原子力発電問題-1(太陽光発電他)
2024.11.21-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241121-UTLWM7WRZRMZHBGFK2C2JVMKS4/
関電美浜原発3号機が運転再開、1カ月ぶり発送電へ 配管損傷で10月に停止
関西電力は21日、
補助建屋内の海水が通る配管で穴や内側から薄くなる「減肉」が確認され、
運転を停止した美浜原発3号機(福井県美浜町)の原子炉を起動したと発表した。
同日夜に発送電を再開する予定。10月15日に原子炉を停止して以来、運転は約1カ月ぶり。
関電によると、21日午前1時、
核分裂反応を抑える制御棒を引き抜く作業を始め、午前4時に核分裂が安定的に続く臨界に到達した。
配管は機器を冷やす系統で、10月に塩が付着しているのを運転員が見つけ、それぞれ直径6ミリと3ミリの2カ所の穴と減肉を確認。3号機の原子炉を停止した。
関電は配管内の流速を誤認し、耐久性の低い材料でコーティングしたことが原因だったと発表。新しい配管に取り換えた他、再発防止策として、配管コーティングのガイドラインを作成する。
3号機は運転開始から原則40年、最長60年のルールに基づき、令和3年6月、40年を超える原発として国内で初めて再稼働したが、テロ対策施設が未完成だったため同10月に再び停止。4年8月に運転を再開した。
2024.11.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241115-MDIIGNSSOFMETJ2P435TM5TK54/
女川2号機が13年ぶり発電再開 被災原発として初 機器不備で当初3日の予定を延期
東北電力は15日、
東日本大震災で被災した原発として初の再稼働となる女川原発2号機(宮城県)で発電を再開した。当初は3日の予定だったが、
中性子を計測する検出器が原子炉に送り込まれる途中で動かなくなり、点検のため延期した。営業運転は計画通り12月中に再開する。
東北電力によると、15日午後6時、核分裂によって発生した熱を利用し、蒸気の力でタービンを回して発電を開始。送電網と接続し、同日中に一般家庭や企業に電気が送られた。
一般的に原発は原子炉起動後に徐々に出力を上げる「調整運転」を経て営業運転に移行するが、女川2号機では出力が100%に達した後に原子炉を止めて点検する「中間停止」のプロセスを独自に設定。13年ぶりの本格運転を見据え、安全側に最大限配慮した。
女川2号機は出力82万5千キロワットで、東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉。東北電の樋口康二郎社長は15日、発電再開を受け「震災前より安全性は向上したが、さらなる取り組みを着実に進める」とのコメントを出した。
2024.11.07-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241107-4RASX45ZSBOQJJOZDKPS4S7MWM/
原発事故後初のデブリ回収に成功、「廃炉の最難関」へ一歩 福島第1原発
東京電力は7日、
福島第1原発2号機の溶融燃料(デブリ)の採取作業が完了し、
原発事故後初めて回収に成功したと発表した。今後、採取したデブリを国の研究機関で分析し、
本格的な取り出しに向けた工法検討に役立てる。デブリの回収は「廃炉の最難関」と位置付けられ、政府と東電が2051年までの完了を目指す廃炉実現へ一歩前進した。
東電によると、7日午前11時40分、原子炉外に設置した金属製の「隔離箱」側面の扉を開け、デブリが入ったアルミ製の運搬用容器を作業員が取り出し、樹脂製の専用コンテナに収納。東電はコンテナへ移し替えた時点で回収完了と判断した。
その後、2号機建屋内に設置したグローブボックスと呼ばれる密閉装置に容器ごと移し替えた。今後、重さや大きさ、放射線量などを詳しく計測し、原発敷地外へ搬出するための準備に入る。
採取したデブリは5ミリ程度の大きさで重さ数グラム。5日に測定した放射線量は毎時約0・2ミリシーベルトで、回収の可否を判断する基準値の毎時24ミリシーベルトを大きく下回った。
デブリ回収は当初計画より3年遅れの今年8月に着手する予定だったが、作業ミスや回収装置の不具合で2度中断。10月30日に釣りざお型の装置で原子炉の底にある小石状のデブリをつかんだ。
今後、
茨城県にある日本原子力研究開発機構で成分などを分析。
原子炉内の状態を把握し、次のステップとなる大規模取り出しにつなげたい考えだ。
炉心溶融(メルトダウン)した1~3号機には推計880トンのデブリが存在する。
2024.11.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241103-FDY5M7VX2FIAZACT3WGOZN5NPE/
女川原発、3日予定の発電再開を延期、原子炉も停止 中性子の検出器を送り込めず 東北電
東北電力は3日、再稼働した女川原発2号機(宮城県)について、同日予定していた発電再開を延期した。原子炉内の中性子を測定する検出器を炉内に送り込む途中で動かなくなり作業を中断した。原子炉への異常は確認されていないが、東北電は、点検のため、原子炉を停止するという。
東北電によると、3日午前、発電再開に向けた準備作業を開始。炉内の中性子を測定する検出器を駆動装置を使って送り込む際、ケーブルが途中で動かなくなった。検出器は手動で引き抜かれ、原子炉格納容器の隔離弁も閉じた。
回収された検出器の測定機能に問題はなく、放射性物質の漏洩(ろうえい)も確認されていないが、東北電は不具合の原因を特定した上で再開時期を決めるとしている。
女川2号機は10月29日に東日本大震災の被災地に立地する原発として初めて再稼働し、30日には核分裂反応が安定して継続する「臨界」に達した。事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)で、BWRとしても初の再稼働となった。
2024.09.20-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240919-KOZFGLGQ4NOFDKRRDZPHEWWIXU/
<独自>日本産水産物、中国の輸入停止撤廃へ最終調整 IAEAの枠組みで監視体制を拡充
日中両政府は東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を巡り、
中国側による日本産水産物の輸入停止措置の撤廃に向けた最終調整に入った。
19日、複数の外交筋が明らかにした。
日本政府と国際原子力機関(IAEA)がIAEAの枠組みの下、中国を含む第三国が参加できる形でモニタリング(監視)体制を拡充。これを受けて中国側が措置を見直す方向。
岸田文雄首相と
IAEAのグロッシ事務局長が20日に電話会談し、
モニタリングの拡充で合意する。
7月の日中外相会談などでは、日本側が中国による日本産水産物の輸入停止措置の即時撤廃を求めたのに対し、中国側は海洋放出の影響を監視できる体制づくりの構築を求めてきた。岸田政権は中国を単独でモニタリングに参加させるのではなく、IAEAに関与を求めることで、日本の主権と調査の客観性を担保できると判断した。
