ISIL-イスラム国(イスラム教スンニ派過激組織)



2019.8.26-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/190826/wor1908260021-n1.html
IS、アフリカで拠点構築 ネットで宣伝拡散
(1)
【カイロ=佐藤貴生】仏ビアリッツの先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)に招かれたアフリカ連合(AU)の議長国、エジプトのシーシー大統領は25日、テロ組織との戦いにおける国際協調の必要性を訴えた。アフリカでは昨年から今年にかけ、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)が多くのテロ事件で犯行声明を出し、勢力拡大をアピールしている。今年3月、シリアとイラクにまたがる支配地域を失ったISが、アフリカでの拠点構築にシフトしている形だ。
 ISは4月、コンゴ(旧ザイール)北東部ベニ近郊で兵舎が襲撃され、8人が死亡した事件で犯行声明を出した。コンゴでISが犯行を認めたのは初めて。ベニが属する北キブ州では、地元のイスラム過激派武装勢力「民主同盟軍」(ADF)が、大量の民間人を虐殺している疑いがある。
 コンゴは豊富な地下資源をめぐり、乱立する武装勢力による紛争が絶えない。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は4月、ADFはISから活動資金を得ており、ISのロゴが入った動画もネット上にアップしていると伝え、「金がなくて中東に行けない者の徴募に役立っている」との専門家の見方を紹介した。
 英BBC放送(同)は3月、ISはリビアやエジプト、アルジェリア、ソマリア、ナイジェリアに拠点を持ち、チュニジアやブルキナファソでも活動が活発化していると報じた。昨年はエジプト・シナイ半島で181件、ソマリアで73件、ナイジェリアで44件の犯行声明を出した。同年に欧米で声明を出した事件は7件だったという。
 ISはゲリラ戦に回帰する一方、相次ぐ犯行声明などで存在感を誇示して信奉者を広げる戦術を強化しているとされる。このため、これらすべての事件をISが実行したかは不明だ。
(2)
アフリカ情勢に詳しいエジプト・カイロの大学教授(74)は、「アフリカは国民が貧しく政府も腐敗し、(就職などの)機会も平等でない国が多い」とし、ISが付け入る余地があると指摘する。
 国連が7月に出した報告書によると、ISは戦闘部隊や世界各地の共闘組織に資金を供給し、資金源を見いだすノウハウも伝授しているとされる。
 IS系の通信社は4月、「カリフ」(イスラム教の預言者ムハンマドの後継者)を名乗る指導者、バグダーディ容疑者とみられる動画を公表。同容疑者の消息は分かっておらず、国連の報告書はISがネット上でプロパガンダ(政治宣伝)を拡散し、「バーチャルなカリフ制」の維持を図っているとしている。


イスラーム過激派
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

イスラム過激派またはイスラーム過激派とは、自分たちの理想を「イスラーム」により理論化し、そのような社会の実現を図るために
     武力・暴力の使用を容認する戦闘的な組織を総称する用語である。こうした組織は、非支持者の側から見ればイスラームの名を使用して主張を
     実現するために「犯罪テロ」を行う過激派(extremist)とみなされることになる。この中にはサラフィー・ジハード主義を掲げるアルカーイダ系の
     組織なども含めるのが普通である。なお、95%以上がスンナ派ハンバリー法学派の信徒で占められている[1][注 1]
  最近では[いつ?]イスラーム過激派に対して、ジハード主義(Jihadism)あるいはジハード主義者(Jihadist)という言葉を海外メディアがよく使用している[2][3][4]
     また日本のメディアでも、例えば時事通信が「ジハーディスト(聖戦主義者)」という表現を用いている[5]。なお、ジハードの語源は「苦闘・抗争努力
     であり、1880年頃から「あらゆる種類の教義的な聖戦運動」を指す語になった[6]
特色
  イスラーム過激派は、伝統的にはイスラームの理想とする国家・社会のあり方を政治的・社会的に実現しようとする運動であるイスラーム主義の中から
