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三店方式
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三店方式とは、日本のパチンコ店で行われている営業形態である。
パチンコ店・景品交換所・景品問屋の3つの業者、および、パチンコ遊戯者が特殊景品を経由することで、違法性を問われにくい形でパチンコ玉の現金化が行われる。ただし、賭博性を伴っているため、この営業形態に対して脱法行為違法性の意見もある。
歴史
三店方式は終戦直後にパチンコが大ブームとなった際に、パチンコの大人気にあやかってパチンコ景品であった「煙草」(初期段階の特殊景品)の換金行為をする「買人」が客とパチンコ店の仲介役として利ざやで利益を出す者が登場する中で、換金行為に暴力団などの不法者が介入してくるようになり、煙草の換金行為をたばこ専売法違反で規制しても換金行為をされるパチンコ景品が「チューインガム」や「砂糖」等に変更され、景品換金利権を巡る抗争が激化した事態に対処するためにパチンコ業界が景品換金行為の健全化を模索した結果として1961年に大阪で元大阪府警警察官だった水島年得が考案して誕生した「大阪方式」がきっかけとなり、それが全国に拡大したという経緯がある。なお、三店方式のオリジナルである大阪府の三店方式(大阪方式)は景品換金業務を大阪身障者未亡人福祉事業協会に委託させることで未亡人や障害者などの社会的弱者に雇用を提供して社会貢献に寄与していた。
前提法令
日本において賭博刑法賭博及び富くじに関する罪として禁じられており、特別法で認められた公営ギャンブル等を除けば金銭を賭けた賭け事を実施することはできない。
パチンコについては特に風俗営業法第23条(1984年8月の風俗営業法改正で制定)により遊技場営業者に以下のことを禁止させている。

(1)現金又は有価証券賞品として提供すること
(2)客に提供した賞品を買い取ること(いわゆる「自社買い」)
(3)遊技の用に供する遊技球等を客に営業所外に持ち出させること
(4)遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行すること
  1又は2に違反した営業者は6ヶ月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、3又は4に違反した営業者は1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金の刑事罰をそれぞれ規定している。また違反して「著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害した」とされた場合は、営業者に対して営業許可取り消し又は6ヶ月以内の営業停止命令のペナルティを課すことが風俗営業法第26条で規定されている。また1984年以前から地方自治体の風俗営業法条例では「遊技場営業者が客に提供した賞品を買い取らせること」を禁止し、違反者に刑事罰を規定している例がある。
  そのためパチンコでは出玉(4円以下)を現金ではなく景品(9600円に消費税額を加えた分以下)と交換しなければならない。
三店方式の営業
  パチンコ店は特殊景品と呼ばれる景品を介在させることで、出玉を金銭と交換することが事実上可能になっており、この特殊景品を用いた営業形態を「三店方式」という。パチンコホール、景品交換所、集荷業者、卸業者と四店を経由する場合もあり、この場合は「四店方式」という。
  三店方式による営業の流れは概ね以下のとおりである。
1-客がパチンコホールに来ると、遊技場営業者であるパチンコホールは客の現金と遊技球(いわゆる「出玉」)を交換する。
2-客はパチンコで増やした出玉をパチンコホールに持参し、パチンコホールは出玉を特殊景品と交換する。
3-客が特殊景品を景品交換所に持参すると、古物商である景品交換所は特殊景品を現金で買い取る。
4-景品問屋が景品交換所から特殊景品を買い取り、パチンコホールに卸す。
客の利便上から景品交換所はパチンコホールから遠くない距離の場所に存在しており、パチンコホールの出入り口付近や、パチンコホール建物内部に存在している地域もある。景品問屋は景品交換所やパチンコホールとは人的・資本的には別の法人が営業し、景品交換所もパチンコホールや景品問屋とは人的・資本的には別の法人が各都道府県公安委員会古物商の許可を受けて営業している。これは前述の風俗営業法第23条であるように「自社買い」を禁止しているからである。パチンコホールと景品交換所は特殊景品について客や景品問屋を介在しており、パチンコホールと景品交換所は無関係であるという建前になっている。これによりパチンコ業界は違法性を逃れようとしている。
  客の立場からするとパチンコで増やした出玉を現金ではなく特殊景品に「交換」し、特殊景品を「売却」するという形になるため、税のかかる一時所得に該当しないというメリットがある。このメリットは当たり券に対し直接現金を「配当」する公営ギャンブルには存在しないものであり、公営ギャンブル等で年50万円以上(当たり券の購入金額は控除。ただし外れ券は控除されない)の一時所得を得た場合その半額を課税対象の所得として計上される。
特殊景品
特殊景品は、三店方式の業者が取り扱うパチンコ玉・現金と交換可能な品物である。
パチンコ遊戯者はパチンコ店でパチンコ玉と特殊景品を交換し、景品交換所で特殊景品と現金を交換することが出来る。景品問屋は景品交換所から特殊景品を買い取り、パチンコ店に卸している。
種類
特殊景品にはボールペンライターの石、ゴルフボールなど様々な品物が使われる。東京都では1990年頃に金商品が導入された。特殊景品は現在、東京都神奈川県では1000円単位や500円単位が主流である。九州四国などの地方都市では大別すると5000円/1000円/200円単位(一部店舗では100円単位)の3種類が主流である。愛知県のように特殊景品の交換に対して消費税額を引いた金額を出すところも存在する。
不当流通への対応
景品交換所は買取についてパチンコの特殊景品しか受け付けておらず、偽造景品を換金しようとする客については詐欺罪で告訴している。
地方自治体の迷惑防止条例では「遊技場営業所又は遊技場営業所付近においてうろついて、遊技客が手に入れた景品を転売目的で買い集める行為」を禁止し、違反者に罰金刑を規定している例がある。
  古物営業法第15条第1項では古物商は客に対して身分証明書等で住所や氏名等の身元確認を義務付けており、違反した古物商は同法第33条により6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金の刑事罰となる。特殊景品の換金行為をする客からは古物商である景品交換所から身分証明書等によって身元が確認されることが敬遠されているために殆ど行われていないが、古物営業法第15条第2項及び古物営業法施行規則第16条に規定された例外条項により換金総額(「対価の総額」)が1万円未満での取引については客の住所や氏名等の確認をする必要は無い規定[6]により、特殊景品の換金総額が1万円未満の取引であれば客の住所や氏名等の確認をしなくても違法にはならない。ただし、特殊景品の換金総額(「対価の総額」)が1万円を超える取引は客の身元確認義務づけの対象となる。この規定に対処するため、1人の客が特殊景品の換金総額が1万円を超えた取引をする際に景品交換所は買取帳簿記録上では身元不明な複数の客が「対価の総額」で1万円未満の取引を複数回行ったことにするという建前で身元確認義務を免れようとしているが、「対価の総額」という言葉を厳格に判断するとこのような行為は法の趣旨に反するとして違法行為の可能性がある。
賭博の実在性
三店形式により、パチンコはギャンブル的な要素を持つとされている。遊戯機を用いた賭博の禁止法令は形骸化しているが警察などはそれほど問題視しておらず、景品交換所に偽造景品が持ち込まれた詐欺事件の被害届がパチンコホールから提出された事例もあるが、賭博や風営法違反などの捜査は行われていない。ただ形骸化しているとはいえ依然「自家買い」等の明らかな違法行為は警察の摘発対象であり、2010年現在も摘発事例が存在する。
問題点
適法性に関する議論
三店方式が本当に適法か否かについては異論もある。例えばジャスダックなど日本の証券取引所は「出玉の景品を換金する業界慣行の合法性があいまいなため、投資家保護を果たせない。」としてパチンコホール運営会社の上場を認めていない(ただし、神姫バスのように関連事業の一つとしてパチンコ店の経営を行っている上場企業は存在する。また、パチンコ台メーカーにはジャスダック上場企業もあるほか東京証券取引所など他の取引所に上場している企業もある。なお、2012年8月にダイナムが、2015年4月にニラクが、2017年5月にはオークラがそれぞれパチンコホール運営会社として香港証券取引所で株式公開をしている)。公安委員会の許可に違反した色合わせ射的(風俗営業法の一遊技)の業者について常習賭博罪で起訴された裁判の1953年11月10日の最高裁判所が「営業者と客とが偶然の勝負によつて財物を賭けるという性質を帯びていることは否めない遊戯営業行為を公安委員会が特に許可した理由は、その方法にいくつかの制限を設けこの条件の範囲内において行うならば一時の娯楽に供する物を賭ける場合にあたると認めたものと解するのが相当」とする判決理由を出し、風営法の許可条件に従って景品提供を行う遊戯営業行為は賭博罪に該当しないとした。だが、パチンコを賭博として起訴した例は過去に存在しないため、裁判所によってパチンコ及び三店方式が、刑法の賭博罪に当たるかどうかについての判断は示されていない。なお、1984年12月13日、参議院地方行政委員会風俗営業等に関する小委員会において、警察庁刑事局保安部防犯課長は「風営法は営業者に対する規制であり、営業者と全く関係のない人にまで規制を及ぼすことはできない」と答弁している。三店方式については、パチンコホールと景品交換所は景品問屋を介して一体でありパチンコホールでの特殊景品の提供と景品交換所での換金が一連の行為であるとして賭博開帳図利罪や風営法違反に該当するとの見方もある。顧客側においても、特殊景品の獲得とその換金を目的とした遊戯を行うなど、風営法の趣旨を逸脱した行為については、刑法の賭博罪に該当する可能性がある。

鍛冶博之徳島文理大学短期大学部講師)によると、過去に三店方式が風俗営業法条例違反として刑事訴追されたが、特殊景品の特定が困難なことを理由に無罪判決が出たという(1968年6月17日福岡高裁)。これはパチンコホールと景品交換所と景品問屋の三店のみで特殊景品の移動があれば極めて違法性が高いが、実際には景品問屋は複数の景品交換所から買った特殊景品がシャッフルされる形で複数のパチンコホールに卸すという形を取っていたため、パチンコホールの特殊景品が交換所や景品問屋を経てそのままストレートに最初のパチンコホールに戻ってくると特定できないという論理であった。一方で鍛冶はパチンコにおける換金行為は禁止されている(風俗営業法52条2号、同23条1項2号)ことを指摘し、三店方式についても、風俗営業法23条第1項2号の禁止事項(客に提供した賞品を買い取ること)に該当する可能性があり、必ずしも合法とは言い切れないと述べている。

また、特殊景品の代わりに電子的情報とレシートを用いた「パチンコホールで得た景品の換金システム」という発明の特許請求者と請求を認めない特許庁との間での裁判では、2006年9月26日に地財高裁判決で「三店方式は仮に風俗営業法に抵触しないとしても、(中略)本願発明は、現行風俗営業法に抵触するおそれのあるものであって、公の秩序ないし善良な風俗を害するおそれのある発明(特許法第32条)に該当するおそれなしとしない」として、特殊景品に代えて用いられるレシートが風俗営業法で提供が禁止される有価証券に当たることを指したと思われる判断が出ている
なお、カジノ研究家・木曽崇によると三店方式はパチンコだけでなく、麻雀を除く風俗第四号営業(射的や輪投げ)でも法的には成立しうると述べている。
景品価格の問題
東京都では特殊景品として地金をプラスチックパッケージに収めた景品(1gと0.3gの2種類)を使用しているが、2007年には金価格上昇のため、出玉を交換した結果として得られる特殊景品を景品交換所に持ち込むよりも通常の貴金属店に持ち込んだほうが価格が高くなる、という逆転現象が起きたため(このため一部では「単純に現金を玉(メダル)に交換して景品を受け取り売却するだけで儲かる」とも噂された)、急遽金地金景品の流通仲介を行う東京商業流通組合は1g景品の価格を値上げした
  しかしこの際にとられた対応は、旧価格で交換された景品の交換所への持ち込みを防ぐために「値上げ後の対象景品にシールを貼る」だけというものであり、今後金価格がさらに上昇した場合には同様の問題が再燃する可能性が高く、金価格のさらなる上昇に伴い2010年5月には1g景品を再値上げせざるを得なくなったほか、同年12月には0.3g景品についても値上げを行っている
  またこれらの値上げに伴い「シールの貼付により自動払い出し機に不具合が出る」「一部の問屋が金地金景品を抱え込み、それ以外の問屋の営業に支障が出ている」などの問題も報告されており、システムの運営が懸念されている。


パチンコ
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  パチンコとは、ガラス板で覆った多数の釘が打たれた盤面上に小さな鋼球を盤面左下から弾き出し、釘に従って落ちる玉が特定の入賞口に入ると、得点あるいは賞球が得られる日本の遊技(ゲーム)である。漢字表現は「自動球遊器」。最も一般的な営業形態は風俗営業として、客が遊技の結果得た鋼球をパチンコ店が指定する特殊景品と交換し、景品買取業者(古物商)が運営する景品交換所がそれを買い取る形で現金と交換するシステムとなっている。日本においては風俗営業に分類される。規制が年々強化され、2018年12月末時点でパチンコホール経営企業数は、前2017年同月末比で241社減少し3,003社、店舗数は464店舗減少で9,794店舗。
  チンコ遊技機(ゲーム機)そのものは「パチンコ台」と呼ばれる。ただし、「パチンコ」は通称であって、風営法上では「ぱちんこ遊技機」とひらがなで名称されている。パチンコ設備を設けた遊技施設は、施設設立前に警察に営業許可を事前に求めなくてはならない。呼称で最も一般的には「パチンコ店」または「パチンコ屋」と呼ばれるが、パチンコ業界やパチンコ雑誌などでは「パーラー」・「ホール」と呼ぶ場合もある。店名にパーラーが入っている店舗も多数存在する。このような遊技施設は、1930年に最初の店舗が開店し、その後第二次世界大戦時は不要不急の産業として一時は全面禁止となったが、終戦後に復活した。
  2009年現在、日本以外ではアメリカグアムなどにパチンコ店が存在しているが、賭博(カジノ)として位置づけられ、規制を受けている。また中華民国台湾)では、法律上で禁止されている(ただし実際には多数の非合法店が営業を行っている)。韓国では在日韓国人によってパチンコが持ち込まれ流行していたが、「人間を怠惰にして、人生を狂わせる」として、2006年からはパチンコにおいてそれまで利用されていた商品券の換金が停止、事実上の法規制となった(メダルチギも参照)。また、北朝鮮平壌にもパチンコ店が存在している。
  日本国内のパチンコ店で行われる営業(以下「パチンコ営業」)は、法的には風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」)
  第2条第1項第4号で「設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」として定める風俗営業で、遊技の結果で得た鋼球を賞品と交換され、パチンコ店から現金が持ち込まれている景品交換所で現金と交換される営業が行われる。このような遊技施設は、18歳未満の者は 営業所に立ち入ってはならない旨を入り口に表示するよう義務づけられる(風営法第18条)とともに、客として立ち入らせることを禁じられている。(風営法第22条第1項第5号)。
  パチンコ遊技施設は、現在ではギャンブル的要素を持つが庶民の身近な娯楽施設として、都市や地方を問わず国内各地にくまなく存在している。このために、多くの社会的問題を抱えている。変わったところでは、2017年2月1日、九州で「P-ZONE」を展開する株式会社パラダイスが経営する複合型リゾートホテル「ザ パラダイスガーデン サセボ」(佐世保市)にて、パチンコホール「パラダイス」がオープンした。この店舗は日本人でも利用可能だが外国人宿泊客をターゲットとしており、4ヵ国語(英語、中国語、韓国語、台湾語)で書かれた遊技台や機種の説明書を設置しているほか、営業時間はホテルのチェックインに揃えた16時から22時40分まで、また宿泊客に外国人がいない日は休業とするなど独特な営業形態を採っている。
  パチンコ店以外では、ゲームセンター露店などにてもパチンコ台が設置・運営されるが、この場合は鋼球と景品との交換は行われない。以前は一定数  の得点に到達すると景品が払い出されるマシンが多数存在したが、風営法の規制強化に伴い全て禁止となった。コンシューマ分野においては、中古のパチンコ台、パチスロ台を個人向けに売買する市場があり、また、このようなパチンコ台の特徴を模した玩具や、シミュレーションゲームとしてのビデオゲームも存在する。
風俗営業としてのパチンコ営業
  パチンコ店としての風俗営業は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の第二条第一項第四号[12](いわゆる「第4号」)に基づいて運営される。パチンコ台を設置するゲームセンターは同法においていわゆる「5号営業」に該当する(運営に関する詳細は「ゲームセンター」を参照)。
法的根拠
 日本国内のパチンコ店で行われる営業(以下「パチンコ営業」)は、遊技の結果によって賞品を提供している。この根拠となる法令は、風営法第4条(許可の基準)、同法施行令第7条(政令で定める営業)、同第10条(遊技機の種類)、同第11条(政令で定める営業が遊技の結果に応じ客に賞品を提供させる営業であることを明記)、風適法施行規則第36条(遊技料金等の基準)である。
