電気・電池問題-1



2021.05.29-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/7a1dd910a391a7354064ee33cac0e48bc8e2c844
<独自>国交省、3D地図活用して太陽光パネルの適地分析システム実証実験へ

  菅義偉政権が掲げる「2050年までの脱炭素社会の実現」に向けて全国の自治体の太陽光発電の導入を促すため、国土交通省が3次元(3D)地図を活用して太陽光パネルの設置に適した場所を分析するシステムの実証実験に乗り出すことが29日、分かった。
  地図上のどの屋根にパネルを設置すれば、どの程度発電量を得られるのかといった推計ができるようにする。今夏にも全国の一部自治体のシステムを構築する方向で調整。来年度以降の全国展開も視野に入れる。
  太陽光パネルの適地を分析するシステムは、国交省が昨年度に全国の56都市を対象に手がけた3Dの都市モデルを活用して作製する。この3D都市モデルは、人やモノの流れを分析したり、防災やまちづくりに役立てるためのもので、全国の自治体の都市計画の基本図や基礎調査などに基づき、建物の形状や高さといった見た目に加え、用途や材質、築年数などをもとにつくられた。

   3D都市モデルを活用することで、建物の屋根の大きさや傾き、鉄筋コンクリートか木造かなど材質も分かるため、太陽光パネルをどの建物にどのぐらいの大きさで設置できるかなどを推計できる。「結果として自治体全体の太陽光発電量も分かるようになる」(国交省の担当者)という。
  「2050年脱炭素」を掲げる中、菅首相は4月、30年度の温室効果ガス排出削減目標として13年度比46%減を目指すと表明した。30年度まで時間が限られる中では、太陽光発電などの再生エネ、省エネといった既存の対策を強化することが現実的との見方もある。
  30年度の実現を目指す新たな電源構成の比率をめぐって経済産業省は、再生エネについては現行目標の22~24%から36~38%に引き上げることを検討している。 また、政府は今月26日に成立した改正地球温暖化対策推進法に50年の脱炭素社会実現を明記し、その達成のために再生エネを普及させる考えを強調している。 国交省は、自治体や民間の事業者が太陽光発電を拡充するにあたって、太陽光パネルの適地分析システムの活用を促す考えだ。
  担当者は「自治体が脱炭素都市を実現する方法を探る一助となれば」と話している。

  ◇ 3次元(3D)都市モデル 仮想空間上で、見た目だけでは分からない構造や用途などの情報も含めて3Dデータ化する技術。小型無人航空機(ドローン)の運航管理地図や浸水域を明示する防災地図など、用途はさまざまで、国土交通省は民間企業など一般に開放して活用方法を模索している。
  米ニューヨークや独ベルリンなど各国で同様の取り組みが進められている。


2021.05.23-価格com.-https://kakaku.com/energy/article/?en_article=105
新電力(PPS)って何?

  新電力(PPS)は、電力自由化で新しく電力販売事業に参入してきた電力会社で、正式には特定規模電気事業者(PPS:Power Producer and Supplier)といいます。新電力は、家庭に電気を届ける電線の設備は保有していないため、地域の電力会社(一般電気事業者)に使用料を支払い、既存の送電ネットワークを利用することで契約者に電気を届けています。

  一般電気事業者と呼んでいるのは、北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、 関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の10の電力会社のことで、一般家庭に対して電力を供給する電力会社です。
  一方、新電力(PPS)は、“契約電力が50kW以上の需要家に対して、一般電気事業者が有する電線路を通じて電力供給を行う事業者”と規定されており、現在は工場や商業ビルなどの大口の需要家に対してのみ電気を売ることができます
  2016年4月に電力自由化がスタートすると、新電力(PPS)も一般家庭やコンビニなど、契約電力が50kW以下の需要家も新電力と自由に契約することが可能になります。
電力自由化の流れの中で登場してきた新電力(PPS)
  電気料金にも競争原理を導入し、“消費者が電気料金を比較し安い会社を選べるようにしよう”というのが、電力自由化です。2000年から大口の需要家に限定して電力自由化が実施されてきましたが、2016年4月にはいよいよ家庭向けの電力自由化がスタートします。
  これまで一般家庭では、東京電力や関西電力など地域ごとにある10の電力会社としか契約できませんでしたが、電力自由化がスタートすれば、住んでいる地域に関係なくどの電力会社からでも電気を購入できます。
  この電力自由化の流れの中で、従来の10の電力会社とは別に、新電力(PPS)と呼ばれる新しい電力会社が続々と立ち上がっているのです。
新電力(PPS)にはどんな電力会社があるの?
  資源エネルギー庁のサイトには、2015年9月18日現在で762社が新電力(PPS)として掲載されています(掲載を希望する事業者のみ)。
  新電力に参入している事業者は、鉄鋼、化学、石油などのように広大な敷地内に自社で発電設備を保有している会社もあれば、電機メーカー、住宅・不動産、商社、情報、通信会社など自社内に大きな発電設備を保有していない事業者もあります(こうした事業者は不足分の電力を他社や卸売市場から購入します)。
  また、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーで発電した電力(グリーン電力)の比率を高めたり、限られた地域で電力を“自給自足”するために発電を行うなどの特長を持った事業者もあります。
特定規模電気事業者から小売電気事業者へ
  従来の制度では、地域ごとの10の電力会社が一般電気事業者として認可を受けて、発電・送配電・小売のすべてを一体で運営していましたが、2016年4月からは、事業者の区分が発電・送配電・小売の3つに変わります。
  そのため、特定規模電気事業者という区分はなくなり、一般家庭などに電力を販売するには、従来の電力会社や新電力も小売電気事業者として登録する必要があります。
  2015年8月3日から経済産業省で登録の受付が始まっており、特定規模電気事業者は小売電気事業者に変わり、大手電力会社の小売事業部門と同じ立場で競争することになります。なお、新電力の登録は届出制でしたが、小売電気事業者の申請では、消費者保護の観点からも、電力が確保できているかやサポート体制などが厳密に審査されます。
電力自由化で電気料金はどうなる?
  電力小売りの市場規模は7.5兆円といわれる巨大市場。従来、特定の電力会社による地域独占状態だったこの市場が、電力自由化スタートによって開放されます。
  すべての消費者が電力の購入先を自由に選べるとなれば、従来の電力会社間での競争に加えて、新規参入してきた新電力との競争にも勝たないと契約をとることができません。
  電力自由化では、電気料金の値下げ、新たな料金プランや従来にないサービスの提供が期待されています。私たちのライフスタイルにも大きな変化がおとずれることになりそうです。
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2021.05.20-産経新聞新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/premium/news/210520/prm2105200004-n1.html
牛ふんから「電気」 侮れないバイオの力
(1)
  悪臭が問題となっている牛ふんを発電エネルギーとして活用するプロジェクトが岡山県笠岡市の笠岡湾干拓地で進んでいる。畜産農家と大阪の電気工事会社がタッグを組み、バイオマスプラントを設置し、飼育中の牛のふんを燃料にする計画だ。設備容量は1200キロワット時で、牛ふんを燃料とする発電設備としては西日本最大級。中国電力に売電することで年間約3億9千万円の売り上げを見込んでいる。干拓地で飼育されている牛は約9千頭もいる。1日あたり約400トンにもなる牛ふんの悪臭は長年にわたり地域の悩みの種になっていた。プロジェクトはその軽減策としても期待を集めている。プラントは10月に着工、令和5年の操業開始を目指している。(高田祐樹)
メタンガスで発電
  プロジェクトを進めているのは、地元畜産農家7戸などでつくる「かぶとバイオマスプラント有限責任事業組合」や大阪市の電気設備などを手掛ける「三和電気土木工事」。今年3月、笠岡市も交え、発電施設の整備・運営に関する協定を締結した。同社は大阪府庁の電気設備工事や兵庫県での太陽光発電などで実績があるという。
  事業計画によると、農家がトラックで運搬する1日約250トンの牛ふんを発酵させメタンガスを発生させる。ガスの発生過程で働く菌は酸素のない環境で生育する嫌気性の菌であるため、牛ふんの発酵は密閉空間で行われ、外部に悪臭が漏れない仕組みだ。
  発生したメタンガスを燃料としてガスエンジンを稼働させ発電。発電時に生じる熱や二酸化炭素は将来、温室栽培に利用することも視野に入れている。

  プラント敷地約3ヘクタール(笠岡市カブト中央町)を含む、総事業費約30億円は同社が全額負担。今年10月に着工し、令和5年4月に操業を開始する予定となっている。
  同社は経済産業省の固定価格買取制度(FIT)を活用し、1キロワット時あたり39円で中国電力に売電する予定。年間約3億9千万円の売り上げを見込んでいる。
近隣から相次ぐ苦情
  岡山県南西部に位置する笠岡湾干拓地は、農林水産省が農業利用を目的に20年以上の歳月をかけて1811ヘクタールを造成、平成2年に完工した。

  これまで地元が力を入れ、畜産業の拡大を進めてきた。干拓地内の乳牛・肉牛を合わせた頭数は、10年に2627頭だったのが、20年に5967頭と右肩上がりで増え、令和2年には約9千頭にまで増加した。県内で生産される牛乳年間約9万9千トンのうち、約4割がこの干拓地で生産されている。
  畜産業の拡大とともに、深刻化していったのが牛ふんの悪臭問題だ。干拓地の近隣地域から「悪臭をどうにかしてほしい」「窓が開けられない」などの苦情が相次ぐようになった。
(2)
  市は平成24年に臭気対策チームを発足。市農政水産課は畜産農家に畜舎や設備のこまめな清掃や消臭剤の使用などを指導しているが、30~令和2年度の3年間にも43件の苦情があった。
  市の推計では、干拓地で出る牛ふんは1日約400トン。これまで牛ふんは堆肥にするしか処理方法がなく、悪臭問題は地元畜産農家にとっても大きな課題となっていた。
愛される畜産農家に
   牛ふん発電は、事業組合の組合長を務める山本真五さん(47)が平成28年、経営していた牧場「希望園」(笠岡市カブト東町)の牛舎屋上に太陽光発電を設置する際、訪れた三和電気土木工事の担当者とバイオマス発電について話したことがきっかけに計画された。
  山本さんが「ヨーロッパのように、笠岡でも牛ふん発電ができないだろうか」と持ちかけたところ、担当者が「やってみましょう」と応じてくれた。

  アメリカやヨーロッパで牧場視察を重ねていた山本さんは、バイオマス発電についての事情にも詳しかった。「牛ふんを堆肥にするだけではなく、エネルギーとして生かしたい」と、挑戦を決めた。
  また、山本さんは「牧場は人の口に入る飲食物を作る場だ。清潔で周囲から理解される場でなくてはならない」というのが持論。これまでも、周辺住民の牧場見学や小学生が牛舎の牛を描く写生大会なども積極的に受け入れてきた。

  プロジェクトについて、山本さんは「干拓地の牛ふん全部をプラント内で密閉できるわけではないが、悪臭を軽減できると確信している。地域住民から愛される畜産農家になれれば」と期待する。
  三和電気土木工事の担当者も「嗅覚は個人差も大きく、発電が始まらないとわからないこともあるが、事業を通じ地域貢献につながればうれしく思う」と話している。

2021.04.22-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210422/mca2104220029006-n1.htm
<独自>日本、次世代エネ前倒し 30年に水素・アンモニア火力発電の土台構築

  政府が今夏の取りまとめに向け策定を進めている次期エネルギー基本計画で、火力発電で燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さない次世代クリーンエネルギーとして注目される「水素・アンモニア」の実用を急ぎ、2030年の電源に組み込む方針を示すことが21日、分かった。22日からの気候変動に関する首脳会合(気候変動サミット)で掲げる30年の温室効果ガス削減目標にもつなげる。

