原子力発電問題-1


2020.2.9-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://special.sankei.com/a/life/article/20200209/0001.html
「地上の太陽」核融合発電ITER、日本主導で前進

太陽が燃えるのと同じ仕組みの核融合反応を地上で再現し、発電への利用を目指す国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」計画が今年、日本主導で大きく前進する。心臓部の部品完成で5年後の運転開始が見えてきたが、技術的な壁は高く、人類の英知が試されている。
   核融合は、水素のような軽い原子核同士が合体し、ヘリウムのようなより重い原子核となる現象だ。このときアインシュタインの質量とエネルギーに関する公式から、合計の質量がわずかに減少する代わりに膨大なエネルギーが生じる。

地上に太陽を作り出す!? 夢のエネルギー・核融合の最前線
2019.9.18-TOSHIBA CLIP-https://www.toshiba-clip.com/detail/7981

人工の太陽を地上に作る――壮大なプロジェクトが進んでいる。それは、私たちが抱えるエネルギー問題、環境問題のソリューションとして期待される核融合発電だ。
  国際協力によるITER(イーター)(国際熱核融合実験炉)JT-60SA(Super Advanced)などの実験炉の建設が進んでおり、日本をはじめ世界各極が連携をとって進める巨大プロジェクトとして着実に歩を進めつつある。
  火力発電のようにCO₂を排出することがなく、原子力発電よりも安全な大規模発電ができる、「夢のエネルギー」核融合発電の最先端に迫った。
燃料は無尽蔵にあり、原発よりも安全――核融合発電のしくみとは
  核融合発電とは、太陽の内部で起きている「核融合反応」を地上で再現するものだ。まずは、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(以下QST)で核融合発電を研究する若月琢馬氏にかみ砕いて解説していただこう。

「万物を構成する原子の中には原子核と電子があります。その原子核を高速でぶつけ合うことで、また新たな原子核が生まれます。これが核融合反応というものです。耳慣れない方も多いかもしれませんが、みなさんもこの核融合反応のエネルギーを享受しています。それは、さんさんと降り注ぐ陽の光のもと――太陽です。太陽の中では水素の原子核による核融合反応が起きていて、その熱、光が地球上の私たちに届けられています。
  太陽からも分かるように、核融合反応では膨大な熱エネルギーが発生します。その熱エネルギーを活用して行うのが核融合発電なのです。燃料に用いられるのは水素の同位体である重水素と三重水素(トリチウム)。燃料1gで石油8トンを燃やした時と同等のエネルギーを生みだすことができます。発電の方式にも様々ありますが、少量の燃料でこれほどのエネルギーを生み出せるのは原子力発電、核融合発電をおいて他にありません」(若月氏)

原子力発電は福島第一原子力発電所の事故以来、安全性が懸念されている。しかし、核融合発電は原子力発電に比べて極めて安全性が高いという。
  「原子力発電は核分裂反応で発生する熱を利用して発電を行うものです。原子炉の中では核分裂反応が連鎖的に起こるため、制御棒などを用いて、暴走しないよう制御しながら運転をしていく必要があります。原子炉内には数年分の燃料が入っており、それを制御しながら少しずつ発電を行っていきます。
  一方核融合発電の場合は、炉の中にある燃料は核融合反応を持続させるのに必要な量だけで、供給を止めればすぐに反応は止まってしまいます。また、たとえ大量の燃料が炉内に導入されたとしても、燃料自体がプラズマ(※)を急激に冷却することで自発的に反応が止まるため、核分裂のような連鎖的な反応は起こりません。核融合発電は、原理的に暴走が起こらないしくみになっているのです」(若月氏)

(※)プラズマ:固体・液体・気体に続く物質の第4の状態。一般的に数千度以上では、どんな物質も原子核に捕捉されていた電子が自由に運動できるようになりプラズマ状態となる。核融合炉では一億度以上の高温プラズマを生成し、それを固体等の容器に触れることなく閉じ込める(保持する)必要がある。
参照:量子科学技術研究開発機構HP(https://www.qst.go.jp/site/jt60/5108.html

