換気と非接触-2



換気
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  換気は、特定の空間の空気環境を維持、または改善するために外気を取り入れて内部の空気を排出する(入れ換える)ことである。

目的
 換気の目的には健康・快適を目的とした保健換気産業プロセスのための産業プロセス換気とがある。
 1保健換気 : 在室者の健康や快適さ、作業能率の保持
   呼吸に必要な空気の供給。
   病原体の除去・拡散防止。
   有害ガスの除去・拡散防止。
   臭気の希釈。
   湿気の排出。
   の排出。
  2産業プロセス換気 : 産業プロセスに適した空気環境の保持、施設の保全、機械や格納品の適正保管
  3燃焼物に必要な新鮮空気供給
  4動植物飼育栽培

保健換気
  空気の入れ替えの行われない空間に長時間在室することは、利用者の身体にとって好ましくない。呼吸により二酸化炭素を排出し、酸素を取り込むほか、人間は水蒸気・熱・体臭などをたえず発し、それによって室内空気環境は刻々と変化していく。建材に含まれるホルムアルデヒドアセトアルデヒドトルエンなどの有害物質が人体に与える悪影響も、シックハウス症候群として知られている。また、排泄喫煙調理食事などの行為も、空気環境を大きく変化させる要因である。
  通常は二酸化炭素の増加や酸素の減少が呼吸に支障をきたすというより、むしろそれ以前に熱や湿気、臭気が在室者に頭痛吐き気をもたらす。こうした現象を防ぎ、人の健康状態を守るために行われるのが保健換気である。
  感染症対策において、リスク要因の一つである「換気の悪い密閉空間」とは、一般的な建築物の空気環境の基準を満たしていないことを指すものと考えられる。その意味では、ビル管理法の基準に適合させるために必要とされる換気量(30 m3/(h・人)=CO2濃度:1000ppm以下)を満たせば、「換気の悪い密閉空間」には当てはまらないと考えられる。
産業プロセス換気
  人の健康維持を目的に行われる保健換気に対し、生産・保管に際して物品の品質管理のために行われるのが産業プロセス換気である。
  精密機器などの工場では、わずかな粉塵が製品の品質を下げることになり、高温・多湿状態は食品腐敗プラスチックの変形、変色などにつながる。燃焼をともなう工程では、消費される酸素をたえず補給しつづける必要があり、換気は欠かせない。また、製造工程で特に有毒ガスや粉塵が大量に発生するような場合は、単純に室外の空気を入れ替えるだけでは周辺環境を汚染するため、特殊な浄化措置を行う。
換気の種類
  設備に機械を利用するか否かによって自然換気機械換気に分けられる。両者を併用する場合は、ハイブリッド換気と呼ばれる。
自然換気
  自然換気は、自然通風や空気の温度差による煙突効果を利用するもので、パッシブ換気とも呼ばれる。第四種換気と書かれることもあるが、完全な誤用である。機械換気と比較して、省エネルギーであるが、常に一定流量を確保することができない。
  風力換気
   などの通気口を2箇所以上設け、その風圧差を利用する。
  温度差換気
   煙突効果・重力換気 : 室内の空気が暖かいと比重が小さくなり、上昇する性質を利用する。
機械換気
  機械換気は、換気扇送風機を使用して換気を行うものである。強制換気動力換気とも呼ばれる。
第一種機械換気
  給気・排気とも送風機を使用するもの。室内の圧力を一定に保つためには、給気量と排気量を等しくする必要がある。
第二種機械換気
  給気を送風機で行い、排気を通気口で行うもので、室内が正圧となる。手術室クリーンルームなど汚染空気の流入を防止する必要のある場所で用いられる。
第三種機械換気
  給気を通気口で行い、排気のみに送風機を使用するもので、室内が負圧になる。厨房便所廃棄物処理室などの臭気の発生する場所、燃焼機器・危険物取り扱い場所などの有毒ガスの発生する場所からまわりへ空気を流出させないために用いられる。一般的な住宅では第三種機械換気が用いられている。

換気手法
全般換気(希釈換気)
  室内全体の空気を入れ替えるもの。
局所換気
  排出源の近傍にフードやシュラウドなどを設け、汚染された空気を拡散する前に排出するもの。
置換換気
  汚染された空気を給気との密度の差により上昇又は下降させ排出するもの。

法的規制
   建築基準法
   建築物における衛生的環境の確保に関する法律 : 室内環境の基準が定められている。
   消防法 : 排煙設備・危険物取り扱い場所などの換気について定められている。


ワイヤレス電力伝送
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  ワイヤレス電力伝送コードレス電話電気シェーバー電動歯ブラシなどの機器において、金属接点やコネクタなどを介さずに電力を伝送すること、およびその技術である。ワイヤレス給電ワイヤレス充電非接触電力伝送などとも呼ばれる。二次電池を内蔵した機器に電力を送る場合、非接触充電などと呼ばれる。
  このうち電磁誘導を利用した技術は電磁気学相互誘導作用を基本としながら、これに高度共振の概念を導入している。

