日本経済の問題-1


2024.09.24-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240924-LV64HBO7BVOJ5KNMW2DTNE7EIQ/
ヒューリックが東京・赤坂の旧ジャニーズ事務所本社ビルを取得「賃貸で長期的運用」

  不動産大手のヒューリックが6月、東京・赤坂にある「SMILE-UP.(スマイルアップ、旧ジャニーズ事務所)」の本社ビルを、取得していた事が分かった。金額は非公表。ヒューリックは、「賃貸ビルとして長期的に運用する」としており、スマイル社は同ビルを継続してリースし、本社として使用する

  当該ビル(港区赤坂)は、地下鉄千代田線「乃木坂」駅近くの、乃木坂沿いにある三角形の建物。地上6階地下3階で、2001年に竣工(しゅんこう)した。過去にはソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)が保有し、「SME乃木坂ビル」の名称で呼ばれていた。
  スマイル社(当時、ジャニーズ事務所)は2018年2月、SMEからこのビルを取得し、同年7月に本社を移転していた。


2024.05.11-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240511-VIJEA5AZTZJQPIVLZB3VDS5ZEI/
半導体製造装置で中国依存率上昇の懸念 輸出規制で中国内製化、関西企業の投資活況
(桑島浩任)

  半導体関連で大型投資が相次ぐ中、半導体製造装置の分野で高いシェアを誇る関西企業が生産拡大に向けた投資を加速させている。半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に進出したことに加え、生成人工知能(AI)用のサーバー需要拡大や中国の半導体内製化の動きもあり、「需要に追い付いていない」として増産を急ぐ企業が多い。半導体需要が回復するとされる今年後半以降を見据えて市場拡大の波に乗る狙いもある。

  古くから化学製品、繊維などの製造が盛んな関西には、ここ数年で半導体関連が事業の主力に取って代わった企業が複数ある。半導体製造装置のガス流量を制御する計測機器で世界シェア60%を握る堀場製作所はその代表格の一つだ。
  かつては自動車向けの機器が主力だったが半導体向けにシフトし、10年で売上高は2倍以上になり、利益の8割以上を半導体関連が占める京都府福知山市に過去最大となる約170億円を投じて新工場を建設予定で、同社の担当者は「TSMCの進出や中国の需要増で製造装置の需要が上がり、対応しきれなくなっている」とする。
  繊維大手のクラボウも半導体分野に注力する姿勢を鮮明にする。6月に社長に昇格予定の西垣伸二氏は3月の会見で「市場成長以上の拡大を目指す」と強調。同社は製造装置向けの高機能樹脂加工品の生産・開発を担う熊本事業所(熊本県菊池市)に31億円を投じて新棟を建設する。
  バルブ大手のフジキンも今や売上高の大部分が半導体関連大阪府東大阪市に製造装置向けのバルブ機器を生産する工場を55億円を投じて新設する。昨年時点で「人手不足もあり需要増に間に合わず納期が遅くなることがあった」といい、生産工程の効率化の検討も進める。
  製造装置の需要が高まる背景には、半導体需要の回復がある。昨年の半導体市場は、設備投資を控える動きもあり低調に推移した。しかし、生成AI用のサーバー需要の拡大などで最悪期は脱し、今年後半に向けて拡大が予測されている
  日本半導体製造装置協会が今年1月に発表した令和5~7年度の需要予測によると、日本製半導体製造装置関連の売上高は7年度には5年度比で約1・4倍の4兆4383億円になるという。
  一方で懸念されるのが中国依存度の高まりだ。半導体の洗浄装置で世界トップシェアのSCREEN(スクリーン)ホールディングス(HD)は、半導体製造装置部門の売上高の中国比率が4年度の19%から5年度は43%に急上昇した。米国による半導体輸出規制で中国は半導体の国産化を急いでおり、規制の対象とならない旧機種の製造装置の輸入を増やしているためだ。
  東京エレクトロンなど関西以外の半導体装置メーカーでも中国比率が4割前後となっているほか、堀場製作所のような装置向けの製品を手がける企業でも中国比率が上昇している。
  スクリーンHDの担当者は「地政学リスクや事業継続計画(BCP)の観点から依存度が上がりすぎないよう分散していく」としている。(桑島浩任)


2024.03.20-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240319-ZR3ZAKSK6VKC7PMKLUSAFKYURE/
号外-日銀がマイナス金利政策解除決定、利上げは17年ぶり 正常化に向け大転換
(宇野貴文)

  日本銀行は19日の金融政策決定会合で、賃金と物価がそろって上がる好循環の実現が見込めると確認し、大規模な金融緩和策の柱であるマイナス金利政策の解除を決めた政策金利の引き上げは平成19年以来17年ぶり。日銀は約11年に及んだ大規模緩和策の正常化に向けて、大きな転換点を迎えた

  マイナス金利の解除により、短期金利をマイナス0・1%から0・1ポイント以上引き上げ、0~0・1%に誘導する事実上のゼロ金利政策に移行する。
  長期金利を「ゼロ%程度」に誘導し、現在は1%を上限のめどとする長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)も撤廃
するが、金利急騰時には利回りを指定して国債を買い入れる「指し値オペ」などで金利を抑える方針だ。
春闘が追い風
  市場を安定させる目的で続けてきた上場投資信託(ETF)や上場不動産投資信託(J-REIT)の新規購入は停止する。
  日銀はマイナス金利解除の判断に際し、令和6年春闘を「大きなポイント」(植田和男総裁)と位置付けていた。
  連合が15日公表した平均賃上げ率は33年ぶりの高水準となる5・28%を達成した。焦点とされた中小企業も4・42%と32年ぶりの高い水準となり、判断の追い風となったもようだ
  植田氏は19日午後に記者会見し、判断の理由や今後の金融政策運営の考え方について説明する。(宇野貴文)


2023.12.25-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231225-VZHVSVSKD5O63ONNMCVMNXJSAI/
日本の1人当たりGDPはOECDで21位 過去最低順位、G7でも最後尾

  内閣府は25日、2022年の日本の1人当たり名目国内総生産(GDP)がドル換算で3万4064ドルとなり、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中21位だったと発表した。比較可能な1980年以降で最も低い順位となり、先進7カ国(G7)でも08年以来の最下位に沈んだ。円安が大きく響き、金額は前年から約15%下落。円ベースでは448万円だった。

  首位は欧州有数の金融センターを有するルクセンブルクの12万4592ドル。2位ノルウェー、3位アイルランドと続いた。米国は7万6291ドルの5位でG7構成国ではトップ、イタリアが20位だった。このほか韓国が3万2423ドルで22位だった。
  22年の日本の名目GDPは4兆2601億ドルで米国、中国に次ぐ3位の地位は維持した。だが世界全体に占める割合は4・2%で前年から0・9ポイント下落し、過去最低となった


2023.09.22-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230922-72FMNI5IR5OARALB6RGPMET3YA/
日銀総裁、マイナス金利解除も検討 時期明言せず

  日本銀行は22日の金融政策決定会合で、金利を極めて低い水準に抑える現行の大規模な金融緩和策の維持を決めた。植田和男総裁は会合後に記者会見し、政策を変更する際の判断材料として、賃金上昇が「最重要な要素の一つだ」と説明。来年の春闘で賃上げが継続するかどうかを重視し、マイナス金利政策の解除や長期金利操作の撤廃を検討する方針を示した。

  ただ政策変更の時期などについては「経済・物価を巡る不確実性は極めて高く、到底決め打ちはできない」と明言を避けた。
  日銀は、賃金の上昇を伴う形で物価上昇率を2%に安定させる目標を掲げている。植田氏は「実現を見通せる状況には至っていない。粘り強く金融緩和を継続していく」と述べた。



2020.8.17-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200817/k10012570301000.html
4-6月期GDP 年率ー27.8% リーマン後超え 最大の落ち込みに

  内閣府が発表したことし4月から6月までのGDP=国内総生産は、実質の伸び率が、年率に換算してマイナス27.8%でした。リーマンショック後の2009年1月から3月に記録した年率マイナス17.8%を超えて最大の落ち込みとなり、新型コロナウイルスが経済に与えた打撃の大きさを示す結果となりました。
  内閣府が17日発表したことし4月から6月までのGDPの速報値によりますと、物価の変動を除いた実質の伸び率は、前の3か月と比べてマイナス7.8%でした。
  これが1年間続いた場合の年率に換算すると、マイナス27.8%となり、世界的な金融危機につながったリーマンショックのあとの2009年1月から3月に記録したマイナス17.8%を超え、比較可能な1980年以降で最大の落ち込みとなりました。

