拉致問題-1
映画「めぐみへの誓い」
2024.08.13-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240813-ZZATA7IG2BNG7JWRJNKPHTUEVI/
<独自>横田めぐみさん拉致映画を北朝鮮へ送り込み 韓国の脱北者団体通じ突破口開く狙い
【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮による日本人拉致問題を調べている支援団体「特定失踪者問題調査会」が、
横田めぐみさん(59)=拉致当時(13)=拉致事件を描いた映画の動画を北朝鮮内部へ送り込むプロジェクトを進めていることが13日、分かった。
韓国ドラマなどの外部映像が近年、北朝鮮内に急速に拡散し、住民の意識変化に大きな影響を与えているとされることから、映像の浸透で拉致問題解決への突破口を開く狙いだ。
調査会では日本で制作された映画「めぐみへの誓い」のほか、拉致された可能性がある530人分の顔写真などを収めた動画データを準備。
ハングルによる字幕や身元情報の説明、情報提供者に報奨金を提供するとのメッセージを添えた。
この動画データを北朝鮮関係者に独自のネットワークを持つ韓国の脱北者団体に託した。脱北者団体によると、データは既に複数の北朝鮮関係者に渡っているという。
北朝鮮では韓国ドラマなどの外部映像が流入すれば、住民らがUSBメモリーでコピーし合い、短期間で住民の間に広まることが脱北者の証言で裏付けられている。 韓国当局の調査では2016~20年に脱北した人の8割以上が外部映像を見た経験があると答えた。
それに伴い、住民の間で韓国への憧れや金正恩(キム・ジョンウン)体制への否定的見方も高まっているという。
金政権は20年に外部映像の流布に死刑も適用する法律を制定。公開処刑を頻繁に行う恐怖政治で映像の拡散を押さえ込もうと躍起になっている。
調査会は05年から、
北朝鮮に残された拉致被害者や北朝鮮住民に情報を届けるため「しおかぜ」という短波ラジオ放送を続けている。ただ、北朝鮮当局による妨害電波に終始悩まされ、運営費の安定的確保も課題となっている。
映像の力を生かした新たな試みが北朝鮮国内への浸透に成功すれば、北朝鮮住民に直接訴える手段として、より大きな効果が期待できる。
2024.04.05-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240504-RDLKLSYBAZPQDC4T73RS3HWG2M/
親世代不在の訪米、伝わった「本音」 日本政府には改めて奮起要望 拉致被害者家族
(中村翔樹、外崎晃彦)
北朝鮮による拉致被害者家族らが4日、
米国から帰国した。このところ
日朝情勢が「対話局面」にあるとの見方がある中で作成された新たな運動方針に関し、米側の理解を得ることに成功。一方、今回最も重視したのは、方針の背景にある「本音」の共有だった。
「個人の感情としては、北朝鮮には怒りや憎しみしかない」。現地4月30日の記者会見。
横田めぐみさん(59)=拉致当時(13)=の弟で、家族会代表の拓也さん(55)は、面会した米側関係者らにそう訴えたことを明かした。
「独自制裁の解除」に初めて言及
今年の新たな運動方針では「独自制裁の解除」に初めて言及。
人道支援を認めるとした昨年分と併せ、日朝交渉進展に何らか寄与すれば、との思いを反映させた。
米側には「融和的」と指摘される懸念もあった。だからこそ、背景にある感情を率直にぶつけ、局面打開に向けた「苦渋の内容」であることを丁寧に説明した。
方針では
全拉致被害者の即時一括帰国が実現しないまま親世代が死去した場合、
「強い怒りを持って制裁強化を求める」とも併記。一方的に対話路線へ軸足を移したわけではないことも訴えた。
視覚的にも訴え
全ての根底にある「親世代に残された時間の少なさ」については、視覚的にも訴えた。
拓也さんは、同行がかなわなかった母親の早紀江さん(88)の近影が写ったパネルを用意。田口八重子さん(68)=同(22)=の長男、飯塚耕一郎さん(47)も、八重子さんの兄で、再会を果たせないまま令和3年に亡くなった飯塚繁雄さんらのパネルを携え、米側に示した。
関係者からは「私にも子供がいる」、「同じ気持ちに立つ」などと賛意が続いた。
日朝情勢を巡っては、北朝鮮が今年2月、日朝首脳会談の実現に前向きともとれる発信をした一方、
3月以降は日本側との接触を拒否する意向を示すなど、
再び強硬姿勢に転じている。拉致問題が「解決済み」との立場も崩していない。
この日の帰国会見で拓也さんは、
今後の日本政府の奮起を改めて要望。家族会が大前提に据える「全被害者の即時一括帰国」を日朝交渉でも貫くよう求め、耕一郎さんも「私たちの方針に寄り添い、迷わず進んでほしい」と訴えた。
(中村翔樹、外崎晃彦)