  菅義偉(すが・よしひで)政権は昨年末、50年の脱炭素に向けた具体策「グリーン成長戦略」で、参考値として水素・アンモニア発電を全体の10%とする電源構成を示した。30年時点でのその割合を「約1%」と具体的に記す。比率はわずかだが、主力電源としての「土台」とする。近く、経済産業省の検討会で示し議論する。
  約1%の内訳の試算は、水素発電の総発電量が30年時点で年間65億キロワット時、アンモニア発電は同82億キロワット時とする方針だ。
  水素発電に関して日本は技術的に先行しているとされ、天然ガスなどと混ぜて燃やし、CO2排出削減につなげるほか、水素だけを燃焼させることができる燃焼器の開発も進む。
  また、肥料などに使われるため流通経路が整備されており輸送も容易なアンモニアについても、発電に活用する開発が進んでいる。着火しにくく燃える速度も遅く、有害な窒素酸化物を出す難点があったが、触媒技術などで問題を克服。安全確保やコスト削減などの実用化研究が進んでいる。
  経産省の試算では、石炭火力の燃料に20%のアンモニアを混ぜると、国内電力会社が排出するCO2の1割に相当する約4千万トンを削減できる。また、技術開発を進めて全ての燃料をアンモニアに置き換えると約2億トン削減し、排出量は半減するという。

  エネルギー基本計画 国の中長期的なエネルギー政策の方向性を示す計画で、おおむね3年ごとに見直す。エネルギー政策基本法に基づき政府が策定する。電源構成や原発の運営に言及し、民間の電力会社などの設備投資計画に大きな影響を与える。政府は今夏の改定を目指しており、菅義偉首相が表明した2050年の温室効果ガス排出量実質ゼロに向け、脱炭素エネルギーの積極活用を打ち出す方針。


2021.02.26-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/life/news/210226/lif2102260027-n1.html
トヨタが燃料電池外販へ 今春から、水素普及狙う

  トヨタ自動車は26日、自社で開発した水素で電気をつくる燃料電池システムの外販に令和3年春に乗り出すと発表した。燃料電池車(FCV)の新型「ミライ」用に改良し、小型化した部品をまとめてシステム化し、外部の事業者が使いやすくした。鉄道や船舶、発電設備などの事業者向けに売り込む。
  水素は二酸化炭素(CO2)を出さない環境性が注目されている。燃料電池の普及を促進させ、水素の用途や利用量を増やし、補給所などのインフラ整備の機運を高める狙いもある。
  水素と酸素を反応させるスタックや、電気の出力を高めるコンバーターなどを箱状に収納。導入した事業者がモーターやバッテリーなどに簡単につなげるようにした。これまでは各部品をばらばらに販売していた。 価格や販売目標は非公表。


2021.02.21-gooニュース-https://news.goo.ne.jp/article/newswitch/business/newswitch-26034.html
丸紅がリチウムイオン電池のリサイクルで米企業と提携、コバルトやニッケルを精製へ

  丸紅と米リトリブ・テクノロジー(オハイオ州)は17日、リチウムイオン電池(LiB)のリサイクルビジネスに関する戦略的パートナーシップ契約を結んだと発表した。今後LiBの廃電池(廃LiB)からコバルトやニッケルを精製し、電池材料に活用するビジネスを共同で開発していく。

  リトリブ・テクノロジーは1992年の設立。廃LiBの処理量では北米最大規模という。民生用と車載用の廃LiBを集荷、破砕、分離の処理を施し、有価金属を回収・販売する。米オハイオ州に2工場、カナダに1工場を有する。両社は、民生用と車載用LiBの原料となる硫酸塩や前駆体、正極材の製造を目的に、その分野でノウハウを持つ化学メーカーとも協力して事業展開していく。
  電気自動車(EV)需要の拡大に伴い、廃LiBの発生量は増加が見込まれている。一方で、廃LiBの適切なリサイクル処理と再利用は社会課題の一つとなっている。


2021.02.15-DIAMOND on line-https://diamond.jp/articles/-/261419
トヨタとパナの車載電池に「血税1兆円」投下!中韓に劣勢のEVで挽回なるか【スクープ】
(1)
  世界的な脱炭素シフトを受けて、経済産業省が車載電池向けに1兆円規模の巨額支援を検討していることがダイヤモンド編集部の調べで分かった。電気自動車(EV)の基幹デバイスとなる車載電池では、中国CATL(寧徳時代新能源科技)を筆頭に中韓勢による激しい投資競争が繰り広げられている。政府の金融支援により、グローバル競争で遅れをとる日の丸電池が反撃に出る。果たして、勝算はあるのだろうか。(ダイヤモンド編集部 新井美江子、浅島亮子)
世界一、中国CATLの後塵を拝する日の丸電池
「グリーン基金」大盤振る舞いの成否は?
  遅れに遅れたというべきか。経済産業省が、車載向けリチウムイオン電池に1兆円規模の巨額支援をする方向で検討に入ったことが分かった。
  昨年末に、菅政権は「2050年カーボンニュートラル(炭素中立。二酸化炭素の排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにすること)に伴うグリーン成長戦略」を提示したばかり。この実行計画の中で、政府は過去に例のない2兆円の「グリーンイノベーション基金」を創設し、野心的なイノベーションに挑戦する企業を今後10年間、継続して支援するとしていた。
  今回の車載電池の金融支援も、このグリーン基金の枠組みを通じて行われる。
(2)
  支援の対象は、トヨタ自動車とパナソニックの合弁で設立された車載電池メーカー「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ」や、リチウムイオン電池の主要4部材(正極材・負極材、電解液、セパレータ)などを製造する電池材料サプライチェーンに組み込まれている企業群となる見込みだ。

  世界的な脱炭素の潮流に歩を合わせるように、米中欧では脱ガソリン車の動きが急加速している。中でも電気自動車(EV)市場は、既存の自動車メーカーのみならず、米アップル、中国のファーウェイや百度(バイドゥ)、あまたのベンチャー企業がこぞって参入する乱戦模様となっている。

  日本政府も30年半ばまでに新車販売の「ガソリン車ゼロ」を掲げたことで、自動車メーカーやそのサプライヤーもEV販売計画を前倒しさせる動きが目立っている。
  このタイミングで、EVの基幹デバイスである車載電池がコケたならば、日本のお家芸である自動車産業が崩壊しかねない――。危機感をあらわにした経産省は、出遅れた車載電池の投資支援に踏み切ることを決めたのだ。
日本勢に待ち受けるいばらの道
モビリティの価値の決め手はソフトウエアへ
  それでも、日本が車載電池で覇権を握るにはいばらの道が待ち受けているだろう。

  テスラ向けの円筒型電池と旧三洋電機の流れをくむ角形電池を持つパナソニックの車載電池は、かつては質量共に世界一の座にあったが、中国CATL(寧徳時代新能源科技)の後塵を拝している。18年時点の統計では、首位CATLと2位パナソニックとのシェアは僅差だったが、いまやCATLはトヨタやホンダに加えて、独フォルクスワーゲンなど欧州自動車メーカーの大量受注を獲得しており、「受注量」ではパナソニックを大きく引き離している。韓国LG化学も価格攻勢を仕掛けて米ゼネラルモーターズ(GM)などと連携を深めている。

  懸念はそれだけではない。EVの原価に占める構成比が高いという意味では車載電池は基幹デバイスだが、モビリティの競争力の「決め手」は、明らかにハードウエアからソフトウエアへシフトしている。車載電池を含めた車体の製造・販売ではなく、モビリティサービスやエネルギーマネジメントなど新しいビジネスモデルを構築した企業が勝ち組になるとみられているのだ。

  遅れに遅れたタイミングで、車載向けリチウムイオン電池に巨額の血税を投入する判断は正しいのか。
  ある経産省幹部は「遅れたという批判があるのはその通りだが、兆円規模の大規模投資なくして電池では勝てない。トヨタなどが取り組む全固体電池という“次のステージ”で日本が勝つブリッジとしても、今回の投資は必然だと考えている」と言う。別の経産省幹部も車載電池への巨額投資を認めた上で、「遅くとも今年上半期までに金額やスキームなどの詳細を詰める」としている。

  今回の巨額投資の成否については、特集『脱炭素 3000兆円の衝撃』の#1『トヨタ・パナ電池合弁に血税補助金1兆円!日本はEVで「半導体の二の舞い」を避けられるか【スクープ完全版】』で詳しく解説している。


2021.02.15-DIAMOND on line-https://diamond.jp/articles/-/261250
トヨタ・パナ電池合弁に血税補助金1兆円!日本はEVで「半導体の二の舞い」を避けられるか【スクープ完全版】

  世界的な脱炭素シフトを受けて、経済産業省がトヨタ自動車とパナソニックの電池合弁会社などの車載電池向けに1兆円規模の金融支援を検討していることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。
  電気自動車(世界的な脱炭素シフトを受けて、経済産業省がトヨタ自動車とパナソニックの電池合弁会社などの車載電池向けに1兆円規模の金融支援を検討していることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。
  電気自動車(EV)の基幹デバイスとなる車載電池では、中国CATL(寧徳時代新能源科技)を筆頭に中韓勢による激しい投資競争が繰り広げられている。経産省内部には、かつて投資競争と戦略で敗北した半導体の「二の舞」を回避すべきとの意見が根強い。今回の政府の金融支援により、グローバル競争で遅れをとる日の丸電池の再起を図る構えだ。
  特集『脱炭素の衝撃 3000兆円の衝撃』(全12回)の#1では、乾坤一擲の賭けともいえる巨額投資の成否を問う。(ダイヤモンド編集部 浅島亮子、新井美江子)

米中欧の電池・EV覇権争いの勃発で
「工場建設費用100%補助」へ急展開
  昨秋、経済産業省の職員が複数の電池部材メーカーの元を訪れていた。
  世界的な脱炭素の流れを受けて、ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトは不可避となった。だが近年、EVのキーデバイスとなる車載電池分野では、日本勢が投資意欲で中韓に遅れをとる局面が目立っている。そこで経産省は、車載電池のサプライチェーンに属する企業がどのような支援を求めているのか、ヒアリング調査を実施していたのだ。
  その席で、経産省職員は電池部材メーカー幹部から厳しい叱責を受けたという。
 「われわれは、資本市場で巨額資金を集めるテスラを擁する米国、国家資本主義で補助金が潤沢な中国、EU(欧州連合)の独自規制で電池技術を囲い込もうとしている欧州と戦っているんですよ。研究開発費の一部を補助する?そんな弥縫策で勝てるわけがない。国家の産業として電池や自動車を残そうというお考えならば、工場建設費用に100%の補助金を出すくらいの覚悟でいらしてください」
  研究開発費の一部支援というオプションを提案した経産省に対して、電池部材メーカーからは、さらに踏み込んだ金融支援が急務という声が上がったのだ。
  そんな場面が繰り広げられてから数カ月後。経産省が、車載向けリチウムイオン電池に1兆円規模の金融支援をする方向で検討に入ったことが分かった。まさしく、その使い道は、車載電池工場の“立地コスト(設備投資)”を全面的に支援するというものだ。電池部材メーカーの悲痛な叫びが受けいれられる形で、巨額の税金が車載電池に投下されることになりそうなのだ。


2019.10.16-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/business/news/191016/bsc1910160500007-n1.htm
リチウムイオン電池、日本は中韓に苦戦 「川下」商売下手、弱み象徴

  ノーベル化学賞で注目を集めるリチウムイオン電池は、かつて日本のメーカーが世界市場で高いシェアを誇っていた。近年は中国や韓国勢との価格競争で苦戦。素材や部品など「川上」分野のものづくりに強みを持ちながら、より消費者に近い「川下」ビジネスで競合相手に後れを取る姿は、日本の製造業に共通する弱みを象徴している。