  項目別にみますと、「個人消費」は、政府の緊急事態宣言などで外食や旅行を控える動きが広がり、マイナス8.2%と比較可能な1980年以降で、最大の落ち込み幅となりました。「輸出」も大きく落ち込んでマイナス18.5%でした。
  これは、アメリカやヨーロッパをはじめ海外経済が悪化したことから、自動車などの輸出が減少したことに加えて、輸出に計上される外国人旅行者の消費が急激に落ち込んだためです。
  このほか、「企業の設備投資」がマイナス1.5%、「住宅投資」はマイナス0.2%となりました。
  一方、物価の変動を反映させた名目のGDPの伸び率も、前の3か月と比べてマイナス7.4%、年率に換算するとマイナス26.4%の大幅な落ち込みとなり、新型コロナウイルスが日本経済に与えた打撃の大きさを改めて示す結果となりました。
西村経済再生相「生活を守ることに全力」
  今回のGDPについて、西村経済再生担当大臣は記者会見で「4月、5月に緊急事態宣言を発し、いわば人為的に経済を止めていた状況なので、こうした厳しい結果になった」と述べました。
  今後については、「引き続き、厳しい状況にある方々への支援を第一に考えて、雇用を守る、生活を守るということに全力をあげていきたい」と述べたうえで、内需主導の形で日本経済を成長軌道に戻したいという考えを示しました。
  一方、今後の経済対策として消費税率の引き下げを検討する考えがあるかと、問われたのに対し、西村大臣は「消費税は全額が社会保障費として全世代型社会保障の改革に活用しているところであり、こうしたことを十分に頭において考えなければならない。今後、さまざまな状況、海外の状況も見ながら、経済運営に万全を期していきたい」と述べました。
麻生副総理「厳しい経済情勢を反映した結果に」
  今回のGDPについて、麻生副総理兼財務大臣は、今夜の記者会見で「新型コロナウイルスが世界的に拡大している中で、緊急事態宣言を出し、外出の自粛などをやらせていただいたこともあって、個人消費が一番落ちた。厳しい経済情勢を反映した結果になったと理解している」と述べました。
  そのうえで、「政策の効果もあって個人消費には少しずつ持ち直しの動きも出ている感じもする。日本の経済を早期に成長に戻していくことが大事だ」と述べ、雇用の維持などに向けて対策を続けていく考えを示しました。
専門家「“2番底”をつけるリスクも」
  ことし4月から6月までのGDPの実質の伸び率が最大の落ち込みとなったことについて、「三菱UFJリサーチ&コンサルティング」の小林真一郎主席研究員は、「予想されていたとはいえ、戦後最悪のマイナス幅を記録したことは大きなショックだった。新型コロナウイルスの感染拡大が日本経済に及ぼした打撃の大きさを改めて確認する結果になった」と述べました。
  今後の見通しについては、「6月に入って個人消費や輸出、生産の指標は改善の動きがみられ7月も続いている。このため、7月から9月までのGDPはプラス幅が小さい可能性はあるが、ほぼ確実にプラス成長に回帰する」との見方を示しました。
  その一方で「8月に入って感染者数の増加が目立ち、景気の動きが再び鈍ってきている。感染拡大が続けば、企業の倒産が増えて失業者も増加する。所得が減少すれば消費の抑制にもつながる。この動きが秋以降も続けば10月から12月のGDPは極めて低い水準、またはマイナス成長となり、いわゆる“2番底”をつけるリスクも否定できない」と述べ、景気の下振れリスクは依然、根強いと指摘しています。
過去の大きな落ち込み
  統計の比較が可能な1980年以降で、GDPが最も大きく落ち込んだのは、これまではリーマンショック後の2009年1月から3月に記録した年率マイナス17.8%でした。
  次いで、消費税率が17年ぶりに5%から8%に引き上げられた2014年4月から6月の年率マイナス7.5%。
  そして、消費税率が8%から10%に引き上げられた去年10月から12月までが、年率マイナス7.0%でした。
  東日本大震災が発生した2011年の1月から3月までは、年率マイナス5.5%で、今回はこうした過去の経済危機などを超える大幅な落ち込みとなりました。
  さらに統計の出し方が違うため、単純に比較はできませんが、石油危機直後の1974年1月から3月の年率マイナス13.1%をはじめ、記録が残っている1955年までさかのぼっても、今回のGDPは最大の落ち込みとなっています。
自民 稲田幹事長代行「状況注視したい」
  自民党の稲田幹事長代行は、国会内で記者団に対し「緊急事態宣言を出し、経済を人為的に止めた側面が大きかった。現金10万円の一律給付が行き渡り、少し消費が上向いているという数字がある一方、失業率など、じわじわと悪くなっているところもあるので、しっかりと状況を注視していきたい」と述べました。
立民 逢坂政調会長「アベノミクスが失敗」
  立憲民主党の逢坂政務調査会長は、「新型コロナウイルスの感染が影響しているのは、当然のことだが、アベノミクスが失敗に終わったことを示すものでもある。政府・与党は、臨時国会を召集し、追加のコロナ対策を迅速に実施するとともに、アベノミクスの失敗を総括し、実効性のある対策を講じるべきだ」というコメントを出しました。
共産 小池書記局長「アベノミクス大失政」
  共産党の小池書記局長は、記者会見で「消費増税の打撃から回復しない状況で、コロナ危機が直撃したということで、アベノミクスの大失政が改めて明らかになっている。こうした深刻な事態のもとでは、暮らしをあたためる抜本的な経済政策が必要だ。臨時国会の早期開会を求める」と述べました。
欧米各国でも歴史的な下落
  新型コロナウイルスの感染拡大によって、ことし4月から6月のGDP=国内総生産の伸び率は欧米各国をはじめ、世界的に歴史的な下落となりました。
  このうち、感染拡大に歯止めがかからないアメリカでは、前の3か月と比べた実質で、年率マイナス32.9%と、四半期の統計を取りはじめた1947年以降、最悪の水準となりました。
  また、ドイツやフランスなどのユーロ圏19か国は、年率マイナス40.3%、イギリスも年率マイナス59.8%となるなど、各地で歴史的な落ち込みとなっています。
  欧米各国では、感染拡大を抑えるため、ロックダウン=都市の封鎖を行っていたため、個人消費や企業の生産、観光などへの深刻な打撃が反映された形です。
  一方、中国では、去年の同じ時期と比べてプラス3.2%となり、ことし1月から3月にマイナスに転じたあと、1四半期で再びプラスを回復しました。
  いち早く経済活動を再開させ、政府による財政出動などで景気を下支えした結果とされますが、感染拡大前の水準には及ばず、回復への力強さを欠く状況が続いています。
政府の名目GDP目標達成 遠のく
  政府は、名目GDPを600兆円まで引き上げる目標を掲げています。
  内閣府のまとめによりますと、直近では去年7月から9月までの名目GDPが、季節的な要因を加味したうえで1年間の金額に換算すると、557兆8360億円となり、この目標に近づいていました。
  しかしその後、GDPの伸び率はマイナスに転じ、去年10月から12月までが549兆6930億円、ことし1月から3月までが、546兆9530億円に減っていました。
  そして、歴史的な落ち込みとなった、ことし4月から6月までは506兆6410億円と、一気に40兆円余り減少しました。
  政府の目標までには、GDPを100兆円近く増やすことが必要で、去年の秋以降、達成が遠のいています。


2023.07.18-日本経済-https://toyokeizai.net/articles/-/686257?page=4
最低賃金「1000円到達」次の目標は7年後に1370円-日本も世界標準「50%・60%ルール」を導入せよ
(1)
  オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼の新刊『給料の上げ方――日本人みんなで豊かになる』が上梓された。
  「いまの日本の給料は、日本人のまじめさや能力にふさわしい水準ではありません。そんな低水準の給料でもガマンして働いている、その『ガマン』によって、いまの日本経済のシステムは成り立っています。でも、そんなのは絶対におかしい」そう語るアトキンソン氏に、日本人「みんな」の給料を上げるために必要なことを解説してもらう。

