ベネゼラ共和国-1


2024.07.30-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20240730-WP7EGYRWJRPVNHW566FVJYVJPI/
ベネズエラ首都で大規模デモ 大統領選勝利宣言のマドゥロ大統領に抗議、衝突も

  ベネズエラの首都カラカス中心部29日、大統領選の勝利を宣言したマドゥロ大統領に抗議する大規模なデモが起きた。デモ隊の多くは若者「自由を、自由を」と叫び大通りを封鎖した。警察と衝突し、負傷者も出ているもようだ。

  デモに参加した男性は「マドゥロ政権はもうたくさんだ。選挙結果はうそだ」と語気を強めた。デモ隊は投石し、警察は催涙弾で応酬した。
  28日の大統領選では、独裁色を強めるマドゥロ政権の影響下にある選挙管理当局がマドゥロ氏勝利を発表した。野党側は透明性に欠けるとして認めず、反発している。(共同)


2024.04.04-産経新聞(KYODO)-https://www.sankei.com/article/20240404-6ALO7GEG6ROJ5I3VGPI4B5QJ7I/
世界最高齢男性が死去 ベネズエラの114歳 日本男性が次の記録保持者か

  ギネスワールドレコーズ社は3日、男性の世界最高齢記録を保持していたベネズエラのフアン・ビセンテ・ペレスモラさん(114)が死去したと発表した。次の記録保持者は日本最高齢男性の薗部儀三郎さん(112)の可能性があり、同社が確認を進めている
  ペレスモラさんは1909年生まれで、幼い頃からサトウキビやコーヒー豆の栽培に携わった。約60年連れ添った妻との間に11人の子をもうけ、孫は40人以上、やしゃごは10人以上いる。2022年に世界最高齢の男性に認定された。

  長寿の秘訣について、ペレスモラさんは「一生懸命働き、休日は休み、早く寝て、毎日お酒を1杯飲み、神様を愛することだ」と説いていた。
  ベネズエラメディアによると、ペレスモラさんは2日に生まれ育った西部タチラ州で死去した。マドゥロ大統領もX(旧ツイッター)で哀悼の意を示した(共同)


2023.12.05-Yahoo!Japanニュース(毎日新聞)-https://news.yahoo.co.jp/articles/3fadad8dfd2b3ba586eeca28e51b7bf39e90da0f
強権ベネズエラ、隣国の資源地帯の領有権巡る国民投票で「勝利」宣言
【ニューヨーク中村聡也】

  南米ベネズエラで3日、隣国ガイアナの資源地帯「エセキボ地域」のベネズエラへの帰属を一方的に問う国民投票が実施された。

  地元メディアによると「95%以上の承認を得た」との暫定結果が発表され、独裁色の濃い反米左派マドゥロ大統領は「地滑り的勝利だ」と強調。周辺地域に緊張が生じている。
   ベネズエラは長年、この地域の領有権を主張してきた。マドゥロ政権は今後どのような行動を取るかには言及していない。CNNブラジルの報道では、投票前には両国と国境を接するブラジルの陸軍が国境地帯の監視に当たる人員を増強した。
◇真の狙いは大統領選の動静調査か
  一方、今回の国民投票について、ベネズエラで来年後半に予定される大統領選へ向けた「動静調査」が真の狙いとの見方もある。
  エセキボ地域は総面積が約16万平方キロあり、ガイアナ領の7割以上を占めるベネズエラとの国境を画定した1899年のパリ仲裁裁定により、当時は英国領だったガイアナの領土になった。ただ、ベネズエラは仲裁した米英などが「土地を奪った」と訴え、裁定は無効だと主張している。ガイアナは2018年に領土問題解決のため国際司法裁判所(ICJ)に提訴したが、結論は出ていない。  ガイアナは人口約80万人の小国で、かつては南米の最貧国の一つだった。密林に覆われたエセキボ地域には鉱物資源が眠り、近年は沖合で海底油田が相次ぎ発見された資源ブームにより、21年の国内総生産(GDP)成長率が19・9%を記録するなど、急成長を遂げている。こうした状況を受け、マドゥロ政権はガイアナへの圧力を強めている。  ベネズエラの国民投票を前に、ガイアナのアリ大統領は1日、「併合など現状を変更する行動は禁じられる」と声明で訴えた。【ニューヨーク中村聡也】


