NTT法-1


2023.11.24-日経 XTECH-https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00745/112100174/
NTT法を巡る主張の応酬が激化の一途、禍根を残さず結論を出せるのか

(1)
  「日本電信電話株式会社等に関する法律(NTT法)」を巡るNTTと競合による主張の応酬が激しさを増している。記者説明会や決算説明会にとどまらず、SNSにまで舞台を広げ、互いの意見を厳しく批判し合う状況となっており、収束の兆しは見えない。このままでは業界に大きな禍根を残し、日本の通信産業に深刻な悪影響を及ぼしかねない。

「特別な資産」を巡り双方の主張は平行線
  NTT法の見直しを巡る議論については以前もこのコラムで取り上げている。時代にそぐわないNTT法の見直しを求め、最終的には廃止されるのが妥当という見方を示すNTT。一方、競合のKDDIやソフトバンク、楽天モバイルなど180者は、NTT法が廃止されると日本電信電話公社の時代から引き継いだ「特別な資産」を持つNTTグループの一体化が進むとして猛反対している。NTTと競合との溝は深い。
  各社が2023年11月に実施した決算説明会でも、NTTと競合とがそれぞれNTT法に関する独自の主張を展開。互いに相手を批判した。NTTの島田明社長は2023年11月7日の決算説明会において、競合が懸念する特別な資産を持つとされるNTT東日本及びNTT西日本(NTT東西)とNTTドコモを統合する考えはないと改めて強調電気通信事業法の禁止行為規定そのことを盛り込めばよいと説明した。