最低賃金引き上げは失業も倒産も増やさなかった
  岸田首相は、政府と経済界、そして労働団体の代表者による「政労使」の会議の場で、最低賃金の全国加重平均を2022年の961円から、2023年は1000円へ上げる目標を明示し、協力を求めました。この最低賃金1000円という目標は、もともとは安倍政権下の2015年11月24日に開かれた経済財政諮問会議で、安倍首相から提起されたものです。
  当時の最低賃金の全国平均は798円だったのですが、毎年約3%ずつ引き上げ、将来的に1000円にするよう要請されました。この要請に応えるかのように、コロナ禍に見舞われた2020年を除き、最低賃金は年々約3%ずつ上昇してきました。仮に、今年2023年に1000円になると、前年比の引き上げ幅は4.1%になります。
  2023年に1000円になると、安倍政権以降、最低賃金は金額にして251円、1.34倍に上昇することになります。1990年と比べると、最低賃金は484円も上がって、1.9倍になります。
(2)
  最低賃金の引き上げに関しては、以前から日本商工会議所を中心に「失業者が増える」「倒産が増える」などの懸念が示されてきました。しかし最低賃金が1.34倍に上昇したにもかかわらず、倒産件数は増えておらず、失業率は上昇するどころか逆に下がっています。
  事実、2012年度に比べて、企業数は15万社、5.5%も増えています。また、生産年齢人口が減っているのにもかかわらず、雇用は57万人も増えて、労働参加率は最高水準を更新しています(法人企業統計)。
  このような現象が起きているのは、最低賃金を適切に引き上げることで労働参加率が上昇し、失業率が逆に低下するというモノプソニー理論が示唆するとおりです(参考:日本人の「給料安すぎ問題」はこの理論で解ける)。日本においても、まさに理論どおりの結果が表れているのです。
  最低賃金の引き上げに対する「失業者が増える」「倒産が増える」といった反対意見は、まったくデタラメだったのがハッキリしたわけです。日本商工会議所などの引き上げ反対派の人たちには、過去の発言とその後の統計データを検証し、最低賃金に関する考え方を真剣に見直して、今後の発言や見解に関しては、事実に反する感情的な主張や反対意見を控えていただきたいと考えています。
全国一律最低賃金への収束も進んでいる
  日本では都道府県ごとに最低賃金が定められていますが、私は2019年から「全国一律の最低賃金に収束させるべきだ」と主張し続けています。また、同年の2月には自由民主党内で「最低賃金一元化推進議員連盟」が設立されました。
  最低賃金を導入している国の中で、全国一律の最低賃金を採用しているのは83カ国にのぼります(Pew Research)。アメリカ、中国、インドなど、地域ごとに異なる最低賃金を採用している国もないわけではありませんが、それらの国は国土が広いという共通の特徴があります。日本は国土面積が決して大きいほうではないので、これらの国と同様に地域ごとに異なる最低賃金を設ける必要性は見当たりません。
  2006年以降に広がった地方と都心の最低賃金の差は、2019年に最も高い東京と最も低い県との差が、過去最大の223円にまで広がりました。それが2022年には、219円まで縮小しています。また、いちばん高い東京の最低賃金に対するいちばん低い県の最低賃金の比率も、2014年以降、改善し続けています。
(3)
  地方と都心の最低賃金の差が大きくなるほど、地方の人口減少が進むと分析されているので、人口バランスの観点からも、地方と都心の最低賃金の差は、さらに縮小させる必要があると考えています。
「50% - 60%ルール」という世界標準
  さて、めでたく1000円の最低賃金が達成されたとしても、手放しで喜んではいられません。そもそも日本の最低賃金の水準は国際的に見て、異常とも言えるほど低かったので、それがようやく正常化しつつあるだけです。最低賃金1000円が達成された後についても、今からキチンと考えておく必要があります。世界的には、最低賃金の設定は独立機関を設け、経済学者や統計学者を中心にビッグデータを活用し、企業の統計を徹底的に分析したうえで、商工会議所などの意見を聞くなど、多角的なエビデンスに基づいた提言が行われるのが一般的です。その提言を政府に提出し、最終的な決定を首相など国のリーダーが行います。
  しかし、日本はいまだに中央最低賃金審議会で、厚生労働省のホームページに「最低賃金は、公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成される最低賃金審議会において議論の上、都道府県労働局長が決定しています」とあるように、経営者と労働者がぶつかり合い、声の大きいほうの主張が通って決定されているという印象を受けます。明らかにエビデンスに欠ける古いやり方で、先進的な手法とはかけ離れています。そもそも1000円という最低賃金の目標も、経済学的な根拠に基づくものではないので、これが達成されたからといって十分ではないのです。
  最低賃金を決める際に世界的に使われている基準があります。それが「50%・60%ルール」です。このルールでは、最低賃金は所得の全国平均に対して50%、所得の中央値に対して60%という割合になるべきだとされています。
  OECDが発表した2021年の38カ国のデータでは、最低賃金を導入している30カ国における最低賃金の中央値に対する単純平均は、2015年の48%から55%まで上昇しています。この基準で見ると、日本は30カ国の中で22位に位置しています。
  「50%・60%ルール」は、次第に世界の標準となりつつあります。
  2022年9月、EU議会ではこのルールを明確に規定した法律が可決されました。イギリスではブレア政権の後に誕生したキャメロン政権下の2015年に、最低賃金の大幅な引き上げが行われました。その際、2020年までに、中央値に対して60%の最低賃金を目指すと宣言し、2020年にその目標は達成されました。
(4)
  このように、中央値に対する最低賃金の比率を5年先までに達成する目標として明示するのには、意味があります。中央値に対する比率を目標にすることで、5年先までの最低賃金の予測を立てられるようになるので、この目標をクリアするべく、経営者に対して経営戦略の練り直しを暗に促すことができるのです。
  景気が好転し賃金が上昇すると、最低賃金の目標値も上がりますが、逆に景気が悪化すると目標値も下がりますので、労使のどちらかに負担が偏ることもありません。岸田政権も1000円の最低賃金目標を達成した後には、「50%・60%ルール」の導入を真剣に検討するべきです。

