日本の政界問題-1
2024.11.23-産経新聞(週刊フジ)-https://www.sankei.com/article/20241123-VXFZ4S4KIJEJPKC5RFN4IALASY/?outputType=theme_weekly-fuji
年金財源めぐり弱体石破政権で官僚が悪だくみ 「歳入庁」設置が世界の常識だ 高橋洋一
(元内閣参事官・嘉悦大教授)
厚生労働省が、基礎年金の給付水準を底上げするために厚生年金保険料の一部を充てる方針だと報じられている。
今は
厚生年金と国民年金(基礎年金)は別々に管理されている。
年金制度は「2階建て」といわれ、全員加入している基礎年金(1階部分)と、正規雇用の民間企業従業員や公務員が加入している厚生年金(所得比例の2階部分)で構成されている。非正規雇用者、非公務員、自営業者は厚生年金はなく、基礎年金だけとなる。
厚生年金と国民年金が別々に管理されているというのに、厚生年金保険料の一部を、厚生年金保険料を払っていない国民年金加入者の給付に充てるというのは、保険としての信頼性を失わせることになる。厚生年金加入者から見れば納得できるはずはない。
こうした厚生年金による国民年金の救済策は、これまでも検討されてきた。例えば「厚生年金と国民年金の積立金を統合する」という案もあった。
その都度
「おかしい」という世論が出て潰れてきたが、ここにきて復活している。
政治基盤の弱い石破茂政権で、どさくさ紛れの官僚の悪巧みだ。
官僚の本音は次のようなものではないか。いずれ
国民年金にしか加入していない人の給付が、賃金や物価が上昇した際、年金の給付水準の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」により目減りし、低年金になる人やほぼ無年金の人が増え、生活保護や医療費が増える。生活保護や医療費の財源は税金なので、今のうちに厚生年金保険料で手当てし、税負担を減らそう―というわけだ。
これは
官僚によくある間違いで、厚生年金が「保険」であることを理解せずに、「保険料」と「税金」、「給付」と「通常財政支出」を混同している。
税金であれば、一般財源の原則があり、どのような支出に充てるかは問題とならない。しかし保険料は違う。
また、マクロ経済スライドにより目減りするというのは、現役世代の人口が減るのに合わせて、年金の給付水準を減らすからだ。しかし、今や「脱デフレ」なので、保険料収入も増える。相変わらず官僚は自分たちにとって都合のいい話ばかりして、都合の悪い話はしない。
それでは、
保険原理から出てくる対策は何か。まず保険料の徴収漏れをなくすことだ。そのために
世界で行われているのは、税と社会保険料の徴収を一元化する「歳入庁」の設置だ。
保険料といっても、その法的性格は税と同じで強制徴収なのは世界共通である。このため、
保険料とはいえ、世界では社会保険「税」として、税と同じ扱いだ。
しかし、日本は、
世界常識になっている「歳入庁」がないという先進国で珍しい存在だ。海外では、
米国、カナダ、アイルランド、英国、オランダ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ハンガリー、アイスランド、ノルウェーが歳入庁で税と社会保険料の徴収の一元化を行っている。
東欧の国々でも傾向は同じで、歳入庁による徴収一元化は世界の潮流と言ってよい。
(元内閣参事官・嘉悦大教授)
2024.11.22-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241122-FRUXHTJQEVJJVIFCA6UVO7EHZ4/
斎藤知事、業者に報酬「法に抵触することしていない」 SNSで疑惑広がり対応
17日投開票の兵庫県知事選で再選した斎藤元彦知事は
22日、選挙中の広報活動に関わった企業に報酬を支払ったとして、
公選法違反疑惑を指摘する声が交流サイト(SNS)などで相次いだことに対し、報道陣の取材に
「法に抵触することはしていない」と述べた。
斎藤氏の代理人弁護士も陣営が対価を支払ったことは認めたが、「依頼したのはポスター制作など法で認められたもの」と主張した。
一連の疑惑は企業側の代表が20日、SNSに「(知事選で斎藤氏の)広報全般を任せていただいた」「私が監修者として、選挙戦略立案などを責任を持って行い運用していた」などと投稿したことで浮上。総務省のホームページの記載などに基づき、
「業者が主体的・裁量的に選挙運動の企画立案を行う場合」は、業者への報酬が公選法の買収罪となる恐れが高いとして、SNSで情報が拡散していた。
斎藤氏はこの日、報道陣から企業との関わりを問われ、
「一定のサポートをいただいた」と説明。代理人弁護士は企業にポスター代などを支払ったとした上で
「広報戦略全般を任せていたとかそういう話ではない」と語った。
一方、企業側は取材に「今は対応できない」としている。
2024.11.23-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241123-XG6GFSAET5PZLIWUG5WP4QRJUQ/
経済対策「103万の壁」引き上げを与党が受け入れ 国会運営見据え苦渋の決断強いられる
政府が22日に閣議決定した経済対策を巡り、
自民、公明両党が「103万円の壁」の上限引き上げを受け入れたのは、国会運営で国民民主党の協力を得る必要があるためだ。
先の衆院選で大敗し、少数与党で臨む今後の国会は、従来の手法が通用しないことが予想される。経済対策の裏付けとなる令和6年度補正予算案など重要な審議が控える中、与党は苦渋の決断を強いられる形となった。
自民の鈴木俊一総務会長は22日の記者会見で、経済対策に国民民主が主張する減税策が盛り込まれたことを問われ、「税調の議論はこれから始まるが、その中で財源や引き上げ幅も含め、結論が出されていくと理解している」と述べた。
先の衆院選で獲得議席が過半数(233議席)を割り込んだ自公は、平成6年に発足した羽田孜内閣以来の少数与党となった。与党の衆院会派勢力は220で、法案成立に必要な過半数に届くには、野党の取り込みが必須になっている。
「手取りを増やす」政策を掲げる国民民主は、非課税枠を現行の103万円から178万円への引き上げを訴える。ただ、政府は国民民主の主張通り非課税枠を引き上げた場合、国と地方で7兆~8兆円程度の減収が見込まれると試算する。
国民民主は財源確保に関しては「政府・与党側の責任」(玉木雄一郎代表)と主張しており、自民重鎮は「財源のない政策はなく、財源を示すのは当たり前だ」と憤りを隠さない。それでも国民民主が強気の姿勢を貫き、与党はべた折れにならざるをえない。
衆院選の結果を受け、与党は衆院の重要ポストの多くを野党に譲った。特に、30年ぶりに野党議員が委員長に就任した予算委員会では審議の難航も予想される。
「数の力」で押し切ることができない与党は、28日召集の臨時国会で補正予算案の成立に向け、経済対策で国民民主に譲歩せざるをえなかった。
自民幹部は「財源論など課題はあるが、これで国会が回る」と安堵(あんど)の表情を浮かべるが、来年1月召集の通常国会では来年度予算案の審議も控えており、厳しい国会運営は続きそうだ。
(今仲信博)
2024.11.21-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241121-K6WELHQY3VOALG3TAF4INPRACA/
投開票日前夜、斎藤氏に維新2県議が不信任賛成を謝罪 県議団は「ことさら責めない」
兵庫県知事選で
日本維新の会が支援した候補が、再選の斎藤元彦知事に大敗を喫した。17日の投開票に先立ち、斎藤氏の支援に回った県議2人が、不信任決議案の採決時に賛成したことを斎藤氏に謝罪した。
維新の増山誠県議は選挙戦最終日の16日夜、自身のX(旧ツイッター)に投稿。白井孝明(たかひろ)県議とともに斎藤氏に謝罪したことを明らかにし、
斎藤氏のことを《満面の笑みで応えて頂き、本当に心の広い、素晴らしい方》と絶賛した。
増山氏は選挙期間中、不信任決議について、選挙で県民の信を問うことが目的だと主張。Xにも《県民の皆様から信を得ることで、県政の混乱は立て直せる》とつづっていた。
維新県議団は20日に会合を開き、今後の対応を協議。終了後、記者団の取材に応じた
県議団の門隆志幹事長は増山、白井両氏に対し「いろいろ意見があり、濃淡もある」とし「今後は一致団結することを確認した」と説明した。
岸口実団長は、県議団として支援候補を限定していなかったことを踏まえ「ことさら責めることはない」とした。
2024.11.20-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241120-KV4ZG37UAJO45P4QOMDSTQZILI/
兵庫知事選受けNHK会長 「既存メディアから適切に情報提供されず視聴者不満」と分析
NHKの稲葉延雄会長は20日の定例記者会見で、
SNSを追い風に斎藤元彦知事が再選された兵庫県知事選の結果を受け、「どうすれば投票の判断材料を適切に提供していけるか。公共放送として果たすべき選挙報道の在り方を真剣に検討していく必要がある」と述べた。
一般論として、インターネット上で誤情報や偽情報も拡散されている状況に触れ「視聴者にも迷いがある。にもかかわらず、既存メディアから適切に情報が提供されないことに不満が表明されているのではないか」と言及。
同知事選に関するNHKの出口調査で、投票の際にSNSや動画サイトを参考にした有権者が最も多く、若年層でその傾向が強かったとの結果について「重大な事実だと思っている」とした。
選挙期間中の報道には制約もあるとしつつ「政治情勢や争点をどう説明すれば視聴者の役に立つか、研究を深めることが大事だ」と語った。
2024.11.20-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241120-4KINZOBVDNN27C4T2RYQY2EN4E/
地滑り起こしたSNS情報 兵庫知事再選も疑惑は晴れず
(元特別記者 鹿間孝一)
パワハラ疑惑などで県議会から全会一致で不信任され失職した兵庫県の斎藤元彦前知事が、
出直し知事選で再選された。それも次位に13万7千票もの大差をつける圧勝である。
10月27日に行われた衆院選では自民党が大敗し、自民と公明の連立与党が過半数割れした。
11月5日の米大統領選は、トランプ前大統領の完勝だった。3つの選挙はスケールも意味合いも異なるが、共通点がある。
新聞やテレビなど既存のメディアの予想が外れたことである。
選挙では優勢が伝えられる勝ち馬に乗る「バンドワゴン現象」や、劣勢の候補を応援する判官びいきの「アンダードッグ現象」が結果に影響を与えるとされるが、それだけでは説明がつかない。いずれもかつてない地滑り的な投票行動が起きた。
このコラムでも以前、斎藤氏を「将棋に例えるなら、すでに詰んでいる」と書いた。政党や団体の支援もなく、街頭に一人で立ち、頭を下げる姿に、ある程度の同情票は集まるかもしれないと感じたが、まさか大差で勝つとは思わなかった。不明を恥じる。
要因に挙げられるのが、交流サイト(SNS)を駆使した劇場型選挙である。「パワハラ疑惑などは捏造(ねつぞう)」といった斎藤氏を擁護する言説がSNSで取り上げられ、終盤の街頭演説には大勢の聴衆が群がった。神戸市中央区の選挙事務所前は「当選確実」が伝えられると、お祭り騒ぎになった。
投票率が前回を15ポイント近く上回る55・65%に達したのも、これまで選挙に行かなかった層をSNSが掘り起こしたからだろう。
トランプ氏も情報発信にSNSを多用する。米国の有力メディアは民主党寄りで、反トランプが多い。それらを「フェイクニュースを流している」と斬って捨て、対立候補のハリス副大統領を罵倒した。「移民がペットを食べている」などという、それこそフェイクニュースもあったが、真偽不明でもこうした過激な発言がトランプ氏らしいと、熱烈な支持者に受けた。
SNSは選挙を変えた。この新しい情報ツールを、いかに上手に利用するかが勝敗を左右する。新聞に関わる者として、SNSに負けたと認めるのは悔しいが、これだけは言っておきたい。
選挙は一時の熱情ではなく、政党や候補者の理念、政策、実績を冷静に判断して投票すべきである。新聞は公正を期すため、できるだけ平等に取り上げ、有権者を惑わすあいまいな情報を扱わないようにしてきた。信頼性こそが新聞の価値と自負している。
斎藤氏は知事に返り咲いたが、禊(みそぎ)が済んだわけでも、疑惑がすべて払拭されたわけでもない。とくにプロ野球阪神とオリックスの優勝パレードを巡る協賛金問題は、今後の調査の焦点になる。注視したい。
(元特別記者 鹿間孝一)
2024.11.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241119-PTXRWSFWBRNFNLZFSSN2K3ER4I/
