2021.1.16-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/business/news/210116/bsc2101161934001-n1.htm
世界的半導体不足で自動車減産、新型コロナで需要急変への対応困難
(1)
世界的な半導体不足で国内外の自動車メーカーが減産に追い込まれている。新型コロナウイルス感染拡大に伴いパソコンやゲーム機向けなどの需要も急増し、半導体メーカー側が対応しきれていない事情がある。自動ブレーキや運転支援など機能の高度化で、1台あたりに使用する半導体の使用量が増えていることも背景にある。業種を超えた半導体の争奪戦が見込まれる中、製品不足が長期化する可能性もあり、海外依存体質の日本企業は在庫計画の見直しが急務だ。
半導体不足を受け、
トヨタ自動車は米国で1車種の減産を決め、ホンダは1月に小型車「フィット」などを国内で月4千台ほど減産する。日産自動車も小型車「ノート」の生産を1月に数千台減らす。海外では16日にフランス大手グループPSAと合併手続きを完了したフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)などが軒並み生産調整を決めた。
半導体はさまざまな機器の動きを制御したり、データを記憶したりする電子部品で「
産業のコメ」とも呼ばれる。
パソコンやゲーム機の頭脳にあたるCPU(中央演算処理装置)が代表例だ。エンジンの制御やカーナビなどにも使われ、今や自動車の生産にも不可欠な部品になっている。
業界団体の世界半導体市場統計(WSTS)によると、コロナ禍でも「巣ごもり消費」や第5世代(5G)移動通信システムの投資増などで、半導体市場は2021年には前年比8・4%増の4694億ドル(約50兆円)と、過去最高を更新する見込みだ。
コストを削減するため、CPUなどの半導体メーカーの多くは最新製品の設計に注力し、生産の一部は「ファウンドリー」と呼ばれる外部の受託製造会社に委託する傾向にある。
ファウンドリーは巨額の設備投資をしながら、需要動向によって種類の違う半導体製品を作り分ける。
(2)
今回は、新型コロナ禍で需要が伸び、先に受注していた家電や通信向け半導体を増産していた。そこに自動車生産が数カ月で急激に増減したため、ファウンドリーは自動車向けの受注に十分に対応しきれていないという背景がある。
業界関係者によると、自動車向けは安全性を重視し故障の少ない製品が使われることが多いという。英調査会社オムディアの杉山和弘コンサルティングディレクターは「性能が同程度の自動車向けと需要が増えた家電向けなどが競合した可能性がある」と指摘する。
半導体は製造工程が多く、新たなラインを組むには数カ月以上かかり、市場逼迫(ひっぱく)の状況は「1年くらい続くのではないか」(杉山氏)とみられている。
事態が長期化して困るのは半導体の調達を海外メーカーに頼る日本企業だ。半導体市場は米国や韓国のメーカーが席巻しており、ファウンドリーも「台湾積体電路製造(TSMC)」など海外勢が台頭する。
政府は「各国の状況を常に注視している」(経済産業省関係者)と当面は静観する構え。杉山氏は「新型コロナのような危機的状況も想定した在庫計画が必要だ」と警鐘を鳴らす。
(桑原雄尚)
希土類元素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
希土類元素(英
: rare-earth element・REE)又は
レアアースは、
31鉱種あるレアメタルの中の1鉱種で、スカンジウム 21Sc、イットリウム 39Yの2元素と、ランタン 57La からルテチウム 71Lu までの15元素(ランタノイド)の計17元素の総称である(元素記号の左下は原子番号)。周期表の位置では、第3族のうちアクチノイドを除く第4周期から第6周期までの元素を包含する。なお、希土類・希土と略しており、かつて稀土類・稀土とも書き、それらは英語名の直訳であり、比較的希な鉱物から得られた酸化物から分離されたことに由来している。