 これら法令に基づく営業において景品を提供する事自体は合法であるが、現金や有価証券を提供することは禁止している。しかし、客が獲得した景品を古物商に売却して現金化する事例が多く、客から古物商が受け取った景品は景品問屋を通じてパチンコ店に卸されており、これを事実上の賭博行為として問題視する意見もあるなど、多くの社会的問題を抱えている(→パチンコ#パチンコの問題点参照)。
パチンコ店の業況
 2004年7月に改正された遊技規則の影響を受け、2004年6月以前に保安通信協会(保通協。当時の名称は「保安電子通信技術協会」)の検定を通過したパチンコ遊技機やその他の遊技機は、遅くとも2007年9月末までに全て撤去することが義務付けられた。また大当たりの連チャンが人気だった4号機パチスロ機も同時に撤去対象となっており、これに伴いパチンコホールは入替のために多額の費用負担を強いられた上、射幸心をあおる遊技機の規制により大幅な客離れが見込まれたため、金融機関もパチンコ業界へのファイナンスに対し非常に慎重になった。そうしたあおりを受け、2007年4月27日には業界第6位のダイエー(本社・会津若松市)が東京地方裁判所民事再生法の適用を申請したことを代表に、2007年度のパチンコ店倒産件数は前年比37.1%増の大幅増加となった。
遊技料金
  パチンコの遊技料金は、国家公安委員会規則である風営法施行規則で規定されている。1978年以降長い間玉1個につき4円以下と定められていたが、2014年4月に「貸し玉料金に消費税相当分の上乗せを認める」旨の改正が行われ、玉1個につき消費税込みで4.32円以下(2014年4月現在)となっている。
  ただし上限いっぱいの4.32円貸しでは、一般的な貸玉1回の単位である500円で割り切れないため、実際には貸玉カードの精算機を1円単位で返金できるようにして4.32円貸しとするか、500円で割り切れる単位の貸玉料金とする(例:500円あたり116個貸し=1個につき約4.31円)等の対応が求められる。以前は、ほぼすべての店舗が貸玉料金1玉4円で営業していたが、2006年頃から1玉1円での営業スタイルが広がり始め、現在では貸玉料金を1玉0.5円、0.2円、0.1円、2円等に下げ、低資金で長時間の遊技が可能である事を稼働率回復の特効薬とする店舗が多数存在する。これらを4円パチンコは「よんぱち」、1円パチンコは「わんぱち」「いちぱち」、2円パチンコは「にぱち」「にこぱち」等の名称で宣伝呼称している業者が存在する。
   また、2014年4月以降貸玉料金に消費税相当分の上乗せが出来るようになったことから、低貸玉営業においても一部の店舗では貸玉料金に消費税分を上乗せ(1円パチンコの場合1.02円から1.25円程度)するようになった。
景品交換
 風俗営業としてのパチンコ営業では、客が遊技の結果で得た玉などを賞品と交換する[* 5]。風営法は営業者に、現金や有価証券を賞品として提供することや客に提供した賞品を買い取ることを禁じたり(23条1項)[33]、賞品の価格の最高限度に関する基準(国家公安委員会規則で定める。
    2014年4月現在、最大賞品価格は9,600円で消費税込み10,368円[34])に従った営業を義務づけ(19条)たりして、パチンコの射幸性を抑制している。なお、2012年頃から警察庁ではパチンコ玉・メダルと景品の交換率を店舗単位で統一することを求めるようになったが(いわゆる「一物一価」)、地域によって取り組みはばらついており、2014年現在は必ずしも徹底されていない。
パチンコの合法性
 パチンコは前述の通り「特殊景品」を景品交換所に持ち込むことで現金に交換することが可能である(三店方式)が、そもそもこれは終戦直後のパチンコブームの際に換金行為に暴力団の介在が横行していたことを防ぐために暴力団排除にもつながることからよりましな手段として1961年に大阪で導入され、警察も黙認あるいは支援していたものである。これが法律違反に当たるかどうかについて、1968年の福岡高等裁判所では、「交換所が 顧客から買い上げた特殊景品が景品問屋でシャッフルされる形で複数のホールに卸されているため、ホールの特殊景品が交換所や景品問屋を経て そのままストレートに最初のホールに戻ってくると特定できない」として「三店方式が風俗営業法条例違反に当たらない」として無罪判決が下されている。 
  賭博(ギャンブル)とは刑法においては、「金品などを賭け、偶然性の要素を含む勝負を行い、その結果によって賭けた金品の再分配を行うもの」をいい、このような「賭博」は、賭博罪として刑法185条によって禁じられている。ここで「金品」には景品も含まれるため賭博罪の正否が問題となる。パチンコでは現金や有価証券ではなく賞品を景品として出すことが風俗営業法で認められているため、刑法第35条の「法令又は正当な業務による行為」として刑事罰の対象にはならない。
  なお、日本国内における、海外の賭博場であるカジノを模した遊技場は、風俗営業適正化法では5号営業、すなわちゲームセンターとしており、風俗営業適正化法第13条は、その5号営業では遊技の結果に応じて賞品を提供することが禁じている。そのため、そのようなカジノを模した遊技場が三店方式を模倣した場合、遊技の結果による賞品の提供がこれに抵触するので、違法行為となり、実際に警察に検挙されている。
 これらの状況については、警察・検察のパチンコ業界との癒着が指摘されている。産経新聞は景品交換所での現金化は「事実上の賭博」に該当しており、警察が黙認しているとしている。
警察との癒着
  警察庁はパチンコ業界の監督官庁として、その外郭団体である保安通信協会で遊技機の仕様が適正であるかどうかを調べる試験を行ったり、さらに、試験に通過した機種を実際に営業に供して良いかどうかの検定を各都道府県の公安委員会で行ったり、あるいは店舗営業の許可を与えたりするなどの権限を握る立場にあるため、癒着が発生しやすい関係にある。
  例えば、遊技機の型式試験を行う保安電子通信技術協会の前会長は元警察庁長官であった山本鎮彦であり、職員の1/3を警察出身者が占めることや、パチンコメーカー・アルゼでは元警視総監である前田健治を常勤顧問として
   迎え入れていたなど、関連団体や企業への天下りとも解釈できる例が見られる。パチンコ業者の団体である東京商業流通協同組合、東京ユニオンサーキュレーションなどに、多くの警察官が天下りしている。また、貸金業クレディセゾンの連結会社であるパチンコ業界大手のコンサートホールは、各店舗ごとに警察官1名の天下りを受け入れることを警察への求人で表明している。このようなことから、ジャーナリスト寺澤有は「日本全国でパチンコの違法状態が放置されている理由は他でもない警察が換金業務を牛耳っているからである」と問題視している。


2020年-http://www.pcsa.jp/ronbun/2009-4th/pcsa-student-award-essay-competition-01.pdf
パチンコ業界の抱える問題と業界改革に向けた新たな取り組み
都留文科大学 文学部 社会学科 冨澤岳人

~大衆娯楽になるために必要なものとは~
【論文目次】
序章 …はじめに (テーマ設定の理由について)
第 1 章…パチンコ業界の現状について 第 1 節 パチンコ産業の市場規模 1 項 遊戯人口と遊技単価 2 項 射幸性の高くなったパチンコ 第 2 節 低迷期にあるパチンコ・パチスロ
第 2 章…射幸性の高さから生じる問題について 第 1 節 換金問題 1 項 刑法第 23 章 185 条 2項 パチンコを取り締まる法律(風俗営業適正化法) 3項 3 店方式による換金の仕組み 第 2 節 射幸性の高さ~パチスロ 4 号機について~ 第 3 節 パチンコ依存症の問題
第 3 章…パチンコ業界の特殊な経営体質について 第 1 節 ホールとメーカーの力関係 第 2 節 保安電子通信技術協会の検定問題
第 4 章…パチンコ業界の新たなる取り組み 第 1 節 気軽に遊技できるパチンコを目指して 1 項 1 円パチンコ・5 円スロットの導入 2項 遊戯環境の改善 3項 甘デジの積極的導入 4 項 プライベ-トブランド機の開発 第 2 節 パチンコホールの CSR について
第 5 章…大衆娯楽を実現するためには 第 1 節 温故知新による再活性化を図る 第 2 節 競争による業界再編~企業戦略としてのチェーンストア化の有効性~
終章 …今後のパチンコ業界のあるべき姿について
・・・・・
はじめに(テーマ設定の理由)
  パチンコは日本で生まれ、日本で普及した文化であると言われている。業界としてもその規模は大きく、年間売り上げは平成18 年度で約27 兆5 千億円にもなる。この約30 兆円という数字は自動車業界、家電業界に匹敵するといわれる巨大な市場であり、余暇市場においては他に類を見ないほどの市場規模である。(パチンコ業界の売上の性質は製造業や小売業とのそれとは厳密には異なるとされる。詳しくは本論で説明したい。)
  しかし、そのパチンコに対する国民のイメージは駐車場における乳幼児の置き去り死事件、パチンコ依存症問題、自己破産の急増などなどで嫌悪感や拒否感を抱いている人が多いと言われている。さらにパチンコ業界に関しては産業統計やガイドブックといったものが存在しておらず、マスコミ報道も極めて少ないのであまり一般の人が業界の概要や内容を知る機会がない。
  したがって本論ではまずパチンコ業界の現状について詳しく分析し、その中で浮かび上がってくる数多くの問題について論じていく。その上で今現在パチンコ業界にある革新的な流れについての分析を踏まえ、パチンコが胸を張って遊戯できる環境、社会から認められる大衆娯楽になるために必要なことを考えていきたい。
  本論の具体的な流れとしては、
   第1 章でパチンコ産業の市場規模について参加人口、店舗数の変化から現状ではどのような状態にあるのか詳しく分析していきたい。
   第2 章ではパチンコ業界で放置されたままになっている問題を取り上げて、特に換金の流れを曖昧にしている3 店方式、パチンコ依存症といった問題を中心に論じていく。
   第3 章では、パチンコ業界の特殊な経営体質についてホールとメーカーの力関係を中心に論じていく。
   第4 章ではパチンコ業界に出てきた新しい取り組みについて詳しく分析していきたいと思う。特に従来の貸玉料を4 分の1 にした新業態営業(1 円パチンコ、5 円スロット)については新たな客層を得ようとするホールの威信をかけた取り組みなので注視していきたい。またそれと同時にホールが積極的に行っているCSR についても取り上げていく。
   第4 章を踏襲した上で第5 章ではパチンコが大衆娯楽として認められるために必要なことについて実際に私見を交えてのパチンコ・パチスロファン復活するための施策や競争論理を論じていきたい。
   最後に終章ではこれからのパチンコ業界の将来についてどうなっていくのかを今のパチンコ業界の流れを踏まえながら推測していきたいと思う。
第1 章 パチンコ業界の現状について
第1 節 パチンコ業界の市場規模
第1 項 遊戯人口と遊技単価
  それでは、まずパチンコ・パチスロ業界について知るためにいくつかのデータをみていきたい。冒頭でも述べたように、パチンコは30 兆円産業といわれている。実際、平成18年度の余暇市場におけるパチンコの占める割合は余暇市場全体の約35%のシェアを占めており、パチンコがいかに日本人の生活に深く浸透しているということが見てとれると思われる。ちなみに30 兆円という数字はパチンコホールの総売上高であり、それはホールがお客に玉を貸して遊んでもらうのだが、その貸し玉料金の総額を意味する
  遊戯人口と遊戯単価の推移について示している  遊戯人口と遊戯単価の推移出所:株式会社ダイナム2009 プレセミナー~就活アドバイス&パチンコ業界研究編~ある。
  遊戯人口、遊戯単価の両方のピークは1994 年(平成6 年)で、売上高は30.9 兆円、遊戯人口は2930 万人となっている。そもそも今でこそいわれる『パチンコ30 兆円産業』と呼ばれるようになったきっかけは、1996 年1 月総務庁(現総務省)が発表した「パチンコ産業の事業収入が30 兆円」(調査時点は1994 年11 月)というフレーズで、この見出しが全国紙を飾ったことによる。
  1このように急激な成長をしたパチンコ産業であるが、このパチンコバブルともいえる成長をもたらした歴史的な大きな節目は2 つあるとされる。ひとつは1980 年に出現したフィーバー機2であり、もうひとつは1992 年に導入が開始されたCR 機3である。
  そもそもパチンコは1973 年に電動式が導入され、ハンドルを握って遊戯するものになったがそれまでは手動式であり、両手を使って遊戯をしていたとされる。例えば、右利きの人であれば左手で玉を送り入れ、右親指でレバーを弾いていたとされる
  話を元に戻すとCR 機は、フィーバー機と異なり機械の性能を表すものではなく、プリペイドカードを使わないと作動しない遊戯システムを指すとされる。この遊戯機と遊戯システムがいかに射幸性を高くし、膨大な売上につながったかを示す。
  パチンコ市場は 1980~1995 年にかけ て 15 年間で約 6 倍に、1991~1995 年の 5 年間で約 2 倍になったことになる。
  そして、高 い射幸性は改善されることなく今も売上高は高い水準を維持していることが分かる。 もうひとつここで触れておきたいのが遊戯人口と遊戯単価の相関関係についてである。 普通どのビジネスでも消費者が(パチンコにおいては参加者)が減少すれば、それと同じ くして売上は減少するはずである。
第 2 項 射幸性の高くなったパチンコ
  本題に入る前にパチンコ市場の売上が急増する直前の経済環境を振り返ると、1989 年 12 月に日経平均株価は約 3 万 9000 円の最高値をつけ、日本のバブル景気は終わりを告げ たのだが、この後 1990 年には株式が急落し、景気もこの時期を境に大きく停滞し、2002 年まで不況が続いたとされる。
  パチンコ参加人口は 1995 年までは約 3000 万人を維持していて売 上高も約 30.7 兆円と安定していて、その後も売上はあまり減少していない
  こうした情報 だけ見るとパチンコ産業は好不況にかかわらず儲かっているように見えるかもしれないが、 実際のところはそうではない。
  参加人口を注視して見ると約 3000 万人を維持してきたパチンコ人口も、ついに 1996 年から減り始め、1999 年には約 1860 万人まで低下する。
  そこから 2002 年にかけていっ たん戻し約 2170 万人まで回復するが、2003 年には約 1740 万人、2006 年には約 1660 万 人と再び減少傾向にある。1994~1995 年のピーク時と比較すると単純に参加人口は 2 分 の 1 になっている計算である。
  その一方で貸玉料金の総額である売上高は参加人口が約1660万人と減った2006年でも 約 28.7 兆円と思ったより減少していないことが分かる。
  このことから売上高がほとんど変 わっていないのに参加者数が半分近くに減っている、つまりひとり当たりの消費金額が大 きくなっていることが読み取れるのである。
  バブル崩壊後にパチンコ業界が行った不況対策というのは、射幸性を高めること、つま り単位時間当たりの消費金額を増やすことにより、粗利益の絶対額を維持しようとしたの である。具体的に述べると、パチンコ・パチスロの大当たり確率を高くし、連チャンする 回数が多くなった反面、長い時間大当たりを引けない台が多くなった、つまりハイリスク・ ハイリターンなパチンコにしてしまったということである。
   詳しくは第 2 章で述べるのだが、例えば大手メーカーである京楽が 2005 年に導入した 「CR ぱちんこウルトラセブン L77」大当たり確率 1/479、同じく SANKYO が 2004 年 に導入した「CR フィーバー大ヤマト 2ZF」大当たり確率 1/496.5 などは現状の確率規制 下機種から考えるとものすごいハイリスク・ハイリターン機であることが分かるだろう。
  ホールの営業方法(釘調整など)、換金率といったそのときの状況で若干異なるのだが、ウルトラセブンで、例えば 480 回転に当たりを引いたとするとそのときかかる投資金 額はおよそ 2 万 4 千円である4。勿論、480 回転回す前に当たる可能性もあるし、480 回 転回しても大当たりが引けないこともあるので大当たりを引くのにかかる金額は 2 万 4 千 6 から大きく上下するのであるが、480 回転回したときに大当たりを引けない確率が約 36% あるので 100 回に 36 回は 2 万 4 千円以上使わないと大当たりを引けない可能性もあると いうことである。
第 2 節 低迷期にあるパチンコ・パチスロ
  第 1 節の最後でパチンコ業界はバブル後の不況対策として射幸性を高めること(大当た り確率を当たりにくくする)によってお客ひとり当たりに消費してもらう金額を増やすこ とで乗り切ろうとしたことに触れたのだが、その後もパチンコ業界は高射幸性の機種を導 入し続けたことによって、パチンコ消費者(参加ユーザー)が離れていってしまったとい えるだろう。その結果、パチンコ市場は限られたヘビーユーザー中心の顧客構成となって しまい、ライトユーザーは離れ休眠層となり、新規ユーザーはギャンブル性の高さによっ て、積極的に参加する人がごく一部に限られることとなってしまった。 勿論、その余波が近年になってパチンコ業界に大きなダメージを与えることになってし まった。
  遊技場の件数は平成 7 年をピークにその後緩やかに減少傾向にあるのが分かるのだが、 平成19年のピーク時に比べると約5000店舗減っている。
  ここ最近の情報としては、平成 19 年 4 月には東北最大のチェーン店「ダイエー」 が負債総額 600 億円以上で民事再生法の適用を申請したことに始め、平成 20 年 7 月には 山形の「アイランド」が負債総額 71 億 2000 万円で同法の適用を申請、同年 8 月には山梨 県の老舗パーラー企業の「マルニシ」が事業を停止(負債は 07 年 11 月期末時点で約 53 億 3000 万円)と次々と中堅から上位にいるホールまで幅広く倒産している状態である。 この店舗数減少傾向は今後も続いていくと推測されているのであるが、これは警察がパ チンコ・パチスロの射幸性が高くなって好ましくない現象が多発していることを危惧し、 2004 年 7 月、遊技機の規則改正5に踏み切ったことによる。特にパチスロにおいては異常 な射幸性となっていたため厳しい規則改正となってしまった。 その規則改正が 2004 年 7 月にスタートし、2007 年 6 月末に完了したのであるが、2004 年規則改正直後の発売機種(4 号機)がこれまでに類を見ないギャンブル性の高い機種で 尚且つ技術介入要素が高いものだったため、その機種が一斉に 2007 年 6 月をもってホー ルから姿を消したことにより、出玉大量獲得という強い刺激に慣れたパチスロファンも一 斉に離散することになってしまったのだ。