国民民主・玉木代表、斎藤知事の再選語る 「既存政党や概念に満足できない民意が…」
国民民主党の玉木雄一郎代表は19日の記者会見で、17日投開票の兵庫県知事選で斎藤元彦氏が再選したことについて、
「既存の政党や概念に満足できない民意が存在していることを強く感じる。われわれも常に自分たちが古くなっていると自覚を持たないと政党や政治家はすぐ陳腐化する」と述べた。
同県知事選では交流サイト(SNS)を駆使した選挙戦が展開されたが、
「(SNS)は一つの手段であり、主張が一番大事だ。それがSNSというメディアで伝わりやすくなったと思う」と語った。
2024.11.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241119-PG56PYTDMJMRPLGHSWPYYQWXUA/
国民民主・玉木代表、元グラビアアイドルとの不倫「妻は許してくれた」 政策実現に意欲
国民民主党の玉木雄一郎代表は19日の記者会見で、
自身が元グラビアアイドルの女性と男女関係にあったと報じられたことについて、
「妻は許してくれた。厳しい中でも私を支えてくれている」と述べた。
その上で「
『これだけ多くの皆さんに期待をいただいたので政策を実現してくださいね』と今言われている。仲間と一緒に政策実現に全力を傾けたい」と語った。
2024.11.18-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241118-B34N3S3AMJHXLMZGPGZIQLZOWQ/
斎藤氏不信任の県議会は「解散が筋」、市長会の支持「1人で言え」 元市長の樋渡啓祐氏
(聞き手 奥原慎平)
17日投開票の兵庫県知事選は、
パワハラ疑惑などを内部告発された問題を受けて失職した斎藤元彦前知事(47)が再選を果たした。全会一致で不信任を突き付けた県議会と有権者の判断が食い違う結果となり、
「大手メディアの敗北」(フリーアナウンサーの宮根誠司氏)を指摘する声も少なくない。
「活力ある地方を創る首長の会」の事務総長を務める樋渡啓祐・元佐賀県武雄市長は産経新聞のインタビューに応じ、「県議会は自ら解散するのが筋ではないか」と語った。
「机バンバン」は論外
─
斎藤氏が勝利した・・・「感情移入できる等身大の候補者と思わせたのが勝因だろう。1人で街頭演説する様子をSNSに投稿し、相手候補の悪口もいわず、淡々と『兵庫を良くしたい』『自分には足らざる所がある』と反省の弁も繰り返す。選挙戦を通じて手法は変わらなかったが、終盤には聴衆の最前列に40代、50代の女性の姿が目立った。泣いて聞いている。自分や息子、夫を斎藤さんに投影したのではないか。こういう人たちが原動力になったといえる」
─
県下29市のうち22の市長が賛同する形で、県市長会の有志が14日に記者会見し、元尼崎市長の稲村和美氏(52)を支持表明した・・・
権力の乱用だ。言いたかったら1人で言えと思う。なぜつるむのか。有志とはいえ、市長会は本来単独ではできない政策を、まとまって実現しようという場だ。純粋な気持ちでの応援かもしれないが、
庶民から見ると〝既得権益〟にみられる。
谷口芳紀・相生市長は斎藤氏について『県知事として資格がない』と会見で述べて、机をバンバンとたたいたが、論外。これに加わらなかった芦屋市の高島崚輔市長(27)らは健全だと思う」
「メディアの制度上の敗北」
─「メディアの敗北」と指摘する声もある・・・「
知りたいのにメディアは教えてくれないということか。そこはメディアに同情的。公選法に縛られ、選挙期間中は候補者を平等に扱わないといけないから、仕方がない。言うなら
『メディアの制度上の敗北』だろう。告示前に候補者の資質などについて相当取材を重ねて、あらかじめ記事を出しておくしかないのでは」
「両論併記はしていたのだろうが、
『(疑惑が指摘される『パワハラ』『おねだり』など確定的な)証拠がそろっていない』などの主張は量が少なかった」
─
コメンテーターはどうか・・・「元明石市長の泉房穂氏はフジテレビ系『Mr.サンデー』の選挙特番で、斎藤氏に対し開口一番(『一面的な見方で、かなり厳しいトーンで対応してきたことについて、反省することも多く、おわびしたい』と)謝った。一方、元大阪市長の橋下徹さんは批判し続けるという。SNSの反応では泉さんの柔軟さが評価されている」
過激活動家は「落選請負人」
─
選挙期間中、攻撃的で過激な活動家らが斎藤氏陣営ともめる様子も拡散された・・・「今までもあったのだろうが、今回SNSの働きでこうした手口も暴き出された。まるで落選請負人だ」
─
不信任を突きつけた県議会の対応は・・・「正当性がなくなっている。自ら解散するのが筋ではないか」
─
斎藤氏に対して・・・「民意を背に4年間、掲げた公約を実行していくことだろう。淡々と政策を述べる候補者に光が当たったのは意味があることだと思う。
批判しかしない候補者、首長、メディアやコメンテーターがどうなるか。今後、選挙の形が変わる契機になる選挙だったと思う」
(聞き手 奥原慎平)
2024.11.17-産経新聞(週刊フジ)-https://www.sankei.com/article/20241117-WIXWD5ALARD5HHLR4Q3P3IXU2Y/?outputType=theme_weekly-fuji
国民・玉木代表不倫問題、宰相への階段上れず 旧民社の春日一幸氏との違い 有元隆志
(産経新聞特別記者)
「国民民主党の玉木雄一郎代表は、今の石破茂首相よりもはるかにましだろう」
11月7日発行の本欄でこう書いたら、11日に玉木氏と元グラビアアイドルとの「不倫デート」が発覚した。
地元では「知る人ぞ知る」という話だったそうだが、政府高官も「よりによって都内で会うか」とあきれるばかり。玉木氏を持ち上げた不明を恥じるしかない。
週刊誌ウェブサイト「スマートフラッシュ」が報じた11日は特別国会の召集日で、首相指名選挙があった。
玉木氏は進退を自身で判断することなく、「仲間の意見を聞きたい」と同僚議員に委ねた。本会議前の両院議員総会では、玉木氏の続投を了承し、首相指名選挙で玉木氏の名前を書くことに反対する声は出なかったという。
国会議員にとって首相指名選挙の1票は投票行動の中で最も重い。玉木氏は自分で進退を決められないうえ、同党所属議員たちに事実上、「連帯責任」を負わせることになった。
歌手の小柳ルミ子氏は自身のブログで、「(玉木氏は)『私の弱さで…』と言っておられましたが そんな弱さで国も国民も守れる筈がありません 情けないリーダーばかりで切ないですね」と批判した。さらに、「【103万円の壁】を掲げる前に【ご自身のモラルの壁】を上げた方が宜しいのではないでしょうか」と皮肉った。
玉木氏はグーの音も出ないだろう。
1994年の自民党と社会党、新党さきがけの3党による連立政権の立役者である亀井静香元自民党政調会長は最近、自民党議員に対し、「政局の安定を図るには、自社さで社会党の村山富市委員長を担いだように、玉木氏を首相にすべきだ」と主張している。
自民党内には、「野心家の玉木氏が亀井氏に依頼して説いてまわってもらっている」(閣僚経験者)との見方も出ていた。石破政権の不安定な政権運営が続くなか、その選択肢の可能性もあったが、玉木氏は自分の下半身を制御できず、宰相への階段を上ることはできなかった。
筆者は12日配信の「産経ニュースライブ」で玉木氏の辞任を求めた際、国民民主党の前身である民社党の第3代委員長の春日一幸氏に言及した。
春日氏は愛人の多さで知られていた。民社党担当時に聞いた「5人」と番組では発言した。すると、先輩記者からメールが届いた。
ある時、先輩記者は「民社党は30人ほどの議員数だが、盆暮れに1000万円ずつ配っている。先生は愛人にはいくらつかっているのですか」と聞いたという。
すると、春日氏は「年間1000万円ずつ、10人にだ」と答えたそうだ。愛人の数は5人ではなく10人だったというのだ。1人あたり当時の先輩記者の年収よりも多い金額をつかっていたことになる。
旧民社党議員に聞くと、選挙になると春日氏の妻を中心に、愛人たちが鉢巻きをして選挙運動を展開していたそうだ。
時代が異なり比較はできないが、応答要領に頼り、
頭を下げて謝罪するばかりの玉木氏と、春日氏との政治家としての「格の違い」を感じてしまう。
(産経新聞特別記者)
2024.11.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241115-KDSIYPF6HVMBTE2KDXFQJ4DDDY/
激戦の兵庫知事選 自民支援も稲村、斎藤、清水の3氏に分裂…混戦のまま17日の投開票へ
兵庫県のA前知事(47)の失職に伴う知事選は17日、投票が行われ、即日開票される。
自身のパワハラ疑惑などを文書で告発されて出直し選挙に臨む前知事のA氏を含め、7氏が立候補。過去最多となった昭和49年や令和3年の立候補者数を上回り、知事の資質や県政の再建などを主な争点に、激しい選挙戦が繰り広げられている。
いずれも無所属で、前参院議員、清水貴之氏(50)▽元同県尼崎市長、稲村和美氏(52)▽斎藤氏▽共産推薦の医師、大沢芳清氏(61)▽レコード会社社長、福本繁幸氏(58)▽政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏(57)▽ニュース分析会社社長、木島洋嗣氏(49)―の7人が立候補している。
前回選でA氏を推薦した自民党は独自候補を擁立できず、3候補の支援で分裂した。自民神戸市議団は清水氏を支援しており、県内の地方議員にはA氏を支援する動きも。県議の一部からは稲村氏を推す声も強く、街頭活動に同行する議員もみられる。
自民とともに前回選でA氏を推薦した日本維新の会の県組織「兵庫維新の会」は、知事選の告示直前に維新を離党し無所属で立候補した清水氏を支援している。
公明党は自主投票。立憲民主党と国民民主党の幹部らは稲村氏の支援を明言し、共産党は大沢氏を推薦している。
2024.11.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241115-MWA6SHBFPBNDZG5IQH6ET7SUCQ/
[兵庫県の恥」はなぜ復活したか 「石丸現象」と「さいとう現象」を考える-大手町の片隅から 乾正人
この夏、都知事選があったことなぞ今となっては、遠い昔のような気がする。唯一、これからも人々の記憶に残るのは、
小池百合子の都知事3選でも蓮舫の惨敗でもなく、
「石丸現象」だろう。・・・
石丸伸二という広島県安芸高田市の市長を務めたとはいえ、東京ではほぼ無名の新人が、X(旧ツイッター)やユーチューブなど、交流サイト(SNS)を駆使してあれよあれよと言う間に人気を集め、約170万票を集めて2位に食い込んだ。今度は地域政党をつくって来夏の都議選に殴り込むという。既成政党にとって脅威になるのは、間違いない。
幼児も「さいとうさ~ん」
「石丸現象」とそっくり同じ、いやそれ以上の現象が兵庫県で起きている。同県では、元幹部職員の告発文書をきっかけに、前知事・Aのパワハラやおねだり疑惑が噴出、県議会は全会一致で不信任決議案を可決した。県政は大混乱し、A自動失職の道を選んだ。いま県知事選の真っ最中である。
「知事の資質がない」ことを理由に県議会からクビを宣告されたのだから、
「普通なら恥ずかしくて出馬できない」(県議)はずが、前知事は立候補し、
「たった一人」(本人)で選挙運動を始めた。
百聞は一見に如(し)かず。12日夜、
加古川駅前で開かれたAの街頭演説を見に行ってきた。開始の30分前に現地に着いたが、黒山の人だかりで、次から次へと人がやってくる。
若年層が比較的多く、学校帰りの中高生も結構いた。
横断歩道橋にも鈴なりの人だかりができ、少なく見積もっても千人は集まっていた。
前知事が「ご迷惑をおかけしました」と、深々と頭を下げてから演説を始めようとすると、
大きな拍手と「頑張って!」という声援が飛んだ。親に抱かれた幼児まで「さいとうさ~ん」と叫ぶ熱狂ぶりだった。
メディアの報道は正しいか
最初は、駅頭に立っても「兵庫県の恥」とヤジられ、石を投げられることもあったという。ここから彼の「ナラティブ(物語)」が始まる。
独り行脚を続けるうちに
「パワハラやおねだり疑惑は、県庁守旧派が改革派の知事を潰すために捏造(ねつぞう)した」といった根拠不明の風説が、SNSを通じて拡散され、流れが変わり始めたのだ。
Aも街頭演説で「メディアの報道は本当に正しかったのか」と語り掛け、聴衆から「そうだ!」の掛け声がかかるようになった。
「メディアに攻撃されてもたった一人で旧態依然たる県庁組織や既成政党に立ち向かう男」という「物語」をつくり上げることに成功したのである。
