ボーイング問題


2019.12.24-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191223/k10012226201000.html
米ボーイングCEOが辞任 経営責任で事実上の解任か

2度の墜落事故を起こし、事故機と同型機の運航再開が見通せなくなっているアメリカ航空機大手のボーイングは23日、経営トップのマレンバーグCEO=最高経営責任者が辞任したと発表しました。ボーイングは辞任の理由を「安全当局などとの関係を再構築するため」としていて、経営責任をとっての事実上の解任と見られています。
  ボーイングの発表によりますとマレンバーグCEOは23日に辞任し、来月13日に今の会長が新たなCEOに就任します。
  辞任の理由についてボーイングは「リーダーシップの転換が必要で、経営を立て直し、安全当局や利用者との関係を再構築するためだ」としていて、経営責任をとっての事実上の解任と見られています。
  ボーイングは、去年10月とことし3月に墜落事故を起こした最新の旅客機737MAXの運航が中止されるなか、ことしの業績は最高益を記録した去年から一転して、大幅な悪化が避けられない見通しです。
  さらに、ボーイング側が737MAXを来年早々には運航再開させたいという見通しを示したのに対し、安全当局のトップは議会証言で「時期は決まっていない」と述べるなど、当局との調整の不調も指摘されていました。
  ボーイングでは、来年から737MAXの生産を停止する予定ですが、影響はアメリカ経済全体に及ぶという見方も出ています。


2019.12.17-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191217/k10012217611000.html?utm_int=detail_contents_tokushu-business_001
ボーイング “もん絶”する巨大企業【追記・再掲】

アメリカを代表する巨大企業が、あえいでいる。去年10月、そして3月と、主力の旅客機が2度の墜落事故を起こしたボーイングは、同型機の運航停止、そして生産見合わせが続き、ことしの業績さえ見通せない状況だ。対応が後手に回ったのではないのか。議会証言に立った経営トップは何を語ったのか。その議会証言を見た筆者は、ある光景を思い出す。(アメリカ総局記者 野口修司)

好調だったはずの業績が…
売り上げ1011億ドル(10兆9000億円)、純利益104億ドル(1兆1200億円)。去年のボーイングの通期決算は過去最高をたたき出した。ことし1月の決算発表の際、最高経営責任者のマレンバーグCEOは、こうコメントしている。
マレンバーグCEO
「18年は売り上げ・利益とも過去最高を記録し、世界の航空宇宙産業におけるリーダーとしての地位をさらに高めることができた。全社にわたってすばらしい業績を達成し、お客様重視の姿勢を示すことができた」

この時は、すでにインドネシアで最初の墜落事故が起きた(18年10月29日)あとだ。最新鋭の旅客機「737MAX」の事故…。3月にはエチオピアで再び墜落し、死者は合わせて346人。しかし、この1月の決算発表では「19年の業績はさらに最高を更新」と見通していた。

