中国の防衛問題-1
2024.09.25-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240925-5FHM3QTBDBM6FNWWGP7SZ2DBAM/
中国、異例のICBM実験公表 対米牽制の意図鮮明に ミサイル、太平洋着弾も
(田中靖人)
中国国防省は25日、
大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発を発射し、太平洋の予定海域に落下したと発表した。
中国が弾道ミサイル実験の実施を公表すること自体が極めて異例。
中国のミサイル実験は最近では主に広大な国土を利用して国内で行われており、太平洋に着弾させるのも珍しい。
台湾情勢を巡って対立する米国を強く牽制(けんせい)する狙いがある。
米本土全体を射程
香港の中国文化研究院のサイトによると、中国は1980年5月、
初のICBMとなる「東風(DF)5」の発射実験に成功した。実験の予定は事前に国営新華社通信を通じて発表された。
DF5は北西部・甘粛省酒泉から発射され、9070キロを飛翔(ひしょう)し、太平洋の公海上の予定海域に着弾した。
DF5は液体燃料型のサイロ固定式ミサイルで、米戦略国際問題研究所(CSIS)によると、射程は1万3000キロ。これにより、中国は旧ソ連の欧州部と米本土への核攻撃能力を獲得した。
ただ、サイロ式のICBMは位置が特定されるため、特に精度の高い米国の先制核攻撃には脆弱(ぜいじゃく)だ。このため、中国は2006年以降、車両移動式で固体燃料型のDF31の配備を開始。CISCによると、DF31は射程7000キロから1万1700キロで現在、改良型のDF31AGが米本土全体を射程に収めているとみられる。
ただ、
DF31は核弾頭は1発しか搭載できない。
単弾頭のミサイルは、米国がアラスカなどに配備する地上配備型弾道ミサイル迎撃ミサイル(GBI)で迎撃される確率が高まる。
多弾頭搭載を想定
中国はDF31の後継となるDF41の発射実験を12年7月に初めて実施した。
DF41は複数の核弾頭が個別に大気圏に再突入するため、ミサイル防衛を突破しやすいとされるMIRV(多弾頭独立目標再突入体)の搭載を想定している。
CSISによると17年までに7回の実験が行われた。2回目の実験では、中国北部・山西省から発射され、西部に着弾したことが確認されているという。
米国防総省の昨年度の報告書は、
中国はDF41を2個旅団まで配備済みとしているが、CSISは現在も開発中だと分析している。このため、
今回の実験は、DF41の可能性がある。
国内で実験を行う理由には、周辺国への刺激を避ける狙いや、ミサイルの能力を探知されることを防ぐ思惑がある。
中国は20年8月、米空母の攻撃を想定した対艦弾道ミサイルDF21Dや米領グアムを射程に収めるDF26とみられる弾道ミサイル4発を南シナ海に着弾させたことが、米国発の情報で明らかになっている。
今回は米国を射程に収めるICBMであることを自ら公表し、
太平洋に着弾させていることから、米国を牽制する意図は極めて明確だといえる。
(田中靖人)
2024.08.19-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20240819-7YFOJHGRMVPWPKLFN7OKUSPMCA/
中国海警局の船、南シナ海でフィリピンの公船と衝突 緊張再燃か「主権を深刻に侵害」
中国海警局は
19日、南シナ海のサビナ礁付近でフィリピン公船が「危険な方法で故意に海警局船に衝突させた」とする報道官談話を発表した。さらに、
同礁近くのアユンギン礁付近の海域にフィリピン公船が不法侵入し、フィリピン軍拠点への補給活動を巡る両国の暫定合意に「違反し、中国の主権を深刻に侵害した」と表明した。
両国間の緊張が再燃する恐れがある。
フィリピン政府は同日、南シナ海で補給任務のため航行していた沿岸警備隊の巡視船2隻が同日、中国海警局の船2隻の「違法で危険な操縦」により3回衝突され、
1隻に約13センチの穴が開くなど損傷を受けたと発表した。
アユンギン礁は、両国が領有権を主張。中国の王毅外相は7月、ラオスでフィリピンのマナロ外相と会談し、暫定合意の順守を確認していた。
7月の暫定合意発表後、両国公船の衝突が明らかになるのは初めて。
(共同)