対抗馬の前尼崎市長を応援している地方議員は、「おかしな風が吹きまくっとる」と嘆く。報道各社は世論調査をもとに前市長がリードしていると報じているが、「大接戦」と報じながらトランプの圧勝に終わった米大統領選の二の舞いにならないとも限らない。知事選では、自民党が特定候補の擁立を見送ったように、既成政党の影響力は、格段に落ちている。大政党は、もはや「物語」すらつくれなくなったのか
17日投票の県知事選では、行き詰まっている日本政治そのものと、メディアもまた審判を受けていることを肝に銘じたい。
=敬称略(コラムニスト)
2024.11.14-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241114-2A3P4E6YSNKPZLOD2UQROKPJU4/
兵庫知事選「空中戦」で斎藤氏は40人規模のSNS部隊、稲村氏はショート動画も駆使
兵庫県のA前知事(47)の失職に伴う知事選は17日の投開票に向け、最終盤を迎えている。
激しい舌戦が続く中、各陣営が重視するのがSNS(交流サイト)の戦略だ。全県域の広い選挙区に候補者の訴えや人柄を浸透させたり、街頭演説に人を集めたり…。さまざまな効果が期待される一方、
実際の投票行動にどこまで直結するのかは未知数な面もあり、各陣営とも試行錯誤している。
清水氏は政策、対談を発信
インターネットでの選挙運動が解禁されたのは平成25年。以降、
政党や候補者はネット活用に取り組んできたが、最近はX(旧ツイッター)やインスタグラムのほか、「ユーチューブ」や「TikTok(ティックトック)」といった動画共有サイトが重視される傾向がみられる。
兵庫知事選でも、今年7月の東京都知事選での石丸伸二氏や、先月の衆院選での国民民主党の手法を参考にする陣営もある。 前参院議員の無所属新人、清水貴之氏(50)は主にXとインスタグラムを使って日々の活動を発信。
夜にはユーチューブでライブ配信も行い、自身の政策を話したり応援議員との対談を流したりしている。
陣営関係者は「主要な他陣営と比べるとマンパワーが不足気味」と分析。地道に活動報告したり予定を公開したりして、少しでも多くの支持を獲得したい考えだ。
コンテンツを使い分けて発信するのは元尼崎市長の無所属新人、稲村和美氏(52)の陣営。ユーチューブのショート動画では人柄や重点政策の説明を分かりやすく、「note」では長文の記事で政策などを詳しく説明する。
「情報伝達効率はSNSが最善」と陣営関係者。一方で、ネットに親しみのない世代の有権者からは「見捨てないで」といった声も寄せられるといい、地道な選挙活動にも力を入れている。
大沢氏も演説会を生配信
無所属前職のA氏の陣営はXやインスタグラムなどを日々更新できるよう30~40人が分担して作業に当たっている。翌日の予定を投稿することで「街頭演説に多くの人が集まってくれる」(陣営関係者)と発信力を実感している。
A氏自身の発信力も増している。Xのフォロワー数は失職直後の9月末に約7万人だったが、16万人超に増加。投稿へのコメントに「勇気づけられる」と話しているという。
「石丸氏の躍進を大いに参考にした」と話すのは、医師で無所属新人の大沢芳清氏(61)=共産党推薦=の陣営。Xなどの発信に加え、ユーチューブで個人演説会の生配信も行う。
心ないコメントもあるが『見てくれている』と好意的に捉えている」と大沢氏。訴えの浸透を感じつつ「投票してくれるかは別の話だ」と冷静に受け止めている。
知事選にはこのほか、
▽レコード会社社長の福本繁幸氏(58)▽政治団体代表の立花孝志氏(57)▽ニュース分析会社社長の木島洋嗣氏(49)-の3新人(いずれも無所属)が立候補している。
2024.11.12-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241112-DCLWTY2AHBH2BN2A2UDS52OMYY/
国民・玉木氏 不倫釈明会見の想定問答、PR会社作成は否定「党議員の力を借りて自分で」
国民民主党の玉木雄一郎代表は
12日の記者会見で、自身の不倫報道を受けた11日の記者会見に想定問答などを記した応答要領を手に臨んだことについて、
「政策の面ではあまり想定問答を作らないが、自分自身の問題だけでなく党全体に関わる。客観的な目で見てもらおうと党内の議員の力も借りて、用意して臨んだ」と語った。
11日の会見に玉木氏が持参したA4の紙には「逃げている印象にならないように」「事実関係はおおむね認めます」などと記されており、今回の会見で「PR会社や危機管理広報の指南ではないか」と尋ねられた。
玉木氏は
「書かれた言葉は私自身、何度も修正、加筆、修正、訂正した上で、自分の思いや言葉を率直に伝えようということで書いたものだ。
PR会社に言わされたというのは全く事実に反する」と述べた。
「家族や相手方に十分配慮しながら間違った言葉を使わないように紙を用意した」と述べた上で、
「(記者会見の様子を)見てもらうと分かるが、手に持っているが読んでいない」とも語った。
2024.11.08-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241108-BAA6MQOSVBMALLTOM27YJXI5CM/
降ろしたA知事を支援する議員も…独自候補見送った自民、議員の支持は3候補に分裂
兵庫県のA前知事(47)の失職に伴う知事選は、
17日の投開票に向けて終盤戦に突入する。ほとんどの候補者が政党色を前面に出さない中、
政党側からの支援表明などで構図が明らかになってきた。
3年前の前回選でA氏を推薦した自民党は独自候補を擁立できず、3候補の支援で分裂。他党は地元組織の幹部らが支援先を明言し、議員が候補者の活動に同行するなど、選挙戦は激しさを増している。
自民県連は告示翌日の1日、自主投票を決定。告発文書問題への対応を巡り、県議会から不信任決議を受けたA氏の支援を禁じる案も取り沙汰されたが、見送った。
県内の地方議員の支援先は割れている。県連の決定に先立つ先月29日には、兵庫県明石市議会の会派「自民党明石」の幹部が、A氏支援の禁止案を批判。ほかの自治体の議員の中にもA氏を支援する動きはある。
一方、
神戸市議会最大会派の自民神戸市議団は今月2日、維新を離党した前参院議員の清水貴之氏(50)を支援する方針を発表。会見した市議は、維新との距離感に懸念を示しつつ、「現状で自民党の支持者にお示しできる最良最善の候補だ」と支援の理由を述べた。
自民県議団の一部では、
元同県尼崎市長の稲村和美氏(52)を推す動きも強い。先月28日には稲村氏と面会し、31日の告示日には、県議や国会議員らが稲村氏と並んで立つなどした。
街頭活動などに同行する県議もおり、支持を訴えている。
自民とともに前回選で斎藤氏を推薦した維新は、県組織「兵庫維新の会」が同月29日、清水氏の支援を決定。党議拘束は見送ったが、兵庫維新の片山大介代表は「元々われわれの仲間という形で応援する。基本的には(清水氏で)一枚岩になった」と説明した。
立憲民主党と国民民主党は、特定候補の支援か自主投票かといった機関決定はしないが、いずれも県組織の幹部が稲村氏支援を明言。公明党は自民の方針を受け、自主投票を決定。共産党は医師の大沢芳清氏(61)を推薦している。
知事選にはほかに、レコード会社社長の福本繁幸氏(58)▽政治団体代表の立花孝志氏(57)▽ニュース分析会社社長の木島洋嗣氏(49)―の3新人(いずれも無所属)が立候補している。
2024.11.06-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241106-YBTITDN62JLFZOIY4SBL3AHACI/?outputType=theme_uspe
小池百合子都知事、トランプ氏再選確実に「どんな影響が出てくるのか気になる」
東京都の小池百合子知事は6日、
国際会議出席のため羽田空港(大田区)からエジプトの首都カイロへ出発するのを前に、
米大統領選で共和党のドナルド・トランプ前大統領が当選を確実にしたことについて「(トランプ氏当選が)正式に決まった時点で、(会議が)どういう空気になるのか、
どんな影響が世界で出てくるのか気になる」などと述べた。
小池氏はカイロで、国連人間居住計画(ハビタット)が主催する「世界都市フォーラム」に出席。アラブ首長国連邦(UAE)で政府関係者らと面会後、アゼルバイジャンの首都バクーに移動し「国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)」に参加する。
小池氏の発言は、
トランプ氏が前政権時に気候変動対策の国際的枠組みである「パリ協定」を離脱した経緯を踏まえたもの。
米国は21年のバイデン政権発足時に復帰しており、トランプ氏就任後の動向が注目されている。
2024.11.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241102-HXH7QBNYOVM45M5JX4JGMUPIQ4/
兵庫知事選でA氏「いろんな方から辞めろと…ずっと一人ぼっち」雨中の演説で本音ポツリ
兵庫県のA前知事(47)の失職に伴う知事選(17日投開票)は2日、告示後初めての週末を迎えた。
時折激しい雨に見舞われる中での舌戦となったが、各陣営はそれぞれの狙いで、大勢の人出が見込める繁華街や休日の住宅街などで街頭演説をおこなったり選挙カーを走らせたりして支持の拡大を図った。
この日午前、自民党神戸市議団と政策協定を締結した前参院議員の新人、清水貴之氏(50)。午後からは県南西部の各市町を転戦し、姫路市のJR姫路駅前では「今必要なのは県民の声を聞き、県職員とコミュニケーションを取れるリーダーだ」と訴えた。
元尼崎市長の新人、稲村和美氏(52)はJR明石駅前で雨空をにらみつつ「『雨降って地固まる』。県議、市長の経験を生かして県庁を立て直したい」と主張した。稲村氏にはこの日、立憲民主党と国民民主党の県連がそれぞれ支援することを発表した。
雨の影響で街頭活動の予定変更を余儀なくされるなどしたA氏。神戸市中央区での演説では告発文書問題にふれ「いろんな方から辞めろといわれて、ずっとひとりぼっちだった」と本音も漏らしたが、「日本の政治・社会を変えるスタートだ」と強調した。
医師で新人の大沢芳清氏(61)=共産推薦=は阪神間に重点を置き活動。選挙カーで回りながら、駅や商業施設などでスポット演説を重ねた。伊丹市内のショッピングセンター前では「私に県政を正常化させる仕事をやらせてください」と呼びかけた。
知事選にはこのほか、
▽レコード会社社長の福本繁幸氏(58)▽政治団体代表の立花孝志氏(57)▽ニュース分析会社社長の木島洋嗣氏(49)-の3新人(いずれも無所属)が立候補している。
2024.11.02-産経新聞(週刊フジ)-https://www.sankei.com/article/20241102-E2TYHIDNZZG5HOAGRJY3WSWOBQ/?outputType=theme_weekly-fuji
「漁夫の利」野田立民への不安 政策はとてもほめられたものではない 高橋洋一
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
立憲民主党が衆院選で議席を大幅に増やした。今後、国内政策や外交、経済にどんな影響が出るだろうか。
衆院選では、
「人気が高い」と思われていた石破茂首相が、発言のブレや解決済みの「政治とカネ」を蒸し返す戦術ミスなどで火だるまになった。そこで漁夫の利を得たのが野党第一党の立憲民主党だった。
今回の選挙戦は、争点が「政治とカネ」の問題に終始し、経済政策や外交・安保に割く時間が少なかった。そもそも首相就任から、衆院選までの期間も短かったので、政策論は生煮えだった。
相対的に浮上した立憲民主党だが、その政策は、とてもほめられたものではない。本コラムでも指摘したが、野田佳彦代表は、金融所得課税の強化や法人税の引き上げもあり得ると述べた。
金融政策についての見解もひどく、日銀の物価安定目標を「2%」から「0%超」に変更するとしている。インフレ率が0~2%なら、失業率が最低水準であるNAIRU(インフレを加速しない失業率)を示す2%台半ばをかなり上回ってしまう。おそらく120万人くらいの職が失われるだろう。
また、低いインフレ率だと、名目賃金上昇率がインフレ率を下回ることもしばしばある。このため実質賃金の上昇率がマイナスになりがちだ。
「最低賃金1500円以上」も掲げているが、これが無理筋なのは本コラムで何度も書いている。
こうしてみると、立憲民主党の政策は、かなり石破政権と似ている。率直にいえば、石破自民と野田立民の政策が接近している。
選択的夫婦別姓や原発に依存しない社会の実現、日米同盟が外交安保の基軸だとしつつ、安全保障関連法に関しては違憲部分の廃止を掲げ、外交や安全保障は、極端に180度すぐ変えることはできないとし、現状維持をにじませている。