その決算発表から、9か月…。巨大産業は、いま、“もん絶”のさなかにある。なんと言っても、墜落事故を起こした「737MAX」が新型の主力旅客機であったことが大きかった。
インドネシアの事故調査結果(10月25日発表)では、機体の傾きを制御する『MCAS』と呼ばれるシステムの不具合が事故につながったのではと指摘された。
  MCASをめぐっては、事故直後から、さまざま報道がなされていた。「パイロットが手動で機体の傾きを戻そうとしても、MCASが自動的に(勝手に)間違った傾きに戻していた」というものだ。要は、設計上の問題、ということになる(一部ではパイロットの経験不足という指摘も出ている)。
  航空会社が、「737MAX」の運航を中止。注文のキャンセルも続出。ほどなくボーイングは減産を余儀なくされ、それが今も続いている。
旅客機という「在庫」
ことし3月のエチオピアでの事故の直後、ボーイングは記者会見を開くとともに、737MAXの工場(西部ワシントン州レントン)を報道陣に公開した。運よく取材に加わることができたが、間近に見た737MAXは“小型”とはいえ、やはり大きく、そう簡単に「作り置き」はできない。在庫は抱えられないのだ。
  工場内には、製造途中の機体が並び、尾翼には世界各国の航空会社のロゴがついていたが、「これが空を飛ぶまでには、まだ時間がかかるだろうな」と感じたのは、直前の記者会見が有意義ではなかったから、だけではない。
  「過去最高更新」を見込んでいたことしの業績は、見る影もなく、航空各社への補償などで第2四半期(4~6月期)は、最終赤字に転落。株価は、2月末につけた439ドルから10月末には339ドルまで下落した。
  金融各社が、「ボーイングの目標株価」を大幅に落としたこともあったが、後述する新たな疑惑に加え、私には「対応のまずさ、遅れ」があったように感じられてならない。
議会で“グリル”される
それから7か月。10月29日、30日の2日間、マレンバーグCEOは、アメリカ議会の上院・下院で相次いで証言することになる。
マレンバーグ氏の後ろには、遺影を手にした多くの遺族。この日(29日)は、ちょうど1年前、インドネシアでの事故が起きた日にあたるが、それにしても、証言席との「距離」が近い。これを「演出」とは思いたくないが、強烈な印象を与え、議員の口調も自然と強まっていく。
  今回のような議会でのやり取りを、英語では「Grill」と表現することがある。
  「マレンバーグ氏はグリルされた」
言い得て妙である。(ちょうど同じ時期に行われた、フェイスブックのザッカーバーグCEOの時も「Grill」を使っていた)
  10月の事故直後に、日本円で16億円というボーナスを受け取っていたことも、まさに「火に油を注いだ」のは想像に難くない(ことしのボーナスは受け取りを辞退した)。私はニューヨークにいて、インターネットでこの証言を見ていた。
  マレンバーグCEOは、なるべく表情を変えずに淡々と答弁することに徹しているように見えた。上院で2時間半、下院は4時間を超えた。
  実は、議会証言直前の10月25日の金曜日。アメリカのメディアは一斉に、「ボーイングがMCASのシステムの不備を2016年11月の時点で把握していたのに、航空当局に報告していなかった」と報じていた。日本でもよくあるが、“はかった”ようなタイミングである。
  16年の11月に、ボーイングのチーフ・テクニカル・パイロットが同僚に宛てたメールで、「(MCASは)言うことをきいてくれない。でも、(航空当局に)ちゃんと報告しなかったよ」と漏らしていたというのだ。
  議員たちの注目も、当然、ここに集まる。
