岸田文雄首相-1



ユーチューバーも消えた、石破自民への厳しい視線 ドラスチックな敗北の可能性 安積明子











2024.10.07-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241007-UUO6F2U43VAMLPQJXI34PJUZR4/
15年ぶりの「クリスチャン宰相」 18歳で洗礼受けた石破氏、一方で浄土宗や神道も敬う
(渡辺浩)

  石破茂首相は18歳のときにプロテスタントの教会で洗礼を受けたキリスト教徒だ。クリスチャン宰相は、平成21年に首相を退任したカトリックの麻生太郎自民党最高顧問以来、15年ぶりとなる。首相は一方で浄土宗の檀家で、神道とも関係が深い。

「人間は神の前には塵芥」
  石破首相の母方の曽祖父は明治から昭和にかけての牧師、金森通倫(1857~1945年)。金森は熊本洋学校の生徒でつくるキリスト教グループ「熊本バンド」のメンバーとして活動した後、同志社で新島襄から洗礼を受け、伝道活動を続けた。
  4代目である石破首相は、鳥取から上京して慶応高校に通っていたとき、日本キリスト教会世田谷伝道所に所属し、日曜学校の教師も務めた。慶応大入学直前に日本基督教団鳥取教会で洗礼を受けた。
  政治家になってから、キリスト教の集会やキリスト教メディアに度々登場している。あだむ書房「石破茂語録 主よ、用いてください」によると、今年4月27日に神戸市内で開かれた「日本国家祈祷会」で次のように語っている。
  「議員になろうが大臣になろうが、人間というものは神の前には塵芥(ちりあくた)のような存在なのであって、できることは『罪人の私をお赦しください』ということと『御(み)心ならば御用のためにお用いください』ということしか究極、祈ることしかできないのではないかなと、日々思っているところです」
戦争なくすには「均衡」と「祈り」
  また、キリスト教の教えと政治活動の葛藤について「自分たちが正しくて相手が間違っておるという演説はなるべくしないようにいたしております。私ども自民党が間違っていることはたくさんありますし、政治家も間違いだらけです。ただそのときに、相手がいかに駄目で、だから私たちを選んでくださいという言い方をしてはいかんと思います」と指摘。戦争をなくすには「バランス・オブ・パワー」と「平和のための祈り」の両方が大事だとしている。
  地方創生担当相だった平成28年には「クリスチャントゥデイ」のインタビューに対し、「私が防衛庁長官だったときに、イラクへ自衛隊を派遣しました。その時も、昨年の安保法制の時も、キリスト者から猛烈な抗議が来ました。大変な抗議です」「正直に言うと、同じ信仰を持つキリスト者からの批判が本当に一番つらいです」と話していた。
浄光会と神道政治連盟
  一方で、鳥取県知事や自治相を務めた父、石破二朗氏の家系は代々浄土宗。首相は浄土宗檀信徒の国会議員64人でつくる「浄光会」の会員で、選挙の際は浄土宗から推薦を受けている。「浄土宗新聞」には、今年1月24日に東京・芝公園の増上寺で開かれた浄光会総会で「南無阿弥陀仏」と念仏を唱える首相の写真が掲載されている。

 一神教のキリスト教と、法然が開いた浄土宗の念仏の教えが両立するわけがないが、日本人的な宗教観と選挙対策だと思われる。

  多くの自民党国会議員と同様に「神道政治連盟国会議員懇談会」の会員でもある。8月24日、鳥取県八頭町の和多理神社に参拝した後、社殿の前で自民党総裁選への出馬表明を行い、こう語った。
  「ここは父祖の地。子供の頃、ここで夏祭りがあった。本当ににぎやかだった。子供たちも高齢者もみんな笑顔だった。今、人はいなくなり、夏祭りも行われなくなったが、もう一度、にぎやかな、みんなが笑顔で暮らせる日本を取り戻したい」
(渡辺浩)


2024.09.23-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240923-2DGH77AOK5PVPM2WYE5MS66TKQ/
岸田首相がロシア軍機の領空侵犯に毅然対応を指示 米と連携、対外発信も

  林芳正官房長官は23日、ロシア軍機の3度にわたる領空侵犯を受け訪米中の岸田文雄首相から国際法と国内法令に従って冷静かつ毅然と対応するよう指示を受けたと官邸で記者団に明らかにした。首相は米国をはじめとする関係国との緊密な連携や、国内と国際社会への適切な情報発信も求めた。

  政府は官邸の内閣危機管理センターに情報連絡室を設置し、関係省庁で対応に当たった。
  林氏は記者団に「ロシア軍機による領空侵犯は極めて遺憾だ。わが国周辺空域での軍事動向を注視し、警戒監視に万全を期す」と強調した。


2024.08.14-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240814-GMCTOPXAJZMMLD7A6V6SAWPYBA/
岸田首相「責任取ることに躊躇ない」 政治とカネ、問題発生当初から「心に期していた」

  岸田文雄首相(自民党総裁)14日の記者会見で、9月の自身の任期満了に伴う自民党総裁選への不出馬を決断した理由について、派閥の政治資金パーティー収入不記載事件などを挙げ「所属議員が起こした重大な事態について、組織の長として責任を取ることにいささかの躊躇もない。事案が発生した当初から思い定め、心に期していたところであり、当面の外交日程に一区切りがついたこの時点で私が身を引くことでけじめをつけ、総裁選に向かっていきたいと考えている」と述べた。

  首相は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題や不記載事件など「政治とカネ」の問題を挙げ、「国民の政治不信を招く事態が相次いで生じた」と指摘。その上で「私としては(旧統一教会の)被害者救済法の成立や政治資金規正法の改正など再発防止策を講じることが総理・総裁としての私の責任であるという思いで、国民を裏切ることがないよう信念を持って臨んでまいった」と説明した。
  一方、首相は岸田政権の実績として、賃上げと投資促進、原発再稼働などのエネルギー政策転換、防衛費増額、広島市で開催された先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)などを挙げ「多くの皆さまのご協力によって大きな成果を挙げることができたことを自負をしている」と強調した。


2024.08.10-産経新聞(週刊フジ)-https://www.sankei.com/article/20240810-HY7SBBEOWFALXF7D6RTQ6V2P4A/?outputType=theme_weekly-fuji
まさか岸田首相が再選か 株暴落で「庶民投資家」も動揺、解散は打ちにくくなる 平井文夫
(フジテレビ特別解説委員・平井文夫)

  歴史的な株暴落は、9月に行われる自民党総裁選やその後の解散総選挙にも大きな影響を与えることになる。ただ、総裁選については誰からもまだ正式な「名乗り」が上がらず、「戦いの構図」が固まらない。
  岸田文雄首相(総裁)はこのところ、麻生太郎副総裁、森山裕総務会長、林芳正官房長官ら「仲間内」との会談を繰り返し、政権運営や総裁選の情勢について協議しているもようだ。 森山氏との会談では「誰が総裁選に出る意向なのだろうか」と聞いただけで、自身の進退には言及しなかったという。

  最近のメディア各社の世論調査では、岸田首相の交代を求める声が7割から8割を超えているが、首相本人は再選をまだ諦めていないようだし、岸田降ろし」の動きも鈍い。
  6月末に、菅義偉前首相が「岸田首相自身が裏金事件の責任に触れず今日まで来ている。不信感を持っている国民は多い」と批判して、事実上の退陣要求をした。だが、一部若手が同調した以外は後が続かず、特に「ポスト岸田」と言われる人たちは沈黙を守っている。
  力の落ちた権力者は周囲が力ずくで降ろさないと、いつまでも居座る。逆に降ろしてしまえば、不安を持たれていた後継候補もそれなりになる。というのは、米大統領選で民主党のジョー・バイデン大統領から、カマラ・ハリス副大統領への候補者の「差し替え」で分かったことだ
  だから、日本でも岸田首相を降ろしてしまえば、立候補の名乗りも上がるだろう。戦いの構図も見えてくるのだが、誰も首相を降ろそうとしない。
  もう一つは、岸田首相が総裁選に出るとして、他の人たちと政策がどう違うのかということである。欧米諸国は大体5年とか10年くらいのスパンで政権を担当する政党が代わるので政策も変わる。日本は政権交代がほとんどない国なので、首相が代わっても政策がどう変わるのか分かりにくい
  特に、岸田内閣の現職閣僚や経験者は岸田首相を攻撃しにくいし、そうでない人たちも「岸田批判」はあまりしない。だったら、「岸田さんのままでいいじゃないか」ということにならないか。
  というのは、東京都知事選で自民党が「ステルス支援」した小池百合子知事が再選されたが、元立憲民主党で共産党の支援を受けた蓮舫氏は3位に沈んだ。このため、自民党内では「新総裁(岸田首相も候補の1人)を選んだ後に解散総選挙をすれば与党で過半数を取れるのではないか」という見方が出ていたのだ。 だが、今回の株暴落で流れは変わったように見える
  岸田首相新NISA(少額投資非課税制度)の拡充を進めたが、今回の暴落で投資を始めたばかりの「庶民投資家」にも動揺が広がった経済運営に自信を持っていた岸田首相にとっては大きな痛手で、たとえ総裁選で再選されても、その後の解散はなかなか打ちにくいのではないか。 
(フジテレビ特別解説委員・平井文夫)


2024.08.09-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240809-D7XU7USMLNKLBAMP6ACJ52T6WU/
首相、中央アジア歴訪中止を正式表明 「政府対応や情報発信に万全」 巨大地震注意情報で

  岸田文雄首相は9日、長崎市内で記者会見し、南海トラフ巨大地震の注意情報発表を受け、9~12日の日程で予定していた中央アジア歴訪を取りやめる方針を表明した。「危機管理の最高責任者として、念には念を入れ、少なくとも気象庁が地震の備えの再確認などを呼びかけている1週間程度は、国内にとどまり、政府としての対応や情報の発信に万全を期すべきだと判断した」と説明した。

  注意情報に関しては「事前避難を求めるものではなく、特定の期間に地震が発生するということを具体的に知らせるものでもないが、初めてのことであり、国民の不安も大きいと思う」と語った。


2024.06.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240602-EWC777AKFFKFBPM7AGC5BF2O4E/
元官房長官が証言といっても鳩山由紀夫内閣の…官房機密費巡り『ポスト』が岸田政権を追及
(花田紀凱の週刊誌ウォッチング(978))

  パーティー券購入者公表を10万円超にしろ、いや5万円超じゃなきゃダメだ国会では相も変わらず瑣末な議論を続けているが、時間のムダだ。 全国会議員は月刊『Hanada』7月号、高井康行弁護士(元東京高検検事)の「政治とカネ、国会論議に異議!」を読め、と言いたい。 今週は『週刊ポスト』(6・7/14)が頑張っている。

  トップのタイトルがいい。 「公明がついに自民に三行半!『25年目の熟年離婚』」 公明が不信感を募らせているのは<自公の法案協議の裏で、首相側近の木原誠二・幹事長代理らが日本維新の会にも水面下で協議を持ちかけていたからだ>
  野上忠興氏(政治ジャーナリスト)の解説。<「(総選挙で自公が大敗した場合)公明党・創価学会では(中略)昔のように比例代表だけに候補を立てる比例政党に回帰すべきという声が高まるはず(中略)自民党との選挙協力は必要なくなる。そうなると連立離脱の条件は整う」>
  『ポスト』でもう一本。 「岸田政権がひた隠す『政治とカネ』の最大のタブーを暴く 証言 官房機密費」
  本来、国の秘密保持などのために使うべき「官房機密費」が、選挙などにも使われているのではという疑惑を徹底追及。 元官房長官(といっても鳩山由紀夫内閣の)などにも取材し、<自民党の「選挙に使っていない」という釈明は、大嘘だった>と勇ましいが、第1次安倍晋三内閣で官房副長官を務めた的場順三氏は機密費の内容が表に出ることをこう批判
  <「インテリジェンス(諜報活動)においては、一切口外してはならない(中略)ことが基本なのだが、日本においてはその意識が欠如している」>
  それにしても「官房機密費」が年12億円って少なくないか。 『週刊文春』(6月6日号)「消えた佐川宣寿元国税庁長官を直撃!」  記者が偶然、銀座で見かけた佐川氏を執拗に追い回し、電子版でも動画を配信中というが、プライバシー侵害もいいところ。やり過ぎだ。
(月刊『Hanada』編集長)


