アメリカ-ウクライナ-1


2024.11.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241103-ZCNBYNGSOJMTNIDYJMGYJ4BPEA/
米戦争研究所、北朝鮮のウクライナ派兵で報告書 実戦経験を将来の紛争に応用 対中依存脱却の狙いも

  【ワシントン=渡辺浩生】米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は2日までに、北朝鮮がウクライナへの侵略を続けるロシアを支援するため部隊を派兵した戦略的狙いについて報告書を発表した。朝鮮戦争以来となる通常戦争で得る最新の戦闘経験を、対韓国など将来の紛争に応用する目的があると分析。北朝鮮の対露連携強化は中国への依存を弱めることになり、朝鮮半島を含むアジア太平洋地域の長期的安定を脅かすと警告した。

  報告書は1日付。北朝鮮は、「将来の戦争の性質を変える」とされるウクライナ戦争への参戦が「自国軍の重大な学習機会となる」と認識したと分析。背景として、北朝鮮軍は1953年の朝鮮戦争休戦以来、大規模な通常戦闘の経験がなく、「韓国のような高度な敵国との近代戦に準備されていない」と指摘した。
  そのうえで報告書は、北朝鮮の部隊が西側の兵器供給を受けるウクライナ軍を相手に自らの兵器システムを試し、指揮統制、無人機操縦、電子戦の経験を積むことで「朝鮮半島を含む将来の紛争で優位に立つ」狙いがあると分析した。
  報告書は、実際に北朝鮮軍が戦場で得る教訓を将来に生かせるかは、露軍司令部が北朝鮮の兵力をどのように利用するかで決まると指摘。露軍が北朝鮮兵を「大砲の餌食(弾除け)」として使えば犠牲が膨らむのは確実で、北朝鮮政府が望むような教訓は十分に得られないとの見方も示した。
  さらに報告書は、北朝鮮がロシアとの連携を強化することで「中国への依存度を下げる」思惑があるとも指摘中国政府の影響力が弱まれば、北朝鮮の攻撃性を制御できず、朝鮮半島を不安定化し、より広いアジア太平洋地域を危険にさらす可能性があると分析した。

  一方、北朝鮮にとりロシアからの見返りには、核開発計画の進展に加え、「朝鮮半島で紛争が起きた際にロシアの軍事的関与を確かにしたい」思惑もあるとしている。


2024.05.11-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240511-OVOUOM6MSFKRZEDE2JN45SQUYQ/
米、予算成立後で3度目のウクライナ支援 対戦車ミサイルや防空装備

  【ワシントン=坂本一之】米国防総省10日、ロシアの侵略を受けるウクライナに対し、防空装備や携行式対戦車ミサイル「ジャベリン」、ブラッドレー歩兵戦闘車など4億ドル(約620億円)相当を追加供与すると発表した。ウクライナ支援の緊急予算が4月に成立して以降で3度目の軍事支援発表。露軍が攻勢を強めている東部ハリコフ州などでの防衛を支援する。

  防空装備では、地対空ミサイルシステム「パトリオット」用や高性能地対空ミサイルシステム「NASAMS」用の弾薬などを供与。高機動ロケット砲システム「ハイマース」やその弾薬、155ミリ榴弾砲の砲弾も供給する。装甲兵員輸送車や耐地雷・伏撃防護車などによってウクライナ軍の素早い部隊移動を可能にする
  露軍はウクライナ北部から、国境を越えてハリコフ州で進軍を図ろうとしているこれについてカービー大統領補佐官は「数週間のうちにロシアは国境沿いに緩衝地帯を確立しようと攻撃を強め、兵力を増強する可能性が高い」と10日のオンライン記者会見で述べた。
  バイデン米政権は、約608億ドルのウクライナ支援緊急予算が議会を通過して4月24日に成立したことを受け、軍事支援を本格的に再開した。同日に10億ドル相当、26日には対ウクライナで過去最大となる60億ドル相当の支援を発表した。