  ちなみに、そのルールに沿って計算をすると、日本の最低賃金の次の目標は「2030年までに1372円」となります。
  国税庁のデータによると、日本の平均年収は443万円なので、平均労働時間を1607時間(OECD)で割って、50%をかけると、最低賃金は1378円となります。中央値は366万円ですから、1607時間で割り、60%をかけると、1367円となります。
  その2つを平均すると、1372円となるのです。残念ながら、日本の統計の整備はあまりにも遅れているので、計算に用いた数値は精査する必要がありますが、諸外国との比較してみても、大まかには合っていると感じます。これを2030年までの目標とした場合、今後の最低賃金の引き上げ率は「毎年4.6%」となります。インフレ率を考慮し、毎年修正するべきであることは言うまでもありません。
最低賃金は「福祉」ではなく「経済政策」
  最低賃金はしばしば福祉政策の一環と見なされがちで、商工会議所をはじめとする反対派の主張にも、その影響が色濃く見られます。確かに、最低賃金が導入された大昔は、その役割が大きかったのかもしれません。しかし、時を経て最低賃金にまつわる状況も大きく変わってしまったので、役割も変更してしかるべきです。
  最低賃金が導入されたとき、日本では人口が大きく増加していました。国の経済成長は人口の増加と賃金の上昇という、2つの要素から成り立っています。人口が大きく増加している時代なら、賃金を上げなくても、経済は成長できます。そんな時代では、最低賃金は福祉の面が相対的に強かったかと思います。
  しかし、現在のような人口減少の時代では、賃金が上がらないと、経済は成長しません。賃金政策は経済政策の中核をなすべきで、福祉政策の一環にとどめるべきではないのです。
  岸田政権にとって、政府が経済成長を促進し、国民の生活を向上させるためには、賃金政策が最も重要な役割を果たしています。しかも、日本では今後数十年にわたって人口が減少するので、賃金政策が日本に残された数少ない経済政策の中心とならざるを得ないのです。
(5)
  一方、この期に及んでも、企業の経営者が賃上げに対して前向きな姿勢を見せているとは言えないのが現実です。例えば、日本商工会議所が2023年3月28日に発表した「最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査」によると、2023年に4%以上の賃上げを実施する企業は、全体の18.7%にすぎません。また、3%以上の賃上げを行う企業も33.5%にとどまります。
  驚くべきことに、46.8%の企業は2%台以下の賃上げしか行っておらず、従業員の実質的な可処分所得は大幅に減少しています。今年の4月に上梓した書籍『給料の上げ方』でも説明しましたが、本当の昇給は定期昇給ではなく、ベースアップです。商工会議所によれば、今年の賃上げの76.1%が定期昇給であり、ベースアップを行う会社は40.8%にすぎません。つまり、この物価高の中でも、本当に賃金を上げている企業は全体の40.8%にすぎないのです。最低賃金に対する経営者の考え方は冷淡なので、当然と言えば当然なのが極めて残念です。
  政府は賃上げをうながしているのに、経営者は賛同していないという決定的なデータがあります。1990年以降、同一属性の大卒男子の初任給はほとんど上がっていないのに、最低賃金は大きく上がっているので、最低賃金は大卒男子の初任給に迫っています。経営者がいかにコスト削減ばかりやっているかがわかります。
  2023年の最低賃金の引き上げに関しても、33.7%の経営者は最低賃金を「引き下げるべき」または「現状維持するべき」と答えています。一方で、「引き上げるべき」と答えた経営者は全体の42.4%を占めていますが、そのうち1%から3%までの引き上げを支持する経営者が18.5%で、3%以上の引き上げに賛同する経営者はわずか12.3%です。このデータからも、企業の経営者は相も変わらず、付加価値の向上や賃金の引き上げに消極的な姿勢を示していることがわかります。
最低賃金で働く人が多い業種はどこ?
  2016年に最低賃金の引き上げにより影響を受けた企業は、全体の15.8%でしたが、2023年には38.8%まで増加しています。ここで言う「影響を受けた企業」とは、最低賃金が上がったために賃金を引き上げた企業を指しています。つまり、自発的に賃上げを行ったのではなく、国が最低賃金を引き上げたために、賃上げを強制された企業のことです。
  日本の企業経営者は一般的に賃上げにはまったく消極的なので、最低賃金を上げるなどの強制力を行使しないと、平気で何十年も賃金を上げようとしません。日本でその傾向が極めて顕著なのは、『給料の上げ方』でも詳しく説明したとおりです。最低賃金の引き上げは、格差社会の是正にもつながるので、日本の社会にとってもプラスに働くにもかかわらず、経営者が後ろ向きなのは、日本にとってとても不幸なことです。
(6)
  最低賃金の引き上げにより、最も影響を受けた業種は宿泊・飲食業と小売業です。宿泊・飲食業では60.3%、小売業では52.1%の企業が、最低賃金の引き上げの影響を受けました。ここで、業種ごとの生産性に目を向けてみましょう。宿泊・飲食業の生産性が194万円と最も低く、全産業の546万円の平均に対して、35.5%しかありません。従業員数は4番目に多いので、宿泊・飲食業が最も日本全体の生産性を低下させている業種だと言えます(図表の「寄与度」とは、各業種がどれだけ生産性の平均値を上げている/下げているかを示しています)。
  これらの業種の生産性が低いため、この業種で働く人が増えるほど、その影響は大きくなります。日本では製造業が生産性を最も引き上げているのですが、その引き上げ分が宿泊・飲食業の低い生産性のおかげで、ほぼ完全に相殺されてしまっていると言えます。宿泊・飲食業や小売業では非正規雇用者が多く、最低賃金で雇用されている人の割合も最も大きいので、最低賃金の引き上げによって、当然ながら最も大きな影響を受けたのです。
宿泊・飲食、小売業、サービス業は最低賃金依存型業種
  最低賃金とは、人を雇用する以上、必ず保証しなくてはいけない、本当の意味での賃金の最低水準を意味しています。法律で決まった賃金の最低水準ということは、この賃金を払えない企業は人を雇ってはならないということですから、国が定めた企業の生産性の最低レベルを示しているとも言えます。実際、最低賃金を引き上げると付加価値が増えるという分析もされています。
  ある意味では、宿泊・飲食、サービス業、小売業は、最低賃金依存型の業界です。宿泊・飲食業や小売業は賃金が低いため、生産性が低いビジネスモデルが成り立ってしまっているのです。業界内では、付加価値を高めるのではなく、賃金を抑えて価格を引き下げることで競争が行われ、ダンピングが生じやすくなっています。
  また、付加価値が低いので大きな儲けを生み出せず、結果として設備投資をする余力は生まれません。しかし、賃金を低く抑え込んでいても、これまでは働いてくれる人が確保できていたので、経営者は設備投資を行う緊急性を感じられなくなっているのです。つまり、賃金が安いために価格が低くなり、価格が低いため賃金が安いという、絵に描いたような悪循環が生じてしまっているのです。生産性が低いから賃金は上げられない、賃金を上げないから生産性を上げる必要もない、出口の見えない悪循環です。こんなことを続けていると、企業も労働者も疲弊し、いずれは立ち行かなくなるのは火を見るより明らかです。
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  この悪循環を抜け出すためには、最低賃金を適切に引き上げて負の循環を修正し、付加価値を向上させる必要があります。もちろん、こうした提案に対しては、ビジネスモデルの改善や投資を嫌がる一部の経営者からは「淘汰政策だ!」「失業者が激増するぞ!」と感情的な反対の声があがります。
  しかし、すでに述べたとおり、最低賃金の引き上げは、企業の淘汰を意図して行うものではありませんし、もちろん失業者を増やすことを狙っているわけではありません。最低賃金を適切かつ継続的に上げていくことの効用は、各企業が投資を行い、付加価値を向上させるように促すことにあります。「淘汰だ」「失業者増加だ」と脅迫めいた反対の声を上げるのであれば、安倍政権以降に最低賃金が1.3倍にも引き上げられているにもかかわらず、なぜ淘汰や失業者の増加が確認できないのか、納得のいく説明をしてほしいと思います。
  事実、すでに説明したとおり、第2次安倍政権以降、最低賃金は大幅に上昇し、宿泊・飲食業や小売業の経営者はさまざまな対応をしてきましたので、それが日本の雇用に悪影響を与えたという事実はありません。
  「宿泊・飲食業や小売業の受ける影響が大きいから、最低賃金の引き上げを避けてほしい」という経営者たちの身勝手な主張に耳を傾けていては、日本の賃金はいつまで経っても上がりません。このことは、統計を見れば誰の目にも明らかになるので、根拠なき反論を口にする前にぜひ確認してほしいものです。
賃金はイノベーションによってのみ上がる
  今後の日本では、一層高齢化が進み、年金や医療費の負担が増える一方、納税者の数が減少するので、増税が必要になるのは避けようがありません。すでに相当重くなっている現役世代の負担は、限界を迎えています。事態打開の策は、もはや賃金の引き上げ以外にはあり得ません。
  賃金の引き上げには、経営者がこれまでのビジネスモデルを見直し、新たな戦略を展開して、付加価値を増やす必要があります。イノベーションが不可欠なのです。イノベーションなしに賃金の上昇はあり得ません。人口減少が進む日本の経済はイノベーションによってのみ成長することができます。
  政府の担うべき役割は、民間企業にイノベーションを促すことなので、ぜひ真剣に取り組んでほしいと思います。特に、生産性の最も低い宿泊・飲食業、サービス業、小売業のイノベーションは死活問題です。最低賃金のさらなる継続的な引き上げが必要なのは、言うまでもありません。すでに述べたように1000円という経済的な根拠に欠けた目標に代わって、「50%・60%ルール」の導入が将来にわたる適切な最低賃金の引き上げに大いに役に立つでしょう。
  「50%・60%ルール」であれば、経営者に対して将来の最低賃金の明確な推移を示すことが可能になるため、経営者も賃金の引き上げに向けた具体的な計画を立てやすくなることでしょう。最低賃金を引き上げつつ、イノベーションを促進して、経済を成長させる。これこそ、岸田政権に求められている「新しい資本主義」です。


2023.04.04-Bloomberg co.jp-https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-04/RSKSR4T0G1KW01
政府、水素・アンモニア供給網構築に向け官民で15兆円投資検討
原題:Japan Mulls Updating Hydrogen Plan With $113 Billion in Funds(抜粋)

  政府は4日、エネルギー部門の脱炭素化に向け水素とアンモニアのサプライチェーン(供給網)を構築するため、官民合わせて今後15年で15兆円の投資計画を検討することを明らかにした。

    同日開催した再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議向けの資料で計画案を示した。また、水素の導入目標として、2040年に1200万トン程度を軸に検討するとした。17年に決定した水素基本戦略について、投資計画や水素導入目標などを骨格とした改定の検討を進め、5月末をめどにとりまとめる予定だという。
    政府は50年のカーボンニュートラル達成に向け、脱炭素燃料としての水素やアンモニアの活用に向け計画を加速している。国内最大の発電事業者であるJERA(ジェラ)は火力発電所で水素やアンモニアを燃料として活用する取り組みを進めており、最終的には化石燃料を完全に置き換えることを目標としている。
    日本は30年までに300万トン、50年までに2000万トンの水素導入を実現する目標を既に掲げている。日本はアラブ首長国連邦やオーストラリアなどと官民でパートナーシップを結び、水素燃料を供給するサプライチェーン構築に向けた取り組みを進めている。
 原題:Japan Mulls Updating Hydrogen Plan With $113 Billion in Funds(抜粋)


2023.03.28-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230328/k10014022201000.html
【詳しく】新年度予算成立 重点施策は?過去最大114兆円余

  一般会計の総額が過去最大の114兆円あまりとなる新年度=令和5年度予算は、参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党などの賛成多数で成立しました。
  新年度予算には、子ども子育て政策や脱炭素を推し進めるために必要な経費のほか防衛力の抜本的な強化に向けた費用も盛り込まれています。重点施策などについて詳しくまとめました。