2024.05.20-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240520-OIIJXLDRHVPNXDUTKRFVR3JQAI/
半分が空の移動、ブラジル2度入国、大使不在…「最も過酷な外遊」に見る岸田外交の課題
(田中一世)

  岸田文雄首相5月1~6日の日程で行ったフランス・ブラジル・パラグアイ訪問は「政権史上最も過酷な外遊」(官邸幹部)だった。出発から帰国までの126時間のうち約半分の57時間余り(給油含む)を空の移動に費やした「3泊6日」の強行軍特に南米2カ国は会談や各種行事が詰め込まれ、岸田外交の課題も浮き彫りになった。

駐パラグアイ大使が同席せず
  「どうしてこんなことに‥‥」。日本政府の在外公館関係者が嘆く事態になったのが、3日(日本時間4日)のパラグアイ・ペニャ大統領との首脳会談だった。少人数と拡大の2段階で行われた首脳会談のうち、少人数会談に中谷好江・駐パラグアイ大使が同席できなかった。
  大使は天皇に任命される認証官で、赴任先では日本政府代表だ。人数制限がある中、出席者を選別したのは首相官邸。同関係者は「中谷大使は同席させてもらえない程度の扱いを日本政府内で受けているのか、とパラグアイ側に誤解される」と語り、外交面でマイナスだと指摘した。
  中国ではなく台湾と外交関係を結び、親日国でもあるパラグアイ中谷大使はパラグアイ政府から厚い信頼を得ており、今回の訪問日程も他の訪問国の都合などで二転三転したが「中谷大使だから調整できた」(外務省関係者)という。
  首相が掲げる首脳主導の外交方針は世界の潮流だが、今回は官邸主導による齟齬が生じたともいえる。
  ちなみに、首脳会談が行われた首都アスンシオンの大統領府は、フランス・パリのルーブル美術館を模したといわれるピンク色の美しい建物だ。共同記者発表の開始前に記者が演台で記念写真を撮っていると、大統領府スタッフが「顔にマイクがかぶっているから下げたほうがいい」とアドバイスしてくれるなど、とてもフレンドリーな国だった。
1日で2カ国の首脳会談はしご
  5泊のうち2泊は機中で、出張中の食事の大半は機内食。強行軍となったのは、国内の政治日程の制約を受けたからだ。
  4月28日に衆院3補欠選挙があり、首相は海外に渡れない。政治資金規正法改正などの重要課題を抱える国会会期中であるため、大型連休明けの7日までには帰国したい。-というのが官邸サイドの意向だった。
  相手国にも都合はある。5月1日はメーデーで、最初の訪問国フランスは休日。南米に移動した後の4、5両日は土日でブラジル・パラグアイの政府職員は休む日本のように「他国の首脳が来るから出勤せよ」というわけにもいかない
  制約の結果、日本政府は針の穴を通すように首脳会談や昼食・夕食会、各種イベント出席などの予定をはめ込んでいった
  この結果、南米では「1日で2カ国の首脳会談をはしごする」という弾丸日程を強いられた。平日(金曜)である3日の午前にブラジルの首都ブラジリアでルラ大統領と会談・昼食会を開催。すぐに空路でパラグアイに移動して同日午後にペニャ大統領と会談・夕食会に臨んだのだ。そして翌4日にブラジルに戻り、最大都市サンパウロで日系人関連イベントなどに出席した。

  「ブラジル→パラグアイ→ブラジル」という異例の日程には、「ブラジル重視の姿勢を示してほしい」というブラジル政府の意向も働いたという。
  3月下旬にブラジルを訪問したフランスのマクロン大統領は3日間滞在した。政府関係者によれば、岸田首相の訪問がほぼ日帰りの1度のみではブラジル重視と映らないため、再入国プランが浮上した
「詰め込み型」のハード日程
  外遊時に首脳会談などの日程を詰め込み、次々とこなしていく。そして「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」の重要性や経済協力の推進について首脳間で確認していく-。こうした「詰め込み型」の外遊は今回に限らず、岸田政権で特に顕著だ。
  かつてはもう少し余裕があった。例えば安倍晋三元首相は2016年の中南米訪問の際、メキシコ大統領とともに同国の「太陽のピラミッド」に登った
  政府関係者は「日本の首相が地球の裏側を訪ねるだけでも相手国へのメッセージになる」と語ると同時に、「せっかくなら会談や会議だけでなく文化や歴史、芸術に触れたほうが首脳同士の個人的な関係は強くなる」と強調する。
  そんな窮屈なスケジュールの中でも、サンパウロの日系人との交流イベントの盛り上がりは印象的だった。首相はスタンディングオベーションと歓声で迎えられ、日系人を「同胞」と呼ぶ首相に再び大きな拍手が送られた。ブラジル国内で一定の影響力を持つ日系社会との絆を強める機会となり「大きな意味があった」(首相周辺)のは確かだろう。

  中国による禁輸で打撃を受けている日本の漁業者を応援しようと、現地の北海道人会が北海道産ホタテを取り寄せ、昼食会に提供する一幕もあった。
  一方、ハードスケジュールに同行した政府職員、報道陣らは疲労困憊(こんぱい)。「一番元気だったのは岸田首相」(首相周辺)ともいわれる。
  首相は1月にブラジル・パラグアイ・チリを訪問する計画を立てたが、派閥パーティー収入不記載事件が表面化し、取りやめた。今回は仕切り直しの訪問で、外務省内からは「もう1日あればチリに行けた」と残念がる声も上がった。
(田中一世)


2024.05.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240503-WGYGJYK77VL7ND56EUV3NOHKNM/
岸田首相、G20サミットへブラジルと歩調 中国攻勢に危機感、中南米引き寄せ

  【ブラジリア=田中一世】岸田文雄首相3日(日本時間同日)のルラ大統領との首脳会談で、日本とブラジルは重要なパートナーだと強調し、ルラ氏が重視する脱炭素分野などで歩調を合わせる姿勢を示す「グローバルサウス」(新興・途上国)の大国でもある中南米の雄を引き寄せる狙いがある

  ロシアのウクライナ侵攻や中国の海洋進出などで国際秩序が揺らぐ中、日本や米国などの先進7カ国(G7)と、権威主義国家の中露のどちらにも属さないグローバルサウスの動向がカギを握るルラ氏はG7や中露、新興・途上国が集う11月の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で議長を務める
  ルラ氏は気候変動問題に熱心で、G20サミットの優先課題に掲げている首相が会談で立ち上げを決める脱炭素に関する包括的な協力の枠組みも「ルラ氏に寄り添い、日本とブラジルで連携していきたいという気持ち」(外務省幹部)の表れだ。バイオエタノールと日本の環境技術を組み合わせた協力は、世界有数のバイオエタノール生産国のブラジルの利益につながるだけでなく、EV(電気自動車)で中国などに出遅れている日本が自動車市場で主導権を取り戻す好機にもなる。
  経済関係の強化日本の安全保障にとって重要だ。中南米はかつて米国の影響が強く「米国の裏庭」と呼ばれたが、近年は中国が経済進出し、影響力を強めている。中国と中南米の年間貿易額は約20年で40倍程度に増加。2017年以降、パナマなど5カ国が相次いで台湾と断交し、中国と外交関係を結んだ
  日本政府は新興・途上国への中国の攻勢に危機感を抱く。投資・貿易規模では中国に劣るため、得意な人材育成や技術協力を通じて関係の深化を図る
  ブラジルは中国やロシアが主導権を握る新興国の集まり「BRICS」の主要メンバー。同時に約270万人の日系人を抱える友好国でもある
  G20サミットで「法の支配」の重要性を確認したい首相は、議長のルラ氏に期待している。外務省幹部は「中露とも話ができ、日本とのつながりも深い。政策で歩調を合わせて関係を深め、G20サミットの成果につなげたい」と語る。


2024.05.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240503-4Y5U24KKRFOTVER5RUDM7JJPQQ/
岸田首相「自衛隊員に誇りを持って任務を」 自衛隊明記に意欲 阿比留委員と対談

  岸田文雄首相(自民党総裁)3日に憲法施行から77年となるのを前に産経新聞の阿比留瑠比論説委員兼政治部編集委員との対談に応じた。自民が改憲項目に掲げる自衛隊明記について、首相は「自衛隊違憲論に終止符を打ち、国家の自立と平和を守る意思を国際社会に示す上でも、自衛隊員に誇りを持って任務を全うしてもらうという観点からも重要な取り組みだ」と述べ、実現に重ねて強い意欲を示した。

  首相は1月の能登半島地震での自衛隊の対応も踏まえ「自衛隊に対する理解はますます高まっている」と強調した。
  立憲民主党や共産党が慎重・反対の憲法改正の国会発議に関し「国民に選択肢を示すことは政治の責任だ」と訴えた。その上で「憲法が国家の基本法である以上、可能な限り幅広い合意を得る努力は重要だが、国民から『責任の放棄』との誹りを受けることのないよう議論を具体化する」と語った。
  憲法改正に積極的な日本維新の会や国民民主党の代表と党首会談を行い、直接協力を呼びかける可能性については「まずは現場で努力をしてもらうが、必要であれば私自身として何ができるのかを考えたい」と語った。
  阿比留委員は、現行憲法が「基本的人権の尊重」を3原則の一つとしているにもかかわらず、北朝鮮による日本人拉致問題が解決していないことを「横田めぐみさんという13歳の少女の人生を守れなかった。どのように解決していくか」とただした。これに対し首相は「今の憲法の下で最大限対応しなければならない。あらゆる方策を尽くしている」と説明した。
  北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記の妹、金与正党副部長が相次いで談話を出すなど日本側に揺さぶりをかけていることについては「相手の真意を見極め、具体的な対応を考える。一つ一つ前進させるべく努力をしている」と述べた。
  憲法1条で「国民統合の象徴」と規定される天皇を巡り、安定的な皇位継承をどのように確保していくかに関しては「先送りできない重要課題だ。国会での積極的な議論に期待したいし、自民はその議論に貢献する努力をする」と語った。


2024.04.30-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240430-HLST2G2U2FOQZMXS4HZLZCNTJE/
岸田首相、Y-1氏の扱いに苦慮 不記載問題で対応せず、地固めに奔走
(永原慎吾)

  自民党の衆院3補欠選挙での全敗を受け、岸田文雄首相(党総裁)が選挙の責任者であるY-1幹事長の扱いに苦慮している。Y-1氏は首相を支える党ナンバー2だが、秋の総裁選に出馬する意欲を隠さず、首相との関係が悪化している。首相が派閥の政治資金パーティー収入不記載事件の対応に追われる中でも党内の中堅・若手らを取り込む動きをみせ、党内からは不満の声も出ている

