中国の防衛問題-1
2023.05.23-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230523-H3BGJ2JN5BISFEVDMY57R5OVSY/
<独自>中国海警局、増備大型船の9割が元軍艦 「第2海軍」化加速
尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で活動する中国海警局が令和3~4年に増備した大型船の約9割が、中国海軍の軍艦を改修した転用船とみられることが23日、関係者への取材で分かった。転用船には大型の76ミリ砲を搭載しており、
海警局の「第2海軍」化が加速している実態が浮き彫りとなった。専門家は
「中国海軍の軍艦を海警船に転用することで、大型化と武装化を一気に進める狙いがうかがえる」と指摘している。
海上保安庁によると、千トン級(満載排水量)以上の海警船は3年から4年にかけて
25隻増加したと推定されている。関係者によると、このうち
22隻が中国海軍のフリゲート艦を改修したものとみられる。尖閣周辺では今月1日、
転用船とみられる「海警1108」の航行が初めて確認された。23日も領海外側にある接続水域で航行が確認された。
関係者によると、
海警1108は外観の形状などから「056型コルベット」(江島型近海用護衛艦)を改修した可能性が高い。元海将の伊藤俊幸・金沢工業大虎ノ門大学院教授は
「コルベットは小回りの利く駆逐艦。改修時に武装解除されたとはいえ、76ミリ砲は海保の巡視船の甲板を貫通する能力を持っている」と指摘する。改修時にミサイルシステムなどが取り外されるなど「武装解除」(関係者)されているものの、
大型の76ミリ砲は存置され、電光掲示板などが新たに装備されたとみられるという。
海警局は2018年7月に軍の最高指揮機関、中央軍事委員会の指揮下にある人民武装警察(武警)に編入された。伊藤氏は
「軍艦を新造することで海軍力を増強し、余剰となった軍艦を海警船に回すことで海警局も増強できる。中国側はこの一石二鳥の効果を狙っている」と分析している。
2023.04.24-Yahoo!Japanニュース-https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashikosuke/20230424-00346852
中国、「遼寧」「山東」に続く3隻目の空母「福建」が年内に海上公試も 米軍相手のエリア拒否能力強化急ぐ
「遼寧」「山東」に続く中国空母3隻目の「福建」が推進性能試験を実施した。中国共産党系国際ニュース「グローバルタイムズ」(環球時報)が4月23日、
報じた。
そして、同紙は、「福建」の海上公試が今年中に実施される可能性が高いとの中国の軍事専門家の見方を紹介した。
同紙によると、中国人民解放軍海軍が23日に創設74周年の記念日を迎えたなか、
同軍は「福建」の稼働試験の進捗状況を含む主要な海軍開発プログラムについての最新情報を発表した。その中で、
4隻目以降の空母のさらなる増勢や新型戦闘機の開発計画に加え、1万トン級大型駆逐艦の就役を明らかにした。
同紙は、「福建」が昨年6月17日に進水して以来、海上公試に先立ち、
推進性能と係留の試験を実施し、成功裏に終えたと報じた。海上公試とは、建造された艦船を海上で実際に運航し、要求通りの機能や性能が発揮できるかを確認するために、建造所から発注者に引き渡される前に実施される最終段階での性能試験のことだ。
英軍事週刊誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーによると、「福建」は満載排水量は約8万トンで、45機から50機を艦載できる。海上自衛隊最大のいずも型護衛艦が2万6000トンであることから、かなり大きいことが分かる。
さらに重要なことは、
「福建」が艦上機発進用の電磁式カタパルト(射出機)を初めて採用した中国空母であることだ。具体的には、
発艦装置としてカタパルトを使用する方式のCATOBARシステムが3つ装備されている。これによって、「福建」は一度により多くの戦闘機を最大離陸重量で発進できる。
これに対し、中国1隻目の空母「遼寧」(満載排水量5万8500トン)と2隻目の「山東」(同7万トン)はトン数が少なく、
それぞれの艦上機は約40機に制限されている。また、
「遼寧」と「山東」はカタパルトの補助を受けずに、艦上機が自力で飛行甲板上を滑走して発艦するSTOBARシステムを採用している。そして、その
発艦を支援するためにスキージャンプ台を設置している。STOBARシステムはCATOBARシステムよりも長い滑走距離が必要となるため、航空機の運用効率が低くなり、最大離陸重量も制約されている。
