ミヤンマー2021クーデター問題



2021.03.02-Yahoo!Japanニュース(現代ビジネス)-https://news.yahoo.co.jp/articles/a719404ea94886b1245613413bd73a28350b65df?page=1
「ミャンマー国軍の背後に中国がいる」を全否定した中国の本当の狙い
(1)
  2月1日にミャンマーで軍事クーデターが勃発してから1ヵ月、事態は悪化の一途を辿っている。2月28日の全国規模のデモでは、多数の死傷者が出た。

  これまで3週にわたって、ミャンマー情勢について論じてきた。1回目は、アウン・サン・スー・チー女史がどんな人物なのか、会った印象を含めて述べた。2回目は、ミャンマーだけでなくASEAN10ヵ国が、それぞれ強権化している現状を伝えた。先週の3回目は、日本在住の若いミャンマー人たちの訴えを伝えた。4回目となる今週は、主にミャンマーを巡る国際情勢について述べたい。
   そもそも、私がなぜこれほどしつこく、ミャンマー情勢を論じるかと言えば、地政学的に重要な要衝にあるからだ。
   ミャンマーは中国とインドの間の要衝であり、東アジアと西アジアの間に位置する要衝でもある。そして台湾と並び、米中2大国の利権が衝突する要衝なのだ。日本も昔からそのことを理解していたため、第二次世界大戦では、32万人もの大部隊をミャンマーに投入した。
   ミャンマーは1997年にASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟したが、2月1日の軍事クーデターから1ヵ月を経て、ASEANはようやく重い腰を上げた。3月2日、ミャンマー問題を話し合うASEAN外相特別会議を開く。
   先々週のコラムで詳述したように、最近のASEAN各国は強権化しているので、ASEANとしてミャンマーの民主化運動を支持するという声明は出さないだろう。そもそもASEANの原則は全会一致なので、ミャンマー代表が反対する声明は出せない。

   だが、それではクーデターを起こした国軍側がハッピーかと言えば、決してそんなことはない。私は先週、軍事クーデターの首謀者であるミン・アウン・フライン軍総司令官に、この10年で3度も会ったというミャンマー専門家に話を聞いたが、彼はこう言った。
   「国軍は、ミャンマー国民がこれほど自分たちに反発してくることは、予測していなかったはずだ。2014年に軍事クーデターが起こったタイのように、国民はすんなりと受け入れると踏んでいた。
  なぜなら、2011年に国軍ナンバー4だったテイン・セイン大統領が民主化を推し進めた結果、国民は軍に対して、必ずしも悪いイメージを持っていないと自認していたからだ。ミャンマーのこのところの経済発展の牽引役は、国軍系企業グループMEHL(ミャンマー・エコノミック・ホールディングス)だという自負もある。
   ところが実際には、10年間の民主化を経験した国民、特に若者たちは、もう二度と国軍支配はごめんだと思っていた。国軍はそこをはき違えたのだ。
  それで国軍は、アウン・サン・スー・チー国家顧問率いるNLD(国民民主連盟)と和解し、取り込みたいというのがホンネだろう。だが軍とデモ隊との対立がこれ以上、激化すると、それも難しくなってしまう。まさにクーデターを起こした国軍側も苦悩しているのだ」
(2)
国連大使の裏切り
  実際、国軍とデモ隊との対立は、激しくなる一方だ。1ヵ月の対立を経て、いまやデモは、ヤンゴンやマンダレーだけでなく、全国津々浦々まで広がっている。また学生ばかりか、広範な人々が参加している。そして、その様子が連日、世界中で報道されている。

   2月26日には、ミャンマーの国連大使までもが、国軍を裏切った。ニューヨークの国連本部で、ミャンマー情勢を議論する国連総会の会合が開かれた際、ミャンマーのチョー・モー・トン国連大使は、NLDから託されたという声明を読み上げたのだ。
   「(昨年11月の)総選挙は、自由公正に成功裏に実施され、ミャンマー史の重要な節目となった。ミャンマーは民主主義への熱意と愛着を、投票によって示した。われわれが以前のようなシステムに戻りたくないということは明らかだ……」 会場は拍手喝采。翌日、ミャンマー国営テレビは、チョー・モー・トン国連大使が解任されたと発表したが、国連本部で抵抗を続けている。

   2月26日には、最大都市ヤンゴンで、日本人ジャーナリスト・北角祐樹氏が、当局に拘束されるという事態も起こった。北角氏をよく知る人物に聞くと、こう語った。  「彼はもともと伊藤忠商事の商社マンでしたが、国際ジャーナリストに憧れて、日本経済新聞に転職しました。国際部に配属されたものの、なかなか海外特派員に出してもらえないことに我慢ならなくなって退社しました。
   その後、公立学校の教師の公募に合格して赴任するも、やはり国際ジャーナリストへの憧れが止まらず辞職。2年ほど前に、『これからはミャンマーの時代だ』と言って、現地に渡ってフリージャーナリストになったのです」
  北角氏は幸い、即日身柄を解放された。2007年9月には、ヤンゴンでデモを取材中の映像ジャーナリスト・長井健司氏が、治安当局の銃弾に被弾して命を絶っただけに、「二度目の悲劇」が頭をよぎった。