  マレンバーグCEOは、なるべく表情を変えずに淡々と答弁することに徹しているように見えた。上院で2時間半、下院は4時間を超えた。
  実は、議会証言直前の10月25日の金曜日。アメリカのメディアは一斉に、「ボーイングがMCASのシステムの不備を2016年11月の時点で把握していたのに、航空当局に報告していなかった」と報じていた。日本でもよくあるが、“はかった”ようなタイミングである。
  16年の11月に、ボーイングのチーフ・テクニカル・パイロットが同僚に宛てたメールで、「(MCASは)言うことをきいてくれない。でも、(航空当局に)ちゃんと報告しなかったよ」と漏らしていたというのだ。
  議員たちの注目も、当然、ここに集まる。
「議会の中だけ」な感じ
ちょっと脇道にそれるが、証言の様子を見ながら、ふと思い出したのが、大規模リコールをめぐる、2010年2月のトヨタ自動車の豊田章男社長の議会証言だ。
  アクセルの急加速による死亡事故や重傷事故をきっかけに、2009年暮れから“トヨタ・バッシング”が全米で起き、大規模リコールにも発展。翌年2月には豊田社長が議会の公聴会で証言することになる。当時、私はロンドン支局特派員だったのだが、この問題にはちょっとした因縁もあって(字数もあるのでは詳細は省くが)よく覚えている。
  現在もニューヨークで働くNHKのスタッフに聞いてみると、「あの時は、ほぼすべてのTVが中継していた。その後の豊田社長の工場訪問まで中継カメラが追っかけていたし、連日、『これでもか』という報道ぶりだった」という。
  相次いで(集団)訴訟も起こされ、「アクセルの不具合が事故原因」と断定されなかったのに、訴訟の長期化を避ける必要もあって、巨額の和解金を支払う例もあった。売り上げや、ブランドイメージへの打撃も、半端ではなかったはずだ。
  と、顔を上げて、TVを見てみた。ボーイングの議会証言を中継しているのは、経済ニュース専門チャンネルのみ。かなり厳しい口調で問い詰める議員もいたが、「議会の中だけ」な感じ。
  私は、トヨタの時との「圧倒的なギャップ」を感じるとともに、「ボーイングはアメリカの基幹産業」ということも頭に浮かんだりした。
“もん絶”は、いつまで
ヨーロッパのエアバスと覇権争いをするボーイングには、世界で15万人の従業員がいる。謝罪と後悔の念を口にしたマレンバーグCEOは、それでも「737MAXの年内運航再開」を目指すと言う。
  そして11月11日には、「来年1月には運航再開できるだろう」と発表した。航空当局との調整も進み、議会証言という“手続き”も終えた、ということだろうか。私は、まだ、“もん絶”は続くと見ているが。
  幸い、737MAXは日本では飛んでいない。ただ、売り上げ10兆円超の「巨艦企業」の経営は、すそ野も広く、影響は大きい。
  車と違い、搭乗する航空機は「ほぼ選べない」からこそ、内外を納得させられるような対応をどう進めていくのか、注目していきたいと思う。
手続きは進んでいなかった!?
それに呼応して、16日にボーイングは「737MAXの生産を1月から停止する」と発表。すでに納入を控えた機体はおよそ400機に及ぶ。これは「抱えた在庫」だ。
  それも、特別、大きい在庫…。ボーイングが見込んでいた来年早々の商業運航再開は、水泡に帰した。
ことしの業績も、まだ見通せないままだ。
  このまま、運航再開許可を待てるのか。いや、従業員の雇用はどうなるのか。2018年にたたき出した最高益からの“転落”は何を意味するのか。「アメリカの主力産業」は、どう経営を立て直すのか。
  多くの尊い命を失った代償は、あまりにも大きい。「もん絶」は続くだろうし、それは、ビジネスライクな話にとどまるはずもない。


