中絶の問題-1(医療)
2023.06.05-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230605-FMR4MC46RFKS7JIHCTOERGULFU/
初の経口人工妊娠中絶薬、厳格運用で慎重スタート
(中村翔樹)
妊娠9週までを対象とした国内初の
経口人工妊娠中絶薬「メフィーゴパック」の流通が5月中旬から始まった。
これまで初期中絶には手術しか方法がなく、妊婦らの新たな選択肢として期待がかかる一方、相応の副作用など留意点も多い。犯罪防止の観点から医療機関側には厳格な使用量管理も求められており、まずは慎重な滑り出しとなった。
納品はわずか
製造販売元の英製薬会社「ラインファーマ」によると、卸売業者への販売は5月16日から開始。処方を希望する医療機関には事前の研修と登録を求めており、同29日時点で日本国内の約180施設から登録申請があったという。一部施設には既に納品され、妊婦への処方例も確認されている。
納入済み医療機関の1つ、日本鋼管病院(川崎市)では、メフィーゴパックによる中絶治療開始を先月末に同院ウェブサイトで公表。複数の問い合わせがあった。入院の必要があることなどを伝えると既存の手術を選択する人もおり、今のところ同院での処方予定は入っていない。
同院の石谷健・産婦人科部長は、現状の流通規模について、「登録した180施設は、将来的に使う可能性を見越しての対応。納品まで至ったのは当院を含めまだわずかで、現場としては、まずは様子見という段階だろう」とみる。
月次報告も
母体保護などの観点から、メフィーゴパックには厳格な運用ルールが設定されている。
薬を処方できるのは、母体保護法の指定医がいる医療機関のみで、使用できるのは入院や院内待機が可能な有床施設に限定された。
多くの場合10~15分で完了する手術とは異なり、2種類の薬剤を時間差で服用し、出血などを伴いながら少しずつ子宮内容物を排出。1剤目服用から中絶完了まで3日程度かかるため、容体急変時の対応などを考慮した。
海外では自宅服用が認められている国もあるが、本人が子宮内容物を視認することになり、心理的な負担にも配慮した。
また、使用状況の管理のため、ラインファーマ社と医療機関は毎月、販売数と使用数を各都道府県医師会へ報告することが求められ、数に著しい差異がある場合などには関係機関が状況を確認する。厚生労働省によると、過去、女性に無断で薬を投与し堕胎させる「不同意堕胎」の疑いで医師らが逮捕されたケースがあり、
悪用を防止する。
若年層以外でも
厚労省によると、国内で令和3年度に行われた人工妊娠中絶は約12万6千件で、大半が妊娠12週未満だった。この時期の中絶に対応するメフィーゴパックには一定の需要が見込まれる。同省は今後、適切な使用体制などが確立されれば、無床施設での利用解禁も視野に検討するとしており、環境は拡大していくとみられる。
関東中央病院(東京都)の稲葉可奈子・産婦人科医長は「スタートを切ったこの時期にトラブルが頻発すると、リスク面ばかりが強調され、適正に活用されなくなる可能性がある」と指摘。「医療者側が、起こりうる事態を丁寧に説明し、患者と納得の上で進めていくことが普及のためにも大事だ」と訴える。
また、人工中絶は近年、15歳未満~29歳と30歳以上で件数が拮抗(きっこう)している。稲葉氏は「望まない妊娠は若年層中心とのイメージがあるが『年齢的にない』と考えていた40代に訪れることもある。
新薬導入を機に、幅広い年代へ的確な避妊方法などを周知していくことも重要」としている。
(中村翔樹)
メフィーゴパック
2種類の薬剤からなり、妊娠継続に必要なホルモンの働きを抑える「ミフェプリストン」を投与し、36~48時間後に子宮収縮を促す「ミソプロストール」を服用する。流通は製造販売元のラインファーマ社から卸売業者、登録医療機関へのルートに限られ、薬局やオンラインでの購入はできない。厚生労働省によると、ミフェプリストンは1988年にフランスで初承認されて以降、65以上の国・地域で、ミソプロストールは2003年以降、93以上の国・地域で使われている。日本での薬事承認では、一般への意見公募で異例の約1万2千件が集まり、同省が3月予定の審議を延期。4月28日に承認した。