   その二日前の24日にも、注目される動きがあった。クーデター後に国軍が指名したワナ・マウン・ルウィン外相が、隣国タイのバンコクを訪問。プラユット・チャンオチャ首相とドーン・ポラマットウィナイ外相、及びインドネシアから駆けつけたルトノ・マルスディ外相と会談したのだ。
   これは前述の話と連なるが、ミャンマー国軍にとって、クーデター自体はうまくいったものの、その後の全国の若者たちの大規模デモは、予期していなかったことを意味する。予想外の展開になったから慌てて、「兄貴分」のタイに支援を求めたのである。タイも2014年5月、軍事クーデターによっていまの政権を作った「前科」があるからだ。タイとミャンマーは、いわば前科者同士なのだ
   ところが、「兄貴分」(タイ)の心情は複雑である。自分たちは軍事クーデターの「勝ち組」なのに、今回ミャンマーの国軍に加担すれば、再びタイでも全国規模のデモが起こり、政権を転覆されてしまうのではないかと危惧しているのだ。だから「ASEANの盟主」インドネシアを引っ張り込んで、「3ヵ国会談」とした。要は自分だけがミャンマーのケツを拭きたくないのだ。
   インドネシアも自分だけで責任を取りたくないから、3月2日のASEAN特別外相会議に持ち込んだ。だが今年のASEAN議長国は、中東のイスラム独裁国家が東アジアに飛び火したようなブルネイである。
(3)
アメリカと中国、それぞれの狙い
  さらに、ASEANの外にある米中2大国も動き出している。  先に動いたのは、アメリカだった。  ジョー・バイデン政権は2月11日、国軍クーデターに関わった10個人と3企業に制裁を科した。首謀者であるミン・アウン・フライン国軍総司令官を始め、国軍出身のミン・スエ副大統領、ソー・ウィン国軍副司令官、ミャ・トゥン・ウー国防相、ティン・アウン・サン運輸・通信相ら、制裁を科した個人は、すべて軍人だ。3企業も、MEHL傘下の宝石企業である。

   この措置は一見すると勇ましく思える。だが、「人権外交」を標榜するバイデン政権だけに、強烈な制裁を発表するのかと思っていた私には、正直言って拍子抜けだった。
   例えば、軍のトップを制裁対象にしたところで、彼らは個人でアメリカと取引したり、アメリカ旅行に出かけることはないのだから、象徴的な意味合いしかない。また、本気でミャンマー軍を締め上げるのならば、MEHL全体に制裁をかけるべきだが、それは見送った。
   さらに、19日に開かれたG7(先進国)のオンライン首脳会議では、ミャンマー問題に関して無言を貫いた。バイデン大統領が就任して初のG7ということで注目していたが、会議終了後に発表された「G7首脳声明」には、「ミャンマー」という文字がどこにも入っていなかった。

