アメリカ大統領トランプ氏の謎-1(Qアノン)



2021.05.26-SankeiBiz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210526/mcb2105261548018-n1.htm
トランプ前米大統領の一族企業の不正疑惑で大陪審招集 起訴の可否を判断へ

  【ニューヨーク=平田雄介】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は25日、トランプ前大統領(共和党)一族が経営する企業「トランプ・オーガニゼーション」の不正疑惑を捜査してきた東部ニューヨーク市マンハッタン地区のバンス州検事(民主党)が起訴の可否を判断するための大陪審を招集したと伝えた。
  同紙によると、大陪審は最近招集され、週に3日の頻度で向こう半年間審理を続けると関係者2人が明かした。通常より長く日程が取られており、立件を慎重に判断するとみられる。

  バンス州検事は、トランプ氏が大統領に就任した2017年1月以前の同社の納税や保険をめぐる詐欺、業績に関する虚偽申告などを捜査してきた。保有資産の評価額に関する虚偽申告の疑いでは同州司法長官事務所と合同捜査している。
  トランプ氏は全ての疑惑を否定。19日には、あらゆる刑事訴追の試みに「打ち勝つ」と声明を出した。


2021.05.19-Yahoo!Japan(JIJI.COM・AFP・BBC NEWS JAPAN)-https://news.yahoo.co.jp/articles/2c72d1bd45dafb5e6d35cc57d6d0abb4f8ec409a
トランプ一族の複合企業を捜査、米NY州司法当局

  【AFP=時事】(更新)米ニューヨーク州司法当局は18日、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領事業取引を調べている検察当局が、一族の複合企業「トランプ・オーガニゼーション(Trump Organization)」の捜査を進めていると発表した。

  州司法省は、「トランプ・オーガニゼーションに対し、われわれの調査がもはや単に民事的性質のものではないことを伝えた」とし、「現在マンハッタン(Manhattan)地区検事局と共に、トランプ・オーガニゼーションを積極的に捜査している」と明らかにした。
   トランプ・オーガニゼーションは、ホテルやゴルフコースなど、一族の多数の関連企業を所有している。
   1月に大統領を退任したトランプ氏は、不正行為を否定している。以前にマンハッタン地区のサイラス・バンス(Cyrus Vance)検事が同氏の財務関連の捜査を行った際は、「米国史上最悪の政治的な魔女狩り」と非難していた。
   州司法省は、銀行詐欺や保険金詐欺についても民事訴訟として調査を進めている。
   地方検事局による捜査は、大陪審の前で非公開で行われており、3月にバンス検事らがトランプ氏の8年分の納税申告書を受け取ったことで進展があったとみられる。【翻訳編集】 AFPBB News


2021.02.15-REUTERS-https://jp.reuters.com/article/usa-trump-impeachment-idJPKBN2AE0S1
米上院が無罪評決、トランプ氏弾劾裁判 「道義的に責任」と共和党

  [ワシントン 13日 ロイター] - 米上院は13日、連邦議会占拠を巡るトランプ前大統領への弾劾裁判無罪との評決を下した。有罪支持57票に対し無罪は43票で、必要な3分の2に届かなかった。
  統領の煽動が議会乱入につながったとする弾劾裁判では共和党の7議員が有罪に投票した。上院は民主・共和両党がそれぞれ50議席を占めている。

  上院共和党のトップのマコネル院内総務は無罪に投票したが、「実質的かつ道義的に責任がトランプ大統領にあるのは疑問の余地がない。大統領の望みと指示によって行動したと暴徒は信じている」と述べ、前大統領への批判的姿勢を示した。
  バイデン大統領は声明で、有罪判決には至らなかったが罪状の大部分は争点にならず、共和党からも有罪投票がでたことを指摘。「今回の事件は民主主義のもろさを思い知らされた。米国に暴力や過激主義の存在場所はない」と述べた。

  民主党のペロシ下院議長は、有罪とならなかったことは「暗黒の日々と最も不名誉な出来事」のひとつとして米国の歴史に刻まれるだろうと指摘した。
  弾劾裁判が迅速に結審したことで、バイデン大統領は1兆9000億ドル規模のコロナ対応の経済対策や閣僚の承認などに注力できる。
  しかし米議会や国内の分断状況は続く。トランプ氏は無罪となった後、「米国の歴史上、新たな魔女狩りを示した」との声明を公表した。


2021.02.13-毎日新聞-https://mainichi.jp/articles/20210213/k00/00m/030/028000c
トランプ氏「無罪」の公算大 弾劾裁判13日にも評決

  米上院で開かれているトランプ前大統領(共和党)の弾劾裁判は4日目の12日、弁護団の陳述と、陪審員役を務める上院議員による質問が行われた。裁判は13日にも結審し、同日中にトランプ氏が有罪か無罪かの評決が出る見通し。有罪には出席議員3分の2の同意が必要だが、トランプ氏弾劾に消極的な共和党議員が多く「無罪」となる公算が大きい。

  トランプ氏は1月の議会乱入事件を巡り、直前に支持者に向けて「戦わなければならない」と演説したことなどが「反乱を扇動した」として下院で弾劾訴追された。
   昨年11月の大統領選で再選を阻まれたトランプ氏が、結果を覆すため暴力を呼びかけたと主張する民主党側に対し、弁護団は12日の陳述で、トランプ前政権下で民主党議員や候補者が「戦う」「抵抗する」といった言葉を多用してきたと指摘。バンダービーン弁護士は「政治の世界で多用される言葉。(トランプ氏のみが罪に問われるのは)二重基準だ」と訴えた。
   有罪評決には民主党上院議員50人に加え、共和党議員から17人の同意が必要だが、現時点で造反が広がる可能性は低い。早期幕引きを図りたいトランプ陣営の意向を受けて、弁護団は持ち時間を13時間以上残して陳述を終えた。証人招致の有無については決定していないが、13日中に検察、弁護側双方の最終弁論が行われ評決が出る可能性がある。【ワシントン高本耕太】


2021.02.12-朝日新聞 DIGITAL-https://www.asahi.com/international/reuters/CRWKBN2AC009.html
トランプ氏、無罪評決なら再び反乱扇動も=弾劾裁判で民主党

  [ワシントン 11日 ロイター] - 米連邦議会占拠事件を巡るトランプ前大統領の弾劾裁判は11日、3日目の審理を行った。検察官役を務める民主党下院議員は、陪審員役の上院議員が無罪評決を下せば、トランプ氏は再び反乱を扇動しかねないと強調した。
  これまで3日間の審理では1月6日の議会占拠に至るまでに、大統領選での不正を根拠なく主張していたトランプ氏が支持者らに発した激しい言葉の数々が焦点となった。
  弾劾裁判の合憲性を巡る初日の採決で、民主党とともに賛成票を投じた共和党議員は6人にとどまったため、有罪評決が出る可能性は極めて低いとみられる。民主党は有罪評決を下してトランプ氏が再び公職に就くのを阻止したい考え。
  検察官役筆頭のジェイミー・ラスキン下院議員は検察側の弁論を終えるのに際し「トランプ氏が公職に戻り、再び反乱を扇動した場合、他の誰でもなく私たちの責任となる」と訴えた。
  同じく民主党下院議員のテッド・リュウ氏はトランプ氏が2024年大統領選に立候補し、敗北した場合に同じことが起こり得ると警告した。
  民主党側は、トランプ氏が1月6日に支持者らに対し、バイデン氏の大統領選当選を正式に確定する手続きが進行していた議会に赴き「死に物狂いで戦う」よう呼び掛けたことが扇動行為だと証明するため、事件当日までのトランプ氏の問題行動を多数列挙した。
  民主党下院議員の弁論はおおむね両党から高い評価を得たが、一部の上院共和党議員は納得していないと指摘。
  ジェームズ・インホフ上院議員は「同じことを繰り返しているだけだ。私にとっては聞けば聞くほど信頼性がなくなる」と述べた。
  トランプ氏の顧問、ジェイソン・ミラー氏はツイッターで弁護側は12日に弁論を終わらせると表明。共和党上院議員の一部は、13日の審理終了を見込んでいると述べた。
  一方、民主党上院トップのシューマー院内総務は、上院が無罪評決を下した場合にトランプ氏を処罰するための異なる方法を探る可能性に含みを持たせた。反乱に関与した公職者が公職に就くのを禁じる権限を議会に与えている憲法修正第14条を発動する可能性が含まれる。


2021.02.10-BBC NEWS/Japan-https://www.bbc.com/japanese/56006039
トランプ氏の弾劾裁判が開始 米上院は裁判を合憲と判断

  アメリカの連邦議会襲撃事件を扇動したとして弾劾訴追された、ドナルド・トランプ前大統領の弾劾裁判が9日、上院で始まった。初日は弾劾裁判の合憲性をめぐる採決があり、賛成多数で合憲とされた。10日に実質的な審理が開始される。

  採決の結果は賛成56票、反対44票だった。トランプ政権で与党だった共和党の議員6人が、「反乱を扇動した」としてトランプ氏の弾劾を求める民主党に同調し、賛成票を投じた。
  トランプ氏の弁護団は投票に先立ち、弾劾裁判は違憲だと主張。大統領を退任した人物を弾劾裁判にかけることはできず、手続きの適正さも欠いていると訴えた。また、ジョー・バイデン政権で与党となった民主党について、政治的な動機に基づいて行動しており、悪意があると非難した。

襲撃や演説のビデオを上映
  民主党はこの日の審理でまず、先月6日に連邦議会議事堂が襲われた様子や、その直前のトランプ氏の演説のビデオを上映。
  「弾劾マネジャー」と呼ばれる検察官役の下院議員の1人、ジェイミー・ラスキン氏(メリーランド州)が、「ここに重罪や軽罪が映っている」、「これが弾劾に相当しないなら、相当するものは何もない」と訴えた。
  また、襲撃当日は議会内に娘がいて、彼女が危険な目に遭っていないか心配したと、涙ながらに振り返った。
  そして、「これがアメリカの未来であってはならない」、「憲法にのっとった民意を受け入れられないとして、政府と憲法に対して暴力を扇動する大統領を認めるわけにはいかない」と述べた。
  さらに、退任する公職者を弾劾裁判の対象から外す「1月の例外」を認めれば、危険な前例をつくることになると主張した。
弁護士は「憲法を侮辱」と反論
  一方、トランプ氏の弁護士のデイヴィッド・ショーン氏は、2017年のビデオ映像を上映。民主党内にトランプ氏の「弾劾を求める飽くなき欲望」があることを示す証拠だとした。
  「民主党が憲法の名の下に実現しようとしているのは、ドナルド・トランプが再び政治職に立候補するのを禁じることだ。しかしそれは、誰が標的なのかに関係なく、憲法に対する侮辱行為だ
  多くの米メディアは、トランプ氏がこの日、フロリダ州でテレビで弁護士の主張を見て、怒りをあらわにしたと報じた。
トランプ氏に忠誠な議員
  上院は現在、民主党と共和党が50議席ずつ分け合っている。
  この日の採決は、両党の勢力をほぼ反映した結果となった。同時に、共和党にはトランプ氏に忠誠な議員らが、有罪評決を防ぐのに十分な人数存在していることを示した。
  弾劾裁判でトランプ氏が有罪となるには、上院議員の3分の2以上の賛成が必要
  有罪とされた場合、トランプ氏は公職に就くことが禁止される。
これからどうなる
  民主党側とトランプ氏側は10日昼以降、主張を述べる時間が16時間ずつ与えられる。
  弁論は週末まで続くとみられる。その後、陪審員役の上院議員らに質疑の機会が与えられる。
  弾劾マネジャーが証人を呼び、審理の延長を求めるのかは不明。トランプ氏は任意での証言には応じないとしている。
  与野党の議員らは、新型コロナウイルス対策も進める必要もあることから、弾劾裁判の審理は迅速に行うことで一致しているとされる。
  有罪か無罪かを決める投票は、早ければ15日にも実施される見通し。
  BBCのアンソニー・ザーカー北米担当記者は、弾劾裁判は始まったばかりだが、最終的な結果はほぼ確実だと分析。
  この日の裁判の合憲性をめぐる採決は、判例から民主党が支持を集めやすかったにもかかわらず共和党から民主党に同調した議員は6人にとどまった。そのことからも、トランプ氏が有罪評決を受ける可能性は低いと解説した。


2021.01.26-Yahoo!Japanニュース(産経新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/f862320b35939c4016336401941d68cd9ca0bb38
米集計機メーカーがジュリアーニ氏を提訴 選挙「不正」批判に反発

  【ワシントン=黒瀬悦成】米投票集計機メーカー「ドミニオン・ボーティング・システムズ」は25日、昨年11月の大統領選で敗北したトランプ前米大統領の個人弁護士であるジュリアーニ元ニューヨーク市長が、大統領選に関する嘘を拡散して同社の名誉を毀損(きそん)したとして、13億ドル(約1350億円)の損害賠償を求める訴訟を首都ワシントンの連邦地裁に起こした。
   訴状によると、ドミニオン社は「ジュリアーニ氏が同社の集計機のせいで得票が操作され、『選挙が盗まれた』とする『大嘘』の主張を同調勢力と一緒に拡散させ、数百万人をだました」と主張した。

   また、大統領選に絡みトランプ氏の弁護に携わったシドニー・パウエル、リン・ウッド両弁護士や、FOXニュースなどの保守系メディアも大統領選をめぐる偽の主張の拡散に加担し、同社社員が迫害されたり殺害予告を受けたりするなどの「取り返しのつかない被害を受けた」としている。
   同社の集計機が使われた東部ペンシルベニア州での訴訟をめぐっては、ジュリアーニ氏がテレビなど公の場でドミニオン社の「不正」に関し虚偽の主張をしていたにもかかわらず、法廷に提出した訴状では同社の「不正選挙」への関与について一切言及しなかったと指摘した。
   自社の集計機の精度については独立機関の監査や、集計機にデータが入力された紙の投票用紙の再集計を通じて、「不正」があったとするジュリアーニ氏の主張は虚偽であることが証明されたとも主張した。
   同社の集計機で不正が行われたことを裏付ける具体的な証拠は、現在までに確認されていない。  ドミニオン社は今月、パウエル弁護士をすでに提訴したほか、今後も同社の名誉を傷つけた個人らを順次訴える考えを示している。


2021.01.12-JIJI com-https://www.jiji.com/jc/article?k=2021011200050&g=int
トランプ氏弾劾案を提出 米民主、「反乱扇動」の責任追及―13日にも採決

