日本とアメリカ問題-1
2025.02.06-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250206-WWM7L6SQQNKBLFNKDWHZLVZP6M/
日航機、米シアトルの空港でデルタ航空機と接触 成田から到着したばかり
2025.01.07-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250106-2VKHARTM45NFBIHSZSXVBEXLQQ/
日本製鉄、バイデン米大統領らを提訴 USスチール買収禁止は「不当な政府介入」
日本製鉄と米鉄鋼大手USスチールは
6日、日鉄によるUSスチールの買収計画を巡り、不当な政府介入があったとしてバイデン米大統領らを米国で提訴したと発表した。
大統領による買収阻止命令と対米外国投資委員会(CFIUS)の審査の無効を求める。米政府への訴訟に加え米鉄鋼会社クリーブランド・クリフスと同社最高経営責任者(CEO)、全米鉄鋼労働組合(USW)会長も買収妨害行為で訴えた。7日に日鉄の橋本英二会長兼CEOが記者会見して説明する。
日本企業が米国大統領を訴えたのは初めてとみられ、日鉄による買収計画は異例の局面に入る。
具体的には、両社は買収計画について、CFIUSが国家安全保障上の適正な手続きに基づく審査を行わず、バイデン氏が、国家安全保障に無関係な政治的理由により買収阻止命令を出したとして、異議申立書をコロンビア特別区巡回区控訴裁判所に提出し、大統領命令の無効とCFIUSによる再審査を求めた。
さらに、ペンシルベニア州西部地区連邦地方裁判所に対し、クリーブランド・クリフスと同社のゴンカルベスCEOおよびUSWのデビッド・マッコール会長がUSスチール買収を阻止するために共謀して反競争的かつ組織的な違法活動を行ったとし、反競争的行為を行うことを防止するための差し止め命令と妨害行為に対する金銭的損害賠償を求めた。
日鉄は、訴訟を通じてバイデン氏が政治的目的の達成のために法の支配を無視し、公平な審査の機会が奪われたことを明らかにするとし、「自らの法的権利を断固として守り抜く」と主張した。
2025.01.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250104-QKOC3U2DKNLZ3COVLJOCIN6DHU/
「鉄は国家なり」製造業大国の郷愁が保護主義を増幅 繁栄のアイコン、USスチール買収阻止
【ワシントン=塩原永久】日本製鉄によるUSスチール買収はバイデン米大統領が3日に買収禁止を命じて頓挫した。
1901年創業のUSスチールは、米国が鉄鋼大国として繁栄した時代を象徴する「アイコン」(米メディア)とされる。大統領選と重なる時期に、「米企業が外資に奪われる」といった印象論が先行し、経済論理は置き去りにされ政争の犠牲になった側面が否めない。
バイデン氏「国家の背骨」と宣言
「USスチールは米国人に所有、運営され、世界で最も誇り高い米企業であり続ける」・・・バイデン氏は3日の声明で、そう強調した。
自動車や軍用品など幅広い産業を支える米鉄鋼大手が外国企業に買収されれば、国家安全保障を損なう恐れがあると買収阻止の理由を説明した。
近代国家の発展に鉄鋼生産が重視され、「鉄は国家なり」と言われたように、バイデン氏は声明で、鉄鋼生産が「国家の背骨だ」と宣言した。
政争に巻き込まれ…
USスチールは「鉄鋼王」カーネギーらが1901年に設立。鉄鋼需要拡大期に成長し、AP通信によると55年までに、
USスチールを筆頭とする米企業が世界の需要の4割を供給した。近年は海外勢に押され経営が悪化。M&A(企業の合併・買収)を通じた協業相手を探していた。
日鉄が2023年12月にUSスチール買収を発表すると、雇用への影響を懸念する全米鉄鋼労働組合(USW)が、ただちに反対を表明した。
24年11月の大統領選を前に、米有力企業の「身売り」は政争に巻き込まれ、労働者保護を掲げる民主党のバイデン氏、共和党のトランプ次期大統領の双方が、買収阻止の姿勢を鮮明にした。
産業界からは買収阻止に反発の声
日本企業は過去にも米大手のM&Aで苦しんだ。東芝による2006年の米原発大手ウェスチングハウス買収は失敗。米企業側が「格下」とみなす日本企業との協業で、相乗効果が生まれなかったことが背景にあったとされる。
今回は日鉄が門前払いとなった形だが、米国民のプライドにかかわる有力企業の買収はハードルが高い。政府が介入し、自国産業を守るという保護主義的な機運を後押ししている面もある。
一方、
全米商工会議所が3日、「バイデン政権による(USスチール買収の)政治化は米国民に高い経済負担を負わせかねない」とする声明を発表するなど、産業界からは反発が出ている。
2025.01.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250103-HS4DU35TOZJVJP2IEG6N72I7O4/
最大の敗者はUSスチールに 日鉄の買収計画頓挫、続く中国鉄鋼生産の支配力
(池田昇)
日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画が、
米政府に阻止された。
政府の決定が覆らない限り、日鉄は米国事業の基盤強化を前提とする成長戦略の修正を迫られる。ただ、
最大の敗者は「最良のパートナー」を逃したUSスチールだ。