   こうした姿勢を見ると、バイデン政権というのは、「緩い政権」なのである。アメリカがミャンマー国軍にあまり強いプレッシャーをかけると、国軍が中国に靡(なび)いてしまうというもっともらしい理屈もあるが、私はやはり、バイデン政権自体が「緩い政権」なのだと見ている。
   一方、中国の方は、もう少し狡猾である。その狙いは「10年前の復讐」にある。
   いまから10年前の2011年3月30日、ミャンマーで軍事政権(SPDC=国家平和発展評議会)が解散。23年間の軍事政権が幕を閉じて、テイン・セイン大統領の「民政」が始まった。テイン・セイン大統領は、前述のように元軍政ナンバー4の陸軍大将出身で、33人の閣僚中27人が退役軍人だったが、ともかく格好は「民政移管」した。
   この民政移管は、ミャンマーの国内的には、これまで軍が独占してきた各種の権益を、軍と民間で分け合うという構図に変わった。そして対外的には、これまで中国が事実上独占してきた各種の権益を、中国とアメリカなどで分け合うという構図に変わったのだった。
   テイン・セイン大統領は、この「中国一辺倒」→「中国+アメリカ」という切り替えを、実に大胆不敵に行った。
   同年5月にまず北京を訪問し、胡錦濤主席と温家宝首相に仁義を切った。その上で同年9月、バラク・オバマ政権のデレック・ミッチェル特使を5日間も受け入れ、帰国後すぐにニューヨークで初の政府間高官協議を行った。その翌日、テイン・セイン大統領は唐突に、「ミソン水力発電所の計画中止」を発表したのだった。
   このニュースに世界で一番驚いたのは、当時の習近平・中国国家副主席だったに違いない。この巨大発電所計画は、「習近平マター」だったからだ。
   2009年12月、ミャンマーを訪問した習近平副主席は、来たる自分の政権の時代の中緬提携事業の象徴にしようと、意気軒高にミソン水力発電所の調印式に臨んだ。中国との国境近くに、ミャンマー最大規模の600万kwの巨大ダムを、2017年までに中国が建設するという事業だ。
   それが2年後に、一転して計画中止である。怒り心頭の習近平副主席は、テイン・セイン大統領のダム建設中止発表から2ヵ月後の2011年11月28日、ミャンマーの実力者を北京に呼びつけた。この時やって来たのが、今回の軍事クーデターの首謀者であるミン・アウン・フライン国軍総司令官だった。フライン総司令官は必死に、「今後とも中国との友好関係が揺らぐことはありませんと弁明した
   だが、その2日後、ド派手なピンクのジャケットに身を包んだヒラリー・クリントン米国務長官が、ミャンマーの首都ネピトーの空港に降り立ち、誇らしげに高々と右手を振り上げた。アメリカは長くミャンマー軍事政権に制裁を科していたため、56年ぶりとなるアメリカ国務長官の訪問で、振り上げた右手の先にある陸続きの中国を制圧するかのような仕草だった。
   さらに翌2012年11月19日には、オバマ大統領がミャンマーを訪問し、ヤンゴン大学で講演まで行った。
(4)
ミャンマーをアメリカから取り戻すため
  この頃、中国の外交関係者は警戒感を隠せず、私にこう述べた。  「アメリカの狙いは、わが国のミャンマー・ルートを断つことだ。わが国は現在、アメリカが睨みを利かせているマラッカ海峡を通さずに、中東の原油や天然ガスを運んで来られるよう、ミャンマーでパイプラインを建設中だからだ。ミャンマーのチャウピュー港から雲南省昆明まで、全長約1700kmで、このパイプラインを通じて、年間2200万tの原油と120億㎥の天然ガスの輸入を目指す」  このパイプライン計画は、習近平時代になって稼働した。具体的には、天然ガス用が2013年から、原油用が2017年からである。
   こうした経緯から、習近平時代のこの8年は、中国にとって「ミャンマーをアメリカから取り戻す期間」だったと言っても過言ではない。その間に、台頭するミャンマーの隣国インドや、伝統的な友好国である日本もプレーヤーとして参加し、ゲームは複雑化していったが、それでも中国は、ミャンマーをうまく取り込んでいった。
   その要諦は、アウン・サン・スー・チー国家顧問率いるNLD側と、フライン総司令官率いる国軍側の双方と友好関係を築くというものだ。昨年1月にミャンマーを訪問した習近平主席も、今年1月に訪問した王毅外相も、まずスー・チー顧問と会って、次にフライン総司令官と会っている。
   そのため、今回の軍事クーデターで、中国が国軍のバックについているという指摘は、正確でない。習近平主席は、10年前の「ミソン発電所事件」で、ミャンマーの軍幹部たちに懲りており、国軍派と民主派との等距離外交に努めてきたからだ。
   そのことを率直に語ったのが、2月15日にミャンマーの主要5紙(『Voice』『Eleven』『Seven Days』『Myanmar Times』『Frontier』)に掲載された駐ミャンマーの陳海中国大使の書面インタビューだった。やや長くなるが、中国の立場をよく説明しているので、以下全訳する
(5)
「中国は心からミャンマー社会の安定を願っている」
  ――中国はミャンマーのいまの情勢をどう見ているか?
    陳海大使: 「ミャンマーの友好的な隣国として、中国はミャンマーで最近発生した出来事について、高度に注視している。しばらく前から、われわれはミャンマー国内で噴出していた選挙を巡る争議を注意してきた。ただし、今回の政局の変化について、事前に知ることはなかった。
   NLD、国軍の双方と、われわれは友好関係にある。現在起こっている局面は、完全に中国が見たくないものだ。ミャンマーの各方が、憲法と法律の枠組みの中で、意見の違いにうまく対処し、政治と社会の安定を維持、保護することを願っている。
   先日、国連安保理の議長談話が発表された。それは、ミャンマーが緊急事態を宣言し、アウン・サン・スー・チー国家顧問やウエン・ミン大統領らが拘留されたことを高度に注視しており、拘留者の即時釈放を呼びかけるというものだった。合わせて、ミャンマー国民の民意と利益に従って、対話と和解を進めることを奨励するというものだった。中国は、安保理の関連する討論に参加した国として、ミャンマーの各界がそのような状況を望んでいるものと信じる。
   中国とミャンマーは引っ越せない隣国同士であり、近隣者として友好親善を望んでいる。われわれは、ミャンマー情勢の完全な回復を願っており、ミャンマーが不安定化すること、ひいては混乱する局面は望んでいない。  一部の過渡期の国はどこでも、自身の努力を通して困難と危機を克服していき、自国の国情に合った発展の道を模索していくものだ。ミャンマーの各方が、対話と協商を通して、当面の問題をうまく処理し、国の政治を一刻も早く正常な軌道に戻すことを願う」
   ――国際社会はあまねく、国軍に対して、アウン・サン・スー・チーらNLDのリーダーたちの即時釈放を要求しているが、中国はどのような働きかけを行うのか?
    陳海大使: 「アウン・サン・スー・チー主席がリーダーを務めるNLDと中国は、良好な関係にある。中緬運命共同体の建設を推進し、共同で中緬経済回廊などの実務協力を推進している。そのためわれわれは、アウン・サン・スー・チー主席らの処遇を注視している。国連安保理の関係する談話も、中国を含む国際社会の共同の立場を反映したものだ。
   中国は、ASEANと国連事務総長ミャンマー問題特使の斡旋努力を支持し、自身でも同様に建設的な働きかけを行っていく。その核心は、双方の対話を勧め、促すことだ。軍隊も政党も、ともにミャンマーという大家族の一員であり、ともに国家の安定と発展に歴史的責任を負っていかねばならない。
   和解すべきであって、対立すべきではない。団結すべきであって、分裂すべきではない。それがミャンマー国民の声だと信じている。ミャンマーの各方が対話と協商を通して、意見の食い違いにうまく対処することを願う。国際社会が取るべき行動は、ミャンマーの政治と社会を安定させ、混乱の激化回避に役立つものでなければならない」
    ――ミャンマーの隣国として、中国は当面の問題解決のため、どんな行動を取っていくのか?
    陳海大使: 「中国は心から、ミャンマー社会の安定と国家の発展を願っている。思うに、ミャンマーの国家と国民にとって最も重要なのは、心を砕いて国内政治の危機を解決する有効な方法を探し出すことだ。カギとなるのは意思疎通、対話だ。意見の相違を重ね合わせ、国内政治を正常な軌道に戻すことだ。
   それにはミャンマー軍、政党及び社会の各界が、国家と民族の根本的で長期的な利益の観点から(対話を)始めることが必要だ。政治の知恵を出し合い、政治の対話を押し広げていく。政治の解決の方法を探し出し、政治と社会の安定を維持、保護していくのだ。中国は現在も将来も継続して、そのための建設的な行動を発揮していく」
(6)
「SNSの噂は矛盾があり、悪意に満ちている」
  ――最近、ミャンマー社会では「不服従運動」(CDM)が起こっている。ミャンマーの中国大使館前でも連日、大規模なデモが行われているが、中国大使館としてどう捉えているか?
    陳海大使: 「最近、多くのミャンマー市民が街頭でデモを行っていることは注意しており、その一部は、中国大使館を含む外国の大使館及び国際組織の前でもデモや陳情を行っている。われわれは彼らの呼び声を理解しており、われわれが行っている対話の促進や奨励も、彼らの合理的な訴求を反映させたものだ。
   現在、ミャンマー国内の情勢は非常に厳しく、矛盾の対立局面は、今後さらに激化していくだろう。各方が、ともに冷静で自己規制の利いた態度を保持し、矛盾を激化させず、緊張状態をヒートアップさせないことを願う。こうした状況下で、特に暴力を使わず、市民の基本的な権利を維持し、保護すべきだ」
   ――中国は昨今のミャンマーとの関係をどう見ているか?
    陳海大使: 「ミャンマーの情勢の変化は、ミャンマーの内政ではあるけれども、疑いなくミャンマーと隣国との関係にも大きく影響してくる。ミャンマーの友好的な隣国として、われわれは両国の国民の利益を鑑み、いままさに穏健な形で対処しているところだ。
   例えば、両国の貿易を含む中緬両国の協力は、この頃、一定の影響を受けており、このことは多くのミャンマー人の生活にも関係してきている。中国の関係部門と地方自治体は、困難を克服し、安定した両国の国境貿易を確保するため、そしてミャンマーの民生を安定させるために、多くの努力、助力をしているのだ。
   また、中緬両国はすでに、新型コロナウイルスのワクチンに関しても、多くの効果的な提携を結んできた。すなわち、ミャンマー国民の生命と健康安全に関するワクチン購入などの事柄について、交渉を進めている。
   他にも、最近ミャンマーのSNS上で、中国と中緬提携項目に関する感情的な言論が噴出しており、中には事実とまったく異なるニセ情報まである。われわれは時に目を瞠(みは)ることがあり、少しでも多くのミャンマー国民に、真実を理解してほしい。そのことが両国の友好を維持し保護することでもある。
   われわれは、ミャンマーの国内事情によって中緬の友好協力が損なわれることに反対する。なぜなら、そうなれば最終的には、ミャンマー自身の利益を損なうことになるからだ」
   ――最近、SNS上で、中国の飛行機が技術者をミャンマーに送り込んでいるというニュースが飛び交っている。そこには、中国はミャンマー軍の「防火壁」建設を助けているとも書かれている。こうしたことの真相はどうなっているのか?
    陳海大使: 「そうした噂は注意している。いわゆる中国の飛行機が技術者をミャンマーに送り込んでいるとか、中国がミャンマーの防火壁の設置に協力しているとか、中国の兵士がミャンマーの街頭に出現したとかいった内容も含めてだ。私ははっきりと述べるが、そうした内容は、完全に荒唐無稽であり、失笑千万だ。
   それらの飛行機は、中緬間の正常な貨物便だ。コロナ禍の前には、毎日15便から18便降り立っていたが、コロナ禍の後は5便くらいに減っている。運んでいるのは、ミャンマーから中国に輸出される海産物などの貨物だ。中国は一貫して、ミャンマーの農水産品の重要な輸出先だ。
   それなのに、その飛行機に中国の技術者を乗せているとか、故意に『貨物便』のプレートを隠しているとかいうデマが飛び交っている。後になったら、飛行機にいわゆる『武器』を運んでいるとか書いている。別のものには、調味料を積んでいる写真が載っている。いろいろと矛盾があり、悪意に満ちている。
   そのようなデマが、今後出ないことを望む。もしもこうしたデマが、ミャンマーで市場を得ているのだとしたら、それは背後に別な勢力がいて、民心を操作し煽っているとしか説明できない。中国国民は、この種の問題に十分な関心を抱いており、多くの人がミャンマー国内で起きている奇怪な言論に対して意見を持っている。ミャンマー国民が事実を明確にし、政治利用されることを避け、両国の国民同士が友好的な感情を抱くことを願う」
   以上である。
(7)
近未来の中米・中印対決を見据え
  おしまいの問答にあるミャンマーのSNSの話は、先週のこのコラムでも書いたように、ミャンマー国内で飛び交っている、「国軍のバックに中国がいる」という噂を否定したものだ。
   そして、「背後に別な勢力がいて、民心を操作し煽っている」と指摘しているのは、アメリカのことを指すのだろう。北京政府は、香港のデモ同様だが、世界で中国を非難するデモなどが起こると、それはアメリカの策動、陰謀だと考える。いわゆる「アメリカ陰謀論」だ。
   それはともかく、私も陳海大使が釈明しているように、中国が一方的に国軍に肩入れすることはなく、国軍とNLDの双方と良好な関係を築いていると見ている。下手に国軍の側について、バイデン新政権の反中感情に火をつけたり、一年後の北京冬季五輪をボイコットされたりしては、たまったものではないからだ。また、これほど広範にデモが展開しては、国軍側が必ず勝利するとは限らない。

