アメリカ問題-1


2024.11.14-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20241114-PXX74R6SYFNKJHZ36TY77ILJNA/
米司法長官に「反民主」急先鋒ゲーツ氏 国家情報長官はギャバード元下院議員

  【ワシントン=大内清】トランプ次期米大統領は13日、次期政権の司法長官にマット・ゲーツ下院議員(43)=フロリダ州選出=を指名すると発表した。ゲーツ氏はトランプ氏を熱烈に信奉する民主党批判の急先鋒。トランプ氏が主張してきた政敵への報復を主導する可能性がある。

  司法長官は連邦捜査局(FBI)を所管し特別検察官の任命権限も持つ。高い政治的中立性が求められるが、忠実なトランプ派のゲーツ氏が実際に就任すればトランプ氏の司法への影響力が強まりそうだトランプ氏は選挙戦で、自身が起訴されたことへの報復としてバイデン大統領ら民主党要人を「訴追する」と宣言していた。
  ゲーツ氏は未成年者への性的人身売買などの容疑でFBIの捜査対象となったこともあり、人事承認に向けた上院公聴会で追及を受けるのは必至だ。
  一方、トランプ氏は同日、情報機関を統括する国家情報長官(DNI)に、ハワイ州選出の元下院議員で民主党から共和党にくら替えしたトゥルシー・ギャバード氏(43)を指名すると発表。対中強硬派のルビオ上院議員(53)=フロリダ州選出=を国務長官に指名することも正式発表した。


2024.11.06-産経新聞(月刊正論)-https://www.sankei.com/article/20241103-C3RO34QH5JEHJNBPMMQRBKY3KU/?outputType=theme_monthly-seiron
トランプ氏、実は高学歴の白人富裕層も支持 ハリス氏はバラモンの娘、先祖に奴隷所有者 福井義高-正論12月号 「日本人が知らない大統領選」

  次の米大統領は前大統領のドナルド・トランプか現副大統領のカマラ・ハリスか、選挙戦終盤になっても、どちらとも言えない状況が続いている
  ここでは、本誌発売後、すぐにわかる選挙結果の予想ではなく、二人がどんな人物なのか、その支持基盤はどこにあるのか、さらには米国民の政治的関心はどの程度なのかについて述べてみたい

2人の生い立ち
  1946年に生まれたトランプは、ニューヨーク市の裕福な家庭の出ながら、父フレッドは学歴もなく一代で財をなした人物であり、トランプ家はブッシュ家のような名門ではない。トランプはアイビー・リーグの一角を担う名門ペンシルバニア大を卒業している。米国ではトップ校でも、有力OBなどの子弟を優先する「レガシー」入学が公然と行われているので、トランプもカネで入ったという主張がある。しかし、姉のメリアン(故人)が連邦高裁(控訴裁判所)判事だったことからみても、トランプは、本人が言うほどではないにせよ、かなり学力優秀だったのであろう。なお、ジョージ・W・ブッシュ(息子)元大統領は祖父(上院議員)や父(大統領)と同様、イェール大を卒業している。
  一方、1964年生まれのハリスは両親とも学者である。ジャマイカ出身の父ドナルドは経済学者で、西海岸を代表する名門カリフォルニア大バークレー校(UCバークレー)で博士号を取得し、スタンフォード大の教授を務めた(現在は名誉教授)。インド出身の母シャマラ・ゴプラン(故人)もUCバークレーで博士号を取得した生物医学者で、かつて原爆開発を担ったローレンス・バークレー国立研究所の研究員であった。
  極めて知的な両親のもとに生まれながら、ハリスはあまり学力優秀ではなかったようである。両親離婚後、母に育てられたハリスは、ハワード大という難関とはいえない大学に進学している。この大学はもともと黒人のために設立され、人種差別が公的に否定される前には学力優秀な黒人が入学したことで知られる。しかし、米国で「アファーマティブ・アクション」と呼ばれるマイノリティー、とくに黒人を優遇する政策が採用された後、つまりハリスの世代では、トップの黒人学生が目指す大学ではなくなっていた。