  ノーベル化学賞の受賞が決まり、9、10日と記者会見をはしごした吉野彰旭化成名誉フェロー。「川上ビジネスは優位性があり大したものだが、川下は非常に下手くそ」。日本のリチウムイオン電池産業の現状をこう表現し、憂慮を示した。
  基礎研究で苦労し、開発研究で苦労し、製品化した後も売れなくて苦労する-。吉野氏は独創的な発明を事業として成功させるまでに突き当たる「3つの苦労」を指摘。その中でも、製品を世に出した後の苦しみが「精神的、肉体的にもきつい」と体験的に語る。
  世界の産業を現在牛耳るのは、大量の個人データを握り、消費者の好みに合った商品やサービスを提供するのにたけた「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業たちだ。「川下部分は全部『GAFA』に持って行かれている。日本にも匹敵するようなベンチャーが1つ、2つあればいいのだが」と吉野氏は唇をかむ。
◆中国政府は補助金
  吉野氏の発明を土台に、日本はリチウムイオン電池の開発で先行。1991年に世界で初めて商品化したのはソニーだった。だがソニーは収益低迷に苦しみ、スマートフォンなどモバイル端末用の電池事業を村田製作所に2017年に売却。その村田製作所も赤字脱却を果たせずにいる。

 かつて日本メーカーの独壇場だった電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池で近年急速に台頭しているのが中国勢だ。11年に創業したばかりの「寧徳時代新能源科技(CATL)」は、市場調査会社テクノ・システム・リサーチ(東京)によると、18年の車載用電池の世界シェア(出荷容量ベース)で首位のパナソニックと接戦を演じた。
  中国政府は長期発展戦略「中国製造2025」で、EVやリチウムイオン電池を重要産業の一つに位置付け、補助金などの政策面から自国産業を強力に支援する。国内外の自動車メーカーには中国で販売するEVに中国企業の電池を使うよう奨励。ある日系自動車メーカーは「パナソニック製の電池を使いたかったが、政府の意向からCATL製を採用せざるを得なかった」と打ち明ける。
◆オールジャパン望み
  日本の製造業が世界市場で輝きを失っていく構図は、テレビやパソコンなどの家電や半導体で経験済みだ。「日の丸液晶」として政府が支えた中小型液晶パネル大手ジャパンディスプレイ(JDI)も、中国と台湾の企業連合の傘下に入る再建策をいったん決めた後も迷走を重ねている。

  リチウムイオン電池は今後も自動車向けを中心に需要が見込まれ、調査会社の富士経済によると、22年の世界市場は7兆3914億円へと拡大する見通しだ。業界では、その先の次世代電池として期待される「全固体電池」の研究も進み、3年後にはEVで実用化される可能性が指摘される。

  大阪府立大の辰巳砂昌弘学長(無機材料化学)は「日本が最も実用化に近いとされるが、今後もリードし続けるには、大学や企業、国が連携し、オールジャパンで研究の裾野を広げる必要がある」と訴えた。


水素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


水素: hydrogen: hydrogène)は、原子番号1の元素である。元素記号H原子量は1.00794。非金属元素のひとつ。ただし、一般的に「水素」と言う場合、元素としての水素の他にも水素の単体である水素分子(水素ガス)H2、1個の陽子を含む原子核と1個の電子からなる水素原子、水素の原子核(ふつう1個の陽子、プロトン)などに言及している可能性があるため、文脈に基づいて判断する必要がある。

分布
  水素は宇宙でもっとも豊富に存在する元素であり、(ダークマターダークエネルギーを除いた)宇宙の質量の4分の3を占め、総量数比では全原子の90パーセント以上となる。これらのほとんどは星間ガス銀河間ガス恒星あるいは木星型惑星の構成物として存在している。地球表面の元素数では酸素珪素に次いで3番目に多いが、水素は質量が小さいため、質量パーセントで表すクラーク数では9番目となる。ほとんどは海水の状態で存在し、単体の水素分子状態では天然ガスの中にわずかに含まれる程度である。地球の大気中での濃度は1ppm以下とほとんど存在していない。

  水素原子は宇宙が誕生してから約38万年後に初めて生成したとされている。それまでは陽子電子がバラバラのプラズマ状態では宇宙空間を直進できなかったが、電子と陽子が結合することにより宇宙空間に散乱されずに進めるようになった。これを「宇宙の晴れ上がり」という。
  宇宙における主系列星のエネルギー放射のほとんどはプラズマとなった4個の水素原子核ヘリウム核融合する反応によるもので、比較的軽い星では陽子-陽子連鎖反応、重い星ではCNOサイクルという過程を経てエネルギーを発生させている。水素原子はいずれの核融合反応においてもこれを起こす担い手である。

  宇宙空間に散逸する地球の大気は少ないが、それでも1秒あたり水素が3キログラム、ヘリウムが50グラムずつ放出されている。これは大気が薄く原子や分子の速度が減速されずに宇宙へ飛び出すジーンズエスケープや、イオン状態の荷電粒子地球磁場に沿って脱出する現象がある。なお、加熱された粒子がまとまって流出するハイドロダイナミックエスケープや太陽風が持ち去るスパッタリングは現在の地球では起きていないが、地球誕生直後はこの作用によって水素が大量に散逸したと考えられる。
  固有磁場を持たない金星は、現在でもハイドロダイナミックエスケープやスパッタリングが続き、地表には比較的重いため残った酸素や炭素が作る二酸化炭素が大気のほとんどを占め、水がない非常に乾燥した状態にある。火星も軽い水素を中心に散逸し、かろうじてとなった水が極部分の土中に残るにとどまる

同位体
  質量数が2(原子核陽子1つと中性子1つ)の重水素2H)、質量数が3(原子核陽子1つと中性子2つ)の三重水素3H)等と区別して、質量数が1(原子核陽子1つのみ)の普通の水素(1H)を軽水素とも呼ぶ。(詳細は「水素の同位体」を参照)