外交筋によると、日中両政府はモニタリング拡充を踏まえ、基準に合致した日本産水産物の輸入を着実に回復させていくことで合意しており、首相とグロッシ氏との電話会談後、首相が発表する。
中国は昨年8月の処理水放出開始に「核汚染水の放出強行」などと強く反発。日本産水産物の輸入停止に踏み切り、国際会議などでも日本側の対応を批判した。
これに対し
日本政府は再三にわたり措置の撤廃を要求。首相は昨年11月、米サンフランシスコで中国の習近平国家主席と会談し、科学的根拠に基づく冷静な対応を求め、協議と対話を通じて問題を解決する方策を見いだすことで一致していた。
2024.09.10-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240910-CP3JF3VHQ5PS7KRG2X4OZPDW6E/
廃炉へ一歩も遠い道のり 福島原発デブリ採取 「協力企業任せ」問われる東電の主体性
(白岩賢太)
福島第1原発事故で溶け落ちた燃料(デブリ)の試験採取が
10日、2号機で始まった。準備段階で初歩的ミスが発覚し、開始直前に延期を決定。
廃炉工程で最難関と位置付けられるデブリ採取は出だしでつまずいた。背景には
「協力企業任せ」という
廃炉作業の実態もあり、
令和33(2051)年までの廃炉の実現に向けて東電の主体性が一層問われることになる。
重装備で1日2時間の作業
「現場の確認を協力企業に任せていた。当社の関わりが薄く、大いに反省している」。5日に記者会見した
東電廃炉責任者の小野明・執行役副社長は、8月22日に予定していた事故後初のデブリ採取が作業ミスで中断した原因をこう分析し、
東電社員が現場に立ち会っていなかった管理体制の不備を認めた。
デブリの試験採取は、当初計画より約3年遅れた。英国で開発したロボットアームの改良が遅れるなどして計画は3度も延期。過去の原子炉内部調査で実績がある釣りざお型の回収装置を使った工法に変更し、ごく少量の採取を目指している。
デブリは極めて強い放射線を出す。平成31年の2号機内部調査では、毎時43シーベルトという人が近づけば数分間で死に至る放射線量が確認された。採取では作業員の被曝(ひばく)を防ぐため、重装備に加え、1日当たりの作業時間を約2時間に設定。厳しい環境下、限られた時間という制約の多い作業だけに事前の計画と準備がより重要となる。
1号機取り出しは見通しも立たず
採取着手で廃炉に向けて一歩前進したが、その道のりは遠い。
事故で炉心溶融(メルトダウン)した1~3号機には推計880トンのデブリが堆積する。
政府と東電は令和33年までに全量を取り出す目標を掲げるが、具体的な工法などは決まっていない。
政府が示した廃炉工程表「中長期ロードマップ」では、2号機の採取を段階的に拡大し、2030年代初頭には3号機で大規模な取り出しを開始。その後、
被害が最も大きかった1号機の取り出しにつなげたい考えだが、その見通しも立っていない。
1979年に起きた米国のスリーマイル原発事故では、
メルトダウンした1基の原子炉燃料が溶け落ち、約130トンのデブリが発生した。
米政府と電力会社が取り出しに着手したのは事故から6年後。岩石を砕くボーリング機がデブリの硬い層で破損するなど作業は想定よりも難航したが、90年には総量の99%を取り出した。
福島第1原発では、スリーマイル原発の約7倍の量のデブリが存在し、常時地下水も流入する。
デブリ取り出しの難易度、実現へのハードルはスリーマイルよりも高い。
「協力企業任せ」で着手が遅れた反省を生かし、東電がどこまで主体的に廃炉を遂行できるのか。福島事故の責任と覚悟が問われる。
(白岩賢太)
2024.08.25-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240825-43L3SEWUUJLBXB2DQOJYC7Z4ZI/
<独自>脱炭素資源循環に100億円 環境省概算要求 太陽光パネルの再生材利用促進
環境省は、
資源を再利用して有効活用する循環経済(サーキュラーエコノミー)の促進に向け、
脱炭素型資源循環設備の導入支援費として令和7年度予算の概算要求に100億円を計上する方針を固めた。
6年度予算比2割増を見込む。先進的な資源循環への投資促進事業も前年度予算の50億円から倍増を目指す。いずれも廃棄物から再生材を生産するための設備投資に向けた補助金で需要が高まる再生材の供給拡大を後押しする。
政府は循環経済を国家戦略と位置付けており、先月、関係閣僚会議を開いた。政府を挙げて横断的に取り組み、年内に包括的な政策をまとめる方針だ。
全国に設置された太陽光パネルが2030年代中盤に耐用年数を超え、大量廃棄が想定される。このため、太陽光パネルなどの再生材利用促進に4億円を求める。政府は、太陽光パネルのリサイクル義務化の仕組みを設け、早ければ来年の通常国会への関連法案提出を目指している。
今年5月に成立した再資源化事業高度化法に基づき国の認定を受け、高度な技術を用いて産業廃棄物の再生材化に取り組む事業者と、それを必要とするメーカーなど事業者間の連携促進に6億円求める方向だ。再生材が安定的に循環する仕組みをつくるとともに、脱炭素化や競争力強化につなげたい考えだ。
自動車メーカーへの再生材の供給拡大に向け産官学の連携推進事業に7億円を盛り込む。
欧州では近年、ファッション関連の廃棄物削減の取り組みが広がっている。
洋服の廃棄の他、食品ロスの削減、使用済み紙おむつの再生利用促進支援に11億円を見込む。
経済産業省も循環経済の促進を目指し、産官学の連携事業に25億円を充てる。
循環経済は、資源の循環によって、社会課題の解決と経済成長の両立を図る概念だ。近年、
資源保有国の中には特定の鉱物の輸出を制限したり、禁じたりする動きもあり、経済安全保障の観点からも早急に取り組むべき課題となっている。
また、
政府は国内の関連ビジネスの市場規模が令和2年の50兆円から32年には120兆円に成長すると試算する。海外でも拡大することが見込まれ、取り組みが遅れれば成長機会を逃すことにもなりかねない。政府は環境整備を急ぐ構えだ。
循環経済
金属やプラスチックなどの資源を再利用して有効活用する考え方。
「サーキュラーエコノミー」とも呼ばれる。
欧州連合(EU)では2030年ごろまでに新車生産に必要なプラスチックの25%以上を再生材料とすることを義務付けるなど取り組みが加速している。
再生材は製造コストが高く、普及の課題となっている。
2024.08.24-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240824-EB3TPQLZ6VJRTD26HPSJCQC5HI/
処理水タンク21基、初の解体へ デブリ保管場所に 廃炉進展を後押し
(白岩賢太)
東京電力は、
福島第1原発で昨年8月に始まった処理水の海洋放出に伴い、空になった貯蔵タンク21基を来年1月ごろから順次解体する。