日本産産人科医-https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/ninsinshusanqa6/
人工妊娠中絶について教えてください。
人工妊娠中絶について教えてください。妊娠初期(12週未満)の場合と妊娠12 週〜22 週未満の場合では
中絶手術の方法やその後の手続きが大きく違います。
人工妊娠中絶手術は母体保護法が適応される場合で、今回の妊娠を中断しなければならないときに行う手術です。
人工妊娠中絶手術が受けられるのは妊娠22週未満(21週6日)までですが、
妊娠初期(12週未満)と、それ以降とでは手術方法が異なります。
妊娠初期(12週未満)には子宮内容除去術として掻爬法(そうは法、内容をかきだす方法)または吸引法(器械で吸い出す方法)が行われます。子宮口をあらかじめ拡張した上で、ほとんどの場合は静脈麻酔をして、器械的に子宮の内容物を除去する方法です。
通常は10 〜15分程度の手術で済み、痛みや出血も少ないので、体調などに問題がなければその日のうちに帰宅できます。
妊娠12週〜22週未満ではあらかじめ子宮口を開く処置を行なった後、子宮収縮剤で人工的に陣痛を起こし流産させる方法をとります。個人差はありますが、体に負担がかかるため
通常は数日間の入院が必要になります。
妊娠12週以後の中絶手術を受けた場合は役所に死産届を提出し、胎児の埋葬許可証をもらう必要があります。
中絶手術はほとんどの場合、
健康保険の適応にはなりません。
妊娠12週以後の中絶手術の場合は手術料だけでなく入院費用もかかるため経済的な負担も大きくなります。したがって中絶を選択せざるをえない場合は、できるだけ早く決断した方がいろいろな負担が少なくて済みます。
人工妊娠中絶手術を実施できるのは母体保護法により指定された『
指定医師』のみですので、
母体保護法指定医と標榜している医療機関でこの手術を受けることになります。海外では妊娠初期の中絶薬を発売している国もありますが、日本では現在認可されていません。大量出血などの報告もあり、厚生労働省より注意喚起が行われています。
NEWS ポスト セブン-https://www.news-postseven.com/archives/20161215_476039.html?DETAIL
セレブ産院で中絶後に死亡、不明なままの死因に夫悲痛
※女性セブン2017年1月1日号
(1)
「あんなひどい病院とわかっていたら、妻に手術は受けさせなかった」──。目を潤ませて語るのは、田中真人さん(26才・仮名)。田中さんの妻・由美さん(23才・仮名)は都内の産婦人科病院で手術を受けた6日後、
急死した。結婚と出産という人生の喜びに包まれていた夫は、愛する妻と生まれてくるはずの子供を一挙に失った。若く、幸せいっぱいの夫婦に何が起こったのか。
2016年6月、交際5年の記念日を前に由美さんの妊娠が発覚した。「そろそろ結婚を…」と考えていたふたりは喜び、迷わず入籍と出産を決めた。由美さんはネットで調べて、評判のよかった東京・武蔵野市にある水口病院での出産を決めた。
同病院の個室は、天蓋付きの「お姫さまベッド」やヨーロッパ調の家具を完備。接客のプロである「医療コンシェルジュ」が患者のニーズに応え、退院前は院内でフルコースのフレンチディナーを味わえる。何度もメディアに登場する豪華な「セレブ病院」に、初めての出産を控えた由美さんの心がときめいたのだろう。
だが、田中さんによれば、由美さんは水口病院で、「胎児が育っていない」と診断されたという(水口病院は「少なくとも、当院が患者様にそのような診断をしたことはありません」と否定)。その時、まだ妊娠9週目。由美さんは診療後、すぐに田中さんにそのことを報告したという。
「夫婦で話し合って、やむなく
人工中絶手術を受けることにしました」(田中さん)
人工中絶手術は胎児が子宮内で死亡している稽留流産の手術とは異なり、胎児にまだ命がある段階で行う。大きなショックを受けた彼女に田中さんは、「次に元気な子を産めばいいよ」と声をかけるのが精一杯だった。