  天然の水素には、水素(軽水素、プロチウム)1H重水素 2H (デュウテリウム、ジューテリウム、略号D)、三重水素 3H (トリチウム、略号T)の3つの同位体が知られている。このうち、もっとも軽い 1H は、1つの陽子と1つの電子のみによって構成されており、原子の中で中性子を持たない核種の1つである。存在が確認されている中でほかに中性子を持たない核種はリチウム3のみである。それぞれの同位体は質量の差が2倍、3倍となり、性質の違いも大きい。たとえばD2はH2よりも融点や沸点が高くなり、溶融潜熱は倍近くに、蒸気圧は10分の1近くとなる。2013年現在、より重い同位体は水素4から水素7までが確認されている。もっとも重い水素7(原子核は陽子1、中性子6よりなる)はヘリウム8を軽水素に衝突させることで合成されている。質量数が4以上のものは寿命がきわめて短く、たとえば水素7では半減期が23ヨクト秒(=2.3×10−23秒)ほどしかない。
  水素の同位体は、それぞれの特徴を有効に活かした使い方をされる。重水素原子核反応での用途で、中性子の減速に使用され、化学生物学では同位体効果の研究、医療では診断薬の追跡に使用されている。また、三重水素原子炉内で生成され、水素爆弾の反応物質や核融合燃料、放射性を利用したバイオテクノロジー分野でのトレーサーや発光塗料の励起源として使用されている。
水素分子
  水素分子は、常温常圧では無色無臭の気体として存在する、分子式 H2で表される単体である。分子量2.01588、融点 −259.2 (常圧)、沸点 −252.9 ℃(常圧)、密度 0.0899 g/L比重 0.0695(空気を 1 として)、臨界圧力 12.80 気圧、水への溶解度 0.021 mL/mL(0 ℃)。最も軽い気体である。原子間距離は 0.74 Å結合エネルギーはおよそ 104 kcal/mo
  水素分子は常温では安定であり、フッ素以外とは化学反応をまったく起こさない。しかし何かしらの外部要因があればその限りではなく、たとえば光がある状態では塩素と激しい反応を起こす。また、水素と酸素を混合したものに火をつけると起きる激しい爆発(水素爆鳴気)は、混合比下限は4.65パーセント、上限は93.3パーセントであり、空気との混合では4.1 - 74.2パーセントとなり、これはアセチレンに次ぐ広い爆発限界の範囲を持つ。
  ガス密度が低い水素は速い速度で拡散する性質を持ち、また燃焼時の伝播も速い。そのため、ガス漏れを起こしやすい傾向にある。原子径の小ささから、金属材料に侵入し機械的特性を低下させる(水素脆化)傾向が強い。これは高温高圧環境下で顕著となり、封入容器の材質には注意を払う必要がある。−250℃以下で液化させると体積は 800分の1となり、さらに軽いため低温貯蔵性には優れる。
  ガス惑星の内部など非常に高い圧力下では性質が変わり、液状の金属になると考えられている。逆に宇宙空間など非常に圧力が低い場合、H2+H3+、単独の水素原子などの状態も観測されている。H2分子形状の雲は星の形成などに関係があると考えられており、特に新生惑星衛星の観察時にはそれを注視することが多い。
オルト水素とパラ水素
  水素分子は、それぞれの原子核プロトン)の核スピンの配向により、オルト(ortho)とパラ(para)の2種類の異性体が存在する。オルト水素は、互いの原子核のスピンの向きが平行で、パラ水素ではスピンの向きが反平行である。この2つは、化学的性質に違いがないが、物理的性質(比熱熱伝導率など)がかなり異なる。これは内部エネルギーにある差によるもので、パラ水素側が低い。統計的な重みが大きいほうをオルトと呼ぶ。
  常温以上では、オルト水素とパラ水素の存在比はおよそ3:1であるが、低温になるほどパラ水素の存在比が増し、絶対零度付近ではほぼ100パーセントパラ水素となる。ただし、このオルト-パラ変換はスピン反転を伴うために、触媒を用いない場合極めて遅く、触媒を用いずに水素を液化すると、液化した後もオルト-パラ変換に伴い両者のエネルギー差に相当する熱が発生するため、液化水素が気化してしまう。これを水素のボイル・オフ問題という。オルト‐パラ変換を起こす触媒は、活性炭や鉄などの金属の一部、常磁性物質またはイオンなどがある
イオン(詳細は「水素イオン」を参照)
金属水素(詳細は「金属水素」を参照)
  ガス惑星の内部など非常に高い圧力下では性質が変わり、液状の金属になると考えられている水素は、実際に1996年ローレンス・リバモア国立研究所のグループが、140GPa(1GPa=約1万気圧)、数千℃という状態で、100万分の1秒以下という短寿命ではあるが、液体の金属水素を観測したと報告している。しかしながら、2006年現在、数百GPaのオーダーで圧力を加える実験が行われているものの、固体の金属水素の観測はされていない。
  励起状態の水素が金属化するときわめて強力な爆薬になるとの理論計算が行われ、電子励起爆薬として研究されている。この理論では圧力だけでは不十分であり、水素を励起状態にして圧力をかければ金属化するとしている。
超伝導の可能性
  金属化そのものが達成されていないためにその真偽はいまだ不明であるが、金属化した水素は室温超伝導を達成するのではないかという予想がある。この可能性の傍証として、周期表で水素のすぐ下のリチウムは、30GPa以上という超高圧下で超伝導状態となることが示されている。リチウムの超伝導への転移温度は圧力48GPaで20K程度であるが、この数字は単体元素のものとしては高い部類に入り、いくつかの例外を除けば一般に軽い元素ほど転移温度は高くなるため、もっとも軽い元素である水素は、より高い転移温度を持つ可能性が十分ある。
  木星型惑星木星土星)の深部は非常に高い圧力になっており、液体金属水素が観測された条件と似ている。木星型惑星を構成するもっとも主要な元素のひとつである水素は、この状況下では金属化している可能性があり、惑星の磁場との関わりも指摘されている。
物理的性質
  元素およびガス状分子の中でもっとも軽く、また宇宙でもっともが多く、珪素量を106とした際の比率は2.79×1010である。地球上では有機化合物の構成要素として存在する。
  水素分子は常温常圧では無色無臭の気体で、非常に軽く、非常に燃焼・爆発しやすいといった特徴を持つ。そのため日本では、高圧ガス保安法容器保安規則により、赤色ボンベに保管するように決められている。
  従来、水素ガスの爆発濃度は4% - 75%であるとされてきたが、慶應義塾大学環境情報学部の武藤佳恭は、10%以下であれば爆発しないことを明らかとした。
化学的性質
水素化物(詳細は「水素化合物」を参照)
  水素は電気陰性度が2.2とアルカリ金属アルカリ土類金属よりも高くハロゲンよりも小さい値であり、酸化剤としても還元剤としても働く。このため非金属元素とも金属元素とも親和しやすい。たとえば、水素と酸素が化合するときには還元剤として働き、爆発的な燃焼とともに水H2Oを生じる。ナトリウムと水素との反応では酸化剤として働き、水素化ナトリウムNaHを生じる。このような水素とほかの元素が化合した物質を水素化物という。
  水素化物の結合には、イオン結合型・共有結合型のほかに、パラジウム水素化物などの侵入型固溶体(侵入型化合物)と呼ばれる3種類の形態がある[22]。イオン結合型の化合物の中では、水素はHイオン(ヒドリドイオン)として存在する。共有結合型は電気陰性度が高いPブロック元素と電子を共有して化合する[22]。侵入型固溶体は一種の合金であり、水素原子は金属原子の隙間にはまり込むように存在している。このため、容易かつ可逆的に水素を吸収・放出することができ、水素吸蔵合金に利用される。高性能な水素吸蔵合金の中には、水素原子の密度が液体水素のそれに匹敵したり、上回るものもある。
  一方、より電気陰性度の大きい元素との化合物では水素はH+イオンとなる。水中で水素イオンを生じる物質が狭義のである。水溶液中では水素イオンは、H+(ヒドロン)ではなく、水分子と結合してH3O+オキソニウムイオン) として振る舞う。
  水素はまた、炭素と結合することで、さまざまな有機化合物を形成する。ほとんどすべての有機化合物は構成原子に水素を含む。
水素を含む有機化合物の例:メタン : CH4 ・エタノール : C2H5OH ・ベンゼン : C6H6
  おもな元素の水素化物の化学式と国際純正応用化学連合(IUPAC)による組織名、および(存在するものは)慣用名を右表に示す。
核磁気共鳴法における利用(詳細は「核磁気共鳴分光法」を参照)
  分子構造の研究に非常によく利用される核磁気共鳴分光法(NMR)において、1Hを用いた方法は代表的である。1Hはすべての核種の中で最も強い特異吸収を示すうえ、水素はほとんどすべての有機化合物に含まれることもあり、NMRにおいてよく利用される。周囲の原子の電子から影響を受ける結果、吸収される周波数が変化する(化学シフト)ため、原子の相対位置を推測する有力な手掛かりとなる。
水素イオンと水素化物イオン
  水素のイオンには、陽イオンである水素イオン(hydron、ヒドロンまたはハイドロン)と、陰イオンの水素化物イオン(hydride、ヒドリドまたはハイドライド)とが存在する。1H+はプロトン(陽子)そのものであるが、一般に水素は同位体混合物なので、水素の陽イオンに対する呼称としてはヒドロンが正確である(すなわちヒドロンは H+D+T+の総称である)。しかし、化学の領域において単に「プロトン」と呼ぶ際は水素イオンを指し示していると考えて差し支えはない。
  水素イオンの濃度[H+]酸性度を定量的に表す指標として用いられ、mol/L(モル毎リットル)単位で表した水素イオンの濃度の数値の対数に負号をつけた値を水素イオン指数(pH)で表す。水中の[H+]濃度は1から10−14mol/L程度の広い範囲を取り、pHでは0 - 14 程度となる。常温で中性の水には約10−7mol/Lの水素イオンが存在し、pHは約7となる。
ヒドロン・プロトンとヒドロニウムイオン
  H+であれ D+であれ、ヒドロンは電子殻を持たないむき出しの原子核であるため、化学的にはファンデルワールス半径を持たない正の点電荷のように振る舞う。それゆえ通常は単独で存在せず、溶媒などほかの分子の電子殻と結合したヒドロニウムイオン(hydronium ion)として存在する。水素のイオン化エネルギーは1131kJmol−1、遊離状態の水素イオンの水和エネルギーは1091kJmol−1と見積もられており、これは高い電子密度に起因する、水分子との高い親和力を示すものである。
  極性溶媒中では、アルコールエーテルなどの酸素原子の電子殻と結合している場合が多いため、ヒドロニウムイオンと言う代わりにオキソニウムイオン(oxonium ion)と呼ばれることも多い。あるいは超強酸など極限状態においては単独で挙動するプロトンも観測されている。
  また、アレニウスの定義ではヒドロンはの本体である。酸としてのプロトンの性質は記事オキソニウム、あるいは記事酸と塩基に詳しい。
ヒドリド
  水素化合物を意味するヒドリドは水素化合物を参照してください。
  ヒドリド(別名、水素化物イオン、ヒドリドイオン、: hydride: hydrogen anion、化学記号Hとも表記される)は、アルカリ金属、アルカリ土類金属あるいは第13族、14族元素(共有結合性が強い)などの、電気的に陽性な元素の水素化物が電離する時に生成する水素の陰イオン(アニオン)。ヒドリドはK殻が閉殻した電子配置を持ちヘリウムと等電子的であるために、一定の大きさを持ったイオンとして振る舞う点でヒドロン(水素カチオン)とは異なる。実際、ヒドリドはフッ素アニオンよりもイオン半径が大きいように振る舞う。
  ヒドリドはきわめて弱い酸でもある水素分子(pKa=35)の共役塩基であるので、強塩基として振る舞う。
  ヒドリドは塩基として作用する場合と還元剤として作用する場合がある。これをヒドリド還元というが、それは金属と還元を受ける化合物との組み合わせにより変化する。ヒドリドの標準酸化還元電位は−2.25Vと見積もられている。
  ヒドリドの発生源としては、代表的なものとしてNaBH4やLiAlH4(通称LAH)がある。これらの化合物のBH4-やAlH4-からはH-が脱離する。この反応は有機合成の時に非常に便利であり、例えば、炭素間二重結合に対して反マルコフニコフ付加を施したい時に有効である。
周期表上の位置
  一般的な周期表では水素はアルカリ金属の上に配置されるが、2006年に周期表における水素の位置を変更すべきではないかとする論文が国際純正応用化学連合(IUPAC)に提出され、公式雑誌に掲載された。
水素分子の生産
  工業的には、炭化水素水蒸気改質や部分酸化の副生成物として大量に生産される(炭化水素ガス分解法)。硫黄酸化物を除いたパラフィン類やエチレンプロピレンなどを440℃の環境下でニッケルを触媒としながら水蒸気と反応させ、粗ガスを得る。
  副生される一酸化炭素は水蒸気と反応して二酸化炭素と水素ガスとなる。のちにガーボトール法にて二酸化炭素を除去し、水素ガスが得られる。粗ガスの精製には、圧縮したうえで苛性ソーダ洗浄を行い、熱交換器にて重いガス類を液化除去する方法(液化窒素洗浄法)もある。
  また、ソーダ工業や製塩業において海水電気分解の副生品として発生する水素が利用されることもある。現在のところ、水素ガスはメタンを主成分とする天然ガスから、触媒を用いた水蒸気改質によって生産する方法が主流である。日本国内における2016年度の水素の生産量は608,008×103m3、工業消費量は374,621×103m3である。
  水素分子(水素ガス)を生じる化学反応は多岐にわたる。古典的には実験室において小規模に生成する場合、亜鉛アルミニウムなど水素よりもイオン化傾向の大きい金属に希硫酸を加えて発生させる方法が知られている(キップの装置)。あるいは水酸化ナトリウム硫酸などを添加して電導性を増した水や、食塩水を電気分解して陰極から発生させることもできる。
  実験室レベルにおいては工業的に生産されたガスボンベ入りの水素ガスを利用する。実験の際は防爆環境にて行われる。
用途
代表的な用途
  ・原料 - アンモニアの製造(ハーバー・ボッシュ法)のほか、塩素ガスと混合し光を当てて反応させる塩酸の製造、油脂に添加して炭素同士の二重結合数を減らし固体化する改質(トウモロコシ油や綿実油マーガリン化など)、脱硫など、多方面に利用されている。
  ・還元剤 - 金属鉱石(酸化物)の還元、ニトロベンゼンを還元しアニリンの製造、ナイロン66製造におけるベンゼンの触媒還元、一酸化炭素を還元するメチルアルコール合成などに使われる。
  ・燃料 - 燃やしても水以外の排出物(粒子状物質二酸化炭素などの排ガス)を出さないことから、代替エネルギーとして期待されている。ただし、燃焼条件により窒素酸化物が生成することは不可避である。内燃機関の燃料として水素燃料エンジンを積んだ水素自動車が発売されているほか、ロケットの燃料や燃料電池に使用されている。おもに燃料電池自動車向けの「水素ステーション」の設置が始まっている。
  ・食品添加物
  上記で述べたように、水素ガスの生産は原料を化石燃料に依存しており、水蒸気改質により発生する一酸化炭素などのうち化成品に利用されない過剰分や燃料として利用される炭化水素は二酸化炭素として環境中に放出される。水素の原料が化石燃料である限りにおいては、水素を化石燃料の代替として利用してもそのまま化石燃料の消費量が削減されたり二酸化炭素の発生が抑えられたりすることにはならない。
  ・浮揚ガス - 1リットルの水素を詰めた風船は1.2グラムの質量を浮揚させる。この性質から気球飛行船などに用いられていたが、ヒンデンブルク号爆発事故が起きて以来、危険性の少ないヘリウムで代用されるようになった。なお、この事故の直接的原因は外皮の塗料への引火とされている。
  ・冷却剤 - 液体水素は超伝導現象を含む低温学の調査に使用される。また、一部の発電所では、水素ガスを冷却媒体として用いている発電機もある。これは空気よりも熱伝導率が7倍と高く風損が少ないためである。水素ガスが漏れないようにするため、水素ガス圧力よりも高い圧力の油を流し遮蔽しなければならないという作業が発生する。
  ・洗浄 - 工業分野では、半導体の洗浄はRCA洗浄が主流で、アンモニアや塩酸フッ化物が用いられるが、その代替として水素を水に溶かし込んだ水溶液は排水処理の面で環境負荷が低く、半導体の基板表面の微粒子除去・洗浄に用いられる。
  ・溶接 - 水素分子をいったん2つの水素原子に解離させ、それを再結合させると多量の熱を発生する。これを利用した金属溶接法がある。
  ・その他 - テクニカルダイビングや軍隊などで大深度潜水時の使用が試みられたが、同時に酸素も用いられるために爆発の可能性が使用中につきまとうなど、危険であるため使用されていない。
  ・標準水素電極標準電極電位の基準として用いられている。
エネルギー利用(「水素燃料」を参照)
  水素はエネルギー変換効率が高く、燃焼すると水蒸気)となり、温室効果ガスとされる二酸化炭素大気汚染物質を排出しない。現状では、水素はおもに化石燃料を使って製造しているものの、将来的には、水の電気分解バイオマスごみなどを利用することにより、化石燃料によらないで製造できる可能性がある。このため、将来性の高いエネルギーの輸送および貯蔵手段として期待される。