参院本会議で賛成多数で成立
  新年度=令和5年度予算案は、28日に参議院予算委員会で締めくくりの質疑のあと採決され、自民・公明両党の賛成多数で可決されました。これを受けて、参議院本会議では、まず討論が行われ自民党の高橋はるみ氏は「出生数が80万人を下回り、国難ともいうべき少子化が進行する中、安心して結婚、出産、子育てができる社会づくりにつながる政策を推し進め、かつてないほど厳しさを増している安全保障環境の中、日本と日本国民を守り抜く意思を明確に示す予算となっている」と述べました。
  一方、立憲民主党の村田享子氏は「防衛費は増額となる一方で、中小企業対策費や農林水産関係予算は前年比で減少となっている。総理は子ども予算を倍増すると公言してきたが、肝心の具体策については、国会の審議で明らかにせず、倍増の基礎となる予算の範囲についても不明なままだ」と述べました。このあと採決が行われ、新年度予算は自民・公明両党などの賛成多数で成立しました。
岸田首相「速やかに執行に取り組む」
  岸田総理大臣は、28日夜、総理大臣官邸で記者団に「早期成立に協力いただいた与野党をはじめとするすべての関係者に心より感謝申し上げたい。今後、速やかに予算の執行に取り組んでいく」と述べました。また、28日の閣議で、物価対策などのため、今年度の予備費から総額2兆円余りの支出を決めたことについて「エネルギー・食料品価格の高騰などから国民生活と事業活動を守り抜くため、機動的かつ切れ目なく対応していく」と述べました。
一般会計の総額は過去最大
  国会で成立した新年度・令和5年度予算は、防衛費の大幅な増額などで一般会計の総額が初めて110兆円を超え、過去最大の114兆3812億円となっています。
【歳出】防衛費が過去最大 社会保障費・国債費も
  主な歳出では・・・防衛力の抜本的な強化のため「防衛費」が6兆7880億円と今年度を1兆4192億円上回って過去最大となったことに加えて、これとは別に将来の防衛力強化にあてる「防衛力強化資金」に3兆3806億円を計上しました。歳出の3分の1近くを占める「社会保障費」は高齢化などに伴って今年度より6154億円増えて過去最大の36兆8889億円。地方自治体に配付する「地方交付税交付金」は、今年度より5166億円増えて16兆3992億円となっています。
  また、過去に発行した国債の償還や利払いにあてる「国債費」は、9111億円増えて25兆2503億円となりました。国債の発行残高の増加に伴ってこちらも過去最大です。さらに通常の予備費5000億円とは別に、新型コロナや物価高騰対策などに備えるため5兆円の予備費を計上しています。
【歳入】新たな国債発行は35兆円
  歳入では税収が69兆4400億円と今年度の当初予算よりも4兆2050億円増えると見込んでいます。新型コロナで落ち込んだ企業の業績が回復傾向にあり、法人税の増収を見込んでいることなどが要因です。また、9兆3182億円の税外収入を見込んでいるものの、それでも不足する35兆6230億円を新たな国債発行で賄います。
  新規の国債の発行額は今年度の当初予算よりも1兆3030億円減りましたが、歳入全体に占める国債の割合は31.1%と依然として国債頼みの状況が続いています。
  国債の発行残高は、新年度末には1068兆円となる見通しで、政府は、引き続き財政再建への取り組みが求められることとなります。
新年度予算の重点施策
  新年度予算には、子ども子育て政策や脱炭素を推し進めるために必要な経費のほか防衛力の抜本的な強化に向けた費用も盛り込まれています。
【子ども子育て支援】「出産育児一時金」引き上げなど
  まず子ども子育て政策です。・・・原則42万円が支給されている「出産育児一時金」を来年度から50万円に引き上げるため、国費による支援措置として76億円を盛り込みました。また、保育士の負担を軽減するため規模の大きい保育所については追加で配置できる保育士を2人に増やすことができるよう従来の加算を拡充するため、13億円を盛り込みました。
【生活、暮らし】
  暮らしに身近な予算ではマイナンバーカードを利用したコンビニエンスストアでの証明書の交付など、利便性を高める事業を推進するため500億円を計上しています。このほか、旧統一教会に限らず幅広く霊感商法などの被害に対応するため、法律支援の充実や強化などとして、330億円を計上しています。
【脱炭素】「GX経済移行債」発行など
  脱炭素に向けた取り組みを後押しするための施策も盛り込まれています。・・・政府は、脱炭素につながる民間投資を促すため、新たな国債、「GX経済移行債」を発行することにしていて、5061億円を予算に盛り込んでいます。また、長期固定型の住宅ローン「フラット35」で省エネ性能が特に優れた住宅を購入する人に融資する場合、金利を最大0.5%、引き下げる優遇措置を設けるなど、建物の脱炭素を進めるために、980億円を計上しています。
  このほか、国内の二酸化炭素排出量のおよそ2割を占める運輸部門の脱炭素化を進めるため、事業者による電動のトラックやタクシーの導入を支援する経費として136億円を盛り込みました。
【経済成長後押し】リスキリングの強化など
  経済成長を後押しするため・・・新たな価値を生み出すスキルを身につける「リスキリング」の強化に向けた費用として1138億円を盛り込み、従業員のデジタル技術などの習得に取り組む企業に年間最大1億円を助成します。
【防衛力強化】
  防衛力の強化に向けて、「反撃能力」を行使するために敵の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」として・・・アメリカの巡航ミサイル「トマホーク」の取得に2113億円。国産のミサイル「12式地対艦誘導弾」の改良開発・量産に1277億円が計上されました。
 このほか、装備品の維持整備費に今年度の1.8倍となる2兆355億円、▼弾薬の取得に3.3倍となる8283億円、▼自衛隊施設の整備費に3.3倍となる5049億円が計上されています。
後半国会の焦点は
  後半国会では、物価高騰対策のほか、政府が今週中にもたたき台をまとめることにしている少子化対策の具体策や財源などをめぐって、与野党の論戦が行われる見通しです。
  そして、原発の運転期間を実質的に延長できるようにする法案や、防衛費の増額に向け「防衛力強化資金」を創設するための法案などの審議も焦点となります。
一方、野党側は、放送法が定める「政治的公平」の解釈に関する総務省の行政文書についても追及を続ける構えです。
自民 茂木幹事長「一日も早い執行に努めたい」
  自民党の茂木幹事長は、記者団に対し「予算には、当面の物価対策に加え、子育て支援策の充実や防衛力の抜本的強化など、さまざまな重要政策が含まれており、一日も早い執行に努めていきたい。まだ重要法案はたくさん残っており、緊張感を持って国会に臨み、国民にも丁寧な説明に努めていきたい」と述べました。
  また、記者団から、各種の世論調査で内閣支持率が回復していることを受け、岸田総理大臣が早期の衆議院の解散に踏み切る可能性を問われたのに対し、「解散は総理大臣の専権事項だが、いつ、そういう判断があってもいいように準備を進めるのが、幹事長の役割だ」と述べました。立民 泉代表「防衛費が突出した予算」
  立憲民主党の泉代表は、党の会合で「今年度予算と比べて、防衛費は26%増えたのに、子ども予算は2.6%しか増えない、防衛費が突出した予算だ。国民の生活をもっと大事にしなければならない。岸田政権は、堂々と議論すると言いながら、何一つ変えようとしなかった」と述べました。
維新 馬場代表「過去最大の予算 手放しで喜べない」
  日本維新の会の馬場代表は、記者会見で「過去最大の予算になったことは、手放しで喜べるものではない。少子化対策などの看板政策に必要以上の予算をつけたバラマキで、30年間成長していない日本経済の基盤を作る配分が行われていない。財源についても、何かあれば増税や借金という依存体質が続いている」と述べました。
公明 山口代表「着実に執行 国民生活や経済を後押し」
  公明党の山口代表は、記者団に対し「年度内の成立で、与党としての責任を果たすことができたと安どしている。予算を速やかに着実に執行し、国民生活や日本経済を後押ししていきたい。後半国会では、予定している法案の確実な成立などに向けて、政府・与党で結束していきたい」と述べました。
共産 小池書記局長「戦後最悪の予算が成立」
  共産党の小池書記局長は、記者団に対し「戦後最悪の予算が成立した。戦争国家づくりの予算で、専守防衛を投げ捨てており、議論の中で指摘しても、最後までまともな答弁がなかった。物価高から暮らしを守るためのまともな手も打たれていない。岸田政権に対して、解散・総選挙で国民に信を問うべきだと求めていきたい」と述べました。
国民 玉木代表「経済活性化や賃金アップにつながること期待」
  国民民主党の玉木代表は、記者団に対し「持続的な賃上げを実現するためには力強さに欠ける予算という認識で反対したが、成立した以上は、経済の活性化や働く人の賃金のアップにつながることを期待したい。教育や子育ての支援に関する所得制限の撤廃を4月以降の大きなテーマにしていきたい」と述べました。
れいわ「牛歩戦術」展開 山本代表「人々を救わない予算」
  参議院本会議の記名投票による採決では、れいわ新選組の山本代表らが、ゆっくり歩くなどして時間を稼ぐ「牛歩戦術」を展開し、尾辻議長から速やかに投票するよう繰り返し求められました。そして、尾辻議長が「投票箱をあと30秒で閉鎖する」と通告しても、山本代表と、大型の車いすを使用した木村英子議員は投票に応じず、投票箱は閉鎖されました。
  壇上で、山本代表は「農家を守らない予算、30年の不況でも人々を救えない予算だ。『売国棄民予算』に反対だ」と叫び、木村氏は「人手不足で、介助してくれる人がいない。高齢者や障害者は、この予算が通ると本当に生活が困る」と訴えました。
  れいわ新選組は、先月の衆議院本会議での予算案採決でも、大石共同代表ら2人が壇上で不規則な発言をして厳重注意を受けていて、参議院の議院運営委員会は、これまでの経緯も踏まえて、山本代表らの言動について協議する方針です。
  山本代表は、記者団に対し「農家を守らず、中小企業を潰し、30年の不況の中で人々を救わない予算で、賛成できない。まずは減税が必要で、物価高がおさまるまでの間の給付金も必要だ」と述べました。本会議での採決で「牛歩戦術」を展開したことについて、「私たちは超少数派で、何かを大きく変えられるわけではないが、最後の最後まで抵抗する意味で行った」と述べました。
磯崎官房副長官「早期執行に取り組む」
  磯崎官房副長官は、記者会見で「防衛力の抜本的な強化、子ども・子育て支援の強化、物価高に負けない賃上げに向けた支援など、わが国が直面する内外の重要課題に道筋を付け、未来を切りひらくために重要なものだ。今後は予算の早期執行に取り組むとともに、気を緩めることなく重要法案などの審議に丁寧に臨んでいきたい」と述べました。
鈴木財務相「未来を切り開くための予算」
  鈴木財務大臣は記者会見で「今回の予算は歴史の転換期にあって、日本が直面する内外の重要課題の解決に道筋をつけ、未来を切り開くための予算という位置づけだ。今後、迅速かつ着実な執行を進めていく」と述べました。
  また鈴木大臣は、岸田総理大臣が先週、ウクライナを訪れてゼレンスキー大統領と首脳会談を行った際に表明した新たな支援策に関連して、「わが国が表明したウクライナへの支援に要する経費などとして総額655億円の一般予備費の使用もあわせて決定をした」と述べ、ウクライナへの新たな支援に必要な費用を令和4年度の予備費から支出することを明らかにしました。
岸田首相 与野党にあいさつ
  新年度予算の成立を受けて、岸田総理大臣は与野党各党の国会内の控え室を回り、あいさつしました。このうち公明党の控え室では、山口代表が、一部で岸田総理大臣が衆議院の早期の解散に踏み切るのではないかという臆測が出ていることを念頭に、「いよいよ統一地方選挙ですね。解散ではありませんね」と水を向けたのに対し、岸田総理大臣は「いや、統一地方選挙です。あと衆参両院の補欠選挙もありますから」と返していました。このあと山口氏は、記者団に対し「岸田総理大臣は、目前の重要な選挙に集中することを明確にしたと受け止めた」と述べました。



