日本の首相-3(管・安部・小泉)-1


2024.07.09-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240708-RF7BXXWJXFJJ3HMM3JWNBFOCII/
犯罪誘発するネットの銃情報、規制手探り 改正銃刀法成立 安倍元首相銃撃2年
(藤木祥平、中井芳野、大渡美咲)
(聞き手 山本考志)

  8日で発生から2年となった安倍晋三元首相銃撃事件では、A被告(43)=殺人罪などで起訴=がインターネット上の情報を基に銃を自作していたとされる。政府は銃器関連情報の拡散に歯止めをかけるため、先の国会で銃刀法を改正。ネット上などで銃所持をあおるような行為を罰則対象としたが、匿名性の高い闇サイトを含め、犯罪を誘発する有害情報を取り締まるのは容易ではない。

  令和4年7月の参院選に際し、奈良市で街頭演説中の安倍氏を襲ったのは、金属製の筒を複数組み合わせた長さ約40センチ、高さ約20センチの手製銃だった。
  奈良県警は山上被告の自宅から犯行に使われたものと酷似した手製銃数丁とともに、はかりや工具類、ミキサーなどを押収した。被告はインターネット動画などを参考に銃を自作したとされる。
ネットで所持あおる投稿に罰則
  事件後、警察当局は規制を強化した。銃刀法で規制する「銃砲」は「拳銃等」「猟銃」「その他装薬銃砲など」の3類型に分けられ、法定刑の上限が無期懲役の発射罪を適用するのは、これまで拳銃等に限定。事件で押収された手製銃7丁のうち6丁は拳銃等、1丁はその他装薬銃砲などに分類されたことから、先の国会で成立し、今月14日から施行される改正法では、発射罪の適用範囲を全てに拡大した。
  猟銃やその他装薬銃砲などの所持罪も人の殺傷を目的とした場合、罰則を拳銃等と同じ「懲役1年以上10年以下」と重くした。
  また改正法では、不特定多数に向けて銃の製造方法を解説した動画を投稿したり、「拳銃を販売する」などとうたって価格を示したりする行為に「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」を科すとした。
  ただ銃の製造方法が闇サイト「ダークウェブ」などですでに拡散されている可能性もある。有害情報は海外のプロバイダーなどを通じて発信されているケースも多い。
  日本大危機管理学部の福田充教授は「国内から発信された投稿への抑止力は期待できるが、海外サイトまでの規制は難しい」と指摘。「ダークウェブなどでのやり取りは発信元の特定が困難だ。警察組織の限られた人員では取り締まりにも限界がある」と話した。
  ある警察幹部は法改正について「不用意な情報の発信はしづらくなるため、一定の効果は期待できる」としつつ「闇サイトでは証拠がすぐに消えてしまうケースもあり、難しい部分もある。サイバー捜査や広報啓発にも一層力を入れなければならない」と強調した。
事件機に相次ぎ厳格化
  銃刀法を巡っては過去にも、規制対象外の刃物などを凶器とした重大事件の発生を契機に、銃やナイフなどの規制を強化する法改正が相次いで行われてきた。
  今回の改正では、インターネット上で銃所持をあおる行為への罰則を新設。加えて、令和5年5月に長野県で警察官が猟銃などによって殺害された事件を受け、ハーフライフルについては、より射程が長いライフルと同程度に所持許可の基準を厳格化した。また電磁石の磁力で弾丸を発射する「電磁石銃」(コイルガン)の所持が原則禁止となるため、警視庁は無償で回収している。
  過去にも事件が契機となって規制強化が行われている。平成20年6月8日に東京・秋葉原の歩行者天国で7人が死亡し、10人が重軽傷を負った無差別殺傷事件では、刃渡り約13センチの両刃のダガーナイフが凶器として使用された。警察庁は短刀の規制を検討し、事件翌年の21年1月、刃渡り5・5センチ以上の両刃の刃物を所持することを禁じる改正銃刀法が施行された。
  また、令和2年6月に兵庫県宝塚市で4人が殺傷されるなど、クロスボウ(洋弓銃)が凶器となる事件が続発したことを受け、4年3月に改正銃刀法が施行された。それまで銃刀法で規制対象外だったクロスボウの所持が原則禁止となり、都道府県公安委員会の許可を受けなければ持っているだけで違法となった。(藤木祥平、中井芳野、大渡美咲)