概要
希土類元素は化学的性質が互いによく似ている。性質を若干異にするスカンジウムおよび天然に存在しないプロメチウム以外の元素は、
ゼノタイムやイオン吸着鉱などの同じ
鉱石中に相伴って産出し、単体として分離することが難しい。そのため、混合物である
ミッシュメタルとして利用されることも多い。
「希」の名がつくものの、金や銀などの
貴金属に比べて
地殻に存在する割合は高く、特に
セリウム 58Ceは銅に匹敵するほどの量が存在する。しかし、単独の元素を分離精製することが難しく、流通価格が
貴金属並みに高価となることがある。この意味で2012年現在でも希少(
英:
rare)な元素であり、
レアメタルに分類される。
アメリカ地質調査所によれば、レアアースの世界の埋蔵量はおよそ9,900万トンであり、全世界の年間消費量約15万トンから比較すれば、資源の枯渇はあまり危惧されていない。
温泉にも微量のレアアースが含まれているものがある。強酸性の
玉川温泉からは
ジスプロシウムや
ユーロピウムなど十四種類のレアアースが含まれていることが確認されている
分類
希土類元素のうちスカンジウムとイットリウム以外の 15 元素は
ランタノイドである。ランタノイドの中で、Gdよりも原子量が小さい元素 (La-Eu) を
軽希土類元素、重い元素 (Gd-Lu) を
重希土類元素と呼ぶ。また、中間のものを
中希土類と呼ぶこともある。
元素ごとに分離されたものを分離希土、分離されていないものを混合希土(
ミッシュメタル)と呼ぶ。
用途
希土類元素を含む材料は、以下の2つに分けて考えられる。
・4f電子に基づく物性を利用している材料(発光材料、磁性体など)
・イオン半径や電荷など希土類独特の化学的性質を用いる材料(触媒、固体電解質、酸化物高温超伝導体、水素吸蔵合金、発光材料の母結晶など)
レアアースは
蓄電池や
発光ダイオード、
磁石などのエレクトロニクス製品の性能向上に必要不可欠な材料である。希土類元素、特にランタノイドは電子配置が通常の元素とは異なるために物理的に特異な性質を示す。
水素吸蔵合金、
二次電池原料、
光学ガラス、強力な
希土類磁石、
蛍光体、
研磨材などの材料となる。
マグネシウム合金に微量添加することで機械的特性を向上する。
産地
レアアースの地上の産地は偏在しているが、2009年時点では、コストの問題から埋蔵量における割合が3割の中国(内モンゴル)が世界の産出量(12.4万t、推定)の97%以上を占め独占的な地位を確保していた。その後は中国以外からの調達が進んでいる
2013年3月、海洋研究開発機構と東京大学の研究チームは南鳥島沖の水深5800mの海底の堆積物を分析したところ、高濃度でレアアースが含まれる堆積物(レアアース泥)を発見。日本の
マンガン鉱床に
花崗岩を上回る割合で希土類元素が含有されていることが判明した。また、
火力発電所等の集塵機で回収される
石炭や
石油の
灰にも含まれているため、今後の利用促進が予測される。また、海底の
マンガン団塊や
コバルトクラスト、
熱水鉱床等の
海洋資源も供給源として検討されている。米国では
カリフォルニアの鉱床で希土類元素採掘が再開される見込みがある。
2018年4月。
早稲田大学の高谷雄太郎講師と
東京大学の加藤泰浩教授らの研究チームは、日本の最東端にある
南鳥島(東京都)周辺の海底下にあるレアアース(希土類)の資源量が世界の消費量の数百年分に相当する1600万トン超に達することを明らかにした。
研究チームは、南鳥島の南方にある約2500平方キロメートルの海域で海底のサンプルを25カ所で採集し、レアアースの濃度を分析した。その結果、ハイブリッド車などの強力な磁石に使うジスプロシウムは世界需要の730年分、レーザーなどに使うイットリウムは780年分に相当した。