     生まれ、現代社会の中でイスラーム的な理想の実現にとって障害となっているものを暴力によって排除しようとする人々のことである。
     エジプトムスリム同胞団の理論家であったサイイド・クトゥブ(Sayyid Qutb)の「イスラム教国世俗化・西洋化・共産化を志向する指導者が統治し
     腐敗と圧制が蔓延する現世は、イスラム教成立以前のジャーヒリーヤ(無明時代)と同じであり、武力(暴力)を用いてでもジハードにより真の
     イスラム国家の建設を目指さなければならない」とするクトゥブ主義(Qutbism)がイスラーム過激派の行動の原点となっている。
  冷戦終結により共産主義を志向したソビエト連邦が消滅した結果、現在のイスラーム過激派の主たる排除対象となっているのは、ムスリムの土地を
     占拠するイスラエルや、イスラエルを支持したりイスラム教国で戦争を行うアメリカ合衆国を初めとする欧米諸国や、これらと結んだり妥協したり
     イスラム教の世俗化を志向する「背教者」と認定されたムスリム政権である。一切の世俗的な価値観を認めない急進的な
     イスラム主義(イスラム原理主義、イスラム過激派)は、世俗的な価値観と妥協して国家の発展を目指すムスリムの政権にとっても危険であり、
     特にクトゥブ主義の発祥の地であるエジプトでは歴代政権によりイスラーム過激派に対して法的根拠のない拷問や処刑等の苛烈な弾圧が加えられ、
     その度に世界各地に過激派が拡散し先鋭化する悪循環を繰り返している。
  彼らは、個々人が結合した団体を組織するが、最近の[いつ?]傾向として「草の根テロリズム」という言葉が使われるように、プロデューサーディレクター
     テクニカルアシスタント、リクルーターソルジャーなどの役割ごとのゆるやかなネットワークで結ばれた人々からなっていると分析されており、
     こうした人々は中東のイスラーム社会のみならず、欧米まで含めた世界中に存在するムスリムの中に溶け込んで活動していると考えられている。
     現在、ムスリムの社会の間では、個々人や地域によって程度の多少はあるものの、反アメリカ、反シオニズム反ユダヤ主義とは必ずしもイコールでは
     ない)などの漠然とした感情があるとされ、分析者たちは過激派はこうした感情を背景に居住地域に浸透していると見ている。
  最近では[いつ?]、ヨーロッパに住んでいたキリスト教徒のヨーロッパ人が、改宗してイスラーム過激派に参入するというケースも少なくない[18]
     ドイツ連邦憲法擁護庁によると、ドイツ人・ドイツ移民合わせて約250人が、海外のテロリストキャンプで軍事訓練を受け、その一部はドイツに
     戻っているという[18]
  イスラム過激派を詳しく見ていくと、近代化した国を中心としたものと近代化していない国を中心としたものとに分けることができる。前者はインターネット
     などの通信手段を自らの思想を広めるため積極的に用いるのに対し、後者はターリバーンのように『西洋』由来のものを否定的に捉える傾向がある。
     ただし、ターリバーンは政権掌握時にラジオを唯一のメディアとして活用しており、処刑に拳銃を用いていた。
原因または背景
マレック・チーベルフランス語版によると、民衆の悲哀とエリートの堕落への、社会的抗議の状況におけるテロリズムそのものがイスラムの国家統治の失敗を
     もたらす。[29]。《金持ちがぼろを着たろくでなしの単なる報復として乱暴にこの現象を解釈するような、イデオロギー上の闘争において同じのこちらの、
     ものである富める国家の無理解》においてテロリズムは永続する[29]
  社会学者のドミニク・バレ(フランス語:Dominique Baillet)はその原因が経済的、政治的、社会的そして心理的に重なっていることを考える:経済的な面で、
     これは開発途上国の経済のひとつの状況において見られる、イスラム世界のことから考えて、それは南北の不均衡にたいしてそれと同時にもたらされる。
  政治的な面で、それは植民地解放以来の立場における体制での専制的なそして権威的な特徴による圧力であり、それと同時にパレスチナ問題や、
     イラク経済制裁のような未解決の問題についてのことによる圧力である。社会的な面で、それは失業、社会的苦悩、ならびに個人の自由の不存在、
     の増加によって引き起こされる。他の原因は心理的である:失望、より良いひとつの世界の夢、唯物論の拒絶、恨み、欲求不満、感謝の欠如、
