宗教とは-1



2023.03.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230319-AXZIDP2TTVOKLLQ6KQAT3DYHEQ/
宗教法人 合併解散、休眠化防止に有効も二の足 不動産管理の負担重く

  代表者の死亡や信者離れで休眠状態となる宗教法人が全国で増える中、休眠化を防ぐ有効な手立てとなるのが、合併などによる法人の早期解散だ。しかし、休眠化の危機にある法人は、過疎化が進む山間部などに多い。合併の受け皿となる存続法人にとって、引き継いだ土地や建物を管理するのは負担が重く、合併に二の足を踏むケースもあるという。

天理教は積極推進
  「山奥にある資産価値のない土地や建物を管理するのは、人繰りや維持コストを考えても限界がある。合併や任意解散をしたくてもできない悩みを持つ宗教法人は多い」。宗教法人制度に詳しい日蓮宗僧侶の長谷川正浩弁護士は、解散手続きの難しさをこう語る。
  文化庁は、代表者の死亡などで休眠化して「不活動宗教法人」になる前に早期解散するよう呼びかけるが、現状ではそれを後押しするような対策はない。このため、過疎地を中心に檀家(だんか)や信者離れが進み、解散できないままの休眠法人が増え続けているという。

  その中で文化庁も着目するのが、合併による解散を積極的に進める天理教(教会本部・奈良県天理市)の取り組みだ。天理教には全国約1万4千の教会が所属し、法人格のある教会は約1万2600(今年1月時点)。半世紀で後継者不足などから休眠化が懸念される数千法人を合併した。特に近年は力を入れ、昨年は合併させた法人が400を超えた。担当者は「法人格がなくなっても、宗教団体としては存続でき、コミュニティーの場所を残したいという教会側の思いも尊重できる」と力を込める。
  休眠法人は暴力団などの第三者に悪用される懸念があるが、主に売買の標的になるのは独立系の「単立宗教法人」。規模の大きい宗派や教派は、代表役員の就任や不動産の処分といった際に上位法人(包括法人)の承認が原則必要で、天理教の場合も第三者が介入する可能性はほぼないという。担当者は「不活動法人を放置せず自主的に整理するのは〝公益法人〟としての責務だ」と強調する。
価値低く売却困難
  ただ、宗教法人の合併は解散法人の不動産をどう管理するかがハードルになる。なかでも、大きな境内地や礼拝施設がある神道系や仏教系の法人は起源も古く、登記上の権利関係が曖昧なケースも多いため、簡単に片付く話ではない。
  そもそも合併される法人は辺鄙(へんぴ)な場所にあり、老朽化した建物は資産価値が低く売却しにくい。倒壊寸前の建物を引き継ぐケースも少なからずあり、取り壊し費用を捻出できなければ放置せざるを得ない。ある宗教法人の関係者は「売却や再活用もできない不動産だと、合併を躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ない」と打ち明ける。
国有化も活用未定
  不動産処分に悩む法人にとって解決の先例となったのが、島根県大田市の浄土宗寺院「金皇寺(こんこうじ)」のケースだ。過疎化による檀家の離散や住職の死去で、平成26年に法人の解散を決定。本堂などを解体して境内地を売却するにも費用がかかり過ぎるため、令和2年6月から不動産の国有化に向け、財務省松江財務事務所との協議が始まった。
  「処分されない財産は国庫に帰属する」とする宗教法人法50条の規定に基づく全国初の事例で、翌3年10月に約12万平方メートルの土地・建物の国有化が完了した。同事務所の担当者は「公共利用を前提に自治体への売却や民間への貸し付けができないか検討している」とするが、山林が大半を占める土地の活用法が決まる見通しは立っていない。
  長谷川氏は「不動産を国有化して、法人を解散できても国が土地を有効活用できなければ、結局放置されたままになる。現状の解散の仕組みを再考する必要があるだろう」と指摘した。(「宗教法人法を問う」取材班)

  宗教法人法を巡る諸問題について、読者の皆さまのご意見、情報を募集します。宗教法人や行政機関からのご意見も歓迎します。
  〒556-8661 大阪市浪速区湊町2の1の57、産経新聞社会部調査報道班まで、連絡先を明記してお寄せください。メール(chosa-shakai@sankei.co.jp)でも受け付けています。



2023.03.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230319-NICEM2ENGFKH3PCTH4KBV33C2Y/
宗教法人、解散命令は年平均8件 過去10年 休眠法人の整理進まず