このように、左傾化している石破政権と、右傾化した野田立民は、政策が驚くほど似ている。もし、石破政権が今後も続くのであれば、大連立もあり得るかもしれない。そうであれば、野田立民の政策はかなり実現するだろう。
しかし、衆院選で石破政権が自滅したので、自民党内の政治力学からいって、石破政権がこのまま継続するというのはなかなか考えにくい。
政治は一寸先は闇なので、どのような政界再編が待っているのか予測するのは困難だ。石破政権が生き残りのために、あえて野田立民との大連立を仕掛けてくる可能性もゼロではない。
いずれにしても、野田立民の衆院選後の影響力は、政界再編の枠組みによって異なってくる。石破政権が潰れれば大連立はないとみられるが、その場合でも与党の議席は少ないので衆議院選で一定の議席を得た立憲民主党の影響力は間違いなく増すだろう。
今回の衆院選は、左派の石破自民にお灸を据えるために、右傾化した野田立民に投票したという面があるのではないか。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
2024.10.31-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241031-NTPKIWNFQBJR7KQJBNQSNTE5WA/
不安定さ残る「部分連合」 難しい政権運営続く自民 国民との協議を本格化
(大島悠亮)
自民党は
31日、
衆院選で少数与党となったことを受けて、国民民主党との「部分(パーシャル)連合」に向けた協議を本格化させた。ただ、
部分連合は政策ごとに野党が政府・与党に協力する連携のため、政権運営の不安定さは残る。
国民民主にとって自らの政策を実現させる機会は増えるが、国家統治に関与する責任の重みが増す。掲げた政策の実現性が、これまでよりも一層問われることになる。
連合政権、最も安定は「閣内協力」
連合政権のあり方は、今回のような「部分連合」に加え「閣内協力(連立)」と「閣外協力」がある。日本政治に詳しい中央大学の中北浩爾教授の著書「自公政権とは何か」(ちくま新書)によると、閣内協力や閣外協力は部分連合と違い、複数の政党が常に協力し、政権を支える。
各党が閣僚を送り出し、政権運営でも連携するのが閣内協力だ。法案や予算案の議決など国会運営に加え、政権内部でも協力するため、最も安定した連合政権のかたちといえる。現在の自公政権もこの形式にあたる。ただ、政党間の協力関係の維持を優先するために政策面での調整で妥協を強いられるケースもある。
閣外協力は閣僚を送り込まず、首相指名選挙での投票や内閣不信任案決議なども含めて国会運営に協力する。日本では第2次大平正芳内閣(昭和54年11月~55年6月)での自民と新自由クラブの関係などが、例として挙げられる。政党間で政策協議の場を設けて法案の事前審査を行い、法案採決で恒常的に協力する場合もある。
困難な立ち回り求められる自公政権
一般的に閣僚を送り出す閣内協力を避け、閣外協力や部分連合にとどめるのは、選挙などを考慮し、各党の自由裁量を確保しつつ政策実現を図るためだ。しかし、その分、連合政権としての安定性は欠ける。
自民党関係者は「自公が過半数の支持を失ったので、部分連合などを模索するのは国政を停滞させないためにも当然だ」と理解を示すものの、「今後も自公政権は難しい立ち回りを求められることになる」との見方を示す。
一方、自公が部分連合の相手として秋波を送る国民民主は、ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除や「年収103万円の壁」撤廃などを主張しており、自公との政策協議で遡上(そじょう)に載せる構えだ。だが、これらの政策は財源などを巡って課題もある。
中北氏は
「国民民主は自公政権と部分連合を組み、政策実現を図るだろうが、あまりにも過大だと、自公は日本維新の会とも部分連合を組み、バランスをとるのではないか」と指摘した。
(大島悠亮)
2024.10.31-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241031-WAWVYATJR5C3HGSMHWPB4V67XY/
「売れない地下アイドル」が政局キーマンへ 国民・玉木雄一郎代表、SNS駆使も若者人気
(中村翔樹、奥原慎平)
先の
衆院選で自民、公明両党が過半数割れし、政権の枠組みが焦点となっている。
カギを握るとされるのが、
公示前から4倍に勢力を伸ばした国民民主党だ。玉木雄一郎代表は「対決より解決」を標榜し、政府・与党が模倣したくなる政策の打ち出しに腐心するなど「政策先導型」の野党像を模索してきた。
希望の党時代から足かけ7年間、野党の党首を担った玉木氏。「売れない実力派地下アイドル」と評される時期もあったが、SNSも駆使して若者を中心に支持を固めてきた。
全員が「玉木」と書く
「ポストがどうだ、政権の動きがどうだ、というのは多くの国民に関係ない。そういうこと自体ずれている」
29日の記者会見で、自公連立政権への参加意思を尋ねられた玉木氏は「ない」と否定した上で、こう指摘した。
衆院選で256議席から191議席に大きく減らした自民党は、水面下で玉木氏側にさまざまなプランを持ちかけ、首相指名選挙での協力を打診した。立憲民主党も躍進したとはいえ、議席数は自民に及ばない148議席にとどまり、野田佳彦代表は玉木氏に首相指名選挙では「決選投票でいいから『野田』と書いてほしい」と呼びかけた。
しかし、玉木氏は「首相指名では決選投票も含め、(同党所属の衆院議員は)全員が『玉木雄一郎』と書く」と語る。現段階では、自公と政策ごとに協力する「部分連合」の方向に傾いているとの見方が強い。
安倍晋三氏が出馬面談
玉木氏は香川県寒川町(現さぬき市)生まれ。好きな食べ物は「さぬきうどんと餃子定食」という。
東大法学部卒業後、平成5年に大蔵省(現財務省)に入省。内閣府への出向時に自民党から衆院選への出馬を誘われ、当時の安倍晋三幹事長と面談した。ただ、出身地の香川2区(当時)には自民の現職がいた。別の選挙区からの立候補を提案されたが、「国政に挑戦するなら、先祖の墓のある場所で」との思いがあり、断ったという。
初出馬は17年9月の衆院選だ。選挙区は志望通り香川2区だったが、
民主党公認を選んだ。「親も自民党員だったので、民主党には反対も多かったが、日本にも切磋琢磨(せっさたくま)できる保守二大政党制が必要だと思った」(公式サイト)と回顧している。
このときは
自民候補に大敗したものの、再び民主党公認で出馬した21年8月の衆院選で初当選。推進力になったのは、同郷で遠戚にあたる故・大平正芳元首相だった。
落選期間中、大平氏の親族を訪ね、協力を取りつけたという。
大平氏は、穏健保守的な「宏池会」(旧大平派)を率いており、玉木氏の政治信条も近い面があった。
親族らは「大平の精神を受け継ぐ者」と信頼を置き、選挙区内の自民支持者へ玉木氏支持を訴えた。
地元・香川で「玉木党」とも称される支持層が、リベラルから保守まで幅広く存在するのは、こうした経緯がある。
「土着の保守政治家」小池氏から希望の党継承
所属政党には曲折があった。
玉木氏は29年9月、東京都の小池百合子知事を中心とする地域政党「都民ファーストの会」が国政に進出する形で結党した「希望の党」に合流した。玉木氏は直前まで民進党の幹事長代理を務めていた。
その後、
小池氏の「排除発言」などに反発した枝野幸男元官房長官が立憲民主党を結成し、民進党の勢力が分散。翌10月の衆院選で希望の党は公示前勢力を下回る惨敗を喫した。玉木氏は初代代表だった小池氏から、最終的に党首の座を引き継いだ。
玉木氏は初当選以来、農業政策に思入れが強く、自身を「土着の保守政治家」と称す。希望の党についても「地に足のついた土のにおいのする政党」を目指すとし、「自民党や野党第一党に拾い切れない国民の声をすくいあげ、『飛び道具』に頼らず、地道に実績を重ねていく」と意気込んでいたが、民進党との統一会派構想を巡って党内が二分。約半年後に分党を余儀なくされる。
30年5月、玉木氏側のグループは参院を中心に構成する民進党と合併し、名称を変更して旧国民民主党が発足。玉木氏は共同代表に就いた。
令和2年9月には、立民と国民民主の合流議論の末に、旧立民と旧国民民主の一部が合流する「新立憲民主」と、合流しなかった玉木氏らによる「新国民民主」が結党された。玉木氏は新国民民主の代表として現在に至る。
単独で法案提出可能に
前回令和3年の衆院選で、国民民主は「提案型野党」を唱え、憲法改正の推進や原発政策などで立民との違いをアピールし、公示前から3増の11議席と勢力を伸ばした。
今回の衆院選では、
物価高を背景に「手取りを増やす」をキャッチフレーズに掲げ、減税や社会保険料軽減などを主張。
選挙戦では、ユーチューブやX(旧ツイッター)などのSNSを駆使し、世代や組織の垣根を越えて支持を広げた。自身のユーチューブチャンネルの「たまきチャンネル」は登録者数30万人、Xのフォロワーは45万人をそれぞれ超える。
玉木氏は、単独で法案提出ができるようになる21議席以上の獲得に意欲を示していたが、想定を上回る躍進を遂げた。
(中村翔樹、奥原慎平)
2024.10.30-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241030-SBCMCZY3FJLBPNLIYHX244SVMU/
迷走の兵庫自民、知事選候補の擁立断念 一部議員からは「消去法でA氏しか…」の嘆きも
兵庫県のA前知事(46)の失職に伴い、31日に告示される県知事選(11月17日投開票)で、
自民党は紆余(うよ)曲折の末、独自候補擁立を断念した。前回選で日本維新の会とともにA氏を推薦した自民は、告発文書問題を受けて早々と同氏に見切りをつけ、県議会最大会派として不信任決議でも主軸を担ったが、候補者探しでは迷走を重ねた。
出馬固辞相次ぎ…
そもそも、自民県議団(37人)は今月3日の段階で「擁立断念」の方針を固めていた。自民県連関係者によれば、目星をつけていた県幹部らには相次いで出馬を固辞され、「時間切れ」の雰囲気が漂っていた。しかし衆院選への悪影響を懸念する県選出の国会議員側から再考を促され、撤回を余儀なくされた。
衆院選の期間中は、県連幹部が複数の参院議員に接触。出馬の意向を探ったが、準備期間のなさがネックとなり、色よい返事はもらえなかった。そして衆院選が終わるタイミングで「再度の擁立断念」が伝えられた。
県議団内部では以前から同県尼崎市の前市長、稲村和美氏(51)を推す意見が上がっていた。一方で、稲村氏が立憲民主党系の会派「ひょうご県民連合」の一部県議から自主支援を受けることに嫌気して「支援できない」との拒否反応も少なくなかった。
結果、県議団は「自主投票」という玉虫色の結論を出し、15人程度が稲村氏支援に回ることに。不信任を決議した手前、「斎藤氏の支援だけはまかりならない」との縛りをかけた。
県議団決定に反発
ただこの県議団の決定に対し、兵庫県明石市議会の会派「自民党明石」が公然と反発。同会派幹部は29日、記者団を前に「自主投票といいながら特定候補の支援を禁じるのは問題だ」と批判し、県議団ではなく県連が同様の決定をするのであればそれに従う、とした。
知事選には参院議員の清水貴之氏(50)も出馬を表明しているが、国政選挙で対立する維新出身。このため「維新は応援できない。といって稲村氏も推せない。消去法で、もうA氏しかいない」という声も、県議以外の地方議員の間では出ているという。
知事選を巡り、党としてのまとまりを欠く自民。ある県連幹部は「A氏だけはだめ。組織としてこれだけは念押ししなければ」と話した。
斎藤氏が存在感
「AかA以外か」が主要争点となりそうな中で、当のA氏は存在感を増している。失職直後に約7万7千人だったX(旧ツイッター)のフォロワー数は13万人超まで増加。反対派も相当数いるとみられるが、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏(57)がA氏を当選させるために知事選への出馬を表明するなど支援の動きもみられる。
一方、
知事選への立候補を表明していた元同県加西市長、中川暢三氏(68)と元経済産業省官僚、中村稔氏(62)が29日、立候補予定者の多さなどを理由に出馬辞退を明らかにした。
2024.10.25-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241025-QMSLGWJJDFLX5JDXTTNROR3DCI/
パレード終了後に協賛金急増も…兵庫元副知事、補助金還流否定「キックバックない」
A・前兵庫県知事(46)が失職するきっかけとなった告発文書問題で、
24日の同県議会調査特別委員会(百条委員会)では、阪神・オリックスの優勝記念パレード(昨年11月)を巡る疑惑が取り上げられた。低調だったパレードの協賛金を金融機関に出してもらう見返りに、県側が補助金増額を