  確かに長い目で見れば健全化には避けて通れない道だったとする考えを持つ有識者の人 も多いのだが、パチンコホール企業は当時パチスロの収益に依存していたぶん、顧客の減 少が経営危機につながり、2007 年末期からホール企業の倒産が増えたのだと思われる。
  この問題はパチスロ 5 号機問題6とパチンコ業界では呼ばれているのであるが、詳しく は第 2 章 2 節で詳しく分析していきたいと思う。 では今度は設置台数に注目してみる。設置台数を遊戯場数で割ると 1 店舗当たりの平均 台数が得られるのであるが、平成 6 年が 252 台で平成 18 年が 336 台となっている。  一方 平成 6 年の遊戯場数が 18036 店で、平成 18 年は 14674 店と店舗数は減っているのに、平 均台数が増えているのは店舗の大型化が進んでいることを示唆している。大型化はモータ リゼーションの発達による郊外大型店舗の増加が主な理由である。 例を挙げるなら業界最大手の「マルハン」や業界第 2 位の「ダイナム」など売上高 1 兆 円を超える 2 社など大手企業は郊外に大型店舗を出店するスタイルをとっている。 第 1 章ではパチンコの市場の規模(売上高、参加人口、店舗数)や推移など過去から今 現在に至るまでについて述べてきた。その中でパチンコ業界がバブル期以降の他の産業が 不況期にも売上高を高い水準で維持してきたのは高い射幸性の機種を導入してお客 1 人当 たりの消費金額を高くするハイリスク・ハイリターンのパチンコ・パチスロにしてきたか らである。その結果、参加人口は緩やかに減少し、尚且つ規則改正によってパチスロファ ンが離れていってしまったことが分かった。 こうした厳しい状況下にパチンコ業界がどういった取り組みをしているのかについては 第 4 章で詳しく論じていきたい。その前に第 2 章と第 3 章ではパチンコ業界に顕在化して いる様々な問題について取り上げたい。あまり情報が開示されていなく矛盾が生じている 換金問題やパチンコホールと遊技機メーカーの関係から読み取れる業界の経営体質の問題、 また社会的にも問題となっているギャンブル依存症の問題も含まれるだけに解決していく のは難しいと思うのだが、これらの問題を改善しないといつまで経ってもパチンコが社会 に認められる大衆娯楽にはなることはできないだろう。
第2章
  射幸性の高さから生じる問題について 第 1 節 換金問題 換金問題は実は第 3 章 1 節「メーカーとホールの力関係」とも少し関係があることを最 初に断わっておく。というのもパチンコメーカーは株式上場できてパチンコホールが株式 上場できない最大の理由は換金問題にあるとされている。特にパチンコの換金においては 3 店方式というものが習慣化している。3 店方式については下記で詳しく説明するが、パ チンコをギャンブルとして見るか娯楽(限りなくギャンブルに近い)として捉えるかによ って見方が違ってくるといわれるだけに難しい問題である。
第 1 項 刑法第 23 章 185 条 【刑法第 185 条】
  「賭博をしたものは、五十万以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する 物を賭けたにとどまるときは、この限りではない。」 「ただし」がつくのでこれを制限条項つき条文というらしいのだが、パチンコ・パチスロ は、この「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」に該当するとされる。したが ってパチンコは刑法上では、ギャンブルではないということになっている。 しかし、実態はどうだろうか。有識者などの見解をだとギャンブルと言っていいと思う。 パチンコは 18 歳以上なら誰でも遊技することができるので、学生から主婦、仕事帰りの サラリーマン、自営業の方、ご年配の方まで色々なジャンルの人々が遊技している。パチ ンコ、パチスロを遊戯している人との会話で「今日は 2 万円勝った」とか「あの店出ない ぞ。4 万円入れても当たりもしない。」など勝った、負けたというフレーズは良く耳にする。 果たしてこれはギャンブルというのではないのかと思う。 では競輪や競馬はどうして刑法でギャンブルは禁止されているのに認められているのだ ろうか。これらは特別法として例外的に認められていて、いわゆる公営ギャンブルといわ れている。公営 5 競技中央競馬、地方競馬、競輪、競艇、オートレース)と宝くじ、サ ッカーくじ toto(スポーツ振興くじ)が、認められているギャンブルである。無論、年齢 制限はあるが、これらにはいくらお金を賭けても犯罪にはならない。 これ以外のことでギャンブルをした場合、例えばサラリーマンが賭け麻雀などをした場 合は法律違反になるのである。ただし、一時の「娯楽」の範囲であれば犯罪にはならない らしい。では一時の娯楽とはどこまでを指すのだろうか。 例えば何人か集まって今晩の夕食をトランプ(ポーカーでもババ抜きでも何でも良い) で負けた人がおごるというケース。その場で費消される飲食程度なら問題はないとされる。 また、社会通念として 1 万円程度であれば賭け麻雀も黙認されているようで、パチンコの 一般景品の上限が 1 万円になっているのも、その解釈の範囲と思われる。 そう考えると今のパチンコ・パチスロ機種の中には 2004 年の規則改正で射幸性が抑え られたとはいえ、2,3 万軽くもってかれてしまうものも多々あるので、この範疇には当て 嵌まらないと思われる。
第 2 項 パチンコを取り締まる法律(風俗営業適正化法) パチンコを含む風俗営業を取り締まる法律が風俗営業適正化法(正確には「風俗営業等 の規制及び業務の適正化等に関する法律」)である。ここでは 2006 年、商業界発行の『パ チンコホール法律ハンドブック基礎編(新版)』を参考にして、遊戯場経営者の禁止行為に ついて詳しくみてみたい。
(遊戯場経営者の禁止行為)第 23 条    1. 現金又は有価証券を商品として提供すること    2. 客に提供した商品を買い取ること    3. 遊技の用に供する玉、メダルその他これらに類する物(次号において「遊技球等」という。)を客に営業所外 に持ち出させること。    4. 遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行すること。
①については現金・有価証券を賞品として提供することは著しく射幸性をそそるおそれが あるために禁止されている。
②はほとんどの都道府県条例で第 3 者にも買い取らせること を禁止している。①で現金・有価証券の提供禁止を謳っておきながら買い取らせては、意 味がなくなってしまうからである。
③は持ち出された玉・メダルが売買の対象になること から、①の現金・有価証券の提供禁止の意味を失ってしまうからである。
④はその書面が 有価証券のように売買されるおそれがあることから、同じく①の現金・有価証券の提供禁 止の意味を失うので禁止されている。ただし、IC カードなど電磁的なカードに貯玉、貯メ ダルの記録を残す方法は、保管の書面を発行しているわけではないので問題はないらしい。 ただパチンコ店の景品もパターン化しており、お客のニーズに応える賞品が少ないため、 旅行クーポン券などを提供できればいいのだが、できないのは①の有価証券に該当してし まうためである。
第 3 項3 店方式による換金の仕組み
①お客はホールで手にした特殊景品を換金所で現金化      Ⅰ換金所はお客に現金を渡すことでホールとの決済
②換金所は特殊景品を景品問屋に渡す               Ⅱ景品問屋は換金所に代金を支払う
③景品問屋は特殊景品をホールに納品                Ⅲホールは景品問屋に代金を支払う

  前述した①~④までの禁止行為が明示されているにもかかわらず、実際には半世紀以上 にわたって換金は行われているらしい。その仕組みは 3 店方式と呼ばれる。
  3 店とは、ホ ールと換金所と景品問屋の 3 つの建物を指している言葉である。ここで用いられている特 殊景品(別名 G 景品)と呼ばれるものは、現在ではプラスチックの板状製品に細工を施し たものが多用されている。
  この 3 店方式の違法性が高い理由は、前述の禁止行為②で示している通り、ほとんどの都道府県条例で第 3 者による買い取りも禁止していることから明らかとされている。した がって警察は換金所も景品問屋も存在自体を否定せざるを得ないのだが、換金行為が行わ れていることも知っていて見てみぬふりをしているとされる。
  この矛盾は、パチンコ行政 のグレーゾーンであり、曖昧さが働く核心部分である。 3 店方式については私自身もうまく説明できてはいない部分もあるのでこの問題につい ては専門家の意見を参考にしたいと思う。
  『パチンコの経済学』の著者で大手パチンコホー ルチェーンのダイナムの元取締役商品部長(最終役歴)の佐藤仁氏は現行の 3 店方式の最大 の法律的問題について以下の 2 つの点を挙げている。
  1.いったんホールからお客に渡った特殊景品が再び還流すること
  2.特殊景品自体に実質的な価値がないこと 1 の項目についてはパチンコホールから手渡された特殊景品は、換 金所から景品問屋を経由してホールに還流し、それが毎日繰り返されているらしい。たと えホール、換金所、景品問屋が独立した法人であっても、ある種の約束事が成り立ってい るのではないかと佐藤氏は推測している。また実態としてホールと換金所の経営者が同じ であり、事実上ホールの支配下にあって 2 点方式化し、その独立性を疑わざるを得ない事 例もあるらしい。 2 の項目について佐藤氏は、特殊景品の主流であるプラスチックの板状製品が実態価値 を持っていないこと、あの板を関係のない店に持ち込んで換金を迫ったところで 5 円か 10 円の価値にしかならないのに実際には換金所で 1 枚が 1000 円や 6000 円などに現金化さ れている現状が問題であると主張している。
  そんな中で「カジノ法案」という事案も浮上
してきた。2008 年 2 月 24 日付けの産経新 聞によると自民党の「カジノ・エンターテイメント検討小委員会」と民主党の「娯楽産業 健全育成研究会」が、国内でのカジを合法化する「カジノ法案」について協議すると報じ、 そのあおりで新たに「パチンコ法」を制定して、国や地方公共団体に関与させる可能性が あるとしている。
  流れとしてはパチンコもギャンブルだから、規制の網をかけるべきだ、 という考えであるらしい。 確かにこのまま「カジノ法案」が国会を通り、日本カジノがスタートすると、限りなく ギャンブルに近い「娯楽」と本物の「ギャンブル」が国内にダブルスタンダードとして存 在してしまう。しかし、いつまでもこの曖昧な 3 店方式による換金が良いとは思えないの で換金合法化になることでパチンコ業界にとってはひとつの透明性がもたらされるのでは ないかと思う。
第 2 節 射幸性の高さ~パチスロ 4 号機について~
  平成 18 年(2006 年)にはスロット専門店が約 2000 店舗あったのであるが、それを 1 年 で約 500 店舗減少させて、パチンコ業界に大打撃を与えた出来事が規則改正によるパチス ロ 5 号機問題である。この問題は 2004 年当時、スロットがあまりに行き過ぎた射幸性に なっていたことを危惧した警察が規則改正に踏み切ってパチスロ全体の射幸性を抑制しよ うとしたことである。そして 2007 年 6 月末をもって 4 号機を店舗から完全撤去しなくてはならなくなったのである
  したがって今ホールにあるパチスロ機はすべて 5 号機という ことになる。 ホール関係者やパチスロファンは前々から 4 号機が撤去されたらパチスロは厳しい状況 になるとある程度予測していたのだが、思った以上にその結果が顕著に出てしまい実際パ チスロ遊技者は遊技を止めるかパチンコに流れてしまった。
  したがってパチスロ機に利益 を依存していた店舗を次々と倒産してしまうという事態になってしまった。
  では、4 号機と 5 号機ではどのような違いがあるかということについてなるべく分かり やすく分析していきたいと思う。厳密言えば 4 号機にも種類があって 4.0、4.1、4.5、4.7 号機と分類がされており、それぞれに特徴があるのだが、今回は 4.1、4.5 号機と 5 号機と の比較をしていきたいと思う。 そもそもパチスロはパチンコと違って設定というものでホールがある程度利益を管理す ることができるものである。一般的には 6 段階設定が多いのであるが、5 号機になってか らは「青ドン」のように 4 段階設定の機種も出てきている。プレイヤーの目線にたてば、 どの機種においても 6 が一番勝ちやすく 1 が一番負けやすいということが言えるであろう。 4号機と5号機との一番の違いは射幸性が高いということは何度も強調してきたのだが、 どのくらい違うのかということをまず示したい。パチスロには『機械割』という専門用 語があり、簡単に言うとその台を打ったときにどれだけメダルが獲得できるのかという数 値なのである。この機械割は新しい機種が発表されるとパチスロ攻略雑誌の編集者が計算 して算出するか各遊技機メーカーが発表することによって遊技者に情報が提供されるもの である。
  例えば、2007 年 1 月に北電子が発売した 5 号機の『アイムジャグラーEX』の機械割は 設定1では大当たり合成確率が 1/176.2 で機械割が 95.85%、設定 6 では同数値が 1/134.3 で機械割が 105.16%と設定 1 を遊技すると設定 6 を遊技するのではメダルの獲得期待値が 大きく異なるのである。この期待値を比較すれば、客観的に射幸性の高さの違いについて は証明することができると思う。

  まず注目したいのは 4.1 号機の機械割の高さである。アルゼが 1999 年に発売した『大 花火』は一回のボーナスの最高獲得枚数が 711 枚であり、設定が 1 でも機械割が 100%を 超える機種であり、たちまち人気機種となった。また技術介入要素が多いのであるが、初 心者にも BIG 中は鉢巻リールにより成立役をほぼ完全告知したりなどの一定の配慮があ り、2006 年の検定切れまで多くのファンに楽しまれた機種である。
  また同じく 4.1 号機でサミーから発売された『アラジン A』は小役が必ず入賞するよう に告知する機能、通称アシストタイム(アラジンチャンス)がついた AT 機9である。機械割 は設定 6 で約 148.1%と非常に高い。事実、確率は 1%以下と低いもののこの AT 機能によ って一回に約 65600 枚のメダルを獲得する可能性があるという(20 円換算ならおよそ 1312000 円)とてつもない出玉性能を持ち合わせていたといわれている。
  しかし、その非常 に激しい出玉性能ゆえに「射幸心をあおる」機種とみなされ、ミリオンゴッド(ミズホ)、 サラリーマン金太郎(ロデオ)と共に検定取り消し処分を受けて、ホールから強制撤去され てしまった機種である。 4.5 号機と 5 号機を比べると確かに設定 5、6 といったところでは 4.5 号機の方が上回っ ているが、中間設定以下ではたいして大差はないように見える。しかし、4.5 号機と 5 号 機では明らかに違う点があるのである。
  4.5 号機の有名な機種としては『北斗の拳』(サミー)、『主役は銭形』(平和)、その他には『吉宗』(大都技研)、『南国 育ち』(オリンピア)が挙げられるのだが、これらの機種に共通している特徴としてボーナ スが連続する、いわゆるパチンコで言う連チャン機能がついていることである。
  つまり、ボーナスを引いたあとにまたボーナスが始まるといったことで一気に大量のメ ダルを獲得することが可能なのである。(成立したボーナスをすぐに放出しないで内部的に 貯めておき、連チャンゾーンなどで一気に放出させるような仕組みで、通称ストック機と 呼ばれる。現在の 5 号機では禁じられている。
  またこれらの機種には「天井」10といわ れる嵌り救済措置がついており、規定ゲーム数まで達すると自動的にボーナスが引ける仕 組みになっている。 尚、『北斗の拳』は週刊少年ジャンプに連載されてアニメにもなったもののタイアップ機 であり、その累計販売数はサミーの公式発表によると約 62 万台を記録し、パチスロ史上 最大のセールス数をもつ人気機種である。
  その機種の特徴としてはバトルボーナス(BB) と呼ばれる「10 ゲームの小役ゲームとレギュラーボーナスのセット」とその継続であるが、 これが何回継続するかが、大量出玉獲得の鍵であった。その抽選は 1 セット毎に行われて おり、遊技者は画面を見ながら一喜一憂することになる。また原作のシーンを忠実に再現 しており、BB が 20 回以上継続するとプレミアム演出が発生しており、この演出を見るた めに遊技していたファンも多かったと言われている。
  一方、『主役は銭形』はモンキー・パンチ原作『ルパン 3 世』のタイアップ機であり、 登場人物の銭形警部を主人公にしたパチスロ機である。ビッグボーナスがほぼ 711 枚獲得 出来る大量獲得機であり、ボーナス終了後にビッグボーナス 32 回に 1 回で発生する 1G 連 やビッグボーナス終了後に限り 3 ゲーム連チャンの抽選を行う 3G 連(全設定共通の 30,07%で当選)などわずかな時間でも多くの出玉性能を誇る瞬発力と爆発力を兼ね備えた 機種であった。
   また、設定 5、6 ではボーナスが 181 ゲームまでに来る可能性が 50%であり、565 ゲームまで回せばおよそ 77.34%の確率でボーナスが引けるといったゾーン狙いや、天井(REG は 999G、BIG は 1490G)を利用した期待収支がプラスになる遊技の仕方があり、知識を持 っている人ほど勝ちやすいといった特徴を持っていた。 このように 4 号機の時代には射幸性が高い中にも遊技者が当たりやすいゾーン、小役や リーチ目にかかわる知識や目押しなどの技術を習得することによってより多く勝ちやすい 状況を作れていたからこそ遊技する人が多かったのも事実である。 ただし、ハイリスク・ハイリターンであったこともまぐれもなく事実である。例えば、 『吉宗』は車も買えるときもあるが、車を買えるだけの金額を飲み込むと揶揄されるほど 波の激しい台であり、10 万円持っていてもすぐになくなってしまうということも高頻度で 起きえた。勿論、他の 4 号機もがむしゃらに打てば簡単に 4、5 万はなくなってしまうリ スクが含まれている。