  【ワシントン時事】米野党民主党は11日、支持者による連邦議会議事堂乱入を扇動したとして、トランプ大統領に対する弾劾訴追決議案(起訴状に相当)を下院に提出した。13日にも採決する。可決されれば2019年の「ウクライナ疑惑」に次ぐ2度目の弾劾訴追となり米史上初。民主主義大国の権威を失墜させた「歴史的暴挙」の責任を問う動きが本格化してきた。
  弾劾決議案は「反乱の扇動」と題する1条項。ペロシ下院議長(民主)は11日の声明で「米国に対する大統領の脅威は差し迫っており、われわれの対応もまた同様だ」と述べ、政権がトランプ氏解任に動かなければ弾劾へ進む意向を強調した。
 下院では11日、大統領が「職務遂行不能」と判断された場合の対応を定めた憲法修正25条に基づくトランプ氏解任をペンス副大統領に求める決議案を審議。民主党は全会一致の承認を要求したが、共和党は反対した。12日にも民主党の賛成多数で可決される運びだ。
 可決後、ペンス氏が24時間以内にトランプ氏解任に応じなければ下院は弾劾決議案の審議に移る。ペンス氏は拒否する意向とされる。民主党の下院幹部は11日、弾劾決議案の採決を13日にも行い、可決されるという見通しを示した。


2021.01.08-西日本新聞-https://www.nishinippon.co.jp/item/o/679944/?utm_source=browsepush&utm_medium=push&utm_campaign=push
トランプ氏「新政権20日発足」

  【ワシントン共同】トランプ米大統領は7日、凍結が解除されたツイッターに動画を投稿し「新政権が20日に発足する。今は円滑で秩序だった政権移行に集中している」と述べ、バイデン次期大統領の大統領選勝利を認めた。6日にトランプ氏の支持者が連邦議会議事堂を一時占拠したことを受け、閣僚らが相次ぎ辞任し孤立化。与野党双方が責任を問い、解任圧力が強まっており、追及をかわす狙いもあるとみられる。AP通信は、バイデン氏への敗北宣言と報じた。
  トランプ氏は議会を占拠した支持者に関し「暴力や無法に憤っている」と非難した。扇動したと批判されている自身の責任には触れなかった。


2021.01.07-Yahoo!Japan-https://news.yahoo.co.jp/byline/iizukamakiko/20210107-00216399/
トランプ支持者が「裏切り者」を“集団イジメ”する動画が拡散 議会占拠の予兆 米大統領選

  恐れていたことが起きた。
  1月6日、ジョー・バイデン氏が次期大統領として正式に認定されようとしていた米議会に、全米からワシントンDCにかけつけたトランプ支持者たちが暴徒化し、バリケードを破って乱入、議会を占拠したのだ。認定手続きは中断を余儀なくされた。
議員はガスマスクも装着
  トランプ支持者たちはこう叫んでいたという。「トランプが勝ったのだ」「トランプがここに招待してくれたんだ。ここから去らないぞ」
  トランプ支持者たちが議事堂内の会議場まで迫ってきたため、会議場はロックダウンされ、議員たちは中に閉じ込められた。
  その時、会議場にいた議員がリアルな状況をこうツイートしている。「私は会議場にいる。床に伏せて、ガスマスクをつけるように指示された。デモ隊が会議場の扉を叩いているので、警備員や警官が銃を構えている。これはデモなんかではない。アメリカに対する攻撃だ」
  女性1人が銃で撃たれ、死亡した。 トランプ氏は支持者らに帰宅するよう促した。約4時間に及んだ「反乱」の後、平静を取り戻した議事堂だが、ワシントンDCは夜間外出禁止令を発令し、厳戒態勢に入っている。
  そもそも、議会占拠を焚きつけたのは他でもなくトランプ氏だ。トランプ氏は、事前にツイッターで、バイデン氏の大統領選当選認定に抗議する集会「SAVE AMERICA MARCH」に参加するようトランプ支持者たちに呼びかけていた。 
 そして、当日、ホワイトハウス前で開いた大規模集会で訴えた。「選挙は盗まれた。敗北は認めない。議会に向かって歩こう」
  トランプ支持者はその声に従うかのように、議事堂へと向かい、「反乱」を起こしたのである。そのため、トランプ氏を弾劾しようという声もあがっている。
  ワシントンDCに全米からかけつけた狂信的なトランプ支持者たち。彼らの怒りは、ワシントンDCに到着する前からすでに表れていた。
「裏切り者」呼ばわりされた共和党の重鎮
 「裏切り者、裏切り者、裏切り者」・・・トランプ支持者による議会占拠が起きる前日、ある機内で、乗客たちが声を揃えて連呼しているツイッター動画が拡散されていた。その様子はまるで、ある特定の人物をターゲットにして“集団イジメ”をしているようにも見える。

  実際、その機内には、特定の人物がいた。その人物とは、2012年、共和党大統領候補に出馬したユタ州の上院議員(共和党)のミット・ロムニー氏だ。ロムニー氏は、1月5日、ジョー・バイデン氏が正式に次期大統領に認定される1月6日の上下両院合同本会議に出席するためだろうか、地盤にしているユタ州ソルトレイクシティーからワシントンDCに向かっていたのだ。
  ロムニー氏にとって不運だったことは、乗客の多くがトランプ支持者だったことだ。彼らは、トランプ氏がツイッターで呼びかけた、バイデン氏勝利という選挙結果に抗議する集会「SAVE AMERICA MARCH」に参加すべく、偶然にもロムニー氏と同じ便に搭乗していたと思われる。
バイデン氏当選認定をめぐり共和党が分裂
  ロムニー氏がトランプ支持者から「裏切り者」呼ばわりされたのは、同氏が1月3日、トランプ氏が訴えている選挙の不正は間違っていると批判し、さらに、一部の共和党議員が自分たちの政治的野心のためにバイデン氏勝利に異議を申し立てようとしていることは民主的な共和国を危険なほど脅かすとツイートしていたからだ。
  実際、バイデン氏の勝利認定をめぐって、共和党は分裂していた。テッド・クルーズ上院議員やハガティ前駐日アメリカ大使らは徹底的に選挙の不正を調査すべきだと訴え、6日、バイデン次期大統領の当選に異議を申し立てようとしていた。
  その一方、ミット・ロムニー上院議員や上院共和党トップのミッチ・マコーネル上院院内総務など共和党の重鎮たちは、バイデン氏の勝利を認めて前に進むべき時だと訴えていた。そのため、彼らはトランプ支持者らから非難されていたのである。そのロムニー氏、空港では2重にマスクをし、めがねをかけていたが、搭乗ゲートでトランプ支持者に見つかってしまった。以下がその時の様子。

  トランプ支持者の女性がロムニー氏に声をかけると、その女性はマスクをつけていなかったのだろう、ロムニー氏は女性に「法律で決まっているから、空港ではマスクをつけて」と注意している。
   すると、女性は「命令しないでよ。6フィート離れているじゃない。わかってるわよね、あなたと話したいのよ」と言い、「なぜ、トランプを支援しないの? 彼を支援していないわよね」とロムニー氏に詰め寄る。それに対してロムニー氏は「私はトランプを支援しているよ。多くのことに同意して支援している」と弁明。
   女性がトランプ氏の不正選挙の訴えを支援するかときくと、ロムニー氏は「いいや、支援していない」ときっぱり否定し、「話せば長くなるが、憲法上のプロセスがあるからだ。私は憲法に従う。今週、議会でそのことをすべて説明するつもりだ」と言って、そそくさとラップトップパソコンを閉じ、逃げの体勢に入る。
   しかし、女性は攻め続ける。「あなたは、保守的な選挙区を代表する保守議員として選出されたのよね。あなたは、私たちを代表するために選出されたのよ。私たちのために働いてよ。私、間違ってる?」ロムニー氏は「私はユタ州の人々のために働いている」と答えて立ち去ろうとするが、女性はそれでもロムニー氏をなじり続けた。「そうよね。私はユタ生まれよ。あなたに投票しなかった人もたくさんいるわ。合法的に選出されなかったんじゃないの? あなたはお笑い者よ。全くのお笑い者。むかつくわ」
「辞めろ、ミット」
 そして、飛行機に搭乗したロムニー氏は、冒頭の動画のように、マスクをおろしたトランプ支持者たちから「裏切り者」という怒号を一斉に浴びせられたのである。それはある女性が「私たちがどう思っているか彼に教えてやりましょう」と呼びかけた後のことだった。
  女性が叫ぶ。「辞めろ、ミット。ブリスマやジョー・バイデンとの繋がりを知りたいわ、ミット・ロムニー。あなたの選挙区民は知りたがっているのよ。選挙区民の声を聞いてよ」
  ロムニー氏を弁護する乗客もいた。「私はあなたの選挙区民だけど、あなたは素晴らしい仕事をしていると思うわ」
  ロムニー氏はおそらく、機内前方のファーストクラス席に座っていたと推測されるが、トランプ支持者らの怒号には応えなかった。 共和党の重鎮としてリスペクトされてきたロムニー氏だが、狂信的なトランプ支持者たちの大きな怒りには太刀打ちできなかったようだ。
  トランプ氏を“裏切った”共和党議員と政治的野心からかトランプ氏を支援し続ける共和党議員。分裂した共和党は、今後、一丸となって、2024年の大統領選に向けてトランプ氏を支援し続けるのだろうか?



2020.12.24-BBC NewsJapan-https://www.bbc.com/japanese/55433707
トランプ米大統領、側近29人に恩赦や減刑 マナフォート元選対本部長ら

  ドナルド・トランプ米大統領は23日、元選対本部長のポール・マナフォート受刑者(71)ら側近29人に恩赦や刑の減免を与えた。前日にはイラクで民間人十数人を殺害し有罪となった軍事請負業者にも恩赦を与え、国連などから批判されている。
  トランプ氏はマナフォート受刑者(資金洗浄罪などで有罪)のほか、すでに禁錮刑の執行を免除した盟友ロジャー・ストーン元被告(68、連邦議会への偽証罪で有罪)、娘婿ジャレド・クシュナー氏の父親など26人に対して、恩赦を与えた。そのほか、3人について刑の執行を免除した。刑の執行免除は有罪判決の取り消しを意味しない。
  マナフォート受刑者は2016年大統領選に対するロシア政府の介入疑惑をめぐる捜査を発端として、大統領選とは直接関係のないウクライナでの政治コンサルタント活動をめぐり、脱税や銀行詐欺などの罪状計8件について実刑判決を受けた。さらに、アメリカに対する共謀と司法妨害の共謀の罪2件について実刑判決を受け、科せられた刑期は通算7年半だった。
  マナフォート受刑者は2019年3月に収監されたが、今年4月に新型コロナウイルス感染予防を理由に自宅で服役していた。今回の大統領恩赦によって、刑期7年半のほとんどが免除されることになった。


2020.10.20-HUFFPOST-https://www.huffingtonpost.jp/entry/tucson-mayor-trump-debt_jp_5f8e6a4dc5b67da85d2106ec
「トランプ大統領、8万ドルの借金返して」。アリゾナ州ツーソンの市長が、集会に来る大統領に借金返済を要求

  10月19日にはアリゾナ州ツーソンで集会を開催したが、ツーソンのレジーナ・ロメロ市長は開催に先立ち、大統領が4年前の借金8万ドルをまだ返していないことを伝える書簡を大統領に送った。
  書簡でロメロ市長は、選挙集会でのマスク着用とソーシャルディスタンスの維持も求めている。
  ロメロ市長のツイート「トランプ大統領に書簡を送り、ツーソンには公衆衛生を守る条例があることを伝えました」

  トランプ陣営がこれまでに開いた選挙集会の多くで、大勢の参加者が密集し、マスクをつけていなかった。ツーソンでは、ソーシャルディスタンスが保てない公共の場所でのフェイスカバー着用が、条例で義務付けられている。
  ロメロ氏は書簡で、「これまで私たちが積み上げてきたものが、1つの集会で危険に晒されるようなことがあれば大変不幸です。そのため選挙集会では、市の条例に敬意を示して従って欲しい」「選挙で選ばれた公職者として、有権者に手本を示す責任がある」と求めている。
  また、トランプ陣営が2016年にツーソンで開いた選挙集会にかかった費用8万ドル(約844万円)をまだ市に返済していないことをリマインドし、それに加えて19日の選挙集会では公共の安全を守るためのサービスに5万ドル(約527万円)かかると伝えている。
私たちは4年前のことを忘れない
  アメリカの人口トップ50の都市で、初めてラテン系アメリカ人女性の市長に選ばれたロメロ氏。
  同氏は18日のMSNBCのインタビューで、「ツーソンの市民は努力して、新型コロナウイルスの感染者数を減らしており、スーパースプレッダー(感染が超拡大する)イベントを、私たちの市で開いて欲しくない」と述べた。
  トランプ大統領はツーソンでの集会の後、集会の動画をTwitterに投稿しているが、ロメロ氏の求めにも関わらずソーシャルディスタンスが守られている様子は見られない。

  ロメロ氏はさらに借金について「集会は大統領としての公式訪問ではなく、選挙のためのものなので市民の税金を使うべきではない。大統領にはきちんと支払いをして欲しい」と説明した。
  調査報道NPO「センター・フォー・パブリック・インテグリティ」とNBCの調査によると、トランプ氏の選挙陣営はアメリカ14の都市で、2016年の選挙に関連した合計182万ドル(約1億9200万円)の借金を抱えている。
  現在アメリカの多くの都市が新型コロナウイルスの影響で金銭的に厳しい状況に立たされており、トランプ陣営が借金を返済しないことが自治体の重荷になっている。
  2016年の選挙でトランプ大統領はアリゾナ州で勝利を収めた。しかし現在のところ、同州では民主党候補のジョー・バイデン氏が有利な状況にある。ロメロ氏らが覚えているのは借金だけではない。市長は、トランプ氏が前回大統領に立候補した際に、アリゾナ州在住のラテン系アメリカ人に対して発した言葉や行動を「忘れない」とMSNBCのインタビューで強調した。
  「私たちは彼がメキシコ系アメリカ人を侮辱し、移民やラテン系アメリカ人を侮辱したことを忘れません。彼が私たちをレイピスト、殺人者と呼んだことを忘れません。彼が子どもたちをツーソンから45分も離れた所に閉じ込めたことを忘れません。私たちは、今回の選挙を楽しみにしています」
 (ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆しました。)


2010.10.19-mashup NY-https://www.mashupreporter.com/trump-claims-400-million-debts-is-a-peanut/
「4億ドルなんてはした金」トランプ氏 個人保証の借金認める

  トランプ大統領は15日のタウンホールで、ニューヨークタイムズが報じた4億2,100万(440億円)ドルの個人保証による借金の存在について、「数字が誤っている」と述べつつ、「私の純資産のごく一部にすぎない」「(資産に比べれば)4億ドルなんてはした金だ」と発言するなど、部分的に認める発言を行った。
  また、個人保証にもかかわらず「一部は、私にお金を貸したいと思っていた金融機関への好意だ」と主張。さらに海外の銀行からの借金かと問われると「私の知る限りそうではない」と述べ、「もし希望するなら、誰に”少額”を借りているかあなたに教えよう」と語った。
  なおトランプ氏は以前、同報道を「完全なフェイクニュースで、でっちあげだ」と否定していた。

  ニューヨークタイムズは27日、トランプ氏が大統領になる前の15年間のうち、10年間は連邦所得税を支払っていなかったほか、2016年と2017年に収めた金額はわずか750ドルだったと報じた。
  タイムズはこの記事の中で、トランプ氏が4億2,100万ドルの借金を個人保証しており、このうち3億ドルが4年以内に期限を迎えると伝えた。
  これらの主な融資元はドイツ銀行で、同社は「ドラール・リゾート」の購入に1億2,500万ドル、ワシントンホテルのために1億6,000万ドルをトランプ氏に提供していた。
  ドイツ銀行のほかには、2012年以降、重要な貸手と考えられるのは、米不動産投資信託のラダー・キャピタルだけだという。
  なおMother Jonesによると、ラダーキャピタルは商業不動産担保証券などに特化した企業で、従来の銀行からの借り入れができない人々にとって、しばしば最後の手段として使用されているという。同社は、トランプタワーとトランププラザにローンを提供しており、これらは今後数年で期限を迎える。
メイン事業が業績不振
  タイムズによると、トランプ氏のコアビジネスのほとんどが、毎年数百万ドルの損失を出している。トランプ氏はこれらを維持するため、過去数十年、主な収入源となってきたテレビ番組のライセンス収入などをリゾートやホテルに費やしてきた。しかし、これらは近年急激に縮小しているという。
  この一方で、過去数年、株式を大量に売却しており、記録によると、トランプ氏は2014年1月に9,800万ドル、2015年に5,400万ドル、2016年に6,820万ドルを売却していた。7月に開示された財務情報によると、売却可能な証券はわずかに87万3,000ドルだったという。
  タイムズは、ローンは通常、企業の収益性に基づくものだとした上で、継続的に損失を出しているドラールとワシントンホテルを、リファイナンスするのは容易ではないだろうと指摘している。
  一方、元財務当局者は同紙に対して、トランプ氏が司法省に敵を捜査させることをいとわない姿勢を示していることから、連邦規制の対象にある銀行にとっては、厄介な立場に置かれることになると見解を語っている。


2020.10.10-Yahoo!Japanニュース(Forsight)-https://news.yahoo.co.jp/articles/fa64522ea6194833a3e34109ef2db107c3988126
トランプ大統領を「命がけ選挙」に駆り立てる「破産」「訴追」の恐怖
(杉田弘毅)
(1)
  新型コロナウイルスに感染しても3日で退院し、スーパースプレッダーとの揶揄を撥ね返して、選挙集会を再開したドナルド・トランプ米大統領。激戦州に乗り込んで「20年前より元気がみなぎっている」とダミ声で叫ぶ、まさに「命がけ」の選挙運動だ。敗北しても大統領選の結果を受け入れない、と今から宣言している。  過去の大統領が再選を目指した時は、ここまでなりふり構わない戦いではなかった。一期で敗北したジミー・カーター、ジョージ・ブッシュ(父)は粛々と負けを受け入れた。トランプの何が何でもホワイトハウスに居続けるという執念は驚嘆すべきだ。この絶対に負けられないとの固い決意の理由は何なのだろうか。  再選を果たし自分の正当性を世界中に認めさせたいという承認欲求だけではない、もっと切迫した事情が見えてくる。
ホワイトハウスを出たら破産か
  トランプの税逃れは誰もが想像していた。だから、2016、17年は連邦所得税を年間750ドル(8万円弱)しか払っていないという『ニューヨーク・タイムズ』の9月末の「特ダネ」も、オクトーバー・サプライズとはならなかった。
   しかし、この報道で気になるのは、トランプが多額の借金を抱え、このままでは数年後には破産せざるを得ないとの予想の方だ。  同紙が納税報告書を入手して報じたトランプの懐事情を見てみよう。

   カジノや航空会社、ゴルフ場、ホテルビジネスの破綻・不振で現在4億2100万ドル(約445億円)の債務を抱え、そのうち3億ドル超は4年以内に返済期限を迎えるという。負債総額10億ドルとの試算もある。住宅バブルの崩壊、新型コロナ蔓延による不況、そして経営センスのなさが原因だ
   この数字は驚くものではない。『ワシントン・ポスト』取材班が2016年に出版した『トランプ』(邦訳文藝春秋)によると、1990年代の段階で22の事業のうち、利益が出ているのはわずか3件で、負債は32億ドルに膨らんだという。金を貸していた銀行団は資産の売却や生活費の制限をトランプに約束させた。
    2004年からテレビショーの『アプレンティス』が始まり、番組放映権料や出演料、そして「トランプ・ブランド」の商標を売ることでトランプは4億2700万ドルを稼いだ。だが、『アプレンティス』はトランプの移民差別発言に批判が高まり、2015年には終わった。ブランドもトランプの言動で米国内が社会的分断に陥った今、かつての儲けをもたらさない。
   米国の国税庁である「内国歳入庁」(IRS)から脱税の疑いもかけられ係争中だ。もし脱税が認定されれば1億ドル以上の追徴となる。
   米誌『フォーブス』のように、トランプの現金化可能な資産は25億ドルに上るとの推計もある。だが、それでも果たして年々膨らむ債務の返済に十分なのか、心もとない。
   トランプが財政面で生き延びるには、大統領職を続けることが条件となる。コロナ禍で景気は沈滞したままだから、不動産ビジネスの展望は明るくない。だが、返済期限が迫る3億ドル超の債務も、大統領職についていれば返済期限の延期が可能だ。

   一方で、選挙で敗北し民間人となれば、債務の返済延期は認められまい。裁判所に破産と認定され、フロリダ州の別荘など残る資産も没収される恐れがある。  最大の債務は、長年関係を続けるドイツ銀行からのものだ。最低でも1億2500万ドルに上るとされ、2023年と24年に返済期限を迎える。ドイツ銀行は米捜査当局から資金洗浄(マネーロンダリング)や外国への贈賄で捜査対象となっている。「米連邦準備制度理事会」(FRB)からも「重大な脆弱性を抱える」と指摘された。ただでさえ窮地のドイツ銀行が一民間人となったトランプの債務の返済期限延期を気前よく受け入れるとは思えない。
(2)
プーチン大統領が救世主?
  命がけの選挙運動で再選を果たしたとして、トランプが財政的に当てにしているのは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領ではないか。
   ジャーナリストのボブ・ウッドワードの最新刊『Rage』(未邦訳)によると、トランプ政権で国家情報長官だったダン・コーツはロシアゲート疑惑を調べるうちに、トランプは結局ロシアの言いなりであるとの疑念が払しょくできなかった、という。
   確かにトランプには、プーチンに取り入ろうとする言動が多い。反プーチン派の政治家毒殺未遂事件には「米国だって自慢できない」と物わかりがよい。シリアやリビアなど中東への軍事作戦でもロシアをとがめない。米国の縄張りを奪われたのに、どうぞご自由にである。対ロシア制裁を強化しようとする米議会に、トランプはたびたび抵抗している。

   2016年大統領選にロシアが介入したことを、「米中央情報局」(CIA)などは早くから断定している。だがトランプは2018年の米ロ首脳会談後の記者会見では、選挙介入を否定したプーチンの発言を「説得力を持つ」と支持し、米政府を唖然とさせた。
   弾劾訴追の対象となった「ウクライナ疑惑」では、2016年大統領選の時に米民主党のサーバーにハッキングをかけたのはロシアでなくウクライナであるという奇抜な論も展開した。なぜそこまでロシアをかばうのか、と首をひねらざるを得ない。
   しかし、いかに不興を買おうが、プーチンにすがる事情がある。トランプはプーチンこそが、自らの債務地獄を救う救世主となると信じている節があるのだ。もちろんプーチンはタダではトランプを救済しない。米大統領として、ロシアの問題行動に目くじらを立てないという行動を示してほしいはずだ。
モスクワのトランプ・タワー
  トランプの顧問弁護士を務め、トランプの浮気相手だったポルノ女優の口封じなど尻拭いをさせられてきたマイケル・コーエンは、 「トランプは、世界一の金持ちはプーチン氏だと信じている」  と語っている。
   コーエンによると、トランプは不動産ビジネスでの大勝利をロシアで狙っていたという。
   それはモスクワの赤の広場に面した敷地に120階建てのトランプ・タワーを立てる計画だ。プーチンからビル建設の許可を得るためにペントハウスをプーチン専用のフロアーとして提供する構想もあった。コーエンはその交渉役で、トランプ・タワーの建設はモスクワだけでなく拡大していくことになっていたという。結局この計画はトランプの大統領就任で中断したが、トランプは再開の機会を狙っているはずだ。
   また、コーエンの著書によると、2016年大統領選では落選しても、プーチンが金を貸してくれることになっているとトランプは語っていたという。
(3)
ロシアビジネスの甘い体験
 トランプにはロシアの政商たちの財力で救われた甘い記憶がある。2004年に4135万ドルでフロリダ州に自宅を購入し、その後転売を試みたが、4年間も店晒しになった末に、ロシア人政商が9500万ドルで購入してくれて大儲けをした。先述のコーエンは、トランプは実際の購入者はプーチンだと語っていたと言う。
 またトランプは毎年主催した「ミス・ユニバース」コンテストで赤字を出していたのだが、2013年にロシアで開催した時には、230万ドルの利益を出した。ロシアには超富裕層がいて自分のビジネスに向いているというのがトランプの結論である。
 トランプのロシアコネクションをウォッチしている米英の情報機関は、プーチンはトランプのモスクワでの不動産ビジネスを熟知しその弱みも握っていると読んでいる。だからこそ、トランプはプーチンに頭が上がらないし、今後のビジネスの挽回のためにもロシアでの大掛かりな不動産業に踏み出したいのだ。
外国こそが望みの種
  大統領となった後もトランプ・ブランドの使用許可を与えることで、トランプの企業はフィリピンから300万ドル、インドから230万ドル、トルコから100万ドルと多くの利益をうみだした。
  だが、米国内におけるトランプ・ブランドはもはや金のなる木ではない。国内の2つのホテル建設計画は中止となったし、ワシントンにあるホテルは2018年までに5500万ドルの損失を出した。ゴルフ場も利益を生んでいない。それに比べてドナルド・トランプの名前が神通力を持つ外国こそが儲けの場となるのだ。
   プーチンのほかにトランプが頼みとする超富裕な独裁者と言えば、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子だ。前述したウッドワードの『Rage』の中で、トランプは『ワシントン・ポスト』コラムニストのジャマール・カショギ(ハーショクジー)が皇太子の指示によりサウジアラビアの治安組織に殺害されて大騒動となった事件で、「(制裁をかけようとする)米議会から皇太子を救ったのは私だ」と豪語している。
   ここからも、大統領として便宜を図り、目をつぶることで、ビジネス上の恩恵を狙う様子がうかがえる。
(4)
落選すれば人生の破滅
   トランプが再選を勝ち取らなければならないと焦る理由には、民間人となれば訴追されるという恐怖もあるはずだ。
   米司法省は「現職大統領は起訴しない」という原則を順守している。これは大統領を起訴し裁判にかけることで、司法が行政機能をマヒさせるため、米憲法の定める3権分立に違反するという理由から成り立っている。弾劾手続きとなったウォーターゲート事件の時のリチャード・ニクソン大統領も、不倫もみ消し疑惑の時のビル・クリントン大統領もこの原則により起訴されなかった。
   だが、トランプが民間人となれば話は別だ。
   ロシア疑惑でジェームズ・コミー連邦捜査局(FBI)長官を解任し、ロバート・ムラー特別検察官の捜査にも協力しなかった。サリー・イエーツ元司法長官代理ら400人近い連邦検事OBは、大統領でなければ間違いなく起訴されるだろう、との共同書簡を発表している。イエーツは、「私はもっと証拠が弱い件でも、これまで司法妨害で起訴に持ち込んできた」と証言している。
   時効にも守られない。トランプはロシア疑惑のほかに、選挙資金を不倫相手の口止め料に使ったことで選挙資金規正法違反でも捜査を受けたが、これらの事件の時効は5年だ。2021年1月に大統領を退任するとなれば、2016年1月以後の事件は訴追対象となり、これらの案件は含まれる。
   再選されなければ、バイデン民主党政権の司法長官が自分への捜査を最重要任務として進め、あらゆる案件で起訴・有罪に持ち込もうとするとにらんでいるに違いない。そうなれば、彼の人生は破滅を迎える。
  トランプはホワイトハウス入りした後は、「政治とはすべて自分の利得のため」とみなして行動してきた。11月3日の大統領選はまさに公私ともに自分の運命を決める決戦の選挙であるのだ。
 杉田弘毅


2020.10.10-nifty ニュース.(日刊ゲンダイ DIJITAL)-https://news.nifty.com/article/domestic/government/12136-821231/
“不動産王”トランプは実は借金まみれ 大統領選に負ければ丸裸に【窮地のトランプ大統領 焦燥の真相】
(春名幹男/国際ジャーナリスト)

  米大統領選は毎回エキサイトする。しかし、今回ほど感情をむき出しにした激突も珍しい。 リベラル系メディアのドナルド・トランプ大統領批判も強烈だ。特に、大統領は「過去15年間のうち10年間税金を払っていない」「2016~17年の税金支払額は各750ドル(約9万9000円)」とする9月27日付ニューヨーク・タイムズ紙報道に、多くの米国民が驚いた。
  だが、この報道が伝えたもう一つの真実は日本では注目されていない。実はトランプ大統領は借金まみれだというのだ。
  借金の返済期限は、トランプタワー関係のローンが2022年に1億ドル(約106億円)、その他のローンが24年に4億2100万ドルとなっている。実はそのことと大統領選の間に微妙な関係があるのだ。
  トランプ大統領といえば、一代で成功した実業家といわれ、尊敬もされてきたが、その実像はほとんど知られていなかった。確定申告書類を基にした同紙の報道に、他の信頼できる情報を加えて、可能な限り分かりやすく全体像を伝えたい。