  国や都道府県が休眠化を理由に裁判所に請求した宗教法人の解散命令が、令和3年までの10年間で年平均8件にとどまることが19日、分かった。平成7年に発覚した一連のオウム真理教事件直後には年100件近くに達したが、近年は低水準の傾向が続く。犯罪に悪用される恐れのある休眠法人は、解散命令の要件に該当するだけで全国で3千超あり、大半が解散されないまま放置されている実態が改めて浮かび上がる。

  宗教法人の解散は、所轄庁の国または都道府県が宗教法人法43条などに基づき認証する仕組み。所轄庁は代表者の死亡などで活動を停止した法人側に再開意思を確認し、吸収合併任意解散所轄庁などが裁判所に解散命令を請求-のいずれかで手続きを進める。
  解散命令請求は、1年以上宗教活動をしていないなど、休眠の要件を満たした「不活動宗教法人」が主な対象となる。令和3年12月時点で全国に3348法人あるが、実際に解散命令を請求されたのは直近の3年で6件、同年までの10年間でも計77件に過ぎない。
  法令違反が理由でも請求できるが、過去には地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教(平成7年、東京都など請求)と、霊視商法詐欺事件に関わった明覚寺(11年、文化庁請求)の2例しかない。解散命令請求はオウム事件を機に積極化し、平成9年には91件まで増加したが、近年は所轄庁側の人手不足などから、法人の意思確認に手間取るなどして減少している。
  一方、合併と任意解散を含む解散全体の件数は令和3年、過去最多の616件に増え、特に合併は前年比2・4倍の493件。天理教など一部団体が不活動化の懸念がある傘下法人の合併を積極的に進めたことが大きく影響した。

  文化庁も、税優遇措置のある宗教法人が休眠化すると脱税などに悪用される恐れがあるとして、合併や任意解散による早期の解散手続きを都道府県側に推奨している。ただ、休眠状態の法人の多くは代表者が不在で不動産売却も老朽化などで難しく、解散に踏み切れていない。
  文化庁の担当者は「不活動法人は合併や任意解散で整理するのが基本。解散命令請求は最終手段で、請求が少ないこと自体に問題はない」と話す。これに対し、北海道大大学院の桜井義秀教授(宗教社会学)は「所轄庁は現行法上、解散命令請求を含む解散手続きを進めるための権限が小さい」と指摘。そもそも現行法が休眠法人の増加を想定しておらず、「時代に則した形での法改正も視野に入れるべきだ」とした。(「宗教法人法を問う」取材班)
  宗教法人法を巡る諸問題について、読者の皆さまのご意見、情報を募集します。宗教法人や行政機関からのご意見も歓迎します。

  〒556-8661 大阪市浪速区湊町2の1の57、産経新聞社会部調査報道班まで、連絡先を明記してお寄せください。メール(chosa-shakai@sankei.co.jp)でも受け付けています


2022.10.22-東洋経済 Online-https://toyokeizai.net/articles/-/626533
「創価学会」が巨大教団となり得た「超戦略」の中身-なぜ韓国では「新宗教」が伸びなかったのか