歴史
  構想は20世紀初頭にニコラ・テスラが考案したテスラコイルを用いて世界システムと呼ばれる電力を送る構想があった。これは電離層の反射を利用するというものであり、今で言うならばシューマン共鳴を利用しようとしたものであると考えられるが、当時はまだシューマン共鳴は発見されておらず、また実験している周波数が高過ぎたことにより失敗した。その後、いろいろな研究が進められ、現在では放射エネルギー(マイクロ波)を利用した発電衛星の研究が行なわれている。
  非放射のエネルギーである磁場を利用したものを列挙すると、
    1891年にBarton R. Shoverにより電車の誘導集電(Electric Railway)として実用化の試みがあった。
    1974年にはアメリカの発明家ジョン・ジョージ・ボルガーにより電気自動車への給電の試みが行われていた
    1979年にジョン・ジョージ・ボルガーはスイッチト・キャパシタ方式による電気自動車の電力制御に関する発明を行っている。
    1989年にWiTricityの磁界共振と全く同じ原理の回路がエイト電子より出願 されており、同原理をもとに現在はモバイルFeliCaを筆頭に、いろいろな方式が実現されている。いずれも伝送エネルギーは低いものである。
    1993年にオークランド大学のジョン・ボーイズらの理論に基づく世界初の非接触給電搬送システム が株式会社ダイフクによって実現された。
    1994年に村田製作所の開発者が『磁界共鳴技術』を発表した。
    2006年11月マサチューセッツ工科大学 (MIT)のマリン・ソーリャチッチが「WiTricity」という結合モード理論に基づく磁界共振技術の実用化の可能性を発表した。
    2010年7月にはWireless Power Consortium (WPC) によって国際標準規格『Qi』が策定された。5W以下のモバイル端末向けの規格ではあるが国際規格の策定により2011年以降の普及が見込まれており、今後ノートパソコン等を対象とした最大120Wまでの規格策定も行われる
原理
  非接触での電力供給を可能にする技術としては2017年現在で6種類方式があり、大きく分けると放射型と非放射型とに分かれる。非放射型のうちで電磁誘導を用いた「電磁誘導方式」、電磁誘導方式の改良であって、コイルが共振する際に生じる磁界の調相現象を利用した「磁界共振方式」が有力視されている。 また、放射型としては電力を電磁波に変換しアンテナを介して送受信する「マイクロ波方式」は遠方に届く方式として研究が進められている。
  単純な電磁誘導を用いた方式は原理としては電磁誘導そのものであり、磁束を媒体として受信側コイルに送電する。このとき結合係数kが小さいと効率が低下する。kは相互インダクタンスに依存し、これが距離に依存するため、結局は距離によって依存するパラメータとなっていて、離れたコイル間では相互インダクタンスが小さくなり、コイルのほとんどが漏れインダクタンスになってしまうため、この漏れインダクタンスによって生じる短絡インダクタンスが無効電流を増やして銅損を増加させ、効率を低下させる。そのため、小さなコイルを用いた場合は非接触といえないくらいほど近い距離での送電しかできず、主にコードレス電話や電動歯ブラシなどの充電をはじめとして、IH調理器などの近距離送電の用途に用いられるのがせいぜいであった。 電磁誘導方式ではこれを改善するため短絡インダクタンスと共振容量を組み合わせた共振(広義の磁界共振)を早くから採用し、SuicaiDなどに用いられるFeliCaの伝送距離を伸ばしている。
  いずれも少しでも伝送電力を大きくしようとすると送受信デバイスの位置ずれや受信デバイスの磁性体が近づくことによる表皮効果に良く似た現象(近接効果)による損失により効率が低下するのでこれが大電力ワイヤレス電力伝送における課題になっている。
二つの磁界共振方式
  磁界共振方式については1993年より日本で実用化が始まったオークランド大学の方式 と、2006年11月マサチューセッツ工科大学 (MIT) が大ギャップ電力伝送の実用化の可能性を発表した 方式がある。これらの方式の大きな違いは共振器を一次側に配置するか二次側に配置するか、あるいは一次側と二次側双方に配置するかにある。
  MITが発表したものは二組のコイルとコンデンサによる共振器同士が共鳴(共振)して結合されることから、「電磁界共鳴方式」「共振結合方式」とも呼ばれる。開発者であるマリン・ソーリャチッチはこの技術を無線 (wireless) と電気 (electricity) を合わせた造語である「WiTricity」と名付けて 同名の法人を設立した。WiTricityではこの技術についてHighly Resonant Wireless Power Transferであると説明している。この結合は電磁界結合や電磁界共鳴と呼ばれることがあるが、正確には電界磁界は別物であり、電界のみを使って電界結合をすることと磁界のみを使って磁界結合をすることとは別々の考えである。或いは電界と磁界の双方を使用することをもって電磁界結合と称すると解釈して解析するも、電解と磁界とが共存する場合は互いに悪影響を及ぼすこともわかってきたためにこの呼称は不適切であるとして、現在は磁界共振という呼称が適切であるとされている。