2019.12.16-NHK NEWS WEB-https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191216/k10012216781000.html
“ボーイング社 737MAX 生産停止か減産を検討” 米有力紙

アメリカの有力紙は、航空機大手ボーイングが2度の墜落事故を起こした737MAXについて生産停止か、さらなる減産を検討していると伝えました。早ければ16日にも、ボーイング社が方針を発表する見通しだということです。
  アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは15日、ボーイング社が去年10月と、ことし3月に墜落事故を起こした737MAXについて、生産停止か、さらなる減産を検討していると伝えました。
  737MAXをめぐっては今月11日、FAA=アメリカ連邦航空局のトップが「運航の再開時期は決まっていない」と議会下院で証言し、ボーイング社が目指していた来年早々からの運航再開は難しい情勢となっていました。
  ウォール・ストリート・ジャーナルは「15日の時点で、まだ結論は出ていない」としていますが、減産はよりコストがかかるためボーイング社の経営陣の中では「生産停止が可能性の高い選択肢だ」とする見方が強まっているとも伝えています。
  ボーイング社は、早ければ16日にも方針を発表する見通しだということです。
  すでにボーイングは737MAXの減産を進め、業績の悪化が続いていますが、ウォール・ストリート・ジャーナルは、仮に生産停止や、さらなる減産を決めた場合は、アメリカの景気にも影響を与える可能性があると指摘していて、ボーイング社の判断が注目されています。
日本の航空会社への影響
国土交通省によりますと、国内の航空会社は現在737MAXシリーズは運航していませんが、全日空グループが2021年度から最大で30機を順次、国内線に導入する計画を発表しています。
  また、スカイマークも現在の737型機の後継機として、737MAXの購入を検討していることを明らかにしています。
  737MAXシリーズの生産が停止した場合には、これらの会社でも機材の見直しなど計画に大きな影響が出る可能性があります。
相次ぐ事故とその原因
737MAXをめぐっては、去年10月とことし3月にインドネシアとエチオピアで相次いで墜落し、各国が運航を禁止するなどの対応が続いています。
  事故の原因について、インドネシアの運輸当局は、ことし10月、調査報告書を公表していて、それによりますと、機体の姿勢を自動で制御する「MCAS」と呼ばれるシステムの設計に問題があったとしています。
  ボーイングによりますと、737MAXは、従来機に比べてエンジンが大型化し、取り付け位置がわずかに前方に移動したため、従来機より機首が上がりやすい設計になっています。
  このため、「MCAS」は離陸時などに機首が上がりすぎた場合にパイロットが操作しなくても自動で機首を下げ、飛行を安定させる目的で搭載されました。
  しかし、報告書ではこのシステムは、機体の傾きを計測する機能を1つのセンサーだけに頼る設計になっていて、センサーに不具合が生じた場合は誤ったデータに基づいて機首を下げる設計上の問題があったと指摘しています。
  そのうえで、このシステムに誤作動が起きた場合のシステムを停止する対処方法がマニュアルに記載されておらず、パイロットに十分に周知されていなかったなどとしています。
  事故後、ボーイングは、2つのセンサーが計測したデータがほぼ一致した場合に作動するように改修したほか、パイロットや整備士向けのマニュアルの改訂を進めていました。
4500機以上の注文が残る
737MAXはアメリカの航空機メーカー、ボーイングが力を入れる小型旅客機、ボーイング737シリーズの最新の航空機です。7から10までの4つの機種があるシリーズで、16日現在、4932機を受注し、387機を納入していますが、4500機以上の注文が残っています。
  シリーズのうち2度の事故を起こした737MAX8は、全長が39.5メートルあります。従来の737型機よりエンジンが大型化し、主翼の先端も空気抵抗を減らすため2つに分かれた独特の形をしていて、航続距離は従来機より最大800キロ余り伸び、燃費も14%向上しています。
  LCC=格安航空会社が急激に増える中、近距離や中距離を採算よく運航できる機体は高く評価され、2017年、世界で初めてマレーシアの航空会社で運航が開始され、去年1年間では、ボーイングの旅客機の受注数で最も売れた機体でした。


2019.10.19-産経新聞-THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/economy/news/191019/ecn1910190011-n1.html
墜落事故前に欠陥認識か ボーイング、737MAX

複数の米メディアは18日、航空機大手ボーイングに所属するパイロットが、2件の墜落事故を起こした最新鋭機737MAXに欠陥があることを、事故前の2016年に認識していた可能性があると報じた。事故時に誤作動を起こしたとされる自動失速防止装置の問題を指摘するメッセージを同僚に送っていたことが明らかになった。
 ロイター通信によると、ボーイングに当時所属していたパイロットは、地上のフライトシミュレーターで737MAXのシステムのテストをしていた。
 パイロットは16年、自動失速防止装置が「シミュレーターの中で暴れている」などと同僚にメッセージを送った。「当局にうそをついた(意図せずに)」というメッセージもあった。
 墜落事故後、ボーイングは数カ月前にこのメッセージの存在を把握したが、米連邦航空局(FAA)に報告したのは17日になってからという。(共同)


ボーイング737 MAXにおける飛行トラブル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ボーイング(英語The Boeing Company)は、アメリカ合衆国に所在する世界最大の航空宇宙機器開発製造会社。1997年にマクドネル・ダグラス社を買収したため、現在アメリカで唯一の大型旅客機メーカーであり、ヨーロッパのエアバス社と世界市場を二分する巨大企業である。また旅客機だけでなく、軍用機、ミサイル、宇宙船や宇宙機器などの研究開発、設計製造を行う。機体の設計に関して、有限要素法の設計手法の導入に先んじていて、その技術は車輌構体設計など他分野にも技術供与されており、世界の航空宇宙機器業界をリードしている。
歴史
創業期