   7月に中国共産党創建100周年を控えた北京政府は、いまはとにかく平穏無事な国内及び国境環境を願っているのだ。だからこそ、昨年6月に国境付近で死闘を演じたインドとも、2月に和解した。
   実際、中国とNLDの関係も良好である。スー・チー国家顧問は、2017年4月と2019年4月に北京で開かれた「一帯一路国際協力ハイレベルフォーラム」に出席している。昨年1月には習近平主席がミャンマーを国賓として訪問し、スー・チー顧問と「中緬運命共同体」の宣言や、29項目にわたる提携の調印を行っている。
   重ねて言うが、中国が考えているのは、国軍とNLDの仲裁役となり、混乱回復後のミャンマーで、アメリカに取って代わって主動的立場を取り戻すことである。それこそが、近未来の中米対決、及び中印対決に有利になると考えている。
   本来なら、こうした仲裁役は、日緬の深い関係史から見ても、日本が担ってしかるべきだが、ミャンマー国内からも国際社会からも、日本に期待する声は上がってこない。そこに、一抹の寂しさを感じる。


2021.02.08-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210208/k10012855241000.html
ミャンマー クーデターから1週間 抗議デモ全国に拡大 衝突懸念

  ミャンマーで起きたクーデターから8日で1週間です。軍はアウン・サン・スー・チー国家顧問などの拘束を続け、体制固めを図っているのに対し、市民の抗議デモは全国に拡大し、8日もすでに街頭に人が集まり始めていて、治安当局との衝突も懸念されています。