  トランプ氏は第一に、父フレッド氏(1999年死去)から計4億1300万ドルもの資産を相続していたのだ。とはいえ、91年、ニュージャージー州アトランティックシティーにあるホテル1軒が倒れ、さらに同シティーでカジノ2軒、92年はニューヨークのプラザホテルが倒産、さらに04年にはトランプホテル・カジノ、08年には別のリゾートが倒産して手放し、約18億ドルの負債が残った。ところが、04年にNBCで始めたリアリティー番組「アプレンティス」のプロデュース、出演で4億2740万ドルを稼ぎ、息を吹き返し、次はその収入を米国内外のゴルフ場買収などに充てた。負債の返済はなお続いていて、所得は赤字とされ、所得税額はゼロと算定、というわけだ。

 現状では、外国のホテルに自分の名前を貸すブランド事業などでは黒字を出しているが、ゴルフ場やホテルは赤字が続いている状態。ブランド事業では、20%の「コンサルタント料」を必要経費として計上、実際にはそれを長女のイバンカ氏に渡すという不可解な経理の実態も明らかになったという。また、トランプ氏と内国歳入庁(IRS)の間で、所得税額をめぐる対立が表面化している。トランプ氏は当初の課税額から7290万ドル割り戻しを受けていたが、IRS側の監査で不正と判断された場合には、トランプ氏はその全額を返却しなければならない。トランプ氏の借入金総額については、「約5億ドル」(マザー・ジョーンズ誌)説や、「約11億ドル」(フォーブス誌)説もあり、真相は不明。

 トランプ氏が大統領選に勝利し、現職大統領として返済期限を迎えれば、何らかの支援を受けやすいが、落選した場合、資産売却など惨めな目に遭うことになる。(春名幹男/国際ジャーナリスト)


2020.10.10-Livedoor.News(日刊デンダイDIGITAL)-https://news.livedoor.com/article/detail/19033557/
“不動産王”トランプは実は借金まみれ 大統領選に負ければ丸裸に【窮地のトランプ大統領 焦燥の真相】

  米大統領選は毎回エキサイトする。しかし、今回ほど感情をむき出しにした激突も珍しい。
  リベラル系メディアのドナルド・トランプ大統領批判も強烈だ。特に、大統領は「過去15年間のうち10年間税金を払っていない」「2016~17年の税金支払額は各750ドル(約9万9000円)」とする9月27日付ニューヨーク・タイムズ紙報道に、多くの米国民が驚いた。
  だが、この報道が伝えたもう一つの真実は日本では注目されていない。実はトランプ大統領は借金まみれだというのだ。

  借金の返済期限は、トランプタワー関係のローンが2022年に1億ドル(約106億円)、その他のローンが24年に4億2100万ドルとなっている。実はそのことと大統領選の間に微妙な関係があるのだ。
  トランプ大統領といえば、一代で成功した実業家といわれ、尊敬もされてきたが、その実像はほとんど知られていなかった。確定申告書類を基にした同紙の報道に、他の信頼できる情報を加えて、可能な限り分かりやすく全体像を伝えたい。
  トランプ氏は第一に、父フレッド氏(1999年死去)から計4億1300万ドルもの資産を相続していたのだ。
  とはいえ、91年、ニュージャージー州アトランティックシティーにあるホテル1軒が倒れ、さらに同シティーでカジノ2軒、92年はニューヨークのプラザホテルが倒産、さらに04年にはトランプホテル・カジノ、08年には別のリゾートが倒産して手放し、約18億ドルの負債が残った。
  ところが、04年にNBCで始めたリアリティー番組「アプレンティス」のプロデュース、出演で4億2740万ドルを稼ぎ、息を吹き返し、次はその収入を米国内外のゴルフ場買収などに充てた。
  負債の返済はなお続いていて、所得は赤字とされ、所得税額はゼロと算定、というわけだ。
  現状では、外国のホテルに自分の名前を貸すブランド事業などでは黒字を出しているが、ゴルフ場やホテルは赤字が続いている状態。
  ブランド事業では、20%の「コンサルタント料」を必要経費として計上、実際にはそれを長女のイバンカ氏に渡すという不可解な経理の実態も明らかになったという。
  また、トランプ氏と内国歳入庁(IRS)の間で、所得税額をめぐる対立が表面化している。トランプ氏は当初の課税額から7290万ドル割り戻しを受けていたが、IRS側の監査で不正と判断された場合には、トランプ氏はその全額を返却しなければならない。
  トランプ氏の借入金総額については、「約5億ドル」(マザー・ジョーンズ誌)説や、「約11億ドル」(フォーブス誌)説もあり、真相は不明。
  トランプ氏が大統領選に勝利し、現職大統領として返済期限を迎えれば、何らかの支援を受けやすいが、落選した場合、資産売却など惨めな目に遭うことになる。


2020.10.02-Wedge Infinity-https://wedge.ismedia.jp/articles/-/20948
脱税が支えた「トランプ王国」の虚像と虚構
(1)
  ニューヨーク・タイムズ紙の特大スクープでトランプ大統領が長年、所得税の脱税と超過少申告を繰り返していた実態がついに明るみになった。自ら豪語してきた「億万長者」は虚像だった可能性が高い。
   「私は(億万長者の)ドナルド・トランプより高額納税者だI paid more taxes than Donald Trump!」―11月3日の大統領選挙を前に、全米でこんなメッセージ入りシャツ類やピンバッジの販売が始まった。
   「ドナルド・トランプより高額納税者はクラクション鳴らせHonk if you paid more taxes than Trump」―ほぼ同時に、同趣旨の文言を刷り込んだ乗用車ステッカーのネット販売も始まり、同調者同士が走行中にすれ違いざまクラクションを鳴らすことを呼びかける運動へと広がる気配を見せている。
   いずれも、先月27日、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた爆弾記事で、2016年、17年両年度のトランプ大統領の所得税納税額がたったの750ドルだったことが判明したことを受けたものだ。全米の一般サラリーマンはもとより、建設労働者、ホテル・メイドなども含めた圧倒的多数の国民が毎年1000ドル以上の所得税を納税してきており、それを下回る大統領個人の不正納税を糾弾すると同時に、大統領選での「トランプ追放」を有権者向けにアピールする狙いがあるとみられる。
   同紙特大スクープの重要骨子は以下のようなものだ:

  ①トランプ氏は過去18年間にわたり、9500万ドルの所得税を納税したが、その後、「企業損益」などを理由に7290万ドルの還付を受けた。州税、市税でも2100万ドルの還付を受けた。所得税還付金7290万ドルについては、「疑わしき方策dubious measures」により還付を受けた可能性があるとして、現在、内国歳入庁(IRS)の監査対象となっており、その結果次第では大規模罰金を科せられる可能性もある。
  ②トランプ氏は2016年、2017年の両年、連邦所得税をそれぞれ750ドルだけ納税するにとどまった。
  ③過去15年のうち10年分については、損失が収益をはるかに上回ったことなどを理由として所得税をまったく納めなかった。
  ④トランプ氏は豪勢なライフスタイルを維持するため、自家用旅客機、数多くの別邸、ゴルフコースを次々に手に入れたが、購入費および維持費の大部分を「経費扱い」として税処理してきた。
  ⑤トランプ氏は2000年以来、いくつものゴルフ場経営で3億1500万ドルの損失を計上したほか、大統領就任後、新設オープンしたばかりの首都ワシントンの「トランプ・インタナショナル・ホテル」経営でも5500万ドルの損失を税申告した。

   初めて暴露されたこうした驚くべきトランプ氏の納税実態は、「不動産王」「億万長者」「屈指のディールメーカー」などこれまで自慢してきた自画像とは大きくかけ離れたものであったことを裏付けている。
   しかし、それだけにとどまらない。今回報道では詳細が明らかにされなかったさらなる疑惑がいくつもある。
   その第1は、2022年までに返済義務が迫っているとされる4億2100万ドルもの借金をどこから借り受けたかだ。
   ブルームバーグ通信は税問題に詳しいベテラン記者による解説記事の中で、トランプ氏がロシアのプーチン大統領またはその側近財界人から多額の融資を受けてきた疑惑に言及、今後、捜査当局による本格的メスが入ることになれば、重大な国家的犯罪に発展する可能性を指摘している。
   この点に関連して想起されるのは、2018年7月16日、ヘルシンキでプーチン大統領との首脳会談に臨んだトランプ氏の終始怖気ついた態度と発言だ。席上、記者団から「米国トップの情報機関の最終結論として、ロシアがプーチン指揮の下で2016年米大統領選に介入した件を話したか」との質問を受けたトランプ氏は、隣席のプーチン氏の顔色をうかがうようなしぐさを見せながら「会談でその件も話題に上ったが、プーチン氏は真っ向から否定した。わが国のインテリジェンスがどう言おうが、私は彼の言葉を信じる」と答えた。この時の大統領の卑屈なまでの発言と態度は米主要テレビ、新聞で大々的に報じられた。米議会でも野党民主党のみならず、与党有力議員の間でも、「自国のれっきとした情報機関の調査より外国指導者の言葉に重きを置くとは何事か」といった猛烈な非難の声が挙がった。
   有力誌「Atlantic」最新号は、2年前のこの“ヘルシンキ・エピソード”を念頭に「ニューヨーク・タイムズ紙の指摘で浮上したトランプ氏の莫大な借金の出所がもしロシアなどの外国政府だったとしたら、大統領がつねに脅迫にさらされ、国家安全保障が損なわれる危険がある」との論評を掲げている。
(2)
追跡不可能な疑わしい海外取引
  第2は、トランプ氏が大統領就任後、フィリピン、トルコなど諸外国とのビジネス取引に関係、巨額の利益を得ていたことだ。
  周知のとおり、米国では「倫理法」の規定により、大統領以下、閣僚、政府高官が私的な商取引に従事することは禁じられている
  トランプ氏の場合、不動産取引などを主体とした「トランプ・オーガニゼーション社」(本社ニューヨーク)を立ち上げ、大統領就任後は、公私混同の批判をかわすため、社長の座を長男に移譲したものの、経営者としての地位はそのまま保持してきた。
  その結果、就任後も実務は長男に委ねつつも、大統領の立場をフルに生かし、海外でのビジネスを展開、その際に、数千万ドルに達する所得税を当該国に支払っていることも明らかになっている。
  非営利の監視団体「Open Secrets」の調査によると、大統領は2016年から2019年にかけて、インドで410万ドル、トルコから7百万ドル、フィリピンから5百万ドルの収益を得たほか「ほかにも追跡不可能な疑わしい海外取引が無数に行われてきたとみられる」という。
  米下院倫理委員会、歳入委員会など関係委員会は、ニューヨーク・タイムズの調査報道を踏まえ、今後、連邦政府当局者の証人喚問、外国企業からの事情聴取に乗り出す構えを見せている。
  第3の関心事は、今日のトランプ氏の「個人資産」規模だ。
  その実態については謎が多く、正確の数字は明らかになっていないが、経済誌「Forbes」などの試算によると、「推定25億ドル前後」とされる。
  しかし、その中にはマイアミの巨大ゴルフ施設Doral Resort, スコットランドの名門ゴルフ場Turnberryなど、多額の借金で買収した不動産物件多数が含まれており、実際に手元に残るキャッシュがどれだけかははっきりしていない。
  しかも、トランプ氏が2022年までに返済を迫られる4億2100万ドルもの借金を、今後2年間でスムーズに返済できるかどうかが、トランプ氏の「純個人資産」規模を知るひとつの手掛かりになることだけは確かだ。
  このようにトランプ氏のビジネス取引は、多くの謎と厚い秘密のベールに包まれてきたが、トランプ政権下の司法、財務当局は事実上、これを放置してきたと言っても過言ではない。
  しかし、もし、11月3日に迫った大統領選挙の結果、バイデン候補が勝利した場合、局面は一変することになる。
  すでに政界筋では、バイデン政権誕生後、あらゆる“トランプ疑惑”をそうざらいする特別タスクフォースがホワイトハウス内に設置され、その統括責任者として敏腕検察官上がりのカマラ・ハリス女史が副大統領の立場で直接指揮する計画も浮上している。その結果、トランプ氏が刑事告発される可能性も現実味を帯びてくる。
  いずれにしても、大統領選挙結果次第では、虚構だらけの「トランプ王国」が早晩、ついに“砂上の楼閣”として瓦解してしまうことになりかねない。
  これまでの選挙戦でバイデン候補にリードを許してきたトランプ氏だが、劣勢挽回の好機と期待をかけた去る29日の第1回討論会でも、資質面、性格面での弱点をさらけだし、かえって評判を落とす結果となった。
  脱税、巨額過少申告問題の批判も、草の根レベルで今後広がるにつれ更なる支持率低下につながりかねず、大統領の苦悩は一層深まるばかりだ。


Qアノン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


  Qアノン(キューアノン、: QAnon)は、アメリカ極右が提唱している根拠のない陰謀論である。この陰謀論では、世界規模の児童売春組織を運営している悪魔崇拝者小児性愛者人肉嗜食者秘密結社が存在し、ドナルド・トランプはその秘密結社と戦っている英雄であるとされている。この陰謀論で仮定されている秘密結社は、一般的にディープ・ステート: deep state影の政府)やカバール: cabal、直訳で「陰謀団」)と呼ばれている。アメリカの検察官の中には、Qアノンについて「一般的にカルト宗教とみなされている(陰謀論者の)グループ」と説明する者もいる。

  この陰謀論の信奉者は、自由主義的(リベラル)なハリウッドセレブや民主党の政治家、および政府高官の大多数をその秘密結社のメンバーであるとして非難しており、トランプが計画している「嵐」(: The Storm)と呼ばれる報復の日には、秘密結社のメンバーが大量に逮捕されると信じている。また、バラク・オバマヒラリー・クリントンジョージ・ソロスによるクーデターを阻止するために、トランプはロシア人との共謀(ロシア疑惑)を装ってロバート・モラーに児童売春組織の存在を暴露し、彼に協力を仰いだと信奉者は主張している。Qアノン陰謀論は、ロシア政府の支援を受けたソーシャルメディア上の荒らしアカウント、およびロシアの国営メディア(ロシア・トゥデイスプートニクなど)によって拡散されている。

