日本・土地の問題-1


2024.03.23-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240323-KPTA6OLX2FLULON2JZWROOU4DU/
国境が消える①-経済・安保の要衝囲う中国資本-宮城県で太陽光・風力事業認定93件以上.
(編集委員 宮本雅史)

  中国系資本による不動産買収に歯止めがかからない。「点」で始まった買収が「線」でつながり、いずれは「面」になり、列島の地主は中国系資本で日本人が店子(たなこ)という時代が遠くなさそうな勢いだ。中国系資本による「合法的経済侵攻」の現状を報告する。(編集委員 宮本雅史)
  東京都心と青森県を結ぶ国道4号の中間にある仙台市。東北自動車道が南北に貫き、首都圏と東北各県をつなぐ要衝であると同時に、仙台空港や仙台塩釜港仙台港区(仙台港)を抱える物流の急所でもある。
  そんな東北経済の要の仙台市で、親会社が中国の保険会社というA社(本社・東京)が物流センターの建設を進めている。敷地面積4千平方メートル余り。仙台市役所-陸上自衛隊仙台駐屯地-仙台港のほぼ一直線上にあり、仙台駅まで約7キロ、仙台駐屯地まで約3キロ、仙台港までは約4キロだ

あらゆるネットワーク使い事業拡張
  担当責任者は「仙台は都心と東北を結ぶ玄関口。物流をつくるというのが至上命令」と話す。同市では、A社以外にも中国系資本と関係が深いとされるB社(本社・北海道)が仙台港近くに巨大な物流センターの建設を進め、物流ビジネスを全国展開する中国系資本のC社(本社・東京)が2カ所で大規模な物流事業を展開している。
  B社は「取材に応じられない」と回答したが、C社の責任者は「中国系とみられ、入札に参加できなかったり警戒されたりすることはあったが、日本法人だとアピールして託児所やカフェなどを設置し、地域住民と一体化した街づくりを目指してきたので評価が変わってきたとし、あらゆるネットワークを使って拡張する方針だと話す。
空自基地周辺でビジネス
  中国系資本の進出は物流面だけではない。仙台空港周辺では中国系資本が関係しているとみられる企業が複数看板を掲げているほか、航空自衛隊松島基地を擁する東松島市でも中国系企業がビジネスを展開している。
  太陽光発電事業でも中国系企業の進出が著しい。経済産業省が公表している今年1月31日現在の再生可能エネルギーの事業計画認定表を基に、登記簿や業界関係者の証言から中国人や同国系資本が関係しているとみられる事業の認定数を拾っていくと少なくとも93件あった。仙台市や石巻市、涌谷町など10市8町1村にまたがり(地図参照)、国道4号と東北自動車道を取り囲むように広がっている。
  その中には、D社(本社・東京)のように仙台市内の地元業者2社を買収し、所有する14カ所の発電所を取得したケースもある。D社の株主には上海電力日本(本社・東京)が山口県岩国市などで展開する事業に資金面でたびたび登場する日本の金融業者が名を連ねており、仙台市内の不動産業者は「中国系資本が関係するとみられる太陽光発電所の建設計画をみると、根っこでつながっているようにも思える」と語る。
有事に北海道からの増援分断
  宮城県は経済面だけではなく、陸自の仙台駐屯地や多賀城駐屯地、霞目駐屯地を抱える安全保障上の要衝なだけに積極的な中国系資本の進出に不安を訴える声が少なくない。「東北地方は北海道に次ぐ食料と人的戦闘力の供給地で、なかでも仙台市は国の行政機関が集中する東北の政治、経済の中心地だ。地理的にも津軽海峡から東京までの主要な経路の中間点にあり、北米に近い国際拠点港湾の仙台塩釜港を擁する。同市を押さえることで平時には物流・経済を握り、有事には東北のみならず北海道からの増援を困難にして戦力を分断できる
  陸上自衛官出身の菊地崇良仙台市議はこう指摘する。
友好掲げ「非軍事的侵攻」
  中国系資本の仙台進出の取材を進めると、過去には、中国人の移住を狙った大型チャイナタウン構想や中国総領事館建設構想、ジャイアントパンダの誘致計画…など、同市が長年にわたり、中国と友好的な関係を続けてきたことが浮かび上がってくる。令和4年4月23日付本紙は、中国共産党機関紙「人民日報」の名を冠した月刊誌「人民日報海外版日本月刊」の理事長が郡和子市長の補佐官に就任していることを挙げ、「『仙台市政が中国寄りに誘導されかねない』と危惧する声が強まっている」と伝えている。
  中国には国防動員法と国家情報法がある。前者は有事の際、海外を含め中国人所有の土地や施設を中国政府が徴用できるという法律、後者は平時であっても情報工作活動への協力を義務付ける法律だ。つまりその気になれば中国は、中国人が購入した日本の土地を侵略の足掛かりにできるのである
  「仙台市の現状を考えると、中国系資本の不動産買収などの『非軍事的な侵攻』は全県を覆いかねず、わが国の安全保障面に大きな影響を与えかねない」。菊地市議はこう警鐘を鳴らす。


2024.03.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240304-3FYMHMGWKVPCXE3DY5GK6STSXM/
防衛施設周辺の風力発電設備規制へ 中国資本の参入警戒 実効性に課題も
(小沢慶太)

  政府は、自衛隊や在日米軍施設周辺で陸上風力発電の風車建設を規制する新たな法案を今国会に提出し、成立させる方針だ。ミサイルや航空機を探知する警戒管制レーダーなどへの影響を防ぐ目的だが、風力など再生可能エネルギーを巡っては、中国など外国資本の参入が安全保障面で懸念されている。政府は安保上重要な土地の利用を規制する法律も施行しているが、実効性の確保が課題になる

  防衛省によると、現在、自衛隊の警戒管制レーダーは全国28カ所に設置されている。レーダーは、航空機やミサイルに対し電波を発信し、反射した電波を受信することで位置を特定する。レーダー周辺に大型風車が建設されれば、風車の反射波が障害となり、目標の正確な探知が妨げられる恐れがある
  航空機の運航への悪影響も懸念される。同省関係者によると、在日米軍の三沢対地射爆撃場(青森県)周辺では、風力発電に適した地理的条件から、すでに50基以上の風車が建設され、安全運航の妨げになっている。今後も300メートル近い風車建設が予定されているという
  同省は現在も防衛施設周辺で大型風車を建設する際には、事前協議を事業者に呼びかけているが、法的根拠はない。
  政府が1日閣議決定した「防衛・風力発電調整法案」は、防衛相が「電波障害防止区域」を指定し、新たな風車建設にあたって、事業者に事前の届け出を義務付ける。自衛隊電波の障害になると判断された場合、事業者と対策を協議するため、建設を2年間制限できる。届け出をしなかったり、協議に応じず建設を強行したりした場合には罰金などが科される

  法案策定にあたって防衛省は当初、風力発電設備の建設を許可制にすることを目指した。だが、再エネ導入の旗振り役である経済産業省が反対し、規制は弱まった。背景には政府がカーボンニュートラル(温室効果ガス排出の実質ゼロ)の実現に向けて、風力発電の導入を促進していることがある
  防衛施設周辺では、中国資本などによる土地買収が問題視されてきた。このため、政府は令和4年、自衛隊の司令部や原子力発電所など安保上重要な土地の利用を調査・規制する土地利用規制法を施行し、これまでに25都道府県の計399カ所を規制対象区域に指定した
  外資が戦略的な意図を持って防衛施設周辺の土地を取得し、大型風車を建設すれば、日本の安全保障が脅かされる懸念がある。ただ、風力発電調整法案は施設の建設を止める強制力はなく、土地利用規制法も土地の売買規制にまでは踏み込んでいない
  防衛省幹部は「本来なら風力発電も許可制にすべきだ」と訴える。(小沢慶太)


2024.02.12-産経新聞(夕刊フジ)-https://www.sankei.com/article/20240212-TXMAELUPENAW5FWW57ANRJM44A/?outputType=theme_weekly-fuji
外資の土地買収に法規制を 「習近平体制の衰退で富裕層が日本に食指」-平井宏治氏-指摘

  「政治とカネ」の問題ばかりが報じられる今国会で、注目すべき質疑が行われた。衆院会派「有志の会」の北神圭朗議員(無所属)が6日の衆院予算委員会で、岸田文雄首相に対し、外国資本による日本国内の土地や不動産の買収を規制する法整備の必要性を求めたのだ。都心部のマンションや山林部の水源なども物色対象となるなか、日本では一昨年、安全保障上、重要な施設や国境離島を守る「土地利用規制法」が施行された。ただ、注視区域の調査や、不動産売買時の「届け出」は義務付けているが、「売買」の規制がないなど十分ではない。日本人や国内資本が介在する「ステルス購入」も懸念される。日本を取り巻く安全保障環境が激変するなか、現状のまま放置すべきではない