     によって陥り易いことはそれをとりわけ与える。[28]
  ドミニク・バレによると、いくらかのイスラム人は屈辱を受けたと意識しているのと同様に堕落させられたと思う、そして後進的な宗教のようにイスラムを考える
     西洋も堕落していると思う。彼によれば屈辱は結果における原因ではない。
 J.ナイリンク(フランス語:J.Neirinck)によれば、そして説教師で神学者のイスラム人のタリク・ラマダンによれば、西側諸国において多神教もしくは
     《金銭、充足、セックス、暴力、騒音、全部の道徳と全部の超越性における、すべての精神性の巧妙なまたは乱暴な否定》の崇拝のひとつの形が宗教の
     否定を形作るのをイスラム教徒たちは見ている。それらのこれがこの意識の周囲に連なるのを認識する。
  哲学者ルネ・ジラールによれば、《テロリズムは私たちの異なったひとつの世界、けれども想像もつかないようさせる、私たち同士の遠く離れたこの違いを
     かきたてるところの、これに束縛する。それは目的への集中そして類似の極度の欲望とは正反対である》。それそのものはそれゆえ《欲求不満の
     人々のひとつの第三世界をめぐる再結集と呼びかけの意思、そして西洋諸国をもって模倣的な敵対関係の彼らの報告における死傷者》において
     仲間を受け入れる。[30]
  テロリズムの原因における複雑さは理解と対話による終結のために込み入った思考フランス語版に解決を求めることが必要である。
  21世紀からは、ひとつの類似の議論での理由において、そしてパレスチナ、ボスニアまたはカシミール地方において不当が多くのイスラム教徒において
     耐え忍ばせることの:正しさを示すところのいかに大きな《原因》であるかの以前における事例としての、グローバルな動きのひとつであるかのように、
     イスラムのテロリズムはしばしば考えられている。それが西洋の国、そして主に伝統的なイスラム教徒の国、とりわけアフリカと中近東において、
     明らかになる。Boko Haram: Inside Nigeria's Unholy Warにおいて、マイク・スミス(フランス語:Mike Smith)によれば、見られるその起源は、
     ソマリアまたはチャドにおけるような、たとえ一般的な注目点をつけ加えても、時代の国家への抵抗での社会における宗教のひとつの手段化
     (フランス語:instrumentalisation)においてそれはしばしば生じる。
  一般のイスラム文化に表現力のあるオリビエ・ロイフランス語版は、グローバルなイスラムにおける2つの要因を強調する:《道徳と国家の決定の優位は、
     新‐原理主義のための周辺のジハードでの手段化だけでなく、一般のウンマ》からの、欠点をおぎなう、中身を与えるためにも》。国家による行政からの
     反対者と(パキスタンカノならびにナイジェリア…などの)シャリアを制度化している、ダゲスタンまたはイスラムのたくさんの首長国から、
     イエメンの南部での、タリバンにおけるものを見分けるものであるこれが、この《イスラモトラバリスム(フランス語:islamotrbalisme)》である。
     [31]2005年において、いかにグローバル化がテロリズムを生んできたかをRetour de flammeにおいて教える、アリ・ライディ(フランス語:Ali Laïdi)
     によれば、テロリズムの10のうちの9近くというものは国家の弱さである、しかしながら逆に《本質的に独裁者によって統治されたイスラム教徒の世界
     においては、イスラムは、暴力活動によって弾圧された、不安定化の要因とならざるをえない》。[32]
  トマ・ピケティパリ同時多発テロ事件について、緊縮財政政策が国家主義的緊張を作りだし、所得格差が中東におけるイスラム過激派のテロリズムを促す
     大きな要素だという見解を示した[33]。 人口の10%にも満たない石油王らの生産量が地域のGDPの60から70%を占めており、地域の発展にお金が
     使われていない。女性や移住労働者を含む大多数は準奴隷同然だとピケティは述べた。そして近年における中東の若年失業率は25%に達する。
     大学卒の失業率はエジプトやヨルダンでは15%を超えている[33]
  オリヴィエ・ロワフランス語版は1995年以降にフランスで活動したテロリストのプロフィールを調査した結果、移民二世がテロリストになった事例が突出して