しかも、原子力発電で発生する高レベル放射性廃棄物にあたるものが核融合発電では発生しない。また、発電時にはCO₂を排出することがなく、クリーンなのも特徴だ。
燃料の重水素は水を電気分解することで得ることができ、実質的に無尽蔵。もう一つの燃料である三重水素(トリチウム)は自然環境から採取されているが、核融合炉の中で人工的に作ることが可能とされており、サプライチェーンの面からも懸念はない。

世界7極の技術、英知が集結するプロジェクト「ITER」とは高効率で安全性が高く、環境にやさしい上に燃料枯渇の心配もない。
  核融合発電はまさに夢のエネルギーだ。しかし、まだ開発の途上にあり、実現されていないのはなぜか――?それは、核融合炉が人類史上かつてない複雑な構造体であり、最先端技術の粋を集めて開発が進められているものだからである。たとえば、核融合では燃料になる元素の電子、原子核を分離して「プラズマ」という状態にする必要がある。そのプラズマを生成するためには真空容器が、さらに核融合反応で発電を行うにはプラズマを1億度以上に加熱する装置が必要だ。また、核融合炉では磁場を利用してプラズマを炉の中に浮かべ、安定した状態で維持する。この強力な磁場を安定して作り出すために用いられるのが超伝導体のコイルだ。
  これらの核融合関連機器は巨大でありながらミリ単位の精度を求められる。まさに、核融合炉は最先端技術の集合体とも言える存在なのだ。核融合の仕組み現在、核融合発電の実現に向けて本格化している世界的プロジェクトがITER(国際熱核融合実験炉)だ。
  日本をはじめEU、ロシア、アメリカ、韓国、中国、インドの7極が連携し、フランス南部のサン・ポール・レ・デュランスで実験炉の建設を進めている。ITER模式図  出典:文部科学省ホームページ(http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/iter/021/005.htm)

日本が担当するのは、核融合発電で必須のプラズマを閉じ込めるために必要な強力な磁場を生成する超伝導コイルの開発・組み立てだ。QSTの梶谷秀樹氏、東芝エネルギーシステムズの石井氏に、国際プロジェクトの一端を聞いてみよう。
  「ITERでは、各極が分担してITER建設に必要となる機器を調達し、現在は2025年のファーストプラズマ(運転開始)に向けて、各機器の開発・製作を行っています。その中でも、私たちは、核融合炉において、非常に重要な機器である超伝導コイル『Toroidal Field(TF)コイル』の製作を東芝とともに進めています。

このコイルは高さ16.5m、幅9m、総重量300トンという、これまでに類を見ない巨大な構造物。しかし、私たちに求められるのは誤差数ミリ以下という製作精度です。その製作工程は多岐にわたり、工程一つとっても、非常に複雑。例えば、コイル材のニオブ3スズ超伝導線は650度の熱処理を100時間以上かけ、ようやく完成するものです」(梶谷氏)

「東芝は1970年代から核融合技術の開発に参画しています。設計段階から関わり、設計・製造の実績を重ねてきました。QSTの核融合装置JT-60(臨界プラズマ試験装置)、後継のJT-60SA建設にも携わっています。そこで投入してきた超伝導技術を磨きつつ、ITERのTFコイルでも導体を高精度で熱処理する技術、大型構造物の計測、機械加工技術などを磨き、製作に取り組んでいます」(石井氏)

物理学、理工分野とモノづくりが融合して立ち上がる新たな開発フィールド。TFコイルの組み立ては高度な次元で進む。加速器など、様々なところで超伝導コイルが導入されてきたが、これほどのスケールと精度は例を見ない。

「TFコイルの製作では、超伝導の知識はもちろん、ITERで要求されるコイル性能を達成するための電気工学や電磁気学の知識、コイル内部の冷媒の流体特性を把握するための流体力学や熱力学などの知識も求められますし、モノづくりの観点からは、各種材料の材料工学的な知見も必須。コイル組み立てに際しては高度な溶接技術や機械加工技術も求められます。各分野の高度な技術が総合的に求められるという意味で、このTFコイルは人類が初めて挑んでいる製作物ではないでしょうか」(梶谷氏)