  「外国人の土地買収を規制できないことは、国家安全保障や食料安全保障上の危機にかかわる」北神氏は、こう強調した。
  6日の予算委では「宮崎県では東京ドーム150個分の山林が中国資本に買われているが止められない土地規制をきちんとやるべきだ」と岸田首相をただした。
  農水省によると、居住地が海外にある外国法人や外国人などによる森林取得面積は、2010年に558ヘクタールだったのが、21年には2614ヘクタールに急増した。農地取得面積は17~21年までの累計で67・6ヘクタールに上るとしている。
  北神氏「国道沿いや港湾、海岸線の土地が買収されているという噂も聞く。農地は食料安全保障の面でも重要で、山林も買収されると水源地として重要なインフラを押さえられる恐れがある。港湾や海岸線も安全保障上の問題になる。農地と山林は農水省が調査しているが、その他の土地や不動産について国交省は把握していない。これらを規制できないのは問題だ」と話す。

  中国では、有事の際に民間人や施設を軍事動員できる「国防動員法」や、中国政府の情報工作活動への協力を義務付ける「国家情報法」があり、海外在住の中国人も対象となる。北神氏「善良な在外中国人や中国企業であっても、有事の際に動員される可能性もゼロではない」と憂慮する。
  予算委では、北神氏の追及に対し、岸田首相は「特定の行政目的に基づき、一定の範囲で外国人の土地取得を制限することは考え得る。必要かどうかも含めて実情を把握したい」と答弁した。ただ、「外国人による不動産などの購入実態の把握については国際法上の内外無差別の原則に照らして慎重であるべきだ」と述べ、実態調査や法規制には消極的な姿勢を示した。
  日本は世界貿易機関(WTO)発足とともに成立した、「サービスの貿易に関する一般協定」(GATS)に加盟する際、米国などと異なり、外国人による土地取得を規制する留保条項を盛り込まなかった。
  ただ、20年の地域的な包括的経済連携(RCEP)協定には、土地取引に関して、「日本国における土地の取得又は賃貸借を禁止し、又は制限することができる」とする留保条項を盛り込んだ。根拠として1925年の「外国人土地法」を持ち出している。
  北神氏「シンガポールやインドはWTOルールの例外規定に基づき規制している。また、外国人土地法は戦前の古い法制で、規制対象を定める政令がないため関係官庁も動きづらい。法律を全面改正すべきではないか。投資に関わる経営・管理ビザの取得条件を厳しくする必要もある」と提言した。
  2022年には安全保障上重要な施設の周辺や国境離島を対象とした土地利用規制法が定められた。対象区域は計399カ所にのぼる。ただ、より重要度の高い施設周辺を指定した「特別注視区域」では一定面積以上の取引に関し、売買当事者に事前の届け出を義務付けているが、「売買」までは規制していない
  米国では、外国資本が軍事施設周辺の不動産を購入する場合は審査対象となり、大統領に取引停止権限が与えられている。オーストラリアでは農地や商業地、居住地などについて外国人は一定額以上の土地の権利を取得する際には政府への通知や、承認が必要だ。
  売買に関して強制力をともなう規制がない日本だが、中国経済が悪化するなかで、さらに警戒を強める必要があるという。
  経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「中国国内の不動産価格が暴落するなか、富裕層は習近平体制下で『沈む船』に乗るよりも、海外の資産を取得しようとしている。中国では不動産も個人の所有ができないため日本で所有したいという側面もある。こうした動きが強まれば、経済安全保障のリスクは国家安全保障のリスクになりかねない。国益のために法整備を急ぐべきだ」と指摘した。


2024.01.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240115-CSMLGHHEWVPLLOPMBMXOKLI4UU/
土地利用規制、第3弾開始 180カ所追加

  安全保障上重要な施設の周辺や国境離島を対象とする土地利用規制法に基づき、第3弾として指定された区域で15日、規制が始まった25都道府県の計180カ所が追加され、対象区域は計399カ所となった。今回、在日米軍施設が初めて含まれた

  内訳は「注視区域」が134カ所、特に重要度が高いとされる「特別注視区域」が46カ所米軍施設は川上弾薬庫(広島県東広島市)や広弾薬庫(同県呉市)など計6カ所防衛省市ケ谷庁舎(東京都千代田区、新宿区)や新千歳空港(北海道苫小牧市、千歳市)、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)なども加わった。区域は施設敷地の周囲おおむね1キロが含まれる。
  区域に指定されると、政府は土地所有者の氏名や国籍などを調査し、施設機能を妨害する行為に中止勧告や罰則付きの命令を出すことができる第4弾の28都道府県184カ所も有識者でつくる審議会に提示され、近く指定される見込み。


2023.08.06-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230806-F3RVU6CWXNAIBHDWL2GRQKMVFE/?outputType=theme_weekly-fuji
東京ドーム150個分 中国系資本が宮崎で森林大量買収 有本香

  宮崎県都城市で先ごろ、超大規模な中国系資本による森林買収が報じられた。広さは何と700ヘクタール(=東京ドーム150個分)。14年間、外資の土地買収を取材してきた筆者も聞いたことのない広さだ。

  筆者が外資、とりわけ中国系資本による日本の土地買収を取材し始めたのは2009年。当時出始めのツイッター(=最近は改めエックス)にこの件について投稿するとたちまち、多くの非難と嘲笑が寄せられた。
  「中国嫌いの排他主義者」「右翼の妄想」「バブル期に日本人がマンハッタンの不動産を買ったのと同じ。何ら心配する必要なし」「土地は持って帰れない。何の心配もない」などなど。さらに、ひどいときには、「原野商法に加担しているバカ」と罵られたりもした。
  いまや流石にこうした嘲笑、罵りはなくなったが、むしろ過去の外資による土地買収がすべて「右翼の妄想」だったなら、どんなに良かったかとさえ思う。それほどひどく、日本の山林は外資に蚕食されてしまっている。
  中国資本の土地買収の問題点は複雑だ。都城の案件は、その問題の厄介さをご理解いただくのに、ちょうどいいサンプルだともいえる。都城での買い主は福岡県に本社を置く企業。代表者は中国人とみられ、太陽光発電を手がけているという。問題点の第1はここだ。
  林野庁は毎夏、「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」というプレスリリースを出している。これを見て、「こんなに買われている!」と心配の声を上げる方々がおられるが、都城の案件は、来年のこの報告書に記載されない可能性がある。
  この案件が、林野庁の調査が規定する「外国資本」とは言い難いからだ。報告書には2つの区分がある。1つは「居住地が海外にある外国法人又は外国人と思われる者による森林買収の事例」、もう1つは「その他の事例」。後者は「国内にある外資系企業」を指しており、一見、都城の案件は後者にあたるかと思われるが、さにあらず。注書きを読むと、「『外資系企業』は、国外居住者又は外国法人による出資比率又は国外居住者の役員の比率が過半数を占める法人を指します」とあり、都城の山林を買った福岡の企業がこの条件を満たすかどうか、地元テレビ・宮崎放送などの報道では分からないのだ
  仮に買い主が、この報告書に載ることを避けたい、大規模な土地取得を広く知られたくないと思えば、ステルス作戦も可能だ。
  太陽光発電用の土地取得の例でよく見られるが、フロント的な役割の企業(合同会社など)が土地を取得し、後に出資者を差し替えれば、簡単に土地は外資のものとなる。「ステルス参入」と呼ばれる手法だ
  他にも外資の土地買収に関し問題点は多くあるが、まず「実態がつかめない」というのが大きな問題である。しつこく繰り返すが、筆者がこの問題を取材し始めて14年。その間、幾多の国会議員にこの問題を訴えた。
  しかし、根本的な手は打たれずじまいである。今年6月、カナダでは外国企業、外国人による土地買収が原則禁止されるという規制が施行された。とりあえず2年と期間が定められているが、おそらく延長され、その後、強化されるだろう。
  カナダのような広い国土を持つ移民国家でも、近年はこうした規制をかけている。そして、外資の浸透の危険に気づいたとき、外国の政府や議会は即応し、あっという間に規制してしまう。わが国の政治のなんと愚鈍なことか。憂いは絶えないのである。

有本 香・・・(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。


2023.03.07-NHK 政治マガジン-https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/96586.html
沖縄の無人島 中国関連企業が土地取得 “対策検討すべき”

  沖縄の無人島の土地を、中国でビジネスを展開する企業が取得していたことをめぐり、7日、自民党の会合で対策を検討すべきではないかといった指摘が相次ぎました。

  沖縄本島の北に位置する無人島、屋那覇島のおよそ半分の土地を、東京都内に本社を置く中国でビジネスを展開する企業が取得していたことについて、政府は、法規制の対象になっていないとしたうえで、動向を注視していくとしています。
  7日開かれた自民党の特命委員会では、出席者から「国民の中から懸念が出ており、無人島などの土地取り引きの扱いについて検討すべきではないか」とか、「安全保障上の観点から、法規制の在り方を検討すべきだ」といった指摘が相次ぎました。
  これを受けて、委員会では、安全保障上、重要な土地の利用を規制する法律の在り方などをめぐって議論していくことになりました。