  ピザゲートなどの同様の疑惑や陰謀論が先行して出回っていたが、Qアノンの正確な始まりは、2017年10月に「Q」というハンドルネームの人物によって、匿名画像掲示板4chanに投稿された一連の書き込みである。この時点でのQは、恐らくアメリカに住む個人だったが、現在では同じ名前で行動している複数人のグループである可能性が高い。Qの投稿を対象に計量文献学的分析を行った研究では、少なくとも二人の人物が異なる時期に「Q」という名前で投稿を行ったことが示唆されている。「Q」というのは、トランプ政権とその反対派に関する米国内の機密情報にアクセスできる「Qクリアランス」の権限を持つ政府高官という意味である。NBCニュースは、3人の人物がQのオリジナルの投稿を書き込み、複数のメディアプラットフォームに拡散して信奉者を獲得していったと報じている。Qアノンの前にも、FBIAnon、HLIAnon(High-Level Insider)、CIAAnon、WH Insider Anonといった同様の書き込みが行われていた。

  2018年8月には、トランプ再選キャンペーンの集会にQアノン信奉者が現れ始めた。Qアノンを拡散してきたBill Mitchellは、2019年7月にホワイトハウスで行われた「ソーシャルメディアサミット」に出席した。Qアノン信奉者は、ソーシャルメディアの投稿に「#WWG1WGA」というハッシュタグを一般的に付けている。これは「Where We Go One, We Go All」の略であり、日本語だと「我々は一致団結して進んでいく」という意味の標語である。2019年8月の集会には、Qアノンの標語を使用して群衆を鼓舞していた男性がいたが、Qアノンを意識したものではないと後に否認した。これは、FBIがQアノンをテロリズムの潜在的要因であるとする報告書を発表した数時間後に発生した(連邦政府機関が正式に陰謀論をそのように評価したのは初である)。メディア・マターズ・フォー・アメリカが行った分析によると、2020年10月の時点で、トランプはQアノンと関係している150個のTwitterアカウントに返信したりリツイートすることで、少なくとも258回、時には1日に何度もQアノンの主張を拡散・増幅させていた。Qアノンの信奉者は、トランプのことを「Q+」と呼ぶようになった。

  2020年10月時点でQアノン信奉者数は不明だが、この陰謀論はオンライン上で多くの信奉者を維持している。2020年6月には、Qは信奉者に「デジタル兵士の誓い」を行うように促し、多くの信奉者がTwitterのハッシュタグ「#TakeTheOath」を使って誓いを立てた。2020年7月にはTwitterが、数千個のQアノン関連アカウントを停止し、陰謀論の拡散を抑制するためにアルゴリズムに変更を加えた。2020年8月に報告されたFacebookの内部分析によると、数千のグループやページに跨る数百万人の信奉者がいたことが判明した。Facebookは、同月後半にQアノンの活動を削除・制限する措置を講じ、10月には陰謀論をプラットフォームから完全に禁止すると述べた。また信奉者らは、8chan(現・8kun)やEndChanなどの専用の画像掲示板にも移行しており、そこでは、2020年アメリカ合衆国大統領選挙に影響を与えることを目的とした情報戦を行うための組織化が行われていた。選挙でトランプがジョー・バイデンに敗れると、Qアノンの信念は選挙不正の解明と選挙結果を覆そうとする試みの一部となった。連邦議会議事堂襲撃事件で最高潮に達し、ソーシャルメディアによるQアノン関連コンテンツの規制強化が急速に進んだ

陰謀論
  この陰謀論は「事実無根」で「証拠がない」と広くみなされている。信奉者たちは「気の狂った陰謀論カルト」や「インターネット上で最も常軌を逸しているトランプ支持者」と呼ばれている。この陰謀論は主にトランプ支持者によって拡散されており、「」(: The Storm)や「大いなる覚醒」(: The Great Awakening)などが唱えられている。Qアノンの教義と語彙は、千年王国終末論といった宗教的概念と密接に関連しており、新宗教運動との見方にも繋がっている。Qアノン信奉者は、トランプをキリスト教徒としては欠陥があると見ている一方で、神が遣わした救世主(メシア)とも見ている。
  ワシントン・ポスト』でQアノンについて詳説している陰謀論研究者のトラビス・ビューによると、この陰謀論の本質は次のようなものである
  この陰謀論の本質は「世界を支配している悪魔崇拝者・小児性愛者による国際的な秘密結社が存在し、彼らがすべてを支配している」というものである。彼らは政治家やメディア、ハリウッドなどを支配しており、存在を悟られないように隠蔽されている。ドナルド・トランプが大統領選挙で勝たなければ、彼らは世界を支配し続けていただろう。トランプは、この秘密結社による悪行をすべて知っている。トランプが当選した理由の一つは、彼らの悪行に終止符を打つことである。トランプとアメリカ軍による裏の戦いは、「Q」がいなければ誰にも知られていなかったであろう、というものである。そして「Q」とは一体何なのかというと、基本的には、この「裏の戦い」に関する情報を明らかにしている4chan投稿者(後に8chanに移行)である。彼は、秘密結社の悪行や、今後起こるであろう大量逮捕劇についての秘密を明らかにしている。
  Qアノン信奉者は、「嵐」と呼ばれる日が差し迫っていると信じている。その日には、何千人もの秘密結社のメンバーが逮捕され、グアンタナモ湾収容キャンプに送られるか、あるいは軍事裁判にかけられ、アメリカ軍が国の支配を容赦なく取り戻し、地上に救いと楽園がもたらされると信じられている。
  「Q」は、政界の小児性愛者の例として、6歳の少女に性的接触を行ったことを公言し、児童ポルノの所持で起訴された民主党所属のイリノイ州下院議員キース・ファーナムや、15歳の黒人女性と性交して妊娠させた経歴を持つ、共和党所属の上院議員ストロム・サーモンドを挙げた
背景
ピザゲート(詳細は「ピザゲート」を参照)
  2016年10月30日、ニューヨーク市在住のユダヤ人弁護士とされる白人至上主義者のTwitterアカウントが、「ニューヨーク市警察アンソニー・ウィーナー下院議員の不祥事を調査したところ、小児性愛者グループと民主党員が繋がっていることを発見した」とする虚偽の稿を行った。11月上旬に、大統領選挙でヒラリー・クリントン陣営の選挙責任者であったジョン・ポデスタ私的な電子メールウィキリークスに流出すると、そのメールを読んだ一部のインターネットの利用者は、メールの中に小児性愛人身売買を示唆する暗号が含まれていると推測した。また彼らは、ワシントンD.C.にある「コメット・ピンポン」というピザ屋が、悪魔的儀式虐待の拠点になっていると考えた。
  この陰謀論はその後、同年の4chanの書き込みを典拠としたYour News Wireの記事を皮切りに、フェイクニュースサイトに投稿され始めた。Your News Wireの記事はその後、SubjectPolitics.comなどを含む親トランプ派のウェブサイトによって拡散された。そこでは、ニューヨーク市警がヒラリー・クリントンの家宅捜索を行ったという虚偽の主張が追加されていた。『Conservative Daily Post』は、連邦捜査局がこの陰謀論を正しいものと認めたとする虚偽の記事を掲載した。
「アノン」たち
  「アノン」(: Anon)は、「Anonymous(アノニマス)」という言葉の略語であり、匿名や偽名で書き込みを行っているインターネット利用者のことである。アノンが「調査を行っている」という概念や、機密情報を開示しているとの主張は、Qアノン陰謀論の重要な構成要素ではあるものの、決してQアノンだけに限定されている訳ではなく、Qアノン以前にも多くの「アノン」たちが政府の機密情報へのアクセス権を持っているとする主張を行っている。2016年7月2日には「クリントン事件の内幕に詳しい」と主張する自称「ハイレベルなアナリストおよびストラテジスト」の匿名投稿者である「FBIAnon」が、2016年のクリントン財団の捜査に関する虚偽の投稿を開始し、トランプが大統領になったらヒラリー・クリントンは投獄されると主張していた。同時期には「HLIAnon」(High-Level Insider Anon)が、オンライン上で長時間に及ぶ質疑応答を行っており、「アメリカ同時多発テロ事件を阻止しようとしていたためにダイアナ妃は暗殺された」といった様々な陰謀論を吹聴していた。2016年アメリカ合衆国大統領選挙の直後には、「CIAAnon」と「CIAIntern」という二人の匿名投稿者が、CIAの高官であるとの虚偽の主張を行っており、2017年8月下旬には「WHInsiderAnon」という匿名投稿者が、民主党に影響を与えるとされるリークのプレビューを提示していた
4chan文化の影響
  /HTG/(Human Trafficking General)という4chanのスレッドは、ピザゲートとQアノンの間にある「ミッシングリンク」であると表現されている。/HTG/の文化は、漏洩したEメールを詳細に調査するのではなく、「考えうるストーリーの構築」にユーザーを積極的に参加させることを可能にするものだった。/HTG/の主要な投稿者は「Anonymous 5」(「Frank」という名でも知られている)であり、彼は「児童買春調査官」を名乗っていた。しかし、首尾一貫したストーリーの欠如が足枷となり、/HTG/がピザゲートほどの人気を得ることはなかった。
Qアノン思想の主要な教義──「ヒラリー・クリントンは小児性愛者組織に直接関与していた」「ロバート・ミュラーはトランプと密かに協力していた」「大規模な軍事法廷が差し迫っている」など――は、Qの登場以前から既に4chanに存在していたものである。そのためQは、ヒラリー・クリントンやバラク・オバマ、ジョージ・ソロスといった事前にコミュニティ内で強く嫌われていた人物を主なターゲットにしている。また、Qアノンの「カノン」(正典)の中心的概念である「嵐」(: The Storm)は、「カバールのメンバーが大量逮捕される様子がテレビで放映される」という「イベント」(: The Event)が差し迫っているとの予言を書き込んでいた「光の勝利」(: Victory of the Light)という名前の別の投稿者から借用された概念であるとの主張もある。
起源と拡散
  2017年10月28日、「Qクリアランスの愛国者」(: Q Clearance Patriot)というハンドルネームのユーザーが画像掲示板4chanにある/pol/という板に現れ、「嵐の前の静けさ」(: Calm Before the Storm)というタイトルのスレッドを作成した。このタイトルは、自身が出席した米軍首脳の会合を「嵐の前の静けさ」と表現したドナルド・トランプによる謎めいた発言を引用したものである。「嵐」(: The Storm)は、秘密結社のメンバーが大量に逮捕・投獄され、子供を食い物にしている小児性愛者であることを理由に処刑されるという、近い将来に起こると信じられている出来事を表すQアノン用語になった。投稿者のハンドルネームは、核兵器などに関する最高機密情報にアクセスするために必要な米国エネルギー省の機密情報取扱権限である「Qクリアランス」を有していることを暗示しているものである。Qの投稿を解釈・分析することを中心としたインターネットコミュニティは直ちに形成され、何人かの個人がそのコミュニティ内での有名人となった。

  ロイターの報道によると、2017年11月には早くもQAnonの主張を伝播させる役割をロシアがバックアップしたTwitterアカウントが果たしていたという。
  2017年11月には、ポール・ファーバー、コールマン・ロジャース、トレーシー・ディアスの3人が2人の4chanモデレーターと小規模なYouTuberと協力して、Qアノンをより多くの人々に拡散するための活動を開始した。一部のQアノン信奉者は、この3人はQアノン運動から利益を得ているとして非難している。また、ロイター通信によると、早くも同月にロシア政府の支援を受けたTwitterアカウントがQアノン陰謀論の拡散に関与していた。3人はその後、Redditのコミュニティを作成し、2018年3月にそのサブレディットが禁止・閉鎖されるまで、陰謀論を広めるための影響力を保っていた。Redditの運営は、暴力の扇動や個人情報の投稿を行っていたため閉鎖したと説明している。Qアノンは、TwitterYouTubeなど他のソーシャルメディアにも拡散された。ロジャースと彼の妻であるChristina Ursoは、この陰謀論に特化したYouTubeライブストリーム『Patriots' Soapbox』を立ち上げ、寄付を募っていた。その配信で招かれたゲストには、議員選立候補者のLauren Boebertやトランプ陣営の広報担当者が含まれている。Qの投稿は後に8chanに移行し、4chanには「スパイが潜入している」としてQは懸念を表明した。8chanエルパソ銃乱射事件といった凶悪事件に関連しているとして2019年8月に閉鎖されると、Qアノン信奉者は8kunやEndChanに移行した。

  Qアノンは、2017年12月に初めて主流のマスコミから注目を集め、2018年の初めには、主流派の右翼からの支持も集め始めた。テレビ司会者のSean HannityとエンターテイナーのRoseanne Barrは、ソーシャルメディアのフォロワーにQアノンに関するニュースを拡散した。InfoWarsの主催者であり、極右の陰謀論者であるアレックス・ジョーンズは、Qと個人的に接触していると主張した。2018年7月にフロリダ州タンパで行われた中間選挙に向けたトランプ派の集会にQアノン信奉者が一斉に現れたことで、この陰謀論は主流なものになった。
  Qの投稿を集約することに特化したウェブサイトである『Qdrops』は、この陰謀論の拡散に欠かせないものとなった。『QMap』は最も人気かつ有名な情報収集サイトであり、『QAPPANON』という名前で知られている匿名開発者かつQアノンに関する重要人物によって運営されていた。しかし、『QMap』は2020年9月に事実確認サイト『Logically』が報告書を発表した直後に閉鎖され、『QAPPANON』はニュージャージー州を拠点に活動しているJason Gelinasというセキュリティ・アナリストではないかとの仮説が立てられた。
  南カリフォルニア大学教授でデータサイエンティストのEmilio Ferraraは、Qアノンのハッシュタグを使用して研究を行い、Infowarsやワン・アメリカ・ニュース・ネットワークをリツイートしているアカウントの約25%がボットであることを明らかにした。
ヨーロッパにおける拡散
  新型コロナウイルスの大流行が発生した2020年3月から6月の間には、Qアノンの活動はFacebookで3倍近く、InstagramTwitterでは2倍近くに増加した。その頃には、Qアノンはヨーロッパ(特にドイツ)にまで拡散されていた。極右の活動家やインフルエンサーたちは、YouTubeFacebookTelegramにおいて推定20万人のドイツ人Qアノン信奉者を生み出した。ドイツのReichsbürgerというグループは、現代のドイツは主権国家ではなく、第二次世界大戦後に連合国によって作られた傀儡国家であるという信念を広めるためにQアノンを利用し、トランプが軍勢を率いてライヒを復興させるのではないかという願望を表明した。カナダでもQAnonを宣伝しており、イギリスでは4人に1人はQAnon関連の理論を信じていると言われているが、QAnonを支持しているのは6%に過ぎない。チャーリー・ウォードとマーティン・ゲッデスはQAnonの影響力のあるイギリスの宣伝者として人種差別とファシズムに反対する利益団体の「Hope not Hate」にリストアップされており、ゲッデスは「世界で最も人気のあるQAnonのTwitterアカウントのひとつを運営している」としている。スペインでは、極右のVox党はTwitterアカウントにて、バイデンは 「小児性愛者によって好まれる」候補者であると主張することによって、反バイデン陰謀論を支持していると非難された。RTVEのニュースレポートによると、スペインのQAnon支持者のほとんどがVoxを自分たちの希望する政党として特定していることが判明した。
中南米における拡散
  この動きは中南米にも広がり、コスタリカコロンビアアルゼンチンメキシコパラグアイブラジルなどの国がオンラインで存在感を示している。コスタリカ最大の新聞社「ラ・ナシオン」の調査によると、Facebookのページは誤報やフェイクニュースを拡散し、カルロス・アルバラド大統領の退陣を求め、極右大統領候補のフアン・ディエゴ・カストロ・フェルナンデスや物議を醸しているドラゴス・ドラネスク・バレンシアノ、エリック・ロドリゲス・ステラーなどの右翼の人物を称賛している。