国際的枠組み必要 東京都立大の星周一郎教授(刑法)
  正銃刀法で、銃の製造・所持をインターネット上で不特定多数にあおる行為が、規制されることになった。爆発物や火薬の製造については対象外だが、規制に関わる武器等製造法や火薬類取締法などは関連業界に安全の確保を求めるもので、犯罪捜査を目的としていない。爆発物や火薬に関するネット上の投稿についても、銃刀法で一括して規制対象とすべきだ。
  銃や爆発物の製造情報を巡っては近年、ネット上で情報を集めて質問に回答する生成人工知能(AI)に対する懸念も高まっている。生成AIの悪用を各国が単独で規制するのは難しく、運営側の自主規制にとどまっており、違法薬物や児童ポルノと同様に国際的な規制の枠組みが必要だ。
  欧州連合(EU)では5月、世界で初めて包括的にAIを規制する法律が成立し、リスクに応じてAIを分類して利用を禁じたり、監視したりする規定ができた。こうした国際的な規制の実効性を高めるためには、巨大IT企業を抱える米国の加盟が欠かせない。各国がテロ対策をてこに、国際的な協調関係を築く必要がある。(聞き手 山本考志)


2024.07.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240703-M3ETSGOCTVJRLBFJVFNF2I6ZXM/
安倍元首相銃撃2年 奈良市が現場の献花台設置を許可

  奈良市は3日、自民党県連に対し、安倍晋三元首相の銃撃事件が発生した近鉄大和西大寺駅北口での献花台設置を許可した。

  設置は7、8の両日。市によると、献花台の設営場所や警備員の配置などについて奈良県警も交えて協議を行ったという。


2024.06.23-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240623-HJJKAHHQ3JNOHOSKC3JSBAXXBM/
菅義偉前首相「派閥解消が必要」と存続の麻生派を牽制 石破茂氏を「期待できる」と評価

  自民党の菅義偉前首相(すがよしひで)は23日公開のインターネット番組で、岸田文雄首相が派閥解消を主導した後も存続する麻生派(志公会)を牽制した。「党全体として派閥を解消する。全ての派閥が一緒になって実行することが必要ではないか」と述べた。

  「ポスト岸田」候補の評価も披露した。茂木敏充幹事長は「大変な状況の中で党運営をしっかりやっている」と紹介。石破茂元幹事長は「期待できる方だ」と持ち上げ、自民を再建できる候補の一人かと尋ねられると「そう思う」と認めた。
  小泉進次郎元環境相に関しては「改革意欲」、河野太郎デジタル相は「突破力」をそれぞれ評価した。菅内閣で官房長官を務めた加藤勝信氏についても「仕事をきちんとできる人」と指摘した。
  一方、自身が今後、政権の要職に就く可能性を問われると「考えていない」と否定した。


2024.06.19-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240619-D72LHPCF2RLB7M64WK7YBTCHCU/
A被告に「完全責任能力あり」、精神状態は争わず 安倍元首相銃撃

  安倍晋三元首相銃撃事件で殺人罪などで起訴されたA被告(43)に関し検察側が請求した精神鑑定で「完全責任能力」があるとする結果が出ていたことが19日、関係者への取材でわかった。弁護側が当時の精神状態を争わず、再鑑定の請求を事実上見送ったことも判明。公判開始のめどは立っていないが、被告の成育環境などの情状面や手製銃の殺傷能力の程度を中心的に審理される見通しとなった。

  刑法は、責任能力を完全に失った「心神喪失者」は罰せず著しく能力が低下した「心神耗弱者」は刑を軽くすると定めている。
  関係者によると、弁護側は被告の完全責任能力を認めた鑑定結果を踏まえ、検察側と裁判官の3者協議の場で、無罪や刑の減軽、再鑑定の必要性を積極的に主張していない。一方で他の争点に関しては何度も協議を重ねており、再鑑定の請求を棚上げしたもようだ。公判でも無罪を主張しないとみられる。
  裁判員裁判で審理される見通しで、証拠や争点を整理する公判前整理手続きは既に3回実施被告は、母親が多額の献金をした世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に恨みを募らせていたとされている。


2023.11.26-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231126-AXGJ74SXUBOJHLOIUHM74FHEFQ/
菅直人元首相が反省「大変な判断ミス」 平成22年参院選の消費増税発言