(1)
今、宗教のあり方が問われている。
  「宗教とはネットワーク」だと話すのは、宗教学者の島田裕巳氏だ。信者はネットワークで結ばれており、その広がりによって、宗教は確固たる基盤を持つようになった。そしてその「宗教の地政学」は、歴史のなかで、さまざまな宗教対立や衝突によって変化してきた。特に、経済成長と宗教の興廃は密接に関係している。日本の新宗教のなかでも巨大勢力となり、政治に多大な影響力をもつ創価学会も、経済成長によって地政学的に拡大してきた宗教の一つだ。
新宗教が拡大をなし得てきた、その戦略の中身について、島田氏の新著『宗教の地政学』から一部抜粋・再構成して、解説していく
  安倍晋三元首相の狙撃事件をきっかけに、統一教会のことが取り上げられ、自民党の議員などとの関係がさまざまに指摘され、問題視されています。
  統一教会自体は、それほど多くの信者を抱えているわけではありません。おそらく、数万人のレベルでしょう。
統一教会の戦略は…
  しかし、この教団にはネットワークを広げていく確固とした戦略があったことになります。関連する団体をいくつも立ち上げ、それぞれの団体が自民党の議員に接触し、関係を築き上げていったのです
  それによって、自分たちの活動を社会的に認知させようと試みたのですが、活動するための資金集めに大きな問題がありました。
  霊感商法や信者の多額献金に頼るというやり方では、必ずや社会の批判にさらされることになります。それでも、統一教会や関連団体が、反共運動などとして社会的に意味を持っていると判断されれば、それを擁護する声も上がります。
  しかし、社会の状況は、統一教会が日本に進出した1960年代とは大きく変わってしまいました。あるいは、合同結婚式やマインド・コントロール、霊感商法で批判され、全国で初めて統一教会の霊感商法への関与と賠償責任が認められた1993年とも今は違うようです。現在では、ネットワークを政治の世界に広げたこと自体が、問題視されるようになったのです。
(2)
  果たしてこうした出来事が、今後宗教の世界全般にどのような影響を与えるのかは分かりません。ただ、日本では、戦後、時代を経るにつれて、政教分離をより徹底すべきだという声が強くなっています。首相の靖国神社参拝が問題視されたのも、その一環です
  そこに宗教と世俗の論理との対立ということを見ていくならば、統一教会問題も宗教の地政学と深くかかわっている可能性があります。より広い視野から、この出来事を見ていったら、どういう問題が浮上してくるのでしょうか。宗教の地政学を考えることは、現在においても重要な課題なのです。
地方から出てきた人を狙い撃ち
  今や世界宗教は、それぞれが地域を棲み分け、地政学的には安定した状態にあるように見えます。キリスト教やイスラム教、あるいはヒンドゥー教や仏教は、それが広がった地域から拡大することもなければ、縮小することもないようです
  しかし、より細かく見ていくならば、さまざまな地域で地政学的な変動が起こっています。また、宗教同士の対立も、さまざまな形で起こっています。
  近代の特徴の一つは、宗教がしばしば世俗の権力と対立関係に陥ることです。近代国家は、政教分離を原則とし、宗教が権威を持つ、あるいは権力をふるうことを強く警戒します。
  その極端な例が、現在の中国における宗教政策でしょう共産党政府は、1950年代に、宗教として認めた道教、仏教、イスラム教、キリスト教のカトリック、そしてプロテスタントの5つについては、「愛国宗教組織」を成立させています。宗教を国家の管理下におこうというわけです
  中国は社会主義の政権でありながら、市場経済を取り入れ、急速な経済成長を実現しました。
  経済成長と宗教の興廃とは密接に関係しています。私たちに身近な日本の例としては、1950年代なかばからはじまる高度経済成長の時代に、創価学会をはじめとする新宗教が急速に拡大していったことがあげられます。経済が発展することで、都市化が進み、労働力として地方からやってきた人々を、新宗教の各教団が布教のターゲットにしたのです。
  都市に出てきたばかりの人々は、学歴が低かった人も少なくなく、安定した職に就くことができませんでした。中小企業や零細企業、町工場や商店に雇われるしかなかったので、生活は安定せず、日常の暮らしを支えてくれる助けを必要としていました。新宗教は、そこを巧みに突いたのです。
(3)
  重要なのは、経済成長が続くあいだは、将来において豊かになれるという夢を抱くことができた点です。よく「苦しいときの神頼み」と言われますが、私は、苦しいから宗教に頼るのではなく、将来への希望があるから信仰を持つようになるのだと考えています。強い信仰を持ち、勤勉に働けば、豊かさを実現する可能性が開かれてくるからです。
  これによって新宗教は巨大教団へと発展し、特に都市部を拠点とすることで、日本における宗教の地政学を大きく変えました。既成宗教は、こうした新宗教の脅威にさらされ、対策を講じなければならなくなりました。
  新宗教は、地方都市にも広がりました。そうした広がりの結果、日本で大きな勢力を持つようになった新宗教の一つが創価学会です。創価学会などは政治の世界にも進出していきましたから、各地で既成宗教と新宗教とが対立する事態が生まれました。
「横線」戦略が教団拡大に貢献した
  創価学会が勢力を拡大していくなかで重要だったことは政治の世界に進出したことです。当初は、「国立戒壇」の建立をめざしていましたが、これは創価学会が密接に関連した日蓮正宗を国教にするための試みであると解釈されました。創価学会の側は、国教にしようとする試みではないとしましたが、では国立戒壇とは何なのか、それは必ずしも明確ではありませんでした。
  むしろ、創価学会が政界に進出した最大の目的は、選挙活動に会員を駆り立てることで、組織の引き締めをめざすことにありました。政界進出を主導した当時の会長、戸田城聖は、選挙になると会員の目の色が変わるので、引き締めに役立つと述べていました。
  重要なことは、政界進出をはかる際に、創価学会が組織のあり方を大きく変えたことです。これは、一般の新宗教に見られることですが、信仰は「縦線」でつながる形をとっています。ある人間が、誰かの紹介で入信した場合、その人間は紹介者の属していた支部に所属することになるのです。となると、同じ地域にいる他の信者と所属する支部が異なることになってしまいます。
  これは、信仰がどのように受け継がれてきたのかが重要だからです。自分を信仰に導いた人と一緒に活動したい。人はそのように考えるわけです。創価学会でも、当初は、この縦線で会員同士がつながるようになっていました
  ところが、選挙ということになると、地域が重要になります。縦線では具合が悪いわけで、同じ地域に住む会員同士が同じ支部に属していた方が好ましいことになります。そこで、創価学会では「横線」に転換したのでした。地政学的な戦略の大きな転換です。
(4)
  最近の国政選挙では、選挙区の区割りが頻繁に変更され、かなり複雑な形になっていますので、従来とは違いますが、以前は、創価学会の支部やブロックは、選挙区に対応する形になっていました。今でもそうしたところはいくらでもあります。
  政界に進出した時点で、大胆な組織の変更をしたことは、その後を考えればかなり重要なことでした。横線でつながることで、それぞれの地域に創価学会の会員のネットワークが広がることになったからです。