2023.02.26-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230226-HF2J674CWZJP3AMNLOMZDJNLBQ/
沖縄北部の無人島 土地規制法の改正必要だ

  沖縄県北部の無人島、屋那覇島が注目されている。島の約半分を東京都内の中国系企業が取得したためだ。
  この島は安全保障上重要な土地の利用を規制する土地利用規制法の対象外だが、松野博一官房長官は記者会見で、「関連動向について注視していく」と語った。

  沖縄の島々は中国が海洋進出を図る第1列島線上にあり、どのように利用されるかは、日本の安全保障に関わる。政府には懸念を常に払拭する対応が望まれる。
  昨年施行された土地利用規制法では、自衛隊基地や重要インフラ施設の周辺約1キロと国境離島を「注視区域」とし、土地所有者の国籍や氏名、利用状況を調査できる。特に重要な箇所は「特別注視区域」に指定し、不動産売買時には事前に国籍や氏名を届け出ることを義務付けている。
  だが、官房長官が「注視」すると明言した屋那覇島は指定外だった。令和3年2月に中国系企業が島のおよそ半分を購入したとされるが、それが分かったのも、関係者とみられる中国人女性が今年1月末、動画投稿アプリで島の様子を映し、「島を購入した」と発信したのがきっかけだ。
  政府は事前に把握もできておらず、注視するといっても土地利用規制法上の対応はとれない。会見でできもしないことを言って、ごまかしているだけではないかと勘繰られても仕方あるまい。
  屋那覇島は、沖縄本島から約20キロ西の東シナ海側に位置する。購入した中国系企業のホームページによると、同島でリゾート開発計画を進めるのだという。
  だが、この島の周辺の海は浅く、重機を搬入する船舶が接岸できる港湾施設はない。中国系企業が購入した土地は虫食い状態で、売却を拒む地権者も存在している。直ちに安保上懸念のある施設の建設などが行われるとは考えにくい。ただし、無人島は周囲の目が行き届きにくい点は常に忘れてはならない


2023.02.18-Yahoo!Japanニュース(ABEMA TIME)-https://news.yahoo.co.jp/articles/d349d4600a030357c29b207b98eb98524bb1e914
沖縄の離島を中国人女性が購入…相次ぐ批判に辛坊治郎氏「都心のマンション群を買われるほうが問題」

  沖縄本島にほど近い、青い海に囲まれた無人島・屋那覇島。水道などのインフラ設備はない。この島を中国人女性が購入したとSNSで公表し、今物議を醸している。

  女性は山東省出身の34歳で、金融業や不動産業を営んでいるという。実際は島の土地およそ半分を女性の親族名義の会社が購入、ホームページによると目的はリゾート開発のためだとしている。
  これに、Twitterでは「外国人の土地購入は厳しく規制すべき」「侵攻されるかもと思うと不安」「数年後には中国軍基地ができる」「リゾート開発による環境破壊が心配」など、懸念の声が殺到ニュース番組「ABEMA Prime」では、国土が外国に買われる是非について、辛坊治郎氏とともに考えた。  経済力で今後も日本の島が買われ続ける可能性について、辛坊氏は「尖閣諸島が典型例だ」と話す。 「実際に尖閣は、日本人が百何十人も住んでいた。産業がある段階では、中国も『俺のものだ』と主張しづらい。無人島になったから、領土紛争で主張する余地が生まれた。次は軍事力をもって取りにくる可能性はある。一方で、今回の中国人女性が持っているのは島の所有権だ。日本では、所有権があるからといって、自由に使用権を行使できるわけではない」
  「例えば、売っている島を僕が買ったとする。ところが国立公園の中だと、自分の土地でも木1本切れない。日本は土地を所有していても使用権とかなり切り離されている。だから、法律が及ぶ範囲だったら、日本の統治権の範囲の中にある限り、所有権が誰であってもそれは本質的な問題じゃない。
  中国人が日本の島を買って、移り住んできて『自分たちの領土だ』と言い始めて、軍隊が攻めてきたら次元の違う話だが」  
  なぜ、中国人は日本の土地を購入したがるのだろうか。 「中国は個人の土地所有ができない。全土が政府の土地だから、土地を持つことに対して、ものすごい欲望がある。今回は有頂天になって『島、買っちゃった』という話だ。
  図面上で無人島の土地を持っていても、日本では固定資産税が取られるばかりで何の得にもならない。どんどん地方の土地が値下がりし、中国人がポケットマネーで買えるような値段になっている。むしろこれが問題だ」  
  安全保障上の問題についてはどう考えるか。 「『自衛隊や米軍基地の横はまずい』など、安全保障上の議論が勃発して、重要土地等調査法が去年9月に施行された。だから、機微な場所の1キロ以内は、土地売買時に届け出が必要になった。
  もう日本全国で60カ所くらい指定されている。その指定箇所の中に今回、屋那覇島が入っていなかった。そういう話だ。どうしても現行法上で何かをしたいなら、海上保安庁の船着き場を近くに作ればいい」  
  台湾有事などもささやかれる中、安全保障上の意味で拠点になりうる可能性はあるとも言える。その上で辛坊氏は「規制しようと思えば、方法はいくつもある。本気で『水源から何から全部の島を守るべきだ』『島を外国人に売ってはいけない』という法律を作りたいなら、国会議員の与党の過半数が賛成すれば、そういう法律が作れる。その必要はないと思うが。国民の大半がそう思うならできる」とコメント。
  「我々にとって大問題なのは離島を買われるよりも、都心のマンション群を中国のお金持ちがどんどん買っていくことだ」という。 「東京中心部の70平米もないようなマンションで平均価格1億円弱になっている。普通のサラリーマンは誰も買えない。ここに危機感を持っている。日本で真面目に一生懸命働いても、マンション一軒買えないのはおかしい」  
  振り返ればバブル期、アメリカの超高層ビル「ロックフェラー・センター」や「エンパイア・ステート・ビル」も日本人が買っていた。 「アメリカ人も当時『日本人に乗っ取られる』という危機感を持っていた。80年代の後半は『日本の株式市場の金だけでアメリカ全部の土地が買える』と平気で言われていた
  その後、アメリカ人は奮起して、90年代にGAFAをはじめ巻き返しを図って、あっという間にひっくり返った。だから、今回も10年経った時に『今の日本の為替レートを考えると、ちょっとお金持ちぐらいの中国人には、日本の島や土地は買えないよね』と。報道によって、日本人が奮起できるきっかけになればいいと思う」 (「ABEMA Prime」より)


2023.02.11-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20230211-76HQEVVY3NJBRIYYALX6KEND6M/?dicbo=v2-urlvwgt
中国女性「沖縄の島を購入」とSNS投稿 「領土増えた」反応

  中国人の30代女性が交流サイト(SNS)で「日本の無人島を買った」と投稿し、中国のSNS上では「領土が増えた」などの声が出ている。投稿によると沖縄本島北方の無人島、屋那覇島(やなはじま)。中国メディアに対し、親族の会社名義で島の土地を購入したと説明しており、登記上の所有権移転の記録と一致している。

  登記によると島の一部は令和3年2月から東京の中国ビジネスコンサルティング会社が所有島がある伊是名村(いぜなそん)役場によると島全体を占有したわけではなく、所有しているのは5割程度という。島は私有地と村有地が混在し、砂浜の大部分は村有。島は一般客らの釣り場やキャンプ地となってきた。
  中国のSNSでは、「中国領土が拡張した」「釣魚島(中国が領有権を主張する沖縄県石垣市の尖閣諸島の中国名)も買おう」などのコメントも見られた。(共同)


2022.12.16-Yahoo!Japanニュース(テレ朝NEWS)-https://news.yahoo.co.jp/articles/99b650a24d50d1a1acce2b0bb4bcc1ee30002395
国の安全保障上の「重要な土地」5都道県58カ所を選定

  国の安全保障上重要な土地として、自衛隊の駐屯地や国境に近い離島など5都道県の58カ所が選定されました。

  重要土地等調査法では国が自衛隊や在日米軍、海上保安庁の施設、原子力発電所などを「重要施設として規定し、その周辺約1キロや国境に近い離島を「注視区域に、そのなかでも特に重要と判断した場所を「特別注視区域」に指定します。
  その区域では一定面積以上の土地の売買には氏名や住所などの届け出が必要となるほか、施設の機能を阻害するような行為が見つかった場合には国がやめるように勧告することができます。
  政府が今月16日に規制対象地域として選定したのは北海道、青森、東京、島根、長崎の5都道県の八丈島などの国境の離島や自衛隊の駐屯地周辺など58カ所です。  年内に規制対象区域を告示し、来年2月にも施行されます。
テレビ朝日