中華民国海軍(台湾海軍)によると、戦闘機1機の離陸重量が12トンを超える場合、「遼寧」と「山東」のSTOBARシステムからは離陸できない。
グローバルタイムズは、中国国営中央テレビ(CCTV)の4月22日の放映を引用し、
中国の広大な海域をカバーするには空母3隻だけではその需要を満たすことができないと主張し、中国がさらに多くの空母を建造することは確実であると述べた。
また、米海軍が11隻の10万トン級の原子力空母を運用していることから、
中国の将来の空母も原子力推進になる可能性があると指摘している。
また、グローバルタイムズは、
空母搭載の艦上機として最新鋭ステルス戦闘機「J-35」、多用途戦闘機J-15の改良型「J-15B」、J-15の電子戦型機「J-15D」、空母艦載用の早期警戒機「KJ-600」を中国がそれぞれ開発中と述べた。そして、
これらの中国軍機が、アメリカ軍のF-35Cステルス戦闘機、F/A-18E/F多用途戦闘機、EA-18G電子戦機、E-2D早期警戒機に匹敵する組み合わせになると強調している。
いずれにせよ、中国は
「空母3隻時代」をアピールし、海洋大国としての地位を確立したいという野望をあらわにしている。2019年3月の第13期全国人民代表大会(全人代)第2回会議では、尹中卿(イン・チュウケイ)全人代財政経済委員会副主任委員が、
中国は「海洋の権利と利益を保護し、海洋の安全を守る」ために強力な海洋力を投射すべきであると提案した。
ただし、世界の海洋大国になるという
中国の願望は、そのエンジン技術によって妨げられている。空母部隊が蒸気エンジンを使用しているため、中国が太平洋とインド洋で空母展開能力を長期間維持できる可能性は低い。
ジェーンズでは、「福建」がディーゼルエンジン機関を搭載する可能性が50%の確率であり得ると分析している。
とは言え、
「福建」は、中国海軍で尖閣諸島(沖縄県石垣市)や台湾周辺海域を管轄する東海艦隊への配備が見込まれている。中国は東シナ海と西太平洋で米空母などが近づけないようにする接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力の強化を急いでいる。「福建」が配備されれば、中国はインド太平洋地域でかつてない打撃力に伴う強い戦力投射能力を持つことになるだろう。
福建 (空母)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
福建(
中国語:
福建 拼音:
Fújiàn)は、
中華人民共和国(中国)の
航空母艦。「
山東」に次いで、2隻目の中国国産空母である。艦番号は18
。2022年6月17日に進水した。
艦名
大連の造船所で建造された中国初の国産空母
山東は前級
遼寧をモデルに改良されたとされ、「001A型」と長らく呼ばれたため、2隻目の国産空母は「002型」になると予想されていた。しかし、実際には「山東」は「001A型」ではなく「002型」と命名されたため、2隻目の国産空母は「003型」になると予想されている。
003型航空母艦は「
福建」と命名された。福建省は
習近平軍事委員会主席が長期間勤務した地である。また
台湾海峡を挟み、
台湾(
中華民国)と接している。
設計
艦体
艦体は全長約315m、幅約78mで、「山東」よりも若干大きく、
アメリカ海軍の「
ジョン・F・ケネディ(初代)」とほぼ同じである。
艦橋は、002型と比較すると前部ブリッジの形状が大きく変更され
ステルス性を考慮した独自設計
[1]である。全長は山東の6割にまで短縮されており、飛行甲板に3機分の空間を確保した。第4層の航海艦橋と第5層の航空管制兼司令艦橋は、前方と左右に大きく突き出ており、視界が確保されている。排気用煙突が隣接しているのにもかかわらずアイランド規模はアメリカのニミッツ級とさほど変わらず、ブリッジコンパクト化のメカニズムについては現在のところ不明な点が多い。しかもネットワーク化の関係上、搭載されるべきレーダー電子機器が他の空母に対して極端に少なく、艦橋の状況については今後大きく変貌することも考えられる。現在のところ「山東」「遼寧」では設置されている後部艦橋が見当たらず実戦配備に向けて今後どのように変化していくかについて注目が集まっている。
機関
本空母は、通常動力型と言われているが、動力源について遼寧、山東と同じく蒸気タービンであるという見方が一般的である一方、電磁カタパルト起動電力確保のためガスタービン搭載およびコジェネレーションシステム、ガスコンバインドシステムを搭載しているという説もある。排水量85,000トンで、
前級と同じく、
J-15(ただしカタパルト使用に対応したJ-15T)を
艦載機とするが、J10の艦載機タイプ
固定翼機早期警戒機や艦載
ステルス機も搭載できる可能性もある。