タンク底部や配管部分には残水があり、残水を抜く処理や配管の撤去などの準備作業に今月から着手。解体後は3号機で取り出したデブリの保管場所に使う計画だ。タンクの解体は設置後初めて。
福島第1原発の南側には、処理水を保管する1046基の貯蔵タンクがある。
昨年8月の海洋放出以降、タンク約60基分に相当する6万トン余りの処理水を海に放出した。
東電によると、昨年度は計4回の放出で開始前に比べ、タンク19基分に相当する約1万9千トン減少した。
ただ、
事故で溶け落ちた燃料(デブリ)に触れて発生する汚染水も1日当たり約80トン発生。これに伴い、
汚染水を浄化した処理水も増え続けており、実際の放出量と新たに発生した処理水との差し引きで昨年度の減量分は約1%にとどまった。
政府は令和3(2021)年4月、処理水の保管タンクが原発の敷地を占有する現状が廃炉作業の支障になるとして海洋放出を決定。タンクの解体は33(51)年までの廃炉完了に欠かせないプロセスで、
東電は来年1月ごろをめどに
「J9エリア」と呼ばれる
区画に林立する12基の解体に着手し、
再来年3月までに残り9基の解体も進める方針だ。
(白岩賢太)
2024.08.22-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240822-TA3ZEJUSLROFRIYUYEBTGO5XDA/
東電、デブリの採取準備を中断 回収装置の配置ミス、再開時期未定 福島第1原発2号機
東京電力は22日、
福島第1原発2号機の溶融核燃料(デブリ)の試験的取り出しに向けた準備作業を中断した。準備作業中に回収装置の配置に間違いがあることに気付いたという。作業再開は23日以降で、
時期は未定。
デブリ採取は平成23年3月の事故後初で、廃炉の最難関とされる。今回採取を予定するデブリはわずか数グラムで、1~3号機で推計880トンとされる全量の取り出しは工法が決まっていない。
東電の計画では、原子炉格納容器の貫通部から最長22メートルに伸びるパイプを差し込み、先端に取り付けた爪形の器具で3グラム以下のデブリをつかんで回収する。回収したデブリは茨城県内の分析施設に運ぶ。東電は分析の結果を今後の廃炉作業に役立てたいとしている。
東電は当初、ロボットアームを遠隔操作してデブリを取り出す計画だったが、貫通部をふさぐ大量の堆積物の除去が難航。アームよりも細く簡易なパイプ式装置を採用し、
着手時期も延期した。
2024.08.17-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240817-AHW2MXEYUVPKXJ737FWZQGFF5M/
福島第1原発の圧力容器、初の内部調査へ 東電が2024年度後半に2号機で実施を計画
東京電力は、福島第1原発2号機で、原子炉圧力容器の内部調査を2024年度後半に計画している。
炉心が溶融した1~3号機で圧力容器内を調べるのは初めてで、早ければ今月中に原子力規制委員会に調査計画の審査を申請する。
2号機の圧力容器内には溶融核燃料(デブリ)が多く残っているとみられ、今後の取り出し工法の検討に役立てる。
東電の計画では、細い配管を通過でき放射線にも強い小型のファイバースコープを、圧力容器につながる水位計の配管を通して投入。
搭載したカメラで原子炉内の構造物の状況などを確認する。
規制委の審査には約半年かかることを想定しており、調査開始は25年2月以降となる見通しだ。
炉心溶融を起こした1~3号機ではこれまで、圧力容器や冷却用の配管などを納める、外側の原子炉格納容器内の調査が重ねられてきた。
2号機ではこうした調査で比較的内部の状況把握が進んでおり、月内に初めて、格納容器底部にある数グラムのデブリ取り出しを始める計画。
2024.08.16-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240816-FPTAR7B7EVLHZBZYCNIBZHMA5Y/
中国、福島原発処理水の海洋放出で独自の海水採取要求 日本はIAEA枠組みに参加求める
東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を受けた
日本と中国の政府間協議で、中国が周辺海域のモニタリング(監視)のためとして、海水や放出前の処理水の「独立した試料採取」を求めていることが分かった。
中国は「長期的な国際監視体制の構築」を主張してきたが、要求内容が明確になった形。日本政府は国際原子力機関(IAEA)の関与する枠組みへの中国の参加を前提に交渉を進めている。日中外交筋が16日明らかにした。
海洋放出開始から今月24日で1年となる。
7月26日のラオスでの日中外相会談でも、中国の王毅外相は「試料採取」を求めた。外交筋によると、
日本政府は、中国のみの独自採取は日本の国家主権に関わり、客観性が担保されないとして、受け入れられないとの立場を堅持する。このため、
IAEAの関与の下、複数国の研究機関が試料を分析して結果を比較する現行の対応を拡充、強化する方向を目指している。
2024.08.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240802-TLC5OKODINM4VBMRE26I7VMQ7A/
<独自>太陽光発電20社の交付金停止へ 農地法違反など確認、営農型への行政処分は初
経済産業省が農地に太陽光パネルを設置して発電する「営農型」の太陽光発電事業者20社に対し、
農地法違反などを確認したとして交付金を近く一時停止することが2日、分かった。
4月に導入した行政処分としては2例目で、営農型への適用は初めて。太陽光パネルの設置を巡り各地でトラブルが相次ぐ中、不正事案に早期の是正を促し、再生可能エネルギー普及の足かせになるのを防ぐ。
交付金停止で違反解消狙う
経産省は農林水産省との調査で、営農型の太陽光発電事業者20社に計342件の農地法違反など不適切な行為があることを確認した。対象の発電出力は1万7567キロワットで、
交付金額は月間約1300万円になる。
再生可能エネルギー特別措置法が4月に改正され、
経産省は悪質な事業者に国の固定価格買い取り制度(FIT)などの交付金を停止する処分ができるようになった。
FITは企業などが
再エネで発電した電気を火力よりも優遇した価格で買い取るよう電力会社に義務付けた制度。
導入期に割高な再エネの発電コストを補うため、事業者が電力会社を通じ交付金を受け取っている。
交付金が止まれば、発電事業の運営が厳しくなる。経産省は行政処分が違反状態の早期解消につながるとみている。
トラブル続く太陽光発電
営農型の太陽光発電は農地に支柱を立て、上部空間に太陽光パネルを設置して、農業生産と発電を両立する仕組みで、
平成25年に農地法に取り扱いが明記された。
農地の一時転用許可を受け、パネル設置後も農作物の8割以上の収穫量を確保するなどのルールがある。
国内農業が高齢化や後継者不足などの問題を抱える中、売電で安定した収入が得られる営農型への期待は大きく、許可件数は年々拡大している。
だが、経産省によると