  水素はさまざまな利用法が考えられている。燃焼を直接使う方法としては水素自動車が挙げられるほか、火力発電の燃料に水素を混ぜて二酸化炭素などを減らす技術が研究されている。
  水素を言わば「電池」として利用することも考えられている。鉛蓄電池リチウム電池NAS電池など、比較的大きな容量の充電が可能な電池がいろいろと開発されてきたものの、それでも電気エネルギーは貯めておくのが比較的困難なエネルギーとして知られている。そこで、必要以上の電力が得られるときに電気分解して生産した水素を貯蔵し、電力が必要となった時に貯蔵しておいた水素を使って発電を行うのである。必要以上の電力が得られるときに水をポンプで汲み上げて水の位置エネルギーとして電気エネルギーを貯める揚水発電はすでに実用化されているが、それと同様に電力需要のピーク時に対応する手法のひとつとして水素は利用できる。
  ほかにも太陽光発電風力発電といった発電法のように、発電量が比較的自然条件に左右されやすいものの、十分な発電量が得られるときに水の電気分解を行って水素を貯蔵するという方法で、これらの発電量の不安定さを解消する方法が考えられている。
  また、水素を電力の輸送手段として利用することも考えられている。長距離の送電を行うと送電線の抵抗などの関係で送電によるエネルギーの損失(送電ロス)が多くなる。小水力発電火力発電や比較的低温の熱源を利用した発電法などのように、電力需要の多い都市の近くに発電所を立地できる場合は送電ロスの問題もあまりない。しかし、必要に応じて変圧を行うなど送電ロスを少なくする工夫は行われているものの、2011年時点では送電ロスなしに長距離を送電する手法は実用化されていない。このためいわゆる自然エネルギーを利用した発電法に限らず、あらゆるエネルギーを利用した発電法において電力の供給地と需要地とが離れている場合には、どうしても送電ロスの問題が避けられない。ここで水素として輸送すれば、水素を逃がさなければ輸送中の水素のロスは発生しない。ただし水素を輸送する手段によって消費されるエネルギー(たとえば自動車で輸送すれば燃料が消費される)もあるため、どうしてもエネルギーのロスは発生してしまうという問題は残る。また、水素から電気に戻す際にもエネルギーロスが発生する。ただし、このロスは、として利用できる。
  最近ではマグネシウムと水を反応させて水素を作り出す方法も開発されている。マグネシウムと水が反応して発生する水素のほか、反応時の熱もエネルギー源として利用できる。最大の課題は使用後のマグネシウムの還元処理で、太陽光などから変換したレーザー照射による高温により還元する方法が考えられている。ほかに燃料電池の燃料としての水素の利用はよく知られているが、コンバインドサイクル発電などに利用することも考えられている。
燃料電池 (詳細は「燃料電池」を参照)
  空気中の酸素と反応させて水を生成しながら発電する水素 – 酸素型燃料電池は19世紀中ごろには実験的に成功したが、生活家電などの分野へは応用されず、20世紀の宇宙開発を通じて技術検討が進んだ。燃料電池は現時点の技術においては発電効率が35 - 60パーセントと高く、発熱エネルギーを回収することができれば80パーセントまで高めることができる。環境負荷も低いという利点がある。燃料にはメタノールを用いる機械もあるが、水素ガスを利用するものでは自動車への積載を念頭に置いた固体高分子形燃料電池(PEFC)が有力視されており、電解質分離膜や電極劣化の抑制など技術開発が進められている[12]。また宇宙船では燃料電池から得られる電力のほかに、同時に生成される水の利用も行われることがある。
貯蔵技術
  水素をエネルギー利用する上での課題のひとつには、ガス状水素を貯蔵する際の問題がある。既述のように空気との混合4.1 - 74.2パーセントという広い爆発限界の範囲を持つために、漏出しないようにする技術が必要となる。水素は原子半径が小さいために容器を透過したり、劣化させたりするため、ほかの元素や燃料を貯蔵するのとは勝手が違ってくる。2002年2月に発足した「燃料電池プロジェクト・チーム」の報告では、自動車に積載しガソリン相当の 500km以上走行が可能な水素貯蔵を目標に据えた。これに相当する水素ガスは5kgであり、常温常圧下では61,000リットルに相当する。
  従来の貯蔵手法では、高圧化と液体化の2つがある。水素は金属脆化を起こすため、特に高圧ガスを密閉するにはアルミニウム – マグネシウム – シリコン合金をファイバー強化したものが開発されているが、日本の高圧ガス保安法が定める上限の350気圧では実用的に自動車積載が可能なガス量は3.5kgにとどまり、5kgを実現するためには安全に700気圧相当を密封できる容器が検討されている。液体化も同様の問題を解決する必要があり、オーステナイト系ステンレス鋼やアルミニウム合金・チタン合金などを素材に検討が進む。しかし、高圧化や液体化には密封する際にも加圧や冷却などでエネルギーを消費してしまう点も課題として残る。
  水素を貯蔵する物質には金属類である水素吸蔵合金と、無機・有機物質が提案されており、いずれも水素化物を作り効率的に水素を捕まえることができる。水素吸蔵合金は、ファンデルワールス力分子間力の一種)で表面に吸着(物理吸着)させた水素分子を原子に解離(解離吸着、化学吸着)し、水素化合物を反応生成しながら合金の格子内に水素原子を拡散させる。取り出すには加熱または合金周囲の水素ガス量を減らすことで水素化物が分解しガスが放出される。必要な温度は通常50℃であり、高くとも250℃程度、圧力も常圧から100気圧程度までであり、水素ガスの体積を1,000分の1に収めることができる。課題は合金と水素の重量比にあり、現状では5kgの水素を吸蔵するための合金重量は170 - 500kg程度が必要になる。このほか、イオン結合を主とする錯体水素化物や、アンモニアボランなども水素吸蔵性能を持つ物質として研究されている。
水素循環社会(「水素エネルギー社会」も参照)
  自然エネルギーからの電気(太陽光発電人工光合成)によって水の電気分解から水素を生成してエネルギー媒体として貯蔵し、燃料電池を使って発電し電気を取り出すというエネルギーの循環構想がある。
  一見、理想的で無駄のないサイクルに思えるが、電気分解から燃料電池による発電までの工程ではニッケル水素電池リチウムイオン充電池と比較して効率が大幅に低い。高分子固体電解質を利用した電気分解の工程では分解時に両極でガスが発生するが、これが連続した反応を阻害する一因となる。また、燃料電池での発電工程でも同様に燃料電池のガス拡散電極の特性上、電流密度を上げるためにはスタックを重ねなければならず、取り出す電流を2倍にしようとすれば電極の面積も2倍にしなければならず、単位容積ごとの効率が低い。貯蔵時にも専用の高圧タンクや水素吸蔵合金を使用しなければならないため、単位体積ごと、あるいは単位重量ごとのエネルギー密度を下げる要因になり、利点を相殺してしまっている。
生体研究
  水素に関する研究について概説する。1671年にはロバート・ボイルによって水素ガスが生成され、水素はガスであると認識され、生理的に不活性なガスだと考えられ、注目されなかった。初期には、水素分子の生物学的効果は小規模に研究されてきた。1975年に、Doleらは水素ガスが動物の皮膚腫瘍を退縮するという研究結果を『サイエンス』にて報告したが、注目はされなかった。肝臓に慢性の炎症を持つマウスでの高圧水素の抗炎症作用は、2001年に報告された。こうした研究は数が限られている。
  水素ガスを含む吸気として、たとえば飽和潜水用のガスとして水素50パーセント、ヘリウム49パーセント、酸素1パーセント用の混合気が用いられており、この場合、水素に起因する毒性や安全性の問題は見られていない。
  ボストン小児病院、ハーバード大学医学部の研究でも、水素ガスの吸入による細胞障害、組織障害のような有害事象はないことが報告されており、名古屋大学医学部産婦人科、香川大学医学部産婦人科の研究においても、水素の摂取による毒性や催奇性はないことが報告されている。
  ただし、水素は爆発性を有する気体であり、爆発濃度においては静電気のような微弱なエネルギーで爆発する危険性がある。従って、水素ガス吸入療法においては、爆発限界濃度以下(10%以下)の水素ガスを発生させる水素ガス吸入機を用いることが重要であると、市販の水素ガス吸入機の安全性について警鐘を鳴らす論文が2019年に発表されている。実際に消費者庁の事故情報データシステムで水素ガス吸入機の爆発事例が複数報告されている。
  日本における水素の医療利用の研究に関する最初の報告は、2003年のヒドロキシルラジカルによる水素分子の水素引き抜き反応によって、種々の酸化ストレスに起因する疾病を予防または改善する報告に遡る。さらに2005年には、ラットの酸化剤誘発モデルに対する水素水の抗酸化効果が報告された。
  日本医科大学での2007年の実験を受けて、慶應義塾大学では2012年から心停止のラットでの治療モデルを確立してきた。2015年10月には、慶應義塾大学先導研究センター内に水素ガス治療開発センターが開設された。
  心肺停止時の水素ガスの吸入は先進医療Bに認定され、研究が進められている。従来の研究では動物を対象として心停止の際の脳・心臓の臓器障害抑制が調査されていたが、2016年9月には、初のヒトを対象とした研究が公表され、5人中4人が90日後には普通の生活に戻った。これは慶應義塾大学を中心として2月に開始された臨床研究であり、心停止の影響によって寝たきりとなる、言葉がうまく話せなくなるといった後遺症が残る事が多く、これを抑制するための医療現場への導入が目標とされている。
  αグルコシダーゼ阻害剤である糖尿病治療薬のアカルボースを服用すると炭水化物の吸収が抑制され、大腸の腸内細菌により水素などが発生する。アカルボースの服用が心血管事故を抑制する可能性があり、この原因として高血糖の抑制に加えて、呼気中に水素ガスの増加が認められ、この増加した水素の抗酸化作用で心血管事故を抑制するメカニズムが想定されている。
  水素と水素が水に溶存した水素水の研究は、2007年から2015年6月までで321の水素の論文があり、臨床試験も年々増加してきた。
  上述のように水素は従来の医薬品とは異なり、病気の根源である酸化ストレスを抑制し広範囲の疾病に対する改善効果を有することから、病気に対する「ワイドスペクトラム分子」と呼ばれる可能性がある。
  2019年12月10日現在、水素の医療利用に関係する学術論文は600報を超える。
宇宙における水素の反応
  宇宙空間は、私たちが日頃暮らしを営む環境とは大きく異なるため、全く異なる現象が起こる。水素の場合も例外ではない。例えば惑星大気の上層部分では、水素に高エネルギー電子が衝突することによって、三水素イオンが生成する。
  この三水素イオンは、宇宙空間のような低圧条件では安定して存在できる。このイオンは惑星大気の分析に用いられる。このイオンの濃度を調べることで、その惑星の上層大気についての情報を得ることができる。


電気
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

  電気(英: electricity)は、電荷の移動や相互作用によって発生するさまざまな物理現象の総称である。これには、雷、静電気といった日常的な現象の他、電磁場や電磁誘導といった電気工学に応用されている現象も含まれる。
  電気がエネルギー源として応用可能な範囲は広く、交通機関の動力源、空気調和、照明など、多様な用途がある。商用電源は現代社会のインフラであり、今後も当分の間はその位置に留まると見られている。また、電気工学は電子工学へと発展し、電気通信、コンピュータなどが開発され、広く普及している。