  「責任を果たすことが何よりも重要だ。それに基づき、国民の信頼回復に向けて全力で取り組む」 首相は30日、官邸で記者団に補選全敗を受けた自身を含む党執行部の交代の必要性を複数回問われたが、こう述べるにとどめ、明言を避けた。
  執行部の交代が取り沙汰されるのは、首相とY-1氏の関係が修復不能なほど悪化していることが大きい。 党内には、Y-1氏が不記載事件で深入りを避けてきたとの見方がある。関係議員の衆参政治倫理審査会への出席の調整が進まず、首相自ら出席表明する形になった。政治資金規正法改正など政治改革の自民案の取りまとめは、各党から遅れた。党幹部は党本部4階に幹事長室があることを念頭に「4階のサボタージュだ」と不快感を示した。
  一方で、Y-1氏は不記載事件を受けて執行部が全国を行脚する「政治刷新車座対話」には頻繁に足を運んでおり、地方固めにも映る。首相周辺は「政権がつぶれるのを待っているんだろう」と冷ややかにみている。
  また、Y-1氏は安倍派(清和政策研究会)などの中堅・若手の取り込みを進めている。3月にも同派の会合に顔を出し、逆風の中、首相による早期解散を恐れる若手に対し「解散はさせない」と明言した。総裁選への布石とみられるが、同派若手はY-1氏が事態を収拾する立場だったことを踏まえ、「問題を放置し、結果的に安倍派をつぶした」と不快感を示した。
  党役員は「連続3年まで」という任期の制限があり、秋にはY-1氏は交代となるが、閣僚経験者は「秋までY-1氏を続投させれば、政治改革の与野党協議にも本腰を入れず、首相は足を引っ張られるのではないか」と心配を口にした。ただ、首相がY-1氏を事実上更迭できるかというと、簡単ではない。Y-1氏は首相の後見役である麻生太郎副総裁とのつながりが深く、首相が麻生氏の理解なくY-1氏の交代に動けば麻生氏との関係悪化が避けられないからだ
  また、補選全敗で首相の求心力が低下する中では、後任の幹事長候補に打診を断られる可能性もある。実際、菅義偉前首相が令和3年夏、内閣改造・党役員人事を断行しようとしたが、多くの辞退者が出ることが分かり、結果的に政権の寿命を縮めた例がある。
  補選の最中には、Y-1氏が自ら引責辞任し総裁選の準備に本腰を入れるとの臆測もあった。首相も「Y-1さんが辞めるというのなら仕方がない」と周囲に漏らした。
  しかし、Y-1氏にとっては、報道各社の世論調査の支持が伸び悩む中、党の資金や人事を差配できる幹事長ポストを手放すことはデメリットが大きい首相とY-1氏がにらみ合ういびつな状況は当面続く可能性が高い
(永原慎吾)


2024.04.21-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240421-6SWKUDQJKBJAZFTHZNLIK7UPJA/
<独自>自動物流道路導入に向け岸田首相がルート選定指示へ 22日のデジタル行財政会議

  岸田文雄首相22日のデジタル行財政改革会議で、荷物を高速道路で自動運搬する「自動物流道路」の導入に向け、関係閣僚に夏までに想定ルートの選定を進めるよう指示を出す方針を固めた。21日、複数の政府関係者が明らかにした。増大する物流需要やトラック運転手の不足に伴う「2024年問題」などの輸送危機に対応する「交通DX(デジタルトランスフォーメーション)」の一環で、今年の経済財政運営の指針「骨太の方針」にも反映する

  2024年問題では、対策が講じられない場合、令和12年(2030)年度に34%の輸送力が不足し、物流網が崩壊する恐れが指摘されている。
  首相が導入を進める自動物流道路は、今後想定される輸送力不足を補うための抜本対策だ。高速道路の路肩や中央分離帯、地下などのスペースを活用し、自動輸送カートが荷物を運搬できるように整備するカートの輸送先には物流拠点を設け、最終的にトラックが家庭や企業などに荷物を届ける仕組みだ
  トラックの二酸化炭素(CO2)の排出量を削減し、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)への効果が期待できるほか、主要な高速道路の渋滞緩和にもつながるという。
  自動物流道路は、欧州ではすでに導入に向けた検討が進められており、スイスは、地下に24時間体制で自動輸送カートが走るための貨物専用トンネルを建設し、主要都市間を結ぶ総延長約500キロのシステムが構想されている。2031年までにチューリヒ-ヘルキンゲンの約70キロの運用を開始し、2045年までに全線が開通する。首相はこうした海外での先進事例を参考にしながら関係閣僚に具体案を取りまとめてもらう意向だ。
  首相は22日のデジタル行財政改革会議で、他にもドローン物流や自動運転の本格導入を加速するため、着地拠点や支援装置などのインフラ整備の年度内着手も指示する。また、令和7年度に都市部で高速道路の料金支払いの自動料金収受システム(ETC)専用化がスタートすることを踏まえ、デジタル技術を駆使し渋滞緩和に向けた変動料金制の導入などの具体的な検討も表明する。

■2024年問題
  働き方改革関連法に基づき、令和6年4月からトラック運転手の時間外労働が年960時間の上限規制が適用されることで生じる問題。何も対策が講じられない場合、今年度に14%、12年度に34%の輸送力不足に陥ることが指摘されており、物流の停滞が懸念されている。岸田文雄政権は昨年3月、物流の環境整備に向けた関係閣僚会議を設置し、6月にドローン物流、自動運転の活用などの具体策を取りまとめた政策パッケージを決定した。


2024.04.20-産経新聞(週刊フジ)-https://www.sankei.com/article/20240420-SBA6KH7WOJCX7PTW555EOGBLWM/?outputType=theme_weekly-fuji
フミオとジョー、腹の中では「次は違う相手かも」 政権交代の政治リスクは 平井文夫
(フジテレビ特別解説委員 平井文夫)

  日米首脳会談が成功裏に終わったと思ったら、直後にイランがイスラエルをミサイル攻撃した。米国と英国、フランスの軍隊が一部を迎撃、または迎撃の支援を行ったという。

  岸田文雄首相は米国議会で「われわれは、あなた方とともにいる」と演説した以上、極東で同様なことが起きたら、日本もできることをしなければならない。その覚悟を日本国民は持っているだろうか。
  さて訪米前、日本では「11月の大統領選のわずか7カ月前という微妙な時期になぜ行くのか」「ドナルド・トランプ前大統領の復活もささやかれる中でなぜ」という指摘が多かった。
  ジョー・バイデン大統領はまだ「死に体」ではないものの、少なくとも「二股」をかけた方がいい時期に、わざわざ一方と仲良くする必要があるのかということだった。自民党内にもそういう声はあった。
  実は、米側も同様の不安を感じていた。 2月に日本の政府関係者が訪米し、ホワイトハウスや国務省の高官と会った際、会う人会う人から「キシダは大丈夫か」「4月の首脳会談のすぐ後に政権が倒れることはないのか」と質問攻めだったという。
  つまり、「フミオ」「ジョー」と呼び合ってにこやかに会談した2人だが、腹の中では「次に会うときは違う人かもな…」と思っていたのかもしれない。では、どちらの国の方が政治リスクは大きいのか。
  首脳会談後に行われた世論調査では、共同通信とANN(朝日ニュースネットワーク)いずれも内閣支持率が4~5ポイント上昇した。国民は岸田首相の外交成果を評価している。
  このまま支持率が上がり続け、岸田首相が6月に解散するか、あるいは9月の自民党総裁選の勝者が解散するのか。政党支持率を見る限り、与党が議席を減らすことはあっても、今の野党への政権交代の可能性は低いだろう。

  「ポスト岸田」として名前の挙がっている5~6人のうち、首相が誰に代わったとしても、日本の安全保障、経済、エネルギーなど根幹の政策が大きく変わることはない。だから、バイデン政権は日本の政局をあまり心配する必要はない。
  問題は米国だ。バイデン氏が再選した場合、高齢を考えると、途中でカマラ・ハリス副大統領に代わる可能性がある。どちらにしても大統領の指導力は落ち、米国の国力は落ちるが、対日姿勢に変化はないだろう
  トランプ氏が再登場した場合は結構大変だ。間違いなく、「日本の軍事負担の強化」を言ってくる。ただ、日本の強みは、岸田首相が安倍晋三政権から引き継いで国家安全保障戦略を策定し、防衛力強化、防衛費増額をすでに決定していることだ。
  だが、トランプ氏はそれ以上のことを日本に要求するだろう。「キシダは『いつもあなた方とともにいる』と言ったじゃないか、もっと軍事貢献してくれ」と要求するだろう。
  日本の政治家は、国民は、その要求に応える覚悟はあるのだろうか(フジテレビ特別解説委員 平井文夫)


2024.04.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240418-QN66XHUF6RMUBM3AQ47OJ5FL3A/
岸田首相の訪米〝成功〟、さすがの野党も攻め手欠き…「評価すべき」 内閣支持率も上昇
(永原慎吾)

  岸田文雄首相は18日、衆院本会議に出席し、国賓待遇での訪米の際に行ったバイデン大統領との会談や、米上下両院合同会議での演説の成果を訴えた。立憲民主党など野党は党勢を左右する衆院3補欠選挙(28日投開票)が目前に控えていることもあり、首相の巻き返しを防ごうと試みたが、訪米以降、内閣支持率が上昇に転じていることもあり、攻め手不足は否めなかった

  「バイデン氏と合計で9時間もの時間をともに過ごした。現在の国際情勢のもとで日米がとるべき戦略について首脳レベルですり合わせることができた」
  首相は本会議で訪米をこう振り返り、日米関係を「かつてなく強固な信頼関係に基づくグローバルパートナー」と強調した。

  首相は訪米前、自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件による支持率下落に苦しんできた。だが、帰国してからは共同通信社の13~15日の全国電話世論調査で前回調査から3・7ポイント増の23・8%となるなど回復の兆しがある令和4年に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題が直撃し、支持率が急落した際、翌5年3月のウクライナへの電撃訪問など外交成果で政権浮揚につなげた成功体験の再現を期待する声も政権内にある。
  一方、立民としては補選を前に、訪米成果による首相の巻き返しは看過できない事態だ。この日の本会議では源馬謙太郎氏が首相の議会演説での「日本の国会ではこれほどすてきな拍手を受けることはない」というジョークについて「首相が国会で拍手されない理由は多くの問題に真摯(しんし)に向き合わない首相自身にある」とあげつらった。
  ただ、「日米関係は安定して強固であるということが確認できたことは評価すべきだと考える」と成果を認める場面もあった。国民民主党の玉木雄一郎代表も「今回の日米首脳会談は成功だったと率直に評価する」と語った。
  また、共産党の志位和夫議長は、首脳会談で確認した自衛隊と在日米軍の指揮・統制枠組みの見直しについて「米軍主導で行われ、自衛隊は米軍の指揮・統制のもとに置かれることは明瞭ではないか」と首相に迫ったが、首相は「自衛隊のすべての活動はわが国の主体的判断のもと行われる。自衛隊と米軍は独立した指揮系統に従って行動することに何ら変更はない」と反論した。(永原慎吾)


2024.04.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240415-2FWJEZWJ7FNOVJ5JT2JY5ADQUI/
岸田内閣支持率23%、前回調査から3・7ポイント上昇 共同調査

  共同通信社が13~15日に実施した全国電話世論調査によると、岸田文雄内閣の支持率は23・8%となり、過去最低だった前回調査(3月9、10両日)を3・7ポイント上回った。不支持率は前回調査より2・3ポイント減少し、62・1%だった

  次期衆院選の望ましい結果は「与党と野党の勢力が伯仲する」が50・5%で最も多く、「与党と野党が逆転する」23・8%と続いた。首相の国賓待遇での米国訪問を「評価する」は56・6%
  政党支持率は自民党25・1%(前回24・5%)、立憲民主党10・9%(10・1%)、日本維新の会8・1%(8・9%)、公明党3・5%(4・1%)、共産党2・5%(4・7%)、国民民主党2・3%(3・1%)、教育無償化を実現する会0・9%(1・5%)、れいわ新選組4・5%(4・3%)、社民党0・6%(0・4%)、参政党1・7%(0・9%)、みんなでつくる党0・5%(0・1%)。


2024.04.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240415-6CIRX35DIZMULF2VSE6UFNEW3Y/
岸田首相襲撃から1年 裁判見通し立たず動機不明 和歌山知事「模倣犯出ないよう議論を」

  岸田文雄首相が選挙応援で訪れた和歌山市の演説会場に爆発物が投げ込まれた事件は、15日で発生から1年となった。首相らへの殺人未遂など5つの罪で起訴されたA被告(25)は黙秘を続け、動機は不明のままだ。公判前整理手続きは開かれず、裁判の見通しは立っていない