核融合の電気が灯る日を目指し、技術の研鑽、継承は続く
ITERの研究開発を補完する役割を持ち、日本とEUが協力して開発を進めているのがJT-60SAだ。1970年代から設計・開発が進められたJT-60、80年代のJT-60Uに続く核融合実験装置である。
  核融合では燃料の元素を電離した状態のプラズマが必要だが、反応を起こすためには1億度以上のプラズマが求められる。JT-60SAは超伝導体の磁場によってプラズマを操り、高温・高圧力という理想的な環境で研究が進められるという。
  「核融合反応でエネルギーを取り出すためには、プラズマの温度・密度・閉じ込め時間という3つのパラメーターが重要になります。プラズマの密度を高めながら、より高い温度で長時間閉じ込めておけるかが現在の課題です。ITERは重水素と三重水素を用いた燃焼プラズマの実現を必ず成功させることが使命であるため、すでに高い信頼性が実証されている運転手法で実現できるプラズマの性能に基づいて設計されています。しかし、JT-60SAではより高性能なプラズマを実現するためのチャレンジングな実験が行える設計となっています。磁場に対するプラズマの圧力をより高くすることができ、実用的な核融合炉の設計に役立てる、より魅力的な実験を行うことができるのです」(若月氏)
  2020年に実験をスタートするJT-60SA。プラズマを安定させ、維持していく実験が進められれば、「発電ができる核融合炉」の足がかりになる。国際プロジェクトとして進むITERだけではなく、日本で進む先端研究に大きな期待がかかるゆえんだ。
  JT-60SAによって高度な研究が進み、2025年の運転を目指すITERの組み立ても進んでいくだろう。その先には、実際に核融合発電を行う原型炉、そして実際に送電網に電気を供給する商用炉へ続くロードマップが見える。前線で開発に携わる3人も長期的な視点に立ち、核融合技術の継承を強調した。
  物理学、理工分野とモノづくりが融合して立ち上がる新たな開発フィールド。TFコイルの組み立ては高度な次元で進む。加速器など、様々なところで超伝導コイルが導入されてきたが、これほどのスケールと精度は例を見ない。

  「TFコイルの製作では、超伝導の知識はもちろん、ITERで要求されるコイル性能を達成するための電気工学や電磁気学の知識、コイル内部の冷媒の流体特性を把握するための流体力学や熱力学などの知識も求められますし、モノづくりの観点からは、各種材料の材料工学的な知見も必須。コイル組み立てに際しては高度な溶接技術や機械加工技術も求められます。各分野の高度な技術が総合的に求められるという意味で、このTFコイルは人類が初めて挑んでいる製作物ではないでしょうか」(梶谷氏)
核融合の電気が灯る日を目指し、技術の研鑽、継承は続く
ITERの研究開発を補完する役割を持ち、日本とEUが協力して開発を進めているのがJT-60SAだ。1970年代から設計・開発が進められたJT-60、80年代のJT-60Uに続く核融合実験装置である。
  核融合では燃料の元素を電離した状態のプラズマが必要だが、反応を起こすためには1億度以上のプラズマが求められる。JT-60SAは超伝導体の磁場によってプラズマを操り、高温・高圧力という理想的な環境で研究が進められるという。
  「核融合反応でエネルギーを取り出すためには、プラズマの温度・密度・閉じ込め時間という3つのパラメーターが重要になります。プラズマの密度を高めながら、より高い温度で長時間閉じ込めておけるかが現在の課題です。ITERは重水素と三重水素を用いた燃焼プラズマの実現を必ず成功させることが使命であるため、すでに高い信頼性が実証されている運転手法で実現できるプラズマの性能に基づいて設計されています。しかし、JT-60SAではより高性能なプラズマを実現するためのチャレンジングな実験が行える設計となっています。磁場に対するプラズマの圧力をより高くすることができ、実用的な核融合炉の設計に役立てる、より魅力的な実験を行うことができるのです」(若月氏)