研究チームはまたレアアースを効率的に回収する技術も確立した。レアアースを高い濃度で含む生物の歯や骨を構成するリン酸カルシウムに着目。遠心力を使って分離したところ、濃度は2.6倍に高められた。これは中国の陸上にある鉱床の20倍に相当する濃度だ。
ジスプロシウム (Dy) や
テルビウム (Tb) の重希土類は、中国南部の
イオン吸着型鉱床と呼ばれる特殊な
風化鉱床でしか生産されていなかった
[18][19]。今後、需要が増加すると見られる
ハイブリッドカーや
電気自動車用の高出力
モーターの磁石に
ジスプロシウム (Dy) と
テルビウム (Tb) を添加することで保磁力が高まるため、重希土類の不足が懸念されていた。しかし2012年11月にカザフスタンの重希土類の精製施設が開所したことで、初の中国以外の重希土類生産場となった。
中国依存の問題(「
レアアース貿易摩擦」も参照)
中国の
鄧小平は
1992年の
南巡講話で「
中東には石油があるが、中国にはレアアースがある。中国はレアアースで優位性を発揮できるだろう」(中東有石油、中国有稀土、一定把我国稀土的優勢発揮出来)と述べ、当時世界の埋蔵量の85%も中国に存在したとされるレアアースの戦略的価値を重視する路線を決定づけた。
1980年代から「中国希土類化学の父」と呼ばれる
徐光憲の貢献や政府の
863計画によって希土類の研究開発が推し進められ、中国はレアアース関連で他国をあわせた数の2倍もの特許を取得した。貴重な外貨獲得源として希土類鉱山の採掘にも力を注ぎ、希土類市場は供給過剰に伴う価格下落によってコスト面で採算が釣り合わなくなった中国以外の国の希土類鉱山は次々と閉山し、
2010年代に入るころには中国は産地として世界の97%も供給する独占的な地位を手に入れることになった。その他特にテルビウムやジスプロシウムなどの重希土類の生産は、中国一国に限られることになった。これにより、2000年代後半のレアアースの産出量の95%以上は中国の
バヤンオボー鉱床とイオン吸着型鉱床により偏在するようになり、
政治的リスクを負うようになっていた。
ここまで生産が中国に集中する事になった原因の1つは、その生産コストの低さもある。これは単純に賃金水準が安いということもあるが、レアアース鉱の特性上、中国以外では管理コストが高騰してしまうという事情がある。レアアースには放射能物質の
トリウムが含まれているため、その取扱や後処理に多額のコストがかかるのである。この点中国は、労働者の保護や後処理を他国ほど厳密に行わないため、低コストで生産することができる。
中国政府は、
2006年に国土資源部が希土類を対象とした資源保護計画を発表し、
2010年7月に商務部が輸出枠大幅削減方針を発表するなど、レアアースの資源保護政策に転換した。これは、先進各国が自国の埋蔵量を温存したまま、中国のレアアースを安く買っていることの中国側の対応と見られている。これに伴い希土類の価格が急激に上昇した。たとえば、ジスプロシウムの価格は
2005年には1 kgあたり50
ドル(USドル)程度であったが、2010年初頭には1 kgあたり160ドル、2010年6月末時点で400ドルに高騰した。
民生用から軍事用の製品にまで幅広く利用されるレアアースを中国に頼る
チャイナリスクは、
2010年9月に発生した
尖閣諸島中国漁船衝突事件後に、
資源ナショナリズムに基づいて中国政府がレアアースの日本への通関を意図的に遅滞させる事で、レアアースの事実上の対日禁輸措置に踏み切ったことで顕在化した。これを契機に、特にレアアースの工業的寄与が大きい日本では、レアアースの対中依存に対する危機感が高まり、官民を挙げて「
元素戦略」と銘打った対応が図られている。例えば政府系機関や民間企業は、レアアースを使用しないか削減してもレアアースを使用する製品と同等の性能が発揮できる製品の開発や、レアアースのリサイクル技術の開発を加速させ、レアアースの備蓄を増進し、必要なレアアースについては中国以外からの分散調達を加速させた。
この結果、