「必要な農地転用許可を受けなかったり、農地で生産がほとんどされていなかったりする事例が散見される」(担当者)といい、とくに悪質な事案を今回処分する。
太陽光パネルを巡っては、山の斜面を削るなどの設置方法が防災や景観を乱す観点から批判を浴び、
全国でトラブルが続発。経産省は4月2日、林地で無許可開発などをしていた事業者9社に初の交付金停止措置を適用した。
2024.07.31-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240731-PCFGV3YHLFL33GF3JRLCCUZHGM/
河野太郎氏、電力は「原発再稼働しても足りない」 〝脱原発〟を封印 支持拡大狙う
(大島悠亮、末崎慎太郎)
河野太郎デジタル相は31日、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)などを視察し、
安全性が確認された原発再稼働を当面容認する考えを改めて示した。視察終了後、記者団に
「原子力規制委員会が安全を確認したものは再稼働している。それに加えて核融合や水素などを前広に考えていかなければいけない」と述べた。
「脱原発」を
持論とする河野氏は、9月の自民党総裁選出馬を模索しており、
支持拡大を図りたい思惑が透ける。ただ、
河野氏は将来的な原発ゼロを否定しておらず、党内の原発推進派の警戒感は強い。
〝変節〟問われ「違います!」
河野氏はこの日、
日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(同県大洗町)なども視察。生成AI(人工知能)の利用拡大などでデータセンターの消費電力が増えている現状から「再生可能エネルギーだけでは2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を見据えると間に合わない」との認識を示した。
「(原発を)再稼働しても足りない可能性がある」とも語った。
原子力政策は、総裁選で争点の一つとなりうるが、河野氏にとっては「鬼門」ともいえるテーマだ。
河野氏は
東京電力福島第1原発事故を踏まえ、平成24年に超党派議員連盟「原発ゼロの会」を設立するなど党内きっての脱原発派と目されてきたが、
令和3年の前回総裁選で
「安全が確認された原発を当面は再稼働していく」と表明。この際も原発推進派に支持を広げる狙いがあった。
総裁選期間中に出演したテレビ番組では、たびたび原子力政策の〝変節〟を問われ、「違います!」と声を荒らげたこともあった。
容認の裏に麻生氏の意向
河野氏は、
原発再稼働容認を表明する一方、
使用済み核燃料を再処理して繰り返し使う「核燃料サイクル」を止めるとの主張は変えなかった。
サイクルを止めれば使用済み核燃料が行き場を失い、全国の原発にある貯蔵プールがあふれるため再稼働は難しくなる。
他の総裁選候補や党内からは
「動いている原発も動かすのが難しくなる」との指摘が相次ぎ、
河野氏が失速する要因の一つとなった。今回の視察では、
「使用済み核燃料をどう処理するのかという一番、肝心なところが見えていない」と述べるにとどめた。
再び〝変節〟と批判される可能性がある中で、
河野氏が改めて原発再稼働容認などに言及したのは、所属する麻生派(志公会)会長の麻生太郎副総裁の意向があったからだ。
派内には「脱原発を主張している以上、河野氏は推せない」(派閥関係者)との声がある。
別の派閥関係者によると、麻生氏が
「脱原発の主張を降ろして、きちんと外にも説明しろ」と河野氏に直接指示したという。
ただ、
今回の河野氏の発言は、これまでの域を出ず、中途半端との批判も出る可能性はある。
河野氏は9月の総裁選出馬に向けて「まずは麻生派を固めることに注力する」(河野氏周辺)戦略だ。
党内唯一の派閥となった麻生派の約50人から支援が得られれば、河野氏にとっては大きな武器になる。
ただ、河野氏への支援には反発もあり、支持が広がるかは見通せない状況だ。
(大島悠亮、末崎慎太郎)
2024.07.26-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240726-KMS4M3XFSJLUJK4C7XGFGYOWK4/
敦賀2号機の再稼働困難、会社の存続問われる事態に 追加調査に望み、日本原電
(万福博之)
日本原子力発電が会社の存続を問われる事態に追い込まれた。
敦賀原発2号機(福井県)の再稼働に向けた原子力規制委員会の安全審査で26日に原子炉直下に活断層がある可能性は否定できないと判断され、
再稼働が困難になったからだ。
廃炉になれば、経営が立ち行かなくなるだけに追加調査に望みをつなぐが、株主で原発の維持費用などを負担している大手電力の理解を得られるかも含め、不透明感が漂う。
原発専業会社である
日本原電は
昭和32年に大手電力9社や電源開発の出資で設立された。
41年には日本初の商業用原発である東海原発の営業運転を始めており「原発のパイオニア」と呼ばれる。
現在、敦賀2号機と東海第2原発の合わせて2基の原発があるが、いずれも再稼働できていない。
一方、令和6年3月期に純利益が前期比38%増の24億円となるなど黒字経営が続く。
電気を送る契約を結ぶ大手電力5社(
東北、東京、中部、北陸、関西)から
再稼働を前提に原発の維持管理費用を「基本料金」として受け取っているからだ。
6年3月期は売上高967億円のうち944億円を基本料金で賄った。それだけに、敦賀2号機が廃炉になれば、経営への影響は計り知れない。
日本原電は廃炉を回避するため、何とか審査継続にこぎつけたい考えだ。
ただ、
審査を続けても今回の結果を覆せるかは見通せない。
今後の焦点はこうした状況に大手電力がどこまで耐えられるかだ。
各社の株主総会では「電力供給を受けていないのに費用を負担するはおかしい」などと株主から批判の声も出る。規制委の判断を踏まえ、
大手電力がどんな姿勢を示すかは日本原電の今後の経営を大きく左右する。
(万福博之)
2024.06.22-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240622-HXCRPGGZLJL7ZATJQJWJKYKGT4/
<独自>太陽光パネル価格急落 中国の生産過剰で半値 日本、依存脱却目指す
太陽光パネルの価格が大幅に下落していることが分かった。
世界市場をほぼ独占する中国の過剰生産が原因で、
この1年で半値に落ち込んだ。
今後も供給過多は続くとみられ、さらに価格が落ち込む可能性がある。
安価な中国製品は世界中に流出しているが、エネルギー安全保障の観点から中国一国に頼ることは危険で、日本は同志国と連携し脱中国依存を進める。
日本総合研究所の調べでは、中国の太陽光パネルの平均輸出単価は今年5月時点で54・1ドルと、昨年5月の102・3ドルから半分の水準に落ち込んだ。中国の過剰生産が原因で、日本総研の野木森稔主任研究員は「多くの国の関連企業が激しい価格競争に陥っている」と指摘する。
中国政府は近年、太陽光パネルに加え、電気自動車(EV)、リチウムイオン電池の新産業を「新三様」として支援を強化。
補助金などを通じて供給能力を大幅に向上させた。