ふたりは予定通り7月6日に入籍し、由美さんは2日後の8日に手術を受けた。それは決して難しくはない、10~15分で終わる手術のはずだった。仕事の都合で付き添えなかった田中さんはしかし、すぐに新婦の“異変”に気づいた。
「手術を終えて帰宅した妻は朦朧としていて、“お腹が痛い”と訴えて家事もできませんでした。その後も体調は回復せず、横になって休む日が続きました」(田中さん)
そして手術からわずか6日後の7月14日、田中さんの人生は一変する。仕事を終えて家路につく際、由美さんにLINEを送っても既読にならず、胸騒ぎを覚えて帰宅すると部屋の中は真っ暗だった。田中さんがいくら呼びかけても返事はなく、リビングや寝室にも妻の姿はなかった。
(2)
もしやと思ってトイレの扉を開けると、由美さんが壁に前のめりに倒れていた。すでに体は冷たくなり硬直していた。なんとかトイレの外に出し、心臓マッサージを繰り返したが、由美さんが息を吹き返すことはなかった。
◆医師が行った中絶手術は業務上堕胎罪に相当
「病歴もなく健康だった妻がなぜ突然、死んだのか」──田中さんは失意のなか、さまざまな手段で妻の死の手がかりを探し求めた。疑問はどんどん大きくなった。そして、浮かび上がったのが、水口病院で受けた医療の信じられない実態だった。田中さんが水口病院にカルテ請求などをして確認したところ、由美さんを執刀したA医師は母体保護法の指定医ではないことがわかったのだ。
1996年に施行された母体保護法は、人工中絶手術ができるのは、都道府県の医師会が指定した医師(指定医)のみと定めている。つまり、たとえ産婦人科医であっても指定医でないと、人工中絶手術はできない。それはなぜなのか。
「刑法は原則として堕胎を禁じています。中絶手術は妊娠の継続や分娩が、身体的あるいは経済的理由で母体の健康に危険がある場合など限られた要件のみで認められており、そうした趣旨を充分理解する指定医が手術を行うことが望ましい。人工中絶手術は、一定の技能や知識を持ち、研修を受けた医師でないとリスクがあるということも一因です」(厚生労働省母子保健課)
田中さんの代理人を務める中川素充弁護士は12月6日の記者会見でこう述べた。
「指定医でない医師が人工妊娠中絶を行うことは、法が禁止する堕胎行為であり、法律上許されません。A医師が行った中絶手術は、業務上堕胎罪に相当します」
田中さんの追及に水口病院は、由美さんの手術は指定医であるB医師が行う予定だったが、当日に体調不良となったため、急遽A医師が手術を行ったと釈明した。中川弁護士はこう反論する。
「診療記録にはB医師が由美さんを診察したという記載はありませんでした。しかも人工中絶手術は緊急性がなく、B医師が体調不良ならば別の日に延期すればいい。病院の説明は弁解になっていません」
水口病院は12月6日、A医師が由美さんを含めて12件の人工中絶手術を行った事実を認めた。A医師が指定医ではないことを認識していたとし、「認識不足、認識の甘さを痛感する」とコメントを出した。A医師が指定医ではない事実を知りながら放置し続けたわけで、患者軽視との批判は免れない。
中絶手術が原因で由美さんが死亡したかどうかの因果関係は不明だ。水口病院は「現時点では、本件事件と急死の因果関係はないものと考えている」と説明している。通常、由美さんのような突然死では、行政解剖をして死因を特定する。
今回も、都内の大学病院で行政解剖が行われたが、その結果は、遺族が満足するものではなかった。由美さんの直接の死因は「急性うっ血性心不全」──行政解剖の死体検案書には、そう書かれていた。
「心不全って、つまり心臓が止まったと書いてあるだけで、これでは何が本当の原因かわかりません。大学病院に問い合わせると、妻の解剖を担当した若い解剖医は、“急性心不全とは書けないから便宜的に『うっ血』と書いただけだ”と言うだけで、結局、妻がなぜ死んだかは不明のままです。しかも死体検案書には中絶手術を受けたという記載がなく、中絶と死亡の関連を検討した形跡もありません」