  これは次節のギャンブル依存症とも関わってくるのであるが、ハイリスク・ハイリター ンな 4 号機が関係して消費者金融を利用してしまう人、お金がなくなって犯罪をしてしま う人、親が遊技に夢中になりすぎて乳幼児が車内で熱中症にかかって亡くなってしまうな ど良くないことに傾いてしまった事例も後をたたなかったのである。
  その行過ぎた射幸性の結果として、4 号機で認められていた大量出玉性能、天井、スト ック機能、ゾーン狙いが規制され、ローリスク・ローリターンで技術介入要素が減って公 平性の高い 5 号機に代わった。これによってギャンブルするパチスロからどちらかといえ ば楽しむパチスロになったのであるが、これに伴い 4 号機を遊戯していた人達も離散して しまったのが現状である。
  例えるなら、タール・ニコチンの強いタバコを吸っていた人が はるかに弱いタバコしか吸えなくなって物足りなさを感じている状況に似ているのではな いかと私は思う。言い換えれば今まで強い刺激を得ていてそれが急に弱くなって物足りな くなった感じが今のパチスロ事情といってよいのではないかと思う。 社会的に見たら、射幸性が低くなることに越したことはないと思うが、結果パチスロフ ァンは激減し、ホールが潰れていくということが起きている。このことを踏まえた上で私 見ではあるが第 5 章 1 節で(改善できるかどうかは別として)パチスロ再活性化に向けての 私自身の意見を実現するかは別として述べさせて頂きたいと思う。
第 3 節 ギャンブル依存症の問題
  ギャンブル依存症=パチンコ・パチスロのせいであるとは必ずしいえないと思うのであ る。なぜならギャンブルとはひとくちにいっても競馬、競輪、麻雀、toto、宝くじなどい ろいろな種目があり、多くの場合ひとりが複数に関わっている場合が多いからである。余 談であるが、私も一時期、宝くじ(loto6)に嵌っていた時期があり、パチンコした帰りに買 っていたことがよくあった。 しかしながら、北海道立精神保健福祉センター部長である田辺等氏はその著書『ギャン ブル依存症』の中で「バブル景気がはじけた後の 1990 年代以降、ギャンブル依存症者が 増えてきた」と指摘している。この時期はちょうどパチンコ・パチスロの参加人口と遊技 単価が上昇してきた時期で射幸性も高くなってきた時期でもある。 そもそもギャンブル依存症というのは、借金を重ねて仕事や家庭に大きな支障が出ても、 なおギャンブルから抜け出せない症状のことで世界保健機関(WTO)も病気として認定している。
  田辺氏はギャンブル依存症について「アルコール依存症や摂食障害も心理と行動 との病的な障害という点では同じであるが、体に害があれば認められやすいが、ギャンブ ルの場合は受け入れてもらうのが難しい。」とも述べている。つまり依存症者はいつでもギ ャンブルをやめられると思い込み、もう自力で抜け出せない状況に陥っていることに気が つくことができないのが問題であるらしい。なんとなく私自身分かるのであるが、1 回大 きく勝ち越してしまったり、1000 円~3000 円くらいの低投資で大当たりを引いて勝って しまったりすると、次も勝てると思い込んでパチンコホールに行ってしまったり、負けて いるときに限ってあと 1000 円入れれば大当たりが引けて負け分が取り戻せるかもしれな いと次々とお金をつぎ込んで熱くなってしまい冷静な判断ができなくなり、大負けしてト ータル収支が結局マイナスになってしまう経験がある。 このギャンブル依存症について四国新聞社の「シリーズ追跡」というコーナーで実際に ギャンブル依存症に嵌ってしまった人たちの経緯、理由、借金、現在についての体験が詳 しく紹介されていた。
  典型的とされるのが、競馬の予想が当たった快感が忘れられず、ギャンブルと借金を繰 り返した C 男さんのケースである。一方、A 子さんや B 男さんのように、家庭や仕事のス トレスから陥るケースもある。 記事によるとギャンブル依存症者は、全国に約 200 万人いるといわれている。しかもこ れは数年前に推計された数字であり、正確な数値を調べる機関はなく、実際はさらに多いとの指摘もあるとされる。そして依存症者は、この 3 人のように多重債務に陥っているケ ースが多く、多重債務者を支援する高松あすなろの会の 2006、2007 年の相談者を調査し た結果によると両年とも 32%がギャンブルを借金の理由に挙げていたとされる。
  しかし、 いまだに社会的認知度が低く、「本人の意志の弱さ」が原因とみる向きが根強く、予防や回 復に向けた国の対策の動きも鈍いといわれている。厚生労働省は昨年になって調査を開始 したといわれているが、まだ公での具体的な対策はなされていない。 ギャンブル依存症を克服するための方法としては、ギャンブルをやめるためのミーティ ングやカウンセリングへの参加が勧められている。GA(ギャンブラーズ・アノニマス)と呼 ばれる自助グループが代表的といわれ、これらの集団心理療法、集団精神療法がアメリカ から伝わり、日本でも有効に機能し始めていると云われている。
  ただし日本ではその数は 少なく、地域的に大都市周辺が中心となっているようである。 具体的に何を行っているかというと前述の四国新聞社の記事によると「依存症から回復 を目指す人達が高松市錦町の市男女共同参画センターに集まってそれぞれの悩みや体験を 話し合い、ギャンブルをやめるきっかけをつくっていく」という活動であるらしい。集会 では「言いっぱなし、聞きっぱなし」が原則であり、言いたくないことを無理に話す必要 はないという。中には、再びギャンブルに手を染める人もいて立ち直りには相当の時間が かかるといわれている。
  また、依存症者の家族らが当事者以上に悩み、葛藤するケースもあり、尚且つギャンブ ル依存は肉体的な症状が出にくいため、その家族のための「ギャノマン」と呼ばれる自助 グループもあるという。こちらは家族自身の生活を再建しつつ、依存症者の回復に必要な 手助けを話し合うのが主な目的であるとされる。 この現状を依存症に詳しい大谷大学文学部の滝口直子教授が分析したところによると、 ギャンブル依存症になりやすい人は、遺伝や脳神経系に関する要因を含め、いろいろなタ イプがある。うつや子どものころに受けた虐待なども、依存症になりやすい要因に挙げる。
   「強度のストレスから中高年になってなる人も多く、原因は本当にさまざまであり、カ ジノなどのギャンブル施設や、簡単にお金が借りられる環境(消費者金融)が近くにあるこ ともよくない」と強調している。
  依存症になりやすいギャンブルについては「スロットマシンなどのマシン系でなる人が 圧倒的」と説明。「音や光の刺激に加え、壁に囲まれた中で、マシンと向かい合って興じる という環境は興奮度を高め、異常になりやすい」と補足し、「個人や家族の問題とするので はなく、社会として取り組む姿勢が求められる」と強調してギャンブル産業の責任を明確 にする必要もあるとした。
  依存症問題の政策立案、規制、教育などを統括的に行う部門の 設置や、正式なトレーニングを積んだ専門家の養成も急務と滝口氏は訴えている。 確かにギャンブル依存症の問題は本人だけの問題だけではなく、その家族にも影響を与 えるケース、さらに発展すると借金を理由に犯罪を行うケースにまで及ぶことがあるので 社会的認知度を上げていき、社会全体で対策を取り組める状況を造ることが望ましいと思 われる。
第3章
  パチンコ業界の特殊な経営体質について 第 1 節 ホールとメーカーの力関係 パチンコホールに衝撃を与えた出来事がある。2005 年 12 月、当時首都圏に約 30 店舗 を展開していた業界準大手のパチンコホールが JASDAQ 証券取引所に株式上場申請を行 った。その結果がどうなったかということを 2006 年 4 月 29 日付けの『朝日新聞』から下 記に抜粋したい。 <パチンコホールは株式上場できません――。パチンコ店チェーンから上場申請を受けたジャスダッ ク証券取引所は28日までに、上場を認めないことを決めた。出玉の景品を換金する業界慣行の合法 性があいまいなため、投資家保護を果たせないと判断した。各地の証券取引所もこれと同じ対応をす るとみられ、上場による資金調達とイメージアップを望むパチンコ業界にとって厳しい結論になった。 …(途中省略)…ジャスダックは業績などではなく、「三店方式」と呼ばれる業界独自の換金方式を問題 視した。パチンコの営業は、刑法が禁じる賭博への抵触を避けるため、客に現金や有価証券を渡すこ とは認められていない。ただ実際には、(1)客が店内で景品を受け取る(2)客は店外の景品買い取り 所で換金(3)景品は問屋を経由して再びホールに戻る――という手法で、客の9割以上が換金して いるという。(以下省略)> このように初めてのホールの株式上場は白紙になってしまった。ただ株式上場できなか ったのには換金問題以外に理由があったと前出の佐藤氏は推測している。それは「当事者 (株式上場申請を行ったピーアークホールディングス)の発信する情報が少なかったこと、 2005 年 12 月 30 日の日本経済新聞では、日本で初めてパチンコホール企業が JASDAQ 証 券取引所に上場申請し、2006 年の 4 月にも上場が実現する見通しであると報じた直後に この記事をみた各方面から JASDAQ やパチンコ行政を担当する警察庁に圧力があったこ と」である。
   さきほど第1節で 3 店方式がこの節にも関係していると言ったが、株式上場ができない 理由にこの 3 店方式が関係していたからとされる。その一方で遊技機メーカーの方は 1997 年、東京証券取引所第 1 部に上場している。その後も遊技機メーカーが相次いで株式上場 している。

  2008 年、今現在パチンコホール系企業で株式上場をしている企業はない。売上高が 1 兆円を超える業界第 1 位のマルハン、第 2 位ダイナムなどは株式上場する力をもっている と思うのであるが、株式上場ができるのは現状ではホール以外の企業に限られている。
  パ チンコを支えているのは機種などを提供するメーカーと遊戯する場所を提供するホール両方があって初めて成立すると思うのだが、実際にはメーカーの方がホールより強い立場に あると私は思う。 その根拠はホールとメーカーの収益性から見て取れるのであるが、その前提条件として ホールの売上計上方法については特殊であるということを理解しておきたい。
  繰り返しに なるがホールの売上高は貸玉料金の総額である。分かりやすく説明するために下記の遊技 事例を参考にしてみていきたい。(尚、下記の事例は前出の佐藤氏の『パチンコの経済学』 P98 の図 4-1「ホールの売上の仕組み」を参考に私なりに解釈を入れさせて頂いている。) 例) ある日の A さんの遊技事例 ① 来店(3 万所持) ② 遊技開始(2 万円投資 残金 1 万円) ③ 大当たりを引く ④ 換金(3 万円獲得 残金は 4 万円) ⑤ 再度遊技(2 万円投資 残金は 2 万) ⑥ 退店 Aさんの損失 3 万円-2 万円=1 万円 店の売上 2 万円+2 万円=4 万円 A さんは①3 万円を持ってパチンコを遊技しに来て、②1 時間ほどパチンコを遊技して 2 万円を使ったところで、③大当たりを 6 回引き、④カウンターで特殊景品に交換し、交 換所にもって行き換金した結果 3 万円になった。そこで止めれば財布の中には来店時より 1 万円多い 4 万円になっていたのだが、A さんは、今日はついていると判断して別の台で 遊技を再開したが、⑤1 時間ほどで再び 2 万円を使い、⑥潮時と判断し店を出た。 こんな体験はパチンコを頻繁に遊技する人なら 1 回くらいは経験したことがあるかもし れないが、この事例だと A さんの所持金は、3 万円が 2 万円になったので差し引き 1 万円 の損失である。
  しかし、貸玉料金の方は、最初に使った 2 万円と遊技再開時の 2 万円と合 わせて計 4 万円になってしまう。したがって売上は、2 万円+2 万円=4 万円となる。ホー ルの売上は、換金した後の再投資も加算されるので実際の 4 倍になるわけである。 売上構造としては、一般の小売業やサービス業よりもいわゆる総合商社や大手書籍流通 業に近いらしい。
  これはゲーミングビジネス共通のことであり、ローリングと呼ばれ、複利計算のような膨らみを見せている。したがって、カジノ産業の営業収入は売上高ではな く売上総利益(粗利益)を用いているとされる。 以上を踏まえた上でメーカーとホールの収益性について比較していきたい。ただ序章で 断りをいれてあるように業種が異なる点を考慮しなければならない。メーカーの業種は自動車や家電のメーカーなどと同種に分類される製造業であるのに対し、パチンコホールの業種は売り買いした後にモノが残らず、効用や満足などを提供する、形のない財を取り扱 う第 3 次産業に多く見られるサービス業に分類されるということである。さらにパチンコ ホールの売上に関しては上記で記した通り複利計算によって算出されているため、安易に は比較できないかもしれない。
  したがって業種の性質が異なるのを前提と してメーカーとホールの売上高と経常利益率を比較する。それを補足するため売上高と従業員数との関係を調べたホールとメーカーの一人当たりの利益率についても 触れておく。 メーカーから 3 社、ホールから 3 社を取り上げて公告された 2 期分 (2005 年 3 月期、2006 年 3 月期)の数字から作成した形成数値を表にした。
  では簡単に取り上げる企業について説明する。メーカーの方はパチンコ機を中心 とした最大手のメーカーで東証 1 部の㈱SANKYO で、最近では 2008 年 3 月期末の「実質無借金企業」のランキングで 12 位にランクインしており、手元資金超過額が 2593 億円 の企業である。次にパチスロ機を中心とした最大手メーカーで同じく東証 1 部上場のセガ サミーホールディングス㈱を取り上げる。さらにメーカーではないが、遊戯機企画開発、 販売、コンテンツ会社で JASDAQ に上場しているフィールズ㈱の 3 社を挙げてみる。ま たこの 3 社の CM は最近になって高頻度でお茶の間に流れているのでパチンコ・パチスロ をしない人でもご存知かもしれない。 ホール業界からは、業界最大手の㈱マルハン、㈱ダイナムに上場申請第 1 号企業ピーア ークホールディングス㈱を取り上げる。
  収益率の差は歴然としている。遊技機メーカーは経常利益率が SANKYO で 30%、フィールズでも 10%という 2 桁の数字を保っている。一方で、ホール 19 の企業の方は最高で 2%、ほとんどが 1%台である。前述したようにホール企業の売上高は 会計処理上、仮に 4 倍に膨れたとしても、それを 4 分の 1 に修正しても、経常利益率はや はり 5~8%くらいにしかならないのだ。
  メーカーとホールの売上高と従業員数との関係について調べている。 一概には言えないかもしれないが、メーカーの方が売上高に対して従業員数が少ないよう に思える。京楽や SANKYO の一人当たりの売上高利益率はホール企業と比較すると非常 に高いと思われる。それに何回も述べているが、ホールの売上高の性質は製造業とは業種・ 算出方法が異質であるので実際の一人当たりの利益率もこの数値よりは低い水準になるこ とからもホールとメーカーの収益の差がみてとれると思われる。(セガサミーホールディン クスはゲーム部門など様々な分野が含まれているいのでパチンコ・パチスロ部門に限定す れば実際の数値よりは高い結果になっていたと思われる。) このような差が生じるのには遊技機事情とホールの弱点によるものである。パチンコホ ールはメーカーから遊技機を購入するのであるが、その購入費用は、1 社当たり粗利益の 20~40%を占めると推定されて、収益を大きく圧迫しているはずなのである。
  この額は総 人件費と同額かそれ以上ともいわれ、ホール企業は遊技機の購入費用を稼ぐだけでも大変 なのである。近年ではその遊技機購入費用がさらに増えているといわれている。 その理由としては以下のようなことが挙げられる。
   1) 遊技機の入れ替え(新台入れ替え、新装開店「グランドオープンとも呼ばれる」など)は、お 客を呼ぶことができるホール最大のイベントであり、来客数を増やすためには入れ替えの 頻度をライバル店より増やす必要がある
  2) タレントやゲームキャラの版権をモチーフとした遊技機が増え、メーカーの開発費が高く なったのと同時に、液晶画面の大型化、不正対策など、遊技機 1 台当たりの単価が上昇し た。
  3) 結果としてホールが遊技機負担に耐えられなくなり、買い控えを起こすことによって、メ ーカーは売上目標に到達させるため、発売サイクルを短くし、新しい遊技機を投入しよう とする。そうすると遊技機の品質が下がり、設置してもすぐに人気がなくなり、ホールはそれでも次機種に期待するため、遊技機費用を稼ぐためにお客からその費用を回収しよう とする。
  このような悪循環によって結局すべてのツケが回るのはパチンコユーザーであり、パチン コを楽しみたくてもより多くのお金がかかってしまう現状である。 以上、収益性の観点からメーカーがホールより強い力をもっていることが分かったと思 うのだが、その力関係が顕著に出ている事例もある。それは、商品取引上の優越的な地位 を乱用している可能性があるとして、公正取引委員会も注視しているホールに対するメー カーの遊技機並びに周辺機器の抱き合わせ販売である。 メーカーの発売計画には、好評を得ているシリーズ機種や過去に人気を得た実績機のリ メイク版がときどき含まれる。ホールは明日の売上つまり目先の利益を優先とするため、 これらの機種をライバル店より 1 日でも早く導入して営業したい。メーカーは、そのホー ルの事情を知っていて平凡な機種を売るときに、公表機種や実績機種をチラつかせている のだという。