  ハリスは大学卒業後、ロースクールに進学するけれども、やはり一流とは言い難いカリフォルニア大ヘイスティングス(現サンフランシスコ)校に入っている。同じ「カリフォルニア大」といっても、両親の母校バークレー校やロサンゼルス校(UCLA)と比べ、かなり「格落ち」である。
  同い年でともに黒人女性のリーダーと目される存在ながら、ハリスとバラク・オバマ元大統領夫人のミシェルは、ある意味、対照的である。黒人労働者家庭出身のミシェル・ロビンソン(旧姓)はアイビー・リーグの名門プリンストン大を卒業後、ハーバード・ロースクールに進み、修了後に同窓のバラクと出会っている。ただし、『ニューズウィーク』(2008年2月25日号)が指摘しているように、アファーマティブ・アクションが採用されていたとはいえ、ミシェルの成績ではトップ校は無理と高校では判断されていた。成績優秀かつバスケットボールのスター選手だった兄クレイグがさきにプリンストン大に進学していたことが背景にあったと思われる。
  多感な青春時代、学力相応の黒人大学に進学したハリスと、自分より明らかに学力が高い白人・アジア系クラスメイトに囲まれたミシェルとどちらが幸せだったであろうか。また、そうした体験が二人の人生にどのような影響を及ぼしたのか、興味深い論点である。
  さて、ハリスは米国で差別されてきた黒人であることを強調するけれども、事実はそう単純ではない。まず、ハリスの父ドナルドは祖先に白人奴隷保有者がいることを父自ら認めている。ドナルドの世代で大学に進学しているということは、ジャマイカでは恵まれた家庭出身だったのであろう(米国に来る前ロンドン大にも留学している)。さらに、母シャマラはインドのカースト最上位バラモン(ブラーミン)出身である。インド本国では米国同様、差別されてきたグループを優遇する政策が取られ、バラモン出身者は逆に不利に扱われる。それを逃れるため、米国のインド系エリートにはバラモン出身が多くなっている。ハリスの母もその一例である。
  母はインドでは差別する側のバラモン、父は白人の血をひくジャマイカ人という、ともに米国の奴隷制とは無関係な、博士号を持つエリートであり、ハリスは到底逆境のなかで育ったとはいえない。そもそも、「ワンドロップ・ルール」すなわち一滴でも黒人の血が入っていれば「黒人」とみなす米国以外であれば、黒人の血が半分に満たないハリスは「黒人」とみなされない可能性がある。
  カリフォルニア州検察官だったハリスの政界への進出を語るうえで、カリフォルニア民主党の大立者ウィリー・ブラウンとの関係に触れないわけにはいかない。のちにサンフランシスコ市長となるブラウンが州下院議長を務めていた1990年代半ば、ハリスは、別居していたとは言え既婚者で30歳年上のブラウンと交際し、同時期に複数の公職に任命されている。ハリスが2020年大統領選に向けて、民主党有力候補として出馬表明する直前の2019年1月15日、ブラウンは『サンフランシスコ・クロニクル』に寄稿し、ハリスに便宜を図ったことを認め、「だからどうした」(So what)と述べている。
偶然が左右する大統領選
  米国政治の特徴としてまず挙げられるのが、その安定度の高さである。日本や欧州では既成政党が没落し、新たな政党が国政選挙で議席を得ることは珍しくない。フランスの国民連合やドイツのAfDのように、既成勢力からは目の敵にされながらも、大政党になった例もある。ところが米国では19世紀以来、民主・共和の二大政党制が強固で、別の政党が割り込む可能性はないといってよい。実際には両党以外の政党が存在し、大統領選挙にも複数が立候補しており、すべてが泡沫候補というわけでもない。たとえば、今回も出馬しているリバタリアン党候補は、2016年の大統領選では全米で3%、前回2020年の選挙でも1%の支持を得ており、後述する米国の選挙制度ゆえ、その影響は無視できない。
  米国の二大政党制は自然とそうなっているというより、政治を安定させるため、社会的合意の上に人為的に維持されているともいえる。大手メディアは両党以外の政党を無視し、他党の候補は討論会にも呼ばれない。
  そして、この二大政党それぞれへの支持も安定している。大統領選と同時に行われる、小選挙区制の下で全議席が改選(任期2年)される下院では、実際競い合っているのは全体の1割程度でしかない(『USニューズ&ワールド・レポート』2024年9月27日付電子版)。そのため、日本や欧州でみられるような大政党が大敗するという事態は生じない。