バイデン大統領の政治判断は、対中国で日米鉄鋼業の競争力を損なう危険をはらんでおり、
買収に終始反対した全米鉄鋼労働組合(USW)も敗者に転じる可能性がある。
歴史に終止符を打つことになる
「この取引を阻止することは、(地元)ピッツバーグが鉄鋼の街であった100年以上の歴史に終止符を打つことになる」。
USスチールのデビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は、米紙ニューヨーク・タイムズへの昨年12月22日の寄稿で警鐘を鳴らしていた。
そもそも買収計画は、単独では生き残れないUSスチールによる身売りの入札で始まった。
日鉄には、USスチールの事業基盤を自社の技術力で強化し、自動車向けなどに安定した成長が期待できる米市場を取り込み、日米連合で世界最大の鉄鋼生産国の中国に対抗する狙いがあった。
買収後にUSスチールの2つの製鉄所の設備更新などを中心に27億ドル(約4200億円)以上を追加投資すると表明していたのもこのためだ。
買収計画の頓挫で白紙に
日鉄は昨年、買収計画の承認を米政府に働きかける一方、鉄鋼生産の収益の安定に寄与する原料炭の権益獲得や、水素を使った次世代の製鉄に適した高品質の鉄鉱石の開発にも投資。
水素利用の次世代製鉄技術では試験設備で43%の二酸化炭素削減を世界で初めて実現するなど、
着々と競争力に磨きをかけている。こうした日鉄の投資と技術力から得られるはずだったUSスチールの利益は、買収計画の頓挫で白紙となる。
米政府が、同盟国の日本の鉄鋼メーカーの買収提案を安全保障を理由に拒否した以上、USスチールが海外企業との全面提携に活路を求める道は閉ざされた。
米鉄鋼メーカーのクリーブランド・クリフスがかねてUSスチールの買収に意欲を示しているものの、
米企業同士の組み合わせは独占禁止法上の事業再編や合理化を招く公算が大きい。
買収阻止を明言していたトランプ次期大統領は昨年、「税制優遇措置と関税を通じて、USスチールを再び強く偉大な企業にする」と表明したが、
技術力なしに製造業の競争力の真の回復は望めない。トランプ氏は前政権時代に、既に関税を引き上げて米鉄鋼業界を保護している。それでも
USスチールが身売りを決断した事実が、政府による支援の限界を示す。
米大統領選の最中の昨年10月、トランプ前政権で副大統領を務めたペンス氏は、日鉄の買収が承認されなければ「何千人もの米国人労働者が職を失い、(USスチールの本拠地のペンシルベニア州など)『ラストベルト』と呼ばれる工業地帯は再び空洞化し、政府に裏切られることになる」と指摘していた。
米鉄鋼業の復権か、衰退か
USWは、買収阻止で政治的な影響力を誇示する勝者となったように映るが、USスチールの先行き次第では、米鉄鋼業の復権か、衰退かの重大な岐路で道を誤らせた敗者になるかもしれない。
世界の鉄鋼市場では、景気低迷で内需がしぼむ中でも過剰生産を続ける中国の輸出拡大が市況を荒らしている。日鉄は今後、高成長が続くインド事業や既存の米国事業の強化を探る見込みだが、日米連合の実現により「中国による世界の鉄鋼生産の支配力は弱まるだろう」(ブリット氏)との期待は幻となった。
バイデン氏の決定で得をしたのはいったい誰なのか。安保の観点で外資から守られたはずのUSスチールとその株主、従業員でないことは確かだ。
(池田昇)
2025.01.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20250103-SKAHACLHLZLDRMLM3WJHHBNO4I/
バイデン米大統領、日鉄のUSスチール買収阻止を発表「鉄鋼生産はわれわれの国家の背骨」
【ワシントン=塩原永久、坂本一之】バイデン米大統領は3日、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収を阻止する決定を下したと発表した。
外国企業による買収によって、米国の鉄鋼供給網と安全保障が損なわれる恐れがあると判断した。
日本企業による米有力企業の合併・買収(M&A)を米大統領が禁じるのは初めてとみられる。日系企業は対米投資戦略の再考を迫られそうだ。
ホワイトハウスが3日発表したバイデン氏の声明は、「鉄鋼生産はわれわれの国家の背骨だ」と強調し、USスチールが自国で所有され、運営されることが不可欠だと説明。「米国の鉄鋼生産能力の大部分」を米主要企業が占める必要があるとし、鉄鋼大手が外国企業の傘下に置かれることは国家安保を脅かしかねないと指摘した。
買収の是非を審査する米政府傘下の対米外国投資委員会(CFIUS)が昨年12月下旬、委員会として一致した見解に達することができないとして、バイデン氏に判断を一任していた。
日鉄側は、買収が阻止されれば、米政府を相手取った訴訟も辞さない構えを見せていた。
ホワイトハウスが発表した大統領令は、買収阻止命令は国防生産法を含む大統領権限に基づいた決定だとした。
日鉄側に対して、30日以内に買収を取りやめる措置をとるよう要求している。
CFIUSは財務省や司法省などの米政府機関で構成されている。米メディアによると、CFIUSの議論では、USスチールが日鉄に買収されれば、国内の鉄鋼生産が減少する可能性があるとの見方が示されていた。重要物資である鉄鋼の供給が滞り、米国家安保へのリスクとなる恐れがあるとした。
日鉄は、こうした懸念を払拭するため、買収後のUSスチールの生産能力を削減することに対する拒否権を、米政府が持てるようにすることを提案していた。