  私が実際とあるパチンコホール企業のセミナーに参加した際につい最近までホールで働 いていた人と話す機会があったのだが、その人も同じようなことを言っていた。つまり、 メーカーの営業担当の人もホールの店長も平凡でスペックが良くない機種でお客様受けし ないなと分かっているパチンコ台でも、その機種を一緒に買わないと人気機種をあなたの 店には売りませんよと圧力をかけてくるのだという。事実、当時パチスロ遊技機メーカー の最大手「アルゼ」が、『大花火』を販売する際に別のパチンコ機を抱き合わせ販売してい た疑いが強まり、公正取引委員会は 2000 年に独占禁止法違反で同社の本社や営業所など 約十か所を立ち入り検査したという事例もある。
  メーカーにもいいぶんはあるとされる。一定の生産量の機種を販売するのだから、販売 基準は前回発売した機種の実績で判断するしかないのであると。しかし、生産量の範囲内 で売り切ることが計画的にできるとしたら、メーカー側にはリスクが全くといっていいほ ど存在しなく、自由競争の原理が機能していない業界になっていると思われる。もっとも、 しぶしぶ購入した機種が人気を博すこともあるし、前作が好評だからといって実績機の後 継機がまったく不評になるケースもあるので、すべての場合に当てはまるわけではないの だと思うのだが、抱き合わせ販売によってホールの収益が圧迫し、その焦げつけが消費者 に回っているというのが実情であろう。
  パチンコ業界が不況になってユーザーが減少し、ホールが倒産していく中でも、1 枚岩 のように一致団結できないのがホールであり、その一方でメーカーは利害が一致している ので一本化している。ホール企業が約 5000 社にあるに対して、遊技機メーカー(組合加入 しているパチンコ・パチスロメーカー)が約 50 社という、社数の差もあるのかもしれない。 他の産業は家電機業界をはじめ、自動車業界に然り、日本の工業はグローバルな競争原 理のもとで熾烈な争いを展開して、日夜より良い品質の製品を安く消費者に提供しようと 努力している。薄型テレビ、ノートパソコンなどは毎年価格が下がっていて私たち消費者 が求めやすくなっている。
  一方、パチンコ遊技機メーカーは、値崩れを恐れてか新規参入 を頑なに拒んでいるように見受けられる。この問題には遊技機の検定機関である「保通協」 も関係してくるのだが、「保通協」については次節で詳しく紹介する。
  1996 年、公正取引委員会は独占禁止法の疑いで日本遊戯機工業組合(日工組)を立ち入り 調査した。翌 1997 年、日本遊技機特許運営連盟(日特連)ならびに日工組の主要遊技機メー カー10 社に対して、排除勧告した。これにより 1999 年日特連は解散した。新規参入しよ うとする企業の自由な特許使用を阻害したという、独占禁止法違反であった。日特連の解 散から 10 年近く経った今も特許使用の実態は、これまでと実質的に変わっていないとい うことである。
  前述の佐藤氏の考えを参考にさせて頂くが、『「パチンコ台を生産するには日工組に加盟 しなければならない。しかし、日工組に加盟するにはパチンコ台を生産してなければなら ない。」と新規参入の企業は言われ、さらに販売条件として「パチンコ台は、保通協の検定 を受け、認可されないと勝手に販売できない。しかし保通協の検定を受けるには、日工組 を通さなければならない。」と。』
  佐藤氏は事実上遊技機メーカー業界に新規参入するこ とはできないと考えている。 遊技機はパチンコ・パチスロと機種によもよるが、たくさんの特許部品を使用しており、 その数は数百種類にも及ぶ。これらの特許は現在日工組加盟している約 30 社が所有して おり、相互に特許使用を認め、相殺して特許料を支払っているとされる。このこともパチ ンコ特許を持っていない企業が新規参入を目指せない理由のひとつであるとされる。
   私は実はとある機会にパチンコホール企業の人事部長とお話することがあった。そこで その人事部長も仰っておられたが仮に「任天堂みたいに大企業がパチンコ遊技機業界に参 入してきたら今あるメーカーの多くは勝つことができないだろうと。しかし、それができ ないのは遊技機メーカーが参入できない環境を作っているからである。」と。 上記の話を裏付けていると私は思う。
  また競争原理によって遊技機の価格が今より下が ってほしいと願うパチンコホールの本音のようにも考えられる。 確かに競争社会になれば、遊技機の価格も今より下がる可能性は十分に考えられ、その 分ホールはお客に還元できるということになるわけだが、現状では実現する可能性は限りなく低いように思われる。
第 2 節    保安電子通信技術協会の検定問題
  「安心安全な社会を目指すためには、最新の科学技術を応用した安全システムの構築が有効であ ると考えられます。財団法人 保安電子通信技術協会は、警察庁、関係機関のご指導を受けつつ、 最新の電子通信・情報技術を応用したシステムの研究開発、海外警察への技術協力・運用指導など、 安心安全な社会を求めて積極的に活動を進めています。保通協の主な活動は、次のとおりです。
  ・ セキュリティ関連システムの研究開発   ・ コンサルティング業務   ・ セキュリティ関連機器の保全業務   ・ 遊技機の型式試験等に係る業務
上記は保安電子通信技術協会(通称、保通協)のホームページに記載されていたことを 丸々コピーしてきたのであるが、実際にどのような機関なのかといわれるとパチンコ・パ チスロ機の試験・検定を行う全国唯一の組織である。遊技機メーカーは保通協に申請して 適合した機種だけが、各地の公安委員会の検定後に販売できるという仕組みになっている。
  その組織の概要は 1986 年、国家公安委員会告示で検査機関に指定された警察庁の外郭団 体である。東京都・江東区に本部を構え、会長は 2005 年 2 月末まで元警察長官の山本鎮 彦氏、その後は元警視総監吉野準氏が務める。
  保通協の営業メニューは上記に挙げたようにセキュリティ関連システムの研究開発、外 国へのセキュリティシステム導入支援、コンサルティング業務、保全業務などであるが、 パチンコ・パチスロの試験検定料で成りっているといっても過言ではない。 なぜならパチンコ機 1 台につき 152 万円、パチスロ機 1 台につき 181 万円とあまりにも 高い検査料をとる。保通協は 2004 年度この検定料で約 16 億円の売上を挙げているがその 他業務が 3 億円程度なのでパチンコ・パチスロ機の検定がメインの仕事であるといっても よいだろう。
   しかし、検定にも問題がある。保通協の検定を通った遊技機は適合資格を貰った時点で、 メーカーは風適法の枠からはずれ、その後なにか不都合(異常なまでの射幸性、攻略法など の発見)が発覚してもお咎めはなく、すべて設置したホールの責任になってしまうことであ る。勿論、警察庁の外郭団体が適合させているものを警察が指摘するはずがないのである認可する団体と不都合を取り締まる団体が同じ機関であるということはどうみてもおかし いのであるが、誰も逆らえないのが現状である。 結局、そのような不都合が起こるとやむなくパチンコ遊技機メーカーの上位団体である 日工組の内規に責任を持っていくか、ホールの上位団体である全日本遊技事業協同組合連 合会の自主規制というかたちで事態の収拾をはかり、とりあえず社会の批判をかわす方法 がとられるのである。ホールにしてみれば、検定に適合した遊技機を設置したのち、具合 が悪くなったので自主的に撤去してくれといわれても不条理な話である。 このような現状についてパチンコ業界に詳しい有識者はこの警察庁の外郭組織である保通協も含めて警察庁のパチンコ業界に対する以上までの関与が問題であるといっている。 その辺については溝口敦氏の『パチンコ-30 兆円の闇」これでもう騙されない』に警察官僚や弁護士、パチンコホールの関係者の話が載っているのだが、だいたいの有識者の方は 業界を主管する官庁と取り締まる官庁が同じ、つまりパチンコ行政のほぼすべてを警察が 握っていることに問題があるという見方でほぼ一致しているのである。
第 4 章  パチンコ業界の新たなる取り組み
   第 2 章、第 3 章では主にパチンコ業界の主な問題点について論じてきた。私自身が思う にパチンコ業界にはまだまだたくさんの問題がある。したがって多くのページを割いて問題点について触れてきたが、ここで触れた内容に関してはどちらかというと PSCA の過去 の優秀作品の中でもすでに論じられていたものもあったし、書籍などで十分に論じられて いた既出のものが多かったと思う。(勿論、業界の抱える問題について知ることはとても重 要である) ではその問題点を踏まえた上で第 4 章では業界の取り組みについて論じていきたいと思 う。
  業界も最近は様々な取り組みを行っていると思うのだが、第 4 章では第 1 節 1 項の 1 円パチンコ・5 円スロットと呼ばれる低貸玉営業について力点をおきたいと思う。低貸玉 営業に関しての詳しく書かれた書籍は現在の段階では手に入らなかったので手探りという 形であるが私自身の実体験も含みながら紹介、論じていく。
第 1 節   気軽に遊技できるパチンコを目指して
第 1 項    1 円パチンコ・5 円スロットの導入
  パチンコ業界は平成 6 年から 7 年にかけて遊戯人口と遊戯単価がピークに達し、その後 平成18年には参加人口がピーク時から比べると約半分の1660万人に減少したということ は第 1 章 1 節の冒頭で紹介した。人々のパチンコ離れを懸念してパチンコホールが取った 施策として低貸玉営業、つまり 1 玉 4 円であったパチンコ玉を 1 玉 1 円にすることによっ て遊戯者に長く、従来よりも安い所持金でパチンコを楽しんでもらおうという作戦をとっ た。 私自身は当初、法律(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)が改正になっ たのだなと勝手に思っていたのであるが、パチンコホールの法務部の人に話を聞いてみる とどうやらそうではないらしい。気になって風適法を調べてみるとその第 35 条(遊戯料金 等の基準)にその答えが載っていた。第 35 条の解釈をするとパチンコについては玉 1 個 4 円以内、スロットについてはメダル 1 枚 20 円以内であって 1 個 4 円、1 枚 20 円でなけれ ばならないというわけではないとされている。 したがって 1 個 2 円、1 枚 10 円で貸し出すことのできる現金サンドや CR ユニットを設 置すれば、現行の 1 個 4 円、1 枚 20 円の貸玉・メダル料金以外でも営業することが可能 であったのである。しかし、この 1 円パチンコの流れが出てくるのは『パチンコ業界ニュ ース』で調べる限り、2006 年 6 月に関東を中心に出店している大手のピーアークが導入 を開始したことをかわきりであると思われる。 個人的には 2007 年度くらいから 1 円パチンコを行うホールが増えてきた気がする。実 際、私が今住んでいる身近な地域の話として山梨県東部富士五湖地方で始めて 1 円パチン コを導入したお店は河口湖のチャレンジャーというホールだったと思うのだが、2009 年 2 月現在、都留市のホールで 2 店舗、富士吉田では 1 円パチンコの専門店にリニューアルし た店舗を含め、1、2 円パチンココーナーなどの低貸玉営業を行うようになったホールが 3 店舗で、河口湖など低貸玉営業の店舗も含めると合計 7 店舗が低貸玉営業を行っている。
  ちなみに東部富士五湖地域のパチンコホール数はだいたい約 16 店舗(P-WORLD という 大手の情報サイトに登録しているホール数)であるが、実質 1 円パチンコが導入されるよう になってから 2 年くらいで約半分のホールが低貸玉営業を行っている計算になる。 しかし、この限られた地域のデータだけでは、低貸玉営業が広まっているとは明確に判 断できないので県単位での店舗数を調べてみることにした。今回は新潟、長野、山梨の 3 県のパチンコホールがどういった営業を行っているかについて前述の P-WORLD に登録 されている店舗に限り取り上げることにする」
  調査を行った日時は 2009 年 3 月 5 日で一つ一つのお店のホームページを開いて確かめるという手法をとった 、パチンコホールの営業の形態として等価交換と 同時に低貸玉営業を同時に行うホールが増えてきたように見受けられる。新潟県では、低 貸玉営業ないし、もしくは等価交換営業とのセットでの経営をしているホールが約 60%、 山梨県では、約 44%で長野県では約 37%になっている。 この新潟、長野、山梨の 3 県のパチンコホールに関しては、わずか 3 年ぐらいで約 40% から 60%と比較的高い割合で低貸玉営業を導入する方向に進んでいることが分かると思 う。ただ低貸玉営業のみのホールはどの県も極めて少ないように見受けられて等価交換と のセットの営業が主流のように思える。 この郡内地方の例にしても、新潟、長野、山梨のパチンコホール事情から見ても、低貸 玉営業導入の背景にはパチンコホールの厳しい経営状況が見て取れるのではないか私はと 思う。なぜなら低貸玉の 1 円パチンコの営業だと単純に利益も 4 円と比べると 4 分の 1 に なってしまうのである。それでも低貸玉営業をしなければならないのはやはりお客さんの 数が減少する中で他店とのお客さんの取り合いになったときに遊技価格を下げて棲み分け を図るしか方法がなかったのではないかと思う。
  ただやはり 1 円パチンコ 5 円スロットは 利益面から見たら利益が出しにくく、経営が厳しくなってしまうから、低貸玉営業を導入 した多くのホールは等価交換をメインにしつつ、集客の宣伝という意味も含めて低貸玉営業を導入しているのではないかと私は推測している。 というのも結局のところ 4 円パチンコ(等価交換)では、経済力のある大きなパチンコチ ェーンホールがある程度お客さんに利益を還元できるし、新台入替を頻繁に行い、遊技で きる機種の種類を豊富に取り揃えてあって消費者の遊技の選択肢が広いし、お客さんが集 まる傾向にあると思われる。だからこそ大きなチェーン店ホールに等価での出玉放出や新 台入替のスピードでは勝てないと判断した中堅や小さいホールが生き残りをかけて低貸玉 専門店へのシフトや 1 円パチンココーナーを作ってお客さん獲得に向けて動いているので はないだろうか。
  事実、私が住んでいる都留市のパチンコホールは比較的小規模なホールが多くて朝から 行ってもお客さんがあまりいないお店が増えてきた一方で、隣町の富士吉田市では大規模 なホールが多くて新台入替の速度も速くて人気機種の入る日ともなると 1 時間前にホール に行って抽選番号 200 番(つまり、1 時間前に 200 人が並んでいたことになる)という経験 もある。(最近、都留市にできた 1 円パチンコのパチンコホールにはかなりお客さんが入っ ているが…) 悪い言い方をすれば勝ち組、負け組みがはっきり分かれる状況下にパチンコホールはな りつつある。そうした中で多少売上を下げてでも少しでもお客を取り戻すために 1 円パチ ンコを仕方なく始めているホールが多いのではないかと思う。(大手チェーン、ダイナムの 事例のように大衆娯楽の実現を会社目標にし、あえて積極的に 1 円パチンコを導入してい るホールもあることはあるが…) さて、1 円パチンコ導入の経緯について少々熱く述べすぎてしまったが、実際パチンコ ユーザーの視点から見るとどういった点が良いのだろうか。
  実際のホールの販促物で 1 円パチンコ・5 円スロットを紹介しているものである。だいたいの 1 円パ チンコ・5 円スロットの店舗には販促物が入り口や休憩室など目 につく場所に掲示されているのであるが、今回はクエスト宮古店のホームページに掲載さ れている販促物を取り上げることにする。
  やはり、一番の利点は 4 円に比べて低投資で済むという点であるだろう。玉、メダルが 1 円、5 円とそれぞれの貸玉料が 4 分の 1 になることによっ て単純に 4 倍の時間パチンコ・パチスロを遊技することができるようになったのである。
  勿論、大当たりというのは完全確率であるから、運が悪ければ 1 円パチンコでも 1 万円 持っていっても当たりが引けないということもあるが、私の経験上、(打つ機種の大当たり 確率、パチンコならそのホールの釘調整によって多少誤差は生じるとは思う)甘デジと 呼ばれる大当たりが引きやすい機種であれば、多くの場合は 1000 円から 3000 円、5000 円の投資くらいで大当たりが引ける可能性が高いのではないかと思う。 3000 円から 5000 円でも一回に使う金額としては高いと思われる方もいるかもしれない が、アミューズメントジャパンが 2007 年 10 月にパチンコ・パチスロユーザーに実施した 「2007 プレイヤー動向調査」において 4 円パチンコの一番メジャーなミドルスペック(大 当たり確率 1/300 前後)の投資予定金額において 2 万~3 万と答えた人が半数以上である ことを考えるとかなり低コストで済んでいるということが分かる。 1 円パチンコに期待されることとしては、パチンコヘビーユーザーを始め、積極的にパ チンコをする層の人達を従来のパチンコよりも低コストで満足させることに留まらず、今 までは投資金額が高すぎてパチンコを楽しめないと判断し、やめていたライトユーザーを パチンコに復帰させること、そしてパチンコをしたことがない人達やパチンコに対してネガティブな認識や嫌悪感を持つ人達の認識を少しでも変えていくことまでの多岐に渡ると 思われる。
  まとめると 1 円パチンコは従来の 4 円パチンコのようにハイリスク・ハイリタ ーンで射幸性が非常に高かったパチンコから脱却し、ゲームセンターに行くときと同じ感覚で気軽にそして安価に遊技できるものへとパチンコとパチンコへの不信感やイメージす らも変えてゆく重要なシステムであると言えるのではないかと思う。
第2項  甘デジ機の積極的導入
  パチンコには様々な種類があり、その大当たり確率もそのひとつひとつの機種によって 異なっている。その種類を分けるとしたら概ね、5 タイプに分けることができるのではな いかと思う。大当たりの仕方が特殊である羽根モノ、この項で中心に取り上げる甘デジタ イプ(大当たり確率 1/100 前後)、ミドル前半(大当たり確率 1/200 前後)、ミドル後半 (大当たり確率 1/300 前後)、そしてフルスペック、マックスタイプ(大当たり確率 1/ 399 と呼ばれる 5 つのタイプである。 上記では甘デジという言葉を使用しているが、その他にも「ハネデジ」、「デジパチ」と 呼ばれることもある。その起源は、2004 年にサミーが『CR マーメイドザブーン ST』を 始めとし、その後『CR ポパイ ST』、『CR チョロ QST』、藤商事の『CR ドルフィンダイブ 』などがヒットしてパチンコの一つのジャンルとして認知されるようになったといわれる。
