀に建てられた博物館にはスコボロダの著作物や彼が集めた哲学書や詩集、絵画など貴重な資料が展示されていて、毎年数万人もの人が訪れる有数の文化施設です。ところが博物館によると、5月、夜間にミサイルが直撃し、博物館が炎上。一部の展示品などは避難させていて無事でしたが、多くの書籍や絵画が焼けたほか、ミサイルが着弾した屋根や床には大きな穴が空きました。
  そして、博物館の象徴として、館内の中心に置かれていたスコボロダの像。攻撃後、屋根が落ち、黒焦げになりながら、風雨にさらされるようになってしまいました。
  博物館の担当者のオレーナ・リブカさんは、地元では軍事関連の施設は周囲にはなかったにもかかわらず、攻撃を受けたことに大きな怒りを感じていると言います。

スコボロダ文学記念博物館 オレーナ・リブカさん
  「ミサイルで意図的に狙ったのです。文化財が破壊されないよう、ハルキウ州のウクライナ軍は、博物館の周辺に軍事的な施設を一切置かないようにし、できる限り攻撃を受けるリスクが少なくなるようにしていましたが、それでも残念ながら守り切れませんでした。博物館はロシア軍にとって、とても魅力的な標的だったのです。7月6日にはスコボロダの名を冠した教育大学も破壊されましたし、これは文化財への意図的な破壊だとしか思えません。ただの破壊ではなく、私たちの文化の破壊です」

文化行政のトップ “アイデンティティーへの攻撃”
  こうした状況について、NHKのインタビューに応じたウクライナのオレクサンドル・トカチェンコ文化情報相は、プーチン大統領がウクライナ人の存在そのものを否定していることの表れだと訴えています。

オレクサンドル・トカチェンコ文化情報相
  「プーチンは、千年以上の歴史や言語といったウクライナ独自の文化や遺産が存在することを認めていないと何度も強調しています。プーチンがウクライナ人やその領土に対してだけでなく、文化財に対しても攻撃を行うことは、わたしたちのアイデンティティーに対して攻撃をしかけていることとまったく同じなのです」

裁けるか “もうひとつの戦争犯罪”
  文化財は、これまでも戦争や紛争の中でしばしば攻撃の対象になってきました。アフガニスタンのタリバンによるバーミヤンの仏像の爆破や、IS=イスラミックステートよるシリアのパルミラ遺跡の破壊などです。
  戦争で文化財を攻撃対象にしてはいけないと定める国際法もある上、国際刑事裁判所(ICC)は戦争犯罪の定義の一つに「宗教、教育、芸術、科学、または慈善のために供される建物、歴史的建造物、病院及び傷病者の収容所であって、軍事目標以外のものを故意に攻撃すること」を挙げています。
  ウクライナ政府は今後、文化財への攻撃をロシアによる戦争犯罪として追及していく考えです。ただ、民間人への攻撃と同様、文化財への攻撃もその意図があったかどうかを立証していく作業は簡単なものではありません。
ウクライナ文化遺産保全の専門家はー
  2015年からウクライナの文化遺産の保全に関わってきた筑波大学の上北恭史教授は次のように指摘しています。

筑波大学 上北恭史教授
  「『自分たちの文化に対じするものは破壊してもいい』という考え方を持つ人たちがいると、いざ戦争などが起きた時、文化財保護の国際条約が守られないということがこれまでも起きています。ユネスコの文化財保護の取り組みはまだ完全に達成できていません。『相手を理解することによって平和を獲得する』というユネスコの信条を大切にしながらも、文化財保護のために、これまでとは違う、より実効性のある方法を生み出していかないといけないと思います」

取材を終えて
  今回取材した文化財は、いずれも、祈りや交流を通して、人々の記憶や歴史に刻まれてきた場所ばかりです。話を聞かせてくれた人たちからは文化財が突然失われた怒りや悲しみ、やるせなさが伝わってきました。
  みずからのアイデンティティーと深くつながる文化財の破壊は、ウクライナの人たちの心の中に暗い影を落とし、ロシアへの根深い不信感を生み出しているように感じます。
  プーチン大統領は「ロシア人とウクライナ人は1つの民族」などと主張してきましたが、現状は、ロシアとウクライナの国民の間の分断を深めてしまっているように見えます。



2022.07.05-Yahoo!Japanニュース(デイリー新潮)-https://news.yahoo.co.jp/articles/7c4a5eb4f73c52a58ffd67087a6348f456d49fd0?page=1
ウクライナ侵攻“最大のナゾ” ロシア軍もウクライナ軍もなぜ制空権を取れないのか
(1)
  3月16日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44)は、アメリカ議会でオンライン演説を行った。その際、《ウクライナ上空の飛行禁止区域設定や、戦闘機などの提供を米国に求めた》ことをご記憶の方も多いだろう。