この会社は、ウィリアム・E・ボーイングアメリカ合衆国海軍技師ジョージ・コンラッド・ウエスターバレットによって、1916年7月15日シアトルにて設立され、彼らの頭文字から "B&W" と名付けられた。
  第1号機は会社名と同じ"B&W" と命名された双フロート水上機であった。この会社名はすぐに "Pacific Aero Products" に変更され、1917年に会社名はボーイング航空機株式会社 ("Boeing Airplane Company") と改名される。1917年当時第一次世界大戦を戦っていた海軍のパイロット養成用に双フロート複葉単発の練習機モデルCが採用され、約700機を生産し航空機メーカーとしての地位を築いた。
  第一次世界大戦終了後、軍用機の需要は無くなった。当時民間輸送も未発達であったため、アメリカでの主要な航空機需要は郵便事業であった。ボーイング社はモデルCの最終生産機C-700を使って、アメリカのシアトルとカナダバンクーバーの間で、世界最初の国際航空郵便の輸送を始めた。輸送部門はBOEING AIR TRANSPORT社として事業を拡大してゆくが、使用機も双発のモデル40Aなど近代化されていった。
大戦期間
1923年陸軍に採用された戦闘機P-12海軍にもF4Bとして採用され、シリーズ総計586機が納入された。郵便機から発展した民間機分野では、1933年に画期的な旅客機ボーイング247(乗客10名)を開発した。当時の飛行機は複葉帆布張り固定脚であったが、247は全金属製・低翼・単葉・引き込み脚を採用し巡航速度300km/h以上を発揮し、アメリカの航空会社は競って導入した。1929年にはエンジンメーカープラット・アンド・ホイットニーなどと共に航空機の製造から運航までの全てを手がける巨大企業ユナイテッド・エアクラフト・アンド・トランスポートを設立した。
  しかし、タイプ247の天下は長く続かず、1935年に開発されたより大型・高速のダグラス DC-3に取って代わられた。また、1934年独占禁止法の適用を受けたため、エンジン製造部門や航空輸送部門は分離され、それぞれがユナイテッド・テクノロジーズユナイテッド航空となった。
  この後1950年代まで、世界で最初に与圧室を装備したボーイング307(初飛行1938年)等意欲的な新型旅客機を数々生産するが、商業的には大きな成功は得られない状況が続いた。軍用機分野では1936年に自社開発した4発大型爆撃機であるモデル299 B-17が陸軍航空隊に採用された。この機は爆撃機としての性能は素晴らしかったが、あまりに大型かつ高価であったため当初の発注数は少数にとどまった。
第二次世界大戦
1939年ステアマン・エアクラフトを買収。同社が開発を進めていた複葉機をボーイング・ステアマン モデル75として完成させた。1941年にアメリカが第二次世界大戦へ参戦したことで需要が急増し、アメリカ陸軍航空軍(PT-13)とアメリカ海軍(N2S)の初等練習機として10000機以上を納品した。
  参戦後は従来主力爆撃機とされていた双発機の能力では不十分であることが判明し、B-17がヨーロッパ戦線における米軍の主力爆撃機として大量に生産・運用された。大量の爆弾を搭載し、長距離を移動できる大型爆撃機は、B-17によって戦略爆撃機の確固たる地位を築いた。そしてボーイング社は、B-17で大型爆撃機メーカーとして名を馳せた。続いて当時の「超」大型爆撃機であるモデル345 B-29 スーパーフォートレスは、他企業の工場まで稼動させるほどの大量生産を行い、長距離侵攻能力を生かして日本本土への戦略爆撃に使用された(→日本本土空襲参照)。また、エノラ・ゲイボックスカーの2機により世界で唯一、実戦で広島長崎原子爆弾を投下した機種となった。