2020.12.09-産経新聞 THE SANKEI NEWS-https://www.sankei.com/world/news/201209/wor2012090014-n1.html
ベネズエラ 三権掌握のマドゥロ政権 国際社会のせめぎあいも長期化

  【ニューヨーク=上塚真由】南米ベネズエラで6日に行われた国会(一院制、277議席)の議員選挙で中央選管に当たる全国選挙評議会(CNE)は7日、与党が勝利したと発表した。独裁体制を強める反米左翼のマドゥロ政権が行政と司法に加え、立法府を含めた三権を掌握することになった。米国や欧州連合(EU)などが選挙を「不当」として結果を受け入れないと非難する一方、ロシアや中国はマドゥロ政権との関係強化を進め、ベネズエラへの影響力を強めていくとみられる。
  CNEによると、開票率98・6%の時点で、統一社会党(PSUV)など与党連合が68・4%を得票。マドゥロ大統領は7日、「民主主義にとって疑いのない大勝利だ」と宣言した。
  これに対し、国会で多数を占めていた野党連合は、CNEの委員の任命権などをめぐりマドゥロ氏側の不正を訴え、選挙をボイコット。野党連合出身のグアイド国会議長は7日、選挙の無効を訴え、新国会が発足する来年1月5日以降も「暫定大統領」として留まる考えを表明した。
  新たな選挙の実施などを問う独自の「国民投票」を7~12日まで行うが、議員の資格を失うことが濃厚となっている。
  ベネズエラをめぐり対応が割れる米国と中露のせめぎあいも長期化しそうだ。グアイド氏を支援する米国のポンペオ国務長官は7日、選挙を「茶番だ」と非難し、マドゥロ政権を認めず、グアイド氏を引き続き暫定大統領と認定すると表明した。だが、米次期大統領に就任する見通しとなったバイデン前副大統領は今回の選挙に関し声明などを発表していない。トランプ政権による石油輸出禁止の経済制裁に苦しむマドゥロ氏は8日、「バイデン新政権が発足すれば、対話の可能性を開くことを期待している」と述べ、米国の政策転換に期待感を示した。


2020.5.8-Sankei Biz-https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200508/mcb2005081034015-n1.htm
ベネズエラで「第二のピッグス湾事件」? 元米軍人訓練の部隊が政権転覆図り失敗

   【ワシントン=黒瀬悦成】南米ベネズエラからの報道によると、反米左翼のマドゥロ大統領は6日、政権転覆を目的に同国北部の海岸から上陸を試みた武装集団17人を拘束し、その中に米国人2人がいたことを明らかにした。米国人の1人は国営テレビの映像で「首都カラカス近郊の国際空港を制圧してマドゥロ氏を拘束し、空路で米国に連行する計画だった」と証言。マドゥロ氏は「計画の直接の首謀者はトランプ大統領だ」と主張し、2人を国内で裁判にかける方針を明らかにした。
    マドゥロ政権の発表では、ベネズエラ北部の海岸に3日未明、何者かに雇われた数百人の武装集団が上陸を図ったが、治安当局が8人を殺害して撃退し、武器などを押収した。
  国営テレビの映像によると、証言した拘束男性は34歳の元米海兵隊員。米国人2人は米南部フロリダ州の民間警備会社「シルバーコープUSA」と契約し、1月からコロンビア北部のベネズエラとの国境地帯で60~70人のベネズエラ人を訓練していたと語った。
   シルバーコープは米陸軍特殊部隊グリーンベレー元隊員のジョーダン・グドロー氏が経営。AP通信によると同氏は人心掌握術や射撃、格闘術に長け、イラクとアフガニスタンでの戦闘での戦勲を評価され、銅星章を3回受章した。
   グドロー氏は、ベネズエラの野党勢力を率いるグアイド国会議長との間でマドゥロ政権を転覆させる契約を交わしたと明かしているが、グアイド氏は契約の存在を否定している。
   これに対し、ポンペオ米国務長官は6日の記者会見で「米政府は作戦に直接関与していない」と否定し、拘束された米国人について「あらゆる手段を使って帰国させる」と強調した。
   AP通信の取材によれば、米政府が計画に関与した形跡は見つかっていない。しかしマドゥロ政権は、ケネディ米政権下の1961年、在米亡命キューバ人の民兵部隊がキューバに上陸し、反米カストロ政権の転覆を図って失敗した「ピッグス湾事件」と同様、背後で中央情報局(CIA)が暗躍していると主張しているという。