航空艤装
前級とは異なり、本級は
スキージャンプを廃止して、
電磁式カタパルトを採用した完全な
CATOBAR空母である。当初は蒸気
カタパルトを使用する計画だったが、電磁式カタパルトは蒸気カタパルトとほぼ同時に開発され、本級に乗せる条件も揃っていた。電磁式カタパルトの方が先進的であり、効率性・安全性においても後者より優れている。海軍が検討する必要があるのは、電磁式カタパルトの搭載によって引き起こされる船体・キャビン構造、および他のサブシステムの変化に適応する計画を変更する必要があるかどうかだけだといわれている。電磁カタパルトは、主甲板に2基、アングルド・デッキに1基の計3基
[1]を搭載する
[7][2]。ただし米空母にはアングルデッキにも2基カタパルトが設置されており緊急用も含めて4基カタパルトが設置されている可能性もある。一方で電磁式カタパルトへの変更には軍艦の設計とレイアウトの大規模な変更が伴い、作業量は船体の再設計に匹敵するという。また、十分な電力を確保するためには
原子力推進が欠かせず、
電磁石、大形
コンデンサーといった課題を解決できたのか疑問であるという指摘がある。ただ動力がガスタービン搭載とした場合熱効率の高さからある程度の余剰電力も見込めるので、何らかの新技術が採用された可能性もある。例としては余熱を何回も繰り返し利用するガスコンバイドシステム。このシステムの場合非常に高い発電能力を持つので最新の火力発電所等でも使用されており、またカタパルトについても何らかの形により作動抵抗、電気抵抗を減少させれば蒸気タービンより少ないコスト、構造で運用が可能となる。
熱伝導実験のため中国はかなり大規模な実験場を各地に設置しており、そこにおける研究成果が活用されている可能性はある。
一方着艦装置は、後方に滑り止め塗装を塗装した
アングルド・デッキに
アレスティング・ギアを搭載する。このギアについても当初はほかの国の技術の模倣であったが、初の国産空母山東を建造した際に独自技術として確立された。
エレベーターは、右舷側の艦橋前後に各1基搭載すると予想されている。推定だがエレベーターの寸法は前2級の16mから20mに拡張されていると見られている
[1]。ただエレベーター位置・規模ついても不明なことが多く、3から4基搭載の可能性も捨てきれない。
兵装
本艦の兵装は
001型・
002型と同様の構成になると見られており、
1130型CIWS3基と
HHQ-10艦対空ミサイル18連装発射機4基となる可能性がある。ただし1130型CIWSはレーダー・センサーを新型にしたものが採用されている模様である。
「遼寧」「山東」に搭載されていた対潜ロケット発射機は搭載していない。また、新開発の中距離艦対空ミサイル左舷後方に搭載するという情報がある。
艦載機
艦載機の搭載能力は一般的には合計50機と推定されるが、艦の規模がニミッツ級とさほど変わらないことから80機とする説もあり、諸説の見方によりかなりのバラツキがある。
艦上機として、前2級にも搭載されている
J-15が予定されているが、J-15はカタパルトに対応していないため、対応できるJ-15Tの開発が進められている。合わせて、
J-31(FC-31)を開発した
瀋陽飛機工業集団が開発中の情報がある、新型艦上戦闘機J-35の搭載も可能とされている。
艦載機が
J-31(FC-31)とした場合機体の全長は
J-15より短くなるので当然搭載機数は増加すると予想される。ただ現状でも機体長は別として主翼を折り畳んだ場合
J-15でもラファールとさほど変わらない機体幅になるので一般的に言われているよりかなり多くの機数を搭載できているという説もあり、真の搭載機数については遼寧・山東も含め推定するほかないのが実情である。
早期警戒機として、前2級は能力が限定される
Ka-31ヘリコプターを搭載したが、電磁式カタパルトを搭載した本級は、
Y-7をベースにした
KJ-600早期警戒機を搭載する予定である。
艦載ヘリコプターは、開発中の
Z-18や
Y-20の搭載も予定されている。
ただ空母上における固定翼機の早期警戒機については米・仏海軍しか運用しておらず、英海軍でもクイーンエリザベス級上における運用を見送っていることから、運用方法・機種について注目が集まっている。KJ-600
の場合機体幅は20m以上と空母甲板上で運用するには過大であり、機体規模についてより縮小された新しい機種が採用されることが予想される。
艦歴
進水
本艦はもともと2022年4月下旬頃に進水されると観測されていたが、上海市の
新型コロナウイルス蔓延に伴う
ロックダウンを受けて遅延していた。同年6月17日午前に正式に進水した。進水式では、電磁式カタパルト部分と思われる艦首2列とアングルドデッキ1列にテントが設置されていた。
比較表