  岸本周平和歌山県知事は15日の定例記者会見で、事件について「今も強い抗議の思いがある」と強調。「模倣犯が出ないように国としても議論を深めていただきたい」と述べた。
  起訴状などによると、A被告は令和4年11月~5年4月、兵庫県川西市の自宅などで黒色火薬約564グラムを製造し、爆発物2本を自作。昨年4月15日午前11時25分過ぎ、首相らを殺害する目的で、和歌山市の雑賀崎(さいかざき)漁港の演説会場にパイプ爆弾を投げ込み、聴衆と警察官の計2人にけがをさせたとされる。
  和歌山県警は当時、自民党県連など主催者側に聴衆エリアの出入り確認などを求めたが、「関係者以外は来ない」などと説明され、金属探知検査は見送られた。警察庁が昨年6月に公表した検証報告書は、来場者の識別方法など実効性の確認が不十分で、警察側は「綿密な協議を行う必要があった」などと指摘した。
  A被告は、参院議員の被選挙権年齢(30歳以上)の規定など現行の選挙制度に強い不満を持っていたとされる。選挙制度が違憲だとして国を相手に訴訟を起こしたが、1、2審とも棄却。捜査関係者によると、火薬の原料を購入したのは4年11月ごろで、1審棄却の時期と近接していたという。


2024.04.14-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240414-J6TSYA34NZI4FCRRUPM2OVWWL4/
ビーストで自撮り、大統領思い出のレストラン…異例厚遇の首相訪米舞台裏
(永原慎吾)

  岸田文雄首相は13日午前(日本時間14日未明)、一連の米国訪問日程を終え、政府専用機で帰国の途についた。国内では自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件などに苦しむ首相だが、米国では、バイデン米大統領との個人的な信頼関係を強化したほか、安倍晋三元首相以来9年ぶりとなった米連邦議会上下両院合同会議の演説では約15回のスタンディングオベーションを受けた。異例の厚遇となった訪米の舞台裏を探った(永原慎吾)

「どこでも触って」
  「フミオ、一緒にセルフィー(自撮り)をとろう!」・・・9日午後(同10日午前)、米ワシントンのホワイトハウスを出発した大統領専用車「ビースト」の車内でバイデン氏は隣に座った首相を誘った。日本政府関係者によると、ビーストに海外首脳を乗せること自体が極めて異例。珍しげに車内を見回す首相にバイデン氏は「どこでも触ってくれ」となごませたという。
  このとき、首相は別の車にジル夫人と同乗した裕子夫人とともに、大統領夫妻がセットした夕食会場に向かう途中だった。翌日にホワイトハウスでの公式晩餐(ばんさん)会を控えており、「2日連続でホワイトハウスで夕食をとるのも味気ない。大好きな首相と裕子夫人を私たちの特別な場所に招待したい」というジル夫人の配慮だった。
  首相は直前まで行き先を知らされておらず、到着したのはバイデン氏行きつけのシーフードレストラン。バイデン氏が2020年の大統領選に出馬することをジル夫人に告白した店だった
  くつろいだ雰囲気で首相と食事をとりたいとの思いからバイデン氏はあえて個室を予約しておらず、4人は大部屋のテーブル席に着席した。大統領夫妻と首相夫妻の来店を知らされていなかった店内の客からは驚きの声と拍手が上がったという。首相夫妻とジル夫人はシャンパン、酒を飲まないバイデン氏はコーラをそれぞれグラスに注ぎ、乾杯した。
強めのニューヨークなまり
  今回の訪米で首相が心を砕いたのが上下両院合同会議での演説だった。米国では演説やあいさつにウイット(機知)に飛んだジョークを織り交ぜることがマナーとされる。
  昨年4月に訪米した韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が演説で人気音楽グループの「BTS」が自身より先にホワイトハウスを訪れていたことを踏まえ、「議会訪問は私の方が先だ」とジョークを飛ばし、大うけしたこともあって、日本政府関係者は頭を悩ませた。
  そんな中、首相が着目したのが自身のルーツだった。首相は少年時代をニューヨークで過ごし、英語の発音にも定評がある。演説では当時の経験を紹介するだけでなく、「ヤンキース」や1960年代の米国の人気アニメ「フリントストーン」の名せりふ「ヤバダバドゥー」を強めのニューヨークなまりで話すなど工夫をこらした。首相の狙いはあたり、議場からは笑い声や拍手が上がった。
習国家主席との電話会談
  もちろん厚遇の背景には、首脳間の個人的な信頼関係だけでなく、首相が進めてきた外交・安全保障政策を米側が評価していることがある。

  首相周辺は「岸田政権が防衛力の抜本的強化や反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を決め、ロシアのウクライナ侵略を受けて対露政策を転換したことが大きい」と明かす。
  首相は10日午前(同10日深夜)のバイデン氏との首脳会談で、安全保障や先端技術などの分野で日米が連携を強化することを確認した。
  覇権主義的動きを強める中国についても意見をかわした。バイデン氏は今月2日に行った習近平国家主席との電話会談の様子なども明かし、「こういう議論は何時間でもできるが、ランチも食べないといけない」と締めくくったという。
  帰国前の12日夜(同13日午前)、ノースカロライナ州のホテルで記者団の取材に応じた首相は、「日米がいかなる未来を次の世代に残すとしているのか、そのためにいかなる努力をしていくのか、こうしたメッセージを米議会、米国民、さらには世界に向けて伝えることができた」と語り、訪米の手応えをにじませた


2024.03.13-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240313-2Z3VGVD5OVPHZJSEDKLJELEJJI/
岸田文雄首相「内閣の目指す多様性と合致せず」 自民過激ダンスショー巡り参院予算委

  岸田文雄首相は13日の参院予算委員会で、和歌山市で昨年11月、自民党青年局の近畿ブロック会議後に露出の多い衣装の女性ダンサーを招いた懇親会が開かれたことに関し「言うまでもなく私、そして内閣の目指す多様性とは全く合致しない」と述べた。立憲民主党の塩村文夏氏は、懇親会の企画運営を担当した党和歌山県連の県議が、「多様性の表現やインパクトを考えダンサーを招いた」と釈明したことを踏まえ、「セクシーダンス懇親会の意義は多様性というが、国民や有権者に申し訳ないと思わないのか」と訴え、首相に多様性についての認識をただした。

  首相は「全ての人が生きがいを感じ、尊厳が損なわれることなく多様性が尊重される包摂的な共生社会を目指している。(懇親会は)こうした多様性の趣旨と合致しない」と説明した。
  首相は、国会議員のうち藤原崇前青年局長、中曽根康隆前青年局長代理に加え、鶴保庸介元沖縄・北方担当相が懇親会に参加していたことを明かした。鶴保氏は冒頭であいさつした後、すぐに会場を去っており、ダンスショーの場面には居合わせていなかったという。藤原氏らについては「女性の身体を触ったといった不適切な事実は確認されていないと報告を受けている」とも語った。
  自民側に女性の出席者がいなかったことに関しては、首相は「たまたま出席メンバーの中に女性は含まれていなかった」とした。参加費用に関しては「参加者からの会費でまかなわれており、税金を原資とした公費、政党助成金は含まれていない」と述べた。  


2024.02.17-産経新聞(夕刊フジ)-https://www.sankei.com/article/20240217-3RWHB3IQMZB7TLFPEWQEQKQNIA/?outputType=theme_weekly-fuji
またぞろ出てきた「6月解散説」 岸田首相の友は減税に「待った」の財務省だけか 安積明子
(政治ジャーナリスト 安積明子)

  「岸田文雄首相が6月に衆院を解散するのではないか」  年明け以降、永田町周辺でこんな噂がささやかれている。  9月の自民党総裁選で、「岸田首相の再選は困難」との見方が党内で広まっている。それを打破するため、6月の通常国会閉会後、総選挙を仕掛けるというのだ。政治改革や、自ら掲げた〝減税効果〟を演出し、多少の「負け」を承知で大勝負に打って出るのか。 だが、情勢は極めて厳しい。

  自民党が昨年9月時点で行った情勢調査で、「自民党は衆院選で大幅議席減」という結果だったとされる。これに、自民党派閥のパーティー収入不記載事件などで、信頼は地に落ちているのだ。
  岸田首相は孤立を深めている。政権を支えた岸田派(宏池会)、麻生太郎副総裁率いる麻生派(志公会)、茂木敏充幹事長の茂木派(平成研究会)による〝トロイカ体制〟は激しく動揺している。
  きっかけは、岸田首相が先月18日、唐突にブチ上げた岸田派解散だ。麻生氏に根回しはなく、「そんな話は聞いていない」と、オカンムリだったという。岸田首相は謝罪したが、ご機嫌は直っていない様子だ。麻生氏は最近、「ポスト岸田」として、上川陽子外相を持ち上げるなど、牽制(けんせい)を強めている。
  岸田首相は、玉木雄一郎代表率いる国民民主党にも、そっぽを向かれた。国民民主党はガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除を訴えてきたが、煮え切らない態度に玉木氏の我慢が限界を超えた。自民、公明との3党協議は空中分解の様相だ。
  衆院7人、参院10人を擁する国民民主党は自民党の貴重な〝盟友〟だったはずだ。もはや、岸田首相の〝唯一の友〟は、税制という「聖域」を死守し、減税にひたすら「待った」をかける財務省だけになったのかもしれない。
  衆院解散・総選挙は「国民の信」を問うことだ。岸田首相が政権延命のため「伝家の宝刀」を抜こうとしているなら、そこに大義はあるのか。
  そもそも、昨年5月の広島G7(先進7カ国)サミット直後など、〝解散風〟が強まるタイミングは幾度もあった。岸田首相はその都度、優柔不断さと「まだまだ大丈夫」という時間的余裕から、解散に踏み切らなかった。
  総裁選につなげようと、「負け」を承知で打って出るとすれば、本末転倒もいいところではないか。唐突な派閥解消など、岸田首相は暴走気味だ。退陣水域に近づいた内閣支持率を受けて、なりふり構っていられないのだろうが、「破れかぶれ」の果てに局面打開の光が見えるのだろうか
(政治ジャーナリスト 安積明子)


2024.02.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240203-2SHHKFYGQZB6TAWLBAADEOXCUU/?outputType=theme_weekly-fuji
30数年ぶりの政治改革 透明化と厳罰化は進むが「政治的自由」失う 平井文夫
(フジテレビ上席解説委員 平井文夫)

   先週木曜(25日)、自民党の小渕優子選対委員長が茂木派(平成研究会)からの退会を表明したと聞き「これは岸田文雄首相の思い通りになってきているぞ。もしかしたら、週末の世論調査の内閣支持率は上がるのかもしれない」と思った。だが、支持率は毎日新聞が前月比で5ポイント上昇したものの、日経新聞は1ポイント上昇にとどまった。
  先週の調査では、FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞が5ポイント上昇したが、朝日新聞は横ばい、読売新聞は1ポイント減だった。全体の傾向としては、昨年来の下落傾向はようやく止まったが、まだ上昇には反転していない。
  岸田首相が「岸田派(宏池会)解散」を発表し、これに安倍派(清和政策研究会)、二階派(志帥会)、森山派(近未来政治研究会)は追随したが、麻生派(志公会)と茂木派は後ろ向きだった。しかし、小渕氏の退会に続き、茂木氏と折り合いが悪いとされていた参院からも数人が退会を表明したことで、茂木派の結束は急速に弱くなっている。 実力があり、やや強引な茂木氏に対して警戒感を持っていた岸田首相は、今回の「小渕の乱」を聞いて、ほくそ笑んだに違いない。 だが、岸田政権を見る国民の目は依然厳しい。