約束した-とされるもの。百条委に出頭した県幹部は増額する根拠はなかったとの趣旨の発言をした。
パレードの事業報告によると、総事業費は約6億5千万円。「公費負担ゼロ」が大前提だったため、企業協賛金(寄付金含む)とクラウドファンディング(CF)による募金が頼みだった。
パレード開催は昨年11月23日だったが、協賛金は12月まで受け付け、最終的な集計は約5億3千万円に上った。
このうち兵庫が集めた金額は9300万円だったが、その半分にあたる4500万円(18件分)はいずれもパレード終了後に申し込みがあったもの。うち11件を占めたのが、告発文書で補助金還流疑惑が指摘された信用金庫だ。
主催者側が協賛を呼び掛けていた当時、メリットとして強調されたのはパレード車両などに企業名が表示されることだった。このため兵庫での協賛金の集まり具合について、百条委のある委員は「パレード終了後では企業のPRにならない」と疑問を口にする。
信金の協賛金との絡みで、増額の経緯が問題視されているのが県の新型コロナウイルスに関連する令和6年度の補助金事業だ。コロナ禍に政府方針で金融機関が行った実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)を巡り融資先への支援(資金繰り相談への対応など)を行うと、1件につき7万5千~10万円が次年度に県から金融機関に支給される仕組み。
県地域経済課や財政課の説明によると、6年度分の事業予算として当初は融資先1千件への支援で約1億円を見込んでいたが、片山安孝副知事(当時)から11月中旬に4億円程度に増額するよう指示があったため、4千件に積算し直し、最終的に当時の斎藤知事の査定で4億円で計上することが決まった。
県予算の枠内で金融機関が申請できる補助金の上限は、返済残高のある融資先の数に応じてあらかじめ決まっており、予算が4倍になれば、原則として申請上限も4倍になる。こうした予算増額の意思決定と信金による協賛金支出の時期的な一致が、還流疑惑として指摘されている内容だ。
片山氏は産経新聞の取材に「(当初の)1億円は新規申請分だけで、継続支援が必要なところも入れれば、4億円ぐらい必要だと担当部署に聞いた」と説明。増額の指示を認めた上で、事業の必要性に応じた措置だったとした。
パレード実施の直前に信用金庫を訪れ、協賛金の依頼や他の信金への呼び掛けを行ったことも認めたが「補助金をキックバックするから(協賛金を)出してなんて言えるわけがない」と、因果関係を否定した。
一方、この日の百条委に出頭した補助金担当の県幹部は財政課から増額の指示があったとし、片山氏の関与については触れなかった。
「政治利用」批判懸念、公費ゼロ強調も募金は終始低調
優勝パレードは昨年、18年ぶりにセ・リーグを制した阪神とパ・リーグ3連覇を果たしたオリックスがともに関西を地盤とする球団だったことから、大阪、兵庫両府県を中心に機運が高まり、9月下旬に経済界なども加わり、実行委員会が立ち上がった。
その後の日本シリーズも「関西ダービー」と呼ばれて盛り上がったが、大阪府の吉村洋文知事や兵庫県の斎藤元彦知事(当時)はそれぞれパレードに公費を投入しない考えを強調。2025年大阪・関西万博の事業費上振れに対する批判や両球団人気の「政治利用」といった反対意見が念頭にあったとみられる。
ただ平成17年に阪神がリーグ優勝した際のパレード事業費が約1億5千万円だったのに対し、大阪・神戸の2カ所開催となった昨年のパレードは昨今の物価高もあり、最終的に約6億5千万円にまでコストが膨らんだ。
ファンの募金に期待したCFは終始低調で、最終的に約1億円にとどまり、両府県としては協賛金に頼るしかない状況だった。それぞれのノルマはなかったというが、兵庫が集めたのは約9300万円、大阪は4億3千万円超だった。
大阪府は一部の協賛企業が非公表を希望しているとして、詳細な内訳を明らかにしていない。
2024.10.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241004-CWEMF2XAUNOSVOC3ZTSFR6UQ5I/
兵庫県知事選 最大会派自民、「候補者見送り」方針をわずか一日で撤回
兵庫県知事だった斎藤元彦氏(46)の失職に伴う県知事選(31日告示、11月17日投開票)で、
県議会最大会派の自民党県議団が4日、議員団総会を開き、独自候補擁立を見送る方針を撤回することを決めた。3日に総会を開き、
擁立断念の方針を固めていたが、県連所属の国会議員から反対意見が出たため、わずか一日で方針転換した。
自民党県議らによると、4日午前に県連所属の国会議員らによる会合が開かれ、候補者擁立断念の方針に対して「候補者擁立に向け、引き続き探し続けるべきだ」との反対意見が出たという。そのため、同日に改めて県議団総会が開かれ、3日の決定方針を撤回し、候補者の擁立に向けて引き続き協議していくと決めた。
自民はこれまで県幹部や現役官僚に出馬を打診したが、いずれも固辞。面談した元経済産業省官僚の中村稔氏(62)に推薦を求められたが、反対意見もあり、まとまらなかった。中村氏は自民の支援を得られなくても出馬するとしている。
同県尼崎市の前市長、稲村和美氏(51)や日本維新の会の清水貴之参院議員(50)は近くそれぞれ記者会見し、正式に立候補を表明する予定。
公明党は自民に同調する方針で、立憲民主党県議らでつくる「ひょうご県民連合」は議員が自主的に稲村氏支援に動く見通し。共産党は無所属で出馬する医師、大沢芳清氏(61)を推薦している。
2024.09.29-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240929-G54QOUE35BPTTBQUFBLPDB5JRA/
候補者乱立で「A再選」の可能性も、思惑入り乱れる出直し知事選-混迷・兵庫県知事失職㊦
(敬称略)(
連載は喜田あゆみ、地主明世、倉持亮、木津悠介が担当しました)
「こういう状況になったことは…申し訳ないなという思いで…あの、自分自身に対して悔しい思いです」・・・
兵庫県議会の自民党会派などによる辞職申し入れを翌日に控えた9月11日の午後、定例記者会見に臨んだ兵庫県知事のA(46)は開始から約1時間後、突然声を詰まらせ、涙ぐんだ。
令和3年の前回知事選で自民と日本維新の会の推薦を得て初当選を果たしたAに対し、維新はすでに会見の2日前、辞職要求と出直し知事選の実施を申し入れていた。
自民を含む全86県議から退場を迫られる事態にあって、
Aは3年前に自身に出馬を要請した自民県議3人の実名を挙げ「先生方には心から感謝している」と述べた。これを聞いた維新県議は、ほくそ笑んだ。
「自民と知事。維新の名前は出ないほうがいいねん」
3年前の知事選でAは松井一郎(60)や吉村洋文(49)ら当時の維新幹部の応援を受けた。就任後に知事報酬の削減など「身を切る改革」や将来世代の支援を進める一方、重要政策を根回しなく発信する姿勢は、揶揄(やゆ)を込めて「維新知事」と評された。
当の維新側も、国政と地方の選挙で党勢を拡大している間は、それに乗った。
「維新県議団は知事与党」。告発文書問題発覚後の今年4月に至っても、県組織
「兵庫維新の会」代表で参院議員の片山大介(57)は、そう言ってはばからなかった。
しかし文書問題で告発者を特定して処分した
Aの対応に批判が集まる中、県議会調査特別委員会(百条委員会)の設置に維新県議21人全員が反対し「A擁護派」のイメージが拡散すると、一気に守勢に立たされた。
本拠地・大阪の選挙で敗北が相次ぎ、党内から「文書問題の対応が後手に回った影響だ」との批判が噴出。調査優先の方針を転換し、他会派に先駆けて辞職を要求したのも、A擁護派のイメージを払拭する思惑があったからにほかならない。
一方の自民。
もとをただせば、3年前の知事選は一枚岩でなかった。
維新が独自候補を擁立すれば、自民候補と目されていた当時の副知事では勝てないとの見方が一部で強まり、Aを支持する県議11人が会派を離脱して擁立に走った。維新勢力の県内への伸長を警戒した国会議員が同調し、Aの党本部推薦を決めた経緯がある。
昨年4月、自民は会派を統一したが、しこりは残る。百条委設置の採決では足並みがそろわず1人が反対。不信任決議案の提出にあたっては、最大会派として主導する動きはみられず、
立憲民主党議員らでつくる第4会派「ひょうご県民連合」に引っ張られる形になった。
全会一致の不信任決議もAに辞職を決断させるに至らず、主導権を握られた形で出直し選に突入する自民は独自候補擁立を模索する一方、他党との相乗りの可能性も否定していない。ベテラン県議は「こんな短期間で決める候補でいいのか。準備不足だ」と憤る。
維新は独自候補を擁立する方針。県民連合は政党色を出さずに候補者を支援する考えで自民、公明に連携を呼びかける。県民連合の県議は「今回は資質、人物の問題。県民に責任を持てる知事を誕生させる」と息巻く。
3年前と構図は一変するものの、各党の思惑が複雑に絡む点は出直し選も同じ。ただ
情勢は流動的で、候補者が乱立すれば「『A再選』の可能性も否めない」とある県議は危機感を募らせる。
県政の刷新を掲げるAが知事就任後3年余りで講じた政策の評価も定まらない中、有権者は、A県政継続の是非について判断を迫られる。選挙によって県民の負託を得た知事は現下の混迷に終止符を打てるのか。答えはまだ見えない。
(敬称略)
連載は喜田あゆみ、地主明世、倉持亮、木津悠介が担当しました。
2024.09.28-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240928-YC5COTJC4VPQ3D43MJHNBMLRMY/
「噓八百」会見直後、A知事側近は県警本部に走った-混迷・兵庫県知事失職㊥-
(敬称略)
3月27日夕、
神戸市中央区の兵庫県庁からほど近い県警本部庁舎に県幹部の姿があった。
県警の担当者と向き合ったのは、総務部長(当時)のE(60)や県民生活部長(同)のC(57)ら3人。「名誉毀損(きそん)で告訴や被害届を出せないか、知事から相談してこいと言われまして…」。
県西播磨県民局長(同)の男性(60)が作成した告発文書をみせ、こう切り出した3人の表情には困惑が浮かんでいた。
この直前、兵庫県知事のA元彦(46)は記者会見で怒りをあらわにしていた。
「業務時間中に噓八百含めて、文書を作って流す行為は公務員として失格だ」。Aは男性をこき下ろし、文書は誹謗(ひぼう)中傷に当たるとして
「被害届や告訴なども含めて法的手続きを進めている」と宣言した。
だが、文書はそのA自身のパワハラ疑惑などを告発したもの。公益性があり、立件は難しいとの県警側の感触を得ると、以降、Aが自ら告訴に言及することはなくなった。
3年前、知事就任にあたって「ボトムアップ」を掲げたA。就任時には職員に向け
「失敗を恐れないで。失敗したら私が責任を取る」とメッセージを送った。ある中堅職員はこの言葉に期待を抱いたが、
ほどなく失望に変わったという。
就任直後、Aが設置したのは、知事の肝煎り政策を進める
「新県政推進室」。トップの室長には、後に県警本部に走ることになるEが就き、Cも室次長に名を連ねた。
同じく室次長となった現産業労働部長のB(56)、9月に副知事として招かれたD(64)を含めた4人は、総務省キャリアだったAの宮城県庁勤務時代に、東日本大震災の復興支援で宮城に派遣されるなどしていて知己を得た間柄だ。
次第に県政の重要事項は、Aとこの4人の間で決められるようになった、と職員や県議らは口をそろえる。E、C、Bは昇進を重ね、県庁内の枢要なポストを占めていく。
Aと4人の蜜月ぶりは、宮城県名物をもじって「牛タン倶楽部」と呼ばれた。
「就任時には部局に任せますと言っていたが、結局はトップダウンだった」。A斎藤に近い県議は、その運営手法をこう評する。象徴として挙げるのは、Aが自身の功績としてアピールする県庁舎の建て替えだ。
県庁舎は前知事、F(79)の時代に建て替えを含めた再整備が決まった。だが、Aは就任4カ月後の令和3年12月に凍結を表明。Fの時代から事業費が約1千億円に上振れしており、「県民の理解を得られない」とした。
大規模な支出を伴う事業は止めたが、その後がなかなか決まらない。庁舎の一部は耐震性の問題で解体する必要があり、現状維持の選択肢はない。5年3月、ようやくAが打ち出したのはテレワークの推進により職員の出勤率を4割とし、庁舎をコンパクト化する案だった。
「みんな絶句した。冗談かと思った」。職員の一人が振り返る。県庁は大規模災害時に司令塔の役割が求められる。阪神大震災を経験した職員にとって、
Aのプランは寝耳に水だった。
「事業を凍結するのは正しい判断だったと思う。ただ、いきなり4割出勤といえば混乱を招く。丁寧さが必要だった」。県議はこう指摘した。
「徹底的に調べてくれ」。今年3月21日、告発文書を入手したAは知事室に牛タン倶楽部の4人を招き、こう指示したという。