しかし不況で需要が不足して過剰生産が発生し、安価な製品が世界中に流出している。
国際エネルギー機関(IEA)の推計では
、世界の太陽光パネルの供給能力は今年末までに1100ギガワットと、総需要の3倍に達する見通しだ。
欧州では安価な中国製品が流入し、太陽光発電事業者の事業縮小や撤退が相次ぐ。
日本は約20年前から中国勢に押されてシェアを落とし、現在はほとんどのメーカーが国内生産から撤退した。 ただ、
脱炭素社会を目指す日本では太陽光発電は重要な柱で、中国一国への依存は将来の安定供給に危うさをはらむ。
今月3日、日本と欧州連合(EU)のエネルギー当局は、政策協調を進める共同声明を出した。太陽光パネルについては製造時に環境や人権に配慮しているかどうかを評価する仕組みを作り、調達時に価格だけを判断材料としないよう促す。
念頭にあるのは
中国依存からの脱却だ。斎藤健経済産業相は21日の記者会見で、
「エネルギー安全保障上、特定の国に依存しないサプライチェーン(供給網)構築を進めていく」と説明した。
政府は技術や原材料で
日本が先行する次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の支援を強化する。
中国勢がほぼ独占する現在の太陽光パネルと同じ轍を踏まないよう日本勢が国際競争をリードすべく後押しする。
2024.05.08-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240508-T6OA4BLDGFD4VDKIHQGZNZRNO4/
「トリチウム検出」見出し報道に疑問 飲料基準大幅に下回り「海水から塩分と同レベル」
(奥原慎平)
東京電力福島第1原発処理水の放出を巡り、
「海水からトリチウム検出」を見出しに取った
一部報道に対し疑問の声が広がっている。
東電は7日に福島第1原発周辺の海水から1リットル当たり13ベクレルの放射性物質トリチウムを検出したが、世界保健機関(WHO)が定める1リットル当たり1万ベクレルの飲料水基準をはるかに下回る量となっているからだ。
「検出下限値未満」ではなく、
トリチウムが検出されたのは事実。だが、「基準を下回る」の
文言を入れず不安をあおりかねないタイトルに対し、SNSでは「海水から塩分を検出したレベル」など報道に対して苦言を呈すコメントが相次いでいる。
「13ベクレルは飲料水として問題がない基準もはるかに下回っている。安全性に問題がないという客観的事実を報じてほしい。検出だけを報じるのは報道ではないと思う」
自民党の細野豪志元環境相は8日、産経新聞の取材にこう語った。
福島第1原発で発生する汚染水は多核種除去設備(ALPS)で浄化処理され、大半の放射性物質を取り除かれるが、トリチウムは除去できない。このトリチウム水は海水で100倍以上に希釈され、国が定めた排水基準の40分の1(1リットル当たり1500ベクレル)未満に濃度を薄めた後、海に流される。
そもそもトリチウムは自然界に広く存在し、体内にも微量ながら含まれている。国外の原発施設周辺で人体や環境に与える影響は確認されていない。一部報道の見出しを巡っては、X(旧ツイッター)上で風評被害を懸念する声もある。
電力、エネルギー、環境問題について情報発信するアカウン
ト「分電でんこFC」は8日、Xで
「だから何といいたいようなタイトルです。福島が危険であるといいたいのでしょうか。だとしたらこの記事は風評加害です」と指摘した。
自民党の小野田紀美参院議員も8日にXで
「タイトルが本当に風評加害で悪質なんよ…」と投稿し、自民党の渡辺康平福島県議も8日、Xで
「海水に塩が混ざっていたレベルの報道ですよ」と書き込んだ。
原発事故に伴う風評被害の実態を取材する福島在住のジャーナリスト、林智弘氏も8日にXで
「『海水から塩分検出!』というのと同程度なんだが」と苦言を呈し、福島県鮫川村で農業を営む阿久津修司氏も8日にXで
「海水にトリチウムないとでもいうのか。イチャモン付けるためだけの非常に悪質な報道です。福島県は厳重に抗議すべき」と非難した。
あるネットユーザーが生成AI(人工知能)
「チャットGPT」に作成させた、
記事内容に適切なタイトルは「トリチウム検出 基準下回る」だった。
(奥原慎平)
2024.05.02-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240502-7B5T2CGCHNC3NPQUJCS7XDVJ6M/
脱炭素「中国抜き」でやれるのか 太陽光パネルで欧州ジレンマ、産業界は悲鳴
(三井美奈)
再生可能エネルギーの普及を目指す欧州連合(EU)が4月、中国製の太陽光パネル流入に対抗し、不正競争の疑いで調査に入った。EU域内の環境産業を守る狙いあるが、
「太陽光発電の普及には安価な中国製は必要」の声も根強く、ジレンマに立たされている。
米国、インドの保護策でしわ寄せ?
調査はEU欧州委員会が4月3日に開始した。中国2社が国家補助金を受けてEU市場に参入し、競争をゆがめた疑いがあるとしている。
担当のブルトン欧州委員は
「太陽光パネルはEUにとって戦略的な重要物資だ」と述べ、経済安全保障の重要性を強調した。
EUは中国政策で「リスク軽減」を掲げ、供給網の依存脱却を目指している。
EUでは太陽光パネルや素材のうち、中国製のシェアが9割を占める。欧州の業界団体代表は2月、
「政治が手を打たなければ、数カ月で大半の企業がつぶれる」と対応を求めていた。
「エコ先進地」として有名なドイツでは、太陽光発電大手マイヤー・ブルガーが工場閉鎖を表明した。
500人の雇用喪失になる。同社は声明で、中国の過剰生産品が世界市場にあふれ、米国やインドが国内産業保護に動く中、欧州が受け皿にされていると警告した。
EUは温室効果ガス排出量を「実質ゼロ」にする環境技術で、2030年までに製造シェアを40%にする目標を掲げる。
太陽光発電は、その柱のひとつ。フランスのルメール財務相は4月初め、
国内のパネル大手に対する補助金支給を発表し、
「国産推進に向けて汗をかく」と述べた。
ドイツも新たな補助金を検討。国内産業の保護に動く。
ロシア産ガス高騰で、新設100万件
「中国リスク」に警戒が高まる一方、
安価な中国製のおかげで太陽光発電が飛躍的に普及したという現実もある。
EUでは22年、
ロシアのウクライナ侵略で対露エネルギー禁輸を発動した結果、ガスと電気価格が急騰した。これが契機となって住宅のベランダや駐車場に太陽光パネル設置が進展。
ドイツでは昨年、新規設置が22年比で倍増し、100万件に達した。中国製は独製より3割安いという。
欧州シンクタンク「ブリューゲル」のベン・マクウィリアム研究員は、
太陽光パネルでは中国リスクは薄いと指摘する。
「太陽光パネルは供給過剰で、EUには1年分以上の在庫がある」と述べ、
中国が市場独占で価格操作したり、禁輸したりしても政治的圧力にはつながらないと分析する。
補助金でEU企業を支えても競争力はつかず、脱炭素化を遅らせるだけだとして、
「欧州は一定量の在庫を確保しながら、光吸収効率の向上など技術開発に重点を置くべき」と訴える。