  これは、創価学会ほど多くの会員を抱えるからこそできたことですが、地域の会員は支部長やブロック長の自宅で開かれる座談会に集まり、また地域の会館に集まって集いを行うようになりました。本部幹部会の中継も、それぞれの会館で視聴するようになりました。
  同じ地域の会員同士は顔見知りですから、たとえば、その地域に会員の店があれば、そこでモノを買うようになります。あるいは、地域が同じなら、頻繁に相談事もできます。このことは、創価学会が巨大教団に発展していくことにも寄与しましたし、教団を維持していくことにも貢献しました。信者同士の線による関係が、地域という面の関係に発展していったのです。
中国・韓国ではキリスト教信者が激増
  中国でも、経済が発展するなかで、「法輪功」のような集団が生まれました。法輪功は気功が中心ですが、教祖にはカリスマ的な人気があり、急速に拡大し、共産党の幹部にも信者が生まれました。そこで中国政府は、法輪功を厳しく弾圧するようになったのです。
  また、経済発展が続く中国では、キリスト教も信者を増やしてきています。これは、公認されたキリスト教ではありません。「地下教会」や「家庭教会」と呼ばれる非公認のキリスト教で、中国政府はくり返し取り締まりを行ってきましたが、法輪功の場合とは異なり、全面的に禁止するまでには至っていません。すでにその勢力がかなりの規模に拡大してしまっているからです
  経済発展によってキリスト教が拡大する先例としては、韓国の場合があげられます。韓国では、1960年代に「漢江の奇跡」と呼ばれる急速な経済発展が起こります。それに伴って、都市化が進み、韓国の場合には特に首都ソウルへの一極集中という事態が起こりました。
  それがキリスト教の信者を拡大することに結びつき、現在では国民全体の30パーセント程度がキリスト教徒であるとされています。たしかに、韓国に行ってみると、教会がたくさんありますし、自分はキリスト教徒だという人物によく出会います。
(5)
  ではなぜ韓国では、創価学会のような新宗教ではなく、キリスト教が伸びたのでしょうか
  韓国にも仏教が伝来しました。なにしろ、日本に正式に仏教を持ちこんだのは、朝鮮半島の百済であったとされているくらいですから。
  しかし、儒教の影響が強く、韓流ドラマの時代劇の舞台となる朝鮮王朝(李氏朝鮮)では、皇帝が儒教を信仰し、仏教を排斥する政策をとったことで、仏教は衰えていくことになりました。
  日本でも、明治に時代が変わるときに、廃仏毀釈という事態が起こりました。けれどもそれは一時期のことに終わり、一般の国民のあいだには仏教の信仰が定着したままの状態が続きました。そこが韓国とは事情が異なるのです。
韓国のキリスト教は土着のシャーマニズムと融合
  日本の新宗教の多くは、創価学会や立正佼成会、霊友会のように、日蓮系・法華系の仏教教団です。仏教が根づいているからこそ、こうした仏教系の新宗教が広がったと言えます。この3つの教団は、それぞれが独自な形で仏壇を重視しています。日蓮系・法華系の新宗教は、仏壇を祀る運動でもあるのです。
  韓国では、仏教の力が弱くなっていたため、日本のような形にはなりませんでした。その代わりにキリスト教が拡大していくことになったのです。ただし、韓国の特徴は、キリスト教が土着のシャーマニズムと融合したことにあります。
  ですから、韓国のキリスト教は、日本人が考えるキリスト教とはかなり趣が違います。明治時代以降、日本でキリスト教を受容したのは、上層階級や知識人でした。それによって、キリスト教は洗練された宗教というイメージを確立することに成功します。しかし、庶民層にまでは広がることがなく、信者も増えませんでした。
  もちろん、韓国でもオーソドックスな信仰を持つキリスト教徒も生まれました。けれども、現世利益を追い求める信者や、シャーマンのような振る舞いに及ぶ牧師が多かったのも事実です。
  この点については、崔吉城氏の『キリスト教とシャーマニズム―なぜ韓国にはクリスチャンが多いのか』(ちくま新書)に述べられています。少し読みにくい本ですが、いかに韓国のキリスト教にシャーマニズムが影響を与えているかが理解できます。