  WiTricityの理論説明や概念によれば、磁界共振の原理は遠く離れた音叉が同じ共振周波数によって共鳴する性質を利用したものとされており、コイルとコンデンサで共振する二つの共振器の間における非放射型のエネルギー転送は共鳴場エバネッセント・テールの結合というものが介在し、この共鳴場の結合によって非放射の電磁的共鳴エネルギートンネルが生じ、この非放射の電磁的共鳴エネルギートンネルを通じて電力をやりとりすると、結合係数kが0.1あるいはそれ以下という相当な疎結合の状態であっても高効率で送電できるため、電磁誘導よりも長い距離を伝送できると説明される。この点に関してMITの研究者らは無線で電力を転送する新しい方法を発見したと考えている
  さらにMITの研究者らはワイヤレス電力伝送の説明に微視的な量子力学的電磁場放射の電磁エネルギー共鳴トンネル効果に例えて説明しようとしたがこれは批判された。MITのマリン・ソーリャチッチは当初この共鳴場エバネッセント・テールの結合を伝送路と仮定していたために理論最大効率は50%であると考えていた。そしてこの理論のもとに2m先の電球を25%の効率で点灯し電力伝送に成功したと発表した。ところがその後、この理論の誤りに気づいて理論が修正され、理論最大効率がkQ積に依存するという新たな理論のもとでギャップ1mで約90%、2mで約45%程度の効率を実現した。
  これは、コイルとコンデンサによって構成される共振回路のQ値を高めることにより実現される。Q値は高ければ高いほどよいとされるが、Q値を高め過ぎると高い周波数精度が必要になり、伝送系の設計が困難になる。

  伝送系の理論効率はkとQとの積kQ積に依存すると言われている。MITの磁界共振方式では二組の共振コイルとは別に電力供給用のコイルと電力取り出し用のコイルをそれぞれの共振器に近づけて配置することが一般的である。
  MITの方式は送受信デバイスの位置ずれに敏感であるが、効率を犠牲にすることにより送受信デバイスの位置ずれの許容度を高めたり、複数のデバイスに同時に電力を供給することは可能である。高効率を求めると複数のデバイスに対しての送電が困難になるが、高効率かつ大ギャップでの無線電力伝送が実現できることが評価され、IEEEにより「世界を変える7つの技術」に選定され、またその完成後の市場規模は青色発光ダイオードを大きく超えると言われている。
  また、電力とデータを同時に伝送できる技術として、サーフェイスLANがある。これは、電磁波の波長以下の領域に現れるエバネセント場を利用した非放射の電力伝送である。
  ディズニー・リサーチ環状ソレノイド内の磁束密度がほぼ一定になるという原理を用いて、部屋中のどこへ置いても充電ができるという準静空洞共鳴方式を公表している。これも非放射の磁界共振に分類される技術である。
放射型に分類される方式
  一方、送電にレーザー光を用いる方法があるが、これは放射型に分類される。 放射型として、微弱なマイクロ波を用いたCotaやWattupが提案されており、磁界共振よりも遠くに電力伝送ができる技術として注目されている。また宇宙で発電してマイクロ波やレーザー光で地上に電力を送る宇宙太陽光発電も研究されている。超音波で電力伝送を行うuBeamも提案されている。この技術も放射型に分類される。
問題点
  一般に、電磁誘導方式、磁界共振方式はともに非放射のエネルギーを利用するべく近傍界で電力のやり取りが行われるため、近傍界で定められた距離以上の伝送は困難である。また、コイルの大きさや結合係数kと共振回路のQ値が伝送距離を大きく左右するため、小さなコイルやコンデンサでは長距離伝送が困難である。
  また、いずれの方式も送受信デバイス間の位置ずれに弱く、損失が大きい。損失のうち支配的なものは銅損であり、表皮効果による損失もあるので近距離であっても100%近い効率で伝送できるわけではない。
  電磁誘導方式では給電システムを考える際、受信デバイスを検出する必要があるため、大きなコイルを一つ使うよりも小さなコイルを複数用いた装置が実用化されている。
  WiTricityの磁界共振方式は結合モード理論: Coupled Mode Theory)に基づいているとされるが難解であり、原理の説明には従来の電磁気学や電気工学で十分なのではないかと言われている。また送信・受信の双方に共振器があり、それらの共振器の共振周波数を正確に合わせる必要がある。さらにインピーダンスマッチング・ネットワーク(IMN)を必須としているが具体的な回路構成が明確でない。さらに結合モード理論ではコイル間の位置ずれによって共振周波数が変化する点について言及がない。しかしながら実際にはコイル間距離の変化によって共振周波数が変化するためその問題をどうやって結合モード理論に取り入れるか、コイル間距離が近接した場合に現れる双峰特性をどのように解決するかなどの問題が山積みであり、それらを解決するための理論構築や具体的回路設計が容易に行えないことが難点である。
  これらの問題、即ち位置ずれに関する自由度はロバスト性と呼ばれているが、MITが提唱する現在の結合理論に基づく限りロバスト性を高めるには効率を犠牲にするしかなく、そのような方法で解決できることは既に確認されている一方、結合モード理論のもとで効率とロバスト性の双方を同時に解決することができるか否かが大きな課題になっている。











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