2022.12,20-JIJI COM-https://www.jiji.com/jc/article?k=2022122000806&g=eco
長期金利上限0.5% 日銀、大規模緩和を修正―事実上の利上げ、総裁は否定

  日銀は20日の金融政策決定会合で、現在の大規模な金融緩和策を一部修正し、長期金利の上昇を認める上限を従来の0.25%から0.5%に引き上げた。事実上の利上げと同じ効果を持つ。今回の修正について黒田東彦総裁は会合後の記者会見で「利上げではない」と述べ、「金融緩和の持続性を高めることで物価安定の目標の実現を目指していく」と狙いを説明した。

  政策の一部修正では、長短金利操作を柱とする緩和策の枠組みを維持しつつ、長期金利の変動容認幅を誘導目標「0%程度」の上下「0.5%程度」とし、従来の「0.25%程度」から2倍に拡大した。変動幅拡大は2021年3月以来。上限の引き上げを受け、金融機関が長期金利を参考に決める住宅ローン金利も今後、上昇する可能性がある。
  変動幅拡大は20日の東京債券市場で「青天のへきれき」(大手証券)と驚きをもって受け止められ、長期金利の指標となる新発10年物国債の流通利回りは午前中の0.250%から一時0.460%まで上昇した。最近の市場では、米欧の利上げに伴う金利上昇圧力の波及を日銀が国債の買い入れで抑え込み、新発10年債の取引が成立しない場面が目立っていた。
  黒田氏は、債券市場の機能を改善し、「金融緩和の効果が企業金融などを通じて円滑に波及していくようにする」と説明。大規模緩和から抜け出す出口戦略の一歩ではないとの認識を示し、「さらなる変動幅拡大は必要ない」とも語った。
  日銀は従来通り、短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度で推移するよう長期国債の買い入れを行う構え。今回の修正に合わせ、国債を無制限に買い入れる「指し値オペ」を行う利回りを0.25%から0.5%に上げ、この水準を超える上昇を防ぐ。原則、毎営業日実施する。


2022.12.20-PRTIMES-https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000113151.html
マイナポイント第2弾の対象となるマイナンバーカードの申請期限を「令和5年2月末」に延長決定

  総務省は、令和4年12月20日(火)、マイナポイント第2弾の対象となるマイナンバーカードの申請期限について、「令和4年12月末」から「令和5年2月末」としましたのでお知らせいたします。

  マイナポイント第2弾の対象となるカードの申請期限につきましては、本年12月末としている中、カードの申請件数について、直近の1週間平均では、1日あたり25万件を超える状況であり、現在、市町村の窓口が大変混雑している状況です。
  一方、新型コロナウイルス感染症については、現在、新規感染者数が全国的に増加傾向にあり、窓口混雑緩和の観点から、ポイントの対象となるカード申請期限を来年2月末まで2ヶ月間延長することといたしました。
  なお、ポイント申込期限については、2月末までにカードを申請された方が、適切にポイント申込できるよう、感染状況やカードの申請・交付状況等を見つつ、今後、適切な時期に改めて発表させていただきます。


2022.12.16-bloomberg-https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-12-16/RMTMG6T0AFB401
防衛財源に法人など3税、増税時期明記せず実施先送り-税制改正

  自民・公明両党は16日、防衛力の抜本的強化に向けた増税措置を盛り込んだ2023年度の与党税制改正大綱を決定した。財源をねん出するために法人、所得、たばこの3税を組み合わせる方針を明記したが、増税実施は24年以降に実質先送りされた。