2023.12.06-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20231206/k00/00m/030/053000c
米、ベラルーシ赤十字トップを制裁 「ウクライナの子連れ去り関与」
【ワシントン大久保渉】

  米財務省は5日、ウクライナからの子ども連れ去りに関与したとしてベラルーシ赤十字社トップの事務総長を制裁対象に指定した。米国内の資産を凍結し、米国人との取引を禁止する。このほか、ロシアのウクライナ侵攻に加担したとしてベラルーシの18団体・個人、ロシアの軍事機器調達を助けたとしてベルギーやオランダなどの14団体・個人も制裁対象に加えた

  米財務省によると、ウクライナ侵攻以降、ロシアは占領地域からウクライナ人の子どもを大量に自国へ連れ去り、その一部は同盟国のベラルーシに移送されている。ベラルーシ赤十字社は6月に700人以上のウクライナ人の子どもがベラルーシにいると報告事務総長はベラルーシ国営テレビで自らが強制移送に積極的に関わったと述べ国際社会から非難された。
  国際赤十字・赤新月社連盟は事務総長を解任するようベラルーシ赤十字社に要求したが拒否された。このため今月1日にベラルーシ赤十字社の会員資格を停止する処分を決めた。
  米財務省のネルソン次官は声明で「反民主主義的行動と人権侵害の責任を追及する」と述べた。【ワシントン大久保渉】


2023.11.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231104-HPXR3PFPXZPTDDPCTOZY7KY75I/
米ウクライナ支援、一部財源が枯渇 「今後は小出しに」

  【ワシントン=渡辺浩生】米政府は3日、ロシアの侵略が続くウクライナへの4億2500万ドル(約633億円)の追加軍事支援を発表した。この結果、議会が承認済みの資金枠「ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)」が枯渇し、今後は大統領の権限で米軍在庫から供与できる枠組みから小出しに支援を続けるとしている

  ウクライナとイスラエル支援を一括した緊急予算案の行方も不透明感が漂い、「戦闘が続く限り支え続ける」としてきた米国のウクライナ支援に財源上の制約が急浮上してきた。
  今回の内訳はロシアの無人機攻撃に対処する防空システム3億ドルをUSAIから拠出。高機動ロケット砲システム「ハイマース」の弾薬などの補充に1億2500万ドル分を「緊急時大統領在庫引き出し権(PDA)」から拠出する。
  ジャンピエール大統領報道官は3日、USAIは今回の支援で使い果たすと指摘。ウクライナが戦場で必要とする武器はPDAから供与を続けるとしつつ「米国の支援能力を可能な限り引き延ばすため、より小さなパッケージで供与を始める」と述べた。ロイター通信によると、PDAは残り約50億ドル分ある。
  支援の財源をめぐっては政府が10月下旬、ウクライナ支援に614億ドル、イスラム原理主義組織ハマスとの戦闘が続くイスラエル支援に143億ドル、インド太平洋向け支援20億ドルなどで構成する1060億ドルの緊急予算案を議会に要請。
  しかし、下院は共和党のジョンソン新議長の主導でイスラエルに絞った予算案を賛成多数で可決。親イスラエルで一致するが、ウクライナ支援に否定的な党内の空気を反映した形だ。
  民主党が多数派の上院は下院の案に反対の意向。バイデン大統領も仮に両院で可決しても拒否権を行使する方針を示す。だが、開始から約5カ月を経過したウクライナ軍の反攻作戦が難航する中、ジャンピエール氏は「米国がウクライナと共にあり続けることを世界とプーチン大統領に示す必要がある」と議会に緊急予算案の早期可決を訴えた。


2023.11.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20231104-Z7EEL7VOHBIBVPLUI3O7MVCLXY/
欧米、ウクライナに停戦促す動き 米NBC報道