2024.08.18-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240818-YWUNUI25E5PBRBGJON5EH2NX7M/
中国、尖閣に最も近い海軍基地を拡張 海警船増援 主導権狙う
(有元隆志)
尖閣諸島(沖縄県石垣市)に最も近い中国海軍の玉環基地(浙江省台州)で大型船向けの桟橋の拡張や艦載機用ヘリパッド、特殊部隊の訓練場の整備が進んでいることが、シンクタンク「国家基本問題研究所」
(櫻井よしこ理事長)が行った衛星写真などの分析で分かった。
7月には海警船4隻が同基地で待機する「特異な行動」もあった。
玉環基地は尖閣諸島から345キロ。国基研が独自に入手した衛星写真などを使って分析したところ、
中国軍東部戦区海軍(東海艦隊)と海警局東海海区の基地の整備が並行して進められていることが分かった。
2020年ごろから艦載機用ヘリパッドとみられる施設の建設が始まり21年に完了。
桟橋も18年2月に長さ350メートルだったものが24年5月には1740メートルに延伸された。装甲車などを揚陸艦や貨物船に積載する施設も設置され、5千トン級の大型海警船や中国海軍の揚陸艦が接岸している。
尖閣諸島や台湾への迅速な輸送が可能となる。
海警基地の近くには、海南島の海軍陸戦隊(海兵隊)特殊作戦旅団駐屯地にある
武装障害走訓練場と類似した施設が造られている。
海警の中でも臨検などを担当する特警部隊が駐屯し、訓練を行っている可能性がある。
海警船は尖閣周辺海域に1カ月間常駐する前後に玉環基地に集結する。
任務終了後に玉環島に寄り、母港の舟山基地(浙江省)や上海基地(上海市)に帰港するのが通例だが、7月7日から22日まで海警2101、2102、2103、2501の4隻が玉環島にいた。
尖閣周辺に派遣されている4隻を増援できる態勢を取っていたとみられる。
尖閣周辺に常駐する海警船は6月から全隻が機関砲のようなものを搭載するようになった。日本側も何らかの対抗措置を取る可能性があるとみて待機していた可能性がある。
待機は尖閣諸島に台風が近づいてきたこともあり解除された。
海警局報道官の発言も変化した。
7月10日の海警船2隻の領海侵入を受け、日本側は中国側に厳重に抗議。海警局報道官は11日、「日本側が当該海域での一切の違法行動を直ちに停止することを促す。さもなければ
中国はあらゆる対抗措置を取る権利を留保する」との談話を出した。これまで
「類似事案の再発防止を促す」との
表現を使ってきたが、より強硬な表現となった。
習近平国家主席は昨年11月末、上海市の海警総隊東海海区指揮部を視察し「領土主権と海洋権益を断固として守る」と強調した。習氏は11月中旬には岸田文雄首相と戦略的互恵関係の推進を確認していた。
玉環基地の強化と海警船4隻の待機は、中国が尖閣周辺での主導権の確保を狙っていることの表れといえる。
日本としても海上保安庁と海上自衛隊の一層の連携強化が求められる。
(有元隆志)
2024.06.02-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20240602-7PNC7GPXZFMD3MXJW6FPLZQCW4/
フィリピン兵士が中国海警ボートに銃口向ける 中国メディアがSNSに投稿
南シナ海のアユンギン礁(英語名セカンド・トーマス礁)周辺で
5月19日、フィリピン軍の兵士が軍拠点からライフル銃のようなものを中国海警局のボートに向ける様子を写した動画を、中国メディアが2日に交流サイト(SNS)上に投稿した。
動画には、フィリピン側が航空機から軍拠点となっている老朽艦の上に補給物資を空中投下する様子も収められていた。中国メディアは、海警局が法律に基づき自国管轄海域で権益を守る活動を展開したと報じた。
(共同)
2024.05,20-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240519-4VD2R7PMTROYXHZWANTCS2H4A4/
中国艦の海峡通過3年で2・6倍 増える監視任務と負担 海自ヘリ墜落事故1カ月
(市岡豊大)
中国軍やロシア軍艦艇の軍事活動が活発化し、中国艦艇による日本周辺の海峡通過などの件数が過去3年間で約2・6倍に増えたことが19日、防衛省などの発表資料から分かった。
伊豆諸島の鳥島東方海域で起きた海上自衛隊SH60K哨戒ヘリコプター2機の墜落事故は20日で発生1カ月。