2019.05.01-BBC.com NEWS COM.JAPAN(https://www.bbc.com/japanese/48116808)
ヴェネズエラで「クーデター」失敗か 野党指導者が軍に決起促す

  ヴェネズエラで30日、野党指導者のフアン・グアイド国民議会議長が、ニコラス・マドゥロ大統領政権の打倒を掲げ、軍に決起を促すとともに、国民にも抗議行動を呼びかけた。大統領は「クーデターは失敗した」と述べた。

  この日早朝、グアイド氏が約3分にわたって話をする動画が投稿された。動画では、グアイド氏が軍服を着た人々の間に立ち、首都カラカスの「勇敢な兵士たち」が同氏を支持してくれていると述べた。グアイド氏はまた、マドゥロ政権打倒の「最終段階」にあると宣言。「国軍は正しい判断を下した。歴史によって正しい側に立っていると証明される」と述べた。
  だがこの日、軍全体がグアイド氏についているようには見受けられなかった。グアイド氏はさらに、人々に通りに出て政権交代を訴えるよう求めた。
  カラカスではこの日、マドゥロ氏とグアイド氏の双方を支持する人々が通りで抗議した。現地で取材しているBBCのギレルモ・オルモ記者は、これまでで最も激しい衝突が見られていると伝えた。
  グアイド氏支持者たちは軍の武装車両に向かって投石を繰り返し、軍は催涙弾や放水銃をグアイド氏支持者たちに向けた。保健省によると、69人のけが人が報告されているという。この日夕方、マドゥロ氏はテレビを通して演説。軍幹部たちと並んで腰を下ろしたまま、グアイド氏の行動をアメリカの帝国主義によって支援を受けたクーデターと呼び、これに勝利すると述べた。「(検察当局は)憲法や法の支配、平和の権利に違反したこの重大犯罪を刑事事件として立件する」さらに、グアイド氏の支持者たちは「少数のグループだ」とし、彼らの計画は失敗したと述べた。軍幹部たちはマドゥロ氏に従っているとみられる。
米高官「マドゥロ氏は出国準備をしていた」
  複数のアメリカ政府関係者によると、マドゥロ氏の側近3人が「(大統領の)辞任は避けられない」としてグアイド氏に同調する姿勢を見せたが、その後、再び大統領支持へと転換したという。
  マイク・ポンペオ米国務長官は、マドゥロ氏が同日、航空機でヴェネズエラを出国しキューバに渡る準備をしていたが、ロシアに説得され取りやめたと述べた。ただしポンペオ氏は、証拠は示さなかった。「滑走路に飛行機を待機させていた。今朝、出国の予定だったと理解している。ロシアがとどまるよう伝えた」とポンペオ氏は米CNNに語った。
  一方、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はワシントンで記者団に、ヴェネズエラのヴラディミル・パドリノ国防相、マイケル・モレノ最高裁長官、イバン・ラファエル・エルナンデス・ダラ大統領警護司令官の名前を挙げ、この3人が「全員、マドゥロ氏の辞任で合意した」と述べた。
  しかし、パドリノ国防相はこの日、テレビに出演し、マドゥロ氏への忠誠を表明した。ボルトン氏は、マドゥロ氏の側近3人の離反に関して証拠は示さなかった。エリオット・エイブラムス・ヴェネズエラ特使も同日、ボルトン氏と同じ説明をした。
ヴェネズエラで何が起きている?
  ヴェネズエラでは、2018年のマドゥロ氏再選を立法府が違法だと宣言し、グアイド氏が1月に暫定大統領就任を宣言して以降、両者が対立を続けている。
  グアイド氏の暫定大統領就任は、アメリカをはじめ約50カ国が承認している。一方、マドゥロ氏はこれを認めず、政権を譲っていない。この日午前にグアイド氏が投稿した動画では、同氏が所属する野党の指導者レオポルド・ロペス氏の姿もあった。ロペス氏は2014年の反政府運動で暴動を引き起こしたとして有罪判決を受け、自宅軟禁状態に置かれている。ロペス氏は一時、家族と共にチリの外交官住宅に避難していた。
  しかし、チリのロベルト・アンプエロ外相はツイッターで、この日の夕方、ロペス氏がスペイン大使館に移動したと明かした。アンプエロ氏は、ロペス氏と妻がスペイン人の子孫であることから、「個人的な決断」をしたと書いている。
<解説>失敗か、まだ続くのか? ――ケイティー・ワトソン、BBCニュース
  30日の出来事はとても劇的だった。しかし、これがヴェネズエラをどう導くのかは不明だ。グアイド氏はこの日の朝、軍は自分たち側についていると述べ、大胆な行動に出た。自宅軟禁中だった野党指導者のロペス氏がグアイド氏と並んで立っていたのも大きな驚きだった。誰がロペス氏を解放したのか、そしてこの解放からは、軍の政権への忠誠について何がうかがえるのか。
  しかし、時間が経っても、ほとんど何も明確になっていない。誰がこの「決起」を呼びかけたのか。グアイド氏が約束している政権交代を成し遂げるには、軍幹部たちを味方につけなくてはならない。だが今のところ、少なくとも公式には、軍はマドゥロ氏に忠誠を誓ったままだ。状況は混乱している。しかし、この日始めに反政権側が示していた自信は、弱まっているように見える。