  だが、ゼレンスキー大統領の悲痛な叫びは一蹴された。アメリカ側の《ロシアとの交戦に発展しかねないと否定》する態度は、今も変わらない。
  榴弾(りゅうだん)砲は渡すが、戦闘機や攻撃機は供与しない、というわけだ。
  SNSでは「もし西側諸国がウクライナを戦闘機や攻撃機で支援すれば、戦況は絶対に変わるだろう」という声が少なくない。ここではTwitterの投稿から、1つだけご紹介しよう。

  《NATOが空爆すれば、ポパスナもイジュームも容易に奪還できる。ロシア軍は全域から敗走するだろう》  ある軍事ジャーナリストは、「現実の政治を無視し、軍事的な観点のみで考えれば、ネット上の指摘通りです」と言う。
  「仮にNATO(北大西洋条約機構)軍が“多国籍空軍”を編成し、ウクライナの東部や南部戦線でロシア軍の地上部隊を攻撃すれば、戦況が一変するのは間違いありません。ロシア軍をウクライナの領土から完全に追い出し、ロシアが実効支配しているドンバスやクリミアを奪還する
ことも夢物語ではないでしょう」
ロシアの巡航ミサイル
  実際のところ、“多国籍空軍”は荒唐無稽な話ではある。ならば、より現実的なシナリオを想定してみよう。 「アメリカはウクライナに対し何度も、ロシアによる侵攻の可能性を警告していました。そのため、実際にロシア軍が攻撃を開始すると、ウクライナ空軍機はかなりの機数を退避することに成功したのです。
  残ったウクライナ空軍に隣国ポーランドの空軍が協力し、ロシア軍を攻撃したらどうなるでしょうか」(同・軍事ジャーナリスト)

   こちらの場合も、ロシア軍に相当な被害が出るのは間違いない。だが、怒り狂ったロシアがポーランドを攻撃する可能性も高くなる。
   なぜNATO側は、ロシアに対し腰が引けているのか。「ロシアの核攻撃を恐れているからだ」という指摘は多い。
   だが、「ロシアが通常兵器で攻撃することも充分に考えられます」(同・軍事ジャーナリスト)という。
   「ロシア軍は巡航ミサイルを使って、ウクライナを攻撃しています。このミサイルは射程距離が3000キロを超えるものがあり、ポーランド国内を狙うことも可能なのです。もしポーランド空軍の攻撃機がロシアの戦車を破壊したら、ロシアが航空基地をミサイルで報復攻撃してもおかしくないでしょう」
(2)
ヘリも駄目?
   ポーランド側に被害が出たら、ロシアに対して反撃するかもしれない。何より、ポーランドはNATO加盟国だ。集団的自衛権を発動する必要も出てくる。
   「あっという間にウクライナの戦火が東欧に飛び火し、アメリカ軍がロシア軍を攻撃する必要まで生じてしまいます。アメリカだけでなく他のNATO加盟国にとっても、最悪のシナリオであることは言うまでもありません」(同・軍事ジャーナリスト)
    戦闘機や攻撃機でロシア軍と戦うことが無理なら、対戦車ヘリコプターの供与はどうだろうか。
    AFP通信の日本語ニュースサイト「AFPBB News」は4月14日、「米、ウクライナに追加軍事支援 ヘリや火砲も」の記事を配信した。
    記事タイトルにある通り、アメリカはヘリコプターを供与している。だが、自国のものではないのだ。
    記事ではアメリカ国防省が公開した支援リストを報じている。そこに《ヘリコプター「Mi17」11機》とある。これは旧ソ連が開発したものだ。 「ウクライナ空軍のパイロットは、旧ソ連の軍用機しか操縦できません。もしアメリカがウクライナに対戦車ヘリ『AH-64 アパッチ』を供与したとして、運用できれば多大な戦果を挙げられるでしょう。しかし、ウクライナ空軍のパイロットがアパッチを操縦できるようになるためには、相当な時間が必要です」(同・軍事ジャーナリスト)
“珍しい”戦争
   こうした背景があるため、どれだけウクライナ軍が東部と南部の戦線で苦戦していても、NATOは陸戦兵器の供与しか行わないわけだ。
   制空権という用語がある。「敵軍機の航空脅威を完全に取り除き、自軍機で制圧した状態」と定義されている。
   だが、戦争でこんな状態になることは珍しい。そのため最近は、「航空優勢」という用語が使われる。
   上に見てきた理由で、ウクライナは制空権も航空優勢も掌握していない。だが、ロシア軍も全く同じ状態だ。ある意味でウクライナ侵攻は、攻める側も守る側も航空優勢が掌握できていないという珍しい戦争となっている。なぜ、このようなことが起きたのか、前出の軍事ジャーナリストは「ロシア軍は侵攻当初、作戦が非常に杜撰でした」と言う。