調査で機体に異常がなかったため、人為的要因との見方が強まるが、
警戒任務の増加が部隊に負担を与えている実態も明らかになった。
「墜落事故発生を重く受け止め、陸海空の全自衛隊で航空機の安全管理に万全を期している」。
木原稔防衛相は17日の記者会見で事故発生1カ月を前にこう語った。
防衛省は、中露艦艇が日本周辺で海峡を通過するなどした場合、一定基準を満たせば発表している。その令和3年以降の発表資料を分析したところ、
中国艦艇の海峡通過件数は3年は36件だったが、4年が76件、5年は94件と、年々増加している。
露艦艇は3年の27件から4年が45件、5年は48件。4年2月に始まったウクライナ侵略に関連して増加した可能性もあるとみられる。
中国艦は太平洋への主要ルートとなる沖縄本島と宮古島の間の海域通過が3割超で最も多く、日本海への対馬海峡も次に多かった。領有権を主張する尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での活動や与那国島と台湾、与那国島と西表島の間を通過するケースもあった。
中国は空母での艦載機や艦載ヘリの発着艦訓練を太平洋上で年2回行っていたが、5年は年3回に増やしており、中露共同で射撃訓練などを実施後、日本列島を半周するパターンも年1回みられた。
これに対し、海自は毎回、哨戒ヘリを載せた護衛艦や哨戒機で警戒監視任務に当たる。こうした中、
哨戒ヘリの墜落事故が4月20日深夜に発生。潜水艦を追尾する「対潜戦」の夜間訓練に3機1チームで当たっていたところ、2機が墜落し、乗員1人が死亡、7人が行方不明になった。回収されたフライトレコーダー(飛行記録装置)の初期解析から直前まで機体に異常がなく、衝突により墜落したと断定された。
任務の増加が衝突事故の背景にある可能性はないのか。 海自は慢性的な人員不足に見舞われており、現場に余裕はない状態だとされる。ただ、
海自幹部は「働き方の変化で昔のような無理はできない」と話す。また、海自は部隊の訓練時間を明らかにしていないが、別の幹部は「肌感覚で減っている」とも明かしている。
任務が増える一方、人員や装備が飛躍的に補充されない中、訓練時間が削られ、練度低下を招いている恐れも懸念されている。海自は同型機による単独での訓練飛行を再開したが、練度維持のために「全面再開を急ぎたい」(幹部)考えで、
発生3カ月をめどに事故原因の特定を目指す。
機体いまだ見つからず
発生1カ月となる哨戒ヘリコプター2機の墜落事故で、海上自衛隊は現在も伊豆諸島・鳥島東方海域での捜索活動を続けている。海底に沈んだとみられる機体の主要部分に行方不明7人が閉じ込められている可能性があり、海自は海底のデータ分析を進める。ただ、
過去の事故でも前例のない5500メートルの深海のため特定作業は難航が予想される。
海自は事故現場の海底の状況を調べるため、海洋観測艦「しょうなん」を投入。超音波ソナー(音波探知装置)によって得られたデータを分析し、海底の凹凸の特徴から機体の主要部分を探索している。
ただ、海底が深いほどソナーで得られるデータは不鮮明になるため位置の特定は難しい。探知できなかった場合、海底の捜索範囲を広げ再度データを収集するという。
引き揚げで使用する遠隔操作型無人潜水機(ROV)は5500メートルの水圧に耐える必要があり、
国内の機材では調達困難な見通し。海自は、対応可能なROVの確保に向け、海外への協力要請も視野に検討中。そのため一定の確証を持って探知できるようデータ分析を丁寧に進めている。
一方、海上では海自艦と航空機による捜索が今も行われている。
海自幹部は「家族のためにもやれることは全てやり尽くす」と話している。
(市岡豊大)
2024.05.01-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20240501-6NPKIHNDKVNQNNIMAJJDZHW6BY/
中国3隻目の新型空母「福建」が初試験航行 中国メディアが報道 就役へ最終確認
中国上海市で2022年6月に進水し埠頭で係留されていた中国3隻目の新型空母「福建」が
1日、初の試験航行を始めたと、国営通信新華社が伝えた。
試験航行は空母運用に関する最終確認を目的とし、米情報機関は年内に就役するとの見方を3月に発表していた。