  ミャンマーでは今月1日、軍がアウン・サン・スー・チー国家顧問やウィン・ミン大統領などを拘束したのち、閣僚や捜査機関のトップを次々と任命し、体制固めを図っています。スー・チー氏の弁護士によりますと、スー・チー氏は首都ネピドーの自宅で軟禁されていますが、今も面会は認められておらず、詳しい状況はわかっていません。
  現地の人権団体によりますと、7日時点で、クーデターに関連して拘束されている人の数は、政治家や政府職員、それに抗議活動に参加した学生など合わせて152人に上っています。これに対し、市民の抗議デモは日を追うごとに全国に拡大し、7日はヤンゴンで数万人が街頭に出てスー・チー氏らの解放などを訴えました。
  また、タイとの国境の町ミャワディーでは、デモ隊が警戒に当たる警官隊に近づいた際、警察官が空に向けて威嚇射撃を行いました。抗議活動は8日も各地で予定され、NHKヤンゴン事務所によりますとヤンゴン中心部では、先ほどから街頭に人が集まり始めていて、治安当局との衝突も懸念されています。


2021.02.04-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210204/mcb2102040803004-n1.htm
スー・チー氏を刑事訴追 ミャンマー国軍、本格排除に乗り出す

  【シンガポール=森浩】ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問率いる国民民主連盟(NLD)は3日、無線機を違法に輸入したとして、国軍のクーデターによって軟禁中のスー・チー氏が刑事訴追されたと明らかにした。有罪になれば選挙への立候補が制限される可能性があり、国軍がスー・チー氏の本格的な排除に乗り出した形だ。

  ロイター通信によると、国軍が首都ネピドーのスー・チー氏の自宅で6台の無線機を発見したという。同じく軟禁中のウィン・ミン大統領も、新型コロナウイルス感染拡大の防止を目的とする法令に違反したとして訴追された。
  国軍は2日夜、国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官を議長とする「行政評議会」を設立した。非常事態宣言下での事実上の最高意思決定機関。国内外で政権奪取への批判が強まる中、支配体制構築を本格化させている。
  行政評議会は11人で構成され、半数以上を国軍出身者が占める。3日にかけては、新たな選挙管理委員らも任命された。国軍はNLDが大勝した昨年11月の総選挙に「不正があった」と主張しており、自らの管理下での選挙実現に向けた布石とみられる。


2021.02.02-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/345e8ec6486f4e3aa509bf03861dc8af85d152d4?source=rss
ミャンマー国軍 見えぬ出口戦略 総司令官、スー・チー氏と確執か

  【シンガポール=森浩】1日のミャンマー国軍によるクーデターでは、ミン・アウ・フライン総司令官が強硬手段に出た理由として、昨年11月の総選挙の「不正」だけでなく、アウン・サン・スー・チー国家顧問との確執も焦点に上ってきた。
  ただ、フライン氏は実権を握ったものの、その出口を描き切れているのか、疑問を呈する見方は強い。
   「国軍は国政で主導的役割を果たさなくてはならない」。フライン氏は2016年の演説で、国軍の役割についてこう述べた。この年、15年の総選挙を受けてスー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)政権が成立した。発言は民意に関わらず、国政は国軍が推進するという決意を示した。

   フライン氏は1956年にミャンマー南部で生まれ、70年代にヤンゴンの大学で法律を学び、国軍に入った。国境地域での少数民族武装勢力の掃討で頭角を現した。眼鏡をかけた風貌は「司令官より事務員のようだ」(ロイター通信)と表現されるが、その実は国軍第一主義といえる。
   クーデターの実行は軍の影響力低下に危機感を持ったためとされるが、その不可解さを指摘する声は少なくない。

   スー・チー政権は国軍の影響力を支える憲法(2008年制定)の改正を目指したが、実現には上下両院議員の75%の賛成が必要だ。上下両院の25%が「軍人枠」であり、数の上では憲法改正はできない。憲法は内務、国防、国境担当の重要3閣僚の任命権も国軍に与えている。
   憲法は国軍の優位な立場を保障しているともいえるが、それでもなおクーデターに踏み切った背景には、フライン氏スー・チー氏に抱いていた不信感の高まりがありそうだ。
   フライン氏はインタビューなどで繰り返し、スー・チー政権誕生後、国軍と政府指導部で構成される「国防安全保障理事会(NDSC)」が開催されなくなったことに苦言を呈していた。スー・チー氏の「軍軽視」への反発だ。
   そもそも憲法の規定では外国籍の家族を持つスー・チー氏は大統領になれないが、国家顧問ポストを新設して事実上の国家指導者に就任したことへの不満もあった。
   不信感の決定打となったのが、NLDが昨年11月の総選挙で改選議席の8割超を獲得する圧勝を収めたことだ。フライン氏は軍人枠から「民意に後押しされた造反者」(外交筋)が出て改憲につながる可能性を警戒したという。
   フライン氏の総司令官としての任期は今年7月に切れる。NLD政権が民意の後押しを盾に、軍の反対を押し切って「改革志向の強い人物を推す可能性を警戒した」(地元ジャーナリスト)との指摘もある。
   国軍は1年間の非常事態宣言と国軍管理下での総選挙実施を表明し、NLD幹部らの拘束にも乗り出した。次期総選挙実施までにNLDに壊滅的打撃を与えたい意図が見えるが、国内のスー・チー氏への高い支持がこの間に消え去るとは考えにくい。英BBC放送「その1年間で何をするつもりなのか。長期的計画が見えない」と疑問を示している。


2021.02.02-読売新聞 オンライン-https://www.yomiuri.co.jp/world/20210202-OYT1T50049/
「民主化後退なら制裁」バイデン氏警告、中国はミャンマー国軍への非難避ける

   【ワシントン=横堀裕也、バンコク=津田知子】米国のバイデン大統領は1日、クーデターで政権を転覆させたミャンマー国軍に対し、「民主主義や法の支配への移行プロセスに対する直接的な攻撃だ」と声明で非難した。「民主化が後退すれば、我々は直ちに制裁の見直しを行う」と、経済制裁などの復活も警告した。

   国軍は1日、事実上の政権トップ、アウン・サン・スー・チー国家顧問や、ウィン・ミン大統領ら与党・国民民主連盟(NLD)幹部らを拘束した。バイデン氏は、「国民の意思を覆したり、信頼できる選挙結果を消し去ったりする目的で武力を用いてはならない」と訴えた。
   バイデン氏は国軍に、権力を放棄し、スー・チー氏らを解放するよう求め、各国には、「国際社会は声を一つにして圧力をかけるべきだ」と呼びかけた。
   米国はかつて、ミャンマーに民主化を促すため経済制裁を続けてきたが、オバマ政権が2016年に解除を決めた。国軍が態度を改めなければ、米政府は制裁を再び発動する可能性がある。