  立憲民主党の菅直人元首相(かんなおと)は26日、東京都内の集会で、民主党政権で首相だった平成22年参院選時に「消費税率10%への引き上げ」を掲げた自身の言動を反省した。「私の大変な判断ミス、失敗で、仲間に苦しい思いをさせた」と述べた。

  菅氏は「全体の絵を描く前に消費税増税と言葉で発したことで『菅内閣は増税する』との誤った印象を強く与えた」とも釈明した。
  22年参院選は、菅氏の発言をきっかけに消費税増税が争点化。生煮えの増税論議と批判を受け、民主党など与党が参院で過半数割れした。「衆参ねじれ」は、下野していた自民党が勢いを盛り返す要因となった。


2023.11.24-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20231124/k00/00m/010/195000c
5政治団体、昭恵氏が継承「晋和会」に計1.8億円移動 安倍氏死後
【大場弘行、黒川晋史】

  昨年7月の銃撃事件で亡くなった安倍晋三元首相の政治資金を管理する政治団体「晋和会」に、安倍氏が関係する五つの政治団体から計約1億8700万円が移されていたことが判明した。晋和会の代表は安倍氏から妻の昭恵氏に交代していた。政治団体や政治資金の親族間の継承は違法ではないものの、課税対象外のため一般の相続と比べて不公平だという指摘がある。専門家は「親族間の継承には課税などのルールを定めるべきだ」としている。

  総務省が24日に公表した政治資金収支報告書や過去の官報などを基に確認した。これらの資料によると、昭恵氏は安倍氏が死去した2022年7月8日付で晋和会と政党支部「自民党山口県第4選挙区支部」の代表に就任。この2団体は安倍氏が関係する6団体の中で資金集めを担っており、22年当初の残金は晋和会で5210万円、4区支部で1億9203万円だった
  晋和会への資金移動は7月27日から始まった4区支部の1億3731万円に加え、後援団体「東京政経研究会」の5000万円が寄付の形で移されていた。他の3団体からも計36万円の寄付があり、総額は1億8767万円に上る
  4区支部は今年1月に解散した。同支部には毎年、政党交付金が党本部経由で1000万円以上支給されており、政党交付金使途等報告書によると、22年当初に2379万円の残高があった。政党支部を解散する際に政党交付金の残金があれば国庫に返還しなければならないが、同支部は人件費を増やしたり事務所費などに充てたりして解散前の22年中に使い切っていた
  一方、晋和会の22年の収入総額は、関連団体からの資金移動に、安倍氏の生前の政治資金パーティー収入なども加えた3億1609万円支出面では人件費に1億2662万円を計上し、例年の2~5倍となっている人件費の内訳は記載義務がなく、詳細は確認できない。22年末時点で1億3587万円の繰越残金がある
  また、晋和会の所在地は議員会館から東京都内の昭恵氏の自宅に移転していた。政治団体も、国会議員の資金管理団体から「その他の政治団体」に変更されている。国会議員の関係政治団体は1万円を超える支出を収支報告書に記載する必要があるが、「その他の政治団体」5万円以上の支出に限定され、資金の公開基準が緩やかになる
  毎日新聞は晋和会に対し、資金移動の趣旨▽人件費の支払先▽今後の活動方針――などについて書面で質問を送ったが、24日夕までに回答はなかった
  引退・死去した国会議員の政治団体や政治資金を親族に引き継ぐことについて、税制上の不公平さのほかに、世襲議員が資金面で有利になるとの指摘がある

  政治資金に詳しい岩井奉信・日本大名誉教授(政治学)「昭恵氏は安倍氏の遺志を引き継いで政治活動を続ける可能性があるが、非課税の状態で資金を集約し、自由に使うのは私物化と言われても仕方ない。政治家個人の資産を親族などが引き継ぐならば、譲渡税や相続税を課すなど、何らかのルールが必要だ」と話した。【大場弘行、黒川晋史】


2023.11.06-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231106-JQQTYY3FHNLM3FNLQ4SM5AMW2U/
A被告「騒ぎ避けたい」 公判前手続き欠席に言及 安倍元首相銃撃事件

  安倍晋三元首相銃撃事件で殺人罪などで起訴されたA被告(43)が、10月の第1回公判前整理手続きを欠席した理由について「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令請求の時期と重なっており、関連付けて報道され騒ぎになることを避けたかった」と話していることが6日分かった。弁護団が明らかにした。