2019年5月1日-産経新聞
ベネズエラ国会議長のクーデター 軍の大規模離反みられず失敗

  【ニューヨーク=上塚真由】南米ベネズエラで暫定大統領就任を宣言した野党連合出身のグアイド国会議長と軍の一部が電撃的に行った反米左翼マドゥロ政権に対する蜂起で、グアイド氏を支持するデモ隊と政権側の治安部隊の衝突が4月30日、首都カラカスなどで続いた。

  米メディアによると、少なくとも69人の負傷者が出たという。これまでのところ軍全体に離反が波及する兆候はみられず、事実上のクーデターは、グアイド氏の狙い通りには進んでいない。
  現地からの映像によると、暴徒化したデモ隊は火炎瓶や石などで治安部隊を攻撃。これに対し、治安部隊はゴム弾や催涙弾などで鎮圧に当たった。軍の装甲車が、グアイド氏の支持者らのグループに突っ込む様子も確認されている。
  グアイド氏は30日朝にカラカス近郊の空軍基地で、「自由作戦」と名付けた蜂起のビデオ声明を公表した。その後、グアイド氏とともに蜂起を呼びかけた有力野党指導者のレオポルド・ロペス氏は30日、在カラカスのチリ大使館に避難。蜂起に参加した軍人25人もブラジル大使館に逃げ込んだという。

  現地からの情報によると、グアイド氏の呼びかけに応じた軍人は一部にとどまるとの見方が強い。パドリノ国防相は30日の演説で、政権軍が引き続き「憲法や合法的な政権を防衛する」と述べ、マドゥロ氏への支持を表明。すべての軍部隊は正常に機能していると主張した。マドゥロ氏はツイッターに「軍の指揮官らは人民に対する忠誠心を示した」と投稿した。
  マドゥロ氏はこれまでのところ事実上のクーデターにも抑制的な対応を取っているが、グアイド氏は5月1日にベネズエラ全土で大規模な反政府デモを予定。政権打倒の行方は見通せず、緊張状態が続くとみられる。


ベネズエラ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


  ベネズエラ・ボリバル共和国-通称ベネズエラは、南アメリカ北部に位置する連邦共和制国家である。東にガイアナ、西にコロンビア、南にブラジルと国境を接し、北はカリブ海、大西洋に面する。首都はカラカス。コロンビアと共に北アンデスの国家であるが、自らをカリブ海世界の一員であると捉えることも多い。ベネズエラ海岸の向こうには、オランダ王国のABC諸島(キュラソー島など)、トリニダード・トバゴといったカリブ海諸国が存在する。ガイアナとは、現在ガイアナ領のグアヤナ・エセキバを巡って、19世紀から領土問題を抱えている。南アメリカ大陸でも指折りの自然の宝庫として知られている。
  原油埋蔵量は世界最大と言われているが、近年は急速に原油生産が低落している。
マドゥーロ政権時代
  チャベスの死後、腹心であったニコラス・マドゥーロ副大統領が政権を継承した。国際的な原油価格の低下と価格統制の失敗により、前政権時代から進行していたインフレーションは悪化し、企業や野党勢力のサボタージュも継続するなどマドゥーロ政権下においても政情不安は続いた。
  マドゥーロはチャベス時代の反米路線と社会主義路線を踏襲して企業と敵対し、また野党と激しく対立した。2015年12月6日、総選挙において野党・民主統一会議を中心とした右派連合が勝利を収め、過半数の議席を獲得した。ただし大統領の任期は2019年まで続き、仮に弾劾などが行われたとしても第一副大統領が昇格するためベネズエラ統一社会党が引き続き政権与党となる。