  その特別な資産に関しても、民営化された時点で株主、現在では政府や民間の株主に帰属するものだとし、NTTに帰属するものではないと島田社長は説明。NTT法の廃止により、不採算地域からの撤退が容易になると競合が主張する固定電話のユニバーサルサービス制度に関しても、元内閣法制局長官・最高裁判事である山本庸幸氏の意見を取り上げ、電気通信事業法にあまねく普及義務を課して退出規制をすることは可能だとの見解を示している
  その上で島田社長は、海外ではNTT法のような特殊法人法を廃止する動きが2000年以降進んでいるとも説明。「この議論は世界で20年前にしている議論。20年前に世の中が変わっているのに、今になってまた同じ議論をするのか。変えていくべきだと思う」と島田社長は話し、未来を見据えた前向きな議論をすべきだとしている。
  だがそうした島田社長の意見に対し、競合は非常に厳しいコメントを返している翌日の2023年11月8日に実施されたソフトバンクの決算説明会において宮川潤一社長は、島田社長の説明に対して「詭弁(きべん)にすぎないと言わせていただきたい」と発言。特別な資産を持つことの当事者意識や重要性の認識が希薄であるとし、「そういう意識であれば、一度(特別な資産を)国に帰すべきだと思った」と話した。
  またその翌日となる2023年11月9日に実施された楽天グループの決算説明会では、三木谷浩史会長兼社長NTT法に言及NTT法の対象はNTTとNTT東西のみであることから、NTTが主張している研究開発の開示義務撤廃に関しても「研究開発はそこ(NTT・NTT東西)以外でやれば同じことができる。NTTは技術開発をしなければいい。(NTT法撤廃は)単なる言い訳かなと思っている」と主張。NTT法を見直す必要自体ないとの見解を示した。
(2)
主張の舞台はメディアからSNSに拡大
  その後もNTT法を巡る主張の応酬が続いている。新たな舞台となったのがSNSのX(旧Twitter)だ。そのきっかけとなったのは、2023年11月14日の三木谷会長兼社長による投稿だ。NTT法の見直しを進めている政府与党の自民党のプロジェクトチームを批判した。
  具体的には「国民の血税で作った唯一無二の光ファイバー網を完全自由な民間企業に任せるなど正気の沙汰とは思えない」などと投稿。同日に自民党のプロジェクトチームが、NTT法を廃案にするよう求める提言の原案を最終的にまとめたとの報道を受けたものとみられる。
  三木谷会長兼社長が自社の方針と異なる政府方針をX上で批判することは過去にもあったので、このこと自体は珍しくない。ただこれまでと異なるのは、競合のトップが相次いで反応したことだ。三木谷会長兼社長の投稿に宮川社長、そしてKDDIの高橋誠社長までもが反応し、相次いでNTT法廃止に反対する意見を投稿した。
  ちなみに宮川社長がXに投稿したのは2016年以来、高橋社長は2019年以来。普段はSNSでほとんど発信をしない両社長が三木谷会長兼社長に足並みをそろえたことで、Xの利用者に大きな驚きを与えた。
  一方のNTTも2023年11月17日、X上で広報室のアカウントを通じて反論。いわゆる特別な資産は「最終的に株主に帰属するのでこの(三木谷会長兼社長の)主張はナンセンスな話です」と投稿。光ファイバーは民営化後に敷設したものであること、欧州の元国営通信事業者も会社法を廃止する際に保有資産を受け継いでいることを主張した。さらにKDDIやソフトバンクも前身企業が国営企業の資産を受け継いでいるとし、特別な資産はNTTだけが持つものではないとした。
  各者の投稿を見るに、それぞれの主張は従来と変わっていない。だがメディアを超えて、SNSで一般消費者に直接訴えかけるようになったことが驚きを与え、関心を呼んだことは間違いない。
近づきつつあったNTTと競合に再び大きな溝
  様々な場を通じた論戦によって、NTTと競合との対立が激しくなっている。一方、NTT法廃止への反対という共通した目的を持つことで、競合同士の結びつきが強まりつつあるようだ。
  例えば先のソフトバンクの決算説明会において宮川社長は、プラチナバンドである新しい700MHz帯の免許を獲得した楽天モバイルに対して、自社の経験を生かし「役に立つところがあれば、バックホールを貸すなどで協力してもいいと思う」と発言した。
  この発言はあくまで宮川社長の思いつきにすぎないとのことだが、同氏はNTT法の廃止に反対する通信事業者が集まって議論する中で、三木谷会長兼社長を「様々な発言をされるが、正論を言う人。経営者として尊敬できる」と評価。楽天モバイルに「なくなってほしくないと思う」とし、事業が成立するまで支援するという議論があってもいいのではないかと話していた。
(3)
  こうした発言が出てくる背景には宮川社長、ひいてはソフトバンクとして、NTT法の廃止に反対する共通の目的を持つ仲間を減らしたくないという考えがあるのではないか。筆者はそう感じている。裏を返せば、ライバル同士が協調するほどNTT法廃止の影響は深刻だと捉えている様子が見え、その危機感はこれまでの比ではない印象を受ける。
  宮川社長はさらに先の決算会見で、このままNTT法の廃止が決まったとなれば「このしこりは10年、20年では取れないと思う」とも発言。競合がNTTへの対立姿勢を一層強め、通信業界に大きな分断が生じる可能性があると示唆している。
  実はここ最近、国内通信市場の低迷もあって、従来対立していたNTTと競合との距離が近づく出来事も増えていた。例えばKDDIは2023年3月までに、NTTが主導する「IOWN Global Forum」に加入。KDDIからBoard of Directorsのメンバーが選出された。
  だがNTT法の廃止を巡って再び溝が深まれば、NTTと競合との技術協力などもまた困難となる可能性がある。その一例が、成層圏から地上のモバイル通信をカバーする「HAPS(High Altitude Platform Station)」だ。
  ソフトバンクはHAPSの研究開発に先行して取り組んでいる。一方、NTTもスカパーJSATと合弁で設立したSpace Compassを通じてHAPSの研究開発に力を入れている。両社が協力すれば、日本がHAPSの技術やビジネスで世界に先行する可能性があるが、一連の対立で協力ができなくなればそれも困難になるだろう。
  そうしたことを考えると、NTT法を巡って通信会社同士の亀裂が深まり続ける現在の状況は決して好ましいとはいえない。やはり両者が同じテーブルに着いて議論し、打開策を見いだす場を設けることが必要不可欠だ。だが一連の報道を見る限り、自民党のプロジェクトチームが2023年11月のうちに結論を出すという方針に変わりはないようだ。
  この記事が掲載される時点で結論が出ているかどうかは分からない(記事は2023年11月21日に執筆)。ただ業界に禍根が残り、日本の通信産業に大きなマイナスをもたらす結果になることだけは避けてほしいというのが筆者の願いである。