  米国では大統領選は全国での得票数を競うのではなく、州単位で勝った候補が(ほぼ人口に比例にして)州に割り当てられる選挙人全員を獲得し、その総数で当落が決まるため、全国での得票数で勝っても当選できるとは限らず、その裏返しとして、得票数で負けても当選する可能性がある。実は、2000年から2020年までの6回で共和党候補が得票数で上回ったのは1回(2004年のブッシュ再選)だけで、共和党が勝った2000年(ブッシュ)と2016年(トランプ)も得票数では民主党候補が上回っていた。
  全国得票数ではなく選挙人の数で決まる制度の下、ほとんどの州でどちらの党の候補が勝つかほぼ確定しているので、実際の争いは両者の支持が拮抗する少数の激戦州で決まる。したがって、第三党候補の得票が勝敗を左右する可能性が大いにあるのだ。2020年の選挙では得票率1%未満の票差だった州が三つあり、すべてバイデンが勝った。もし逆にトランプが勝っていれば、選挙人の総数は同じであった。しかも、三州すべてで今回も立候補しているリバタリアン党候補の得票率は1%を超えていたのである。大接戦だった2000年選挙の勝敗は、わずか500票差でブッシュがフロリダ州を制したことで決まったけれど、緑の党のラルフ・ネーダーは10万票獲得しており、別の二人の候補の得票数もそれぞれ1万票を超えていた。
  要するに、米大統領選は第三党候補が選挙結果を左右する存在であるばかりでなく、全国得票数からみれば、誤差の範囲ともいえる票差で勝敗が決まるのである。
誰がトランプ支持者なのか
  さて、トランプは政界アウトサイダーとして、共和党エスタブリッシュメントに挑戦し、ある意味、「共和党をぶっ壊した」。しかし、のデータで示した通り、2020年にジョー・バイデンに再選を阻止されたトランプと、2012年に現職のオバマに敗れた共和党主流派で反トランプのミット・ロムニーは全体の得票率のみならず、カテゴリー別でみても得票率はほとんど同じであった。
  まず、ロムニーもトランプも、全体ではともに47%の得票率であった。以下「トランプ得票率(ロムニー得票率)」として記す。性別でみると、ともに男性53%(52%)が女性42%(44%)を10%前後、上回っている。また、結婚の有無では、結婚している有権者53%(56%)がしていない有権者40%(35%)を大幅に上回っている。
  人種別に見ると、白人は58%(59%)で6割が共和党候補に投票するものの、非白人では民主党候補の圧勝である。それでも、黒人は12%(6%)でトランプの得票率のほうが高く、ヒスパニックでも32%(27%)でやはりトランプの方が高かった。トランプは日本でも白人至上主義者であるかのように報道され、南部国境からの主にヒスパニックの移民制限を強く主張することから、ロムニーに比べて黒人やヒスパニックの得票率が大幅に低下したのかと言えば、全くそんなことはなく、むしろ支持を増やしているのである。
  家計収入でみると、10万ドル未満は43%(44%)、10万ドル以上は54%(54%)で、所得の低い層は民主党、高い層は共和党が強いという伝統的パターンは変わらない。トランプの支持者は白人貧困層というのが通説化しているけれども、豊かな白人はトランプ支持を公言しないだけで、実際には投票しているということである。ただし、通説も全く誤りというわけではない。白人の学歴別でみると、非大卒は67%(61%)でトランプの方が高い一方、大卒は48%(56%)でトランプの方が低かった。とはいえ、大卒でも半分はトランプを支持しているのである。所得が高く、学歴が高いほど、「隠れトランプ」が多いのだ。
  データが示すのは、米国有権者の投票パターンが候補者の個性や主張にそれほど影響されないという、米国政治の安定性である。
政治に無関心な米国人
  米国政治について語るうえで忘れてはならないのは、そもそも米国人は一般的に政治に興味がないことである。もっとも関心が高い選挙である大統領選でも、この半世紀で投票率が6割を超えたのは、前回2020年だけである。さらに、より重大な問題として、産経本紙拙稿(2021年12月30日付朝刊)で論じたように、米国人は自国政治について驚くほど無知なのだ。たとえば、オバマ政権下の2014年中間選挙前の世論調査での、上院・下院それぞれ多数党はどちらかという質問に、上院も下院も、正答4割、誤答2割、わからない4割であった(正答は上院が民主党、下院が共和党)。選択肢が二党しかないなか、正答の多くが当てずっぽうだったと思われるので、本当に知っていたのは2~3割であろう。より身近な経済問題でも、失業率はいくらかという4択の質問(3、6、9、12%)で、正答(6%)3割、誤答5割、わからない2割であった。誤答のほとんどが9か12%だったので、正答から当てずっぽうの分を差し引けば、有権者の大半が実態より経済状態が悪い(失業率が高い)と誤って認識していたか、どんな状況か知らなかったことになる。
  米国では憲法上、州そして議会や裁判所の権限が大きいため、内政における大統領の裁量の余地はそれほど大きくない。一方、米国以外にも大きな影響を与える軍事介入も含めた外交は、大統領の専権事項といってよい。しかし、その大統領が、ここで示したように、政治に無知な国民のパターン化された投票行動の下、ごく少数の有権者の気まぐれに左右されて選ばれるという現実を前提として、米国政治を語る必要があることだけは確かである。(敬称略)(月刊「正論」12月号から)