2012年上半期には早くも日本の対中レアアース依存度が50%以下となり、中国のレアアースの輸出量と輸出価格が急落した。 価格はピーク時の1/5に下がった。日本は
インドの
漂砂、
ベトナム北部の
カーボナタイト、
カザフスタンの
ウラン鉱床残渣、
オーストラリアのカーボナタイトなど代替地の権益の確保を始めた。また
EEZ内の海底鉱物資源の探査も加速しており、2012年
6月28日に東京大学のグループが
南鳥島付近の海底5600mで日本で消費する約230年分に相当するジスプロシウムがあると推定されると発表したこと、今後は掘削技術を提供している
三井海洋開発と共同で
深海底からの泥の回収技術の開発を目指すことを発表した。 また、アメリカとの協同調査では
インド洋の
海底に高濃度のレアアースを含む泥が発見され、陸地では偏在しているものが海底では広範に存在する可能性が示唆されたが、高深度のものは商業採掘が困難であるという問題もあった。
しかし、財務省貿易統計によると、HSコード2805.30と28.46をレアアースとした場合、2014年の通年ベースで日本はレアアースの輸入の6割を中国に依存している。代替供給先を確保できたのは主に軽希土類であり、希少価値の高い重希土類は中国南部に広く分布するイオン吸着型鉱床と呼ばれる
風化花崗岩に依存している。
重希土類(イットリウム、ジスプロシウムなど)は、2013年の時点の三菱UFJリサーチ&コンサルティングの推計によると商業生産の95%以上を中国が行っており、当然輸入も中国に依存している。また軽希土類の採掘する鉱山から主に出てくるのは使用量の激減したセリウムであり、採算を維持するためには同時に採掘するネオジムやランタンの価格を上げるか採掘量全体を削減する必要がある。また、日本企業は中国に工場を置くことで対中輸入を減らしていた。
日米欧からの提訴を受けて
世界貿易機関(WTO)が協定違反と断じたことにより、
2015年に中国はレアアースと
タングステンと
モリブデンに賦課している「輸出税」と「輸出数量制限」を廃止した。
2016年2月にアメリカの政府監査院(GAO)はアメリカ国内のレアアースの
サプライチェーン再構築に15年を要するとしており、中国を除くレアアース鉱床は全てレアアース関連の特許を保有する中国で加工しているために中国が禁輸すればほぼ全ての
コンピュータ、
スマートフォン、自動車、
航空機などのラインや
NATOの
兵器システムに影響を与えるとされる。2015年にレアアースのアメリカ最大手
モリコープが破綻しており、中国に超される1980年代まで世界最大のレアアース生産量を誇っていたアメリカ唯一のレアアース鉱山
マウンテンパス鉱山は
2017年に米投資ファンドと中国の盛和資源による米中企業連合に買収されている。
2018年からの
米中貿易戦争では、同年7月にアメリカが関税リストの草案に中国のレアアースを盛り込んで注目されたが、同年9月の関税発動の際には対象から外した。同年8月に成立した
2019年度国防権限法で米国防総省が中国、
北朝鮮、
イラン、ロシアといったアメリカと対立する国からレアアースを購入することを禁止し、同年10月には
米国防総省は米国の軍需産業が中国のレアアースに依存しているチャイナリスクに警鐘を鳴らした。
2019年5月に米中の
貿易摩擦の激化で中国からのほぼ全輸入品が関税対象にリストアップされた際も中国は世界生産量の7割超を支配して米国が8割超も中国に依存していることから外され
、これに対して中国の
国家発展改革委員会が米軍需産業を標的にしたレアアースの輸出規制を示唆したことを受け、
戦闘機や
ミサイルなどの軍用品まで使われているレアアースの対中依存を国内生産で軽減すべきとして米国防総省は
連邦政府に資金拠出を要請し、米軍は
マンハッタン計画以来のレアアース生産への投資を計画することとなり、
2020年9月30日に
アメリカ合衆国大統領の
ドナルド・トランプはレアアースの対中依存を見直すよう命じる大統領令に署名した