2023.11.22-NTT NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231122/k10014265681000.html
NTT法 自民作業チーム 原案から一部修正し提言とりまとめへ

  NTT法のあり方をめぐり、自民党の作業チームは先にまとめた原案から、法律の廃止を求める時期に関する表現などの一部に修正を行った上で提言をとりまとめることになりました。

  NTT法のあり方をめぐり自民党は22日、党本部で、甘利前幹事長が座長を務める作業チームと野田元総務大臣が会長を務める情報通信戦略調査会が先週に続いて合同の幹部会合を開き、作業チームがまとめた提言の原案をめぐって意見を交わしました。
  原案ではNTTに対する研究成果の公開の義務づけや政府による株式の保有義務を撤廃するよう求め、最終的には再来年の通常国会までに法律を廃止すべきだとしています。
  調査会側からはこれまでに、公平な競争環境の整備やNTTが担う固定電話などを全国で公平に提供するサービスの確保などが担保されないまま、法律を廃止すべきではないという意見が出されていて、22日の会合では、こうした内容を別の法律で担保することを盛り込むほか、廃止時期は「再来年の通常国会をめどに」と表現を修正する方向となりました。
  作業チームは原案に修正を加えた上で、党内の意見集約を図り、近く提言をとりまとめることにしています。


2023.11.09.05-ケ-タイ WATCH-https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1528782.html
NTT法とは何か――NTTが語る現状とは
(北川 研斗)

  自民党が防衛費の捻出などを念頭に、政府が持つNTT株の売却を検討していると一部で報道されている。その過程で改正が検討されているのが「NTT法」だ。この法律はいったいどんなものなのか。NTTがその成り立ちや現状について説明した。

NTT誕生とともに生まれたNTT法
  1985年に前身にあたる電電公社が現在のNTTとして民営化され、日本電信電話公社法が廃止。新たに「日本電信電話株式会社法」(NTT法)が成立した。その後、1988年にNTTデータ、1992年にNTTドコモと分社化が進み、1999年にはグループが再編。現時点でNTT法の規制対象となるのは、NTT(持株)とNTT東日本、NTT西日本の3社という。
  電電公社が築いたインフラの提供やさらなる研究開発がNTTが持つ会社としての役目。これらはNTT法のなかで「責務」として定められている。また同時に、発行済株式総数の1/3以上を政府が保有する義務もまた同時規定されている。政府がNTT株売却に際して法改正を検討しているのは、この規定のため。NTTの資料によれば、政府は34.35%のNTT株を保有している。
  世界を見ると、フランスのオレンジやドイツのドイツテレコムが、NTTのように政府や政府系金融機関による出資を受けている。日本の場合、NTTに政府が出資する意義として、同社が課される責務の遂行を政府が監視する役割もある。あわせて、合併や定款の変更など2/3以上の賛成が必要とされる特別決議を政府が判断できる意味合いもあるとした。
技術の「公開義務」
  現在のNTT法を取り巻く議論では、研究成果の公開義務もまた同社の足かせになっていると伝えられている。
  ただし、必ずしもすべてのことがらを公開してはいないという。同社が研究開発したもののうち、代表的なものをWebサイトで公開するなどしており、ほかにも情報誌である「技術ジャーナル」やイベント「NTT R&D FORUM」などで公開しているという。
  あわせてNTTのWebサイトに設置された問い合わせ窓口からも、具体的なものを見たい旨を問い合わせれば案内されるという。公開するか否かはその技術が公開可能な段階にあるかどうか、問い合わせの目的なども考慮されるとしており、一概に公開する・しないとは言えないようだ。
  実際にこの公開義務により、研究開発に支障が出ることはあるのか。NTTでは、グループ再編以来「そういうものであるという認識でやってきた」ともした一方、同社と連携するパートナー企業への影響を示唆した。
  ある製品を開発するとき、NTTに技術を求めた際にその企業にももちろん技術を提供するが、他社から同様の問い合わせを受ければそちらにも同様に提供することがあり、これは事前に説明されるという。
  NTT法自体の廃止も検討されているという現在。これまでも一部の見直しはあったものの、全体を見直すべきというのは今回が初めてなのではないかとNTTでは説明する。今後、政府がどのような結論を導き出すかに注目していきたい。







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