シーパワーとランドパワー問題-1
シーパワー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シーパワー(英:
Sea power)は、
国家が海洋を支配し、潜在的、顕在的に活用する能力の総称である。海上権力、海洋勢力、海洋力とも呼ばれる。対義語はランドパワーである。
特徴
シーパワーは、
アルフレッド・セイヤー・マハンにより提唱された概念であり、シーパワー超大国自体の意味でも用いられる。海洋は歴史的に
沿岸地域に住む人間の生活と密接に関わり、古代から
海産物の
資源地域や
海運の交通路として活用されてきた。また水域によって妨げられた陸上輸送を媒介するものでもあり、多面的な重要性を持つ。
地政学ではシーパワー超大国は
ランドパワー超大国と対決すると位置づけられている。また、
ハルフォード・マッキンダーは、
イギリス、
カナダ、
アメリカ、
ブラジル、
オーストラリア、
ニュージーランド、
日本などの海島国(インシュラー・パワーズ)と
フランス、
イタリアなどの半島国を指してシーパワー大国としている。
シーパワーは
領海だけでなく、
公海にまでその強制力・影響力を及ぼせる。そのためにシーパワーは広範囲な海洋での自由な活動を確保し、平時・戦時において自国の商船隊・漁船団の自由な航行を保障し、逆に敵対国の航行を妨害・阻止できる。これはシーパワーの基幹的な要素である海上戦力が海洋における高度な機動性と持久性を兼ね備えているからである。また海軍艦艇が持つ政治的象徴性や多様性および海洋の国際性から、シーパワーには国際政治性が兼ね備わっており、外交戦略に大きく寄与できると考えられている。
シーパワーの構成要素は次の通り。- 海洋利用のための商船隊・漁船隊 ・海洋を支配するための
海軍力 ・造船などのための工業力 ・船舶の活動を支援するための港湾施設
国土が海上交通路の要点にあるかどうかの地理的環境、国土に適当な港湾施設が存在するかどうかの地形的環境、海岸線の距離の観点からの国土面積、人口、国民の海洋への理解や愛着といった国民性、海洋への国家の諸政策を遂行する性質が考えられている。
また、W.G.デーヴィッド
海軍少尉は、1882年に
米国海軍協会の
機関紙 "U.S.Naval Institute Procceedings" の懸賞論文に寄稿し当選したエッセイでは、シーパワーの必要条件を以下のように整理した。 ・長い海岸線と良い港湾 ・地理的に恵まれた位置 ・商業保護と海運政策に関する国の立法的位置 ・造船用資材獲得の容易さ ・航海体験人口の多さ ・商船隊保護に必要な海軍 ・できるだけ多くの
植民地
シーパワー勢力
現在または歴史上の代表的なシーパワー国家や政権を挙げる。(「
海洋国家」も参照) ・
フェニキア ・
カルタゴ ・
アテナイ ・
トンガ大首長国 ・
平氏政権 ・
琉球王国 ・
南宋 ・
キルワ王国 ・
スペイン帝国 ・
大英帝国 ・
ドイツ植民地帝国 ・
大日本帝国 ・
ポルトガル海上帝国 ・
オランダ海上帝国
ランドパワー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ランドパワー(英:
Land power)は、
国家が保有する陸地を利用する潜在的、顕在的な能力の総称である。ランド・パワー、陸上権力、大陸勢力とも言う。対義語はシーパワーである。
概要
ランドパワーとは国家が支配下に置く陸地を整備、活用する潜在的、顕在的な能力の総称である。
ハルフォード・マッキンダーにより提唱された
概念であり、地政学においてランドパワー超大国そのものを指す場合もある。陸地は古来より人間にとっての基本的生息地であり、その絶対的な重要性は普遍であると考えられている。故に戦争の最後の勝敗を決するのは陸上戦力と位置づけられる。地政学においては強大なランドパワーの保有国は強大なシーパワーの保有国と対決するものとして位置づけられている。
その構成要素としてはまず基幹的な要素は陸上戦力であり、かつここから派生した陸地とその陸地における住民・資源の支配権である。また陸地を開拓・開発能力、
道路・
鉄道・
高速道路などの交通施設や
自動車や
電車などの交通手段を用いた陸上輸送能力、建築物や施設の建設能力が挙げられる。また陸地そのものの能力として、
農業や
牧畜などの
食料生産能力、陸地に存在する工業材料や
エネルギー資源の保有量などを包括する概念である。基本的に
大陸の大部分を領有する
国家はその量的な観点からランドパワーに優れた国家であり、
島や
半島を領有する
国家は強大なランドパワーを求めることが出来ないと考えられる。
特性
ランドパワーは多様な能力を持っている。その特性には地形への影響とその陸地に居住する住民への支配がある。地形への影響とはすなわち陸上地形を改変することであり、
都市や農場や交通網などの建築物の構築やその土地に存在する資源の収集などを具体的に指し示す。また住民への支配とはすなわち住民を法及び権力を以って組織化・統制・運用することである。敵のランドパワーを拒否する機能もこれに含まれる。
政治・
経済・
戦争・
社会・
治安維持などは全て人間によって行われるものであり、従って住民の支配は大規模な国家を計画的に運営するために不可欠な手段である。
ランドパワー勢力
現在または歴史上の代表的なランドパワー国家や政権を挙げる。(「
大陸国家」も参照)
・
モンゴル帝国 ・ロシア:
ロシア帝国、
ソビエト連邦、
ロシア連邦 ・中国:
元、
大清帝国、
中華民国(1949年以前)、
中華人民共和国 ・日本:
鎌倉幕府、
江戸幕府