  毎日の調査では、連座制について「導入すべき」が87%にも上っているのに対し、岸田首相が岸田派の解散を6派閥の中で最初表明したことに対しては、「評価しない」の44%が「評価する」の40%を上回っている。国民の関心は「派閥の解散」ではなく「厳罰化」であり、もう一つは「透明化」である。
  月曜(29日)に、衆参両院の予算委員会で行われた集中審議では、与野党から厳罰化については「政治資金規正法への連座制の適用」、また透明化については「政策活動費の廃止」などを求める声が出た。
  だが、岸田首相は連座制については「各党と議論する」、政策活動費については「政治活動の自由と国民の知る権利のバランスで考える」と述べて、どちらも言質を取らせなかった。
  野党各党は温度差はあるが政治改革案を出しており、「政策活動費の廃止」「企業団体献金の禁止」「パーティー券の規制」「連座制の導入」などを提案しており、このうちのいくつかは実現するだろう。
  ただ、岸田首相の言う「政治活動の自由」は非常に重要だ。首相も言及したが、米国でもこの「政治活動の自由」を尊重した判例がある。
  30年ほど前の政治改革では、政治家と特定の団体や企業との癒着を断ち切るために、献金やパー券の規制を厳しくして額を減らし、その分を政党交付金として税金から配ることになった。この改革を否定はしないが、「政治活動の自由」が制限されたというのも事実だ。すなわち支援したい政治家に自由に支援できなくなった
  三十数年ぶりの「政治改革」という大きな流れの中で、「透明化」「厳罰化」のために「政治活動の自由」はさらに失われることになるだろう。筆者はそれをいいことだとはあまり思わないのだが。(フジテレビ上席解説委員 平井文夫)


2024.01.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240119-5KVODX4XKRHD7BJEVLXPDXQNJM/
「政治の信頼回復のために岸田派を解散する」岸田文雄首相、ぶら下がり一問一答

  岸田文雄首相は19日、会長を務めていた自民党岸田派(宏池会)を解散する考えを表明した。一問一答は以下の通り。

ー自民内では派閥解散に反発する声もあがっている。
  「政治の信頼回復のために、宏池会を解散すると申し上げた。ただ、各派閥のありようについて何か申し上げる立場にはないと考えている。いずれにせよ、(自民の)政治刷新本部における信頼回復の議論をしっかりと進めていきたい」
ー政治刷新本部の中間取りまとめに向け、派閥のあり方はどのように道筋をつけていきたいか
  「今、国民の皆さんの中から、派閥というのがカネやポストを求める場となっているのではないかと疑念の目が注がれている。こうした疑念を払拭して信頼を回復するため、政策集団のルールについて考えていかなければならないと思っている。いずれにせよまだ議論が続いている最中だ」
ー(大規模な裏金疑惑を抱える)安倍派(清和政策研究会)幹部らの処分を検討するとの一部報道もある
  「その点については、まだ捜査が続けられている。今後、結果が出てくるものだと考えている。その結果を見たうえで、適切なタイミングでの対応を考えていきたい」


2023.12.29-産経新聞(夕刊フジ)-https://www.sankei.com/article/20231229-LTK5LMEW7FDZVCHQXJ4T3WV6HU/?outputType=theme_weekly-fuji
米中対立激化 親中人事の岸田政権、二股で窮地 平井宏治
(平井宏治)

  自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を受け、岸田文雄政権の求心力が低下するなか、日本の外交・安全保障に直結する米中対立は緊迫したままだ。米議会では超党派で「対中輸出規制」や「対中技術移転規制」の強化が進められている。同盟国・日本にも共同歩調が求められそうだが、「政界屈指の親中派」である林芳正官房長官を起用した岸田政権に、決然とした対中姿勢が取れるのか。来年3月上旬で調整されている岸田首相の米国訪問の行方は。経済安全保障アナリスト、平井宏治氏が岸田政権の現状と課題に迫った。

今年も残すところ僅かとなったが、来年の米中対立とわが国はどうなるか。
  今年8月、米商務省は「米中が輸出規制に関する情報交換に向けた対話を開始する」と発表し、先月には、米サンフランシスコ郊外で1年ぶりに開かれた米中首脳会談が報道され、米中対立が緩和されるのではないかという希望的報道がなされた。
  しかし、これらの動きに関わらず、米議会では、超党派で粛々と「対中輸出規制」や「対中技術移転規制」の一層の強化が進んでいる。米上下両院の委員会からは、ベンチャーキャピタルなどの投資規制や、技術移転の規制範囲拡大を始めとする対中法案が提出・審議中だ。
  来年は、先端半導体、スパコン、量子計算、人工知能などの機微技術移転が、さらに厳しくなることは確実だ。11月には、米・米中経済・安全保障調査委員会(USCC)が、23年度の年次報告書を議会に提出した。
  提言書では、・・・
    米証券取引所に上場する企業に情報開示の枠組みを変え、中国における企業の総資産の割合の開示、企業の意思決定における中国共産党との協力度合いなどを開示させ、中国でのビジネスリスクの度合いに透明性を確保する。
    高等教育法を修正して、米大学に対する中国の影響や干渉に対処すること。
    中国・国家運輸物流広報プラットフォームなどが、米国の軍事装備、物資、人員の移動を監視している事態を回避する方策を欧州と協力してつくりあげること。
    中国企業や中国の大学などへの精査の際に使用する公開データベースの作成。・・・など、30の提言が書かれている。
  過去行われた提言は、米議会の立法動向や米政府の政策に大きな影響を与え、実施に至っているものが多い。さらに、大統領選挙で共和党に政権交代すれば、対中規制が一層強化されるだろう。米国の規制強化は、わが国の規制にも影響を及ぼす。
  しかし、日本企業はサプライチェーンを中国から変えたり国内へ回帰したりして、素材や部品を中国に依存するリスク回避の動きはようやく緒に就いたばかりだ。中国が「経済的威圧の常習犯」であることを考えれば、対中経済関係の希薄化は喫緊の課題だ。
  わが国は、米国の対中制裁に足並みをそろえて対応することが必要だが、果たして内閣改造で「親中姿勢」を旗幟(きし)鮮明にした岸田政権が対応できるか。わが国の経済安全保障は、来年も米国からの圧力頼みになりそうだ。

平井宏治(ひらい・こうじ)
  経済安全保障アナリスト。1958年、神奈川県生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。82年、電機メーカー入社。外資系投資銀行、M&A仲介会社、メガバンクグループの証券会社、会計コンサルティング会社で勤務後、2016年にアシストを設立。M&Aや事業再生の助言支援に携わりながら、経済安全保障に関する書籍の出版、メディアへの寄稿や講演会を行う。著書に『経済安全保障リスク』(育鵬社)、『トヨタが中国に接収される日』(WAC)など。


2023.12.07-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231207/k10014280861000.html
岸田首相 「宏池会」を首相など務める間は離脱の意向固める

  岸田総理大臣は、みずからが会長を務める岸田派「宏池会」を、総理大臣と自民党総裁の間は離脱する意向を固めました自民党の派閥の政治資金をめぐる問題を受けて、岸田総理大臣は6日、「党としても強い危機感を持たなければならない」と述べ、各派閥の政治資金パーティーなどを当面自粛するよう指示しました。

  こうした中、関係者によりますと、岸田総理大臣は、みずからが会長を務める岸田派「宏池会」を、総理大臣と自民党総裁の間は離脱する意向を固めました
  岸田総理大臣総理大臣就任後も派閥の会長を続けていることをめぐり、与野党双方からは公平性の観点からも派閥から距離を置くべきだという指摘が出ていましたが、岸田総理大臣は、指摘はあたらないとの考えを示してきました。
  今回、派閥を離脱する意向を固めた背景には、政治資金をめぐる問題を踏まえ、より中立的な立場で対応する姿勢を示すねらいがあるものとみられます。
自民 岸田派の定例会合 首相の派閥離脱に言及せず
  岸田総理大臣離脱する意向を固めた自民党岸田派は7日午後、国会近くにある事務所で定例の会合を開きました。冒頭、座長を務める林前外務大臣は「あす衆参両院で予算委員会の集中審議が予定されているので、総裁派閥としてしっかり岸田総理大臣を支え、一致団結して頑張っていきたい」と述べました。
  岸田総理大臣派閥を離脱するかどうかについては言及しませんでした。会合の後、林氏は記者団から「岸田総理大臣派閥を離脱するのか」と問われたのに対し「特にコメントはない」と述べました。また、事務総長を務める根本元厚生労働大臣は「岸田総理大臣本人が決断することだ」と述べました。
松野官房長官 “安倍派への所属 回答控たい”
  松野官房長官は午後の記者会見で、自身は安倍派への所属を続けるのか問われ「政府の立場として答えており、私の議員活動に関することについて答えることは控えたい」と述べました。
維新 馬場代表「遅きに失した」
  日本維新の会の馬場代表は記者会見で「岸田総理大臣派閥を離脱するのは、遅きに失したが、立場上、当然のことだ。疑念を生むようなパーティーをする派閥なら、パーティーの自粛を求めるのではなく、自民党総裁として派閥の解散命令を出すくらい思い切ったことをしたほうが、より効果があるのではないか」と述べました。
共産 志位委員長「首相のやるべきことは全容究明と説明だ」
  共産党の志位委員長は記者会見で「岸田総理大臣がやるべきことは、派閥を抜けるなどという話ではなく、自民党総裁として責任を持って全容の調査や究明を行い、国民に説明することだ。政権中枢を直撃する疑惑であり、国会としても自民党の主要派閥の歴代の事務総長を招致し、事実関係を語ってもらうことを求めたい」と述べました。


2023.12.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231204-YVYNSRZDQFPYLFGONEPAWMROX4/
岸田首相「承知していない」 旧統一教会友好団体トップ面会報道

  岸田文雄首相は4日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の友好団体のトップと自民党本部で面会していたとの一部報道に関して、「ギングリッチ元米国下院議長と面会した際、大勢の同行者がいたが、その中に誰がいたかは承知をしていない」と官邸で記者団の質問に答えた。その上で「名刺交換をしたかどうかは覚えていない。私の認識としてはギングリッチ元米国下院議長と会ったということだ」と強調した。


2023.11.26-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231126-XDFHJDKEWFG5NGD6YOJVEMHGLE/?outputType=theme_weekly-fuji
財務省と検察が倒閣運動 「ポスト岸田」は高市早苗氏
(長谷川幸洋)

  岸田文雄内閣支持率低下が止まらない。報道各社の世論調査は軒並み、「危険水域」とされる30%以下に落ち込み、10%台突入も視野に入ってきたLGBT法の拙速な法制化などで、安倍晋三、菅義偉両政権を支えた岩盤保守層は距離を置き、自民党5派閥の政治資金パーティー券疑惑の影響か、政党支持率まで落ちてきた。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は「一寸先は闇」といえる岸田政権の現状に迫り、「ポスト岸田」や、警戒される最強官庁・財務省と、東京地検特捜部の動きに迫った。

  岸田内閣支持率が急落している。報道各社の世論調査では、内閣支持率は軒並み、20%台に突入した。では、自民党に「ポスト岸田」にふさわしい候補者はいるのか。私は、高市早苗経済安全保障相を推す
  高市氏は、中国に一貫して厳しい姿勢を示してきた。前回の自民党総裁選(2021年9月)では、金融緩和と戦略的な財政出動、大胆な投資を掲げて、基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化目標の凍結を明言した。憲法改正も訴え、全体として、安倍元首相の路線を継承している。それが支持する理由だ。
  萩生田光一政調会長や西村康稔経産相など、ほかにも人材はいるが、総裁選に手を挙げた実績を評価したい。
  課題は「党内で、どこまで支持が広がるか」だ。とりわけ、かつて所属していた安倍派(清和会)には、「彼女だけはダメだ」という声が少なくない。派閥を飛び出しておきながら、安倍氏に重用され、日の当たるポストを得てきた経歴に対する嫉妬が主な理由だろう。
  だが、ここまでくると、「そんなことは言っていられない」という声が強まる可能性がある。自分の選挙を考えて、「自民党の人気が回復できるなら、何でもいい」という話になるかもしれない。
  かつての自民党には、「リベラルがダメなら、次は保守路線で」というダイナミズムがあった。党内で「疑似政権交代」を繰り返し、長期政権を維持したのだ。このメカニズムがいまも健在なら、高市氏にも目が出てくる。女性である点も有利に働く。
  最大の問題は「岸田政権が倒れるのかどうか」だ。健康問題で辞任した安倍氏と、衆院選で敗北した麻生太郎氏を別にすると、直近で自ら退陣した首相は福田康夫氏と菅義偉氏である。2人の場合はどうだったか
  福田退陣への引き金を引いたのは、公明党と麻生氏の存在だった。当時は民主党が参院で多数を握る「ねじれ国会」だったが、公明党は翌年に迫った東京都議選や衆院選を控えて、「支持率が急落した福田政権では戦えない」とみていた。そこで、税制改正法案に反対する意向をにじませて事実上、福田氏に退陣を迫ったのだ。
この先も大スキャンダルあるか
  公明党の賛成が得られなければ、衆院で法案を再議決できず、公明党がキャスチングボートを握っていた
  菅氏の場合は新型コロナ対策に忙殺され、衆院を解散する機会を逸したまま、総裁選が迫った事情が大きかった無役だった岸田氏が総裁選に立候補するなか、支持率が落ちていた菅氏は総裁選を辞退し、退陣表明した
現状はどうか内閣支持率は急落しているが、公明党は所得税の定額減税と低所得者への補助金支給を勝ち取り、岸田氏に反旗を翻す理由がない高市氏をはじめ、ライバルは政権内に取り込んでいる。総裁任期も衆院の任期も残っている
となると、誰が岸田首相に弓を引くのか。
  私は財務省と東京地検の動きに注目している。財務省は増税を封印し、減税を言い出した岸田首相に内心、怒りをたぎらせている。税金の滞納問題で辞任した財務副大臣の税務情報を握っていたのは、財務省だ。
  東京地検特捜部は、自民党5大派閥の政治資金不適切処理問題をメディアにリークした。彼らは岸田倒閣に動いている。
  この先も大スキャンダルが火を噴く可能性がある。まさに、「一寸先は闇」だ。