2021.06.16-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210615/k10013086861000.html
重要施設周辺の土地利用規制法案 参議院内閣委で可決

  自衛隊の基地や原発といった、安全保障上重要な施設の周辺などの土地利用を規制する法案は、今夜、参議院内閣委員会で採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決されました。
  この法案は、自衛隊の基地や原子力発電所といった、安全保障上重要な施設の周辺などを「注視区域」や「特別注視区域」に指定し、利用を規制するもので、「特別注視区域」では土地や建物の売買の際に事前に氏名や国籍の届け出などを義務づけています。

  立憲民主党と共産党は、与党側が提案した採決を阻止するため、14日、自民党の森屋内閣委員長の解任決議案を参議院に提出しましたが、15日の参議院本会議で否決され、これを受けて、今夜7時半ごろから、参議院内閣委員会が開かれました。
  そして、質疑のあと採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決されました。また、区域を指定する際、あらかじめ自治体の意見を聴くほか、目的外の情報収集を行わないとするとともに、罰則の適用は限定的なものとし、思想信条の自由やプライバシーの権利などを侵害しないよう十分な配慮を求める付帯決議も可決されました。
  与党側は、参議院本会議に直ちに上程して採決し、15日中に成立させたいとしているのに対し、立憲民主党と共産党は、これを阻止するため、自民党の水落・議院運営委員長の解任決議案を提出しました。
  これを受けて、このあと開かれる本会議では、決議案の審議が行われる運びとなり、与野党の攻防は、16日未明まで続くことも予想されます。
参議院本会議 16日未明に
  自衛隊の基地や原子力発電所など安全保障上、重要な施設周辺などの土地利用を規制する法案めぐり、立憲民主党と共産党が、成立を阻止するため、自民党の水落・議院運営委員長の解任決議案を提出したことを受けて、午後11時過ぎから参議院本会議が開かれました。
  そして、山東参議院議長は、日付が変わっても本会議を開けるよう延会手続きを取り、16日午前0時過ぎから改めて本会議を開くことを宣言しました。
  本会議では、水落委員長の解任決議案の審議が行われ、与党側の反対多数で否決される見通しで、与党側は、その後、再び本会議を開いて、土地利用を規制する法案の成立を図る方針です。
議院運営委員長の解任決議案 否決
  自衛隊の基地や原子力発電所など安全保障上、重要な施設周辺などの土地利用を規制する法案をめぐり立憲民主党と共産党が、成立を阻止するため提出した、自民党の水落・議院運営委員長の解任決議案は、午前0時過ぎから改めて開かれた参議院本会議で審議されました。
  そして、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党などの反対多数で否決されました。参議院本会議は、このあと再開され、土地利用を規制する法案は、与党などの賛成多数で可決・成立する見通しです。


2021.05.13-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210513/mca2105132257020-n1.htm
文科相、設置大学に「孔子学院」の情報公開促す 「中国のスパイ機関」

  菅義偉政権は、中国政府が日本国内の大学に設置している「孔子学院」に対し厳しい目を向け出した。関心を強める背景には、同盟国の米国や欧州などでは「孔子学院は中国共産党のスパイやプロパガンダ(政治宣伝)の機関」と指摘され、閉鎖の動きが広がっていることがある。文部科学省をはじめ関係省庁が連携し、運営の透明性を確保していく考えだ。

  萩生田光一文科相は13日の参院文教科学委員会で答弁し、孔子学院がある大学に対し「大学の主体的な研究活動が妨げられることがないよう組織運営や教育研究内容などの透明性を高めるべく情報公開を促していきたい」と表明した。

  あわせて「同盟国である米国、自由や民主主義、法の支配といった共通の価値観を持つ欧州の国々からも廃止や情報公開を求める懸念の声が高まっている」と指摘。「運営の透明性が求められている」との認識を示した。自民党の有村治子氏に対する答弁。
  有村氏は米国やオーストラリアが孔子学院を安全保障や学問の自由に対する脅威とみなしていることに言及し、「日本の大学内で外国政府が事実上支配する文化発信拠点は他に例があるのか」とただした。文科省は「孔子学院の他に、指摘のような文化拠点が大学に設置されている例は承知していない」と答弁。有村氏は「日本の大学に唯一、組織的、戦略的に設置されてきた文化センターが共産党一党支配の国の拠点であることが健全なことなのか」と訴えた。

  また、外務省は同委員会で、米国以外にもカナダ、フランス、ドイツ、スウェーデンの一部の大学が孔子学院を閉鎖したと説明した。
  孔子学院は日本国内では早稲田大や立命館大など14の大学にあるが、文科省によると、海外の教育機関が日本の大学と連携する際は、国の認可を必要とせず、大学側に教育プログラムの提供などを自由に行えるという。
  このため、文科省は孔子学院の運営実態を把握していなかったが、同省の担当者は13日、「少なくとも大学側には(組織や活動について)透明性を求める必要がある」と強調した。


2021.05.13-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/a4ee0ff45ad7dd989eb2ae972be327b990c474c8
<独自>基地周辺の土地買収、中国系など外資が700件 政府が確認

  自衛隊や米軍の基地など安全保障上、重要な施設に隣接する土地の調査で、中国などの外国資本が関与した可能性がある買収や売買計画を、日本政府が少なくとも700件確認したことが13日、分かった。政府関係者が明らかにした。中国本国や傘下の当局などが安保上の動向把握などを目的に買収に関与した可能性もあり、政府は関係当局に実態解明を指示した。

   政府は昨年、外国資本による土地売買の本格調査を開始。防衛施設の周辺10キロ以内や国境離島などで、中国系資本などが買収に関わった可能性がある土地の把握に乗り出し、昨秋までに中国系資本が関与した可能性がある安保上重要な土地買収などが全国で約80件に上ることが判明した。その後、集中的に調査を進め計700件あることを把握した。

   複数の関係者によると、確認されたのは自衛隊や米軍の基地、海上保安庁や宇宙開発関連施設などに隣接した土地の買収やその計画。対象地の全景が一望でき、日米の艦船や航空機の運用のほか、関係者らの動向が把握される恐れもある。
   神奈川県では、中国政府に関係がある可能性がある人物が米軍基地直近の土地を購入し、マンションを建設していたことが判明この人物は基地を見渡せる高層建物を複数、所有していることも分かり、米国側も関心を寄せているという。
   また、米軍基地が見渡せる沖縄県の宿泊施設に、中国国営企業の関係者とみられる人物が買収を打診したことを把握、当初は「米系資本」を名乗っていた。鳥取県にある自衛隊基地に隣接した用地でも、中国系のグループ企業が取得を目指したとされる事案が確認された。

   関係者によると、このほかにも、日本周辺の空域や海域を監視するレーダー関連施設、宇宙開発施設周辺などで、同様の売買情報などが報告されている。電波妨害などが行われれば重大な悪影響を及ぼすケースもあるという。
   今国会では、外国資本などによる土地利用規制法案が審議。防衛施設や原子力発電所などの重要インフラの周囲約1キロと国境離島を「注視区域」に、より重要度の高いエリアを「特別注視区域」に指定し、国の調査対象に設定した上で、不適切利用を確認した際には中止を勧告・命令するとしている。また、特別注視区域の売買は、当事者の人定や、利用の目的を事前に届け出るよう義務付ける。


2021.04.25-東京新聞-https://www.tokyo-np.co.jp/article/100310
基地周辺の土地規制法案が近く審議入り 対象区域は成立後 私権制限の懸念も

  自衛隊・米軍の基地周辺や国境離島の土地利用を規制する法案近く国会で審議入りする。政府・与党は安全保障上、重要な土地を外国資本などに押さえられ、日本の防衛を妨害される事態を防ぐ必要があるとして、今国会で成立を目指す。だが、規制対象となる区域や妨害行為など具体的な運用方針は法案に盛り込まれず、成立後に政府が決めるため、過度な私権制限など乱用を心配する声が上がっている。(新開浩)

  法案は、防衛関連施設や海上保安庁の施設、原発などの周囲約1キロや国境離島を、国が「注視区域」に指定できると明記。区域内では、土地所有者の国籍などを調べるため、住民基本台帳などの提供を自治体に求める権限を認める。

電波妨害などの可能性が高いと判断すれば、中止の勧告や命令を出し、応じない場合は懲役2年または罰金200万円の罰則を科す。所有者が要請すれば、国は土地を時価で買い取る。
  司令部やミサイル迎撃拠点の周辺、領海の基点となる無人国境離島などは、特に重要な「特別注視区域」に指定。面積が200平方メートル以上の土地売買には、氏名や国籍、利用目的などの事前届け出を義務付ける。