上海海事局は、1~9日に上海から東に約100キロ以上離れた沖合の海域に軍事演習のため航行禁止区域を設定しており、同海域で試験航行を行うとみられる。
(共同)
2024.04.29-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20240429-JBPVFZOXIZNCDIQ5IVD55CQRPA/
中国、モンゴルと軍事演習 今月末から国境付近で
中国国防省は
29日、中国とモンゴルの両陸軍が今月末から5月下旬にかけて両国国境付近のモンゴル側で軍事演習を実施すると発表した。
不法武装集団の活動への対応がテーマで、両軍の戦略的な相互信頼と実務協力を深める狙い。
中国側は各種武器や戦車を装備した部隊をモンゴルに派遣するという。
(共同)
2024.04.20-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20240420-SKG6CBXYSJP55ELJZLPNYSLQ5M/
中国、ミサイル艦公開 海軍創立75周年前に
中国人民解放軍は20日、海軍創立から23日に75周年を迎えるのを前に、
山東省青島市の埠頭に停泊するミサイル駆逐艦「貴陽」「石家荘」や総合補給艦「可可西里湖」、総合潜水艦救難船「洪沢湖」の艦船4隻を一般公開した。貴陽の乗組員は、記者団に「世界一流の海軍建設に向けて努力を怠らない」とアピールした。
貴陽は全長155メートル、排水量7千トンで、130ミリ砲や対艦ミサイル、防空システムなどの装備を備えていると紹介された。乗組員は艦内の食堂にも記者団を案内した。
(共同)
2024.03.21-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20240321-UODJ5XI77VOHHCPB3OJIG5I4IE/
台湾周辺に中国軍延べ32機 中間線越えや防空識別圏進入も 軍艦も活動
台湾国防部(国防省に相当)は
21日、中国の軍用機延べ32機が同日午前6時(日本時間同7時)までの24時間に台湾周辺で活動したと発表した。うち延べ
20機が台湾海峡の暗黙の「休戦ライン」である中間線を越えたり、台湾の防空識別圏に進入したりした。軍艦延べ5隻の活動も確認された。
うち無人機1機が台湾南部を回り込み東部まで飛来した。台湾国防部は「厳しく監視し対処した」と説明した。
(共同)
2023.10.17-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20231017-S7AQGDKY45KKLDCLYIQWRSGGR4/
遺棄兵器の処理加速要求 中国高官、現場を視察
中国の孫衛東外務次官は13日、
旧日本軍が日中戦争の際に遺棄したとされる大量の毒ガス兵器が埋まっている吉林省敦化市ハルバ嶺を訪れ、
廃棄の処理状況を現場視察した。現地で面会した
日本側関係者に「一日も早く化学兵器の害毒を徹底的に取り除くよう要求する」と述べ、
廃棄の処理加速を求めた。中国外務省が16日発表した。
1997年発効の化学兵器禁止条約で、日本に廃棄処理が義務付けられた。日本側関係者は孫氏に
「できるだけ早く遺棄化学兵器の処分を終えられるよう全力を尽くす」と語った。
(共同)
2023.05.23-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230523-H3BGJ2JN5BISFEVDMY57R5OVSY/
<独自>中国海警局、増備大型船の9割が元軍艦 「第2海軍」化加速
尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で活動する中国海警局が令和3~4年に増備した大型船の約9割が、中国海軍の軍艦を改修した転用船とみられることが23日、関係者への取材で分かった。転用船には大型の76ミリ砲を搭載しており、
海警局の「第2海軍」化が加速している実態が浮き彫りとなった。専門家は
「中国海軍の軍艦を海警船に転用することで、大型化と武装化を一気に進める狙いがうかがえる」と指摘している。
海上保安庁によると、千トン級(満載排水量)以上の海警船は3年から4年にかけて
25隻増加したと推定されている。関係者によると、このうち
22隻が中国海軍のフリゲート艦を改修したものとみられる。尖閣周辺では今月1日、