  ロシアによるウクライナ侵略で、米NBCニュースは4日、複数の米当局者らの話として、ウクライナを支援する欧米諸国がウクライナ側と停戦について「ひそかに」協議を始めたと伝えたウクライナ軍の反攻が進まず戦局が膠着(こうちゃく)していることや、ウクライナ軍の疲弊イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスとの交戦などを背景に、欧米側のウクライナ支援の余力が低下していることが背景だとしている。

  NBCによると、停戦に関する欧米とウクライナの協議は、50カ国以上が参加した10月のウクライナ支援国の会合の中で行われた。ウクライナがロシアに一定の譲歩をする見返りに、北大西洋条約機構(NATO)がウクライナの安全を保証し、ロシアの再侵略を防ぐ案が浮上しているという。
  ウクライナのゼレンスキー大統領は従来、停戦はロシアによる占領地支配の既成事実化と将来的な再侵略を招くとしてプーチン露政権との交渉を否定。ただ、ウクライナも欧米側の意向を無視できない見通しで、今後、停戦に向けた動きが表面化する可能性もある。


2023.09.07-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230907-ASNBYMK62NLBBKO2IVWL32QW2M/
米、劣化ウラン弾供与 露軍戦車の正面装甲貫通する破壊力

  ブリンケン米国務長官は6日、訪問先のウクライナ首都キーウ(キエフ)で記者会見し、新たに10億ドル(約1470億円)超のウクライナ支援を表明した。米政府によると、劣化ウラン弾の供与も含まれる。ブリンケン氏は、ウクライナ軍の反攻が進展しているとの認識を示し「新たな支援は反攻をさらに勢いづけるだろう」と述べた。

  米国による劣化ウラン弾供与は初めて。既に供与を決めた米主力戦車エーブラムスから発射でき、ロシア軍戦車の正面装甲を貫通するほど破壊力が高い。一方、微粒子となったウランが拡散して体内被ばくを引き起こすとの指摘があり、健康や環境への影響に懸念の声が出ている。
  ブリンケン氏がウクライナを訪れるのは昨年2月のロシアによる侵攻後、4度目。ゼレンスキー大統領やクレバ外相と会談し、ウクライナを支える姿勢を改めて打ち出した。


2023.08.23-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/dbd4a6edf910f12da9a269b086d9b6aceab42552
「ウクライナ勝利」米、不明瞭な目標が支援への逡巡に 侵攻1年半

  【ワシントン=渡辺浩生】ロシアのウクライナ全面侵攻から24日で1年半。バイデン米政権はウクライナへの軍事支援を主導しつつも、戦場での成功に必要な支援には逡巡(しゅんじゅん)をみせる。ウクライナ軍は反攻開始から2カ月過ぎても露軍の防衛線を突破できず米国民の支援疲れにもつながっている。

  サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は22日、ウクライナが苦戦しているとの見方に対し、「戦闘が膠着状態にあるとは評価していない」と強調した。だが、18日付米紙ワシントン・ポストによると、米情報機関はウクライナ軍が反攻で、南部クリミア半島と露本土をつなぐ露占領地の「回廊」を分断する目標を達成するのは困難だと分析している。 バイデン政権はこれまでウクライナ支援で西側の結束を主導してきたが、前線の要請を受けても、バイデン大統領が尻込みし、時宜を得た兵器供与の障害となってきた側面は否めない。
   ウクライナ軍は戦闘機などの航空支援力を欠き、防空能力も消耗した状態で反攻開始を余儀なくされた。20日には米国製F16戦闘機をオランダデンマークが供与することが決まったが、訓練に半年を要し、今の攻勢に間に合いそうもない。
  バイデン氏は今年5月下旬に容認に転じるまで約4カ月を費やした。 占領地奥深くの露軍航空拠点を攻撃するためにウクライナが要求する射程300キロの地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」の供与も、少ない備蓄を理由にバイデン氏の承認には至っていない。
  バイデン氏がこうした兵器の供与をためらう背景には、ロシアによる核兵器使用にまでエスカレートすることへの懸念と同時に、「ウクライナ勝利」に関する目標が不明瞭なこともあるともされる。 ウクライナは目標を「全占領地の奪還」とするが、バイデン氏は「将来の和平交渉にウクライナが最大限強い立場で臨むよう支援する」としつつも、具体的な条件の明示は避けてきた。そのため「勝利の定義」を明確にし、必要な軍事・外交的な支援を組み立てるべきだとの意見も上がる。 厳しい戦況は米国内のムードに影響を与え、CNNテレビが今月4日に発表した世論調査によれば、議会がウクライナへの追加支援を承認すべきかとの問いに55%が「すべきでない」と回答。共和党支持層では71%に上った。
  来年の大統領選に向けた共和党の指名争いで支持率首位のトランプ前大統領は「一日で戦争を終わらせる」と停戦を主張している。