   「アメリカ軍は湾岸戦争でもイラク戦争でも、全土に猛烈な空爆を行いました。その上、1週間ほどをかけて、入念な戦果判定を行ったのです。生き残っているレーダー施設がないか、対空ミサイルが隠されていないか、徹底的に調査しました。撃ち漏らしがあれば、更に空爆を行ったのです。こうして、敵軍のレーダー網や航空基地、地上部隊を徹底して無力化しました」(同・軍事ジャーナリスト)
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アメリカ軍との差
 ロシア軍も2月24日、ウクライナ全土に空爆を行った。ところが翌25日には、早くも陸上部隊が進軍を開始した。 「戦果判定に1週間をかけたアメリカ軍とは、あまりにも対照的です。そのためウクライナ軍のレーダー施設や地対空ミサイルは、かなり生き残ったようです。アメリカ軍のように、徹底してウクライナ全土を何度も空爆すれば、航空優勢を確保し、制空権も確立した可能性は高かったのではないでしょうか」(同・軍事ジャーナリスト)

  ロシア空軍は、なぜ空爆を徹底して行わなかったのか──どうやら「行わなかった」のではなく、「行えなかった」のかもしれないという。
  「アメリカ軍のように大規模な空爆を行うには、極めて緻密な作戦計画が必要なのです。多数の軍用機を多数の目的地に向かわせ、空爆を行い、戻ってきた機体は整備する。山手線を秒単位で運行させるようなもので、アメリカ軍は高性能のコンピューターを使って空爆計画を立てます。ロシア軍に、ここまでの能力はないでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)
戦線は膠着
   徹底した空爆を行わなかったため、航空優勢を確立できなかった。そのためロシア空軍の軍用機やヘリは、多数が撃墜されてしまったという。 「生き残った地対空ミサイルや、アメリカ軍が供与した携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)が、ロシア空軍に相当な被害を与えたと分析されています。
  更に今では、ポーランド国境を早期警戒管制機(AWACS)が飛び、ロシアの航空基地を監視しています。ロシア軍機の動きは丸裸になっており、これもロシア軍が及び腰な理由でしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

  かくして、ウクライナ軍もロシア軍も、地上部隊だけが激戦を繰り広げるという、まるで第一次世界大戦のような状態となってしまったのだ。 「今、軍事専門家の多くは、戦線の膠着を指摘しています。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、侵攻が何年も続く可能性を指摘しました。今後も両軍は、航空優勢を掌握できないと考えられます。となると、事務総長の指摘が現実のものになってしまうでしょう」(同・軍事ジャーナリスト) 註:飛行禁止区域設定と戦闘機要請 米議会でゼレンスキー氏(共同通信・3月16日)デイリー新潮編集部


2022.07.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20220702-OPRX6CJEAFO7DLFLLCTQ4WPZ7Y/
親露派、英戦闘員2人を新たに起訴 死刑の恐れ

  ウクライナに侵攻したロシアと一体的な行動をとる、「ドネツク人民共和国」(DNR)を自称する親露派武装勢力は1日、新たに拘束した英国籍の男性戦闘員2人をウクライナ側の「雇い兵」として戦闘に参加した罪で起訴した。タス通信が伝えた。
  DNRは先に英国人2人とモロッコ人1人の戦闘員計3人に同じ罪で死刑を宣告しており、今回起訴された2人にも厳しい判決が下される恐れが強い。

  タスによると、DNRが先に死刑を宣告した3人のうち、2人は判決を不服として上訴した。
  親露派は外国人戦闘員について、戦時国際法のジュネーブ条約で保護される捕虜に該当しない「雇い兵」だと主張して厳罰に処する方針を示し、ウクライナや英国が反発している。親露派は他にも複数の欧米人戦闘員を拘束しているとの見方が出ている。
  親露派は、外国人戦闘員を手荒に扱うことで他の戦闘員がウクライナ軍から離脱するよう仕向けつつ、欧米諸国の揺さぶりを図っているとみられる。
  一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は1日、首都キーウ(キエフ)でノルウェーのストーレ首相と会談後の記者会見で「ロシア軍は侵攻後、わが国に約3千発のミサイルを発射した」と指摘し、欧米による支援の重要性を訴えた。地元メディアが伝えた。
  ウクライナ軍は1日、南部オデッサ沖のズメイヌイ島から部隊を撤退させたロシア軍が同島を空爆してきたと発表。同島からの撤退を「善意」の決定だとした露国防省の主張が虚偽であることが改めて明白になったと強調した。
  東部ルガンスク州のウクライナ軍の最終拠点、リシチャンスクでは2日も一進一退の激しい攻防が繰り広げられている。







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