  盛山正仁文部科学相が旧統一教会の解散命令請求を東京地裁に申し立てたのは、第1回手続き当日の10月13日だった。第2回以降の期日は未定で、弁護団は「状況によっては(被告が)出席することもあり得る」と説明した。
 被告は解散命令に向けた動きに関心を示した上で一連の報道に目を通し、弁護団の他、一部の親族と数カ月に1度接見しているが、それ以外は応じるつもりはないという。関係者によると初公判は来年以降となる見込み。


2023.01.10-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20230110/k00/00m/040/049000c
安倍氏銃撃 A容疑者の鑑定留置終了、移送 殺人罪などで起訴へ
【吉川雄飛、川畑岳志、林みづき】

  安倍晋三元首相(当時67歳)が奈良市で演説中に銃撃され死亡した事件で、殺人容疑などで送検されたA容疑者(42)の鑑定留置が10日、終了した。奈良県警は同日、A容疑者を留置先の拘置施設から奈良西署に移送した。奈良地検は鑑定留置中の精神鑑定でA容疑者の刑事責任能力を問えると判断した模様で、勾留期限を迎える13日までに殺人や銃刀法違反の罪で起訴する見通し

  A容疑者を乗せた車は午後2時20分ごろ、大阪市都島区の大阪拘置所を出発した。A容疑者の車を別の複数の警察車両が挟んで移動する厳戒態勢で、午後3時10分ごろに捜査本部がある奈良西署に到着。約20人の署員が混乱を避けるため交通整理などに当たった。
  駐車場で車を降りたA容疑者はめがねをかけ、紺色のパーカに黒いズボン姿。5人ほどの警察官に囲まれ、集まった約80人の報道陣には目をやることもなく、うつむきがちに署内に入った。
  A容疑者は2022年7月8日午前11時半ごろ、近鉄大和西大寺駅北口で参院選の応援演説中だった安倍氏を背後から銃撃したとして、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。安倍氏は同日夕に死亡。県警は殺人容疑に切り替えて送検した。事件で手製の銃や実弾を使用したとして、県警はA容疑者を銃刀法違反(発射、加重所持)容疑でも追送検した。
  捜査関係者によると、A容疑者は母親が入信した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を憎むようになり、教会の活動を国内に広めたのが安倍氏だと考え、銃撃したと供述している。
  地検がA容疑者を殺人罪などで起訴した場合、公判は裁判員裁判の対象になり、刑事責任能力の有無や程度が争点になるとみられている。そのため地検は同年7月25日から始まった鑑定留置で精神科医に依頼し、生い立ちや事件当時の精神状況などを慎重に調べていた。【吉川雄飛、川畑岳志、林みづき】



2022.12.23-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20221224/k00/00m/040/084000c
安倍元首相銃撃のA容疑者、殺人罪で起訴へ 奈良地検

  奈良市で参院選の応援演説中だった安倍晋三元首相(当時67歳)が銃撃され死亡した事件で、奈良地検が鑑定留置中のA容疑者(42)=殺人容疑で送検=について、同罪で起訴する方針を固めたことが関係者への取材で判明した。精神科医による精神鑑定の状況から、A容疑者の刑事責任を問えると判断した模様だ。

  A容疑者の鑑定留置は7月25日から始まり、期限は2023年1月10日。鑑定留置によって停止されていた勾留の期限は同13日までで、地検はその日までにA容疑者を起訴するとみられる。


2022.10.14-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221013/k10013857981000.html
安倍元首相「国葬」費用 12億円台に 事前の概算 下回る見通し

  先月行われた、安倍元総理大臣の「国葬」に実際にかかった費用は、事前の概算を4億円ほど下回る12億円台になる見通しであることが分かりました。政府は14日に国会で与野党に示すことにしています。

  先月27日に行われた安倍元総理大臣の「国葬」の費用について、政府は実施前に16億6000万円程度になるという概算を示し、詳細は実施後に精査したうえで、できるだけ早く速報値を公表するとしてきました。
  政府関係者によりますと、これまでの精査の結果「国葬」に実際にかかった費用の総額は、事前の概算を4億円ほど下回る12億円台になる見通しだということです。
  政府の担当者の1人は、NHKの取材に対し「外国要人を含めた参列者が、当初の想定より減ったこともあり、警備費や接遇費が抑えられた」としています。
  政府は、14日に具体的な内容を公表するとともに、衆議院予算委員会の理事会で、与野党に示すことにしています。
  今回の「国葬」は、世論の賛否が分かれるなか、全額が国費で賄われたこともあり、実際の費用が明らかになることで今後の国会審議でも、その妥当性が焦点の1つとなりそうです。
岸田首相 “費用適切だったかどうかも検証していきたい”
  岸田総理大臣は13日夜、フジテレビのBS番組「プライムニュース」に出演し、実際にかかった費用が事前の想定を下回る見通しになったことを認めた上で「海外から多くの賓客を迎えたが、滞在日数が当初の想定より限定されたことにより、警護費や接遇費が減った。そうした積み重ねによるものだと理解している」と述べました。
  そして「しっかりと今後の議論に資するような形で数字を明らかにし、費用が適切だったかどうかも検証していきたい」と述べました。