概要
  電気に関する現象は古くから研究されてきたが、科学としての進歩が見られるのは17世紀および18世紀になってからである。しかし、電気を実用化できたのはさらに後のことで、産業や日常生活で使われるようになったのは19世紀後半だった。その後急速な電気テクノロジーの発展により、産業や社会が大きく変化することになった。
語源
  電気を表す英単語 electricity はギリシア語の([elektron], 琥珀)に由来する。古代ギリシア人が琥珀をこする事により静電気が発生する事を発見した故事によるもので、そこから古典ラテン語で electrum、新ラテン語で ēlectricus(琥珀のような)という言葉が生まれ、そこから electricity が派生した。
  一方で漢語の「電気」の「」はの別名であり、いわば「電気」というのは「雷の素」といった意味になる。ベンジャミン・フランクリンによる研究はしばしば「雷の正体が電気である事を発見した」と紹介されるが、この文章は字義的な矛盾を含む事になる。もちろん「電気」という漢語がフランクリンの時代以後に作られたからである。
古代
  電気について知識がなかったころにも、電気を発生させる魚類の電気ショックに気づいていた人々がいた。紀元前2750年ごろの古代エジプトの文献にそういった魚を「ナイル川の雷神」とする記述があり、全ての魚の守護神だと記している。
  そういった魚類についての記述は、千年以上後の古代ギリシア、古代ローマ、イスラムの学者らの文献にもある。大プリニウスやスクリボニウス・ラルグスといった古代の著作家は、デンキナマズやシビレエイによる感電の例をいくつか記しており、それらの電気ショックが導体を伝わることを知っていた。
  痛風や頭痛などの患者をそういった電気を発する魚に触れさせるという治療が行われたこともある。雷や他の自然界の電気が全て同じものだという発見は中世イスラムという可能性もあり、15世紀のアラビア語辞書で雷を意味する raad という言葉がシビレエイも表すとされていた

  古代の地中海周辺地域では、琥珀の棒を猫の毛皮でこすると羽根のような軽い物を引き付けるという性質が知られていた。 紀元前600年ごろミレトスのタレスは一連の静電気についての記述を残しているが、彼は琥珀をこすって生じる力は磁力だと信じており、磁鉄鉱のような鉱物がこすらなくても発揮する力と同じものだと考えた。
  タレスがそれを磁力だと考えたことは間違っていたが、後に電気と磁気には密接な関連があることが判明している。
  古代ギリシア人は、琥珀のボタンが髪の毛のような小さい物を引きつけることや、十分に長い間琥珀をこすれば火花をとばせることも知っていた。イラクで1936年に発見された、紀元前250年頃のものとされる、バグダッド電池なるものはガルバニ電池に似ている。バグダッド電池はパルティア人が電気めっきを知っていた証拠とする説もあるが、これを単に金属棒に巻物を巻いて収め地中に埋めた壺(つまり電池ではない)とする説もある
近世
  イタリアの物理学者カルダーノは、『De Subtilitate』(1550年)のなかで、電気による力と磁力とをおそらくは初めて区別した。1600年にイギリスの科学者ウィリアム・ギルバートは、『De Magnete』のなかでカルダーノの業績について詳細に述べ、ギリシア語単語「琥珀」elektron からラテン語単語 electricus を作り出したelectricity という英単語の最初の使用は、トーマス・ブラウンの1646年の著作『Pseudodoxia Epidemica』の中にあるとされる。
  ギルバートに続いて、1660年ゲーリケは静電発電機を発明した。ロバート・ボイル1675年に、電気による牽引と反発は真空中で作用し得ると述べた。スティーヴン・グレイ1729年に、物質を導体絶縁体とに分類した。デュ・フェは、のちに positive(陽)、negative(陰)と称ばれることになる、電気の2つの型を最初に同定した。大量の電気エネルギーの蓄電器の一種であるライデン瓶は、1745年ライデン大学で、ミュッセンブルークによって発明された。ワトソン (William Watson) はライデン瓶で実験し、1747年に静電気の放電は電流に等しいことを発見した。

  18世紀中ごろ、ベンジャミン・フランクリンは私財を投じて電気の研究を行い、1752年6月、雷を伴う嵐のなか凧を揚げるという実験を行った。この実験で雷が電気であることを示し、それに基づいて避雷針を発明した。フランクリンは陽電気および陰電気の発明の確立者と見なされることが多い。
近代
  1773年、ヘンリー・キャヴェンディッシュ荷電粒子間に働く力が電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例することを実験で確認。1785年にシャルル・ド・クーロンクーロンの法則として定式化した。
  1791年、ルイージ・ガルヴァーニは動物電気(生体電気)の発見を発表。神経細胞から筋肉に信号を伝える媒体が電気であることを示した(ガルヴァーニ電気)。
  1800年、アレッサンドロ・ボルタは亜鉛と銅を交互に重ねたボルタの電堆を発明。それまでの静電発電機よりも安定的に動作する電源となった。
  1820年、ハンス・クリスティアン・エルステッド電磁気学の基礎となる電流による磁気作用を発見。アンドレ=マリ・アンペールは現象を再現してさらに詳細な研究を行った。ジャン=バティスト・ビオフェリックス・サバールは1820年、電流とその周囲に形成される磁場の関係を定式化(ビオ・サバールの法則)。
  1821年、マイケル・ファラデーはその現象を応用した電動機を発明。
  1830年、ファラデーとジョセフ・ヘンリー電磁誘導現象を発見。電気と磁気(と光)の関係を定式化したのはジェームズ・クラーク・マクスウェルで、1861年から1862年の論文 On Physical Lines of Force で発表した。これにはウィリアム・トムソンの1845年の論文が影響を与えた。
  ゲオルク・オームは1827年、オームの法則を含む電気回路の数学的解析を発表した。グスタフ・キルヒホフは1845年、キルヒホッフの法則を発見。これらの成果を基にヘルマン・フォン・ヘルムホルツ(1853年)、シャルル・テブナン(1883年、再発見)、鳳秀太郎(?年)が電気回路に関する電圧、電流、電源の考え方を確立した。
  このように19世紀前半に電気の研究は大いに進展したが、19世紀後半には電気工学が急速に発展した。ニコラ・テスラは交流を応用した電気機器(交流発電機ほか)を発明。後の電気の発電、送配電に大きな影響を与えた。また、蛍光灯や無線機の発明も行った。トーマス・エジソン蓄音機電球などを発明。イェドリク・アーニョシュダイナモの原理を確立。ジョージ・ウェスティングハウスはテスラの交流電動機の権利を取得し、交流発電・送電システムの確立に寄与した。ヴェルナー・フォン・ジーメンスも電気産業の発展に貢献。アレクサンダー・グラハム・ベルは電話を発明。電気は科学的興味の対象から第二次産業革命の推進力となり、日常生活に欠かせないものへと変貌していった。
物理学における電気
  電子陽子などの素粒子固有の性質に由来する。古代より、摩擦した琥珀(こはく)に物が吸い寄せられるなどの電気現象が知られており、物質にはこのような性質を持つものと持たないものがあるということがわかっていた。
  近代になって物理学が発展すると、これらの現象(電気)は、定量化することができ、また保存されるということがわかった。電気の現象を研究する物理学の分野は電磁気学と呼ばれている。電気が多量にあると思われる場合や逆に少量しかない場合など、条件に応じて、物が吸い寄せられるなどの電気現象にその程度の相違が観察されたり、雷の火花の大きさの程度により、電気にも水量と同様にその嵩があるとして、電気の嵩の多少を示す量として電気の量、即ち「電気量」というものが考えられている。これに対して、「電荷」とは「電気量」の多少を特に問わずに電気が存在しさえすれば足りる時に「電荷」があるなどと言い表し、「電気量」とは少し視点が異なり、電荷量とは言わないことが多い。

  電気は正と負の二種類がある。正と正または負と負に帯電した物体同士は反発し合い、正と負に帯電した物体同士は引き合う。その引力あるいは斥力の強さはクーロンの法則により計算することができる。また、これにより「電気量」の単位を決めることもできる。
  電気エネルギーは他の様々なエネルギーに変換でき、また逆に他のエネルギーから電気エネルギーにも変換できる。
・→ 運動エネルギー : 電動機  ・← 運動エネルギー : 発電機風力発電水力発電  ・→ 化学エネルギー : 電気分解電気精錬  ・← 化学エネルギー : 電池  ・→ 熱エネルギー : 電熱器電磁調理器  ・← 熱エネルギー : 火力発電原子力発電太陽熱発電海洋温度差発電  ・→ 磁気エネルギー : 電磁石電磁ブレーキ  ・← 磁気エネルギー : MHD発電  ・→ 光エネルギー : 照明発光ダイオードエレクトロルミネセンス  ← 光エネルギー : 太陽光発電  ・← 核エネルギー : 原子力電池
  他のエネルギーと比べ効率が良く伝送が容易なため、現代では広く利用されている。
概念
電荷(詳細は「電荷」を参照)(「電子」、「陽子」、および「イオン」も参照)
  電荷とは、ある種の素粒子が持つ性質であり、物理学において自然界の4つの根源的な基本相互作用の一つである電磁気力の元となる。電荷は原子内にもともとあり、よく知られる担体としては電子陽子がある。また電荷は保存量であり、孤立系内の電荷量は系内でどんな変化が起きても変化しない。孤立系内では電荷は物体から物体へ転送され、その転送は直接的な接触の場合もあるし、金属の導線などの伝導体を伝わって行われることもある。静電気とは電荷が物体に(不均衡に)存在する状態であり、通常異なった素材をこすり合わせることで電荷が一方からもう一方に転送されて生じる。

  電荷が存在すると電磁気力が発生する。電荷が互いにを及ぼしあう現象は古くから知られていたが、その原理は古代には分かっていなかった。ガラス棒を布でこすって帯電(電荷を帯びること)させ、それを紐でつるした軽いボールに触れさせると、ボールが帯電する。同様のボールを同じようにガラス棒で帯電させると、2つのボールは互いに反発しあう。
  しかし一方をガラス棒で帯電させ、もう一方を琥珀棒で帯電させると、2つのボールは互いに引き付け合う。このような現象を研究したのが18世紀後半のシャルル・ド・クーロンで、彼は電荷には2種類の異なる形態があると結論付けた。すなわち、同じ種類の電荷で帯電したものは反発しあい、異なる種類の電荷で帯電したものは引き付け合う。

  この力は荷電粒子自身にも働くため、電荷は物体表面に互いに距離をとるように一様に分布する傾向がある。この電磁気力の強さはクーロンの法則で定式化されており、互いの電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例する。
  電磁気力は強い相互作用に次いで強い力だが、強い相互作用とは異なりあらゆる距離に働く。ずっと弱い重力相互作用と比較すると、2つの電子が電磁気力で反発しあう力はそれらが重力で引き付け合う力の1042倍である。
  電子と陽子の電荷は極性が逆であり、物体全体の電荷は正の場合と負の場合がありうる。一般に電子の電荷を負、陽子の電荷を正とする。この習慣はベンジャミン・フランクリンの業績に由来する。電荷量は記号 Q で表され、その単位はクーロンである。電子はどれも同じ電荷量を持ち、その値は約 −1.6022×10−19 クーロンである。陽子は同じ大きさの極性が逆の電荷量を持つので +1.6022×10−19 クーロンとなる。電荷は物質だけでなく反物質にもあり、それぞれに対応する反粒子は大きさが等しく極性が逆の電荷量を持つ。
  電荷量を測定する手段はいくつかある。検電器は最初の電荷測定機器だが、今では授業での実験などでしか使われない。今では電子式のエレクトロメータがよく使われている。
電流(詳細は「電流」を参照)
  電荷を持った粒子の移動によって、電流が発生し、その強さはアンペアを単位として計られる。どんな荷電粒子でも移動することで電流を形成できるが、電子が最も一般的である。
  歴史的な慣習により、電流の流れる向きは正の電荷の流れる向きとされており、電源の正極から負極に流れるとされる。負の電荷を持つ電子は電荷担体としては最も一般的だが、電気回路での電流の流れる向きと電子の移動する向きは反対である。しかし、状況によっては電流の向きと荷電粒子の移動する向きが一致する場合もあるし、荷電粒子が両方向に同時に移動することもある。様々な状況で電流の流れる方向を便宜的に定めるために、このような規定がある。