転用船とみられる「海警1108」の航行が初めて確認された。23日も領海外側にある接続水域で航行が確認された。
関係者によると、
海警1108は外観の形状などから「056型コルベット」(江島型近海用護衛艦)を改修した可能性が高い。元海将の伊藤俊幸・金沢工業大虎ノ門大学院教授は
「コルベットは小回りの利く駆逐艦。改修時に武装解除されたとはいえ、76ミリ砲は海保の巡視船の甲板を貫通する能力を持っている」と指摘する。改修時にミサイルシステムなどが取り外されるなど「武装解除」(関係者)されているものの、
大型の76ミリ砲は存置され、電光掲示板などが新たに装備されたとみられるという。
海警局は2018年7月に軍の最高指揮機関、中央軍事委員会の指揮下にある人民武装警察(武警)に編入された。伊藤氏は
「軍艦を新造することで海軍力を増強し、余剰となった軍艦を海警船に回すことで海警局も増強できる。中国側はこの一石二鳥の効果を狙っている」と分析している。
2023.04.24-Yahoo!Japanニュース-https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashikosuke/20230424-00346852
中国、「遼寧」「山東」に続く3隻目の空母「福建」が年内に海上公試も 米軍相手のエリア拒否能力強化急ぐ
「遼寧」「山東」に続く中国空母3隻目の「福建」が推進性能試験を実施した。中国共産党系国際ニュース「グローバルタイムズ」(環球時報)が4月23日、
報じた。
そして、同紙は、「福建」の海上公試が今年中に実施される可能性が高いとの中国の軍事専門家の見方を紹介した。
同紙によると、中国人民解放軍海軍が23日に創設74周年の記念日を迎えたなか、
同軍は「福建」の稼働試験の進捗状況を含む主要な海軍開発プログラムについての最新情報を発表した。その中で、
4隻目以降の空母のさらなる増勢や新型戦闘機の開発計画に加え、1万トン級大型駆逐艦の就役を明らかにした。
同紙は、「福建」が昨年6月17日に進水して以来、海上公試に先立ち、
推進性能と係留の試験を実施し、成功裏に終えたと報じた。海上公試とは、建造された艦船を海上で実際に運航し、要求通りの機能や性能が発揮できるかを確認するために、建造所から発注者に引き渡される前に実施される最終段階での性能試験のことだ。
英軍事週刊誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーによると、「福建」は満載排水量は約8万トンで、45機から50機を艦載できる。海上自衛隊最大のいずも型護衛艦が2万6000トンであることから、かなり大きいことが分かる。
さらに重要なことは、
「福建」が艦上機発進用の電磁式カタパルト(射出機)を初めて採用した中国空母であることだ。具体的には、
発艦装置としてカタパルトを使用する方式のCATOBARシステムが3つ装備されている。これによって、「福建」は一度により多くの戦闘機を最大離陸重量で発進できる。
これに対し、中国1隻目の空母「遼寧」(満載排水量5万8500トン)と2隻目の「山東」(同7万トン)はトン数が少なく、
それぞれの艦上機は約40機に制限されている。また、
「遼寧」と「山東」はカタパルトの補助を受けずに、艦上機が自力で飛行甲板上を滑走して発艦するSTOBARシステムを採用している。そして、その
発艦を支援するためにスキージャンプ台を設置している。STOBARシステムはCATOBARシステムよりも長い滑走距離が必要となるため、航空機の運用効率が低くなり、最大離陸重量も制約されている。
中華民国海軍(台湾海軍)によると、戦闘機1機の離陸重量が12トンを超える場合、「遼寧」と「山東」のSTOBARシステムからは離陸できない。
グローバルタイムズは、中国国営中央テレビ(CCTV)の4月22日の放映を引用し、
中国の広大な海域をカバーするには空母3隻だけではその需要を満たすことができないと主張し、中国がさらに多くの空母を建造することは確実であると述べた。
また、米海軍が11隻の10万トン級の原子力空母を運用していることから、
中国の将来の空母も原子力推進になる可能性があると指摘している。
また、グローバルタイムズは、
空母搭載の艦上機として最新鋭ステルス戦闘機「J-35」、多用途戦闘機J-15の改良型「J-15B」、J-15の電子戦型機「J-15D」、空母艦載用の早期警戒機「KJ-600」を中国がそれぞれ開発中と述べた。そして、