  対象となる施設や離島、妨害行為の内容、調査項目などの詳細は、法成立後に閣議決定する基本方針で定める。条文には、区域を指定する際、経済に配慮すると明記されているが、内閣官房の担当者は本紙の取材に「市街地を外すわけではない。経済と防衛のバランスを精査して判断する」と述べ、線引きは曖昧だ。
  国会では法案の審議入り前から不透明な内容を疑問視する追及が相次ぐ。元防衛副大臣で立憲民主党の渡辺周氏は、防衛省など都心の施設の周囲に市街地が広がる現状を踏まえ「経済に配慮しすぎたら、法の目的が達成できない。抽象的な部分を詰めなければ、法案の是非を判断しかねる」と指摘した。
  立民の屋良朝博やらともひろ氏は、地元・沖縄の米軍基地周辺で、民間地が規制対象となる懸念が広がっていると説明。「中身を明確に示さずに国会に提出するのは審議を軽んじている」と批判した。
◆基地機能の「阻害行為」を拡大解釈の恐れ
  自衛隊・米軍の基地周辺や国境離島の土地利用を規制する法案を巡っては、政府が土地所有者らに中止勧告、命令できる基地の「機能を阻害する行為」の定義がはっきりしない。拡大解釈されて経済活動などが不当に制限される恐れを指摘する意見もある。
  米海軍横須賀基地(神奈川県)の問題に詳しい呉東正彦弁護士は、条文に記された「機能を阻害する行為」について「どうにでも解釈でき、何でも入ってしまう問題がある。阻害行為は誰がどう判断するのか」と疑問を投げかける。拡大解釈の例として、基地を見下ろせる隣接地のタワーマンションを購入できる人が、国籍や思想信条によって選別される可能性を挙げる。
  呉東氏は、阻害行為の詳細が法成立後に決定されることに関しても「法律を作ってから重要なことを決めるのは法治主義に反する」と問題視する。


2021.03.26-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210326/k10012937501000.html
政府 重要土地規制法案を閣議決定 今国会での成立目指す

  政府は26日の閣議で、安全保障上重要な施設周辺の土地や建物について、売買の際に事前の届け出を義務づけるなど、利用規制を盛り込んだ法案を決定しました。
  閣議決定された法案では、自衛隊の基地や原子力発電所などの重要インフラ施設の周辺おおむね1キロの範囲それに国境に近い離島などを「注視区域」に指定し、国が土地などの所有者の氏名や国籍などを調査できるとしています。

  このうち、司令部の機能がある自衛隊の基地周辺や国境に近い無人島など、特に重要性が高い区域を特別注視区域」と定め、一定以上の面積の土地などを売買する際には氏名や国籍などを事前に届け出ることを義務づけています。
  また、これらの区域から電波による妨害行為などが確認された場合、国が土地や建物の使用の中止を命令できるとしています。
  一方「注視区域」の指定は、個人情報の保護に十分配慮しつつ必要最小限度にしなければならないとしています。
  加藤官房長官は閣議のあとの記者会見で「安全保障の観点から、防衛関係施設などの機能を阻害する行為を防止するための重要な法案で、国会において審議のうえ成立させていただけるよう、政府として全力で取り組んでいきたい」と述べました。
  政府は今の国会での成立を目指す方針です。
立民 福山幹事長 「審議し 賛否はそれから」
  立憲民主党の福山幹事長は、記者団に対し「規制の中身や国民経済への影響に加え、規制によって安全保障上、どのようなことが担保がされるのか、政府から説明してもらったうえで審議をしていく。賛否はそれからでも十分だ」と述べました。



2020.12.18-zaqzaq by 夕刊フジ-https://www.zakzak.co.jp/soc/news/201218/pol2012180005-n1.html
外資土地買収「不適切利用に中止命令」 有識者が提言

  外国資本による安全保障上重要な土地買収をめぐり、法整備を検討する政府の有識者会議が、土地を不適切に利用していると判断された場合、利用の中止を勧告や命令できる制度の導入を提言することが分かった。土地所有者の情報と利用実態を国の調査対象とし、利用実態に応じて規制を行う。政府は年内にまとめられる提言を受け、来年1月召集の通常国会で関連法案の提出を目指す。
  提言案では、原則として所有者の国籍のみで差別的扱いをすべきでないことを明記した。そのうえで、国の調査対象として、(1)防衛施設周辺(2)国境離島(3)原子力発電所など重要インフラ施設周辺-を挙げ、土地・建物の所有権と賃借権を調べる。所有者情報のほか、利用目的や実態も調査する。情報は政府内に設ける司令塔的組織が一元的に管理する。
  指揮命令機能を持つ施設の周辺など安保上、特に重要性が高い土地の購入者には事前届け出を義務付ける。届け出後の追加調査で防衛施設に悪影響を及ぼすなどリスクが大きいと判断された場合、まずは現行法による規制を優先し、対処できない場合は不適切利用の是正を勧告、命令する。


2020.12.01-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/b07c678273d1924a90d774097a57d9b2d4148054
土地所有情報をDB化 自民提言案判明 外資買収備え一元管理

  外国資本による安全保障上重要な土地買収などをめぐり、自民党の「安全保障と土地法制に関する特命委員会」(新藤義孝委員長)の提言案が1日、判明した。土地の所有者を一元的に把握する態勢を整えるため、管轄が複数の省庁にまたがる土地関連台帳に記載される情報を標準化し、一元的なデータベースを整備することが柱。政府には、関係閣僚会議の設置や関連法案を来年1月召集の通常国会に提出することなどを求めている。
  土地利用の実態を把握するための手段は、不動産登記簿や固定資産課税台帳、農地基本台帳、森林調査簿などがある。ただ、登記簿は更新が任意で、実態を必ずしも反映していない。森林と農地は地方自治体への事後届け出が義務化されたものの、調査は自治体に委ねられる。自治体が管理する住民票は国籍記入が必要だが、登記簿や森林調査簿にはひもづいていない。
   このため、提言では「安全保障の観点からは、いかなる者が土地を保有しているかを確実に把握することが必要だ」と指摘。関連法案が定める基本方針として、
(1)所有者が不明な土地を利用しやすくする
(2)土地関連台帳の充実
(3)土地保有に関する情報連携や国民への開示
-の3つを掲げた。
   政府には、防衛施設周辺に加え、国境に隣接する離島や重要インフラ施設の周辺など、安全保障上重要な土地を対象に、国籍を含めた所有者情報の収集や、調査などを徹底するよう要請した。安保上懸念がある場合は、過度な私権制限にならないよう留意しつつ、該当する土地の利用や取得を制限できる仕組みの創設も求めた。


2020.11.28-5ちゃんねる-https://rosie.5ch.net/test/read.cgi/editorialplus/1606569131/
自衛隊レーダー基地の喉元に迫る中国資本 北海道・稚内ルポ

  中国系資本関連とみられる企業に買収された土地の付近に建設された別の企業による風力発電設備。山上には自衛隊分屯地のレーダーサイトが見える=2日、北海道稚内市
  政府は外国資本による安全保障上重要な土地の買収について実態調査を可能にする法整備を進めている。並行して取り組むのが具体的事例の検証だ。9日に開かれた政府有識者会議の初会合では、各地方議会などで問題視された事例が報告された。
  北海道千歳市議会では平成26年6月、航空自衛隊千歳基地から約3キロの隣接地約8ヘクタールが中国資本に買収されたことが質問で出た。台湾と接する沖縄県竹富町議会では28年9月、中国系資本が宅地約2・4ヘクタールを買収しようとし、これを防ぐため町による土地購入が検討された。
   こうした事例は中国資本が表に出ているため、ある意味動きをつかみやすい。だが、中国資本の関与が疑われても実態が明らかにならない事例もある。
レーダーサイトまでわずか約1キロ
   ヒュン、ヒュン、ヒュン…。日本海を吹き渡る風を受け、風力発電の風車が風を切る音が響く。国内最北部に位置する北海道稚内市の野寒布(のしゃっぷ)岬。背後の高台にはロシア国境に目を光らせる自衛隊分屯地のレーダーサイトが見える。周辺の土地は数年前、風力発電業者らがわれ先にと買いあさった。中でも基地関係者が「分屯地の喉元(のどもと)」と表現する近接地を、中国系資本が関与するとみられる事業者が買収していた。誰が何のために買収したのか。
  野寒布岬周辺の道路を車で走り、再生可能エネルギー事業計画が8件届けられた場所にたどり着いた。現在は営業していないラブホテルが建つ計画地は草が生い茂り、実際に稼働している様子はない。

産経新聞(https://special.sankei.com/a/politics/article/20201128/0002.html)
  政府は外国資本による安全保障上重要な土地の買収について実態調査を可能にする法整備を進めている。並行して取り組むのが具体的事例の検証だ。9日に開かれた政府有識者会議の初会合では、各地方議会などで問題視された事例が報告された。
  北海道千歳市議会では平成26年6月、航空自衛隊千歳基地から約3キロの隣接地約8ヘクタールが中国資本に買収されたことが質問で出た。台湾と接する沖縄県竹富町議会では28年9月、中国系資本が宅地約2・4ヘクタールを買収しようとし、これを防ぐため町による土地購入が検討された。
  こうした事例は中国資本が表に出ているため、ある意味動きをつかみやすい。だが、中国資本の関与が疑われても実態が明らかにならない事例もある。