  物質を電流が流れる過程を電気伝導と呼び、その性質は流れる荷電粒子と物質の性質によって様々である。金属の場合は電子が流れ、電気分解においては電荷を帯びた原子が液体中を流れる。粒子自体の移動速度は極めて遅く、せいぜい毎秒数ミリメートルだが、それによって形成される電場光速に近い速度で伝播する。そのため、電気信号は導線上で極めて高速に伝送される。
  電流はいくつかの目に見える現象を引き起こし、歴史的にはそれらが電流の存在を確認する手段でもあった。水に電流を流すと分解されるという現象は1800年にウィリアム・ニコルソンアンソニー・カーライルが発見した。これがいわゆる電気分解である。そこからさらに研究が進み、1833年にマイケル・ファラデー電気分解の法則を解明した。電気抵抗のある物質を電流が流れるとき、局所的な発熱がある。これを研究したのがジェームズ・プレスコット・ジュールで、1840年に数学的に定式化したジュールの法則を導き出した。電流に関する最も重要な発見をしたのはハンス・クリスティアン・エルステッドで、1820年に導線に電流を流したときに近くにあった方位磁針が振れることに気づいた。これが電気と磁気の基本的相互作用の発見であり、そこから電磁気学が発展することになった。
  工学や実用的観点では、電流を直流交流に分類することが多い。これは電流が時間と共に変化するかしないかを示した用語である。直流は電池などが発する電流であり、常に一方向に流れる電流である。交流は電流の流れる向きが定期的に逆転する場合を指す。交流の電流の強さの時間変化は正弦波を描くことが多い。したがって、交流が流れる導体内では電荷が一方向に進むことはなく、短い距離を行ったり来たりすることになる。交流の電流の強さをある程度以上の時間で平均するとゼロになるが、エネルギーはある方向に運搬され、次に反対方向に運搬される。交流には定常的な直流では見られない特性があり、インダクタンス静電容量に影響を受ける。そういった特性は電源を入れた直後など回路の過渡現象が主題となる場合に重要となる。
電場(詳細は「電場」を参照)(「静電気学」も参照)
  電の概念は、マイケル・ファラデーによって導入された。電場は電荷によってその周囲の空間に形成され、その電場内に存在する他の電荷に力を及ぼす。2つの電荷の電場の振る舞いは、ちょうど2つの質量の重力場のそれと似ており、広がりは無限だが互いに及ぼしあう力は距離の2乗に反比例する。ただし、電場と重力場には大きな違いが1つある。重力は常に引き付け合う力だが、電場は引き付け合う場合と反発しあう場合がある。惑星のような巨大な物体は全体としてほとんど電荷を帯びていないため、遠距離の電場は通常ゼロである。そのため宇宙規模の距離では本来弱いはずの重力が支配的になる

  電場は空間の位置によって変化し、ある位置に正の単位電荷量を静止させて置いたとき、その電荷が受ける力の強さがその位置の電場と定義される。この概念上の電荷を試験電荷と呼び、自身の電場が影響を及ぼさないようほとんどないくらいに小さく、しかも磁場を生じないために決して動かないものとする。電場は定義上からであり、力はベクトル量である。つまり、電場自身もベクトル量であり、大きさと方向がある。明らかに電場はベクトル場である。
  静止した電荷が形成する電場を研究する分野が静電気学である。電場は空間の各点における方向に沿って描いた想像上の曲線で視覚化できる。この概念を導入したのはファラデーでこれを「電気力線」と呼び、今も時折見かける。正の点電荷をその電場内で動かそうとした場合、点電荷が通る経路は電気力線に沿ったものになる。ただしこれは物質的存在とは無関係の想像上の概念であり、電気力線の間も含めて空間全体に電場は存在する。静止した電荷から発する電気力線にはいくつかの特性がある。まず、電気力線は正の電荷を始点とし、負の電荷を終点とする。次に、良導体がある場合は常に直角に入っていく。さらに、電気力線同士が交差することはない。

  中空の導体では電荷は常にその外側の表面に分布する。従って、その内部のどの位置でも電場はゼロとなる。これがファラデーケージの動作原理であり、金属殻で囲まれた内部は外界の電場から隔離される。
  静電気学の知識は高電圧装置の設計において重要である。電場を満たしている媒体には必ず耐えられる電場の強度(電界強度)の限界がある。電界強度がその限界を超えると絶縁破壊がおき、帯電した部分の間に電弧によるフラッシュオーバーが生じる。例えば空気の場合、電極の間が狭いなら電界強度が30kV毎センチメートルを越えると電弧が生じる。電極間の距離が大きい場合は限界がさらに低くなり、1kV毎センチメートルでも電弧を生じることがある。はこの現象が自然界で発生したもので、上昇気流によって地面と隔てられて電荷を蓄えた雲が電場を生じ、その強度が空気の限界を超えたときに発生する。大きな雷雲の電位は100MVにもなり、その放電エネルギーは最大で250kWhほどになる。
  電界強度は近くに導体があると大きく影響され、特に尖った導体の先端部分に電気力線が集中する。この原理を応用したのが避雷針で、その尖った先端が周辺で発生する雷を引き寄せ、建物を守ることになる。
電位(詳細は「電位」を参照)(「電圧」も参照)
  電位の概念は電場の概念と密接な関係がある。電場内に小さな電荷を置こうとすると力を受け、その力に逆らって電荷をその場所に置くことは仕事となる。ある位置の電位とは、単位試験電荷を無限遠からその位置までゆっくり運ぶのに要するエネルギーと定義される。一般にその単位はボルトであり、1ボルトとは無限遠から1クーロンの電荷をその位置に運んでくることが1ジュールの仕事となる位置の電位である。この電位の定義は公式なものだがあまり実用的でない。より実用的な定義として電位差すなわち電圧がある。こちらは単位電荷を2地点間で移動させるのに要するエネルギーと定義される。電場は「保存性」という特殊な性質があり、試験電荷の移動に際して移動経路と移動に必要なエネルギーは無関係である。2地点間の任意の経路で同じエネルギーを要するので、電位差は一意に定まる。ボルトはむしろ電位差の単位として認識されており、電圧は日常的によく使われる。

  実用においては、電位の比較・参照の際の基準を定義した方が便利である。定義上は無限遠がそれにあたるが、より実用的には地球自体がそのどこをとっても同じ電位だと仮定することで基準点となる。この基準点をアースまたは接地と呼ぶ。地球は正及び負の電荷の無限の源泉とみなすことができ、そのため電気的には帯電していないし、帯電させることもできないと見なせる。
  電位はスカラー量であり、方向はなく大きさだけの量である。これは重力場における高さと似ている。ある高さで物体を離すと重力を発している重力源に向かって落ちていく。同様に電荷をある電位に置くと電場の電気力線に沿って「落ちて」いく。地図に同じ高さの地点を結んだ等高線が描かれるように、電場においても同じ電位の地点を結んだ等電位線を描くことができる。等電位線は電気力線とは直角に交わる。また、電気伝導体の表面は電位が等しいため、電気伝導体の表面とは平行になる。仮に伝導体表面に電位差があってもその電位差をなくすように電荷が移動して等電位になる。
  電場は正式には単位電荷に及ぼされる力と定義されているが、電位の概念を使えばもっと実用的で等価な定義が可能である。すなわち、電場とは電位の局所的勾配である。通常ボルト毎メートルで表され、電位の勾配がもっともきつい方向(つまり等電位線が最も密になっている方向)が電場の方向となる。
電磁気学(詳細は「電磁気学」および「古典電磁気学」を参照)
  1821年、エルステッドは電流の流れる導線の周囲に磁場が存在することを発見し、電気と磁気に直接的な関係があることがわかった。さらにその相互作用は当時自然界に存在することがわかっていた重力や静電気力とも異なるようだった。方位磁針にかかる力は単に電流の流れる導線との間の引力や斥力といったものではなく、それとは直角な方向の力である。エルステッドはこれを「電気的衝突は回転するように働く」とやや不明瞭に表現した。この力は電流の向きにも依存し、電流を逆向きに流すと力の向きも反対になる。
  エルステッドはその発見を完全には解明しなかったが、その現象が相互的であることは述べている。すなわち、電流が磁石に力を及ぼすと同時に、磁場が電流に力を及ぼすということである。この現象をさらに研究したのがアンドレ=マリ・アンペールで、2つの平行な導線にそれぞれ電流を流すと相互に力を及ぼすことを発見した。同じ方向に電流を流すと2つの導線が引き付けあい、逆方向に電流を流すと反発しあう。この相互作用はそれぞれの電流によって生じる磁場同士が介在して起きるもので、アンペアという単位の定義にもこの現象が使われている

  この磁場と電流の関係は極めて重要であり、この現象からマイケル・ファラデーが1821年に電動機を発明した。ファラデーの単極電動機永久磁石水銀のプールの中央につき立てられた状態になっている。その上から導線が垂らされていて先端が水銀に浸っている。導線に電流を流すと接線方向に力が働き、導線が磁石の周囲を回るように動く。
  1831年、ファラデーは導線を磁場を横切るように移動させるとその両端に電位差が生じることを発見した。これが電磁誘導であり、さらなる研究によってファラデーの電磁誘導の法則と呼ばれる法則を見出した。すなわち、回路に乗じる電位差は、回路を貫く磁束の変化の割合に比例するという法則である。この発見を応用し、ファラデーは銅の円盤を回転させる機械エネルギーを電気エネルギーに変換する世界初の発電機を1831年に発明した。このファラデーの円盤は原始的なもので実用可能なレベルではなかったが、磁気を使って発電できる可能性を示した。
  ファラデーとアンペールの業績により、時間と共に変化する磁場が電場を生み出し、時間と共に変化する電場が磁場を生み出すことが示された。つまり、電場または磁場が時間と共に変化すれば、もう一方の場が必然的に誘導される。このような現象は波動の性質を持っており、一般に電磁波と呼ばれる。電磁波については1864年にジェームズ・クラーク・マクスウェルが理論的に解析した。マクスウェルは、電場、磁場、電荷、電流の関係を明確に示す一連の方程式を導出。また彼は電磁波が光速で伝播することを証明し、光も電磁放射の一種であることを示した。マクスウェルの方程式は光、場、電荷を統合し、理論物理学における重要な進歩となった。
電気回路(詳細は「電気回路」を参照)
  光や動力を得たり、有用な計算をさせるために、電気素子電気伝導体で繋いだものを、電気回路という。電気回路は、抵抗器インダクタコンデンサスイッチ変圧器、その他の電子部品などから成る。電子回路には半導体などの能動素子が使われており、非線形な挙動を示すため、それを表すには複素解析が必要である。最も単純な電気回路部品は受動素子でかつ線型性を示すもので、一時的にエネルギーを蓄えられるが電力源は含まず、入力に対して線形に反応する。
  抵抗器は最も単純な受動素子である。名前が示す通りそれを通る電流に対して電気抵抗を示し、エネルギーの一部を熱に変換する。電気抵抗は導体内を電荷が移動する結果生じる。例えば金属では主に電子同士やイオン同士の衝突によって電気抵抗が生じる。電気工学の基本法則であるオームの法則によれば、抵抗器を流れる電流はその両端の電位差に比例する。多くの物質の電気抵抗値は、広範囲の温度や電流値に対してほぼ一定である。抵抗値の単位オームゲオルク・オームに因んで命名されたもので、ギリシア文字 Ω で表す。1Ωの抵抗器に1ボルトの電位差を印加すると1アンペアの電流が流れる。