   国軍は、情報統制も強化している。NLD関係者によると、スー・チー氏のNLD党首専用フェイスブックのアカウントが1日夜、国軍の管理下に置かれた。アカウントは残っているが、NLD側からは操作できず、乗っ取られた状態だ。
   NLDはこのアカウントを通じて、スー・チー氏が拘束される前に残した声明を発表し、国軍に抗議するよう国民に訴えていた。国軍は影響力の強さを警戒した模様だ。
   スー・チー氏は2日も、首都ネピドーの自宅で軟禁されている。ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官の1日の声明によると、「国会議員を含め、少なくとも45人が拘束されている」という。一方、地方政府の関係者の一部は1日夜に解放された。
   緊迫するミャンマー情勢を受け、国連安全保障理事会は2日午前(日本時間3日未明)、非公開会合をオンラインで開き、対応を協議する。2月の議長国を務める英国のバーバラ・ウッドワード国連大使は、「安保理の目的は民主主義の回復、拘束された人々の解放、クーデターの終結だ」と強調した。「あらゆる措置を検討したい」とも語り、制裁について議論することも示唆した。
   ただ、常任理事国の中国は、協力関係にあったミャンマー国軍への非難を避けている。安保理が結束して国軍に強い対応を打ち出せるかは不透明だ。


2021.02.02-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/210202/wor2102020007-n1.html
ミャンマー国軍、閣僚11人任命 数百人拘束、スー・チー氏は自宅軟禁

  【シンガポール=森浩】1日のクーデターで実権を握ったミャンマー国軍は2日未明までに、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相ら24人を解任し、新たに11人を任命した。クーデターによる拘束者は、スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)関係者ら数百人に及ぶもようだ。

  新たに任命された閣僚は国軍出身者が中心。国軍系テレビによると、スー・チー氏の後任の外相にはワナ・マウン・ルウィン氏が起用された。同氏も元軍人で、国軍系の連邦団結発展党(USDP)によるテイン・セイン政権(2011~16年)時代に外相を務めた。計画・財務・工業相に任命されたウィン・シェイン氏もテイン・セイン政権の財務相だった。
  NLD報道担当者によると、スー・チー氏とウィン・ミン大統領は、それぞれ首都ネピドーの自宅で軟禁されている。1日のクーデターでは、ネピドーにいたNLD議員やNLD出身の地方トップらが相次いで拘束された。1日には昨年11月の総選挙後初めてとなる議会が招集される予定で、議員らはネピドー入りしていた。
  また国軍に批判的だったジャーナリストも拘束されたもようだ。


2021.02.02-東京新聞 TOKYO WEB-https://www.tokyo-np.co.jp/article/83525
ミャンマー政変 民主化台無しの暴挙だ

  ミャンマーで、国軍がアウン・サン・スー・チー国家顧問らを拘束し、軍事クーデターで国家権限を掌握した。選挙の結果を批判し選挙を経ない政変に走った。民主化の成果を台無しにする暴挙だ。

  スー・チー氏に代わり、国軍のミン・アウン・フライン国軍総司令官が全権を掌握した。ミャンマーは、半世紀の軍事政権と民政移管期を経て二〇一五年総選挙で勝ったスー・チー氏らの民主化が進む。
  しかし、憲法の規定で議会議席の25%を無選挙で占めるなど依然国軍の政治的な力は絶大逆に改憲には議席の75%超が必要とも定め、国軍に不利な見直しは難しい。
  クーデターの直接の引き金は昨年十一月の総選挙。スー・チー氏の与党が圧勝し、国軍系の野党が大敗したが、国軍は選挙の前からコロナ禍による延期を主張。結果にも「二重投票などがあった」と不正を議論する臨時国会を求めたものの、与党に退けられた。
  与党は「25%条項」など国軍に有利な憲法の改正を望む。昨年、実際にそれを求める法案を否決されたが、今後も国際社会の世論をバックに同様の提案が出る可能性が高かった。こうした動きに国軍側は危機感を抱いたとみられる。

  一方、スー・チー政権誕生後のミャンマー経済の好転は目覚ましく、国際社会が経済制裁に動く場合、国軍がどう対処するか不透明だ。ただ、名古屋学院大の鈴木隆教授(国際政治学)は「外圧をかけすぎると中国に接近しかねない」と制裁があった場合、国際覇権に影響する可能性も指摘する。
  民主化が進んだ後に日本との間の経済交流も一気に活発になっており、ミャンマーには日本人三千人が在留し、近年の輸出入額は計二十億ドル。加藤勝信官房長官は「当事者が対話で平和裏に問題を解決することが重要」と述べているが、事態打開へより積極的に関わるべきだろう。

  また、国軍兵士の弾圧で隣国バングラデシュへ約百万人が逃げ出したイスラム教徒少数民族ロヒンギャの問題は「当事者」の政権掌握が常態化すれば、帰還という解決は一層遠のいてしまう。
  民主主義の根幹をなす選挙結果を受け入れず、暴力的に権力を奪取する手法は到底容認できない。国際社会でも特に、東南アジア諸国連合(ASEAN)は、結束を維持するためにも「内政不干渉」の原則を棚上げして問題解決に当たってほしい。まずは、スー・チー氏らの早期釈放を求めたい。


2021.02.01-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/210201/wor2102010020-n1.html
中国、国軍との関係でミャンマーへの影響力強める 欧米の制裁で加速か

  【北京=三塚聖平】ミャンマー国軍がアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相らを拘束して全権を掌握したと発表したことは、中国がミャンマーへの影響力を強めることにつながりそうだ。中国は、軍事政権時代のミャンマーにも経済支援を続けてきた経緯があり、欧米諸国が制裁など厳しい措置に踏み切れば、それを好機と捉えて関係強化を加速させるとみられる。