2023.08.15-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230815-IKE74ZFB2ZPQPHBW5WHL5JZRAM/
欧米、来春反攻を検討 ウクライナ支援の長期化予期 米紙報道

  ロシア軍に対するウクライナ軍の反攻が停滞する中、米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は13日、ウクライナを支援する欧米諸国が来年春の攻勢について既に検討を始めていると報じた。同紙は「このことは、欧米側が戦闘の長期化を予期していることの表れだ」と指摘。同紙は一方で、欧米諸国には有権者が泥沼化した戦争への支援に嫌気がさす事態への懸念があるとも伝えた。

  同紙は、欧米政権には当初、ウクライナ軍が現在の反攻で露軍に打撃を与え、早ければ今年冬にもプーチン露大統領を停戦交渉の場に引き出せるとの期待があったと指摘。だが、露軍の防衛線は強固で、現時点でウクライナ軍が短期的に反攻の成果を得ることは困難になっているとした。
 その上で、来年半ばまでにウクライナは欧米側から米戦闘機F16を供与される可能性があるほか、高性能ドローン(無人機)などさらに高性能な兵器も供与される可能性があると指摘。時間の経過に従ってウクライナ軍の保有兵器が充実し、兵器への習熟や戦術も進展することで、露軍に勝利できる可能性が高まるとの期待が欧米諸国にあると伝えた。


2023.03.04-BBC NEWS COM.-https://www.bbc.com/japanese/64832553
アメリカ、ウクライナに砲弾などの追加軍事支援発表 在庫不足が懸念される中

  アメリカは3日、ウクライナに4億ドル(約540億円)規模の追加軍事支援を行うと発表した。ロシアとの激しい戦闘で激減しているとされる砲弾・弾薬を補うのが狙い。
  アントニー・ブリンケン米国務長官は追加支援について、「ウクライナが非常に効果的に使用している高精度の米製高機動ロケット砲システム「ハイマース」のロケット砲や、榴弾砲が含まれると説明した

  「この軍事支援パッケージには、ウクライナが自国を守るために非常に効果的に使用しているアメリカ提供の『ハイマース』や、榴弾砲のための追加の弾薬も含まれる」と、ブリンケン氏は3日の声明で述べた。
 さらに、「ブラッドリー歩兵戦闘車用の弾薬や架橋戦車、解体用弾薬や装備、そのほかの保守・訓練支援など」も提供する予定だと付け加えた。「ハイマース」は昨年末のウクライナ軍の電撃的反撃作戦において、非常に有効であることが証明された。この作戦ではハルキウ州のほぼ全域がウクライナ側の支配下に戻った。
  こうしたウクライナ軍の前進や、南部の街ヘルソンの解放は、ロシア軍が昨年4月に首都キーウ周辺から撤退して以降で最も大きな前線の変化だった。
  ブリンケン氏は声明で、ウクライナの主権と領土一体性を守るため、「アメリカも、ウクライナ支援に向けて世界への働きかけを続ける」と強調した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先に、「ロシアを止める」には大砲や砲弾が必要だと強調していた。
  アメリカは今後予想されるウクライナ側の攻撃に備えて、戦術的な橋を架ける移動式の装備なども提供する。ウクライナの軍関係者や専門家の多くが、今後数週間のうちに作戦が開始される可能性を示唆している。