2020.11.07-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/545395b7555d7dd9d2ec8e80bec05f8f105a3e99
中国資本買収が80カ所 安保上重要な施設・離島 政府調査

  中国系資本が何らかの形で関与した疑いがある安全保障上重要な土地の買収件数が全国で約80カ所に上るとの調査を政府関係機関がまとめていたことが7日、分かった。複数の政府関係者が明らかにした。政府は来年1月召集予定の通常国会で、防衛施設や国境離島などの土地購入に関して政府の調査権限や届け出義務を盛り込んだ法案の提出を目指している。中国系資本による土地買収の実態が明らかになったことで法整備の動きが加速しそうだ。
  政府関係者によると、防衛施設の周辺10キロ以内や国境離島にある土地で、リゾート施設やマンションの建設などの目的で中国系資本が直接、間接的に買収に関与した疑いがある土地の件数を政府関係機関が調査した。
  その結果、今年10月までの時点で少なくとも全国に約80カ所あることを把握した。
   また、同じ機関の調査で、再生可能エネルギー発電事業者として中国系資本が何らかの形で買収に関与したとみられる土地が全国約1700カ所に上ることも判明。この中には防衛施設周辺などの安全保障上重要な土地も含まれ、約80カ所と一部重複する。
   これらの調査結果は、法整備を進めている内閣府を通じ、10月に首相官邸に報告された。現状では森林や農地の事後届け出を除き政府に土地買収者について調べる権限がなく、その手段も限られている。法整備に向けて9日から始まる有識者会議では外資による安全保障上重要な土地買収の実態についても議題となる。
  検討中の法整備では関係閣僚会議を新設し、防衛施設の周辺地や国境離島に関する各省庁や自治体の調査結果を集約。一部区域を指定し、土地購入者に国籍などを事前に国に届け出ることを義務付ける。調査結果次第では閣僚会議で法規制の強化を検討する。


2020.10.31-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/politics/news/201031/plt2010310011-n1.html
《独自》外資の土地買収 情報集約 法整備へ 首相主導で閣僚会議

  外国資本による安全保障上重要な土地の買収に関し、政府が首相をトップとする関係閣僚会議を新たに設置する方向で検討していることが31日、分かった。重要な土地の所有者を一元的に把握できる態勢の構築を目指す。複数の政府関係者が明らかにした。
  政府は法整備に向けた有識者会議を近く設置し、年内に方向性について提言をまとめ、来年の通常国会での法案提出を目指す。成立後、閣僚会議設置を含む基本方針を閣議決定する。
  土地利用の実態を把握する手段は、不動産登記簿▽土地売買届出▽固定資産課税台帳▽外為法に基づく取引報告▽森林調査簿▽農地基本台帳-などがある。だが、不動産登記簿は法務省、土地売買届出は国土交通省、森林調査簿は林野庁など現在は所管官庁が個別に管理しており、一元的に把握できる仕組みがない。
  登記簿は更新が任意で、実態を必ずしも反映しておらず、森林と農地については地方自治体への事後届け出が義務化されたものの、調査は自治体に委ねられる。自治体が管理する住民票は国籍記入が必要だが、登記簿や森林調査簿にはひもづいていない。
  現在検討されている法整備では、首相や関係閣僚で構成する会議体を新たに設置。土地所有者の氏名や国籍、不動産の所在、利用実態などを調査できる権限を付与し、外資による買収が問題化している防衛施設の周辺地や国境離島について、各省庁や自治体が行う調査を集約する。
  一方、一部の重要な国境離島や指揮中枢機能を持つ防衛施設周辺については区域を指定し、土地購入者に国籍などを事前に国に届け出ることを義務付ける。調査結果次第では閣僚会議で法規制の強化を検討する。
  外資による土地買収では長崎・対馬で自衛隊基地の近接地を韓国資本が買収。北海道では中国資本が水源地を含む山林を大規模に買収していることが分かっている。


2020.10.26-zaqzaq by 夕刊フジ-https://www.zakzak.co.jp/soc/news/201026/pol2010260001-n1.html
外資の土地買収届出義務化 防衛施設・国境離島を区域指定 来年の通常国会での法案提出を目指す 産経報道
(1)
  外国資本による安全保障上重要な土地の買収について、菅義偉政権が重要防衛施設周辺と国境離島に区域を指定し、土地購入者に国籍などの事前届け出を義務付ける法整備を検討していることが分かった。夕刊フジではこれまで、北海道や九州などの水源地や森林、自衛隊基地周辺の土地が、外国資本に次々と購入されている現状を報告してきた。11月上旬に有識者会議を設置し、年内に法整備の方向性について提言をまとめる方針で、来年の通常国会での法案提出を目指すという。 さらに、政府は安全保障上重要な施設周辺や離島などの土地所有者を調査できるようにする基本法整備も検討を進めている。土地買収時の届け出義務付けと調査権限の付与により、外国人による土地取得状況の全体像を把握する狙いがある。
  外国資本による土地買収では、北海道では中国資本が水源地を含む山林を大規模に買収。長崎・対馬で海上自衛隊基地の近接地を韓国資本が買収したことが知られる。

(2)
  農林水産省によると、昨年1年間の外国資本による森林買収は31件163ヘクタールで、うち北海道が26件154ヘクタールを占めた。
  外国資本による土地買収は長く問題視され、議員立法が模索されてきたが「私権の制限」につながるとの懸念があった。加えて、国際ルールとの整合性に留意する必要もある。日本政府は1995年、世界貿易機関(WTO)協定の一部「サービスの貿易に関する一般協定」(GATS)に加盟する際、諸外国と異なり、外国人による土地取得を規制する留保条項を盛り込まなかった。
  政府は規制内容について慎重に検討を進める。調査結果次第ではさらなる法的措置も検討する方針という。


2020.8.21-Kabutan-https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202008210306
【経済】外国資本による土地買収が引き起こす諸問題【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】

  北海道庁観光局のホームページに、海外から北海道を訪れる観光客に関する情報が公開されている。2018年、海外からの来訪者の合計は312万人、そのうち中国からの観光客は約71万人であった。アンケート結果によると、中国人観光客が北海道観光を選定した理由は、
  (1)自然風景を楽しむ、
  (2)食べ物が美味しい、
  (3)温泉でのリラクゼーション、等であり、北海道庁としてさらなる観光客の誘致による経済効果を期待したいところであろう。ところが、北海道では中国資本による大規模なリゾート施設の買収、水源や農地、さらには自衛隊および民間空港隣接地の大規模な土地取得が横行しており、合法的な領土の侵食が進行している。安全保障上の危機が迫りつつあると認識し、現状と対策について検討したい。

  2019年10月、王岐山国家副主席が、鈴木北海道知事を公式訪問した。北海道新聞は「王副主席は、『北海道と交流を続けたい。私の北海道訪問は、私たちが日中関係を大事にしている表れである』旨を鈴木知事に語りかけた」と報じた。また、2019年5月には多忙なスケジュールの合間を縫って、李克強首相が鈴木知事を表敬訪問している。中国要人の相次ぐ北海道訪問は、中国の北海道進出が本格的に動き出した表れであろう。鈴木知事は、これに対し「歓迎の意」を表明している。経済政策における観光事業の重要性は理解できるが、その延長線上にある外国資本による土地買収が引き起こす諸問題についても配慮が必要であろう。
  北海道庁によると、2018年に外国資本に買収された森林は21件、108ha(東京ドーム23個分、うち中国資本によるものが13件)、日本国内にある企業で、かつ資本の半分以上を外国資本が占める企業による買収が7件、58ha(東京ドーム13個分、うち中国資本によるものが2件)、外国資本による森林買収は合計166ha、28件にのぼる。その他中国と関係のある日本の農業生産法人、日本人名義であっても中国と関係の深い日本企業、中国企業が土地を取得した日本企業を買収して、そのまま所有権引き継ぐ場合など、さらに多くの土地が中国資本に買収されている可能性もあり、その実態がよく把握できていないのが現状だ

  経済活性化というプラスの側面を否定するものでないが、中国資本による北海道の土地の買収には、2つの大きな問題がある。
  1つは、領土占拠の足掛かりになってしまうこと。今一つは、自衛隊や治安機関などの安全保障上の業務に支障をきたす恐れがあることである。
     まず、領土占拠の問題点について見てみよう。2015年、総合リゾート施設「星野リゾートトマム」(占冠村)、「サホロリゾートエリア」(新得村)の日本が誇る  2つの巨大リゾートが中国資本の傘下に入った。外国資本のリゾート開発が進むことにより現地の物価や家賃が高騰し、富裕層向けのホテルやコンドミニアムの需要が高まり、それに呼応して、1杯3,000円のラーメンなど急激な物価上昇も見られる。さらに、帯広市の拓成町や沙流郡平取町豊糖地区など村が丸ごと買収されるケースがでてきている。これらの地域は優良な水源地を有しており自己完結型の集落を造るには最適なエリアである。そして、買収された土地の入り口には「私有地につき立ち入り禁止」と表示され、「治外法権のようになっている