長谷川 幸洋(はせがわ・ゆきひろ)
  ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。


2023.10.26-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231026-SQ5MOJNWFFO7JFDCF34E3MTMDQ/
岸田首相「所得税、個人住民税の減税最も望ましい」 児童手当拡充分の支給、来年末に前倒し

  岸田文雄首相は26日の政府・与党政策懇談会で、物価高に対応するため、「国民の可処分所得を直接的に下支えする所得税、個人住民税の減税が最も望ましい。令和6年度税制改正で定額減税をお願いしたい」と自民、公明両党の税制調査会長らに指示した。来年6月から1人あたり所得税3万円、住民税1万円の減税を実施する方向で調整する。

  首相は「賃上げが物価に追いつくまで政府が支えることが肝要だ」と強調した。減税策を盛り込んだ経済対策を11月2日に取りまとめる考えも示した。
  低所得世帯への支援策に関しては、重点支援地方交付金の支援枠を追加的に拡大し、住民税非課税世帯1世帯あたり計10万円を目安に支援することを表明した。「異次元の少子化対策」で拡充する児童手当の支給を当初予定の令和5年2月から来年12月に前倒しすることも明らかにした。


2023.10.07-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231015-2SAJ2J2PJ5AFXDSW5M6U4ZKT4Q/?outputType=theme_weekly-fuji
「核軍縮議論」に血税バラまく岸田首相 きれいごとのお花畑で日本守れるか
(西村幸佑)

  ロシアによるウクライナ侵攻から何を学べるかが、国家のリーダーに問われている。それはまた、国民一人ひとりにとっても重要なテーマだろう。岸田文雄首相は就任半年後に起きた歴史的暴挙をどう捉えたのか。ウクライナは、ソ連時代にもスターリンに蹂躙(じゅうりん)された。地政学的に難しい位置にあるウクライナだが、1991年のソ連崩壊で自由を享受できる西側欧州諸国に近寄れると思ったはずだ。しかし、ソ連崩壊でウクライナに残った核兵器が国連常任理事会に問題視された。ウクライナは核兵器放棄を受け入れる代わりに、米国と英国、ロシアが安全保障を約束するという「ブダペスト覚書」に94年に調印してしまう。

  この29年前の出来事を、ウクライナ人が悔やんでいることは言うまでもない。もし、ウクライナが少数でも核を保有していたら、ロシアによる2014年2月のクリミア併合はなかったし、ロシアによる22年2月のウクライナ侵攻も起きなかっただろう。ただ、ウクライナ人は「自分の国を自分たちで守る」と立ち上がった。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領を先頭に、国際法を無視したロシアの暴挙に対し、多くの国民が強い意志で戦った民間人もコンピューターやドローン操縦など、自身の得意な分野で軍に協力し、人民戦争のような戦いぶりで祖国に奉仕する姿を世界中に示した。
  その姿に、米国やNATO(北大西洋条約機構)諸国も、ウクライナへ援助を続けることになった。もし、ゼレンスキー氏が侵略者と戦う意思を見せず、ロシアの侵略直後に国外へ逃れていたら、昨年の早い時期にウクライナ全土はロシアに占領されていたはずだ。
  日本は今年、G7(先進7カ国)議長国である。岸田文雄首相は5月の広島G7サミットにゼレンスキー氏を招聘した。ただ、岸田首相の演説は、私にはきれいごとに聞こえた。「核兵器のない世界」という訴えも、チグハグ感しかなかった。9月の国連演説も同じで、「核兵器のない世界」や「人間の尊厳」などを訴えても、何のリアリティーも伝わらなかった。
  日本はユーラシア大陸の東にあり、ロシアにとって西のウクライナと対称な位置にある。北方4島の主権を78年も侵されている日本は、それだけでもウクライナよりひどい状況なのだ。しかも、中国とロシア、北朝鮮という全体主義国家が、核で日本を恫喝している。
  岸田首相は国連演説で、核軍縮の議論促進を支援するため、海外の研究機関・シンクタンクに30億円を拠出すると表明した。そんなお花畑のために国民の血税をバラまくのはどうか。岸田首相からは「二度と日本に核兵器を使わせない」ための現実的な提案は聞かれない。

西村 幸祐(にしむら・こうゆう)
  ジャーナリスト。1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部中退。在学中、「三田文学」の編集を担当し、80年代後半から、作家、ジャーナリストとして活動。2002年日韓サッカーW杯取材後、拉致問題や歴史問題などにも、取材・執筆分野を広げる。アジア自由民主連帯協議会副会長。著書に『報道しない自由』(イースト・プレス)、『安倍晋三黙示録 「安倍晋三回顧録」をどう読むべきか』(エムディエヌコーポレーション)など。


2023.09.23-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230923-W2B3NQL5YVPZ3EL3Y65532YMN4/
岸田首相「深い悲しみ」 伊前大統領死去で弔意

  岸田文雄首相は23日、イタリアのナポリターノ前大統領の死去を受け「深い悲しみに包まれている」と弔意を伝える書簡をメローニ首相とマッタレッラ大統領に送った。ナポリターノ氏の平成21年の来日や、2012年にローマで開かれた東日本大震災の追悼行事出席に触れ「日本とイタリアの友好関係の発展に尽力した」と敬意を表した。

  上川陽子外相も同様の書簡をタヤーニ副首相兼外務・国際協力相に送った。


2023.09.20-朝日新聞-https://www.asahi.com/articles/ASR9N3QFWR9NUTFK003.html
岸田首相「人間の尊厳に光を」 国連で演説、核軍縮や国連改革も主張
(ニューヨーク=西村圭史)

  岸田文雄首相は米ニューヨークの国連本部で現地時間19日夜(日本時間20日午前)、一般討論演説をした。国際社会が直面する気候変動や感染症などの課題を挙げ、イデオロギーや価値観で分断されていては課題に対応できない」と指摘した。「『人間の尊厳』に光を当てることで、国際社会が体制や価値観の違いを乗り越えて『人間中心の国際協力』を着実に進めていける」と呼びかけた。

  主要7カ国(G7)議長国、国連安全保障理事会の非常任理事国として演説に臨んだ首相は、冒頭に「平和への切実な願い、助けを求める脆弱(ぜいじゃく)な人々の声に耳を傾けてきた」と強調。「分断・対立ではなく、協調に向けた世界を目指したい。これが私からのメッセージだ」と主張した。
  首相は「人類全体で語れる共通の言葉が必要だ」と続け、人間の尊厳に改めて光を当てることで、政治体制や価値観の違いを乗り越えられると訴えた。
  また、核軍縮について「被爆地・広島出身の私のライフワーク」とし、「日本が核兵器国と非核兵器国の間の議論を促進する」とした。海外の研究機関やシンクタンクに核軍縮を議論する場をつくってもらうために30億円を投じることも表明した。
  ウクライナ侵攻を続けるロシアには「国際法、『法の支配』を蹂躙(じゅうりん)している。力または威圧による一方的な現状変更は、世界のどこであれ、認められない」と強く非難した。国連安保理の常任理事国でもあるロシアが拒否権を発動し、安保理が役割を果たせていないことを念頭に、「国連の分断・対立を悪化させる拒否権の行使抑制の取り組みは、安保理の強化、信頼回復につながる」と主張。「常任・非常任理事国双方の拡大が必要だ」などと国連改革を訴えた。

  演説では、北朝鮮による拉致問題などの解決に向け、金正恩(キムジョンウン)総書記との対話にも改めて意欲を示した。
  首相は「不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指すという方針は不変だ」と強調。「条件を付けずにいつでも金正恩委員長に直接向き合うとの決意を伝え、首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と述べた。(ニューヨーク=西村圭史)


2023.09.14-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230914-SIBSJ6TA4VJ5RJUXHJ4X7OWDLQ/
(前)2年間、国民の声聞いた まだ道半ばだ

  岸田文雄首相は13日、内閣改造にあわせて首相官邸で記者会見に臨んだ。冒頭発言の要旨は次の通り。

  この2年間は、国民の声を丁寧に聞き、協力しながら、新しい時代の扉を開いていく。そうした取り組みを進める毎日だった。2022年2月には、ロシアがウクライナに侵攻し、国際的な物価高が進んだ。物価高に対する総合的な対策を進めるとともに、民間企業には、物価高に負けない、高い水準の賃上げをお願いした。今年の春闘の賃上げ率は3・58%と、30年ぶりの高い水準となった。最低賃金についても、過去最高の引き上げとなり、全国加重平均で、1004円となった。
  経済政策では、脱炭素化やデジタル化などの国内投資を拡大しながら、成長と分配の好循環を実現する新しい資本主義の取り組みを進めてきた。産業界の見通しによれば、今年は設備投資が100兆円を超え、過去最高になる見通しだ。エネルギー、環境政策も大きくかじを切った。
  外交面では、ロシアによるウクライナ侵略により、法の支配に基づく、自由で開かれた国際秩序が危機にひんしている。東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや、北朝鮮による核、ミサイルの脅威も増大している。国民の安全と生活を守り抜くため、防衛力の抜本的強化に踏み出す決断もした。
  わが国の外交力を一層高めるべく、首脳外交にも全力で取り組んでいる。今年5月にはG7広島サミット(先進7カ国首脳会議)を開催し、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、G7諸国が一致団結して、取り組む方針を確認した。8月には(米国の)キャンプデービッドで、日米韓首脳会議を開催し、3カ国のパートナーシップの新時代を開いていく決意を内外に示した。
  この2年間を通じて、新しい時代の息吹が確実に生まれつつある。しかしながら、まだ、道は半ばだ。なぜならば、われわれの前に流れている変化の大河は、まさに100年に1回ともいえる時代を画するものだからだ。
  国際社会のパワーバランスは劇的に変化をしている。AI(人工知能)の進展など、技術の変化は加速度を増している。世界の経済を取り巻く状況も急速に変化しつつある。この変化の大河を、乗り越え、わが国の安心と豊かさを次の世代にバトンタッチする。目の前の変化を前にして立ち止まることは許されない。
  変化を力にする日本。目の前に広がる大きな変化を、新しいチャンスに変えていく。雇用者のリスキリング(学び直し)、スタートアップ企業の支援、デジタルの力を活用した地方の成長、脱炭素技術を生かした新しい産業作り、子供・子育て政策の充実。変化をチャンスとして力に変えていくため、政府は総力を挙げていく。
  国際情勢の変動にも、たじろいではいられない。わが国こそが成長するインド太平洋の安定軸となり、世界をリードする。世界の多くの国は、そうした役割を日本に求めている