  反マドゥロ政権の野党が三分の二(167議席中112議席)を占めたことで以降国民議会を使った立法行為が不可能となったマドゥロ政権は、自身の影響下にある最高裁判所を使って国民議会の立法権を制限する様々な手段を打つようになった。例えば国民議会が可決させた法律を大統領が「違憲判断のため」として最高裁に送り、最高裁に違憲判断を出させて立法を無効化する方法である。

  2016年1月から4月に国民議会が可決させた5つの法案は全て最高裁に送られ、そのうち4つが「違憲」として無効化されている。また最高裁はアマソナス州選出の3人の野党議員に「不正選挙があった」として公務就任権を認めず、2016年7月にこの3人が国民議会で宣誓すると最高裁は「最高裁の決定を尊重しない限り国民議会は法的有効性をもたない」と宣言。以降マドゥロ政権はこの「3人問題」を理由に国民議会を無視して最高裁に立法権を代行させるようになった。
  予算案も国民議会ではなく最高裁に提出して承認させている。2016年4月、大統領の任期が後半に入った事を踏まえ、野党は憲法に規定されている任期途中での大統領罷免を求める国民投票の実施を宣言、10月に国民投票の第一条件となる1%の有権者の署名が与野党共同運営の選挙管理委員会に提出された。この署名に死亡者や有権者登録されていない人物の署名が含まれていた事が与党側から問題視され、選挙委員会と野党は再発防止を約束して手続きを再開したが、10月20日に7州の裁判所は「身分証明書の窃盗事件と関連がある」として手続き停止を命令した。一連の騒動で与党と野党に続き、司法と議会の対立も鮮明となった。

  2017年3月29日、最高裁判所は「不正選挙に基いた議会」「侮辱罪にあたる状態が続く議会の手続きは無効である」との司法判断を下し、立法権も最高裁判所に付与する異例の事態となった。この決定を与党側は歓迎したが、野党や南米諸国をはじめとする米州機構のみならず、最高検察庁のルイサ・オルテガ・ディアス検事総長など政府要人からも懸念や批判が相次いだ。マドゥロは国家安全保障委員会の決定として最高裁に再考を促し、最高裁の判断は撤回された。
  2017年4月以降、反政府デモとそれに対する鎮圧が頻発しており、非政府組織「ベネズエラ社会紛争観測所」の集計で死者は80人を超えている。デモは継続的に続けられており、7月8日で100日間連続となった。政府支持派の暴動も発生し、群集が国会に突入して反政府派の議員らを議会に閉じ込める事件も起きている。政府側と野党側デモの衝突は激化の一途を辿り、4月27日に民主統一会議議長で正義第一党の党首エンリケ・カプリレス・ラドンスキーは早期選挙の実施を要求した
反発の激化
  2018年5月21日の大統領選挙は、選挙前に有力野党政治家の選挙権がはく奪されたうえで行われたため、マドゥロ再選の「出来レース」状態となり、主要野党はそれに反発して選挙をボイコットした。マドゥロ政権は国際選挙監視団の査察を拒否して国民の投票を監視し、マドゥロに投票しなかった者は食糧配給を止めるなど、なりふり構わぬ選挙戦を展開した。この選挙は国際社会からも批判され。欧米や日本などからは2019年1月10日の大統領就任式の出席を拒否され、選挙の正当性を否定される形となった。その後もインフレーションなど経済的な混乱は加速した。

  2019年1月10日にマドゥロは2期目の就任式を行ったが、首都カラカス市内でもデモが活発に行われるようになり死者も発生。1月23日には国民議会議長フアン・グアイドが昨年の大統領選挙は憲法違反で無効と主張し、1月10日をもってベネズエラは大統領が不在となったので、憲法233条に従って国民議会議長である自分が暫定大統領になったことを宣言した。

  アメリカ合衆国ドナルド・トランプ大統領は「マドゥロの政権は正統ではない。ベネズエラにおいて唯一正統なのは国会である」としてグアイドの暫定大統領就任をただちに承認。これに対抗して1月24日にマドゥロ政権はアメリカと断交すると発表したが、米国政府は「グアイド政権を通じてベネズエラとの外交関係を維持する」としている。
  その後アメリカに続く形で西側諸国が続々とグアイド暫定大統領就任を支持表明した。日本政府はしばらくの間グアイドの承認を保留してきたが、2019年2月19日に「ベネズエラ政府に対して大統領選挙の早期実施を求めてきたにもかかわらず、いまだに行われていない」として「グアイド暫定大統領を明確に支持する」との意向を表明した。