2022.10.07-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221007-SZI7PGO2JFNEFNTPY6IMV4ALQU/
教団襲撃への協力求めメール 元教会幹部に容疑者 安倍氏言及なし

  安倍晋三元首相奈良市で街頭演説中に銃撃され死亡した事件で、殺人容疑で送検されたA容疑者(42)=鑑定留置中=が事件の約1年前、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の地元・奈良の元幹部(60)に、教団トップ襲撃への協力を募る趣旨のメールを送っていたことが分かった。安倍氏への言及は一切なかったが、メールに気付いたのは事件後だった。8日で事件から3カ月。元幹部は「早く気付いていれば」と悔やむ。

  これまでの調べや親族への取材などによると、A容疑者の母親は平成3年ごろ旧統一教会に入信。相続した不動産の売却代金など1億円を超える献金を続け、14年に破産した。A容疑者はその後、旧統一教会への恨みを募らせ、教団幹部の襲撃を画策。安倍氏が昨年9月、旧統一教会の友好団体にビデオメッセージを寄せたことで、安倍氏に標的を変えたとされる。
  元幹部によると、A容疑者とは高校時代から10年ほど交流。その後、連絡が途絶えていたが、昨年5月に「アドレスを聞きました」とメールが届き、「教会を憎んでいますか」という趣旨の質問があった。元幹部が否定すると、「もう結構です。この話はなかったことにしてください」と返信があった。
  元幹部はこの時点でやり取りが途絶えたと思っていたが、別のメールが届いていたのを事件後に発見。文面の詳細は明かさなかったが、教団トップの襲撃を示唆するような内容だったという。
  A容疑者はこのメールを送った直後、自身のツイッターにも《統一教会を、(教団トップ)一族を、許せないという思いがあるなら どうか連絡して下さい》と書き込んでおり、同じ内容だったとみられる。
  元幹部は取材に「家庭を壊し、自己破産させた教団を潰さないといけない、という思いに駆られたのだろう。見落とさずに読んでいれば、また展開が違ったかもしれない」と話した。


2022.10.04-Yahoo!Japanニュース(KTV)-https://news.yahoo.co.jp/articles/dcfb8dbd05dd8e669dba48b943a19f1dc4d1b1a9
安倍元首相銃撃現場、慰霊碑設置せず花壇を整備 奈良市長「世論の分断生まぬよう判断」

  安倍晋三元首相が銃撃された奈良市の大和西大寺駅前の現場について、市は4日、慰霊碑やプレートなどは設置せず、現場近くに花壇を整備すると発表しました。  

  安倍元首相の銃撃事件から間もなく3か月。事件現場では4日も、手を合わせる人の姿が見られました。男性「事件後初めてなので、そっと手を合わせた」
  四方をガードレールで囲まれた特異な形状の銃撃現場について、慰霊碑などの設置を検討してきた奈良市の仲川市長は-仲川市長「具体的な構造物等を設置するという形ではなくて、当初の計画通りに歩道と車道を整備する。一方で、実際に事件の起きた現場については、花壇のような形で整備をする」、慰霊碑や事件を伝えるプレートなどは設置せず、その代わりとして、近くの歩道に花壇を作ると発表しました。
  安倍元首相が倒れた現場に向かって手を合わせることができる作りにするといいます。  仲川市長「(安倍氏)一人の政治家の評価ということになると当然、賛成の方、反対の方、色んなお考えの方がおられるので、ある意味その行動自体が、世論の分断を生むという部分もあると感じたところもある」  
  安倍元首相の評価を巡り、賛否が割れている現状に配慮したということです。  
  街の人「別にそんな記念にすることでもないし、いいんじゃないですか道路で」  街の人「道路で踏みつけるのはちょっとなんか…。(かといって)形で残ったらつらいなと思って」  
  今から101年前。当時の原敬首相が殺害された、東京駅の現場は、多くの人々が行き交う、切符売り場のそばにありますが、今も事件を伝えるプレートとマークが残されています。  
  一方、奈良市の判断はー  仲川市長「何かしらの弔意や、何かしらの事件を記憶するような存在が、あると言えばあるし、ないと言えばない。それぞれのお考えによって、受け止められるという形を今回模索した」  事件の記憶をどのようにして後世に伝えていくか。現場の整備は来年の春にも完了するといいます。