  この内閣は、「変化を力にする内閣」だ。明治維新、戦後復興など、わが国はこれまでも変化をチャンスとし、チャンスを力にしてきた。こうした歴史がある。
  大きな変化を前に、当時は実現不可能と思われた経済成長や、豊かな社会作りを実現した歴史がある。変化を力として、閉塞(へいそく)感を打破し、明日は今日より良くなる。誰もがそう思える国づくりを、一緒に行っていこうではないか。
  国づくりに向け引き続き、経済、社会、外交・安全保障の3つを政策の柱として、強固な実行力を持った閣僚を起用した。
  まず第1の柱は経済だ。成長と分配の好循環を実現するため、バブル崩壊以降、30年間続いてきたコストカット経済を脱却し、賃上げ、人への投資の促進、研究開発投資を強化するといった、攻めの経済への転換が少しずつ動き始めている。この動きを着実なものとするため、まずは足元の物価高に対応しなければならない。
  ガソリン補助金の継続を含め、国民生活を応援する大胆な経済政策を実行していく。若い世代の所得向上のための年収の壁を打ち壊していく。

  新しい資本主義に向けた取り組みを加速し、物価上昇率プラス数%の賃上げを継続的に実現するための政策や、官民連携により、150兆円規模の投資を誘引するための取り組み、さらにはAIやスタートアップなど、将来の成長基盤の整備を進め、デフレからの脱却を確実なものとしていく。
  第2の柱である社会については、2030年までが少子化トレンドを反転させるラストチャンスであり、まずは、先般、閣議決定した「こども未来戦略方針」に基づき、次元の異なる少子化対策を早期に実施すべく、必要な制度改革の法案を、次期通常国会に提出する。
  第3の柱である外交・安全保障に関しては、G7や(日米豪印4カ国の戦略的枠組み)クアッド、日米韓など、さまざまな枠組みを活用しながら、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化に向けて取り組んでいく
  政府・与党が力を合わせ、先送りできない課題に正面から取り組んでいく。


2023.09.13-日本経済新聞-https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA12C570S3A910C2000000/
岸田改造内閣、派閥順送り鮮明 「待機組」を9人起用-女性は過去最多5人

  岸田文雄首相(自民党総裁)は13日の内閣改造で閣僚19人のうち13人を入れ替えた。入閣適齢期の議員を指すいわゆる「待機組」を9人起用する派閥順送り鮮明だ。2024年秋の総裁選での再選を見据え、挙党体制を意識した。

  初入閣は11人でこのうち9人を待機組が占めた。衆院当選5回以上、参院当選3回以上で閣僚経験がない議員を待機組と呼ぶことが多い。自民党内で70人ほどいる。
  最大派閥の安倍派からは衆院当選6回の宮下一郎氏が農相、鈴木淳司氏が総務相に就いた。麻生派では参院当選5回の武見敬三氏を厚生労働相、衆院当選7回の伊藤信太郎氏が環境相になった。第3派閥の茂木派からは木原稔氏と松村祥史氏の2人が入閣した。19ある閣僚ポストの配分からも各派への配慮がみえる。岸田派は第4派閥であり、安定した政権運営には他派閥の協力が欠かせないためだ。安倍派と麻生派がポストを4つ、茂木派は3つ、岸田派と二階派はそれぞれ2つ獲得した。首相は今回の人事を通じ党総裁選で再選する地ならしを狙ったとの声がある
  女性閣僚は改造前の2人から過去最多の5人に増やした。留任の高市早苗経済安全保障相に加え、外相、こども政策相、復興相、地方創生相のポストに充てた。自民党役員人事では小渕優子氏が選挙対策委員長に就いた。
  主要7カ国(G7)の議長国とあって国際舞台での発信機会が増えた。閣僚経験もある上川陽子氏を外相に据えて日本の変化を示そうとしたとみられる。政権の看板である子ども・子育て政策の担当には衆院当選3回の加藤鮎子氏を抜てきした。
  小倉将信前少子化相は6月のG7男女共同参画・女性活躍担当相会合で、唯一の男性だった。一部の海外メディアなどから取り組みの遅れを指摘された経緯もある。男女格差に関する23年版の国際ランキングで、日本は146カ国中125位と過去最低に沈む。
  岸田政権は女性の活躍を促す政策を打ってきた。東証プライム上場企業について30年までに女性役員の比率を30%以上にする数値目標も定めた。今回の改造で女性閣僚の比率は26%にとどまる。女性閣僚を巡っては自民党内で適任者探しが難航したとの見方がある。外交や経済安保といった政権の重要課題にベテランの上川氏と高市氏を使い、ほかの3つのポジションは若手や待機組に割り当てた。
  首相を含めた新内閣の閣僚の平均年齢は63.5歳となり、前回改造時の62.65歳を1歳弱上回った。この5年間で平均年齢は最も高い。40代は加藤氏と地方創生相の自見英子氏の2人。今回の布陣で60代が9人と最も厚い。70代は復興相の土屋品子氏、厚労相の武見氏ら7人いる。


2023.09.12-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230912-OTFDUMY2EFD2VFIV4ITID7N6OY/
<速報>第2次岸田再改造内閣の顔ぶれ

  岸田文雄首相は12日、13日に実施する内閣改造で、加藤鮎子衆院議員をこども政策担当相に起用することを決めた。加藤氏は初入閣。また、河野太郎デジタル相、高市早苗経済安全保障担当相はそれぞれ留任させる。また、伊藤信太郎衆院議員を環境相、盛山正仁衆院議員を文部科学相にそれぞれ起用する。宮下一郎元内閣府副大臣を農林水産相、鈴木淳司衆院議員を総務相にそれぞれ起用することも決めた。4氏はいずれも初入閣となる。

第2次岸田再改造内閣の顔ぶれ

総理 岸田 文雄(きしだ ふみお) ・ 環境 いとう しんたろう 伊藤信太郎 ・ 総務 すずき じゅんじ 鈴木 淳司 ・ 防衛 きはら みのる 木原 稔 ・ 法務 こいずみ りゅうじ 小泉 龍司 ・ 官房 まつの ひろかず 松野 博一 ・ 外務 かみかわ ようこ 上川 陽子 ・ デジタル こうの たろう 河野 太郎 ・ 財務 すずき しゅんいち 鈴木 俊一  ・ 復興 つちや しなこ 土屋 品子 ・ 文部科学 もりやま まさひと 盛山 正仁 ・ 国家公安 まつむら よしふみ 松村 祥史 ・ 厚生労働 たけみ けいぞう 武見 敬三 ・ 経済再生 しんどう よしたか 新藤 義孝 ・ 農林水産 ・ みやした いちろう 宮下 一郎 ・ こども政策 かとう あゆこ 加藤 鮎子 ・  経済産業  にしむら やすとし 西村 康稔 ・ 経済安保  ・ たかいち さなえ 高市 早苗 ・ 国土交通  ・ さいとう てつお 斉藤 鉄夫  ・ 地方創生  じみ はなこ 自見 英子


2023.09.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230903-TLRRFAAODRMMJGK73ZMOGRAABM/
入閣待機組の処遇が人事の焦点に 農水相失言
(大橋拓史)

  岸田文雄首相が月内に行う内閣改造・自民党役員人事では、党内各派が抱える「入閣待機組」の処遇も焦点になる。衆院当選5回以上、参院当選3回以上で閣僚経験のない待機組を入閣させられるかは、派閥領袖(りょうしゅう)の手腕の見せどころだ。もっとも人事を前に、かつて待機組だった野村哲郎農林水産相の「汚染水」発言が政権の足を引っ張っており、待機組を登用するリスクを露呈している。

  野村氏は1日の記者会見で、「福島をはじめ関係者の皆さまに不快な思いをさせて申し訳なかった。こういう気持ちでいっぱいだ」と重ねて陳謝した。
  野村氏は令和4年7月の参院選で4選を果たし、同8月の改造で初入閣した。茂木派(平成研究会)に所属し、鹿児島県出身の農政通として知られ、念願の農水相ポストを獲得した。
  ただ、今年8月に東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を巡り、中国が日本産水産物の全面禁輸に踏み切った際、記者団に「大変驚いた。まったく想定していなかった」と発言。続けて「処理水」を「汚染水」と言い間違えた。自身が認める「ときどき口がすべってしまう恐れ」が現実のものとなった。
  待機組の登用には同様のリスクがつきものだ。平成31年4月には、桜田義孝五輪相(当時)が「震災からの復興」より議員が「大事」と発言するなど失言が相次ぎ、辞任に追い込まれた。同29年4月には、今村雅弘復興相(同)が東日本大震災は「東北でよかった」と語り更迭された。両氏とも、長年入閣が見送られてきた待機組からの登用だった。
  一方、所属議員のポストの獲得が自身の求心力に直結する派閥領袖にとっては、待機組の入閣はなおざりにできない課題だ。首相も安倍晋三政権下で岸田派(宏池会)の会長として、待機組を閣内に押し込むのに腐心した過去を持つ。
  内閣支持率が低迷し、野村氏の失言がさらなるダメージとなる中、首相は派閥の意向に配慮した人事を行うのかどうか。党内の支持基盤が強くない首相にとって、難しい判断を迫られそうだ。
(大橋拓史)


2023.05.29-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230529-YSMWW5XNEZI7FNWUO5OFIE5B6Q/
岸田首相の長男、翔太郎秘書官を更迭 公邸内の不適切行動に批判

  政府は29日、首相公邸内で親族と記念写真を撮るなど不適切な行動が批判された岸田文雄首相の長男の翔太郎首相秘書官(政務担当)が6月1日付で辞職し、後任に山本高義元首相秘書官を充てる人事を発表した。事実上の首相による更迭となる。6月21日の今国会会期末が迫り、重要法案の審議が残っている中、政権運営へのダメージ回避を図ったとみられる。

  26日の参院予算委員会では、立憲民主党の田名部匡代氏が「公私混同がはなはだしい」と追及。首相は「公邸内には迎賓機能や執務機能を有する公的なスペースがあり、不適切な行動だった」と陳謝し、本人に厳重注意したと説明した。更迭は否定していた。
  ただ、与党からも「大変遺憾だ」(公明党の石井啓一幹事長)などと批判が出ており、更迭が不可避な情勢となった。
  首相は2月にも、LGBTなど性的少数者に対する差別発言をした当時の首相秘書官、荒井勝喜氏(経済産業省出身)を交代させた。今年、首相秘書官2人を更迭する異例の事態となった。


2023.05.06-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230506-XPAB5YZHAFMKDBJMQAYIUAPRUA/
爆弾の殺傷能力焦点、殺人未遂容疑も視野 首相襲撃再逮捕

  岸田文雄首相の演説会場に爆発物が投げ込まれた事件で、和歌山県警は6日、兵庫県川西市の無職、A容疑者(24)を再逮捕した。今回適用したのは無許可で火薬を製造したとする火薬類取締法違反容疑。A容疑者が黙秘を続ける中で、客観証拠で裏付けられる手堅い行為から立件した印象だ。今後の焦点は使用された自作の「パイプ爆弾」に殺傷能力があったかどうか。鑑定結果によっては殺人未遂容疑も視野に入る。