  中国外務省の汪(おう)文(ぶん)斌(ひん)報道官は1日の記者会見で「不一致を適切に解決し、政治と社会の安定を守ることを望む」と述べた。米国がスー・チー氏らの拘束を非難したのとは対照的に、事態の評価を避けた形だ。
  中国は歴史的に、国境を接するミャンマーとの関係を重視してきたが、とりわけ軍政時代に欧米諸国がミャンマーに経済制裁を科す中で経済支援を通じて密接な関係を築いた。その後、2011年の民政移管を受けて欧米諸国が経済制裁を解除し、スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)主導の政権が発足。それにより外国投資の呼び込みが進んで、中国の影響力は相対的に弱まっていた。

  風向きが変わったのは、ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャへの迫害問題だ。欧米諸国の圧力の強まりを機に同国は再び中国に接近し、昨年1月には習近平国家主席が中国の国家主席として19年ぶりにミャンマーを訪問。今年1月にも王毅国務委員兼外相がミャンマーでスー・チー氏と会談し、新型コロナウイルス対策として中国製ワクチン30万回分の提供を申し入れたばかりだった。
  習氏は、ミャンマー訪問時にミン・アウン・フライン国軍総司令官とも会見するなど国軍側とも関係を築いている。欧米諸国の反発に直面する国軍に対し、中国は経済支援などを通じて接近する可能性がある。

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軍政復活 ミャンマーが中国に傾斜する可能性-2021.02.01-産経新聞 THE SANKEI NEWS-
https://www.sankei.com/world/news/210201/wor2102010027-n1.html

  ミャンマー国軍がクーデターに踏み切った背景には、スー・チー氏率いるNLD政権下で進んだ求心力低下への危機感がある。議会招集初日にクーデターを起こすことで第2期スー・チー政権誕生を阻止した形だクーデターに対して欧米諸国が批判の声を強める中、新軍事政権は中国との結びつきを強める可能性もある。
  「法律を守らない人がいるなら、憲法であっても廃止されるべきだ」。クーデターで実権を握った国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官は1月27日、真意不明なこんな発言をしていた。国内には、選挙結果に不満を抱いていた国軍がクーデターを狙っているのではないか-との観測が急速に広がった。

  NLDは2015年総選挙で政権を握り、昨年11月の総選挙でも大勝独立の英雄アウン・サン将軍の娘であるスー・チー氏の人気は根強く、約半世紀にわたって国政を主導した国軍の存在感は低下していた。軍政に「腐敗」のイメージが付きまとっていたことも支持離れの原因の一つだ。
  NLD政権下で国軍は“抵抗勢力”と化した。スー・チー氏は少数民族武装勢力との和平推進を目指したが、主導権を握りたい国軍の全面協力は得られなかった。軍政下の08年に制定された憲法改正に乗り出したことにも国軍は反対した。
  国軍は強引に全権を掌握したが、ヤンゴンなど都市部を中心にNLDへの支持は厚く、国内での反発が予想される。民主主義を否定する形での政権奪取劇によって、欧米諸国との関係悪化は避けられない。
  ただ、国軍は伝統的に中国と関係が深い。欧米諸国が「民主化の頓挫」を理由に国軍批判を強化すれば、手を差し伸べるのは中国だろう。中国、インド、東南アジアをつなぐ要衝に位置するミャンマーが今後、「自由」と「強権」のどちらに傾いていくのか。アジアの未来を考える上で、新軍事政権への対応は重要な意味を持っている。(シンガポール 森浩)

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ミャンマーの市民「クーデターに怒り」 ヤンゴン市内は混乱なし-2021.02.01-産経新聞 THE SANKEI NEWS-
https://www.sankei.com/world/news/210201/wor2102010018-n1.html

  【シンガポール=森浩】ミャンマー国軍が1日未明、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相らを突然拘束し、クーデターに乗り出したことは国内に衝撃を与えた。スー・チー氏が率いる与党の国民民主連盟(NLD)は昨年11月の総選挙で国民の圧倒的支持を得ていただけに、「クーデターに怒りを覚える」との声が上がった。
  最大都市ヤンゴンの市役所前周辺には国軍兵士が集まり、厳戒態勢となった。国内ではインターネットや電話がつながりにくい状態が続いた。
  産経新聞通信員によると、ヤンゴンでバスやタクシーは平常通り運行しており、市内に大きな混乱は見られない。今後の混乱拡大を懸念して、市民が食料品などを買い込む動きがあり、ATM(現金自動預払機)にも列ができているという。
  ヤンゴンに住むNLD支持者の男性(35)は「クーデターに怒りを覚える。民主的なプロセスを破壊した」と国軍を批判した。国内では1月27日から新型コロナウイルスのワクチン接種が始まったばかり。男性は「接種計画にも影響が出るだろう。国は(コロナ禍で)経済的に厳しい状況でもあり、クーデターは行われるべきではない」と話した。
  一方、国軍を支持する男性(40)は、「議席を獲得するため、NLDは投票でいくつかの詐欺的行為を働いた」と主張した。


2021.02.01-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210201/k10012843241000.html
スー・チー氏ら拘束か ミャンマー軍が非常事態宣言 政権を掌握

  ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問や与党の幹部について、ロイター通信などが相次いで拘束されたと伝えました。ミャンマー軍は非常事態宣言を出し、去年11月に行われた総選挙での不備や不正を調査するとともに、ミャンマー軍のトップが大統領権限を超える立場で国を統治すると表明し、軍が政権を掌握したことを明らかにしました。