2022.09.07-Yahoo!Japanニュース(FLASH)-https://news.yahoo.co.jp/articles/7c46f664ea66850f36c6e46a8d68e54d8a7e2c64
旧統一教会はなぜ創価学会のように独自政党を持たなかったのか? じつは「独自候補」を擁立した歴史が

  9月4日付の「朝日新聞」は、全国の国会議員と都道府県議、知事を対象に実施した、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係を尋ねる大規模アンケートの結果を発表し、計447人が教団や関連団体と接点があったことを認めたと報じた。国会議員は150人が接点を認め、そのうち自民党議員は120人に上った。

  国会議員のみならず、地方議員など全国の政治家とも深く関わっていた旧統一教会。もちろん、宗教団体の政治活動は法律で禁じられているわけではない。創価学会のように、ロビー活動にとどまらず、公明党という支持政党をもつ教団もある。
  ではなぜ、社会的影響力を保持しようとしてきた旧統一教会は、独自の政党を持たなかったのか? この疑問を本誌は教団にぶつけたところ、広報部長は次のように答えた

  「かなり昔のことなので知っている者も少ないのですが、1980年代までに国政選挙で独自候補を出したことはあります。たしか参院選挙に、女性3人を擁立しました。党を立ち上げたわけではなく、無所属の候補者でした。主たる目的は、誰かを当選させようというより、女性の候補者を出して認知度を上げることのほうにあったと思います。結果は惨敗で、それ以降は旧統一教会として候補者を出すことはあきらめました
   この回答を受け、教団の歴史に詳しい宗教学者の島薗進東大名誉教授にも同じ問いを尋ねた。 「宗教団体が勢力を伸ばそうとする際に考えられる手段として、政党を作るか、あるいは政治家を利用するかの2つの方法があります。
   旧統一教会も、かつて独自に候補者を擁立し、惨敗したということですが、やはり1960年代から1980年代にかけて、政治家と癒着し、日本で巨額の献金を集められたということを、ひとつの成功と彼らは見たのでしょう。また、本部は韓国にありますから、日本で政党を作ると、ある種、独立した機関となり、コントロールがきかない、と考えたのかもしれません。
   結果、日本では巧みに政治家を操って利益を誘導しようとしたのです」
   一方、創価学会はなぜ政界への進出に成功したのか。 「創価学会の場合、もともと日蓮仏法を世に広める、という目標を掲げています。1930年に創設され、戦後、『折伏大行進』という大規模な布教活動をおこなって多くの信者を獲得し、1950年代の終わりごろから政治に関わり始めました。
  仏教団体ゆえに日本社会に受け入れられやすく、信者という大きな支持基盤を得たことが、政界進出に成功した要因でしょう。
   池田大作会長時代は、民衆という言葉を盛んに用い、右でも左でもない『中道』や『第三文明』という立ち位置をアピールしました。しかし、1970年に起こった自らに批判的な書籍の流通を阻止する『言論出版妨害事件』で、創価学会と公明党は糾弾されます。その後も池田会長は、宗教団体のトップでありながら公明党に大きな影響力を及ぼしているということへの強い批判が続きました。この間、創価学会は自民党や、敵対する日本共産党などとの関係改善を図りますが、政治と宗教の関係を疑問視する声はやみませんでした。
  1999年に自公連立が成立して以降は、政教関係への批判が弱まる一方、創価学会は自民党に従属して利益を得ている、と指摘する声が目立っています。
   旧統一教会は、政治を第一目的とせず、自分たちの組織や宗教活動を守るために、政治家や政党を利用する方法を選んだといえます。
  一方、創価学会は日蓮の『立正安国論』にあるように、仏法によって国を正しい方向へ進めていく、という使命感があり、自ら政治を担う方向へ進みましたが、その後、教勢拡張・維持のために選挙活動をおこなっているとの批判を受けるようになります」
  独自政党を立ち上げた創価学会とは対照的に、さまざまな名称を使い分けながら政治家に接近し、陰で影響力を行使してきた旧統一教会。こうして、社会の中枢に密かに浸透してきたのだ。







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