太陽光パネルをめぐるEUと中国の貿易摩擦は2013年にも起きた。当時、EUは中国製パネルに47・7%の反ダンピング(不当廉売)課税をかけようとしたが、
中国が報復を表明し、最低価格を設ける妥協策で決着した。
(三井美奈)
2024.05.01-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240501-ZSOLVFVJZZL6BLQJR6S6SJ23GM/
太陽光発電にサイバー攻撃 機器800台を乗っ取り 身元隠し不正送金に悪用
各地の太陽光発電施設の遠隔監視機器、計約800台がサイバー攻撃を受け、
一部がインターネットバンキングによる預金の不正送金に悪用されていたことが1日、分かった。
ハッカーはネット上の身元を隠すために機器を乗っ取ったとみられ、発電施設に障害が起きる恐れもあった。
セキュリティー企業によると、中国のハッカー集団が関与した可能性がある。
電子機器メーカーのコンテック(大阪市)によると、自社が製造した遠隔監視機器が悪用された。機器はネットにつながっており、発電施設の運営会社が発電量の把握や異常の感知に使う。コンテックは機器を約1万台販売したが、令和4年時点でこのうち約800台について、サイバー攻撃対策の欠陥があった。
ハッカーは欠陥を突いて遠隔監視機器に侵入し、外部からの操作を可能にするプログラム「バックドア」を仕掛けた。
機器を操ってネットバンキングに不正接続し、金融機関の口座からハッカー側の口座に送金して金銭を窃取していた。
2024.04.30-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240430-WSVQSBUOEFOB5AFZMELJ567ZOM/
島根原発2号機の再稼働延期 事故で工事遅れ、12月に
中国電力は
30日、8月に予定していた島根原発2号機(松江市)の再稼働を12月に延期すると発表した。
2号機を巡っては昨年、廃棄物処理施設で死亡事故が起き、再稼働に必要な安全対策工事が遅れる見通しとなったことが原因という。
島根2号機は全国で唯一、県庁所在地にある原発で、平成24年1月に運転を停止した。
中国電によると、今年5月に完了予定だった安全対策工事は10月完了に見直した。
6月としていた核燃料の装塡開始も10月となり、12月に原子炉を起動し、来年1月に営業運転を再開するとした。
2024.04.29-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240429-AIAD3NORXBOZHPC6USDPSB5FGI/
福島第1原発処理水、海水から検出のトリチウムは下限値未満
東京電力は29日、
福島第1原発周辺で28日に採取した海水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度を分析した結果、機器で検出できる下限値未満だったと発表した。
東電は19日に5回目の処理水放出を開始した。
2024.04.18-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240418-2FOMFKHC5JJV5AGRAQIHNMOYSI/
柏崎刈羽原発7号機、燃料装填を再開 制御棒の駆動用モーターのブレーカーを交換
東京電力は
17日夜、電源の不具合で一時中断していた柏崎刈羽原発(新潟県)7号機への燃料装填(そうてん)作業を、同午後11時半に再開したと発表した。
制御棒を動かす駆動用モーターにつながるブレーカーを交換し、正常に動作することを確認し再開した。
東電によると、同日午前7時10分過ぎ、7号機の原子炉に制御棒10本を挿入するため、それぞれの駆動用モーターにつながるブレーカーを入れたところ、1本の制御棒のブレーカーが落ち、モーターを動かせない状態になった。
調査の結果、ブレーカーに異常は見つからなかったが、念のためブレーカーと周辺機器を交換し、同午後10時過ぎに正常に動作することを確認。愛媛、高知両県で
震度6弱を観測した地震を受けて、同原発に異常がないことを確認したうえで、同午後11時半に燃料装填作業を再開した。
2024.04.17-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240417-HRB3R4OWH5IAVP46F3AWRVRYR4/
<主張>柏崎刈羽に燃料 再稼働へ国は情報発信を
東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)7号機の
原子炉にウラン燃料872体をセットする装荷作業が15日から始まった。同日、原子力規制委員会の承認が得られたことを受けての作業開始だ。
再稼働に向けての第一歩である。手抜かりのない実施を期待する。
3年前にも再稼働への道が開きかけたことがあった。だが、
社員が他人のIDカードで原発の中央制御室に入っていたことが判明したり、
テロ対策に必要な不正侵入検知用センサーの不備が明らかになったりするなど信頼性を揺るがす出来事が相次いだ。
事態を重く見た規制委から令和3年4月、東電は事実上の運転禁止となる是正措置命令を受けていた。
東電では同発電所の稲垣武之所長以下、全所員や協力企業のコミュニケーションの円滑化などの改善策に取り組んだ結果、規制委によって是正措置命令が解除され、原発事業者としての東電の「適格性」も認められた。昨年末のことだ。ようやく実現した燃料装荷には約2週間を要する見通しだ。その後、制御棒の機能確認など原子炉の健全性確認を行う。こうした東電側の技術的手順は確定しているが、見通せないのが新潟県の同意である。
同原発が立地する柏崎市と刈羽村は首長も議会も再稼働に同意済みだが、
花角英世知事は判断を保留したままなのだ。7号機の再稼働は地元の活性化だけでなく福島第1原子力発電所の廃炉促進にもつながる。火力発電の燃料費低減で東電に年額1100億円の収益改善をもたらすからだ。
花角氏には国家レベルでのエネルギー安全保障までを視野に入れての総合的な判断を求めたい。能登半島地震の道路寸断などで大事故時の避難について懸念しているようだが、原発の安全対策は新規制基準への対応で、福島事故前に比べて格段の厚みを増している。
放射性セシウムなどによる周辺地域の放射能汚染を大幅に低減させるフィルター付きベントも完備しているではないか。政府は人々の不安解消につながる、こうした安心情報の発信に力を入れるべきである。
東
電には7号機に続く6号機再稼働への準備を入念かつ遅滞なく進めるよう注文したい。
2024.04.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240415-XOOESZDIKNI77DJVEZAHJMJQHM/
仙台市のメガソーラーで火災、消防車20台以上が出動 けが人はなし
15日午後1時40分ごろ、仙台市青葉区の大規模太陽光発電所(メガソーラー)で「煙が上がっている」と、管理会社から119番通報があった。市消防局によると、
太陽光パネルや下草が焼けたが、けが人はいない。消防車20台以上が出て消火に当たった。