ふくい・よしたか
  青山学院大学教授。昭和37年生まれ。東京大学法学部卒業。米カーネギー・メロン大学Ph.D.。

月刊正論について
  日本の自由な社会と健全な民主主義を守るという信条に基づき、昭和48(1973)年10月に創刊した雑誌「正論」は、創刊50年を迎えました。「多数意見に迎合せず、また少数意見におもねず(ママ)、真に国民のための世論提起が本誌の願い」との創刊時の信念を受け継いできました。政治、経済、社会、国際問題から文化までの幅広い分野で、執筆陣が多角的な視点から主張を展開します。


2024.08.10.-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20240810-6NEU2ESWDVOA7F2Q5XWVEQFHNQ/
米、対ベラルーシ追加制裁 大統領専用機差し押さえ 企業など14団体と19個人

  米政府は9日、ウクライナ侵攻を続けるロシアに軍事支援をしているとして、ベラルーシに拠点がある企業など14団体と19個人を制裁対象に追加した。米国内の資産を凍結する。強権支配を続けるルカシェンコ大統領の専用機1機を差し押さえの対象にした。

  米国と英国、カナダと欧州連合(EU)は、不正が指摘された2020年のベラルーシ大統領選から4年となった9日に共同声明を発表した。ルカシェンコ政権が「弾圧を続けている」と非難し、約1400人の政治犯の即時釈放を要求した。(共同)


2024.07.18-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240718-SVJH3G6DHBOKNMM5UMQWT4HCSY/
米共和党バンス氏の「英国は核保有したイスラム主義国家」発言に英与野党が猛反発

  【ロンドン=黒瀬悦成】米共和党全国大会で大統領選の同党副大統領候補に選ばれたバンス上院議員スターマー英労働党政権を「核兵器を持ったイスラム主義国家」と呼んだことに対し、英政界で反発が広がっている。11月の大統領選でバンス氏とトランプ前大統領が勝利した場合、これまで「テロとの戦い」やロシアに侵略されたウクライナへの支援で緊密に連携してきた米英の「特別な関係」に亀裂が入りかねないとの懸念も出始めた。

  バンス氏の発言は、ワシントンで先週開かれた保守派の会合で飛び出した。これに対し、パキスタン移民の子孫である保守党のワルシ上院議員は英紙インディペンデント(電子版)への寄稿で「バンス氏は無知な人種差別発言で英国をおとしめた」非難した。
  労働党のレーナー副首相はテレビ番組でバンス氏の認識を否定し「彼は過去にも多くの低俗な発言をしてきた」と一蹴した。
  影の退役軍人相を務める保守党のボウイ下院議員も「労働党の同僚たちに対して極めて侮辱的だ」と強く批判した。
  英メディアの間では労働党所属のイスラム教徒のカーン・ロンドン市長(労働党)が過去にトランプ氏を「差別主義者」と批判したことへの意趣返しだとする指摘もある。
  一方、トランプ氏の友人として知られる右派政党「リフォームUK」のファラージ議員はバンス氏の発言に同意しないとしつつ「労働党政権の外にイスラム主義者がいるのは事実だ」と主張した。


2024.07.17-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20240717-W3NK4YQMTNOTFA23DZAH7TFNWE/
米軍、IS44人を殺害、166人拘束 イラクとシリアで1~6月