  大綱によると、防衛財源として法人税額に4-4.5%の付加税を課す。所得税額に対しても1%の新たな付加税を課す一方で、復興特別所得税の税率を1%引き下げて相殺、たばこ税は1本3円相当の値上げを段階的に実施する。実施時期は「24年以降の適切な時期」との表現にとどめた。
  鈴木俊一財務相は、付加税が課される対象法人数は全体の約6%で、「法人税率に換算すると1%程度の負担」になると説明。賃上げの実現に取り組む中、企業活動に「一定の配慮がなされている」と理解を求めた。同日の会見で語った。
  岸田首相は27年度に関連経費含む防衛費を現在の国内総生産(GDP)比2%に引き上げる方針を表明。財源については同年度までの5年間の総額を43兆円程度とし、27年度以降、毎年度約4兆円の追加財源の確保が必要と指摘。うち4分の1の1兆円強を増税で賄う考えを示した。
国債発行の可能性を指摘する声も
  税制措置の詳細が来年の税制改正議論に持ち越された背景には与党内で慎重論が根強いことがある。自民党の片山さつき金融調査会長は、新型コロナの感染拡大で影響を受けた景気の回復を見定めることが必要だとし、「景気条項的なものはあってしかるべきだ」と述べた。
  慶応義塾大学の土居丈朗教授は、国債ではなく増税で財源を確保した点を評価する一方、「取りやすいところから取る」という法人税を軸とした結論を疑問視する。今回検討対象となったのは27年度までの5年間の防衛費の財源であって、「28年度以降の方がもっと問題は深刻。場合によっては、追加増税も必要になるのではないか」とみている。
    防衛費の5年間の伸び幅は17兆円程度。政府は税外収入や決算剰余金などで11.1兆円を確保する方針だが、なお不足する約6兆円を増税などで穴埋めする必要がある。このため、施設整備費を賄う建設国債の発行も取り沙汰されている。
  野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、結論を1年延長したことで「議論は漂流しやすくなった」と指摘。来年は経済状況が悪化する恐れがあり、「24年度も増税は無理だという形でさらに後ずれし、結局増税されずに、なし崩し的に国債の発行で賄われていく可能性も相応にある」と分析した。
  鈴木財務相は会見で、防衛費増額分の財源として「国債の発行は考えていない」と従来の発言を繰り返した。建設国債を防衛費の対象にするかは「現時点で明確に決まっていない」とも語った。
資産所得倍増へ布石
  今回の税制改正では、岸田政権の掲げる「新しい資本主義」を実現するための目玉政策として、NISA(少額投資非課税制度)の抜本拡充が盛り込まれた。貯蓄から投資へのシフトを促す「資産所得倍増」を具体化するため、つみたてNISAの年間投資枠を現行の3倍の120万円、一般NISAは併用可能な「成長投資枠」に衣替えして240万円に倍増し、非課税となる生涯上限を1800万円に引き上げた
  一方、富裕層優遇との批判を避けるため、所得30億円を超える富裕層に対する課税強化策も盛り込んだ。所得が1億円を超えると実質の税負担が下がる「1億円の壁」解消は、岸田首相が就任前から提起していた政策課題。22年度改正では、株価下落や市場の批判を受けて見送られたが、「超富裕層」を対象にすることで決着した。
  野村総研の木内氏は、「格差問題に多少目をつぶっても、個人の中間層の株式投資を促すために大盤振る舞いをした印象で、株式市場にとってはプラス」と指摘。NISA拡充は「新しい資本主義」の目指す企業と家計の好循環に向けた「第一歩であって、さらに推し進めるにはリテラシーの問題に加えて、成長戦略を合わせて進めていくということが必要」と語った。
  NISAの大幅拡充を訴えてきた自民党の中西健治財務金融部会長は、資産所得倍増に向けた「器はできた」と評価。今後は「できた器にきちんと魂を入れていきたい」と述べ、金融教育の充実やお金が動く仕組みづくりを業界に働き掛けていく考えを示した。


2022.12.06-Yhoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/60bad696de8fdc8fc15fbec04dfe82cf748372e3
自民・萩生田氏「増税は間違ったメッセージ」防衛費

  自民党の萩生田光一政調会長は6日の党会合で、防衛力の抜本的な強化に向けた防衛費増額の財源について「全てを税でまかなうとか、来年から増税が始まるような間違ったメッセージを統一地方選前に出すのは大きなマイナスだ」と述べ、増税議論が先行することを牽制した。

  萩生田氏は岸田文雄首相が5日に来年度以降5年間の防衛力整備に関する総経費として約43兆円を確保するよう関係閣僚に指示したことについて「重く受け止めながら、国民の生命・財産を守るという本質的な目標をしっかりと見定めながら、与党間、政府との間で詰めの調整をしていきたい」と述べた。
  財源については「将来の財源確保の議論を始めると承知をしているので、税制調査会とも連携を取りながら対応していきたい」とも語った。


2022.11.16-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20221116-K7UZ66MYKFPIHOSWACHQQPONQA/
政府、安定確保の「重要物資」に半導体など11分野 年内指定へ

  政府は16日、経済安全保障推進法に基づいて安定供給に取り組む「特定重要物資」の候補として半導体や蓄電池など11分野を有識者会議に示し、了承された。年内の閣議決定を目指す。米中対立やロシアのウクライナ侵攻などでサプライチェーン(供給網)の脆弱性が浮き彫りになる中、非常時に供給が滞らないような態勢づくりを急ぐ。

  重要物資の安定供給は推進法の柱の一つ。政府が特定重要物資を指定した後、民間企業はその物資について設備投資や備蓄などの計画を作成する。所管大臣の認可が得られれば、企業は政府から資金支援を受けられる。
  政府は9月に決定した基本指針で特定重要物資の要件として、「国民の生存に必要不可欠、または広く国民生活もしくは経済活動が依拠している」―ことなどを挙げ、各省庁が絞り込みを進めていた。
  今回示されたのは、半導体▽蓄電池▽永久磁石▽重要鉱物▽工作機械・産業用ロボット▽航空機の部品▽クラウドプログラム▽天然ガス▽船舶関連機器▽抗菌薬▽肥料-の計11分野。
  半導体は新型コロナウイルス禍などで世界的な供給不足が生じ、国内の自動車生産などに影響が出ている。肥料も日本は、原料の大部分を海外に依存しており、ウクライナ危機で供給途絶のリスクが浮上した。
  政府は令和4年度第2次補正予算案に関連費用として1兆358億円を計上した。来年3月から企業の申請の受付を開始し、支援を進めたい考えだ。


2022.08.25-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20220825-6654YU3IEVPWPABP3MKZFHZ2UQ/
厚労省が予算概算要求案提示 33兆円超、「人への投資」重視

  厚生労働省は25日、総額33兆2644億円とする令和5年度予算概算要求案を自民・公明両党に提示した。4年度当初予算比で6340億円増。総額は過去2番目の水準だが、来年4月に発足するこども家庭庁関連の要求額(8857億円)が除かれたためで、実質的には過去最大規模となる。

  岸田文雄政権は成長と分配の好循環に向けた「人への投資」を重視し、令和6年度までの3年間で4千億円規模の予算を投入する方針。これを踏まえ、5年度概算要求では前年度予算比約1割増の1101億円を盛り込む。都市部から地方への移住に伴う再就職支援など、円滑な労働移動や人材確保支援として524億円を計上した。
  新型コロナウイルスの感染対策では、流行の「第7波」の収束後をにらみ、ワクチン接種や治療薬の研究開発に向けた予算として前年度予算の7・1億円から大幅増の43億円を計上。国立感染症研究所での検査・疫学調査など体制強化には97億円の確保を目指す。全国の医療機関や薬局でオンラインシステムを導入するなど医療現場でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させるため、電子カルテの規格標準化や電子処方箋の運用に向けた環境整備の推進などに96億円(デジタル庁計上分を含む)を充てた。
  介護を受けたり寝たきりにならずに日常生活を送れる「健康寿命」を延ばすため、糖尿病性腎症の重症化予防事業支援などに28億円を求める。生涯を通じた「国民皆歯科健診」導入に向けた口腔(こうくう)ケアの推進などには31億円を投入する。
  医療費や年金など高齢化に伴う社会保障費の全体の伸び(自然増)は5600億円を見込んでいる。
  厚労省は31日までに概算要求を財務省に提出し、年末に向けた予算編成が本格化する。


2022.04.11-BSイレブン-https://www.bs11.jp/news/houdou-live-insideout/
「ロシアで異変!暴走止めぬプーチンにクーデタ―?」
ゲスト:名越 健郎(拓殖大学特任教授)、豊田 祐基子(ロイター通信日本支局長)

  ロシア軍のウクライナ侵攻から1カ月半余り。ウクライナ側の軍・民挙げての命がけの抵抗や欧米日の兵器・資金援助により、「数日で攻略」との当初の見通しは大きく狂い、ロシア軍は首都キーウ周辺から退却を余儀なくされた

  もっとも、戦禍の終わりは見通せないロシア軍退却後の首都圏では、民間人と思われる数百人単位の虐殺遺体が見つかり、国際社会はジェノサイド=集団殺戮」だとみて、激しく非難している。
  いずれにしても、ウクライナ侵略には「合理的理由が見いだせない」との見地から、今回の軍事侵攻は"プーチンによるプーチンの為の戦争"と言われる。実際、徹底した情報統制にも関わらず、政権中枢や中枢に極めて近い大物経済人&軍事・情報関係の上級幹部らから、批判や不満の声も漏れ出し始めた
  民間調査機関の世論調査で支持率80%を超えるというプーチン露政権ではあるが、ロシア国内で要人&軍事・情報組織の離反やクーデタ―が進行しているのだろうか?
「プーチン大統領退陣後」もにらみながら、ロシアの近未来を分析する。


日本戦略研究フオーラム」-http://www.jfss.gr.jp/article/1045
澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -407-中国の総債務-
.政策提言委員・アジア太平洋交流学会会長 澁谷 司


  今年(2019年)11月11日、中国の「独身の日」、ネット通販最大手のアリババのセールが過去最高を記録した、と日本メディアはこぞって報じた。これは、同国の消費が未だ旺盛である事を世界にアピールする中国共産党の“策略”だろう。日本メディアはそれに踊らされている観がある。

  その6日前、同月5日『博訊』に掲載された蔡慎坤の「誰が中国の借金を返済する能力があるか?」という論文は刮目に値しよう。ここでは、同論文の概略を述べたい。中国では、この10年間で、2012年にだけ、1.12兆元(約17.5兆円)の黒字が出た。胡錦濤主席-温家宝首相コンビは政権末期だったので、財政出動を控えたのである。