  2020年に実験をスタートするJT-60SA。プラズマを安定させ、維持していく実験が進められれば、「発電ができる核融合炉」の足がかりになる。国際プロジェクトとして進むITERだけではなく、日本で進む先端研究に大きな期待がかかるゆえんだ。
  JT-60SAによって高度な研究が進み、2025年の運転を目指すITERの組み立ても進んでいくだろう。その先には、実際に核融合発電を行う原型炉、そして実際に送電網に電気を供給する商用炉へ続くロードマップが見える。前線で開発に携わる3人も長期的な視点に立ち、核融合技術の継承を強調した。
  「『夢の技術』ではなく、現実に見えている技術になってきた核融合ですが、現在のところ、発電として実用化されるのは21世紀半ば、つまり2050年ごろの見込みです。そこで、この研究を加速させるためには優秀な人材が欠かせません。世界を変える研究に新しい力が入ってきてくれることを願ってやみません」(若月氏)
  「核融合技術に携わっているメンバーには『未来のエネルギーの実現に貢献したいと思う人』、そして『高度な技術を学び、新たな領域にチャレンジしていきたい人』の2タイプがいます。東芝には、ライフワークとして核融合技術に向き合ってきたベテランもたくさんいます。この資産を若い力と融合させ、息の長いプロジェクトに取り組んでいければと思います」(石井氏)
  「メーカーと協力しながら、TFコイルの製作を進めています。2021年の全TFコイル納入を目指して全力で進めていますが、やはり見据えるべきはその先にあります。東芝は若いスタッフが多く現場に投入されており、モノづくりの経験、先端技術の承継にも意欲的です。ITERは人類史上最大の国際プロジェクトであり、ここでの経験は、他では決して味わうことのできない、稀有なものです。若いスタッフは、ITERで培った経験を、是非今後に生かしてほしいと思います。私たちQSTと東芝が二人三脚で進めている技術開発、そこで得られた知見は原型炉以降の研究・開発にも発揮されていくでしょう」(梶谷氏)
  ITER、そしてJT-60SAを通して幾多の実験、研究は今後もたゆみなく積み上げられていくはずだ。研究者、技術者の熱き志の先には、人類の未来を握るエネルギーの地平が見える。


2020.2.4-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200204/k10012271631000.html
「ヨウ素剤 原発5~30キロ圏内住民にも事前配布を」環境相

原子力防災を担当する小泉環境大臣は、被ばくによる甲状腺のがんを防ぐ効果があるとされているヨウ素剤について、原発から5キロから30キロ圏内の住民にも事前配布を推進したいという考えを示しました。
  ヨウ素剤は、原子力発電所などで事故が起きた場合に服用すると被ばくによる甲状腺のがんを防ぐ効果があるとされていて、福島第一原発の事故を教訓に原発から5キロ圏内については、すべての住民を対象に事前配布することが指針で定められています。
  小泉大臣は4日の閣議のあとの記者会見で「5キロから30キロ圏内いわゆるUPZにおいて、緊急配布の負担を考慮した場合、事前配布によって避難などが円滑になると想定される住民に対しても、ヨウ素剤の事前配布を推進することにした。役場や保健所などの公共施設で保健師などによる配布も推進していきたい」と述べ、今後、具体的な検討を進めていく考えを示しました。
  そのうえで「福島の複合災害のときのことを思い出せば、万が一の時に必要なタイミングで飲んでいただけるような提供体制が整っているのだろうかと問題意識を持っていた」と話しました。
独自判断で事前配布の自治体も
ヨウ素剤は原子力発電所などで事故が起きた場合に服用すると、被ばくによる甲状腺のがんを防ぐ効果があるとされています。
  しかし、この薬は9年前の福島第一原発の事故の際、服用に関する情報が錯そうするなどしたため、住民に十分に行き渡りませんでした。
  このため、国は原発で重大な事故が起きたときに直ちに避難する必要のある原発から主に5キロ圏内の住民を対象に事前に配るようにルールを見直しました。
  一方、5キロから30キロ圏の住民については、重大な事故が起きた際にすぐには避難をせずに住宅などの建物の中に退避し、必要に応じて避難することになっています。
  このため事前に配布する対応は取られていませんが、自治体の中には独自の判断で住民の要望に応じて事前に配っているところもあります。
  ヨウ素剤の事前配布の方法は、処方の注意点などを理解して正しく服用してもらうため、原則として医師や薬剤師による説明会に参加した住民に配られることになっています。
  これについて自治体などからは「説明会の開催も医師を集めるなど簡単ではなく、住民側も仕事などで参加できない人も多い」などと、より効率的な配布方法を求める意見もあがっています。


2020.1.18(土)-愛知新聞Online-https://www.ehime-np.co.jp/article/news202001180011
伊方3号機運転認めず 甘い災害想定への司法の警鐘だ