  次のような状況を想像してもらいたい。中国資本による大規模な土地買収によって、ゆくゆくは中国人移民が増え、チャイナタウンが造られていく。他民族が住む土地にじわりじわりと入植し、地域コミュニティーを作り、ある日突然「この土地は我々の自治区だ」と宣言する可能性はないのだろうか。このまま何も対策を講じずに自由な土地買収を放置し、治外法権的な集落が乱立する状況になると、その地域に日本の主権が及びにくくなる可能性があるという側面も認識しておく必要があろう。

  次に安全保障上の問題点である。2018年3月、中国の大手ネットショッピングサイト「アリババ」が日本の航空自衛隊千歳基地と新千歳空港の隣接地にある52haの土地を49億円で売りに出した。また、新千歳空港から車で15分の場所に、中国人向けの別荘地6,500平方メートルが開発され、販売された。滝川市では陸上自衛隊滝川駐屯地が一望できる山林を中国企業が買収し、ニセコの隣町である倶知安町の陸上自衛隊倶知安駐屯地の隣接地100haの土地も中国系企業に買収されている自衛隊周辺の土地の買収は、規制する条例すら制定されていない。自衛隊の装備品の現状や行動の監視、あるいはテロ攻撃を仕掛けられる可能性など、安全保障上の大きな問題になる可能性がある。

外国資本による土地買収に危機感を抱いて、2011年にニセコ町は、「水道水資源保護条例」を制定した。北海道庁は2012年に「北海道水源の保全に関する条例」を施行し、水資源保全地域の指定、契約3か月前までの事前届出制とした。現在58町村169地域、約12万haが保全地域に指定されている。ただし、現在の条例には軽微な罰則しか規定されていない。

米国には対米外国投資委員会(CFIUS : Committee on Foreign Investment in the United States)という政府の省庁間委員会があり、米国の企業や事業への外国の直接投資による国家安全保障への影響を検討している。財務長官が議長を務め、国防総省、国務省、商務省など16の米国の省庁と国土安全保障省の代表により構成され、その都度対応を検討している。

1925年に施行された「外国人土地法」は、外国人・外国法人が属する国が制限している内容と同等の制限を政令によりかけることができ、国防上必要な地区において、土地の権利取得を禁止、制限、条件を付けることができるという法律であるが、2010年に菅内閣は「政令がないためこの法律は有名無実だ」と答弁している。現状の外国資本による土地買収が国家の存立要素を脅かす可能性を意識し、防衛省、外務省、国交省などの国の機関と各自治体が良い意味での緊張感を持つことに期待したい。


外国人土地法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


外国人土地法(大正14年4月1日法律第42号)とは、1925年(大正14年)に制定された日本の法律である。1926年(大正15年)11月10日施行。所管は法務省

概要
  第1条では、日本人・日本法人による土地の権利の享有を制限している国に属する外国人・外国法人に対しては、日本における土地の権利の享有について、その外国人・外国法人が属する国が制限している内容と同様の制限を政令によってかけることができると定めている
  また、第4条では、国防上必要な地区においては、政令によって外国人・外国法人の土地に関する権利の取得を禁止、または条件もしくは制限をつけることができると定めている。
  第4条に関しては1926年(大正15年)に「外国人土地法施行令」(大正15年11月3日勅令第334号)が定められ、国防上重要な地域における外国人による土地の取得に関して、陸軍大臣海軍大臣の許可を得ることを義務づけていた。
  勅令では伊豆七島小笠原諸島対馬沖縄諸島南樺太千島列島など外国に近い位置にある島々や、横須賀舞鶴佐世保など帝国海軍鎮守府所在地が対象となっていた。
  勅令は太平洋戦争終戦後の1945年昭和20年)、「司法省関係許可認可等戦時特例等廃止ノ件」(昭和20年10月24日勅令第598号)によって廃止された。
終戦後の運用
  終戦後、日本国憲法下においてこの法律に基づく政令はこれまで制定されたことはない。
  長い間使われることのなかった法律であるが、韓国資本による活発な対馬の土地買収などが明らかになり、2008年平成20年)ごろから日本の領土を守るため行動する議員連盟などがこの法律に注目し、参議院議員山谷えり子加藤修一が、質問主意書にて日本国政府の見解を質した。法的効力の有効性は確認されたものの、鳩山由紀夫内閣2009年(平成21年)11月2010年(平成22年)6月、この法律の活用は検討していないとの答弁書を決定した。
  菅直人首相は2010年10月15日の参院予算委員会で、同法についての質問に対し「規制には政令が必要だが、現在は存在せず、事実上この法律も有名無実になっている」と答弁した。同26日、菅内閣は外国人・外国法人による不動産取得の制限について「安全保障上の必要性や個人の財産権の観点等の諸事情を総合考慮した上での検討が必要」とする答弁書を決定した。法務省は、WTO協定を踏まえれば「外国人であることを理由に、土地取得を一律に制限することは難しい」としている。
中国資本による土地取得
  2011年5月13日の衆議院外務委員会で、同4月下旬に中華人民共和国政府が東京都心の一等地を一般競争入札で落札したことについて、相互主義についての質問・答弁がなされた。(詳細は「相互主義#外国人の土地所有権と相互主義」を参照)
安倍政権による「不動産市場における国際展開戦略」
  2013年8月2日国土交通省により「不動産市場における国際展開戦略」が発表された。海外の投資家による日本の不動産への投資を促すという政策であり、円安を受け海外投資家の日本の不動産購入が進んだ。

日本以外における同様の立法例
  ・先進国では外国人の土地所有を一般的に禁止する例は少ないが、発展途上国を中心として、外国人の土地所有を一般的に禁止する国・地域は数多い。例として北マリアナ諸島(米国自治領)では、1977年に批准され1978年に施行された北マリアナ諸島憲法の12条1節において、「本コモンウェルス内に所在する不動産の永久的または長期の権益の取得は、北マリアナ諸島に出自を有する者のみに制限される」と定め、外国人は無論、米国市民等であっても血統主義により自治領外人とされる者による土地所有を禁止している
  ・アメリカにおいては外国人の土地取得は基本的に自由だが、外国人の取引全般に対し大統領に安全保障上の取引停止・禁止権限を与えている。
  ・フィリピンにおいても、外国人の土地所有が禁止されている。
  ・韓国は1998年まで、外国人の土地所有を禁止してきた(ごく小規模なものを除く。同年改正前の韓国外国人土地法参照)。
  ・タイ王国においてはタイ王国土地法第96-2条に基づき外国人は居住に要する土地に限り1ライ(1,600平米)まで所有が認められるほか、区分所有共同住宅法に基づき一部のコンドミニアムの所有が認められるが、これらを除き原則的に外国人の不動産所有は認められていない。


タックス・ヘイヴン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


  タックス・ヘイヴン(: tax haven)とは、一定の課税が著しく軽減、ないしは完全に免除される国や地域のことであり、租税回避地(そぜいかいひち)とも低課税地域(ていかぜいちいき)とも呼ばれる。
  フランス語では「税の楽園」「税の天国」を意味するパラディ・フィスカル: paradis fiscal)と言い、ドイツ語などでも同様の言い方をする。英語のタックス・ヘイヴンの haven 日本語での意味は避難所であって、楽園や天国を意味する heaven ではないことに注意されたい。

