亡命問題-1



2021.08.06-BBC news Japan-https://www.bbc.com/japanese/58109922
【東京五輪】 「帰国は危険」、祖母からの電話で亡命決断 ベラルーシ女子陸上選手

  東京オリンピックのために来日したものの、強制帰国を拒否してポーランドに亡命した、東欧ベラルーシのクリスティナ・ティマノフスカヤ選手(24)5日、祖母から電話で、帰国するのは危険だと告げられて亡命を決断したと明らかにした。

  ティマノフスカヤ選手は、代表チームの運営について不満を公言した後、コーチらに強制帰国させられそうになったが、出国を拒否。身の安全に不安があると羽田空港の空港警察に保護を求め、出国便に搭乗しなかった。その後ポーランドに亡命した。

  同選手は、強制帰国のために車で空港へ連れていかれる途中、祖母から電話で「帰国してはいけない」と言われたと、BBCに述べた。地元での報道を見た祖母から、何か良くないことが起きるのではないか心配だと告げられたという。
  「(祖母が私に帰国しない方がいいと言うなんて)信じられなかったが、『本気で言ってる?』と聞くと、『ええ、本気よ。帰国してはいけない』と言われた」
  「それが警察に助けを求めた理由です」羽田空港に到着すると、携帯電話の翻訳アプリを使い、助けを求めるメッセージを警官に見せた。その後、ポーランド政府が保護を申し出たため、東京都内のポーランド大使館に入った。
  ポーランド政府はティマノフスカヤ選手に人道査証(ビザ)を発給。選手は4午前に成田空港を出発し、ウィーンを経由して現地時間4日午後、亡命先のポーランドに到着した

  ティマノフスカヤ選手は、2日の女子200メートル走に出場する予定だった。しかし、一部の選手に出場資格がないことが分かり、5日に予定される400メートルリレーに出場するよう急きょ指示されたことについて、インスタグラムで不満を述べた。
  この動画が投稿されると、ベラルーシの国営メディアはティマノフスカヤ選手を批判。国営テレビONTは、選手に「チーム精神」が欠けていると非難した。
  ティマノフスカヤ選手は、代表チームのコーチたちが1日に自分の部屋にやってきて、すぐに荷造りをするよう言われたとしている。また、けがをしたと言うよう指示されたという。
  ベラルーシ当局は、ティマノフスカヤ選手をチームから外したのは「感情や精神の状態」が理由だとしている。しかしティマノフスカヤ選手はこうした問題はないと否定している。
政治とは無関係と
  今回の亡命をきっかけに、1994年の就任以来、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領が実権を握ってきたベラルーシに再び注目が集まっている。
  昨年には、ルカシェンコ氏の再選に抗議する大規模な抗議デモが起き、治安部隊は暴力的にデモを鎮圧。数千人が逮捕された。
  抗議者の中には国を代表するアスリートも含まれ、資金調達源を絶たれたり、代表チームから外されたり、拘束されるなどした。
  しかしティマノフスカヤ選手は、自分は「政治的な子ではない」と強調。スポーツ選手としてのキャリアに集中したいだけだとしている。「私は政治については何も知らない。1度も政治に関わったことがないので」
  ティマノフスカヤ選手はBBCの取材に対し、ベラルーシに戻りたいが、今は危険すぎると述べた。夫のアルセニー・ズダネヴィッチ氏はすでに、ウクライナの首都キーウ(キエフ)へ脱出。ポーランド行きのビザも取得している。ただ、同選手の親族はベラルーシ国内にとどまっている

  ティマノフスカヤ選手の両親は「大丈夫だが、すこし不安」で、娘に関するテレビ報道を見ないようにしているという。「両親は私のことを理解しているし、真実を知っている。何が起こったのかを知っている」。ティマノフスカヤ選手は、世界中の人々からの支援が自分を強くしてくれたと付け加えた。ベラルーシへの希望を聞かれると、「この国の人たちにはもう恐れてほしくない」と述べた。
  ティマノフスカヤ選手の件とは別にベラルーシでは4日、野党指導者マリア・コレスニコワ氏らに対する裁判が始まった。当局はコレスニコワ氏らを、国家安全保障を損なう目的で群衆を扇動したとして訴追している。

  隣国ウクライナでは3日、ベラルーシからの亡命者を支援していたベラルーシ人活動家ヴィタリー・シショフ氏が首都キーウ(キエフ)で行方が分からなくなった後、遺体で発見されたシショフ氏はベラルーシからの亡命者をウクライナで支援する団体のリーダーだった。


2021.08.02-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210802/k10013176541000.html
オリンピック 亡命希望ベラルーシ選手 ポーランドが受け入れへ