  米中央軍16日、イラクとシリアで1~6月に実施した過激派組織「イスラム国」(IS)に対する米主導の作戦が196回に上ったと発表した。ISメンバー44人を殺害し、166人を拘束した。(共同)


2024.07.16-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240716-NNWSXELZKFJZHGTYO2CHYHUBOY/
ヘイリー元国連大使が共和党大会出席へ トランプ氏銃撃事件で結束訴えか 米メディア報道

  【ミルウォーキー=渡辺浩生】米中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで15日開幕する共和党全国大会に、トランプ前大統領と大統領選の党候補指名を争ったヘイリー元国連大使が出席することが明らかになった。米ブルームバーグ通信など複数のメディアが報じた。

  トランプ氏は、13日に東部ペンシルベニア州の選挙集会で演説中に銃撃された事件を受け「結束がかつてなく重要なときだ」とSNS投稿を通じて訴えている
  ヘイリー氏の出席もトランプ氏が自ら要請したとされる。ヘイリー氏は大会2日目の16日にスピーチし、トランプ氏支持と党内融和を訴えるとみられる。
  ヘイリー氏は11月の大統領選に向けて1月から始まった予備選・党員集会でトランプ氏と候補指名を競い、3月に撤退。しかし、その後の予備選でも一定の得票を続けて存在感を見せた。トランプ氏にとり、無党派層を含めヘイリー氏を支持する「反トランプ票」の獲得が、本選の課題となっている。


2024.07.03-産経新聞-https://www.sankei.com/article/20240703-YJFAHXNQNFMFPIQC3OFWFRFS2I/
バイデン氏討論会の「衝撃波」 中露や北朝鮮などが挑発に出る危険も浮上 米専門家

  【ワシントン=渡辺浩生】バイデン米大統領が6月27日の討論会で顕著な衰えを露呈したことは、米国外交を指揮する大統領の指導力への対外的な信認の低下を招き、結託を強める中国やロシア、北朝鮮、イランといった現状変更勢力に新たな挑発や干渉の隙を与えかねない、との見方が出ている。

  討論会後、本人や家族、陣営幹部は選挙戦の継続を訴え、大口寄付者や民主党支持層に広がる選挙戦撤退論を抑えるのに躍起になっている。
  だが、同盟諸国にも不安は広がっている。米国際政治学者のウォルター・ラッセル・ミード氏は1日の米紙ウォールストリート・ジャーナルのコラムで、同盟諸国に「バイデン氏の討論会のパフォーマンスは衝撃波をも送った」と指摘した。
  ブリンケン国務長官は1日、米シンクタンクの行事に出演し、「世界中の世論調査をみれば、米国の指導力への信頼度は(現政権発足後の)過去3年半で劇的に向上した」と強調した。今回の討論会を契機に、世界秩序を主導する米国の指導力への不安払拭に努めた形だ。
  しかし、ミード氏は「討論はバイデン政権の耐久力と指導力の両方の信任をむしばんでいる」と指摘。大統領は脆(ぜい)弱(じゃく)だとの認識が拡散する最悪のシナリオとして「外国指導者が(軍事力を含む)米国のパワーに挑戦する」ことを挙げた。
  ミード氏が先例として挙げたのは、ブッシュ元大統領が2期目末期の2008年、金融危機への対処に追われていたさなかにプーチン露大統領が踏み切ったジョージア侵攻だ。大統領選があった年でもある。
  討論会で、バイデン氏はトランプ前大統領から外交・安全保障で追及を受けた。トランプ氏は「われわれは、第三次世界大戦に誰が想像するよりも近づいている。彼(バイデン氏)はわれわれをそこに追い込もうとしている」とたたみかけた。
  誇張は否めないが、狙いは、2021年のアフガニスタンからの米軍撤退が招いた混乱、翌22年のロシアのウクライナ侵略の抑止失敗から連想されるバイデン氏の「弱腰」の外交姿勢の危うさを追及することにある。
  ミード氏を含む保守系の外交専門家は、現政権下で中露、北朝鮮、イランの現状変更勢力に対する米国の抑止力が低下したことを一貫して問題視してきた。討論会後の米国政治と指導力を巡る未曽有の混乱が抑止力を一段と弱めた可能性がある。プーチン氏、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記ら「悪の枢軸」の指導者が現状変更を狙って「劇的な動きに出る」(ミード氏)リスクは無視できない







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