     多い事実を見いだし、イスラム過激派への入信現象の本質は移民家庭内の世代間闘争であると主張した[34]。ロワは、移民二世は自発的に移民した
     一世より格差や貧困に対する覚悟が足りず、憎悪や復讐心を募らせ、自らのアイデンティティを問わずにはいられない。そういった不安定な状況を
     「宗教的な目覚め」が後押ししてイスラム過激派になる、と推測した。

ニッポン放送より
アメリカが来週にもISの完全制圧を発表へ( http://www.1242.com/lf/articles/157076/?cat=politics_economy&pg=cozy)
トランプ大統領「1週間以内にIS制圧」~アメリカのシリア撤退で混迷する中東情勢
アメリカが来週にもISの完全制圧を発表へ
  アメリカのトランプ大統領は6日、ワシントンでの国際会議で演説し、イスラム過激派組織IS、自称イスラム国が1週間以内にシリア国内の全支配地域
     を失うという見通しを示した。
  飯田)ISとの戦いについて、国務省で開いた有志国連合の閣僚会議で明らかにしたということで、勝利宣言のように見えますが。
  手嶋)大統領選挙を2年後に控えているトランプ大統領は、成果が欲しいですから、「自分がISを打倒した」と高らかに勝利宣言をするのだと思います。
     一般教書演説でも、「朝鮮戦争が避けられたのは自分の力量だ」と言っていました。事実とはかなり違いますが、すべて「良いことは自分の成果」
     だと言うトランプ大統領の一環です。
アメリカが撤退すればさらに情勢が悪化するシリアとイラク
  手嶋)情勢だけを見たら、シリア全体から言うと、ISはかつて3分の1、場合によっては半分近くを制圧していましたから、それを縮ませて打倒されたのは
     まんざら嘘ではありません。ところが、それによってシリアや隣のイラクに平和が訪れたのかと言うと、むしろ逆です。これまではアサド派と反アサド派の
     武装グループとISの三つ巴だったわけです。ISはいなくなるのですが、反アサド派もアサド大統領もアメリカと敵対していますから、残り2つは共に
     アメリカにとって敵対勢力ということになります。反アサド派を見てみますと、その背後にはイラン。この国はアメリカと核合意を巡って厳しく対立をしている。
     更にもう1つ、ロシア。アメリカとロシアは対立をしていますから、全部アメリカと敵対しているところになります。ISが打倒されたということで、
     この地域からアメリカが完全撤退をしてしまうと、ただ単に自分たちはいなくなるということになります。
  単なるシリアの情勢に留まらず、戦後一貫して中東情勢は、石油もありますし重要なところです。日本にとっても重要な中東全体が戦乱のなかで、
     とにもかくにも安定を保って来たのは、超大国アメリカの影響力という部分があります。しかし、アメリカは引き始めている。これを「中東でのアメリカの
     ダンケルク撤退作戦」と呼んでいますが、そのきっかけになって来ます。日本にとっても大変気がかりな動きとなります。
  飯田)反アサド派を推していたクルド人の方々を、アメリカがバックアップしていたと言われています。その人たちはどうなるのか、また一緒に推していたのは
     サウジアラビアだと思いますが、彼らはどうなのですか?手嶋)サウジアラビアも、この点についてはアメリカと連携が取れているかどうかわかりません。い  ままで反アサド派の一部をバックアップしていたということになりますと、この背後には、各地の勢力があって、全体としては本当にグレーです。
     アサド大統領の背後にはロシアとイランがいる。反アサド派ですら定かではないのですから、これは本当に混迷した情勢だということになって来ますね。

2019.1.5-東洋経済(https://toyokeizai.net/articles/-/258589)
アメリカを沈ませかねない5つの深刻な危機
(1)
新年を迎え、日本は深まる危機の中へと沈みゆくアメリカに直面している。株式市場が乱高下位する中、ドナルド・トランプ大統領はホワイトハウスで孤立しつつある。政府機関の一部は財源を拠出できずに閉鎖し、閣僚たちは辞めていき、敵対する民主党員たちは下院を支配しようとしており、法的捜査がトランプ大統領を包囲している。