  だが、習近平政権になると、その誕生と同時に、財政赤字が一気に拡大した2015年までに2兆元(約31.2兆円)を超え、昨2018年には4兆元(約62.4兆円)を突破している。国債の発行量は2016年に3兆元(約46.8兆円)近くに上昇し、2018年には3.5兆元(約54.6兆円)を超えた

  他方、2016年には地方債の発行を開始したが、毎年4兆元(約62.4兆円)以上にのぼる。膨大な財政赤字が膨らむ一方、巨額の債券を保有する。実は、近年、金融界は驚くべき中国の債務状況を伝えていた。
  現在、累積した外債はすでに1.97兆米ドル(約213兆円)に達した。国有企業の債務も130兆元(約2028兆円)を超えている国債を含む中国の総債務はすでに500兆元 (約7800兆円) 余りに達した(筆者注:同国の“総債務”は、中央政府・地方政府・国有企業・個人の4債務に分類できる。普通、その4者すべてを指す。ただし、時には、中央政府が負うべき前3者だけを指す場合もある)。

  同国の総債務500兆元(約70兆ドル)は、米国のそれの3倍以上であり、世界第2の経済体は世界一の債務国となった

  中国の債務はオーストラリア、米国、ドイツ3国の債務合計よりも多い。通常、途上国の債務は先進国より少ないが、中国は違う。不動産開発や地方政府の借金、急速に拡大する「シャドー・バンキング」等のため、わずか10年で中国は、最少負債国から最大負債国へと転落した

  最も懸念されているのは、急速に増大した負債中、多くの債務が返済不能に陥った点である。一部の地方では、盲目的に投資されたプロジェクトに対し、利息が支払われないばかりでなく、元金さえ返済するのが難しい。
  多くの中国人は、巨額の債務に対し、自分とは関係がないと感じている。だが、当局の統計によれば、今年上半期、全国の省・市の財政負債は天文学的な数字にのぼった。上海を除いて、ほとんどすべてが重い負債を負う。

  数年前、国家金融発展実験室理事長の李揚は、北京の幹部と地方政府に対し、債務総額はすでに168.48兆元(約2628.3兆円)まで達していて、全社会のレバレッジ比率(負債率)は249%だと穏やかに注意を喚起した。
  李揚の分析は、実情を過小評価している。CICCインターナショナル董事長を退任した朱雲来は半公開の場で、次のように喝破した。
  2017年末の中国の債務規模は600兆元(約9360兆円)に達し、一人当たり40万元(約624万円)の負債を抱えているという債務は毎年20%以上のスピードで増加し、GDP 6%の伸びをはるかに上回る

  債務規模は昨2018年に720兆元(約1京1232兆円)に達し、今年は860兆元(約1京3416兆円)に達する。年利6%ならば、年間の利息は40兆元(約624兆円)から50兆元(約780兆円)以上に達し、少なくともGDPの半分以上となる。
  他方、中国国家外貨管理局によると、2019年8月末時点の外貨準備高は3兆1072億米ドル(約335.58兆円)で、対外債務残高は1兆9132億米ドル(約206.63兆円)である。

  外貨準備高の3兆1000億米ドルから対外債務の1兆9100億米ドルを差し引くと、残りの外貨は、1兆2000億米ドル(約129.6兆円)に過ぎない。
  その保有外貨は、少なくとも8000億米ドル(約86.4兆円)が外資系企業の投資と利益である。万が一、外国資本が大量に撤退すれば、中国には外貨準備があまり残らない計算になる。

以上が概略である。
  もし、蔡慎坤の主張が正しいとすれば、中国の総債務はすでに500兆元 (約7800兆円) に達する。仮に、中国当局が発表している昨2018年のGDPが90.03兆元(約1404.5兆円)だとしよう(ただし、この数字には疑問符が付く)。すると、総債務がGDPの555%となる。昨年の中国のGDPが80兆元(約1248兆円)しかなかったと仮定すれば、総債務がGDPの625%となるだろう。

  一方、中国当局が自負する世界一の外貨準備高も、せいぜい4000億米ドル(43.2兆円)程度しかない。これでは、今年10月4日、韓国銀行(中央銀行)が発表した9月末の外貨準備高、4033億2000万ドル(約43兆5586億円)とほとんど変わらないではないだろうか。
  これが、破綻の危機に瀕した中国経済の実態なのである。


立命館 経済学部-http://www.ritsumei.ac.jp/ec/why/why02.html/
日本政府の借金は約1,200兆円。・・・なぜお金を刷って返済にまわさないのでしょうか?

  日本政府の借金が大変なことになっています。国(中央政府)の借金である国債の発行残高は約1000兆円、地方政府の借金である地方債の発行残高は約200兆円、国と地方を合わせるとその総額は約1200兆円に達します

  2020年度もコロナウイルス対策により約100兆円の借入を増やすなど、年々増加している状況です。国民全員の一年間の稼ぎ(所得)は年によっても変動しますが、約500~550兆円ですので、最短で日本政府の借金を返済するため、仮に国民の稼ぎを増税により全て吸い取って返済に充てたとしても、計算上その期間には2年以上は掛かることになります。それよりもっと手っ取り早い返済方法があります。日本政府はお金を刷って使う独占的な権利(貨幣鋳造権)を持っています。
  だったら、日本政府は国民に嫌われる増税や政府支出の切り詰めによって返済資金を捻出するより、なぜお金を刷ってさっさと借金の返済にまわさないのでしょうか?
  この問題に答えるには2つの論点を分けて議論する必要があります。
     1つ目は貨幣発行(鋳造)権発動の是非であり、
     2つ目は国(政府)の借金の是非です。
  まずは、1つ目の論点である貨幣鋳造権発動の是非について取り上げます。
  国(政府)の特権として、政府はお金を印刷してそれを支払いにあてることができます。これが貨幣鋳造権(シニョレージ)です。歴史的にも、現在の発展途上国でもよく見られる現象ですが、この貨幣鋳造権を乱発しますと、市場に流通するお金(貨幣)の供給量が格段に増え、貨幣価値が暴落する極端なインフレーションを引き起こし経済活動に混乱をもたらします。
  ですから、日本では法律により、貨幣発行機関である日本銀行を、政府から独立した貨幣価値の番人として位置づけ、政府が日本銀行に命令し、簡単にお札を刷って買い物支払いに充てたり、借金の返済にあてたりできないようにしています。ですので、国(政府)の借金を貨幣発行で全額返済することに国民や日本銀行の賛同を得にくい策だと言えます。
  ですが、政府自体も貨幣鋳造権を持っているので、“政府紙幣”を発行し政府の借金を返済することは長引く不況とデフレーション対策にもなると賛同する意見も存在します。
皆さんはこの論点をどう考えますか?
  次に、2つ目の論点に入りますが、そもそも国(政府)が多額の借金をすることは問題なのでしょうか?
確かに、日本政府の債務総額の大きさ(対GDP比)は先進国でも突出しており、「マクロ経済学」のテキストにもトピックスとして取り上げられていますが、その是非については大きく議論が分かれます。
  ある議論では財政の赤字を賄うために政府が発行する債務証書(借用書)である国債を発行することは、この赤字を賄うために今おこなう増税を単に将来に先延ばしにすることと同じであるとし、国の借金は長期間に渡って地道に国民の税金で返していくしかないという意見があります。
  また別の議論として、一般企業の借金の多寡を分析できる会計学を応用し、政府の借金(金融負債)総額だけを見るのではなく、政府全体が保有する資産(その中でも金融資産)とのバランス(もしくは、負債総額から資産総額を差し引いたネットの純負債額)に着目すると、高橋洋一氏の「明快 会計学入門(あさ出版)」による計算では、実質的な政府の借金(金融負債)総額は約120兆円となり、会計学上”健全な”額の純負債総額なので、このままでも何も心配が要らないとする意見もあります。
皆さんはこの論点にどう結論を下しますか? 考えてみてください。

この分析は、経済学の #マクロ経済学 #税法 #行政法 #財政学 などの考え方で組み立てられており、そのエッセンスは「経済政策ユニット」の「貨幣・信用論」といった科目で学ぶことができます。

  「経済政策ユニット」の科目では、経済政策に関わる理論、制度を学ぶとともに、データ分析や事例研究を通じ日本経済が抱える様々な問題の本質を洞察する力を養い、俯瞰的かつ理論的な視点から政策課題の解決策を提案できる力を養います。
  このホームページでは、諸説ある中でひとつの考え方を紹介しています。みなさんはどのように考えますか?この問いの「答え」に納得がいかなかった方は、別の角度からも考えてみて、新たな「答え」を見出してみてください。








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