人事の硬直化、根回しやコミュニケーションの不足…。A県政のゆがみは、冷静さと客観性を欠いた「告発者捜し」として表出し、不信任の大きな要因となった。
(敬称略)
2024.09.27-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240927-OMRTMEPBPVKP5GIXYVWOMFKB3M/
失職選んだA知事、資質欠くと言われても自身の正当性にこだわり でも勝算は「ない」
兵庫県議会から全会一致の不信任決議を受けたA知事が取った選択は、失職だった。26日の記者会見では、
3年間の県政改革の「実績」を強調し、告発文書問題の対応も適切との認識を改めて示した。
不信任決議で「資質を欠く」との烙印(らくいん)を押されながらも、改革継続の是非を争点に出直し知事選に臨む姿勢からは、自身の正当性へのこだわりが透ける。
「改革を止めるわけにいかない。今回辞職ではなく、失職し、出直していきたい」。A氏は記者会見でこう述べた。・・・辞職と失職-。現職の知事でなくなる点は同じだが、A氏にとっては全く意味が異なる。
なぜ辞職を選ばなかったかと問われ
「4年間の任期を全うしたいとの強い思いがあり、自ら職を辞することは、選択肢としてなかった」と説明。
「辞めるよりも、続けていく。仕事をしていくことも責任の果たし方だ」と持論を展開した。
一定の責任は認めつつ法律が定める自動失職を選ぶことで、自身の非をできるだけ認めない形を取ったとみられる。
A氏は議会解散についても「考えていなかった」と否定した。文書問題の対応を問題視され、自らの信を県民に問うのが筋との考えからだ。
会見では、決断に際して一番悩んだ点は
「出直し選に出るかどうかだった」と語ったが、不信任後のA氏の動きは、すでに選挙を意識していたようにもみえる。
A氏は不信任翌日の20日以降、NHKや民放の情報番組などに相次いで生出演。
文書問題の対応については従来の説明を繰り返す一方、県立大の授業料無償化など実績を訴える場面が目立った。A氏本人は否定するが、議会側からは「出直し選に向けた布石だ」との声が上がった。
もっともA氏を取り巻く状況は厳しい。
令和3年の前回知事選では自民党と日本維新の会の推薦を得たが、今回は
「政党の力を得るのは難しい。完全に一人の無所属候補」と話す。
会見で勝算を聞かれたA氏は「そういったことはない」と答えつつ、
「県民の皆さんから応援もあれば『信じている』との声もある。もう一度頑張らせてもらいたい」と、いちるの望みをかけた。各党の足並みがそろわなければ、現職として選挙戦を有利に進める可能性も否定はできない。
近畿大の上﨑哉(うえさきはじめ)教授(行政学)はA氏の説明について「文書問題への言及がなければ、県民は報道などから
(対応の是非を)判断せざるを得ず、望ましいとはいえない」と指摘する。「失職の選択から
『まだまだ自分の県政をやっていきたい』という意思がうかがえる。正しいことをしてきたという確信を持って選挙を戦うのだろうが、
支援組織がなければ万全の態勢で臨むのは難しいのではないか。有権者にどれだけ声が届くかだろう」と話した。
2024.09.26-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240926-IWDWXCIJOZL4LKR3UDCYMWV4KM/
じわり反A包囲網 自民と維新は独自候補の擁立模索、相乗りも視野
兵庫県議会から全会一致で不信任案を可決されたA知事が失職からの出直し選を選んだことを受け、各党は対立候補の選定を急ぐ。
前回選でA氏を支援した自民党と日本維新の会は今回、「反A」の姿勢。ただ、
50日以内に行われる知事選まで期間が短く、有力な候補者を立てられるかは不透明だ。
自民と維新は前回選でA氏を推薦した。だが
、自民県議団の北野実幹事長は26日、記者団の取材に「推薦はあり得ない」と強調した。複数の関係者によると、A氏の対立候補として官僚や県議、民間企業の顧問、県幹部らの名前が挙がっているが絞り込めていないという。
ある自民県議は
「時間がない中で無理に探した候補者で勝てるとは思えない」と率直な思いを吐露。党としての独自候補の擁立は見送り、他党と相乗りでA氏の再選を阻止するしかないとの見方を示した。
実際、
立憲民主党系の県議会会派「ひょうご県民連合」は、他会派とも調整可能な別の候補者を絞り込みつつある。
自民が独自候補の擁立を見送り自主投票となれば、相乗りが実現する可能性もありそうだ。
一方、
維新も独自候補を模索しているが、決定には至っていない。県議団「維新の会」の岸口実団長は26日、報道陣に対し「A氏はない」と明言し、候補者については
「県選出の参院議員、県議会議員が選択肢」と明かした。
2024.09.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240918-EZQORJ2NOJMPPBGS7HDDJCQWPA/
不信任確実の兵庫・A知事 次の一手は「失職の方が有利」の声も 想定される4パターン
兵庫県のA知事に対する不信任決議案が19日開会の県議会に提出される。即日採決により可決は確実な情勢で、
告発文書に端を発したA氏を巡る一連の問題は大きな節目を迎える。これまで議会各会派からの辞職要求にも首を縦に振らず、続投を強調してきた
A氏。議会解散権を発動するか、いったん身を引いて有権者に信を問うか-。県政を左右する次の一手が注目される。
「どのように対応していくか、これからしっかりと考えていく」・・・A氏は18日、不信任案可決の見通しについて記者団にこう語った。自身の決断を留保しつつも従前と同様に
「県政改革を止めないで前に進めていくということが、私の責任の果たし方」とも述べ、前例なき議会解散も否定しなかった。
不信任案可決後、A氏が取りうる選択肢としては主に4つのパターンが想定される。
まずは
議会の判断を重く見て、A氏が責任を取り辞職するパターン①。これまで一貫して任期を全うする意向を示しているだけに可能性は低いが、仮にA氏が身を引いた上でさらに「県民に信を問う」として出直し選に出馬して当選した、とする。この場合、議会の反発は収まりそうだが、公選法の規定により任期の特例が適用され、辞職前の任期である来年7月末までしか在任できない。
次は、
議会解散を選ばずに失職するパターン②。その後50日以内に実施される知事選にはA氏も立候補が可能だ。ここで当選すると、在職当時に自ら「退職を申し出た」という任期の特例要件に該当しないため、新知事の任期は通常通り4年となる。
パターン③は
不信任を受けてA氏が議会を解散し、自らも辞職して選挙で信を問う-というもの。このパターンでは知事選と県議選のダブル選が実施されるとみられる。A氏が知事選で当選した場合はパターン①と同じく、任期の特例により在任できるのは来年7月末まで。
最後は、
議会を解散してA氏が県政運営を続けるパターン④。改選後の県議会で再びA氏の不信任案が可決されると、A氏はもう議会解散はできず、失職することになる。その後はパターン2と同様で、50日以内に知事選が行われ、A氏も出馬可能、任期は4年だ。
「実際どうなるか分からない。もしかしたらA氏にプラスに働くかもしれない」。ある県議は不信任案可決後の県政の帰趨(きすう)が読めない、と明かした。県議会の調査特別委員会(百条委員会)でA氏の疑惑に関する調査を進める一方、その結論を待たずに不信任を突きつける各会派の動向が有権者にどう映るか。知事選になった場合、会派が主導権を握れるか、不透明な要素が多すぎるという。
A氏は18日の記者団の取材に
「与えられた任期4年間でしっかり仕事をしていくという思いに変わりありません」と、任期へのこだわりもうかがわせた。
不信任案は19日夕にも採決される見通しだ。
2024.09.18-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240918-LELWLTSEL5IVNGSP4ARTDXOOSA/
知事による初の議会解散はあるか 兵庫知事問題は重大局面へ 市町では過去に解散事例も
(安田麻姫)
兵庫県のA知事に対する不信任決議案が
19日に可決された際、A氏が議会解散を選択するかが焦点となっている。都道府県知事への不信任案が可決されたのは過去に4例。いずれも失職か自ら辞職しており、
A氏が議会を解散すれば初となる。
A氏は解散に含みを持たせるが、不信任に至る経緯や選挙費用の面から、専門家は「議会解散は慎重に判断すべきだ」と指摘する。
「法律に基づく決議なので、それに沿って自分としてどのように対応していくかをしっかり考えていきたい」
A氏は17日、記者団の取材に、不信任決議を受けた場合の対応についてこう答えた。「これからも改革を続けていきたい」とも述べ、辞職や失職を選択しない考えをにじませた。
不信任決議は地方自治法で規定されており、不信任を受けた首長は議会を解散できる。それぞれ住民から直接選ばれる首長と議会による二元代表制を採用する地方自治では、首長の失職につながる議会側からの不信任への対抗手段として、解散権が認められている。
都道府県知事に対する不信任案が可決されたのはこれまでに4件。いずれも知事が辞職か失職を選び、議会が解散されたことはない。
このうち、昭和51年の岐阜県・平野三郎氏と平成18年の宮崎県・安藤忠恕(ただひろ)氏は、汚職や談合での刑事責任を問われる事態となっており、いずれも可決後に辞職。その後の知事選へも出馬しなかった。平成15年の徳島県・大田正氏は、大型公共事業の見直しなどに議会が反発し、不信任案が可決された。大田氏は、失職して出直し選挙に臨んだが、落選した。
不信任を受けた後も知事を続けることができたのは、平成14年の長野県・田中康夫氏だけ。「脱ダム宣言」を打ち出した田中氏と対立した県議会が不信任案を可決。田中氏は失職したが、出直し選挙で圧勝した。
一方、市町では不信任を受けた首長が議会解散を選択するケースも。
兵庫県加西市で平成19年、中川暢三氏への不信任案が可決。中川氏は議会を解散したが、改選後の市議会でも不信任案が可決され失職。出直し選で再選を果たした。鹿児島県阿久根市では21年、市政運営が独善的などとして竹原信一氏の不信任案が可決。竹原氏は市議会を解散し、再度不信任を受け失職したが、出直し選に勝利した。
A氏は知事として初の議会解散に踏み切るのか。今後、
知事選には18億円程度の費用が見込まれるが、
県議選も行われればさらに16億円程度が必要となる。
こうした点を踏まえ、近畿大の上﨑哉教授(行政学)は
「議会解散を選択しても再び不信任を受け、失職する可能性は高く、知事の延命に過ぎなくなるのではないか」と指摘。
「多額の税金をかけたり、さらに県政が停滞したりするだけの理由があるのかどうかを判断し、選択していくべきだ」としている。
(安田麻姫)
2024.09.14-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240914-NHX53YZBMBIEBFS5332JLVEWUE/
<主張>兵庫県知事 身を引く決断するときだ
パワハラなどの疑惑が内部告発された兵庫県のA知事に対し、86人の全県議が辞職を求める事態となっている。
A氏が応じなければ、
19日開会の9月議会で不信任決議案が提出され、可決される可能性が濃厚だ。知事の職責を果たすのが難しい状況となった以上、A氏は潔く身を引く決断を下すべきだろう。
発端は幹部職員が3月、知事のパワハラなどを告発する文書を報道機関や県議に送付したことだった。4月には県の公益通報窓口にも通報したが、県は調査結果を待たずにこの幹部を懲戒処分にした。幹部は7月に死亡した。自殺とみられる。
県議会調査特別委員会(百条委)による全職員アンケートでは、約4割がA氏のパワハラを見聞きしたと回答した。百条委が参考人として招いた公益通報保護法の専門家は県の対応について、通報を理由とした不利益な扱いを禁じた同法に違反すると指摘した。
A氏はすべての疑惑を否定し、幹部の懲戒処分も「適切だった」と訴えてきた。一方で百条委の証人尋問では、職員に対し大声を出したり、勤務時間外にチャットで職員を叱責したりしたことなどを認め、「反省したい」とも述べた。一連の対応が不適切だったのは明白だ。
A氏は辞職要求に対し「選挙で負託を受けた」として「これからも県民のためにやっていきたい」と応じない構えを見せた。これまで行財政改革などを遂行したことへの自負や、今後さらに手腕を発揮したいという思いもあるのだろうが、県議も選挙で負託を受けた県民の代表である。全県議の辞職要求は県民の声と受け止めるべきだ。
不信任案が可決された場合、A氏は10日以内に議会を解散しなければ失職する。解散を選べば県議選が行われるが、
改選後の議会で3分の2以上が出席し、過半数が賛成すれば不信任決議が成立し、議会から通知を受けた時点で失職する。
