ルーマニア-1
2024.12.12-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241212-SEFGFSMD4NKHFGX5EHSTBDMCAI/
<主張>ルーマニア選挙 SNS干渉への対策急げ-社説-
民主主義国家が、SNSを悪用した専制国家の選挙干渉にさらされている。
その脅威をまざまざと見せつける事態が東欧ルーマニア大統領選で起きた。
サイバー戦に巧みな中国やロシア、北朝鮮に囲まれた日本にも人ごとではない。・・・ルーマニアの憲法裁判所は6日、「公正な選挙の過程が損なわれた」として11月24日に実施された大統領選の1回目投票を無効とし、選挙のやり直しを決定した。
ロシアの干渉が疑われたもので、民主主義国では異例の司法判断となった。
首位に躍り出たのは、泡沫(ほうまつ)候補と目された親ロシア派のカリン・ジョルジェスク氏である。知名度も目立った政治経験もなく、事前の世論調査の支持率は数%台だった。
「選挙活動費はゼロ」と申告した同氏はしかし、
中国系動画投稿アプリTikTokを活用した選挙戦を展開し、投票では現職の首相ら有力候補を抑え、23%の支持を獲得した。
憲法裁は決定の詳しい理由を公表していない。ルーマニア情報当局は、TikTok上でジョルジェスク氏を不当に「優遇」する情報操作があったとする機密文書を公開した。同氏に関する動画などが約2万5千ものアカウントを通じ、あふれるように拡散し、有権者の投票行動に影響を与えたのである。
同氏の宣伝は政治広告と表示もされず、TikTokの一般ユーザーの目に常に入るよう工作されたとみられる。投稿に関わったインフルエンサーに多額の報酬が支払われた。資金源には暗号資産が使われた疑いも浮上した。文書はロシアなどを念頭に「外国勢力の関与」を指摘した。実際、ロシアによるサイバー攻撃も起きたという。
プーチン露大統領を「愛国者」と呼び、ウクライナ支援に反対するジョルジェスク氏に多くの有権者が共鳴して投票したのは事実である。同氏は「民意の否定」と憲法裁の決定に反発した。憲法裁は民主主義制度を擁護する意味でも、決定の理由を公表してもらいたい。
ロシアは欧米の選挙や国民投票に影響力を及ぼそうと干渉を続ける。日本も昨今の選挙でSNSが多用され、偽情報や中傷の流布が懸念される。SNSを通じた干渉は来年の参院選でも起きうるとみて、政府・国会は対策を急ぐべきだ。
2024.12.07-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241207-772QANCAX5L75C3JC2RSEIP2ZU/
親露派が首位だったルーマニア大統領選の第1回投票が無効に 露の選挙干渉工作を問題視か
【ロンドン=黒瀬悦成】東欧ルーマニアの憲法裁判所は6日、11月24日に実施された大統領選の第1回投票の結果を無効と判断し、
選挙のやり直しを命じる決定を下した。
大統領選は、親ロシア派で極右の大学教授、カリン・ジョルジェスク氏(62)と野党の中道右派「ルーマニア救国同盟」のラスコニ党首(52)との決選投票が今月8日に実施される予定だった。
無名の泡まつ候補と目されていたジョルジェスク氏は動画投稿アプリTikTok(ティックトック)を
駆使した選挙運動を展開して第1回投票で首位を獲得。落選した候補らは、ロシアが選挙に干渉した可能性があるとして憲法裁に選挙無効を申し立てていた。
憲法裁は決定の詳しい理由を公表していないが、ルーマニア政府や情報当局の高官らは、特定の候補に注目を集めることを狙った情報工作が発覚したと指摘し、ロシアが世論操作によって選挙に干渉したとの見解を示していた。
新たな選挙日程は政府が改めて設定する。
ジョルジェスク氏は北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)に懐疑的で、当選したらロシアに侵略されたウクライナへの支援を停止すると表明している。