  コンデンサは電荷を蓄える機能を持つ素子で、蓄えた電荷によって生じた電場にエネルギーを蓄える。概念的には薄い絶縁層を2枚の導体の板で挟んだ形状で、静電容量を増すために体積に対して表面積を増やすべく、実際には金属薄膜をコイル状に巻いている。静電容量の単位ファラドマイケル・ファラデーに因んで命名されたもので、F で表す。1ファラドのコンデンサに1クーロンの電荷を蓄えると1ボルトの電位差が生じる。コンデンサを電圧源に接続すると、最初は電流が流れて電荷が蓄積される。しかし、電荷が蓄えられていくと電流は時間と共に減少し、最終的に全く流れなくなる。従ってコンデンサでは定常電流(直流)が流れることはなく、むしろそれを阻止する性質がある。
  コイルは一般に導線の巻線であり、そこに流れる電流によって生じた磁場にエネルギーを蓄える素子である。電流が変化するとその磁場も変化し、誘導起電力が生じる。その誘導起電力は電流の時間変化に比例し、その比例定数をインダクタンスと呼ぶ。インダクタンスの単位ヘンリージョセフ・ヘンリーに因んだもので、H で表す。1ヘンリーのコイルに1秒間に1アンペアの割合で変化する電流を流すと、1ボルトの誘導起電力が生じる。コイルはある意味でコンデンサとは逆の作用をし、定常電流は自由に流れるが、電流の急激な変化は阻止しようとする。(応用面の話題については電気工学も参照。)
発電と電気の利用
発電と送電(詳細は「発電」を参照)(「送電」および「配電」も参照)
  前述の通り、電気エネルギーはさまざまな形態のエネルギーへの変換が容易であり、伝送も比較的簡単であるので、現代ではさまざまな分野で必要不可欠のものとなっている。非電気エネルギーを電気に変換することを、発電と呼ぶ。
  タレスの琥珀棒の実験は、電気エネルギー生産の最初期の研究だった。その摩擦帯電現象は軽い物なら引き寄せることができ、火花を発生させることもあるが、発電方法としては極めて非効率である。史上初の実用的な電力源は18世紀に発明されたボルタ電池である。ボルタ電池から始まった電池はエネルギーを化学的に蓄え、そこから必要に応じて電気エネルギーを引き出して使うことができる。電池は様々な用途に使える一般的な電力源だが、蓄えているエネルギー量は有限であり、完全に放電すると再充電するか廃棄するしかない。電気エネルギーへの大きな需要に応えるためには、継続的に発電し、電線を通してそれを送電する必要がある。
  電力は主に水蒸気で駆動される発電機で発電され、水蒸気を発生させるための熱源としては化石燃料の燃焼や核分裂反応の発生する熱が使われている。あるいは水流や風の持つ運動エネルギーを利用して発電機を駆動する場合もある。蒸気タービンは1884年にチャールズ・アルジャーノン・パーソンズが発明し、何らかの熱源で蒸気タービンを回して発電することで今では全世界の80%の電力を得ている。そういった発電機は1831年のファラデーの円盤とは似ても似つかないものだが、磁場を横切る形で移動する伝導体の両端に電位差が生じるというファラデーの電磁誘導の法則に従って発電している。19世紀末に変圧器が発明され、高電圧低電流でより効率的に電力を送ることが可能になった。送電が効率化されたことで1つの大きな発電所で発電して広い地域に電力を供給できるようになり、規模の経済の効果が発揮されるようになる

  国家規模の電力需要を賄えるほど電気エネルギーを蓄えるのは容易ではないため、電力網には常に必要とされるだけの電気エネルギーを供給し続ける必要がある。そのためには常に電力需要を注意深く予測し、発電所間で常に連携する必要がある。ある程度の発電能力は、急激な電力需要増や何らかの障害への対策としてとって置く必要がある。
  国が近代化し経済発展すると共に、電力需要は急激に増大する。アメリカ合衆国では20世紀の最初の30年間、毎年12%電力需要が増加し、最近では発展の著しいインドや中国が似たような増加傾向を示している。歴史的に見て、電力需要の成長率は他のエネルギー形態のそれよりも急激だった。
  環境問題への懸念から、風力発電水力発電といった再生可能エネルギーに注目が集まりつつある。様々な発電技法の環境への影響が議論される中で、これらは相対的にクリーンだとされている。
利用
  電気はエネルギーの形態としては極めて柔軟であり、その用途は極めて幅広い。1870年代に実用的な電球が発明され、照明が電力の用途として最初に一般に普及した。照明に電気を使うことは新たな危険性を伴っていたが、同時にガス灯などの火をそのまま使う従来の技法に付きまとっていた火災の危険性を大きく低減させることになった。電力網は電気照明のためにまず大都市圏から急激に整備され始めた。
  電球が利用しているジュール熱現象は、より直接的に電気ストーブでも利用されている。電気エネルギーをジュール熱に変換して利用することは制御が容易で便利だが、元々の発電で熱エネルギーを電気エネルギーに変換していることを考えると大きな無駄ともいえる。デンマークなどの多くの国々で、新たに建設する建物で電気を熱源として利用することを制限または禁止する法律が成立している。しかしながら電気は冷却空調のエネルギー源としてよく使われていて、その分野の需要増が電力需要全体を押し上げている。
  電気は電気通信にも使われている。中でも電信は1837年、チャールズ・ホイートストンウィリアム・フォザギル・クックが最初に商業化した。1860年代には大陸間の電信網、さらには大西洋横断電信ケーブルができ、電気によって数分で世界中に通信可能となった。光ファイバー技術も通信の一部を担うようになったが、やはり通信の大部分は電気が担っている。
  電磁気学的現象を目に見える形で使っている例として電動機があり、クリーンで効率的な動力源となっている。ウインチなど据え置き型では電力供給が容易だが、電動輸送機器のような電動機自体が移動する用途では、電池を搭載して電力を供給するか、集電装置のような機構で電力を供給する必要があり、移動距離や移動範囲が制限されている。
  20世紀最大の発明の1つであるトランジスタは、現代のあらゆる電子回路の基本素子である。最近の集積回路には、数センチ平方メートルの中に数十億個の微細なトランジスタが含まれている。
日常用語における電気
  日常的に電気という場合、下記のように様々な意味で用いられる。
  ・電荷または電流(例: 「電気が流れる」)  ・電流を流す力(電圧起電力と同義)  ・エネルギーの一種(電力または電力量と同義)  ・電球、または電気を使用した照明器具の俗称(例: 「電気をつける」)  ・電気屋 - 家電製品を販売する店(電器店)。電気そのものを販売しているのは電力会社であるが、一般的にそれを指して言うことはほぼ無い。ただし、電気に携わる研究者ないし技術者が自らを「電気屋」と呼称する事はあり得る。  ・商用電源(電力会社が販売する電力)の俗称
電気と自然界
生理学的効果(詳細は「感電」を参照)
  人間の身体に電圧がかかると細胞に電流が流れ、比例関係にあるわけではないが、電圧が高いほど流れる電流も大きくなる。知覚されるしきい値は供給周波数や電流の流れる経路によって異なるが、知覚されやすい周波数でだいたい0.1mAから1mAである。ただし、条件によっては1μAであっても電気振動を知覚する場合がある。電流が十分強ければ筋肉が収縮し、心臓の筋肉が細動し、熱傷を生じる。
  電気伝導体が帯電しているかどうかは一見しただけではわからないため、電気は一般に危険なものとされている。感電による苦痛は強烈な場合もあるため、電気は拷問の手法にも採用されてきた。感電によって死に至ることもある。死刑の手段として感電を使う電気椅子もあるが、最近ではそういった死刑手段は使われなくなる傾向にある。逆に人工的な電気エネルギーで生体電気現象の復帰を促す治療方法として電気的除細動がある。
自然界における電気現象
  電気は人類の発明品ではなく、自然界にも様々な形で見られ、その代表例が放電現象のである。放電現象には他にセントエルモの火もある。触覚摩擦による静電気化学結合といった巨視的レベルでよく見られる相互作用は、原子スケールでの電場間の相互作用に起因している。地磁気は地球の核を流れる電流で生まれた天然のダイナモによって生じていると考えられている(ダイナモ理論)。石英砂糖のような結晶は、圧力を加えられると電位差を生じる[70]。これを圧電効果と呼び、1880年にピエール・キュリーとジャック・キュリーが発見した。この効果は可逆的で、圧電性のある物質に電圧を印加すると、その形状が微妙に変化する。
  サメ(とくにシュモクザメ)などの生物は電場の変化を知覚し反応する。これを電気受容感覚と呼ぶ。捕食や防御のために自ら電気を発生させる生物もあり、それを生物発電と呼ぶ。例えばデンキウナギ目デンキウナギは筋肉細胞が変化した「発電板」を持ち、高電圧を発生することで獲物を探し麻痺させる。全ての動物は細胞膜に沿って活動電位と呼ばれる電圧パルスを発生させて情報を伝え、神経細胞による神経系によって筋肉まで情報伝達する。感電はこのシステムを刺激し、筋肉を収縮させる。活動電位は特定の植物や動物においてその活動を調整する役目を果たしている。心電図筋電図はそういった神経系の電位差を測定して図示するもので、脳波は脳内の電気活動を間接的に測定して図示するものである。
電気を放つ主な生物
  ・強電気魚  -  ・デンキウナギ デンキナマズ シビレエイ   ・弱電気-・ブラック・ゴースト メガネウオ ・種々のナイフフィッシュ エレファントノーズフィッシュ等の電気魚  ・電気感覚のみを有し電気器官のない電気魚-・ヤツメウナギ 肺魚 サメ(主にシュモクザメチョウザメ) ・エイ ガンギエイ パドルフィッシュ ・例外としてカモノハシ(魚ではないが電気感覚はある)
文化と電気
  19世紀から20世紀初めにかけて、産業が発達していた西洋においても一般大衆にとって電気は日常生活の一部ではなかった。当時の大衆文化では電気を不思議な魔法のような力として描くことが多く、生きものを殺したり、死者を蘇らせたり、自然の法則に反する力を発揮するものとして描かれていた。
  そのような見方は1771年、ルイージ・ガルヴァーニ動物電気を応用して死んだカエルの脚をけいれんさせる実験を行ったことに端を発している。そして、明らかに死んだ人間が電気の刺激で息を吹き返したという話がガルヴァーニの研究のすぐ後に医学誌に報告された。

  『フランケンシュタイン』(1819) を書いたメアリー・シェリーもそれらの話を知っていたが、彼女は怪物を生き返らせた方法について特に固有名詞を挙げていない。電気を使った怪物の復活は後のホラー映画の定番となった。明治時代の日本では1912年に東京市内の家庭電灯がほぼ完全に普及するが、同時に最新の代名詞ともなっており、電気ブランなど電気とは無関係の商品名にも使われた。

  第二次産業革命の生命線として電気が徐々に大衆にもなじみのあるものになっていくと、肯定的に捉えられることが多くなっていった。ラドヤード・キップリングは1907年の詩 Sons of Martha で、電気に関わる技師について "finger death at their gloves' end as they piece and repiece the living wires"(手袋の端で死に触れ、生きたワイヤーを繕う)と記している。
  ジュール・ヴェルヌの作品や《トム・スイフト》ものなどの冒険小説では、電気を動力源とする乗り物が重要な役割を演じた。トーマス・エジソンチャールズ・スタインメッツニコラ・テスラといった科学者も含めて、実在か架空かを問わず電気に精通した人は一般に大衆からは魔法使いのような力を持っているとみなされた
  1950年代には電気は物珍しいものから日常生活に不可欠なものへと変貌し、なんらかの災害が起きたことを示すことの多い「停電」のときだけ注意を惹くようになった。停電がおきないよう電力網を維持している作業員たちはグレン・キャンベルのヒット曲「ウィチタ・ラインマン」 (1968) で無名のヒーローとして歌われている









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