これらの中国軍機が、アメリカ軍のF-35Cステルス戦闘機、F/A-18E/F多用途戦闘機、EA-18G電子戦機、E-2D早期警戒機に匹敵する組み合わせになると強調している。
いずれにせよ、中国は
「空母3隻時代」をアピールし、海洋大国としての地位を確立したいという野望をあらわにしている。2019年3月の第13期全国人民代表大会(全人代)第2回会議では、尹中卿(イン・チュウケイ)全人代財政経済委員会副主任委員が、
中国は「海洋の権利と利益を保護し、海洋の安全を守る」ために強力な海洋力を投射すべきであると提案した。
ただし、世界の海洋大国になるという
中国の願望は、そのエンジン技術によって妨げられている。空母部隊が蒸気エンジンを使用しているため、中国が太平洋とインド洋で空母展開能力を長期間維持できる可能性は低い。
ジェーンズでは、「福建」がディーゼルエンジン機関を搭載する可能性が50%の確率であり得ると分析している。
とは言え、
「福建」は、中国海軍で尖閣諸島(沖縄県石垣市)や台湾周辺海域を管轄する東海艦隊への配備が見込まれている。中国は東シナ海と西太平洋で米空母などが近づけないようにする接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力の強化を急いでいる。「福建」が配備されれば、中国はインド太平洋地域でかつてない打撃力に伴う強い戦力投射能力を持つことになるだろう。
福建 (空母)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
福建(
中国語:
福建 拼音:
Fújiàn)は、
中華人民共和国(中国)の
航空母艦。「
山東」に次いで、2隻目の中国国産空母である。艦番号は18
。2022年6月17日に進水した。
艦名
大連の造船所で建造された中国初の国産空母
山東は前級
遼寧をモデルに改良されたとされ、「001A型」と長らく呼ばれたため、2隻目の国産空母は「002型」になると予想されていた。しかし、実際には「山東」は「001A型」ではなく「002型」と命名されたため、2隻目の国産空母は「003型」になると予想されている。
003型航空母艦は「
福建」と命名された。福建省は
習近平軍事委員会主席が長期間勤務した地である。また
台湾海峡を挟み、
台湾(
中華民国)と接している。
設計
艦体
艦体は全長約315m、幅約78mで、「山東」よりも若干大きく、
アメリカ海軍の「
ジョン・F・ケネディ(初代)」とほぼ同じである。
艦橋は、002型と比較すると前部ブリッジの形状が大きく変更され
ステルス性を考慮した独自設計
[1]である。全長は山東の6割にまで短縮されており、飛行甲板に3機分の空間を確保した。第4層の航海艦橋と第5層の航空管制兼司令艦橋は、前方と左右に大きく突き出ており、視界が確保されている。排気用煙突が隣接しているのにもかかわらずアイランド規模はアメリカのニミッツ級とさほど変わらず、ブリッジコンパクト化のメカニズムについては現在のところ不明な点が多い。しかもネットワーク化の関係上、搭載されるべきレーダー電子機器が他の空母に対して極端に少なく、艦橋の状況については今後大きく変貌することも考えられる。現在のところ「山東」「遼寧」では設置されている後部艦橋が見当たらず実戦配備に向けて今後どのように変化していくかについて注目が集まっている。
機関
本空母は、通常動力型と言われているが、動力源について遼寧、山東と同じく蒸気タービンであるという見方が一般的である一方、電磁カタパルト起動電力確保のためガスタービン搭載およびコジェネレーションシステム、ガスコンバインドシステムを搭載しているという説もある。排水量85,000トンで、
前級と同じく、
J-15(ただしカタパルト使用に対応したJ-15T)を
艦載機とするが、J10の艦載機タイプ
固定翼機早期警戒機や艦載
ステルス機も搭載できる可能性もある。
航空艤装
前級とは異なり、本級は
スキージャンプを廃止して、
電磁式カタパルトを採用した完全な
CATOBAR空母である。当初は蒸気