  甘デジの最大の特徴は通常のパチンコ機の大当たり確率が 1/300 程度であるのに対し て大当たり確率が 1/100 前後になっていて大当たりを引きやすくなったことにある。そ の分大当たりで獲得する玉も 1/3 程度になってしまうのであるが、これはつまり普通の パチンコ機種に比べて少ない投資で多くの演出を楽しめるということであって年々パチン コユーザーが甘デジを好んで打つ割合が増えてきているのも事実である。
  前項のアミューズメントジャパンの「2007 プレイヤー動向調査」によるとおもに遊技す る機種タイプで 2006 年度、甘デジと答えた人が 9.5%だったのに対し、2007 年度には 31.1%と約 3 倍に増えていた。この理由について同調査では「パチンコに遣えるお金が少 なくなったから甘デジを打つようになった」というパチンコユーザー層が多いと推測して おり、その背景には所得格差社会の進展や可処分所得の減少が影響していると分析してい る。 さらに年が経つことに遊技機メーカーも力を入れるようになって「遊パチ」と銘打って 甘デジにも色々なタイプが出てきた。『CRAF 倖田來未 YF-T』、『CRA 銀河鉄道 999VV』、『CRA 新世紀エヴァンゲリオンプレミアムモデル』、『CRA ルパン三世ルピナスタワーの ダイヤを狙え 9AU』など通常の人気機種の甘デジバージョンも次々と発売され、さらに大 当たりしたときの 1~15%くらいの確率で普通のパチンコと同じ量の出玉が獲得できると いう少ない投資で大量の出玉を獲得できる可能性もある機種も次々と販売されているので パチンコユーザーにとっては上記の 1 円パチンコと併用することによってよりパチンコを 遊技する際の選択肢が増えていることになる。こうした甘デジタイプのような比較的投資 金額がかからないが、おもしろい機種を遊技機メーカーが積極的に開発していければ、パ チンコユーザーにとっては従来よりも少ないお金で遊技できるはずなのでメーカーは今あるこの流れを軽視しないでいってほしいと思う。
第3項
  遊技環境の改善 最近のパチンコホールの傾向と取り組み パチンコホールに対するイメージというのは世間一般の人が想像するとどのような場所を想像するだろうか。私のパチンコ・パチスロを全くしない友達、後輩数人とゼミの先生 と話してみると共通して話題に挙がるキーワードが『タバコの煙』と『狭い空間』といっ たところであろうか。
  確かに私が住んでいる都留市のほぼすべてのパチンコホールはパチ ンコ台と台との感覚が狭く、タバコを吸わない人の隣にヘビースモーカーの遊技者が座る ものなら伏流煙を大量に吸い込むことになるだろう。またときにはタバコの灰まで飛んで くるときがあるから、だいたい彼らの言うイメージは的を射ている。 実際、駅前のパチンコホールや昔からあるパチンコホールはそのような感じの造りにな っていることが多い。勿論、ホール内に煙が充満していてタバコ臭いと思ったホールも私 の経験上いくつかあった。しかし、そうではないパチンコホールが増えてきていると私は 思う。主にそういうホールは郊外の広い敷地に建てられており、天井までおよそ 5m あっ て非常に高く感じ、空気清浄機が備わっていて常に喚気されており、何より店内も広いか ら隣でタバコを吸いながらパチンコを打っている人がいても台と台との感覚が離れている から特に気にならない。
  それだけではない。つい最近オープンしたパチンコホールに行ってとても驚いたことが あったのだが、そのホールは入るとまず目に入るのがパチンコ台でもパチスロ台でもなく カフェテリアだったのだ。勿論、店内は清潔感漂う造りになっており、最初場所を間違え たのかなと思うほどパチンコホールらしからなかったのである。またそのホールの駐車場 にはそのホール提携のラーメン専門店まで立っていて併せて驚いたことが記憶に新しい。 最近のパチンコホールは特に大手にその傾向が見られるのだが、住宅郊外地に大きなお 店を建てることが多い。
  そして消費者であるパチンコ・パチスロユーザーに配慮してかリ ラグゼーションルームなどを用意してそこに漫画、テレビやマッサージチェアまで配備し てゆったりとした空間でユーザー達にくつろいでもらおうとしているみたいである。 中でも私が特に注目したパチンコホールの遊技環境に関する取り組みがある。それはパ チンコホール業界大手チェーン、ダイナムの岐阜県の多治見店の取り組みである。このホ ールのテーマは「健康パチンコ」であり、多治見市から喫煙対策優良事業所認定を受け、 健康志向をアピールする完全分煙店であるというのだ。つまり店内のパチンコを遊技する 場所においてはタバコが吸えない禁煙ということになる。
  パチンコファンというのは喫煙 率が高いことで知られ、男性プレイヤーが 50.8%(平均 45.8%)、女性プレイヤー34%(平 均 13.8%)となっている(平均値は JT の調査による。)ことを考えるとこれは非常に思い 切った営業方法であるといえるであろう。ただし、店内には喫煙スペースも用意されてお り、その他にも休憩スペース、読書コーナー、健康器具グッズコーナーなどがあるパブリ ックホールも用意されているらしい。同店の店長は、完全分煙店に関して「今後の取り組 みは既存営業との差別化を進め、今までのパチンコ店になかった付加価値を提供していき たいと考えています」とインタビューに答えていて、つまりこれからのホール経営にはパ チンコユーザーの多様な声などに答えていくために更なる工夫や取り組みが必要であると いうことを示唆しているのだと思った。
  一般景品の充実 パチンコの景品には特殊景品と一般景品がある。特殊景品というのは換金問題のところ で挙げたので詳しい説明は省くが、現金に換えるための景品である。そしてパチンコを遊技して景品に交換するときに約 9 割以上のお客さんがすべて特殊景品に交換するのが今ま では当たり前だった。そのときに余る玉で、チョコレートやタバコや缶コーヒーなどをお まけで貰うというケースが多かったらしい。
   というのも一般景品の種類が少なく欲しい又は魅力的な商品があまりない状況下にあっ たからではないかと思う。私が見てきた限り、郡内地域でも一般景品に力をいれているホ ールはなかったと記憶している。全国の半数近くのお店でもその傾向は見られ、一般景品 は軽視していると思われる。 しかし、大手チェーン店などや 1 円パチンコ専門店では最近一般景品の品目を増やしてい る傾向にあると思われる。事実、前述のダイナムの新業態営業店(1 円パチンコ・5 円ス ロット専門店)では、一般景品の種類が 1000 種類以上もあり、ベーシックアイテムや生 活必需品などを取り揃えているらしい。また換金用の特殊景品の提供を一切行わず、一般 景品のみを交換する営業形態のホールも出店している。 フルスロットル広島西原店は、ド ン・キホーテがプロデュースする広島市内の複合型商業施設「パウ広島西原店」にオープ ンし、特殊景品を扱わないほか、メダルの貸出料金を1枚 10 円とし、一般景品もドン・ キホーテが扱う商品を中心に 500 点近くを揃えるなど、独自の営業スタイルで集客し、注目されている。 私が実際にパチンコを遊技しに行ってきた東京にある 1 円パチンコ専門店では、通常の ホールの 3 倍くらいのスペースを使って一般景品を陳列していたと思う。その景品の種類 としては、従来のタバコ、缶コーヒー、缶ジュースは勿論のこと、様々なお菓子から、シ ャンプー、リンス、ボディーソープ、歯ブラシ、トイレットペーパーといった日常生活品 からお米に至るまで、ちょっとしたコンビ二に来ているみたいな印象を受けたことを鮮烈 に覚えている。 このように一般景品を充実されることによって、1 円パチンコでは特にだが、換金する よりもお得だったり、却って都合が良かったりするケースもある。
  また遊技者自身だけで はなく、その家族などにも喜ばれるような景品を置くことによってパチンコのイメージを 改善していこうとするパチンコホールの新たな取り組みであると思われる。
第 4 項    プライベートブランド(PB)機の開発
  第 3 章ではパチンコホールと遊技機メーカーの力関係についてメーカーの方がはるかに 優位にたっていることを述べたであるが、最近ではホール企業も確実に力をつけてきてい る。それを示すのがプライベートブランド機(自社のオリジナルのパチンコ・パチスロ機) の開発である。 プライベートブランド機を開発する動きが出てきた経緯としては最近のパチンコ・パチ スロ機の値段が非常に高騰していることによる。大手に限らず今のパチンコ台はすごい技 術が使われている。巨大な液晶画面、最新の電飾(LED)を使った演出、役モノ(リーチがか かったときにその機種のメインシンボル的なモノが動く演出)の工夫など開発費が高騰し ており、さらに最近では「冬のソナタ」「春のワルツ」といった有名な韓国映画や「倖田來未」「小林幸子」「天童よしみ」「加山雄三」といった有名芸能人とタイアップすることによ って版権料だけで莫大な金額がかかることによってそれらが台価格に転嫁されるのではな いかと思われる。
  またこれは大手によく見られる傾向であるが、高頻度で CM を流す戦略をとっていてそ の費用も当然価格に転嫁され、最終的にはメーカーによって価格は若干異なるものその価 格は 1 台、約 20 万~30 万円と言われる。しかも、新機種が発表される周期も短くなって きている。結局、パチンコホールは他店よりお客に来てもらうためにパチンコ台を買うと いう行動を多くとるのだが、その新台入れ替えの費用を回収するためにパチンコ台の釘調整を厳しくしてお客に利益を還元しないようにする。そうすることを繰り返すとパチンコ ユーザーの信頼をなくし、お客がその店舗にいかなくなり、その店は潰れる。しかし、メ ーカーは一定した利益を得ようとするから台をたくさん発表して数の勝負をしかける。そ うするとあまり創りこまれていないつまらないスペックの辛い台ができ、ホールに導入さ れても勿論ユーザーには支持されないで 3 ヶ月で姿を消すということも過去の事例からは 良くあることである。その台を導入したホールも勿論被害を受け、その損害分を補填しよ うとして全体的に利益を還元しない方向の設定や釘調整をする。
  これは悪循環であり、購入費用を結局はパチンコユーザーから回収しようとするナンセ ンスな話である。(ホールによってはあまり新台入替をしないで、なるべくパチンコ台を新 台で買わないで中古になってから買うという戦略を立て、新台入替でかかっていた費用を なるべくお客に還元しようとしているホールもある。) こうした流れを踏まえて出てきたのがプライベートブランド機の開発であり、パチンコ ホールがオリジナルの自社製品を作ることである。プライベートブランド機の良い点とし て他店にはないという差別化、遊技機のコストの削減と同時にホールの意向を最大限メー カーに伝えることできる点である。ホールは遊技機のコストを削減することによってその 分の浮いたお金をお客に還元できるし、メーカーも完全受注生産で決められた台数導入が できるので利益計算がしやすいという利点がある。
  有名な PB 機としてはマルハンが 2007 年に、同社の 50 周年を記念したパチスロ機『パ ンドラ』(アリストクラートテクノロジー社製)や大当たり確率が 1/23.4 と甘デジと比べ ても非常に大当たりが引きやすく楽しむためのパチンコ台となったダイナム専用機である 『CR 満願チューリップ VL051』(大和工業)などがある。 ただし、これらの機種はパチンコホールの大手クラスの資本力と店舗数がなくては成り 立たない点や遊技機メーカーが造っている機種と比べると全体的にシンプルで地味な感じ がしてまだまだ主力機というには程遠く、どちらかというとごく一部の流れであるが、こ れから先どうなっていくか期待する価値はあると思う。
第 2 節  パチンコホールの CSR について
  近年、日本の企業において相次いで不祥事が取り沙汰されている。2005 年の証券取引法 違反のライブドア事件、2007 年には不二家による食品偽装事件、ミートホープによる牛肉 ミンチの品質表示偽装事件、2008 年には日本を代表する日本料理の老舗「船場吉兆」によ る消費期限偽装や地鶏・牛肉の産地偽装など多くの事件が明るみに出ている。 こうした中、CSR(Corporate Social Responsibility)「企業の社会的責任」を重視する傾 向が強まっている。CSR とは「企業が社会の一員として社会的なルールを守り、できる範 囲で社会に貢献する責任」のことであり、「CSR を実行して社会と良好な関係を保ちなが ら活動することが、企業自身の長期的な発展にもつながる」と一般には考えられている。
  無論、パチンコホール企業のなかにもこうした CSR を積極的に行っていこうとする傾 向がある。そうすることによってパチンコ業界のマイナスイメージからイメージアップを 図り、ホール企業の社会的地位向上を目指していると思われるのだが、どちらかというと 現状では大手ホール企業中心であるといえるだろう。できれば中小零細のホール企業すべ てが社会に対する責任を自覚し、自社の規模に応じた社会貢献活動を行っていくことがこ れからのパチンコ業界の全体社会的地位向上につながっていくのだと思う。 尚、CSR に関しては 2008 年の PCSA 懸賞論文で野澤和人氏の論文「CSR 推進における パチンコ業界活性化の可能性」で詳しく論じられているので、パチンコホールが行ってい る CSR や社会貢献活動についてマルハン、ダイナムの活動に絞ってなるべく最新の内容 を加えて下記に紹介したい。
   マルハンの事例 マルハンでは『社業を通じて幸せで希望に満ちた明るく楽しい社会作りに貢献していく ことに勤めており、自らが社会を構成する一員であることを意識して、「良き企業市民」と して社会への責務を果たしていきます』という社会貢献理念を掲げて次のような様々な活 動を行っている。 社会貢献活動 ・ CO2 削減のための電力消費削減活動 ・ 日本全国でマルハン少年野球教室の開催 ・ 「世界の子どもにワクチンを」募金活動 ・ プルタブ収集活動 2007 年度は収集したプルタブ 2400 キロ、約 480 万個のプルタブを 3 台の車椅子に交換。残 りの 18 台をマルハンからの購入で寄贈するマッチング方式を実施し、各エリアにマルハンフ レンド号(車椅子)を 21 台寄贈しました。寄贈先には、障害者支援センター、老人ホーム、 社会福祉センターなど。 ・ 全国の店舗にて献血活動 2007 年 6 月から 10 月までの献血参加人数は 1123 名であり、全国 85 ヶ所、473 名、従業員 が活動に参加し、多くの人々が献血に協力した。
  ・ 能登半島地震震災地への義援金寄託 日本赤十字社石川県支部に義援金 100 万を寄付 スポンサー契約(スポンサーとなることで積極的にスポーツ振興に携わる) ・香川オリーブガイナーズ、東京フィルハーモーニー交響楽団、J1 大分トリニータ、NOMO ベースボールクラブなど ダイナムの事例 ダイナムは業法(風適法) を含むすべての法令遵守には格段の努力を払っているとされ る会社である。
  積極的な情報開示や格付けの取得、お客様の視点に立った自由競争体制の 導入、PCSA (パチンコ・チェーンストア協会)への参加、さらに PTB15(パチンコ・ トラスティーボード)の設立協力など、常に他に先駆けて新たなビジネスモデルを創造・実践し、 パチンコホール業界の認知と社会的地位の向上に取組んでいるとされる。
  社会貢献活動 ・節電プロジェクト 社会的課題である地球温暖化防止のための CO2 の削減を行うためにダイナムでは全店舗で 10%の電気料金の削減を目指しており、2008 年度の 7 月と 8 月の結果によると目標を達成しているゾーンもあり、全体的に電機使用量が減少している。
  ・ 地域交流活動 ダイナム北上店では、1 人暮らしの高齢者宅を訪問し、窓拭きや草抜きなどを行うハウスク リーニングのボランティア活動に参加している。またダイナム水沢店では社会貢献の一環とし て献血活動を行って計 23 名が献血に協力している。またダイナム茨城高萩店では、特別養護 施設で、様々な障害を抱えたお年寄りの方々と雑談したり、歌をうたったりして時間を過ごす 対話活動が行われている。
   ・新潟県中越沖地震および熊本県大雨災害への被災者支援 新潟県中越沖地震および熊本県大雨災害への被災者支援として計 2222万 1114万円の義援金 を日本赤十字社に寄託した。 スポンサー契約 2008 年 7 月 30 日に行われたボクシング世界タイトルマッチに、複数の大会支援企業のひと つとして協賛に加わった。知名度の高い内藤選手の防衛戦という大きな舞台でこうしたパチン コホール企業の協賛は珍しいとされる。
  このように大手パチンコホール企業は積極的且つ戦略的に社会貢献活動を行っていると 思われる。所詮はパチンコ・パチスロで稼いだ金だと思う人もいるかもしれないが、客観 的に見てこうした活動はある程度社会からは良い評価を得るだろう。1 円パチンコという パチンコユーザーに負担減らす現場での活動とこうしたパチンコとはあまり関係しないと ころでのひとつひとつの活動の積み重ねが将来のパチンコホール企業の社会的な地位向上 やイメージアップにつながっていくと思われる。
第 5 章  大衆娯楽を実現するためには
   第 4 章の第 1 節ではパチンコ業界が行っている最近の努力について取り上げた。それは 1 円パチンコ 5 円スロットなどの低貸玉営業や従来のミドルスペックよりも大当たりが引 きやすくなった甘デジタイプのパチンコ機の登場などがメインであると思われるのである が、これだけではどうもパチンコ業界の客離れを食い止めるには不十分であると思われる。 なぜならば、現状のパチンコ・スロット機は 2004 年の規則改正以降、(正確には 2007 年 6 月末の 4 号機完全撤去)パチンコ・パチスロユーザーにとって満足いった機種が極端に 少なくなったように思える。その結果が第 1 章 2 節で示した通り店舗数の減少によってフ ァン離れが進んでしまったということであろう。 以前パチンコ・パチスロを遊技していた人をいかに再遊技させたいと思うか、また新し いパチンコ・パチスロファンを獲得するためにどのようなことが必要なことを第 1 節では考えていきたい。