東京都では9日、指定医ではないにもかかわらず中絶手術を行っていた医師が同病院でA医師のほかに2人いたと明らかにした。これについて水口病院に質したが、「患者様への対応を優先していますので、回答のお時間が取れません」との理由で回答は得られなかった。
※女性セブン2017年1月1日号
NITP Japan-https://niptjapan.com/column/artificial-abortion/
中絶(堕胎)に関する疑問
妊娠したけれども、いろいろな事情があって中絶しなければいけない。本当につらい事です。つらい上に、いつまで中絶できるのか、お金はどれくらいかかるのか、どんな手術をするのかなど、不安なことを挙げればキリがありません。しかし中絶ができる期間には限りがあります。
早ければいいという問題ではありませんが、
時間が経つほど精神的にも身体的にも負担が増えます。決断は簡単ではありませんが、決して一人で悩んで抱えこまずに、迷っていてもまずは行動することが大切です。
今回は、
中絶に関する法律、
中絶手術の方法、
母体へのリスク、必要な書類や手続きなどについて解説しています。
中絶とは
中絶(人工妊娠中絶)とは、おなかの中の赤ちゃん(胎児)を、外に出たら生きていられない時期(妊娠22週未満)に取り出すことです。
刑法では、中絶のことを堕胎(だたい)といいます。中絶に関することは母体保護法により定められており、自分の身体に起こったことだからといって、必要な手続きを踏まず中絶すると違法になります。
中絶はいつまで可能?
中絶の手術が可能な期間は母体保護法により「妊娠22週未満(妊娠21週と6日まで)」と定められています。
妊娠週数は、最後の生理開始日を0週0日として数えます。つまり次の生理が1週間遅れているときに妊娠していた場合は、妊娠5週目ということになります。妊娠22週以降でも、母体の命に関わる場合などにやむを得ず妊娠を終わらせることがありますが、
この場合は中絶ではなく死産とします。
中絶に関する法律
そもそも日本の現行の刑法では、212条から216条にかけて堕胎罪を定めており、
堕胎(中絶)は原則違法です。現在行われている中絶手術は、母体保護法で定められた条件でのみ行うことができます。
中絶に関する法律:母体保護法
母体保護法は、母体の生命健康を保護することを目的としています。中絶を安全に行うために、中絶の条件や実施できる期間、医師の条件などが定められています。これらに該当しない場合は、中絶手術を受けることができません。
【中絶の条件】
中絶の手術を受けるためには2つの条件が定められています。
・妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
・暴行若しくは脅迫によってまたは抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
つまり妊娠を継続することで、母体が健康でいられなくなる場合や、金銭面で問題が出てくる場合、強姦やレイプなど望まない妊娠の場合は、中絶ができると述べられています。現在中絶する人の多くは、経済的理由にあてはまるとして同意書にサインしています。
【中絶が可能な期間】
人工妊娠中絶ができる期間は、妊娠22週未満(妊娠21週6日まで)と定められています。母体保護法では、中絶の期間を「生命を保続することのできない時期」としています。この時期を、早産の出生データなどを踏まえて、妊娠22週未満と決めています。
【中絶を行う医師の条件】
各都道府県の医師会が認めた指定医師のみが行うことができます。人格や技能、設備などを考慮して、研修を行った医師のみが指定されます。
どこの病院でも中絶手術を受けられるわけではありません。
中絶に関する法律:刑法
刑法では、堕胎罪により中絶は禁止されています。
妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、一年以下の懲役に処する。
母体保護法に定められている条件、期間、手術を行う医師に当てはまらなければ堕胎罪が適用されます。
中絶を考えたときにまずすること