2022.10.01-東京新聞-https://www.tokyo-np.co.jp/article/205720
国葬で「感動的」と称賛された菅義偉前首相の弔辞…冷静に読むとにじむ「弱者切り捨て、身内優遇」
(特別報道部・木原育子、中山岳)-(歩)

  安倍晋三元首相の国葬で、友人代表としての弔辞を読み上げた菅義偉前首相。その内容は、首相在任中に発信力不足が批判された菅氏にしては、話しぶりも含め、友人としての思いがこもって感動的だったと評価する声も多いが、果たして手放しで肯定してよいのか、気になる点がたくさんある。感動でごまかされないよう、もう一度じっくりと菅氏の弔辞を見直してみた。(特別報道部・木原育子、中山岳)

  緊張だろう。弔辞を入れた包み紙を机に置く手がかすかに震えていた。日本武道館内の記者席から双眼鏡越しに見た菅義偉前首相の表情は硬く、伏し目がち。静まり返った会場で、誰もが菅氏の言葉を待った。
◆詩的で心地よい「まるで恋文」
  「7月の、8日でした」。聞き慣れた菅氏らしい少し抑揚のない声が、波のようにひたひたと会場に広がった。安倍元首相が亡くなった衝撃のあの日に、一気に引き戻されていく。
  どんな時も「総理」と呼んでいた安倍氏を「あなた」と呼び、「セミ」といった夏の季語から「高い空」「秋の雲」へと、季節の移ろいを表現した文章。予定調和な国会答弁と違い、詩的で心地よく感じた。
  約12分間の弔辞は絶賛された。菅氏に近い自民党の三原じゅん子参院議員はすかさずツイッターを更新し「まるで恋文」と表現。国民民主党の玉木雄一郎代表も「感動しました。あの挨拶で国葬儀に対する印象が変わった人もいるのではないでしょうか」と持ち上げた。近現代日本政治史に詳しい御厨貴みくりやたかし・東大名誉教授は国葬当日夜のテレビ番組で、菅氏の弔辞の後、自然に拍手が湧き起こったことに触れ、「引き込まれた」と称揚した。
  だが、国葬当日の高揚から日を置いて、あらためて文字になったこの弔辞を読むと、ひっかかるところが随所にある
  例えば、読み上げ開始後40秒で飛び出した「あなたならではの、あたたかな、ほほえみに、最後の一瞬、接することができました」という部分。
  奇跡のような話で確かに感動的だが、弔辞によると、菅氏は安倍氏銃撃の知らせを受け、現場の奈良にすぐに駆けつけたという。病室の安倍氏は心肺停止状態のはずだ。その状態でほほえむことはありうるのか。