宮城県警によると、現場は「西仙台ゴルフ場メガソーラー発電所」。近くにゴルフ場がある。
2024.04.08-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240408-WIQC4V6KINLUFDMGTCJS2LTLOM/
離島を覆う太陽光パネル152万枚 「日本一」のメガソーラー本格着工へ 長崎・宇久島
長崎県の五島列島・宇久島(うくじま)と隣の寺島(いずれも佐世保市)で計画中の国内最大級の大規模太陽光発電所(メガソーラー)が、令和7(2025)年末の運転開始を目指し5月末にも本格着工する。
完成すれば両島の面積の1割超は太陽光パネルに覆われる。
地元では景観の悪化や土砂崩れの発生を懸念する声も上がっている。
島の1割がパネルで
計画は「宇久島メガソーラーパーク」事業で、京セラや九電工などが計約500億円を出資する事業目的会社「宇久島みらいエネルギー」(同市)が、約1500億円を資金調達して宇久島と寺島にメガソーラーを建設する。
同社によると、
両島の面積計約26平方キロの約3割を占める事業用地のうち、約2・8平方キロに太陽光パネル152万1520枚を設置するといい、両島の面積の1割以上がパネルで覆われることになる。
年間発電量は51・5万メガワット時で、一般家庭17万3千世帯分に相当するとし、電力は本土との間に延長約64キロの海底ケーブルを敷設して九州電力へ売電する。住民説明会資料は「日本一の規模を誇る」とうたっている。
公的アセスなし
計画を巡っては、
住民団体の全国組織「全国再エネ問題連絡会」と地元住民団体「宇久島の生活を守る会」が2月、県と佐世保市へ公開質問状を提出。「環境面だけでなく防災の観点からも問題がある」として
事業の中止を求めている。
出力4万キロワット以上のメガソーラーには令和2年から国の環境影響評価(アセスメント)が義務づけられたが、
両島の事業は既に工事計画の届け出が済んでいたため対象外。また県のアセスは太陽光発電所を対象事業としていない。このため、
地元市長や知事、環境相の意見を踏まえた経済産業相による勧告の機会がないまま、事業が進められている。
また、事業地のうち0・68平方キロについて同社は4年8月と5年3月、
林地開発許可の変更許可申請をしているが、県の審査結果はまだ出ていない。
同社は、
自主的に環境影響評価(自主アセス)を行ったとした上で、「反対活動を行っている団体には事業者として引き続き丁寧に対応していく」としている。
工事を担当する九電工によると、昨年11月から本格着工へ向けた住民説明会を始め、
既に作業員宿舎や変電施設、寺島の仮設浮桟橋、資材置き場などの整備工事が進んでいる。
同社は「5月末か6月初めには、パネルを置く架台の設置など本格着工の見通し」としている。
初期消火は消火器で
同事業はもともと、
ドイツの開発会社と京セラ、九電工などが平成26(2014)年に計画を発表したが、2年後にドイツの会社が撤退した。
また両島では風力発電開発の「日本風力開発」(東京)などによる大規模陸上風力発電計画も進行。風車を最大50基(出力最大10万キロワット)建てる計画で、平成26年に環境アセスの第3段階「準備書」が国に提出されている。
同社は昨年、
洋上風力発電事業を巡って衆院議員のA被告=受託収賄罪などで起訴=に多額の資金を提供したとして、前社長が贈賄罪で在宅起訴。同社は準大手ゼネコンの前田建設工業の持ち株会社「インフロニア・ホールディングス」に買収された。
一方、メガソーラーを巡っては今年1月、
和歌山県すさみ町の山林火災で太陽光発電所の発電設備が延焼したほか、3月には
鹿児島県伊佐市の太陽光発電所で火災が発生、消防隊員4人が負傷するなどした。
太陽光パネルの火災が発生した場合について、
宇久島メガソーラーの事業目的会社は「島内に400カ所以上配置される変電設備付属の消火器を使って、50人ほどの保守要員が初期消火するほか、水での消火は感電リスクがゼロではないため、対策を地元消防と協議している」としている。
2024.03.27-YahooJapan!ニュ-ス(MBC南日本放送)-https://news.yahoo.co.jp/articles/0dbb84223ae686e48e7beeaa28d3af42f9067f9c
【速報】メガソーラー発電所で火災 建屋で爆発…消防隊員4人けが、うち1人が顔に重いやけど 鹿児島・伊佐市
MBC南日本放送 | 鹿児島
鹿児島県伊佐市のメガソーラー発電所で
27日夜、火災があり、消火活動にあたっていた消防隊員4人がけがをしました。うち1人が顔に重いやけどをしています。
警察や消防によりますと、27日午後6時すぎ、伊佐市大口大田で「メガソーラー発電所から白煙が出ている」と、近くの住民から消防に通報がありました。
火災があったのはメガソーラー発電所内の蓄電設備が入っている建屋で、場近くにいた人によりますと、
駆けつけた消防隊員が建屋の扉を開けたところ、爆発音とともに炎が上がったということです。
この火災で、消防隊員の男性4人が救急搬送され、うち1人が顔に重いやけどをしましたが、命に別状はないということです。
(近くの住民)「最初は水蒸気が上がっているような感じだったが、家に帰ろうと背中を向けたら爆発した」 火はおよそ3時間半後にほぼ消し止められましたが、消火活動のため、
現場周辺の国道268号は現在も通行止めとなっています。
MBC南日本放送 | 鹿児島
2024.02.01-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240201-FP5KE6FJPVJHNKEGFJA4D44QJA/
「燃やせるものは何でも燃やす」 地元メディア批判でSNS大反響、安芸高田市長の狙い
広島県安芸高田市は動画投稿サイト「YouTube」で、市公式チャンネルの登録者数が全国の自治体で最多となったと明らかにした。
市によると、これまでは神戸市の19万人が最多。安芸高田市の登録者はこれを上回り、20万人を超えたという。石丸伸二安芸高田市長(41)はメディア不信を背景に注目を集める新たなタイプの劇場型首長として注目を集めているが、
石丸市長は何を狙い、どうしてメディア批判を続けているのか。
「恥を知れ」と議員を批判
石丸市長は、安芸高田市出身で、京都大を卒業、三菱UFJ銀行のアナリストとして勤務していた経歴を持つ。
令和元年の参院選広島選挙区をめぐる大規模買収事件で、元法相の河井克行受刑者から現金を受け取った前市長の辞任に伴う選挙戦を制し、2年8月に初当選を果たした。
政策の柱は、
政治再建、都市開発、産業創出。4年6月の市議会本会議で「居眠りをする。一般質問をしない。説明責任を果たさない。『恥を知れ』と声が上がってもおかしくない」と議員を批判。議員定数を現在の16から8に削減する条例改正案(否決)を議会に提出したことなどで話題になった。
石丸市長によると、地元紙に対する批判を始めたきっかけは3年11月の定例会見での記者とのやりとりだという。会見はこんな様子だった。記者が、市民には市長と議会の関係を「うんざりしている」人もいるとし、受け止めを尋ねた。石丸市長は、一部の声を総意のように扱っており「中立性に欠ける」と反論した。何度かやり取りが続いたがかみ合わず、