日本における拡散
日本におけるトランプ支持デモについて
  日本においても2020年アメリカ大統領選挙以後(2021年11月3日以降)も東京大阪など各地で「トランプ応援デモ」が行われている。2021年11月、12月に各地で数回行われたデモの中では、反共主義反中国共産党を掲げる幸福の科学法輪功統一教会分派のサンクチュアリ協会といった新宗教の関係者や新約聖書の言葉を印刷した横断幕を持つ一群、日の丸を掲げる者やレイシストによるヘイトスピーチ街宣などにも参加している活動家佐藤悟志安倍晋三への支持を表明するプラカードが確認される一方で、トランプへの支持を表明するプラカード、星条旗太極旗南ベトナム旗南モンゴル旗郭文貴スティーブ・バノンが設立した新中国連邦の旗など多種多様な旗やプラカードが確認できたという。幸福実現党与国秀行はデモ後の街頭演説で「アメリカでトランプが今ディープステートと闘っている。私達日本人もまた闘わなければならないときに来ています。」と訴えた。日本では、Twitter上などで、日本国内でアメリカ大統領戦の不正などを主張するトランプ支持者などを「Qアノン」ならぬ「Jアノン」と呼ぶ声もある。

  法輪功系マス・メディアの看中国は、2020年11月29日に東京の日比谷公園で行われた「トランプ米大統領再選支持デモ」には、日本沖縄政策研究フォーラム統一日報、新中国連邦、大韓民国自由民主主義を守る在日協議会(韓自協)など約30の団体と1000人以上の参加者があったと報じている。デモには北海道から沖縄まで全国各地から参加者が集まり、さらには中国人韓国人ポーランド人の参加もあったとも報じている。このデモの実行委員長は、トランプと反トランプ勢力の戦いは「善と悪の戦い」であると演説している。デモに参加した仲村覚は看中国のインタビューに対して「もしバイデンが本当に勝ったんでしたら、おそらく日本は沖縄が中国に乗っ取られてしまうという強い危機感を持っております。問題はアメリカもそうですし、日本は事実上中国の統一戦線工作に革命ツールとして利用され、乗っ取られてしまっているということに日本全体が、気が付いていない人が多いと(思います)。」と答えている。 日本の右派系メディアの文化人放送局はこのデモを好意的に報じた。また、日米を中心に旧満州国の継承を自称して現在も活動する満洲国政府ジョー・バイデンの当選を認めていない。

  2020年1月17日に福岡市内で行われた「トランプ米大統領支持デモ」では、開始前集会で参加者の男性が「ディープ・ステートはロスチャイルドやロックフェラー、中国共産党と結託しており、GAFAを丸め込んでバイデンを支持している」と言う趣旨のスピーチをしたり、デモ隊の中に「ピザゲート事件」に関するプラカードを掲げる者が現れたり、「ゴッド・ブレス・トランプ!」、「バイデンは、トランプの票を盗むな!」、「トランプは、法と秩序を守る善の大統領だ!」などの掛け声がデモ隊から上がったり、巨大なトランプ神輿を担ぐものが現れたり、マスクをつけずに旭日旗を持ち、チベット旗東トルキスタン(ウイグル)旗南モンゴル旗満州旗と「人権・信仰」と書かれた文字がプリントされた腕章を付けて歩く男性がいたり、台湾旗を持つものなど多様な顔ぶれが参加していたと報じられている。参加者数は250人ほどで、サンクチュアリ協会のメンバーや個人の立場で参加したと話す中国人女性や複数の未成年者やその母親らしき女性の姿も確認できたと言う。現地で取材をしたルポライター安田峰俊は「日本におけるトランプ支持のデモ参加者は統一教会系の新宗教団体が主催し、在野のネット右翼、反体制派の中国人などが参加しているとし、結果的に非常にカオスなムーブメントが作り出されている。」と評している。一方で安田浩一野間易通のりこえねっとのYouTubeチャンネルの中で、日本におけるトランプ政権推進勢力や朝鮮学校関連のヘイトデモの背後には、韓国の国情院(NIS)民間の反共主義団体がいるのではないかと推測している。
日本における2020年米大統領選に関する大量の陰謀論や偽情報について
  日本のSNS上では、2020年米大統領選に関する大量の陰謀論や偽情報が流れており、主な内容としては「トランプ大統領が戒厳令が発令」、「戒厳令の布告は緊急放送システムを使って行われるとみられる」、「戒厳令 速報!ペロシ逮捕 & 特殊部隊PC押収について!」、「停電したバチカンローマ教皇が逮捕された」などがある。匿名のSNSユーザーがTwitterやFacebook、YouTubeを利用して発した例もある一方で、著名な政治評論家がSNS上で発言している例もある。元々、ゲーム実況などをしていた者が陰謀論に「衣替え」してアクセス数を荒稼ぎしているケースも推測されるという。また、日本のネット上ではトランプのことを「おやびん」や「トランプおやびん」などと呼ぶミームがおきた。
  アメリカの匿名掲示板4chan8chanが、日本の匿名掲示板(2ちゃんねるなど)の影響を受けて誕生したことを指摘する論考もある。
  藤倉善朗統一教会系メディアのワシントン・タイムズ世界日報、法輪功系メディア大紀元(Epoch Times)といった新興宗教系メディアの存在が2020年米大統領選に関する陰謀論やフェイクニュースの発信源となっていたと指摘する。

  なお、公人の中でも大紀元を引用する向きはあり、例えば元北海道議会議員の小野寺秀(自由民主党)は大紀元の報道を引用する形で「この大問題を日本のマスコミは一切スルー…今回の大統領選挙のデータだけが消去されていた事や集計ソフトに問題があった事等が判明したにも拘らず…だ。正に民主主義を嘲笑うテロ行為ではないか!【ドミニオン調査レポート「重要記録が削除された」「エラー率68%」】」といわゆる「ドミニオン社をめぐる陰謀論」についてツイートしている[106]
  公人がトランプ寄りのフェイク情報を拡散した例としては、神戸市会議員の岡田祐二(自民党)がいる。岡田は、トランプ氏の支持者が2020年11月14日に首都ワシントンで開いた集会をめぐり、トランプ側に立ったフェイク情報をツイッターで拡散した。他にも豊島区議会議員の沓沢亮治(元N国党、元しきしま会)がトランプ支持を表明して、フェイク情報を拡散している。
  2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件においても、アメリカ議会占拠はANTIFAの仕業だという陰謀論がSNS上で広まった。このときは、単に匿名のSNSユーザーが拡散させたのみならず、夕刊フジは、2021年1月8日付(7日発売)の紙面で「議事堂に侵入したデモ隊について、トランプ支持者と報じるメディアが多いが、ネット上には極左集団が紛れ込んでいるとの情報もある」と報じたり、現地のワシントンDCで2021年1月に取材をしたジャーナリストの我那覇真子が「ANTIFA犯行説」を唱えたり、朝日放送テレビの『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(2021年1月9日放送)で、お笑い芸人のほんこんが「TwitterとかYouTubeとかで見させてもろたけど、警察の方々が招き入れてる映像も残ってるんですよ……これがほんまにANTIFAっていう証言も出てるんで、それは平行に〔?〕公平性をもって放送したほうがエエと思いますけども」と発言したりしている。また、日本文化チャンネル桜水島総も「米議会侵入は本当にトランプ派か?」と題した番組(2021年1月13日放送)の中で「議会突入をした者の背後には中国政府の工作員がいるに決まっている。」、「襲撃事件後にトランプ及びトランプ派の共和党議員に資金提供をやめると発表した大企業(ロックフェラーなど)こそがディープステートの構成員だ。」という趣旨の話をしている。

  ニュースサイトのLITERAは、トランプ寄りの立場から2020年米大統領選の不正デマを発した著名人の例として、小説家の百田尚樹、ジャーナリストの有本香、動物行動学者の竹内久美子フジテレビ報道局解説委員室上席解説委員平井文夫高須クリニック高須克弥、小説家の門田隆将の名前を挙げている。他に深田萌絵田母神俊雄ASKA藤原直哉石平大高未貴洪熒孫向文井上太郎渡部篤渡邉哲也及びナザレンコ・アンドリーゴンゾー釈量子佐野美代子岡村幹雄藤原直哉河添恵子馬渕睦夫仲田洋美宮崎正弘渡辺惣樹篠原常一郎山口敬之中杉弘らも2020年米大統領選に関する陰謀論を主張している。
  右派メディアのDHCテレビジョンの「虎ノ門ニュース」は米大統領選をめぐって2つに割れた。2020年11月24日の虎ノ門ニュースで、百田尚樹、藤井厳喜が「大統領選は不正選挙だ」という立場で出演して、特に百田は番組内で「トランプの弁護士のシドニー・パウエルL・リン・ウッドを支持する」という趣旨の発言をしたのに対して、翌日25日には上念司ケント・ギルバートは「トランプは大統領選で正式に敗北した」という立場で虎ノ門ニュースに出演している。これに関して京本和也は、上念らを擁護して百田を批判した。その後、百田と京本の間で論争が起こり、11月29日には百田及び百田と近しい有本香が京本を裁判で訴えると表明し、上念もDHC側の要望で、虎ノ門ニュースを含むDHCテレビジョンのすべての番組から2021年1月5日付けで降板させられた。降板後に本件に関して上念は「極右差別主義には迎合しない」という趣旨のツイートをした。

  他に保守・右派サイドからの2020年米大統領選に関する陰謀論への批判を行った者として、言論人には倉山満渡瀬裕哉渡部悦和江崎道朗、政治家には野田聖子音喜多駿武井俊輔らがいる。倉山はトランプ関連の陰謀論を唱える右派の言論人に対して「ネトウヨ言論人どもの所業、目に余る」、「ネトウヨメディアに出演する言論人に、言論の正当性などという概念はない。サービス業の如く、客が望む言論を発するだけだ」と辛らつに批判した。渡部もトランプ支持者に批判されたが、渡部自身はトランプ支持者を「日本の主要メディアをマスゴミと馬鹿にして信じないし、そこから情報を入手しようとしない。無条件に信じているのはトランプがツイッターなどで発信する内容だ。自分が信じていることを裏付けてくれる出所不明の権威のない情報に飛びついて、ファクトチェックをしないで信じている。」とこれを批判しつつ、分析している。
  木下ちがやは、アメリカ大統領選の不正選挙の陰謀論を唱えた百田及びその支持者のネット右翼がそれに異を唱えた上念らを攻撃する様について、上念らを「常識的な右翼言論人」と一旦は捉えた上で、この陰謀論に加担する右翼言論人は「もう限界値を超えてしまい、後戻りできないところに行ってしまった残念な保守(限界ネトウヨ)」とし、一連の出来事は「安倍政権終焉で始まった右翼内ゲバ」と分析した。古谷経衡も、日本の保守派やネット右翼がトランプ支持を表明し、大統領選の不正選挙論まで唱えた背景には「第2次安倍政権のイデオロギーを継承しない菅義偉政権に不満を溜めていた彼らにとって、トランプ前大統領は心のよりどころだったからだ」と安倍政権の終焉に絡めて、これを論じている。
  江川紹子オウム真理教の行った不正選挙主張在特会のいわゆる在日特権の主張、2017年の特定の弁護士への大量懲戒請求(余命事件)といった過去にあった日本の陰謀論の事例と今回のQアノン現象の類似を指摘した上で「陰謀論は善悪二元論だからシンプルだし、面白くて分かりやすい。だけど、現実はもっと複雑で、面倒臭いし分かりにくいものですよね。日本のメディアも分かりやすさを最優先させてきた、という点で、土壌を作る役割を果たしてしまったところはあると思います。」と分析した。
  保守・右派サイドからの陰謀論が目立つが、大袈裟太郎によると、軍産複合体に反対するリベラル系の中にも「不正選挙デマ」に乗る者がいるという。その理由としては「リベラル派の中にトランプ支持が浸透する大きな理由は『トランプは戦争をしていない』というイメージ」があるからだという。沖縄の基地反対運動を行う人山本太郎が代表のれいわ新選組の支持者の人、さらには香港の民主派の人の中にすらトランプ支持の声があると大袈裟は報告している。また、Kダブシャインなどいわゆるスピリチュアル系の人やその系統のミュージシャンにも不正選挙論は浸透しているとも大袈裟は指摘する。その理由としては「社会経験の乏しさから、社会の構造への認知が歪んでおり、そこにQ的な陰謀論が入り込むのだろう」という。なお、熱を入れてQアノンに染まってしまったKダブシャインは今や名前を捩られ「Qダブシャイン」とアメリカで呼ばれてしまっているとも大袈裟は報じている。
  日本国内で新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)に関するPCR検査所に抗議する活動をしている集団が、Qアノンと相互に影響しあっているという指摘もある。
虚偽の予測および主張(「悪魔的儀式虐待」も参照)
Qの主張の変遷
  「Q」の投稿は、謎めいた曖昧なものになっていった。そのため、信奉者自身の信念を対応付けることが可能になっている。いくつかの投稿には、暗号化されていると考えられる文字列が含まれている。
  「Q」は、外れた予測や虚偽の主張を意図的なものであるとして何度も退けており、「偽情報も必要だ」と主張している。これを受け、オーストラリアの心理学者であるStephan Lewandowskyは、陰謀論の「自己欺瞞的性質」を強調して論じている。彼は、匿名の情報提供者はもっともらしい否認を行っており、陰謀論と矛盾する証拠があっても「信者の心の中では妥当な証拠と化す」と述べている。作家のWalter Kirnは、「Q」は証拠を直接提示するのではなく「手がかり」を少しずつ出すことで信者を魅了していると考えており、数ある陰謀論の中でも革新的なものであると評している。彼は「インターネットに投稿される物語の読者は、それを読みたいのではなく書きたいのである。提供された答えは望んでおらず、それらを検索したいのだ」と述べている。
「児童の大量誘拐」
  ピザゲートと同様に、Qアノン信奉者は、児童売春組織へ供給するために子供たちが大量に誘拐されていると信じている。Twitterのハッシュタグ「#SaveTheChildren」は、一部の信奉者が2020年までに使い始めたものである。これは、児童福祉団体「セーブ・ザ・チルドレン」の商標名と同じであるため、セーブ・ザ・チルドレンは同年8月7日に名前の無断使用に関する声明を出している。National Center for Missing & Exploited Childrenのデータによると、実際には行方不明の子供の圧倒的大多数は単なる「家出」であり、2番目に多い原因は「家族による誘拐」(米国は離婚が多いため、両親のどちらが子供を引き取るかについて揉めることが多い)で、家族以外による誘拐は1%未満である。同年9月、FacebookとInstagramは、ハッシュタグを検索したユーザーを児童福祉団体にリダイレクトすることで、#SaveTheChildrenがQアノンと関連付けられることを防ごうとする措置を講じた。10月には、Facebookはハッシュタグへのリーチを制限することを発表した。Qアノン信奉者は、家具会社のWayfairが児童人身売買被害者を販売して出荷するための密約をしていたとする陰謀論も同時期に流布していた。
  同様に、「Freedom for the Children」というアメリカイギリスのグループは、児童の性的虐待と人身売買に対する意識を高めるための街頭デモの開催を支援した。これらの抗議活動は、典型的なQアノングループよりも、Qアノン陰謀論のすべての側面を完全には信じていない人々を含む、より多様で若年層の群衆を集める傾向にあり、ソーシャルメディアによる制限措置を避けることが可能であることが多かった。
バイデンの関与
  ジョー・バイデンが無事大統領に就任して「嵐」が起こらなかったのをみた信者達は騙されていたと投稿し始めたが、多くのインフルエンサーが、ジョー・バイデンは実はQAnonとともにいる、もしくはQ自身である、という主張を始めた
分析・評価
  Qアノンは、歴史家のリチャード・ホフスタッターが「アメリカ政治におけるパラノイド・スタイル」と呼んでいる現象として理解するのが最も良い可能性がある[12]。彼は同名のエッセイを1964年に著しており、そこでは宗教的至福千年説と終末論について解説されている。Qアノンは「嵐」(創世記での洪水の物語や審判の日)や「大いなる覚醒」といったキリスト教的な表現を用いており、18世紀初頭から20世紀後半にかけての歴史的・宗教的な大覚醒を想起させるものとなっている。Qアノンに関するある動画は、トランプと「カバール」(陰謀の首謀者であるとされている秘密結社の名前、ディープ・ステートと呼ばれることもある)の間で繰り広げられている戦いは「聖書的」であり、「地球のための戦い、善対悪の戦い」であるとしている。Qアノン信奉者の中には、差し迫っているとされる報復の日は我々が知るような世界の終わりではなく、新たな始まりであり、生き残った人々のために地上に救いと楽園がもたらされる「逆の携挙」であると述べている人もいる。