  医師の木村知氏は「菅氏が到着した時、安倍氏がどういう状態だったか詳細は不明だが、その状況で表情筋が感情で動くことは、医学的見地からは、極めて考えにくい」と話す。ただ、否定もしない。「安倍氏のお友達である菅氏にはきっとそう見えたのでしょう」
◆「よりにもよって」他の人ならよかったの?
  再び弔辞に戻ると、菅氏は「天はなぜ、よりにもよって、このような悲劇を現実にし、いのちを失ってはならない人から、生命を、召し上げてしまったのか」と続けている。
  木村氏は「『よりにもよって』を、漢字で書くと『選りにも選って』。この言葉に、選ぶならほかにもっと適当な人がいるのにとの意を感じる」と述べる。「よりにもよって」との修飾語は「いのちを失ってはならない人から」にかかる。とすれば、「この一文で、他に選ばれるべきだった者、すなわち死んでもかまわない人の存在を認めている。まさに優生思想の考え方そのものだ」と批判する。
  「安倍政権は生産性の有無で人の価値を決め、弱い立場の人を切り捨てる一方、森友・加計学園問題のように身内を優遇する選別政治を行ってきた。この一文を見て、ああ、やっぱりと思う人がいても不思議ではない。『いのちを失ってはならない人』ではなく、単純に、『私の大切な友人』にすれば、何の問題も違和感もなかったのに」
◆事前に作成したのに「たくさん若者」確認は?
  菅氏の弔辞は「武道館の周りには、花をささげよう、国葬儀に立ちあおうと、たくさんの人が集まってくれています。20代、30代の人たちが、少なくないようです」と続く。文面は前もって作ったはずで、菅氏は献花の参列者に若者が多いと確認してアドリブを入れたのかと疑問がわく。
  ともあれ、この「若者のための安倍さん」アピールに不自然さを感じる人もいる。「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)」元メンバーの是恒香琳これつねかりんさん(31)は「現実が見えていないのでは」とにべもない。「献花に訪れた若者もいたとは思いますが、私の周囲は仕事に忙しかったり、台風被害があった静岡にボランティアに行く準備で『国葬どころじゃない』と冷めている人は少なくなかった」
  是恒さんは、安倍政権は就職率の高さを誇り、若者や女性の味方であるかのようなアピールが目立ったと言う。「実際は非正規雇用が多く課題も多かった。政策の中身はおざなりなのに『若者の支持が多い』と政治利用したのが安倍政権だったのではないか。何より選挙の投票率の低さが、政治に失望している若者の多さを表している」

  菅氏は弔辞で、安倍政権の「成果」も並べた。まず挙げたのが環太平洋連携協定(TPP)。他国との交渉に時間をかけるべきだという菅氏に対し、安倍氏は「やるなら早いほうがいい」と考えていたという。菅氏は「どちらが正しかったかは、もはや歴史が証明済みです」と絶賛した。
  ただ、TPPは2016年に日本を含め12カ国が署名したが、17年に米国が離脱。残り11カ国で合意し18年に発効したものの、多くの市民が恩恵を実感したとは言い難い。
  東大大学院の鈴木宣弘教授(農業経済学)は「安倍政権は米国の意向に沿って必死にTPP交渉参加を急いだが、トランプ米大統領が離脱を表明してはしごを外された。米国離脱後の他国との交渉は、日本企業に有利な条項が凍結されるなどした一方、農産物の輸入枠は拡大されて国益を損なう点もあった」と指摘。国内農業への悪影響の検証もないままで、「TPPを正しかったと断じるのは、理解に苦しむ」と批判する。
◆特定秘密保護法も安保法も「正しい判断」
  弔辞のハイライトで飛び出したのは「総理、あなたの判断はいつも正しかった」との言葉。特定秘密保護法、平和安全法制、改正組織犯罪処罰法を挙げ「難しかった法案を、すべて成立させることができました」
  だが、いずれも国会審議中は国論を二分するような反対運動が起き、「自民1強」で採決が強行された法律ばかりだ。それを忘れたかのような賛美一色の弔辞に、評論家の佐高信氏は「自分たちだけが正しいというような独善的な考え、狭さを感じた」と語る。
  佐高氏が特に見過ごせなかったのは、弔辞のクライマックス。菅氏が、安倍氏が読みかけだったという山県有朋を取り上げた本に触れたことだ。「山県有朋と言えば藩閥政治、言論弾圧の象徴だ」。山県の死去時、雑誌記者だった石橋湛山はコラムで「死もまた社会奉仕」と痛烈に批判した。佐高氏は「強権政治の親玉のような山県を持ち出すとは、おめでたい弔辞だ。自民で首相も務めた石橋が批判した逸話を知らなかったのか」と皮肉る。
  駒沢大の山崎望教授(政治理論)は「自民の身内として、菅氏が情感に訴える表現で安倍氏を悼むことは理解できる。だが、国葬の弔辞で安倍政権や政策を賛美するのは危うい。政権の全てを正当化し、異論や反対論を封じることにつながるからだ」とし、こう警鐘を鳴らす。「安倍氏の死を悲しむことと、政権や政策への評価は本来、全く別のはず。それが今回の弔辞では一体化し、まさに政治利用と言わざるを得ない」
◆デスクメモ
  頑張る選手の姿には誰もが感動したが、その裏側に汚職が広がっていた東京五輪。目を赤くして弔辞を読む菅氏の姿と声も、確かに感動的かもしれないが、冷静に読み返してみれば、これだけのひっかかりがある。感動で、安倍氏にまつわる負の記憶を上書きされるわけにはいかない。(歩)







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