記者は「この話を市長としても不毛」と発言。これ以上、市長とやりとりをする必要がない、として次の質問に移った。
2024.01.31-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240131-3D4CJYJDZBIUBHNZUNYYC7CYNM/
火災のJERA武豊火力発電所、出力が国内最大級 発電量、一般家庭240万世帯分に相当
31日午後3時10分ごろ、愛知県武豊(たけとよ)町の武豊火力発電所で「
爆発があり黒煙が上がっている」と119番通報があった。
武豊火力発電所は、東京電力グループと中部電力が折半出資する発電会社「JERA(ジェラ)」の発電所。1基当たりの出力が国内最大級の石炭火力発電で、出力は107万キロワット。
稼働している5号機の燃料は石炭と木質バイオマス。木質ペレットを混焼することで、二酸化炭素排出量の削減につながる。年間の発電量は一般家庭約240万世帯分に相当。1~4号機は既に廃止され、5号機は令和4年8月、営業運転を開始した。屋内式の貯炭場や防音壁を設置し、周辺住民に配慮している。夏の需給逼迫(ひっぱく)を避けるため、電力の安定供給への貢献が期待されていた。
2024.01.27-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240127-UESULLZTORLOZONJFZ5KSHBBEM/
社会科教材に「汚染水」表記 日教組集会で授業実践例を発表「放出を強行」記載も
日本教職員組合(日教組)が札幌市で開催している教育研究全国集会(教研集会)の社会科教育分科会で、
東京電力福島第1原発から放出される処理水を「汚染水」と表現する教材を使った授業実践例のリポートが発表されたことが27日、分かった。
学習指導要領は教員に科学的な観点での指導を求めており、子供たちに誤解を与えかねない授業の広がりを危惧する声も上がっている。
リポートの発表者は神奈川県の中学教員。「日本の資源・エネルギーと電力」に関する授業実践例として、福島の原発事故や廃炉工程を取り上げている。授業で使ったプリントとして、「日本政府は何をしようとしているか」との見出しで「汚染水の放出を強行」などと記載していた。
授業では、
原発の新増設などについて2つのクラスで生徒に賛否とその理由を質問。一方のクラスは賛成が5人、反対が15人。もう一方では、賛成が7人、反対が20人と報告されており、結果に偏りがうかがわれた。反対する生徒の意見には、
「総理の怠慢」「首相退任してほしい。責任をとれ!」などといった
政治的な内容もみられた。
処理水は原発事故に伴う汚染水を浄化し、自然界にもあるトリチウム以外の大半の放射性物質を除去したものだ。原子力施設で生じたトリチウムを含む排水の海洋放出は欧米や中国、韓国なども恒常的に行っている。
海洋放出計画をめぐっては、国際原子力機関(IAEA)が「国際的な安全基準に合致」し、人や環境への影響は「無視できるほど」とする調査報告書を公表した。
処理水を「核汚染水」と呼んで日本を非難する中国に対しても、政府は「科学的根拠に基づかない主張だ」と抗議している。
中学校学習指導要領の解説では、
放射線をめぐり「科学的に思考し、情報を正しく理解する力」の育成を求めている。被災地の風評被害などについて取材を重ねてきた福島県在住のジャーナリスト、林智裕氏は
「今回の授業実践例が模範的な授業として全国に広がり、誤った認識が定着すれば、それを解消するのは難しくなる。福島の住民に対して風評や差別として向かう恐れもある」と懸念を示した。
東京電力福島第1原発の処理水 1~3号機で溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷やすための注水などによって発生した汚染水を浄化処理した水。
トリチウム濃度が国の排水基準の40分の1未満になるよう海水で薄めてから放出している。
2024.01.12-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240112-O5MJTLQU7ZL63EW7O2T63AN7WE/
<独自>ロシア漁船が福島第1原発50キロ圏内で操業 禁輸から3カ月、矛盾露呈
(大竹直樹、データアナリスト・西山諒)
東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を巡り、
日本産水産物の輸入停止措置に踏み切ったロシアの漁船が、福島第1原発から50キロ圏の日本近海で操業していることが12日、
漁船に搭載された船舶自動識別装置(AIS)のデータ解析から判明した。
中国と足並みをそろえる形で輸入の全面停止を発表してから16日で3カ月。
禁輸措置を講じながら日本漁船と同じ海域で操業する矛盾した状況が明らかになり、専門家は
「ダブルスタンダード(二重基準)の対応だ」と指摘している。
サバやイワシを漁獲
AISを搭載した船舶の位置や操業状況を確認できる
「グローバル・フィッシング・ウオッチ(GFW)」で調べたところ、昨年12月中旬以降、
水産資源が豊富な北方領土周辺の海域で操業していたロシアの大型トロール漁船3隻(いずれも7千トン超)が太平洋側を南下、岩手県から宮城県にかけての沖合で操業しているのが確認された。
AISは条約により、海外の港を行き来する全ての旅客船や300総トン以上の全船舶に搭載が義務付けられている。
2隻は12月13~14日に福島第1原発から32~41キロの海域まで接近していたことも判明。サバやイワシを漁獲しているとみられる。海上保安庁関係者によると、海保も大型無人航空機などでこうした動きを捕捉。水産庁と情報を共有している。
津軽海峡を通過
産経新聞がGFWで解析したところ、2隻はロシア・カムチャツカ地方の中心都市、ペトロパブロフスクカムチャツキーを昨年9月29日と11月3日に出港。1隻は12月3日に韓国の釜山港を出港し、日本海側から津軽海峡を抜け、北方領土周辺の海域に到達していた。
日本とロシアは2022年12月、双方の漁船が相手国の排他的経済水域(EEZ)で行う「地先沖合漁業」を巡り、23年の操業条件を決める交渉が妥結。操業の解禁は昨年11月15日だった。
「中国に迎合」
処理水放出開始後、中国の漁船も福島や北海道沖の北太平洋でサバなどの漁を続けている。同じ海域で漁をする
日本漁船の「日本産」は禁輸しつつ、自国産は国内で流通させており、矛盾した状況が浮き彫りとなった。
東海大の山田吉彦教授(海洋政策)は
「ロシアの禁輸措置は中国に迎合した政治的圧力以外の何物でもない」と指摘。元第3管区海上保安本部長の遠山純司氏は
「自国の漁業の実態に目をつぶり処理水放出のみ非難しているのは、国際的なバランスを欠いた恣意的な主張だ」と話している。
(大竹直樹、データアナリスト・西山諒)
自動識別装置(AIS)
船舶の種類や位置、速力など船舶の安全に関する情報を自動的に送受信し、船同士や周囲と情報交換できるシステム。沿岸の海域では乗揚げの恐れのある船舶に注意喚起でき、海難事故の未然防止が図れる。