第二次世界大戦後
軍用機部門では、大型爆撃機メーカーとして後退翼ジェット爆撃機モデル450 B-47(初飛行1947年)と後継機モデル464 B-52 ストラトフォートレス(初飛行1952年)を開発生産した。
  民間機部門は中大型の旅客機に注力し、B-29の主翼尾翼を流用した豪華旅客機ボーイング377 ストラトクルーザー1947年に開発したが、経済性でライバルに劣り、購入されたのは僅か56機であった。
大型ジェット機の開発
当時、旅客機の主流はレシプロエンジンであり、ジェット機の採用には航空会社も消極的であったが、ボーイング社は早晩ジェットエンジン装備の本格的旅客機の需要が高まると予測し、1952年に自社資金1600万ドルを投じて開発の開始が決定された。当時、アメリカ空軍では前述のB-47、B-52のほかにもコンベアB-58 ハスラーが開発中であり、後にXB-70超音速爆撃機の計画も進んでおり、これらボマーフリートが縦横に活躍するためには、当時の主力空中給油機であるKB-29/KB-50/KC-97といったB-29をベースとする改造機では性能不足、数量不足になることが明白であり、1953年にはアメリカ空軍より「800機のジェット給油機が必要になる」との見通しも発表されていた。
  ボーイングはこの機体をジェット機であることを隠蔽するため、開発中はC-97(モデル367)の改良であると装った。これの80番目の設計案すなわち「ダッシュ80」が採用され、試作機の製作に取り掛かった。ダッシュ80(367-80)は1954年5月にロールアウトし、同年7月に初飛行したが、アメリカ空軍は同じ年の5月に、新型ジェット空中給油/輸送機の要求仕様を発表していた。ここでライバルに圧倒的優位に立っていたボーイングの案は、8月にモデル717 KC-135 ストラトタンカーとして採用が決定し、10月に最初の生産型29機を受注している。
  367-80を元に旅客機として再設計した民間型ボーイング707の最初の発注はパン・アメリカン航空より1955年に行われ、以後従来のレシプロ旅客機の2倍の速度で2倍の旅客数(150-200人)を運ぶことができる革新的な機体であり、またボーイング初のジェット旅客機となった。旅客機のほか早期警戒管制機E-3 セントリーなどのベースともなった。
  軍用型、民間型ともに始祖となる試作機ダッシュ80は、1972年スミソニアン航空宇宙博物館に寄贈されていたが、1990年にボーイングに送り返され、飛行可能な状態にレストアされた。
旅客機の雄
ボーイング707は高速を生かして長距離国際線用に使用され、一般人の海外旅行をより容易にすることに役立った。続いて1963年に中距離用のジェット旅客機ボーイング727を開発した。この機体は三重隙間フラップ等の強力な高揚力装置を装備して離着陸性能を改善し、中規模空港でも運用が出来るようにした。この結果、それまでバイカウント等のターボプロップ機が運航していた中距離路線にもジェット機が進出するようになった。さらに、ジェット旅客機のベストセラーシリーズとなる小型の短距離機、ボーイング737を開発して航空輸送のジェット化を著しく推し進めた。