都道府県議会での不信任案可決は過去に4件あるが、知事が解散を選んだ例はない。A氏は「自分がどういう道を進むべきかは自分が決める」と述べたが、県政の混乱が長引けば、困るのは県民だということを自覚すべきだ。失職に追い込まれる前に自ら辞職を申し出るのが政治家としての筋ではないか。
2024.09.12-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240912-V6OA52ENTBOYPDJ6RQADQIHFK4/
「誰から聞いたんや、名前言え」「グルやったんちゃうんか」 兵庫県知事告発者捜しの全容
(倉持亮、喜田あゆみ)
兵庫県のA知事の疑惑が文書で告発された問題で、
D副知事(当時)が3月、文書を作成した男性を事情聴取した際の詳細なやり取りが明らかになった。
人事権をちらつかせて情報源を探るD氏に対し、「噂が回っている」とかわす男性。
D氏が「噂をまとめただけか。なるほど」と語る場面もあった。
A氏は「噂話を集めた」という男性の説明を、文書に真実相当性がないとする根拠に挙げるが、やり取りからは周囲を守ろうとする男性の意図がにじむ。
「誰から聞いたんや。全部名前言え」。3月25日午前、同県上郡町にある県西播磨県民局の一室で、D氏が当時局長だった男性を問い詰めた。
百条委の審議や関係者などによると、文書の存在を把握した
A氏は同21日、D氏ら側近幹部を集めて徹底調査を指示。22~23日に、
複数の県職員のメールを調査したところ、男性のメールから告発文書と酷似した内容が見つかった。
幹部らは男性を含め、文書の作成に関与しているとみた職員3人について、同じ時間帯にそれぞれ聴取する方針を決め、
25日に着手。男性については、D氏が約45分間にわたって聴取した。
聴取でD氏は「1年間の全部の(メール)記録、今チェックさせとんねん」と強調。「いろんな人の名前、出てきたわ。どういうこっちゃ」「(告発文と男性のメールが)同じ内容やで」などとただした。
自身や周囲の告発文書への関与を否定する男性。すると、
D氏は「(メールで)名前が出てきた者は一斉に嫌疑をかけて調べなしゃあない」「名前出てきた者は、皆在職しとるということだけ忘れんとってくれよ」と迫った。
「(職制上の等級を)10級に上げるっていいよったけど、どないしようかいな」。
男性と交流があった県幹部の名前を挙げて昇級見送りを示唆したほか、「警察に持ち込もうかと思ってる。一切知らんて最後まで言うの?」といった発言もあった。
A氏の側近幹部が県内企業から受領したコーヒーメーカーについて、「こんなん皆知らんやろ。誰から聞いたんや」と問い詰め、男性が「みんな噂してますよ」と否定すると、「噂か、噂をまとめただけか。なるほど」と引き取る場面も。男性はこの場では文書への関与を否定し続け、D氏は3月末の男性の退職を認めず、県民局長の職を解くことを告げた。
同じ頃、別の県幹部もE総務部長(当時)の聴取を受けていた。「グルやったんちゃうんか」と詰問し、
男性との通信アプリ「ライン」でのやり取りを見せるように求めるE氏。その最中、幹部に男性から電話がかかってきた。
「(通話を)スピーカーにせえ」。E氏は小声で言い、メモ書きをみせて「他にやったやつはいないのか」などと聞くように指示したという。
この後、
男性は人事当局の幹部に電話をかけ、「さっき(D氏の聴取時)はしらを切ったが、俺がやった」と認めた。この幹部は
「とても一人でやったとは思えない」と疑問を呈したが、男性は「自分一人で話をまとめた」と譲らなかった。
A氏は11日の記者会見で、噂話との説明について
「(男性)本人がそう言っており、具体的な証拠や証言が追加されていない以上、今もそうだったと思っている」と話した。
(倉持亮、喜田あゆみ)
2024.09.10-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240910-DDLB23NHTZIKVDFK2HIEA4OLCA/
兵庫県議全86人がA知事に辞職要求へ 不信任案も検討、可決か
A兵庫県知事の疑惑告発文書問題で、
県議会最大会派の自民党、公明党、ひょうご県民連合、共産党の4会派は10日、無所属議員4人と共同で12日午前にA氏へ辞職を申し入れると発表した。
維新の会は9日に単独で申し入れており、86人いる県議会の全議員が辞職要求を突き付ける事態となった。
A氏は要求に応じない考えを既に示しており、各会派は不信任決議案提出に向けた検討も本格化。立憲民主党県議らでつくる県民連合は19日に開会する議会で提出する方針を決めており、提出された場合、可決される公算が大きい状況だ。
2024.09.10-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240910-P3KGTUPUPBJDNI26O2KFLH2D3I/
「県民からは激励の声の方が多い」A知事 辞職は改めて否定
兵庫県のA知事の疑惑などが文書で告発された問題を巡り、A氏は10日、県民らからの批判について「投書などで拝見しているが、直接(批判を)受けることはあまりない」とし、
激励の声の方が多いと強調した。同日午前、報道陣の質問に答えた。9日には3年前の知事選でA氏を推薦した日本維新の会が辞職などを求める申し入れを提出したが、A氏は改めて辞職を否定した。
告発文書は県西播磨県民局長だった男性(60)が3月、一部の県議や報道機関などに配布。県は同月27日に男性を解任し退職を保留した。
男性は4月ごろに文書内容を県の公益通報窓口に通報していたが、県は公益通報の調査結果を待たず5月に男性を懲戒処分とした。
男性は7月に死亡。自殺とみられる。
男性が亡くなったことが明らかになって以降、県にはA氏への批判や問い合わせの電話が相次いでいる。同月16日の定例会見で斎藤氏は、自身の身に危害を加えるという趣旨の電話が県庁に寄せられていると明かし、公務で予定していた視察を中止したと発表していた。
A氏は10日、登庁時に報道陣の取材に応じ、改めて辞職を否定。県議会からの辞職要求に応じない場合は、9月議会での不信任決議案提出が想定されるが、「仮定の話には答えられない」と述べた。
また、
県民からの批判の声については「『色々あるが、頑張ってくれ』という声が7月以来多いというのが私の受け止め」と述べた。
2024.09.09-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240909-J5KRQE2SBRP3XKYIIGKEYFCVUM/
「不信任ライン」超えた知事辞職要求勢力 狭まる包囲網、孤立深めるA氏
兵庫県のA知事の疑惑が文書で告発された問題では、
最大会派の自民をはじめ、既に複数の会派がA氏に辞職を要求する方向で調整を進めている。
今後の焦点は不信任決議案の提出へと移る見通しだが、
維新が加わったことで辞職を求める勢力は、全議員が出席した場合の決議案可決に必要な65の「不信任案可決ライン」を超えた。孤立を深めるA氏。包囲網はさらに狭まる展開となっている。
県議会(定数86)では最大会派の自民が12日にもA氏に辞職を要求する予定を明らかにしており、第3会派の公明や、立憲民主党議員らで構成する第4会派「ひょうご県民連合」も、こうした流れに沿う方向で調整が進む。9日午後に辞職と出直し選挙の実施を求めることを決めた第2会派の維新を合わせると、A氏に対して県議会の4会派すべてが辞職を求める形となった。
ただ、9日午前に県庁で報道陣の取材に応じたA氏は
「真摯に受け止め反省すべきところは反省するが、進めるべき予算や事業などをしっかりやる」と述べ、会派からの
辞職要求には応じない構えを強調している。
議会が首長に進退の判断を迫る際には、辞職勧告決議案を提出して議会で採決するケースもあるが、会派からの辞職要求と同様、法的拘束力はない。議会が知事を失職させるにはまず、不信任案を可決させることが必要となる。
これまで、
A氏に辞職を求めたり、求める方向で調整を進めていたりする主な勢力は自民(37人)、公明(13人)、県民連合(9人)の3会派の59人に、共産2人を加えた計61人だった。これに第2会派の維新の21人を加えると、全議員が不信任案に票を投じたと仮定した場合の賛成票の数は単純計算で、
可決に必要な65を大幅に上回ることになる。
県民連合は19日開会の9月議会の会期中に不信任案を提出する方針を示しており、一般質問終了後の30日か、補正予算案を採決する10月3日で日程を模索。
県民連合のほか、自民も不信任案の提出を検討しており、これら2会派以外の勢力についても同調する可能性があるとみられる。
2024.09.08-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240908-6NAXQIZNWNJSHGW32PFHXQI5KY/
「A家の食卓をにぎわしただけ」〝おねだり〟疑惑に百条委員が指摘 兵庫知事は正当性主張
兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑が文書で告発された問題を巡り、
6日に開かれた県議会調査特別委員会(百条委員会)では、A氏による贈答品受領についても委員から質問が相次いだ。A氏はカニやカキ、ワインなど多数の品を受け取ったことを認める一方、「『知事に食べてほしい』という厚意で持ってきたもの。全てをもらわないという判断をするのは難しかった」と正当性を強調した。
「姫路城のレゴブロックが欲しいと言ったのは事実か」。6日の証人尋問で、委員からの質問にA氏は「欲しいというか、知事室で展示できればいいなと思ってお伝えした」と淡々と答えた。 レゴブロックとは、世界的なブロック玩具メーカー「レゴグループ」が発売した姫路城をモチーフにしたもの。A氏は昨年6月、同社関係者らとともに武士装束で製品をPRし、自身の交流サイト(SNS)にも投稿していた。
告発文書には「知事のおねだり体質は県庁内でも有名」と記され、百条委が実施した職員アンケートでは、約2割が贈答品の受け取りを見聞きしたと回答。この日の尋問では委員が贈答品を一つずつ挙げ、A氏が受領の有無を答えていった。
A氏が受領や提供を認めたのは、播州織の▽ネクタイ▽スポーツチームのユニホーム▽カキ▽枝豆▽ワイン▽カニ▽日本酒▽岩津ネギ▽タマネギ▽バースデーケーキ▽湯のみ-など。
A氏はこれまで「県産品のPRになる」と受領の理由を説明しているが、SNSでPRしていないものもあり、
証人尋問で委員は「A家の食卓をにぎわしただけ」と批判。これにA氏は
「こういったおいしいものが県内にあるんだと知ることも、大事な県知事としての仕事だ」と反論した。
知事就任直後、秘書課に届く贈答品について
「どうなんだ」と職員に尋ねたとも説明。職員から
「前知事の頃からたくさんいただいている。届けた方のご厚意で、社交儀礼の範囲内だから食べていいですよ」と説明を受けたと主張した。
別の委員は、
前知事は贈答品を部下に分け、自身では持ち帰らなかったとする職員アンケートの回答を紹介。
1人で持ち帰ることが多いとされるA氏をただした。A氏は、「なぜ(秘書課など)特定の課の職員のみがいただけるのか」という不公平感があるためと理由を述べた。
一方、A氏は告発文書で受け取ったと指摘されたコーヒーメーカーについては返却を指示したとしている。
「なぜコーヒーメーカーだけは返却するのか」との問いには、こう答えた。
「消費するようなものは社交儀礼の範囲で対応させていただくが、家電製品は少し違うかなというのが私の感覚ですね」
2024.09.07-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240907-R7HZLHPZY5KA5DZ626HP4IJVW4/
A知事への辞職要求、他会派にも広がる 維新は近く判断
兵庫県のA知事の疑惑が文書で告発された問題で、県議会第2会派の
日本維新の会の県議団(21人)は7日、
会派幹部が党幹部とA氏の進退に関する対応を検討。近くA氏に辞職を申し入れるか決める見通しとなった。
最大会派の自民党(37人)は、12日に辞職を申し入れることをすでに決定。A氏が応じなければ、各会派で失職につながる不信任決議案提出の動きが強まるとみられ、A氏の対応が注目される。
単独での辞職申し入れを決めていた第4会派の「ひょうご県民連合」(9人)の幹部は7日、自民などと共同での申し入れとする意向を明らかにした。第3会派の公明党(13人)も足並みをそろえる方向で、近く会派として正式に決める。
5、6日の県議会調査特別委員会(百条委員会)では、告発文書を公益通報として扱わず告発者を処分したA氏らの対応について審議。公益通報制度に詳しい専門家2人が対応を違法と指摘したが、A氏は「対応に問題はない」とする従来の主張を繰り返した。