  Qアノンは、発生から1年足らずで一般の人々に大きく認知されるようになった。2018年8月の『ワシントン・ポスト』紙に掲載されたQualtricsの世論調査によると、フロリダ州民の58%がQアノンに関する見解を持つほどQアノンに精通していた。なお、見解を持っていた人のうち、ほとんどの人は好ましくないと回答している。フィーリング・サーモメーターの平均スコアは20点ほどで、非常にネガティブな評価であり、他の政治家によるスコアの約半分であった。Qアノンに対する肯定的な感情は、陰謀論的思考に高い受容性を持つことと強い相関があることが判明した。
  ピュー研究所による2020年3月の調査によると、アメリカ人の76%がQアノンについて聞いたことがないと回答し、20%が「少し聞いたことがある」と回答し、3%が「よく聞いたことがある」と回答した。同年9月に行われたピュー研究所の調査では、Qアノンについて聞いたことがあると回答した47%の回答者のうち、共和党員および共和党支持者の41%がQアノンはアメリカにとって良いことだと考えているのに対し、民主党員および民主党支持者は7%がQアノンはアメリカにとって良いことだと考えていることが判明した。
  2020年10月に行われたYahooのYouGovによる世論調査では、Qアノンのことを知らなくても、共和党員とトランプ支持者の大多数は、民主党の幹部は児童売春組織に関与していると考えており、トランプ支持者の半数以上が、自分はそのような組織の解体に取り組んでいると考えていることが判明した。

「Q」の正体
  「Q」として知られている匿名の投稿者は、複数の人物が協力して管理しているものである可能性が高い。
  4chan8chanといった匿名の画像掲示板は、投稿者の身元が分からないように設計されているが、匿名のまま複数の投稿の間で一貫した身元証明を行いたい人は「トリップ」という機能を使用できる。トリップは、トリップキーを知っている人にのみ与えられるユニークなデジタル署名であり、投稿と関連付けることができる。これまでに「Q drops」というQのトリップに関連付けられた投稿は何千件もあったが、トリップは何度か変更されており、投稿者の継続的な身元は不明瞭になっている。8chanはトリップキーを簡単にクラックできることで有名であり(いわゆる「トリバレ」や「漏れ」)、Qのトリップキーは何度も漏洩し、Qになりすました人々に利用されてきた。2019年11月に8chanが8kunとして数ヶ月ぶりに復帰した際、8kunに現れたQは自分自身が本物であることを示すために、以前の8chanの投稿に写っていたペンやノートの写真を投稿し、8chanにおけるトリップを使い続けた。

  Qの正体や動機については様々な憶測が飛び交っている。Qは米軍の情報部の人物だとする説、ドナルド・トランプ自身だとする説、シケイダ3301による代替現実ゲームだとする説などがある。イタリアの左翼団体であるWu Ming財団は、Qアノンは、1990年代に左翼やアナキストたちがいたずらやメディアへの妨害行為、あるいはデマなどを流布するために使用していた「ルーサー・ブリセット」というペルソナに触発されたものだと推測している。「ブリセット」は、1999年に『Q』という題名の小説を発表している。
  Qのトリップキーは8chanのサーバーによって一意に検証されるものであり、他の画像掲示板では再現できないため、2019年に発生したエルパソ銃乱射事件に関連して8chanが閉鎖された後、Qは投稿を行えなかった。この明らかな利害対立は、8chan創設者であるフレドリック・ブレナンの発言や、8chan管理人のジム・ワトキンスによる「Q」のカラーピンの着用、そして8chanに広告を出しているため事実上QアノンのスーパーPACであるジム・ワトキンスの金銭的利害関係も相まって、多くのジャーナリストや陰謀論研究者が「ジム・ワトキンス(あるいは彼の息子で8chan管理人のロン・ワトキンス)はQと一緒に活動しているか、あるいはQの身元を知っている、またはQ自身である」と考えている。しかし、両者ともQの正体は知らないと否認している。
  また、米国のソーシャルメディア分析専門家は、ロシア政府系の組織がQの拡散に一定の役割を担っているとしている。Qの流行の初期にロシアが関与した形跡はなかったが、トランプ大統領を英雄と称賛する動きが顕著になると、SNS上でロシア政府系のアカウントによる関与が拡大したと見られる。ロシアの国営メディアRTスプートニクも2019年以降、Qアノンに関する報道を増やした。
反ユダヤ主義
  『ワシントン・ポスト』と『前進』は、Qアノンがジョージ・ソロスロスチャイルド家などのユダヤ人を標的にしていることを、「著しい反ユダヤ的要素」「人種差別反ユダヤ主義を含意しているありふれたナンセンス」と表現している。2018年8月のJewish Telegraphic Agencyの記事は「Qアノンの典型的な要素(特に秘密のエリートや誘拐された子供など)のいくつかは、歴史的かつ進行中の反ユダヤ主義的陰謀論を反映している」と主張している。
  名誉毀損防止同盟(ADL)は「Qアノンに触発された陰謀論の大部分は、反ユダヤ主義とは何の関係もない」としつつも、イスラエル・ユダヤ人・シオニスト・ロスチャイルド家・ソロスに関するQアノン信奉者の「印象論的な」ツイートは、反ユダヤ主義の「いくつの厄介な事例を明らかにした」と報告している。ADLによると、Qアノン陰謀論のいくつかの側面は長年の反ユダヤ主義の典型を反映している。例えば、国際的な陰謀団が子供を生贄に捧げる儀式に関与しているという信念は、中世の反ユダヤ主義的陰謀論である「血の中傷」(ユダヤ人が儀式のためにキリスト教徒の子供を誘拐して殺害しているという陰謀論)にルーツがあり、世界的な銀行家に対するQアノンの陰謀論も反ユダヤ主義的な含みを持っている。
  Qアノンは有名な偽書である『シオン賢者の議定書』とも関係があり、共和党員のQアノン信奉者であるMary Ann Mendozaは、「『シオン賢者の議定書』は偽書ではない。そして、この事実を指摘することは特に反ユダヤ主義的ではない」と述べているTwitterのスレッドをリツイートしている。MendozaはWomen for Trumpの諮問委員会のメンバーであり、彼女のTwitterにおける活動がニュースになるまでは、2020年の共和党大会でスピーチを行う予定だった。彼女はその後、スレッドの最初の数ツイートに反ユダヤ主義的な内容が含まれていたにも関わらず、内容を見ていなかったとして否認した。同様に、トランプもQアノンについて「愛国者たちである」ということ以外は何も知らないと否認している。
  Qアノン信奉者は「子供の血液からアドレナリンを抽出し、アドレノクロムという向精神薬を合成するという残虐な搾取行為」にハリウッドセレブたちが加担しているという「アドレノクロム陰謀論」を2020年までに吹聴してきた。アドレノクロム陰謀論は、反ユダヤ主義的陰謀論である「血の中傷」にルーツを持つ出鱈目な陰謀論である。Qアノン信奉者はまた、何世紀も前からある反ユダヤ主義的な陰謀論である「ロスチャイルド一族によって組織された国際的な銀行家による陰謀」を拡散してきた。
  ジェノサイド研究者のGregory Stantonは、Qアノンを「リブランドされたナチス」と表現しており、この陰謀論は『シオン賢者の議定書』をリブランドしただけのものに過ぎないと述べている。
カルト宗教的性質
  専門家によると、Qアノンの魅力はカルト宗教に匹敵するものであるという。オンライン陰謀論の専門家であるRenee DiRestaは、Qアノンの誘惑方法は「教団の奥深くに導かれ、友人や家族から孤立していく」という点において、インターネット登場以前のカルト教団によるそれと類似していると述べている。愛する人や親しい人がQアノンの虜になってしまった人々のための互助会的オンライングループは急速に発達しており、特にサブレディットの「r/qanoncasualties」は、2020年6月には3,500人の参加者だったが、同年10月には2万8000人にまで増加した。このインターネットの時代では、Qアノンは「現実世界」での繋がりをほとんど持たずに、オンライン上のバーチャルコミュニティで数万人規模の信者を獲得できるという。
  カルト宗教専門家で復帰治療を専門とするRachel Bernsteinは、「Qアノンのような運動が野火の如く広まる理由は、『他の人々がまだ知らない何か重要なものと繋がっている』と人々を錯覚させるからである。(中略)すべてのカルト宗教は、このような特別感を提供している」と述べている。自己強化的な真の信者は、集団思考によって生まれる修正・反論・ファクトチェックに対する免疫を持っているため、集団内に自己修正的プロセスは生まれない。Qアノンのカルト的性質は、新宗教運動の可能性があるという見方にも繋がっている。その魅力の一部は、信奉者が『Qdrops』で提示された謎をトランプの演説やツイート、およびその他の情報源と結びつけて真意を解明しようとしていることからも伺える「ゲーム性の高さ」にある。信奉者の中には、同心円状の文字盤で構成された「Qクロック」を使用して、『Qdrops』とトランプのツイートのタイミングを見計らって謎を解こうとしている人さえいる
  陰謀論研究者のトラビス・ビューは、Qアノンにはビデオゲームのような中毒性があり、「プレイヤー」には世界的・歴史的に重要な何かに関わることができるという魅力的な可能性が提供されていると述べている。ビューによると、「パソコンの前に座って情報を検索し、発見したものを投稿するというプロセスだけで、国家を根本的に変え、信じられないような無血革命を起こし、何世代にも渡って書き継がれる歴史的運動の一部になれることをQアノンは約束している」という。ビューはこれを、自分の努力が州議会議員候補を当選させるのに役立つかもしれないというありふれた政治的感情に例えている。また彼は、「Qアノンは『観念の市場』ではなく『現実性の市場』で勝負しているのだ」とも述べている。
  とはいえ、Qアノン信者の中には、家族や友人からの孤立に苦しんでいることに気づき始めた人もいる。ある人にとっては、孤独感はカルトからの離脱を始めるための道筋であるが、また別の人にとっては、孤独感はカルトに帰属することで得られる利益を強化するものでもある。ビューは次のように述べている。

Qアノンコミュニティの人々は、家族や友人からの疎外感について語ることが多い。(中略)彼らは通常、Qがどのように彼らの関係を冷え込ませたのかについて、個人的なFacebookグループで話している。しかし、そのような問題は一時的なものであり、主に他人のせいだと彼らは考えている。彼らは、自分の信念が正しいことを証明することや、近い将来に正当なものだと証明される瞬間が来るだろうと妄想することによって、自分自身を慰めていることが多い。彼らは、そうなれば人間関係が修復されるだけではなく、人々は自分たちを頼るようになり、何が起こっているのかをより良く理解しているリーダーとして扱ってもらえるだろうと妄想している。