  東京オリンピックに出場するために来日し、1日に第三国への亡命を希望したベラルーシの陸上選手について、ポーランドが亡命を受け入れることが関係者への取材で分かりました。選手はNHKの取材に対し「SNSへの書き込みをめぐり政権批判だとして強制送還されそうになった」と話しています。
  亡命を希望しているのは、陸上女子のベラルーシ代表、クリスチナ・チマノウスカヤ選手(24)です。

  チマノウスカヤ選手は1日夜、東京の羽田空港で警察官などに対し「自分の国に帰りたくない」としてヨーロッパの別の国に亡命したいという希望を伝え、大会の組織委員会や関係機関が本人から話を聞くなどして詳しい状況を確認し、調整を進めていました。
  関係者によりますと、チマノウスカヤ選手はベラルーシの隣国のポーランドへの亡命を希望し、ポーランドも受け入れることを明らかにしたということです。
  東京 目黒区のポーランド大使館には、午後5時ごろ、本人を乗せた車が到着し、チマノウスカヤ選手は歩いて建物の中に入りました。
  チマノウスカヤ選手はこれまでのNHKの取材に対して「もともと予定していなかった種目にほかの選手に代わって出場するよう指示され、不満をSNSに書き込んだところ『政権批判だ』として強制送還されそうになった」などと話しています。
  ベラルーシではルカシェンコ政権に批判的な人物への弾圧が強まっていて、欧米などからは批判が高まっています。
ベラルーシのオリンピック委員会 コメントを掲載
  チマノウスカヤ選手の処遇について、ベラルーシのオリンピック委員会はホームページ上にコメントを掲載しています。
  この中では「陸上のナショナルチームのコーチ陣は、チマノウスカヤ選手の感情や心理状態に関する医師のアドバイスに基づき、大会から退かせることを決めた。その結果、200メートルと4×400メートルリレーの予選には参加しないことになった」と説明しています。
ポーランド政府 ベラルーシ反政権派を支援する姿勢示す
  ポーランドはベラルーシの西の隣国で、ベラルーシのルカシェンコ政権の弾圧から逃れる反政権派の人々やジャーナリストらが集まり、情報を発信する場にもなっています。

  ポーランド政府は、こうした人々を積極的に支援する姿勢を示しています。
  去年8月に行われたベラルーシの大統領選挙のあと、不正を訴えて抗議活動を行う市民と治安部隊が衝突するなどして死傷者が出る事態になった際には、ポーランドのモラウィエツキ首相がベラルーシの当局は改革を求める市民に武力を行使した。自由を求める人々を支持すべきだ」と述べて、ルカシェンコ政権を批判しています。
  今回の事態を受けて、ポーランドのプシダチ外務次官はみずからのツイッターで、チマノウスカヤ選手がポーランドへの亡命を希望すれば受け入れる用意があると表明していました。
ルカシェンコ大統領「メダルない なぜ勝てないのか」
  ベラルーシのルカシェンコ大統領は先月29日、政府内の会議で「私たちにはメダルがない。なぜ勝てないのか」と述べ、ベラルーシがその時点でメダルをとれていないと不満を表していました。
  そして「アフリカの国々などの選手はオリンピックで、勝てばすべてを手に入れられるが、負ければすべてを失う」と述べ、ベラルーシの代表団にはハングリー精神がないと指摘したうえで「責任を問われるべきはまずコーチにある」としったしていました。
  ルカシェンコ大統領は、自国のオリンピック委員会の会長にみずからの長男を就任させていて、今回の大統領の発言と合わせて、コーチなどにはメダル獲得へのプレッシャーがあったとみられます。

  一方、ベラルーシの国営通信社は、チマノウスカヤ選手について「非常識な行為をとり、国民の間に怒りを引き起こしている」として、国民の声だとするインタビューを動画で掲載しています。
  この中で議員だという男性は「ベラルーシの人たちやアスリートへの裏切りだ。政治的に計画された行動だった可能性も否定できない」と述べています。
  また、陸上競技の関係者も「競技の発展につながらず、国のイメージを高めることにもなっていない」と述べていて、ルカシェンコ政権としては、国民に向けて、チマノウスカヤ選手の行為が国家への裏切りだと印象づけたいねらいがあるとみられます。反政権派 チハノフスカヤ氏 政権側の対応を非難
  陸上女子のベラルーシ代表、チマノウスカヤ選手が第三国への亡命を希望していることに関連して、ベラルーシのルカシェンコ大統領の退陣を求めて抗議活動を続ける反政権派のチハノフスカヤ氏は、SNSの「テレグラム」で「オリンピックに送り出されたベラルーシの選手は誰であれ、勇気を出してことばを発すれば人質になる可能性があることを示していると書き込み政権側の対応を非難しました

  一方、「チマノウスカヤ選手は今は安全な状況だ」としたうえで「IOC=国際オリンピック委員会と日本の当局の迅速な対応や本人に亡命の受け入れを申し出てくれた国々に感謝する」と述べました。







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