概説
  タックス・ヘイヴンは、税制上の優遇措置を、域外の企業に対して戦略的に設けている国または地域のことである。
  推算によれば、2013年時点の世界では家計の金融資産の8%がタックス・ヘイヴンにあり、EU圏では12%になる。タックス・ヘイヴンでは超富裕層のためのプライベート・バンキングが行われている。カリブ海の英領バージン諸島、ケイマン諸島、富裕層への税優遇制度の手厚いオランダルクセンブルクアメリカ合衆国デラウェア州などの国・地域は、日本など他国の税務当局の求む納税情報の提供を、企業・個人情報の保護などを理由に拒否し、他国が干渉できないため、タックス・ヘイヴンとして富裕層の資金が集まる。
良く知られているタックス・ヘイヴンの場所
  代表的な場所としては、スイスシンガポール香港バハマケイマン諸島バージン諸島ルクセンブルクジャージー島などである。オフショア金融センターはタックス・ヘイヴンと不可分の関係にあるため、ここではオフショア金融センターも含む。2013年時点では、タックス・ヘイヴンにある金融資産のうちスイスに3分の1が保管され、残りの3分の2はシンガポール香港バハマケイマン諸島バージン諸島ルクセンブルクジャージー島などにある。
  シンガポールは財務省(MOF)や4大会計事務所PwCアーンスト&ヤングによって、同国は脱税行為や利益移転(BEPS)を容認せず、OECD・G7の枠組みに協力しており、経済活動支援や人材開発に主眼を置いているため悪質性はない、と主張している。ただし悪質な場合は資本主義の構造や国家財政に悪影響をもたらすフリーライダーの存在となり得るため、タックスヘイヴン対策税制や税務情報の共有をする対策が取られている。
  なお、ケイマン諸島の外国資本企業法人税減免システムは、実は宗主国イギリスであるシティ・オブ・ロンドンの課税システムをそのまま導入したことに由来する。
  アメリカ合衆国デラウェア州も「租税回避地」として広く知られている。人間の居住者よりも多くの企業(公開・非公開)が存在しており、2016年4月の集計では、人口89万7934人に対し、企業数は94万5326社も存在し、「法人税制やLLCの税制から判断すると、世界最悪のタックス・ヘイヴンである」とニューズウィークが指摘している。
  デラウェア州が租税回避地になったのは19世紀末で、州は1社あたり年300ドルを得て、約4割がペーパーカンパニー立地に絡む歳入である。デラウェア州ウィルミントン市北オレンジ通り1209番地にある2階建てのビルには31万社が存在し、ペーパーカンパニーの代表名義は弁護士が多く、設立に実質所有者の情報は不要で州政府も把握できず、秘匿性が高い。
資金洗浄とタックス・ヘイヴン
  一部のタックス・ヘイヴンには、本国からの取締りが困難だという点に目を付けた悪質な利用の対象となる場合がある。例として麻薬武器取引などの犯罪・テロリズム行為のための資金を隠匿する場所として、暴力団マフィアの資金や第三国からの資金が大量に流入しているといわれている(マネーロンダリング)。2007年世界金融危機では、金融取引実態が把握しにくいことが災いし、損失額が不明瞭化、状況の悪化を助長したとして批判されている。
  タックス・ヘイヴンによって世界規模で被害が生じており、これは温室効果ガスと同様に外部不経済の問題でもある。環境規制のない状況で公害を排出する企業が有利なように、オフショアの銀行は秘密業務によって有利になっている。
タックス・ヘイヴンと貧富格差の拡大
  1%の富裕層が世界の富の50%を所有する(オックスファム・アメリカ(NPO))といわれる格差が、一部の国家・地域で拡大している状況にある。トマ・ピケティの『21世紀の資本』やガブリエル・ズックマンの『失われた国家の富』などの研究、そして2016年5月に公表されたパナマ文書、2017年に公表されたパラダイス文書は、逆進性の高い付加価値税消費税)の増税ではなく、累進課税で多国籍企業・富裕層の巨額の国際金融取引に課税する方向への発想の転換を求めている。
  タックス・ヘイヴン内に住む人々の不平等も問題となる。オフショア金融に関わる人々と、そうでない製造業、建設業、運輸業などに関わる人々との格差が拡大する。所得格差によって若い世代の教育や就職にも格差ができる。
金融取引とタックス・ヘイヴン
  国際金融取引を活発化させる目的で、一定の減税措置や外国資本企業は登記費用のみで、法人税がかからない会社設立方法・通貨決済方法が設けられることは珍しいことではない。
  現代の国際金融取引においては、租税負担の軽減を目的として、多くの外国資金がタックス・ヘイヴンを経由して動いており、もはやタックス・ヘイヴンは企業の競争力維持のために必要不可欠な存在であるという利用者側の論理があるが、タックス・ヘイヴンがブラックボックスである限り、公正な企業活動が行われているか、非利用者側からの検証も利用者側からの実証も共に不可能である。税率の低い国や地域に実体のない子会社を設け、利益を移して税負担軽減を狙う目的に使う企業も少なくない。
 大規模なタックス・ヘイヴンはオフショア金融センターと不可分の関係にあり、特権を維持できる。他方、金融業に依存しているために金融危機や破綻に脆弱であり、問題が起きれば莫大な救済費用がかかり関係国にも波及する。世界金融危機ユーロ危機におけるアイルランドキプロスは、その一例である。
国家への悪影響
  タックス・ヘイヴンによって税収の減少が続くと国家の債務が増え、債務が増えると国債の利回りも増える。こうして国家の公的債務が増え続け、フランスでは5000億ユーロ近くの余分な公的債務が生じた。タックス・ヘイヴンは課税統治権を放棄して超富裕層や多国籍企業を引き寄せる。これは国家主権の商品化ともいえる。
判定と対策
  主要各国は、タックス・ヘイヴンを利用した租税回避に対してタックスヘイヴン対策税制を整備して対抗しようとしている。しかし、税の抜け穴の根絶にはほど遠い状況である。それというのも、国際決済機関クリアストリームの2000年度口座リストによれば、タックス・ヘイヴンにある欧州・米国の大銀行を中心とする口座の大半が、機関内の匿名口座になっていたのである。
  タックス・ヘイヴンはいくつかの方法で認定されている。以下では例として経済協力開発機構(OECD)や日本のタックス・ヘイヴンの基準を示す。
OECDによる判定とリスト掲載
  経済協力開発機構(OECD)では、下記(イ)に当てはまり、かつ下記(ロ)の(a)-(c)のいずれか一つでも該当する非加盟国・地域を「タックス・ヘイヴン」と認定し、有害税制リストに載せている。
  ・(イ) 金融・サービス等の活動から生じる所得に対して無税としている又は名目的にしか課税していないこと。
  ・(ロ) ・(a) 他国と実効的な情報交換を行っていないこと。
       ・(b) 税制や税務執行につき透明性が欠如していること。
       ・(c) 誘致される金融・サービス等の活動について、自国・地域において実質的な活動がなされることを要求していないこと。
OECDによる対策
  OECDはG20加盟国とともに、国際的な取り組みとしてこうした政策をさらに広げようとする方針にある。
  ・導入済み:日本、イギリス、アメリカ合衆国、ドイツ、中華人民共和国、韓国
  2013年、15のアクションプランを特定した2013年の「BEPS行動計画」を発表(BEPS=税源の侵食と利益移転、Base Erosion and Profit Shifting)。これは、越境活動に影響を及ぼす国内ルールへの整合性導入、課税と経済活動及び価値創出との一致を確保するための既存の国際基準における実体要件の強化、企業・政府の透明性及び確実性の改善という3つの指針をもつ。OECD租税委員会が立ち上げたプロジェクトで、外国子会社に対する合算税制の強化、租税条約濫用の防止などの行動計画を持つ。
  2015年8月13日、OECDG20加盟国40カ国余りが、タックス・ヘイヴンを利用した企業の過度な節税策を防ぐ税制を全面的に導入していく見通しとなった。既に日英米が採用している課税の仕組みをインド、オランダ、スイスなど10カ国以上が導入する方針。また、加盟国以外の国にも導入を促していく方針だが、シンガポールマレーシアなどは税制優遇策を企業誘致戦略の重要な柱と位置づけているため、今後応じるかどうかは不明であり、今回の税制導入後の抜け道となる可能性がある。
  2015年10月、上記方針にのっとり、OECDは国際租税ルール改革に関する措置の最終パッケージを提示した。BEPSによる税収の損失を、「控えめに見積もっても年間1,000〜2,400億米ドル、世界全体の法人税収の4〜10%に達する」と推計。また「開発途上国では税収の多くの部分を法人税収により依存している現状に鑑みると、BEPSが開発途上国に与える影響は特に大きい」とあらためて問題提起した。そのうえで、1世紀間中に、最も抜本的な措置として、二重非課税に終止符を打ち、課税と経済活動及び価値創出との一致を促すことで、BEPSを引き起こしているタックスプランニングの仕組みを無効化することを目指すと発表した。なおBEPSは各国への勧告という形式であり、法的拘束力はない。
各国政府による対策(「タックスヘイヴン対策税制」も参照)
  タックスヘイヴンを用いた租税回避について、多くの国家や地域では、対抗策を講じようとしている。
  例えば、日本の場合、租税特別措置法40条の4および66条の6において「タックス・ヘイヴン対策税制」が規定されており、居住者または内国法人が外国に有する関係法人のうち、所得課税の実効税率が20%未満であるものについて、その所得を当該居住者、または内国法人の収益とみなすこととしている。1978年(昭和53年)度に導入した。
  アメリカ合衆国オバマ政権は、2008年の世界金融危機後、国外のスイスの銀行に秘密口座の情報開示を迫るなど強硬姿勢を取ってきたが、国内の会社法など、関係法制は国家ではなく州の権限であり、デラウェア州に制度改正を強いることはできず、オバマ大統領は2016年5月6日の記者会見で、銀行など金融機関に実質的所有者の情報把握を求める法案について、アメリカ合衆国議会の協力を呼びかけた。
対策の進捗状況
  OECD国際フォーラム調査による国際的に認められている税基準の実施状況に関する進捗レポートより。以下はOECDの発表による。
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