  一部のQアノン信者は、この陰謀論は自己矛盾したものであり、福音派や保守的なキリスト教徒などの一部の信者から寄付や利益を直接得ようとしている内容が含まれていることを理解した際に離脱する。これにより、陰謀論が彼らにかけていた「呪いが解ける」のである。『Q-debunking』(Qアノンを論破する)という動画を見始めた人もいる。ある元信者は「動画に救われた」と語っている。
  このような幻滅は、陰謀論による予測が外れることが原因となって発生することもある。Qは、2018年の中間選挙における共和党の成功を予測し、ジェフ・セッションズ司法長官がトランプの秘密工作に関与していると主張した。暫くの間は二人に見られる明らかな緊張感が信憑性を生んでいたが、民主党が大成功を収め、トランプがセッションズを解任すると、Qコミュニティの多くの人々が幻滅した。またさらなる幻滅が、12月5日に予測されていた秘密結社メンバーの大量逮捕・投獄が実現しなかったこと、およびトランプの元国家安全保障顧問であるマイケル・フリンに対する告発が却下されたことが要因となって発生した。一部の人にとっては、これらの失敗はQアノンというカルト教団からの離脱要因となったが、別の人にとっては、政府に対する反乱という形での直接的な行動を促す要因となった。
  このような予測失敗への反応は、珍しいものではない。ヘヴンズ・ゲート人民寺院マンソン・ファミリー、およびオウム真理教といった過去の終末カルトは、啓示預言が実現しなかった際に集団自殺や大量殺人に駆り立てられている。心理学者のRobert Liftonは、これを「終末の強制」と呼んでいる。この現象は、一部のQアノン信者の間で見られる。ビューは、幻滅したQアノン信者が何らかの事件を起こすのではないかと懸念している。2016年には、Qアノンの前身であるピザゲート陰謀論を信じていたEdgar Maddison Welchが事件を起こしており、2018年にはMatthew Phillip Wrightフーバーダムで事件を起こしている。また2019年には、自分はトランプの庇護下にあると信じていたAnthony Comelloがマフィアのボスであるフランク・カリを殺害する事件を起こしている。
  2018年に「ジョン・F・ケネディ・ジュニアの死亡は嘘である」との主張を行ったQアノン信奉者のLiz Crokinは、児童売春組織の想定メンバーを逮捕するためには、トランプの行動をただ待っているだけではいけないと2019年2月に述べており、『正義の自警団』の時が近づいていることを示唆している。他のQアノン信奉者もケネディ・ジュニア生存説を支持しており、ピッツバーグのVincent Fuscaという男性が変装して生活しているケネディであるとされ、2020年アメリカ合衆国大統領選挙でトランプの副大統領候補になることが期待されていた。その中には、ケネディが現れることを期待してワシントンで行われた2019年独立記念日の祝賀会に出席した者もいる。
FBIによる国内テロとの評価
  2019年5月30日、フェニックス現地事務所のFBIによる情報広報の文書では、Qアノンが主導する過激派が国内テロの要因であると認識されていた。同文書では、Qアノンに関連した多数の逮捕者が挙げられており、その中にはこれまで公表されていなかったものも含まれていた。文書によると「これは、陰謀論に基づく国内の過激派による脅威を調査した最初のFBIによる資料であり、今後提供される情報資料の基線を示すものである。FBIは、これらの陰謀論は現代の情報市場で出現・拡散・進化していく可能性が非常に高く、ときおり過激派の集団や個人を犯罪や暴力行為に駆り立てていると評価している」という。
  5月に議会で行われたFBIのMichael G. McGarrityの証言によると、FBIは国内テロの脅威を「人種差別を動機とする暴力的過激主義、反政府・反権威に関する過激主義、動物の権利・環境保全に関する過激主義、中絶に関する過激主義(プロチョイスや反中絶の過激派が含まれる)」の4つの主要カテゴリーに分類しているという。Qアノンなどの陰謀論は、反政府・反権威に関する過激主義に含まれる。

  過小報告されているQAnon関連の事件として、2018年12月19日イリノイ州スプリングフィールドの国会議事堂のロタンダで「悪魔教寺院の記念碑を爆破する」ために使用しようとした爆弾製造材料を車に積んでいたカリフォルニア州の男が逮捕されたことが、「社会を解体していたピザゲート新世界秩序をアメリカ人に意識させる」ために言及されたというメモがあった。またFBIによると、この脅威を強めているもうひとつの要因は、「政府高官や有力政治家による違法・有害・違憲な活動を含む本物の陰謀や隠蔽工作を暴くこと」だという。
  QAnon信奉者の反応は、メモが偽物であることを示唆したり、トランプに反抗してFBI長官のクリストファー・レイの解雇を求めたり、メモは実際にはQAnonに注目を集め、メディアを騙してトランプにそのことについて尋ねるための「言わずと知れた(wink and nod)」方法だったという考えを含んでいた。このメモの存在が知られるようになって数時間後、トランプの再選集会で、リベラルに民主党からの離党を促すウォークアウェイ・キャンペーン(WalkAway campaign)の創設者ブランドン・ストラカは、リベラルな民主党員だったと主張するゲイでありながら、現在はトランプの支持者であると主張し、QAnonの主要な集会の叫びのひとつである「Where we go one, we go all」を使って群衆に挨拶した。ビデオグラファーは、群衆の中に多数のQAnonの支持者を発見し、QAnonのシャツには大きな「Q」または「WWG1WGA」と書かれていることが確認された。

米国の選挙・政治への影響
2019年議席候補
  2019年の共和党の下院議員候補として宣言した2人が、QAnon理論に興味を示した。フロリダ州の候補者であるマシュー・ラスクは、「洗脳されたカルト教団員」ではないとデイリー・ビースト紙に語り、QAnon理論は「正当な何か」であり、「過去と現在の出来事の非常に明瞭なスクリーニング、政治的・地政学的なボールが次に跳ねる場所のやや予言的な占い」を構成していると述べた。
  ダニエル・ステラは、ミネソタ州イルハン・オマルの選挙に共和党員として立候補しているが、ステラがツイートした写真では「Q」のネックレスを身に着けており、ハッシュタグ#WWG1WGAを2回使用している。ステラのTwitterアカウントは、ネックレスを認めたQAnon信者からの反応を「いいね!」しており、同アカウントは著名なQAnon信者の一部をフォローしている。元キャンペーン補佐官は、ステラは単に有権者の支持を集めるためにQAnon信者を装っていただけだと主張した
トランプの2020年選挙戦に関連する事件
  2019年8月15日ニューハンプシャー州マンチェスターで行われたトランプ陣営の集会で、「Q」の識別子やその他のQAnon関連のシンボルを隠すように頼まれたとQAnon支持者が主張している。集会に参加した際に「Q」シャツを裏返しにするように頼まれた1人は、そうするように頼んだ人物をシークレットサービスの捜査官と特定したが、これを否定し、『ワシントン・ポスト』への電子メールで「米シークレットサービスはニューハンプシャー州のイベントで参加者に着替えを要求したり、要求したりしていない」と述べた。また、QAnon支持者は、トランプの集会での知名度が数か月間抑えられていると主張している。
  2019年8月、「Women for Trump」が7月下旬にネット上に投稿した動画には、2つのキャンペーン看板に「Q」の文字が含まれていることが報じられた。最初の「Make America Great Again」と書かれた看板には、隅に「Q」が貼られていた。反対側の「Women for Trump」は、「Women」の「O」と「for」の「Q」が貼り付けられていた。改造された看板を含む画像は、明らかにトランプ陣営の集会で撮影されたもので、QAnon陰謀論の信奉者をますます惹きつけているため、これらの特定の看板が意図的に含まれるように選択されたのかどうかは不明である。この動画はその後、削除されている。

  2020年7月、左寄りのメディア監視団体である『Media Matters for America』によると、トランプの再選キャンペーンはQAnon関連のアカウントのネットワークを頼りに、ソーシャルメディア、特にTwitter上で偽情報やプロパガンダを拡散していたと『ビジネスインサイダー』は報じている。2020年4月上旬から5月末までの間に送信された38万件のツイートを分析したところ、1,000件のアカウントが使用していた別の単語のうち、QAnonネットワークが「トランプのプロパガンダを生成し、広める上で重要な役割を果たしている」ことが明らかになった。
  『ワシントン・ポスト』は2020年8月の初めに、トランプの選挙運動のための広告には、QAnonの目立つグッズを持った支持者の画像が掲載されていたと報じた。YouTubeに投稿された何千ものコメントは、これらの詳細を勝利の兆しと見ていた。
  『ニューヨーク・タイムズ』は、QAnonの信奉者は、トランプが地滑りで勝利するだろうと何年も安心していたが、2020年の大統領選挙でトランプが敗北したことで心を揺さぶられたと書いている。一部の信奉者は、有権者の不正が蔓延していたという根拠のない主張を繰り返し、トランプが実際に再選されたと主張したが、一方でバイデンの勝利を受け入れ始めた者もいた。
その他の2020年選挙候補者
  オレゴン州の2020年共和党上院議員候補のジョー・レー・パーキンスは、5月のプライマリー勝利の夜、WWG1WGAのステッカーを手にして「私はトランプ大統領を支持する。私はQとチームを支持する。アノンの皆さん、愛国者の皆に感謝する。共に共和国を救える」と記した動画をツイートした。 彼女は後に政治コンサルタントの助言で動画を削除したことを後悔している。翌月、彼女はQが3日前にフォロワーに要求した「デジタル兵士の誓い」をしている動画をツイートした。
  実業家のマジョリー・テイラー・グリーンは、2020年8月の出馬投票で、共和党が多いジョージア州第14議会区の共和党候補に勝利した。トランプ大統領になって数か月、ビデオにて「悪魔を崇拝する小児性愛者の世界的な陰謀を排除する一生に一度のチャンスだ。それを実行する大統領がいると思う」と述べた。グリーンは人種差別的で反ユダヤ主義的な発言をしたため、ケビン・マッカーシーやスティーブ・スキャライズといった共和党員がグリーンの発言を非難するようになった。トランプはグリーンの立候補を支持し、「未来の共和党のスターであり、本物の勝者!」と評している。8月のジョージア州の一次出馬投票でグリーンが勝利した後、イリノイ州の共和党下院議員 アダム・キンジンガーは QAnonを非難し「捏造」と呼んだ。トランプ陣営スタッフのマット・ウォルキングはキンツィンガーに積極的に反応し、「民主党が推進するスティール・ドッサイアと陰謀論を非難すべきだ」と述べた。

  2020年6月30日、現職の共和党下院議員スコット・ティプトンは、コロラド州下院第3選挙区の小選挙区でローレン・ボーバートに逆転負けを喫した。ボーバートはインタビューでQAnonの暫定的な支持を表明したが、初当選後「私は支持者ではない」と述べ、これらの発言から距離を置こうとした。2020年7月、『ビジネスインサイダー』は「少なくとも10人の共和党議会候補者がQAnon運動への支持を表明した」と報じている。ボーバートは翌年11月に議会に選出された。
  2020年9月、政界の新人ローレン・ウィツケは、党推薦の候補者を破り、デラウェア州の共和党上院議員候補となった。ウィッツケはTwitterでQAnonを宣伝し、QのTシャツを着ているところを撮られているが、選挙運動中は距離を置いていた。自称「地球平面説支持」と呼び、9月には民主党の対抗馬クリス・クーンズを「キリスト教を憎む赤ん坊殺し」と呼び、「悪魔崇拝者よ、あなたの議席を奪いに行く」と付け加えている。11月の総選挙では、クーンズがウィッツケを59対38%で破った。
  ジョン・ルイス下院議員のジョージア州下院議席に立候補しているトランプ支持の候補者、アンジェラ・スタントン=キングはTwitterで、ブラック・ライヴズ・マターは「ペドフィリア人身売買の大規模な隠蔽である」とTwitterに投稿した。スタントン=キングはレポーターに「あの日は雨が降っていた」と主張し、投稿はQAnonとは関係ないと語った。気象記録には投稿した日のスタントン=キングの地域の降水量は記録されていなかった。
テキサス州共和党のスローガン
  2020年8月、『ニューヨーク・タイムズ』は、テキサス州共和党がQAnonから直接引用した新しいスローガンを選んだことを示唆した。テキサス州共和党関係者はこれを強く否定し、スローガン(「We Are the Storm」)は聖書の一節に触発されたものであり、QAnonとは何の関係もないと主張した。
議会決議
  2020年8月25日、下院民主党トム・マリノウスキー議員と共和党デンバー・リグルマン議員の2人は、QAnonを非難し、その陰謀論を否定する超党派の簡易決議案(H.Res.1154)を提出した。決議の目的は「FBIが言うアメリカ人を暴力へと過激化させているこの危険な、反ユダヤ主義的、陰謀的なカルト」を正式に否認することだったと、マリノウスキーは述べている。決議案はまた、FBIをはじめとする法執行機関や国土安全保障機関に対し、「政治的陰謀論に動機づけられた過激派による暴力、脅迫、嫌がらせ、その他の犯罪行為を防止することに引き続き重点を置くこと」を促し、米国情報機関に対し、「QAnonが受け取る外国からの支援、援助、オンラインでの増幅、QAnonとの提携、調整、外国の過激派組織や暴力を支持するグループとの接触を明らかにすること」を奨励している。
  2020年9月、マリノウスキーは性犯罪者を保護したいという誤った告発を受けた後、QAnonの信者から死の脅迫を受けた。この脅迫は、全米共和党議会委員会(NRCC)のキャンペーン広告で、マリノウスキーがヒューマン・ライツ・ウォッチのロビイストとして働いていた時に、2006年の犯罪法案で性犯罪者の登録を増やす計画に反対して働いていたと虚偽の主張をしたことに端を発している。
  2020年10月2日、371対18の賛成多数で可決された。共和党員17人(スティーブ・キング、ポール・ゴサール、ダニエル・ウェブスターを含む)と無党派の1人(ジャスティン・アマッシュ)は反対票を投じ、共和党員のアンディ・ハリスは賛成票を投じた。決議には法の効力はない。
下院議員の委員会除名決議
  2021年2月4日、ジョージア州選出(Georgia's 14th congressional district)の下院議員マージョリー・グリーンを、QAnonなどの陰謀論を拡散したとして、下院は賛成多数で所属委員から除名する事を決議した。陰謀論には、アメリカ同時多発テロ事件陰謀説スクールシューティングやらせ説などが含まれていた。この議員はこれらの陰謀論を信じていたのは議員に立候補する前で、アメリカで起こった出来事に戸惑っていて政府を信じていなかった2018年に、陰謀論に出会ったと説明している









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