佐田岬半島沿岸の活断層について存在しないと主張した四国電力の調査は不十分で、主張を問題ないとした国の原子力規制委員会の判断には誤りがあると指摘した。国や電力会社の姿勢を厳しく批判した裁判所の判断を重く受け止めねばならない。
  四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを山口県の住民3人が求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁は運転を認めない決定をした。運転禁止の期間は、山口地裁岩国支部で係争中の差し止め訴訟の判決言い渡しまでとした。伊方3号機の運転を禁じる司法判断は2017年の広島高裁仮処分決定以来2回目。行政の判断に追従せず、独立する司法の責務を果たした決定は評価できる。

  争点だった伊方原発がある佐田岬半島沿岸部の活断層に関して広島高裁は調査が不十分と判断した。国が中央構造線断層帯の長期評価を改訂した際の「半島沿岸は、今後の詳細な調査が求められる」との記述を取り上げ、四電の海上音波探査が不十分であることを前提にしていると認定した。さらなる調査が必要という評価は調査が尽くされていないのに等しく、判断は当然と言えよう。
  十分な調査をしないまま沿岸部の活断層は存在しないとした四電の主張について、規制委が問題ないとした判断は過程に誤りがあると断じている。活断層の存在が認められ、「震源が敷地に極めて近い」場合、地震動を評価する必要がある。調査が不十分で活断層の存否を確定できない以上、原発の運転を容認するべきではない。

  阿蘇巨大噴火のリスクでは噴火規模が過小評価されており、その想定を前提とした四電の申請や規制委の判断を不合理とした。災害想定の甘さに対する司法の警鐘と言える。住民は、巨大噴火が起きた場合の過酷な原発事故に対し不安を抱えながら暮らしている。国や事業者は災害大国の日本で原発を動かす責任の重さを改めて肝に銘じなければならない。

  現在、伊方3号機は定期検査のため停止中で、今月16日には使用済みとなったプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料16体を含む全燃料の取り出しを完了している。ただ差し止め決定によりスケジュールは白紙に戻った格好だ。
   3号機には県民が厳しい視線を送っている。今月12日には核分裂反応を抑える制御棒1体を誤って引き抜くトラブルがあった。規制委が「知る限りで前例はない」と強調、委員から「事業者の深刻度や捉え方が少し軽すぎる」との意見も上がった。四電は事業者として取り組み姿勢を省み、安全運転に万全を期す責務がある。
  差し止め決定を受け政府は改めて原発の再稼働を推進していく姿勢を示した。だが国の判断の誤りに言及した決定の意味は極めて重い。重要なベースロード電源として原発に頼る国策は再考しなければならない。


2020.1.18-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/column/news/200118/clm2001180003-n1.html
【主張】伊方原発停止 高裁の迷走が止まらない

司法の見識が疑われる決定である。
 広島高裁が仮処分で四国電力・伊方原子力発電所3号機(愛媛県)の運転停止を命じた。
 伊方3号機に関する広島高裁の仮処分の判断は、この約2年のうちに運転が1回、停止が2回となった。裁判長が異なるとはいえ、高裁としての定見の欠如ぶりは、看過できない迷走状態だ。
 伊方3号機は、福島事故で国内の全原発が停止した後、平成28年夏に国内で4番目に再稼働を果たした原発である。
 昨年12月から定期検査中の3号機は、4月からの運転再開を予定していたが、仮処分は即時に効力を発揮するため、効力が期限付きとはいえ、停止継続を余儀なくされる見通しだ。
 停止による電力不足分の穴埋めは、火力発電で行われるため、二酸化炭素の排出増と併せて、電気代の値上がりが消費者に及ぶ事態は避けがたい。
 広島高裁による前回の運転差し止めは、29年12月に下されたが、その際は阿蘇山の巨大噴火が理由だった。火砕流が海を渡って伊方原発に到達する可能性が否定できない、というものだった。
 今回の運転差し止め理由は、伊方原発が立地する佐田岬半島沿いの断層と原発までの距離だ。