これを受け、自民は6日、臨時の県議団総会を開いて対応を協議。全議員に呼びかけ、9月議会(19日開会)の議会運営委員会が開かれる12日に、A氏に辞職を申し入れることを決めた。自民の北野実幹事長は「知事の判断をしっかりと促したい」と述べた。
議会が首長に進退の判断を迫る際には、まず辞職勧告決議案を提出し、議会で採決するケースもある。ただ、法的拘束力はなく、辞職しないことも少なくない。今回の申し入れにも強制力はなく、かねて続投に意欲を表明しているA氏は応じないとの見方も強い。
その場合、
ひょうご県民連合は9月議会で不信任案を提出する方針。一般質問終了後の30日か、補正予算案を採決する10月3日の提出を模索する。自民も不信任案の提出を視野に入れており、ほかの会派も追随する可能性がある。
2024.09.06-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240906-FHAFQ3CE6NKXZB35TWIDYC3OGE/
A知事、告発者特定を幹部に「指示した」 自民会派、12日に辞職申し入れへ
兵庫県のA知事の疑惑が文書で告発された問題を巡り、
県議会調査特別委員会(百条委員会)が6日開かれ、A氏は証人尋問で、文書作成者の特定を幹部に直接指示したと認めた。
元副知事のD氏の初の尋問も行われ、A氏から「徹底的に調べてくれ」と直接命じられたと証言した。この日の尋問内容を受け、県議会の各会派は、A氏への不信任決議案を巡る対応について協議する。
D氏の証言などによると、A氏は県西播磨県民局長だった男性(60)=7月に死亡=が作成した文書を把握した翌日の3月21日、D氏や側近の幹部を集め対応を協議。その場でA氏は「誰がどういう目的で出したのか、徹底的に調べてくれ」と命じたという。
A氏は尋問で「誹謗(ひぼう)中傷性が高く、噂話を集め作成した文書」とし「公益通報に該当するとは今も思っていない」と証言。
公益通報者保護法で禁じる告発者捜しに当たるとの指摘には「内容の意図を含め、作成した人を聴取することは問題ない」と正当性を主張した。
告発者の処分は公益通報の調査を待つべきだと人事当局が進言したとの職員の証言には「記憶にない」と強調。
結果を待たず処分できないか打診したとの証言にも「処分しろと言ってない」と否定した。
参考人として出頭した
公益通報制度に詳しい山口利昭弁護士は、告発者を処分した県の対応を「法令違反」とし、処分が無効になる可能性に言及。一方、A氏は違法の認識は「(今も)ありません」と述べた。
A氏への不信任案を検討している県議会最大会派の自民は、6日の百条委終了後に対応を協議。12日に県議会の全議員に呼びかけ、A氏に辞職を申し入れることを決めた。会派幹部は「受け入れられなければ不信任もあり得る」と語った。
2024.09.06-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240906-K2ACHTA7N5IXVK7VMDYZ3UZTMQ/
辞職進言をA知事拒絶「法的におかしくない」「辞める選択肢ない」 百条委で元副知事
兵庫県のA知事の疑惑が文書で告発された問題を巡り、県議会の調査特別委員会(百条委員会)は6日、A氏の最側近だったD元副知事に初めて証人尋問した。
昨年4月に元西播磨県民局長の男性(60)=7月に死亡=が公益通報窓口に告発文書を提出した後、
A氏に辞職を促したものの「この件について自分は何ら法的におかしいことはしていない。そのことをきっちり主張していく」として拒否されたことを明かした。
D氏は7月の記者会見で「知事の代わりに辞めるのではなく、副知事としての責任を取る」と述べ、
副知事を辞職。この際、あ氏に対して計5回にわたり辞職を進言したが、受け入れられなかったと明かしていた。
片山氏はこの日の証人尋問で、計5回のうち3回の場では「政治的に非常に大きな動きになっている。知事をお辞めになり、選挙に出て県民の信を問うべきだ」と進言したと述べた。
元局長が死亡した後には「誰かが責任を取らなければならない」とも伝えたが、A氏は「辞めるという選択肢ない」などと応じ、辞職を否定し続けたという。
2024.09.06-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240906-73HKQ6MYUJIMLEB4AEKWHIKDQI/
告発文書を「徹底的に調べろ」と知事が指示 D元副知事が百条委で証言
兵庫県のA知事の疑惑が文書で告発された問題を巡り、
県議会の調査特別委員会(百条委員会)は6日、A氏の最側近だったD元副知事に初めて証人尋問した。
D氏は3月21日にA氏に呼び出され、元県西播磨県民局長の男性(60)=7月に死亡=が作成した告発文書を示し、
「徹底的に調べろ」と
知事から直接命じられたと証言した。
2024.09.06-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240906-A7VV23CXMROK7KWY7OIBLZH36E/
「処分は適切だった」と繰り返すA知事、県議会百条委にきょう午後出頭へ 何を語るのか
兵庫県のA知事らの疑惑が文書で告発された問題を巡り、県議会調査特別委員会(百条委員会)が6日開かれる。5日に続き、
告発者を公益通報として扱わなかった県の対応などが審議対象となり、
A氏や、元副知事のD氏の証人尋問が行われる。
5日の証人尋問では、
公益通報制度の専門家が告発者処分を巡るA氏らの対応について、
公益通報者保護法に違反していると指摘。
文書に名前が挙がった側近幹部からは、A氏が告発者の特定などを指示したとの証言もあった。
A氏は処分は適切だったと繰り返し主張しており、証人尋問でどう説明するのか注目される。
告発文書は3月中旬、元県西播磨県民局長の男性(60)=7月に死亡=が作成し、
一部の報道機関や県議らに配布した。
同20日にはA氏が文書の存在を把握し、その後、男性を告発者と特定。27日には県民局長の職を解いた上で、会見で法的措置も示唆して「噓八百」「公務員として失格」などと男性を一方的に非難した。県は
5月7日に男性を停職3カ月の懲戒処分とした。
5日の証人尋問で証言した産業労働部長のB氏によると、A氏は文書を把握した翌日の21日、知事室に、いずれも文書に記載のあったD氏や、前理事のE氏、前総務部長のC知明氏、B氏を集めて、文書への対応を協議した。
B氏はこの場で「みんなで(文書の作成者は)元局長じゃないかと話した」と説明。知事の指示で職員のメールなどを調べることになったと証言した。
2024.09.05-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240905-U2QGMIH6ZJJVHKCFN5DN233ARM/
百条委、兵庫県の内部調査に協力した弁護士 県民に納得される「客観性はない」と認める
兵庫県のA知事のパワハラ疑惑などが文書で告発された問題を巡り、
5日に開かれた県議会調査特別委員会(百条委員会)で、告発者の処分に向けた県の内部調査に協力した弁護士が証人として出頭した。
弁護士は「(告発文書は)不利益取り扱いが禁止される外部通報ではない」とし、処分は正当だったとの見解を示した。
一方で内部調査については、自身が県から依頼されている立場であることなどから、広く県民から納得されるような「客観性はない」と認めた。
証言したのは、県からの法律相談に乗る特別弁護士を務めている藤原正広氏(兵庫県弁護士会)。百条委での証言などによると、県人事課が4月1日から、A氏に処分についての助言を求めるようになった。
告発文書を作成した県西播磨県民局長だった男性(60)は、同月4日に県の公益通報窓口に告発文書と同様の内容を通報。その後、人事課から「内部通報に関わらず、処分できるか」と相談があり、藤原氏は、文書に真実だと信じる相当な理由がなく、告発者の利益を守る対象ではないため、「処分は可能」という趣旨の回答をしたという。
真実相当性がないと判断したのは、「(告発文書が)居酒屋などで聞いた単なる噂話で作成された」ためだと説明。
告発内容が噂話を基にしているかどうかは、人事課から提示された資料を基に判断したとし、
A氏へ聴き取りはしたものの、文書全般の記載内容の真偽について自ら調査したことはないとした。
A氏はこれまで、内部調査について、
藤原氏に相談していることを根拠に「第三者性が保たれており、客観性がある」と主張。男性の処分は問題ないとの認識を示している。
A氏は尋問で、調査について「(処分後に)裁判にも耐えられるだけの調査が行われたという意味で客観性がある」と強調した。一方で委員から、弁護士は依頼者である県の利益を最優先するため、「広く県民が納得するような客観性はないのではないか」と指摘されると、「客観性の意味の捉え方次第で、そういう意味で考えるのであれば客観性はないということになる」と述べた。
2024.09.05-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240905-2MGC56VF4VMG5MYJSLSHRQBD3U/
「公益通報保護法に違反する」A知事らのふるまいを専門家が批判 百条委尋問
兵庫県のA知事のパワハラ疑惑などが文書で告発された問題を巡り、5日に始まった県議会調査特別委員会(百条委員会)で、参考人として出頭した
上智大の奥山俊宏教授は「(告発文書を)公益通報に当たらないと判断したのは拙速過ぎ。知事らの振る舞いは公益通報者保護法に違反すると考える」と指摘した。
公益通報制度に詳しい奥山氏は、県西播磨県民局長だった男性(60)=7月に死亡=が作成、
配布した告発文書について、直接見聞きした人から聞き取り、外形的な事実関係が
大筋で正しい内容も多々あり、公益通報が含まれていることは明らかだと評価した。
その上で、
男性を早期に処分したA氏らの対応について、
「軽々に公益通報に該当しないと判断せず、公益通報に関する調査が終わるのを待つべきだった。知事らのふるまいは公益通報者保護法に違反すると考えられる」と断じた。
2024.09.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240904-HCVPEZ4RKVKQBHMDI5SSWEGBQ4/
兵庫のA知事、かつての上司・宮城の村井知事にボヤキ「なかなか思い伝わらない」
A・兵庫県知事に対する2回目の百条委員会が今週行われ、贈答品への疑惑について尋問が行われるが、
A知事がかつて財政課長や市町村課長を務めたことのある宮城県の村井嘉浩知事は4日の定例記者会見で、「(パワハラや贈答品の依頼は)私の知りうる限り、まったくなかった」と話した。
A知事は側近と「牛タン倶楽部」いわれる集団を作っていたと報じられているが、「本当にそんなことあるの? みんなで会食したことはあるかもしれないが…」とした。宮城県庁内は、部下が上司の評価について人事課に〝上申〟する制度があり、「風通しはいいと思っている。私にも上がってきますから」と評価した。
A知事とは疑惑発覚後、電話やメールでやり取りしたといい、「大丈夫か?」と聞くと、「なかなか私の思いが伝わらなくて」と話していたという。
この日の会見はインターンの学生が傍聴していた。村井知事は「どうですか? 記者会見で知事がいじめられているのを見て。これがパワハラです」と笑顔で学生に話しかけていた。
2024.09.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240902-NCCGCCMBZNIF3IDPPEUENBU6UI/
兵庫知事への不信任案、公益通報巡る証言踏まえ「党として判断」維新の吉村共同代表
職員へのパワハラ疑惑などを文書で告発された兵庫県のA知事について、
不信任決議案提出の是非を検討している日本維新の会の吉村洋文共同代表(大阪府知事)は2日、兵庫県議会調査特別委員会(百条委員会)が6日に予定しているA氏への2回目の証人尋問の内容を注視したい意向を示した。
同日の尋問では、文書による告発を公益通報として扱わず、作成者の男性を懲戒処分にした当時の県の対応が問われる。吉村氏は2日、府庁で記者団の取材に応じ、維新として不信任決議案を提出するかどうかに関し「(A氏が)公益通報についてどう発信するのかも踏まえて判断するべきだ」と語った。
A氏は8月30日、百条委に証人として初めて出頭し、職員へのパワハラ疑惑を改めて否定した。
吉村氏は同日の尋問について「説明されていなかった事実がA氏から一定は証言された」と感想を述べつつ、「思うところはある」と明確な評価には言及しなかった。
令和3年知事選でA氏を推薦した維新は、
藤田文武幹事長が8月31日、県議団幹部らと対応を協議。9月6日の百条委でのA氏の証言などを踏まえ、不信任案提出を含め判断することを決めた。藤田氏は協議終了後の報道陣の取材に、
不信任案提出について「可能性はゼロではない」と述べていた。