  捜査関係者によると、A容疑者は現場となった和歌山市の雑賀崎(さいかざき)漁港の演説会場にパイプ爆弾2本を持ち込んだ。爆発したのはうち1本で、パイプ本体とみられる部品は投げ込まれた場所から約40メートル離れた倉庫近くのいけすの網から発見された。さらにその約20メートル先のコンテナには爆弾の蓋とみられる破片が突き刺さっており、いずれも爆発によって相当な初速で吹き飛んだとみられる。
  もう1本は爆発せずに現場に残っており、黒色火薬とみられる粉末が詰め込まれていたことが分かっている。和歌山県警はこの1本の内容物を精査、複製品を作った上で爆発の再現実験を行い、殺傷能力を調べる方針だ。
  今後の捜査の行方について「パイプ爆弾の殺傷能力が最大のポイントになる」と話すのは、甲南大の園田寿(ひさし)名誉教授(刑事法)。仮に殺傷能力があると客観的に判断された場合、A容疑者がその威力を認識していれば、殺人の故意があったという立証に近づく。
  ターゲットを絞り込む「銃撃」という手法と違って、爆発物を投げ込めば、複数人が巻き込まれるのが通常だ。園田氏によれば、岸田首相を狙って投げて首相以外の周囲の人間が負傷した場合でも、「何人かは巻き込まれるだろう」と容疑者が認識していれば、複数人に対する「概括的故意」があったとして、首相以外に対する殺人未遂罪に問うことも可能という。
  A容疑者は被選挙権年齢を25歳以上とする現行の選挙制度に不満を抱き、国家賠償請求訴訟を起こしていたことが分かっている。自ら作成した訴訟の準備書面などでは政権批判も繰り返していたが、逮捕後は黙秘を貫き、事件の動機は語っていない。
  園田氏は容疑者の精神状態を解明するため、今後鑑定留置が行われる可能性も指摘。「選挙制度や政治に不満があってなぜ首相を襲撃しようとなるのか。刑事責任能力の有無は当然問題になるだろう」とみる。


2023.04.19-Yahoo!Japanニュース(朝日新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/d9daed03e360298ff22441c120a3cddb67d227a5
首相襲撃爆発物 破片60メートル先コンテナに 和歌山県警押収
【駒木智一、大塚愛恵、高良駿輔】

  岸田文雄首相が和歌山市の衆院補選の応援演説会場で爆発物を投げつけられた事件で、筒状の爆発物に付いていたとみられる破片が現場から約60メートル先のコンテナで見つかっていたことが、捜査関係者への取材で判明した。爆発物のふたとみられ、コンテナの側面に突き刺さった状態だったという。和歌山県警はこの破片を押収して詳しい分析を進めるとともに、爆発物の威力を調べている。

  この事件では無職のA容疑者(24)=威力業務妨害容疑で逮捕=が15日午前11時25分ごろ、和歌山市の雑賀崎(さいかざき)漁港でパイプ爆弾とみられる爆発物を演説会場に持ち込み、約10メートルの距離から岸田首相を狙って投げつけたとされる。A容疑者は現場で地元漁師らに取り押さえられた。
  県警によると、A容疑者が爆発物を投げ込んだとされる現場から南東約40メートルにあるいけす(高さ約3メートル)の網の上で、破損した筒が見つかっている。そばにある倉庫の壁には何かがめり込んだ跡があるのも分かっている。
  捜査関係者などによると、県警が現場周辺を詳しく調べた結果、さらに約20メートル先のコンテナ(高さ約2・3メートル)の側面に金属の破片が突き刺さっていたことが判明した。爆発した筒に付着していたふたの可能性が高く、県警が18日に押収したという。このコンテナはA容疑者が爆発物を投げ込んだとされる場所から南東に約60メートルの位置にある。
   コンテナの側面には、地上から約2メートルの位置に直径数センチの穴が残されていたことも判明。地元漁協の幹部らも立ち会い、破片がめり込んでいるのを確認したという。幹部は取材に、県警の捜査員から「これまで見つかっていなかった爆発物のふたとみられる」との説明を受けたと証言した。
   事件当時は会場に約200人の聴衆が集まっていた。爆発に伴って破損した筒やふたが聴衆の間を通過していった可能性があり、県警が詳しい状況を確認している。会場では男性警察官が軽傷を負ったほか、聴衆の70代男性も背中に擦り傷が確認されている。【駒木智一、大塚愛恵、高良駿輔】


2023.04.18-ytv news(読売新聞)-https://www.ytv.co.jp/press/kansai/detail.html?id=d59b40327e2c40579c1a6db6745ae5a1
“首相襲撃”男は選挙制度に不満、立候補できず国を提訴 警察は海中で爆発物の破片を捜索 足取りは…

  和歌山市で、岸田首相の演説直前に爆発物が投げ込まれた事件で、逮捕された兵庫県川西市のA容疑者(24)が、昨年、国会議員の選挙制度に不満を持ち、国を相手に裁判を起こしていたことがわかりました。

事件発生から3日がたった18日。現場では、新たな動きが…
  古井林太郎記者「現場では警察による海中の捜索活動が続いています。爆発物の破片などを探していると見られます」  警察のダイバーらが、現場のすぐ横にある海に入り、爆発物の破片を探す作業を始めました。
  岸田首相の演説会場で起こった爆発。投げ込まれた爆発物は、衝撃で聴衆を飛びこえ、約40メートル先で、筒状のものが見つかりました。近くの小屋の壁には、大きなへこみが見つかり、爆発物が当たってできた可能性もあります。
  警察はこの日、さらに奥の方へと範囲を広げて、遺留品を調べていました。破片をすべて集め、場所や形状を把握することで、どの程度の威力があったのか確認するのが狙いです。一方で、現場で落ちていたA容疑者のリュックサックについては、押収したものの、爆弾が入っている恐れがあり、まだ、中を確認できていないということです。  17日、身柄を検察庁に送られたA容疑者。
  小学校・中学校の同級生は-。小・中学校の同級生「すごくまじめでおとなしい性格でした。小学生の時より、おとなしくなっていると思います」  中学校に入り、目立たなくなったといいます。逮捕後は、黙秘を続け、事件について何も語られていません。  
  そんな中、新たな事実が判明しました。A容疑者は、昨年6月、神戸地裁に裁判を起こしていました。裁判資料からわかるのは、国の選挙制度への不満。  
  A容疑者は、昨年7月に行われた参議院選挙に、立候補しようとしたものの、被選挙権をみたさず立候補できなかったことで、精神的苦痛を受けたとして、国に対し10万円の損害賠償を求めていました。
  訴えは退けられ、大阪高裁に控訴しましたが、昨年12月に提出された書面では、こんな主張を。「投票行為が抑制され、既存の政治家は国民に信任を得ずとも、“統一教会”などの組織票で当選し、利益を不当に独占し、国民に損害を与え続けている」 - さらに、安倍元首相の国葬にも触れ、「反対多数の中で強行した」と、岸田内閣を批判していました。
  また、昨年9月には、A容疑者とみられる男が、当時の兵庫・川西市議会議員の市政報告会に参加し、被選挙権について「憲法違反だ」と、話していたこともわかりました。  市政報告会に参加した人「若い子が珍しく来ているなという感じがあった。若い子なのにしつこく聞かれるなというのが正直な感想」  
  A容疑者の自宅があるのは、報告会が行われた兵庫県川西市。事件現場までは、どのように移動したのでしょうか。
  神田貴央記者「ここ南海和歌山市駅では、事件が起きる約1時間前、A容疑者に似た男が、改札を通る姿が映っていたということです」  私たちの取材では、南海電鉄和歌山市駅の防犯カメラにA容疑者とみられる人物が映っていたことがわかっています。駅近くのスーパーマーケットには、よく似た人物が、店内をウロウロする様子が……。
  その後、事件の30分ほど前に、演説会場近くのバス停で、よく似た人物が見かけられていました。見かけた住民「バス停で降りて、スマホ見ながら階段を下りて行った。全然、迷うことなく」  そして……。  
  古井林太郎記者「A容疑者は、この細い道を下りてきた後、200mほど先にある岸田首相の演説会場へと向かったと見られます」  その演説会場へと続く道では、複数の防犯カメラにA容疑者とみられる男が映っていました。中には、岸田首相を乗せた車列を追うかのように、警察官の背後を通っていく姿も……。
  その約15分後、事件が起きました。動機の解明が焦点となる一方で、事件現場は近年、要人警護が行われた実績のない場所だったことが、新たにわかりました。事件を未然に防げなかった当日の警備態勢について、すみやかに検証を進めることが求められています。


2023.04.18-dmenuニュース-https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/dot/politics/dot-2023041800072?fm=ranking
「火炎瓶なら一発アウト」岸田首相襲撃事件を要人警護のプロが語る「一番の問題は犯行を未然に防げなかったこと」
(編集部・渡辺豪)

  選挙の応援演説中の政治家がまたもや標的になった。要人警護の課題にとどまらず、選挙演説の在り方や、国民の危機管理意識も問われている。

  衆院補選の応援演説のため和歌山市の雑賀崎漁港を訪れた岸田文雄首相を襲った爆発事件。警察官と聴衆の男性が軽傷を負い、兵庫県川西市の無職、A容疑者(24)が威力業務妨害容疑で逮捕、送検された。
  「パイプ爆弾がすぐに爆発しなかったのが不幸中の幸い。火炎瓶だったら一発アウトでした」 こう警鐘を鳴らすのは、さいたま市に本社のある危機管理コンサルティング会社「セーフティ・プロ」代表取締役で危機管理コンサルタントの佐々木保博さん(65)だ。
  A容疑者が投げた手製の爆発物が落下したのは首相の背後。爆発したのは投げられてから約50秒後だった。このタイムラグがあるかないかで、今回の事件の被害規模は大きく変わっていた可能性がある。
■SPの初動は的確だった
  元埼玉県警の刑事で要人警護の経験も豊富な佐々木さんは昨年7月に安倍晋三元首相が奈良市内で銃撃された際、警備に穴が開いた要因として「前日夜の安倍元首相のスケジュール変更」と、要人警護に不慣れな地方が現場だった点を挙げた。
今回はどうか。-「警備体制は私服のSPも含め明らかに増強されていました。岸田首相の背後にSPを配置し、演説場所の前列も関係者で埋めるなど不審者を首相に近寄らせない措置が取られていました。爆発物を投げ込まれた直後のSPの初動も的確で、装備品も有効に使われていたと思います」(佐々木さん)
  今回の岸田首相の全国遊説に際しては、安倍元首相銃撃事件を受けて改正された「新警護要則」に基づき、入念な警備計画が練られたとされる。テレビ映像では、岸田首相のすぐ近くにいたSPが落下した直後の爆発物を蹴り飛ばすのと同時に、携行型の防弾盾を広げて首相の背後を覆いながら迅速に現場から退避させているのが分かる。無駄のない動きが見て取れるが、佐々木さんはこう指摘する。
  「一番の問題は犯行を未然に防げなかったこと。この点においては何も変わっていない、と言わざるを得ません」
■日本人の危機意識の低さ
  安倍元首相銃撃事件と共通するのは選挙運動中の政治家が狙われた、という点だ。人の往来が激しい屋外では特に、不審者をチェックして未然に排除するのは難しい。今回の和歌山市での襲撃事件を受けて、演説場所によっては警察が岸田首相らの選挙演説の際、手荷物検査と金属探知機による検査を導入するケースも報道されている。選挙演説の在り方自体、見直す時期に来ているのかもしれない
  その上で、今回の警備対応に全く課題を感じなかったわけではない、と佐々木さんは言う。
  A容疑者は犯行後、すぐ近くにいた地元の漁業者に取り押さえられた。この際、A容疑者の手には別のパイプ爆弾などが握られていた。直後に容疑者を取り押さえられていなければ2発目が投げられていた可能性は高かった。その意味でも、瞬時に身柄確保に動いた人がいたことと、SPもすぐに加わったのは良かった。佐々木さんが課題を感じたのはその後だ。
  「容疑者に覆いかぶさる際、リュックの中に爆発物が入っていることも念頭に置き、リュックはすぐに容疑者から引き離すべきだったと思います」 リュックサックには爆発物とみられる複数の筒が残されていたことも分かっている
  佐々木さんはパイプ爆弾が投げられた後の聴衆の行動にも警鐘を鳴らす。「私服のSPが後ろに下がるよう呼び掛けていましたが、中にはスマホで撮影する人もいました。爆発規模が大きければ負傷者がさらに増えたことも予想されます。これは警備の問題というよりも、日本人の危機管理意識の低さが反映されていると思います」
  その気になれば誰もがネットの情報をもとに銃や爆発物を作れる時代。これまでとは異なる個々の危機管理能力が求められている。
(編集部・渡辺豪)







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