  国内では引き続きマドゥロが軍部の支持を確保して実効支配している。またロシア中国北朝鮮イランキューバトルコシリアパレスチナボリビアなど反米主義的な国家群から2期目就任の承認を受けている。二つの政権が対立する形となった。
  2019年2月2日には、マドゥロの退陣を求める大規模デモがベネズエラの全土で執り行われ、この中で、グアイドが「デモ参加者に発砲するのをやめてほしい。それだけでなく、ベネズエラの再建にかかわってほしい」として、ベネズエラ軍に対する呼びかけを行った。一方のマドゥロ側でも政権支持を目的とした集会が行われ「立法府が再び合法化されることに同意する」と訴えた上で、2020年に行われることになっている国会議員の選挙を前倒しすることを提案した。

  2019年2月4日には14か国が集まってできた、いわゆる「リマ・グループ」がカナダのオタワにおいて、緊急の会合を行う。
  2019年2月20日、マドゥロ政権は、オランダアルバキュラソーとの海路を遮断したと発表。翌21日には「ベネズエラに人道危機は存在しない」、「領土侵害を防ぐ」と称してブラジルとの国境を封鎖すると表明した。コロンビアとの国境封鎖の指示も行われていたが、2月23日にはグアイド側はこれを無視して国境沿いで人道支援の受け入れ式典を開催。この時点で50か国から暫定大統領として承認を受けたグアイドに対し、コロンビア、チリ、パラグアイの各大統領も受け入れ式典へ参加して支援を表明した。

  2月23日にグアイドの要請を受けて支援物資を積んだトラックがコロンビアからベネズエラへ入ろうとしたが、マドゥロ支配下のベネズエラ治安部隊が阻止にあたり、多数の死傷者が出た。さらに同日「グアイドと共謀するドゥケ大統領が軍事侵攻を企んでいる」としてコロンビアとの断交を宣言した。
  3月7日にベネズエラ全土で停電が発生。マドゥロは3月15日の演説で「100%復旧した」としているが、依然として停電が発生する地域が多く、断水や略奪も深刻な状況のままという。またこの演説の中でマドゥロはアメリカ大統領ドナルド・トランプと大統領補佐官ジョン・ボルトンを名指しして「米国がサイバー攻撃をしかけた」と主張。さらに野党がアメリカのサイバー攻撃に協力したと批判した。マドゥロ派によって占められる司法機関も停電を起こした容疑でグアイドを捜査すると発表。これに対してグアイドは「全世界が破壊行為者が誰なのかを知っている。マドゥロ大統領が(停電の)責任を負っている」と批判した。

  3月23日にはロシアが兵士100人を載せた空軍機4機をベネズエラ首都カラカスへ派遣した。3月27日にトランプ米大統領はロシアにベネズエラからの撤兵を要求し、撤退がなされない場合には「あらゆる選択肢がある」と宣言した。3月28日にロシア政府広報官は「米国は他国の行動について決定できる立場にはない。
  ベネズエラ国民、および正統な大統領であるマドゥロ氏が決定することだ」、「ベネズエラに派遣したのは軍事協力協定に基づいた『専門家』であり、同国の国内問題には介入していない」と反論した。

  これに対して3月29日、ボルトン米大統領補佐官は「西半球外の者が軍事活動の基盤を整備したり拡大させたりする意図を持って、ベネズエラや同半球の他地域に軍事資産を配備する事態に対し強く警告する」とロシアを批判するとともに、マドゥロについても「ロシアの軍要員、機材をベネズエラに受け入れるなど外国の軍要員を利用して、権力の座にとどまろうとしている」「国民をさらに抑圧し、経済を破壊した危機を長引かせ、地域の安定を脅かす目的のみに、この軍的支援を活用するだろう」と批判した。
ベネズエラ難民問題
  長らく反米左翼政権が続いたベネズエラでは、2015年に政治的迫害などを理由にアメリカへ亡命申請したベネズエラ人は5,605人。2016年には14,700人を超え、2017年にはさらに更新することが確実視されている。
  さらに経済危機でベネズエラ難民の数は急増。国連によれば2018年11月までに国外へ逃れたベネズエラ難民は300万人を超え、この数はベネズエラ国民の1割に相当するという。