2023.02.04-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230204-GRVN7ZFTVVPT5L2LLN5OFQPM6M/
米 射程150キロのロケット弾供与 ウクライナ支援2900億円

  【ワシントン=坂本一之】米国防総省は3日、ロシアの侵略を受けるウクライナに対し、初となる長射程のロケット弾「GLSDB」の供与を含む約21億7500万ドル(約2900億円)の追加軍事支援をすると発表した。春先ともされるロシア軍の大規模攻勢に備え、ウクライナ軍の装備を強化する。
  GLSDBの射程は約150キロで、高機動ロケット砲システム「ハイマース」から発射できる。ウクライナ軍が現在ハイマースで使っているものに比べると2倍近い射程とされ、これまで届かなかった標的やロシアの支配地域の深部を攻撃できるようになる。

  国防総省のライダー報道官は同日の記者会見で、GLSDBの供与に関し「ウクライナが自国を防衛するための作戦とロシアによる占領地の奪還を可能にする」と指摘した。追加軍事支援では携帯型対戦車ミサイル「ジャベリン」や対無人機システム、地対空ミサイルの発射機なども供与する。ブリンケン国務長官は声明で「ウクライナ国民を守るために重要な防空や対無人機の能力が含まれる」と強調した。
  米国のウクライナ軍事支援は昨年2月のロシアによる侵攻開始後、計293億ドルに達した
  バイデン政権は、ウクライナが求める射程約300キロの地対地ミサイルATACMSの供与については、ロシアへの直接攻撃に使われる可能性を懸念し慎重に検討している。


2023.01.26-BBC NEWS JAPAN-https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-64408689
【解説】 ウクライナへの米戦車の供与、ロシアによる春の攻勢に間に合うのか

  アメリカは25日、米軍の主力戦車「M1エイブラムス」をウクライナに供与すると発表した。この戦車によりウクライナの軍事力は大幅にアップグレードされる。ただ、ロシアとの戦争の次なる局面に何らかの変化をもたらすことはなさそうだ