  ここで強調しておくが、パチンコ業界全体の流れとしてもそうであるし、 私個人の考えとしても、パチンコは気軽に身近にそして安価でお金があまりかからずに楽 しめるものでなければならないということは共通認識であると思う。そのことを前提条件 として第 1 節で私が今までの遊技経験などを踏まえた上で考えてみたスロットの復興に向 けたアイディアやパチンコの機種の動向について論じている。
  私が一番問題としているの はパチスロ 5 号機への規則改正によってもたらされた射幸性を抑えようとするあまり、4 号機のすばらしいゲーム性までも規制してしまったことだと思う。だからこそ射幸性とゲ ーム性の 2 つのバランスを考えた上でのひとつの提案をしたい。
   一方、第 2 節では第 3 章で論じたことを踏襲した上でパチンコ業界の特殊な体質の改善 についてその他の産業と比較した上で競争原理を用いて考えていこうと思う。
第 1 節  温故知新による再活性化を図る
   スロットに関しての提案~低貸玉専用の新基準機を導入する~
  パチスロが衰退しているのは本論で何回も主張している。ではどうしたら良いのか。私 が提案するのは従来の 20 円に対して 4 分の 1 の 5 円スロットに限定して規制された 4.5 号機の解禁か、もしくは新しい解釈を加えた新基準を設けることである。 現在の 5 号機では満足しないパチスロファンが離れていった現状に日本電動式遊技機工 業協同組合の里見理事長が「2008 年の業界展望」と題して講演、2007 年 11 月 30 日に日 本遊技機工業組合の井置定男理事長とともに遊技機規則の解釈運用基準への柔軟な対応を 行政側に陳情している。
  しかし、翌年 2008 年 1 月の業界共催のパーティーで警察庁の辻 義之課長はこの陳情に関して言及をしなかった。このパチスロの厳しい状況を打開する可 能性があるとしたら規則緩和であるが警察庁の辻課長が言及を避けたことから判断すると あまり規制緩和は見込めないと思われる。 だからその行き過ぎた射幸性を抑えることができる上に 4.5 号機の良いゲーム面をも利 用できる方法として 5 円スロット限定の新基準機の導入だと私は提案する。射幸性が高い といっても貸玉料が 1/4 のであれば、今までよりも 1/4 の投資金額で済む。射幸性に関 しても今のパチンコのマックスタイプを遊技するよりも投資がかからないと推測できるの で高くないと言えるだろうし、4 号機の瞬発性と爆発性を再びファンは楽しめるのである。 もしかしたら貸玉料が20円(等価交換)じゃなきゃ4号機が復活したって意味がないだろ うと言う人々がいるかもしれないが 4 号機ファンの人々は高いギャンブル性だけに魅力を 感じてパチスロをしていたわけではないというのが私の考えである。
  ここで注目したい資料がある。それは、第 2 回 PCSA 学生懸賞論文に入選されている井 上春香氏の「パチンコの面白さってなんだろう(明るいエンターテイメントをめざして)」 に既出の資料である。それは同論文の第 3 章「パチンコになぜはまるのか」からで、谷岡 一郎氏の『パチンコ文化考』より井上氏が抜粋してパチンコ・スロット、麻雀などの面白 さについてキーワードで整理しているのだが、この部分は遊技者がパチンコ・パチスロに 求めているものほぼすべてを集約していて非常に的を射ていると思うし、またキーワード を踏まえて今のパチンコについての分析がなされており、帰結部分の「ゲーム性ではなく ギャンブル性に大きくシフトした娯楽になっていると考えることができます」という部分からも射幸性が高くなっていて楽しめなくなっているというパチンコの根幹の問題を指摘 していてすばらしい内容であると思う。
  では私はその資料を引用させて頂き、パチスロを しているユーザーがパチスロの機種に求めていたことについて考えたいと思う。またそこ から 5 号機との対比により 4.5 号機の再評価と低貸玉営業下での有用性に考えていく。 ドキドキ感の持続性、スピード(アクション数)、どきど き感の強さ、対人圧迫感からの自由度、主人公感覚に関しては 4.5 号機、5 号機どち らにもそれぞれ備えられていると思うし、優劣をはっきりつけがたいと言えると思う。 ルールの簡単さは、5 号機の方が優れているように私は思う。というのも 5 号機では、 目押し(場合によってはスイカ、チェリー、ベル、 などの図柄をユーザー自身の技術で揃 える必要がある)を必要としない初心者でも分かりやすい機種もいくつか発表されている からである。こういう機種は技術や知識のある人と初心者でも遊技をしていて結果に差が つきにくく平等のチャンスが与えられていると思う。 攻略感(実力の必要性)、一般的な爆発力、勝利期待度は総合的に見たときに 4 号 機の方が優れていたと私は思う。
  詳しく話すとかなり細かくマニアックな話になってしま うのでここでは差し控えたいと思うが、4 号機の方が全体的に大量の出玉を少ない時間で 獲得しやすかったということ、また技術介入度(知識や目押しなどの遊技する際のユーザー の能力)があるかないかによって大きな差が生じてしまう機種が多かったと思う。 確かに 5 号機にも魅力的な演出(大当たりが格段に引きやすくなった、アシストタイムと リプレイタイムを組み合わせた新システム ART(アシストリプレイタイム)搭載機によって メダルがジワリジワリと増えていき、ボーナスと合わせての大量出玉の期待がもてるな ど。)があると思うし、全体的に見たときに投資金額が少なくて遊びやすいとは思うのだが、 やはり②、⑤、⑥といった比較的ユーザーが重要視していた要素(ゲーム性やシステム)ま で制限してしまったことが私はパチスロの衰退を招いてしまったと思う。勿論、冒頭でも 述べているが射幸性が高かったことは事実であったし、その射幸性(ギャンブル性)を求め て遊技していたユーザーも多かったと思う。ただ規則改正が緩和される見込みがほぼない 現状下でパチスロを復興させて再びファンに支持されるものになるためにはゲーム性を重 視するしかないと思う。
  真ん中の 4.5 号機新基準は私が提 案している部分である。現状ではユーザーがパチスロを遊技する際は 5 号機の機種を等価 交換のホールで遊技するか低貸玉営業のホールで遊技するかの 2 つしかない。その中に 4.5 号機金基準(5 円スロット限定)を付け加えてみたらどうかというのが私の提案しているこ となのだが、少なくとも今よりはユーザーの遊技の選択肢が増えるのではないだろうか。 低貸玉の 4.5 号機基準(低射幸性)が本当にギャンブル性の高い機種を望んでいた人達に 受け入れられるのかというと実際やってみないと分からないのであるが、遊技者の打つ台 の選択視が広がるという点と射幸性の面では問題がなくなるため、行政の緩和も比較的現 実味がある。
  その上、今ではあまり使い道のなくなっている 4.5 号機の再利用ができると いうことで、格段に値段が安くなっている中古や倉庫に眠っている遊技機を使えればコス トパフォーマンスの面からもホールにとっては悪くないと思える。実際、何人かの 4 号機 を遊技していた世代の人達に 4.5 号機が 5 円スロットで復活したら打ちにいくかと聞いて みたら、ほぼ皆打ちにいくと答えていた。その理由としては、「額は少なくなっても設定 が入ってたら確実に勝てる」、「ゾーン狙いや 1G 連(連チャン)など 5 号機にはないもの がまた楽しめるから」、「ラオウを昇天させたい(その機種の演出に対する熱い思い入れが あると思われる)」、などが挙げられたのであるが、現状よりは良い方向に進む可能性はお おいにあると私は思う。
  ただ新基準の機種を作る場合には遊技機メーカーはたぶん費用対効果が得られないと否 定的な見解を示すであろう。だが、長期的に見たとして、多くのパチスロユーザーが戻っ てきてくれるなら十分に開発投資にかかる費用分は回収できるのではないかと思う。また 4号機がなくなった後に問題となった「地下スロ」「闇スロ」などと呼ばれる違法パチスロ営業も堂々と遊技できるわけなのでこうした違法営業の減少にも少しはつながるのではな いかと思う。
   パチンコに関しての提案 ・タイアップの仕方を見直し、メーカーオリジナルの挑戦を期待 私はどちらかというとパチンコ派であり、現在はパチンコを遊技する割合の方がはるか に多い。そしてどちらかというと 1 つの機種を打つよりは様々なメーカーの機種を打つタ イプである。パチンコに関して事前知識がないほうが演出の当たり具合が分からなくてド キドキ感が増すからである。(現在のパチンコ機の中には打つ前に知っておいた方が断然収 支に影響をもたらす情報や知識もある。) そんな私が思うことは最近の機種はひとつのメーカーがある演出を開発とすると他のメ ーカーも一斉にその演出を自社機に搭載することが多くなった、所謂真似をするというこ とと 1 回ヒット作がでるとその続編みたいな機種を 2 度も 3 度も出すということ、やたら 映画、有名な芸能人、有名な漫画やアニメとタイアップすることが多くなったという 3 点 が気になるところである。 3 点目に関してはやっぱり人々は自分自身が知っているドラマ、アニメ、芸能人の方に 興味をもつのだから致し方ないとしても、高い版権料金を使ってパチンコ台を作ってその 料金を結局は消費者に転嫁させるのは良くないと言えるであろう。 1 点目に関して言えば、最近では「擬似連」という演出があって、その回転ではリーチ にならないで 2、3、4 回目と続けば続くほど大当たりに近づくという演出なのであるが、 私の記憶では最初に導入したのはビスティの「CR 新世紀エヴァンゲリオン~セカンドイ ンパクト~」あたりだったと思うのだが、その演出が注目されるとどこのメーカーもこぞ って同じことを導入し始めるということが起きてしまった。
  確かにプレイヤーをドキドキ させる演出なのだが、どの機種でも同じ演出が起こるので見飽きてしまう。 2 点目に関しても遊技機メーカーは 1 度ヒットした機種の続編をものすごく出したがる 傾向にある。SANYO なら「海物語」、サミーなら「北斗の拳」、ビスティ(フィールズ) なら「新世紀エヴァンゲリオン」、平和なら「ルパン 3 世」と同じ作品で何回もパチンコ 台を出してきた。
  勿論、演出などは微妙に変わっているので遊技したいという人々もたく さんいることは紛れもない事実であるのだが、3 度も 4 度も出されたら普通の人なら飽き てくるだろう。 この感覚を例えるなら「1杯目のビールと 2 杯目のビールでは満足度が違う。その主観 的な満足度を効用、効用が追加1単位当たり減っていくことを限界効用逓減って言う。(ビ ールの比喩)」とよく云われるミクロ経済学の基層を成す限界効用逓減法則に見事に当ては まるだろう。1 回目には面白いと思っても 2 回、3 回とほぼ同じものを出されたらその満 足度は徐々に下降してくるであろう。 今やパチンコシェア 1 位の SANYO は当時 1999 年の「CR 海物語」という簡単で単純 明快な演出が幅広い年齢層にうけ、業界 NO1 のヒットシリーズとなった。
  また魚群リー チを生み、「リーチ→群予告=激熱」という今やどこのメーカーも取り入れている演出を開 発した有名なメーカーである。しかし、その後は海シリーズに頼りがちになってユーザー に支持されない機種も出してしまったように見受けられるし、マンネリ化してしまった感が否めない。できれば最初に「CR 海物語」を作ったそのときの初心の精神を SANYO 含 めすべての遊技機メーカーにもう 1 度思い出して欲しい。 SANKYO の子会社のサテライトが作ったオリジナルアニメ「創聖のアクエリオン」は もともと深夜に放送されていた無名のアニメだった。しかし、2007 年 11 月に同社のパチ ンコとして登場したとき、そのインパクトのある CM の効果もあいまって大ヒットとなっ た。
  やはりマンネリ化した遊技機が多い中でこうしたオリジナル性のあるパチンコ機種が パチンコユーザーの心をつかんだ成功例といってよいだろう。 確かに上記のような成功例は稀に起こることかもしれないが、ただ有名な題材とタイア ップしただけのスペックの辛い台をたくさん作るよりはそれぞれのメーカーオリジナルの 演出や技術を少しでも多く生み出し、そのパチンコ台に導入することによってパチンコユ ーザーに新鮮さと共に楽しい、面白いと思えるように感じさせる努力こそがこれからメー カーが生き残っていく上でも必要になるだろう。
   ・パチンコファンの視点に立つことが必要 2008 年のパチンコ業界は、だいたい 9 月くらいからだっただろうか、パチンコの新機種がマックスタイプやバトルスペックなど当たりにくい、ユーザーの投資金額がかさむ機種が増えてきたような気がする。サミーの「ぱちんこ CR 北斗の拳ケンシロウ・ラオウ」、 サンセイ R&D の「CR 牙狼 XX」、SANKYO の「CRF 愛の戦士レインボーマン’70」、 西陣の「交響詩篇エウレカセブン ZC」、ニューギンの「CR 花の慶次~斬 H6-V」など各 遊技機メーカーの主力機種の割合がマックスタイプに偏ってきていると思う。(2009 年 4 月からパチンコにも規制がかかるらしいのでその前に今のルールでの機種を出したいとい う気持ちには一定の理解も得られるが…) パチスロユーザーが減り、パチンコに期待がかかる中、このように射幸性が高い機種ば かりを作るというのはあまり良くないのではないだろうか。
  確かにバトルスペックやマッ クスタイプは 1 回大当たりを引けば、連チャン(大当たりを引き続ける)する可能性が高く 大量出玉を大いに期待できるが、その一方で当たらないときはお金があっという間に消え ていくハイリスク・ハイリターンの機種ばかりである。 パチンコ業界は一時期、遊べるパチンコ「遊パチ」と銘打ってパチンコファン離れを食 い止めようとしていたのに今の機種事情を見ていると「遊パチ」も霞んでしまっていると 言えよう。遊技機メーカー・パチンコホールの方々はパチンコにあまりお金をかけないラ イトユーザーが増えている状況をしっかりと再認識していく必要があるだろう。
  2008 年後半、リーマンブラザーズの経営破綻に波及して世界経済が危機に陥り、そして日本経済で も派遣・非正規雇用労働者が次々と雇用契約を切られるなど実体経済にも次々と影響が出 てきている中で今後も 2009 年半ばから年末にかけても経済状況は一層厳しくなるはずで ある。そうすれば、パチンコユーザーがパチンコに使える金額も減少していくのは必至で あろう。 そのような状況下で遊技機メーカー・パチンコホールは話し合って同じ共通認識を持つ ことが大切なのではないだろうか。やはり業界としてまずはパチンコというものに対する 世間の認識を少ない資金でも楽しめるという内容を伴った「遊パチ」を全面に押し出し、 PR を継続していき、パチンコファン離れを食い止めると共に新規のファンを獲得するための努力を真摯に行っていくことだと私は思う。
第 2 節  競争による業界再編~企業戦略としてのチェーンストア化の有効性~
  すべての産業における共通点としては一定のライフサイクルがあるとされる。つまり、 その産業が成長し、増大したところから増えすぎてしまった産業はオーバーストア状態に なり、市場原理主義のもとそこから競争が生まれて力の強いところが生き残り、安定した 産業に成長していくという流れである。
  番号をつけるとしたら下記のようになるであろう。 爆発的成長(サービス業では出店数) オーバーストア時代への突入 成長企業による寡占化 成熟した産業へ 家電流通業界では上位 10 社に売上高が集中し、寡占が進んでいるとされる。2006 年の データによると売上高 1 位のヤマダ電機(1 兆 4437 億円)、次いでエディオン(6463 億円) となっており、上位 10 社の売上高は合計で約 5 兆 2000 億円にのぼり、この規模は家電流 通業界の実に 65%を占めるらしい。  上の番号で言えば、の状真只中かもうに移行して いるといってよいかもしれない。 このようになったのはできるだけ店舗数の建設コストを抑え、店舗の標準化・チェーン 化を図り、オペレーションコストを下げ、内部で努力してきたことと、バイイングパワー を上げて、仕入れコストを下げることであり、仕入れ量を増やすことによって(メーカーの 取引政策が数量リベート製なのを利用しての仕入れ価格を安くするように交渉する)交渉力を高めてきたことによる。
  これを大手 10 社は戦略的に行ってきたことで競争に勝ち今 の寡占化の状況になったと云われている。 また GMS(ゼネラルマーチャンダイズストア)業界はすでに成熟化した産業といわれ ているが、2007 年でそのシェアはイオンとイトーヨーカ堂で約 40%といわれており、以 下ユニー、西友などが続くとされる。やはりこの業界でもトップクラスの企業はチェーン ストア化を行っているようである。
  そもそも、小売業における先駆者は世界一の企業となったウォルマート・ストアーズで あるとされ、それ以降日本でも多くの流通小売業はチェーンストア化を図ることで規模を 拡大してきたとされる。チェーンストアが消費者に与えるご利益とはオペレーションと仕 入れの中央集権化がもたらすコストダウンによる低価格化であり、もう 1 つは単一のコン セプトで多数の店舗を統一することによる、「いつでもどこでも同じ買い物ができる」とい う安心感を消費者に与えることだったとされる。 余談ではあるが、私はウォルマートという企業についてあまり知らなかったので、安易 なイメージとしては、他社とは違った派手な人の目を引く経営をして経営者も豪華な生活 しているのかなぁと思っていたのだが、ウォルマート創業者のサム・ウォルトンの『私の ウォルマート商法すべてを小さく考えよ』を読んでみてそのイメージをほぼすべて裏切ら れたし、サム・ウォルトンがいかに消費者のことを思い、不断の努力をしていたのかまた ウォルマートの経営方針がとてもオーソドックスだったことなどはとても印象的だった。