アメリカは目下5つの危機に直面している。まずは、トランプ大統領の頭を占拠する政治的危機がある。大統領のツイッターを見れば、同大統領がアメリカ政治の内部力学に心を奪われているのがよくわかる。下院で共和党が味わった中間選挙における敗北は、政治的な転換点として広く受け取られている。

株式市場に漂う先行き不透明感
1月からは民主党が下院を支配し、調査のための議会を招集したり、ホワイトハウスからの立法発案のほぼすべてを妨害したりすることもできるようになる。トランプ大統領は近々起こるこうした挑戦に対して、自身の熱狂的支持者たちの一部が喜ぶような反移民メッセージを使って、さらに深い対立を生む戦略に突き進むだろう。
民主党優位の下院とトランプ大統領は目下、自身が公約したメキシコ国境沿いの壁の財源拠出をめぐって衝突へと突き進んでいる。議会の共和党リーダーたちは、妥協への努力を大統領にはねつけられて以降、ほぼ脇へと退いている。トランプ大統領が引き下がらない限り、政治的危機の早期の決着はありそうにない。
2つ目は、アメリカの株式市場の先行き不透明感だ。昨年末に相場は乱高下した後、年明け1月3日にはダウ工業株30種平均株価は一時、前日比600ドル以上下落。高成長と歴史的低失業率、そして賃金上昇を特徴とする成長著しい経済という、トランプ政権のひとつの明確な成果に暗雲が立ち込めている。
トランプ大統領は株式市場の混乱は、利上げのせいだとして米連邦制度準備理事会(FRB)と、(自身が指名した)ジェローム・パウエル議長を非難している。だが、2020年に不況に陥る可能性がある説が経済専門家の中で広がっており、その不安は投資家にも伝播しつつある。
ただし、こうした専門家たちもアメリカ経済が本格的に崩壊するとは見ていない。ニューヨーク・タイムズ紙コラムニストであり、プリンストン大学経済学者のポール・クルーグマン氏は「はっきりさせておこう。今現在、明らかな危機レベルの脅威が迫っているということはない」と最近のコラムで語っている。
(2)
こうした専門家たちの見立てでは、市場を混乱させているのはアメリカ経済に対する先行き不安ではなく、トランプ大統領や彼の側近たちに、少なからぬ問題を抱えているアメリカ経済を管理する能力がないことである。
中国との話し合いが進展しているとする、トランプ大統領のこのところの主張もまた、株式市場に影響を及ぼそうとする、見え透いた試みだと受け止められている。実際には話し合いは始まったばかりで、その成功が保証されているとはとうてい言いがたい。

アメリカ軍のシリア撤退という恐ろしい決断
日本との貿易交渉は視野にはあるが、それも中国との協議期限である3月1日が過ぎなければ真剣味を帯びることはないだろう。しかし世界第2位と3位の経済大国との貿易摩擦の話題は、市場や経済を下降に導くことにしかならない。
3つ目は、アメリカ国内外の安全保障政策の危機である。アメリカ政府の政策決定に関わっている上層部にとって最も厄介な危機は、小規模ながら戦略的に重要なアメリカ軍のシリア駐留を打ち切る、というトランプ大統領の突然の声明によって引き起こされた。
シリアへの長期駐留の判断については合理的な議論がされており、政策専門家たちのほとんどは、急速な撤退はシリアのアメリカ連合軍(ほとんどシリアのクルド人たち)の壊滅につながるだけでなく、その地域におけるイランとロシアの役割を強化することにもなると指摘している。
それ以上に、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」とアルカイダがいまだ勢力をもつ集団であるという現実があり、アメリカの撤退はテロリストの攻撃を再び深刻な規模に発展させるおそれもある。
「私が最も危惧しているのは、アメリカの政府職員や施設を標的とした、大量の犠牲者を出すおそれのあるテロ攻撃だ。機密性の高いアメリカのインフラをターゲットにした壊滅的なサイバー攻撃も含まれる」と、ある情報機関の高官は話す。「トランプ政権はそのときどうするのだろうか。誰を非難するのか、また、その非難は信頼できるものだろうか」。
(3)
4つ目の危機は、ジェームズ・マティス国防長官の辞任である。同氏の辞任は長らく噂されていたが、それでも衝撃だった。説得力のある辞任書簡の中でマティス氏は、トランプ大統領の新孤立主義やNATO(北大西洋条約機構)をはじめとするアメリカの国際的安全保障同盟をむしばむ行為を挙げ、トランプ大統領との政策の相違による辞任であることを明確にした。

日本や韓国にも影響が及びかねない