  米国防総省は長らく、「M1エイブラムス」ウクライナの戦場での運用には適さないと主張してきた。ところが突如その主張を一転させ、ウクライナに同戦車を送ることを決定した。この発表が、戦車供与をめぐる他国の判断に影響をもたらしている。
  「(アメリカの発表は)ドイツ製の戦車『レオパルト2』を(ウクライナに)送ることをドイツに決断させ、レオパルト戦車を保有する他国が供与するのを承認することにもつながった」と、米政府の元ウクライナ特使カート・ヴォルカー氏はBBCに語った。
  西側諸国は今後6〜8週間でウクライナの装甲車能力を増強し、今春に予想されるロシア軍の攻撃に備えられるよう支援したい考えだ。
  だが、M1エイブラムスを戦地に輸送し、ウクライナ兵が同戦車を扱えるよう訓練を行うには、それよりもずっと長い時間がかかるだろう。一方で、レオパルトは比較的早い配備が可能で、操作も簡単だ。
  アメリカとドイツの当局者は、この2つの問題を公には関連付けてはいなかった。しかし両国は、同じ日に戦車供与を発表するよう調整。西側の同盟国間で拡大していた論争を解決したかたちとなった。
戦車供与が焦点に
  開戦当初から、アメリカのバイデン政権とその同盟国はロシアを刺激してエスカレーションを招かないよう、兵器の供与を慎重に調整してきた
  ところがウクライナが一連の戦果を挙げたのを受け、各国はタブーを破るようになった。そしてロシアが再び攻勢をかけてくるとの見通しから、ウクライナ東部の開けた地形で戦うために特に必要な戦車に焦点が移っている。
  ドイツ政府は一部の同盟国から、ドイツがレオパルト2を供与するか、他国からの供与を承認するよう圧力を受けるようになった。欧州各地には約2000台のレオパルト2が配備されている。
  ドイツは、ロシアに対抗するための戦車を西側諸国で唯一ウクライナに配備する国とみなされることを嫌った。イギリス政府も英陸軍の主力戦車「チャレンジャー2」14台を供与すると表明したが、十分な数とはいえないものだった
エイブラムスの供与を決めた背景
  数日前まで、米国防総省の高官はM1エイブラムスの供与は選択肢にないと発言していた。
  このハイテク戦車は世界トップクラスだが、高価なうえに取り扱いが複雑で、メンテナンスも難しい。広範な訓練も必要となる。その点についてはいまも変わっていない。しかし、ヨーロッパで生じた軋轢(あつれき)への対応については米政権内部で議論がなされ、ここ数週間はジョー・バイデン米大統領とオラフ・ショルツ独首相が何度も電話で協議した。
  米政府高官の1人は、バイデン氏は大西洋諸国の結束に重点を置いていると語った。「今回の決定は、我々がいかに同盟国やパートナーと一体化し、すべてのことを協調して行っているかを示すためのものだ」と、米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー報道官は述べた。
  「ドイツによる短期的コミットメントと相まって、エイブラムス戦車は長期的コミットメントを示している」と、ある米政府関係者は述べた。
戦地に届くのは何カ月も先か
  2003年から2006年にかけてアメリカの駐ウクライナ大使を務めたジョン・ハーブスト氏は、この長期的コミットメントについてより現実的な見方を示している。「(米)政権は必ずしも戦車(の供与)に熱心ではなかった」
  「しかし、政権は議論の流れを目の当たりにし、世間の認識を知った。ドイツを説得するために誠実に努力したのだと思う」
  「ただ、それを実現するにはエイブラムスについて同意する必要があったので、そうした。米政権はそれを望んでいなかったので、エイブラムスは言ってみれば、ものすごく遅いウクライナ行きの船に乗っている状況だ」
  いずれにせよ、エイブラムスの配備には、その複雑さと調達方法を考えると長い時間がかかるだろう。同戦車は国防総省の在庫から送られるのではなく、民間業者から購入することになる。ウクライナに届くには何カ月か、もしかしたら1年くらい、かかるかもしれない
  こうした中、複数の軍事アナリストは、ドイツのレオパルトが投入されることでウクライナの攻撃能力は大幅に高まるものの、解決のための特効薬にはならないだろうと指摘。歩兵隊や砲兵隊とともに統合軍に組み込む必要があるとしている。
  このことは、今回の供与が戦闘での形勢を逆転するゲームチェンジャーになり得るかどうかの重要な要素となるだろう。
  また、兵器に関してゴールが再び変わるかどうかの指標にもなるかもしれない。ゆくゆくは長距離ミサイルや戦闘機などの供与も必要だと判断することになるかもしれない
(英語記事  What difference will the tanks for Ukraine make?


2023.01.25-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/b384aa8546abe8ee19d8c31ce8f51fe7ba93f539
ロシア「米欧戦車を破壊」と強弁も…滲む焦りと苛立ち

  ドイツが主力戦車「レオパルト2」のウクライナ供与を決め米国も主力戦車「エイブラムス」を供与する見通しとの報道にロシアは反発している。ロシアは「米欧の戦車が供与されれば破壊する」「戦況に影響はない」などと強弁しながらも、実際には主力戦車の供与がウクライナによる将来的な反攻の加速につながることを危惧。ロシアの反発の背後に、焦りといらだちがあるのは確実だ。