ボーイングは1963年にCX-HLS次期主力輸送機計画を打ち出した米空軍と契約を結び大型輸送機の研究開発を結んだ。1965年にロッキード社との競争に敗北し、軍用機として採用されることはなかったが、このころ将来の国際線(長距離飛行)主力機としてのパンアメリカン航空(パンナム)の開発要請があったことから、民間機として転用されることとなった。後に「ジャンボジェット」と呼ばれ世界中で親しまれることとなるボーイング747(4発、350-550人乗り)である。一部二階建てになっているのは、1階全てを荷物空間とし、機首のハッチを上げることで戦車を機体前部から直接乗せ得るようにした空軍輸送機としての設計を引き継いだことによるものである。
  当初エンジンの出力不足から設計時の速度性能が得られなかったため、747は徹底した軽量化を施されて就航した。後に、エンジンの換装に加えて機首を始めとする各部の補強を強いられることとなった。旅客機としては1969年に初飛行した747であったが、当時としてはあまりにも巨大な機体であったため、航空評論家らからは「空席だらけの機体」と酷評された。
  しかし、パンナムが747を正式採用すると、日本航空英国海外航空ルフトハンザなどの大手国際線航空会社も経済性に注目して導入した。航空会社は空席を少しでも減らすため、思い切った料金値下げに踏み切り、一般人が気軽に飛行機に乗れる、バスのような飛行機、エアーバス時代が訪れた。短距離型・経済型・貨物専用型・大型化など次々に改修改良されたシリーズが開発された747は各航空会社の主要路線に投入され、21世紀に至るまで同社の有力機となった。
超音速旅客機の開発
ボーイング747の開発に先行する形で、1950年代から1960年代当時にかけて「次世代旅客機」と目されていた超音速旅客機の開発に着手し、1963年6月5日に当時のアメリカ政府が導入した「ナショナル・スーパーソニック・トランスポート計画(国産超音速輸送機計画)」に向けて開発されたボーイング2707が、1966年12月にマクドネル・ダグラスロッキードの案を退け勝利した。1965年時点でボーイングの契約の80%は軍需であり[4][5]、超音速輸送機の開発も「ボーイングからきた上院議員」と揶揄されていたヘンリー・M・ジャクソンら政治家が後押してていた[6]
  1969年10月の段階で、パンアメリカン航空の15機を筆頭に、日本航空やエア・インディアなど世界の26の航空会社から122機を受注していたが[7]、高高度飛行によるオゾン層減少の可能性や、空港で発生する騒音、超音速飛行時に生ずるソニックブームなどへの懸念から反対運動が激化していたことや、燃料費が高騰したことなどを受けて、1971年3月に上院議会が資金援助の停止を決定したため、同年5月20日に計画は中止された。
国際協力体制
  747開発成功以来、ボーイングが旅客機市場を席巻する中で、欧米のライバル社もジェット旅客機開発に取り組んだものの、技術は日々高度化し、開発費は高騰するばかりであった。やがて開発費の重みに耐え切れないメーカーは、次々に独自の旅客機計画を断念し、国際的な協力体制を敷き始める。これが、ヨーロッパ西)の多国籍企業エアバス設立の要因である。
  エアバスは当初こそ近距離用のA300の1機種しかなく販売面で苦戦したが、政府ぐるみの売り込みや大幅なダンピング販売を行い、同時にA320などを導入し徐々に市場を拡大した。それに伴い、マクドネル・ダグラスロッキードの旅客機事業は苦しくなった。
  ボーイングもオイルショックによる航空不況や多発する航空事故を経て、大型化・高性能化と同時に、安全性や低燃費性を同時に求められた。727の後継機として開発されたボーイング757はエアバスへの対抗上、最新技術を盛り込み、アメリカ国内線や欧州内路線で多数採用された。しかし、開発費全額を自己負担する事は避ける世界的な流れの中で、ボーイングも国際的な分業・協力体制(リスクシェアリング)を敷くようになる。ワイドボディ・双発・中型のボーイング767は高度技術を結集すると共に、日本イタリアの協力によって開発された。続いて767と747の間を埋めるワイドボディ・双発・大型のボーイング777を完成させたが、こちらも日本企業などが多数参加する国際共同開発によるものである。
  737の改良である737NGシリーズ(737-600/700/800/900)では、韓国中華人民共和国中華民国などのメーカーが参加している。
マクドネル・ダグラスの吸収
長年にわたって旅客機業界で大きなシェアを占めてきたが、エアバスの追い上げもあり、ボーイングは経営の多角化で乗り切ろうとして、人工衛星などの宇宙分野や航空会社に資金を貸し付ける「ボーイング・キャピタル」など、急速に手を広げた。また、航空業界再編により、1997年に長年のライバルであるマクドネル・ダグラス社を吸収し、同社の主力である軍需産業に主体を移している。本社も2001年9月に西海岸のシアトルから、首都ワシントンD.C.国防総省)により近いシカゴに移転した。
2000年代
かつて主力であった民間機開発は、777以来、次々に新型機計画を発表したものの、株主や資本家の理解が得られない、というかつては考えられなかった理由で10年間も中断された。この間に次々と新型機を販売したエアバスに、ここでも大きく水を開けられた。販売数も1999年にエアバスに追い抜かれ、以後は拮抗した。巻き返しを図ろうと、高亜音速機ソニック・クルーザーや超大型機747Xの開発にも挑んだが、追い討ちをかけるようにアメリカ同時多発テロ事件が発生し、国内航空会社の倒産に伴い販売業績が急激に悪化した。
  軍需部門では、大量の発注が見込まれたJSF 統合打撃戦闘機競争において、同社のX-32ロッキード・マーティン社のX-35に敗れた。また、シコルスキー・エアクラフト社と共同開発し、ステルス性を備えたアメリカ陸軍の次期偵察・攻撃ヘリコプター RAH-66 コマンチ 計画も中止されるなど先行き不透明な要素が多くなっている。アメリカ海軍向けP-8A対潜哨戒機の受注を獲得したが、KC-767空中給油機発注をめぐり、国防総省との間で汚職疑惑や中国政府へ納入予定だったボーイング767の機内から盗聴器が多数発見された事件が発生した。
  2005年、10年ぶりの新型機ボーイング787(旧称:ボーイング7E7)「ドリームライナー」の開発を開始した。20年間で1,000機以上を売り上げたナローボディ双発機の757は、その大きさから737NGと787のターゲットと重なることもあり生産を中止した。続いて747の新型機(747-400の後継機)の計画ボーイング747-8を発表し、急成長を遂げている中国での市場拡大を目ざした。