北朝鮮との交渉をまとめるなど北東アジアで長い経験をもつ元国務省高官エヴァンス・リヴィア氏は、この決断がアジアにとってどのような意味をもつのかをこう説明する。
 「今アメリカで起きていることは、日本にも韓国にも深く不穏な関連がある。トランプ大統領は、トルコの脅威に直面するシリアや、最終的にはアフガニスタンにおいてもアメリカ軍の駐留を解く決断をしたことによって、またイラクでのアメリカ軍部隊に対する驚くほどあからさまなコメントによって、こう宣言したに等しい。
 『世界の紛争地域におけるアメリカの力強く能動的で主導的な役割は、地域や世界の平和と安定を守るのに不可欠だとの信念をアメリカがもっていた時代は終わったのだ』と」
 「トランプ大統領はかなり前に、公益の促進と、自らの重要な利益であるとみなしていた自由主義的秩序の保護を目的とし、アメリカが重要な防衛負担を担っていた絡み合う同盟関係や協調関係を侮辱した。現在トランプ大統領は、国際的なリーダーという立場を終わりにしようとの具体的な行動を起こし始めている。トランプ氏がアメリカ大統領としてい続ける、ということになれば日本や韓国などの同盟国は代替の自己防衛政策を模索し始めてもいいだろう」
 現在、アメリカ経済や外交政策の懸念の根本にあるのは、非常に有能であるだけでなく大統領の衝動的行動の抑止にもなると見られていた高官たちの退任だ。
ジョン・ケリー首席補佐官とマティス国防長官の退任は、国内外の安全保障政策をマイク・ポンペオ国務長官とジョン・ボルトン国家安全保障問題担当補佐官の手に委ねることになるが、両者ともトランプ大統領の決断に挑もうとはしないか、もしくはできないように見える。
 評論家たちは現在「Bチーム」の人員で構成された政権について語る。下位レベル、もしくは共和党内においてすら信頼を得られていないような面々だ。
(4)
「今や、良識によってではなく、直感や衝動で統治したいとするトランプ大統領の欲求を抑制できる者はいないと言える」とリヴィア氏は言う。「マティス氏の突然の退任は、最も安定した人物を政権から排除したことになる」。
トランプ大統領はしだいに自身の狭い政治的目標を、とりわけ自身の生き残りを、軍に、情報機関に、そして政府の法執行組織に吹き込もうとしており、それらの職務の高潔さを損なっている。

ベテランジャーナリストが抱く懸念
「トランプ大統領のイラクやドイツの部隊への訪問についても非常に憂慮している」と、前述の情報機関高官は話す。「トランプ大統領による政治的動機に基づくウソが続き、部隊などの訪問も政治的な意図があった。司法省や連邦捜査局(FBI)といったほかの機密性の高い機関は激しいプレッシャーにさらされ続けている。今後、情報機関、軍、法執行などの機関の政治色が強くなれば、つまり“独裁者”の個人的地盤となるのであれば、こうした組織が信頼を取り戻すには何十年もかかるだろう」
このすべてが5つ目の危機につながっている。トランプ氏の大統領としての法的地位の危機だ。トランプ大統領の選挙運動スタッフ、家族、取り巻きたちに及んでいる捜査は日に日にきつくなっている。まもなくロバート・モラー特別検察官が、ロシアによる大統領選介入計画への共謀、およびその他の犯罪についての捜査の最終報告をする。
「トランプ大統領に対する弾劾手続きは現在避けられなくなっていると思われる」とベテランジャーナリストのエリザベス・ドリュー氏は、12月27日にニューヨーク・タイムズ紙に書いた。「大統領が辞任しなければ、来年、弾劾手続きを始めよという、民主党指導者に対する大衆の圧力は増すばかりだろう」。
ドリュー氏は、リチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件の捜査を報道した人物だが、今回も議会でトランプ大統領が共和党員たちからも見捨てられる可能性が高いことなど、状況が似通っていると見る。
「私はつねに、主だった共和党員たちは、最終的にトランプ氏は党にとってお荷物になりすぎ、国家にとって危険になりすぎたと結論づけることになるだろうと見ていた」とドリュー氏は書いている。「その時が来たのかもしれない。結局のところ、共和党員たちは自分たちの政治生命の存続を選ぶことになるだろう」。
これがどこへと向かうかは誰にもわからない。しかし確かに言えるのは、2019年はひとつの危機的な波であり、そのいくつかは安定した日本の海岸へもいや応なく打ち寄せるだろうということだ。







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