  米欧の主力戦車の供与に関し、アントノフ露駐米大使は「仮に供与された場合でも露軍に破壊されるのは確実だ」と強調。「戦車の供与を『防衛兵器』だとの名目で正当化することはできず、ロシアへの新たな挑発になる」とも警告した。
  タス通信が25日伝えた。 露下院国際問題委員会のスルツキー委員長も24日、交流サイト(SNS)を通じ、「前線で露軍が優勢になりつつあることに米欧が懸念を深めている証拠だ」と主張。その上で、米欧が供与してきた携帯型対戦車ミサイル「ジャベリン」や高機動ロケット砲システム「ハイマース」などは露軍の作戦を停止させられず、大半が破壊されたとも主張し、米欧の主力戦車も「同じ運命をたどる」などと述べた。
  しかし現実には、ジャベリンやハイマースなど米欧供与の兵器は露軍の前進を遅らせ、各地でのウクライナ軍の反攻を可能にした。 露軍は最前線に旧式戦車を投入するなど戦力の低下が進んでいるとされ、米欧の主力戦車への対抗手段は限られているのが実情だ。
  米シンクタンク「戦争研究所」は24日、主力戦車の供与はウクライナ軍が露軍を敗退させ、領土を解放するのを助ける」と評価した。
  ロシアはウクライナ侵略の開始当初から「ウクライナへの軍事支援は対露参戦とみなす可能性がある」と米欧を威嚇し、兵器供与を停止させようとしてきた。それにもかかわらず米欧が兵器供与を拡大し続けていることにもロシアはいらだちを強めている。
  ウクライナは米欧の主力戦車を東部や南部の前線に投入し、領土奪還を進めたい構え。ただ、旧ソ連製兵器を主力としてきたウクライナ軍にとって、北大西洋条約機構(NATO)規格の主力戦車が実際に供与された場合、習熟訓練や修理・補給態勢の構築に一定の時間が必要となる。主力戦車が実戦投入される前に戦果を拡大しようと露軍がさらに攻勢を強める可能性も排除されない。


2023.01.25-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20230125-Q2ANKNKQSFNPDHJUGC2DXZLYOM/
米が主力戦車エイブラムス供与か、独はレオパルト2を ウクライナ歓迎

  ウクライナ米欧諸国に求めている主力戦車の供与を巡り、米政治紙ポリティコ(電子版)は24日、バイデン米政権が主力戦車「エイブラムス」を供与する方針を固めつつあり、早ければ週内にも発表する可能性があるとする米当局者2人の話を伝えた。一方、ドイツ誌シュピーゲル(同)は同日、ショルツ独政権も主力戦車「レオパルト2」を供与する方針を決めたと報じた。

  これに先立ち、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランドは24日、自国が保有するレオパルト2のウクライナ供与を承認するようドイツに正式に求めたと発表した。レオパルト2の供与には製造国ドイツの承認が必要とされる。
  一連の報道によると、米国が検討している供与数は約30両。また、ドイツは自国からの供与だけでなく、ほかの保有国による供与も認める方針だという。米独が主力戦車を供与した場合、ウクライナの戦力向上が見込まれる一方、ロシアがNATOへの敵視をさらに強めるのは確実だ。
  報道を受け、ウクライナのイエルマーク大統領府長官は24日、交流サイト(SNS)上で「ウクライナの戦車兵は世界でも優れている。(主力戦車供与は)権威主義(ロシア)に対する民主主義の真の鉄拳になるだろう」と歓迎した。
  ロシアは米欧による主力戦車供与について「戦況を変えず、戦闘の長期化を招いてウクライナにマイナスとなる」と主張している。
  主力戦車の供与を巡っては、先に英国が「チャレンジャー2」の供与を発表。一方、米独両国は従来、NATOとロシアの直接衝突に発展する事態を警戒し、慎重姿勢を示してきた。20日にドイツで開かれたウクライナ支援国会合でもドイツはレオパルト2の供与に関する結論を先送りした。

  ただ、最前線のウクライナ東部ドネツク州では露軍が攻勢を強めており、ポーランドやバルト3国など一部のNATO加盟国からは主力戦車を供与すべきだとの声が高まっていた。







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