  2018年9月4日にエクアドルキトで中南米諸国がベネズエラ難民対策の国際会合を開いた。有効な対策はまとめられなかったものの、「キト宣言」を発表し、ベネズエラ難民を「十分に受け入れる」と明記した。最も受け入れている国は隣国コロンビアであり、2019年2月現在110万人を超えるベネズエラ難民を受け入れている。
  しかし北部の町ククタでは施設に収容しきれないベネズエラ人が路上にあふれており、ベネズエラ人による犯罪が社会問題になっている。ほかにペルーに50万6000人、チリに28万8000人、エクアドルに22万1000人、アルゼンチンに13万人、ブラジルに9万6000人のベネズエラ難民が流出している(いずれも2019年2月時)。ブラジルでは、ベネズエラ難民のテントを襲撃する運動が発生しており、治安悪化の原因になっている。
  ベネズエラ政府は難民の存在自体を認めておらず、頭を抱える南米諸国になんら協力しない状態が続いている。
政治
  大統領国家元首とする連邦共和制国家である。1999年12月に新憲法が制定され、大統領の権限が強化、任期も5年から6年に延長された。選出は、国民による普通選挙によって行われる。首相職は存在せず、大統領自身が行政府の長として内閣を統率する。前回投票は2018年5月21日に行われ、ニコラス・マドゥロ大統領が再選した。
  議会スペイン語でAsamblea Nacional(アサンブレア・ナシオナル、すなわち国民議会)と呼ばれ、1999年憲法により両院制から一院制に変わった。全165議席で、うち3議席は先住民に保障されている。議員の任期は5年で、国民による普通選挙(小選挙区比例代表併用制)で選出される。

  2007年に改憲を巡る国民投票が行われたが、否決された。その後、大統領の再選制限を撤廃した2009年憲法が成立している。かつて「ラテンアメリカには独裁か無政府状態しかないのではないだろうか」とシモン・ボリバルが危惧したように、ベネズエラでは1830年から1955年まで一世紀以上に渡り、カウディーリョや軍人による専制政治内戦が続いた。クーデターが起こりやすい国でもあり、一時期ほどの頻度ではないものの、近年では1992年2002年のクーデター未遂事件が起こっている。
  1959年のロムロ・ベタンクール政権以降、石油収入を背景にベネデモクラシアと呼ばれた民主化富裕層と中間層を主体にして進み、1941年に成立した。国民行動党と、1946年に国民主義行動党が改編されたキリスト教社会党(COPEI)との二大政党制が確立した。ベネズエラの二大政党制は機能し、ラテンアメリカ諸国がクーデターによる軍事政権の成立に特徴づけられた1960年代から1980年代までの間もベネズエラはコスタリカと共に、ラテンアメリカでは例外的な民主主義の維持された国家となったが、この二大政党制は二大政党の枠組みに収まらなかった共産党などを政治から排除する体制でもあったために行き詰まりを迎え、民主化の中でも埋まらなかった経済的な格差や1980年代から続く経済の衰退、カラカス暴動に対する強権的な対応などから生まれた政治不信を背景に、貧困層に対してポプリスモ的な政策に訴えた1992年のクーデター未遂事件の主導者であったウゴ・チャベス元中佐が1999年に当選した

  1999年に発足したウゴ・チャベス政権は、内政では保健と教育を最重要視する政策をとっている。低所得層が住む地区での無料診療所の開設、学校の建設、非識字者や学校中退者のための補習プログラムなどがその例である。貧困層重視の政策は、強引な政治手法とあいまって、富裕層、中産階級、以前の有力政党と結ぶ労働組合から強い反発を受けた。
  2002年4月にはストライキに対して軍が非常措置を執るよう命じたチャベスに軍部が反対、チャベスの辞任を発表した(ベネズエラクーデター (2002年)。チャベスは後に自らは辞任していないと宣言している。チャベスは軍施設に拘禁されたが、暫定大統領となったペドロ・カルモナが議会解散を命じたために「民主主義の保護者」を自認する軍が反発し、またチャベス支持派の大規模なデモ活動があったためにカルモナは辞任、チャベスが復権した。