中絶するか出産するか迷っていても、まずは早めの受診が大切です。あらゆる負担を考えると中絶の手術は早いほうがよく、とくに妊娠12週を境に手術の方法やリスクが異なり、入院期間が長く費用も高額になります。さらに、死産届の提出や火葬なども必要になります。
また12週未満であっても、子宮外妊娠など異常があれば、命にかかわります。様々な不安でどうすればいいのか分からず受診を先送りにしていると、思いのほか妊娠週数が進んでしまっていることもあります。
受診したその日に手術を受けられるとは限らず、まずは妊娠の状態を確認しなければなりません。
手術前の診察費は、通常1万円ほどかかりますが、無料で実施する医療機関もあります。限られた時間の中で決断しなければならず非常につらいことですが、迷っていてもまずは受診しましょう。
中絶手術の流れ
中絶手術の基本的な流れは以下のように行われます。
1-術前の問診、診察 2-妊娠確認の検査(超音波検査、血液検査) 3-同意書、手術・麻酔の説明 4-手術開始 5-術後の安静 6-帰宅
手術の前に、超音波検査でおなかの中の胎児の状況を見ておくことで、手術の日程などを決定します。
中絶手術の方法
中絶手術では、子宮内の胎児や胎盤、卵膜などの子宮内容物を外に取り出します。手術の方法が、妊娠初期(妊娠12週未満)と妊娠中期(妊娠12週~妊娠22週未満)で異なります。
妊娠初期は麻酔で眠っている間に人為的に胎児を取り出しますが、妊娠中期は通常の分娩と同じ形で行われることがほとんどです。
中絶手術の方法:妊娠初期
麻酔で眠っている間に、掻把(そうは)法または吸引法により子宮内容物を人為的に取り出します。
掻把法(そうはほう)
小さなスプーンのような器具を用いてかき出す方法です。
吸引法
吸引器を用いて吸い出す方法で、吸引器の先がプラスチックのチューブ状なのを手動真空吸引法、金属棒のようなのを電動真空吸引法といいます。
掻把法よりも吸引法のほうが、一般的に安全に行えると言え、現在の主流になっています。
日本産婦人科医会の調査によると、
子宮穿孔や大量出血などの合併症の頻度は、
吸引法で0.11%、掻把法では0.59%と報告されています。
中絶手術の方法:妊娠中期
妊娠12週以降は、
陣痛誘発剤を使って人工的に陣痛を起こし、通常の分娩と同じように取り出します。
術前の処置として、子宮頸管拡張材を用いて、胎児が外に出やすいよう出口(子宮頚部)を広げます。子宮頸管拡張材とは数mmの太さの細長い棒のことで、膣から挿入して、時間とともに膨張させます。
胎児が大きい場合や、出産未経験の方では、より子宮頸管を拡張させる必要があるため、時間がかかるうえに痛みも生じます。
前処置が終われば、子宮を収縮させる膣錠のお薬を、直接膣へ挿入して、陣痛を起こします。そして出産と同じように、子宮から胎児や胎盤を取り出します。
中絶手術にかかる時間
妊娠初期(12週未満)の中絶手術は10~15分ほどで終わります。
初診を受けたその日に手術も行う日帰り手術も可能です。ただし、中絶の方法が掻把法であれば、子宮頸管を広げる前処置が必要となることが多く、追加で数時間要します。
妊娠中期(12週~22週未満)では、
手術に2日ほどかかります。胎児が妊娠初期と比べて大きいため、子宮頸管を拡張する前処置を半日から1日ほどかけて行います。分娩にかかる時間は個人差がありますが、陣痛が弱いために丸1日を要する人もいます。
中絶手術の痛み
妊娠初期の中絶手術は、麻酔で眠っている間に手術は終わるため、手術中に痛みを感じることはありません。中期中絶手術では、前処置と陣痛により強い痛みが生じます。麻酔は原則使わないため、痛みをそのまま感じることになります。
前処置の痛みは胎児の大きさの分、強くなります。通常の出産と比べると胎児も小さいことから、分娩の痛みは少ないです。
いずれの時期の中絶手術においても、術後麻酔が切れてきたときに、生理痛のような痛みを生じることがあります。これは、広がっていた子宮が元の大きさに戻るために生じる痛みです。痛みが強い人には
、痛み止めのお薬を処方してもらえます。
中絶手術は入院が必要?