カタパルトを使用する計画だったが、電磁式カタパルトは蒸気カタパルトとほぼ同時に開発され、本級に乗せる条件も揃っていた。電磁式カタパルトの方が先進的であり、効率性・安全性においても後者より優れている。海軍が検討する必要があるのは、電磁式カタパルトの搭載によって引き起こされる船体・キャビン構造、および他のサブシステムの変化に適応する計画を変更する必要があるかどうかだけだといわれている。電磁カタパルトは、主甲板に2基、アングルド・デッキに1基の計3基
[1]を搭載する
[7][2]。ただし米空母にはアングルデッキにも2基カタパルトが設置されており緊急用も含めて4基カタパルトが設置されている可能性もある。一方で電磁式カタパルトへの変更には軍艦の設計とレイアウトの大規模な変更が伴い、作業量は船体の再設計に匹敵するという。また、十分な電力を確保するためには
原子力推進が欠かせず、
電磁石、大形
コンデンサーといった課題を解決できたのか疑問であるという指摘がある。ただ動力がガスタービン搭載とした場合熱効率の高さからある程度の余剰電力も見込めるので、何らかの新技術が採用された可能性もある。例としては余熱を何回も繰り返し利用するガスコンバイドシステム。このシステムの場合非常に高い発電能力を持つので最新の火力発電所等でも使用されており、またカタパルトについても何らかの形により作動抵抗、電気抵抗を減少させれば蒸気タービンより少ないコスト、構造で運用が可能となる。
熱伝導実験のため中国はかなり大規模な実験場を各地に設置しており、そこにおける研究成果が活用されている可能性はある。
一方着艦装置は、後方に滑り止め塗装を塗装した
アングルド・デッキに
アレスティング・ギアを搭載する。このギアについても当初はほかの国の技術の模倣であったが、初の国産空母山東を建造した際に独自技術として確立された。
エレベーターは、右舷側の艦橋前後に各1基搭載すると予想されている。推定だがエレベーターの寸法は前2級の16mから20mに拡張されていると見られている
[1]。ただエレベーター位置・規模ついても不明なことが多く、3から4基搭載の可能性も捨てきれない。
兵装
本艦の兵装は
001型・
002型と同様の構成になると見られており、
1130型CIWS3基と
HHQ-10艦対空ミサイル18連装発射機4基となる可能性がある。ただし1130型CIWSはレーダー・センサーを新型にしたものが採用されている模様である。
「遼寧」「山東」に搭載されていた対潜ロケット発射機は搭載していない。また、新開発の中距離艦対空ミサイル左舷後方に搭載するという情報がある。
艦載機
艦載機の搭載能力は一般的には合計50機と推定されるが、艦の規模がニミッツ級とさほど変わらないことから80機とする説もあり、諸説の見方によりかなりのバラツキがある。
艦上機として、前2級にも搭載されている
J-15が予定されているが、J-15はカタパルトに対応していないため、対応できるJ-15Tの開発が進められている。合わせて、
J-31(FC-31)を開発した
瀋陽飛機工業集団が開発中の情報がある、新型艦上戦闘機J-35の搭載も可能とされている。
艦載機が
J-31(FC-31)とした場合機体の全長は
J-15より短くなるので当然搭載機数は増加すると予想される。ただ現状でも機体長は別として主翼を折り畳んだ場合
J-15でもラファールとさほど変わらない機体幅になるので一般的に言われているよりかなり多くの機数を搭載できているという説もあり、真の搭載機数については遼寧・山東も含め推定するほかないのが実情である。
早期警戒機として、前2級は能力が限定される
Ka-31ヘリコプターを搭載したが、電磁式カタパルトを搭載した本級は、
Y-7をベースにした
KJ-600早期警戒機を搭載する予定である。
艦載ヘリコプターは、開発中の
Z-18や
Y-20の搭載も予定されている。
ただ空母上における固定翼機の早期警戒機については米・仏海軍しか運用しておらず、英海軍でもクイーンエリザベス級上における運用を見送っていることから、運用方法・機種について注目が集まっている。KJ-600
の場合機体幅は20m以上と空母甲板上で運用するには過大であり、機体規模についてより縮小された新しい機種が採用されることが予想される。
艦歴
進水
本艦はもともと2022年4月下旬頃に進水されると観測されていたが、上海市の
新型コロナウイルス蔓延に伴う
ロックダウンを受けて遅延していた。同年6月17日午前に正式に進水した。進水式では、電磁式カタパルト部分と思われる艦首2列とアングルドデッキ1列にテントが設置されていた。
比較表