  12月から翌2003年2月にかけては石油産業をはじめとする各産業界でチャベス辞任を求めるゼネラル・ストライキが起こり、ベネズエラ経済は大打撃を受けた。
  スト終結後1年間は経済後退が著しかったが、続く2004年には原油価格上昇もあいまって経済が急速に回復し、政権支持率もそれにともなって上昇した。そして8月15日に大統領リコールの国民投票が58%対42%で否決されると、政情は一応の安定をみた。しかし野党は国民投票と以後の選挙結果を認めず、2005年12月の議会選挙では主要野党が選挙をボイコットした。

  2006年12月3日の大統領選挙でチャベスは63%の得票で3度目の当選を果たし、今度は野党候補も結果を承認した。
  2007年12月2日実施の社会主義体制への移行と、大統領再選制限の撤廃や大統領権限の強化を定める憲法改正の国民投票で、ベネズエラ中央選管は、反対票が約51%と賛成票をわずかに上回り、否決されたと暫定結果を発表した。
  2009年2月15日に再度国民投票を実施、大統領の無制限再選が可能となる憲法改正が賛成多数で承認された。しかし、一連の国民投票の過程で国論の深刻な分裂が露呈し、チャベス大統領の手法や、終身大統領・独裁を狙っているという批判も起こっていた。
  2013年3月5日にチャベス大統領はがんで死亡、後継者としてニコラス・マドゥロ副大統領を指名した。4月に行われた大統領選挙にマドゥロは僅差で当選し、任期は2019年1月10日までとする第54代大統領に就任した。

  経済危機に有効な対策をとれないマドゥロと与党ベネズエラ統一社会党への不信は高まり、2015年12月6日の議会選挙で反チャベス派選挙連合である民主統一会議が112議席を獲得して勝利し、ベネズエラ統一社会党は55議席に留まる敗北を喫した。
  しかしマドゥロ政権は議会と激しく対立し、政権に近い最高裁が何度も議会の決議を無効とする判決を下していた
  2017年3月29日には最高裁が議会の立法権を掌握すると決定されたが、野党や国際社会の反発を受けて撤回に追い込まれている。
  2018年5月の大統領選挙は、選挙前に有力野党政治家の選挙権がはく奪されたうえで行われたため、マドゥロ再選の「出来レース」状態となり、主要野党はそれに反発して選挙をボイコットした。マドゥロ政権は国際選挙監視団の査察を拒否して国民の投票を監視し、マドゥロに投票しなかった者は食糧配給を止めるなど、なりふり構わぬ選挙戦を展開した。
  2019年1月10日にマドゥロが2期目に入ったが、1月23日には国民議会議長フアン・グアイドが昨年の大統領選挙は憲法違反で無効と主張し、1月10日をもってベネズエラは大統領不在となったので、憲法233条に従って国民議会議長である自分が暫定大統領になったことを宣言した。
     アメリカなど西側諸国がグアイドを支持し、二つの権力が対立する状況が発生した。
外交
  伝統的に親米路線をとってきたが、1999年のウゴ・チャベス政権成立以降は反米を基調としている。アメリカはベネズエラの人権状態などに強い批判を行い、2015年3月には政府関係者に対する経済制裁を行っている。ただし、ベネズエラにとってアメリカは現在も最大の貿易相手国であり、民間では強い関係性をもっている。
  チャベスはアメリカの影響力が強い米州機構に代わる南米諸国の組織とし米州ボリバル同盟を設立し、南米諸国との関係性を強めていこうとしている。
  しかし非左派政権である南米諸国との関係も円満ではなく、2015年にはコロンビアとの間で大使召還が相互に行われるなど、円滑なものとは言えない。また2016年のブラジルで、ジルマ・ルセフ大統領が弾劾された際には、ボリビアエクアドルとともに大使を召還している。
  またペルーのペドロ・パブロ・クチンスキ大統領はベネズエラを激しく批判し、ベネズエラ側もこれに対して批判を行っている。また2017年の最高裁による立法権掌握などは、米州機構などの国際社会から批判を受け、ペルーは大使召還を行うなど強い措置をとっている。
  近年はマドゥロ大統領が夫人とともに訪中して新たな融資を受けて中国軍の艦船も寄港するなど中国とさらに関係を強め、反米傾向を強めるトルコとの関係が密接になり、マドゥロ大統領とエルドアン大統領が会談し経済協力を取り付けている。さらに、ロシアも財政支援等を表明する等、積極関与しており、ロシア軍との軍事演習やロシア軍基地の設立も議題に上がっている等、反欧米西側諸国との関係を強化している。







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