軍用部門ではファントムワークスを中心に無人機の開発にも力を注いでおり、UCAV(無人戦闘/攻撃機)の分野ではX-45を開発し、J-UCAS計画ノースロップ・グラマンX-47と競っていたが、2006年に計画自体が中止となった。引き続き海軍無人戦闘攻撃機開発計画の実証機の選定機として名乗りを上げていたが、こちらは2007年にX-47に敗れた。他に小型無人回転翼機であるA160 ハミングバードや、静止可能な回転翼機、CRW (Canard Rotor/Wing (en)) X-50 ドラゴンフライ (en)などの開発に取り組んだ。
  2006年の受注数では、新型機のほかにも、737を好調に売り上げ、エアバスを再び抜き返した。また、ボーイングは現在、737や777などの一部の後継機となる旅客機の開発プロジェクト、ボーイング・イエローストーン・プロジェクトを進めている。
2010年代
2012年度の売上高 81,698 Million US$ のうち、民間部門が 49,127 Million US$、軍用部門が 32,607 Million US$ 、営業利益 6,311 Million US$ のうち、民間部門が 4,711 Million US$、軍用部門が 3,068 Million US$ である
  2012年12月31日時点での受注契約残高は、民間部門が 317,287 Million US$、軍用部門が 55,068 Million US$ 、民需+軍需の合計で 372,355 Million US$ である。
  F-22ロッキード・マーチンと共同開発・共同生産の契約になったが、F-35の開発ではロッキード・マーチンの単独受注契約になり、軍需部門で競合他社に敗れる傾向であり、2012年度の売上高や営業利益に対する割合では民需が軍需を上回り、受注契約残高では民需が軍需を大きく上回る状況になっている。このためP-8のような民間機を改造した機体を提案するなど低コスト化を図っている。
  生産はアメリカ国内の工場が主力であるが、2018年に中国で海外初の生産拠点を建設した
  2019年2月26日、エンブラエルの旅客機部門の買収と軍用輸送機を販売する合弁会社の設立が発表された。これによりボーイングは小型機から大型機までを揃えることとなる
  2019年3月13日、ボーイング737MAX墜落事故(エチオピア航空302便墜落事故)が発生。同型機の運航中止措置が広がると他機の受注数にも影響が及び始め、同年4月中のボーイングの旅客機の受注数はゼロとなった

カスタマーコード(詳細は「ボーイング・カスタマーコード一覧」を参照)
  ボーイング727型機以降の旅客機においては、顧客を区別するために「カスタマーコード」と呼ばれる符丁を型式名に付している。これはボーイングに初めて発注した際に割り当てられる。カスタマーコードは数字と英文字で2文字の組み合わせとなるが、英文字のうち「I」と「O」は使用されない。
  このカスタマーコードは、顧客が発注した機材に正式な型式名として組み込まれる。例えば、カスタマーコード「46」の日本航空ボーイング747-200型機を発注した場合、正式な型式名は「ボーイング747-246」となる。これは、航空機が他社へ譲渡されても変わることはない。また、軍隊などにも同様に割り当てられており、航空自衛隊の場合は「FK」である。
  個々の航空会社のカスタマーコードについては各航空会社の記事を参照されたい。ボーイング自身が発注した自社保有機の場合、カスタマーコードは「20」である。なお、ボーイング787やボーイング737MAXでは使用されていない。









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