 伊方3号機は原子力規制委員会の厳格な安全審査に合格して再稼働を果たした原発である。
 にもかかわらず、裁判長は四国電力の主張よりも近くに断層が位置すると解釈し、3号機を合格させた「規制委の判断には、その過程に過誤ないし欠落があったといわざるを得ない」とした。
 阿蘇山からの火砕流については、ゼロリスクを理由に伊方原発を立地不適とするのは社会通念に反する、と良識を示したものの、火山灰などの降下量に関して規制委にかみついた。
 四国電力の想定は過小で、それを認めた「規制委の判断も不合理である」としたのだ。
 高度に専門的な理学、工学知識が求められる原発訴訟での大胆極まる「決定」だ。審尋は、たったの1回だったからである。
 しかも裁判長は今月25日に退官する。近年の原発訴訟で運転停止を命じる決定が定年退職が近い裁判長から出される傾向は偶然か。仮処分が脱原発の闘争手段になりつつあることも気にかかる。


2020.1.15-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://blog.goo.ne.jp/chorinkai/e/78779cf962d1c8e68e11f527efc52ced
露の海上原発は大丈夫か――遠藤良介・外信部編集委員兼論説委員
【「遠藤良介のロシア深層」産経新聞 R02(2020).01.15 】


  ロシアが「世界初」と触れ込む海上原子力発電所(船舶型原発)が昨年末、露極東チュコト自治管区のペベク港で電力供給を始めた。ロシアは世界の原発市場で猛進撃を続けており、海上原発を輸出の新たな切り札としたい考えだ。
  海上原発の外観は豪華客船を思わせる。内部には原子炉2基が搭載されており、計7万キロワット出力を得られる。これは10万人程度の都市生活を支えていくのに十分な電力だという。
  露国営原子力企業のロスアトムは海上原発について、送電が困難な遠隔沿岸部でのエネルギー確保を可能にするものだと説明。すでに原子力砕氷船で利用されている原子炉を基礎にしており、安全性が実証された技術だと主張している。
  同社は、北極海航路の沿岸整備や北極圏の資源開発でも海上原発が重要な役割を果たすと意気込む。
  国内外の環境団体からは安全性への懸念が出ている。津波や流水の対策は十分なのか。テロ攻撃の標的になることはないのか。1986年に大事故を起こした旧ソ連のチェルノブイリ原発になぞらえ、「海のチェルノブイリだ」と辛辣(しんらつ)に評する専門家もいる。
  ロシアは今、世界の原発建設市場で最も勢いを持つ。ロスアトムはトルコや中国、バングラデシュ、エジプトなど12カ国で、計画段階を含め原子炉36基の建造を手がけている。
  背景の一つは、米ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)が経営破綻するなど日米欧のメーカーが撃沈したことだ。ロシアは間隙を突き、新興国を中心に比較的低価格で受注攻勢をかけた。巨額の政府融資もつけるのが通例だ。
  プーチン露政権は原子力を石油・天然ガスに次ぐ「資源・エネルギー大国」の柱と位置づけ、国策として覇権を狙ってきた。2007年末に原子力関連企業を統合した巨大企業ロスアトムを設立。ウラン採掘から核燃料供給、原発建設、使用済み燃料の回収まで、原発産業の上流から下流を一手に担う態勢を整えた。
  ロシアが建造しているのはチェルノブイリと異なる加圧水型軽水炉で、安全性は格段に向上しているとされる。だが、ロシアが国のメンツのために情報を隠蔽し、人命を軽視する国であるのは大きな懸念材料だ。
  チェルノブイリ事故では、周辺国や西側諸国から放射能レベルの異常を追及されるまで事故を隠し、被害の拡大を招いた。昨年8月には露北西部の海軍実験場で爆発があり、ロスアトムの従業員ら7人が死亡した。原子力推進の巡航ミサイルを実験していたとみられるが、真相は藪(やぶ)の中だ。
  ロシアが外国に建設する原発の燃料供給やメンテナンスなどを担うことで、相手国のエネルギー供給を押さえる地政学的な思惑も指摘されている。
  海上原発の建造には当初予定を大幅に超える年数と費用がかかっており、総じてロシアの原発事業では採算性が疑問視されている。それでもロスアトムは、アジアやアフリカ、南米の国々から海上原発の引き合いがあると強気だ。
  石油・天然ガス大国のロシアがかくも積極的な原発政策をとり、海上原発の拡散ももくろんでいる。隣国の日本はその動向を注視しておく必要があるだろう。








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