  ミャンマーの与党NLD=国民民主連盟の報道官は1日、ロイター通信に対してアウン・サン・スー・チー国家顧問やウィン・ミン大統領のほか、与党の幹部が相次いで拘束されたと明らかにしました。
  AFP通信も同じ報道官の話として、スー・チー氏は首都ネピドーで拘束され、「軍に連れ去られたと聞いている」と伝えています。
  ミャンマー軍は1日午前、国営テレビを通じて、非常事態宣言を出したと発表しました。
  由について、去年11月に行われた総選挙での不正や不備を調査するためだとして、1日から予定されていた総選挙後初めてとなる議会の開会を延期することを明らかにしました。
  そして、副大統領で軍出身のミン・スエ氏が臨時の大統領を務めるとしています。
  さらに、この大統領権限を超える立場で、ミャンマー軍のトップ、ミン・アウン・フライン司令官が国を統治すると表明し、軍が政権を掌握したことを明らかにしました。
  最大都市のヤンゴン市内ではインターネットがつながりにくい状態になっています。
  ミャンマーでは去年11月、5年に1度の総選挙が行われ、NLDが改選議席の8割以上を獲得して圧勝した一方で、旧軍事政権の流れをくむ野党が大きく議席を減らしました
  この総選挙をめぐってミャンマー軍は、有権者名簿に数百万人に上る名前の重複が見られるなど多くの不備や不正があったと訴え、政府や選挙管理委員会に対して調査や対応を迫っていました。
  軍は1日から予定されていた議会の開会を前に、昨夜も「このまま次のステップに進むべきではない」などと声明を出していました。

最大都市 ヤンゴン市の状況は
  ヤンゴンに駐在する日系企業の永橋仁人さんはNHKの取材に対し「会社からは自宅に待機するよう指示されている。外を見るかぎり人通りや車の通行量はいつもより少なくなっている。アウン・サン・スー・チー氏の自宅の周辺に軍の兵士が大勢待機している様子が見えると、会社のスタッフから連絡があった。インターネットは時々つながるようになったが、電話はつながらない」と話しています。
  また、ヤンゴンの外資系企業で働くミャンマー人の女性はNHKのオンラインでの取材に対し「通信手段はすでに遮断されていて一部の無線通信以外はつながらず、私も両親や友達と全く連絡がとれない。たくさんの人が銀行のATMに行って現金を引き出そうとしているところだが、インターネットがつながらないためか、引き出せない状態になっているようだ」と話しています。

アウン・サン・スー・チー氏とは
  アウン・サン・スー・チー氏は、建国の父として国民から尊敬されているアウン・サン将軍の長女として生まれ、1985年から翌年まで京都大学東南アジア研究所の研究員として来日し、ミャンマーの独立運動などの歴史について研究しました。
  帰国後は民主化運動のリーダーとして活動しますが、1989年、当時の軍事政権によって自宅に軟禁され、政治活動を禁止されます。
  1991年には、たび重なる弾圧にも屈せず、非暴力によって民主化を求め続けたとしてノーベル平和賞を受賞しました。
  延べ15年にわたる自宅軟禁から解放されたスー・チー氏はNLD=国民民主連盟を率いて2015年の総選挙に臨み、およそ8割にあたる390議席を獲得して圧勝し、軍主導の政治を終わらせ歴史的な政権交代を果たしました。
  スー・チー氏は国家顧問として事実上政権を主導してきました。NLDは去年11月の総選挙で前回を上回る議席を獲得して圧勝し、さまざまな少数民族政党に協力を呼びかけるなど、政権2期目に向け足場固めを進めていました。
政府 事態の推移注視
  政府は現在、事実関係の確認を急ぐとともに、事態の推移を注視することにしています。
  そして、現地に滞在している日本人の安全確保に万全を期し、ミャンマーの総選挙をめぐって国内が緊張していることについては、関係者が対話で解決するよう粘り強く働きかけていくことにしています。
加藤官房長官「在留邦人に注意喚起」
  加藤官房長官は午前の記者会見で「けさ、在ヤンゴンの日本大使館から『ミャンマーにおいて国軍がアウン・サン・スー・チー国家最高顧問ほか政権幹部を拘束したもよう』との1報があり、現地の大使館を通じて詳細な事実関係の確認を進めているところだ」と述べました。
  そのうえで「ミャンマーにおいては、昨年11月に実施された総選挙の有効性に疑義を呈する国軍と、政府および選挙管理委員会との間で緊張感が高まる状況にあったと承知している。わが国は民主的プロセスにのっとり、当事者が対話を通じて平和裏に問題を解決することが重要と考えており、これまでも関係者に対してその旨を働きかけてきた」と述べました。
  そして「現地の大使館から在留邦人に対し、本件についてメールで周知し、注意喚起を行ったところだ。現時点で市街にて衝突等との報には接していないが、今後とも随時、状況をアップデートして必要な対応を講じていきたい」と述べました。
国際社会から懸念や批判
  ミャンマー情勢について、国際社会からは懸念や批判の声が上がっています。
  アメリカ、ホワイトハウスのサキ報道官は声明を発表し「ミャンマー軍が民主化への移行を損なう措置をとったという情報を警戒している」としたうえで、バイデン大統領が、安全保障問題を担当するサリバン大統領補佐官から説明を受けたことを明らかにしました。
  そのうえで「アメリカは、最近の選挙結果を変えようとするいかなる試みにも反対する。こうした措置が取り消されなければわれわれはその責任者に対して行動を起こす」とし、状況によって何らかの措置をとる可能性に言及しました。
  またブリンケン国務長官も声明で「ミャンマー軍に対し、拘束されたすべての人の解放と去年11月の選挙で示された民意を尊重するよう求める」としています。
  さらに国連のグテーレス事務総長も「アウン・サン・スー・チー国家顧問とウィン・ミン大統領などが議会の開会直前に拘束されたことを強く非難する。軍の指導層に対して、ミャンマー国民の意志を尊重しいかなる立場の違いも平和的な対話を通じて解決されるべきだという民主主義の規範を順守するよう求める」とする声明を出しました。
  そして、オーストラリアのモリソン首相も会見で「われわれは長年にわたって民主化への移行を支援してきた」と述べ、ミャンマー情勢に懸念を示しました。
  また、国際的な人権団体アムネスティ・インターナショナルは「拘束された人々が国際法を犯していないかぎり、直ちに解放されなくてはならない。拘束は、軍当局がいかなる反対意見も許さないというぞっとするメッセージだ」とする声明を発表し、軍を批判しました。


日緬関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


























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