  ではパチンコ業界はどうだろうか。ピーク時には約 18000 店舗あったホールも現在、矢 野経済研究所による 2008 年 12 月の最新のデータによるとは約 12717 店舗と減少してき ている。これは前述のパチスロ 4 号機の規則改正による効果が大きいが、からに移行 している状態にあると私は推測する。大手のマルハンやダイナムは上記の家電業界上位 10 社が行っているオペレーションコストを下げるチェーストア化を企業戦略としてすでに行 っており、順調に店舗数を伸ばしているように見受けられる。 家電流通業界や GMS 業界などとは少し性質が違うと思うのはチェーンストア化など企 業努力によって生み出した浮いたコストを他業種では商品の低価格化という分かりやすい 形で消費者に示している。
  ただパチンコホールではどうやって利益還元を消費者に示すの だろうか。 ひとつは釘(パチンコ)や設定(パチスロ)などを開けたり、高設定をいれてお客様が勝ちや すい状況を作り出すことだと思うのだが、(これは「還元イベント」銘打って多くのホール 企業が行いそうなのだが…)果たしてそれは消費者が実感できるのだろうかと疑念が残る。 というのも完全確率化ではどんなに少ないお金で大当たり引くチャンスが増えても大当た りを引けないで投資金額が結局膨大になってしまうときがあるし、さらに正直言って最近 のパチンコの機種は(私個人の感覚としてだが…)なかなかメーカー発表の確率通りに大当 たりを引いてくれないし、やっと大当たりを引いても 1 回で終了して追加投資が必要にな るケースもあり、尚且つ全体的に一回の出玉が少なくなっていると思うので消費者が確実 に利益還元にあやかることができるということはないと思われる。
  もうひとつの還元方法として今流行の低貸玉営業(1 円パチンコ・5 円スロット)で消費者 にパチンコ・パチスロを遊技する際にかかる投資金額自体を減らして気軽に遊技できるも のにしてしまおうという遊べるパチンコ化の普及であると思う。私は低貸玉営業の普及に 関しては大いに支持できると思うのだが、やはりパチンコホール経営者としては利益を出 しにくいせいかまだまだ普及には程遠いように見受けられる。
  またパチンコ業界ではメーカーとパチンコホールの力関係でメーカーが圧倒的に強いと いうことであるが、業界の寡占化が進めばパチンコホールが少なくなり、その分、メーカ ーの納品先が少なくなり、メーカー間でも今よりは厳しい状況下になり競争が生じるかも しれない。 したがって、パチンコホールの寡占化、つまり②→③へ移行が進んでに完全移行した ときには、遊技機メーカー50 社の中でも競争が生じて吸収合併などの再編が起こるかもし れないと思われる。
  その競争の中で現状では不可能とされている新規参入を目指す企業も 名乗りを挙げてくるかもしれない。そうすればパチンコ台の価格は家電業界の競争の中で 性能は向上し、価格が格段に下がっていった薄型テレビやノートパソコンのように安くて 良い台が生産されてくるかもしれない。当然パチンコホールと遊技機メーカーのパワーバ ランスもより対等になる可能性も十分に考えられる。
終章  今後のパチンコ業界のあるべき姿について
  本論でも触れていたが、今後もパチンコ業界は厳しい状況になると推測される。パチン コ・パチスロユーザーの減少に相まってパチンコホール数が次々と減少していく中で業界 がとっている行動にはあまり進歩が見られない。パチスロの射幸性が規制されると今度は パチンコでマックスタイプばかりを出し、パチンコの射幸性を高めようとしている。遊技 機メーカーもパチンコホールも自身の利益を出すことを優先していて本来では一番大切な 消費者に対する配慮が欠如しているようにも思える。
  遊技機メーカーは消費者に遊技する 台を提供し、パチンコホールは遊技する場所を消費者に提供している。このどちらかが自 分本位な行動をするだけで消費者の遊技に悪影響を与えると思うのだが、たぶんメーカー、 ホールどちらにも怠慢や慢心があったからこそ、今こうした状況に業界は陥っているのだ ろう。
  本論を書いている中で私がパチンコ業界に必要だと思うものは社会から認められるよう な産業に内側から変わっていくことであると思う。そのためには第 3、4 章で挙げてきた 射幸性が大きく結びついた換金問題、ハイリスク・ハイリターンなパチンコ・パチスロ台、 ギャンブル依存症の問題と閉鎖的で特殊な経営体質とその管理行政の問題を解決していく ことが必要であろう。 この作業は容易ではないし、1 人、1 企業の力では 100 年経っても無理であろう。堅く 結ばれた蜜月関係は政-官-民の関係で必ず生じ国交省関連、防衛省関連などが良くメデ ィアで報道されているが、ただでさえ分かりにくい上にパチンコ業界は他業種と比べると 情報が非常に少なくかなり露見しにくいと思われる。しかし、今パチンコ業界には微々た るがそうした流れを少しずつ変えていこうと努力している人々が少なからずいる。 そうした人達が今行っていることはパチンコをギャンブルという一連の負のイメージか らゲームセンターやスーパーに行くような感覚で気軽に遊びに行けるまさに大衆娯楽にし ようとしているのである。
  そのために 1 円パチンコを始め、様々な取り組みを手探りの状 況下で失敗をしながら行っているのである。それはパチンコだけに留まらず、パチンコ以 外でのところでも CSR としての社会貢献活動という形で現れ始めている。 私は今あるこの革新的な流れをさらに発展させていくことが非常に重要であると思って いる。まずは社会に認められること、そのためには CSR を遵守しつつ、社会貢献活動に よって評価を受ける。
  そうした中で積極的に情報を社会に開示していくことでパチンコに 興味がなかった人々にも関心を持ってもらう。勿論、この一連の行動はパチンコホールだ けでは到底できないだろう。本論ではパチンコホール目線から論じているためどうしても 遊技機メーカーを否定的に捉えてきたが、パチンコ業界を変革するためには両者の協力が 必須条件であろう。 しかし、現状のパチンコ関係のニュースを見る限りでは両者が歩み寄ろうとする姿勢は 見られるものの利害関係からか完全な信頼関係を築けていないように思える。この両者の 信頼関係が築けたときこそがパチンコ業界のあるべき姿であり、理想の姿であるといえる だろう。つまり、パチンコホールと遊技機メーカーが対等に議論し、お互いに意見を言い 合いその結果としてより良い台、それはパチンコ・パチスロユーザーが安心して楽しめ、 幅のある遊技の選択ができる消費者第一に考えたパチンコ・パチスロ台が作られていく業 界になることである。そうすればパチンコ業界の社会的地位は自然と向上し、社会のインフラにすらなり得ると私は期待している。


パチンコ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

  パチンコとは、ガラス板で覆った多数の釘が打たれた盤面上に小さな鋼球を盤面左下から弾き出し、釘に従って落ちる玉が特定の入賞口に入ると、得点あるいは賞球が得られる日本の遊技(ゲーム)である。漢字表現は「自動球遊器」。最も一般的な営業形態は風俗営業として、客が遊技の結果得た鋼球をパチンコ店が指定する特殊景品と交換し、景品買取業者(古物商)が運営する景品交換所がそれを買い取る形で現金と交換する
  システムとなっている。日本においては風俗営業に分類される。規制が年々強化され、2018年12月末時点でパチンコホール経営企業数は、前2017年同月末比で241社減少し3,003社、店舗数は464店舗減少で9,794店舗。
  チンコ遊技機(ゲーム機)そのものは「パチンコ台」と呼ばれる。ただし、「パチンコ」は通称であって、風営法上では「ぱちんこ遊技機」とひらがなで名称されている。パチンコ設備を設けた遊技施設は、施設設立前に警察に営業許可を事前に求めなくてはならない。呼称で最も一般的には「パチンコ店」または「パチンコ屋」と呼ばれるが、パチンコ業界やパチンコ雑誌などでは「パーラー」・「ホール」と呼ぶ場合もある。店名にパーラーが入っている店舗も多数存在する。
  このような遊技施設は、1930年に最初の店舗が開店し、その後第二次世界大戦時は不要不急の産業として一時は全面禁止となったが、終戦後に復活した。
  2009年現在、日本以外ではアメリカグアムなどにパチンコ店が存在しているが、賭博(カジノ)として位置づけられ、規制を受けている。また中華民国台湾)では、法律上で禁止されている(ただし実際には多数の非合法店が営業を行っている[2])。韓国では在日韓国人によってパチンコが持ち込まれ流行していたが、「人間を怠惰にして、人生を狂わせる」として[3]、2006年からはパチンコにおいてそれまで利用されていた商品券の換金が停止、事実上の法規制となった(メダルチギも参照)。また、北朝鮮平壌にもパチンコ店が存在している。
  日本国内のパチンコ店で行われる営業(以下「パチンコ営業」)は、法的には風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」)
  第2条第1項第4号で「設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」として定める風俗営業で、遊技の結果で得た鋼球を賞品と交換され、パチンコ店から現金が持ち込まれている景品交換所で現金と交換される営業が行われる。このような遊技施設は、18歳未満の者は営業所に立ち入ってはならない旨を入り口に表示するよう義務づけられる(風営法第18条)とともに、客として立ち入らせることを禁じられている(風営法第22条第1項第5号)。
  パチンコ遊技施設は、現在ではギャンブル的要素を持つが庶民の身近な娯楽施設として、都市や地方を問わず国内各地にくまなく存在している。このために、多くの社会的問題を抱えている(→パチンコ#パチンコの問題点参照)。変わったところでは、2017年2月1日、九州で「P-ZONE」を展開する株式会社パラダイスが経営する複合型リゾートホテル「ザ パラダイスガーデン サセボ」(佐世保市)にて、パチンコホール「パラダイス」がオープンした。この店舗は日本人でも利用可能だが外国人宿泊客をターゲットとしており、4ヵ国語(英語、中国語、韓国語、台湾語)で書かれた遊技台や機種の説明書を設置しているほか、営業時間はホテルのチェックインに揃えた16時から22時40分まで、また宿泊客に外国人がいない日は休業とするなど独特な営業形態を採っている。
  パチンコ店以外では、ゲームセンター露店などにてもパチンコ台が設置・運営されるが、この場合は鋼球と景品との交換は行われない。以前は一定数の得点に到達すると景品が払い出されるマシンが多数存在したが、風営法の規制強化に伴い全て禁止となった。コンシューマ分野においては、中古のパチンコ台、パチスロ台を個人向けに売買する市場があり、また、このようなパチンコ台の特徴を模した玩具や、シミュレーションゲームとしてのビデオゲームも存在する。
風俗営業としてのパチンコ営業
  パチンコ店としての風俗営業は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の第二条第一項第四号(いわゆる「第4号」)に基づいて運営される。パチンコ台を設置するゲームセンターは同法においていわゆる「5号営業」に該当する(運営に関する詳細は「ゲームセンター」を参照)。
法的根拠
  日本国内のパチンコ店で行われる営業(以下「パチンコ営業」)は、遊技の結果によって賞品を提供している。この根拠となる法令は、風営法第4条(許可の基準)、同法施行令第7条(政令で定める営業)、同第10条(遊技機の種類)、同第11条(政令で定める営業が遊技の結果に応じ客に賞品を提供させる営業であることを明記)、風適法施行規則第36条(遊技料金等の基準)である。
  これら法令に基づく営業において景品を提供する事自体は合法であるが、現金や有価証券を提供することは禁止している。しかし、客が獲得した景品を古物商に売却して現金化する事例が多く、客から古物商が受け取った景品は景品問屋を通じてパチンコ店に卸されており、これを事実上の賭博行為として問題視する意見もあるなど、多くの社会的問題を抱えている(→パチンコ#パチンコの問題点参照)。
パチンコ店の業況
  2004年7月に改正された遊技規則の影響を受け、2004年6月以前に保安通信協会(保通協。当時の名称は「保安電子通信技術協会」)の検定を通過したパチンコ遊技機やその他の遊技機は、遅くとも2007年9月末までに全て撤去することが義務付けられた。また大当たりの連チャンが人気だった4号機パチスロ機も同時に撤去対象となっており、これに伴いパチンコホールは入替のために多額の費用負担を強いられた上、射幸心をあおる
  遊技機の規制により大幅な客離れが見込まれたため、金融機関もパチンコ業界へのファイナンスに対し非常に慎重になった。そうしたあおりを受け、2007年4月27日には業界第6位のダイエー(本社・会津若松市)が東京地方裁判所民事再生法の適用を申請したことを代表に、2007年度のパチンコ店倒産件数は前年比37.1%増の大幅増加となった。
遊技料金
  パチンコの遊技料金は、国家公安委員会規則である風営法施行規則で規定されている。1978年以降長い間玉1個につき4円以下と定められていたが、2014年4月に「貸し玉料金に消費税相当分の上乗せを認める」旨の改正が行われ、玉1個につき消費税込みで4.32円以下(2014年4月現在)となっている。
  ただし上限いっぱいの4.32円貸しでは、一般的な貸玉1回の単位である500円で割り切れないため、実際には貸玉カードの精算機を1円単位で返金できるようにして4.32円貸しとするか、500円で割り切れる単位の貸玉料金とする(例:500円あたり116個貸し=1個につき約4.31円)等の対応が求められる。
  以前は、ほぼすべての店舗が貸玉料金1玉4円で営業していたが、2006年頃から1玉1円での営業スタイルが広がり始め、現在では貸玉料金を1玉0.5円、0.2円、0.1円、2円等に下げ、低資金で長時間の遊技が可能である事を稼働率回復の特効薬とする店舗が多数存在する。これらを4円パチンコは「よんぱち」、1円パチンコは「わんぱち」「いちぱち」、2円パチンコは「にぱち」「にこぱち」等の名称で宣伝、呼称している業者が存在する。
  また、2014年4月以降貸玉料金に消費税相当分の上乗せが出来るようになったことから、低貸玉営業においても一部の店舗では貸玉料金に消費税分を上乗せ(1円パチンコの場合1.02円から1.25円程度)するようになった。
景品交換
  風俗営業としてのパチンコ営業では、客が遊技の結果で得た玉などを賞品と交換する。風営法は営業者に、現金や有価証券を賞品として提供することや客に提供した賞品を買い取ることを禁じたり(23条1項)[33]、賞品の価格の最高限度に関する基準(国家公安委員会規則で定める。
  2014年4月現在、最大賞品価格は9,600円で消費税込み10,368円)に従った営業を義務づけ(19条)たりして、パチンコの射幸性を抑制している。
  なお、2012年頃から警察庁ではパチンコ玉・メダルと景品の交換率を店舗単位で統一することを求めるようになったが(いわゆる「一物一価」)、地域によって取り組みはばらついており、2014年現在は必ずしも徹底されていない。
パチンコの合法性
  パチンコは前述の通り「特殊景品」を景品交換所に持ち込むことで現金に交換することが可能である(三店方式)が、そもそもこれは終戦直後のパチンコブームの際に換金行為に暴力団の介在が横行していたことを防ぐために暴力団排除にもつながることからよりましな手段として1961年に大阪で導入され、警察も黙認あるいは支援していたものである。これが法律違反に当たるかどうかについて、1968年の福岡高等裁判所では、「交換所が顧客から買い上げた特殊景品が景品問屋でシャッフルされる形で複数のホールに卸されているため、ホールの特殊景品が交換所や景品問屋を経てそのままストレートに最初のホールに戻ってくると特定できない」として「三店方式が風俗営業法条例違反に当たらない」として無罪判決が下されている。 
  賭博(ギャンブル)とは刑法においては、「金品などを賭け、偶然性の要素を含む勝負を行い、その結果によって賭けた金品の再分配を行うもの」をいい、このような「賭博」は、賭博罪として刑法185条によって禁じられている。ここで「金品」には景品も含まれるため賭博罪の正否が問題となる。
  パチンコでは現金や有価証券ではなく賞品を景品として出すことが風俗営業法で認められているため、刑法第35条の「法令又は正当な業務による行為」として刑事罰の対象にはならない。
  なお、日本国内における、海外の賭博場であるカジノを模した遊技場は、風俗営業適正化法では5号営業、すなわちゲームセンターとしており、風俗営業適正化法第13条は、その5号営業では遊技の結果に応じて賞品を提供することが禁じている。そのため、そのようなカジノを模した遊技場が三店方式を模倣した場合、遊技の結果による賞品の提供がこれに抵触するので、違法行為となり、実際に警察に検挙されている。
  これらの状況については、警察・検察のパチンコ業界との癒着が指摘されている。産経新聞は景品交換所での現金化は「事実上の賭博」に該当しており、警察が黙認しているとしている
警察との癒着
  警察庁はパチンコ業界の監督官庁として、その外郭団体である保安通信協会で遊技機の仕様が適正であるかどうかを調べる試験を行ったり、さらに、試験に通過した機種を実際に営業に供して良いかどうかの検定を各都道府県の公安委員会で行ったり、あるいは店舗営業の許可を与えたりするなどの権限を握る立場にあるため、癒着が発生しやすい関係にある。
  例えば、遊技機の型式試験を行う保安電子通信技術協会の前会長は元警察庁長官であった山本鎮彦であり、職員の1/3を警察出身者が占めることや、パチンコメーカー・アルゼでは元警視総監である前田健治を常勤顧問として迎え入れていたなど、関連団体や企業への天下りとも解釈できる例が見られる。
  パチンコ業者の団体である東京商業流通協同組合、東京ユニオンサーキュレーションなどに、多くの警察官が天下りしている。また、貸金業クレディセゾンの連結会社であるパチンコ業界大手のコンサートホールは、各店舗ごとに警察官1名の天下りを受け入れることを警察への求人で表明している。このようなことから、ジャーナリスト寺澤有は「日本全国でパチンコの違法状態が放置されている理由は、他でもない警察が換金業務を牛耳っているからである」と問題視している。








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