妊娠初期の場合は基本的には日帰りで、入院の必要はありません。中期は3日~7日ほどの入院が必要になります。
妊娠初期と違って、前処置と分娩に時間を要し、術後も回復に時間がかかるためです。
中絶手術後の注意点、術後の過ごし方
術後は生理痛のような腹痛、出血、めまい、頭痛などの症状がみられることがあります。通常1週間ほどで落ち着いてきますが、症状が強くなる場合は受診しましょう。身体的な症状以外にも、中絶後遺症候群(PAS)が認められることもあります。イライラする、眠れないなどの精神症状がみられ、中絶のストレスや感情を抑圧してしまうことがきっかけとされています。
手術後の1~2週間は、子宮内に水が入ると感染のリスクにつながるため、入浴は控えてシャワーのみにしましょう。激しいスポーツや肉体労働も避けたほうがよいでしょう。
中絶による母体への影響
ごくまれに、以下のような母体への影響が起きることがあります。
遺残(いざん)
胎児や胎盤、卵膜の取り残し。生理と一緒に剥がれ出てくることもあれば、再手術が必要な場合もある
子宮穿孔(しきゅうせんこう)
手術中に子宮に穴が開いてしまう。胎児が大きいほど、子宮の筋層が薄くなるため、リスクが高くなる
腹膜炎
子宮穿孔により、子宮の外側の腹膜で炎症が起きる。頻度は非常に少ないですが、なにか思い当たる症状があれば、すぐに再受診するようにしましょう。
中絶手術後の生理はいつくる?
生理は術後1ヵ月程度で来ることが多いです。ただし、中絶によるストレスやホルモンバランスの乱れにより、多少前後することはあります。
中絶による次の妊娠への影響は?
中絶手術で、子宮穿孔などの合併症が起きると、妊娠に影響することはあります。ただし合併症が起きるのはごくまれであり、手術でトラブルがなければ不妊になる可能性はほとんどないでしょう。
中絶費用
中絶費用は保険適用ではなく、自由診療となるため、医療機関によって大きく費用が異なります。妊娠週数が進むにつれて、費用は高くなります。
初期中絶の費用は、
検査費と手術費を合わせて約10~15万円です。一方中期中絶では、手術費が高くなるだけでなく、入院費や火葬費も必要となるため、合計の費用は40~60万円程度となります。
ただし中期手術であれば、
出産育児一時金として404,000円の助成を受けることができます。出産育児一時金は出産以外にも、流産や死産の場合も支給対象となり、中絶は人工流産とされているためです。
中絶の際に必要な書類
中絶手術に対する同意書が必要で、手術日までに記載して提出しなければいけません。同意書へのサインと捺印は、ご本人だけでなく、パートナーの分も必要です。また未成年であれば親御さんのサインと捺印も原則必要となります。ただし、
事情によってはお相手の男性の同意書は不要の場合もありますので、検討している医療機関へ相談してみてください。
中絶:死産届
妊娠
初期(12週未満)では死産届は不要で、埋葬も必要ありません。一方妊娠
中期では、死産届と埋葬が必要になります。死産した日から7日以内に、お住まいの市区町村の役所に死産届けを提出します。そして火葬の予約を入れて、
埋葬許可証を発行してもらいます。
提出期限が短く、精神的にも辛い時期なため、葬儀屋さんに任せる人もいます。
薬による中絶が可能か
海外では薬による中絶ができる国もありますが、
日本ではリスクがあるとして使用は認められていません。
ミフェプリストンとミソプロストールという2種類が組み合わさったお薬で、それぞれ女性ホルモンの分泌を抑えて妊娠を継続しにくくする作用と、子宮を収縮させて胎児を出す作用を持ちます。
WHOが「女性の身体と心への負担がより少ない」と推奨している方法ですが、出血のリスクや中絶の確率が100%ではないことから、日本では認可されていません。
誰にも知られずに中絶したい
誰にも知られずに、中絶することは可能です。同意書の提出時に、パートナーや親のサインを求められますが、医療機関によっては無くても認められることがあります。これは
母体保護法に、婚姻関係ではないパートナーのサインや親のサインが必要だとは明記されていないためです。
中絶費用の支払いについても、保険適応ではないため、保険組合から何か郵送されてくるような心配はありません。
医療機関から情報が漏れないかについても、クリニックの医師やスタッフには守秘義務があるため、周囲に話すようなことはないでしょう。